JP5327974B2 - 無線装置、無線システム及び秘匿通信方法 - Google Patents
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Description
技術分野は、無線装置間の通信に関し、特に通信内容が傍受されることを防止する秘匿通信に関する。
通信内容が傍受されることを防止する秘匿通信には、様々な方式が採用されている。例えば、秘匿処理のアルゴリズム自身を秘密にする方式がある。また、アルゴリズムは公開しつつ秘匿処理に用いる鍵を秘密にする方式もある。さらに、秘密鍵を用いる方式には、無線局間における電波の伝搬路特性を用いて秘密鍵を生成し、生成した鍵を用いて暗号通信を行う技術がある(特許文献1参照)。
特開2004−187197号公報
10 送信局(無線装置)
12 送信処理部
13 伝搬路特性測定部
20 受信局(無線装置)
21 受信処理部
23 測定用信号生成部
121 QPSK変調部
122 マルチキャリア拡散部
123 事前歪補償部
124 IFFT
125、127 ガードインターバル挿入部
126 OFDM変調部
128 レベル調整部
211 カバー信号除去部
212 ガードインターバル除去部
213 FFT
214 逆拡散部
215 QPSK復調部
1231 位相補償部
1232 振幅補償部
1261 シリアル・パラレル変換部
1262 IFFT
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1261 シリアル・パラレル変換部
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図1は本実施の形態の秘匿通信システム100の概要を示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態の秘匿通信システム100(無線システム)は、秘匿信号の送信局(以下、「送信局」という)10、秘匿信号の受信局(以下、「受信局」という)20を備えている。なお、図1では、1つの送信局10(第1の無線装置)及び受信局20(第2の無線装置)で構成されているが、それぞれ対応する送信局10と受信局20との組が複数あってもよい。また、送信局10、受信局20は、基地局でもよく、あるいは移動局でもよい。送信局10と受信局20は、両者間の伝搬路を介して無線による秘匿通信を行う。秘匿通信システム100は、送信局10から受信局20へ送信される秘匿情報が、盗聴局50により傍受されることを防止するものである。
より具体的には、送信局10は、秘匿情報が含まれる秘匿信号(埋め込み信号)をカバー信号(重畳信号)に埋め込み、秘匿信号が埋め込まれたカバー信号を伝送信号として受信局20へ送信することにより、秘匿信号の存在が盗聴局50で検知されないようにする。すなわち、無線通信における通常の伝送信号(秘匿信号ではない)にカバー信号の役割を与え、この伝送信号に秘匿信号を微小電力で多重して埋め込むことにより、秘匿信号の存在を秘匿することができる。この場合、送信局10は、後述するように秘匿信号を雑音と区別できないように処理を施して受信局20へ送信する。これを信号秘匿と称する。
また、送信局10は、仮に盗聴局50がカバー信号を推定することができ、カバー信号のみをほぼ除去可能であり、秘匿信号の存在を検知できた場合であっても、送信局10と受信局20との間の伝搬路特性の可逆性及び遅延歪みを利用した歪補償を予め秘匿信号に対して施すことにより、盗聴局50が秘匿信号に含まれる秘匿情報を抽出することができないようにする。これを秘匿情報の秘密性と称する。このように、本実施の形態の秘匿通信システム100は、信号秘匿と秘匿情報の秘密性という二重の秘匿技術を用いることにより、盗聴に対する安全な通信の実現を図ることができる。
次に、秘匿通信システム100が行う秘匿通信の原理について説明する。図2は送信局10及び受信局20の内部構成の概要を示すブロック図である。送信局10は、秘匿情報(秘匿データ)に対して、所定の拡散符号により複数の異なる周波数のサブキャリア毎の拡散処理(マルチキャリア拡散処理)を行うことにより、拡散処理後の秘匿信号の時間波形が雑音に近い時間波形となるようにする。盗聴局50において、仮に伝送信号(カバー信号)を推定することができ、カバー信号のみを除去した場合であっても、カバー信号除去後の秘匿信号は雑音と非常に近い波形となることから、秘匿信号の存在を検出することができず、秘匿信号の秘匿性(信号秘匿)を高めることができる。
送信局10は、マルチキャリア拡散処理後の信号に対して、伝搬路特性の測定結果に応じた事前歪補償を行う。すなわち、送信局10と受信局20との間の通信では、送信局10と受信局20間の電波の伝搬路特性(例えば、伝搬経路、信号の減衰量、信号の遅延時間など)に依存して、受信した信号の電界強度の変動(マルチパスフェージング)が発生する。特に、移動通信においては、マルチパスフェージングが顕著に現われる場合がある。
マルチパスフェージングの時間的あるいは空間的変動により、時間又は場所が異なる場合、送信局10と受信局20との間の伝搬路特性が無相関となる。例えば、マルチパスフェージングの時間的変動速度は、百〜数百Hz程度である場合があり、数十m秒時間が異なれば、伝搬路特性は無相関となる。また、送信局10と受信局20との間の離隔距離が信号の半波長程度異なる場合、伝搬路特性は無相関となる。さらに、電波伝搬において、一般には特定の送受信点の間で可逆性が成り立つ。すなわち、送信局10と受信局20との間の電波の伝搬方向が逆になった場合でも、送信局10と受信局20との間の伝搬路特性は変わらない。
従って、正規の送信局10と受信局20との間における伝搬路特性は、両者間で相関がある。しかし、受信地点が受信局20と異なる盗聴局50では、伝搬路特性が無相関になる。このため、正規の送信局10と受信局20との間と、送信局10と盗聴局50との間とでは、伝搬路における信号の歪(例えば、位相の歪、振幅の歪など)は異なる。
送信局10から受信局20へ秘匿信号が埋め込まれた伝送信号(カバー信号)を送信する場合、送信した秘匿信号が送信局10と受信局20との間の伝搬路を経ることにより歪むことを予め考慮して、送信する秘匿信号に予め歪補償を施す。これにより、受信局20では、秘匿信号の受信時に伝搬路での歪が相殺され、秘匿信号を正しく受信することができる。しかし、盗聴局50では、伝搬路における歪が異なるため、秘匿信号がさらに歪むことになる。そのため、受信局20では、正しく秘匿信号を受信して秘匿情報を取り出すことができるのに対して、盗聴局50では、秘匿情報から秘匿情報を取り出すことができない。これにより、秘匿情報の秘密性を保つことが可能となる。
送信局10がカバー信号に秘匿信号を埋め込んで受信局20へ送信する場合、受信局20は、予め秘匿信号に対する伝搬路特性を測定するための測定用信号を生成し、生成した測定用信号を送信局10へ送信する。なお、測定用信号は、例えば、伝搬路の周波数特性が測定可能なMC−CDMA(Multi Carrier Code Division Multiple Access)信号である。
送信局10は、測定用信号を受信し、周波数の異なる各サブキャリアで構成される秘匿信号の各サブキャリアの周波数に対応する位相と振幅の変動量(伝搬路における歪)を測定する。送信局10は、測定した変動量に基づいて、送信する秘匿信号が受信局20で正しく受信できるように歪補償を行う。例えば、送信局10は受信した測定信号の位相歪を補償すべく逆位相を秘匿信号に乗算する。また、測定信号の振幅が大きい場合、送信する秘匿信号の電力を小さくする。
送信局10は、事前歪補償を施した秘匿信号に対してIFFT(逆高速フーリエ変換)を行う。上述の一連の処理により、秘匿情報は、周波数領域でサブキャリアにまたがって所定の拡散符号で拡散され、拡散符号のチップ(各符号)に応じて各サブキャリア周波数で変調され、別々のサブキャリアで送信される。これにより、秘匿信号の時間波形は、雑音と非常に近い波形となる。
送信局10は、IFFT後の秘匿信号にガードインターバルを挿入する。この場合、1シンボル区間の秘匿信号の間に挿入する信号は、通常行われているように秘匿信号を巡回的に拡張して、その部分を挿入するのではなく、秘匿信号と全く関連性のないランダムなダミー信号を挿入する。これにより、秘匿信号の自己相関を抑制することが可能となり、盗聴局50が秘匿信号の存在を検出することを一層困難にする。
送信局10は、秘匿信号に対してカバー信号を付加する。送信局10は、秘匿する必要のない非秘匿情報(カバーデータ)を生成し、生成したカバーデータに対してOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調を行うことによりカバー信号を生成する。送信局10は、秘匿信号を埋め込んだ(多重した)カバー信号を伝送信号として受信局20へ送信する。この場合、秘匿信号の電力はカバー信号の品質を劣化させない程度に小さくする。これにより、盗聴局50が、カバー信号の品質の劣化によりカバー信号以外に何らかの信号を埋め込まれていると推定することを防止する。
受信局20は、送信局10が送信した伝送信号を受信し、受信した伝送信号からカバー信号を除去するとともに、ガードインターバルを除去して秘匿信号を取り出す。受信局20は、秘匿信号に対してFFT(高速フーリエ変換)を行うとともに、逆拡散符号(拡散復調用符号)により逆拡散を行って元の秘匿情報を取り出す。
図3は送信局10の構成の一例を示すブロック図である。送信局10は、送信するデータ(秘匿情報である秘匿データ及び秘匿する必要のないカバーデータ)に対して所定の処理を行うデータ処理部11、データ処理部11から出力されたデータに対して送信処理する送信処理部12、測定用信号を受信して伝搬路特性を測定する伝搬路特性測定部13などを備える。
伝搬路特性測定部13は、受信した測定用信号に基づいて、周波数の異なる各サブキャリアで構成される秘匿信号の各サブキャリアの周波数に対応する位相と振幅の変動量(伝搬路における歪)を測定する。伝搬路特性測定部13は、測定した変動量を送信処理部12へ出力する。
図4は送信処理部12の構成の一例を示すブロック図である。送信処理部12は、QPSK変調部121、マルチキャリア拡散部122、事前歪補償部123、IFFT124、ガードインターバル挿入部125、レベル調整部128、OFDM変調部126、ガードインターバル挿入部127などを備えている。
QPSK変調部121は、入力されたデータ(秘匿情報、非秘匿情報)に対して、4相PSK(QPSK:Quadrature phase shift keying)変調を行い、2ビットのデータをお互いに直交(同相成分及び直交成分)の関係にある4つの位相のいずれかに変調する。QPSK変調部121は、変調した秘匿情報をマルチキャリア拡散部122へ出力し、変調した非秘匿情報(カバーデータ)をOFDM変調部126へ出力する。なお、位相変調は、QPSK変調に限定されるものではなく、2相PSK、8相PSK、16相PSKなどの変調方式でもよい。また、位相変調に限らず、振幅変調、振幅位相変調などの他の変調方式を用いることもできる。
マルチキャリア拡散部122は、Copier1221で秘匿情報の同じシンボル(秘匿データ)を周波数の異なる各サブキャリアに割り当て、所定の拡散符号(例えば、Walsh符号など)のチップに応じて、シンボルの一部を別々のサブキャリアに拡散して拡散信号を生成する。なお、この場合、伝搬路による振幅及び位相の補償を行うためのパイロットシンボルは付加しない。これにより、盗聴局50がパイロットシンボルを用いた伝搬路特性の推定により秘匿情報を検出する可能性を除去することができる。
次に拡散方法について説明する。図5は従来のMC−CDMAの場合の拡散方法の一例を示す説明図であり、図6は本実施の形態の拡散方法の一例を示す説明図である。図5及び図6において、横軸はサブキャリアの数を示し、縦軸は図中下方向に沿って時間経過を示す。図5及び図6の例では、サブキャリアの数は12であるが、これに限定されるものではない。まず、従来の拡散方法の場合の欠点について説明する。
秘匿信号を高速フーリエ変換して得られた拡散信号と逆拡散符号(拡散復調用符号)との相関(信号の自己相関)は、一般的には送信局10と受信局20との間では大きくなり、盗聴局50との間ではほぼ相関がない。しかし、送信局10と受信局20との間の伝搬路特性の歪みと、送信局10と盗聴局50との間の伝搬路特性の歪みとの関係により、相関が大きくなる確率がごくわずかある。また、伝搬路特性の時間的変化が少ない場合にも、相関が大きくなる確率がごくわずかある。
従来のMC−CDMAの場合は、サブキャリアの数が拡散符号の拡散率(図5の場合、6)の倍数であった。図5の例では、拡散率6の2倍がサブキャリア数に一致する。周波数領域のみで拡散する場合、図5に示すように、拡散させるサブキャリアのパターンが常に同じとなるため、同じ周波数で同じような歪みが与えられ、連続するシンボルR(1)、R(2)、R(3)、…で相関が生じる。このため、逆拡散処理後の秘匿信号の信号点が重なってしまい、盗聴局50でも自己相関の測定により秘匿信号の存在を検知することが可能となる。
これに対して、本実施の形態では、図6に示すように、サブキャリアの数が拡散符号の拡散率(図6の場合、5)の倍数と異なる。この場合、図6に示すように、拡散させるサブキャリアのパターンが異なるため、シンボル毎に加わる歪みが異なり、連続するシンボルR’(1)、R’(2)、R’(3)、…で相関がなくなる。すなわち、遅延歪みによる影響を拡散のチップごとに分散させる。ある程度の時間が経過した場合、拡散させるサブキャリアのパターンが同じものが現われるが、その間の時間経過により伝搬路特性も変わり、歪みの状況も変化するので、相関はなくなる。このため、逆拡散処理後の秘匿信号の信号点が分散し、盗聴局50で自己相関の測定を行っても秘匿信号の存在を検知することが不可能となる。
図6の例では、説明を簡略化するためサブキャリアの数を12としたが、サブキャリアの数はこれに限定されるものではなく、例えば、64など他の値を設定することができる。サブキャリアの数が64の場合には、拡散率の倍数が64にならないように設定すればよく、例えば、31、33、35などの値を用いることができる。
事前歪補償部123は、位相補償部1231、振幅補償部1232などを備える。位相補償部1231は、周波数の異なる各サブキャリアで構成される秘匿信号の各サブキャリアの周波数に対応する位相の変動量(伝搬路における歪)に応じて、拡散信号の位相を予め補償する処理を行う。例えば、位相補償部1231は、伝搬路における位相歪の逆位相を拡散信号に乗算する。また、振幅補償部1232は、周波数の異なる各サブキャリアで構成される秘匿信号の各サブキャリアの周波数に対応する振幅の変動量(伝搬路における歪)に応じて、拡散信号の振幅を予め補償する処理を行う。例えば、振幅補償部1232は、伝搬路特性により信号の振幅が小さくなる場合、拡散信号の電力を大きくする。これにより、送信局10で送信する秘匿信号に対して、送信局10と受信局20との間の伝搬路特性による歪みを補償する事前歪みを予め与え、秘匿信号が受信局20に到達した時点で伝搬路による歪みがない状態で取り出すことができる
IFFT124は、歪補償を行った拡散信号に対して逆高速フーリエ変換を施すことにより、周波数領域の拡散信号から時間領域の秘匿信号を生成する。上述の一連の処理により、秘匿情報は、周波数領域でサブキャリアにまたがって所定の拡散符号で拡散され、拡散符号のチップに応じて各サブキャリア周波数で変調され、別々のサブキャリアで送信される。これにより、秘匿信号の時間波形は、雑音と非常に近い波形となる。
ガードインターバル挿入部125は、逆高速フーリエ変換後の秘匿信号にガードインターバルを挿入する。この場合、1シンボル区間の秘匿信号の間に挿入する信号は、通常行われているように秘匿信号を巡回的に拡張して、その部分を挿入するのではなく、秘匿信号と全く関連性のないランダムなダミー信号を挿入する。ここで、ダミー信号は、各シンボルに挿入される場合、シンボル毎のガードインターバル内の信号がシンボルとは全く無関係な信号であるということである。これにより、秘匿信号の自己相関を抑制することが可能となり、盗聴局50が秘匿信号の存在を検出することを一層困難にする。
図7はダミー信号によるガードインターバル挿入の一例を示す説明図である。図7に示すように、1シンボル区間の信号の先頭にガードインターバルΔTを設け、ガードインターバル内の信号はダミー信号である。なお、Tsは高速フーリエ変換対象の時間範囲を示す。直接波が遅延した遅延波が合成された合成波の1つ前のシンボル混在する範囲Tdは、ガードインターバルΔT内にあり、Tsの範囲で高速フーリエ変換することにより、元の拡散信号を取り出すことができる。
通常のガードインターバルを用いた場合、すなわち、1シンボル区間の信号を巡回的に拡張して、その部分を1シンボル区間の信号の先頭又は末尾にガードインターバルとして挿入した場合には、自己相関が発生し、盗聴局50で受信した伝送信号からカバー信号を除去した信号の自己相関を求めることにより、秘匿信号の有無を検出することが可能となる。
図7の例のように、本実施の形態では、ガードインターバルにダミー信号を用いるため、自己相関を抑制することができる。これにより、盗聴局50で受信した伝送信号からカバー信号を除去した信号の自己相関を求めた場合でも、秘匿信号の有無を検出することが不可能となる。
レベル調整部128は、ガードインターバル挿入部125でガードインターバルが挿入された秘匿信号の電力がカバー信号の電力よりも20dB以下となるように秘匿信号の電力を設定する。これにより、秘匿信号をカバー信号に埋め込む際に、秘匿信号によるカバー信号の本質の劣化を抑制することができ、盗聴局50でカバー信号の劣化によりカバー信号以外に何らかの信号を埋め込まれていると推定することを防止する。
OFDM変調部126は、シリアル・パラレル変換部1261、IFFT1262などを備える。シリアル・パラレル変換部1261は、非秘匿情報(カバーデータ)をシリアルデータからパラレルデータに変換し、変換したカバーデータを相互に直交するサブキャリア信号に割り当てる。
IFFT1262は、サブキャリア信号に対して逆高速フーリエ変換を施してOFDM信号を生成する。生成されたOFDM信号はカバー信号となる。なお、OFDM変調して生成したカバー信号の時間波形は、一般的に雑音に近似するため、カバー信号に埋め込まれた秘匿信号の秘匿性を一層高めることができる。
ガードインターバル挿入部127は、逆高速フーリエ変換後のカバー信号にガードインターバルを挿入する。この場合、シンボル間に挿入する信号は、1シンボル区間のカバー信号を巡回的に拡張した部分である。
送信処理部12は、秘匿信号をカバー信号に埋め込み、伝送信号として送信する。
図8は受信局20の構成を示すブロック図である。受信局20は、受信した伝送信号から元の送信データを取り出すための処理を行う受信処理部21、受信処理部21で処理したデータに対して所定の処理を行うデータ処理部22、伝搬路特性を測定するための測定用信号を生成する測定用信号生成部23などを備える。
測定用信号生成部23は、例えば、伝搬路の周波数特性が測定可能なMC−CDMA(Multi Carrier Code Division Multiple Access)信号を生成する。なお、測定用信号は、これに限定されるものではない。
図9は受信処理部21の構成の一例を示すブロック図である。受信処理部21は、カバー信号除去部211、ガードインターバル除去部212、FFT213、逆拡散部214、QPSK復調部215などを備えている。
カバー信号除去部211は、OFDM変調部126の変調方式に対応した復調方式の復調回路を備え、受信した伝送信号からカバー信号を復調し、復調したカバー信号を伝送信号から除去することによりカバー信号に埋め込まれている秘匿信号を抽出する。
ガードインターバル除去部212は、1シンボル区間の秘匿信号の間に挿入されたダミー信号を除去することにより、ガードインターバルを除去する。
FFT213は、ガードインターバルが除去された秘匿信号に対して高速フーリエ変換を行って拡散信号を生成する。
逆拡散部214は、拡散信号に対して所定の逆拡散符号(拡散復調用の符号)をかけて各サブキャリアを復調し、周波数領域で拡散された電力を合計する。各サブキャリアの周波数で変調されたシンボルの一部は、逆拡散符号をかけることにより、元のシンボルとなる。
QPSK復調部215は、秘匿情報を復調して元の秘匿情報(秘匿データ)を復元する。正規の受信局20では秘匿信号の送信時に行われた歪補償処理による歪と、伝搬路で生じる歪とが相殺される。このため、正規の受信局20では、伝送信号からカバー信号を除去した信号が秘匿信号であると判別することができる。
一方、盗聴局50では、カバー信号に埋め込まれている秘匿信号が雑音と区別することができないため、秘匿信号の存在を検出することができない。また、盗聴局50で仮にカバー信号を推定することができてカバー信号を除去したとしても、盗聴局50では、秘匿信号の送信時に行われた歪補償処理による歪と、伝搬路で生じる歪とが相殺されないため、カバー信号を除去した後の信号から秘匿情報を取り出すことはできない。
次に、計算機シミュレーションによる秘匿通信システム100の評価結果について説明する。図10はシミュレーションパラメータの一例を示す説明図である。図10に示すように、カバー信号の変調方式は、QPSKとOFDMであり、サブキャリア数は64、パイロットシンボルはあり(シンボル数は、例えば、2など)、ガードインターバルはカバーデータの一部を用いる。また、秘匿信号の変調方式は、QPSKとマルチキャリア拡散変調であり、サブキャリア数は64、拡散符号の拡散率は31、パイロットシンボルはなく、ガードインターバルはダミー信号を用いる。また、カバー信号電力対秘匿信号電力比は20dB、伝搬路環境は、3パスモデル(独立レイリーフェージング、遅延時間は0.1μs、相対電力はそれぞれ、0dB、−6dB、−12dBであり、最大ドップラー周波数は10Hzである。なお、シンボル数は、カバー信号が62、秘匿信号が128である。なお、数値は一例であって、これに限定されるものではない。また、シミュレーションにおいては、これらの数値をパラメータとして変化させることができる。
図11は信号点の原点からの分散と拡散率との関係を示す説明図である。図11において、横軸は拡散符号の拡散率を示し、縦軸は信号点の原点からの距離の分散を示す。図中、実線は秘匿信号の特性を示し、破線は平均SNRを秘匿信号と同じ20dBに設定した場合のランダム雑音の特性を示す。図11に示すように、秘匿信号の拡散率を31から35の値に設定した場合、逆拡散後の信号点の分散が雑音に近い値となり、逆拡散後の信号点が適度に分散する。
図12は秘匿信号の拡散率に対するBER特性を示す説明図である。図12において、横軸は秘匿信号の拡散率を示し、縦軸はBER(Bit Error Ratio)を示す。なお、許容可能なBERは、例えば、10-3である。図12に示すように、秘匿信号はカバー信号電力に対して、−20dBと微小な電力に設定されているため、秘匿信号の拡散率を低く設定するとBER特性が悪化する。拡散率が大きくなるに応じてBER特性が良好になることが分かる。また、拡散率が25以上では、BERが10-7以下となり、この範囲では拡散率の影響はない。
図6、図11及び図12の例から、例えば、サブキャリア数が64の場合、秘匿信号の拡散率は、31、33、35などの値を用いることができる。
図13はガードインターバルによる秘匿信号の自己相関の例を示す説明図である。図13(a)は通常のガードインターバル、すなわち、秘匿データ(シンボル)の一部を用いたガードインターバルの場合を示し、図13(b)はダミー信号を用いたガードインターバルの場合を示す。自己相関は、秘匿信号を任意の時間だけ離れた信号間の相関であり、図13の例では、シンボル周期分(例えば、4μs)移動させたときの相関値を示す。
図13(a)に示すように、通常のガードインターバルを用いた場合には、自己相関が発生する。このため、盗聴局50でカバー信号を除去した信号の自己相関を求めることにより、秘匿信号の存在を検出することが可能となる。一方、図13(b)に示すように、ダミー信号を用いたガードインターバルの場合には、自己相関を抑制することができる。このため、盗聴局50で自己相関を求めるだけでは、秘匿信号の存在を検出することは不可能となる。
図14はガードインターバルを挿入した秘匿信号のBER特性を示す説明図である。図14において、横軸はカバー信号電力対雑音電力比SNRを示し、縦軸はBERを示す。図中、実線はダミー信号を用いたガードインターバルの場合の特性を示し、破線は通常のガードインターバルの場合の特性を示す。図14に示すように、SNRが高い範囲では、ダミー信号を用いたガードインターバルの場合が、通常のガードインターバルの場合よりもBER特性が若干劣化している。しかし、誤り訂正符号などを用いることにより、BER特性の劣化は抑制することができるので、ダミー信号を用いたガードインターバルを秘匿信号に挿入しても問題はない。
図15は秘匿信号の振幅確率密度の例を示す説明図である。図15において、横軸は振幅を示し、縦軸はPDF(振幅確率密度関数)を示す。図15に示すように、秘匿信号の振幅確率密度がガウス分布に従う分布(近似する分布)であり、振幅には偏りが少なく雑音に近似する特性を示すことが分かる。これにより、秘匿信号に雑音を付加する処理を行うことなく、秘匿信号を雑音に近似させることができる。
図16は秘匿信号の逆拡散処理後の信号点配置の例を示す説明図である。図16(a)は正規の受信局20の場合を示し、図16(b)は盗聴局50の場合を示す。図16に示すように、正規の受信局20では、QPSK変調された信号が検出可能であるが、盗聴局50では、信号点配置が雑音のように特に定まった配置となっていないため、秘匿信号の存在を検出することは不可能となる。
図17は秘匿情報及びカバーデータのBER特性の例を示す説明図である。図17において、横軸はカバー信号電力対雑音電力比SNRを示し、縦軸はBERを示す。図17の例において、カバー信号電力対秘匿信号電力比は20dBとする。図17に示すように、SNRが約22dB以上で、正規局(正規の受信局20)での秘匿情報(秘匿データ)のBERは、10-3以下となりBER特性が良好になっている。これにより、正規の受信局20では、正しく秘匿情報を受信することができる。
一方、盗聴局50では、SNRの値にかかわらず、秘匿情報のBERは、5×10-1程度となり、BERの許容レベルを10-3以下とすれば、盗聴局50では秘匿情報を正しく受信することができず、盗聴局50に対する秘匿情報の秘密性が確保されている。
また、カバーデータのBER特性では、秘匿情報を含むか否かによって、BER特性に大きな差異はない。このことから、秘匿信号をカバー信号に埋め込む場合に、カバー信号の品質の劣化は、秘匿情報の有無にかかわらず同程度であることがわかり、秘匿信号の埋め込みによるカバー信号の品質の劣化を抑制することができる。これにより、盗聴局50では、カバー信号の品質の劣化を検出して秘匿信号の存在を検知することは不可能である。
以上説明したように、本実施の形態によれば、無線通信における通常の伝送信号にカバー信号の役割を与え、この伝送信号に秘匿信号を微小電力で多重して埋め込むことにより、秘匿信号の存在を秘匿することができる。また、秘匿信号を雑音と区別できないように処理を施すことにより、信号の秘匿性をさらに高めることができる。また、秘匿信号に雑音を付加する必要がないため、雑音付加による秘匿信号の特性劣化を防止することができる。また、正規の送信局と受信局との間の伝搬路特性の可逆性及び遅延歪みを利用した歪補償を予め秘匿信号に対して施すことにより、盗聴局が秘匿信号に含まれる秘匿情報を抽出することができないようにすることができ、盗聴に対する安全な通信の実現を図ることができる。
上述の実施の形態では、送信局には送信処理機能を備え、受信局には受信処理機能を備えた構成について説明したが、このような構成に限定されるものではなく、1つの無線装置に送信局と受信局の両者の処理機能を備える構成であってもよい。
Claims (8)
- 秘匿情報に対して所定の処理を行って秘匿信号を生成し、生成した秘匿信号を伝送信号に含めて秘匿通信を行う無線装置であって、
秘匿情報に対して所定の拡散符号により複数の異なる周波数のサブキャリア毎の拡散処理を行う拡散処理手段と、
他の無線装置が送信した所定の測定用信号を受信する受信手段と、
該受信手段で受信した測定用信号に基づいて、前記他の無線装置との間の伝搬路特性による各サブキャリアの歪度合いを測定する測定手段と、
該測定手段で測定した歪度合いに応じて、前記拡散処理手段で拡散処理した拡散信号に対して各サブキャリアの周波数に対応する歪補償を予め施す歪補償手段と、
該歪補償手段で歪補償した拡散信号に対して逆フーリエ変換を施して秘匿信号を生成する秘匿信号生成手段と
を備え、
前記拡散処理手段は、
前記秘匿信号をフーリエ変換して得られる拡散信号と逆拡散処理で用いる逆拡散符号との相関を低減すべく、拡散符号の拡散率の倍数が前記サブキャリアの数と異なる値の拡散符号を用いて拡散処理を行うようにしてあることを特徴とする無線装置。 - 所定の重畳信号を生成する重畳信号生成手段と、
前記秘匿信号生成手段で生成した秘匿信号に前記重畳信号生成手段で生成した重畳信号を付加する付加手段と、
該付加手段で前記秘匿信号に付加した重畳信号を伝送信号として前記他の無線装置へ送信する送信手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。 - 秘匿情報でない情報に対して直交周波数分割多重による変調処理を行う変調処理手段を備え、
前記重畳信号生成手段は、
前記変調処理手段で変調した変調信号を重畳信号として生成するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の無線装置。 - 重畳信号電力対秘匿信号電力比を20dB以下に設定する設定手段を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の無線装置。
- 前記秘匿信号生成手段で生成した秘匿信号と異なるランダムな信号をガードインターバルとして挿入する挿入手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の無線装置。
- 前記秘匿信号生成手段は、
信号振幅確率密度がガウス分布に近似すべく秘匿信号を生成するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の無線装置。 - 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の無線装置を複数備え、一の無線装置が送信した秘匿情報を他の無線装置で受信するように構成してあることを特徴とする無線システム。
- 無線装置間で秘匿情報に対して所定の処理を行って秘匿信号を生成し、生成した秘匿信号を伝送信号に含めて秘匿通信を行う秘匿通信方法であって、
第1の無線装置は、
秘匿情報に対して所定の拡散符号により複数の異なる周波数のサブキャリア毎の拡散処理を行うステップと、
第2の無線装置が送信した所定の測定用信号を受信するステップと、
受信した測定用信号に基づいて、前記第2の無線装置との間の伝搬路特性による各サブキャリアの歪度合いを測定するステップと、
測定した歪度合いに応じて、拡散処理した拡散信号に対して各サブキャリアの周波数に対応する歪補償を予め施すステップと、
歪補償した拡散信号に対して逆フーリエ変換を施して秘匿信号を生成するステップと
を含み、
前記拡散処理を行うステップは、さらに
前記秘匿信号をフーリエ変換して得られる拡散信号と逆拡散処理で用いる逆拡散符号との相関を低減すべく、拡散符号の拡散率の倍数が前記サブキャリアの数と異なる値の拡散符号を用いて拡散処理を行うことを特徴とする秘匿通信方法。
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