以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置1にて製造されるニードルローラベアリング10の断面図であり、図1(a)は、ニードルローラベアリング10の回転軸L1に直交する面で切断したニードルローラベアリング10の断面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線におけるニードルローラベアリング10の断面図である。まず、図1(a)及び図1(b)を参照して、ニードルローラベアリング10の構成について説明する。
ニードルローラベアリング10は、転がり軸受であり、図1(a)及び図1(b)に示すように、複数のローラ11と、それらローラ11の配設間隔を決めるリテーナ12と、そのリテーナ12との間でローラ11を転動可能に狭持する外輪部材13とを備えている。
ローラ11は、図1(a)及び図1(b)に示すように、円筒状の転動部材であり、ニードルローラベアリング10が取り付けられる軸(図示せず)の外周を転動する部材である。
リテーナ12は、図1(b)に示すように、円筒形状に構成されると共に円筒形状の壁部の内側から外側へと貫通形成される複数の第1嵌合穴14と、円筒形状の壁部の内側から外側へと貫通形成される複数の第2嵌合穴15とを備えている。
それら第1嵌合穴14は、ニードルローラベアリング10の回転方向(図1(a)紙面垂直方向視周方向)に等間隔に配設され、第2嵌合穴15は、第1嵌合穴14に対してニードルローラベアリング10の回転軸L1方向(図1(b)上下方向)に位置を違えて配設されると共に第1嵌合穴14と同様にニードルローラベアリング10の回転方向に等間隔に配設されている。
また、第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15は、その幅方向(図1(a)周方向)寸法が、ローラ11の外径寸法よりも小さく設定されている。これにより、リテーナ12と外輪部材13との間に配設されたローラ11が第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15から脱落することを防止する。
なお、ローラ11は、リテーナ12を弾性変形させつつリテーナ12の内側からリテーナ12の外側に移動され、リテーナ12と外輪部材13との間の空間に配設される。
次いで、図2を参照して、ニードルローラベアリング製造装置1の全体構成について説明する。図2は、ニードルローラベアリング製造装置1の概略図であり、ニードルローラベアリング10が組立部3に配設された状態が図示されている。
ニードルローラベアリング製造装置1は、図2に示すように、ローラ11の貯留及び供給を行う供給部2と、その供給部2により供給されたローラ11をリテーナ12と外輪部材13との間に配設してニードルローラベアリング10(図1(a)及び図1(b)参照)を組み立てる組立部3と、その組立部3に動力を供給するための動力部5とを主に備えて構成されている。
供給部2は、貯留したローラ11を組立部3へ供給するためのものであり、図2に示すように、ローラ11を貯留する貯留室21と、中空形状に構成されその内部にローラ11を挿通させることで貯留室21から組立部3へローラ11を供給する供給パイプ群22とを備えている。
供給パイプ群22は、図2に示すように、前述した第1嵌合穴14へ配置されるローラ11を供給する第1パイプ24と、前述した第2嵌合穴15へ配設されるローラ11を供給する第2供給パイプ25とを備えている。
なお、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25の先端には、組立部3へローラ11を供給するタイミングを制御するシャッターがそれぞれ備えられており、第1嵌合穴14へ配置されるローラ11を供給するタイミングと、第2嵌合穴15へ配置されるローラ11を供給するタイミングとを別々に制御することができる。
例えば、1個目のローラ11を供給してから、ニードルローラベアリング10を1個製造するために必要な数のローラ11を供給し終わったタイミングで供給を止める制御(以下、「一括供給制御」と称す。)や、ローラ11を1個供給する毎に次のローラ11の供給を一時停止させる制御(以下、「個別供給制御」と称す。)などを行うことが可能である。
ここで、第1実施の形態のニードルローラベアリング製造装置1にて、一括供給制御を行うと、ローラ11が次に供給されるローラ11と重なり合った状態にて供給されるので、ローラ11が配置円板部材35に保持されて移送されるとすぐに次の配置円板部材35へローラ11が供給される。よって、ローラ11を供給する時間を短くして、ニードルローラベアリング10の製造に掛る時間を短縮することができる。その結果、ニードルローラベアリング10の製品コストの削減を図ることができる。
また、ここで、第1実施の形態のニードルローラベアリング製造装置1にて個別供給制御を行うと、一括供給制御を行う場合に比べて、振動を低減することができる。よって、ニードルローラベアリング製造装置の振動およびその振動に起因する騒音を低減することができる。その結果、製造現場の作業環境を良好に保つことができる。
また、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25は、その内径寸法がローラ11の外径寸法と略同等に設定され、供給パイプ群22内のローラ11を長手方向に整列しつつ組立部3へ供給する。なお、ローラ11は、供給部2を加圧した空圧により押出される。
次いで、図3を参照して、組立部3の構成について説明する。図3(a)は、図2の矢印III方向視における組立部3の上面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における組立部3の断面図であり、図3(c)は、図3(a)のIIIc−IIIc線における組立部3の断面図である。
なお、図3(a)では、図面を簡素化するために、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25の図示を省略し、図3(b)及び図3(c)では、理解を容易とするために、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25を2点鎖線にて図示している。
組立部3は、上述したように、供給部2により供給されたローラ11を後述するリテーナ12と外輪部材13との間に配設してニードルローラベアリング10を組み立てるための部位であり、図3に示すように、保持部31と、配置円板部材35と、嵌合円板部材38と、当接部材40とを備えている。
保持部31は、外輪部材13(図1(a)及び図1(b)参照)を保持する部材であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、外輪保持溝32と、落下防止壁33とを備えている。外輪保持溝32は、外輪部材13の外径と同じ寸法の外径を有する円環状に延設される凹部であり、水平面に対して傾斜している。
その凹部の深さ(図3(b)上下方向寸法値)は、ニードルローラベアリング10の外輪部材13(図1(a)及び図1(b)参照)の厚み(図3(b)上下方向寸法値)の10分の1以上3分の1以下の寸法値とされている。そのため、外輪部材13の配置およびニードルローラベアリング10の取り外しを容易とすることができる。
落下防止壁33は、外輪保持溝32の鉛直方向下側の円環部分から突設される部位であり、外輪部材13(図1(a)及び図1(b)参照)が外輪保持溝32に嵌合された状態にて、外輪部材13の外周面に沿って立設されている。また、落下防止壁33は、ニードルローラベアリング10を組み付けた状態で回転軸L1を中心とする円弧形状に形成されており、外輪保持溝32が傾斜している。よって、外輪保持溝32に嵌合された外輪部材13(図1(a)及び図1(b)参照)が落下防止壁33によって下側から保持される。
また、落下防止壁33は、外輪保持溝32の円周の4分の1以上3分の1以下の長さの円弧形状に構成されているので、外輪部材13の配置およびニードルローラベアリング10の取り外しを妨げることなく、外輪部材13及びニードルローラベアリング10を保持することができる。
配置円板部材35は、ローラ11(図1(a)及び図1(b)参照)を第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15へ配置する部材であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、回転の中心である回転軸L2を有する円柱形状に構成されると共に、逃げ溝34と、第1配置溝36と、第2配置溝37とを備えている。
なお、回転軸L2は、鉛直方向(図1上下方向)に対して約5度から85度の間の角度を有している。よって、後述する第1配置溝36のローラ11を保持する面が鉛直方向上側(図3(a)下側)へ向いた状態で、その面にローラ11を乗せることで、重力を利用して第1配置溝36にローラ11を保持させることができる。
逃げ溝34は、後述する当接部材40の一部を収容する部位であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、配置円板部材35の湾曲面上であって配置円板部材35の径方向(図3(a)回転軸L2から放射状に延びる方向)に凹設されると共に配置円板部材35の周方向(図3(a)矢印R1方向)へ連続して延設されている。
第1配置溝36は、ローラ11を保持する部位であり、配置円板部材35の径方向(図3(a)回転軸L2から放射状に延びる方向)に凹設されると共に配置円板部材35の回転軸L2方向(図3(b)上下方向)へ延設されている。また、複数の第1配置溝36が配置円板部材35の周方向等間隔に形成されている。
第2配置溝37は、第1配置溝36と同様に、ローラ11を保持する部位であり、配置円板部材35の径方向(図3(a)回転軸L2から放射状に延びる方向)に凹設されると共に配置円板部材35の回転軸L2方向(図3(b)上下方向)へ延設されている。また、複数の第2配置溝37が配置円板部材35の周方向等間隔に形成されている。
なお、第1配置溝36と第2配置溝37とは、配置円板部材35の回転軸L2方向で逃げ溝34の両側にそれぞれ配設されているので、後述する当接部材40にてローラ11を高さ(回転軸L2方向寸法)を違えて保持することで、ニードルローラベアリング10(図2参照)の回転軸L1方向(図1(b)上下方向)に位置を違えて形成される第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15にローラ11を配置することができる。
また、第1配置溝36及び第2配置溝37は、回転軸L2に直交する平面で切断した断面形状が略Vの字形状(2本の直線を円弧で繋いだ形状)に構成され、そのVの字の屈曲部分(円弧)の曲率半径がローラ11を軸心に直交する平面で切断した断面形状(円形)の曲率半径より小さな曲率半径とされている。よって、ローラ11をVの字の2本の直線部分にて狭持することができる。その結果、第1配置溝36及び第2配置溝37に対するローラ11の配設精度を向上させることができる。
また、上述したように、第1配置溝36のローラ11を保持する面を鉛直方向上側(図3(a)下側)へ向けた状態で、第1配置溝36へローラ11が供給されると、ローラ11が重力によって第1配置溝36に保持される。よって、ローラ11を第1配置溝36で保持させるための部材を省略して、ニードルローラベアリング製造装置の製品コストの削減を図ることができる。
また、第1配置溝36のローラ11を保持する面が鉛直方向上側(図3(a)下側)に向いた状態で、ローラ11が第1配置溝36へ供給されるので、重力によって、ローラ11が第1配置溝36へ押し付けられる。よって、ローラ11の落下速度が減速され、後述する当接部材40又は保持部31に衝突した際の跳ね返り量を低減することができる。
その結果、ローラ11の跳ね返りが収まるまでの時間を短縮して、ニードルローラベアリング製造装置1のニードルローラベアリング10を製造する製造効率の向上を図ることができる。
また、回転軸L2の鉛直方向(図1上下方向)に対する角度を約30度から60度の間に設定するとなお良い。例えば、回転軸L2の鉛直方向(図1上下方向)に対する角度が大きすぎると、落下速度が減速されて跳ね返り量を小さくすることで跳ね返りが収まるまでの時間を短縮することはできるが、供給されるまでの時間が長くなり、全体としてニードルローラベアリング10を製造する時間が長くなる。
逆に、回転軸L2の鉛直方向(図1上下方向)に対する角度が小さすぎると、落下速度を維持して供給されるまでの時間を短縮することはできるが、跳ね返り量が大きくなり跳ね返りが収まるまでの時間が長くなるので、全体としてニードルローラベアリング10を製造する時間が長くなる。
ここで、回転軸L2の鉛直方向(図1上下方向)に対する角度を約30度から60度の間に設定することで、ローラ11の跳ね返り量と、ローラ11の供給速度とのバランスを保って、全体としてニードルローラベアリング10を製造する時間を短縮することができる。その結果、ニードルローラベアリング製造装置1のニードルローラベアリング10を製造する製造効率の向上を図ることができる。
また、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25におけるローラ11の搬送方向(パイプの長手方向)を鉛直方向(図2上下方向)に対して傾斜させても同様の効果を得ることができる。即ち、ローラ11の供給速度を重力により生じる摩擦力によって減速させるという思想である。
また、第1配置溝36及び第2配置溝37の溝深さ寸法値は、後述する押圧溝39の溝深さ寸法値より大きな値に設定されている。なお、上述した溝深さ寸法値は、配置円板部材35の径方向(図3(a)回転軸L2から放射状に延びる方向)における第1配置溝36及び第2配置溝37の溝底から、配置円板部材35が回転することで描かれる仮想円までの寸法値であり、請求項1記載の「凹設深さ」に対応する。
また、配置円板部材35の径方向(図3(a)回転軸L2から放射状に延びる方向)における第1配置溝36及び第2配置溝37の溝底からリテーナ12の内周面に形成される第1嵌合孔14又は第2嵌合孔15の開口までの寸法値は、請求項1記載の「前記配置溝部の溝底から前記嵌合穴までの距離」に対応する。
当接部材40は、回転軸L1(図1(b)参照)方向(図1(b)上下方向)へ互いに位置を違えて形成される第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15にローラ11を配置するための部材であり、平板状に構成されその一部が逃げ溝34に収容されると共に、第1当接面41と、第2当接面42と、移送穴43と、案内面44とを備えている。
第1当接面41は、第1供給パイプ24から供給されたローラ11が当接される部位であり、図3(c)に示すように、第1供給パイプ24の先端の鉛直方向下側(図3(c)下側)に配設される平坦面である。
第2当接面42は、第1当接面41と同様に、第2供給パイプ25から供給されたローラ11が当接される部位であり、第2供給パイプ25の先端の鉛直方向下側(図3(c)下側)に配設される平坦面である。
移送穴43は、第2当接面42に当接されたローラ11を第2配置溝37へ移送するための部位であり、図3(c)に示すように、第1供給パイプ24と第2供給パイプ25との間に形成される切り欠きであり、第2当接面42に対して配置円板部材35の回転方向(矢印R1方向)下流側に配設されている。
よって、第2当接面42に当接されたローラ11が配置円板部材35の回転によって、移送穴43へ移送される。その結果、ローラ11が移送穴43を通って第1配置溝36から第2配置溝37へ移送される。
案内面44は、第1当接面41に当接されたローラ11をリテーナ12(図1(b)参照)へ案内するための部位であり、第1当接面41に対して配置円板部材35の回転方向(矢印R1方向)下流側に配設されている。
このように、配置円板部材35が回転されることで、第1当接面41に当接されたローラ11が第1配置溝36に保持され、第2当接面42に当接されたローラ11が第2配置溝37に保持されて、それらローラ11がそれぞれ第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15に移送されて配置される。
嵌合円板部材38は、ローラ11(図1(a)及び図1(b)参照)を第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15へ押し込んでリテーナ12と外輪部材13との間へ配設する部材であり、回転の中心である回転軸L3を有する円柱形状に構成されると共に、押圧溝39を備えている。
押圧溝39は、第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15に配置されたローラ11を押圧する部位であり、嵌合円板部材38の径方向(図3(a)回転軸L3から放射状に延びる方向)に凹設されると共に嵌合円板部材38の回転軸L3方向(図3(b)上下方向)へ延設されている。また、複数の押圧溝39が配置円板部材35の周方向等間隔に形成されている。また、上述したように、押圧溝39の溝深さ寸法値は、第1配置溝36及び第2配置溝37の溝深さ寸法値よりも小さな値に設定されている。
また、押圧溝39は、回転軸L3に直交する平面で切断した断面形状が略弓形状(端部側程曲率が緩くなる円弧形状)に構成され、その弓形状の中央部分の曲率半径がローラ11を軸心に直交する平面で切断した断面形状(円形)の曲率半径より大きな曲率半径とされている。よって、ローラ11と押圧溝39との接触部分を弓形状の1か所とすることができる。その結果、ローラ11の接触位置を変化させて、ローラ11の押圧溝39に対する保持を嵌合円板部材38の周方向に対して緩やかとすることができる。
そのため、第1嵌合孔14又は第2嵌合孔15のローラ11に対する配置精度が悪い場合でも、ローラ11が押圧溝39に対して周方向へ移動することが可能となる。よって、第1嵌合孔14又は第2嵌合孔15の破損を防止することができる。
なお、配置円板部材35及び嵌合円板部材38は、動力部5から伝達される駆動力によって同期して回転されている。よって、第1配置溝36及び第2配置溝37の回転軸L2を中心とする角度位置と、押圧溝39の回転軸L3を中心とする角度位置と、第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15の回転軸L1を中心とする角度位置とを合わせることで、第1配置溝36及び第2配置溝37の角度位置と押圧溝39の角度位置とを第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15の角度位置に同期させることができる。
その結果、配置円板部材35及び嵌合円板部材38が回転する動力部5によって回転されることで、第1配置溝36及び第2配置溝37に保持されたローラ11を第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15に配置し、その配置されたローラ11を押圧溝39で第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15に押し込むことができる。
次いで、図4から図10を参照して、ニードルローラベアリング10の製造方法について説明する。図4(a)から図10(a)は、図2の矢印III方向視における組立部3の上面図であり、図4(b)から図10(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における組立部3の断面図から図10(a)のXb−Xb線における組立部3の断面図である。
図4から図10では、外輪部材13とリテーナ12との間にローラ11が嵌合されてニードルローラベアリング10が製造される過程が図示されており、図4には、1回目のローラ11の供給によりローラ11が第1配置溝36に保持された状態が図示され、図5には、配置円板部材35が第1配置溝36一つ分回転して図4にて保持されたローラ11の一方が第2配置溝37に保持された状態が図示され、図6には、2回目のローラ11の供給によりローラ11が第1配置溝36に保持された状態が図示されている。
また、図7には、1回目に供給され第1配置溝36によって第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15に配置されたローラ11が嵌合円板部材38によってリテーナ12に嵌合された状態が図示され、図8には、1回目に供給され第2配置溝37によって第2嵌合穴15又は第1嵌合穴14に配置されたローラ11が嵌合円板部材38によってリテーナ12に嵌合された状態が図示され、図9には、図8に示す状態からさらにローラ11が嵌合された状態が図示され、図10には、ニードルローラベアリング10が完成した状態が図示されている。
なお、図4(a)から図10(a)では、図面を簡素化するために、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25の図示を省略し、図4(b)から図10(b)では、理解を容易とするために、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25を2点鎖線にて図示している。
本実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置1におけるニードルローラベアリング10の製造工程では、載置工程と、当接工程と、移送工程と、配置工程と、嵌合工程と、取り出し工程とを備えている。なお、当接工程および移送工程は、請求項3記載の供給工程の一部に対応し、配置工程および嵌合工程は、請求項3記載の回転工程の一部に対応する。
載置工程では、図4(a)及び図4(b)に示すように、保持部31の外輪保持溝32に外輪部材13を嵌合し、その外輪部材13の内側にリテーナ12を配設する。
当接工程では、載置工程の後に、図4(a)及び図4(b)に示すように、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25から供給されたローラ11を第1当接面41及び第2当接面42に当接させて第1配置溝36にて保持する。
移送工程では、図5(a)及び図5(b)に示すように、その当接工程にて第1配置溝36に保持されたローラ11を配置円板部材35の回転により第2当接面42から移送穴43へ向かう方向(矢印R1方向)へ移送することで、第1当接面41に当接されたローラ11を第1配置溝36から第2配置溝37へと移送する。その後、図6(a)及び図6(b)に示すように、第1供給パイプ24及び第2供給パイプ25から供給されたローラ11を第1当接面41及び第2当接面42に当接させて第1配置溝36にて保持する。
配置工程では、移送工程を繰り返すことでリテーナ12の第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15へと移送されたローラ11を第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15へ配置する。
嵌合工程では、配置工程にて第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15へ配置されたローラ11を配置円板部材35の回転により、第1嵌合穴14とリテーナ12との間または第2嵌合穴15とリテーナ12との間に移送し、嵌合円板部材38が回転されることで、ローラ11を第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15に押し込む。
この場合、図7(a)及び図7(b)に示すように、まず、第1嵌合穴14に嵌合されたローラ11を嵌合円板部材38の回転に伴って第1嵌合穴14へ押し込み、次に、図8(a)及び図8(b)に示すように、第1嵌合穴14に嵌合されたローラ11及び第2嵌合穴15に嵌合されたローラ11をそれぞれ同時に第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15へ押し込む。なお、第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15が弾性変形することでローラ11が押し込まれる。よって、ローラ11がリテーナ12と外輪部材13との間に離脱不能に配置される。
上述した工程の繰り返しにより、図9(a)及び図9(b)に示すように、複数のローラ11がリテーナ12と外輪部材13との間に配設される。そして、所定の数のローラ11を配置円板部材35の第1配置溝36へ供給したところで、当接工程の繰り返しを終了する。その後、図10(a)及び図10(b)に示すように、移送工程の繰り返しが終了し、配置工程の繰り返しが終了する。配置工程の繰り返しが終了した後に、嵌合工程の繰り返しが終了して、ニードルローラベアリング10の組み立てが終了する。
取り出し工程では、配置工程の繰り返しが終了した後に、組み立てられたニードルローラベアリング10を保持部31から取り外す。その結果、ニードルローラベアリング10が製造される。
例えば、配置工程と嵌合工程とを一つの円板部材にて行う場合には、複列のニードルローラベアリングでは、ローラ11を第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15へ嵌合させるために大きな力が必要となるので、円板部材が傾いてしまい、ローラ11の配設精度を確保することが困難となる。
そのため、ローラ11が第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15と嵌合する過程において、嵌合の速度(嵌合円板部材38の回転速度)を速めることができず、ニードルローラベアリングの製造効率が悪化するという不具合がある。
これに対し、第1実施の形態では、配置工程を配置円板部材35にて行い、嵌合工程を嵌合円板部材38にて行っているので、嵌合させるための力は、嵌合工程にて使用される嵌合円板部材38のみに作用し、配置工程にて使用される配置円板部材35には作用しない。また、配置するための力は、嵌合させるための力に比べて非常に小さいため、多段のニードルローラベアリングを製造する場合であっても、配置円板部材35が傾くことを防止することができる。
その結果、ローラ11の第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15への配設精度を確保して、嵌合の速度(嵌合円板部材38の回転速度)を速めることでニードルローラベアリングの製造効率の向上を図ることができる。
また、配置工程を配置円板部材35にて行い、嵌合工程を嵌合円板部材38にて行っているので、ローラ11の第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15に対する配設精度を確保しつつ配置円板部材35及び嵌合円板部材38を小径化することができる。
その結果、必要な駆動トルクを小さくすることができるので、これら配置円板部材35及び嵌合円板部材38を回転駆動するための動力部5(図2参照)を小型化して、ニードルローラベアリング製造装置1の装置コスト及びニードルローラベアリングの製造コストを抑制することができる。
また、例えば、配置工程と嵌合工程とを一つの円板部材にて行う場合には、ローラ11を第1嵌合穴14又は第2嵌合穴15に押し込むためにローラ11が保持される溝の底面とリテーナ12の内周面との最小距離を小さく設定する必要があり、溝を深く形成することが難しく、円板部材とローラ11との係合を確実とすることが困難であった。
しかしながら、第1実施の形態では、配置工程を配置円板部材35にて行い、嵌合工程を嵌合円板部材38にて行っており、配置円板部材35はローラ11を第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15に配置させる役割を担う部材であるので、上述したように、その第1配置溝36及び第2配置溝37の溝深さを、嵌合円板部材38の押圧溝39の溝深さよりも深くすることができる。
よって、ローラ11を介して噛み合うリテーナ12と第1配置溝36及び第2配置溝37との噛み合い率を確保して、リテーナ12をスムーズに従動回転させることができるので、リテーナ12の回転を高速化することができる。その結果、ニードルローラベアリング10の製造時間を短縮して、ニードルローラベアリング10の製品コストの削減を図ることができる。
また、押圧溝39が第1配置溝36及び第2配置溝37より浅く形成されているので、ローラ11と押圧溝39との係合がゆるくなる。そのため、第1嵌合孔14又は第2嵌合孔15のローラ11に対する配置精度が悪い場合でも、ローラ11が押圧溝39に対して周方向へ移動することが可能となる。よって、第1嵌合孔14又は第2嵌合孔15の破損を防止することができる。
また、例えば、当接部材40を省略した場合には、第2供給パイプ25から第2配置溝37へ直接ローラ11を移送することができるが、ローラ11は、保持部31に当接された後バウンドを繰り返すので、バウンドが収束するまで、リテーナ12に配置することができない。そのため、ニードルローラベアリングの製造に時間がかかるという不具合があった。
これに対して、第1実施の形態では、当接部材40が第2当接面42を備えているので、第2配置溝37へ配設するローラ11を段階的に落下させることができる。そのため、保持部31に当接されてからのバウンドの収束時間を、第2供給パイプ25から直接落下させる場合と比較して短くすることができる。その結果、ニードルローラベアリング10の製造にかかる時間を短縮することができる。よって、ニードルローラベアリング10の製造コストの削減を図ることができる。
また、リテーナ12は、ローラ11を介する配置円板部材35の回転およびローラ11を介する嵌合円板部材38の回転が伝達されることで回転駆動される。そのため、リテーナ12を回転させるための機構を省略することができる。よって、ニードルローラベアリング製造装置を構成する部品点数を削減して、ニードルローラベアリング製造装置の製品コストの削減を図ることができる。
また、リテーナ12は、ローラ11を介して配置円板部材35および嵌合円板部材38へ回転可能に連結されているので、リテーナ12は、配置円板部材35の回転または嵌合円板部材38の回転に同期して回転する。そのため、リテーナ12の各嵌合穴(第1嵌合穴14及び第2嵌合穴15)の1ヶ所にローラ11を嵌合させて、リテーナ12と各嵌合穴との同期をとることで、同期させるための機構を省略することができる。よって、ニードルローラベアリング製造装置を構成する部品点数を削減して、ニードルローラベアリング製造装置の製品コストの削減を図ることができる。
次いで、図11(a)及び図11(b)を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ニードルローラベアリング製造装置1は、ローラ11が2列に重なった2段のニードルローラベアリング10を製造する装置であり、当接部材40にローラ11を当接させて、第1配置溝36及び第2配置溝37でローラ11を保持する構成とされている場合を説明したが、第2実施の形態では、ニードルローラベアリング製造装置は、ローラ11が3列に重なった3段のニードルローラベアリングを製造する装置であり、第1当接部材240及び第2当接部材250にローラ11a,11b,11cをそれぞれ当接させると共に第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cでローラ11a,11b,11cをそれぞれ保持する構成とされている。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図11(a)は、第2実施の形態における配置円板部材235の側面図であり、第1実施の形態における図3(c)に対応する。図11(b)は、図11(a)に対して、ローラ11a,11b,11cが供給されるタイミングを変更した配置円板部材235の側面図である。
なお、図中の円弧形状の矢印は、ローラ11b,11cの移送方向を示している。また、ローラ11aは、第1供給パイプ224aから供給され、ローラ11bは、第2供給パイプ224bから供給され、ローラ11cは、第3供給パイプ224cから供給されるものであり、形状は、ローラ11と同様に構成されるものである。
図11(a)に示すように、第2実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置は、3段のニードルローラベアリングを製造する装置であり、配置円板部材235と、供給パイプ群222と、第1当接部材240と、第2当接部材250とを備えている。
配置円板部材235は、ローラ11a,11b,11cを保持して、リテーナに配置するための部材であり、回転の中心である回転軸を有する円柱形状に構成されると共に、逃げ溝234と、第1配置溝236aと、第2配置溝236bと、第3配置溝236cとを備えている。
逃げ溝234は、後述する第1当接部材240及び第2当接部材250の一部を収容する部位であり、図11(a)に示すように、配置円板部材235の湾曲面上であって配置円板部材235の径方向(図11(a)紙面垂直方向)に凹設されると共に配置円板部材235の周方向(図11(a)矢印R1方向)へ連続して延設されている。
第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cは、それぞれローラ11a,11b,11cを保持する部位であり、配置円板部材235の径方向(図11(a)紙面垂直方向)に凹設されると共に配置円板部材235の回転軸方向(図11(a)上下方向)へ延設されている。また、複数の第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cが配置円板部材235の周方向等間隔に形成されている。
また、配置円板部材235の回転軸方向(図11(a)上下方向)において、第1配置溝236aと第2配置溝236bとの間に第1当接部材240が配設され、配置円板部材235の回転軸方向(図11(a)上下方向)において、第2配置溝236bと第3配置溝236cとの間に第2当接部材250が配設されている。
供給パイプ群222は、図11に示すように、ローラ11aを供給する第1供給パイプ224aと、ローラ11bを供給する第2供給パイプ224bと、ローラ11cを供給する第3供給パイプ224cとを備えており、それら第1供給パイプ224a、第2供給パイプ224b及び第3供給パイプ224cが配置円板部材235の回転方向と反対方向(図11右方向)に順に並んで配設されている。
また、第1供給パイプ224a、第2供給パイプ224b及び第3供給パイプ224cが配設される間隔は、後述する第1配置溝236aの間隔分の隙間を有している。即ち、第1供給パイプ224a、第2供給パイプ224b及び第3供給パイプ224cは、第1配置溝236aを一つずつ飛ばした間隔に配設されている。
第1当接部材240は、ローラ11a,11b,11cを回転軸L1(図1(b)参照)方向(図1(b)上下方向)へ互いに位置を違えて配置するための部材であり、平板状に構成されその一部が逃げ溝234に収容されると共に、第1当接面243と、第2当接面242と、第3当接面241と、案内面244と、第1移送穴246と、第2移送穴245とを備えている。
第1当接面243は、第1供給パイプ224aから供給されたローラ11aが当接される部位であり、図11(a)に示すように、第1供給パイプ224aの先端の鉛直方向下側(図11(a)下側)に配設される平坦面である。
第2当接面242は、図11(a)に示すように、第2供給パイプ224bから供給されたローラ11bが当接される部位であり、第2供給パイプ224bの先端の鉛直方向下側(図11(a)下側)に配設される平坦面である。
第3当接面241は、図11(a)に示すように、第3供給パイプ224cから供給されたローラ11cが当接される部位であり、第3供給パイプ224cの先端の鉛直方向下側(図11(a)下側)に配設される平坦面である。
第1移送穴246は第2当接面242に当接されたローラ11bを第2配置溝236bへ移送するための部位であり、図11(a)に示すように、配置円板部材235の周方向(図11(a)左右方向)において、第2供給パイプ224bと第1供給パイプ224aとの間に形成される切り欠きである。
よって、第2当接面242に当接されたローラ11bが配置円板部材235の回転によって、第1移送穴246へ移送される。その結果、ローラ11bが第1移送穴246を通って第1配置溝236aから第2配置溝236bへ移送される。
第2移送穴245は、第3当接面241に当接されたローラ11cを第2配置溝236bへ移送するための部位であり、図11(a)に示すように、配置円板部材235の周方向(図11(a)左右方向)において、第3供給パイプ224cと第2供給パイプ224bとの間に形成される切り欠きである。
よって、第3当接面241に当接されたローラ11cが配置円板部材235の回転によって、第2移送穴245へ移送される。その結果、ローラ11cが第2移送穴245を通って第1配置溝236aから第2配置溝236bへ移送される。
案内面244は、第1当接面243に当接されたローラ11aをリテーナへ案内するための部位であり、第1当接面243に対して配置円板部材235の回転方向(矢印R1方向)下流側に配設されている。
このように、配置円板部材235が回転されることで、第1当接面243に当接されたローラ11aが第1配置溝236aに保持され、第2当接面242及び第3当接面241に当接されたローラ11b,11cが第1移送穴246及び第2移送穴245を通って第2配置溝236b側(図11(a)下側)へ移送される。
第2当接部材250は、ローラ11b,11cを回転軸L1(図1(b)参照)方向(図1(b)上下方向)へ互いに位置を違えて配置するための部材であり、平板状に構成されその一部が逃げ溝234に収容されると共に第1当接面252と、第2当接面251と、案内面254と、移送穴255とを備えている。
第1当接面252は、第1移送穴246から落下供給されたローラ11bが当接される部位であり、図11(a)に示すように、第1移送穴246の鉛直方向下側(図11(a)下側)に配設される平坦面である。
第2当接面251は、第2移送穴245から落下供給されたローラ11cが当接される部位であり、図11(a)に示すように、第2移送穴245の鉛直方向下側(図11(a)下側)に配設される平坦面である。
移送穴255は第2当接面251に当接されたローラ11cを第3配置溝236cへ移送するための部位であり、図11(a)に示すように、配置円板部材235の周方向(図11(a)左右方向)において、第1移送穴246と第2移送穴245との間に形成される切り欠きである。
よって、第2当接面251に当接されたローラ11cが配置円板部材235の回転によって、移送穴255へ移送される。その結果、ローラ11cが移送穴255を通って第2配置溝236bから第3配置溝236cへ移送される。
案内面254は、第1当接面252に当接されたローラ11bをリテーナへ案内するための部位であり、第1当接面252に対して配置円板部材235の回転方向(矢印R1方向)下流側に配設されている。
即ち、第1当接部材240及び第2当接部材250によって、ローラ11a,11b,11cを段階的に落下させて第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cのそれぞれに対して配設することができる。
よって、第1実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置1と同様に、ローラ11b,11cのバウンドを防止することができる。その結果、3段のニードルローラベアリングの製造に掛る時間を短縮して、ニードルローラベアリングの製造コストの削減を図ることができる。
また、第2実施の形態では、一回目に供給されるローラ11a,11b,11cを同時に供給しているので、第1供給パイプ224a、第2供給パイプ224b及び第3供給パイプ224cからのローラ11a,11b,11cの供給タイミングを別々に制御することを省略することができる。
また、例えば、図11(b)に示すように、ローラ11a,11b,11cの一回目の供給タイミングをそれぞれ設定しても良い。具体的には、まず、第3供給パイプ224cからローラ11cを供給し、配置円板部材235が第1配置溝236aの1個分だけ回転したところで第2供給パイプ224bからローラ11bを供給する。このとき、ローラ11aは、第2移送穴245を介して第2配置溝236bに移送され第2当接面251に当接されている。
そして、さらに、第1配置溝236aの1個分だけ回転したところで第1供給パイプ224aからローラ11aを供給する。このとき、ローラ11bは、第1移送穴246を介して第2配置溝236bに移送され第1当接面252に当接されている。また、このとき、ローラ11cは、移送穴255を介して第3配置溝236cに移送され保持部31に当接されている。
この状態において、ローラ11a,11b,11cが配置円板部材235の軸方向(図11(b)上下方向)に一直線に配設される。そのため、嵌合円板部材38にてローラ11a,11b,11cがリテーナへ嵌合される際に、嵌合円板部材38の回転軸L3方向に均一に力を作用させることができるので、配置円板部材235の傾きを低減することができる。
次いで、図12(a)及び図12(b)を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ニードルローラベアリング製造装置は、ローラ11が2列に重なった2段のニードルローラベアリング10を製造する装置であり、当接部材40にローラ11を当接させて、第1配置溝36及び第2配置溝37でローラ11を保持する構成とされている場合を説明したが、第3実施の形態では、ニードルローラベアリング製造装置は、ローラ11が3列に重なった3段のニードルローラベアリングを製造する装置であり、重ねて配設されたローラ311a,311b,311cを第1当接部材340及び第2当接部材350にて分離して、第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cにて保持する構成とされている。
なお、上述した第1実施の形態および第2実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図12(a)は、第3実施の形態における配置円板部材235の側面図であり、第1実施の形態における図3(c)に対応する。図12(b)は、図12(a)のXIIbにて示した部分を拡大した第1当接部材340の部分拡大断面図である。
図12(a)及び図12(b)に示すように、第3実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置は、ローラ311a,311b,311cを供給する第1供給パイプ324と、配置円板部材235の回転方向と反対方向(図12(a)右方向)へ向かうにつれて先細り形状に形成される板状体である第1当接部材340と、配置円板部材235の軸心方向(図12(a)上下方向)において、第1当接部材340の下方(図12(a)下方)に配設されると共に配置円板部材235の回転方向と反対方向(図12(a)右方向)へ向かうにつれて先細り形状に形成される板状体である第2当接部材350とを備えている。なお、ローラ311a,311b,311cは、両側端部にテーパー面を有している。
図12(a)に示すように、第1供給パイプ324は、第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cへローラ311a,311b,311cを一度に供給する。第1供給パイプ324の鉛直方向下方には、衝撃力を吸収する緩衝部材Bが配設されており、ローラ311a,311b,311cのバウンドを防止する。
その後、配置円板部材235が回転することで、ローラ311a,311b,311cが矢印R1方向に移送され、図12(b)に示すように、第1当接部材350の先細り部分である先端部350aがローラ311bのテーパー面に当接される。よって、ローラ311cがローラ311b及びローラ311aから分離される。同様に、第1当接部材340の先端部もローラ311aのテーパー面に当接されローラ311bとローラ311aとが分離される。
上述のように分離されたローラ311a,311b,311cは、それぞれ第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cに保持されてリテーナへ配置される。
上記各実施の形態では、製造するニードルローラベアリングの段数に応じた数の供給口が必要であるが、第3実施の形態では、第1供給パイプ324から、ローラ311a,311b,311cを一列に並べて配設するので、ニードルローラベアリングの段数に関わらず供給口を1個とすることができる。即ち、供給口の数を抑えることができるので、ニードルローラベアリング製造装置を構成する部品の点数を抑えて、ニードルローラベアリング製造装置の製造コストの削減を図ることができる。
また、緩衝部材Bを備えているので、ローラ311a,311b,311cのバウンドを防止することができる。よって、ローラ311a,311b,311cのバウンドが収束するまでの時間を削減することができる。その結果。ニードルローラベアリングの製造時間を短縮して、製造コストの削減を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法・角度など)は一例を示すものであり、他の数値を採用することは当然可能である。
例えば、本実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置によって製造されるニードルローラベアリングは、ローラが2段、3段に並んで構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、当接部材を省略して1段のニードルローラベアリングを製造するニードルローラベアリング製造装置としても良く。当接部材をさらに追加して4段以上のニードルローラベアリングを製造するニードルローラベアリング製造装置としても良い。
また、本実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置によって製造されるニードルローラベアリングは、内輪部材(軸側に取り付けられる円環状の部材で外輪部材との間でローラを転動させるもの)が省略されているが、ニードルローラベアリング製造装置にて製造されたニードルローラベアリングに内輪部材を取り付けることは当然可能である。
また、第3実施の形態における緩衝部材Bを他の実施の形態に適用しても良い。この場合、第3実施の形態と同様にローラ11のバウンドの収束時間を短縮することができるので、ニードルローラベアリング10の製造時間を短縮して、ニードルローラベアリング10の製造効率の向上を図ることができる。
また、第2実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置にて一括供給制御または個別供給制御を実施しても良い。この場合、第1実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置1と同様の効果を奏する。
また、第3実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置にて一括供給制御または個別供給制御を実施しても良い。この場合、第1実施の形態におけるニードルローラベアリング製造装置1と同様の効果を奏すると共に以下の効果も奏する。
例えば、第3実施の形態のニードルローラベアリング製造装置にて、一括供給制御を行うと、第1配置溝236a、第2配置溝236b及び第3配置溝236cにローラ11が一度に供給される。よって、ローラ11を供給する時間を短くして、ニードルローラベアリング10の製造に掛る時間を短縮することができる。その結果、ニードルローラベアリング10の製品コストの削減を図ることができる。
また、ここで、第3実施の形態のニードルローラベアリング製造装置1にて個別供給制御を行うと、一括供給制御を行う場合に比べて、緩衝部材Bの摩耗を低減することができる。よって、緩衝部材Bの交換期間を長く設定することができる。その結果、ニードルローラベアリング製造装置のメンテナンスコストの削減を図ることができる。
上記各実施の形態では、第1配置溝36及び第2配置溝37の断面形状がVの字形状に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、Uの字形状に構成しても良い。
<その他>
<手段>
技術的思想1のニードルローラベアリング製造装置は、請求項1記載のニードルローラベアリング製造装置において、前記外輪部材の内周側に位置する当接部材を備え、前記ニードルローラベアリングは、前記ローラが複数列設けられた複列式のニードルローラベアリングとして構成され、前記配置円板部材は、前記複数列のローラに対応して、前記配置溝部が複数列設けられて構成され、前記供給部は、前記複数列が設けられた配置溝部の各列へ前記ローラを落下させて供給する複数の落下部を備え、前記当接部材は、前記複数の落下部から前記配置溝部の各列に供給された前記ローラを前記配置溝部の各列の移動軌跡に沿って案内する複数の案内部と、それら案内部と落下部との間であって前記複数列が設けられた配置溝部の列間に配置される複数の受け部と、を備え、前記落下部から落下されたローラが、前記受け部に受け止められた後、その受け部から前記案内部へ落下されるように構成されている。
<効果>
技術的思想1記載のニードルローラベアリング製造装置によれば、請求項1記載のニードルローラベアリング製造装置の奏する効果に加え、複列式のニードルローラベアリングの製造時間を短縮して、生産能率の向上を図ることができるという効果がある。
即ち、本技術的思想のように、供給部(落下部)から配置溝部(案内部)へローラを自由落下により供給する構成では、落下したローラが案内部で跳ね返されて上下動するため、その上下動するローラが隣設する配置溝部に引っかからない程度の回転速度で配置円板部材を回転させる必要がある。特に、複列式のニードルローラベアリングでは、供給部(落下部)から配置溝部(案内部)までの距離が大きくなるため、上下動が大きくなり、収束までの時間が長くなる。
これに対し、本技術的思想では、案内部と落下部との間に受け部を設け、落下部から落下されたローラが、受け部に受け止められた後、その受け部から案内部へ落下される構成であるので、落下部から案内部へ直接落下する場合と比較して、ローラの落下速度を緩やかとすることができる。よって、案内部に跳ね返された後のローラの上下動を小さくして、収束までの時間を短縮することができるので、配置円板部材の回転速度を高速化することができる。その結果、製造時間を短縮して、生産能率の向上を図ることができる。