JP5354676B2 - 感圧塗料・コーティングと粒子画像流速測定法を利用した壁面近傍流及び一様流の同時計測 - Google Patents
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Description
このように、感圧塗料・コーティング計測は、発光色素からの発光(蛍光、りん光)を酸素分圧、引いては流れ場の圧力に関係づける計測法である。
それとは別に、流れ場中に多数の粒子を投入して、その粒子の運動をある時間間隔でCCDカメラ等で撮像することにより、流れを流線として可視化し、その流線データから流れ場の速度分布を取得するようにした粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry:PIV)が広く知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。
粒子画像流速測定法は、流体中(流れ場)にトレーサーとなる粒子を散布し、流れによってトレーサーが移動する大きさ、向きを画像計測により取得する計測法である。流れ場に投入される粒子は、流れを構成する物質によって異なり、気体流の場合は、例えばスモーク(煙)又はスチーム(水蒸気)等がトレーサーとして使用され、他方、液体流の場合は、例えば気泡、オイル又は有色粒子等が使用される。
従って、感圧塗料・コーティング計測と粒子画像流速測定法を併用することにより、試験体のコーティング面近傍の流れ場と、同コーティング面から離れた任意位置での流れ場の双方の流れ場を可視化計測することが出来る。
しかしながら、感圧塗料・コーティング計測と粒子画像流速測定法は同時に併用されることはない。それは、トレーサー粒子が感圧塗料のコーティング面に付着し、感圧塗料に含まれる発光色素の酸素感度や発光量に影響(光学的障害)を与えるためである。そのため、二つの計測は非同期形態で別々に行われている。そのため、計測される流れとしては、再現性のある定常流が望ましく、非定常流のような再現性のない流れの場合は、これらの計測データは必ずしも力学的に対応していないため、コーティング面近傍の流れ場情報とその面から離れた位置での流れ場情報との間の同一時系列における相関関係を取得することが出来なかった。
また、感圧塗料・コーティング計測に酸素水をトレーサーとして用いることでコーティング面近傍の流れを可視化する方法が報告されている。また、水素気泡を用いて粒子画像流速測定法により流れを可視化する方法も報告されている。
また、酸素水をトレーサー粒子に用いることにより、試験体のコーティング面近傍の流れを可視化すると共に、流体の圧力分布および速度分布に関する計測データを取得することは可能である。しかし、この場合、計測はコーティング面近傍の狭い範囲に限定され、コーティング面から離れた広い範囲の流れ場を計測する(可視化する)ことは出来ない。
従って、本発明の解決すべき課題は、流体計測で必要とされる表面近傍の流れ及び一様流の双方の流れ場情報を同時に計測することである。また、非定常現象を含む流れに対しても同時計測することにより、より広範囲な条件で流れの情報を提供することが本発明の解決すべき第2の課題である。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、流体計測で必要とされる表面近傍の流れ及び一様流の双方の流れ場情報を同時に計測することが出来ると共に、非定常現象を含む流れ等のより広範囲な条件で流れの情報を提供することが可能な流れ場の可視化計測方法及びその装置を提供することである。
前記コーティング面から離れた任意位置において水素気泡を流し、該水素気泡に対し前記発光光とは波長帯の異なる光を照射し、前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を分光しながら、該「水素気泡からの反射又は透過光」を前記撮像手段とは異なる別個の撮像手段によって受光することによって、試験体の前記コーティング面近傍の流れ場と、同該コーティング面から離れた任意位置での流れ場を同時に可視化計測することを特徴とする。
上記流れ場の可視化計測方法では、酸素水を酸素消光性塗料・コーティング計測におけるトレーサーとし、他方、水素気泡を粒子画像流速測定法におけるトレーサーとすることによって、コーティング面近傍の流れ場情報については「コーティング面からの発光光」を受光・撮像することによって得られ、一方、コーティング面から離れた任意位置の流れ場情報については「水素気泡からの反射又は透過光」を受光・撮像することにより得られる。なお、発光光と「水素気泡からの反射又は透過光」は、互いに波長帯が異なるように設定することにより、例えばダイクロックミラー等を用いて両光を光学的に完全に分離することが出来る。従って、本発明によれば、酸素消光性塗料・コーティング計測と粒子画像流速測定法を同時に併用して、コーティング面近傍の流れ場と、コーティング面から離れた任意位置の流れ場を同時に可視化計測することが可能となる。また、後述するように、酸素消光性塗料が塗布されたコーティング面は多孔質の基盤上に形成されているため、コーティング面の酸素感度がより向上し、酸素を含む流体の変化に発光光が高速に応答するようになる。加えて、高速度・高感度の光センサーを使用した高速度・高感度カメラを用いることによって、「コーティング面からの発光光」を好適に受光して撮像することが出来るようになる。これにより、非定常な流れを持つ面近傍及び一様流の現象を同時に可視化計測することが出来るようになる。その結果、面近傍の流れ場情報とその面から離れた任意位置での流れ情報との間の同一時系列における相関関係を取得することが出来るようになる。
つまり、本発明のポイントは、酸素水をトレーサーとすることで、上記コーティング面近傍の流れを可視化可能とする。他方、コーティング面から離れた任意位置において水素気泡を作り出し、粒子画像流速測定法を適用して水素気泡を追跡することで流路中の任意の場所の流れを可視化可能とする。この場合、水素気泡は、感圧塗料・コーティング面に付着しても再度水に溶解するので、コーティング面への影響を与えずに粒子画像計測による一様流の可視化計測が可能となる。なお、計測は水中に限定されるが、面近傍及び一様流の双方の流れ場情報を同時に取得することが出来る。
また、酸素および水素を用いているため、無色透明であることから光学計測での障害とならない。また、これらは水の構成要素であるので、水に溶解し、上記コーティング面および流路内壁面等を汚染しないという利点を持つ。
上記流れ場の可視化計測方法では、酸素を含む流体の変化に発光光(発光強度)が高速に応答するように、前記コーティング面を多孔質の基盤上に形成した。これにより、後述の高速度・高感度カメラの効果と相俟ってコーティング面近傍の流れ場の非定常現象を正確に可視化計測することが出来るようになる。また、これにより、コーティング面近傍の流れ場情報と、コーティング面から離れた任意位置の流れ場情報との間の同一時系列における相関関係を取得することが出来るようになる。
上記流れ場の可視化計測方法では、水の組成が水素原子と酸素原子とから成ることに着目し、流体に電気(電子)を流し、水を電気的に分解することにより水素気泡を発生させるようにした。これにより、流路中の任意位置で水素気泡を作り出すことが可能となり、粒子画像流速測定法によって任意位置での流れ場を可視化計測することが出来るようになる。
上記流れ場の可視化計測方法では、水素気泡が発生地点を含む層流に一様に拡がるように、水素気泡が生成される電極を流れに交差するように配設した。また、流れに対し抵抗とならないように電極形状を棒状、線状またはワイヤ状とした。
上記流れ場の可視化計測方法では、上記コーティング面近傍の流れ場と、コーティング面から離れた任意位置の流れ場を同時に可視化計測することが出来るように、波長帯の互いに異なる「コーティング面からの発光光」と「水素気泡からの反射又は透過光」を光学的に完全に分離するダイクロイックミラーを使用した。これにより、「コーティング面からの発光光」と「水素気泡法からの光」は互いに干渉しなくなり、後述の高速度・高感度カメラによって試験体の上記コーティング面近傍の流れ場と、コーティング面から離れた任意位置の流れ場を同時に画像化することが出来るようになる。
上記流れ場の可視化計測方法では、非定常な流れを持つ面近傍及び一様流の現象に対しても同時に可視化計測することが出来るように、「コーティング面からの発光光」と「水素気泡からの反射又は透過光」を高い時間分解能および距離分解能で別個独立に撮像することが出来る撮像手段として高速度・高感度カメラを使用した。
前記コーティング面から離れた任意位置において水素気泡を発生させる水素気泡発生手段と、該水素気泡に対し前記発光光とは異なる波長帯の光を照射する光照射手段と、前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を光学的に分離する分光手段と、該「水素気泡からの反射又は透過光」を受光する前記撮像手段とは異なる別個独立の撮像手段とを具備し、試験体の前記コーティング面近傍の流れ場と、同該コーティング面から離れた任意位置での流れ場を同時に可視化計測することを特徴とする。
上記流れ場の可視化計測装置では、上記請求項1に記載の可視化計測方法を好適に実施することが出来る。
上記流れ場の可視化計測装置では、上記請求項2に記載の可視化計測方法を好適に実施することが出来る。
上記流れ場の可視化計測装置では、上記請求項3に記載の可視化計測方法を好適に実施することが出来る。
上記流れ場の可視化計測装置では、上記請求項4に記載の可視化計測方法を好適に実施することが出来る。
上記流れ場の可視化計測装置では、上記請求項5に記載の可視化計測方法を好適に実施することが出来る。
上記流れ場の可視化計測装置では、上記請求項6に記載の可視化計測方法を好適に実施することが出来る。
(1)試験体のコーティング面近傍の流れ場及びその面から離れた任意位置での流れ場を同時に可視化計測することが出来る。
(2)非定常な流れを持つコーティング面近傍の流れ場及びその面から離れた任意位置での流れ場を同時に可視化計測することが出来る。
(3)「コーティング面近傍の流れ場情報」と「その面から離れた任意位置での流れ場情報」との間の同一時系列における相関関係を取得することが出来る。
(4)トレーサーとして酸素水および水素気泡を用いることで、トレーサーが水槽および流体(水)を汚染せず、かつ光学的な障害とならない。また、流体中からトレーサーを回収する作業が不要となる。
この流れ場の可視化計測装置100は、流体(水)が流れる流路1と、酸素消光性塗料としての感圧塗料が流体と接する外周面に塗布されて成る感圧塗料・コーティング基盤2と、感圧塗料に含まれる発光色素を励起させる励起光源3と、発光色素の励起エネルギーを奪う酸素水を供給する酸素水供給ノズル4と、水素気泡発生源となる白金線5と、白金線5等の電極を介して水に電気を供給する電源部6と、水素気泡5aにレーザ光をシート状に照射するレーザ7と、「水素気泡5aからのレーザ光」を透過させる一方、「感圧塗料・コーティング基盤2(発光色素)からの発光光」を反射させて所定の方向へ案内するダイクロイックミラー8と、「水素気泡5aからのレーザ光」を所定の方向へ案内する鏡9と、「感圧塗料・コーティング基盤2からの発光光」を受光してコーティング面近傍の流れ場についての画像を生成する高速度・高感度カメラ10と、「水素気泡5aからのレーザ光」を受光してコーティング面から離れた任意位置での流れ場についての画像を生成する高速度・高感度カメラ11とを具備して構成される。なお、感圧塗料・コーティング基盤2の詳細については、図2を参照しながら後述する。また、本実施例では、底面から40mm近傍を一様流の流れ場として、その近傍において水素気泡5aをトレーサーとする粒子画像流速測定法を行った。
また、感圧塗料がコーティングされる基盤は、表面に孔径がnmオーダの無数の凹みが形成された多孔質基盤である。このようにコーティング面を多孔質構造とすることにより、酸素感度がより向上し、酸素濃度(酸素分圧)の急激な変化に対しても発光光の光強度が高速に応答するようになり、コーティング面近傍の非定常な流れ現象を好適に可視化計測することが可能となる。
なお、この場合の電子半反応式は、下記の通りとなる。
白金線(−):2H++2e−→H2
一方、図示されてはいないが正極として銅板が、計測の妨げにならない感圧塗料・コーティング面2から離れた流路1の下流側に設けられている。
正極における電子半反応式は、下記の通りとなる。
銅板(+):2OH−→H20+1/2O2+2e−
感圧塗料・コーティング基盤2は、表面に孔径がnmオーダの無数の凹みが形成された多孔質基盤21と、その上にコーティングされた感圧塗料22とから成る。
多孔質基盤21は、例えばシリカゲルや酸化アルミ粒子や二酸化チタン粒子などのような多孔質物質から作られる。
感圧塗料22中の蛍光・りん光色素(感圧色素)22aとしては、例えばポルフィリン系あるいはルテニウム錯体などの遷移金属錯体、あるいはピレン系分子などの多環式芳香族化合物、希土類錯体、あるいはフタロシアニン系などの酸素感度を有する分子が用いられる。
蛍光・りん光色素22aをバインドするポリマーとしては、例えばPoly(TMSP)(ポリトリメチルシリルプロピン)またはPoly(IBM)やpoly(IBM-co-TFEM)をはじめとするフッ素系ポリマーが用いられる。
図3(a)〜(k)は、「感圧塗料のコーティング面からの発光光」と「水素気泡5aからのレーザ光」を各高速度・高感度カメラ10,11によって時間間隔0.05s(=50ms)ごとに受光・撮像した計測画像である。すなわち、上面が感圧塗料・コーティング計測による計測結果、下面が粒子画像流速測定法による計測結果を示す。図の中心線上の円は試験体としての円筒12を示す。上面・下面において白で示される流れがそれぞれ酸素水、水素気泡による流れを示す。上面の発光光の画像を見ると、円筒底面で発生する馬蹄渦(非定常な流れ)が明瞭に可視化されていることが分かる。一方、下面の水素気泡5aからのレーザ光の画像を見ると、非定常に変化するカルマン渦が明瞭に可視化されていることが分かる。また、本実施例では同時計測のため、それぞれの計測データ間の相関関係を求めることが可能となる。また、粒子画像流速測定法の解析ソフトを用いることにより粒子の速度表示も可能となる。
また、トレーサーとしての酸素水および水素気泡は、流体(水)および流路壁面を汚すことがなく、さらに無色透明であり上記発光光およびレーザ光を用いた光学計測において光学的な障害とならない。
また、トレーサーとしての酸素水および水素気泡を使用した場合、流体中からトレーサーを回収する作業が不要となる。
2 感圧塗料・コーティング基盤
3 励起光源
4 酸素水供給ノズル
5 白金線
6 電源部
7 レーザ
8 ダイクロイックミラー
9 鏡
10,11 高速度・高感度カメラ
12 円筒
100 流れ場の可視化計測装置
Claims (12)
- 酸素消光性塗料が塗布されたコーティング面を流れに平行に配設して、前記コーティング面に励起光を照射しながら該コーティング面近傍に酸素水を流し、該コーティング面からの発光光を撮像手段によって受光することによって前記コーティング面近傍の流れ場を可視化計測する計測方法において、
前記コーティング面から離れた任意位置において水素気泡を流し、該水素気泡に対し前記発光光とは波長帯の異なる光を照射し、前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を分光しながら、該「水素気泡からの反射又は透過光」を前記撮像手段とは異なる別個の撮像手段によって受光することによって、試験体の前記コーティング面近傍の流れ場と、該コーティング面から離れた任意位置での流れ場を同時に可視化計測することを特徴とする流れ場の可視化計測方法。 - 前記コーティング面を多孔質の基盤上に形成する請求項1に記載の流れ場の可視化計測方法。
- 前記流れ中に電気を流して前記水素気泡を発生させる請求項1に記載の流れ場の可視化計測方法。
- 棒状、線状またはワイヤ状電極を負電極として流れに交差するように配設して前記水素気泡を発生させる請求項3に記載の流れ場の可視化計測方法。
- 前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を、ダイクロイックミラーを用いて分光する請求項1に記載の流れ場の可視化計測方法。
- 前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を、時間および距離分解能の高い高速度・高感度カメラによって別個独立に同時に撮像する請求項1に記載の流れ場の可視化計測方法。
- 酸素消光性塗料が塗布されたコーティング面、該コーティング面が配設され液体が流れる光透過性流路と、該コーティング面に励起光を照射する励起光源と、該コーティング面近傍に酸素水を流す酸素水供給手段と、前記コーティング面からの発光光を受光する撮像手段とを備えた流れ場の可視化計測装置であって、
前記コーティング面から離れた任意位置において水素気泡を発生させる水素気泡発生手段と、該水素気泡に対し前記発光光とは異なる波長帯の光を照射する光照射手段と、前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を光学的に分離する分光手段と、該「水素気泡からの反射又は透過光」を受光する前記撮像手段とは異なる別個独立の撮像手段とを具備し、試験体の前記コーティング面近傍の流れ場と、同該コーティング面から離れた任意位置での流れ場を同時に可視化計測することを特徴とする流れ場の可視化計測装置。 - 前記コーティング面は多孔質の基盤上に形成されている請求項7に記載の流れ場の可視化計測装置。
- 前記水素気泡発生手段として前記液体に電気を流す電源部を備える請求項7に記載の流れ場の可視化計測装置。
- 前記電源部の電極として棒状、線状またはワイヤ状電極を備える請求項9に記載の流れ場の可視化計測装置。
- 前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を分光する分光手段としてダイクロイックミラーを備える請求項7に記載の流れ場の可視化計測装置。
- 前記「コーティング面からの発光光」と前記「水素気泡からの反射又は透過光」を撮像する撮像手段として、時間および距離分解能の高い高速度・高感度カメラを備える請求項7に記載の流れ場の可視化計測装置。
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