クレーン車は、大荷重を吊上げたり作業範囲を広くする等の高能力化のためには大型化する必要があるが、クレーン車を大型にするとクレーン車全体の重量が重くなる。
図1には従来から使用されている大型クレーン車を示しているが、この種の大型クレーン車では、クレーン作業時において伸縮ブーム3の前方側に働く転倒モーメントを打ち消すために旋回台2の後部にカウンタウエイト4を装着することがあり、カウンタウエイト装着状態ではクレーン車の全体重量がさらに重くなる。尚、大型のクレーン車では、旋回台後部に予め上記カウンタウエイトを固定的に取付けたものもある。そして、旋回台後部のカウンタウエイト4の重量が重くなると、クレーン姿勢によっては後述のようにブーム後方側への転倒モーメントが大きくなる。
又、大重量のクレーン車を安定的に支えるのに、車軸12を多軸化(図1の例では6軸)してクレーン車重量を多数の車輪13で分散支持することが有効であるが、車軸12を多軸化すると、車軸数増加によりその各車軸関連部分(例えば、車輪13、車軸12、サスペンション等)の合計重量が増えて、クレーン車全体の重量をさらに重くする要因になる。尚、車軸関連部分とは、例えば車輪13、車軸12、サスペンション等を含むものであり、本願では該車軸関連部分を車輪接地反力支持手段と表現している。
そこで、多軸化したクレーン車の軽量化のために、各車軸関連部分(車輪接地反力支持手段)を可及的に軽量にする(例えば車軸12を細くする)ことが考えられるが、車輪接地反力支持手段を軽量にすると、その分、荷重に対する支持強度が低下するようになる。
他方、クレーン車には、通常アウトリガ6が装備されているが、例えばクレーン作業を終えてブームを格納する作業時には、アウトリガ6を使用しないオンタイヤ状態で行う場合が多い。その場合はクレーン車の全重量及び後述するブーム後方側への転倒モーメントを車輪13部分で支持することになる。
ところで、この種のクレーン車には、クレーン作業をクレーン車が転倒しない限界クレーン作業範囲内で制御するための転倒防止制御装置を備えている。この転倒防止制御装置は、旋回台旋回角度、ブーム長さ、ブーム起伏角度、カウンタウエイト装着重量、吊荷重、アウトリガ張出幅等の各種クレーン作業状態に基いて、予め限界クレーン作業範囲をコントローラに記憶させたものであり、各種の作業状態検出手段(旋回角度検出器23、ブーム長さ検出器33、ブーム起伏角度検出器34、カウンタウエイト装着重量検出器41、吊荷重検出器51、アウトリガ張出幅検出器61等)からクレーン作業状態に関する各種の検出値を得て、現状のクレーン作業状態が限界クレーン作業状態に達したときにクレーンの危険側操作を規制するものである。この転倒防止制御装置は、車輪接地状態(アウトリガ6が非接地)での作業時にも機能するものである。尚、ここでいう限界クレーン作業範囲とは、クレーン車が実際に転倒する限界クレーン作業状態からある程度(例えば15%程度)安全側に余裕のある範囲に設定されている。
上記転倒防止制御装置の機能としては、ブーム前方側への転倒を防止する制御とブーム後方側への転倒を防止する制御とがある。そして、ブーム前方側への転倒防止制御を行うものとしては、例えば特許第3073310号公報(特許文献1)に示されるものがあり、ブーム後方側への転倒防止制御を行うものとしては、例えば特開昭56−141293号公報(特許文献2)に示されるものがある。
尚、本願では、主としてブーム後方側に転倒モーメントがかかる場合を制御の対象としているので、特許第3073310号公報(特許文献1)に示されるブーム前方側への転倒防止装置については、説明を省略する。
特開昭56−141293号公報(特許文献2)に示されるブーム後方側への転倒防止装置は、例えば図1に実線図示するように、吊荷がない状態で伸縮ブーム3を最縮小状態近くまで縮小させるとともに最大起伏角度付近まで起仰させたときに、クレーン車全体の重量バランスの関係からクレーン車が伸縮ブーム3の後方側に転倒しようとするのを防止するものである。
因に、図1のクレーン車の例では、旋回台2の後部にカウンタウエイト4が装着されており、吊荷がない状態で伸縮ブーム3を最縮小状態近くまで縮小させるとともに最大起伏角度付近まで起仰させた状態では、クレーン車全体の重心が旋回中心Pよりブーム後方側に大きく変位し、クレーン車をブーム後方側に転倒させる作用が生じる。特に、車輪接地状態において伸縮ブーム3の旋回位置が車輌の側方に向いた姿勢では、旋回中心から車輌側部位置にある車輪までの水平距離が短くなって(反転倒モーメントアームが短くなる)、重量バランスの変化による後方転倒モーメントの割合が大きくなる。
そして、上記特許文献2の後方転倒防止装置は、このような背景により、クレーン車がブーム後方側に転倒する虞れがある作業状態では、伸縮ブーム3に対して危険側操作(ブーム起仰操作及びブーム縮小操作)を行えないようにしたものである。
又、特許文献2の後方転倒防止装置で設定されるクレーン車の限界後方安定性能は、ブーム起伏角度とブーム長さの各データ(検出値)のみに基いて、図2に2点鎖線で示すように旋回中心Pから同一半径の全周同一に設定されている。図2に2点鎖線で示す限界後方安定性能Mは、ブーム後方側への転倒作用が最も大きく働く条件、即ち伸縮ブーム3の旋回位置が車輌側方に向いたときを基準にして設定されている。又、この限界後方安定性能Mは、旋回台2の後部に装着されるカウンタウエイト4の重量が重くなるほど旋回中心Pからの半径が長くなって、作業不能領域(2点鎖線の円の内側領域)が広くなる。
尚、実際の限界後方安定性能は、伸縮ブーム3が車輌1の前方及び後方に向く各姿勢での限界安定性能Ma,Mb(図2)の方が、該伸縮ブーム3が車輌1の左右各側方に向く姿勢での限界安定性能Mc,Mc(図2)より旋回中心P側に大きくなる。即ち、実際には、設定された限界後方安定性能Mの作業可能領域(2点鎖線の円の外側領域)より、図2にハッチングで示す範囲S,Sだけ作業可能領域が広いものである。
ところで、ブーム格納操作時には、伸縮ブーム3の先端部から吊下したフック5(図1)を旋回台2上に設置したクレーン操作室14の前部近傍位置に係止させるが、そのときには伸縮ブーム3を図1に実線図示するように最縮小付近まで縮小させるとともに最大起仰状態付近まで起仰させてブーム先端部から吊下したフック5をクレーン操作室14の前部近傍の係止位置に近づけることが好ましい。ところが、旋回台後部に大重量のカウンタウエイト4を装着した状態では、図2に示す限界後方安定性能Mの半径が長くなって、フック吊下位置Qを所望位置まで旋回中心P側に近づけるブーム操作ができない場合がある。その場合は、フック5をその係止すべき位置の直上方まで近づけることができないので、フック5の係止作業がしにくくなる。
特許第3073310号公報
特開昭56−141293号公報
ところで、大型化により大重量となったクレーン車を軽量化するために、上記のように車軸12等の車輪接地反力支持手段11を軽量に(車軸12を細く)すると、該車輪接地反力支持手段11(車軸12)の強度が弱くなり、車輪接地状態でブーム後方側への転倒モーメントが大きくなる作業状態では、ブーム後方側に位置する車輪13に大きな負荷(車輪接地反力)が加わり、車輪接地反力支持手段11(例えば車軸12)の強度が不足することが考えられる。即ち、旋回台後部に装着したカウンタウエイト4が大重量で、伸縮ブーム3が最縮小付近まで縮小し且つ最大起伏角度付近まで起仰した状態で、しかもブーム旋回位置が車輌の側方に向いた姿勢での作業状態では、ブーム後方側への転倒モーメントが大きくなることにより、ブーム後方側に位置する車輪13の接地反力が大きくなって、その車輪に対応する車輪接地反力支持手段11(例えば車軸12部分)が該車輪接地反力によりダメージを受ける虞れがあるという問題があった。
又、上記特許文献2の後方転倒防止装置では、図2に示すように限界後方安定性能Mが全周同一半径に設定されているので、ブーム旋回位置が前方又は後方に向いている状態では図2にハッチングで示す範囲S,Sが作動可能領域となるにも拘わらず、該範囲S,Sでの作動が不能のままとなる。従って、フック5の格納時に、例えば図1に実線図示するようにフック5をクレーン操作室14の前部近傍(フック係止位置)の直上方まで近づけることができない(フック格納作業がしにくい)、という問題もあった。
そこで、本願発明は、車輪接地状態での作業時において、車輪に加わる接地反力を支持する手段(車輪、車軸、サンペンション等が相当する)の強度で対応できる範囲内でのみ作業が行えるようにすることにより、該車輪接地反力支持手段が作業時の車輪接地反力でダメージを受けないようにしたクレーン車の制御装置を提供することを第1の目的とし、さらにブーム後方側への転倒防止機能(限界後方安定性能)を備えたクレーン車の制御装置において、ブームの作動可能領域を広くし得るようにすることを第2の目的としてなされたものである。
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。
本願発明は、車輪接地状態での作業時おける車輪接地反力に関連して行われるクレーン車の制御装置を対象にしているが、本願発明は、上記背景技術の項で説明したような背景に基いてなされたものである。
即ち、上記背景技術の項の説明と重複するが、本願で対象にしているクレーン車は、主として大型のものであってクレーン車全体がかなりの大重量を有している。又、この種の大型クレーン車では、クレーン作業時において伸縮ブームの前方側に働く転倒モーメントを打ち消すために旋回台の後部に大重量のカウンタウエイトを装着することがある。そして、カウンタウエイトを装着した状態では、クレーン車の全体重量がさらに重くなるとともに、旋回台後部のカウンタウエイトの重量が大重量であると、伸縮ブームを最縮小状態近くまで縮小させるとともに最大起伏角度付近まで起仰させたときに、クレーン車全体の重心が旋回中心よりブーム後方側に大きく変位し、クレーン車をブーム後方側に転倒させる作用が生じる。特に、車輪接地状態において伸縮ブームの旋回位置が車輌の側方に向いた姿勢では、旋回中心から車輌側部位置にある車輪までの水平距離が短くなって(反転倒モーメントアームが短くなる)、重量バランスの変化による後方転倒モーメントが大きくなる。尚、以下の説明では、便宜上、伸縮ブームが最縮小状態近くまで縮小した状態を含めて「最縮小」といい、該伸縮ブームが最大起伏角度付近まで起仰させた状態を含めて「最起仰」ということがある。
又、大型・大重量化したクレーン車を安定して支持するのに、車軸を多軸(例えば6軸)にしてクレーン車重量を多くの車軸(車輪)で分散支持することが有効であるが、車軸を多軸にすると、その分、クレーン車全体の重量が増加することになる。
そこで、多軸化したクレーン車の軽量化のために、各車軸関連部分(車輪接地反力支持手段)を可及的に軽量にする(例えば車軸を細くする)ことが考えられるが、車輪接地反力支持手段を軽量にすると、その分、荷重に対する支持強度が低下するようになる。
他方、クレーン車には、通常アウトリガが装備されているが、例えばクレーン作業を終えてブームを格納する作業時には、車輪接地状態(アウトリガを使用しないオンタイヤ状態)で行う場合が多い。その場合はクレーン車の全重量及び後述するブーム後方側への転倒モーメントを車輪部分で支持することになる。
ところで、この種のクレーン車には、クレーン作業をクレーン車が転倒しない限界クレーン作業範囲内で制御するための転倒防止制御装置を備えている。この転倒防止制御装置の機能としては、ブーム前方側への転倒を防止する制御とブーム後方側への転倒を防止する制御とがあるが、本願発明の制御装置は、主としてブーム後方側への転倒防止に関連して制御されるものである。
上記の背景を踏まえて、以下に本願各発明(請求項1〜3)について説明する。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、車輌上に旋回台を旋回可能に搭載し、旋回台に伸縮ブームを伸縮及び起伏可能に設置するとともに、クレーンの作業状態に関する各種の情報を検出する作業状態検出手段を装備したクレーン車の制御装置を対象にしている。
上記作業状態検出手段には、旋回角度検出器、ブーム長さ検出器、ブーム起伏角度検出器、カウンタウエイト装着重量検出器、吊荷重検出器、アウトリガ張出幅検出器等があるが、これらの検出器からの各種検出値に基いてコントローラによりクレーン作業時の転倒防止制御が行われている。
本願請求項1の制御装置に使用されているコントローラには、車輪を接地させた状態での車輪接地反力支持手段の強度に基いて該車輪接地反力支持手段の強度で対応できる限界接地反力値を記憶する限界接地反力値記憶手段と、車輪を接地させた状態での現在のクレーン作業状態における作業状態検出手段からの各種検出値に基いて車輪に加わる現在の接地反力値を取得する現在接地反力値取得手段と、該現在接地反力値取得手段で取得した現在接地反力値と限界接地反力値記憶手段に記憶している限界接地反力値とを比較する比較手段と、該比較手段が、上記現在接地反力値が上記限界接地反力値に達したと判断した時点でクレーンの各種操作アクチュエータに対して車輪に加わる接地反力値が増大する側への操作を規制する接地反力増大側操作規制手段とを備えている。
本願発明でいう車輪接地反力支持手段とは、車輪接地状態でのクレーン作業状態において車輪の接地反力を支持する部分であって、車輪や車軸やサスペンション等を総称するものである。又、この車輪接地反力支持手段の限界接地反力値は、車輪や車軸やサスペンションのうちの強度が最も弱い部分を対象にして求められる。そして、この車輪接地反力支持手段の限界接地反力値は、コントローラの限界接地反力値記憶手段に記憶されている。尚、車輪接地反力支持手段の限界接地反力値は、該車輪接地反力支持手段に変形や破損が生じる実際の限界値より安全側に余裕をもった値に設定される。
上記現在接地反力値取得手段は、車輪接地状態でのクレーン作業状態における車輪に生じる現在接地反力値を取得するものであるが、この現在接地反力値取得手段は、上記作業状態検出手段からの各種検出値に基いて現在接地反力値を算出又は読み出しによって取得し得るようになっている。尚、現在接地反力値取得手段で取得する現在接地反力値は、最終値を導き出す前の関数の状態のものも含むものである。
上記比較手段は、現在接地反力値取得手段で取得した現在接地反力値と限界接地反力値記憶手段に記憶している限界接地反力値とを比較するもので、現在接地反力値が限界接地反力値に達した時点で、接地反力増大側操作規制手段側に作動信号を発するようになっている。
接地反力増大側操作規制手段は、クレーンの各種操作アクチュエータに対して車輪に加わる接地反力値が増大する側への操作(例えばブーム後方側に転倒モーメントが作用しているクレーン状態において、ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等)を規制するものである。そして、この接地反力増大側操作規制手段は、上記比較手段からの信号で作動せしめられる。
この請求項1で使用されるクレーン車では、車輪接地状態で、伸縮ブームが最縮小状態及び最起仰状態で且つ該伸縮ブームが車輌の側方に向く作業姿勢のときに、クレーン車をブーム後方側に転倒させるモーメントが最大になり、その後方側転倒モーメントが車輪接地反力として現れる。
そして、この請求項1の制御装置は、車輪接地状態での作業時において次のように機能する。
まず、車輪接地状態での作業時には、現在接地反力値取得手段により現時点での車輪接地反力支持手段に加わる現在接地反力値を取得しており、その現在接地反力値と予め限界接地反力値記憶手段で記憶している限界接地反力値とを比較手段で常時比較している。
そして、上記現在接地反力値が上記限界接地反力値より小さい状態では、比較手段がOFF状態となっていて、接地反力増大側操作規制手段を作動させることなく通常のクレーン操作を行えるようになっている。
他方、クレーンを接地反力増大側に操作(ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等)することにより上記現在接地反力値が上記限界接地反力値に達したときには、比較手段がON状態となって該比較手段から接地反力増大側操作規制手段を作動させる信号が発せられる。すると、該接地反力増大側操作規制手段が作動して、クレーンの各種操作アクチュエータに対して接地反力増大側操作(ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等)をそれぞれ規制するようになっている。
従って、この請求項1の制御装置では、車輪接地状態でのクレーン操作時において、車輪接地反力支持手段にダメージが生じるようなクレーン姿勢になる手前で規制がかかるので、車輪接地反力支持手段がダメージを受けるような危険側条件でのクレーン作業を未然に防止できる。尚、上記接地反力増大側操作規制手段が作動しても、クレーンの各種操作アクチュエータに対して接地反力減少側操作(ブーム伸長側操作、ブーム倒伏側操作、車輌前後側への旋回操作等)は、それぞれ行えるようになっている。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の制御装置において、コントローラに、車輪接地状態での作業時においてクレーン車が伸縮ブームの後方側に転倒しないように制御する後方安定制御手段を備えている。
又、該後方安定制御手段は、伸縮ブームの旋回位置の変化によって生じるブーム後方側への転倒モーメントの変化に基いて該転倒モーメントが小さくなるブーム旋回位置ではクレーン作業可能領域を拡大させるような制御を行うようにしている。具体的には、伸縮ブームが最縮小及び最起仰した状態では、クレーン車をブーム後方側に転倒させるようなモーメントが働くが、そのときの転倒モーメントは、伸縮ブームが車輌の前方又は後方に向く姿勢にあるときの方が該伸縮ブームが車輌の左右側方に向く姿勢にあるときより小さくなる。そして、この請求項2では、後方安定制御手段で制御される限界後方安定性能として、車輌前後側が車輌側方側より作業可能領域が広くなるように設定している。
尚、伸縮ブームが最縮小及び最起仰した状態における車輪接地反力は、伸縮ブームが車輌の前後方向に向く姿勢にあるときの方が該伸縮ブームが車輌の側方に向く姿勢にあるときより小さくなる。
又、この請求項2の制御装置では、上記接地反力増大側操作規制手段は、伸縮ブームの旋回位置の変化によって生じる車輪接地反力の変化に基いて該車輪接地反力が小さくなるブーム旋回位置ではクレーン作業可能領域を後方安定制御手段で制御されるクレーン作業可能領域内で拡大させるような制御を行うようにしている。
このようにすると、後方安定制御手段で制御されるクレーン作業可能領域と接地反力増大側操作規制手段で制御されるクレーン作業可能領域とが共に拡大する。尚、この場合のクレーン作業可能領域の拡大部分は車輌の前後方向に位置するが、車輌前方側にクレーン作業可能領域の拡大部分があると、例えばフック格納時のように伸縮ブームを車輌前方側に向けた状態で行う作業時において、該伸縮ブームを一層縮小又は起仰させることができる(吊下げたフックをフック係止位置の直上方に位置させることができる)。
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項2の制御装置において、後方安定制御手段による制御と接地反力増大側操作規制手段による制御とを比較して、いずれかクレーン作業の安全性が高い側の制御を優先して行わせるようにしている。
このように、後方安定制御手段による制御と接地反力増大側操作規制手段による制御との2つの制御を行うものにおいて、該両制御のうちのいずれか安全性が高い側の制御を優先して行わせるようにすると、後方安定制御手段による限界後方安定性能及び後方安定制御手段による限界強度特性の各危険側領域でクレーン作業が行われることがない。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の制御装置には、車輪接地反力支持手段(例えば車輪、車軸、サスペンション等)の強度で対応できる限界接地反力値を記憶する限界接地反力値記憶手段と、車輪に加わる現在接地反力値を取得する現在接地反力値取得手段と、上記現在接地反力値と上記限界接地反力値とを比較する比較手段と、上記現在接地反力値が上記限界接地反力値に達した時点で接地反力値が増大する側への操作を規制する接地反力増大側操作規制手段とを備えている。
そして、クレーン操作時に上記現在接地反力値が上記限界接地反力値に達したときには、比較手段から接地反力増大側操作規制手段を作動させる信号が発せられ、該接地反力増大側操作規制手段が作動して、クレーンの各種操作アクチュエータに対して接地反力増大側操作(ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等)をそれぞれ規制するようになっている。
従って、この請求項1の制御装置では、車輪接地状態でのクレーン操作時において、車輪接地反力支持手段にダメージが生じるようなクレーン姿勢になる手前で規制がかかるので、車輪接地反力支持手段がダメージを受けるような危険側条件でのクレーン作業を未然に防止できるという効果がある。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明は、上記請求項1の制御装置において、クレーン車がブーム後方側に転倒しないように制御する後方安定制御手段であって、ブーム後方側への転倒モーメントが小さくなるブーム旋回位置ではクレーン作業可能領域を拡大させるような制御を行うようにした後方安定制御手段を備えている一方、上記接地反力増大側操作規制手段は、車輪接地反力が小さくなるブーム旋回位置ではクレーン作業可能領域を後方安定制御手段で制御されるクレーン作業可能領域内で拡大させるような制御を行うようにしている。
従って、この請求項2の制御装置では、上記請求項1の効果に加えて、後方安定制御手段で制御されるクレーン作業可能領域と接地反力増大側操作規制手段で制御されるクレーン作業可能領域とを共に拡大させることができるという効果がある。
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項2の制御装置において、後方安定制御手段による制御と接地反力増大側操作規制手段による制御とを比較して、いずれかクレーン作業の安全性が高い側の制御を優先して行わせるようにしている。
従って、この請求項3の制御装置では、上記請求項2の効果に加えて、後方安定制御手段による制御と接地反力増大側操作規制手段による制御とを行うものにおいて、後方安定制御手段による限界後方安定性能及び接地反力増大側操作規制手段による限界強度特性の各危険側領域でのクレーン作業が行えないので、作業の安全性が確保できるという効果がある。
以下、図3〜図6を参照して本願実施例のクレーン車の制御装置を説明すると、図3及び図4は本願第1実施例の制御装置に関するものであり、図5及び図6は本願第2実施例の制御装置に関するものである。尚、この各実施例で使用するクレーン車については図1を併用して説明する。
本願の各実施例で使用される図1のクレーン車は、背景技術の項の説明と重複するが、以下の構成を有している。
即ち、該クレーン車は、図1に示すように、車輌1上に旋回台2を旋回可能に搭載している一方、該旋回台2に伸縮ブーム3を伸縮及び起伏可能に設置している。尚、旋回台2は、図示しない旋回モータで水平旋回せしめられる。又、伸縮ブーム3は、図示しない伸縮シリンダで伸縮せしめられるとともに、起伏シリンダ32で起伏せしめられる。
又、各実施例で使用されるクレーン車(図1)は、大吊上荷重及び高揚程の仕様をもつ大型のものであって、大重量を有している。そして、この図1に示すクレーン車では、クレーン車を安定して支持するのに車軸12を多軸(図示例では6軸)にしてクレーン車重量を多くの車軸12(車輪13)で分散支持するようにしている。
図1のクレーン車では、クレーン作業時において伸縮ブーム3の前方側に働く転倒モーメントを打ち消すために旋回台2の後部に大重量のカウンタウエイト4を装着している。尚、カウンタウエイト4は、その個数を増減することでカウンタウエイト総重量を変化させることができるが、このカウンタウエイト4は定重量のものを予め旋回台後部に固定的に組み込んだものでもよい。
カウンタウエイト4を装着した状態では、クレーン車の全体重量が重くなるとともに、旋回台後部のカウンタウエイト4の重量が大重量であると、図1に実線図示するように吊荷がない状態で伸縮ブーム3を最縮小状態近くまで縮小させるとともに最大起伏角度付近まで起仰させたときに、クレーン車全体の重心が旋回中心Pよりブーム後方側に大きく変位し、クレーン車をブーム後方側に転倒させる作用が生じる。特に、車輪接地状態において伸縮ブーム3の旋回位置が車輌1の側方に向いた姿勢では、旋回中心Pから車輌側部位置にある車輪13までの水平距離が短くなって(反転倒モーメントアームが短くなる)、重量バランスの変化による後方転倒モーメントが大きくなる。尚、この実施例でも、便宜上、伸縮ブーム3が最縮小状態近くまで縮小した状態を含めて「最縮小」といい、該伸縮ブームが最大起伏角度付近まで起仰させた状態を含めて「最起仰」ということがある。
このクレーン車には、アウトリガ6が装備されているが、例えばクレーン作業を終えてブームを格納する作業時には、車輪接地状態(アウトリガ6を使用しないオンタイヤ状態)で行う場合が多い。その場合はクレーン車の全重量及び後述するブーム後方側への転倒モーメントを車輪部分(車輪接地反力支持手段11)で支持することになる。
伸縮ブーム3の先端部(符号Q)からはフック5が吊下げられるが、このフック5は伸縮ブーム3の格納時には旋回台2のクレーン操作室14の前部近傍位置に係止される。その場合(フック係止作業時)には、図1に実線図示するように伸縮ブーム3を最縮小させるとともに最起仰させて、ブーム先端部のフック吊下位置Qをクレーン操作室14の前部近傍位置(フック係止位置となる)の直上方に位置させることが好ましい。
ところで、このクレーン車には、クレーン作業をクレーン車が転倒しない限界クレーン作業範囲内で制御するための転倒防止制御装置を備えている。この転倒防止制御装置は、旋回台旋回角度、ブーム長さ、ブーム起伏角度、カウンタウエイト装着重量、吊荷重、アウトリガ張出幅等の各種クレーン作業状態に基いて、予め限界クレーン作業範囲をコントローラに記憶させており、各種の作業状態検出手段(旋回角度検出器23、ブーム長さ検出器33、ブーム起伏角度検出器34、カウンタウエイト装着重量検出器41、吊荷重検出器51、アウトリガ張出幅検出器61等)からクレーン作業状態に関する各種の検出値を得て、現状のクレーン作業状態が限界クレーン作業状態に達したときにクレーンの危険側操作を規制するものである。この転倒防止制御装置は、図1に示す車輪接地状態(アウトリガ6が非接地)での作業時にも機能するものであり、その場合はアウトリガ張出幅検出器61の検出値は「0」となる。
ところで、大型・大重量化したクレーン車を安定して支持するのに、車軸12を多軸(図示例では6軸)にすることが好ましいが、該車軸12を多軸にすると、その分、クレーン車全体の重量が増加することになる。そこで、多軸化したクレーン車の軽量化のために、各車軸関連部分(例えば車軸12、車輪13、サスペンション等)を可及的に軽量にする(例えば車軸12を細くする)ことが考えられるが、車軸関連部分を軽量にすると、その分、荷重に対する支持強度が低下するようになる。車軸12、車輪13、サスペンション等の車軸関連部分は、特許請求の範囲中の車輪接地反力支持手段11となるものであって、車輪接地状態において車輪13に加わる接地反力を受ける部分である。
尚、クレーン車では、車輪接地状態で、伸縮ブーム3が最縮小状態及び最起仰状態で且つ該伸縮ブーム3が車輌1の側方に向く作業姿勢のときに、クレーン車をブーム後方側に転倒させるモーメントが最大になり、その後方側転倒モーメントが車輪接地反力として現れる。そして、この車輪接地反力が大きくなると、その接地反力を支持する車輪接地反力支持手段11(例えば車軸12、車輪13、サスペンション等)にダメージを与えることが考えられる。
そこで、本願では、クレーン車の制御装置として、車輪接地状態での車輪接地反力支持手段11の強度に基いて制御するようにしたものを採用している。即ち、本願で採用している制御装置は、車輪接地状態で発生する車輪接地反力が、車輪接地反力支持手段11の強度で対応できる範囲内でのみクレーン作業が行えるようにしたものである。
[図3及び図4の第1実施例]
図3には本願第1実施例の制御装置を示しているが、この第1実施例の制御装置は、コントローラ8に、限界接地反力値記憶手段Bと、現在接地反力値取得手段Cと、比較手段Dと、接地反力増大側操作規制手段Eと、出力手段Fとを備えて構成されている。尚、コントローラ8には、通常の転倒防止制御装置が設けられているが、図3には転倒防止に関する制御装置を省略している。
上記限界接地反力値記憶手段Bは、車輪13を接地させた状態での車輪接地反力支持手段11(車軸12、車輪13、サスペンション等)の強度に基いて該車輪接地反力支持手段11の強度で対応できる限界接地反力値を記憶したものである。限界接地反力値の設定の基礎になる車輪接地反力支持手段11は、車軸12、車輪13、サスペンションの中の接地反力に対して最も強度が弱い部分を対象にしている。尚、限界接地反力値記憶手段Bに記憶される限界接地反力値は、車輪接地反力支持手段11に変形や破損が生じる実際の限界値より安全側に余裕をもった値に設定される。
ところで、車輪接地反力支持手段11の限界強度性能N(図4)は、例えば図4に一点鎖線で示すように、伸縮ブーム3が車輌1の前方及び後方に向く各姿勢での限界強度性能Na,Nbの方が、該伸縮ブーム3が車輌1の左右各側方に向く姿勢での限界強度性能Nc,Ncより旋回中心P側に大きくなる。即ち、伸縮ブーム3が車輌1の前方及び後方に向く各姿勢では、旋回中心Pから荷重がかかる車輪13までの距離(反転倒モーメントアーム)が長くなって当該荷重がかかる車輪13の接地反力が小さくなる(限界強度性能がNa,Nbとなる)一方、伸縮ブーム3が車輌1の左右各側方に向く姿勢では、旋回中心Pから荷重がかかる車輪13までの距離(反転倒モーメントアーム)が短くなって当該荷重がかかる車輪13の接地反力が大きくなる(限界強度性能がNc,Ncとなる)。
そして、この第1実施例では、限界接地反力値記憶手段Bで記憶する限界接地反力値(限界強度性能N)として、上記のようにブーム旋回位置による変化を加味して設定している。
上記現在接地反力値取得手段Cは、車輪接地状態での現在のクレーン作業状態における作業状態検出手段Aからの各種検出値に基いて車輪13に加わる現在の接地反力値を取得するものである。ここで採用される作業状態検出手段Aとしては、図3に示すように、ブーム長さ検出器33と、ブーム起伏角度検出器34と、旋回角度検出器23と、カウンタウエイト装着重量検出器41と、吊荷重検出器51とがあり、いずれも車輪の接地反力値の増減に影響するものである。
現在接地反力値取得手段Cによる現在接地反力値の取得は、作業状態検出手段Aからの各種検出値に基いて算出したり、あるいは各種検出値の組み合わせ毎に予め設定している多数の記憶値から該当するものを読み出す、等の方法で行われる。又、現在接地反力値取得手段で取得する現在接地反力値は、最終値を導き出す前の関数の状態のものも含むものである。尚、現在接地反力値を取得するためのデータとしては、例えばサスペンションのシリンダ圧や撓み量等を直接検出したものを使用してもよい。
尚、クレーンの転倒防止に関する制御にはアウトリガ張出幅検出器61(図1)からの検出値も加味されるが、本願は車輪接地状態での制御であるので、図3のブロック図には作業状態検出手段Aとしてアウトリガ張出幅検出器61を省略している。
上記比較手段Dは、現在接地反力値取得手段Cで取得した現在接地反力値と限界接地反力値記憶手段Bに記憶している限界接地反力値とを比較するもので、現在接地反力値が限界接地反力値に達した時点で、接地反力増大側操作規制手段Eに作動信号が発せられるようになっている。
上記接地反力増大側操作規制手段Eは、ブーム後方側に転倒モーメントが作用しているクレーン状態において、クレーンの各種操作アクチュエータに対して車輪13に加わる接地反力値が増大する側への操作を規制するもので、上記比較手段Dからの信号で作動せしめられる。車輪の接地反力値が増大する側への操作とは、ブーム後方側に転倒モーメントが作用しているクレーン状態において、ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等がある。
上記出力手段Fは、接地反力増大側操作規制手段Eが作動したときに、ブームの伸縮シリンダ制御弁31aと、ブームの起伏シリンダ制御弁32aと、旋回台の旋回モータ制御弁22aに対して、ブーム伸縮シリンダやブーム起伏シリンダや旋回台の旋回モータが車輪接地反力増大側(ブーム縮小側、ブーム起仰側、車輌側方側への旋回)に作動するのを規制する信号を発するものである。
そして、この第1実施例の制御装置(図3)は、車輪接地状態での作業時において次のように機能する。
まず、車輪接地状態での作業時には、現在接地反力値取得手段Cにより現時点での車輪接地反力支持手段11に加わる現在接地反力値を取得しており、その現在接地反力値と予め限界接地反力値記憶手段Bで記憶している限界接地反力値とを比較手段Dで常時比較している。
そして、上記現在接地反力値が上記限界接地反力値より小さい状態では、比較手段DがOFF状態となっていて、接地反力増大側操作規制手段Eを作動させることなく通常のクレーン操作を行えるようになっている。他方、クレーンを接地反力増大側に操作(ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等)することにより上記現在接地反力値が上記限界接地反力値に達したときには、比較手段DがON状態となって該比較手段Dから接地反力増大側操作規制手段Eを作動させる信号が発せられる。すると、該接地反力増大側操作規制手段Eが作動して、クレーンの各種操作アクチュエータ(実質的には伸縮シリンダ制御弁31a、起伏シリンダ制御弁32a、旋回モータ制御弁22a)に対して接地反力増大側操作(ブーム縮小側操作、ブーム起仰側操作、車輌側方側への旋回操作等)をそれぞれ規制するようになっている。
従って、この第1実施例の制御装置では、車輪接地状態でのクレーン操作時において、車輪接地反力支持手段11(車輪13や車軸12やサスペンション等)にダメージが生じるようなクレーン姿勢になる手前で規制がかかる。尚、上記接地反力増大側操作規制手段Eが作動しても、クレーンの各種操作アクチュエータに対して接地反力減少側操作(ブーム伸長側操作、ブーム倒伏側操作、車輌前後側への旋回操作等)はそれぞれ行えるようになっている。
このように、図3及び図4に示す第1実施例の制御装置では、車輪接地状態でのクレーン操作時において、車輪接地反力支持手段11にダメージが生じるようなクレーン姿勢になる手前で規制がかかるので、該車輪接地反力支持手段11がダメージを受けるような危険側条件でのクレーン作業を未然に防止できる。
又、この第1実施例では、上記限界接地反力値記憶手段Bで記憶している限界接地反力値(限界強度性能N)は、ブーム旋回位置が車輌1の前方及び後方に向く姿勢において符号Na,Nb(図4)で示すように旋回中心P側に近づく(作業可能領域が広くなる)ように設定しているので、例えば図1に示すようにフック5をクレーン操作室14の前部近傍に係止する際に、ブーム先端部のフック吊下位置Qをフック係止位置の直上方位置まで移動させることができる(フック5の係止作業が容易になる)。
[図5及び図6の第2実施例]
図5には本願第2実施例の制御装置を示しているが、この第2実施例の制御装置は、上記第1実施例(図3)のコントローラ8に、車輪接地状態での作業時においてクレーン車がブーム後方側に転倒しないように制御する後方安定制御手段Gと、該後方安定制御手段Gによる制御と上記接地反力増大側操作規制手段Eによる制御とを比較する比較手段Hを付加したものである。
尚、図6において、2点鎖線で示す限界後方安定性能M及び1点鎖線で示す限界強度性能Nは、いずれも外側が作業可能領域となる。
車輪接地状態で伸縮ブーム3を最縮小及び最起立させたときには、重量バランスがブーム後方側に移動してクレーン車をブーム後方側に転倒させるようなモーメントが発生するが、上記後方安定制御手段Gは、クレーン車がブーム後方側に転倒しないように制御するものである。
この後方安定制御手段Gは、次のような機能を有している。即ち、該後方安定制御手段Gは、クレーン車が後方側に転倒する限界転倒モーメント値(図6の限界後方安定性能M)を記憶している一方、実際のクレーン姿勢において作業状態検出手段A(ブーム長さ検出器33、ブーム起伏角度検出器34、旋回角度検出器23、装着重量検出器41、吊荷重検出器51)からの各種検出値に基いて現在の転倒モーメント値を取得し、該現在転倒モーメント値が限界転倒モーメント値に達すると、後方側転倒モーメントが大きくなる側の操作を規制する制御を行うようになっている。尚、後方側転倒モーメントが大きくなる側の操作には、ブーム縮小側操作とブーム起立側操作とブームが車輌側方側に旋回する操作とがあるが、上記のように現在転倒モーメント値が限界転倒モーメント値に達すると、後方安定制御手段Gにより当該各種アクチュエータ(伸縮シリンダ、起伏シリンダ、旋回モータ)に対してそれ以上の危険側動作を起こせないように制御される。
又、この後方安定制御手段Gは、ブーム旋回位置の変化によって生じるブーム後方側への転倒モーメントの変化に基いて該転倒モーメントが小さくなるブーム旋回位置では、作業可能領域を拡大させるような制御を行うようになっている。即ち、ブーム後方側への転倒モーメントは、ブーム旋回位置が車輌の前方又は後方に向いているときの方が車輌の左右側方に向いているときより小さくなることに対応して、図6に2点鎖線で示す限界後方安定性能Mのように、車輌の前方及び後方の限界後方安定性能Ma,Mbを車輌の左右側方の限界後方安定性能Mc,Mcよりそれぞれ旋回中心Pに近づける(作業可能領域が広くなる)ように設定している。
他方、限界接地反力値記憶手段Bで記憶している限界強度性能N(図6の1点鎖線図示)も、上記第1実施例のものと同様に、車輌の前方及び後方の限界強度性能Na,Nbを車輌の左右側方の限界強度性能Nc,Ncよりそれぞれ旋回中心Pに近づける(作業可能領域が拡大する)ように設定している。
このようにすると、後方安定制御手段Gで制御されるクレーン作業可能領域(限界後方安定性能M)と、接地反力増大側操作規制手段Eで制御されるクレーン作業可能領域(限界強度性能N)とを共に拡大させることができる。
又、図6の例では、上記限界後方安定性能Mと上記限界強度性能Nとは、車輌の左右側方側においては限界後方安定性能Mc,Mcの方が限界強度性能Nc,Ncよりハッチング部分の範囲T,Tだけ作業可能領域が広くなっている一方、車輌の前方及び後方側においては限界強度性能Na,Nbの方が限界後方安定性能Ma,Mbよりハッチング部分の範囲U,Uだけ作業可能領域が広くなっている。尚、これらの作業可能領域の差(各ハッチング部分の範囲T,U)は、車輪接地反力支持手段11側の強度やクレーン車の形態等の条件が変われば、変更されたり逆転することもある。
そして、この第2実施例の制御装置では、後方安定制御手段Gによる制御(限界後方安定性能M)と上記第1実施例で説明した接地反力増大側操作規制手段Eによる制御(限界強度性能N)とを比較手段Hで比較し、いずれかクレーン作業の安全性が高い側の制御を優先して出力手段Fから各種操作アクチュエータ(伸縮シリンダ、起伏シリンダ、旋回モータ)の制御弁31a,32a,22aに対して危険側動作を規制する信号が出力されるように設定している。具体的には、限界後方安定性能Mと限界強度性能Nとの外側の線を基準にして制御される(各ハッチング部分の範囲T,Uではいずれも作動不能となる)。
このようにすると、後方安定制御手段Gによる制御と接地反力増大側操作規制手段Eによる制御とを行うものにおいて、後方安定制御手段Gによる限界後方安定性能M及び接地反力増大側操作規制手段Eによる限界強度特性Nの各危険側領域でのクレーン作業が行えないので、作業の安全性が確保できる。
尚、他の実施例では、図5において後方安定制御手段Gによる制御(限界後方安定性能M)に比較する対象(比較手段Hで比較する相手)として、限界接地反力値記憶手段Bで記憶している限界接地反力値と現在接地反力値取得手段Cで取得した現在接地反力値とを比較する比較手段Dからのデータを直接(接地反力増大側操作規制手段Eを介することなく)用いてもよい。尚、この場合は、本願請求項3の構成はなくなる。
1は車輌、2は旋回台、3は伸縮ブーム、4はカウンタウエイト、5はフック、8はコントローラ、11は車輪接地反力支持手段、12は車軸、13は車輪、21は旋回操作検出器、22aは旋回モータ制御弁、23は旋回角度検出器、31aは伸縮シリンダ制御弁、32aは起伏シリンダ制御弁、33はブーム長さ検出器、34はブーム起伏角度検出器、41はカウンタウエイト装着重量検出器、51は吊荷重検出器、Aは作業状態検出手段、Bは限界接地反力値記憶手段、Cは現在接地反力値取得手段、Dは比較手段、Eは接地反力増大側操作規制手段、Fは出力手段、Gは後方安定制御手段、Hは比較手段である。