JP5360922B2 - 新規虚血マーカー及びこれを用いた虚血状態の検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、哺乳動物組織における虚血状態を効果的に検出可能なマーカーに関し、より詳しくは、虚血−再灌流時に特異的に放出され、特異的なマーカーとして利用可能なタンパク質及びこれを用いた虚血状態の検出方法に関する。
虚血−再灌流(Ischemic hypoxia and reoxygenation;IH/R)は、例えば心筋梗塞や心臓バイパス手術、心臓移植などで発生する心臓の主要な疾患状態である。心臓冠動脈の虚血−再灌流が発生した場合、心臓は肥大したり、虚血周囲で細胞死が観察されたり、また、心筋の繊維化が見られる。これらの現象はリモデリングと呼ばれており、これは虚血にさらされた心筋細胞ばかりでなく虚血周囲の組織においてもよく観察されている。幾つかのケースでは、虚血にさらされた心筋細胞に対する隣接する血管からの血管新生が観察されている。これらのことは、虚血−再灌流時に何らかのシグナルを伝達するための様々な因子が放出されていることを示唆している(非特許文献1,2)。
実際、心臓は全身に血液を送るポンプの役割ばかりでなく、ホルモン性因子を放出する内分泌系の組織として働いていることもよく知られている。一酸化窒素やプロスタグランジン、アデノシンといった低分子物質が心臓から放出され、心臓血管系の制御に関与している。これらの低分子に加え、骨形成因子(Bone morphogenetic protein;BMP)の刺激により心筋細胞から放出されるトランスフォーミング成長因子−β(Transforming growth factor-β)が線維芽細胞から心筋繊維細胞への転換を促している。一方、心臓虚血時には、炎症性サイトカインもまた心臓から放出されている(非特許文献6−8)。腫瘍壊死因子は虚血心筋において産生され、リアナジン受容体阻害を介して心臓の収縮抑制に関与している。炎症性サイトカインであるインターロイキン1β(IL−1β)やインターロイキン6(IL−6)も虚血後の心臓から放出されている。IL−1βは心筋の直接的な阻害に加え、カルシウムを制御する遺伝子のダウンレギュレーションを介して心臓の収縮を抑制している。IL−6は、L型タイプのカルシウムチャネルを阻害することによってカルシウムの細胞内流入や心臓収縮の抑制に働いている。線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor;FGF)やヘパリン結合性成長因子(Heparin-binding growth factor;HBGF)は心筋虚血時に放出され防護因子として働くことも報告されている(非特許文献9−15)。この様に虚血−再灌流時には様々なシグナル伝達機構が機能を果たしていることが明らかになってきており、これらのペプチド性因子を心臓虚血を捕捉するためのマーカーとして利用する動きも広がってきている。
ペプチド性の虚血マーカー、特に心臓虚血のマーカーとしては、これまでにPEP−19,IgA結合性アルカリ性ホスファターゼ、心房性/脳性ナトリウム利尿ペプチド、虚血変成アルブミン、酸素調節タンパク質、トロポニン、カルシトニン、ウロテンシン、ミオグロビン、ミオシン、アネキシン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、リポタンパク質やクレアチンキナーゼ、エノラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼなどの酵素などが開示されている(特許文献1−18)。しかしながら、従来の虚血マーカーは、虚血状態にありながらも簡便な検出可能な程度には十分に放出されないものや、逆に虚血状態とは無関係な要因により放出されるケースなどがあり、更に従来のマーカーでは検出が困難な虚血の症例も見出されている。一方で、虚血が複数の複雑な反応の集積であることが明らかにされ、単独のマーカーだけではなく複数のマーカーを組み合わせることによって虚血状態の判定がなされてきたというこれまでの経緯からも、虚血−再灌流イベントと生理的・機能的に結びついた、特異性や再現性の高い新規な虚血マーカーの開発が待たれていた。
特開2007−056008 m−カルパインおよび/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解を阻害することを特徴とする虚血性脳疾患の治療方法 特開2006−132946 IgA結合性アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法およびそれに用いるキット 特開2004−037455 マーカーの組み合わせを用いた心臓疾患症例の予後判定 特開2003−270250 血液中の心不全マーカー定量方法 特表2007−505726 心臓由来が疑われる胸部痛を有する患者のリスク階層化のための装置および方法 特表2007−510146 マーカーの組合せによる急性心筋虚血性疾患の診断 特表2006−507510 組織低酸素症の体液マーカー 特表2006−526140 鑑別診断のためのマーカーおよびその使用方法 特表2005−522669 卒中および脳損傷の診断マーカーおよびその使用方法 特表2004−520598 急性冠状動脈症候群の診断マーカーおよびその使用方法 特表2004−529351 急性心筋梗塞および他の臨床的状態の診断への改良 特表2003−532685 アテローム性動脈硬化症の治療および/または予防のためのIL−18阻害剤の用途 特表2002−538463 脳卒中を診断しそして区別するための方法 特表平10−504097 臓器拒絶反応のマーカー 特表平10−511185 胸痛の発症初期に診断し鑑別するための方法ならびに装置 再公表04−065961 酸化度の定量法 特許第3860605号 補体活性化をブロックするキメラタンパク質 特許第3666866号 神経保護治療をモニターする方法
Sutton M.G. & Sharpe N. 2000. Circulation 101:2981-2988. Eefting F. et al. 2004. Cardiovasc.Res. 61:414-426. Sabbah H.N. 2000. Cardiovasc.Res. 45:704-712. Kang P.M. & Izumo S. 2000. Circ.Res. 86:1107-1113. Lijnen P.Petrov V. 2000. J.Mol.Cell Cardiol. 32:865-879. Fragogiannis N.G. et al. 2002. Cardiovasc.Res. 53:31-47. Thaik C.M. et al. 1995. J.Clin.Invest. 96:1093-1099. Neumann F.J. et al. 1995. Circulation 92:748-755. Li Y. et al. 2003. Circulation 107:2499-2506. Jayasankar V. et al. 2003. Circulation 108 Suppl. 1:II230-236. Jiang Z.S. et al. 2002. Am.J.Physiol.Heart.Circ.Physiol. 282:H1071-1080. House S.L. et al. 2003. Circulation 108:3140-3148. Tanaka N. et al. 2002. Biochem.Biophys.Res.Commun. 297:375-381. Detillieux K.A. et al. 2003. Cardiovasc.Res. 57:8-19. Zisch et al. 2003. Cardiovasc.Pathol. 12:295-310. Mizukami Y. et al. 2000. J.Biol.Chem. 275:19921-19927.
上記の現状に鑑み、本発明は、虚血−再灌流時に虚血組織から特異的に放出され、虚血状態を感度良く識別可能なマーカータンパク質及びこれを用いた虚血状態の検出方法を提供することを目的とする。
前記課題の解決のため、特に、これまでに知られていない新規な虚血マーカーを見出すために、本発明者は、細胞・組織がある状態に置かれたときに特異的に発現するタンパク質を網羅的に解析するというプロテオーム解析の手法に着目した。すなわち培養心筋細胞の系を用いてここに虚血−再灌流刺激を与え、培養液中に放出されるタンパク質を網羅的に解析した。具体的には、虚血刺激なしで培養液中に放出されるタンパク質と虚血刺激により放出されるタンパク質のプロファイルを比較し(Subtractive Proteomics)、虚血−再灌流刺激によって特異的に放出されるタンパク質を同定して、刺激時に発現が亢進(Up-regulated)及び減少(Down-regulated)するマーカー候補となるタンパク質群を明らかにし、このうち発現が大幅に亢進するタンパク質数種については人工心肺による心臓手術を受ける患者さん(一時的に心臓本体は虚血状態になる)の血液中における発現の検証を行って、これらのマーカー候補が確かに虚血−再灌流時に特異的に発現亢進していることを確証し、本発明を完成させた。
本発明は、哺乳動物細胞における虚血状態を検出する方法であって、前記哺乳動物細胞から採取した試料中に含まれる下記の虚血マーカー、
Arpc3,Pfn2,Sgce,Actr3,H3f3b,Hist1h2bm,Hist1h2bp,Hist1h3a,Hist2h2aa1,Postn,Fbln5,Col18a1,Lamb1−1,Lamc1,Pros1,Col6a2,Ctnnb1,Dcbld2,Itga3,Copb2,Copa,Cops3,Itm2b,Aifm1,Trap1,Anxa4,Anxa6,Pla2g7,Aspn,Lox,Crk,Fbln1,Gpr52,Ppp2ca,Ppp2r2b,Lphn3,Ptprf,Rbbp9,Prrc1,Creg1,Npm1,Rps4x,Plrg1,Rnase4,Ugp2,Yars,Galnt10,Nudt21,Ube2l3,Ufd1l,Serpine1,Uba52,Ube2v2,Psma2,Psmb1,Psmb4,Psmb6,Psmb7,Try10,Cct4,Fkbp4,Bmp1,Hexb,Glb1,Aldh3a1,Man2b2,Ngly1,Fuca1,Oxct1,Nit2,Loxl1,Man1c1,Crabp2,Ctbs,Gsta4,Gstm2,Hdhd2,Sgsh,Hyi,Vasn,Tfrc,Lcn2,Ap1m1,C1qtnf6,Vps26b,Sec24d,Slc44a2,Cd14,Anpep(CD13),Fkbp9,Alcam,C3,TnC,Nudc,Sema4b,Agrin,Plxnb2,1110007L 15Rik,2700085E 05Rik,3110003A 17Rik,4931406C 07Rik,6530401N 04Rik,EG54509
のうち少なくとも1つより選択されるタンパク質の発現レベルを測定することを特徴とする、虚血状態の検出方法を提供する。
なかでも、本発明の態様は、哺乳動物組織における虚血状態を検出する方法であって、前記哺乳動物から採取した試料中に含まれるテネイシンC(TnC)タンパク質の発現レベルを測定することを特徴とする、虚血状態の検出方法を提供する。
本発明は、試料がヒト血清である、前記態様に記載の虚血状態検出方法を提供する。
本発明は、マーカータンパク質の発現レベルの測定が、抗原抗体反応を用いた測定である、前記態様のうちいずれか1つに記載の虚血状態検出方法を提供する。
本発明は、マーカータンパク質の発現レベルの測定が、予め測定された非虚血状態の試料中に含まれる前記マーカータンパク質の発現レベルとの比較工程を含む、前記態様に記載の虚血状態検出方法を提供する。
本発明は、虚血が心臓虚血である、前記態様のうちいずれか1つに記載の虚血状態検出方法を提供する。
本発明の提供する虚血マーカー並びに同虚血マーカーを利用した虚血状態の検出方法を利用することにより、組織の虚血状態、特に心臓組織の虚血−再灌流状態を迅速かつ効果的に検出することが可能となる。また本発明に係るマーカーはその発現亢進または減少を指標とした虚血治療のための創薬のターゲットとしても利用可能であり、更にこれらマーカー自体も機能的に虚血からの回復に関連したものは虚血治療薬となりうるなど、今後新たなマーカーや治療薬を開発するための優れた基礎を提供するものである。
培養心筋細胞において、虚血−再灌流刺激によって特異的に発現するタンパク質群を、その機能により分類・模式化して示す。 本発明における、虚血−再灌流刺激特異的に発現するタンパク質群の網羅的な解析手法を模式化して示す。 虚血−再灌流刺激を与えた培養心筋細胞における、AIF、BMP−1(発現亢進)、HSP90(発現変化無し)、及びα−エノラーゼ(発現減少)の刺激前後における発現量の経時変化を比較して示す。 人工心肺を用いた開胸手術時における血液中の各マーカータンパク質の発現量の経時変化を、手術前(BS)、手術中(DS)及び手術後(0,3,24,48,72時間後)のそれぞれの時点で比較して示す。
本発明は、虚血後の再潅流時に、特異的かつ再現性よく放出される酵素等のタンパク質をマーカーとして、これを検出することを提案するものである。これらのマーカー物質は、例えば、ヒトを含む哺乳動物の心筋梗塞、脳梗塞、心臓手術、外傷時の止血等の後の再潅流時に、これらの虚血状態におかれた細胞またはその周辺細胞から放出されるものであると考えられる。そこで、本発明の態様は、哺乳動物細胞における虚血状態を検出する方法であって、前記哺乳動物細胞から採取した試料中に含まれる下記の虚血マーカー(略称で示す;括弧内が正式名)、
Arpc3(actin related protein 2/3 complex,subunit 3),Pfn2(profilin 2),Sgce(sarcoglycan, epsilon),Actr3(ARP3 actin-related protein 3 homolog),H3f3b(H3 histone, family 3B),Hist1h2bm(histone cluster 1,H2bm),Hist1h2bp(histone cluster 1,H2bp),Hist1h3a(histone cluster 1,H3a),Hist2h2aa1(histone cluster 2,H2aa1),Postn(periostin,osteoblast specific factor),Fbln5(fibulin 5),Col18a1(procollagen,type XVIII,alpha 1),Lamb1−1(laminin B1 subunit 1),Lamc1(laminin,gamma 1),Pros1(protein S alpha),Col6a2(procollagen,typeVI,alpha 2),Ctnnb1(catenin[cadherin associated protein],beta 1),Dcbld2(discoidin,CUB and LCCL domain containing 2),Itga3(integrin alpha 3),Copb2(coatomer protein complex,subunit beta 2[beta prime]),Copa(coatomer protein complex subunit alpha),Cops3(COP9[constitutive photomorphogenic]homolog,subunit 3),Itm2b(integral membrane protein 2B),Aifm1(apoptosis-inducing factor,mitochondrion-associated 1),Trap1(TNF receptor- associated protein 1),Anxa4(annexin A4),Anxa6(annexin A6),Pla2g7(phospholipase A2,group VII[platelet-activating factor acetylhydrolase,plasma]),Aspn(asporin),Lox(lysyl oxidase),Crk(v-crk sarcoma virus CT10 oncogene homolog[avian]),Fbln1(fibulin 1),Gpr52(G protein-coupled receptor 52),Ppp2ca(protein phosphatase 2[formerly 2A],catalytic subunit,alpha isoform),Ppp2r2b(protein phosphatase 2[formerly 2A],regulatory subunit B[PR52],beta isoform),Lphn3(latrophilin 3),Ptprf(protein tyrosine phosphatase,receptor type,F),Rbbp9(retinoblastoma binding protein 9),Prrc1(proline-rich coiled-coil 1),Creg1(cellular repressor of E1A stimulated genes 1),Npm1(nucleophosmin 1),Rps4x(ribosomal protein S4,X-linked),Plrg1(pleiotropic regulator 1,PRL1 homolog[Arabidopsis]),Rnase4(ribonuclease,RNase A family 4),Ugp2(UDP-glucose pyrophosphorylase 2),Yars(tyrosyl-tRNA synthetase),Galnt10(UDP-N-acetyl-alpha-Dgalactosamine:polypeptide N-acetylgalactosaminyl transferase 10),Nudt21(nudix[nucleoside diphosphate linked moiety X]-type motif 21),Ube2l3(ubiquitin-conjugating enzyme E2L 3),Ufd1l(ubiquitin fusion degradation 1 like),Serpine1(serine[or cysteine]peptidase inhibitor,clade E,member 1[plasminogen activator inhibitor-1]),Uba52(ubiquitin A-52 residue ribosomal protein fusion product 1),Ube2v2(ubiquitin-conjugating enzyme E2 variant 2),Psma2(proteasome[prosome,macropain]subunit,alpha type 2),Psmb1(proteasome[prosome,macropain]Subunit,beta type 1),Psmb4(proteasome[prosome,macropain]Subunit,beta type 4),Psmb6(proteasome[prosome,macropain]Subunit,beta type 6),Psmb7(proteasome[prosome,macropain]Subunit,beta type 7),Try10(trypsin 10),Cct4(chaperonin subunit 4[delta]),Fkbp4(FK506 binding protein 4),Bmp1(bone morphogenetic protein 1),Hexb(hexosaminidase B),Glb1(Galactosidase,beta 1),Aldh3a1(aldehyde dehydrogenase family 3,subfamily A1),Man2b2(mannosidase 2,alpha B2),Ngly1(N-glycanase 1),Fuca1(fucosidase,alpha-L-1,tissue),Oxct1(3-oxoacid CoA transferase 1),Nit2(nitrilase family,member 2),Loxl1(lysyl oxidase-like 1),Man1c1(mannosidase,alpha,class 1C,member 1),Crabp2(cellular retinoic acid binding protein II),Ctbs(chitobiase,di-N-acetyl-),Gsta4(glutathione S-transferase,alpha 4),Gstm2(glutathione S-transferase,mu 2),Hdhd2(haloacid dehalogenase-like hydrolase domain containing 2),Sgsh(N-sulfoglucosamine sulfohydrolase[sulfamidase]),Hyi(hydroxypyruvate isomerase homolog[E.coli]),Vasn(vasorin),Tfrc(transferrin receptor),Lcn2(lipocalin 2),Ap1m1(adaptor-related protein complex AP-1,mu subunit 1),C1qtnf6(C1q and tumor necrosis factor related protein 6),Vps26b(vacuolar protein sorting 26 homolog B[yeast]),Sec24d(SEC24 related gene family,member D[S.cerevisiae]),Slc44a2(solute carrier family 44,member 2),Cd14(CD14 antigen),Anpep(alanyl[membrane]aminopeptidase;CD13),Fkbp9(FK506 binding protein 9),Alcam(activated leukocyte cell adhesion molecule),C3(complement component 3),TnC(tenascin C),Nudc(nuclear distribution gene C homolog[Aspergillus]),Sema4b(sema domain,immunoglobulin domain[Ig],transmembrane domain[TM]and short cytoplasmic domain,[semaphorin]4B),Agrin,Plxnb2(plexin B2),1110007L 15Rik(RIKEN cDNA 1110007L15 gene),2700085E 05Rik(RIKEN cDNA 2700085E05 gene),3110003A 17Rik(RIKEN cDNA 3110003A17 gene),4931406C 07Rik(RIKEN cDNA 4931406C07 gene),6530401N 04Rik(RIKEN cDNA 6530401N04 gene),EG54509(predicted gene,EG545091)
のうち少なくとも1つより選択されるタンパク質の発現レベル、好ましくはアポトーシス誘導因子(AIF)の、骨形成タンパク質−1(BMP−1)、CD13、CD14、テネイシンC(TnC)、アグリンのうち少なくとも1つ、中でもTnCからなる虚血マーカータンパク質のタンパク質量を測定することを特徴とする、虚血状態の検出方法を提供する。組織が虚血−再灌流刺激を受けた際、それに対する応答としてこれまでに知られていなかった種々のタンパク質が細胞外・組織外に放出されることが、本発明者による培養心筋細胞での虚血/非虚血時発現タンパク質の網羅的解析から明らかとなった(図1)。これらのタンパク質を既存のデータベースと比較したところ、これまでに虚血マーカーとして報告のあるタンパク質とは異なり、アポトーシス、炎症反応、血管新生、細胞増殖、細胞接着や神経細胞再生などに関連する様々な機能を持ったタンパク質が特異的に発現していることが明らかとなった。虚血と結びついたそれぞれの反応において特異的に組織外に放出されるこれらのタンパク質の発現レベル、好ましくはこれらのタンパク質の試料中に含まれる量を測定することにより、虚血マーカーとして利用可能である。上記のマーカーは、これまでに機能が明らかにされてきたものの虚血との関連については明らかではないが、虚血後の再潅流時に放出されるものである。哺乳動物組織から採集される試料の種類、その採集方法、マーカータンパク質の検出方法などは当該分野で利用されるもののうちから適宜選択すればよいが、一般に再灌流後の血液を試料として採取するのが好ましい。また検出方法は何ら本発明を限定するものではないが、例えばヒト血液試料を採取し、血清中に含まれるタンパク質に対して上記マーカーに対する特異的抗体を用いたイムノアッセイ(簡便には蛍光イムノアッセイなど)やウェスタンブロッティングを行い、マーカータンパク質の存在を検出するといった方法があげられる。
上記マーカーのうち、従来アポトーシス誘導に係るタンパク質として知られていたAIFは、新規な虚血マーカーとして特に適している。ここでいうAIF(またはProgrammed cell death 8)には、AIFそのものの他、そのプリカーサーまたはアイソフォームといった、AIFとアミノ酸配列の相同性が高いタンパク質、好ましくは80%以上の相同性を持つタンパク質や、また80%以下の相同性であってもアポトーシス誘導という機能的な相同性を持ちかつ50%程度の相同性を持つ哺乳動物のタンパク質群、更に好ましくはヒトでその存在が確認されているタンパク質群を含んでも良い。
上記マーカーのうち、従来骨細胞増殖に係るタンパク質として知られていたBMP−1は、新規な虚血マーカーとして特に適している。ここでいうBMP−1(またはProcollagen C proteinase)には、そのプリカーサーまたはアイソフォーム、BMP、BMP1−5、BMP1−6、Tolloid−likeタンパク質、そのプリカーサーまたはアイソフォーム、Tolloid−like1、Tolloid−like2などといった、BMP−1とアミノ酸配列の相同性が高いタンパク質、好ましくは80%以上の相同性を持つタンパク質や、また80%以下の相同性であっても骨細胞増殖という機能的な相同性を持ちかつ50%程度の相同性を持つ哺乳動物のタンパク質群、更に好ましくはヒトでその存在が確認されているタンパク質群を含んでも良い。従来技術欄でも述べた通り、BMP−1は心筋細胞に対するホルモン様作用が知られていたが、虚血時に虚血組織から放出されるという現象はまったく知られておらず、虚血マーカーとしてのBMP−1は新規なマーカーである。
上記マーカーのうち、血管新生に係るタンパク質として知られていたCD13は、新規な虚血マーカーとして特に適している。ここでいうCD13(またはAmino peptidase N)には、そのプリカーサーまたはアイソフォーム、Amino peptidase A、Laeverin、TRH−DE(Thyrotropin-releasing hormone degrading enzyme)などといった、CD13とアミノ酸配列の相同性が高いタンパク質、好ましくは80%以上の相同性を持つタンパク質や、また80%以下の相同性であっても血管新生という機能的な相同性を持ちかつ50%程度の相同性を持つ哺乳動物のタンパク質群、更に好ましくはヒトでその存在が確認されているタンパク質群を含んでも良い。
上記マーカーのうち、炎症反応に係るタンパク質として知られていたCD14は、新規な虚血マーカーとして特に適している。ここでいうCD14には、そのプリカーサーまたはアイソフォームなどといった、CD14とアミノ酸配列の相同性が高いタンパク質、好ましくは80%以上の相同性を持つタンパク質や、また80%以下の相同性であっても炎症反応という機能的な相同性を持ちかつ50%程度の相同性を持つ哺乳動物のタンパク質群、更に好ましくはヒトでその存在が確認されているタンパク質群を含んでも良い。
上記マーカーのうち、細胞増殖に係るタンパク質として知られていたテネイシンCは、新規な虚血マーカーとして特に適している。ここでいうテネイシンCには、テネイシン、そのプリカーサー、サイトタクチン(Cytotactin)及びそのプリカーサー、テネイシンXB、テネイシンX及びそのプリカーサー、テネイシンR、テネイシンNなど、テネイシンCとアミノ酸配列の相同性が高いタンパク質、好ましくは80%以上の相同性を持つタンパク質や、また80%以下の相同性であっても細胞増殖という機能的な相同性を持ちかつ50%程度の相同性を持つ哺乳動物のタンパク質群、更に好ましくはヒトでその存在が確認されているタンパク質群を含んでも良い。
上記マーカーのうち、神経細胞再生に係るタンパク質として知られていたアグリンは、新規な虚血マーカーとして特に適している。ここでいうアグリンとは、アグリンのプリカーサーまたはアイソフォーム、Perlecan(Heparan sulfate proteoglycan)1、2、またはそのアイソフォームなど、アグリンとアミノ酸配列の相同性が高いタンパク質、好ましくは80%以上の相同性を持つタンパク質や、また80%以下の相同性であっても細胞増殖という機能的な相同性を持ちかつ50%程度の相同性を持つ哺乳動物のタンパク質群、更に好ましくはヒトでその存在が確認されているタンパク質群を含んでも良い。
本発明の虚血状態検出方法を適用する試料としては、虚血が疑われる組織から放出されるマーカーを含む体液であればどの様なものでも良く、その種類が本発明を限定するものではないが、採集の容易さや既存のマーカーとの比較に供することの容易性の観点、及び疾患の早期発見のため臨床現場で用いられることが想定されることから、ヒト血液、特に血球成分を予め除いたヒト血清が好ましい。試料の採集方法や保存方法などについては、タンパク質である上記マーカーが分解されない条件を満たせば、臨床の現場等で用いられている手法を適宜応用すれば良く、これらが本発明を限定するものではない。
本発明におけるマーカータンパク質の発現レベルの測定手法に関しては、タンパク質の定性/定量的測定方法として用いられている手法を適宜応用すれば良く、本発明を限定するものではないが、プロトコルが確立され、また検出感度にすぐれた抗原抗体反応、すなわち前記マーカータンパク質に対する特異的抗体を用いた検出方法が好適である。前記の特異的抗体を1次抗体として例えばメンブレン転写やフローインジェクション法を用いて試料中のタンパク質に反応させ、これの検出系としては1次抗体を直接標識する方法の他、2次抗体や抗体と反応する試薬を用いた発光、発色による検出などを適宜利用すればよい。
本発明におけるマーカータンパク質の発現レベルを解析するに際し、より正確な虚血状態の検出のためには非虚血状態の試料、好適には非虚血状態のヒト血清中に含まれる前記マーカータンパク質の発現レベルを予め測定しておき、これと虚血が疑われる状態の試料中での同マーカータンパク質の発現レベルとを比較することが有効である。この際には、例えば多人数より採取した試料中における非虚血状態のヒトマーカー発現量を測定しこの平均値を標準としておき、これに対して虚血が疑われる試料中のマーカータンパク量を比較等すれば良い。比較工程においては、例えばマーカーの発現量を示す発色・発光を目視にて定性的に比較する他、画像処理技術などを用いて定量的・半定量的に両者の発現量を比較する方法など、分子生物学分野で採用されている比較手法を適宜用いれば良く、比較方法そのものが本発明を限定するものではない。
本発明の虚血マーカー及びこれを用いた虚血状態の検出方法は、哺乳動物組織における虚血状態を検出する方法として広く利用可能であると考えられるが、臨床的な必要性の高い心臓虚血が主たる対象疾患である。以下に本発明の実施例を示すが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
(心筋細胞の培養)本実施例に係る心筋細胞の培養、及び虚血−再灌流刺激の与え方については、非特許文献16に記載の方法に従った。具体的には、ラット胎児心臓由来の培養細胞株であるH9c2細胞を100−mm培養プレートに5×10細胞の密度で蒔き、10%ウシ胎児血清を含むDulbecco’s modified Eagle medium(DMEM)で72時間培養した。その後細胞を無血清DMEM培地に移し、60−72時間培養した。虚血刺激を与えるために、細胞をSlightly hypotonic Hank’s balanced saline solution(1.3mM CaCl,5mM KCl,0.3mM KHPO,0.5mM MgCl,0.4mM MgSO,69mM NaCl,4mM NaHCO,0.3mM NaHPO,glucose or serum free)中で2時間、37℃にてインキュベートした。インキュベーター中の酸素を窒素で置き換えることで虚血状態とし、このときの酸素濃度は1%であった。虚血刺激後、細胞を無血清DMEM培地に移し、酸素濃度20%、二酸化炭素濃度5%の通常の培養条件に戻して、37℃にてインキュベートし再灌流状態とした。
(IH/R刺激により分泌されるタンパク質の精製)2時間の虚血刺激を与えたH9c2細胞を24時間再灌流し、細胞培養液の上清1L(リットル)を試料としてプロテオーム解析用に供した。試料を5ml HiTrap陰イオン交換カラム(GE HealthCare,USA)にかけ、カラムにトラップされたタンパク質を500mM NaClで1ml/分の流速にて溶出させた。溶出した分画を、遠心フィルターカラム(MILLIPORE,USA)を通して脱塩及び濃縮した。
(トリプシンによるタンパク質のゲル中分解)濃縮した試料をSDS−PAGEにかけ、泳動後のゲルをCBBで染色した。IH/R試料と対照試料を泳動したレーンをそれぞれゲルから切り出し、各レーンを均等にスライスして24個の断片とした。更にこの断片を細かく刻み、25mM(NHCOを含む30%アセトニトリルで脱染色した。脱染色したゲル細断片を100%アセトニトリルで脱水し、その後室温にて30分間乾燥させた。ゲル中に含まれるタンパク質を、10mMジチオトレイトール/25mM(NHCOを用い56℃で1時間還元処理し、その後55mM ヨードアセトアミド/25mM(NHCOを用い室温・暗黒条件下でアルキル化した。処理後のゲルを50%アセトニトリル/25mM(NHCO25mMで30分間×2回、100%アセトニトリルで5分間×1回の計3回、脱水した。脱水したゲルを室温にて30分間乾燥させ、トリプシン溶液(PROMEGA,10ng/ml in25mM(NHCO)で30分間、氷上にて再膨潤させた。ゲル外の溶液を取り除き、ゲル中に含まれるタンパク質を37℃に一晩おいて分解した。分解産物であるペプチドを50%アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸で30分×2回、抽出し、抽出物を吸引乾燥して質量分析用に0.1%ギ酸に溶解させた。図2に、培養心筋細胞を用い虚血(IH/R)/非虚血(Control)時に放出されるタンパク質を質量分析にかけるまでの上記手順を模式化して示した。
(ペプチド断片の質量分析)トリプシン処理によって得られたペプチド断片を、Q−Tof2(MICROMASS,UK)を用いその用法に従ってLC−MS/MSを用いた質量分析に供した。LCカラムはPepMap C18カラム(LC PACKINGS,HOL)を用い、MS/MS分析にはMassLynx,ProteinLynx(MICROMASS)の各ソフトウェアを用いて解析を行った。ペプチド断片の配列データをNCBIデータベースのデータと比較し、タンパク質を同定するため、Mascot MS/MS Ions Search(MATRIX SCIENCE)を用いた。こうして得られたペプチド断片から推定される発現タンパク質のプロファイルを、虚血−再灌流刺激あり、刺激無しのそれぞれについて比較した。表1はその結果から一部分を抜粋したものであり、表中NCBI IDはペプチド断片の配列から推測されるタンパク質のNCBIデータベースでの対応物を、Geneは遺伝子名を、Control Scoreは対照サンプル中の同遺伝子産物のMascot MS/MS Ions Searchによる“確からしさ”の指標(値が大きいほど確からしく、同時に発現量の大小も反映している)を、IH/R scoreは虚血−再灌流刺激を与えたサンプル中での同遺伝子産物のスコアをそれぞれ表している。更に、個々のタンパク質はその発現量がそれぞれ異なっていることを考慮して、Control scoreとIH/R scoreの比をRatio欄で示した。表1のうち、No.1−5の様に対照では発現が見られず虚血−再灌流刺激時にのみ特異的に現れるもの、No.6−10の様に虚血−再灌流刺激時に発現量が増大するもの、No.11−15の様に刺激前後で発現量に変化が見られないもの、No.16−20の様に虚血−再灌流刺激時に発現量が減少するものがそれぞれ確認された。虚血−再灌流刺激時に特異的に発現するタンパク質のうちには、過去に虚血マーカーとして報告のあるミオシン等が含まれており、今回の発現解析が有効であることが示された。
上記結果のうち、虚血マーカーとしては虚血−再灌流刺激時に特異的に発現するものが最も望ましいと考えられた。網羅的な比較分析の結果、109種類のIH/R特異的発現タンパク質が同定された(表2)。表中NCBI IDはペプチド断片の配列から推測されるタンパク質のNCBIデータベースでの対応物を、MWは分子量を、Official symbolは正式略称を、Official nameは遺伝子産物の正式名を、Scoreは虚血−再潅流時のMascotスコアを、Localizationはこれまでに報告のあるそれぞれのタンパク質の細胞内での局在を、Functionはこれまでに報告のあるそれぞれのタンパク質の機能を表している。すなわち表2に記載されたタンパク質のうち、これまでに虚血マーカーとして報告のあるものを除いたタンパク質群は、虚血マーカー、好ましくは心臓虚血のマーカーとして利用可能なタンパク質である。この中には、アポトーシス関連タンパク質群、シグナル伝達系タンパク質群、成長因子及びその関連タンパク質群、プロテアーゼ、細胞接着因子、シャペロン、代謝酵素、リンパ細胞シグナルタンパク質群、神経細胞成長関連タンパク質群、トランスポーター、細胞骨格タンパク質、転写制御因子、コートマータンパク質などが含まれていた。下記表7に、それらのうち代表的なものを示す。
(イムノブロッティング)データベースとの比較から同定された109種類のタンパク質のうち、アポトーシス、炎症反応、細胞接着、細胞増殖、神経細胞成長、血管新生、とそれぞれ異なった機能を有するタンパク質であると推測された6種類のタンパク質、すなわちAIF、BMP−1、CD13、CD14、テネイシンC、アグリンについて、培養細胞系における虚血−再灌流刺激前後のタンパク質発現量の比較、及び人工心肺による心臓手術を受ける患者さん(一時的に心臓本体は虚血状態になる)の血液中における発現の検証として、培養細胞上清及び血液からの試料調整とその試料を用いた電気泳動、並びにイムノブロッティングを行った。培養細胞系における虚血−再灌流刺激前後のタンパク質発現量の比較には、発現亢進がみられたAIFとBMP−1の他、表1にあげたタンパク質のうち刺激前後で発現量が同等と推測されたストレス応答タンパク質の一種HSP90、及び刺激後に発現量が減少すると推測されたα−エノラーゼについても、検出の有効性を確認するために検証した。血液試料の採取は山口大学病院にて人工心肺を用いた開胸手術を受ける54−75歳の患者さん6名につき、インフォームドコンセント及び関連法令・規則に則って、血清中のAIF、BMP−1、CD13、CD14、テネイシンC、アグリンの発現量を手術前後で比較した。採取した試料(血清)はLysis buffer[1% TritonX−100,20mM Tris(pH7.5),150mM NaCl,1mM EDTA,2.5mM ピロリン酸Na,1mM β−グリセロールリン酸,1mM オルソバナジウム酸Na,1μg/ml ロイペプチン,1mM フェニルメタンスルホニルフルオライド]で溶解し、溶液を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、泳動物をニトロセルロース膜に転写した。転写後に膜を5%脱脂粉乳または10%BSA(Bovine serum albumin)/0.05%(w/v)Tween20含有TBS bufferでブロッキングし、上記の各タンパク質に対する特異的抗体を反応させ、結合しなかった抗体を洗い流した後に蛍光試薬で標的タンパク質の存在を定量的に可視化した。抗アグリン抗体、抗テネイシンC抗体、抗BMP−1抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗AIF抗体及び抗HSP90抗体、抗α−エノラーゼ抗体はそれぞれSANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY(USA)から購入したものを用い、抗原抗体反応は用法に従って行った。
培養細胞系における虚血−再灌流刺激前後のタンパク質発現量の比較を目的としたイムノブロッティングの結果を、図3に示す。図3AはAIF、BはBMP−1、CはHSP90、Dはα−エノラーゼの結果を示し、IH/R 0,2,・・・の数字はそれぞれ虚血−再灌流刺激後の経過時間(0は刺激無し)を表している。AIF(A)の発現量は、虚血刺激を与える前にはほとんどみられないのに対して、刺激を与えた2時間後には急激に増加し、24時間後にもこの増加は継続、48時間後にはやや減少するという傾向が見られた。BMP−1(B)についても、刺激前には発現がみられず、刺激後2時間後にもそれほど増加はみられないが、24時間後には明瞭な発現の亢進が観察された。HSP90(C)については、虚血刺激前に一定量の発現があり、刺激後2時間では一時的に発現量が減少するものの24時間後には刺激前と同程度にまで発現量が回復しており、0時間と24時間後の比較では発現量が同等という先の推測が裏付けられた。反対にα−エノラーゼ(D)では、刺激前に発現が観察されたが刺激後2時間でその発現が消失し、24−48時間後にわずかな回復がみられるもののその発現量は刺激前に比べてはるかに減少しており、こちらも上記の推測を裏付ける結果となった。虚血−再灌流刺激後に発現の亢進するタンパク質、同等なタンパク質、減少するタンパク質それぞれについて、網羅的なリストアップと個々のタンパク質に対するイムノブロットの結果が一致したことから、本発明の網羅的解析で得られたマーカー候補となるタンパク質の情報が有効であることが確認された。
人工心肺による心臓手術時(一時的虚血状態)の血液中における各マーカータンパク質の発現の比較結果を、図4に示す。図4AはAIF、BはBMP−1、CはCD13、DはCD14、EはテネイシンC、Fはアグリンの発現量を、蛍光の強度(結合した抗体量=標的のタンパク質量を反映)でそれぞれ表したものであり、またBS(Before Surgery)は手術前に採集した試料、DS(During Surgery)は手術中に採集した試料、0,3,・・・は手術後の各時間における試料をそれぞれ表している。A−Fは代表的なもの1例を挙げたが、6例いずれも同様の傾向を示した。AIF、BMP−1、CD13、テネイシンC及びアグリンでは、手術前にはほとんど発現がみられないのと比較して、手術後24−48時間で血清中に含まれる各タンパク質量が増加することがイムノブロッティングの結果より示された(図中▼で示す)。CD14については、手術前・手術中の血清に既に放出されていたが、手術後にその発現量が増大することが示された。培養細胞系での結果と臨床検体での結果に良い一致が見られたことから、本発明におけるマーカータンパク質は、虚血マーカー、好ましくは心臓虚血マーカーとしてきわめて有効であることが示された。
本発明は、虚血マーカー、虚血の検査の分野などに好適に利用することができる。

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  1. 哺乳動物から採取した試料中に含まれるテネイシンC(TnC)のタンパク質量を測定することを特徴とする、哺乳動物組織における虚血状態の検出方法。
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