JP5324332B2 - 光周波数コム安定化光源 - Google Patents
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Description
この技術では、光周波数コム(Comb)を、光周波数のものさしとして光周波数計測に利用している。この光周波数コムでは、安定した光パルス列の周波数領域において、一定の周波数間隔で現れる複数の線スペクトルを櫛目と見立てている。
この櫛目の間隔が光パルスの繰り返し周波数であり、各櫛目の光周波数は、隣り合う櫛目の間隔の周波数の整数倍にオフセット光周波数を加えたものとなる。
したがって、光周波数コムでは、櫛目の間隔の周波数と整数値とにより各線スペクトルの光周波数が決定できる。
まず、レーザは、一般に、光を増幅する利得媒質と、所定の共振器長Lを有する共振器を備えている。この共振器の縦モードの共振周波数は、c/2L(cは利得媒質中における光速)の整数倍である。
また、受動モード同期レーザが発振するレーザ光のスペクトル幅よりも共振器の共振周波数の間がさらに狭いと、共振器において複数のモード(周波数)で共振する。このように複数のモードで共振する状態において、各モードの位相を揃える(モード同期させる)ことにより、繰り返し周波数(モード間隔)frep=c/(2L)で発振するレーザ光が強められる。このように、複数のモードで共振する状態においてモード同期させることで、繰り返し周波数frepのパルスレーザを発振させることができる。
図6では、光搬送波電界が変化することによるパルスを、光搬送波電界の包絡線として示し、また、1つのパルスを示している。一方、周波数軸上においては、図7に示すように、等しい周波数間隔frepで櫛状に並ぶ多数のモード(線スペクトル)の集合体となり、光周波数コムとなる。
一般に、時間軸上に並ぶ光搬送波電界のピークと、パルスレーザのパルスのピークとは常に一致しているわけではなく、時間的にシフトしていき、この変化も一定ではない。 例えば、図6では、光搬送波電界のピークと、包絡線により示されるパルスのピークとが、φずれている状態を示している。また、繰り返しパルス間のφのずれΔφに対応し、図7に示すように、光周波数コムもオフセット光周波数δだけオフセットされている。
この白色光の長波長成分f1(f1=n*frep+δ)の第2高調波を発生させると、その周波数は、f2=2*(n*frep+δ)となり、また、白色光の短波長成分は、f3=2*n*frep+δと表せる。したがって、f2とf3の2つの光を干渉させて発生するうなり信号を、例えばフォトダイオードを用いて検出することによりf2とf3の周波数差f2-f3=δの値を測定することができる。
そこで、その測定値を外部からのマイクロ波基準周波数と比較し、それからのずれの大きさを元に電子回路で共振器内の非線形分散の大きさにフィードバックを行うことによって、キャリアエンベロープ位相差Δφ、すなわち前述した光周波数コムのオフセット周波数δを安定化することができる。一方、モード同期レーザ発振器の繰返し周波数は、フォトダイオードで検出した繰返し周波数信号を元に、レーザの共振器長に検出信号をフィードバックすることにより、ある有限の範囲内に固定することが可能である。
このようにして、オフセット周波数とモード周波数間隔とを一定にした光周波数コム安定化光源が、共振器装置を備えたモード同期レーザをベースに開発されている(非特許文献1〜7参照)。
また、上述したような光周波数コムの周波数安定化に使用される光源を用いた、高い精度で任意の中心光周波数および繰り返し周波数の光周波数コムを得られるような光周波数コム安定化光源が提案されている(特許文献1)。
これに対し、これまでの受動モード同期ファイバレーザ発振器のパルスエネルギーの最高記録は580pJである(非特許文献9参照)。
本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、小型化を実現した光周波数コム安定化光源を提供することを目的とする。
さらに、本発明の光周波数コム安定化光源における前記光パルス列発生部は、前記高非線形光学媒質部の分散特性に対応して任意に中心光波長を選択できるレーザパルス光源と、テーパー化したファイバを備え、入力レーザ光のモードフィールド径を縮小するレーザパルス伝搬ファイバと、前記レーザパルス光源から出力されるレーザ光の偏光の向きを調節する偏光コントローラとを備える構成としても良い。
したがって、ファイバアンプ段と遅延機構を不要とする構成を有することにより、光周波数コム安定化光源の小型化の実現を可能とする。
なお、以下に説明する本実施の形態にかかる光周波数コム安定化光源は、本発明の実施の形態の一例であり、具体的な構成はこのの実施の形態に限られるものではない。すなわち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での設計の変更は、本発明に含まれるものである。
図1に示すように、本実施の形態にかかる光周波数コム安定化光源1は、光パルスを発生させる光パルス列発生部10と、広帯域光を発生させる高非線形光学媒質部11と、CEO周波数を検出する検出部12と、レーザ光源を制御する帰還制御部13とから構成されている。
偏光コントローラ102は、レーザパルス光源101から出力されるレーザ光の向きを、後述するテルライトフォトニック結晶ファイバ(PCF)111のフォトニック結晶の構造に起因するオクターブ光発生に最適な直線偏光の向きへ調節する。
また、光パルス伝搬用ファイバ103および高NAファイバ105との接続部であるファイバ接続部104にあたっては、熱拡散(TEC)処理を施して、接合部分でモードフィールド径のミスマッチによる接続損失を低減させている。
また、高NAファイバ105の長さは、ファイバ内部で起こる非線形効果の影響を小さくするため、より短いことが望ましい。例えば、光パルス伝搬用ファイバ103にはシングルモードファイバ(モードフィールド径:8.0 mm)、高NAファイバ105にはコア径の小さいファイバ(モードフィールド径:2.5 mm)を用いることが出来る。その際、ファイバ内部での非線形効果の影響を回避するため、高NAファイバの長さは10cm以下である必要がある。
テルライトフォトニック結晶ファイバ(PCF)111は、ファイバ内の非線形効果を利用して1オクターブ以上の広帯域光を発生させる。ここで、より低いパルスエネルギーでオクターブ光を発生させるためには、非線形屈折率n2とファイバの実行断面積Aeffとで決まる非線形定数γ=2πn2/λAeffの値がより大きく、入射光の波長で伝搬に伴うパルス幅の広がりを抑えられるように群速度分散がより小さく、従来よりも低損失のファイバを用いればよい。
具体的には、屈折率が大きなテルライト材料を用いたフォトニック結晶構造のファイバでは、石英材料を用いた高非線形ファイバよりも30倍以上の高いγ値を持つことが報告されている(非特許文献9参照)。
このように、テルライトPCFを用いることによって、石英材料を用いた高非線形ファイバよりも低いパルスエネルギーでオクターブ光を発生できる。
そこで、石英材料の高NAファイバ105とテルライトPCF111との接続は、角度付きV溝接続するファイバ接続部112を用いて接続する。V溝接続とはファイバ固定用の基板にV溝が形成されており、そこにファイバ両端面を付き合わせ接着剤で固定する接続方法である。角度付きでV溝接続する理由は端面反射によりレーザパルスの戻り光損失を増加させて、レーザ光機器への戻り光を防ぎ、かつ、レーザ光結合効率を向上させるためである。
具体的には、双方のファイバ固定用V溝フォルダをファイバ固定用の基盤に作成して、ファイバ両端面を付き合わせた後に、紫外硬化樹脂を用いてするV溝接続によるファイバ接続部112を用いる。対物レンズを使用した場合のテルライトPCFへのレーザ光結合効率は約23%であるが、V溝接続を使用した場合、その結合効率が約40%まで改善する。
なお、高非線形光学媒質部11には、従来よりも分散特性が低い高非線形ファイバを用いることによってオクターブ光を発生させることとしても良い。
コリメート用レンズ122は、非線形光学結晶部121によって合波されたレーザ光を平行光にする。
バンドパスフィルタ123は、このコリメート用レンズ122によって平行光にされたレーザ光から、CEO干渉信号の波長成分を抽出する。
集光レンズ124は、バンドパスフィルタ123を通過したレーザ光を集光する。
光検出部125は、集光レンズ124によって集光されたレーザ光からCEO周波数を検出する。
非特許文献6に開示されている技術によると、通信波長帯レーザパルス光源を使用して低パルスエネルギーによるCEO周波数の検出には、光学素子を簡素化したコリニア自己参照干渉計が使用される。例えば、本実施の形態にかかる光周波数コム安定化光源おいて、テルライトPCF111から発生するオクターブ光について、非特許文献6に開示されているコリニア干渉計と同様の構成を有したテルライトPCFと高NAファイバ105とを接続した場合では、テルライトPCFと高NAファイバ105との結合損失が大きく、CEO信号がノイズレベル以下となってしまう。
また、図2に示す長さ30cmのテルライトPCFを使用したオクターブ光の群遅延速度の実測データから、30cmの長さのテルライトPCFを使用して発生したオクターブ光の短波長成分と長波長成分(例えば、1040nmと2080nm)の遅延時間は、約3psと見積もられる。
一方、遅延機構を設置した自己参照干渉計を使って遅延時間とCEO干渉信号のSNRとの関係の計測結果を図3に示す。図3より、長さ30cmのテルライトPCFを使用した場合、オクターブ光の短波長成分と長波長成分の時間遅延は約3psであることから、CEO干渉信号のSNRに与える影響が小さいことが分かる。
したがって、本実施の形態においては、遅延機構を設置しない光学素子を簡素化したコリニア自己参照干渉計を構成することができる。
マイクロ波基準周波数発生部131は、基準周波数を有するマイクロ波(例えばGPS(Global Positioning System )信号)を発生させて帰還回路部132へ供給する。
帰還回路部132は、マイクロ波基準周波数発生部131より供給されるマイクロ波(例えばGPS信号)の基準周波数と検出部12によって検出されたCEO周波数とを比較参照し、比較結果に基づいてレーザパルス光源101を制御する。
ここで、500pJのレーザパルスエネルギーを使用して本実施の形態における光学素子の構成によってマイクロ波基準周波数20MHzを用いてCEOロックしたときの周波数スペクトルデータを図4に示す。さらに、CEO周波数とマイクロ波基準周波数との差分を示す電気信号波形を図5にしめす。図4と図5とから、帰還回路部132を用いるとCEO周波数とマイクロ波基準周波数との周波数差がゼロになり、CEOロックしていることを示している。
近年、パルスエネルギー580pJのフェムト秒ファイバレーザ発振器(非特許文献10参照)が実現されており、増幅段を必要とせずにファイバレーザ発振器のみで通信波長帯CEOロックを実現するために、本発明は有用である。
このことから、従来以上に光周波数コム安定化光源を小型化することができ、光周波数コムの各モードを利用した通信分野や分光学分野の発展に寄与するものであり、本発明が従来技術よりも優れていることが分かる。
さらに、超高確度な波長を有する光周波数コムの安定化光源を小型化することによって、超精密分光や次世代コヒーレント通信などの新たな利用分野が飛躍的に広がることが期待できる。
Claims (3)
- 光パルス列を出力する光パルス列発生部と、
この光パルス列発生部によって出力される光パルス列のスペクトル帯域を1オクターブ以上に拡大した広帯域光を発生させる高非線形光学媒質部と、
この高非線形光学媒質部より発生した広帯域光の光パルス列からキャリアエンベロープオフセット周波数を検出する検出部と、
この検出部によって検出されたキャリアエンベロープオフセット周波数と外部から入力される基準周波数との比較結果に基づいて前記光パルス列発生部を制御する帰還制御部と
を少なくとも備え、
前記高非線形光学媒質部は、
石英材料で作られる高非線形ファイバよりも大きい非線形定数を持つ広帯域光発生ファイバであり、
前記検出部は、
前記高非線形光学媒質部から出力される広帯域光の長波長成分の第二高調波を発生させると同時に、長波長成分の第二高調波と短波長波とを合波させる非線形光学結晶部と、
この非線形光学結晶部によって合波されたレーザ光を平行光にするコリメート用レンズと、
このコリメート用レンズによって平行光にされたレーザ光からキャリアエンベロープオフセット干渉信号の波長成分を抽出するバンドパスフィルタと、
このバンドパスフィルタを通過したレーザ光を集光する集光レンズと、
この集光レンズによって集光されたレーザ光からキャリアエンベロープオフセット周波数を検出する光検出部と
を備えることを特徴とする光周波数コム安定化光源。 - 請求項1に記載の光周波数コム安定化光源において、
前記検出部は、前記高非線形光学媒質部から出力される広帯域光の一部を遅延させる機構を持たない一軸干渉計を構成することを特徴とする光周波数コム安定化光源。 - 請求項1に記載の光周波数コム安定化光源において、
前記光パルス列発生部は、
前記高非線形光学媒質部の分散特性に対応して任意に中心光波長を選択できるレーザパルス光源と、
テーパー化したファイバを備え、入力レーザ光のモードフィールド径を縮小するレーザパルス伝搬ファイバと、
前記レーザパルス光源から出力されるレーザ光の偏光の向きを調節する偏光コントローラと
を備えることを特徴とする光周波数コム安定化光源。
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