JP5349836B2 - 描画方法及び描画装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体吐出方式によって各種パターニングを行う描画方法及び描画装置に関するものである。
近年、インクジェット等の液体吐出方式による様々なパターンの形成は、省材料、省工程、オンデマンド少量多品種生産などの観点で注目されている。このような工業用途への展開を意図した場合、素早く、基板面内に均一なドットを形成することが求められる。
インクジェットにより基板上に高密度なドットパターン、またはドットをつなげた膜の形成を行う場合、着弾したドットから蒸発したインク溶媒によりドット周囲の溶媒雰囲気濃度が高まり、隣接ドットにおける溶媒の蒸発に影響を与える。ドット密度の高い個所、多くは基板中央部の乾燥速度が、ドット密度の低い個所、多くは基板端部に比べて遅くなり、それによって乾燥後のドット形状または膜厚が大きく異なる。
このようなドット間の相互作用に対し、基板面内の乾燥の遅い部分(中央部分)をより早く乾燥させ、乾燥の遅い部分(端部)との乾燥速度差を小さくするために、基板上に配置されたドット群を覆うように乾燥手段を設ける方法が提案されている。例えば特許文献1では、基板中央部と基板端部とで乾燥手段と基板との距離に差をつけるという方法が提案されている。この方法によれば、乾燥の遅い場所は乾燥手段との距離を短くし、乾燥の速い場所は乾燥手段との距離を長くすることで基板面内のドット乾燥速度差を解消し、ドット形状の均一化を実現できる。
この他、乾燥の制御をドットの描画動作と同時に行うものも提案されている。例えば特許文献2では、着弾した液滴周囲の雰囲気を吸引することにより減圧環境に調整し、乾燥を促進させる方法が提案されている。この方法は、図7に示すように、基板に対してインクジェットヘッド101を相対的に走査することにより描画を行い、そのまま走査を続けることにより乾燥手段102が着弾したドット群の上方に移動するようになっている。この方法によれば、ドットDから蒸発する溶媒成分を、吸引によって取り去るため、基板面内でのドット間相互作用の乾燥への影響を排除することができ、ドット形状の均一性が高まる。
特開2005−275275号公報 特開2006−43691号公報
しかしながら、特許文献1のように、基板全体を覆う乾燥手段と基板との距離を、基板面内の乾燥速度分布に応じて相対的に変化させるという方法は、インクジェットによる描画が全て完了してからの一括乾燥である。このような方法を用いた場合には、描画動作中における個々の液滴乾燥を制御できない。さらに、基板に着弾後、数秒程度で乾燥してしまうインクを用いた場合には、この方法による乾燥制御は実質的に不可能である。
また、特許文献2に開示されている技術は、描画動作と同時に乾燥制御を行うものであるが、この方法においては、吸引によって生じる気流の分布について考慮されていない。すなわち、インクジェットヘッドにおけるノズル列方向のドット密度及び着弾したドット群の乾燥手段に対する相対位置が考慮されていない。
例えば、実際にインクジェットヘッドを用いて基板上にドットをパターニングする場合、多数存在するノズルのうち、製造精度やインク固化によるノズル詰まりなどの原因から、パターニングに適したノズル群はヘッドごと、あるいは時間の経過とともに変化する。
上述のような理由により、図7及び図8に示すように、その時々において異なるノズル群を用いて描画を行う場合、使用するノズル群の位置により着弾するドット群の密度の中心位置D0が変化する。その結果、ドット群の中心付近の最も乾燥の遅い個所と、乾燥手段102の中心位置Oに近くその出力が最も強い個所とが一致せずに、走査方向であるX方向と直交するY方向にずれΔyを生じる。このために、乾燥速度分布のバランスが崩れてしまう。
本発明は、パターンを描画するノズル群の位置に関わらず、描画動作と同時に、着弾・乾燥後のドット形状を均一に制御することのできる描画方法及び描画装置を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本発明の描画方法は、液体吐出ヘッド及び乾燥手段を描画対象の基板に対して相対的に移動させながら、前記液体吐出ヘッドの複数のノズルから液滴を吐出し、ドット群による描画後に前記乾燥手段によって乾燥させる描画方法において、前記乾燥手段は、前記液体吐出ヘッドと前記基板との相対的な移動における下流側に配置され、前記基板に着弾する前記ドット群の前記移動方向と直交する方向に対応した位置に配列された複数のスリットを有し、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分における吸引流速が、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の端部における吸引流速より速くなるように前記複数のスリットそれぞれから気流を吸引することにより前記ドット群の乾燥が行なわれ、前記基板に着弾する前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分の着弾位置が、前記移動方向と直交する方向に変化した時、前記着弾位置が変化したドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分における吸引流速が、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の端部における吸引流速より速くなるように、前記変化した着弾位置における前記吸引流速を変化させることを有することを特徴とする。
また、前記変化した着弾位置における前記吸引流速の変化は、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向に前記乾燥手段を前記液体吐出ヘッドに対して相対的に移動させることにより行なうことを特徴とする描画方法でもよい。
ドット群の着弾位置に応じて乾燥条件を変化させることで、着弾ドット群のうち乾燥が遅い部分の乾燥速度を、乾燥が速い部分に対して相対的に速めることができる。これにより、乾燥後のドット形状のばらつきを抑えて、ドット群によるパターンを利用した電子部品の部品性能の向上に貢献できる。
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、一実施形態による描画装置であるインクジェット描画装置を示す。このインクジェット描画装置は、インクジェットヘッド(液体出ヘッド)1及び乾燥手段2を搭載し、インクジェットヘッド1及び乾燥手段2に対して相対的に移動する描画対象である基板3に対して液滴を付与することで描画する。液滴の吐出に用いるノズルは、複数のノズルの中から任意に選択可能であり、使用するノズルと吐出の周波数によって様々なパターンを基板上に作製することができる。基板3はステージ10上に載置され、インクジェットヘッド1の吐出を制御するヘッドコントローラ11及び乾燥手段2は制御用PC12に接続される。
このインクジェット描画装置は、インクジェットヘッド1によって吐出された液滴が着弾した描画後に走査方向(X方向)下流側で乾燥できるように、インクジェットヘッド1の走査方向にインクジェットヘッド1を挟んで一対の乾燥手段2を備えている。インクジェットヘッド1及び乾燥手段2は、基板3との間にそれぞれ50μm〜10mm程度のギャップG1、G2を有しており、自由に基板上を相対移動できるようになっている。
各乾燥手段2は、図2に示すように、描画されるドットDのすべてを覆うように配置され、乾燥速度を、液滴Eの着弾によるドットDの着弾位置に応じて変化させることができるようになっている。
図3に示すように、乾燥手段2は、ドット群の幅方向に配列されたスリット2a〜2fによって矢印方向に発生する気流によって吸引乾燥を行い、各スリットの吸引流速を個別に制御する手段を有する。例えば、図3(a)に示すようにドット群の着弾位置が乾燥手段2の中央にあれば、中央のスリット2dの吸引速度を、端部に位置するスリット2a、2gより大きくする。図3(b)に示すように、ドット群の乾燥手段2に対する相対位置が変化した場合は、乾燥手段2内における吸引速度の分布を変化させる。すなわち、スリット2eによるドット群の中央部分の吸引速度が、ドット群の端部に位置するスリット2c、2gによる吸引速度より大きくなるように制御する。
ドット群の着弾位置は、ヘッドコントローラ11より出力されるトリガ信号から、制御用PC12において、ヘッドのどのノズルを駆動したかを判断し、ステージスキャン速度と吐出周波数から特定するようになっている。
あるいは、図4に示すように、上記の方法により特定されたドット群の着弾位置に応じて、インクジェットヘッド1に対して乾燥手段2を相対的に移動させる構成でもよい。例えば吐出ノズルの変更によりドット群の着弾位置がD1からD2へ変化した場合に、着弾ドット位置D1、D2に応じて乾燥手段2の位置をP1からP2へ移動させる。このようにして吐出ノズルの位置にあわせて、走査方向に直交するドット群の幅方向(Y方向)の乾燥速度分布を制御する。
乾燥手段2は、着弾ドット群において乾燥が遅い中央部分の乾燥速度を、乾燥の速い端部に対し相対的に速めることができる構成であればよい。図3に示すように、流量の制御が比較的簡単な複数のノズルの気流によるものが望ましいが、図5(a)に示すように、単一のスリット22aを中央に設けた乾燥手段22でもよい。また、図5(b)に示すように、ヒータ32aを用いた温度分布制御による乾燥手段32、もしくは(c)に示すような両端に加湿装置42aを設けた雰囲気の湿度分布制御による乾燥手段42でもよい。
図1〜3に示す描画装置を用いて、ガラス基板である基板3にドットパターンを形成(描画)した。
圧電式のインクジェットヘッド1を用い、有機パラジウム含有溶液(奥野製薬(株)製、CCP−4230)を基板3上に描画した。ドット径60μm、図6に示すように、走査方向のドット間ピッチtaが200μm、走査方向と直交するドット群の幅方向のドット間ピッチtbが300μmとなるように、走査方向に200ドット、走査方向と直交する方向に30ドットの描画を行った。
本実施例における乾燥手段2は、図3に示す気流による吸引装置を用いた。乾燥手段2の走査方向に直交する方向に、走査方向に延在する複数のスリット2a〜2gを配列し、各スリットの吸引流速をそれぞれ制御して吸引を行った。基板3と吸引装置とのギャップは、約1mmとなるように調整した。
図3(a)では、着弾したドット群の幅方向の中心位置に付与する流速が最も大きくなるように、スリット2dからの吸引流速F1を1m/secとした。また、着弾したドット群における幅方向の端部に付与する流速が最も小さくなるように、スリット2b、2fからの吸引流速F2を0.3m/secとした。スリット2c、2eからの吸引速度は、流速F1と流速F2との間の値となるように調整した。
これに対し、使用するノズル位置を変化させることにより、図3(c)に示すように最大の吸引流速F1が付与されるスリット2dが、ドット群の幅方向の中心位置からずれた場合には、ドット群に対する走査方向と直交する方向の流速分布の対称性が失われる。
そこで、描画に際し、着弾ドット群の幅方向における中心位置に付与する吸引流速が最大となるように、着弾ドット群の位置に応じてスリット間の吸引速度分布を変化させた。すなわち、図3(b)に示すように、着弾ドット群の幅方向における中心位置に付与する流速が最大となるように、スリット2eに付与する吸引流速F3を1m/secとし、スリット2c、2gの流速流速F4を0.3m/secとした。
スリット間の吸引速度分布を変化させることの効果を確認するために、
(1)乾燥手段を用いず、描画後のドットを自然乾燥させた場合と、
(2)ドット群の幅方向における中心位置に付与する吸引流速を最大とし、ドット群の幅方向における端部に付与する吸引流速を最小として乾燥させた場合(図3(a)、(b)参照)と、
(3)各吸引スリットに付与する流速分布を変化させず、ドット群の着弾位置のみを変化させた場合(図3(c)参照)と、のそれぞれの場合について走査方向に直交する方向のドット形状を評価した。
乾燥後のドット形状は、表面の凹凸状態によって評価した。具体的には、ドット中心部の反射光強度をドット端部の反射光強度で除した値を凹凸率と定義しその数値を比較した。
その結果は次表に示す通りであった。
Figure 0005349836
この表から明らかなように、吸引乾燥をしない場合には凹凸率幅(=凹凸率最大値ー凹凸率最小値)が大きい。これに対しドット群の幅方向における中心位置に付与する吸引流速を最大とし、ドット群の幅方向における端部に付与する吸引流速を最小として乾燥させた場合には、凹凸率のばらつき幅が吸引乾燥しない場合に比して60%程度低減される。各吸引スリットに付与する吸引流速を変化させず、ドットの着弾位置のみを変化させた場合には、凹凸率のばらつき幅が改善されることはなく、走査方向と直交する方向のドット乾燥速度を均一にする効果は得られなかった。
本実施例においては、基板温度、雰囲気の温湿度を変化させて数パターンの同様の検討を行った。その結果、いずれの場合にもドット群の幅方向における中心位置に付与する吸引流速を最大とし、ドット群の幅方向における端部に付与する吸引流速を最小として乾燥させた場合に最も凹凸率のばらつきが小さくなった。
以上の内容より、インクジェットによるドット描画において描画ドットの走査方向と直交する方向のドット形状均一性を高める方法として、本実施例の有効性が確認された。
図5(a)に示す乾燥手段22を有する描画装置を用い、ガラス基板である基板3上にドットパターンを形成した。
圧電式インクジェットヘッドを用い、有機パラジウム含有溶液(奥野製薬(株)製、CCP−4230)を基板3上に描画した。ドット径が60μm、走査方向のドット間ピッチtaが200μm、走査方向と直交する方向のドット間ピッチtbが300μmとなるように走査方向に200ドット、走査方向と直交する方向に30ドットの描画を行った(図6参照)。
本実施例における乾燥手段22は、吸引装置の走査方向に直交する方向の中心位置に、走査方向に伸びるスリット22aを設け、そこから一様な流速で吸引を行った。基板3と吸引装置とのギャップは、最も狭い場所で約1mmとなるように調整した。このときの流速は、スリット開口の真下R1における吸引流速は1m/sec、吸引装置の範囲内で最もスリット開口から遠い地点R2における吸引流速は0.3m/secであった。
本実施例においては、実施例1のようにインクジェットヘッドに対する相対位置を固定してドット群の着弾位置に応じて乾燥手段の吸引流速分布を変化させる代わりに、乾燥手段22のインクジェットヘッドに対する相対位置をドット群の幅方向に変化させる。
本実施例では、使用するノズル位置の中心位置が、乾燥手段22の走査方向と直交する方向の中心と一致していないとき、描画に使用するノズル群の中心位置と、乾燥手段22の中心位置との間にずれが生じる。このため、ドット群に対する走査方向と直交する方向の乾燥速度分布の対称性が失われる。そこで、描画されるドット群の中心位置と乾燥手段22の中心位置とのずれをなくすようにリアルタイムに乾燥手段22の位置をインクジェットヘッドに対して相対的に移動させる制御を行う。
その効果を確認するために、
(1)乾燥手段を用いず、描画後のドットを自然乾燥させた場合と、
(2)乾燥手段の走査方向と直交する方向の中心位置を、描画ドット群の幅における中心位置に一致させて乾燥させた場合と、
(3)乾燥手段の走査方向と直交する方向の中心位置を、描画ドット群の幅における端部に一致させて乾燥させた場合と、について走査方向に直交する方向のドット形状を評価した。
実施例3においても同様の評価基準を用いる。
乾燥後のドット形状は、表面の凹凸状態によって評価した。具体的には、ドット中心部の反射光強度をドット端部の反射光強度で除した値を凹凸率と定義しその数値を比較した。
その結果は次表に示す通りであった。
Figure 0005349836
この表から明らかなように、吸引乾燥をしない場合には凹凸率幅(=凹凸率最大値ー凹凸率最小値)が大きく、乾燥手段をドット群の中心位置に合わせて吸引乾燥を行った場合には、凹凸率のばらつき幅が吸引乾燥しない場合に比して75%程度低減される。乾燥手段をドット群の端部に合わせて吸引乾燥を行った場合には、凹凸率のばらつき幅が改善されることはなく、走査方向と直交する方向のドット乾燥速度を均一にする効果は得られなかった。
本実施例においては、基板温度、雰囲気の温湿度を変化させて数パターンの同様の検討を行ったが、いずれの場合にもドット群の中心位置と乾燥手段の中心位置を一致させて吸引乾燥を行う場合に最も凹凸率のばらつきが小さくなった。
以上の内容より、インクジェットによるドット描画において描画ドットの走査方向と直交する方向のドット形状均一性を高める方法として、本実施例の有効性が確認された。
図5(b)に示す加熱によって乾燥速度分布を制御する乾燥手段32を有する描画装置を用いて、ガラス基板上にドットパターンを形成した。本実施例においては、乾燥手段のインクジェットヘッドに対する相対位置を変化させる点では実施例2と同様であるが、乾燥手段として吸引手段ではなくヒーターを用いた点において異なる。
圧電式のインクジェットヘッドを用い、有機パラジウム含有溶液(奥野製薬(株)製、CCP−4230)を基板3上に描画した。ドット径が60μm、走査方向のドット間ピッチtaが200μm、走査方向と直交する方向のドット間ピッチtbが300μmとなるように走査方向に200ドット、走査方向と直交する方向に30ドットの描画を行った(図6参照)。
本実施例における乾燥手段32は、走査方向に直交する方向の中心位置に、長さ50mm、幅10mm、厚さ4mmのテープヒータであるヒータ32aを走査方向と平行に配置し、通電することにより温度を上昇させた。基板3とヒータ32aとのギャップは約10mmとなるように調整した。
このときの温度は、ヒータ32aの真下R1における温度は35℃、乾燥手段32の範囲内で最もヒータ32aから遠い地点R2における温度は25℃であった。
本実施例では、使用するノズル位置の中心位置が、乾燥手段32の走査方向と直交する方向の中心と一致していないとき、描画されるドット群の中心位置と、乾燥手段32の中心位置との間にずれが生じる。このため、ヒータ32aにより制御されている、ドット群に対する走査方向と直交する方向の乾燥速度分布の対称性が失われる。そこで、描画ドット群の中心位置と乾燥手段32の中心位置とを一致させるようにリアルタイムに乾燥手段32の位置をインクジェットヘッドに対して相対的に移動させる制御を行う。
その効果を確認するために、
(1)乾燥手段を用いず、描画後のドットを自然乾燥させた場合と、
(2)乾燥手段の走査方向と直交する方向の中心位置を、描画ドット群の幅における中心位置に一致させて乾燥させた場合と、
(3)乾燥手段の走査方向と直交する方向の中心位置を、描画ドット群の幅における端部に一致させて乾燥させた場合と、について走査方向に直交する方向のドット形状を評価した。
乾燥後のドット形状は、表面の凹凸状態によって評価した。具体的には、ドット中心部の反射光強度をドット端部の反射光強度で除した値を凹凸率と定義しその数値を比較した。
その結果は次表に示す通りであった。
Figure 0005349836
この表から明らかなように、加熱乾燥をしない場合には凹凸率幅(=凹凸率最大値ー凹凸率最小値)が大きく、乾燥手段をドット群の中心位置に合わせて加熱乾燥を行った場合には、凹凸率のばらつき幅が加熱乾燥しない場合に比して40%程度低減される。乾燥手段をドット群の端部に合わせて加熱乾燥を行った場合には、凹凸率のばらつき幅が改善されることはなく、走査方向と直交する方向のドット乾燥速度を均一にする効果は得られなかった。
本実施例においては、基板温度、雰囲気の温度を変化させて数パターンの同様の検討を行ったが、いずれの場合にも、ドット群の中心位置と乾燥手段の中心位置を一致させて加熱乾燥を行う場合に最も凹凸率のばらつきが小さくなった。
以上の内容より、インクジェットによるドット描画において描画ドットの走査方向と直交する方向のドット形状均一性を高める方法として、本実施例の有効性が確認された。
図5(c)に示す加湿によって乾燥速度を制御する乾燥手段42を有する描画装置を用い、ガラス基板上にドットパターンを形成した。本実施例においては、乾燥手段のインクジェットヘッドに対する相対位置を変化させる点では実施例2及び実施例3と同様であるが、乾燥手段ではなく加湿手段として液体を含ませたスポンジを用いた点において異なる。
圧電式インクジェットヘッドを用い、有機パラジウム含有溶液(奥野製薬(株)製、CCP−4230)を基板3上に描画した。ドット径が60μm、走査方向のドット間ピッチtaが200μm、走査方向と直交する方向のドット間ピッチtbが300μmとなるように走査方向に200ドット、走査方向と直交する方向に30ドットの描画を行った(図6参照)。
乾燥手段42は、乾燥速度分布を制御するため、走査方向に直交する方向の端部に、長さ50mm、幅10mm、厚さ5mmのスポンジである加湿装置42aを走査方向と平行に配置し、水を含有させることによりスポンジ周囲の湿度を上昇させた。基板3とスポンジとのギャップは約5mmとなるように調整した。
このときの湿度は、スポンジの真下R1における湿度は65%RH、乾燥手段42の範囲内で最もスポンジから遠い地点R2における湿度は50%RHであった。
このスポンジには水を供給できるように水供給チューブが接続されており、チューブの先に接続されたシリンジによってスポンジに対し水を供給することができるようになっている。
本実施例では、使用するノズル位置の中心位置が、乾燥手段42の走査方向と直交する方向の中心と一致していないとき、描画に使用するノズル群の中心位置と、乾燥手段42の中心位置との間にずれが生じる。このため、加湿装置42aにより制御されている、ドット群に対する走査方向と直交する方向の乾燥速度分布の対称性が失われる。そこで、描画ドット群の中心位置と乾燥手段42の中心位置とを一致させるようにリアルタイムに乾燥手段42の位置をインクジェットヘッドに対して相対的に移動させる制御を行う。
その効果を確認するために、
(1)乾燥手段を用いず、描画後のドットを自然乾燥させた場合と、
(2)乾燥手段の走査方向と直交する方向の中心位置を、描画ドット群の幅における中心位置に一致させて乾燥させた場合と、
(3)乾燥手段の走査方向と直交する方向の中心位置を、描画ドット群の幅における端部に一致させて乾燥させた場合と、について走査方向に直交する方向のドット形状を評価した。
乾燥後のドット形状は、表面の凹凸状態によって評価した。具体的には、ドット中心部の反射光強度をドット端部の反射光強度で除した値を凹凸率と定義しその数値を比較した。
その結果は次表に示す通りであった。
Figure 0005349836
この表から明らかなように、加湿による乾燥制御をしない場合には凹凸率値のばらつきが大きく、乾燥手段をドット群の中心位置に合わせて乾燥制御を行った場合には、凹凸率のばらつき幅が乾燥制御を行わない場合に比して45%程度低減される。乾燥手段をドット群の端部に合わせて乾燥制御を行った場合にも、凹凸率のばらつき幅が約40%改善された。
本実施例においては、基板温度、雰囲気の温湿度を変化させて数パターンの同様の検討を行ったが、いずれの場合にも、ドット群の中心位置と乾燥手段の中心位置を一致させて乾燥制御を行う場合に最も凹凸率のばらつきが小さくなった。
以上の内容より、インクジェットによるドット描画において描画ドットの走査方向と直交する方向のドット形状均一性を高める方法として、本実施例の有効性が確認された。
上記のように乾燥状態を制御することで、ドット群による描画を利用した電子部品や機能部品などの品質を向上させることができる。
一実施形態による描画装置の構成を示す模式図である。 実施例1の主要部を説明する斜視図である。 図2の装置の動作を説明する図である。 実施例2の主要部を説明する図である。 実施例2〜4の描画装置に用いる乾燥手段を説明する図である。 実施例1〜4によって描画するドットパターンを示す模式図である。 一従来例を説明する図である。 図7の従来例によるドットパターンを示す図である。
符号の説明
1 インクジェットヘッド
2、22、32、42 乾燥手段
2a〜2g、22a スリット
3 基板
10 ステージ
11 ヘッドコントローラ
12 制御用PC
32a ヒータ
42a 加湿装置

Claims (5)

  1. 液体吐出ヘッド及び乾燥手段を描画対象の基板に対して相対的に移動させながら、前記液体吐出ヘッドの複数のノズルから液滴を吐出し、ドット群による描画後に前記乾燥手段によって乾燥させる描画方法において、
    前記乾燥手段は、前記液体吐出ヘッドと前記基板との相対的な移動における下流側に配置され、前記基板に着弾する前記ドット群の移動方向と直交する方向に対応した位置に配列された複数のスリットを有し、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分における吸引流速が、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の端部における吸引流速より速くなるように前記複数のスリットそれぞれから気流を吸引することにより前記ドット群の乾燥が行なわれ、
    前記基板に着弾する前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分の着弾位置が、前記移動方向と直交する方向に変化した時、
    前記着弾位置が変化したドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分における吸引流速が、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の端部における吸引流速より速くなるように、前記変化した着弾位置における前記吸引流速を変化させることを有することを特徴とする描画方法。
  2. 前記変化した着弾位置における前記吸引流速の変化は、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向に前記乾燥手段を前記液体吐出ヘッドに対して相対的に移動させることにより行なうことを特徴とする請求項1記載の描画方法。
  3. 前記変化した着弾位置における前記吸引流速の変化は、前記スリットからの吸引流速を変化させることにより行なうことを特徴とする請求項1記載の描画方法。
  4. 液体吐出ヘッド及び乾燥手段を描画対象の基板に対して相対的に移動させながら、前記液体吐出ヘッドの複数のノズルから液滴を吐出し、ドット群による描画後に前記乾燥手段によって乾燥させる描画装置において、
    前記乾燥手段は、前記液体吐出ヘッドと前記基板との相対的な移動における下流側に配置され、前記ドット群の移動方向と直交する方向に配列された複数のスリットと、前記各スリットから気流を吸引する手段と、を有し、
    前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の着弾位置に応じて、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の中央部分における吸引流速を前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の端部における吸引流速より速くなるように、前記ドット群の前記移動方向と直交する方向に前記乾燥手段を前記液体吐出ヘッドに対して相対的に移動させる手段を備えたことを特徴とする描画装置。
  5. 前記吸引する手段は、前記基板に着弾する前記ドット群の前記移動方向と直交する方向の着弾位置に応じて、前記スリットからの吸引流速を変化させることを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
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