JP5311718B2 - ポリアミド樹脂水性分散体の製造方法 - Google Patents

ポリアミド樹脂水性分散体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアミド樹脂水性分散体の製造方法に関する。
ポリアミド樹脂の水性分散体は、基材に対してポリアミド樹脂のコーティング塗膜を形成することにより、耐油性、耐溶剤性、耐薬品性、耐磨耗性、気体遮断性、接着性等を付与することができることから、水性インキ、繊維処理剤、繊維目止め剤、紙処理剤、バインダー、潤滑剤、鋼板表面処理剤、表面改質剤および芯地接着などのホットメルト接着剤等に広く用いられている。
ポリアミド樹脂は、製造プロセス上、乳化重合により製造できないため、それを水性媒体中に分散させたポリアミド樹脂水性分散体を得ることが行なわれている。このポリアミド樹脂水性分散体の製造方法については、従来より種々の提案がなされている。
例えば、ポリアミド樹脂を有機溶剤に溶解し再沈殿した後、水溶媒に置換する製造方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、再沈殿により得られる粒子はその粒子径が大きく、また水溶媒に置換する際に粒子が再凝集する場合が多く、しかも製造プロセスが複雑である等の問題点を有する。
一方、水不溶性の有機溶剤に溶解したポリアミド樹脂溶体を、水性媒体中で乳化剤とともに、特殊な乳化装置を使用して高剪断力で撹拌乳化した後、有機溶剤を除去する、いわゆる後乳化法と呼ばれる製造方法も提案されている。しかしながら、ポリアミド樹脂は有機溶剤に対する溶解度が小さいため、後乳化法では非常に生産性が低く、経済的な方法とは言い難い。また、有機溶剤を除去する際の発泡の制御等、工程が複雑となり、経済的に不利となる。さらに、製品中に有機溶剤や乳化剤が残存したり、作業環境を悪化させたり、環境汚染を招いたりする恐れがあるなど、工業的に有利な方法とは言い難い。
その改善対策として、特許文献3には、末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が60/40〜100/0であるポリアミド樹脂を、末端カルボキシル基1モル当たり0.2〜3モルの割合の塩基性物質を含む水性分散媒中に分散させることにより、質量平均粒子径0.1〜10μmのポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂水性分散体が得られることが記載されている。
特開昭61−223059号公報 特開昭63−186738号公報 特開2000−302966号公報
しかしながら、特許文献3に記載された水性分散体は、アルカリ性領域では安定であるが、酸性化合物を添加した場合にゲル化してしまい、酸性化合物との併用には問題があった。
そこで本発明は、酸化合物との混合安定性に優れたポリアミド樹脂水性分散体を得ることができるようにすることを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のポリアミド樹脂を特定量の酸性物質を含む水性分散媒中に分散させると、ポリアミド樹脂中の末端アミノ基が親水性の塩となり、その結果、安定性に優れたポリアミド樹脂水性分散体が得られ、しかも酸性化合物との混合安定が非常に優れることを見出し、上記課題を解決した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである
(1)ポリアミド樹脂水性分散体の製造方法であって、末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=40/60〜0/100であるポリアミド樹脂100質量部と、末端アミノ基1モル当たり0.2〜3モルの割合の酸性物質と、ポリアミド樹脂100質量部に対して30〜1500質量部の水と、得られる水性分散体100質量部に対して1〜40質量部の20℃のもとでの水に対する溶解性が5g/L以上、かつ沸点が30〜250℃の有機溶剤とを、密閉容器に供給し、該密閉容器を密閉した後、昇温し、該密閉容器中で70〜280℃の温度で加熱、撹拌することを特徴とするポリアミド樹脂水性分散体の製造方法。
本発明のポリアミド樹脂水性分散体の製造方法は、ポリアミド樹脂中のアミノ基を酸性物質で中和することで、樹脂を水性媒体中に微細かつ安定に分散させることができ、このため従来は併用できなかった酸性化合物やカチオン化合物とも安定に混合でき使用することができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=40/60〜0/100であることが必要である。この範囲から外れて末端カルボキシル基の割合が高く末端アミノ基の割合が低いと、ポリアミド樹脂の水性分散化が困難になり、良好な分散体が得られなくなる。
このようなポリアミド樹脂の製造方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノ−ω′カルボン酸の重縮合または環状ラクタムの開環重合等の方法が挙げられる。この場合において、重縮合または開環重合の際に、重合調節剤として、トリアミン、ジアミン、モノアミンを所定量用いることにより、容易に、末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=40/60〜0/100であるポリアミド樹脂を製造することができる。
上記したポリアミド樹脂の製造に用いられるジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
同ポリアミド樹脂の製造に用いられるジカルボン酸の具体例としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等が挙げられる。
同ポリアミド樹脂の製造に用いられるω−アミノ−ω′カルボン酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
同ポリアミド樹脂の製造に用いられる環状ラクタムの具体例としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
上記した重合調節剤として用いられるジアミンの具体例としては、前記のジアミンと同様のもの挙げられる。また、モノアミンの具体例としては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン等が挙げられる。
本発明において好ましく用いられるポリアミド樹脂としては、上記した方法で得られるポリアミド樹脂のうち、特に、
Figure 0005311718
からなる群より選ばれた少なくとも1種を構造単位とするポリアミド樹脂が挙げられる。
それらの具体例としては、6−ナイロン、66−ナイロン、46−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロンなどが挙げられる。これらの重合体または共重合体は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
本発明に用いられる酸性物質としては、ぎ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸や、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸が挙げられる。
この酸性物質の使用量は、ポリアミド樹脂の末端アミノ基1モル当たり0.2〜3モルであることが必要で、好ましくは0.4〜2モル、さらに好ましくは0.6〜1.5モルである。酸性物質の使用量が0.2モル未満では、ポリアミド樹脂の水性分散体を得るのが困難であり、反対に酸性物質の使用量が3モルを越えると、得られる水性分散体が強酸性となり実用的でなくなる。
末端アミノ基の量は、特に限定されないが、ポリアミド樹脂1kg当たり20〜3000ミリモルの範囲であることが好ましく、50〜2000ミリモルの範囲であることがさらに好ましく、100〜2000ミリモルの範囲であることが特に好ましい。末端アミノ基の多い方が、粒子径の小さい、安定な水分散体が得られる傾向がある。
本発明のポリアミド樹脂水性分散体には、その物性を損なわない範囲で、前記した各物質のほかに、ノニオン性乳化剤、両性乳化剤、保護コロイド化合物等の添加剤を用いても良い。また、酸化防止剤等の各種添加剤を添加することもできる。
これらのうち、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられる。両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。保護コロイド作用化合物としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、変性デンプン、ポリビニルピロリドン、アミノ基を有する水溶性アクリル系共重合体、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等、一般に微粒子の分散安定剤として用いられている化合物が挙げられる。
本発明に用いられる水性媒体とは、水を主とする媒体のことであり、分散媒として用いられるものである。分散媒として用いられる水の量は、通常、ポリアミド樹脂100質量部に対して30〜1500質量部であ、100〜500質量部であることが好ましい。水の使用量が30質量部未満であると、ポリアミド樹脂が充分に水中に分散できず、また1500質量部を超えて使用して場合は、得られるポリアミド樹脂水性分散体の濃度が薄くなり、その利用上好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂水性分散体は、分散体を構成する粒子の数平均粒子径が、0.01〜10μmであることが必要である。同粒子の数平均粒子径が0.01μm未満であると、分散体を用いて得られる塗膜の耐水性が悪化する。反対に同粒子の数平均粒子径が10μmを超えると、水性分散体の安定性が悪化したり、塗膜の平滑性が悪化したりする。
本発明のポリアミド樹脂水性分散体の製造方法を説明する。この製造方法としては、
(1)所定量のポリアミド樹脂と、酸性物質と、水と、ポリアミド樹脂の分散を十分に行なうための後述の有機溶剤とを一括して分散槽中に供給し、毎分100〜1000回転で撹拌しながら、ポリアミド樹脂が分散媒としての水中で軟化する温度まで加熱し、引き続き、ポリアミド樹脂が水中で軟化する温度以上に保持して、毎分100〜1000回転で10〜60分程度撹拌することにより剪断力を加えて水性分散体を得る方法や、
(2)分散槽をポリアミド樹脂が水中で軟化する温度以上に加熱しかつ加圧しておき、この分散槽に、所定量の溶融させたポリアミド樹脂と、酸性物質と、水と、好ましくは上述の有機溶剤とを、毎分100〜1000回転で撹拌しながらそれぞれ圧入し、引き続き、ポリアミド樹脂が水中で軟化する温度以上に保持して、毎分100〜1000回転で10〜60分程度撹拌することにより剪断力を加えて水性分散体を得る方法などが挙げられる。
ここにいうポリアミド樹脂が水中で軟化する温度以上の温度とは、70℃〜280℃であることが必要である。好ましくは90℃〜230℃である。この範囲の温度条件で製造を行なうと良い結果が得られる。70℃より低い温度では、ポリアミド樹脂の水中での軟化が十分でないため、均一な分散ができない。また280℃より高い温度では、ポリアミド樹脂の劣化が起こる。
さらに、撹拌して剪断力を加えることによって、ポリアミド樹脂の分散を十分に行なうことが必要である。撹拌手段としては、例えば回転式の撹拌羽根等を挙げることができる。撹拌羽根の回転数は、通常、毎分100〜1000回転であることが好適である。毎分100回転より少ない回転では分散が十分に行なわれず、また1000回転より多くてもそれに伴う効果が見られず経済的に不利である。
本発明においては、ポリアミド樹脂の分散を十分に行なうために、水性分散化の際に有機溶剤を添加することが好ましい。水性分散化の際に用いる有機溶剤の添加量は、水性分散体100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることがより好ましく、3〜20質量部であることが特に好ましい。有機溶剤の添加量が20質量部を超える場合には、後述するストリッピングにより、分散化の後に有機溶剤の含有量を低減させることが望ましい。有機溶剤の添加量が40質量部を超えると、ストリッピングの時間が長くなる等の問題を生じる。有機溶剤の添加量が1質量部未満であると、場合によっては、樹脂の水性化が困難になったり、樹脂を水性化するために系内の温度を上げる必要がありそのため樹脂の主鎖が分解して分子量が低下したりすることがある。
有機溶剤は、常圧または減圧下で水性分散体を撹拌しながら加熱することで留去して、その一部または全てを系外へ除去(ストリッピング)することができる。最終的に水性分散体に残る有機溶剤の量は、水性分散体100質量部に対して30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。有機溶剤の含有率が30質量部を超える場合には、水性化の本来の目的から外れてしまうだけでなく、水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。有機溶剤の含有率は0.01質量部未満(測定に使用する分析機器の検出限界)とすることが可能であるが、そのためには溶剤を留去する装置の減圧度を高めたり、操業時間を長くするなどの処置が必要となるので、生産性を考慮すると、有機溶剤の含有率は0.01質量以上であってもよい。

有機溶剤としては、20℃のもとでの水に対する溶解性が5g/L以上のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは10g/L以上である。溶解性が5g/L未満のものは、相分離がおこるなど安定性に問題がある。中でも、沸点が30〜250℃のものが好ましく、50〜200℃のものが特に好ましい。有機溶剤の沸点が30℃未満の場合は、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなって、水性化が完全に進行しないことがある。沸点が250℃を超える有機溶剤は、樹脂被膜から乾燥によって飛散することが困難であり、これにより被膜の耐水性が悪化する場合がある。
本発明において使用することができる有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。上記の有機溶剤の中でも、樹脂の水性化がし易く、しかも水性媒体中から有機溶剤を除去し易いという点から、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からイソプロパノールが特に好ましい。これらの有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の製造方法によれば、得られた水性分散体を室温まで冷却することにより、その過程で何ら凝集することなく、数平均粒子径0.01〜10μmの微細なポリアミド樹脂水性分散体が得られる。
前述の分散槽としては、ポリアミド樹脂が水性分散媒中で軟化する温度以上の温度に加熱できる手段と、内容物に剪断力を与えることのできる撹拌手段とを備えた耐圧容器であれば、特に限定されない。例えば、撹拌機付き耐圧オートクレーブ等を使用することができる。
本発明においては、水性分散媒中で軟化したポリアミド樹脂は、撹拌により、剪断力を受けるとともに、酸性物質の作用で樹脂中の末端アミノ基が親水性の塩となって水中での安定な乳化剤の役割を果たすため、数平均粒子径が0.01〜10μmの微細な樹脂体滴の分散体となる。
得られたポリアミド樹脂水性分散体は、半透膜等の適当な濃縮手段を用いて、任意の濃度に調整してもよい。
耐水性、耐溶剤性などの各種の塗膜性能をさらに向上させるために、水性分散体中のポリアミド樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜60質量部添加することができる。架橋剤の添加量が0.01質量部未満の場合は塗膜性能の向上の程度が小さく、100質量部を超える場合は加工性等の性能が低下してしまう。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができる。具体的には、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用しても良い。
本発明の水性分散体には、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加することも可能である。
得られたポリアミド樹脂水性分散体は、そのまま使用することができるほかに、遠心分離や濾過により固体分離した後、噴霧乾燥等の乾燥手段によって微粉末化して使用することもできる。
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の実施例、比較例において、水性分散体の特性は、下記の方法によって測定または評価した。
(1)水性化収率[%]
水性化後の水性分散体を、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)を用いて空気圧0.2MPaで加圧濾過した際に、フィルター上に残存する樹脂質量を測定し、その測定値と仕込み樹脂質量とから収率を算出した。
(2)水性分散体の固形分濃度[質量%]
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱して、固形分濃度を求めた。
(3)水性分散体の平均粒子径[μm]
日機装社製のマイクロトラック粒度分布計 UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用いて、数平均粒子径および重量平均粒子径を求めた。
(4)水性分散体のポットライフ
水性分散体を室温で30日放置した後に、その外観を次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし
△:増粘がみられる
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる
(5)混合安定性
水性分散体30gに酢酸を1g添加し撹拌したときの外観の変化を、次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし
△:増粘がみられる
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる
[実施例1]
ヒーター付きで密閉できる耐圧構造の1リットルのオートクレーブ中に、6/66/12共重合ナイロン[末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=10/90、末端アミノ基180ミリモル/kg]100.0gと、35%塩酸2.0g[1.07モル倍/アミノ基]と、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル50.0gと、水348.0gとを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し毎分300回転で撹拌しながら、オートクレーブ内部を150℃まで昇温した。そして、内温を150℃に保ちながら、さらに30分間撹拌した後、内容物を30℃まで冷却し、オートクレーブより取り出して、実施例1のポリアミド樹脂水性分散体を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示す。
参考例1
ヒーター付きで密閉できる耐圧構造の1リットルのオートクレーブ中に、6/66/11/12共重合ナイロン[末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=2/98、末端アミノ基270ミリモル/kg]100.0gと、35%塩酸3.0g[1.07モル倍/アミノ基]と、水397.0gとを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し毎分300回転で撹拌しながら、オートクレーブ内部を170℃まで昇温した。そして、内温を170℃に保ちながら、さらに30分間撹拌した後、内容物を30℃まで冷却し、オートクレーブより取り出して、実施例2のポリアミド樹脂水性分散体を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示す。
[実施例3]
ヒーター付きで密閉できる耐圧構造の1リットルのオートクレーブ中に、12−ナイロン[末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=35/65、末端アミノ基100ミリモル/kg]100.0gと、35%塩酸1.5g[1.4モル倍/アミノ基]と、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル50.0gと、水348.5gとを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し毎分300回転で撹拌しながら、オートクレーブ内部を200℃まで昇温した。そして内温を200℃に保ちながら、さらに30分間撹拌した後、内容物を30℃まで冷却し、オートクレーブより取り出して、実施例3のポリアミド樹脂水性分散体を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示す。
[実施例4]
実施例1で得られた水性分散体の樹脂100質量部に対して架橋剤であるメラニン化合物(三井サイテック社製、サイメル325)を20質量部添加して、実施例4のポリアミド樹脂水性分散体を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示す。
[比較例1]
ヒーター付きで密閉できる耐圧構造の1リットルのオートクレーブ中に、6/66/12共重合ナイロン[末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=10/90、末端アミノ基180ミリモル/kg]100.0gと、35%塩酸0.2g[0.1モル倍/アミノ基]と、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル50.0gと、水349.8gとを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し毎分300回転で撹拌しながら、オートクレーブ内部を150℃まで昇温した。そして内温を150℃に保ちながら、さらに30分間撹拌した後、内容物を30℃まで冷却し、オートクレーブより取り出した。しかし、取り出したポリアミド樹脂は塊状であり、水性分散体は得られなかった。
[比較例2]
ヒーター付きで密閉できる耐圧構造の1リットルのオートクレーブ中に、6/66/12共重合ナイロン[末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=87/13、末端アミノ基19.4ミリモル/kg]100.0gと、35%塩酸0.3g[1.5モル倍/アミノ基]と、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル50.0gと、水349.7gとを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し毎分300回転で撹拌しながら、オートクレーブ内部を150℃まで昇温した。そして内温を150℃に保ちながら、さらに30分間撹拌した後、内容物を30℃まで冷却し、オートクレーブより取り出した。しかし、取り出したポリアミド樹脂は塊状であり、水性分散体は得られなかった。
[比較例3]
ヒーター付きで密閉できる耐圧構造の1リットルのオートクレーブ中に、6/66/12共重合ナイロン[末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=92/8、末端カルボキシル基165ミリモル/kg]100.0gと、10%水酸化ナトリウム水溶液7.0g[1.06モル倍/カルボキシル基]と、有機溶剤としてのエチレングリコールモノブチルエーテル50.0gと、水343.0gとを仕込み、密閉した。次に、撹拌機を始動し毎分300回転で撹拌しながら、オートクレーブ内部を150℃まで昇温した。そして内温を150℃に保ちながら、さらに30分間撹拌した後、内容物を30℃まで冷却し、オートクレーブより取り出し、比較例3のポリアミド樹脂水性分散体を得た。この水性分散体の各種特性を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、加える塩酸量を9.4g[5モル倍/アミノ基]とした。そして、それ以外は実施例1と同様の操作を行なった。しかし、ポリアミド術水性分散体は得られたものの、そのpHは1以下(強酸)となり、実用的なものではなかった。
Figure 0005311718
表1に示すように、本発明にもとづき、特定範囲の末端基を有するポリアミド樹脂に特定範囲の酸性物質を添加することにより、微細かつ安定に水性媒体中に分散した水性分散体を得ることができた。さらに得られた水性分散体のポットライフは良好であり、酸性化合物との混合安定性も良好であった(実施例1、3および4)。

しかし、添加する酸性物質の量が本発明の範囲を外れて少なかった場合は、水性分散体が得られなかった(比較例1)。また、用いるポリアミド樹脂の末端組成が本発明の範囲外であり末端カルボキシル基が多過ぎる場合も、水性分散体が得られなかった(比較例2)。また、本発明外の樹脂であるカルボキシル基末端が多過ぎるポリアミド樹脂は、アルカリを添加する従来の方法を用いることで水性分散体は得られたが、その水性分散体は酸性化合物との混合安定性が悪く、酸性化合物との併用のできないものであった(比較例3)。また、添加する酸性物質の量が本発明の範囲を外れて多かった場合は、水性分散体は得られたが、そのpHは1以下(強酸)となり、実用的なものではなかった。

Claims (1)

  1. ポリアミド樹脂水性分散体の製造方法であって、
    末端カルボキシル基と末端アミノ基の割合が、モル比で、(末端カルボキシル基)/(末端アミノ基)=40/60〜0/100であるポリアミド樹脂100質量部と、
    末端アミノ基1モル当たり0.2〜3モルの割合の酸性物質と、
    ポリアミド樹脂100質量部に対して30〜1500質量部の水と、
    得られる水性分散体100質量部に対して1〜40質量部の20℃のもとでの水に対する溶解性が5g/L以上、かつ沸点が30〜250℃の有機溶剤とを、
    密閉容器に供給し、該密閉容器を密閉した後、昇温し、
    密閉容器中で70〜280℃の温度で加熱、撹拌することを特徴とするポリアミド樹脂水性分散体の製造方法。
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