JP5303320B2 - 地下水起源解析方法、地下水起源解析システム、地下水起源解析プログラム、記録媒体、降雨涵養量演算方法及び降雨涵養量演算部 - Google Patents
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しかしながら、非特許文献1による地下水起源解析では、浸透水量は、経験に基づく予め定められた比率を降雨量に一律に乗算することによって得られる値を浸透水量の近似値とすることによって算出されていた。同じ量の降雨があっても、実際には土地の利用状況などにより浸透する量は異なっている。そのため、実際の浸透水量の近似値が、実際の値を近似しきれずに、近似精度が算出結果に影響するという問題がある。
また、求められた算出結果によって示される涵養地点の妥当性の判定が、一つの算出によって得られた結果から導かれていて検証できないという問題がある。
これにより、降雨涵養量の算出において、流出量を仮定しての算定ではなく、分割された流域におけるそれぞれの地形の特徴によって示される指標に基づいて降雨涵養量を導くことができる。
これにより、水の流れやすさを示す2つの因子抽出し、それらの因子に基づいて算定される流域の流出指標を算定することができ、流域の特徴に応じた降雨涵養量を導くことができる。
これにより、降雨涵養量演算部は、降雨涵養量の算出において、流出量を仮定しての算定ではなく、分割された流域におけるそれぞれの地形の特徴によって示される指標に基づいて降雨涵養量を導くことができる。
これにより、降雨涵養量演算部は、降雨涵養量の算出において、流出量を仮定しての算定ではなく、分割された流域におけるそれぞれの地形の特徴によって示される指標に基づいて降雨涵養量を導くことができる。
また、流出量の算出は、第1の工程が地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う。第2の工程が、地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する。第3の工程が、前記複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する。第4の工程が、前記流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出する。第5の工程が、導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する。
また、流出量演算部は、地形計測部が地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う。統計処理部が地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する。流出指標判定部が複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する。流出量推定部が流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出し、導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する。
これにより、直接測定することが困難な浸透水量を植生域の衛星画像データに基づいて設定することにより、蒸発散量において、植生の状況、地表面の状況による変化によって生じる近似モデルとの偏差を低減できる。また、衛星画像データを用いることにより、広い地域の情報を得る。そして、地点ごとの状況に応じた補正を行うことにより、近似によって求められるモデルの正確さを高めることができ、正確な地下水移行経路並びに移行時間の算出処理を行うことが可能となる。
また、これにより、直接測定することが困難な浸透水量を植生域の衛星画像データに基づいて算出することにより、蒸発散量における植生の状況、地表面の状況によって変化によって生じる近似モデルとの偏差を低減できる。また、衛星画像データを用いることにより、広い地域の情報を得る。そして、地点ごとの状況に応じた補正を行うことにより、近似によって求められるモデルの正確さを高めることができ、正確な地下水移行経路並びに移行時間の算出を行うことが可能となる。また、地下水移行経路並びに移行時間の算出処理の算出結果によって示される涵養地点の妥当性の検証は、複数の工程で算出された結果を関連付けて検証することにより、求められた算出結果の信頼度を追認することが可能となる。
図1は、本実施形態による地下水起源解析システム100を示すブロック図である。
この図には、地下水起源解析システム100と、地下水起源解析システム100の処理に用いられる情報を提供する情報入力システム200とが示されている。
地下水起源解析システム100は、情報入力システム200から入力される各種情報に基づく演算処理を行い当該地点の地下水のもととなる涵養(かんよう)地点を算出する地下水起源解析システムである。涵養地点とは、降雨によって地表水となった水が地面に浸透し、地下水となる場所である。その地点の標高を涵養高度という。そして、その地下水は、涵養地点を基点とする地下水の流れにしたがって移行する。
また、地下水起源解析システム100による涵養地点の算出では、所定の位置・深度に到達した地下水がその地点に到達するまでの経路を算定し、その経路の基点を涵養地点として算定する。また、地下水起源解析システム100は、降雨から所定の位置・深度に到達するまでの時間を算出するシステムである。
地下水起源解析システム100において演算処理部110は、地下水起源解析システム100における各種演算処理を行う。地下水起源解析システム100における演算処理部110は、イオン濃度水質情報判定処理部10、同位体比判定処理部20、地下水移行算定処理部30を備える。演算処理部110においてイオン濃度水質情報判定処理部10は、河川水や地下水などのサンプルから検出されたイオン濃度・水質情報のそれぞれの相関関係を判定する。また、イオン濃度水質情報判定処理部10は、類似性の高いサンプルからの判定結果をグループとして扱うことができる判定処理部である。同位体比判定処理部20は、河川水や地下水などをサンプルから検出された同位体比情報をもとに、その地下水の起源とされる涵養地点の標高、すなわち涵養高度を特定する。また、同位体比判定処理部20は、水源の類似性の高いサンプルからの判定結果をグループとして扱うことができる判定処理部である。
地下水起源解析システム100において演算処理部110は、地下水起源解析システム100における各種演算処理を行う。演算処理部110におけるイオン濃度水質情報判定処理部10は、イオン・水質情報データ210から提供される河川水や地下水などをサンプルとして検出されたイオン濃度・水質情報のうち、特に次の情報を参照する。
イオン濃度分析として、次の6つに分類される各イオン濃度について分析する。すなわち、硫酸イオン(SO4 2−)、重炭酸イオン(HCO3 −)、塩素イオン(Cl−)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)並びにナトリウム及びカリウムイオン(Na+及びK+)である。イオン濃度水質情報判定処理部10は、イオン濃度のデータに基づいた主成分分析手法による演算処理を行うことにより、イオン濃度の比の類似性を示す傾向分析を演算処理により行うことができる。
複数の箇所のサンプルが示すこれらのイオン濃度の比の傾向を視覚的に比較するために水質ダイアグラムという手法がとられている。検出されたイオンを6つに分類する。その分類は、陰イオンである硫酸イオン(SO4 2−)、重炭酸イオン(HCO3 −)、塩素イオン(Cl−)と、陽イオンであるカルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、ナトリウムイオン及びカリウムイオン(Na+及びK+)である。その分類にしたがって、図示するよう陰イオンを左、陽イオンを右に配置する。この図に示されるグラフの横軸は、イオン濃度の値を示す。各イオンの濃度に応じてグラフにプロットし、プロット点を結んで描かれる六角形によって示された形が、水に含有されるイオンの量の特徴を示す。六角形の形状が類似しているサンプルは、同じ水系の地下水である可能性が高いと判定できる。この図(a)と(b)に示されるように、六角形の形状の特徴が異なるものは、異なる水系からの水と判定することができる。イオン濃度水質情報判定処理部10は、記憶されたイオン濃度のデータを参照し水質ダイアグラムを作成することもできる。
図3(a)は、同じ水系からの各サンプルを分析して得られた電気伝導度と、そのサンプルを採取した標高との関係を示すグラフである。このグラフの横軸は、電気伝導度(μS(マイクロ ジーメンス)/cm))を示し、縦軸は標高(m)を示す。このグラフに示されるように、同じ水系によるサンプルであれば、標高が高いほど電気伝導度が低く、標高が低くなるにしたがって電気伝導度が高くなる。すなわち、標高が低い場所で採取されたサンプルの水が、地下を移行している間に、経路を構成する地中の成分が溶け出してイオン化傾向が高くなる。図に示される白丸(○)印は、特定の地下水を分析して得られた電気伝導度を既知の測定結果を示すグラフ上にプロットした例を示す。この例では、白丸(○)印の位置が、各サンプルが示すばらつきの範囲内に位置することにより、同じ水系による地下水と判定できる。
図3(b)は、水温と標高の関係を示したグラフである。このグラフの横軸は、水温(℃)を示し、縦軸は標高(m)を示す。このグラフに示されたサンプルは、特定の水系に限られたものではなく、複数の山体中を流れる地下水や湧水で測定された水温を示す。このグラフの中で、同一の山系によるサンプルを抽出すると、線形で示される直性で近似できる範囲にサンプルがばらつく傾向が示される。この直線を地温勾配という。この図に示される2つの直線(実線と破線)は、異なる山系による地温勾配を示し、いずれの地温勾配との相関があるかにより水系を判定する。
このように、演算処理部110におけるイオン濃度水質情報判定処理部10は、地下水と湧水のサンプルから得られた情報からそれぞれの相関関係を判定し、類似性の高いサンプルをグループとして扱う判定処理部である。
同位体比判定処理部20が分析対象とする安定同位体について説明する。
図4(a)は、水素Hを基本とする同位体を示す。標準の水素Hに比べ、中性子が1個多い重水素2Hと、2個多いトリチウム3Hが示されている。水素Hと重水素2Hは安定同位体であるが、トリチウム3Hは、半減期(12.3年)を有する放射性同位体である。安定同位体は、放射性同位体のように含有量が自然に減少しないので、水系判定のトレーサーとして用いられる。
図4(b)は、一般的な水に含まれる安定同位体の含有量を示す図である。
水に含まれる安定同位体として、水を構成する水素原子と酸素原子に関係する安定同位体を示す。この図には、水素H、重水素2H(D)、酸素16O、酸素17O、酸素18Oの5種類の安定同位体とその存在比率が示される。ここで示されるように、酸素18Oは、他の安定同位体に比べ存在比率が多く、地下水起源解析に用いるトレーサーに適している。酸素18Oの安定同位体比を「δ18O」として示す。
図5は、特定の水系の安定同位体比(δ18O)と涵養場所の標高の関係を示すグラフである。このグラフの横軸は、安定同位体比(δ18O:‰(パーミル))を示し、縦軸は標高(m)を示す。このグラフによって示されるように、同じ水系の場合には線形で示される直性で近似できる範囲にサンプルがばらつく傾向が示されている。標高が高くなると安定同位体の含有量が少なくなる傾向がある。
図6は、蒸発量と安定同位体比(δ18O)の変化を示す関係をグラフに示したものである。このグラフの横軸は、蒸発率(%(パーセント))を示し、縦軸は、安定同位体比(δ18O:‰(パーミル))を示す。このグラフに示される2つのグラフは、異なる2つの河川水を蒸発させたときの安定同位体比の変化を示す。このグラフの縦軸の切片となる値が異なり、異なる河川水の水であることが示される。いずれのグラフとも、蒸発量に応じてグラフが右上がりとなる同じ傾向を示す。この図に示されるように、蒸発量が多くなるにしたがって、同位体比の値が大きくなる。すなわち、含有されている比率が高くなることが示される。
前述の図6に示したように、蒸発が進むと安定同位体比は高くなる。つまり、直線EVP2(実線)で示された安定同位体量が示す値は、蒸発が進んだ時点の安定同位体であるため、降雨時点の安定同位体比を想定し補正することが必要になる。例えば、図に示される点P1(安定同位体比:−10‰(パーミル)、標高:1000m)は、採取された地下水の測定データである。このデータを補正するには、同じ安定同位体比に対する直線EVP2によって示される新たな標高の値(2000m)が、蒸発による補正を考慮した直線EVP2が示す関係を用いると求めることができる。直線EVP2は、図6に示した蒸発率を考慮した関係から導かれる。すなわち、標高1000mの地点の地下水で採取された水は、標高2000mの高さでの降雨によって浸透して地下水となった可能性が高いと判定される。
地下水移行算定処理部30において蒸発散量演算部31は、人工衛星から撮影された画像データに基づいて、各地点の可能蒸発散量を算出する演算処理を行う。
人工衛星から撮影された画像データは、2つの異なる波長域でフィルタ処理された地表面からの反射光の強度を検出した情報である。第1の波長域は、可視光領域(以下、「Band(バンド)3」領域ともいう。)であり、第2の波長域は、近赤外領域(以下、「Band(バンド)4」領域ともいう。)である。この2つの異なる波長領域のデータを比較処理することにより、それぞれの地点の植生活性度を示す指標となる正規化植生指数(以下、「NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)」という。)を算出する。NDVIは、次式(1)から求められる。
図9と図10は、人工衛星から撮影された地表の反射率の地域ごとの差を示す情報をもとに、それぞれの地点のNDVIを演算し、2次元的に示した図である。この図9が、落葉時期に測定された結果を示し、図10が着葉時期に測定された結果を示し、撮影時期を変えて測定した反射率情報からそれぞれの時期のNDVIを求めたものである。それぞれの関係を式(1)に基づいて、式(2)と式(3)に示す。
(Bd4(落葉)−Bd3(落葉))/(Bd4(落葉)+Bd3(落葉)) ・・・(2)
(Bd4(着葉)−Bd3(着葉))/(Bd4(着葉)+Bd3(着葉)) ・・・(3)
以上に示したように、蒸発散量演算部31は、リモートセンシングによって得られた衛星画像データからの情報を基にして、地域ごとの年間蒸発散量を可能蒸発散量とする。
降雨涵養量は、その地点の降雨量のうち、地面に浸透し地下水として涵養する量を示す。前述したように、各地点の植生などの状況変化により、その地点での蒸発散量が異なることが示された。浸透して地下水に涵養する前に、地表から蒸発したり、植生などにより発散したりする量を次式(5)によって補正し、降雨涵養量を定めることとする。
以上に示したように、降雨涵養量演算部32は、各地点の降雨量情報と年間蒸発散量に基づいて、上記の式(5)で示された演算処理を行う。
地下水面より、地表面が低くなるときに、地下水が飽和して地表に現れる。言い換えれば、河川の水位に接する地面の地下水面が一致する。
図14は、地下水面を算定するための基準面(圧力水頭0m)を説明する図である。
この図(a)は、河川を横切る方向の断面を示した断面図である。この図に示されるように、降雨によってもたらされた水が浸透し地下水となる。地質に含まれる間隙が水で満たされた状態の部分にある水を地下水という。地下水に満たされている状態を飽和状態という。飽和状態の地質が地表に接する場所では、地下水が地表水となって現れる。この地表水は、地表を流れる河川となる。この河川の水面の位置を基準として、その基準の高さにかかる各地点の地下水による水圧を圧力水頭という。圧力水頭は、この基準の高さと地下水面の差を示す指標となる。また、標高0mからその基準面の標高差による水圧を位置水頭という。圧力水頭と位置水頭の和を、全水頭という。全水頭は、その地点の地下水の圧力差を示す指標であり、その圧力差により地下水が移行する。
全水頭値は、式(6)として示される。
圧力水頭0m設定部33は、落葉時期のリモートセンシングデータから地表水に覆われている地点を特定することができる。地表水の判定に用いる衛星画像データは、落葉時期の近赤外線領域(Band4)の反射率の差異を示す情報を用いる。地表水の水面では、近赤外線が吸収されるため、反射率が低い値となって示されるので、閾値以下の値を示す場所から地表水に覆われている位置を特定できる。圧力水頭0m設定部33は、地表水に覆われていると判定された結果の情報を、地図情報に重ね合わせて、河川又は湖面などの水面の位置を基準面とする圧力水頭0mの地点を設定する。この圧力水頭0mの地点は、周辺の地下水面の高さを示す地下水位0mを示す基準点となる。
図15は、対称範囲の各地点の位置・深度について地質情報を設定した結果を示す鳥瞰図である。地表面と、対称範囲のふちが断面で示されている。この図に示される濃淡は、異なる地質を示す。当該地域を構成する地質情報にしたがって、各地点を構成する地質をそれぞれの位置と深度に基づいて設定する。設定された情報から、この図に示される地質の分布図が作成される。この分布図に示される地質の特性と関連付けて各地点の位置・深度の透水係数及び不飽和特性が設定される。全水頭演算処理部34は、前述した降雨涵養量、圧力水頭0m分布、地形標高データ及び各地点の位置・深度の透水係数及び不飽和特性の各情報に基づいて全水頭値を算出する。
図16は、演算処理によって求められた全水頭分布の例を示す図である。この図に示される曲線は、同一の全圧力水頭を示す地点をつないで示した曲線になる。この全水頭分布から地下水面の起伏を算出することができる。
また、図17は、図16に示した地域で観測された地下水面標高の実測データを示す図である。図16と図17を対比させ、図16で示される水頭分布の曲線の形と、図17の実測データから求めた水頭分布を示す曲線の形とが同じ傾向を示していることがわかる。つまり、リモートセンシングによる画像データをもとに補正した降雨涵養量に基づいて処理した演算結果で求めた水頭分布は、実際の測定データによって検証された。
全水頭演算処理部34によって求められた全水頭分布情報と、地形標高データ及び各地点の位置・深度の透水係数、不飽和特性及び有効間隙率の情報に基づいて、地下水移行経路、移行時間を算出する。
地下水は、隣接する地点間の全水頭値の差から地下水の移行が生じる。すなわち、地下水は、前述の水頭分布図で示された全水頭分布が示す曲線と直角の方向に流れを生じている。この水頭値分布曲線が示す水頭値の変化が大きい部分、すなわち水頭値分布曲線が密に示されている部分では、地下水の流速が大きくなる。反対に、水頭値の変化が緩やかな部分、すなわち水頭値分布曲線が疎に示されている部分では、地下水の流速が小さくなる。
図18は、地下水の流れを示す図である。
この図に示されるメッシュは、位置を示す格子を示し、各地点の標高を考慮して3次元的に地面をモデル化して示す。また、この図に示される矢印は、その地点での地下水の移行方向を示す。これらの矢印で示される方向が揃って同一の方向を示す地点では、その方向に地下水の流れが生じていることを示す。その矢印の矢線の長さは、地下水の移行量、すなわち流速を示すものである。
図19は、地下水の移行経路を示す図である。地下水の移行経路の選定は、経路となる各地点の地下水の移行方向をつなぎ合わせることで算定される。
移行経路の算定は、2通りの算定方法を選択することができる。第1の算定方法は、涵養場所を指定して、涵養場所を始点とする流れの方向を算定する方法である。第2の算定方法は、地下水が到達する位置の所定の深度を指定し、その位置に到達しうる経路を算定する方法である。この方法では、実際の地下水の流れる方向に対して、さかのぼって経路を選択していくことになる。
第1の算定方法は、実際の地下水の流れる方向に沿って経路を選択していく方法である。始点として選択された地点から、その地点における地下水の移行先を示すベクトルが参照する方向にある、参照点を選択し、その参照点が有するベクトルが参照する方向にある、参照点を選択するという処理を繰り返し行うことで算定することができる。
第2の算定方法は、地下水の到達点の周辺の参照点の中から、それぞれの参照点が有するベクトルが最も近い参照を行っている第1の参照点を選択する。同じく第1の参照点の周辺の参照点の中から、それぞれの参照点が有するベクトルが最も近い参照を行っている参照点を第2の参照点として選択する。この処理を繰り返し行い、地表に到達した場所が、その地下水の涵養地点になる。
本実施形態では、第2の算定方法を用いて説明を行うこととする。
地下水の移行時間の算定には、ダルシー(Darcy)の法則を用いた流速(ダルシー流速)算定が知られている。このダルシー流速による移行時間の演算では、有効間隙率を100%(パーセント)と仮定したときの条件で移行時間(経路距離/ダルシー流速)を算定し、有効間隙率(%)を設定することによる補正処理により移行時間を求めることができる。その関係を式(7)に示す。
=(経路距離)/(ダルシー流速)×(有効間隙率) ・・・(7)
例えば、ダルシー流速によって求められた移行時間が700年と算定され、その経路の有効間隙率が7%であれば、実流速による移行時間が49年として求められる。
以上に示したように、地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、地下水の移行経路を特定し、移行時間を求めることができる。
地下水起源解析システム100における地下水起源解析処理は、図に示される複数の処理によって構成される。
最初に、地下水起源解析システム100におけるイオン濃度水質情報判定処理部10は、河川水及び地下水のイオン濃度の比の一致度並びに水質の一致度から地下水起源の類似性の判定処理を行う(ステップSA10)。続いて、地下水起源解析システム100における同位体比判定処理部20は、河川水及び地下水の同位体比の一致度から涵養高度の判定処理を行う(ステップSB20)。続いて、地下水起源解析システム100における地下水移行算定処理部30は、地下水移行算定処理を下記の手順で行う。まず、蒸発散量演算部31は、人工衛星が撮影した衛星画像データから地点ごとの蒸発散量を求める演算処理を行い、各地点の可能蒸発散量を算出する(ステップSC31)。降雨涵養量演算部32は、各地点の可能蒸発散量と各地点の降雨量の情報に基づいて演算処理を行い、各地点の降雨涵養量を算出する(ステップSC32)。圧力水頭0m設定部33は、衛星画像データに示される河川の位置と緯度経度及び標高の情報に基づいて演算処理を行い、圧力水頭が0mを示す地点、すなわち、地下水が河川として地表水となって現れている地点の設定を行う(ステップSC33)。全水頭演算処理部34は、各地点の降雨涵養量と圧力水頭分布と、地形標高データと、地点・深度ごとの透水係数・飽和特性とから、全水頭を求める演算処理を行い、全水頭値情報を算出する(ステップSC34)。地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、各地点の全水頭分布と、地点・深度ごとの透水係数・飽和特性・有効間隙率とから、地下水移行経路と移行時間を求める演算処理を行い、地下水移行経路並びに移行時間を算出する(ステップSC35)。
図21は、イオン濃度分析処理並びに水質情報処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。
図(a)に示されるイオン濃度情報データベースは、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」、「硫酸イオン」、「重炭酸イオン」、「塩素イオン」、「カルシウム(Ca)イオン」、「マグネシウム(Mg)イオン」、「ナトリウム(Na)イオン・カリウム(K)イオン」からなる項目を有する。この図は、イオン濃度情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「緯度(X)」、「経度(Y)」は、採取した水の採取場所を示す。「深度」は、その採取地点における採取した深度を示す。「硫酸イオン」、「重炭酸イオン」、「塩素イオン」、「カルシウム(Ca)イオン」、「マグネシウム(Mg)イオン」、「ナトリウム(Na)イオン・カリウム(K)イオン」の各項目は、それぞれ(SO4 2−)イオン、(HCO3 −)イオン、(Cl−)イオン、(Ca2+)イオン、(Mg2+)イオン、(Na+)イオン・(K+)イオンの濃度を示す。それぞれサンプルとして採取された水の情報及びすでに測定された各種地点の水の情報をもとにして登録された情報ごとに、行を単位とするデータが構成され、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」をキーとして参照される。
図22は、イオン濃度分析処理を示すフローチャートである。
入力処理部40は、イオン・水質情報システム(イオン・水質情報データ210)から入力されるイオン・水質情報データを受信し、河川水の測定データを測定地点の情報をキーとしてイオン濃度情報データベースに登録する(ステップSa1)。また、入力処理部40は、判定を行う地下水のイオン濃度・水質情報の入力処理を行い水質情報データベースに登録する(ステップSa2)。イオン濃度水質情報判定処理部10は、イオン濃度情報データベースに登録された各地点の登録データをもとにイオン濃度の傾向を分析する。イオン濃度水質情報判定処理部10は、イオン濃度の傾向の分析には、主要イオンを配列に並べ、そのイオン濃度値を示す位置に各点を配置し、その点を結んだヘキサダイアグラム(図2参照)を作成する。また、イオン濃度水質情報判定処理部10は、主成分分析処理を行い、各地点の登録データの類似性を判定し、判定結果を記憶部に記録する(ステップSa3)。イオン濃度水質情報判定処理部10は、水質情報データベースに登録されたデータを参照し、各水質を示す指標を基にして標高に対する直線回帰分析を行う(図3参照)。同じ水源からの地下水であれば類似の傾向が示される。求められた直線との距離が予め定められた判定範囲に含まれるときに類似性が高いと判定する(ステップSa4)。
図に示される安定同位体比情報データベースは、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」、「酸素同位体比」、「涵養高度」からなる項目を有する。この図は、安定同位体比情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「緯度(X)」、「経度(Y)」は、採取した水の採取場所を示す。「深度」は、その採取地点における採取した深度を示す。「酸素同位体比」は、採取した水の安定同位体である酸素(18O)の同位体比を示す。「涵養高度」は、採取した水の酸素(18O)の同位体比から安定同位体比分析処理によって算出された涵養高度を示す。それぞれサンプルとして採取された水の情報及びすでに測定された各種地点の水の情報をもとにして登録された情報ごとに、行を単位とするデータが構成され、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」をキーとして参照される。
入力処理部40は、同位体情報システム(同位体情報データ220)から入力される同位体情報データを受信し、河川水などの安定同位体比情報を測定地点の情報をキーとして安定同位体比情報データベースに記録する(ステップSb1)。同位体比判定処理部20は、河川水などの安定同位体比情報データベースに記憶された情報をもとに安定同位体比の標高に対する傾向の分析(図5参照)を行う(ステップSb2)。入力処理部40は、同位体情報システム(同位体情報データ220)から入力される同位体情報データを受信し、地下水の安定同位体比情報を測定地点の情報をキーとして安定同位体比情報データベースに記録する(ステップSb3)。
同位体比判定処理部20は、測定地点の標高に対する安定同位体比の重さの関係から直線回帰分析を行って傾向を分析(図7参照)する。同位体比判定処理部20は、対象地下水の情報を、水系ごとに先に分析した直線回帰分析の結果(図8参照)に応じて、水系の判定を行う(ステップSb4)。
同位体比判定処理部20は、地下水の安定同位体比データをもとに涵養高度を算出(図7参照)し、算出結果を安定同位体比情報データベースに記録する(ステップSb5)。
図(a)に示される蒸発散量演算処理データベースは、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「落葉時期Bd3」、「落葉時期Bd4」、「着葉時期Bd3」、「着葉時期Bd4」、「落葉時期NDVI」、「着葉時期NDVI」、「ΔNDVI」、「土地利用区分」、「可能蒸発散量」からなる項目を有する。この図は、蒸発散量演算処理情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「緯度(X)」、「経度(Y)」は、衛星画像を構成する情報の緯度・経度を示す。「落葉時期Bd3」、「落葉時期Bd4」は、落葉時期にそれぞれ可視光領域(Band3領域)と近赤外領域(Band4領域)とによって撮影された衛星画像により提供される地表の反射率(アドベド)を示す。「着葉時期Bd3」、「着葉時期Bd4」は、着葉時期にそれぞれ可視光領域(Band3領域)と近赤外領域(Band4領域)とによって撮影された衛星画像により提供される地表の反射率(アドベド)を示す。「落葉時期NDVI」と「着葉時期NDVI」は、それぞれ落葉時期と着落時期の植生活性度を示す。「ΔNDVI」は、「落葉時期NDVI」から「着葉時期NDVI」を減算した結果を示す。「土地利用区分」は、(ΔNDVI)の値をもとに分類された土地利用形態の指標を示す。「可能蒸発散量」は、選択された(土地利用区分)に応じた可能蒸発散量を示す。それぞれ衛星画像で提供されている範囲の地点ごとに、行を単位とするデータが構成され、「緯度(X)」、「経度(Y)」をキーとして参照される。
「a」は、着葉時期のNDVI値を参照し、常葉区域と市街地とを判定する閾値を示す。閾値「a」を超える地点は、常葉区域と判定される。「b」と「c」は、閾値「a」によって判定された市街地の中から、その地点のΔNDVIを参照し市街地と畑地とを区別する閾値を示す。ΔNDVIが、「b」を超え「c」に満たない地点を市街地とする。「d」は、閾値「a」によって判定された植生域の中から、その地点のΔNDVIを参照し常葉樹林と落葉域とを区別する閾値を示す。「e」は、閾値「d」によって判定された落葉域の中から、その地点のΔNDVIを参照し落葉樹林と草地とを区別する閾値を示す。「f」は、落葉時期に近赤外領域(Band4領域)によって撮影された衛星画像データにより提供される地表の反射率(アドベド)「落葉時期Bd4」を参照し、水域を判定する閾値を示す。「g」は、落葉時期に近赤外領域(Band4領域)によって撮影された衛星画像データにより提供される地表の反射率(アドベド)「落葉時期Bd4」を参照し、冠雪域を判定する閾値を示す。
入力処理部40は、リモートセンシングシステム231から入力される可視光領域と近赤外線領域のアドベド(反射率)を測定した衛星画像データを受信し、受信した衛星画像データを蒸発散量演算処理データベースに「緯度(X)」、「経度(Y)」情報をキーとして記録する(ステップSc311)。蒸発散量演算部31は、蒸発散量演算処理データベースに記憶された各アドベド「落葉時期Bd3」、「落葉時期Bd4」、「着葉時期Bd3」、「着葉時期Bd4」を参照し、正規化植生指数NDVIの演算処理(図9と図10参照)を行い、蒸発散量演算処理データベースに記録する(ステップSc312)。蒸発散量演算部31は、蒸発散量演算処理データベースに記憶された正規化植生指数「落葉時期NDVI」と「着葉時期NDVI」を参照し、差分正規化植生指数ΔNDVIの演算処理(図11参照)を行い、蒸発散量演算処理データベースに記録する(ステップSc313)。蒸発散量演算部31は、参照閾値データベースに閾値「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、「f」、「g」を設定する。各閾値の設定は、2つの異なる衛星画像データと、差分正規化植生指数ΔNDVIによって示されたデータを参照し分離を可能とする値を設定する。(ステップSc314)
図に示される降雨涵養量情報データベースは、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「降雨量」、「降雨涵養量」からなる項目を有する。この図は、降雨涵養量情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「緯度(X)」、「経度(Y)」は、降雨のある場所を示す。「降雨量」は、その地点における降雨量を示す。「降雨涵養量」は、降雨が浸透し地下水に涵養する水の涵養量を示す。降雨涵養量情報データベースは、地点ごとに、行を単位とするデータが構成され、「緯度(X)」、「経度(Y)」をキーとして参照される。
入力処理部40は、雨量情報システム232から入力される降雨量データを受信し、受信した降雨量データを降雨涵養量情報データベースに記録する(ステップSc321)。
降雨涵養量演算部32は、蒸発散量演算処理データベースを参照し、各地点の「可能蒸発散量」を取得する(ステップSc322)。
降雨涵養量演算部32は、土地区分ごとの降雨涵養量を算定し、降雨涵養量情報データベースの「降雨涵養量」に記録する(ステップSc323)。
図(a)に示される地形標高情報データベースは、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「標高」からなる項目を有する。この図は、地形標高情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「緯度(X)」、「経度(Y)」は、標高を示す地点の場所を示す。「標高」は、その地点の標高を示す。地形標高情報データベースは、地点ごとに、行を単位とするデータが構成され、「緯度(X)」、「経度(Y)」をキーとして参照される。
入力処理部40は、地図情報システム233から入力される地形標高データを受信し、受信した地形標高データを地形標高情報データベースに記録する(ステップSc331)。圧力水頭0m設定部33は、蒸発散量演算処理データベースを参照し、各地点の落葉時期の近赤外領域Band4の反射率(アルベド)データ「落葉時期Bd4」を取得する。また、圧力水頭0m設定部33は、参照閾値データベースを参照し、閾値情報「f」を取得する(ステップSc332)。圧力水頭0m設定部33は、各地点が地表水に覆われている水域であるか否かの判定を行い、水域であると判定したときは、圧力水頭0m設定演算情報データベースの「圧力水頭0m」に「1」を記録する。判定は、蒸発散量演算処理データベースに記憶されている「落葉時期Bd4」について参照し、参照閾値データベースに記憶されている閾値「f」を越えているか否かを判定条件とする判定を行う(ステップSc333)。圧力水頭0m設定部33は、水域であるか否かの判定の結果、水域であると判定したときは、圧力水頭0m設定演算情報データベースの「圧力水頭0m」に「1」を記録(図14(b)参照)する(ステップSc334)。
図(a)に示される地質情報データベースは、「地質(材質)」、「透水係数X」、「透水係数Y」、「透水係数Z」、「有効間隙率」からなる項目を有する。この図は、地質情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「地質(材質)」は、その地点の地質を構成する材質を示す。「透水係数X」、「透水係数Y」、「透水係数Z」は、3次元座標で示された方向の透水係数である。ここで、Z方向は鉛直方向を示す。「有効間隙率」は、単位堆積あたりに含まれる空間の割合を示す。地質情報データベースは、地質ごとに、行を単位とするデータが構成され、「地質(材質)」をキーとして参照される。
全水頭演算処理部34は、地形標高データベースを参照し、地形標高データの参照を行い取得する(ステップSc341)。全水頭演算処理部34は、圧力水頭0m設定演算情報データベースを参照し、圧力水頭0mの座標の参照を行い情報を取得し、水域を認定する(ステップSc342)。入力処理部40は、地質情報データベースに、透水係数及び不飽和浸透特性の登録を行う(ステップSc343)。全水頭演算処理部34は、各地点・深度における地下水の入出量の算定を行う。そして、全水頭演算処理部34は、地点ごとの全水頭値の算定を行い、全水頭値演算情報データベースの「全水頭値」に記録する(ステップSc344)。全水頭演算処理部34は、各地点における「全水頭値」から全水頭値分布情報への変換処理(図16参照)を行う(ステップSc345)。
図(a)に示される地点地質情報データベースは、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」、「透水係数X」、「透水係数Y」、「透水係数Z」、「有効間隙率」からなる項目を有する。この図は、地質情報データベースを2次元的に配列して表した例である。「緯度(X)」、「経度(Y)」は、全水頭値を求める地点を示す。「深度」は、「緯度(X)」、「経度(Y)」で示される地点の深度を示す。「透水係数X」、「透水係数Y」、「透水係数Z」は、3次元座標で示された方向の透水係数である。ここで、Z方向は鉛直方向を示す。「有効間隙率」は、単位堆積あたりに含まれる空間の割合を示す。地質情報データベースは、地質ごとに、行を単位とするデータが構成され、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」をキーとして参照される。
入力処理部40は、地質情報データベースに、有効間隙率を記録する(ステップSc351)。地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、全水頭値演算情報データベースを参照し「地質」、「全水頭値」の情報を取得し、する(ステップSc352)。地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、「緯度(X)」、「経度(Y)」、「深度」で示される場所の「地質」の情報から、各地点地質情報データベースを参照し地質(材質)に応じた「透水係数X」、「透水係数Y」、「透水係数Z」の情報を記録する。また、地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、地質情報データベースを参照し、「有効間隙率」を取得し、各地点地質情報データベースに記録する(ステップSc353)。地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、各地点・深度の地下水の移行量を算定(図18参照)する。地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、各地点・深度の地下水の移行経路を特定(図19参照)する。また、地下水移行経路・移行時間演算処理部35は、特定された移行経路に基づいてダルシー流速に基づく移行時間の演算処理を行う(ステップSc354)
このように、複数の判定処理結果に基づいて判定することにより、判定処理結果の信頼度を判定する。
また、地下水起源解析システム100は、地下水移行経路並びに移行時間の算出処理の算出結果によって示される涵養地点の妥当性の検証が、複数の判定方法で判定処理された結果を関連付けて検証することにより、求められた結果の信頼度を確認することが可能となる。複数の判定方法には、イオン濃度比分析、水質情報分析、安定同位体比分析並びに地下水移行経路と移行時間分析などが利用できる。
また、水質による判定について、電気伝導度と水温を例示したが、酸性度(pH(ピーエッチ))を利用することも可能である。
また、本発明の地下水起源解析システム100は、1台のコンピュータによって各種処理を実行するほかに、複数のコンピュータを用いて各種処理を実行することとしても良く、各コンピュータへの処理の分割は任意である。その際、それぞれのコンピュータが有する記憶部間の情報の移動は、通信回線を用いた通信処理或いは読み取り可能な記録媒体を介して移動することによって行われる。
また、従来における他の流出量解析としては、地形・地質毎に定められた流出率を用いる解析、地形要素を用いた定性的な評価に依存する解析が挙げられる。
これにより、流出量解析において、未知の対象領域における流出量を推定することができる効果を奏する。
また、流出量解析において、従来の流出量解析における均一な流出量算出でなく、地形計測を行ったデータに基づき流出指標を算出するので、対象地域における地形特徴の違いを反映したバリエーションのある流出量を算出することができる効果を奏する。
さらに、本発明の地下水起源解析システムにおいて、上述のように降雨涵養量を定量データ(蒸発散量、流出量及び降水量)に基づき、正確に算出できる効果を奏する。
図35は、本実施形態による地下水起源解析システム100aを示すブロック図である。
なお、図35において、図1と同様の構成には同一の符号を付している。また、図1にあって図35にない部分については、図1と同じ働きをするので説明を省略する。
図35においては、新たに追加された情報入力システム200aが示されている。
情報入力システム200aは、演算の対象領域における標高値を提供する標高値情報システム(DEMデータ241)、演算の対象領域における流出量を提供する河川流量情報システム(河川流量データ242)、及び演算の対象領域における雨量、風速、気温及び日照といったデータを提供する気象情報システム(気象データ243)を備える。
降水量演算部37は、気象情報システム(気象データ243)から入力される気象データに基づき、DEMデータの標高値に応じた降水量を算出する。
図36は、地形計測部361が分割処理を行った結果を2次元的に示した図である。この図により、対象地域が一の分水嶺に該当する境界、或いは複数の分水嶺からなる境界に沿って流域分割されている様子が判る。なお、分割された流域は、後述する河川流量測定を行った9流域(図47参照)と測定を行わない60流域の計69流域である。地形計測部361は、図36に示す流域分割処理を、DEMデータの標高値より算出される勾配(傾斜量)等を基に行うことができる。
ここで、ラプラシアンは勾配の微分、すなわち、標高の2次微分であり、地形の凹凸を表し、ラプラシアンSDは地形の煩雑さを表している。また、流域平均浸食高は、現標高と接峰面(侵食される前の地形)との差を表す。流域起伏数は、流域内の平均的な地形の険しさを表わす指標であり、流域体積を流域面積の1.5乗で除した値で定義される。また、流域平均浸食高は、DEMデータにおける格子ごとの浸食を対象流域内で総和し、流域面積で除することにより求められる。歪度は、流域出口から上流域までの距離の頻度分布における左右対称のずれを表わす指標であり、尖度は、分布の裾の広がり具合を表わす指標である。また、流域形状比は、流域の平面形態が丸いか細長いかを示す指標であり、流域最大辺長を二乗し、流域面積で除する値で定義される。流域の形状が円形であっても主要流路の長さが流域最大辺長(流域の幅)より長い場合は、細長い流域の場合と同じ流域構造を有するものとして扱う必要があり、流域形状比による区別は困難である。そこで、主要流路の長さ(最大流路長)に対する流域の形状を評価するために、流路形状比を算出する。これは、流域内の最大流路長を二乗し、流域面積で除する値で定義される。流路形状比は、値が大きいほど縦に細長い形状(河川本流に沿った方向に長く幅が狭い形状)となり、水が流れにくい地形を示す指標として用いることができる。また、流域形状が円形の流域であっても、主要流路がその円形の円周に沿って発達している場合には、最大流路長は長くなる。そのため、かかる流域の流路形状比は、細長い流域の流路形状比と同じ大きさになる場合もある。分岐比とは、ある流域における次数の流路数の比を示し、最上流の1次(流路数N1)と1次流路が流れ込む2次(流路数N2)の分岐比はR1/2=N1/N2で求められる。また、2次流路が流れ込む3次流路(流路数N3)の分岐比はR2/3=N2/N3で求められる。流路頻度とは、単位面積当たり何本の流路があるかを示す指標である。また、流域勾配の歪度とは、計測点から上流までのある地点との平均勾配を、上流までの全ての地点において求め、各平均勾配の関係を表わした指標である。
図38は、統計量処理部362が、上述の演算処理(8)において算出した因子1〜4の因子負荷量(因子負荷行列A)を示している。図の縦方向に示された項目は、地形計測の際の分析変数であり、横方向の数字1〜4は因子番号、各値は因子負荷量を示す。因子負荷量は、因子と分析変数との間の関係の強さを表わす相関係数であり、因子負荷量が正の値である分析変数は、因子と正の相関関係にあり、負の値である分析変数は因子と負の相関関係にある。
流出量演算部36における統計量処理部362は、このように水の流れ易さとの間に相関を有する複数の成分(因子1〜4)を、あらかじめ設定された閾値に基づき因子毎に判定する。
すなわち、因子1の因子得点が大きい流域は、起伏が激しい急峻な流域であり、水が流れ易い流域である。一方、因子1の因子得点が小さい流域は、起伏の少ない緩やかな流域であり、水が流れにくい流域である。
また、流域形状が近似していても、流路の形状が異なれば因子得点は異なる。図45は、この様子を模式的に表した説明図である。図においては、流域形状を丸または楕円で表わしており、縦または横の直線は当該流域における河川の本流長を示している。なお、河川の本流長と流域の接する部分は流路の出口であり、本流長には低次の河川が流れ込んでいる。図において、右に行くにつれ,流域の形状が円形または横に細長い形状になる。円形または横に細長い形状になるにつれ、流路の出口までの距離が短くなり,水は流れ易くなる。ただし,図に示すように、同じ細長い形状であっても,河川本流に沿って細長い流域形状(図左の流域形状)と、河川本流と垂直方向に細長い流域形状(図右の流域形状)とでは、流域出口までの距離は異なる。すなわち、図左の流域形状のように、流域形状が河川本流に沿って細長い流域形状の場合,流域出口までの距離は長くなるので,水は流れ難くなる。
すなわち、因子2の因子得点が大きな流域は、流域の形状は縦に細長い流域形状(河川本流に沿って細長い流域形状)であり、かつ、河川の本流長が長い流域であり、つまり、水が流れにくい流域を示す。一方、因子2の因子得点が小さな流域では、流域の形状が円形もしくは横に細長い流域形状(河川本流に沿った方向に短く幅が広い形状)であり、かつ、河川の本流長が短い流域であり、つまり、水が流れ易い流域を示す。
また、グループ分けの際の分類手法には、他に等間隔分類法、等量分類法、間隔定義分類法、標準偏差分類法等があるが、データの変化量が比較的大きいところに分割ポイントが設定される自然分類法を採用している。地形計測データという自然界のデータは、正規分布のように均質な分布をとりにくく、地形の特徴を反映したバリエーションのある分布をとることが多いためである。流出指標判定部363は、予め設定された分割数に応じて分割ポイントを算出し、因子得点分布を複数のグループ、例えば5グループに分割する。そして、因子(因子番号PCi)毎に、因子得点の大きいグループから小さいグループへ、順に5点、4点、・・・、1点と得点RPCiを付与する。
流出指標=(付与されたRPC1)×WPC1+(6−(付与されたRPC2))×WPC2
ここで、WPC1及びWPC2は、次式で表わされる。
WPC1=CPC1/(CPC1+CPC2)
WPC2=CPC2/(CPC1+CPC2)
CPCiは、統計量処理部362で算出した因子(因子番号PCi)の寄与率である。すなわち、各因子の寄与率は異なるので、流出指標算出式において、寄与率の差を反映する重み付け変数として、WPC1、WPC2を用いている。
なお、実際の流出量とは、数十年間に渡り流出観測所において蓄積された観測値と、実際に一部の流域の出口において計測した実測値の2種類が存在する。
実測値を求めるために、流出指標を算出した流域のうち、いくつかの流域の出口において、河川流量(当該流域の流出量に等しい)を測定した。ただし、流量指標との比較を行う際、流域面積の大小により河川流量は異なるので、比流量という流域面積で正規化した指標との比較を行うこととした。比流量は、比流量=河川流量÷流域面積により求めることができる。なお、比流量の単位は、m3/(秒・100km2)である。
また、図48は、図47における比流量を測定した流域の流出指標(x)と比流量(y)をプロットした散布図であり、図中直線は回帰直線を表している。回帰直線は、y=0.5258x−0.7027で表わされる。また、図において、R2はピアソンの積率相関係数Rを二乗した値R2であり、R2=0.6954という値から、流出指標と比流量の間には強い相関があることが判る。
図49は、上で求めた回帰直線を用いて、算出された領域毎の流出指標を領域毎の比流量に変換し、変換された比流量の結果に応じて、地形計測を行った流域を濃淡表示した2次元図である。これにより、9つの流域における流出指標と比流量の関係から、未知の60流域の比流量、すなわち流出量を算出することが可能であることが実証された。
地下水移行算定処理部30aにおける降水量演算部37は、降水量データを補正した結果を基に空間補間を行い、流域毎の降水量を算出する。空間補間とは、対象地域における降水量の空間分布を推定する場合、当該対象領域内の数箇所の気象観測所の降水データをもとに、対象領域全体の降水量を推定することをいう。また、空間補間の方法としてスプライン法が知られている。ところが、空間補間を行なうには次の(1)、(2)の処理を施す必要がある。(1)降水量データの誤差を考慮した処理を行う必要がある。例えば、北日本や本州日本海側における降水量計による観測では、風の影響によって雪や雨の一部が降水量計に入らないという捕捉損失が最大の誤差要因となっている。特に雪は,風の影響を受けやすいので,捕捉損失の割合が大きい。従って、補足損失を補正する処理を行う必要がある。(2)降雨の「標高依存性」を反映する処理を行う必要がある。一般的に高度が高くなるほど降水量は多くなる性質があるが、気象観測所は比較的低い場所(標高数m〜数百m)に設置されているため、気象観測所の降水量データで空間補間を行なうと、高所における標高依存性が反映されない。従って、標高依存性を反映した処理を行う必要がある。
降水量演算部37は、回帰式(一般式y=ax+b)より求められる増減率a(単位はmm/1m)を用いて、気象観測所の年間降水量を標高0mの値bに補正した後、空間補間を行なう。
すなわち、いったん標高依存性を持たない降水量データ(格子)に変換し、空間補間により対象領域全体の降水量を推定する。その後、降水量演算部37は、増減率aを基にDEMデータの標高値に応じた値を、空間補間後の降水量に加える。例えば、増減率をもとにすると、標高500mの位置における格子であれば、空間補間で得られた値に、0.4989(aの値)×500=250mmを加える。
図51は、標高依存性までを考慮した補正降雨量を流域内で、濃淡表示した2次元図であり、濃く示した地点ほど補正降水量が多いことを示している。図51により、流域内における地形の違い(標高の違い)を反映した推定降水量(格子)が算出されたことが判る。
最初に、流出量演算部36における地形計測部361は、流域分割及び分割された流域における地形計測処理を行う(ステップSD10)。続いて、流出量演算部36における統計量処理部362は、計測された地形データに基づき、流域毎の因子得点を算出する統計量処理を行う(ステップSD11)。続いて、流出量演算部36における流出指標判定部363は、算出された各流域における因子得点に基づき、流出指標を算出する流出指標検討処理を行う(ステップSD12)。流出量演算部36における流出量推定部364は、算出された流出指標と一部の流域の流出量(河川流量)の情報に基づいて、両者の相関関係の有無を判定し、相関があると判定した場合、全ての流域の推定流出量を算出する流出量推定処理を行う(ステップSD13)。次に、降水量演算部37は、降水量(観測値)に基づき、各流域における推定降水量を算出する降水量推定処理を行う(ステップSD14)。降雨涵養量演算部32aは、各流域において推定された流出量、降水量、蒸発散量に基づいて、各流域及び各格子における降雨涵養量を算出する降雨涵養量演算処理を行う(ステップSD15)。
図53は、地形計測処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される地形データベースは格子DEMデータに基づいた緯度「X」、経度「Y」、標高「H」からなる項目を有する。この図は、地形データベースを2次元的に表した図である。また、地形データベースは、行を単位とするデータから構成され、緯度「X」、経度「Y」をキーとして標高「H」が参照される。また、図(b)に示される流域分割データベースは、「流域No」、緯度「X」、経度「Y」及び標高「H」からなる項目を有する。この図は、地形分割データベースを2次元的に表した図である。また、地形分割データベースは、行を単位とするデータから構成され、「流域No」をキーとして緯度「X」、経度「Y」、標高「H」が参照される。
図(c)に示される地形計測データベースは、「流域No」、「勾配」、「ラプラシアン」、「ラプラシアンSD」、「流域体積」、「流域起伏数」、「流域平均浸食高」、「流路ジェネレーション」、流域出口からの距離とその形状に関する係数である「尖度」、同じく流域出口からの距離とその形状に関する係数である「歪度」、「流域形状比」、「流路形状比」、分岐比「R1/2」、分岐比「R2/3」、「流路頻度」、「流路勾配の歪度」及び「流域面積」からなる項目を有する。この図は、地形計測データベースを2次元的に表した図である。地形計測データベースは、流域毎に行を単位とするデータから構成され、流域Noをキーとしてそれぞれのデータが参照される。
図54は、地形計測処理を示すフローチャートである。
入力処理部40aは、標高値情報システム(DEMデータ241)から入力されるDEMデータを受信し、受信した計測対象地域に対応するDEMデータ241を、地形データベースの「X」、「Y」及び「H」に登録する(ステップSd101)。次に、地形計測部361は、地形データベースに登録された「X」、「Y」及び「H」を基に、計測対象地域をk個の流域に分割し、分割された流域に「流域No」を割り振り、流域分割データベースに「X」、「Y」及び「H」とともに記録する(ステップSd102)。次に、地形計測部361は、流域No毎に流域分割データベースの「X」、「Y」及び「H」を参照し、分析変数毎に地計計測を実施し、計測結果を「流域No」及び計測項目(分析変数)をキーとして、地形計測データベースへ記録する(ステップSd103)。
図55は、統計処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される統計分析定数データベースは、「n」、「m」、「th1」及び「th2」からなる項目を有する。この図は、統計分析定数データベースを2次元的に表した図である。nは、因子分析を行う際の分析変数の個数を、mはバリマックス回転を行う際の因子数を示す。また、th1はバリマックス回転における因子数mを決定する際の閾値を、th2は因子負荷量(因子負荷行列A)を基に因子解釈(分析変数の選択)を行う際の閾値を、それぞれ示す。図(b)に示される因子負荷量データベースは、「分析変数j」、因子番号「PC1」〜「PCm」からなる項目を有する。因子負荷量データベースは、n行m列の行列を構成し、行列の成分に因子負荷量が記録される。例えばanmは、第m因子(PCm)n番目の分析変数の因子負荷量を表す。また、図(c)に示される寄与率データベースは、「CPC1」〜「CPCm」からなる項目を有し、因子番号PC1〜PCmの寄与率が登録、参照される。
図57は、統計処理を示すフローチャートである。統計処理部362は、統計分析定数データベースの「n」を参照し、設定されている数値nに応じて、流域No(1〜k)をキーとして地形計測データベースの計測項目(分析変数)をn個参照する(ステップSd111)。次に、統計処理部362は、n×k個のデータを用いて主成分分析(因子分析)を行い、新行列R’を算出し、新行列R’からヤコビ法により、因子毎の固有値を算出する。統計処理部362は、統計分析定数データベースの「th1」を参照し、設定されている数値を閾値として、閾値以上の固有値を有する因子を選択し、選択された因子数を、統計分析定数データベースのmに記録する。また、選択された固有値の大きい順番に因子番号PC1、PC2、・・・、PCmを付与する。
図58は、流出指標算定処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される流出指標定数データベースは、「p」、「q」からなる項目を有する。「p」は因子の選択数を、「q」は因子得点を何段階に分類するかの段階数を示す。図(b)に示される分類閾値データベースは、「閾値No」、因子番号「PC1」〜「PCp」からなる項目を有する。分類閾値データベースは、因子得点をq段階に分類する際の閾値が、選択された因子数pに(q−1)を乗じた個数分記録される。例えば、因子数の選択数pが2で、因子得点をq=5段階に分類する場合は、閾値は8個記録される。また、図(c)に示される重み付けデータベースは、WPC1〜WPCpからなる項目を有し、WPC1〜WPCpは因子PC1〜PCpの寄与率を基に記録される。例えば、因子数の選択数が2の場合は、上述の通り、WPC1=CPC1/(CPC1+CPC2)、WPC2=CPC2/(CPC1+CPC2)が算出され、記録される。
図60は、流出指標算定処理を示すフローチャートである。流出指標判定部363は、流出指標定数データベースの「p」を参照し、設定されている数値に応じて、主成分の選択(因子の選択)を行う。例えば、数値が2の場合は因子1、因子2を選択する(ステップSd121)。次に、流出指標判定部363は、因子得点データベースの主成分得点(因子得点)を、「流域No」及び因子番号「PC1」〜「PCp」をキーとして参照する(ステップSd122)。流出指標判定部363は、流出指標定数データベースの「q」を参照し、設定されている数値に応じて、参照された因子得点の分類閾値を、Jenksの自然分類法(最適分類法)を用いて、データの変化量が大きいところの分割ポイントを(q−1)個算出する。そして、算出された分割ポイントを分類閾値として、分類閾値データベースへ、「閾値No」及び因子番号「PC1」〜「PCp」をキーとして、因子毎に閾値の小さい方から順に記録する。例えば、図43及び図44に示した例でいえば、因子番号PC1に対しては、分類閾値−1.45272、−0.33224、0.15012、0.81666の4値を、因子番号PC2に対しては、分類閾値−1.20055、−0.39586、0.25619、1.45265の4値を算出し、分類閾値データベースへ、それぞれの因子毎に、閾値No1から値の小さい順に記録する。また、流出指標判定部363は、分類閾値データベースに記録された閾値を「閾値No」及び因子番号「PC1」〜「PCp」をキーとして参照し、各流域における因子得点がどの閾値Noで示されるグループに入るかを判定し、分類Noを決定する。例えば、因子得点が、閾値No1の閾値未満であれば分類Noを1、閾値No1の閾値とNo2の閾値の間に入れば分類Noを2とする。次に、流出指標判定部363は、得点データベースを「分類No」及び因子番号「PC1」〜「PCp」をキーとして参照し、参照した獲得得点を、ランキングデータベースへ、「流域No」及び因子番号「PC1」〜「PCp」をキーとして記録する(ステップSd123)。次に、流出指標判定部363は、寄与率データベースの「CPC1」〜「CPCp」を参照し、各因子の寄与率に基づいて、重み付け変数「WPC1」〜「WPCp」を算出し、重み付けデータベースへ因子毎に記録する。また、流出指標判定部363は、ランキングデータベース「流域No」及び因子番号「PC1」〜「PCp」をキーとして参照し、重み付け変数WPC1〜WPCpに基づいて流域毎に流出指標を算出し、流出指標データベースへ「流域No」をキーとして記録する(ステップSd124)。
図61は、流出量推定処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される河川流量計測データベースは、「流域No」、「河川流量計測データ」及び「比流量」からなる項目を有する。河川流量計測データベースは、データが存在する流域の河川流量計測データ、及び流域の比流量が登録される。図(b)に流量閾値データベースは、「S1」からなる項目を有する。S1には、比流量と流出指標の間に相関があるかどうか判定する際の閾値が設定されている。また、図(c)に示される比流量データベースは、「流域No」、「比流量」からなる項目を有する。比流量データベースは、比流量が流域毎に記録される。
図62は、流出量推定処理を示すフローチャートである。
入力処理部40aは、河川流量情報システム(河川流量データ242)から入力される河川流量計測データを受信し、受信したデータを河川流量計測データベースの「河川流量計測データ」へ、「流域No」をキーとして登録する(ステップSd131)。流出量推定部364は、河川流量計測データベースを「流域No」をキーとして参照し、また、地形計測データベースの「流域面積」を「流域No」をキーとして参照する(ステップSd132)。次に、流出量推定部364は、河川流量計測データを、参照した流域面積で除して比流量を算出し、流域Noをキーとして河川流量計測データベースの「比流量」に記録する(ステップSd133)。また、流出量推定部364は、「流域No」をキーとして流出指標データベースを参照し(ステップSd134)、比流量と流出指標の散布図を作成し、流出指標と比流量の間に相関があるかどうかを判定する。流出量推定部364は、判定の際、流量閾値データベースにおける予め設定された閾値「S1」の値を参照し、散布図における流出指標と比流量の間の相関係数が閾値S1以上であれば相関あり、閾値S1未満であれば相関なしと判定する(ステップSd135)。相関があると判定した場合、流出量推定部364は、流出指標と比流量の間の回帰式を算出する(ステップSd136)。次に、流出量推定部364は、流出指標データベースの「流出指標」を「流域No」をキーとして参照し、回帰式及び参照した流出指標に基づき、流域毎の比流量を算出し、比流量データベースの「比流量」へ「流域No」をキーとして記録する(ステップSd137)。一方、相関がない或いは負の相関があると判定した場合、流出指標の再検討が必要であるため(ステップSd138)、当該処理を終了する。
なお、本処理により算出されたデータは比流量であるので、流域毎の流出量を算出する場合、流域毎の流域面積を乗ずる必要があるが、当該処理は、後述するように降雨涵養量演算部32aが行う。
図63は、流出量推定処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される観測所流域データベースは、「流域No」、流域内の緯度「X」、経度「Y」及び「降水量」からなる項目を有する。また、図(b)に示される河川流量観測データベースは、「流域No」、流域毎の「降水量」、「河川流量観測データ」及び「流出率」(算出結果)の項目からなる。河川流量観測データベースは、河川流量計測データが存在する流域の河川流量観測データが登録され、算出した流出率が記録される。図(c)に示される流出率データベースは、「流域No」、「流出率」からなる項目を有する。流出率データベースは、流域毎に各々の流出率(推定結果)が記録される。
図64は、観測値に基づいた流出量推定処理を示すフローチャートである。
流出量推定部364は、流域分割データベースを参照し、観測所が存在する流域の「流域No」、「X」及び「Y」を観測所流域データベースへ「流域No」、「X」及び「Y」をキーとして記録する。また、入力処理部40aは、気象情報システム(気象データ243)から入力される降水量データを受信し、受信したデータを同じく観測所流域データベースへ、「X」及び「Y」をキーとして登録する(ステップSd1311)。流出量推定部364は、観測所流域データベースを、「流域No」、「X」及び「Y」をキーとして参照し、降水量データを流域全域に渡って積算し、流域毎の降水量を算出する。次に、流出量推定部364は、河川流量観測データベースの「降水量」へ、「流域No」をキーとして記録する(ステップSd1312)。入力処理部40aは、河川流量情報システム(河川流量データ242)から入力される河川流量観測データを受信し、受信したデータを河川流量観測データベースの「河川流量観測データ」へ、流域Noをキーとして登録する(ステップSd1313)。次に、流出量推定部364は、河川流量観測データベースを「流域No」をキーとして参照し、河川流量観測データが入力されている流域Noについて、降水量を河川流量観測データで除して流出率を算出し、河川流量観測データベースの「流出率」に記録する(ステップSd1314)。また、流出量推定部364は、「流域No」をキーとして流出指標データベースを参照し(ステップSd1315)、流出率と流出指標の散布図を作成し、流出指標と流出率の間に相関があるかどうかを判定する(ステップSd1316)。流出量推定部364は、判定の際、流量閾値データベースの「S1」を参照し、散布図における流出指標と流出率の間の相関係数がS1以上であれば相関あり、S1未満であれば相関なしと判定する。相関があると判定した場合、流出量推定部364は、流出指標と流出率の間の回帰式を算出する(ステップSd1317)。次に、流出量推定部364は、「流域No」をキーとして流出指標データベースを参照し、回帰式に基づき流域毎の流出率を算出し、流出率データベースの「流出率」へ記録する(ステップSd1318)。一方、相関がない或いは負の相関があると判定した場合、流出指標の再検討が必要であるため(ステップSd1319)、当該処理を終了する。
なお、本処理により算出されたデータは流出率であるので、流域毎の流出量を算出する場合、流域毎の降水量を乗ずる必要があるが、当該処理は、後述するように降雨涵養量演算部32aが行う。
図65は、降水量推定処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される降水量推定処理データベースは、緯度「X」、経度「Y」、標高「H」、「降水量」、「損失補正後降水量」及び「空間補間後降水量」の項目からなり、気象観測所における「降水量」が登録され、計測対象地域(複数の流域)における「空間補間後降水量」が記録される。図(b)の降水量閾値データベースは、「S2」からなる項目を有する。S2には、気象観測所の標高値と降水量の間に相関があるかどうか判定する際の閾値が設定されている。図(c)の格子降水量データベースは、計測対象地域内の緯度「X」、経度「Y」、標高「H」及び「推定降水量」(格子DEM)からなる。
図66は、降水量推定処理を示すフローチャートである。
降水量演算部37は、地形データベースを「X」及び「Y」をキーとして参照し、気象観測所の緯度X、経度Y及び標高と、計測対象地域内の全ての緯度X、経度Yを降水量推定処理データベースへ「X」及び「Y」をキーとして登録する。また、入力処理部40aは、気象情報システム(気象データ243)から入力される気象観測所の降水量データを受信し、受信したデータを降水量推定処理データベースの「降水量」へ、「X」及び「Y」をキーとして登録する(ステップSd141)。次に、降水量演算部37は、登録された降水量に対して補足損失補正を行い、損失補正後降水量を算出し、降水量推定処理データベースの「損失補正後降水量」へ記録する(ステップSd142)。降水量演算部37は、標高と損失補正後降水量の散布図を作成し、標高と損失補正後降水量の間に相関があるかどうかを判定する。降水量演算部37は、判定の際、降水量閾値データベースにおける予め設定された閾値「S2」を参照し、標高と損失補正後降水量との間の相関係数が閾値S2以上であるか、閾値S2未満であるかを判定する(ステップSd143)。降水量演算部37は、相関係数が閾値S2以上と判定した場合、両者に相関があると判定し、標高と損失補正後降水量を求める際の回帰式を算出し、増減率(回帰式の傾き)を抽出する(ステップSd144)。次に、降水量演算部37は、増減率を基に、損失補正後降水量を標高0mの値に補正する(ステップSd145)。次に、降水量演算部37は、補正後の値を基に、空間補間を行い、標高0mにおける降水量(空間補間後降水量)を、計測対象地域の全てのX及びYについて算出し、「X」及び「Y」をキーとして降水量推定処理データベースの「空間補間後降水量」へ記録する(ステップSd146)。入力処理部40aは、標高値情報システム(DEMデータ241)から入力されるDEMデータを受信し、受信したDEMデータを格子降水量データベースの「X」、「Y」及び「H」へ登録する(ステップSd147)。降水量演算部37は、DEMデータの標高値に応じた降水量を、増減率に標高値を乗ずることで求め、乗じた結果に空間補間後降水量を加算し、対象地域における格子DEMごとの降水量を算出し、「X」及び「Y」をキーとして、格子降水量データベースの「推定降水量」へ記録する(ステップSd148)。
一方、ステップSd143において、相関係数が閾値S2未満であれば、降水量演算部37は、標高と損失補正後降水量との間に相関なしと判定し(ステップSd149)、空間補間を行って格子毎の降水量を算出し、「X」及び「Y」をキーとして、格子降水量データベース「推定降水量」へ記録する(ステップSd1410)。
なお、本処理により算出された降水量は格子DEMデータ毎の値であるので、流域毎の流出量を算出するには、流域毎に積算する必要があるが、当該処理は、後述するように降雨涵養量演算部32aが行う。
図67は、演算処理に用いられるデータのデータ構造を示す図である。図(a)に示される格子推定量データベースは、「流域No」、緯度「X」、経度「Y」、「推定降水量」、「推定流出量」、「推定蒸発散量」及び「推定涵養量」からなる項目を有する。格子推定量データベースは、流域No、緯度X及び経度Yをキーとして、格子毎の各格子推定量が記録される。また、図(b)に示される流域推定量データベースは、「流域No」、「推定降水量」、「推定流出量」、「推定蒸発散量」及び「推定涵養量」からなる項目を有する。流域推定量データベースは、「流域No」をキーとして流域毎の各推定量が記録される。
降雨涵養量演算部32aは、流域No毎に流域分割データベースの値を参照し、対象流域の分割データ(緯度X及び経度Y)を、格子推定量データベースに記録する。また、降雨涵養量演算部32aは、「X」及び「Y」をキーとして、格子降水量データベースの格子毎の「推定降水量」を参照し、格子推定量データベースの「推定降水量」へ記録する(ステップSd151)。次に、降雨涵養量演算部32aは、流域No毎に、格子毎の推定降水量を流域内全体について積算し、積算結果を「流域No」をキーとして流域推定量データベースの「推定降水量」に記録する(ステップSd152)。次に、降雨涵養量演算部32aは、流域Noをキーとして、流出率データベースの「流出率」を参照し、これを流域内の全ての格子の流出率とする。或いは、降雨涵養量演算部32aは、流域Noをキーとして、比流量データベースの「比流量」を参照し、格子一つあたりの面積を乗じて、流域内の全ての格子の比流量とする(ステップSd153)。次に、降雨涵養量演算部32aは、格子毎の推定流出量及び流域毎の推定流出量を算出する。流出率を用いる場合、降雨涵養量演算部32aは、格子毎の推定降水量に格子毎の流出率を乗じて、格子毎の推定流出量を算出し、格子推定量データベースの「推定流出量」へ記録する。また、流域毎の推定降水量に流域毎の流出率を乗じて、流域毎の推定流出量を算出し、流域推定量データベースの「推定流出量」へ記録する。なお、推定降水量が一日当たりの降雨量である場合、一日当たりの推定流出量が算出され、一月当たりの降雨量である場合、一月当たりの推定流出量が算出される。一方、比流量により推定流出量を算出する場合、降雨涵養量演算部32aは、格子毎の比流量を格子推定量データベースの「推定流出量」へ記録する。また、降雨涵養量演算部32aは、流域Noをキーとして、地形計測データベースの流域面積を参照し、比流量を乗じて流域毎の推定流出量を算出し、積算結果を流域推定量データベースの「推定流出量」に記録する(ステップSd154)。なお、比流量が一日当たりの比流量である場合、比流量に(流域面積÷100×60×60×24)を乗じて、一日当たりの推定流出量が算出され、月当たりの比流量である場合、更に当月の日数を乗じて一月当たりの推定流出量が算出される。次に、降雨涵養量演算部32aは、格子推定量データベースの「X」及び「Y」を「流域No」をキーとして参照し、参照した「X」及び「Y」をキーとして蒸発散量演算処理データベースの「可能蒸発散量」を参照し、格子推定量データベースの「推定蒸発散量」へ記録する(ステップSd155)。次に、降雨涵養量演算部32aは、流域No毎に、格子毎の推定蒸発散量を流域内全体について積算し、積算結果を「流域No」をキーとして流域推定量データベースの「推定涵養量」に記録する(ステップSd156)。次に、降雨涵養量演算部32aは、流域毎の推定涵養量を(流域毎の推定降水量−流域毎の推定蒸発散量−流域毎の推定流出量)に従って算出し、流域推定量データベースの「推定蒸発散量」に記録する。また、降雨涵養量演算部32aは、格子毎の推定涵養量を(格子毎の推定降水量−格子毎の推定蒸発散量−格子毎の推定流出量)に従って算出し、格子推定量データベースの「推定涵養量」及び降雨涵養量情報データベースの「降雨涵養量」に記録する(ステップSd157)。
なお、上記説明の因子解析において、実証を行った流域においては、因子1の因子負荷量が大きくなる分析変数として、平均侵食高及びラプラシアンSD(地形の煩雑さ)、因子2の因子負荷量が大きくなる分析変数として、流路形状比及び分岐比R1/2が選択された。選択される分析変数は、流域により異なる可能性もあるため、これらに限定されるものではない。流域が異なっても、本実施形態において詳述したように、因子1として水の流れ易さを示す因子が抽出され、因子2として水の流れにくさに直接関係する因子が抽出されると解される。
また、因子分析において、分析変数として11項目を選択したが、上述の実施形態における実証の一例として示したものであり、この数字に限定されるものではない。
110 演算処理部
10 イオン濃度水質情報判定処理部
20 同位体比判定処理部
30,30a 地下水移行算定処理部
31 蒸発散量演算部
32,32a 降雨涵養量演算部
33 圧力水頭0m設定部
34 全水頭演算処理部
35 地下水移行経路・移行時間演算処理部
40,40a 入力処理部
50 制御記憶処理部
70 記憶部
80 出力処理部
90 表示部
200,200a 情報入力システム
210 イオン・水質情報データ
220 同位体情報データ
231 リモートセンシングシステム
232 雨量情報システム
233 地図情報システム
234 地質情報システム
36 流出量演算部
37 降水量演算部
361 地形計測部
362 統計処理部
363 流出指標判定部
364 流出量推定部
241 標高値情報システム(DEMデータ)
242 河川流量情報システム(河川流量データ)
243 気象情報システム(気象データ)
Claims (8)
- 流出量と、降水量と、蒸発散量とから降雨涵養量を演算する降雨涵養量演算方法であって、
前記流出量を算出する工程は、
地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う第1の工程と、
地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する第2の工程と、
前記複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する第3の工程と、
前記流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出する第4の工程と、
導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する第5の工程と、
を有する降雨涵養量演算方法。 - 前記第3の工程は、
水の流れ易さと正の相関を有する第1の因子と水の流れ易さと負の相関を有する第2の因子とを抽出し、前記分割された流域の因子毎の因子得点を算出し、算出された因子得点に応じて前記分割された流域を因子毎に予め設定されたグループ数に分類し、前記因子毎に各々のグループに予め設定された得点を付与し、付与された前記得点とそれぞれの因子の寄与率に応じて前記分割された流域の流出指標を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の降雨涵養量演算方法。 - 地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う地形計測部と、
地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する統計処理部と、
前記複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する流出指標判定部と、
前記流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出し、
導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する流出量推定部と、
を備える流出量演算部が、算出する流出量に基づいて、降雨涵養量を算出する
ことを特徴とする降雨涵養量演算部。 - 前記流出指標判定部は、
水の流れ易さと正の相関を有する第1の因子と水の流れ易さと負の相関を有する第2の因子とを抽出し、前記分割された流域の因子毎の因子得点を算出し、算出された因子得点に応じて前記分割された流域を因子毎に予め設定されたグループ数に分類し、前記因子毎に各々のグループに予め設定された得点を付与し、付与された前記得点とそれぞれの因子の寄与率に応じて前記分割された流域の流出指標を算出すること
を特徴とする請求項3に記載の降雨涵養量演算部。 - イオン濃度判定処理部が記憶部に記憶された複数地点のイオン濃度データにおけるイオン濃度の比の一致度から地下水起源を算出する工程と、
同位体比判定処理部が記憶部に記憶された複数地点の同位体比データにおける同位体比の一致度から涵養高度を算出する工程と、
蒸発散量演算部が記憶部に記憶された植生域の衛星画像データにおける地域ごとの蒸発散量を算出する工程と、
流出量演算部が流出量を算出する工程と、
降雨涵養量演算部が前記蒸発散量、記憶部に記憶された降水量、及び前記流出量から浸透水量を算出する工程と、
圧力水頭0m設定部が記憶部に記憶された河川域を示す衛星画像データから前記地域ごとの地下水位0mの位置を算出する工程と、
全水頭演算処理部が前記浸透水量と各地点の標高情報とから前記地域の水頭値を算出する工程と、
地下水移行経路・移行時間演算処理部が前記水頭値の分布から地下水移行経路並びに移行時間を算出する工程と、を含む地下水起源解析方法であって、
前記流出量を算出する工程は、
地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う第1の工程と、
地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する第2の工程と、
前記複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する第3の工程と、
前記流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出する第4の工程と、
導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する第5の工程と、
を有することを特徴とする地下水起源解析方法。 - 記憶部に記憶された複数地点のイオン濃度データにおけるイオン濃度の比の一致度から地下水起源を算出するイオン濃度判定処理部と、
記憶部に記憶された複数地点の同位体比データにおける同位体比の一致度から涵養高度を算出する同位体比判定処理部と、
記憶部に記憶された植生域の衛星画像データから地域ごとの蒸発散量を算出する蒸発散量演算部と、
流出量を算出する流出量演算部と、
前記蒸発散量、記憶部に記憶された降水量、及び前記流出量とから浸透水量を算出する降雨涵養量演算部と、
記憶部に記憶された河川域を示す衛星画像データから前記地域ごとの地下水位0mの位置を設定する圧力水頭0m設定部と、
前記浸透水量と各地点の標高情報とから前記地域の水頭値を算出する全水頭演算処理部と、
前記水頭値の分布から地下水移行経路並びに移行時間を算出する地下水移行経路・移行時間演算処理部と、を備える地下水起源解析システムであって、
前記流出量演算部は、
地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う地形計測部と、
地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する統計処理部と、
前記複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する流出指標判定部と、
前記流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出し、
導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する流出量推定部と、
を備えることを特徴とする地下水起源解析システム。 - 地下水起源解析システムにおけるコンピュータに、
記憶部に記憶された複数地点のイオン濃度データにおけるイオン濃度の比の一致度から地下水起源を算出するステップと、
記憶部に記憶された複数地点の同位体比データにおける同位体比の一致度から涵養高度を算出するステップと、
記憶部に記憶された植生域の衛星画像データから地域ごとの蒸発散量を算出するステップと、
流出量を算出するステップと、
前記蒸発散量、記憶部に記憶された降水量、及び前記流出量とから浸透水量を算出するステップと、
記憶部に記憶された河川域を示す衛星画像データから前記地域ごとの地下水位0mの位置を設定するステップと、
前記浸透水量と各地点の標高情報とから前記地域の水頭値を算出するステップと、
前記水頭値の分布から地下水移行経路並びに移行時間を算出するステップと、
を実行させる地下水起源解析プログラムであって、
前記流出量を算出するステップは、
地形データから対象地域を複数の流域に分割し、分割された流域において地形計測を行う第1のステップと、
地形計測結果から水の流れ易さとの間に相関を有する複数の因子を抽出する第2のステップと、
前記複数の因子から前記分割された流域の流出指標を算出する第3のステップと、
前記流域の一部の流域の流出指標と実測された前記流出量との相関から回帰式を導出する第4のステップと、
導出された前記回帰式と前記分割された流域の流出指標から前記分割された流域の流出量を算出する第5のステップと、
を有することを特徴とする地下水起源解析プログラム。 - 地下水起源解析システムにおけるコンピュータに実行させる請求項7に記載のプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
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