FA(Factory Automation)におけるネットワークシステムは、生産工場内に配備された産業ロボットその他の生産設備の入力機器及び出力機器の制御を司る1または複数のPLC(Programmable Logic Controller)と、そのPLCにより動作が制御される機器とが、制御系のネットワークに接続される。それらPLCと機器は、その制御系のネットワークを介してサイクリックに通信を行なうことで、INデータ及びOUTデータ(以下I/Oデータという)の送受を行ない、生産設備を制御する。
より具体的には、PLCのCPUユニットにおける制御は、INデータである入力機器のON信号またはOFF信号を入力し、入力したON/OFF情報をユーザプログラムによって論理演算し、演算結果であるOUTデータを出力機器へ出力する。その出力が出力機器に対する動作指示となって出力機器が動作することにより、生産設備を制御する。
ところで、産業ロボット等の生産設備は、PLCの付近に設置されている場合もあれば、離れた場所に設置されている場合もある。従って、上記の入力機器や出力機器は、PLCの付近に存在している場合には、PLCを構成するI/Oユニットに直接接続し、離れた場所に存在している場合には、ネットワークを介してPLCに接続することになる。このネットワークを介して接続する形態として、たとえば、マスタ−スレーブ通信により行うことができる。この場合、PLCを構成するマスタユニット(マスタ)とリモートターミナル(IOターミナル,リモートI/O,リモートI/Oターミナル,ターミナル装置,リモート装置などとも称される)等のスレーブとをフィールドネットワークに接続し、そのフィールドネットワークを介してマスタとスレーブとの間で通信を可能とする。
そして、リモートターミナルに入力機器や出力機器を接続することになるが、この場合も、リモートターミナルの端子部に直接入力機器等を接続する場合と、その端子部にI/Oケーブルを介して接続された端子台に対して入力機器等を接続する場合がある。後者の場合、制御盤内に格納されたリモートターミナルから実際の入力機器等の設置場所がさらに離れているようなケースに適用される。
図1は、この後者の場合の実際の接続の一例を示している。すなわち、リモートターミナル1の複数の端子部と、端子台2の複数の端子部とを接続するI/Oケーブル3は、複数の芯線4を束ねた一本のケーブルである。そして、各芯線4の先端4a,4bを、リモートターミナル1と端子台2の対応する端子部に装着する。すべての芯線についての端子部への装着が完了したならば、I/Oケーブル3(各芯線4)が正しく配線されていることを確認する必要があるが、I/Oケーブル3の長さは5m〜50mと長く、リモートターミナル1と端子台2の間もそれに近い距離だけ離れている。従って、対応するリモートターミナル1の端子部と、端子台2の端子部にテスターのプローブを当てて導通チェックを行うことができない。そのため、従来は、専ら目視による配線の確認を行っている。
すなわち、1本のケーブルを構成する複数の芯線は、撚り線等の導線と、その導線の周囲を覆う絶縁体(所定の樹脂皮膜)とから構成され、絶縁体は異なる色等で形成されていてそれぞれを弁別することができると共に、1本の芯線4の先端4a,4bに同一番号の線番チューブ5を装着しておき、対応する両端子部に、同一の番号の線番チューブ5が装着された芯線4の先端4a,4bが接続されているか否かを目視により確認している。
しかし、リモートターミナル1は制御盤内に設置され、また、端子台2は生産設備の裏側等に設置されることが多く、暗かったり奥まったりしているので、目視による確認作業が行いにくい。また、線番チューブ5を各芯線4の先端4a,4bに装着する際に、同一の芯線4の先端4a,4bに異なる番号の芯線チューブを装着してしまうといったミスを生じてしまうと、線番チューブ5の番号によるチェックが正しくできたとしても、配線ミスを生じてしまう。特に、I/Oケーブル3を構成する芯線4の本数が多くなるほど、係る問題は生じやすい。
その結果、I/Oケーブル3の配線を間違えたままFA設備のシステム電源やI/O電源をONしてしまうと、センサ等の入出力機器やFA設備を破損するトラブルが発生したり、誤動作をしたりするおそれがある。また、上記の配線ミスによる上記の破損・誤動作等が生じた場合、誤配線をしている箇所を特定する作業が煩雑で、時間がかかるという問題を生じる。
そこで、FA設備やセンサの破損を防ぐためには、簡単かつ確実にI/Oケーブルの配線をチェックできるシステムの開発が望まれている。ところで、誤配線の確認に電圧を用いる方法は、特許文献1,2等で知られている。この電圧を用いる方法は、配線の一端に電圧を印加し、他端でその電圧が検出された場合には、正しく導通・結線されていると判断するものである。
しかし、この電圧を用いた配線チェック技術を、そのまま生産工場等の現場に設置されたFAシステムのI/O配線に適用することはできない。すなわち、リモートターミナルに対して、システム電源やI/O電源等の通常のシステムを動作させるための電源がONの状態で、配線チェック用の電圧を印加すると、端子部に当該配線チェック用の電圧が印加されることになり、その電圧がリモートターミナル内の通常のシステム回路に印加されることになり、当該システム回路が壊れるおそれがある。そのため、誤配線のチェックは、依然として従前の目視による確認に頼ることになり、確認作業の煩雑さと、確認ミスの発生のおそれが残り、簡単かつ確実なI/Oケーブルの配線チェックが行えないといった課題がある。
上記の課題を解決するために、本発明は、(1)I/Oケーブル経由で接続するIO機器との間でIOデータを送受する通常システム回路を備えたFA機器であって、前記I/Oケーブルを接続する複数の端子部に対し、それぞれ異なる電圧値の配線チェック用の電圧を出力する配線チェック用回路と、前記通常システム回路に通電する電源がONしている場合には、前記配線チェック用回路から各端子部に配線チェック用の電圧が出力されないようにする誤動作防止回路と、を備えたものを前提とする。通常システム回路に通電する電源は、実施形態では、システム電源40とI/O電源41に対応する。実施形態では、2つの電源を有しているが、システム電源のみの場合もある。
FA機器は、IOデータを送受するものであるので、IOデータを出力機器に出力するものと、IOデータを入力機器から入力するものと、それらの組み合わせがある。そして、このFA機器は、I/Oケーブルを介して端子台に接続され、その端子台に接続された入力機器や出力機器等のI/O機器との間でIOデータを送受する。このようにI/Oケーブルを介してFA機器と端子台とを接続(配線)した後、端子台の端子部とFA機器の端子部との間で、対応するもの同士を正しく配線できているか否かのチェックをする。このとき、配線チェック用回路にて各端子部に対して異なる電圧値の配線チェック用の電圧を与えるようにしたので、I/Oケーブルにて接続された端子台の端子部にも同等の電圧値の電圧が出力される。従って、端子台の各端子部の電圧をテスターで測定することで、正しく配線ができた否かの確認が簡単に行える。つまり、端子台の端子部に所定の電圧値の電圧が出力されていない場合には、配線ミスがわかるとともに、その測定した電圧値からどの端子部との間で誤配線をしたかがすぐにわかる。また、0[V]の場合には、未接続或いは断線と認識できる。
そして、通常システム回路に通電する電源がONしている場合には、誤動作防止回路により配線チェック用の電圧が端子部に印加されないので、当該配線チェック用の電圧が通常システム回路に加わり、故障等を生じることが抑制できる。
上記の前提において、前記配線チェック用回路は、与えられた電圧から、前記異なる電圧値の配線チェック用の電圧を生成する回路部と、その回路部の出力側に接続されたフォトカプラと、を備え、前記誤動作防止回路は、前記通常システム回路に通電する電源がONしている場合には前記フォトカプラの動作を停止する機能を備えるようにした。このようにすると、フォトカプラが動作停止するので、確実に配線チェック用の電圧が端子部に加わることを抑止できる。
(2)前記配線チェック用回路は、与えられた電圧から、前記異なる電圧値の配線チェック用の電圧を生成する回路部と、その回路部の出力側に接続されたフォトカプラと、を備え、前記誤動作防止回路は、前記通常システム回路に通電する電源がONしている場合には前記配線チェック用回路に対して電圧を加えないようにする機能を備えるとよい。このようにすると、配線チェック回路自体に電圧が入力されないので、端子部に対する配線チェック用の電圧も出力もされない。
(3)また、上記の前提において、前記配線チェック用回路は、与えられた電圧から、前記異なる電圧値の配線チェック用の電圧を生成する回路部と、その回路部の出力側に接続されたフォトカプラと、を備え、前記フォトカプラの出力と、前記通常システム回路の出力が、それぞれ同じ前記端子部に直接接続され、前記誤動作防止回路は、前記通常システム回路に通電する電源がONしている場合には前記配線チェック用回路に対して電圧を加えないようにする機能を備えたようにするとよい。
(4)前記配線チェック用の電圧は、着脱可能な外部電源から供給されるようにするとよい。配線チェックは、I/OケーブルにてFA機器と端子台とを接続した後に行うものの、その後の実際のシステム稼働時には不要なものとなる。従って、FA機器の外部電源を利用することで、FA機器の小型・軽量化を図ることができる。
(5)前記配線チェック用の電圧の電圧値は、少なくとも0.5[V]の差を持たせるようにするとよい。少なくとも0.5[V]の差を持たせるので、0.5[V]以上の差があるのは妨げず、しかも、実施形態のように各端子部に加える電圧値が1[V]刻みのように均等にする必要はなく、ある端子部の間の差は0.5[V]で別の端子部との間の差は1.0[V]というように異なっていても良い。少なくとも0.5[V]の差があると、I/Oケーブルにおける電圧降下を考慮しても、FA機器のどの端子部に接続されているかを認識することができる。
(6)前記FA機器は、リモートターミナル或いはプログラマブルコントローラを構成するI/Oユニットのいずれかとすることができる。
本発明は、I/Oケーブルを介して端子台に接続した非稼働時のリモートターミナルやI/Oユニット等のFA機器の端子部に電圧を印加した状態で、端子台の端子部の電圧値を確認することで、I/Oケーブルが正しく配線されているかを簡単に判定することができる。よって、目視によるI/O配線確認に比べてミスの発生が大幅に軽減されると共に短時間でチェック作業が完了する。さらに、端子台の端子部に電圧が出力されるので、I/O配線の導通チェックもあわせてできる。
しかも、FA機器の通常システム回路に電源が印加されている状態では配線チェック回路の出力(端子部に加える配線チェック用の電圧)はされないようになっているので、通常システム回路に電圧が加わり、故障を生じるおそれを可及的に抑制できる。
図2は、FAシステムの一例を示している。この例では、PLC30並びにリモートターミナル10が、フィールドネットワーク35に接続される。PLC30は、ビルディングブロックタイプであり、図では、電源ユニット31と、CPUユニット32と、I/Oユニット33と、マスタユニット34を示しているが、通信ユニット等の各種のユニットが連結されることを妨げない。また、各ユニットの設置個数も任意である。各ユニットは内部バス(PLCバス)を介して接続され、その内部バスを経由して、データの送受を行なう。
リモートターミナル10は、マスタ−スレーブ通信を行う際のスレーブとなる。そして、本実施形態では、リモートターミナル10には、I/Oケーブル21を介して端子台23が接続される。この端子台23に1または複数のI/O機器25が接続される。これにより、リモートターミナル10は、PLC30から離れた場所に設置することができる。さらに、端子台23もリモートターミナル10から離れた場所に設置することができる。よって、端子台23に接続されるにI/O機器25は、PLC30やリモートターミナル10の設置位置に問わず、任意の位置に設置することができる。
さらに、PLC30を構成するI/Oユニット33にもI/O機器25が接続されるが、直接接続される場合と、I/Oケーブル21並びに端子台23を介して間接的に接続される場合がある。
図3は、リモートターミナル10,I/Oケーブル21並びに端子台23の実際の配線構成の一例を示している。リモートターミナル10は、産業用ロボット22の付近に設置された配電盤20内に実装される。I/O機器25の一例であるセンサは、産業用ロボット22のアームの先端側や、作業台近傍などの各所に配置され、その設置位置はリモートターミナル10からさらに離れた位置にある。そこで、係るI/O機器25(ここではセンサ等の入力機器)の設置位置近傍に端子台23を配置し、その端子台23に1または複数のI/O機器25を接続する。そして、端子台23とリモートターミナル10との間は、I/Oケーブル21にて接続する。
図4は、このI/Oケーブル21を用いたリモートターミナル10と端子台23との間の接続形態の全体イメージの一例を示している。本実施形態では、6点入力のリモートターミナル10に、1つの端子台20を接続する形態を示しているが、1つのリモートターミナル10に複数の端子台20を接続したり、1つの端子台20に複数のリモートターミナルを接続したりすることも妨げない。図示するように、リモートターミナル10並びに端子台23は、I/Oケーブル21を構成する複数の芯線21aの先端を装着するための端子部12,23aを備えている。この端子部12,23aは、芯線21aの先端を挿入して固定する差込口や、ねじ止めにより固定する機構などにより実現される。そして、1点毎に電源ラインとしての2つの端子部(VnとGNDn)と、信号ラインとして1つの端子部(INn)が用意されているので、6点用のリモートターミナル10の場合、合計で18個の端子部が用意される。
さらに、リモートターミナル10は、リモートターミナル10の内部回路を動作させるためのシステム電源40や、I/O機器25への電源となるI/O電源41等の外部電源が接続される。I/O電源41から供給される電圧が、上記の電源ラインとしての2つの端子部(VnとGNDn)間に印加され、I/O機器25に電力供給される。これらの外部電源は、たとえば商用電源から供給されるAC100Vを、DC24Vに変換して出力するものが用いられる。なお、システム電源は、ネットワーク経由で供給される場合もある。また、I/O電源41は、設けない場合もある。
図5は、リモートターミナル10の内部構成を示すブロック図である。図示するように、リモートターミナル10は、リモートターミナル本来の処理を実行するための通常システム回路11と、複数の端子部12と、外部電源の供給口となるシステム電源用インタフェース13及びI/O電源用インタフェース14を備えている。このインタフェース13,14は、外部電源の出力側の電源ケーブルの先端のプラグソケットを装着するためのソケット口を備えている。なお、本実施形態では、システム電源40と I/O電源41が取り外し可能な外部電源として実装するタイプとしているが、リモートターミナル10と分離付加の状態で一体に接続されていても良い。その場合、電源をON/OFFするためのスイッチ等を備え、通常システム回路に通電しない状態にすることができるようにする必要がある。
通常システム回路11は、PLCとの間でI/Oデータの送受やコマンド・レスポンスの送受を行う通信制御部や、通信制御部を介して取得したメッセージを受けて所定の処理を実行し、レポンスを生成・返信したり、端子台23を介して接続されるI/O機器25に対する制御命令等外部機器とのやりとりを行ったりする演算部(MPU)や、その演算部が処理を実行する際に使用するワークメモリ(RAM)や、各種の設定データ等を記憶する記憶部(不揮発性メモリ)や、I/O電源41から電力供給された電力を、電源ラインを構成する所定の端子部(VnとGNDn)に与える回路等を備える。
ここで本発明では、リモートターミナル10の各端子部12に、端子部ごとに違った電圧を与えるようにした。これにより、I/Oケーブル21でリモートターミナル10と接続された端子台23の各端子部の電圧を測定することで、リモートターミナル10の各端子部12が端子台23のどの端子部に接続されているかを確認することができる。そして、このように各端子部12に印加する電圧は、ポータブル電源等の外部電源を利用するようにした。
さらに、リモートターミナル10は、システム電源40とI/O電源41のいずれからも電源供給がされていないことを条件に、上記の配線チェックのための電圧が各端子部12に印加されるようにする誤動作防止機能を備えた。これにより、誤って、システム電源40やI/O電源41からの電源供給がされているときに配線チェック用の電圧が各端子部12に印加され、その印加された電圧が通常システム回路11にも加わり、当該通常システム回路11が故障・損傷するのを抑止している。
具体的には、図4に示すように、配線チェック時においては、配線チェック用電源42を用意し、その配線チェック用電源42をリモートターミナル10に接続する。つまり、図5に示す配線チェック用電源用インタフェース15に配線チェック用電源42を接続する。配線チェック用電源42は、システム電源40やI/O電源41と同様に、商用電源を直流24Vに変換する定電圧電源を用いる。配線チック用電源用インタフェース15は、配線チェック用電源42の出力側の電源ケーブルの先端のプラグソケットを装着するためのソケット口を備えている。つまり、配線チェック用電源42は、リモートターミナル10の筐体の外側に独立して形成されると共に、そのリモートターミナル10の筐体に対して着脱自在としている。
このように配線チェック用電源42を外部で着脱自在とすることで、配線チェック用電源42を複数のリモートターミナル10で共用する(適宜取り替えて使用する)ことができるとともに、配線完了後の通常動作時には不要となる配線チェック用電源42を分離することで、リモートターミナル10の小型・軽量化を図ることができる。
リモートターミナル10は、各端子部12に異なる電圧値の配線チェック用の電圧を出力する配線チェック用回路17と、システム電源40,I/O電源41のどちらか、もしくは両方がONしている場合は配線チェック電源42がONしていても配線チェック用回路17から各端子部12に配線チェック用の電圧が出力されないようにする配線チェック機能誤動作防止回路16を備えている。
配線チェック用回路17は、配線チェック用電源用インタフェース15の+24Vのラインに対して分岐状態で接続された18本の電圧調整抵抗17bと、各電圧調整抵抗17bの下流側(上記の+24Vのラインと非接続側)に配置されたフォトカプラ17aと、を備える。そして、フォトカプラ17aの出力が、各端子部12に接続される。これにより、配線チェック用電源42から供給される+24Vの電圧は、電圧調整抵抗17bにより適宜の電圧に降圧され、各端子部12に与えることができる。そして、各電圧調整抵抗17bの抵抗値をそれぞれ適宜に異ならせることにより、各端子部12に与える配線チェック用の電圧の電圧値を異ならせている。具体的には、IN1=1[V]、V1=2[V]、GND1=3[V]、IN2=4[V]、V2=5[V]、GND2=6[V]、IN3=7[V]、V3=8[V]、GND3=9[V]、IN4=10[V]、V4=11[V]、GND4=12[V]、IN5=13[V]、V5=14[V]、GND5=15[V]、IN6=16[V]、V6=17[V]、GND6=0[V]とした。ここで、IN1〜IN6は、リモートターミナル入力端子であり、GND1〜GND6は、リモートターミナルGND端子であり、V1〜V6は、リモートターミナルV端子である。GND6の端子部を0[V]としたことで、I/Oケーブル21の配線後に行う実際の配線チェックは、端子台23のGND6が接続されている端子部23aと他の端子部23aとの間の電圧を測定することで、どの配線が何処に接続されているかを判別することができる。つまり、たとえば、端子台23のIN1用の端子部の電圧値が約1[V](I/Oケーブル21により生じる電圧降下により、実際には1[V]よりも若干低くなる)であれば、正しく配線していると確認できるが、たとえば2[V]付近或いはそれ以上となると、配線ミスがあったことがわかると共に、その測定した電圧値によりリモートターミナル10のどの端子部と誤接続されているかも特定できるので、配線し直しも簡単かつ迅速に行える。また、測定値が0[V]の場合は、未接続、もしくは配線(芯線)が断線していると判別できる。さらにまた、GND6についての配線異常(誤配線・未接続・断線等)があった場合には、多くの端子部での電圧値が本来の値と異なるので、特定できる。
配線チェック機能誤動作防止回路16は、配線チェック用回路17の動作を制御するもので、システム電源40とI/O電源41の少なくとも一方がONしている場合には配線チェック用回路17が動作しない(配線チェック用の電圧が出力(端子部に印加)されない)ように制御するものである。つまり、システム電源40とI/O電源41の少なくとも一方がONしている場合にはフォトカプラ17aのフォトカプラ電源をOFFにしたり、配線チェック用電源の電圧が、配線チェック用回路17(電圧調整抵抗17b)に加わらないように制御したりすることで、通常システム回路11の動作時は、配線チェック用の電圧が出力(端子部に印加)されないようになる。
そして、具体的な回路構成は、システム電源用インタフェース13と、I/O電源用インタフェース14の出力(+24V)とが入力端子に接続される2入力のORロジックIC16aと、そのORロジックIC16aの出力と、配線チェック用電源用インタフェース15の出力(+24V)とが入力端子に接続される2入力のXORロジックIC16bと、そのXORロジックIC16bの出力と、配線チェック用電源用インタフェース15の出力(+24V)とが入力端子に接続されるに2入力のANDロジックIC16cと、からなる論理回路と、そのANDロジックIC16cの出力が接続されるレギュレーター16dと、を備えている。レギュレーター16dは、入力24Vをフォトカプラ17aの電源電圧となる5Vにして出力するものである。また、このANDロジックIC16cの出力が、配線チェック用回路17の各電圧調整抵抗17bに与えられる。
上記の回路構成を採ることで、まず、システム電源40とI/O電源41の少なくとも一方がONの場合には、ORロジックIC16aの出力はONとなり、両方の電源がOFFの場合にORロジックIC16aの出力がOFFになる。そして、XORロジックIC16bの出力は、いずれか一方の入力がONの時にONになるので、配線チェック用電源42がONの場合、ORロジックIC16aの出力がOFF(システム電源40とI/O電源41のいずれもOFF)のときにXORロジックIC16bがONになり、ANDロジックIC16cがONとなるように動作する。よって、上記の条件の時には、配線チェック用電源42から与えられる24Vの電圧が、配線チェック用回路17に与えられると共に、5Vに降圧された電圧がフォトカプラ17aの電源電圧として与えられる。
一方、配線チェック用電源42がONとなっていても、システム電源40とI/O電源41の少なくとも一方がONの場合には、ORロジックIC16aの出力はON、つまり、XORロジックIC16bの入力が共にONとなるので、出力はOFFとなる。よって、ANDロジックIC16cの出力はOFFとなるので、配線チェック用回路17の電圧調整抵抗17bに電圧が印加されないし、フォトカプラ電源もOFFとなって動作しないので、配線チェック用回路17から各端子部12に配線チェックのための電圧は出力されない。
また、配線チェック用電源がOFFの場合には、配線チェック用電源用インタフェース15の出力がOFFのため、当該出力が接続されるANDロジックIC16cの入力端子がOFFとなるのでシステム電源40,I/O電源41の状態に関係なく配線チェック用回路17は動作しない。
よって、リモートターミナル10が通常動作する際には、配線チェック用回路17が動作しないので、通常システム回路11に配線チェック用の高い電源が加わり、故障を生じるおそれを可及的に抑制できる。なお、本実施形態では、配線チェック用回路17の各電圧調整抵抗17bに与える電圧と、フォトカプラ電源に与える電源電圧を、いずれもANDロジックIC16cの出力からとるようにしたため、システム電源40とI/O電源41の少なくとも一方がONの場合には、確実に各端子部12に配線チェック用の電圧が出力されないが、いずれか一方は、上記の論理回路を経由することなく、配線チェック用電源が印加されるようにしても良い。すなわち、ANDロジックIC16cの出力は、レギュレーター16dにのみ与えるようにし、配線チェック用電源用インタフェース15の出力は、直接各電圧調整抵抗17bに接続するようにしたり、それとは逆に、ANDロジックIC16cの出力は各電圧調整抵抗17bにのみ接続するようにするとともに配線チェック用電源用インタフェース15の出力が直接レギュレーター16dに与えられるようにしたりすることもできる。なお、このように、通常動作時にいずれか一方のみを不動作にする場合、フォトカプラ電源をOFFにする構成(ANDロジックIC16cの出力をレギュレーター16dに与える構成)をとる方が好ましい。これは、仮にANDロジックIC16cの出力を各電圧調整抵抗17bのみに接続した場合、フォトカプラ電源がONになっていると、何かしらの原因で各電圧調整抵抗に電圧がかかると、それが端子部12に加わり、通常システム回路11に印加されるおそれがあるが、フォトカプラ電源をOFFにすれば、フォトカプラ17aの出力がでないためである。
図6は、本システムを用いた配線チェックの手順を示すフローチャートである。図示するように、まず、作業員は、リモートターミナル10と端子台23をI/Oケーブル21で接続する(S1)。つまり、I/Oケーブル21を構成する各芯線21aの両端を、対応する端子部に接続する。
次いで、作業員は、リモートターミナル10に配線チェック用電源42を接続するともに電源を投入する。これにより、リモートターミナル10には、配線チック用電源用インタフェース15を介して配線チェック用電源42からの電圧供給を受ける(S2)。このとき、システム電源40並びにI/O電源41は非接続にしているか、当該電源のON/OFFの制御ができる場合には仮に接続していても電源投入をしないようにする。
次に、作業員は、端子台23のGND6端子とIN1〜V6端子の電圧をテスターで測定する(S3)。そして、作業員は、各端子部12で所望の電圧値になっているかを確認し(S4)、所望の電圧値でない箇所があれば、配線不良箇所があると判断し(S5)、配線し直しなどのメンテナンスを行い、所望の電圧値が得られている場合にはすべての端子の配線が正しく行われていると判断し、チェック作業を終了する(S6)。この後は、配線チェック用電圧42を取り外すと共に、システム電源40やI/O電源41を投入(ON)することになるが、誤ってその手順を逆にして配線チェック用電源42を取り外す(OFFにする)前にシステム電源40等をONにしたとしても、上記の誤動作防止機能により、配線チェック用の電圧が端子部に印加されない。よって、通常システム回路11が故障等することはない。
図7は、本発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、配線チェック機能誤動作防止回路18の具体的な回路構成(論理回路の部分)を変更している。すなわち、図5に示す実施形態のORロジックIC16aに替えて、2入力2出力のNOTロジックIC18aを設ける。このNOTロジックIC18aの2つの出力(システム電源40とIO電源41のそれぞれの反転出力)と、配線チェック用電源用インタフェース15の出力を、3入力のANDロジックIC18bに与える。そして、このANDロジックIC18bの出力を、レギュレーター18cと、各電圧調整抵抗17bに与えるようにした。
これにより、システム電源40とI/O電源41が共にOFFで、配線チェック用電源42がONになった場合のみ、ANDロジックIC18bの3つの入力端子がすべてONになって、その出力もONとなり、配線チェック用回路17にて各端子部に対して所望の配線チェック用の電圧を加えることができる。そして、システム電源40とIO電源41の少なくとも一方がONの場合には、ANDロジックIC18bの出力はOFFとなり、配線チェック用回路17から端子部12へ電圧が出力されないようになる。なお、その他の構成並びに作用効果は、図5に示した実施形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
上述した各実施形態では、いずれもリモートターミナル10と端子台33との間の配線チェックする機能を備えたリモートターミナル10について説明したが、本発明はこれに限ることはなく、PLCを構成するI/Oユニット33に適用することもできる。この場合、システム電源は、PLCを構成する内部バスを介して供給されることになるので、システム電源用インタフェースは、内部バスインタフェースとなる。