JP5359144B2 - フルオロオレフィンアイオダイド混合物およびその製造法 - Google Patents

フルオロオレフィンアイオダイド混合物およびその製造法 Download PDF

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Description

本発明は、フルオロオレフィンアイオダイド混合物およびその製造法に関する。さらに詳しくは、ヨウ素基を架橋性基とする含フッ素共重合体エラストマー用の共単量体等として有効に用いられるフルオロオレフィンアイオダイド混合物およびその製造法に関する。
二重結合を形成する炭素原子に直接ヨウ素原子が結合した単量体化合物は知られているが、長い側鎖末端にヨウ素原子が結合している単量体化合物の例は少なく、これを公知の方法で合成する場合には、合成径路が長くまた収率も悪いため、非常に生産性も悪い。
WO 2005/090270 特開昭62−12734号公報
また、一般に末端ヨウ素化含フッ素単量体の合成には多段階の反応が必要であり、その一段一段の反応も極めて煩雑である。一方、長い側鎖末端に臭素原子を有する不飽和化合物は多く知られているが、末端臭素原子は末端ヨウ素原子程の反応性を有しない。
本発明の目的は、長い側鎖末端にヨウ素原子が結合している不飽和化合物であって、合成径路が短くまた収率も良好なフルオロオレフィンアイオダイド混合物およびその製造法を提供することにある。
本発明によって、一般式
CnF2n+1CF2CH=CF(CF2CF2)mI 〔Ia〕
および一般式
CnF2n+1CF=CHCF2(CF2CF2)mI 〔Ib〕
(ここで、nは0〜5の整数であり、mは1〜3の整数である)で表わされるフルオロオレフィンアイオダイド混合物が提供される。
かかるフルオロオレフィンアイオダイド混合物は、一般式
CnF2n+1CF2CH2CF2(CF2CF2)mI 〔II〕
(ここで、nは0〜5の整数であり、mは1〜3の整数である)で表わされるフルオロアルキルアイオダイドを塩基性化合物の存在下で脱HF化反応させることにより製造される。
本発明に係るフルオロオレフィンアイオダイド混合物〔Ia〕、〔Ib〕は、フルオロアルキルアイオダイド〔II〕を塩基性化合物の存在下で脱HF化反応させるだけで容易に製造することができ、得られたフルオロオレフィンアイオダイド混合物は、いずれも構造内に二重結合と末端ヨウ素基とを有しており、ヨウ素基を架橋性基とする含フッ素共重合体製造用の共単量体として用いられるばかりではなく、これらの反応性基を利用して様々な化合物を合成する中間体原料としても有効に用いられる。
本発明に係るフルオロオレフィンアイオダイド混合物は、一般式
CnF2n+1CF2CH2CF2(CF2CF2)mI 〔II〕
n:0〜5
m:1〜3
で表わされるフルオロアルキルアイオダイドを、塩基性化合物の存在下で、-CF2CH2CF2-結合を脱HF化反応させることにより、生成物〔Ia〕と〔Ib〕との混合物として製造される。
ここで化合物〔Ia〕および〔Ib〕の混合物として形成されるのは、フルオロアルキルアイオダイドの脱HF化反応において、メチレン鎖CH2のH原子とこれと前後の位置に結合しているフルオロメチレン鎖CF2のいずれか一方のF原子との引き抜きが、前後で等価的に生ずるためである。また、生成したフルオロオレフィンアイオダイドは、脱HF化反応が等価的であるため、化合物〔Ia〕と〔Ib〕との生成割合はほぼ半々となる。これらの化合物〔Ia〕と〔Ib〕とは、極めて類似した構造異性体であるため、それぞれを分離して同定することはできないが、同等の反応性を有するため、混合物のままそれを他の物質と合成原料として用いることができる。
出発原料物質となるフルオロアルキルアイオダイドは、パーフルオロアルキルアイオダイドCnF2n+1CF2I(n:0〜5)にフッ化ビニリデンおよびテトラフルオロエチレンを順次付加反応させることにより得られる。なお、CnF2n+1基はその末端基が(CF3)2CF-基の如く非直鎖状のものであってもよい。
パーフルオロアルキルアイオダイドにフッ化ビニリデンを付加反応させた化合物としては、例えば次のような化合物が挙げられる。
CF3(CH2CF2)I
CF3(CF2)(CH2CF2)I
CF3(CF2)2(CH2CF2)I
CF3(CF3)3(CH2CF2)I
CF3(CF2)4(CH2CF2)I
CF3(CF2)5(CH2CF2)I
(CF3)2CFCF2(CH2CF2)I
(CF3)2CFCF2CF2(CH2CF2)I
(CF3)2CFCF2CF2CF2(CH2CF2)I
フッ化ビニリデンの付加反応は、パーフルオロアルキルアイオダイドに過酸化物開始剤の存在下で加圧フッ化ビニリデンを付加反応させることにより行われ、その付加数は反応条件にもよるが、1以上、好ましくは1である。なお、反応温度は用いられる開始剤の分解温度にも関係するが、反応は一般に約80〜120℃で行われ、低温で分解する過酸化物開始剤を用いた場合には80℃以下での反応が可能である。過酸化物開始剤としては、第3ブチルパーオキサイド、ジ(第3ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート等が、パーフルオロアルキルアイオダイドに対して約1〜5モル%の割合で用いられる。
次いで、パーフルオロアルキルアイオダイドのフッ化ビニリデン付加物にテトラフルオロエチレンを付加反応することが行われ、その生成物としては例えば次のような化合物が挙げられる。
CF 3 (CH 2 CF 2 )(CF 2 CF 2 )I
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)(CH2CF2)(CF2CF2)3I
CF3(CF2)2(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)2(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)2(CH2CF2)(CF2CF2)3I
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)3(CH2CF2)(CF2CF2)3I
CF3(CF2)4(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)4(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)4(CH2CF2)(CF2CF2)3I
CF3(CF2)5(CH2CF2)(CF2CF2)I
CF3(CF2)5(CH2CF2)(CF2CF2)2I
CF3(CF2)5(CH2CF2)(CF2CF2)3I
これら以外にも、末端基が(CF3)2CF-となったものについても、同様の(CF2CF2)1〜3I付加物が挙げられる。
パーフルオロアルキルアイオダイドのフッ化ビニリデン付加物に対するテトラフルオロエチレンの付加反応は、フッ化ビニリデンの付加反応と同様の条件下で行われ、ただしその付加数は反応条件にもよるが、1以上、好ましくは1〜3である。
このようにして得られるフルオロアルキルアイオダイド〔II〕に塩基性化合物を反応させることにより、パーフルオロアルキル基側のCH2基とそれに隣接するいずれかのCF2基との間の脱HF化反応が生じ、フルオロオレフィンアイオダイド〔Ia〕および〔Ib〕の混合物を生成させる。
塩基性化合物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の1価または2価金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の1価または2価金属の炭酸塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド等の1価金属アルコキシドである無機塩基性化合物が用いられる。これらの塩基性化合物は、フルオロアルキルアイオダイド〔II〕に対してモル比で約1〜2、好ましくは約1〜1.5、さらに好ましくは1.05〜1.2の割合で用いられる。
脱HF化反応は、無溶媒でも行われるが、反応効率、発熱制御の観点から、水または有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素類、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、HCFC-225等のハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル(例えば、3M社製品ノベックHFE)等の含フッ素有機溶媒が用いられ、好ましくはアルコール類が用いられる。これらの塩基性化合物またはその有機溶媒溶液は、フルオロアルキルアイオダイドと相溶であることがさらに好ましい。
反応溶媒として用いられるアルコール類または塩基性化合物を溶解させたアルコール類は、例えばモレキュラーシーブ3A等のモレキュラーシーブを用いる方法などによって完全に脱水して用いることが好ましく、これによりさらなる収率の向上が図られる。
水または有機溶媒は、フルオロアルキルアイオダイド〔II〕に対して容積比で約0.1〜100、好ましくは約1〜10、さらに好ましくは3〜6の割合で用いられる。ただし、溶媒量を多くしても反応効率に影響がみられないため、3〜6の容量比で用いることが好ましい。さらに、水溶媒系での反応に際しては、アルキルアンモニウム塩、アルキルホスホニウム塩、クラウンエーテル等の相間移動触媒を、塩基性化合物触媒と併用してもよい。
脱HF化反応は、約-50〜30℃、好ましくは約-40〜10℃、さらに好ましくは約-30〜5℃で行われる。これよりも高い温度では、副反応が進行し、構造不明な副生成物が多量に発生する。反応圧力については、減圧下、大気圧下、加圧下のいずれでもよく、反応装置の簡便性からは大気圧下で行うことが好ましい。反応時間は、上記反応温度で約1〜5時間、好ましくは約2〜3時間であり、反応はほぼ定量的に完了する。
反応終了後静置分相する場合には、有機層を分液後、水洗などにより塩基性化合物を除去した後、定法にしたがって蒸留などによる精製を行い、目的物であるフルオロオレフィンアイオダイド混合物を得ることができる。極性溶媒を用いるなどして静置分相しない場合には、溶媒を減圧下で留去した後、静置分相する場合と同様な処理が行われる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例1
攪拌機を備えた容量500mlの密閉反応器に、
CF3(CF2)3CH2CF2CF2CF2I (99.8GC%)
100g(0.2モル)を仕込み、反応器内を冷却してその温度を-20℃とした。水酸化カリウム55.1g(0.23モル)およびエタノール150gよりなる水酸化カリウムエタノール溶液をモレキュラーシーブ3Aを用いて完全に脱水した後、反応器内温が-18℃を超えないように攪拌しながらゆっくりと滴下した。滴下終了後も反応器内温を-20℃〜-18℃に維持し、3時間後に反応を終了させた。
得られた内容物に0〜5℃の冷水を注ぎ、攪拌した。静置後分層した下層のフルオロオレフィンアイオダイド混合物層を採取し、もう一度0〜5℃の冷水で洗浄した。下層のフルオロオレフィンアイオダイド混合物が70.5g(収率97%)回収された。ガスクロマトグラフィーによる分析結果は、次の如くであった。
CF3(CF2)3CH=CFCF2CF2I (46.6GC%)
CF3(CF2)2CF=CHCF2CF2CF2I (53.2GC%)
不明 (0.2GC%)
この反応生成物について、内圧400〜500Pa,内温70〜75℃、塔頂温度55〜57℃の条件下で減圧蒸留を行い、精製反応生成物(99.7GC%)を68.1g(蒸留収率95%)を得た。この精製反応生成物は、1H-NMRおよび19F-NMRの結果から、上記式で示される化合物の混合物であることが確認された。
1H-NMR(CDCl3、TMS):6.6〜6.9ppm
CF3CF2CF2-CF=CH-CF2CF2CF2I
CF3CF2CF2CF2-CH=CF-CF2CF2I
19F-NMR(CDCl3、C6F6):CF 3CF 2CF 2-CF=CH-CF 2CF 2CF 2I
a b c d e f g

CF 3CF 2CF 2CF 2-CH=CF-CF 2CF 2I
a' b' c' d' e' f' g'

a,a': -82.1ppm
b,b':-126.2ppm
c :-119.7ppm
c':-121.5ppm
d :-109.0ppm
d',e:-108.3ppm
e':-110.7ppm
f :-118.3ppm
f':-117.4ppm
g,g': -59.2ppm
実施例2
実施例1において、脱水しない水酸化カリウムエタノール溶液を用いると、フルオロオレフィンアイオダイド65.1g(収率81%)が回収された。ガスクロマトグラフィーによる分析結果は、次の如くであった。
CF3(CF2)3CH=CFCF2CF2I (42.0GC%)
CF3(CF2)2CF=CHCF2CF2CF2I (48.1GC%)
不明 (9.9GC%)
参考例
攪拌機を備えたステンレス鋼製反応器を真空にした後、
水 13kg
C7F15COONH4 39g
Na2HPO4・12H2O 26g
CBr2=CHF 26g
ICF2CF2Br 24g
C4F9CH=CF(CF2)2I - C3F7CF=CH(CF2)3I
(モル混合比45/55)混合物 60g
を仕込み、次いで
テトラフルオロエチレン〔TFE〕 490g(4.9モル)
フッ化ビニリデン〔VdF〕 1180g(18.4モル)
ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕 2330g(15.5モル)
を仕込み、反応器内温度を70℃まで昇温させた。昇温後の圧力は、3.88MPa・Gであった。
次いで、過硫酸アンモニウム24gを水50gに溶解させた水溶液を圧入して重合反応を開始させた。重合反応の進行と共に反応器内の圧力が減少するため、反応器内圧力を3.75〜3.85MPa・Gに維持するように、TFE/VdF/HFP(混合モル比16.4/62.2/21.4)混合ガスを反応器内に分添し、分添ガスの合計量が10.2kgになった時点(約10時間後)で分添を止め、約30〜50分間エージングを行った。このときの反応器内圧力は1.8MPa・Gであった。
得られた共重合体(VdF/TFE/HFP/フルオロオレフィンアイオダイド混合物=共重合モル比66.8/16.0/16.9/0.3)100重量部に対し、
MTカーボンブラック 20重量部
酸化亜鉛 5 〃
トリアリルイソシアヌレート(日本化成製品TAIC M60) 5 〃
有機過酸化物(日本油脂製品パーヘキサ25B) 3.5 〃
を加え、混練した後、180℃で10分間のプレス加硫および230℃で22時間のオーブン加硫を行った後、加硫物性(JIS K6250,K6253準拠)、比重および圧縮永久歪(ASTM D395 Method B準拠)の測定を行った。
測定結果は、次の表に示される。

測定項目 参考例
加硫物性
100%モジュラス(MPa) 4.6
破断時伸び (%) 290
破断強度 (MPa) 24.1
圧縮永久歪
150℃、70時間 (%) 20
200℃、70時間 (%) 34
230℃、70時間 (%) 61

Claims (6)

  1. 一般式
    CnF2n+1CF2CH=CF(CF2CF2)mI 〔Ia〕
    および一般式
    CnF2n+1CF=CHCF2(CF2CF2)mI 〔Ib〕
    (ここで、nは0〜5の整数であり、mは1〜3の整数である)で表わされるフルオロオレフィンアイオダイド混合物。
  2. 一般式
    CnF2n+1CF2CH2CF2(CF2CF2)mI 〔II〕
    (ここで、nは0〜5の整数であり、mは1〜3の整数である)で表わされるフルオロアルキルアイオダイドを塩基性化合物の存在下で脱HF化反応させることを特徴とする、一般式
    CnF2n+1CF2CH=CF(CF2CF2)mI 〔Ia〕
    および一般式
    CnF2n+1CF=CHCF2(CF2CF2)mI 〔Ib〕
    (ここで、nは0〜5の整数であり、mは1〜3の整数である)で表わされるフルオロオレフィンアイオダイド混合物の製造法。
  3. 塩基性化合物として1価または2価金属の水酸化物、炭酸塩またはアルコキシドが用いられる請求項2記載のフルオロオレフィンアイオダイド混合物の製造法。
  4. 塩基性化合物が有機溶媒溶液として用いられる請求項3記載のフルオロオレフィンアイオダイド混合物の製造法。
  5. 塩基性化合物がアルコール類溶液として用いられる請求項4記載のフルオロオレフィンアイオダイド混合物の製造法。
  6. 塩基性化合物のアルコール類溶液が完全に脱水した状態で用いられる請求項5記載のフルオロオレフィンアイオダイド混合物の製造法。
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