JP5360972B2 - 触媒及びその製造方法 - Google Patents
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Description
バイオマスの利用方法の1つとして、ガス化が挙げられる。
木材や家畜糞尿等のバイオマス(有機廃棄物)をガス化することにより、水素やメタン等の燃料ガスと、タールと、固体残渣(チャー)とが生成する。
この場合、タールとしては、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素が生成する。
前記特許文献2に記載された方法では、触媒を構成する要素として、高価な金属である白金を含む白金族化合物が必須である。
従って、いずれの方法も、コストや資源の面で問題がある。
そのため、触媒の寿命が短くなるという問題がある。
また、担体の表面上にアルカリ土類金属の酸化物が付着形成されていることにより、このアルカリ土類金属の酸化物を助触媒として作用させて、COメタネーション反応の際において触媒成分の遷移金属に炭素が析出し、触媒が失活することを抑制することができる。
また、表面付近の担体の内部に、アルカリ土類金属と担体の成分とを含有するバリア層が形成されていることにより、触媒の製造時や反応時等での熱処理で触媒成分の遷移金属が担体の内部に拡散することを抑制することができる。これにより、担体の表面の触媒成分の濃度を高く保つことができるため、充分な触媒活性が得られる。
また、その後の還元雰囲気中で熱処理して遷移金属の酸化物を遷移金属に還元する工程(還元工程)によって、アルカリ土類金属の酸化物よりも遷移金属の酸化物が還元されやすいので、担体の表面に、触媒成分の遷移金属を金属の状態で形成することができる。これにより、担体の表面の触媒成分の濃度を高く保つことができるため、充分な触媒活性が得られる触媒を製造することができる。また、触媒の担体の表面に残ったアルカリ土類金属の酸化物により、このアルカリ土類金属の酸化物を助触媒として作用させて、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において触媒成分の遷移金属に炭素が析出し、触媒が失活することを抑制することができる。
これらの材料を使用することにより、高い触媒活性が得られると共に、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際における炭素の析出を少なくすることができる。また、低コストで触媒を製造することができ、安価な触媒を構成することができる。
そして、担体の表面にある触媒成分の遷移金属の濃度を高く保つことができるので、充分な触媒活性が得られる。
また、アルカリ土類金属の酸化物によって、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において、触媒成分の遷移金属に炭素が析出して触媒が失活することを抑制することができるので、触媒の寿命を長くすることができる。
本発明の触媒においては、有機物の熱分解反応又は有機物の接触的合成反応用の触媒成分を担体に担持させて成る触媒を、酸化物からなる担体と、この担体の表面上に形成された、遷移金属からなる触媒成分と、担体の表面上に形成された、アルカリ土類金属の酸化物と、表面付近の担体内に形成された、アルカリ土類金属と担体の成分とを含有するバリア層とを含んで構成する。
また、本発明の触媒の製造方法においては、酸化物からなる担体に、触媒成分の遷移金属を含む材料と、アルカリ土類金属を含む材料とを共に添加して、混合する工程と、混合物を700℃〜800℃で熱処理する工程(か焼工程)と、その後、還元雰囲気中で熱処理して還元する工程(還元工程)とを含んで、触媒を製造する。
アルミナとしては、γ−Al2O3が好適である。このγ−Al2O3は、比表面積が200m2/g程度であり、結晶構造が正方晶系(格子定数:a=7.95Å,c=7.79Å)であり、1200℃程度の熱処理でα−Al2O3に相転移する性質を有する。
そして、酸化物からなる担体と、それぞれの金属を含む化合物を溶媒に溶解又は分散させたものとを混合した後に、好ましくは、乾燥や熱処理等により、溶媒を除去する。例えば、100℃で乾燥させて、水溶液の水分を除去する。
例えば、有機廃棄物のガス化反応は、有機物の熱分解反応の1つとして挙げられる。
バイオマス(有機廃棄物)の低温領域におけるガス化反応は、500℃〜700℃で行われる。
本発明の触媒は、遷移金属からなる触媒成分を含むので、この低温領域においてガス化反応を行うことができる。
従って、触媒の寿命を長くすることができる。
このように、触媒成分の遷移金属とアルカリ土類金属とを同時に添加することにより、その後のか焼工程及び還元工程によって、前述した構成を有する本発明の触媒を製造することが可能になる。
即ち、か焼工程により、担体の表面上に、触媒成分の遷移金属の酸化物と、アルカリ土類金属の酸化物とが形成される。そして、アルカリ土類金属の酸化物が、酸化物からなる担体の内部に拡散して、表面付近の担体の内部に、アルカリ土類金属と担体の成分とを含有するバリア層が形成される。
また、その後の還元工程によって、アルカリ土類金属の酸化物よりも遷移金属の酸化物が還元されやすいので、担体の表面に、触媒成分の遷移金属を金属の状態で形成することができる。
例えば、触媒成分の遷移金属を先に添加して、か焼工程を行うと、触媒成分の遷移金属が担体の内部に拡散してしまうので、製造される触媒は、担体の表面の触媒成分の濃度が低くなり、その分触媒活性が低くなる。
例えば、アルカリ土類金属を先に添加して、か焼工程を行うと、アルカリ土類金属の酸化物が担体内に拡散してバリア層を形成するので、触媒成分の遷移金属が担体の内部に拡散することを抑制できる。しかしながら、製造される触媒において、担体の表面には触媒成分の遷移金属だけが形成されるので、ガス化等の有機物の熱分解反応又は有機物の接触的合成反応の際に、タールに起因して触媒成分の遷移金属に炭素が析出して、触媒が失活してしまう。
作製したそれぞれの試料について、n−ヘキサンと窒素の気流下で、0℃から1000℃まで10℃/分の昇温速度として、温度変化による質量の変化を調べた。
測定結果として、各試料の温度による質量の変化を、図20に示す。図20の縦軸は、0℃のときの質量を100%として、質量の変化分を%で示しており、100%で質量が2倍になったことを示している。
Caを5質量%添加した試料では、500℃〜560℃付近と、870℃以上とにおいて、無担持の試料よりも若干質量増加が抑えられている。
Baを5質量%添加した試料では、500℃〜700℃の領域で、無担持の試料よりも質量増加が抑制されている。
Mgを5質量%添加した試料では、500℃〜700℃の領域で、無担持の試料よりも質量増加が抑制されており、Baを5質量%添加した試料よりもさらに抑制されている。
これらの結果から、3種類のアルカリ土類金属元素のうち、Mgを添加した場合に、500℃〜700℃の領域において最も炭素の析出が抑制されることがわかる。
本発明の触媒の一実施の形態の概略構成図を、図1に示す。
この触媒10は、有機物の熱分解反応又は有機物の接触的合成反応用の触媒成分を担体に担持させたものであり、Al2O3からなる担体1と、担体1内の表面付近に形成されたMgAl2O4からなるバリア層2と、担体1の表面上に形成された触媒成分3であるNiと、担体1の表面上に形成されたアルカリ土類金属の酸化物4であるMgOとから構成されている。
MgAl2O4からなるバリア層2は、担体1の成分である酸化アルミニウムと、アルカリ土類金属の酸化物4の成分であるMg(アルカリ土類金属)とを含んでいる。
まず、Al2O3からなる担体1に、Niを含む化合物と、Mgを含む化合物とを、共に添加して、これらをよく混合する。
例えば、担体1としてγ−アルミナ(γ−Al2O3)の粉末を使用し、Niを含む化合物として硝酸ニッケル水溶液を使用し、Mgを含む化合物として硝酸マグネシウム水溶液を使用する。
その後、混合物を例えば100℃で乾燥させることにより、水分を除去する。
これにより、硝酸塩水溶液からの二酸化窒素が除去されて、担体1の表面に、Ni及びMgがそれぞれ酸化物(NiO及びMgO)の状態で付着する。
さらに、担体1の表面に付着したMgOの一部が担体1の内部に拡散し、担体1と反応して、担体1内の表面付近にMgAl2O4からなるバリア層2が形成される。
このようにして、図1に示した構成の触媒10を製造することができる。
また、担体1の表面上に形成されているアルカリ土類金属の酸化物4のMgOにより、このアルカリ土類金属の酸化物4を助触媒として作用させて、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において触媒成分3のNiに炭素が析出し、触媒が失活することを抑制することができる。これにより、触媒10の寿命を長くすることができる。
また、担体1内の表面付近に形成されている、担体1の成分のAlとアルカリ土類金属の酸化物4の成分であるMgとを含む、MgAl2O4からなるバリア層2により、触媒10の製造時や反応時等での熱処理で触媒成分3のNiが担体1の内部に拡散することを抑制することができる。これにより、担体1の表面の触媒成分3の濃度を高く保つことができるため、充分な触媒活性が得られる。
さらに、その後の還元工程によって、MgOよりもNiOの方が還元されやすいので、担体1の表面に、触媒成分3のNiを金属の状態で形成することができる。これにより、担体1の表面の触媒成分3の濃度を高く保つことができるため、充分な触媒活性が得られる触媒10を製造することができる。また、触媒10の担体1の表面に残ったMgOにより、このMgOを助触媒として作用させて、有機物の熱分解反応や有機物の接触的合成反応の際において触媒成分3のNiに炭素が析出することを抑制することができる。
本発明において、担体1とバリア層2と触媒成分3とアルカリ土類金属の酸化物4とは、これらの材料の組み合わせに限定されるものではなく、それぞれの材料として、先に説明した他の材料を使用することも可能である。
以下に説明するようにして、図1に示した構成の触媒10の試料を作製した。
まず、担体1のγ−Al2O3の粉末に、硝酸ニッケル水溶液及び硝酸マグネシウム水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al2O3100質量%に対して、Niが20質量%、Mgが5質量%となるようにした。
次に、混合物を100℃で乾燥させることにより、溶媒を除去して、触媒前駆体を作製した。
次に、触媒前駆体を熱処理炉内に入れて、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、750℃で1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出した。
次に、水素雰囲気とした熱処理炉内で、650℃まで20℃/分で昇温させて、650℃で1時間保持することにより、還元工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出した。
このようにして、触媒10の試料を作製して、実施例1の試料とした。
担体のγ−Al2O3の粉末に、硝酸ニッケル水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al2O3100質量%に対して、Niが20質量%となるようにした。
その後、実施例1と同様にして、か焼工程と還元工程とを行い、触媒の試料を作製して、比較例1の試料とした。
担体のγ−Al2O3の粉末に、硝酸ニッケル水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al2O3100質量%に対して、Niが20質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で、750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出して、硝酸マグネシウム水溶液を添加して、混合した。添加する量は、最初の担体のAl2O3100質量%に対して、Mgが5質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、実施例1と同様にして、還元工程を行い、触媒の試料を作製して、比較例2の試料とした。
担体のγ−Al2O3の粉末に、硝酸マグネシウム水溶液を添加して、これらを混合した。添加する量は、Al2O3100質量%に対して、Mgが5質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出して、硝酸ニッケル水溶液を添加して、混合した。添加する量は、最初の担体のAl2O3100質量%に対して、Niが20質量%となるようにした。
次に、熱処理炉内で、750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持することにより、か焼工程を行った。
その後、実施例1と同様にして、還元工程を行い、触媒の試料を作製して、比較例3の試料とした。
XRD(粉末X線回折)法による構造の比較を行うために、担体のγ−Al2O3に対して、か焼工程と同様の熱処理を行った試料を作製した。
担体のγ−Al2O3の粉末を、熱処理炉内で750℃まで10℃/分で昇温させて、1時間保持した。
その後、室温まで冷却し、熱処理炉から取り出して、比較例4の試料とした。
まず、実施例1及び比較例1〜比較例4の各試料について、XRD(粉末X線回折)法により、測定を行った。
各試料の測定結果を上下に並べて、図2に示す。また、図2の2θ=60度〜73度の部分を拡大して、図3に示す。図2において、金属Niのピーク及びMgOのピークを、それぞれ破線と印で示している。
また、図3に示すように、比較例4のγ−Al2O3と比較して、他の例ではAl2O3のピークが低角側にシフトしている。このことから、これらの例では、複合酸化物であるNiAl2O4やMgAl2O4が形成されたことが推測できる(例えば、K. Y. Koo,J. Hydrogen Energy,33,(2008),2036や、Z. Xua,J. Catal.,A 210,(2001),45等の文献を参照)。
実施例1及び比較例1〜比較例3の各試料について、TEM(透過型電子顕微鏡)により状態を観察した。各試料のTEM像を、図4A〜図4Dに示す。図4Aは比較例1のNi/Al2O3であり、図4Bは比較例2のMg/Ni/Al2O3であり、図4Cは比較例3のNi/Mg/Al2O3であり、図4Dは実施例1のNi−Mg/Al2O3である。
その結果、図4Aの比較例1のNi/Al2O3は8nm〜10nm、図4Bの比較例2のMg/Ni/Al2O3は8nm〜10nm、図4Cの比較例3のNi/Mg/Al2O3は10nm〜12nm、図4Dの実施例1のNi−Mg/Al2O3は8nm〜11nmであった。
比較例3のNi/Mg/Al2O3は、他の3つの試料よりも、凝集が進んでいた。また、金属粒子の粒径の結果は、XRDにより得られたNi結晶子の結果と、傾向が一致していた。
Niの分散性は、Niを担持させたときの担体の表面の状態によって異なると考えられる。即ち、比較例3の場合、Niを添加したときの担体の表面の状態が、他の試料とは異なることが推測される。
次に、実施例1及び比較例1〜比較例4の各試料について、細孔特性を調べた。具体的には、BET法による比表面積SBETと、メソ孔容積Vmesoと、ミクロ孔容積Vmicroとを測定した。
測定結果を、表2に示す。
また、比較例1のNi/Al2O3と実施例1のNi−Mg/Al2O3は、比較例2のMg/Ni/Al2O3と比較例3のNi/Mg/Al2O3よりも、やや値が大きくなっている。このことから、担持されるNiやMgのうち、担体であるγ−Al2O3の細孔の内部に担持される割合が少なくなり、担体の表面に担持される割合が増えていると推測される。
実施例1及び比較例1〜比較例3の各試料について、EDS(エネルギー分散型X線分光法)による元素組成分析、XPS(X線光電子分光分析法)による各元素(Ni,Al,O,Mg)の電子状態の測定及び元素組成分析を、それぞれ行った。
各試料のXPSによる各元素の電子状態の測定結果を、図5〜図8に示す。図5はNi、図6はAl、図7はO、図8はMgの、各測定結果である。なお、図8では、Mgが入っていない比較例1は示していない。
また、EDSによる元素組成分析の測定結果を表3に示し、XPSによる元素組成分析の結果を表4に示す。表3は触媒全体の組成を示しており、表4は担体の表面付近の組成を示している。
表3では、各例の組成に大きな差は見られない。Niの濃度に差がないので、担体に担持されたNiの濃度がほぼ同じ程度であることがわかる。
表4では、各例とも、表3の全体の組成と比較して、Ni及びAlが減って、O及びMgが増えている。また、比較例1のNi/Al2O3と比較例2のMg/Ni/Al2O3とが、表面のNiの量が他の例よりも少なくなっている。これらのことから、表面ではMgがMgOの状態で存在し、比較例1及び比較例2ではNiが表面から担体の内部に拡散していることが推測される。
図9Aに示すように、か焼工程において、二酸化窒素が抜けて、NiがNiOの状態で担体のAl2O3の表面に付着し、この状態から図中矢印で示すようにNiが拡散していく。
そして、図9Bに示すように、担体のAl2O3の内部の表面付近に、NiAl2O4層が形成される。
さらに、還元工程では、図9Cに示すように、NiAl2O4層が還元されて、担体のAl2O3の表面に金属Niが析出する。
この場合、担体の表面の金属Niの濃度は低くなるので、その分触媒活性が低くなる。
図10Aに示すように、図9A及び図9Bに示したと同様に変化して、担体のAl2O3の内部の表面付近に、NiAl2O4層が形成される。
次に、Mgを添加してか焼工程を行うことにより、図10Bに示すように、MgがMgOの状態で担体の表面に付着する。
さらに、還元工程では、図10Cに示すように、NiAl2O4層が還元されて、担体のAl2O3の表面に金属Niが析出するが、Niの表面がMgOで被覆される。
この場合、MgOによってNiが被覆されるので、比較例1の場合よりもさらに表面の金属Niの濃度が低下する。
図11Aに示すように、か焼工程において、二酸化窒素が抜けて、MgがMgOの状態で担体のAl2O3の表面に付着し、この状態から図中矢印で示すようにMgが拡散していく。
そして、図11Bに示すように、担体のAl2O3の内部の表面付近に、MgAl2O4層(バリア層)が形成される。
次に、Niを添加してか焼工程を行うことにより、図11Cに示すように、NiがNiOの状態で担体の表面に付着する。
さらに、還元工程では、図11Dに示すように、担体の表面のNiOが還元されて、金属Niとなる。
この場合、担体の内部にNiが拡散していないので、表面の金属Niの濃度が高くなり、触媒活性が高くなる。
図12Aに示すように、か焼工程において、NiがNiOの状態で担体のAl2O3の表面に付着し、MgがMgOの状態で担体のAl2O3の表面に付着する。この状態から、図中矢印で示すようにMgが拡散していくが、Niは拡散しない。これは、Mgの方がNiよりも担体内に拡散しやすく、Mgが拡散することによりNiの拡散が抑制されるためである。
そして、図12Bに示すように、担体のAl2O3の内部の表面付近に、MgAl2O4層(バリア層)が形成される。
さらに、還元工程では、図12Cに示すように、担体の表面のNiOが還元されて、金属Niとなる。担体の表面のMgOは還元されないでMgOのままである。これはNiOの方がMgOよりも還元されやすいので、MgOの還元が抑制されるためである。
この場合、担体の内部にNiが拡散していないので、表面の金属Niの濃度が高くなり、触媒活性が高くなる。また、担体の表面にMgOが形成される。
なお、実際に、NiO+Al2O3→NiAl2O4、及び、MgO+Al2O3→MgAl2O4の各反応について、ギブス自由エネルギーの温度による変化を、計算によって求めた。その結果、か焼工程の温度領域(室温〜750℃)において、NiAl2O4よりもMgAl2O4の方が、ギブス自由エネルギーが大きい負の値を示した。このことから、NiOとMgOがAl2O3上に共に存在するとき、MgAl2O4の生成が、より自発的に起こりやすいと言える。
実施例1及び比較例1の触媒の試料を使用して、触媒活性の比較を行った。
まず、各試料を20mg採取して、キャリアガスをHeガスとして、水素流通下で、650℃まで10℃/分で昇温させた後に、650℃で30時間保持させた。
その後、100℃まで冷却して、100℃の状態で保持して安定化させた。
次に、メタネーション反応を行った。具体的には、体積比がHe:H2:CO=18:24:8で合計50mlとなるようにした混合ガス雰囲気中で、100℃から700℃まで10℃/分で昇温させた。
このときの反応は、以下の化学反応式で表わされる。
CO+3H2→CH4+H2O
即ち、一酸化炭素と水素との反応により、メタンと水が発生する。
図13より、実施例1のNi−Mg/Al2O3は、比較例1のNi/Al2O3と比較して、同程度のメタンが発生しており、同程度の触媒活性を示している。
なお、表4より実施例1と比較例1とでは表面のNi濃度に違いがあったが、触媒活性が同程度であることから、表面のNi濃度と触媒活性とには相関が得られていないことがわかる。
次に、実施例1及び比較例1〜比較例3の触媒の各試料を使用して、触媒への炭素の析出量を比較した。なお、触媒へ炭素を析出させる原因物質である、タールのモデル物質として、n−ヘキサンを用いた。
また、n−ヘキサンを入れた容器を恒温槽内に入れて、窒素ガスボンベからの配管と弁を介して接続すると共に、リボンヒーターを通してTG装置に窒素ガスとn−ヘキサンガスとが供給されるように配管を接続した。
そして、恒温槽を33℃に保ち、n−ヘキサンが蒸気圧200mmHgとなるようにして、窒素ガスとn−ヘキサン蒸気とをTG装置に供給すると共に、カーテンガスとしてHeガスをTG装置に供給した。
この状態で、TG装置の加熱部によって、室温から10℃/分で昇温させながら、TG装置によって試料の質量を測定した。
図14より、実施例1のNi−Mg/Al2O3は、比較例1のNi/Al2O3と比較して、質量変化が小さくなっており、4つの試料のうちで、最も質量変化が小さくなっている。即ち、炭素の析出量が最も抑制されていると考えられる。また、550℃までは質量増加が起こっておらず、優れた炭素析出抑制効果を示した。
一方、比較例3のNi/Mg/Al2O3は、質量変化が大きくなっており、炭素の析出量が多くなっていると考えられる。
比較例2のMg/Ni/Al2O3は、比較例1のNi/Al2O3と比較して、質量変化がやや小さくなっている。
図15Cに示すように、比較例3のNi/Mg/Al2O3は、カーボンナノファイバーが形成されている。他の3つの試料では、カーボンナノファイバーの形成がほとんど見られない。
図16Cに示すように、比較例3のNi/Mg/Al2O3の試料では、ヘリングボーン構造のカーボンナノファイバーが形成されている。比較例1のNi/Al2O3及び比較例2のMg/Ni/Al2O3の各試料では、シェル構造が形成されている。これに対して、実施例1のNi−Mg/Al2O3の試料では、図14の質量変化において500℃では全く炭素析出が起こっていなかったのと同様に、TEM像においてもシェル構造が観察されず、炭素析出が起きていないと考えられる。
比較例2のMg/Ni/Al2O3の場合を、図17A〜図17Bに示す。
図17Aに示すように、担体のAl2O3の表面のNiのうち、多くのNiがMgOで覆われている。この状態にn−ヘキサン(C6H14)の蒸気を加えると、図17Bに示すように、MgOに覆われていなかった金属Niの周囲だけにシェル構造が形成される。MgOがNiを被覆しているので、炭素の析出が少ない。
図18Aに示すように、担体のAl2O3の表面に、金属Niが露出している。この状態にn−ヘキサン(C6H14)の蒸気を加えると、図18Bに示すように、担体の表面にカーボンナノファイバーCNTが形成される。
図19Aに示すように、担体のAl2O3の表面に、金属NiとMgOとが付着している。この状態にn−ヘキサン(C6H14)の蒸気を加えると、図19Bに示すように、金属Niの周囲にシェル構造が形成されるが、MgOの存在によりシェル構造の形成が抑制される。
炭素析出の程度は、触媒の表面のNi濃度に依存するが、実施例1のNi−Mg/Al2O3は、表面のNi濃度が高いにもかかわらず、炭素析出が抑制されていた。この実施例1のNi−Mg/Al2O3では、MgOが形成されていることが確認でき、このMgOが助触媒として作用し、炭素析出が抑制されたと考えられる。
Claims (6)
- COメタネーション反応用の触媒成分を担体に担持させて成る触媒であって、
酸化物からなる前記担体と、
前記担体の表面上に付着形成された、遷移金属である前記触媒成分と、
前記担体の表面上に付着形成された、アルカリ土類金属の酸化物と、
表面付近の前記担体内に形成された、前記アルカリ土類金属と前記担体の成分とを含有するバリア層とを含み、
前記遷移金属がNi,Fe,Coの1種以上である
触媒。 - 前記触媒成分がニッケルであり、前記アルカリ土類金属がマグネシウムである請求項1に記載の触媒。
- 前記担体が、アルミナである請求項1又は請求項2に記載の触媒。
- COメタネーション反応用の触媒成分を担体に担持させて成る触媒を製造する方法であって、
酸化物からなる前記担体に、前記触媒成分の遷移金属を含む材料と、アルカリ土類金属を含む材料とを共に添加して、混合する工程と、
混合物を700℃〜800℃で熱処理して、前記遷移金属の酸化物及び前記アルカリ土類金属の酸化物を、前記担体の表面上に付着形成させる工程と、
その後、還元雰囲気中で熱処理して、前記遷移金属の酸化物を前記遷移金属に還元する工程とを含み、
前記遷移金属がNi,Fe,Coの1種以上である
触媒の製造方法。 - 前記触媒成分の遷移金属としてニッケルを使用し、前記アルカリ土類金属としてマグネシウムを使用する請求項4に記載の触媒の製造方法。
- 前記担体としてアルミナを使用する請求項4又は請求項5に記載の触媒の製造方法。
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