JP5351183B2 - 照射架橋水溶性高分子粒子及び照射架橋ゼラチン粒子の製造方法 - Google Patents

照射架橋水溶性高分子粒子及び照射架橋ゼラチン粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子線やγ線などの放射線の照射により架橋された照射架橋水溶性高分子粒子とその製造方法に関する。特に、本発明は、水溶性高分子としてゼラチンを放射線の照射により架橋処理してなる照射架橋ゼラチン粒子とその製造方法に関する。本発明の照射架橋ゼラチン粒子は、架橋剤や架橋反応停止剤などの化学物質を含有しないため、生体安全性が極めて高く、医療分野や化粧品分野を含む広範な技術分野において好適に利用することができる。
ゼラチンは、生体安全性が高く、しかも生体内で分解性を示すため、医療品や化粧品の用途に適した水溶性高分子材料である。ゼラチンは、架橋を施すことにより、架橋ゼラチンを形成することができる。架橋ゼラチンは、板状、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状などの各種形状に形成することができる。架橋ゼラチンは、水分を吸収するとハイドロゲルを形成する。そのため、架橋ゼラチンは、架橋ゼラチンゲルと呼ばれることがある。
架橋ゼラチンは、生体内で分解性を示し、その分解速度は、架橋度によって制御することができる。架橋ゼラチンの架橋度は、その含水率にほぼ逆比例する。架橋ゼラチンの含水率が小さいほど、その架橋度が高いことを示す。
架橋ゼラチンは、生体適合性が良好である上、生理活性因子などの電荷を持つ薬剤を担持することができる。生理活性因子を担持した架橋ゼラチンを生体内に投与すると、架橋ゼラチンが生体内で分解するにつれて、担持した生理活性因子が徐々に放出される。
生理活性因子として、例えば、血管新生誘導効果を持つ塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)が知られている。このような生理活性因子を、水溶液としてヒトなどの生体内に投与すると、比較的短期間でその効果が低下するため、治療目的を達成することが困難である。これに対して、生理活性因子を担持した架橋ゼラチンを、生体内に埋め込んだり、注射器を用いて生体内に注入したりする方法により投与すると、該生理活性因子が徐放されるため、該生理活性因子を水溶液で投与した場合に比べて、長期間にわたって効果を持続させることができる。
ゼラチンは、コラーゲンを親物質とする動物性タンパク質である。そのため、架橋ゼラチンは、薬剤徐放キャリアとしての用途だけではなく、化粧品への用途展開も期待されている。この他、架橋ゼラチンは、工業用などの広範な用途に用いることができる。しかし、従来の架橋ゼラチンには、解決すべき重要な諸問題が残されている。
第一の問題は、従来のゼラチンの架橋方法が、架橋剤を用いる化学架橋法に実質的に限定されていることにある。化学架橋法は、生産性に劣ることや架橋度の正確な制御が困難であることに加えて、残留する架橋剤や反応停止剤などの化学物質による生体への悪影響が懸念されるという問題を有している。
国際公開第1994/27630号パンフレット(特許文献1)には、ゼラチンを架橋して得られた架橋ゼラチンに、bFGFを担持させた架橋ゼラチンゲル製剤が提案されている。特許文献1には、ゼラチンの架橋には、架橋剤を用いた化学架橋法の他に、熱処理や紫外線照射による架橋法を採用することもできると記載されている。しかし、特許文献1の実施例には、グルタルアルデヒドや1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などの架橋剤を用いた化学架橋法が示されているだけである。
ゼラチンの化学架橋法では、化学物質からなる架橋剤を使用して架橋反応を行い、かつ、架橋反応を終了させるために、反応系内に化学物質からなる反応停止剤を加える必要がある。低毒性の架橋剤や反応停止剤を用いた場合であっても、これらは、化学物質であるため、微量であっても生体への悪影響の虞がある。そのため、架橋ゼラチンに架橋剤や反応停止剤が残留しないように十分に精製するなど、安全性の確保に注意する必要がある。
特許文献1には、架橋剤を用いて得られた架橋ゼラチンを、蒸留水、エタノール、イソプロパノール、アセトンなどの有機溶媒で洗浄する方法が記載されている。より具体的に、特許文献1の実施例1には、架橋剤を用いて得られた架橋ゼラチンを、蒸留水により、37℃で12時間洗浄したことが記載されている。特許文献1の実施例1では、架橋反応にも24時間という長時間を費やしている。したがって、架橋剤を用いた架橋ゼラチンの製造方法は、架橋反応や安全性の確保に多大の時間と労力を要する。
ゼラチンに紫外線を照射して架橋する方法では、光反応開始剤を用いて架橋反応を開始させ、そして、架橋反応を終了させるには、反応停止剤を添加して光反応開始剤の活性を停止させる必要がある。ところが、光反応開始剤や反応停止剤は、化学物質であるため、化学架橋法と同様の問題を有している。
熱処理によりゼラチンを架橋する方法は、架橋に長時間を要する上、架橋度の制御が難しく、所望の架橋度を持つ架橋ゼラチンを安定的に得ることが困難である。そのため、熱処理により得られた架橋ゼラチンに生理活性因子などの薬剤を担持させても、所望の徐放性を安定して発揮する架橋ゼラチンゲル製剤を得ることが困難である。
第二の問題は、従来の架橋ゼラチンの製造方法では、毒性の虞がある残留化学物質を含まず、所望の架橋度を有する架橋ゼラチンを、粒子の形状で効率的に製造することが困難なことにある。
薬剤を担持した架橋ゼラチンは、投与手段によっては粒子の形状であることが望ましいことがある。架橋ゼラチン粒子は、他成分との均一な混合が容易であるため、化粧品などの用途にも適している。
特許文献1には、粒子状の架橋ゼラチンの製造方法として、ゼラチン水溶液とオリーブ油などのオイルとを混合し撹拌して、ゼラチン水溶液を微粒子化したW/O型エマルジョンを調製し、これに架橋剤水溶液を添加して架橋反応させる方法が開示されている。特許文献1には、化学架橋反応後、遠心分離により架橋ゼラチン粒子を回収し、アセトン、酢酸エチル等で洗浄し、さらに、イソプロパノール、エタノール等に浸漬して、架橋反応を停止させる方法が示されている。
より具体的に、特許文献1の実施例9には、アルカリ処理ゼラチン水溶液にオリーブ油を加えて撹拌することによりW/O型エマルジョンを調製し、次いで、これに、架橋剤として1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を加えて、一昼夜続けてゼラチンを架橋し、架橋ゼラチンゲルを得たことが示されている。特許文献1の実施例10には、オリーブ油にアルカリ処理ゼラチン水溶液を加えて撹拌することによりW/O型エマルジョンを調製し、次いで、これに1−エチル3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボシイミド塩酸塩を加えて、約15時間撹拌を続けてゼラチンを架橋したことが示されている。
特許文献1の実施例10には、前記の化学架橋反応後、反応混合物にアセトンを加えて1時間攪拌した後、遠心分離により架橋ゼラチン粒子を回収し、回収した架橋ゼラチン粒子をアセトンにて洗浄し、その後、0.004NのHClを含むイソプロパノール中に37℃で1時間浸漬することにより、残存する架橋剤による架橋反応を停止させたことが示されている。さらに、特許文献1の実施例10には、架橋ゼラチン粒子をイソプロパノールにて5回洗浄した後、0.1%Tween 80(界面活性剤)を含む蒸留水で1回、次いで、蒸留水で2回洗浄したことが記載されている。
したがって、特許文献1に開示されている架橋剤を用いた架橋ゼラチン粒子の製造方法は、架橋反応と精製による安全性の確保に多大の時間と労力を要し、製品コストの低減化に限界があった。特許文献1に教示されている紫外線の照射や熱処理による架橋方法を採用して、架橋ゼラチン粒子を製造したとしても、このような製造方法は、前述の如き諸問題を抱えている。
特開2005−325075号公報(特許文献2)には、bFGFを架橋ゼラチンゲルに担持させてなる半月板損傷治療剤に関する発明が開示されている。特許文献2にも、粒子状の架橋ゼラチンゲルを得る方法として、ゼラチン水溶液とオリーブ油などの油とを混合し、撹拌して、W/O型エマルジョンを形成し、これに架橋剤水溶液を添加して架橋反応させ、遠心分離により架橋ゼラチンゲルを回収し、繰り返し洗浄して精製する方法が開示されている。
特開2008−150596号公報(特許文献3)には、ゼラチンなどの高分子の水溶液を、水の溶解度が1〜50質量%の溶媒中に液滴として投入し、該液滴中の水を溶媒中に移行させて、該溶媒中に該高分子を含有する粒子を形成させる方法が開示されている。特許文献3には、溶媒中に高分子水溶液を液滴として投入する手段として、インクジェットにより吐出エネルギーを付与する方法などが示されている。
特許文献3には、高分子粒子を各種架橋法によって架橋することができると記載されている。しかし、特許文献3の実施例には、酸化鉄微粒子を含有するゼラチンの乾燥粒子(乾燥磁性粒子)を加熱して不完全架橋した例(実施例56〜58)や、乾燥磁性粒子をアセトン中で架橋剤と反応させて不完全架橋した例(実施例59)が示されているだけである。
国際公開第2008/016163号パンフレット(特許文献4)には、酸素雰囲気下でゼラチンが電子線の照射により架橋された架橋ゼラチンゲル層の複数層が互いに隣接して配置された層構成を有する架橋ゼラチンゲル多層構造体とその製造方法が開示されている。
国際公開第1994/27630号パンフレット(米国特許第6,831,058 B1明細書に対応) 特開2005−325075号公報 特開2008−150596号公報 国際公開第2008/016163号パンフレット
本発明の課題は、ゼラチンなどの水溶性高分子を出発原料として、架橋剤などの化学物質を使用することなく製造することができ、生体に対する安全性に優れた架橋水溶性高分子粒子と、その効率的な製造方法を提供することにある。
より具体的に、本発明の課題は、ゼラチンなどの水溶性高分子を出発原料として、電子線やγ線などの放射線の照射によって架橋された架橋水溶性高分子粒子と、その効率的な製造方法を提供することにある。
特に、本発明の課題は、アルカリ処理ゼラチンや酸処理ゼラチン、ゼラチン誘導体などのゼラチンを出発原料とし、生体に対する安全性に優れ、医療や化粧品分野などの用途に適した架橋ゼラチン粒子と、電子線やγ線などの放射線の照射による架橋法を採用した架橋ゼラチン粒子の効率的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ゼラチンなどの水溶性高分子の水溶液を、特定の範囲内の動粘度を有するオイル中に液滴として分散したW/O型エマルジョンを調製し、次いで、該W/O型エマルジョンを、放射線が透過することができる厚みの層に形成した後、該W/O型エマルジョン層に放射線を照射して、該液滴中の水溶性高分子を架橋させることにより、架橋水溶性高分子粒子を形成し得ることを見出した。
放射線の照射による架橋後、該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、オイル成分を除去することにより、架橋水溶性高分子粒子を回収することができる。放射線として電子線を用いると、連続的な諸工程を含む製造方法により、効率的に架橋水溶性高分子粒子を製造することができる。
放射線の照射によりゼラチンなどの水溶性高分子の液滴を架橋させる方法によれば、架橋剤や反応停止剤、光反応開始剤などの化学物質の使用を一切必要とせず、かつ、残留する化学物質除去のための煩雑な精製工程を要しないため、生体安全性に優れた架橋水溶性高分子粒子体を効率的に製造することができる。放射線の照射による架橋法は、操作が比較的簡単であり、架橋処理時間も短い。
化学架橋法によれば、精製後にも、微量の架橋剤などの化学物質が架橋ゼラチン粒子などの架橋水溶性高分子粒子中に封じ込まれた状態で残留し、着色の原因となる。これに対して、放射線に照射架橋法によれば、残留する化学物質による着色のない、色相に優れた架橋ゼラチン粒子などの架橋水溶性高分子粒子を得ることができる。色相に優れた架橋ゼラチン粒子などは、化粧品の用途などに好適である。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明によれば、水溶性高分子の水溶液からなる複数個の液滴が放射線の照射により架橋処理されて形成された照射架橋水溶性高分子粒子であって、
a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、
b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから5mmまでの範囲内であり、
c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、
d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、
e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示す
ことを特徴とする照射架橋水溶性高分子粒子が提供される。
また、本発明によれば、下記の工程A乃至E:
(A)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%の水溶性高分子の水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該水溶性高分子水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程A;
(B)該W/O型エマルジョンを、放射線が透過することができる厚みの層に形成する工程B;
(C)該W/O型エマルジョン層に放射線を照射して、該液滴中の水溶性高分子を架橋させることにより、架橋水溶性高分子粒子を形成する工程C;
(D)該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程D;及び
(E)該混合液から架橋水溶性高分子粒子を分離する工程E;
の各工程を含むことを特徴とする照射架橋水溶性高分子粒子の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、下記の工程1乃至6:
(1)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%のゼラチンの水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程1;
(2)支持体上に、該W/O型エマルジョンを塗工して、厚みが5μmから3mmまでの範囲内の塗工層を形成する工程2;
(3)該塗工層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるように電子線を照射して、該液滴中のゼラチンを架橋することにより、架橋ゼラチン粒子を形成する工程3;
(4)該塗工層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該塗工層のW/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程4;
(5)該混合液を支持体上から回収する工程5;及び
(6)回収した混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する工程6;
の各工程を含むことを特徴とする電子線照射架橋ゼラチン粒子の製造方法が提供される。前記工程2乃至5は、それぞれ連続的な工程とすることができる。
さらにまた、本発明によれば、下記の工程I乃至V:
(I)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%のゼラチンの水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程I;
(II)該W/O型エマルジョンを容器内に注入して、W/O型エマルジョン層を形成する工程II;
(III)該W/O型エマルジョン層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるようにγ線を照射して、該液滴中のゼラチンを架橋する工程III;
(IV)該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程IV;及び
(V)該混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する工程V;
の各工程を含むことを特徴とするγ線照射架橋ゼラチン粒子の製造方法が提供される。
本発明によれば、ゼラチンなどの水溶性高分子を出発原料として、架橋剤などの化学物質を使用することなく製造することができ、生体に対する安全性に優れた架橋水溶性高分子粒子と、その効率的な製造方法が提供される。
本発明の照射架橋ゼラチン粒子などの照射架橋水溶性高分子粒子は、従来から行われている化学架橋法で使用されている架橋剤を用いていないため、生体への安全性が高く、しかも化学架橋法で行われていた煩雑な化学架橋と精製工程を大幅に省略することができる。
特に、電子線の照射による架橋法を採用すると、連続的な工程により、照射架橋ゼラチン粒子などの照射架橋水溶性高分子粒子を製造することができる。本発明の放射線の照射により架橋されたゼラチン粒子などの照射架橋水溶性高分子粒子は、架橋剤などの毒性のある残留化学物質を含むことがなく、生体に対する安全性に優れ、色相にも優れているため、薬物の担体や化粧品の成分などの用途に好適に利用することができる。
図1は、電子線照射架橋ゼラチン粒子(乾燥粒子)のSEM写真(6000倍)である。
水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ラクチドとグリコリドとの共重合体などが挙げられる。水溶性高分子としては、水に1〜80質量%、好ましくは3〜60質量%の濃度で溶解し得るものであることが好ましい。水溶性高分子としては、放射線の照射によって架橋し得るものが用いられるが、電子線またはγ線の照射によって架橋し得るものであることが好ましい。これらの水溶性高分子の中でも、水に対する溶解性、放射線による架橋性、架橋ゲル製剤や化粧品の成分としての用途への適性などの観点から、ゼラチンが特に好ましい。そこで、以下、水溶性高分子として、主としてゼラチンを取り上げて説明するが、ゼラチンに適用可能な技術的事項は、放射線の照射により架橋可能な他の水溶性高分子にも適用することができる。
ゼラチンには、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、及びゼラチン誘導体が含まれる。ゼラチンは、主として、牛骨、牛皮、及び豚皮を原料として生産されている。これらの原料の中でゼラチンに転化される親物質は、コラーゲンと呼ばれるタンパク質である。コラーゲンは、難溶性の物質であるが、これを酸やアルカリで前処理した後、加熱すると、3本鎖螺旋の分子構造が壊れて、ランダムな3本の分子に分かれる。このようにして熱変性し、可溶化されたコラーゲンを狭義のゼラチンと呼ぶ。
コラーゲン原料から高品質のゼラチンを抽出するために、塩酸や硫酸などの無機酸または石灰(アルカリ)を用いて、原料の前処理を行う。原料の前処理条件により、前者を酸処理ゼラチン、後者をアルカリ処理ゼラチンと称する。ゼラチンは、両性電解質である。両性電解質は、その溶液のpHによって荷電状態が大きく変化するが、特定のpHでは、分子内の正と負がつり合い、全体として荷電がゼロとなる。このときのpHを等電点という。本発明の架橋ゼラチン粒子の原料となるゼラチンには、例えば、等電点が5付近のアルカリ処理ゼラチン、及び等電点が9付近の酸処理ゼラチンが含まれる。
ゼラチンには、ゼラチン側鎖を変性または修飾したゼラチン誘導体がある。ゼラチン誘導体としては、酸処理ゼラチンに、エチレンジアミン、スペルミジンまたはスペルミンをカルボジイミドでグラフト重合したカチオン化ゼラチン誘導体;ゼラチンの側鎖にコハク酸を導入したサクシニル化ゼラチン誘導体;などが代表的なものである。
本発明では、水溶性高分子として、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンを用いることが好ましい。
ゼラチンとしては、入手が容易な市販品を用いることができる。市販のゼラチンとしては、例えば、新田ゼラチン社製の等電点が4.9または5.0のアルカリ処理ゼラチン;新田ゼラチン社製の等電点が9.0の酸処理ゼラチン;ニチバン株式会社製のカチオン化ゼラチン誘導体(等電点が9.0の酸処理ゼラチンにエチレンジアミンをカルボジイミドでグラフトしたゼラチン誘導体);などが挙げられる。
ゼラチンなどの水溶性高分子の水溶液の濃度は、1〜80質量%、好ましくは3〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは7〜40質量%の範囲内である。ゼラチン水溶液の濃度は、ゼラチン種に応じて、それぞれに適した範囲内とすることが好ましい。例えば、平均分子量が100,000以上の高分子量ゼラチンの場合は、溶液粘度が高いため、その水溶液の濃度は、5〜30質量%の範囲内が好ましい。ゼラチン誘導体は、一般に溶液粘度が低いため、その水溶液の濃度は、好ましくは7〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは15〜40質量%の範囲内である。ゼラチン水溶液の濃度が低すぎると、十分な架橋密度を持つ架橋ゼラチン粒子を形成することが困難である。ゼラチン水溶液の濃度が高すぎると、その水溶液粘度が高くなりすぎて、均一な液滴を形成することが困難となり、ひいては、所望の平均粒径を有する架橋ゼラチン粒子を形成することが困難となる。
本発明の照射架橋水溶性高分子粒子は、水溶性高分子の水溶液からなる複数個の液滴が放射線の照射により架橋処理されて形成された照射架橋粒子である。水溶性高分子水溶液からなる複数個の液滴を形成するには、オイル中に水溶性高分子水溶液を分散させて、該水溶性高分子水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを調製する方法を好適に採用することができる。
本発明において、放射線とは、α線(α崩壊を行う放射性核種から放出されるヘリウム−4の原子核の粒子線)、β線(原子核から放出される陰電子及び陽電子)、電子線(ほぼ一定の運動エネルギーを持つ電子ビーム;一般に、熱電子を真空中で加速してつくる)などの粒子線;γ線(原子核、素粒子のエネルギー準位間の遷移や素粒子の対消滅、対生成などによって放出・吸収される波長の短い電磁波)などの電離放射線;を意味する。本発明において、放射線には、紫外線は含まれないものとする。
本発明において、架橋水溶性高分子粒子の製造工程での作業性、取扱性などの観点から、放射線の中でも電子線及びγ線が好ましく、電子線がより好ましい。水溶性高分子の水溶液からなる複数個の液滴を放射線の照射により架橋処理するには、該W/O型エマルジョンを所定厚みの層に形成し、該W/O型エマルジョン層に放射線を照射する方法を採用することができる。
電子線は、被照射物を透過し得る範囲が短いため、該W/O型エマルジョン層の厚みが比較的薄い場合に適用することが好ましい。電子線の照射は、被照射物を移動させながら連続的に行うことができるため、該W/O型エマルジョンの塗工層を載せた支持体を走行させながら、連続的に電子線を照射する方法を採用することにより、効率良く架橋粒子を製造することができる。γ線の照射は、一般に、バッチ式で行われ、被照射物を透過し得る範囲も長いため、粒径の大きな架橋粒子の製造に適している。
ゼラチンなどの水溶性高分子の水溶液からなる複数個の液滴を放射線の照射により架橋処理すると、水分を含有する架橋水溶性高分子ゲル粒子(例えば、架橋ゼラチンゲル粒子)を得ることができる。架橋水溶性高分子ゲル粒子を乾燥すれば、乾燥粒子を得ることができる。架橋水溶性高分子粒子において、水溶性高分子は、架橋によって水溶性が実質的に失われる。
本発明の照射架橋水溶性高分子粒子は、
a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、
b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから5mmまでの範囲内であり、
c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、
d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、
e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示すものである。
本発明の照射架橋水溶性高分子粒子は、下記の工程A乃至Eを含む方法によって製造することができる。
(A)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%の水溶性高分子の水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該水溶性高分子水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程A;
(B)該W/O型エマルジョンを、放射線が透過することができる厚みの層に形成する工程B;
(C)該W/O型エマルジョン層に放射線を照射して、該液滴中の水溶性高分子を架橋させることにより、架橋水溶性高分子粒子を形成する工程C;
(D)該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程D;及び
(E)該混合液から架橋水溶性高分子粒子を分離する工程E。
本発明でW/O型エマルジョンを調製するのに用いるオイルとしては、所定の範囲内の動粘度を有し、放射線の照射条件下で架橋または分解を引き起こさないものである。該オイルとしては、生体安全性に優れるものが好ましい。生体安全性に優れるオイルを用いると、仮に架橋水溶性高分子粒子(以下、「架橋粒子」と略記することがある)中に微量のオイルが残留しても、架橋粒子の生体安全性を損なうことがない。
オイルの具体例としては、例えば、シリコーン油、高級脂肪酸エステルなどの合成油;例えば、ヒマワリ油、グレープシード油、ゴマ油、コーン油、アプリコット油、ひまし油、アボカド油、オリーブ油、小麦胚芽油、スイートアーモンド油、ヤシ油、西洋アブラナ油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカデミア油、なたね油、からしな油等の植物油;が挙げられる。これらのオイルの中でも、シリコーン油、オリーブ油、ひまし油、なたね油、及びからしな油からなる群より選ばれる少なくとも一種のオイルが好ましい。
シリコーン油としては、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。市販のシリコーン油としては、例えば、信越化学工業社製のシリコーンオイルKF−96−500cs、KF−96−1,000cs、KF−96−3,000cs、KF−96−5,000cs、KF−96H−6,000csなどが挙げられる。500csなどの市販品の動粘度は、25℃で測定した値である。
これらのオイルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができるが、架橋処理後のオイルの回収や再利用の観点からは、それぞれ単独で使用することが望ましい場合が多い。
オイルの37.8℃で測定した動粘度は、20〜6,000mm/s、好ましくは30〜5,500mm/s、より好ましくは40〜5,000mm/sの範囲内である。動粘度が上記範囲内にあるオイルを用いると、ゼラチンなどの水溶性高分子の水溶液の液滴が合一することなく均一に分散したW/O型エマルジョンを形成することができる。さらに、動粘度が上記範囲内にあるオイルを用いると、架橋粒子同士の合一、架橋粒子の機壁や装置各部への付着、架橋粒子の沈殿などを抑制することができる。
オイルの動粘度が低すぎると、架橋粒子の機壁や装置各部への付着、架橋粒子の沈殿などが生じて、架橋粒子の収率が著しく低下する。オイルの動粘度が高すぎると、ゼラチンなどの水溶性高分子の水溶液の液滴が合一することなく均一に分散したW/O型エマルジョンを形成することが困難となり、回収時の掻き取りも困難となる。オイル及びW/O型エマルジョンは、架橋処理の際に比較的高温に保持されることが多いため、オイルの動粘度の測定温度を37.8℃に設定した。
前記工程Aでは、測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%の水溶性高分子の水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該水溶性高分子水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する。
ゼラチンなどの水溶性高分子の水溶液の量は、W/O型エマルジョンの全量を基準にして、通常、1〜40質量%、好ましくは1.3〜30質量%、より好ましくは1.5〜20質量%の範囲内である。W/O型エマルジョン中の水溶性高分子水溶液の量が少なすぎると、架橋粒子の収率が低下する。W/O型エマルジョン中の水溶性高分子水溶液の量が多すぎると、均一な粒子径の液滴を有するW/O型エマルジョンを形成することが困難となり、W/O型エマルジョンの形成自体が困難になることもある。
W/O型エマルジョンを調製するには、ゼラチンなどの水溶性高分子水溶液の温度を、通常、20〜45℃、好ましくは25〜43℃の範囲内に調節する。次いで、40〜70℃の範囲内の温度に調節したオイルを含有する容器内に水溶性高分子水溶液を投入し、撹拌装置で撹拌して、オイル中に水溶性高分子水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを調製する。W/O型エマルジョンの調製を小規模で行う場合には、例えば、三つ口丸底フラスコ内にオイルを入れて40〜70℃の範囲内の温度に調節し、次いで、ゼラチンなどの水溶性高分子水溶液を投入し、撹拌用モータに取り付けた攪拌用プロペラ等で通常100〜1,000rpm、好ましくは200〜600rpm程度の回転数で均一に攪拌する。W/O型エマルジョン中でのゼラチンなどの水溶性高分子水溶液の粒子径は、0.5μmから5mmの範囲内で任意に調整することができる。
W/O型エマルジョンの調製に際し、オイル中に界面活性剤を含有させることができる。オイル中に界面活性剤を含有させることにより、ゼラチンなどの水溶性高分子水溶液の均一な液滴を形成させることが容易となる上、W/O型エマルジョンの経時的な安定性を向上させることができ、架橋粒子の合一を抑制することもできる。
界面活性剤としては、低毒性または無毒性のものが好ましい。界面活性剤のHLBは、好ましくは1.8〜20.0、より好ましくは2.0〜17.0、さらに好ましくは2.1〜16.7の範囲内である。界面活性剤のHLBが上記範囲内にあることによって、ゼラチンなどの水溶性高分子水溶液の液滴の乳化による分散性を良好にすることができる。
界面活性剤の具体例としては、ソルビタンモノオレエート〔和光純薬工業社製「Span80」(登録商標);HLB=4.3)、ソルビタンモノラウレート〔和光純薬工業社製「Span20」(登録商標)HLB=8.6〕、ソルビタンモノステアレート(HLB=4.7)などのソルビタンモノ脂肪酸エステル;
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート〔和光純薬工業社製「Tween20」(登録商標)、HLB=16.7〕、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート(HLB=9.6)、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート(HLB=10.0)、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリステアレート(HLB=10.5)、ポリオキシエチレン(4)ソルビタントリオレエート(HLB=11.0)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(HLB=14.9)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;などを挙げることができる。
界面活性剤を添加する場合、その濃度は、オイル量を基準として(オイル量=100質量%)、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%の範囲内である。界面活性剤の濃度が上記範囲内にあることによって、ゼラチンなどの水溶性高分子水溶液の均一な粒子径を持つ液滴を形成することが容易となる。界面活性剤の濃度が低すぎると、その添加による効果が小さくなり、高すぎると、W/O型エマルジョンの保存中に水溶性高分子水溶液の液滴の凝集が発生し易くなる。
工程Bでは、W/O型エマルジョンを、放射線が透過することができる厚みの層に形成する。W/O型エマルジョン層を形成するには、キャリアフィルム等の支持体上に塗工したり、容器(「鋳型」と呼ばれることがある)内に注入したりする方法を採用することができる。W/O型エマルジョンを塗工または流延するには、均一な厚みの層を迅速に形成する観点から、該W/O型エマルジョンを25〜40℃の範囲内の温度に保持しておくことが好ましい。
W/O型エマルジョンを支持体上に塗工する方法では、通常、0.5μmから3mmの厚みの層を形成することが好ましい。層厚が厚すぎると、支持体上から塗工液が流れ落ちたり、均一な厚みの層を形成することが困難になったりする。層厚が薄すぎると、架橋効率や架橋処理後のW/O型エマルジョンの回収効率が低下する。
他方、W/O型エマルジョンを容器内に注入する方法は、電子線照射では減衰による透過能力不足により十分な深度にまで電子線が到達せず、架橋体を得るに至らないため不向きであり、通常はγ線照射により架橋粒子を作製するのに用いる。γ線照射によりゼラチン架橋粒子を作製する際には、W/O型エマルジョンを容器内に注入してバッチ処理を行うが、容器の高さ及びW/O型エマルジョンの層厚は、通常用いられる範囲内において特に制限はなく、例えば、150mm程度の高さの容器に、層厚が10mmから150mm程度までのW/O型エマルジョンを注入することができる。γ線照射によりゼラチン架橋粒子を作製する際には、放射線の透過度が電子線より強いため、減衰を問題にすることなく、平均粒子径の大きな架橋粒子を容易に製造することができる。
工程Cでは、該W/O型エマルジョン層に放射線を照射して、該液滴中の水溶性高分子を架橋させることにより、架橋水溶性高分子粒子を形成する。放射線としては、電子線及びγ線が好ましい。放射線の種類は、その透過度(厚み方向の減衰率)や架橋処理条件(例えば、連続的処理またはバッチ式処理)などに応じて選択することが好ましい。
電子線の照射には、汎用の電子線照射装置を用いることができる。電子線の照射には、例えば、NHVコーポレーション製の電子線照射装置〔CURETRON EBC−200−20−15(登録商標)〕を用いた加速電圧の上限値が200kVでの電子線照射;NHVコーポレーション製電子線照射装置〔EPS−800(登録商標)〕を用いた加速電圧の上限値800kVでの電子線照射を挙げることができるが、これらに限定されない。
架橋粒子の製造には、電子線照射装置の特性による制約を受けることがある。例えば、加速電圧200kVの電子線照射装置を用いて、W/O型エマルジョン層に電子線を照射したとき、表面の吸収線量を100%とすると、200μmの深さの箇所では、約45%まで相対線量が減衰する。加速電圧800kVの電子線照射装置では、2,500μmの深さの箇所では、相対線量が約28%まで減衰する。深部での相対線量が減衰すると、そこでの電子線照射による液滴中の水溶性高分子の架橋度が低下する。均一な架橋及び/または高い架橋度を達成するには、高い相対線量が得られるような加速電圧で電子線照射を行うか、W/O型エマルジョン層の厚みを調整することが望ましい。
電子線の照射線量は、通常、5〜3,000kGy、好ましくは5〜2,000kGy、より好ましくは10〜1,000kGyの範囲内である。電子線の照射線量の最適値は、加速電圧と被照射物の特性などに依存して変動する。例えば、加速電圧200kVでは、照射線量10〜1,000kGyで良好な架橋粒子を形成することができる。加速電圧800kVでは、照射線量5〜600kGyで良好な架橋粒子を形成することができる。側鎖に電気的あるいは立体的障害を有する官能基を付加したゼラチン誘導体を用いる場合には、架橋効率が劣るため、比較的大きな照射線量を選択することが好ましい。
W/O型エマルジョンをキャリアフィルム等の支持体上に塗工し、該支持体を水平方向に走行させながら連続的に電子線照射を行う場合には、電子流(mA)と照射域のW/O型エマルジョン層の移動速度(m/分)とから規定される所望の照射線量(kGy)の電子線を照射して、ゼラチンなどの水溶性高分子の架橋を行う。電子線の照射は、オゾンの発生を避けたり、架橋効率を上げたりするために、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
γ線照射を行う場合には、γ線照射装置を用いて、通常、5〜3,000kGy、好ましくは5〜2,000kGy、より好ましくは10〜1,000kGyの範囲内の照射線量となるように、W/O型エマルジョン層にγ線を照射する。γ線の照射は、バッチ式で行うことができる。γ線は、厚みが大きいW/O型エマルジョン層でも透過することができるので、容器内の底部に厚みのあるW/O型エマルジョン層を形成し、バッチ式で照射する方式に適している。
工程Dでは、放射線照射による架橋処理後のW/O型エマルジョン層に、その中のオイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する。有機溶媒は、オイルを溶解させることにより、水溶性高分子水溶液の液滴中で架橋処理されて生成した架橋ゲル粒子をオイル成分から分離するために使用する。W/O型エマルジョンを支持体上に塗工して塗工層を形成している場合には、架橋処理後、該塗工層上から有機溶媒を滴下する方法が好ましい。
W/O型エマルジョン層中で架橋粒子を製造後、オイル成分を除去するために用いる有機溶媒としては、オイルに対する溶解性があり、オイルを溶解して除去することができるものであればよい。このような有機溶媒としては、アセトンなどのケトン系溶媒;トルエンなどの芳香族系溶媒;などが好ましい。W/O型エマルジョンと有機溶媒との容量比は、通常、1:2〜1:99、好ましくは1:4〜1:80、より好ましくは1:5〜1:50である。W/O型エマルジョンに対する有機溶媒の容量比を上記範囲内とすることによって、架橋粒子間の凝集を抑制しつつ、オイル成分を有機溶媒に溶解させて、架橋ゲル粒子から分離し除去することが容易となる。
工程Eでは、W/O型エマルジョンと有機溶媒との混合液から架橋水溶性高分子粒子を分離する。W/O型エマルジョンを支持体上に塗工して塗工層を形成している場合には、例えば、ブレードを押し当てて、支持体上から混合液を回収する。その後、混合溶液を十分に攪拌し、遠心分離器(例えば、久保田製作所製「KUBOTA2010」)を用いて、好ましくは1,000〜10,000rpm、より好ましくは2,000〜8,000rpmの回転速度で、通常、1〜30分間、好ましくは5〜15分間遠心分離を行い、架橋粒子を沈殿させる。
架橋粒子が沈殿した混合液から上清を除去する。沈殿物に有機溶媒を加えて、超音波洗浄装置(例えば、エスエヌディ社製「iuchi、US−4」、高周波電力200W、発振周波数38kHz)を用いて、室温(20±5℃)で、例えば、20秒間から1分間、超音波を発振し、架橋粒子の懸濁液を形成する。その後、前記と同様の操作で遠心分離を行い架橋粒子を沈殿させる。この上清を除去して有機溶媒を添加し、超音波洗浄を行う。この操作は、更に必要であれば、2〜4回程度繰り返し、W/O型エマルジョン中の架橋粒子(架橋ゲル粒子)からオイル成分の除去を行う。
上記で得られた架橋粒子は、薬剤の担持や長期間保存のために、減圧乾燥または凍結乾燥させることができる。凍結乾燥は、例えば、架橋粒子を蒸留水に入れ、液体窒素中で30分間以上または−80℃で1時間以上凍結させた後、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行う。
このようにして、前記a)〜e)に示される特性を持つ架橋粒子を得ることができる。図1に、本件明細書の実施例1で得られた架橋ゼラチンゲル粒子を乾燥した水分を実質的に含まない乾燥粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(倍率=6000倍)を示す。図1から明らかなように、架橋ゼラチン粒子は、乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成している。該乾燥粒子は、乾燥状態では互いに付着している場合があるように見えるが、粒子の独立した形状自体は明確である。乾燥粒子を水で膨潤させて架橋ゼラチンゲル粒子を形成すれば、乾燥状態で互いに付着した部分が存在していても、撹拌や超音波等による外力などによって、実質的に個々に独立した膨潤粒子を容易に形成することができる。
架橋ゼラチン粒子などの架橋粒子は、その乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから5mmまでの範囲内である。架橋粒子の平均粒子径は、W/O型エマルジョンの調製工程、架橋処理条件などを適宜選択することによって、小粒子径から大粒子径まで変化させることができる。目的に応じて、適宜必要な粒子径を持つ乾燥粒子を、シーブを用いて篩い分けして使用することもできる。架橋ゼラチン粒子を生体内に局所投与する場合は、平均粒子径が0.5〜150μmの乾燥粒子を用いるのが好ましい。
架橋ゼラチン粒子は、乾燥状態では、内部まで多数の孔を有する球状のスポンジ様物質である。そのため、架橋粒子は、水で膨潤させることができる。架橋ゼラチン粒子などの架橋粒子の含水率は、通常、50〜99%、好ましくは60〜98%、多くの場合、92〜97%の範囲内である。架橋粒子の架橋度が高くなるほど、その含水率は低くなる。
含水率の測定は、以下の方法により行うことができる。アセトンなどの有機溶媒で洗浄後の水分を実質的に含まない乾燥粒子(乾燥した架橋ゼラチン粒子)の平均粒子径を計測する。該乾燥粒子を、温度5℃で3日間蒸留水に浸漬して膨潤させる。水膨潤した架橋粒子の平均粒子径を測定する。各平均粒子径から、下記の式により、各粒子の体積を算出する。
乾燥粒子の体積=(4/3)×π×(乾燥粒子の平均直径/2)
水膨潤粒子の体積=(4/3)×π×(水膨潤粒子の平均直径/2)
含水率は、下記式に従って算出する。
含水率(%)=[〔(水膨潤粒子の体積)−(乾燥粒子の体積)〕/(水膨潤粒子の体積)]×100
本発明の架橋ゼラチン粒子などの架橋粒子は、乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができる。
本発明の架橋ゼラチン粒子などの架橋粒子は、色差計を用いてL表色系を測定したとき、L値が90.00以上、好ましくは91.00以上で、b値が9.00以下、好ましくは8.00以下の色相を示す。W/O型エマルジョン中で、電子線などの放射線の照射により架橋して得られた架橋ゼラチン粒子などの架橋粒子は、架橋剤等の化学物質の残留がなく、高温での熱履歴も受けていないため、明るさが強く(L値が90.00以上)、かつ、黄色味が弱い(b値が9.00以下)という独特の色相を示す。L値の上限値は、通常、96.00、多くの場合、95.00である。b値の下限値は、通常、3.00、好ましくは3.30である。
これに対して、例えば、グルタルアルデヒドなどの架橋剤を用いて、化学架橋法により架橋して得られた架橋ゼラチン粒子などの架橋粒子は、架橋構造中に架橋剤が架橋骨格として取り込まれるため、架橋剤の量に応じて、明るさが弱く(L値が90.00未満)、かつ、黄色味が強い(b値が9.00超過)色相を示す。このような傾向は、高架橋度(低含水率)品になるほど顕著に現れる。
電子線の照射により、W/O型エマルジョン中のゼラチン水溶液の液滴を架橋処理するには、下記の工程1乃至6を含む製造方法を採用することが好ましい。
(1)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%のゼラチンの水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程1;
(2)支持体上に、該W/O型エマルジョンを塗工して、厚みが5μmから3mmまでの範囲内の塗工層を形成する工程2;
(3)該塗工層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるように電子線を照射して、該液滴中のゼラチンを架橋することにより、架橋ゼラチン粒子を形成する工程3;
(4)該塗工層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該塗工層のW/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程4;
(5)該混合液を支持体上から回収する工程5;及び
(6)回収した混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する工程6。
ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンを用いることが好ましい。オイルとしては、シリコーン油、オリーブ油、ひまし油、なたね油、及びからしな油からなる群より選ばれる少なくとも一種のオイルを用いることが好ましい。オイルとして、該オイル中にHLBが1.8〜20.0の範囲内にある界面活性剤を含有するものを用いることが好ましい。
前記工程1及び6は、前述の照射架橋水溶性高分子粒子の製造工程A及びEと同様の工程とすることができる。前記工程2乃至5は、連続的な処理工程で実施することが好ましい。連続的な処理工程とすることにより、化学架橋法で行われていた煩雑な工程を大幅に省略することができる。
具体的には、該工程2が、水平方向に走行する支持体上に、該W/O型エマルジョンを塗工して、厚みが5μmから3mmまでの範囲内の塗工層を連続的に形成する工程であり、該工程3が、水平方向に走行する支持体上の塗工層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるように電子線を照射して、該液滴中のゼラチンを連続的に架橋する工程であり、該工程4が、水平方向に走行する塗工層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を連続的に加えて、該塗工層のW/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程であり、かつ、該工程5が、該混合液を支持体上から連続的に回収する工程である連続的な処理工程である。
電子線照射装置を用いると、連続的な架橋処理を行うことができる。他方、キャリアフィルム等の支持体上にW/O型エマルジョンの塗工層を形成するには、その厚みを5μmから3mmまでの範囲、好ましくは10μmから2.5mmまでの範囲、より好ましくは20〜1,000μm、多くの場合、50〜400μmの範囲内に調節することが好ましい。塗工層の厚みが薄すぎると、架橋ゼラチン粒子の生産効率が低下したり、所望の平均粒子径を有する架橋ゼラチン粒子を得ることが困難になることがある。塗工層の厚みが厚すぎると、支持体上から塗工液が垂れ落ちたり、均一な厚みの塗工層の形成が困難になったり、あるいは電子線の連続的な照射による均一な架橋が困難になったりする。
水平方向に走行する支持体としては、駆動装置によって回転するエンドレスベルト、該エンドレスベルト上に載置したキャリアフィルム等が挙げられる。キャリアフィルムは、W/O型エマルジョンを塗工して塗工層を形成する際にキャリアとして用いられる。キャリアフィルムの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂;などの各種プラスチック材料を挙げることができるが、これらに限定されない。キャリアフィルムは、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。キャリアフィルムは、単層フィルムであっても、他のプラスチックフィルムや紙などとの多層フィルムであってもよい。キャリアフィルムは、W/O型エマルジョンを弾くことなく塗工することができるものであることが好ましい。キャリアフィルムの表面特性を改質するために、コロナ放電処理などの表面処理を行ってもよい。
工程3では、支持体上の塗工層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるように電子線を照射して、液滴中のゼラチンを架橋することにより、架橋ゼラチン粒子を形成する。照射線量は、好ましくは5〜2,000kGy、より好ましくは10〜1,000kGyの範囲内である。支持体を水平方向に走行させながら連続的に電子線照射を行う場合には、電子流(mA)と照射域のW/O型エマルジョン層の移動速度(m/分)とから規定される所望の照射線量の電子線を照射する。
工程4では、架橋処理後の塗工層に、オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、塗工層のW/O型エマルジョンと有機溶媒とを含有する混合液を形成する。工程4において、水平方向に走行する支持体上の塗工層に有機溶媒を連続的に加えて、塗工層のW/O型エマルジョンと有機溶媒とを含有する混合液を形成するには、塗工層の上から有機溶媒を連続的に滴下する方法を採用することが好ましい。W/O型エマルジョンと有機溶媒との容量比は、通常、1:2〜1:99、好ましくは1:4〜1:80、より好ましくは1:5〜1:50である。
工程5では、該混合液を支持体上から回収する。工程5において、混合液を支持体上から連続的に回収するには、例えば、ステンレス製の板からなるドクターブレードを塗工面に押し当てて、支持体上から混合液を回収する方法を採用することが好ましい。
工程6では、回収した混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する。前述の照射架橋水溶性高分子粒子の製造工程Eと同様、混合溶液を十分に攪拌し、遠心分離器を用いて、好ましくは1,000〜10,000rpm、より好ましくは2,000〜8,000rpmの回転速度で、通常、1〜30分間、好ましくは5〜15分間遠心分離を行い、架橋粒子を沈殿させる。架橋粒子が沈殿した混合液から上清を除去する。沈殿物に有機溶媒を加えて、超音波洗浄装置を用いて、室温で20秒間から1分間超音波を発振し、架橋粒子の懸濁液を形成する。その後、再び遠心分離を行い架橋粒子を沈殿させる。この上清を除去してから有機溶媒を添加し、超音波洗浄を行う。この操作を、必要に応じて2〜4回程度繰り返し、W/O型エマルジョン中の架橋ゼラチン粒子(架橋ゼラチンゲル粒子)からオイル成分の除去を行う。トルエンなどの有機溶媒を減圧除去すれば、電子線の照射により架橋した水分を含まない乾燥ゼラチン粒子を得ることができる。
前記各工程1〜6を順次実施することにより、a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから2mmまでの範囲内であり、c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示す電子線照射架橋ゼラチン粒子を得ることができる。
乾燥粒子(水分を含まない架橋ゼラチン粒子)の平均粒子径は、0.5μmから2mmまでの範囲、好ましくは0.5μmから1.5mmまでの範囲、より好ましくは0.5〜1,000μm、多くの場合、0.5〜400μmまたは0.5〜150μmの範囲内に調節することが好ましい。
電子線の照射により架橋ゼラチン粒子を製造する方法の利点は、工程の殆どを連続的な工程で行うことができる点にある。従来から行われている化学架橋法では、架橋剤の添加工程、反応停止剤の添加工程、及び架橋剤などの化学物質の洗浄工程が必要となるため、連続的な工程で実施することができない。
化学架橋法では、ゼラチンなどの水溶性高分子を水で膨潤させた状態で架橋反応を行うため、有機溶媒を投入したり、水洗したり、乾燥したりする際に、著しい粒子の収縮や変形、破裂が生じやすく、形状が不安定な架橋粒子が得られやすい。これに対して、W/O型エマルジョン層に電子線を照射して架橋する方法では、架橋粒子の大きさの変化が小さく、球状を維持した架橋ゼラチン粒子を製造することができる。
γ線の照射により、W/O型エマルジョン中のゼラチン水溶液の液滴を架橋処理するには、下記の工程I乃至Vを含む製造方法を採用することが好ましい。
(I)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%のゼラチンの水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程I;
(II)該W/O型エマルジョンを容器内に注入して、W/O型エマルジョン層を形成する工程II;
(III)該W/O型エマルジョン層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるようにγ線を照射して、該液滴中のゼラチンを架橋する工程III;
(IV)該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程IV;及び
(V)該混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する工程V。
ゼラチンとしては、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンを用いることが好ましい。オイルとしては、シリコーン油、オリーブ油、ひまし油、なたね油、及びからしな油からなる群より選ばれる少なくとも一種のオイルを用いることが好ましい。オイルとして、該オイル中にHLBが1.8〜20.0の範囲内にある界面活性剤を含有するものを用いることが好ましい。
γ線の照射によりゼラチン粒子を架橋する場合、電子線の照射の場合とほぼ同様の操作で架橋ゼラチン粒子を製造することができる。γ線の照射架橋の場合には、γ線の照射空間が他の工程とは隔離されていること、γ線の照射効率が低く長時間の照射が必要となることなどから、連続的な工程での架橋処理を避けて、バッチ式で架橋処理を行うことが好ましい。
他方、γ線は、厚み方向の透過性に優れるので、バッチ式でも大量に架橋ゼラチン粒子を製造したり、平均粒子径が大きい架橋ゼラチン粒子を製造したりすることが可能である。
前記工程IIでは、W/O型エマルジョンを、ガラス、金属、各種プラスチック材料(例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂など)から形成された容器(鋳型)内に注入して、W/O型エマルジョン層を形成する。容器の形状としては、円筒状、立方体状、直方体状の容器が好ましい。例えば、金属容器としては、半径50mm、高さ150mmのアルミニウム缶を挙げることができる。γ線は、貫通力が強いため、容器の厚みやW/O型エマルジョン層の厚みを任意に設定することができる。W/O型エマルジョン層の厚みは、通常、5μmから140mmまでの範囲内とすることができるが、この範囲内に限定されない。W/O型エマルジョン層の厚みは、操作性の観点から、好ましくは10mmから140mmまで、より好ましくは15mmから120mmまで、特に好ましくは20mmから100mmまでの範囲内に調節することができる。W/O型エマルジョン層の厚みが薄すぎると、架橋ゼラチン粒子の生産効率が低下したり、所望の平均粒子径を有する架橋ゼラチン粒子を得ることが困難になることがある。
工程IIIにおけるガンマ線の照射は、例えば、W/O型エマルジョンを注入した容器をベルトコンベア上に載せて、γ線照射物質の周りを周回させる方法を採用することが好ましい。γ線を必要な照射線量で照射するには、該容器を、γ線照射物質の周りを複数回にわたって周回させることが好ましい。γ線の照射による架橋処理を行った後、トルエンなどのオイルを溶解できる有機溶媒を加えて、混合液を形成し、次いで、該混合液の遠心分離を行ってオイルを除去し、さらに必要に応じて有機溶媒による前記の如き精製処理を繰り返し行うことにより、γ線照射架橋ゼラチン粒子を得ることができる。
前記各工程を順次実施することにより、a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから5mmまでの範囲内であり、c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示すγ線照射架橋ゼラチン粒子を得ることができる。
乾燥粒子(水分を含まない架橋ゼラチン粒子)の平均粒子径は、0.5μmから5mmまでの範囲、好ましくは0.5μmから4mmまでの範囲、より好ましくは0.5μmから3mmまでの範囲内に調節することが好ましい。
架橋粒子は、凍結乾燥することができる。架橋ゼラチン粒子の凍結乾燥は、例えば、架橋ゼラチン粒子を蒸留水に入れ、液体窒素中で30分間以上または−80℃で1時間以上凍結させた後、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させて、水分を除去することにより行うことができる。凍結乾燥した架橋ゼラチン粒子は、薬液の含浸性や保持性に優れている。
オイル成分の除去と洗浄に用いたアセトンなどの有機溶媒を減圧乾燥により除去して得られた乾燥架橋ゼラチン粒子や凍結乾燥した架橋ゼラチン粒子は、多種の溶媒や溶液を含浸することが可能である。架橋ゼラチン粒子は、生体内において代謝によって分解する特性を有している。
本発明の架橋ゼラチン粒子などの架橋水溶性高分子粒子には、様々な生理活性因子を担持させることができる。生理活性因子としては、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF−β1)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来増殖因子(PDGF−BB)、角化細胞増殖因子(KGF)、骨形成因子(BMP−2)、血管内皮増殖因子(VEGF)、これらをコードするプラスミドなどが挙げられる。この他、抗癌剤(アドリアマイシン)、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、カンデサルタン、バルサルタン、エリスロポエチンなどの生理活性因子を、架橋ゼラチン粒子に担持させることができる。
本発明の架橋ゼラチン粒子などの架橋水溶性高分子粒子は、化粧品の成分として利用することができる他、工業用等多くの技術分野で使用することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例中の部及び%は、特に断りのない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
本発明における各種物性及び特性の測定法、試験法などは、次の通りである。
(1)オイルの動粘度:
オイルの動粘度は、日本工業規格のJIS Z 8803に規定されている液体の粘度測定方法により、温度37.8℃で、毛細管粘度計を用いて測定した。
(2)平均粒子径:
乾燥した架橋ゼラチン粒子をプレパラート上に載せ、レーザー顕微鏡(オリンパス製の走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS1200)を用いて、任意の100個を観察し、粒子径を計測し、その平均値(平均粒子径)と標準偏差を求めた。
(3)回収率:
架橋ゼラチン粒子の回収率(%)は、次式に基づいて算出した。
回収率(%)=〔回収ゼラチン粒子量(g)/ゼラチン投入量(g)〕×100
(4)含水率:
電子線の照射により架橋処理を行い、次いで、オイル成分を除去し、アセトンで精製した後、減圧乾燥することにより得られた水分を含有しない乾燥架橋ゼラチン粒子の平均粒子径を測定した。乾燥架橋ゼラチン粒子を温度5℃で3日間蒸留水に浸漬して膨潤させた。水膨潤した架橋ゼラチン粒子の平均粒子径を測定した。各平均粒子径から、前記の式により、各粒子の体積を算出した。含水率は、下記式に従って算出した。
含水率(%)=[〔(水膨潤粒子の体積)−(乾燥粒子の体積)〕/(水膨潤粒子の体積)]×100
(5)耐溶解性:
乾燥した架橋ゼラチン粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬し、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持しているか、それとも溶解してしまうのかを観察した。
(6)L表色系の測定:
色差計〔コニカミノルタセンシング株式会社製色差計「CM−2600d」〕を用いて、乾燥架橋ゼラチン粒子のL表色系を測定した。凹凸面があるサンプルとして、SCE(正反射光除去)の条件で、黒色ボード(T89)上にサンプルをおいて測定した。光源としてD65(太陽光に近い光)を用いて、視野角2度で測定した。サンプルの使用量は、約2mgであった。このサンプル量は、3mmφの観察視野中から黒色ボードの黒色が見えない程度に均一に散布できる量である。色差(ΔEab)は、実施例11のL値を基準とし、ΔEab=√〔(ΔL+(Δa+(Δb〕の式により求めた相対的な値である。
[実施例1]
1.W/O型エマルジョンの調製:
シリコーン油(信越化学工業社製「KF−96−500cs」)390gに、界面活性剤としてソルビタンモノオレエート〔HLB=4.3、ICI社製のSpan80(登録商標)相当品、和光純薬工業(株)製〕10gを配合し、溶解した。該シリコーン油を60℃に保温して撹拌用モーター(新東科学社製、スリーワンモーター、「EYELA mini D.C. Stirrer」)とテフロン(登録商標)製撹拌用プロペラを三つ口丸底フラスコに取り付け、これらを固定した装置にて400rpmで撹拌した。ここに、60℃に保温した10%アルカリ処理ゼラチン水溶液(アルカリ処理ゼラチンの等電点=5.0、分子量99,000)8gを投入し、撹拌してW/O型エマルジョンを調製した。
2.電子線の照射による架橋:
上記で得られたW/O型エマルジョンを40℃の温度で保温した状態下で、ポリエステルフィルム上に塗工し、厚み100μmのW/O型エマルジョン層を形成した。NHVコーポレーション製電子線照射装置(CURETRON EBC-200-20-15)を用いて、窒素雰囲気下で加速電圧上限200kVで、照射線量が60kGyとなるようにW/O型エマルジョン層上から電子線を照射した。
3.回収:
塗工層上にトルエンを滴下し、次いで、塗工層にステンレス製の板であるドクターブレードを押し当てて、W/O型エマルジョンとトルエンとの混合液を回収した。トルエンの滴下量は、W/O型エマルジョン5mLに対して、45mLとした。
3.洗浄:
W/O型エマルジョンとトルエンとの混合液を撹拌した後、遠心分離機〔株式会社久保田製作所製「KUBOTA2010」〕にて4,000rpmで10分間遠心分離を行い、架橋ゼラチン粒子を沈殿させた。上清を除去した後、トルエンを添加して、超音波洗浄(株式会社エスエヌディ社製「iuchi、US−4」、高周波電力200W、発振周波数38kHz)にて、再度、架橋ゼラチン粒子を懸濁液とした。この懸濁液を遠心分離機で4,000rpmで10分間遠心分離を行い、架橋ゼラチン粒子を沈殿させた。この上清を除去した後、トルエンを添加し、超音波洗浄、遠心分離の操作を行った。この操作は、2度繰り返し行った。これらの操作により、架橋ゼラチン粒子からオイル成分のシリコーン油を除去した。
4.乾燥:
沈殿部よりトルエンを減圧除去して、電子線照射架橋した水分を含まない状態(ドライ)の架橋ゼラチン粒子を得た。この架橋ゼラチン粒子のSEM写真(6000倍)を図1に示す。結果を表1に示す。
[実施例2]
シリコーン油を、KF−96−500csからKF−96H−6000cs〔信越化学工業(株)製〕に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
シリコーン油をオリーブ油〔日本薬局方、東海製薬(株)製〕に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
界面活性剤を、ソルビタンモノオレエートからソルビタントリステアレート〔HLB=2.1、和光純薬工業(株)製〕に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
界面活性剤を、ソルビタンモノオレエートからソルビタンモノラウレート〔HLB=8.6、ICI社「Span20」(登録商標)相当品、和光純薬工業(株)製〕に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
界面活性剤を、ソルビタンモノオレエートからポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート〔HLB=16.7、ICI社「Tween20」(登録商標)相当品、和光純薬工業(株)製〕に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[実施例7]
アルカリ処理ゼラチンをカチオン化ゼラチン誘導体(エチレンジアミンをカルボジイミドで等電点9.0の酸処理ゼラチンにグラフトしたゼラチン誘導体;ニチバン(株)製〕に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[実施例8]
界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
電子線を照射しなかったこと以外は、実施例1と同条件で処理を行い、未架橋の乾燥ゼラチン粒子を得た。結果を表1に示す。
[比較例2]
シリコーン油を信越化学工業社製「KF−96−500cs」から信越化学工業社製「KF−96L−5cs」に代えたこと以外は、実施例1と同条件で電子線照射架橋処理と精製処理を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005351183
<考察>
実施例1〜8では、50%前後の回収率で架橋ゼラチン粒子が得られたが、比較例2では架橋ゼラチン粒子の器壁への付着や、沈殿のため、十分な回収量が得られず回収率が激減し、産業的な製造方法としては不適であった。
電子線を照射しなかった比較例1以外は、電子線の照射により架橋ゼラチン粒子の得られたことが確認できた。比較例1の未照射ゼラチン粒子は、37℃の温水に溶解してしまうことが確認された。
実施例1〜8の電子線照射架橋ゼラチン粒子は、いずれもL値が90.00以上で、かつ、b値が9.00以下であり、色相に優れていることが確認された。
[実施例9]
実施例3において、電子線の加速電圧300kVで、照射線量200kGyの電子線を照射したこと以外は、同じ条件で架橋処理と精製処理を行い、含水率93%の架橋ゼラチン粒子を得た。平均粒子径、含水率、色相、及び色差の測定結果を表2に示す。
[実施例10]
実施例9において、電子線の照射線量を200kGyから100kGyに変えたこと以外は、同じ条件で架橋処理と精製処理を行い、含水率95%の架橋ゼラチン粒子を得た。平均粒子径、含水率、色相、及び色差の測定結果を表2に示す。
[実施例11]
実施例9において、電子線の照射線量を200kGyから20kGyに変えたこと以外は、同じ条件で架橋処理と精製処理を行い、含水率99%の架橋ゼラチン粒子を得た。平均粒子径、含水率、色相、及び色差の測定結果を表2に示す。
[比較例3]
比較例1と同じ操作により得られた未架橋の乾燥ゼラチン粒子を4℃の水で膨潤させ、次いで、余剰水分を除去して、水膨潤ゼラチン粒子を調製した。該水膨潤ゼラチン粒子を、濃度2.5容量%グルタルアルデヒド水溶液40mlに加え、一昼夜4℃にて撹拌を続けてゼラチンを架橋した。架橋反応後、水洗を繰り返し、乾燥して、含水率90%の化学架橋ゼラチン粒子を得た。平均粒子径、含水率、色相、及び色差の測定結果を表2に示す。濃度2.5容量%グルタルアルデヒド水溶液は、濃度25容量%グルタルアルデヒド水溶液〔ナカライテスク(株)製電子顕微鏡用グルタルアルデヒド水溶液〕4mlに、総量40mlになるまでイオン交換水を加えて調製し、4℃に冷却したものである。
[比較例4]
比較例3において、濃度2.5容量%グルタルアルデヒド水溶液を濃度1.25容量%グルタルアルデヒド水溶液40mlに代えたこと以外は、同じ条件で架橋処理と精製処理を行い、含水率95%の化学架橋ゼラチン粒子を得た。平均粒子径、含水率、色相、及び色差の測定結果を表2に示す。
[比較例5]
比較例3において、濃度2.5容量%グルタルアルデヒド水溶液を濃度0.0063容量%グルタルアルデヒド水溶液に代えたこと以外は、同じ条件で架橋処理と精製処理を行い、含水率99%の化学架橋ゼラチン粒子を得た。平均粒子径、含水率、色相、及び色差の測定結果を表2に示す。
Figure 0005351183
<考察>
表2の結果から明らかなように、電子線の照射により架橋した架橋ゼラチン粒子は、いずれもL値が90.00以上で、かつ、b値が9.00以下であり、色相に優れていることが確認された。これに対して、化学架橋ゼラチン粒子は、L値が90.00未満で、かつ、b値が9.00超過であり、色相に劣るものであった。これらの結果は、両者の色差の値の差が大きいことからも明らかである。
[実施例12]
実施例1で調製したW/O型エマルジョンを、半径が50mmで高さが150mmのアルミニウム缶中に注入して、厚み30mmのW/O型エマルジョン層を形成し、次いで、γ線を照射線量100kGyで照射すると、含水率が95%のγ線照射架橋ゼラチン粒子が得られる。
本発明の電子線照射架橋ゼラチン粒子やγ線照射架橋ゼラチン粒子などの照射架橋水溶性高分子粒子は、生理活性因子などの薬剤の担体、化粧品の成分、各種工業用途などの技術分野で利用することができる。

Claims (17)

  1. 下記の工程A乃至E:
    (A)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%の水溶性高分子の水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該水溶性高分子水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程A;
    (B)該W/O型エマルジョンを、放射線が透過することができる厚みの層に形成する工程B;
    (C)該W/O型エマルジョン層に放射線を照射して、該液滴中の水溶性高分子を架橋させることにより、架橋水溶性高分子粒子を形成する工程C;
    (D)該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程D;及び
    (E)該混合液から架橋水溶性高分子粒子を分離する工程E;
    の各工程を含むことを特徴とする照射架橋水溶性高分子粒子の製造方法。
  2. 該水溶性高分子が、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンである請求項記載の製造方法。
  3. 該オイルが、シリコーン油、オリーブ油、ひまし油、なたね油、及びからしな油からなる群より選ばれる少なくとも一種のオイルである請求項記載の製造方法。
  4. 該工程Aで使用するオイルが、該オイル中にHLBが1.8〜20.0の範囲内にある界面活性剤を含有するものである請求項記載の製造方法。
  5. 該放射線が、電子線またはγ線である請求項記載の製造方法。
  6. 前記各工程を順次実施することにより、
    a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、
    b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから5mmまでの範囲内であり、
    c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、
    d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、
    e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示す
    照射架橋水溶性高分子粒子を得る請求項記載の製造方法。
  7. 下記の工程1乃至6:
    (1)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%のゼラチンの水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程1;
    (2)支持体上に、該W/O型エマルジョンを塗工して、厚みが5μmから3mmまでの範囲内の塗工層を形成する工程2;
    (3)該塗工層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるように電子線を照射して、該液滴中のゼラチンを架橋することにより、架橋ゼラチン粒子を形成する工程3;
    (4)該塗工層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該塗工層のW/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程4;
    (5)該混合液を支持体上から回収する工程5;及び
    (6)回収した混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する工程6;
    の各工程を含むことを特徴とする電子線照射架橋ゼラチン粒子の製造方法。
  8. 該ゼラチンが、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンである請求項記載の製造方法。
  9. 該オイルが、シリコーン油、オリーブ油、ひまし油、なたね油、及びからしな油からなる群より選ばれる少なくとも一種のオイルである請求項記載の製造方法。
  10. 該工程1において使用するオイルが、該オイル中にHLBが1.8〜20.0の範囲内にある界面活性剤を含有するものである請求項記載の製造方法。
  11. 該工程2が、水平方向に走行する支持体上に、該W/O型エマルジョンを塗工して、厚みが5μmから3mmまでの範囲内の塗工層を連続的に形成する工程であり、
    該工程3が、水平方向に走行する支持体上の塗工層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるように電子線を照射して、該液滴中のゼラチンを連続的に架橋する工程であり、
    該工程4が、水平方向に走行する塗工層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を連続的に加えて、該塗工層のW/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程であり、かつ、
    該工程5が、該混合液を支持体上から連続的に回収する工程である
    請求項記載の製造方法。
  12. 前記各工程を順次実施することにより、
    a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、
    b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから2mmまでの範囲内であり、
    c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、
    d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、
    e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示す
    電子線照射架橋ゼラチン粒子を得る請求項記載の製造方法。
  13. 下記の工程I乃至V:
    (I)測定温度37.8℃での動粘度が20〜6,000mm/sの範囲内にあるオイルと、濃度が1〜80質量%のゼラチンの水溶液とを混合し、撹拌して、該オイル中に該ゼラチン水溶液の液滴が分散したW/O型エマルジョンを形成する工程I;
    (II)該W/O型エマルジョンを容器内に注入して、W/O型エマルジョン層を形成する工程II;
    (III)該W/O型エマルジョン層に、照射線量が5〜3,000kGyの範囲内となるようにγ線を照射して、該液滴中のゼラチンを架橋する工程III;
    (IV)該W/O型エマルジョン層に、該オイルに対して溶解性を有する有機溶媒を加えて、該W/O型エマルジョンと該有機溶媒とを含有する混合液を形成する工程IV;及び
    (V)該混合液から架橋ゼラチン粒子を分離する工程V;
    の各工程を含むことを特徴とするγ線照射架橋ゼラチン粒子の製造方法。
  14. 該ゼラチンが、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カチオン化ゼラチン誘導体、及びサクシニル化ゼラチン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種のゼラチンである請求項13記載の製造方法。
  15. 該オイルが、シリコーン油、オリーブ油、ひまし油、なたね油、及びからしな油からなる群より選ばれる少なくとも一種のオイルである請求項13記載の製造方法。
  16. 該工程Iにおいて使用するオイルが、該オイル中にHLBが1.8〜20.0の範囲内にある界面活性剤を含有するものである請求項13記載の製造方法。
  17. 前記各工程を順次実施することにより、
    a)乾燥状態で、実質的に独立した形状を持つ乾燥粒子を形成し、
    b)乾燥粒子の平均粒子径が0.5μmから5mmまでの範囲内であり、
    c)乾燥粒子の含水率が50〜99%の範囲内であり、
    d)乾燥粒子を温度37℃の水中に24時間浸漬したとき、溶解することなく、水による膨潤状態で粒子形状を保持することができ、かつ、
    e)色差計を用いて乾燥粒子のL表色系を測定したとき、L値が90.00以上で、b値が9.00以下の色相を示す
    γ線照射架橋ゼラチン粒子を得る請求項13記載の製造方法。
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