JP5347824B2 - 母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材とその製造方法 - Google Patents

母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高層ビル、駐車場等の鋼構造物に用いられる耐火鋼材に関する。
一般に、鋼材は火災等により高温に曝される事で強度が低下する。建築物等の鋼構造物においては、火災に曝された時、鋼構造物が一定時間必要とする強度を発揮し倒壊を防ぐ事で、居住する人員の脱出時間を確保する性能が求められる。その為、従来、火災時の鋼材の温度上昇を抑制する目的で、鋼材を耐火被覆で覆う手法が用いられてきた。
一方、近年では、高温でも強度が低下しにくい特性、いわゆる耐火性能を持たせた鋼材が開発され、環境問題や美観の観点から、耐火被覆を使用せずに耐火鋼を用いて鋼構造物を構成する例が登場している。
ここで要求される耐火性能に関しては「新耐火設計法」に基づいて国土交通省により定められており、国土交通省告示333号にその特性が記されている。
この耐火性能を備える鋼材について近年盛んに研究開発が行われ、例えば特許文献1〜22に示す様な発明が開示されている。
中でも特に合金元素としてMoを積極的に利用した成分系の発明が多く開示されており、特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、15、16及び22ではMo添加を前提とする成分系が規定されている。
これらMoの添加を前提とした成分系は、火災時の加熱により鋼材中のMoの析出を促し、析出強化による高温強度上昇を狙ったものであり、鋼材の耐火性能を確保する目的において多くの研究者により採用されてきた手法である。
また、鋼材を加速冷却を用いて製造する場合においては、Moの添加により焼入れ性が向上し、母材の室温引張り強度を上昇させる効果もある。
一方、近年の各種金属元素の需給逼迫の中で、特にMoの価格上昇が著しい事もあり、必ずしもMoに頼らない合金設計をとる技術の開示もある。特許文献12及び18には合金元素としてCuの析出を利用する発明が開示されている。
この他、鋼材の高温強度を確保する為には、以上の様な合金元素の析出を利用する手法の他、鋼材組織を、転位密度の低いフェライト組織ではなく転位密度の高いベイナイト組織とする手法も有効であり、特許文献17には、ベイナイト組織を得る為にB添加を前提とする発明が開示されている。また、特許文献3、4、7、9、10、12、14、16、19及び20にはベイナイト組織を得る為に加速冷却を用いる技術が開示されている。
特開平8−134584号公報 特開平10−046284号公報 特開平10−068018号公報 特開平10−096024号公報 特開平10−121194号公報 特開平10−204529号公報 特開平11−050198号公報 特開平11−131175号公報 特開2000−192142号公報 特開2000−248317号公報 特開2001−294984号公報 特開2002−115022号公報 特開2004−084068号公報 特開2005−272949号公報 特開2006−249467号公報 特開2007−051321号公報 特開2007−191746号公報 特開2007−191747号公報 特開2007−211278号公報 特開2007−277679号公報 特開2007−277680号公報 特開2007−291483号公報
まず、従来の耐火鋼材の開発においては、耐火鋼材を用いた溶接継手が火災により高温に加熱された際の変形能を確保するという点の追及が不充分であった。
溶接構造物が火災に曝された時、母材及び溶接熱影響部(以下、HAZと記載)の高温降伏強度や高温引張り強度がいずれも充分に確保されている場合においても、HAZに関しては高温での延性(変形能)が著しく低下する場合が存在する。
HAZの高温での延性が低い鋼材を用いて溶接構造物を構成すると、HAZが火災により加熱された時にHAZの変形能が不足し、その結果、溶接構造物がHAZから破断して崩壊する可能性がある事が、本発明者らの研究の結果明らかとなった。
従って、HAZの高温での延性が確保されている鋼材を開発しなければ、耐火鋼材を利用する溶接構造物の設計が困難となる。
このHAZが高温に曝された時の延性の低下現象(以下、HAZの再熱脆化と記載)は、HAZに特有のベイナイト組織における旧γ粒界に沿った鋼材の破断が原因である事が、本発明者らの研究の結果明らかとなっている。
HAZの再熱脆化現象に関しては、従来より一部の高強度鋼や耐熱鋼の分野で知られており、旧γ粒界における炭化物や窒化物の析出、または不純物の偏析に原因を求める研究報告が多いが、各種鋼材で統一的に現象を説明可能とする解釈は存在していない。
その為、本発明者らはまず、本耐火鋼開発において、HAZの再熱脆化に及ぼす各種合金元素の影響を、実験と解析により詳細に検討した。
特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、15、16及び22ではMo添加を前提とする成分系を規定している。これは、高温に曝された時のMo炭化物の析出を高温における降伏強度上昇の手段として利用しているものであるが、本発明者らは実験により、該成分系ではいずれもHAZのベイナイト組織の旧γ粒界にMo炭化物が多量に析出し、HAZの再熱脆化が顕著になる事を確認した。
また、近年のMoの価格上昇に伴い、これら文献に記載の成分系では合金コストが著しく高くなり、耐火鋼材の市況価格に見合わないという問題も同時に存在する。
特許文献15、16、17及び22ではB添加を前提とする成分系を採用しているが、これらの成分系では、HAZのベイナイト組織の旧γ粒界にB窒化物が多量に生成し、HAZの再熱脆化が著しくなる事を本発明者らは実験により確認した。
特許文献7、11及び13ではC添加量を0.05%以上に規定している為、これらの成分系では、HAZのベイナイト組織の旧γ粒界に各種合金元素の炭化物が多量に生成し、HAZの再熱脆化が著しくなる事を本発明者らは実験により確認した。
特許文献12及び18では、それぞれCu添加量を0.6%以上、0.5%以上に規定しており、これらの成分系では、HAZのベイナイト組織の旧γ粒界にCu析出物の生成が起こる事や微細なオーステナイト組織の生成が起こる事で、HAZの再熱脆化が著しくなる事を、本発明者らは実験により確認した。
特許文献19、20、21では、Nb添加量を0.05%以上、0.50%以下と高い水準に規定しており、これらの成分系では、HAZの再熱脆化を助長するC、Mn、V、MoまたはCu等の元素との組合せによっては、安定的にHAZの再熱脆化を抑制出来ない事を本発明者らは実験により確認した。
以上の様に、従来の耐火鋼開発においてはHAZの再熱脆化に関する追及が不充分であり、本発明では以上の様な知見を基にHAZの再熱脆化を抑制する為の合金成分系について実験と解析を基に検討を行ったものである。
更に、耐火鋼には、火災により高温に加熱された時に高い降伏強度を発揮する性能も求められる。一般に、高温における鋼材の強度は、鋼材中に存在する転位による転位強化と、転位運動の障害となる析出物によって発現すると考えられている。その為、高い高温降伏強度を確保する為には、充分に余裕のある量の転位を持つ事、もしくは、転位の運動の障害となる析出物や結晶粒界を多数含む事、が効果的である。
特許文献13、17、21、22では、熱間圧延後に加速冷却を用いずに放冷する製造方法が開示されている。この様な製造方法では、高温降伏強度を確保する為に必要な鋼材中の転位の量や析出物の量を確保する為に、焼入れ性を向上させる合金元素や析出強化をもたらす合金元素の多量の添加が必要になるが、特にこれらの特許文献で添加が規定されているMo、Nb、またはB等の合金元素の使用は、高温降伏強度の向上には有効であるが、HAZの再熱脆化を助長する結果を招く事は、既に述べた通りである。
また、耐火性能を持つ鋼材の市場価格は、耐火性能を持たない汎用鋼に比べて充分に高い水準には無い。従って、耐火性能を持つ鋼材を製造するに当たっては合金コスト低減の為に各種合金の添加は可能な限り抑制する事が望ましい。
これらの様な合金元素の添加に頼らずに高温降伏強度を確保する方法として、鋼材製造過程で加速冷却を用いる事により、転位密度の高いベイナイト組織を得る技術が、特許文献3、4、7、9、10、12、14、16、19及び20に開示されている。
しかし、加速冷却を用いてベイナイト組織を得る方法では、合金成分系の設計によっては、高温降伏強度のみならず室温引張り強度も著しく上昇するという問題がある。
多くの場合、耐火鋼材には、室温における引張り強度が一定の下限値及び上限値の範囲に収まる事、及び、高温における降伏強度が一定値以上である事、を特徴とする機械的特性が要求される。
従って、高温降伏強度を追及する際に、加速冷却を使ってやみくもに転位密度の高い鋼材組織を得ようとすると、室温引張り強度が鋼材に要求される上限値を逸脱するか、または逸脱しないまでも上限値に近くなり、実機製造上の材質変動に対する裕度が無くなる、という問題が生じる。
特許文献3、4、7、9、10、14及び16ではMoの添加を前提とする成分系において、加えて特許文献16ではB添加を前提とする成分系において加速冷却を用いる製造方法が開示されているが、これらの成分系ではMoまたはBの焼入れ性が顕著に現れて室温引張り強度の上昇を招く為、上に述べた実機製造上の材質変動に対する裕度が無くなる事となる。
特許文献12では、Cuを0.6%以上添加し且つNiをCu量の半分以上添加する成分系において、また、特許文献19及び20ではNbを0.05%以上添加する成分系において、それぞれ加速冷却を用いる製造方法が開示されているが、これらの成分系においても焼入れ性が必要以上に上昇し、上に述べた実機製造上の材質変動に対する裕度が無くなる事となる。
尚、近年、建築物は土地の有効活用を目的として大規模化・高層化し、そこで使用される鋼材も大型化する傾向があり、生産性向上の観点から鋼材を接合する際の溶接時の入熱は高くなる傾向がある。
その為、溶接入熱が高い場合でも充分な耐震性を獲得する為に、溶接部の低温靱性も充分に高く取る必要がある。本発明はこうした課題にも同時に対応し、5kJ/mm以上の入熱が加わった場合の溶接HAZの低温靱性も獲得すべく、合金元素添加量を最適化する事を前提としている。
更に、建築等の用途に使う鋼材として充分な母材靭性を確保する事も重要である為、本発明では母材靭性の獲得も前提としている。
本発明は、火災に曝された場合に600℃において母材部が高い降伏強度を有し、同時に溶接熱影響部が火災に曝された場合に600℃において高い延性を有し、更に、母材部及び溶接熱影響部の低温靭性に優れる事を特徴とする、耐火鋼材、及びその製造方法を提供する事を目的とする。
本発明の最も重要な課題は、建築用途に使う鋼材として、建築設計における要求確保および火災における十分な安全裕度を得るために、室温引張り強度450〜650MPaの鋼材において、600℃における降伏強度が217MPa以上であり、且つ、溶接継手のHAZが火災時の想定温度600℃に再熱される際に充分な変形能を持つ、具体的には特に鋼材の溶接HAZの600℃破断絞り値が25%以上である、という特徴を備える耐火鋼材を提供する事である。
既に述べた様に、高温降伏強度を獲得する為には、炭化物・窒化物等の析出物を利用する事、または、転位密度の高いベイナイト組織を利用する事が有効であるが、各種析出元素の添加はHAZの再熱脆化を助長する傾向が有り、焼入性向上元素の無差別な添加は室温引張り強度を必要な水準範囲に収められなくするという問題がある。
本発明者らは、加速冷却を用いるプロセスにて耐火鋼材を製造するにあたり、各種合金元素が高温降伏強度、室温引張り強度及びHAZの再熱脆化に与える影響を実験と解析を通じて詳細に検討し、これらを全て目標とする範囲に収める為の金属学的な知見を見出し、適切な成分系とプロセスを開発するに至った。
ここでいう本発明の目標とは、600℃における降伏強度が217MPa以上、室温引張り強さが450MPa以上、650MPa以下、溶接熱影響部を600℃以上に加熱した上で行う引張試験の破断絞り値が25%以上である事、である。
本発明者らは、まず加速冷却を用いてベイナイト組織を得る上で、室温引張り強度を抑制した状態で高温降伏強度を確保する為の合金成分系と製造プロセスの検討を行った。
ベイナイト組織において室温引張り強度を下げる為には、まずC量を減らす事が最も重要であると分かった。これは、鋼材中の固溶C量や微細析出するセメンタイト量を減らす事が可能となる為と判明している。
また、Crを積極的に添加する事で、鋼材中の固溶CとCrが結合する事で焼入れ性を低減する効果がある事と、Cr炭化物の析出により高温降伏強度の上昇に寄与する事を新たに知見した。
更に、本発明者らはVの添加が室温引張り強度を増加させずに高温降伏強度の上昇に寄与する事をも新たに知見した。
これは、本発明の低C−高Cr成分系においてはVの添加が殆ど焼入れ性の向上に寄与せず、且つ加速冷却において炭化物または窒化物として析出もしない為、室温引張り強度の向上効果を示さない事と、火災想定の600℃加熱時には著しく析出し、高温降伏強度の向上に寄与する事が原因であると判明している。
加えて、本発明者らは、HAZの再熱脆化に及ぼす各種合金元素の影響を実験を通じて明らかにした。その結果、炭化物または窒化物を形成する元素は、Mo、B、Nb、V等殆どがHAZの旧γ粒界に析出し再熱脆化を助長する事を見出した。
また、Mn、W、Cu等、自身は炭化物または窒化物を形成せず焼入れ性の向上に寄与する元素も、HAZの旧γ粒界に微細なオーステナイト組織を生成させ、粒界滑りを促進させる事でHAZの再熱脆化を助長する事を知見した。
一方、CrとTiにHAZの再熱脆化を改善する効果がある事も明らかにしている。
Crに関しては、Cr炭化物を形成する事で他元素の炭化物析出を抑制する効果がある事、及び、Cr炭化物のサイズが数〜数十nmのクラスター程度に留まる為、HAZの再熱脆化に寄与しにくい事が原因と判明した。
Tiに関しては、Tiの炭化物及び窒化物が粒界・粒内に関わらず析出する為、結果としてHAZの旧γ粒界に析出する他元素の炭化物・窒化物の総量を低減する効果が現れる為であると判明した。
以上の様に、本発明の特徴は、低C成分系においてCr、V、Tiを積極的に利用する事にあり、室温引張り強度の過度な上昇やHAZの再熱脆化を助長するMo、Nb、Bについては不純物レベルの含有量に留めるものである。
本発明の成分系を、800℃以上1000℃以下において圧下比を50%以上として800℃以上で熱間圧延を終了し、その後直ちに450℃以下の温度範囲まで2℃/秒以上の冷速で加速冷却する事により、室温引張り強度が450MPa以上、650MPa以下、600℃における母材降伏強度が217MPa以上、及びHAZ部の600℃引張試験における破断絞り値が25%以上という特性を得る事が出来る。
また、加速冷却の後、400℃以上、650℃未満の温度で焼戻す事により、高温降伏強度を下げる事無く室温引張り強度のみを下げて、更に母材の低温靱性を向上させる事も可能である。焼戻し温度650℃以上では、高温降伏強度も下がる場合があり、650℃未満とする。
尚、本発明の合金成分範囲で各種合金元素を適宜選択する事で、入熱5kJ/mm以上の大入熱溶接の際のHAZの低温靱性を確保する事も可能である。
以上の知見に基づき成された本発明の要旨は以下の通りである。
(1)化学組成が質量%で、
C:0.005%以上、0.050%以下、
Si:0.01%以上、0.50%以下、
Mn:0.50%以上、2.00%以下、
Cr:0.50%以上、2.00%以下、
V:0.10%以上、0.50%以下、
Ti:0.005%以上、0.030%以下、
Al:0.005%以上、0.10%以下、
N:0.001%以上、0.006%以下、
を含有し、
Mo:0.01%未満、
Nb:0.01%以下、
B:0.0003%以下、
P:0.020%未満、
S:0.010%未満、
O:0.010%未満
に制限した、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、光学顕微鏡組織が、面積分率で80%以上がベイナイト相またはマルテンサイト相であり、残部がフェライト相もしくはMA(マルテンサイト−オーステナイト混合組織)相及び不可避的相からなる、室温引張強さが450MPa以上、650MPa以下であり、本鋼材の母材の600℃降伏応力が217MPa以上であり、本鋼材の溶接熱影響部の600℃高温引張の破断絞り値が25%以上である事を特徴とする、母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材。
(2)(1)に加えて、質量%で、
Ni:0.01%以上、1.00%以下、
Cu:0.01%以上、0.50%以下、
W:0.01%以上、0.50%以下、
の内1種または2種以上を含有する事を特徴とする、(1)に記載の母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材。
(3)(1)または(2)に加えて、質量%で、
Zr:0.001%以上、0.050%以下、
Mg:0.0005%以上、0.0050%以下、
Ca:0.0005%以上、0.0050%以下、
Y:0.001%以上、0.050%以下、
La:0.001%以上、0.050%以下、
Ce:0.001%以上、0.050%以下、
の内の1種または2種以上を含有する事を特徴とする、(1)または(2)に記載の母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材。
(4)(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐火鋼材の製造方法であって、(1)〜(3)の何れか1項に記載の鋼成分を有する鋼片を、1100℃以上、1300℃以下に加熱した後、熱間圧延または熱間加工を施すにあたり、800℃以上1000℃以下において圧下比50%以上の熱間圧延または熱間加工を行い、800℃以上で熱間圧延または熱間加工を終了し、その後Ar3点以上の温度域から450℃以下の温度範囲まで2℃/秒以上の冷速で加速冷却する事を特徴とする、母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材の製造方法。
(5)(4)に記載の製造方法を適用した後、鋼材を400℃以上650℃未満の温度範囲で5分以上、360分以下の焼戻し熱処理を行う事を特徴とする、母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材の製造方法。
本発明によれば、耐火性能を持つ室温引張り強度450〜650MPaの鋼材を、合金元素の少ない経済的成分系にて安定的に得る事が可能となる。また、本発明の鋼材は、溶接継手の熱影響部が火災に曝された時にも変形能が充分に確保出来る為、耐火鋼材を用いた建築物の安全性確保への寄与が非常に大きい。
以下に、本発明における化学成分組成の限定理由について述べる。
Cは、焼入性向上に有効な元素であり0.005%以上の添加を行うが、0.050%を超えて添加すると、大入熱溶接の際のHAZにおいてマルテンサイト−オーステナイト混合組織(以下、MA相と記載)の生成を助長しHAZの低温靭性を著しく劣化させる場合がある事、火災時にHAZの粒界に析出する炭化物の量を増大させHAZの再熱脆化を招く事、及び、室温引張り強度の過剰な上昇を招く事、の為に、その添加範囲を0.005%以上、0.050%以下とする。
Siは、脱酸元素として0.01%以上の添加を行うが、0.50%を超えて添加すると、大入熱溶接の際のHAZにおいてMA相の生成を助長し低温靭性を低下させる場合がある為、その添加範囲を0.01%以上、0.50%以下とする。
Mnは、焼入性向上に有効であり、本発明が目的とする450MPa以上の室温引張り強度を確保する為に0.50%以上の添加を必要とするが、2.00%を超えて添加すると、HAZの再熱脆化を助長する事、及び、室温引張り強度の過度な上昇を招く事から、添加量の上限を2.00%以下に制限する。
Crは、室温引張り強度を上昇させずに高温降伏強度を向上する効果があり、且つHAZの再熱脆化を抑制する効果が有る為、0.50%以上の添加を行う。しかし2.00%を超えて添加すると、鋼材特性上の弊害は特に無いものの、製鋼上の課題、特に不純物除去時間の延長によって溶鋼温度が精錬中に低下してしまい鋳造性を悪化させる為に、添加上限を2.00%以下に制限する。尚、本発明では、C、Mn、VまたはCu等のHAZの再熱脆化を助長する元素を多く添加する程、対抗としてCr量を増やす事が好ましい。
Vは、室温引張り強度を上昇させる事なく、炭化物の形成による高温降伏強度を著しく向上させる事が出来る為、0.10%以上を添加するが、0.50%を超えて添加するとHAZの粒界に析出する炭化物が粗大化し再熱脆化を顕著にする為、添加量を0.10%以上、0.50%以下に制限する。
Tiは、HAZの再熱脆化を著しく抑制する為に、0.005%以上の添加を行う。しかし、0.030%を超えて添加すると母材の低温靭性が著しく低下する為、上限を0.030%以下に制限する。
Alは、脱酸元素として0.005%以上の添加を行うが、0.10%を超えて添加すると、大入熱溶接の際のHAZにおいてMA相の生成を助長し低温靭性を低下させる場合がある為、その添加範囲を0.005%以上、0.10%以下とする。
Nは、各種合金元素と窒化物を形成し高温降伏強度の向上に寄与する為、0.001%以上を添加する。しかし、多量の添加を行うと火災時にHAZの粒界に析出する窒化物が粗大化し再熱脆化が顕著になる為、上限を0.006%以下に制限する。
Moは、焼入性の向上と炭化物析出により室温引張り強度及び高温降伏強度の増大に寄与する。しかし、火災時にMoは炭化物またはLaves相としてHAZの粒界において粗大析出し再熱脆化を著しく顕著にする為、本発明においてMoの添加は好ましくない。従って、工業生産上の都合による少量の混入は止むを得ないとしても積極的な添加は控えるべきであり、工業生産上の裕度から含有量を0.01%未満とする。
Nbは、鋼材の焼入性を増し室温引張り強度の向上に寄与すると共に、炭化物または窒化物として析出し高温降伏強度の向上にも寄与する。しかし、本発明の成分系と製造方法においては、室温引張り強度の向上効果が高温降伏強度の上昇効果より大きく、本発明の目標である室温引張り強度を極力抑えて高温降伏強度を発揮するという目的には適していない。また市況合金価格の高さもありMn等の他元素で代替する事が好ましい。従って積極的な添加は控えるべきであり、工業生産上の裕度から含有量の上限値は0.01%以下とする。
Bは、焼入性の向上と窒化物析出により室温引張り強度及び高温降伏強度の増大に寄与する。しかし、Bの窒化物は火災時にHAZの粒界において粗大析出し易く再熱脆化を著しく顕著にする為、本発明においてBの添加は好ましくない。従って、工業生産上の都合による少量の混入は止むを得ないとしても積極的な添加は控えるべきであり、工業生産上の裕度から添加量の上限は0.0003%以下とする。
Pは、不純物として母材の低温靭性を著しく低下させ、且つ火災時のHAZの再熱脆化も顕著にする為、添加量を0.020%未満に制限する。
Sは、不純物として母材の低温靭性を著しく低下させ、且つ火災時のHAZの再熱脆化も顕著にする為、添加量を0.010%未満に制限する。
Oは、不純物として母材の低温靭性を著しく低下させ、且つ火災時のHAZの再熱脆化も顕著にする為、添加量を0.010%未満に制限する。
Niは、焼入れ性の向上による室温引張り強度及び高温降伏強度の上昇に有効である。この効果を得る為には0.01%以上の添加が必要であるが、1.00%を超えて添加すると、大入熱溶接の際のHAZの低温靭性を著しく低下させる場合があるので、添加する場合は、その範囲を0.01%以上、1.00%以下に制限する。
Cuは、焼入れ性向上による室温引張り強度の上昇や析出による高温降伏強度の上昇に有効である。この効果を得る為には0.01%以上の添加が必要であるが、0.50%を超えて添加するとHAZの再熱脆化を顕著にする。従って、添加する場合はその範囲を0.01%以上、0.50%以下に制限する。
Wは、焼入れ性の向上や固溶強化による室温引張り強度及び高温降伏強度の上昇に有効であり、この効果を得る為には0.01%以上の添加が必要である。また、WはMoよりフェライトまたはベイナイト中での拡散速度が小さく、Moに比べてHAZの旧γ粒界における析出が遅い為、HAZの再熱脆化を助長しにくい。しかし、0.50%を超えて添加するとHAZの再熱脆化が著しくなる。従って、添加する場合はその範囲を0.01%以上、0.50%以下に制限する。
Zrは、炭化物及び窒化物として析出し高温降伏強度の増加に寄与する。この効果を得る為には0.001%以上の添加が必要であるが、0.050%を超えて添加すると粒界に析出する炭化物が粗大化しHAZの再熱脆化が顕著になるので、添加する場合は0.001%以上、0.050%以下とする。
Mgは、鋼材中の硫化物の形態を制御し、硫化物による母材靭性の低下を低減する効果がある。この効果を得る為には0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0050%を超える添加で効果が飽和する事から、添加する場合はその範囲を0.0005%以上、0.0050%以下に制限する。
Caは、脱酸元素として有効であり、且つ鋼材中の硫化物の形態を制御し母材靭性の低下を低減する効果がある。これらの効果を得る為には0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0050%を超える添加で効果が飽和する事から、添加する場合はその範囲を0.0005%以上、0.0050%以下に制限する。
Yは、鋼材中の硫化物の形態を制御し、硫化物による母材靭性の低下を低減する効果がある。この効果を得る為には0.001%以上の添加が必要であるが、0.050%を超える添加を行うと粗大な酸化物クラスターとして析出し低温靭性を低下させる為、添加する場合はその範囲を0.001%以上、0.050%以下に制限する。
Laは、鋼材中の硫化物の形態を制御し、硫化物による母材靭性の低下を低減する効果がある。この効果を得る為には0.001%以上の添加が必要であるが、0.050%を超える添加を行うと粗大な酸化物クラスターとして析出し低温靭性を低下させる為、添加する場合はその範囲を0.001%以上、0.050%以下に制限する。
Ceは、鋼材中の硫化物の形態を制御し、硫化物による母材靭性の低下を低減する効果がある。この効果を得る為には0.001%以上の添加が必要であるが、0.050%を超える添加を行うと粗大な酸化物クラスターとして析出し低温靭性を低下させる為、添加する場合はその範囲を0.001%以上、0.050%以下に制限する。
以上の合金元素の限定で、600℃における降伏強度が高く、且つ火災時のHAZの再熱脆化が防止され、入熱5kJ/mmの溶接HAZ靱性、及び母材靭性に優れた鋼材を得る事が可能となる。
更に、本発明における製造方法の限定理由について述べる。
本発明では、建築用途に使う鋼材として、建築設計における要求確保および火災における十分な安全裕度を得るために、室温引張り強度が450MPa以上、650MPa以下となり、600℃における降伏強度が217MPa以上であり、鋼材の溶接HAZの600℃破断絞り値が25%以上であって、HAZの再熱脆化が防止され、入熱5kJ/mmの溶接によるHAZでも低温靭性を確保し、且つ母材靭性を確保する為の必要条件となる成分系を提案しており、該成分を有する鋼片に、温度および圧下量を規定した熱間圧延と加速冷却を適用する事により、これらの特性を全て満たす鋼材を製造する事が可能となる。
一般に、高温降伏強度は、鋼材中に存在する転位による転位強化と、転位運動の障害となる析出物によって発現すると考えられている。従って、鋼材の温度が550℃を超えて転位の上昇運動による転位の合一消滅が起こる様になると、急激に高温降伏強度は減少する場合がある。
この為、高い高温降伏強度を確保する為には、鋼材が火災に曝される前の時点、即ち室温において、充分に余裕のある量の転位を持つ事、もしくは、転位の運動の障害となる組織、具体的には析出物や結晶粒界を多数含む事が効果的である。尚、析出物については火災に曝される段階で初めて生成するものであっても構わない。
本発明者らは、光学顕微鏡組織の面積分率で80%以上を転位密度の高いベイナイト相またはマルテンサイト相とし、且つベイナイト相またはマルテンサイト相を細粒化する事が、高温降伏強度の上昇と低温靭性の向上に有効である事を実験と解析を通じて明らかにした。
これは、火災時の加熱もしくは製造時の焼戻しによる合金元素の転位上析出を促進する事で、高い高温降伏強度が得られる為である。
ベイナイト相またはマルテンサイト相が面積分率で50%を超える、熱間圧延後、加速冷却する鋼材においては、ベイナイト相またはマルテンサイト相が80%未満では、室温引張り強度が450MPa以上、650MPa以下となり、600℃における降伏強度が217MPa以上であり、鋼材の溶接HAZの600℃破断絞り値が25%以上となることを全て満たすことはできない。したがって、ベイナイト相またはマルテンサイト相が80%以上と規定した。
以上の様な特性を持つ鋼材組織を得る為に、本発明者らは、本発明の化学成分を有する鋼片を熱間圧延もしくは熱間加工するに際し、800℃以上1000℃以下の温度範囲で圧下量もしく加工量を大きくとる、具体的には圧下比50%以上の熱間圧延または熱間加工を行い、800℃以上で熱間圧延または熱間加工を終了し、その後Ar3点以上の温度域から450℃以下の温度範囲まで2℃/秒以上の冷速で加速冷却を行う事が有効である事を、実験と解析により見出した。
圧下比50%以上の熱間圧延または熱間加工を行う事により、本発明の範囲内において安定的に母材靭性を確保する事が可能となる。
尚、一般にオーステナイト域での圧下量を大きくとると、変態温度の高温化によりベイナイト分率が低下しフェライト分率が上昇する場合があるが、本発明の成分系はC量を低く抑えている為にベイナイト変態が起き易くなっており、ベイナイト分率の低下が抑制出来る事が分かっている。
更に、本発明では、加速冷却を行った後、焼戻し熱処理を適用する事も可能である。焼戻し熱処理を適用する事により、熱間圧延後の放冷で完全に析出せずに固溶状態で残っている合金元素の析出を促し、火災時の転位の減少を抑える析出物の数を更に増加させる事が可能となる。
この焼戻しは400℃以上、650℃未満の間で適宜選択して温度を決定する事が可能であり、必要とする材料強度と析出させる合金元素の種類によって決定する事で、本発明の効果を高める。
焼戻しの時間についても同様であり、焼戻し時の組織変化が物質の拡散で支配される時には温度を高くする事と時間を長くする事は同じ効果を与える為、焼戻し温度に応じて5分〜360分の間で決定可能である。
以上に述べた様に、本発明では合金元素の析出を有効に利用する事が重要であり、その様な合金元素の析出を安定的に確実に得る為の手段として、該鋼片を熱間圧延する際に1100℃以上、1300℃以下に加熱しておく必要がある。
これは、1100℃以上の温度に加熱する事により、各種の合金元素の炭化物もしくは窒化物、例えば、VC、TiC、ZrC、Cr23等を完全にもしくは可能な限り多く固溶させておく事により、熱間圧延後の焼入れ性を調整し実機製造上の安定性を高める事を目的としている。
この加熱を行わない場合、C、Cr、V、Ti及びZr等の合金元素が熱間圧延前に既に粗大に析出する等して、熱間圧延後の焼入性の低下による鋼材の転位密度の減少や、熱間圧延後に析出する微細な炭化物もしくは窒化物の減少による析出強化量の減少を招く事となり、製造した鋼材の室温引張り強度や高温降伏強度の安定性に大きな影響を及ぼす事になる。
但し、該加熱温度を1300℃超とすると鋼材表面の酸化スケールの増加が著しくなる為、加熱温度の上限を1300℃に制限する。
以上に述べた様に、化学成分の限定に加えて製造技術の限定を併用する事で、最も歩留まり良く合金添加量も最適化された高温降伏強度に優れた耐火鋼材を提供する事が可能となる。
本発明の実施例の一部を以下に示す。表1および表2に鋼材の化学成分、表3および表4に製造板厚、加熱温度、熱間圧延条件(800℃〜1000℃での圧下比、熱延仕上(熱延終了温度)、加速冷却の冷却開始温度(水冷開始)、冷却停止温度(水冷停止)、加速冷却の冷却速度(冷速)、焼戻し温度、室温降伏強度(室温YS)、室温引張り強度(室温TS)、母材の600℃降伏強度(600℃YS)、HAZの600℃高温引張の破断絞り値、0℃における母材シャルピー試験の吸収エネルギー(母材靭性vE0℃)、及び、0度におけるHAZシャルピー試験の吸収エネルギー(HAZ靭性vE0℃)を示す。表1〜表4では、本発明の目標に入らない項目に下線を付けて表示してある。
Figure 0005347824
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室温引張試験はJISZ2241に基づき実施し、応力−歪曲線上に上降伏点が現れる場合は上降伏点を室温降伏強度とし、現れない場合には0.2%耐力を室温降伏強度とした。室温引張り強度の目標は450MPa以上、650MPa以下、室温降伏強度の目標は325MPa以上である。
高温引張試験はJISG0567に基づき600℃にて実施し、測定された0.2%耐力を600℃降伏強度とした。母材の600℃降伏強度の目標は217MPa以上である。
HAZの600℃高温引張の破断絞り値は、鋼片に入熱2kJ/mmの溶接を想定した熱履歴を付与し、その後室温から600℃まで10分間で昇温し、600℃で10分保持した後に歪速度0.10%/秒にて引張試験を実施し、試験片破断部の絞り値を測定したものであり、HAZの再熱脆化の指標としたものである。本指標の目標は25%以上とする。
母材のシャルピー試験は、各鋼材の厚位置1/2tからJISZ2202に準拠の2mmV衝撃試験片を採取し、JISZ2242に準拠の衝撃試験方法により行った。吸収エネルギーの目標は建築構造物の耐震性を考慮して27J以上とした。
HAZのシャルピー試験は、各鋼材に対して入熱5kJ/mmの溶接を想定した熱サイクルを付与した上でJISZ2202に準拠の2mmVノッチ衝撃試験片を採取し、JISZ2242に準拠の衝撃試験方法により行った。吸収エネルギーの目標は建築構造物の耐震性を考慮して27Jとした。
更に、鋼材組織の光学顕微鏡観察の結果から算出した、ベイナイト相及びマルテンサイト相の面積分率の和を表3および表4に示してある。残部は、いずれもフェライト相であり、一部の試料では3%未満のMA相もフェライト相と共に認められた。なお、不可避的相として介在物が認められたが、その面積分率は非常に小さく無視できた。ベイナイト相及びマルテンサイト相の面積分率の総和は、本発明においては80%以上となる特徴がある。
表3および表4の結果より、本発明の実施例の実施例である本発明1〜本発明26では、室温引張り強度、室温降伏強度、600℃降伏強度が全て目標範囲に収まっている事が分かる。
同時に、本発明1〜本発明26では、本発明の重要な特徴である溶接HAZの600℃引張試験の破断絞り値も25%以上が確保され、HAZの高温延性が確保されている事が分かる。
更に、本発明1〜本発明26では、母材及びHAZのシャルピー試験の吸収エネルギーも0℃で27J以上である。
また表3および表4の結果より、本発明の範囲に入らない比較例1〜比較例17では、室温引張り強度、室温降伏強度、600℃降伏強度、HAZの600℃引張試験の破断絞り値、0℃における母材シャルピー吸収エネルギー、または0℃におけるHAZシャルピー吸収エネルギー、のいずれかが目標を満たさない事が分かる。

Claims (5)

  1. 化学組成が質量%で、
    C:0.005%以上、0.050%以下、
    Si:0.01%以上、0.50%以下、
    Mn:0.50%以上、2.00%以下、
    Cr:0.50%以上、2.00%以下、
    V:0.10%以上、0.50%以下、
    Ti:0.005%以上、0.030%以下、
    Al:0.005%以上、0.10%以下、
    N:0.001%以上、0.006%以下、
    を含有し、
    Mo:0.01%未満、
    Nb:0.01%以下、
    B:0.0003%以下、
    P:0.020%未満、
    S:0.010%未満、
    O:0.010%未満
    に制限した、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材であって、
    光学顕微鏡組織が、面積分率で80%以上がベイナイト相及びマルテンサイト相であり、残部がフェライト相もしくはMA(マルテンサイト−オーステナイト混合組織)相及び不可避的相からなり、
    室温引張強さが450MPa以上、650MPa以下であり、
    本鋼材の母材の600℃降伏応力が217MPa以上であり、
    本鋼材の溶接熱影響部の600℃高温引張の破断絞り値が25%以上である事を特徴とする、母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材。
  2. 請求項1に加えて、質量%で、
    Ni:0.01%以上、1.00%以下、
    Cu:0.01%以上、0.50%以下、
    W:0.01%以上、0.50%以下、
    の内1種または2種以上を含有する事を特徴とする、請求項1に記載の母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材。
  3. 請求項1または2に加えて、質量%で、
    Zr:0.001%以上、0.050%以下、
    Mg:0.0005%以上、0.0050%以下、
    Ca:0.0005%以上、0.0050%以下、
    Y:0.001%以上、0.050%以下、
    La:0.001%以上、0.050%以下、
    Ce:0.001%以上、0.050%以下、
    の内の1種または2種以上を含有する事を特徴とする、請求項1または2に記載の母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の耐火鋼材の製造方法であって、請求項1〜3の何れか1項に記載の鋼成分を有する鋼片を、1100℃以上、1300℃以下に加熱した後、熱間圧延または熱間加工を施すにあたり、800℃以上1000℃以下において圧下比50%以上の熱間圧延または熱間加工を行い、800℃以上で熱間圧延または熱間加工を終了し、その後Ar3点以上の温度域から450℃以下の温度範囲まで2℃/秒以上の冷速で加速冷却する事を特徴とする、母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法を適用した後、鋼材を400℃以上650℃未満の温度範囲で5分以上、360分以下の焼戻し熱処理を行う事を特徴とする、母材の高温強度及び溶接熱影響部の高温延性に優れた耐火鋼材の製造方法。
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