JP5309861B2 - 数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ブローチ刃溝のすくい面を自動研削する数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置を自動的に検出する基準すくい面の検出方法に関する。
従来、数値制御ブローチ盤によりブローチ工具の刃溝のすくい面を研削することが行われている。研削にあたっては、研削するブローチの切れ刃の外径、切れ刃のピッチ、研削代等のブローチの各部のデータを数値制御装置(NC装置)に入力する。そして、この入力データを基に、NC装置からの制御信号によりサーボモータを駆動し、研削するブローチ工具が載置されたテーブル、砥石軸頭を上下左右、あるいはブローチ工具、砥石を回転させて、ブローチ工具の刃溝のすくい面を自動研削している。
かかるブローチデータは、設計図データや、ブローチ工具の刃部の位置を直接測定したデータ、あるいは、再研削時の取得データ等の一部あるいは全部を単独に又は組み合わせて使用している(例えば特許文献1)。
しかし、かかる場合においては、各すくい面のデータを活用するために、基準となるすくい面を確定しなければならない。そのためには、加工軸芯に対して、基準となるすくい面が中心になるようにブローチ工具をテーブルに載置する。次に、タッチセンサを手動で移動させながら基準となるすくい面近傍にタッチセンサのプローブを位置決めし、さらに、すくい面にプローブを当接させて、基準位置を検出測定する必要がある。
この基準すくい面を検出するためには、刃部とタッチセンサのプローブとの狭い空間を作業者がのぞき込むため、照明を必要としたり、位置が不正確になるなど、作業が大変で時間がかかっていた。また、ブローチ工具のテーブルの載置にあたっても、切れ刃が丸刃であれば位置決めは容易であるが、歯車列のような場合には、歯の中心位置合わせに苦労をしていた。さらに、近年は、デザインや研削液の飛散防止等の為、研削盤の一部や全体にカバーを設けているので、かかる設定作業は、さらにやりにくいものとなっている。
そこで、特許文献2においては、歯車等の歯部の位置検出するために、歯車を揺動又は回転させながら、タッチセンサのプローブを歯車軸芯に向かって移動させ、歯先を検出し、歯車外周とプローブとを接触させながら回転させ、歯溝位置を検出している。また、歯溝内方向にプローブを移動させ、さらに、揺動することにより、歯車の歯面を検出して、歯車の位相合わせ等を行い加工開始位置を検出している。さらに、特許文献3においては、曲がりかさ状歯車のような複雑な形状のものも、まがり歯特有の演算を加え、歯車の位相検出をおこなっている。
特公平7−10481号公報 特許第2572155号公報 特許第3760109号公報
しかし、特許文献2においては、測定歯車は一個の歯車であるので、タッチセンサの軸方向の測定位置決めは容易であり、特に開示されていない。また、特許文献3においては、タッチセンサの軸方向の測定位置は歯車諸元に応じて、計算であらかじめ設定されている(段落[0043]後段及び図11)。
これに対して、ブローチ工具の刃は、多数の歯を有する多数の刃列から構成されているので、特定の刃列を基準刃部として選択し、また、基準刃部の切れ刃のすくい面を決定する必要がある。また、ブローチ工具の刃部のランド幅、刃溝幅はブローチ工具長さを短くする等の理由で小さいものが多い。一方、ブローチ工具の研削盤への取付はブローチ工具両端部のセンタ穴にセンター押しをあてて行うので、軸方向の刃部の位置はバラツキがあり確定したものではない。従って、特許文献2,3のようにタッチセンサの開始位置を所定歯部に対応する位置へ設計諸元データ等から自動的に行うことはできないという問題があった。
また、使用済みブローチの再研削にあたっては、刃欠けや異常摩耗等が生じる場合がある。その場合に、自動検出した位置が異常摩耗や刃欠け等の部分でないことを検出する必要がある。
さらに、引用文献2,3のように、タッチセンサのプローブで歯先先端を擦ると、プローブが摩耗したり、バリ、刃欠け、ごみ等によるプローブやタッチセンサの破損を招くことになる。
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、ブローチ工具をテーブルへ載置した後、自動的にブローチ工具の基準刃部を探し出し、さらに、基準すくい面を検出し、基準すくい面に基づいて、各刃部のすくい面位置を自動測定できるようにし、ブローチ工具のテーブルへの取付作業、タッチセンサの設定作業を容易にすることである。また、刃欠けや異常摩耗の影響を少なくすることである。さらには、タッチセンサのプローブの摩耗や破損を防止することである。
本発明においては、数値制御ブローチ研削盤に載置されたブローチ工具のすくい面を研削加工するための基準すくい面のタッチセンサによる位置検出方法において、前記基準すくい面を前記ブローチ工具の最大外径又は高さの最後端の刃部のすくい面とし、
(A)前記タッチセンサのプローブを加工軸線上の前記最後端の刃部の背面側の前記最外径又は高さより低い所定の位置に位置決めし、これを検出開始位置とし、
(B)前記プローブを加工軸線に沿って前記刃部の背面に向けて相対移動させ、かつ、前記ブローチ工具を回転又は揺動させて、
(C)前記プローブの接触信号を検出した位置を検出位置とし、
(D)前記検出位置で、前記ブローチ工具の回転又は揺動を停止し、又は前記プローブを所定量待避させかつ前記ブローチ工具を前記検出位置から所定回転進めて停止し、ブローチ工具の回転方向を固定し、前記プローブを所定量上方に移動させ、さらに、前記プローブを前記刃部のランドに沿って所定量相対移動させ、さらに、前記プローブを所定量下方位置に向けて移動させ、前記プローブの接触信号を検出したときに、前記プローブを所定量上方へ移動させて、再度前記プローブを前記刃部のランドに沿うように所定量移動させ、前記プローブを所定量下方位置へ向けて移動させて再び前記プローブの接触信号を検出したときに、前記プローブを所定量上方へ移動させることを繰り返し、
(E)前記プローブが所定量下方位置となった位置でプローブを停止し、
(F)該位置を前記基準すくい面の刃溝部とし、
(G)前記ブローチ工具を所定角度ずつ間歇回転又は揺動させながら、前記プローブをすくい面側に前後移動させ、前記すくい面の位置を自動検出する数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法を提供することにより前述した課題を解決した。
即ち、最大外径又は高さの最後端の刃部のすくい面を基準すくい面とし、ブローチ工具を回転又は揺動させながら刃部の背面側からプローブを接近させることにより、刃部を探りあてるようにした。これにより、プローブの検出開始位置はブローチ工具の後つかみ部等の加工軸方向に寸法的な余裕のある側となるので、精度の高い位置設定は不要である。さらに、プローブが基準刃部の背面付近に接触した位置で回転又は揺動を停止し、次に刃部に対して、微少所定量上昇、移動、下降を繰り返し刃部のランド、肩部又は歯側面を検出・確認しながら移動させる。
なお、このとき、基準刃部の背面に接触した場合に、プローブの高さにより、接触位置はランド又は肩部あるいは歯側面となる。歯側面では、プローブの上下移動ですべりが生じたり、接触位置が安定しない。そこで、検出位置で、ブローチ工具の回転又は揺動を停止した後、プローブを一度上方へ移動させ、検出位置から所定回転進めた位置でブローチ工具の回転方向を固定し、例えば、ランドに当接するようにして、プローブによる上昇、移動、加工の繰り返し検出・確認しながら移動させるのが好ましい。
さらに、プローブがランドを通過すると、プローブは下降をつづけ、所定量となった位置でプローブを停止させる。この位置を基準すくい面の刃溝と推定することができ、基準すくい面を特定することができる。さらに、プローブを軸方向に移動させるとすくい面に接触するので、すくい面の位置を特定することができる。
本発明においては、刃部の背面を検出した後、すくい面の検出に当たって、歯すじに沿って、プローブを上下に移動させながら判定している。これに対し、検出時は歯溝間にプローブを配置させることができるので、例えば、図10に示すように、ブローチ工具2を揺動回転(矢印51)させて、歯溝52を回転方向に揺動させながら歯溝を形成する歯側面52a,52bを交互に検出しながら移動させて刃部5の有無を判定して、歯側面を検出できなくなった位置(矢印53)ですくい面3の刃溝15を検出することも可能である。しかし、この場合は、刃溝15の幅が小さい場合(新品等)に、歯すじ方向(矢印54)の送り量が大きいと、次の刃部55の歯にプローブ40が接触し、さらに、検出を続けてしまい、基準の刃溝15を検出できないおそれがある。これに対し、本発明のプローブを上下方向に移動させる場合は、かかる誤検出はなく、確実に刃溝15を検出できるのである。
さらに、プローブを加工軸方向に前後に移動させながらブローチ工具を間歇回転、揺動させることにより、回転角度に対するすくい面の位置を検出することができ、このデータを処理することにより基準すくい面の位置や歯の位相を特定することができる。より詳述すれば、例えば、引用文献2,3の場合は、歯先の上方から下方に向けてプローブを接近させ、歯先位置、歯溝位置、歯面位置等を検出し、歯車の位相を検出している。これと同様に、本発明においては、歯先に代えて歯端面(すくい面に相当)からアプローチすることにより、基準すくい面又は歯の位相、歯溝位置を検出することができる。
また、請求項2に記載の発明においては、前記(C)に記載の検出位置を検出した後、前記検出前位置にプローブを戻し停止させ、前記ブローチ工具を少なくとも歯ピッチ円上で歯ピッチ以上の所定角度回転させて、前記プローブが接触信号を検出したときに異常信号を出力し、前記プローブが接触信号を検出しないまま所定角度に達したときは、前記(C)記載の検出位置へ戻るようにした。
これにより、検出した部分が欠け等の損傷部である場合には、他の位置で最大径または最大高さ部があることになり、それを接触信号として検出した場合には、異常として判定することができる。所定角度の回転角は歯形ピッチ以上であればよく、さらに、一回転させればより確実である。しかし、ブローチ工具の背面側は汚れを拭き取りにくく、あるいは汚れが貯まりやすいのでその影響を避けるため、90°〜180°程度で回転させるのが好ましい。
さらに、請求項3に記載の発明においては、前記(E)に記載の前記プローブが所定量下方位置となった位置でプローブを停止した後、前記ブローチ工具を少なくとも歯ピッチ円上で歯ピッチ以上の所定量へ向けて回転させて、前記プローブが接触信号を検出したときに異常信号を出力し、前記プローブが接触信号を検出しないまま所定量に達したときは、前記(E)記載の位置へ戻るようにした。これにより、請求項2と同様に、すくい面側の異常を検出することができる。
また、請求項4に記載の発明においては、前記(G)記載の前記ブローチ工具を間歇回転させながら、前記プローブをすくい面側に所定量前後移動させ、前記すくい面の位置を自動検出する方法において、
(H)前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、所定量に達する前に前記プローブが接触信号を検出した場合は、前記プローブを戻し、前記ブローチ工具を所定量回転させ、前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、これを繰り返し、
(I)前記プローブが接触信号を検出することなく所定量に達した場合は、前記プローブを戻し、前記ブローチ工具をさらに、所定角度回転させ、前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、これを繰り返し、
(J)再び、所定量に達する前に前記プローブが接触信号を検出した場合は、この位置を基準すくい面の一端として記録し、
(K)前記プローブを戻し、前記ブローチ工具を所定角度回転させ、前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、所定量に達する前に前記プローブが接触信号を検出した場合は、前記プローブを戻し、前記ブローチ工具をさらに所定角度回転させ、再度前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、これを繰り返し、
(L)再び、前記プローブが接触信号を検出することなく所定量に達した場合は、この位置を基準すくい面の他端として記録し、
(M)前記すくい面の一端と他端との中間位置を基準すくい面の中心として、位置決めするようにした。
即ち、プローブを基準すくい面の刃溝で停止し、次に基準すくい面に対して、微少所定量プローブ前進、接触信号検出、プローブ後退、所定角度ブローチ工具回転を繰り返し基準すくい面を検出・確認しながら回転方向に移動させる。プローブが所定移動量の間に検出信号がなくなった位置でさらに、所定量プローブ前進、プローブ後退、所定角度ブローチ工具回転を接触信号を検出するまで繰り返す。そして、接触信号を検出した位置を基準すくい面の一端側の位相開始角度となり特定される。即ち、回転方向の位相が未確定の最初のすくい面及び歯溝を飛び越し、基準すくい面の一端の位置を特定できる。
さらに、基準すくい面に対して、微少所定量プローブ前進、接触信号検出、プローブ後退、所定角度ブローチ工具回転を繰り返し、基準すくい面を検出・確認しながら回転方向に移動させる。プローブが所定移動量の間に検出信号がなくなった位置を基準すくい面の他端と特定できる。これにより、基準すくい面の幅を、即ち歯幅を回転角度で特定できる。従って、この回転角度の中央がすくい面の中心、即ち歯の中心として特定できることとなり、これをブローチ工具回転軸の基準角度として後の制御の基準とすることができる。
また、請求項5に記載の発明においては、前記ブローチ工具ははすば歯車用であって、前記加工軸線方向は歯すじ方向であり、前記回転方向は歯のねじれ溝方向となるようにした。このように相対回転及び移動をすれば、ねじれ刃やはすば刃ブローチにも適用できる。
以上述べたように、本発明においては、ブローチ工具を回転又は揺動させながら刃部の背面側からプローブを接近させ刃部を探りあて、プローブを微少所定量上昇、移動、下降を繰り返し刃部のランド又は肩部を検出・確認しながら移動させて、基準すくい面の刃溝を特定し、さらに、プローブを軸方向に移動させてすくい面の位置を特定し、さらに、回転角度に対するすくい面の位置を検出し、データを処理することにより基準すくい面の位置や歯の位相を特定するという一連の動作を自動化することができるので、ブローチ工具をテーブルに載置した後、基準すくい面を自動的に特定できるものとなり、ブローチ工具のテーブルへの取付作業、プローブの設定作業が容易にものとなった。さらには、タッチセンサと刃部とは、接触状態のまま移動することがないので、タッチセンサの摩耗や破損を減ずるものとなった。
また、請求項2または3に記載の発明においては、検出した部分が欠け等の損傷部である場合には、異常として検出することができるので、検出をそのまま続けて誤った測定や加工を防止できるものとなった。
さらに、請求項4に記載の発明においては、基準すくい面に対して、微少所定量プローブを前進、後退、所定角度ブローチ工具回転の繰り返しにより、基準すくい面の幅を回転角度で特定でき、ブローチ工具回転軸の基準角度として後の制御の基準とすることができるので、自動化が容易であり、さらに、前述したと同様に、タッチセンサと刃部とは、接触状態のまま移動することがないので、タッチセンサの摩耗や破損を減ずるものとなった。
また、請求項5に記載の発明においては、相対回転及び移動によりねじれ刃やはすば刃ブローチにも適用でき、種々のブローチの研削加工に応用できるものとなった。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明に用いるNC(数値制御)ブローチ研削盤は一般的なものであり、また、主たる制御等についても特許文献1に記載のものと同様であるので簡単に説明する。図1は本発明にかかるNCブローチ研削盤の一実施例を示す正面図、図2は同右側面図、図3は砥石軸頭部の部分拡大正面図、図4は同部分拡大右側面図である。図1及び4において、NCブローチ研削盤1は、ベッド31の上面に形成されたスライドウエイ32にテーブル33が載置されており、ベッド31上をテーブル33が水平方向(図1でみて左右方向)に動くようにされている。水平テーブル33の両端にワークヘッド34とテールストック35が固定されワークヘッドの主軸36はモータ37によって回転するようになっている。ブローチ工具2はワークヘッド側のセンターとテールストック側のセンター38によって挾持されてワークヘッド34と共に、廻し金39により回転を与えられる。
一方、ベッド31の背面に形成されたスライドウエイ41にコラム42が取付けられており、コラムが上下するようになっている。コラム42の上面にラム旋回台43が載置され、ラム旋回台43上に形成されたスライドウエイ44にラム45が図1の紙面に直交する方向(図2において左右方向)に移動可能に取付けられている。また、スライドウエイ44及びラム45はラム旋回台43上で回転可能にされている。ラム45のテーブル側先端45aには砥石軸頭46が設けられ、砥石軸頭はラム45の長手方向軸45cに対して、揺動可能にされている。
図3,4に示すように、砥石軸頭46の前面(図3でみて手前、図4でみて左側)にラム45の長手方向軸45cとはオフセット(芯違い)して直角方向に砥石軸47が伸びており、その先端に砥石48が取り付けられている。これにより、砥石軸頭46は、図1でみて、上下、前後に相対移動可能にされ、さらに、砥石軸47は長手方向軸45cに対して揺動可能にされているので、テーブル33に対して砥石を傾動可能にされている。また、ラム旋回台43により、砥石軸頭46の前後方向の移動軸を傾けることも可能にされている。
砥石軸頭46の砥石軸47の前面(図3でみて手前、図4でみて左側)には、さらに、タッチセンサ4が取り付けられている。タッチセンサ4は、スライダー49により、砥石軸47の軸方向に対して直角及び垂直方向に移動可能にされ、砥石軸47に対して位置調整可能にされている。タッチセンサ4は先端に小球40aを有するプローブ40を有しており、プローブが物体に接触すると接触信号を出力するようにされている。
かかるNCブローチ研削盤1においては、図示しない制御装置により、砥石軸頭46はテーブル33に対して、図1でみて上下、前後、傾動、さらには旋回方向に制御され、砥石軸47及びタッチセンサ4(プローブ40)の位置制御が可能とされている。さらに、制御装置により、テーブル33の図1でみての左右移動制御、さらにはブローチ工具2の回転制御が可能とされている。
制御装置には記憶装置が設けられている。記憶装置には複数のブローチ工具の切刃のピッチ、刃数、外径、すくい角などブローチの諸元砥石の回転数のセット角など機械のセット条件を決めるデータ研削代、送り速度など研削条件を決めるデータが入力される。このデータ即ち指令により、縦断面が台形の砥石48を回転させながら、前述した相対移動を組み合わせて砥石の位置を制御し、砥石先端の下底側(内側)48aをテーブル33に載置されたブローチ工具2の刃溝のすくい面3、30に押し当てすくい面を研削するようにされている。
かかるNCブローチ研削盤1によるブローチ工具2のすくい面の研削加工にあたって、基準となるすくい面30を特定し、それを基準として、各すくい面位置を順次測定する。
そして、かかるすくい面位置の測定データと、予め記憶装置に記憶されたデータ指令とを用いて、前述の研削を一刃ずつ順次行う。本発明の実施の形態においては、タッチセンサ4によりこの基準となるすくい面30位置を自動検出するものである。以下詳述する。説
明にあたって、(A)乃至(M)の符号は請求項及び明細書の項分けの符号に合わせてある。
本発明の実施の形態の説明で使用する被研削ブローチ工具2は、図1に示すように、内歯歯車の歯を加工するブローチ工具を例としたものである。ブローチ工具2は、前つかみ部2aにつづき、円筒形の案内部2b、漸次切刃が径または周方向に増大する切れ刃を有する多数の刃部2cが設けられている。さらに、最終的に多数の歯が円周方向に並ぶ仕上刃部2dを後端に備え、仕上げ刃部に続いて、仕上げ刃部の最外径より小径の後ろ案内部2e、後ろつかみ部2fからなる。仕上げ刃部2dは1枚でも多数でもよいが、一番最後端が本発明の基準仕上げ刃5となる。かかる、ブローチ工具2においては、後端の仕上げ刃部のすくい面を基準すくい面30とする。なお、本実施の形態においては、タッチセンサ4は砥石軸47とは所定位置で固定され、砥石軸とは同じ動作となる。また、ラム旋回台43は原位置に設定され、ラム45は、ブローチ工具軸(加工軸)8とは直角方向となるようにされる。
まず、人手にて、ブローチ工具2の前つかみ部2aのセンターをワークヘッド34側のセンターに合わせ、後ろつかみ部2fのセンターをテールストック35側のセンター38に合わせて、両センター間ブローチ工具2を挾持する。さらに、ワークヘッド34と共に、廻し金39によりブローチ工具2が回転可能になるようセットする。
次に制御装置に自動検出を開始するよう指示する。以後自動で制御される。図5(a)乃至(c)は本発明の実施の形態である基準すくい面を有する刃部を探しだす動作を示す説明図である。図5(a)、(b)に示すように、(A)砥石軸頭46の位置を制御し、タッチセンサ4のプローブ40位置が後ろ案内部2eの例えば中央部の所定位置データと一致するように、また、高さ方向位置が仕上げ刃部の最外径21より小さく、後ろ案内部2eの外径より大きな所定位置データと一致するように指示する。これにより、プローブ40は、最後端の刃部5の背面側の最外径より低い所定の位置に位置決めされる。これを検出開始位置7として記憶する。即ち、多数が密に並ぶ刃列の軸方向寸法に対し、後ろ案内部2eの軸方向寸法は充分長いので、ブローチ工具2の取付誤差等があっても、精度を高く設定する必要がなく、刃列の読み違いが生じない。なお、後ろ案内部の他、後ろつかみ部2f等でもよい。また、干渉する部分も少ないので誤動作も極小にできる。
次に、(B)プローブ40の接触信号の有無を確認しながら、テーブル33を右方向に移動(矢印10a)させると同時に、ブローチ工具2を所定角の範囲で揺動(矢印9)させる。即ち、プローブ40を加工軸8線に沿って刃部5の背面に向けて相対移動させ、かつ、ブローチ工具2を揺動(矢印9)させる。 次に、(C)プローブ40の接触信号があるまで、移動させ、プローブの接触信号を検出した位置を検出位置10として記憶する。所定距離信号がない場合は異常信号として処理し、停止する。
次に、検出位置10を検出した後、これが基準すくい面の刃部5であるかどうかを判定する。図6は本発明の実施の形態である基準すくい面の刃部の適否を判定する動作を示す説明図である。図6に示すように、プローブ40の接触信号を検出した後、検出前位置にプローブを戻し停止させる。そして、ブローチ工具2を90°回転させる(符号9a)。その間に、プローブが接触信号を検出したときに異常信号を出力し、異常処理を行い停止する。プローブが接触信号を検出しないまま所定量に達したときは、記憶した検出位置10へ戻る(符号9b)。これにより、基準となる刃部5の背面または背面近傍を検出できているかどうかのチェックができる。
基準となる刃部5を検出した後、基準の刃溝部15を探し出す。図7は本発明の実施の形態である基準すくい面の刃溝を検出する動作を示す説明図である。図7(a)、(b)に示すように、(D)検出位置10より歯ピッチ角度の5分の1進ませた位置で、ブローチ工具2の揺動を停止し、砥石軸頭46を上方に移動させることにより、プローブ40をプローブの先端40a径以上上方へ移動(矢印11)させる。さらに、テーブル33を右方向にプローブの先端径の半分の距離移動(矢印12)させる。さらに、プローブ40を上方移動量となるように下方位置に向けて移動(矢印13)させる。プローブの接触信号を検出したときに、プローブを再度上方へ移動(矢印11)させて、テーブル33を再度右方向に移動(矢印12)させ、プローブ40を下方位置へ向けて移動(矢印13)させて再びプローブの接触信号を検出したときに、プローブを上方へ移動させることを繰り返す。そして、図7(c)の矢印14に示すように、(E)プローブ40が下方指令位置データに達した位置を所定量下方位置となった位置として、記憶し、プローブを停止する。
プローブ40を停止した後、ブローチ工具2を90°回転(矢印16a)させて、プローブが接触信号を検出したときに異常信号を出力し、異常処理を行い停止する。(C)と同様に、刃欠け等の損傷がある場合に有効である。プローブ40が接触信号を検出しないまま所定量に達したときは、記憶した位置へ戻す(矢印16b)。(F)この位置を基準すくい面の刃溝部15として記憶する。
以上の動作により、基準すくい面30の刃溝部15位置が自動検出される。なお、プローブ40の下方位置指令データは上方移動量の倍となるようにしたが、刃溝深さや、すくい面の加工基準径、ピッチ円径等は図面データ等にて記憶されているので、干渉しない程度の高さ、あるいは加工基準径、ピッチ円径等にプローブの位置を設定してもよい。
次に、(G)ブローチ工具を間歇回転させながら、テーブルを左右動させ、プローブによりすくい面の位置を自動検出する。図8は本発明の実施の形態である基準すくい面を検出する動作を示す説明図である。即ち、図8(a)、(b)に示すように、(H)テーブル33を左方向に移動させ、プローブ40をすくい面30側に刃長分移動(矢印17b、17d)させ、刃長に達する前にプローブが接触信号を検出した場合(矢印17a)は、テーブルを右方向に(プローブを)戻し、ブローチ工具2をプローブの先端40a径の半分回転させ、さらに、テーブルを左方向に(プローブをすくい面側)に刃長分移動(矢印17b、17d)させ、これを繰り返し、図8(a)、(c)に示すように、(I)プローブが接触信号を検出することなくテーブル移動量が刃長に達した場合(矢印17b)は、テーブルを右方向に戻し、ブローチ工具をさらに、回転させ、テーブルを左方向に移動させ、これを繰り返す。
図8(a)、(d)に示すように、(J)再び、テーブル移動量が刃長に達する前にプローブ40が接触信号を検出した場合は、この位置を基準すくい面の一端18として記憶する。
(K)テーブル33を右方向に戻し、ブローチ工具2を回転させ、テーブルを左方向に移動させ、刃長に達する前にプローブが接触信号を検出した場合(矢印17c)は、テーブルを右方向に戻し、ブローチ工具をさらに回転させ、再度テーブルを左方向に移動させ、これを繰り返し、図8(a)、(c)に示すように、(L)再び、プローブ40が接触信号を検出することなく刃長に達した場合(矢印17d)は、この位置を基準すくい面の他端19として記憶する。
以上の動作により、刃部5の歯の歯厚方向の位置が特定できる。従って、(M)前記すくい面の一端18と他端19との中間位置を基準すくい面30の中心として、計算し、この位置となるようブローチ工具を回転固定することにより、測定基準となるブローチ工具の角度を決定できる。このように、ブローチ工具2の基準すくい面30の軸方向の位置が特定され、基準すくい面の中心位置が割り出されるので、これを基準として、制御装置に記憶された、データを基に、各刃部のすくい面3を順次測定することが可能となる。なお、基準すくい面が特定された以降は、図9に示すように、所定の径のすくい面の位置や30a、刃溝底部の位置(15a)を測定し、従来の自動測定方法により各刃部のすくい面が測定可能となる。また、その結果による自動研削・再研削も従来の自動研削方法により研削可能であるので、説明を省略する。
なお、ブローチ工具がはすば歯車用のヘリカルブローチの場合は、刃部の歯すじ及びすくい面がねじれている。この場合には、ラム旋回台を旋回させ砥石軸頭を所定のねじれが加工できるように設定する。プローブを加工軸線方向に移動させるときは、テーブルの移動と同時にブローチを同期回転させ、結果として、プローブが歯すじに沿って移動するように制御すればよい。また、すくい面の検出にあたって、ブローチ工具の回転に同期して、テーブルを移動させ、すくい面に沿ってプローブがねじれ溝方向に移動するように制御すればよい。
また、実施の形態では、仕上げ刃が歯車状のものの例について述べたが、刃部の後部にバニシング刃をもつバニシング刃付きブローチ、刃部の前部または後部に丸刃をもつ丸刃付きブローチ、丸刃とスプライン刃などとを交互に配列した交互丸刃付きブローチ等に適宜適用できることはいうまでもない。最大径の歯部でかつ最後端を基準として探りだせばよいのである。また、本実施の形態にあたっては、NC研削盤は従来例を用いて説明したが、カバーで一部や全体を覆ったり、制御盤を別置きにしたり種々のものに適用できることはいうまでもない。
本発明にかかるNCブローチ研削盤の一実施例を示す正面図である。 本発明にかかるNCブローチ研削盤の一実施例を示す右側面図である。 本発明にかかるNCブローチ研削盤の一実施例を示す砥石軸頭部の部分拡大正面図である。 本発明にかかるNCブローチ研削盤の一実施例を示す砥石軸頭部の部分拡大右側面図である。 本発明の実施の形態である基準すくい面を有する刃部を探しだす動作を示す説明図である。 本発明の実施の形態である基準すくい面の刃部の適否を判定する動作を示す説明図である。 本発明の実施の形態である基準すくい面の刃溝を検出する動作を示す説明図である。 本発明の実施の形態である基準すくい面を検出する動作を示す(a)は説明図、(b)は(a)のA−A線、(c)は(a)のB−B線、(d)は(a)のC−C線又はD−D線の部分拡大断面図である。 本発明にかかる測定位置を示す部分拡大断面図である。 本発明の参考に示す基準すくい面を有する刃部を探しだす動作を示す説明図である。
符号の説明
1 数値制御(NC)ブローチ研削盤
2 ブローチ工具
3 すくい面
4 タッチセンサ
5 刃部
6 背面
7 検出開始位置
8 加工軸
10 (背面)検出位置
15 基準すくい面の刃溝部
18 基準すくい面の一端
19 基準すくい面の他端
21 最外径又は最外径高さ
22 ランド
30 基準すくい面
40 プローブ

Claims (5)

  1. 数値制御ブローチ研削盤に載置されたブローチ工具のすくい面を研削加工するための基準すくい面のタッチセンサによる位置検出方法において、前記基準すくい面を前記ブローチ工具の最大外径又は高さの最後端の刃部のすくい面とし、
    (A)前記タッチセンサのプローブを加工軸線上の前記最後端の刃部の背面側の前記最外径又は高さより低い所定の位置に位置決めし、これを検出開始位置とし、
    (B)前記プローブを加工軸線に沿って前記刃部の背面に向けて相対移動させ、かつ、前記ブローチ工具を回転又は揺動させて、
    (C)前記プローブの接触信号を検出した位置を検出位置とし、
    (D)前記検出位置で、前記ブローチ工具の回転又は揺動を停止し、又は前記プローブを所定量待避させかつ前記ブローチ工具を前記検出位置から所定回転進めて停止し、ブローチ工具の回転方向を固定し、前記プローブを所定量上方に移動させ、さらに、前記プローブを前記刃部のランドに沿って所定量相対移動させ、さらに、前記プローブを所定量下方位置に向けて移動させ、前記プローブの接触信号を検出したときに、前記プローブを所定量上方へ移動させて、再度前記プローブを前記刃部のランドに沿うように所定量移動させ、前記プローブを所定量下方位置へ向けて移動させて再び前記プローブの接触信号を検出したときに、前記プローブを所定量上方へ移動させることを繰り返し、
    (E)前記プローブが所定量下方位置となった位置でプローブを停止し、
    (F)該位置を前記基準すくい面の刃溝部とし、
    (G)前記ブローチ工具を所定角度ずつ間歇回転又は揺動させながら、前記プローブをすくい面側に前後移動させ、前記すくい面の位置を自動検出することを特徴とする数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法。
  2. 前記(C)に記載の検出位置を検出した後、前記検出前位置にプローブを戻し停止させ、前記ブローチ工具を少なくとも歯ピッチ円上で歯ピッチ以上の所定角度回転させて、前記プローブが接触信号を検出したときに異常信号を出力し、前記プローブが接触信号を検出しないまま前記所定角度に達したときは、前記(C)記載の検出位置へ戻るようされていることを特徴とする請求項1記載の数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法。
  3. 前記(E)に記載の前記プローブが所定量下方位置となった位置でプローブを停止した後、前記ブローチ工具を少なくとも歯ピッチ円上で歯ピッチ以上の所定角度へ向けて回転させて、前記プローブが接触信号を検出したときに異常信号を出力し、前記プローブが接触信号を検出しないまま前記所定角度に達したときは、前記(E)記載の位置へ戻るようされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法。
  4. 前記(G)記載の前記ブローチ工具を間歇回転させながら、前記プローブをすくい面側に所定量前後移動させ、前記すくい面の位置を自動検出する方法において、
    (H)前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、所定量に達する前に前記プローブが接触信号を検出した場合は、前記プローブを戻し、前記ブローチ工具を所定角度回転させ、前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、これを繰り返し、
    (I)前記プローブが接触信号を検出することなく所定量に達した場合は、前記プローブを戻し、前記ブローチ工具をさらに、所定角度回転させ、前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、これを繰り返し、
    (J)再び、所定量に達する前に前記プローブが接触信号を検出した場合は、この位置を基準すくい面の一端として記録し、
    (K)前記プローブを戻し、前記ブローチ工具を所定角度回転させ、前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、所定量に達する前に前記プローブが接触信号を検出した場合は、前記プローブを戻し、前記ブローチ工具をさらに所定角度回転させ、再度前記プローブをすくい面側に所定量移動させ、これを繰り返し、
    (L)再び、前記プローブが接触信号を検出することなく所定量に達した場合は、この位置を基準すくい面の他端として記録し、
    (M)前記すくい面の一端と他端との中間位置を基準すくい面の中心として、位置決めすることを特徴とする請求項1又は2又は3記載の数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法。
  5. 前記ブローチ工具ははすば歯車用であって、前記加工軸線方向は歯すじ方向であり、前記回転方向は歯のねじれ溝方向であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の数値制御ブローチ研削盤の基準すくい面の位置検出方法。
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