送電装置を市販するためには、メーカは、各種の試験を実施して、製品としての送電装置の性能や品質、信頼性や安全性等を保障する必要がある。また、例えば、各国の公的認証機関が実施する、送電装置の電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic Compatibility)等の試験に合格することも必要となる。
しかし、従来技術では、無接点電力伝送システムを構成する送電装置(1次側モジュール)の試験については、何ら考慮されておらず、送電装置についての効率的な試験を実行することができない。
例えば、送電装置は、受電側機器の着地を待って仮送電を実行し、受電装置との間でID認証処理を実行し、ID認証をパスした後に、1次コイルの連続駆動(連続送電)を実行する。したがって、送電装置が連続送電を開始するためには、受電装置(受電側機器)が対向配置されること、ならびに、ID認証にパスすること、の2つの条件を満足する必要があり、このことが、送電装置の試験を困難なものとする。
すなわち、送電装置の試験は、受電側機器が存在しなくても、送電装置単独で行えることが望ましい。また、例えば、送電装置を何らの制限なく、ただちに連続送電状態にすることができることが望ましい。
また、送電装置と受電装置を対向配置した状態で送電装置の試験を行う場合においては、例えば、送電装置が、できるだけ早く認証処理を完了させて連続送電状態に移行することが望ましい。また、例えば、連続送電の条件が、受電側機器に基づく制約を受けることなく、送電装置側で自由に決定できるようにすることが望ましい。また、例えば、受電装置におけるID認証が確実に完了して、受電装置が必ず、連続送電を受電する受電モードとなることが望ましい。
本発明のいくつかの態様によれば、送電装置の試験を、効率的かつ確実に実行することが可能となる。また、必要な試験を、より容易に、あるいは、より高精度に行うことが可能となる。
(1)本発明の送電装置の一態様は、無接点電力伝送のための送電装置であって、1次コイルの駆動を制御する駆動制御回路を有する送電部と、前記送電装置の動作を制御する送電制御装置と、第1強制送電モードのイネーブル/ディスエーブルを切り換えるための第1の切り換え情報を設定するための第1強制送電モード設定部と、を有し、前記第1強制送電モードがディスエーブルのときは、前記送電制御装置は、受電側機器の着地が検出される前の待機フェーズでは、前記送電部における前記駆動制御回路を制御して、前記受電側機器の着地を検出するための間欠送電を実行させ、前記第1強制送電モードがイネーブルのときは、前記送電制御装置は、前記送電部における前記駆動制御回路を制御して、前記1次コイルを連続駆動させる。
本態様では、送電装置に第1強制送電モード設定部を設け、これによって、第1強制送電モードによる強制連続送電を可能とする。第1強制送電モードが選択されると、受電装置が設けられない状態であっても、送電装置を強制的に連続送電状態とすることができ、送電装置単独の試験が可能となる。また、第1強制送電モードが選択されると、2次側機器に設けられる受電装置(受電装置が、2次側機器に一体的に取り付けられる場合もあり得る)との間でのID情報等の交換をすることなく、待機状態の送電装置を、ただちに連続送電状態に移行させることができる。よって、送電装置の試験の効率を高めることができる。
送電装置の試験としては、例えば、送電装置のメーカが実施する消費電力測定試験、伝送能力試験や温度検知機能確認試験、あるいは公的機関による適合性や安全性等の試験(公的認証試験)等があげられる。公的認証試験は、具体的には、例えば、送電装置の電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic Compatibility)試験である。
第1強制送電モード設定部に、第1強制送電モードをイネーブルにするための第1の切り換え情報(強制送電モード設定情報)を設定することによって、送電装置を強制連続送電状態とすることができる。なお、第1強制送電モードがディスエーブルのときは、送電装置は待機状態を維持し、待機状態では、送電装置は、受電側機器の着地を検出するための間欠送電(例えば、0.3秒に1回の送電)を実行する。
第1強制送電モード設定部は、例えば、書き込み可能なメモリ(レジスタを含む)を用いて構成することができる。例えば、メモリのメモリ空間が複数のメモリ領域に区分され、区分された各メモリ領域が、テストのための動作モードや動作条件等を決定(選択)するための設定部として機能する。具体的には、例えば、メモリの所定アドレスの所定ビットに“1”,“0”のどちらの切り換え情報を設定するかによって、上記の第1強制送電モードのイネーブル/ディスエーブルを決定することができる。
(2)本発明の送電装置の他の態様は、第2強制送電モードのイネーブル/ディスエーブルを切り換えるための第2の切り換え情報を設定するための第2強制送電モード設定部をさらに有し、前記第2強制送電モードがイネーブルのときは、前記送電制御装置は、前記受電側機器の着地が検出されると、前記送電装置を制御して、前記受電側機器に設けられている受電装置との間で認証情報を交換する認証処理を実行させ、前記認証処理に際しては、前記受電装置から送信されてきた認証情報に基づく適合確認処理の少なくとも一部を省略させ、また、前記受電装置を確実に受電モードにするための認証情報を前記受電装置に送信させ、前記認証処理の後に、送電装置側で用意した動作情報に基づく連続送電を実行させる。
本態様では、第2強制送電モードによる強制連続送電を可能とする。第2強制送電モードは、送電装置と受電装置を対向配置した状態で送電装置の試験を行う場合に使用することができる。例えば、送電装置の伝送能力を試験するとき、送電装置から受電装置に連続送電し、受電装置に接続される負荷に期待値どおりの給電がされているか否かを判定する必要がある。この場合、送電装置の伝送能力のための試験であることから、送電装置と受電装置との間の認証処理の正確性等は、特に問題とされない(認証処理の正確性等については、別途、試験すればよいだけである)。したがって、送電装置の伝送能力試験の効率を向上させるためには、送電装置が、できるだけ早く認証処理を完了させて連続送電状態に移行することが望ましい。
そこで、第2強制送電モードが選択されると、送電装置と受電装置は、認証情報の交換を行うものの、送電装置は、受け取った認証情報に基づく1次側(送電装置)と2次側(受電装置)との適合確認処理の少なくとも一部の処理を省略する。適合確認処理に複数の処理が含まれる場合、それらの処理の全部を省略することもでき、また、それらの処理の一部を省略することができる(例えば、どうしても実行する必要がある処理があるときは、その処理は実行し、その他の処理は省略することができる)。具体的には、例えば、受け取った受電装置側のID認証情報と、送電装置内に予め用意されているID認証情報との照合処理を省略することができる。これによって、認証情報に基づく適合確認(ID情報の一致確認のための照合処理等を含む)のための時間が必要なくなり、待機状態の送電装置が連続送電に移行するまでの時間を短縮することができる。
また、通常動作時には、ID認証情報等の交換によって受電装置の性能等が明らかになると、受電装置の性能等に適合するように送電装置の送電特性が調整される。すなわち、送電装置の送電特性は、2次側から送られてきた情報に基づいて制約を受けることになり、この点が、送電装置の試験では障害となる。すなわち、送電装置の試験を行うときは、送電装置の送電特性は、送電装置側が主体的に決定できるようにするのが好ましい。そこで、第2強制送電モードが選択されたときは、2次側から受け取った情報を無視して、送電装置側で用意した動作情報に基づいて連続送電を実行させる。これによって、送電装置の送電特性を、送電装置側が主体的に決定することができる。
また、受電装置において、例えば、1次側から受け取ったID認証情報の一致確認ができないとID認証失敗となり、この場合には、送電装置は受電装置に対する送電を開始することができず、よって、送電装置の伝送能力試験を行うことができない。そこで、このような事態が生じないようにするために、第2強制送電モードが選択されたときは、送電装置は、受電装置を確実に受電モードにするための認証情報を受電装置に送信する。
「受電装置を確実に受電モードにするための認証情報」は、例えば、受電装置がID認証可能な(つまり、受電装置における認証処理の成功が確実な)ID情報であり、そのID情報は、例えば、送電装置に予め用意されている。また、その認証情報を送電装置に予め用意する代わりに、受電装置から送られてきたID認証情報をそのまま送り返すようにしてもよい。すなわち、受電装置は、自機のID情報は必ず保有していることから、送電装置から返信されてきた自己のID認証情報と、自機が保有しているID情報との一致確認(すなわちID情報の照合による適合確認)を行えば、必ず一致が確認されてID認証が成功するはずである。これによって、第2強制送電モードが選択されたときは、受電装置におけるID認証が確実に完了して、受電装置が必ず、連続送電を受電する受電モードになる(すなわち、受電装置は、確実に受電モードにされる)。したがって、受電装置側のID認証失敗によって、送電装置の試験が続行できないという事態は生じない。このようにして、送電装置と受電装置とを対向させた状態で行う送電装置の試験の効率化を図ることができる。なお、上述した送電装置の機能は、受電装置の動作試験等にも有効である。
(3)本発明の送電装置の他の態様は、第2強制送電モードのイネーブル/ディスエーブルを切り換えるための第2の切り換え情報を設定するための第2強制送電モード設定部をさらに有し、前記第2強制送電モードがディスエーブルのときは、前記送電制御装置は、前記受電側機器の着地が検出されると、前記送電装置を制御して、前記受電側機器に設けられている受電装置との間での第1情報の交換、ならびに前記第1情報の交換によって前記受電装置から送信されてきたID情報の一致確認処理を実行するネゴシエーションフェーズと、第2情報の交換ならびに、前記第2情報の交換によって取得された、前記受電装置から送信されてきた動作情報に基づく動作条件の設定処理を実行するセットアップフェーズと、を実行させ、その後、前記セットアップフェーズにおいて設定された動作条件に基づく連続送電を実行させ、前記第2強制送電モードがイネーブルのときは、前記送電制御装置は、前記送電装置を制御して、前記ネゴシエーションフェーズにおいて前記ID情報の一致確認処理を省略させ、また、前記受電装置を確実に受電モードにするための認証情報を前記受電装置に送信させ、また、前記セットアップフェーズにおいて、前記受電装置から送信されてきた動作情報を無効として、代わりに、送電装置側で用意した動作情報に基づいて前記動作条件の設定処理を実行し、その後、前記送電装置側で用意した動作情報によって設定された前記動作条件に基づく連続送電を実行させる。
本態様では、認証情報の交換処理には、ネゴシエーションフェーズとセットアップフェーズの2段階の処理が含まれる。ネゴシエーションフェーズでは、例えば、ID情報や安全上の情報を含む第1情報の交換が行われ、例えば、規格/コイル/システムの適合確認が実行される。また、セットアップフェーズでは、例えば、対応する機能の確認や、アプリケーション別の具体的な情報の交換と設定が実行される。ネゴシエーションフェーズおよびセットアップフェーズは、1次側の特性を2次側の特性に適合させて1次側と2次側との整合をとり、1次側の送電および2次側の受電の体制を整えるという意味をもつ処理である。1次側と2次側とが自機に関する情報を交換することによって、1次側または2次側は、相手側から受信した情報に基づいて、相手側が自機と整合性ある装置であるかどうかを確認する(すなわち、認証する)ことが可能である。したがって、ネゴシエーションフェーズおよびセットアップフェーズで取り扱われる各情報は、いずれも、広義の認証情報ということができ、また、各フェーズの処理は、広義の認証処理ということができる。
第2強制送電モードがディスエーブルのときは、ネゴシエーションフェーズとセットアップフェーズの2段階の処理を経て通常送電(例えば、2次側の負荷への給電のための連続送電)が実行される。
第2強制送電モードがイネーブルになると、ネゴシエーションフェーズでは、送電装置におけるID情報の一致確認が省略される。また、「受電装置を確実に受電モードにするための認証情報」が受電装置に送信される。したがって、受電装置側のID認証失敗によって、送電装置の試験が続行できないという事態は生じない。また、セットアップフェーズでは、送電装置は、送電制御装置による制御の下で、受電装置から送信されてきた動作情報を無効とし、代わりに、送電装置側で用意した動作情報に基づいて動作条件の設定処理を実行し、その後、送電装置側で用意した動作情報によって設定された動作条件に基づく連続送電を実行する。これによって、送電装置の送電特性を、送電装置側が主体的に決定することができる。このようにして、送電装置と受電装置とを対向させた状態で行う送電装置の試験の効率化を図ることができる。なお、上述した送電装置の機能は、受電装置の動作試験等にも有効である。
(4)本発明の送電装置の他の態様では、前記受電装置を確実に受電モードにするための認証情報には、前記受電装置がID認証可能な、予め定められているID情報が含まれる。
上述のとおり、「受電装置を確実に受電モードにするための認証情報」として、例えば、受電装置がID認証可能な(つまり、受電装置における認証処理の成功が確実な)、予め定められているID情報を使用することができる。そのID情報は、例えば、送電装置に予め用意しておくことができる。
(5)本発明の送電装置の他の態様では、前記受電装置を確実に受電モードにするための認証情報には、前記受電装置から送信されてきたID情報が含まれる。
上述のとおり、「受電装置を確実に受電モードにするための認証情報」として、例えば、受電装置から送信されてきたID情報を使用することができる。すなわち、受電装置は、自機のID情報は必ず保有していることから、送電装置から返信されてきた自己のID認証情報と、自機が保有しているID情報との一致確認を行えば、必ず一致が確認されてID認証が成功するはずである。したがって、受電装置(2次側モジュール)を確実に受電モードにすることができる。
(6)本発明の送電装置の他の態様は、第1強制送電モード設定部または前記第2強制送電モード設定部は、前記送電装置の外部に設けられる装置からアクセスされることが可能である。
送電装置の試験時には、例えば、試験装置等が主体的に条件を定め、送電装置の動作試験を主導的に遂行できることが望ましい。そこで、本態様では、送電装置等の試験時において、外部の装置が、第1強制送電モード設定部または前記第2強制送電モード設定部にアクセスすることができるようにした。「外部の装置」は、例えば、無接点電力伝送システムのための試験装置(テスタ)であり、あるいは、送電装置の試験専用の試験条件発生器等である。
テスト情報設定部に外部の装置がアクセスできるようにするために、送電装置にインタフェース部を設けることが可能である。また、例えば、送電装置にテスト専用端子(テストピン)を設けて、その専用端子を経由して、動作モードの設定情報等をテスト情報設定部に直接に書き込むことができるようにすることも可能である。
(7)本発明の送電装置の他の態様は、送電側ホストと通信を行うためのホストインタフェースを有し、前記送電側ホストは、前記ホストインタフェースを介して前記第1強制送電モード設定部または前記第2強制送電モード設定部にアクセスすることができる。
ホストインタフェースを設けることによって、送電側ホスト(例えば、試験装置のホストコンピュータ、あるいは、無接点電力伝送システムを利用する上位装置等)が、第1強制送電モード設定部または前記第2強制送電モード設定部にアクセスすることが可能となる。これによって、送電側ホストが、送電装置の試験等を主導することが可能となる。
(8)本発明の送電装置の他の態様では、前記第1強制送電モード設定部または前記第2強制送電モード設定部は、送電装置のテストのための情報が設定されるテスト情報設定部内の所定アドレスに設けられており、前記第1強制送電モード設定部または前記第2強制送電モード設定部に、前記第1の切り換え情報または前記第2の切り換え情報としての情報ビットが書き込まれることによって、前記第1強制送電モードまたは前記第2強制送電モードのイネーブル/ディスエーブルが切り換えられる。
本態様では、送電装置のテストのための情報が設定されるテスト情報設定部が設けられ、第1強制送電モード設定部または第2強制送電モード設定部は、テスト情報設定部内の所定アドレスに設けられる。テスト情報設定部を設けることによって、テスト条件の設定が容易化される。テスト情報設定部にはテストのための情報を書き込むことができ、また、テスト情報設定部は、その書き込まれた情報を保持することができる。テスト情報設定部へのライトアクセスは、例えば、誤った条件設定を防止するために、試験モードが選択されたときにのみ許可されるのが望ましい。テスト情報設定部は、例えば、テスト用メモリ(例えば、テストレジスタ)によって構成することができる。なお、テストレジスタは、比較的構成が簡単なメモリである。テストレジスタの採用は、送電装置の構成の簡素化や小型化に寄与し、また、コストの抑制にも寄与する。
(9)本発明の送電装置の他の態様は、前記1次コイルの駆動のオン/オフを強制的に切り換えるための第3の切り換え情報を設定するためのコイル駆動イネーブル設定部を、さらに有する。
上述のとおり、第1強制連続送電モードによって、1次コイルの強制的な連続駆動が可能となるが、送電装置の試験においては、1次コイルの駆動を強制的に停止することが必要となる場合がある。例えば、待機フェーズにおける送電装置の消費電力を測定する場合には、1次コイルの駆動のオン/オフを切り換えることができると、より信頼性の高い消費電力測定が可能となる。すなわち、待機時における送電装置は、受電側機器の着地を検出するために、間欠送電(例えば、0.3秒毎に5m秒だけ1次コイルが駆動される)が実行される。待機時の消費電力は、所定時間における平均電力の測定によって知ることができるが、平均電力では、コイル駆動がなされない期間(上記の例では、0.3秒の期間)における消費電力と、コイル駆動がされている期間(上記の例では、5m秒の期間)における消費電力とを区別して測定することができず、かつ、各々の期間における定常的な消費電力を測定することができない。
本態様では、コイル駆動イネーブル設定部に、コイル駆動のオン/オフの切り換え情報を設定することによって、コイル駆動を、強制的にオン/オフすることができる。例えば、第1強制送電モードがイネーブル、コイル駆動イネーブルがオンのとき、送電部における駆動制御回路において、システムクロックに基づいて1次コイルの駆動クロックが生成され、1次コイルの駆動クロックが1次コイルのドライバに供給されて、1次コイルが連続駆動される。第1強制送電モードがイネーブル、コイル駆動イネーブルがオフのときは、回路へのシステムクロックの供給は継続されるものの、1次コイルの駆動クロックの生成またはドライバへの供給が停止され、1次コイルの駆動が強制的に停止される。
したがって、第1強制送電モードをイネーブルにした状態で、コイル駆動イネーブルのオン/オフを選択することによって、待機時における、コイル駆動がなされない期間における送電装置の消費電力と、コイル駆動がされている期間における送電装置の消費電力とを区別して測定することができ、また、各々の期間における定常的な消費電力を測定することができる。よって、待機フェーズにおける送電装置の、より詳細な消費電力測定が可能となる。
(10)本発明の送電装置の他の態様では、前記送電装置のパワーオンリセット解除後、前記送電制御装置の少なくとも一部のリセット解除前の期間において、前記第1強制送電モード設定部および前記第2強制送電モード設定部の少なくとも一方に前記第1の切り換え情報または前記第2の切り換え情報が設定され、前記第1の切り換え情報または前記第2の切り換え情報の設定の完了後に、前記送電制御装置の少なくとも一部のリセットが解除される。
第1強制送電モード設定部および第2強制送電モード設定部等へのライトアクセスは、例えば、テストモードが選択されたときのみ許可され、そのライトアクセスは、例えば、パワーオンリセット解除後であって、送電制御装置の少なくとも一部(例えば、テストモード時の動作に関係する部分)のリセットが解除される前の期間において行うことができる。
パワーオンリセットは、電源投入直後においては、フリップフロップの動作が安定しないことから、パワーオンリセット回路によって、フリップフロップの初期設定を実行する動作である。パワーオンリセットによって、第1強制送電モード設定部および第2強制送電モード設定部(すなわちテストレジスタ等)の動作が安定する。したがって、第1強制送電モード設定部および第2強制送電モード設定部への情報の書き込みは、パワーオンリセットの解除後に実行する。但し、書き込み時において、第1強制送電モード設定部および第2強制送電モード設定部がリセット状態になっていないと、第1強制送電モード設定部および第2強制送電モード設定部に情報を書き込むと同時に、その書き込み情報にしたがって送電装置が唐突に動作を開始する場合がある。したがって、このような事態を防止するために、第1強制送電モード設定部および第2強制送電モード設定部への情報の書き込みは、送電制御装置の少なくとも一部(例えば、テストモード時の動作に関係する部分)をリセットした状態で行う。そして、すべての情報設定が完了した後に、送電制御装置のリセットを解除する。送電制御装置は、リセットが解除されると、テスト情報設定部(テストレジスタ等)に設定された情報に従って送電装置を制御し、これによって、所望の条件による送電が実行される。
(11)本発明の送電装置の他の態様は、前記送電制御装置の少なくとも一部をリセットするためのリセット信号を入力するためのリセット信号入力端子を有する。
これによって、送電制御装置のリセットを所望のタイミングで行うことができる。よって、所望のタイミングで、第1強制送電モード設定部や第2強制送電モード設定部等に、必要な情報を設定することが可能となる。
(12)本発明の送電装置の試験方法の一態様は、受電装置が対向配置されていない状態で、前記第1強制送電モードをイネーブルとして、前記1次コイルの連続発振を可能とし、さらに、前記コイル駆動イネーブル設定部への前記第3の切り換え情報の設定によって、前記1次コイルの駆動のオン/オフを制御して、前記1次コイルの駆動をオン/オフして、前記1次コイル駆動オン時の消費電力と、前記1次コイル駆動オフ時の消費電力と、を測定する。
上述のとおり、第1強制送電モードをイネーブルにした状態で、コイル駆動イネーブルのオン/オフを選択することによって、待機時における、コイル駆動がなされない期間における送電装置の消費電力と、コイル駆動がされている期間における送電装置の消費電力とを区別して測定することができ、また、各々の期間における定常的な消費電力を測定することができる。よって、待機フェーズにおける送電装置の、より詳細な消費電力測定が可能となる。
(13)本発明の送電装置の試験方法の他の態様は、受電装置が対向配置されていない状態で、前記第1強制送電モードをイネーブルとして、前記1次コイルを、通信に用いられる通信周波数よりも、前記1次コイルの共振周波数に近い周波数で連続駆動し、前記連続駆動による発熱による温度上昇を、前記送電装置に設けられる温度検知部によって検知して、温度検知機能試験を行う。
温度検知機能試験は、送電装置に備わる温度検知機能が、正常に機能するか否かを判定する試験である。例えば、送電装置の異常発熱等によって、送電装置の温度がしきい値を超えて高くなったときは、安全確保のために、送電装置の動作を強制的にオフする必要があり、したがって、送電装置には、一般に、温度検知機能が設けられる。温度検知機能試験は、例えば、送電装置を、温度を自在に設定することが可能な温度試験装置内に設置することによって行うことができるが、この場合、温度試験装置が必須であり、試験に要するコストが高くなる。
そこで、本態様では、第1強制送電モードをイネーブルとして、1次コイルを、通信に用いられる通信周波数よりも、1次コイルの共振周波数に近い周波数で連続駆動し、連続駆動による発熱による温度上昇を、送電装置に設けられる温度検知部によって検知して、温度検知機能試験を行う。1次コイルが2次コイルと電磁結合しない状態では、共振周波数の変化によって1次コイルの駆動振幅が増大し、かつ、通信周波数よりも、1次コイルの共振周波数により近い周波数で1次コイルを駆動することによって、1次コイルの駆動振幅をさらに増大させることができる。したがって、送電装置の温度を短時間に高温にすることができる。よって、特別な装置を使用することなく、送電装置の温度検知機能試験を行うことができる。
(14)本発明の送電装置の試験方法の他の態様は、負荷が接続されている受電装置が対向配置されている状態で、前記第2強制送電モードをイネーブルとし、前記認証処理を経て、前記1次コイルを連続駆動し、前記1次コイルならびに前記受電装置に設けられる2次コイルを介して、前記送電装置から前記受電装置に電力を伝送し、前記受電装置に接続されている前記負荷に対して、期待値どおりの給電が実行されるか否かを判定することによって、前記送電装置の伝送能力を試験する。
上述のとおり、第2強制送電モードを使用することによって、送電装置と受電装置とを対向させて、送電装置の伝送能力試験を行う場合に、その試験の効率化を図ることができる。
このように、本発明のいくつかの態様によれば、送電装置の試験を、効率的かつ確実に実行することが可能となる。また、必要な試験を、より容易に、あるいは、より高精度に行うことが可能となる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
本実施形態では、送電装置の試験の例、ならびに、第1強制送電モードおよび第2強制送電モードを有する送電装置の構成例と動作例等について説明する。
(送電装置等の試験の例)
図1(A),図1(B)は、送電装置に関する試験の例を示す図である。図1(A)は、受電装置を設けずに行われる、送電装置単独の試験例を示し、図1(B)は、送電装置と受電装置を対向配置して行われる試験(対向試験)の例を示す。
図1(A)に示すように、送電装置側の試験装置は、例えば、ホストコンピュータ(送電側)100と、計測器110と、を有する。送電装置(1次側モジュール)200は、例えば、計測器110に設けられる治具(不図示)上に載置される。送電装置200は、ホストインタフェース(ホストI/F)204と、送電制御装置230と、1次コイルL1と、を有している。ホストコンピュータ(送電側)100は、計測器110との間で、制御情報や測定データ等の送受信を行うことができる。また、ホストコンピュータ(送電側)100は、ホストインタフェース204を介して、送電装置200に、試験のための情報の設定等を行うことができる。各試験の内容は後述する。
送電装置(1次側モジュール)200単独の試験としては、例えば、待機時における消費電力測定試験、温度検知機能試験、公的機関認証試験等がある。
また、図1(B)に示すように、受電装置側の試験装置は、例えば、ホストコンピュータ(受電側)400と、計測器410と、を有する。受電装置(2次側モジュール)300は、例えば、計測器410に設けられる治具(不図示)上に載置される。受電装置300は、ホストインタフェース(ホストI/F)312と、受電制御装置308と、2次コイルL2(図1(B)では不図示)と、を有している。ホストコンピュータ(受電側)400は、計測器410との間で、制御情報や測定データ等の送受信を行うことができる。また、ホストコンピュータ(受電側)400は、ホストインタフェース312を介して、受電装置300との間で情報の送受信を行うことができる。
送電装置(1次側モジュール)200と受電装置(2次側モジュール)300とを対向させて行う試験(対向試験)としては、例えば、送電装置の伝送能力試験や、受電装置(2次側モジュール300自体の試験等がある。各試験の内容は後述する。
(無接点電力伝送システムの通常の動作例)
送電装置の試験について説明する前に、無接点電力伝送システムの通常の動作例について説明する。図2は、無接点電力伝送システムの通常の動作例を示す図である。
待機状態において、送電側機器(クレードル)500に内蔵される送電制御装置(図2では不図示)は、受電側機器(例えば携帯電話機)510の着地(セッティング)を、例えば、0.3秒に1回、検出し(ステップS1)、これによって、受電側機器の着地(セッティング)が検出される(ステップS2)。なお、待機時の送電装置200は、受電装置300の着地検出のために、1次コイルL1を間欠的に駆動する。1次コイルL1は、例えば、0.3秒毎に5m秒だけ駆動される。
次に、送電装置200と受電装置300との間で、種々の情報の交換(ネゴシエーションならびにセットアップ)が実行される(ステップS3)。
ネゴシエーションフェーズでは、認証情報(ID情報を含む)の交換が実行され、受信した認証情報に基づいて、規格/コイル/システムの適合確認処理(例えば、ID情報の照合による一致確認処理を含む)が実行される。また、ネゴシエーションフェーズでは、仮送電中の安全上の情報(例えば、異物検知用の検知パラメータ等の交換も実行される。
具体的には、送電側と受電側は、ID情報を交換し、受信したID情報に基づいて、規格/コイル/システム等がお互いに適合するか否かを確認する。また、例えば受電側が送電側に、異物検出等のための安全しきい値情報を送信し、安全上の情報交換を行う。このネゴシエーション処理では、送電側と受電側の間で情報の通信が可能か否かの確認や、通信した情報が妥当か否かの確認や、受電側の負荷状態の適否(異物の非検出)の確認等も行われる。ネゴシエーション処理において、ID情報の交換の結果として、規格/コイル/システム等が不一致(不適合)であると判定されたり、あるいは、タイムアウトエラーになったりすると、送電装置200は、例えば、待機フェーズに移行する。
送電側や受電側は、ネゴシエーションフェーズの後、セットアップフェーズに移行する。このセットアップフェーズでは、対応機能の情報やアプリケーション別の設定情報などのセットアップ情報が転送されるセットアップ処理が実行される。例えばネゴシエーション処理の結果に基づいて伝送条件が特定される。具体的には、受電側が、コイルの駆動電圧や駆動周波数等の伝送条件情報を送電側に送信すると、送電側は、受信した伝送条件情報に基づいてコイルの駆動電圧や駆動周波数等の通常送電のための伝送条件を設定する。また、対応機能についての情報交換や、上位のアプリケーション毎に異なる設定情報の交換も、このセットアップ処理で行われる。具体的には、通常送電開始後の受電側の負荷状態検出用のしきい値情報(例えばデータ通信用・異物検出用のしきい値情報)や、通常送電後のコマンドフェーズにおいて、送電側、受電側が発行・実行可能なコマンドの種類や、通信機能、定期認証機能等の付加的な対応機能についての情報交換は、このセットアップ処理において実行される。これにより、電子機器の種類(携帯電話機、オーディオ機器等)や機種などのアプリケーションに応じて異なる設定情報の交換が可能になる。
セットアップ処理において、機器の取り去りが検出されたり、タイムアウトエラーになったりすると、例えば、待機フェーズに移行する。
ネゴシエーション処理ならびにセットアップ処理は、送電側と受電側との、広義の適合性を確認する処理であり、これらをまとめて、広義の認証処理ということができる。このように、ネゴシエーション処理ならびにセットアップ処理によって、受電装置が適切な送電対象であることが確認され、必要な情報が設定された後に、通常送電(ここでは、バッテリ等の負荷への給電のための連続送電等)が開始される。通常送電が開始されると、受電側機器(携帯電話機)510に設けられているLEDが点灯する。
図2に示されるように、通常送電中において、バッテリ等の満充電が検出されると、満充電通知が受電装置から送電装置に送信され、これを受信した送電装置は、通常送電を停止する(ステップS4)。通常送電が停止されると、受電側機器(携帯電話機)510に設けられているLEDが消灯する。そして、満充電検出後の待機フェーズに移行する(ステップS5)。
満充電検出後の待機状態では、例えば、5秒に1回の取り去り検出が実行され、また、10分に1回、再充電の要否の確認が実行される。満充電後に受電側機器(携帯電話機)510が取り去られると、初期の待機フェーズに戻る(ステップS6)。また、満充電後に再充電が必要と判定されると、ステップS3に復帰する(ステップS7)。また、ステップ3の状態において、受電側機器(携帯電話機)510の取り去りが検出された場合には、初期の待機状態に復帰する(ステップS8)。
(送電装置および受電装置の内部構成例)
図3は、送電装置および受電装置の内部構成例を示す図である。送電装置200は、回路基板上に、複数の回路要素が搭載されて構成される1次側モジュール(無接点電力伝送システムの構成部品)である。送電装置200は、1次コイルL1と、システムクロックSCKを生成するシステムクロック生成回路(8MHz発振回路)202と、ホストインタフェース204と、テストモード設定回路206と、レジスタ部207と、温度判定部(温度異常検知部)218と、送電制御装置(IC)230と、1次コイルL1のコイル端の信号波形をモニタするためのAFE(アナログフロントエンド)242と、2次側の負荷変動や2次側の取り去り、あるいは異物検出等を行う検知判定部244と、送電部250と、システムバスBUS1と、を有する。また、回路基板には、複数の信号端子(P1〜P10)が設けられている。また、回路基板上の所定箇所には、温度をモニタするための少なくとも1個のサーミスタ(温度測定器)220が配置されている。なお、サーミスタ220から出力される温度情報は、信号端子P7を介して温度判定部218に供給される。
送電部250は、1次コイルL1の駆動を制御する駆動制御回路252と、コイル駆動回路(ドライバ)254と、を有する。駆動制御回路252は、システムクロックSCKを分周して駆動クロック(ドライバクロック)DRCKを生成し、コイル駆動回路(ドライバ)254に供給する。本実施形態では、テストレジスタ216への情報設定によって、テスト時に、コイル駆動回路(ドライバ)254への駆動クロックDRCKの供給を強制的に停止することができる(後述)。
また、送電制御装置(IC)230は、送電シーケンス制御部232と、周波数変調回路234と、送電装置200の全体動作を制御するメインシーケンサ236と、受信制御・負荷復調回路238と、定期認証判定回路240と、を有する。なお、「定期認証」とは、例えば、通常送電中において、1次コイルL1と2次コイルL2との間に異物が挿入されたことを検出するために、2次側が定期的に負荷変調を実行して、所定パターンの信号を1次側に送信し、1次側が、その所定パターンを検出できるか否かを定期的に確認する動作である。
レジスタ部207は、1次側の動作パラメータであるパラメータ1を格納するパラメータ1レジスタ209と、情報交換によって2次側から送られてくる2次側の動作パラメータであるパラメータ2を格納するパラメータレジスタ210と、通信や充電等に関するステータスを格納するステータスレジスタ211と、通信コマンド等を格納するコマンドレジスタ212と、通信データ等を格納するデータレジスタ213と、通信や充電等に関する割り込み要求を格納する割り込みレジスタ214と、テストのための情報(テストモードやテスト条件を決定するビット情報等)が設定される、テスト用メモリ(テスト情報設定部)としてのテストレジスタ216と、を有する。
テストレジスタ216は、テスト情報設定部として機能する。テスト情報設定部としてのテストレジスタ216は、第1強制送電モード(フォースモード)設定部(後述)を有しており、この第1強制送電モード設定部に、第1強制送電モードをイネーブルにする切り換え情報を設定することによって、送電装置200を強制連続送電状態とすることができる。なお、第1強制送電モードがディスエーブルのときは、送電装置200は待機状態を維持し、待機状態では、送電装置200は、受電側機器の着地を検出するための間欠送電(例えば、0.3秒に1回の送電)を実行する。
なお、テスト情報設定部は、書き込み可能なメモリによって構成することができる。例えば、メモリのメモリ空間が複数のメモリ領域に区分され、区分された各メモリ領域が、テストのための動作モードや動作条件等を決定(選択)するための設定部として機能する。具体的には、例えば、メモリの所定アドレスの所定ビットに“1”,“0”のどちらの切り換え情報を設定するかによって、上記の第1強制送電モード(フォースモード)のイネーブル/ディスエーブルを決定することができる。
より具体的には、テストレジスタ216における所定アドレスの所定ビットに情報ビットが書き込まれることによって、テストのための情報(テストモードやテスト条件等を指定する情報)の設定が実現される。テスト情報設定部をテストレジスタ216によって構成することによって、テスト条件の設定が容易化される。
なお、テストレジスタ216は、例えば、テストのための情報を書き込むことができ、その書き込まれた情報を保持することができる、比較的構成が簡単な記憶装置である。また、テストレジスタ216へのライトアクセスは、誤った条件設定等を防止するために、テストモード設定回路206によって、テストモードが選択されたときにのみ許可されるのが望ましい。なお、テストモード設定回路206には、信号端子P5,P6を介して、テストモード信号(TEST)およびテストモードクロック(TMCK)が供給される。
テストレジスタ216の採用は、送電装置200の構成の簡素化や小型化に寄与し、また、コストの抑制にも寄与する。
上述のとおり、送電装置200は、送電側ホスト100と通信を行うためのホストインタフェース204を有しており、送電側ホスト100は、ホストインタフェース204を介してテスト情報設定部としてのテストレジスタ216にアクセスすることができる。ホストインタフェース204を設けることによって、送電側ホスト(例えば、試験装置のホストコンピュータ、あるいは、無接点電力伝送システムを利用する上位装置等)100が、テストレジスタ216にアクセスして、試験モードや試験条件を指定することが可能となる。これによって、送電側ホスト100が、送電装置200の試験を主導することが可能となる。
なお、送電側ホスト100とホストインタフェース204とは、2線式のシリアル通信によって、双方向通信が可能なI2Cインターフェイスなどがある。I2Cインタフェースでは、割り込み信号(XINT)の供給ラインと、シリアルクロック(SCL)の供給ラインと、シリアルデータ(SDA)の供給ラインとが使用される。なお、各ラインは、プルアップ抵抗を介して電源電圧VD1にプルアップされる。
なお、本実施形態では、送電側ホスト100がテストレジスタ216にアクセスする構成としているが、これに限定されるものではなく、送電側ホスト以外の他の外部の装置が、テストレジスタ216にアクセスできるようにしてもよい。「外部の装置」は、例えば、無接点電力伝送システムのための試験装置(テスタ)であり、あるいは、送電装置の試験専用の試験条件発生器等である。外部の装置がテストレジスタ216にアクセス可能とするために、送電装置200にインタフェース部を設けることが可能である。また、例えば、送電装置200にテスト専用端子(テストピン)を設けて、その専用端子を経由して、動作モードの設定情報等をテストレジスタ216に直接に書き込むことができるようにすることも可能である。これによって、例えば、試験装置等が主体的に条件を定め、送電装置の動作試験を主導的に遂行できるようになる。
また、図3の送電装置200には、送電制御装置(IC)230のリセットを行うためのリセット信号(ピンリセット信号)PNRSを入力するための、リセット信号入力端子P4が設けられている。リセット信号(ピンリセット信号)PNRSがアクティブとなると、図3中の一点鎖線の右側に位置する回路がリセット状態となる。
送電装置200のパワーオンリセット後、リセット信号(ピンリセット信号)PNRSによる送電制御装置230のリセット解除前の期間において、テスト情報設定部としてのテストレジスタ216にテストのための情報が書き込まれ、そして、テストのための情報の書き込み完了後に、リセット信号(ピンリセット信号)PNRSによる送電制御装置230のリセットが解除される。
すなわち、テストレジスタ216へのライトアクセスは、例えば、テストモードが選択されたときのみ許可され、かつ、そのライトアクセスは、例えば、パワーオンリセット解除後であって、送電制御装置のリセットが解除される前の期間において行うことが可能である。パワーオンリセットは、電源投入直後においては、フリップフロップの動作が安定しないことから、パワーオンリセット回路によって、フリップフロップの初期設定を実行する動作である。
パワーオンリセットによって、テストレジスタ216の動作が安定する。また、テストレジスタ216に情報を書き込むと同時に、その書き込み情報にしたがって送電装置200が動作を開始することを防止するために、テストレジスタ216への、テストのための情報の書き込みは、送電制御装置230をリセットした状態で行う。そして、すべての情報設定が完了した後に、送電制御装置230のリセットを解除する。送電制御装置は、リセットが解除されると、所定期間経過後に、テストレジスタ216に設定された情報に従って送電装置200を制御し、これによって、所望の条件によるテストのための送電が実行される。
送電装置200が、送電制御装置230をリセットするためのリセット信号入力端子P4を有することによって、送電制御装置230のリセットを所望のタイミングで行うことができる。よって、所望のタイミングで、テスト情報設定部としてのテストレジスタ216に必要な情報を設定することが可能となる。
また、図3に示される受電装置(2次側モジュール)300は、2次コイルL2と、受電部302と、負荷変調部304と、バッテリ(負荷)316への給電を制御する給電制御部306と、受電制御装置308と、システムバスBUS2と、位置や周波数の検出回路310と、ホストインタフェース312と、レジスタ部314と、を有する。受電側ホスト400は、ホストインタフェース312を介して、受電装置300との間で双方向通信を行うことができる。
(テストレジスタの構成例)
図4は、テストレジスタの構成例を示す図である。テストレジスタ216のメモリ領域は、アドレスA〜Dに区分される。各アドレスのメモリ領域は8ビットで構成される。アドレスAの名称はデフォルト設定1であり、アドレスBの名称はデフォルト設定2であり、アドレスCの名称はテストコマンド設定1であり、アドレスDの名称はテストコマンド設定2である。
図4において、アドレスAのビット7は、第1強制送電モード(フォースモード)のイネーブル/ディスエーブルの切り換え情報(“1”または“0”)が設定される。したがって、アドレスAのビット7は、第1強制送電モード(フォースモード)設定部として機能する。フォースモードビットが“1”のとき、第1強制送電モードがイネーブルとなる。
アドレスAのビット3〜ビット6は、1次コイルL1の駆動周波数F1の周波数値を設定する設定部である。アドレスBのビット4〜ビット6は、1次コイルL1の駆動周波数F2の周波数値を設定する設定部である。アドレスBのビット0〜ビット2は、1次コイルL1の駆動周波数F3の周波数値を設定する設定部である。
なお、駆動周波数F1,F2は、通常送電中において、周波数変調による通信に使用される周波数である。また、駆動周波数F3は、例えば、異物検知の際に用いられる周波数であり、温度検知機能試験に応用して用いることもできるので、その周波数値は、F1,F2によりも、1次コイルL1の共振周波数に近い周波数値に設定される。
アドレスCのビット5は、第2強制送電モードの設定情報の一つであるネゴオン情報の設定部である。アドレスCのビットアドレスCのビット6は、第2強制送電モードの設定情報の一つであるセットアップ情報の設定部である。フォースモードビットが“0”であり、ネゴオンビットが“0”かつセットアップオンビットが“0”のとき、第2強制送電モードがイネーブルとなる。
また、アドレスCのビット4は、1次コイルL1の駆動の有無(オン/オフ)を強制的に設定するためのドライバオン情報(コイル駆動イネーブル情報)を設定するためのコイルイネーブル設定部である。
また、アドレスDのビット1〜ビット7は、1次コイルL1の駆動パターンを指定する情報の設定部である。例えば、駆動周波数F1による連続駆動、駆動周波数F2による連続駆動、駆動周波数F3による連続駆動、内部生成したランダム符号に基づくF1F2間の周波数切り換え(FSK)による駆動、外部から入力されるランダム符号に基づくF1F2間の周波数切り換え(FSK)による駆動、内部生成したランダム符号に基づくF1F3間の周波数切り換え(FSK)による駆動、外部から入力されるランダム符号に基づくF1F3間の周波数切り換え(FSK)による駆動等を選択(指定)することが可能である。
図5は、第1強制送電モードおよび第2強制送電モードの設定について説明するための図である。上述のとおり、フォースモードビットが“1”のとき、第1強制送電モードがイネーブルとなる。また、フォースモードビットが“0”であり、ネゴオンビットが“0”かつセットアップオンビットが“0”のとき、第2強制送電モードがイネーブルとなる。また、フォースモードビットが“0”であり、ネゴオンビットが“1”かつセットアップオンビットが“1”のとき、通常送電モードに切り換わる。
テストモード時において、メインシーケンサ236は、テストレジスタ216に設定されたビット情報を読み取って、設定されたビット情報に対応した駆動モードを実行する。すなわち、メインシーケンサ236は、送電シーケンス制御部232に指令を送り、送電シーケンス制御部232は、送電部250内の駆動制御回路252に制御信号を出力する。これによって、テストレジスタ216に設定されたビット情報に対応する、テスト用の1次コイルL1の駆動が実現される。
(第1強制送電モードについての説明)
図6を参照して、第1強制送電モードについて説明する。図6は、テスト時における送電装置の動作手順例を示すフロー図である。送電装置200は、電源が投入されると(ステップS10)、2次側機器の着地検出のための仮送電(間欠送電)を開始する(ステップS11)が、第1強制送電モードが選択されている場合には、仮送電後、その送電状態が無制限に継続される。つまり、間欠送電ではなく、連続送電に切り換わり(ステップS31)、これによって、第1強制送電モードによる1次コイルL1の駆動が実現される。
すなわち、第1強制送電モードでは、受電装置300が設けられない状態であっても、送電装置200を強制的に連続送電状態とすることができ、送電装置200単独での試験が可能となる。また、第1強制送電モードが選択されると、2次側機器に設けられる受電装置300(受電装置300が、2次側機器に一体的に取り付けられる場合もあり得る)との間でのID情報等の交換をすることなく、待機状態の送電装置200を、ただちに連続送電状態に移行させることができる。よって、送電装置200の試験の効率を高めることができる。
送電装置200の試験としては、例えば、送電装置200のメーカが実施する消費電力測定試験、伝送能力試験や温度検知機能確認試験、あるいは公的機関による適合性や安全性等の試験(公的認証試験)等があげられる。公的認証試験は、具体的には、例えば、送電装置の電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic Compatibility)試験である(試験内容については後述する)。
(第2強制送電モードについての説明)
第2強制送電モードは、送電装置200と受電装置300を対向配置した状態で送電装置200の試験を行う場合に使用することができる。この場合には、送電装置200を、認証処理を経て、可能な限り早く、連続送電モードに移行させること、ならびに、受電装置300を、認証処理を経て、可能な限り早く、かつ確実に受電モードに移行させることが重要である。また、送電装置200の連続送電モード時においては、連続送電を、1次側が主体的に制御する(1次側が主導する)ことが望ましい。
以下、具体的に説明する。例えば、送電装置200の伝送能力を試験するとき、送電装置200から受電装置300に連続送電し、受電装置300に接続される負荷(バッテリ316等)に期待値どおりの給電がされているか否かを判定する必要するがある。この試験は、送電装置200の伝送能力のための試験であり、送電装置200と受電装置300との間のID認証処理の正確性等は、特に問題とされない(ID認証処理の正確性等については、別途、試験すればよいだけである)。したがって、送電装置200の伝送能力試験の効率を向上させるためには、送電装置200が、できるだけ早く認証処理を完了させて連続送電状態に移行することが望ましい。
そこで、第2強制送電モードが選択されると、送電装置200と受電装置300は、認証情報の交換を行うものの、送電装置は、受け取った認証情報に基づく1次側(送電装置)200と2次側(受電装置)300との適合性の確認(すなわち、例えば受け取った受電装置側のID認証情報と、送電装置内に予め用意されているID認証情報との照合処理)を省略する。これによって、認証情報に基づく適合確認(ID情報の一致確認のための照合処理等を含む)のための時間が必要なくなり、待機状態の送電装置が連続送電に移行するまでの時間を短縮することができる。
また、通常動作時には、ID認証情報等の交換によって受電装置300の性能等が明らかになると、受電装置300の性能等に適合するように送電装置200の送電特性が調整される。すなわち、送電装置200の送電特性は、2次側から送られてきた情報に基づいて制約を受けることになり、この点が、送電装置200の試験では障害となる。すなわち、送電装置200の試験を行うときは、送電装置200の送電特性は、送電装置側が主体的に決定できるようにするのが好ましい。そこで、第2強制送電モードが選択されたときは、2次側から受け取った情報を無視して、送電装置側で用意した動作情報に基づいて連続送電を実行させる。これによって、送電装置200の送電特性を、送電装置側が主体的に決定することができる。
また、受電装置300において、例えば、1次側から受け取ったID認証情報の一致確認ができないと、ID認証失敗となり、この場合には、送電装置200は受電装置300に対する送電を開始することができず、よって、送電装置200の伝送能力試験を行うことができない。そこで、このような事態が生じないようにするために、第2強制送電モードが選択されたときは、送電装置300は、受電装置を確実に(あるいは強制的に)受電モードにするための認証情報を受電装置に送信する。
ここで、「受電装置を確実に(あるいは強制的に)受電モードにするための認証情報」は、例えば、受電装置がID認証可能な(つまり、受電装置における認証処理の成功が確実な)、予め定められているID情報であり、そのID情報は、例えば、送電装置200に予め用意されている。また、その認証情報を送電装置200に予め用意する代わりに、受電装置300から送られてきたID認証情報をそのまま送り返すようにしてもよい。
すなわち、受電装置300は、自機のID情報は必ず保有していることから、送電装置200から返信されてきた自己のID認証情報と、自機が保有しているID情報との一致確認を行えば、必ず一致が確認されてID認証が成功するはずである。これによって、第2強制送電モードが選択されたときは、受電装置300におけるID認証が確実に完了して、受電装置300が必ず、かつ迅速に、連続送電を受電する受電モードになる(すなわち、受電装置は、確実に受電モードにされる)。したがって、受電装置側のID認証失敗によって、送電装置の試験が続行できないという事態は生じない。
このようにして、送電装置と受電装置とを対向させた状態で行う送電装置の試験の効率化を図ることができる。なお、上述した送電装置の機能は、受電装置の動作試験等にも有効である。
以下、図6を参照して、第2強制送電モードが選択された時の、送電装置200の具体的な動作手順について説明する。図6において、太い点線で囲まれて示されるステップS29の処理が、第2強制送電モードにおける処理である。
図6において、仮送電(ステップS11)後、ネゴシエーションフェーズとセットアップフェーズの2段階の処理を経て、送電装置200は、連続送電状態に移行する(ステップS12〜S17)。ステップS12は、着地検知処理であり、ステップS13はネゴシエーションフレームの受信処理であり、ステップS14は、ネゴシエーション処理であり、ステップS16は、セットアップフレームの受信処理であり、ステップS17はセットアップ処理であり、ステップS19は、セットアップ処理後に連続送電に移行する処理である。
また、受電装置300は、電源が投入されると(ステップS20)、ネゴフレームの送信(ステップS21)やセットアップフレームの送信(ステップS23)等を実行する。
上述のとおり、ネゴシエーションフェーズでは、例えば、ID情報や安全上の情報を含む第1情報の交換が行われ、例えば、規格/コイル/システムの適合確認が実行される。また、セットアップフェーズでは、例えば、対応する機能の確認や、アプリケーション別の具体的な情報の交換と設定が実行される。
第2強制送電モードがイネーブルのとき、すなわち、ネゴオンビットが“0”,セットアップオンビットが“0”のとき、ネゴシエーション処理(ステップS14)では、送電装置における、例えばID情報に基づく適合確認が省略される。すなわち、ステップS14において、受電装置300から送信されてきたID情報等は、例えば、パラメータ2として、レジスタ部207のパラメータ2レジスタ210(図3参照)に格納される。但し、1次側オリジナルコードとの照合処理は省略される。これによって、ID情報の適合確認(一致確認)のための時間が必要なくなり、待機状態の送電装置が連続送電に移行するまでの時間を短縮することができる。なお、適合確認の処理が複数あるとき、それら複数の処理の全部を省略することができ、また、それら複数の処理のうちの一部のみを省略することもできる。
また、セットアップ処理(ステップS17)では、送電装置200は、送電制御装置230による制御の下で、受電装置300から送信されてきた動作情報を無効とし、セットアップが無事に終了したか否か(セットアップOK)の確認をしない。代わりに、送電装置側で用意した動作情報に基づいて動作条件の設定処理を実行する。
そして、その後、送電装置側で用意した動作情報によって設定された動作条件に基づく連続送電を実行する(ステップS18)。これによって、送電装置200の送電特性を、送電装置側が主体的に決定することができる。このようにして、送電装置200と受電装置300とを対向させた状態で行う送電装置の試験の効率化を図ることができる。なお、上述した送電装置200の機能は、受電装置300自体の動作試験等にも有効である。
(第2の実施形態)
本実施形態では、図7および図8を用いて、第1強制送電モード選択時の処理ならびに第2強制送電モード選択時の処理について説明する。図7および図8は、第1強制送電モード選択時の具体的な処理ならびに第2強制送電モード選択時の具体的な処理を説明するためのフロー図である。図7,図8において、左側に1次側の処理フローが示され、右側に2次側の処理フローが示されている。
まず、図7の処理フローについて説明する。送電制御装置230は、k1秒のウェイト(ステップS30)の後、送電装置200を制御して、周波数F1による仮送電を開始させ(ステップS31)、続いて、フォースモードビット(第1強制送電モードビット)が“1”であるか否かを判定する(ステップS32)。フォースモードビット(第1強制送電モードビット)が“1”ならば、送電制御装置230は、送電装置200を制御して、テストレジスタ216におけるアドレスDのビット3〜ビット1(図4参照)で選択された周波数による強制的な連続送電を実行させる。
2次側機器の着地検知(ステップS34)の後、送電装置200は、ネゴフレームを受信する(ステップS35)。送電制御装置230は、第2強制送電モードビットであるネゴオンビットが“1”であるか否かを判定する(ステップS36)。ネゴオンビットが“1”のときは、ネゴシエーション処理によって取得されたID情報(ネゴ情報)の一致確認が実行され(ステップS37)、ネゴオンビットが“0”のときは、ネゴシエーション処理によって取得されたID情報(ネゴ情報)の一致確認は省略される。
続いて、送電制御装置230は、1次側機器と2次側機器の位置情報を確認し(ステップS38)、続いて、異物の有無を確認する(ステップS39)。異物が検出されないときは、送電制御装置230は、送電装置200を制御して、ネゴフレーム(規格/コイル/システム情報を含む)を、2次側に向けて送信させる(ステップS40)。
ステップS40において送信されるネゴフレームに含まれるID情報は、受電装置300を確実に受電モードにするための認証情報である。上述したとおり、受電装置を確実に受電モードにするための認証情報は、例えば、受電装置300がID認証可能な(つまり、受電装置300における認証処理の成功が確実な)、予め定められているID情報であり、そのID情報は、例えば、送電装置200に予め用意されている。また、その認証情報を送電装置200に予め用意する代わりに、受電装置300から送られてきたID認証情報をそのまま送り返すようにしてもよい。
また、図7の右側に示されるように、受電装置300では、ステップS60〜ステップS65の各処理が実行される。k2秒のウェイト(ステップS60)の後、電力の受電によって受電装置300がパワーオン状態となる(ステップS61)。受電制御装置308は、負荷変調トランジスタをオフ状態とした後(ステップS62)、位置確認を実行し(ステップS63)、受電装置300を制御して、ネゴフレームを送電装置200に向けて送信させる(ステップS64)。その後、受電装置300は、送電装置200から送られてくるネゴフレームを受信する(ステップS65)。
続いて、図8の処理フローについて説明する。送電装置200は、セットアップフレームを受信する(ステップS41)。送電制御装置230は、セットアップオンビットが“1”であるか否かを判定し(ステップS42)、セットアップオンビットが“1”であるときは、セットアップが適正に終了したか否かの確認を行う(ステップS43)が、セットアップオンビットが“0”であるときは、ステップS42の確認処理を省略する(第2強制送電モードの処理(3))。続いて、送電制御装置230は、送電装置200を制御して、セットアップフレームを2次側に向けて送信させる(ステップS44)。続いて、送電制御装置230は、位置確認を行う(ステップS45)。次に、送電装置200は、2次側から送られてくるスタートフレームを受信する(ステップS46)。
次に、送電制御装置230は、ネゴオンビットが“1”かつセットオンビットが“1”であるか否か(すなわち、第2強制送電モードがディスエーブルであるかイネーブルであるか)を検出する(ステップS47)。ネゴオンビットが“1”かつセットオンビットが“1”であるとき(すなわち、第2強制送電モードがディスエーブルのとき)は、送電制御装置230は、送電装置200を制御して、通常送電用(充電用)の条件に切り換えさせ(ステップS48)、定期認証をオンさせ(ステップS49)、通常送電(すなわち、2次側から受信したパラメータ2に基づく連続送電:例えば、周波数F1)を開始させる(ステップS50)。
一方、ステップS47において、ネゴオンビットが“0”かつセットオンビットが“0”であるとき(すなわち、第2強制送電モードがイネーブルのとき)は、送電制御装置230は、送電装置200を制御して、1次側設定条件(つまり、1次側固有のパラメータ1によって定まる条件による)による連続送電(例えば周波数F1)を、期限を設けることなく継続させる(ステップS51)。ステップS47およびステップS51の処理が、第2強制送電モードによる処理(4)に該当する。続いて、送電制御装置230は、送電装置200を制御して、定期認証をオンさせる(ステップS52)。
また、図8において、受電装置300は、ネゴシエーションフレームの確認(ステップS66)、位置確認(ステップS67)、セットアップフレームの送信(ステップS68)、セットアップフレームの受信(ステップS69)、セットアップOKの確認(ステップS70)、スタートフレーム送信(ステップS71)等を実行する。
(第3の実施形態)
本実施形態では、待機時の消費電力測定試験、温度検知機能試験、公的機関認証試験、ならびに、伝送能力試験等について説明する。
(待機時における送電装置の消費電力試験)
待機時における送電装置200の消費電力試験では、受電装置300が対向配置されていない状態で、第1強制送電モードをイネーブルとして、1次コイルL1の連続発振を可能とし、さらに、テストレジスタ216における、コイル駆動イネーブル設定部への情報設定(すなわち、図4におけるドライバオンビットを“1”または“0”とすること)によって、1次コイルL1の駆動をオン/オフして、1次コイル駆動オン時の消費電力と、1次コイル駆動オフ時の消費電力と、を測定する。
上述のとおり、第1強制連続送電モードによって、1次コイルの強制的な連続駆動が可能となるが、送電装置200の試験においては、1次コイルの駆動を強制的に停止することが必要となる場合がある。つまり、待機フェーズにおける送電装置200の消費電力を測定する場合には、1次コイルL1の駆動のオン/オフを切り換えることができると、より信頼性の高い消費電力測定が可能となる。すなわち、待機時における送電装置200は、受電側機器の着地を検出するために、間欠送電(例えば、0.3秒毎に5m秒だけ1次コイルが駆動される)が実行される。待機時の消費電力は、所定時間における平均電力の測定によって知ることができるが、平均電力では、コイル駆動がなされない期間(上記の例では、0.3秒の期間)における消費電力と、コイル駆動がされている期間(上記の例では、5m秒の期間)における消費電力とを区別して測定することができず、かつ、各々の期間における定常的な消費電力を測定することができない。
しかし、本実施形態によれば、テストレジスタ216におけるコイル駆動イネーブル設定部に、コイル駆動のオン/オフの切り換え情報(ドライバオンビット)を設定することによって、コイル駆動を、強制的にオン/オフすることができる。例えば、第1強制送電モードがイネーブル、コイル駆動イネーブルがオンのとき、送電部250における駆動制御回路252において、システムクロックSCKに基づいて1次コイルの駆動クロックDRCKが生成され、駆動クロックDRCKが1次コイルのドライバ254に供給されて、1次コイルL1が連続駆動される。
次に、第1強制送電モードがイネーブル、コイル駆動イネーブルがオフになると、回路へのシステムクロックSCKの供給は継続されるものの、1次コイルL1の駆動クロックDRCKの生成またはドライバ254への駆動クロックDRCKの供給が停止され、1次コイルL1の駆動が強制的に停止される。
したがって、第1強制送電モードをイネーブルにした状態で、コイル駆動イネーブルのオン/オフを、テストレジスタ216へのドライバオンビットの設定によって選択することによって、待機時における、コイル駆動がなされない期間における送電装置の消費電力と、コイル駆動がされている期間における送電装置の消費電力とを区別して測定することができ、また、各々の期間における定常的な消費電力を測定することができる。よって、待機フェーズにおける送電装置の、より詳細な消費電力測定が可能となる。
(温度検知機能試験)
温度検知機能試験では、受電装置300が対向配置されていない状態で、第1強制送電モードをイネーブルとして、1次コイルL1を、通常送電時における通信に用いられる通信周波数(F1,F2)よりも、1次コイルL1の共振周波数に近い周波数で連続駆動する。そして、連続駆動による発熱による温度上昇を、送電装置200に設けられる温度検知部(例えば、図3のサーミスタ220)によって検知して、温度検知機能試験を行う。
温度検知機能試験は、送電装置200に備わる温度検知機能が、正常に機能するか否かを判定する試験である。例えば、送電装置200の異常発熱等によって、送電装置200の温度がしきい値を超えて高くなったときは、安全確保のために、送電装置200の動作を強制的にオフする必要があり、したがって、送電装置200には、一般に、温度検知機能が設けられる。温度検知機能試験は、例えば、送電装置200を、温度を自在に設定することが可能な温度試験装置内に設置することによって行うことができるが、この場合、温度試験装置が必須であり、試験に要するコストが高くなる。
しかし、本実施形態によれば、第1強制送電モードをイネーブルとして、1次コイルを、通常送電時において通信に用いられる通信周波数(F1,F2)よりも、1次コイルの共振周波数に近い周波数で連続駆動し、その連続駆動による発熱による温度上昇を、送電装置200に設けられる温度検知部(サーミスタ220)によって検知して、温度検知機能試験を行うことができる。
すなわち、1次コイルL1が2次コイルL2と電磁結合しない状態では、共振周波数の変化によって1次コイルL1の駆動振幅が増大し、かつ、通信周波数(周波数変調用の周波数F1,F2)よりも、1次コイルの共振周波数により近い周波数で1次コイルL1を駆動することによって、1次コイルL1の駆動振幅をさらに増大させることができる。したがって、送電装置200の温度を、短時間に高温にすることができる。よって、特別な装置を使用することなく、送電装置200の温度検知機能試験を行うことができる。
ここで、温度試験のための連続駆動周波数としては、周波数F3を用いることができる。先に図4を用いて説明したように、テストレジスタ216のアドレスDのビット3への情報ビットの設定によって、1次コイルL1を、周波数F3で連続駆動することが可能である。周波数F3は、例えば、異物検知用の周波数(例えば、異物挿入時において、1次コイルから得られる信号の位相変化を顕在化することができる周波数)であり、このF3は、1次側から2次側への、周波数変調による通信に用いられる周波数F1,F2よりも、1次コイルの共振周波数により近い周波数であることから、温度検知機能試験のためにも利用することができる。但し、1次コイルの共振周波数により近い周波数による1次コイルの連続駆動を実現する方法は、これに限定されものではない。例えば、図4に示されるように、テストレジスタ216のアドレスAのビット6〜ビット3への情報ビットの設定によって、周波数F1を、一時的に、より共振周波数に近い周波数に変更し、その変更後の周波数F1を使用するという方法を実行することもできる。
(送電装置の伝送能力試験)
送電装置の伝送能力試験では、負荷(バッテリ316)が接続されている受電装置300が対向配置されている状態で、第2強制送電モードをイネーブルとし、認証処理(ネゴシエーションフェーズおよびセットアップフェーズ)を経て、1次コイルL1を連続駆動し、1次コイルL1ならびに受電装置に設けられる2次コイルL2を介して、送電装置から受電装置に電力を伝送し、受電装置に接続されている負荷(バッテリ316)に対して、期待値どおりの給電が実行されるか否かを判定することによって、送電装置200の伝送能力を試験する。上述のとおり、第2強制送電モードを利用することによって、伝送能力試験を効率的に実施することができる。
(公的機関による認証試験)
各国の公的機関によって実施される認証試験としては、例えば、送電装置の電磁環境適合性(EMC:Electro-Magnetic Compatibility)試験がある。
送電装置の電磁環境適合性(EMC)とは、送電装置200が備える、電磁的な不干渉性および耐性のことである。電磁的な不干渉性とは、ある機器が動作することによって他の機器の動作を阻害したり、人体に影響を与える一定レベル以上の干渉源となる電磁妨害(EMI:Electro Magnetic Interference)を生じないことをいう。
また、電磁的な耐性とは、付近にある電気機器などから発生する電磁波などによって、自身の動作が阻害されない電磁感受性(EMS:Electro Magnetic Susceptibility)を持つことをいう。
送電装置200のEMC試験が実施されるときは、送電装置200は、例えば、電波暗室内のターンテーブル上に載置される。電波暗室では、電子機器から放射される電波が壁面で反射せず、かつ、外部からの電波の侵入が遮断される。この電波暗室を利用して、電磁シールド特性やイミュニティ(耐性)試験を効果的に実施することができる。
具体的には、受電装置300が対向配置されていない状態で、第1強制送電モードをイネーブルとし、1次コイルL1を、所望の駆動周波数および駆動パターンで強制的に連続駆動し、これによって、送電装置の電磁環境適合性(EMC)を検査する。第1強制送電モードを利用することによって、EMC試験等を効率的に実施することができる。
以上説明したように、本発明のいくつかの実施形態によれば、送電装置の試験を、効率的かつ確実に実行することが可能となる。また、必要な試験を、より容易に、あるいは、より高精度に行うことが可能となる。
なお、本実施形態について詳述したが、本発明の新規事項および効果から逸脱しない範囲で、多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、すべて本発明に含まれるものとする。