JP5300778B2 - ガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法に関し、特に、石化C5ラフィネートを原料として用い、簡素化された設備によって効率的に、ガソリン基材用イソペンタン留分を製造できる方法を提供しようとするものである。
通常、ガソリンは、オクタン価、性状、組成等が異なる種々の基材(ガソリン基材)を組合せ、要求されるオクタン価や蒸気圧の範囲に調整することによって製造する。例えば、一般的なガソリン基材として、接触改質ガソリン、接触分解ガソリン、ナフサ、ブタン等が挙げられる。
そして、上記のガソリン基材の中でも、環境対応などの観点から、オクタン価が高く、低硫黄分であるイソペンタン留分をガソリン基材として用いることが知られている。例えば特許文献1では、リサーチ法オクタン価101.5以上、リード蒸気圧0.3kg/cm2以上、沸点範囲30〜200℃である改質ガソリン、アルキレート及び、リサーチ法オクタン価90〜95のイソペンタン留分を必須成分とし、リサーチ法オクタン価99.5以上、モーター法オクタン価88.6以上、芳香族分50容量%以下、70℃までの留出分が25容量%以上である高性能燃料油(ガソリン)が開示されている。また、特許文献2では、一酸化炭素と水素の混合ガスをフィッシャー・トロプシュ触媒及び水素化分解・異性化触媒に接触して得られたAGTLガソリンと、アルキレートガソリンとを含み、さらに、液化石油ガス、イソペンタン、脱硫直留ナフサ、接触改質ガソリン、脱硫接触改質ガソリンよりなる群から選択される1種以上の基材を含む、蒸気圧が65kPa以下、リサーチ法オクタン価が91以上、硫黄分が1質量ppm以下、銀板腐食が1以下、蒸留性状の50容量%留出温度が95℃以下、アロマ分が1容量%以下、オレフィン分が1容量%以下、及び水素/炭素比(mol)が2.3以上であるガソリン組成物が開示されている。
また、石油化学由来の留分を有効利用する観点から、石油化学由来のラフィネート(以下、「石化ラフィネート」という。)を原料として用いたガソリン基材の製造が望まれている。例えば特許文献3では、石化C6〜C8ラフィネートを異性化処理装置によって処理し、オクタン価の高いガソリン基材を製造する方法が開示されている。
さらに、石化C5ラフィネートについても、石化C6〜C8ラフィネートと同様に、ガソリン基材の留分として用いられることが望まれている。しかしながら、従来の石化C5ラフィネートの用途については、石化C4ラフィネート留分と反応させてプロピレンを製造したり、そのまま加熱炉の燃料などとして燃やしたりする用途に限られていた。
特開昭63−317591号公報 特開2007−16090号公報 特開2006−111754号公報
本発明は、ガソリン基材用イソペンタン留分を、石化C5ラフィネートを原料として用い、簡素化された設備によって効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意研究を重ねた結果、石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分とを混合する工程によって、石化C5ラフィネートを原料として用いた混合留分を得ることができ、さらに、前記混合留分を精留する工程によって、混合留分中の脱硫軽質ナフサ留分及び石化C5ラフィネートの精留を一つのプロセスで行えるため、簡素化された設備によって効率的にイソペンタン留分を製造できることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分とを混合して混合留分を得る工程と、前記混合留分を精留する工程とを備えることを特徴とするガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
(2)前記混合留分中のイソペンタン含有量が20〜40容量%の範囲であることを特徴とする上記(1)に記載のガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
(3)前記脱硫軽質ナフサ留分は、天然ガスコンデンセート由来であることを特徴とする上記(1)に記載のガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
(4)前記イソペンタン留分中のイソペンタン含有量が80容量%以上であることを特徴とする上記(1)に記載のガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
本発明によれば、高いイソペンタン含有量を有するガソリン基材用イソペンタン留分を、石化C5ラフィネートを原料として用い、簡素化された設備によって効率的に製造できる。
本発明によるイソペンタン留分の製造装置の一実施形態について模式的に示した図である。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明に従うイソペンタン留分の製造方法は、石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分とを混合して混合留分を得る工程と、前記混合留分を精留する工程とを備えることを特徴とする。
石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分とを混合して混合留分を得る工程により、石化C5ラフィネートをイソペンタン留分の原料として有効利用することが可能となり、さらに、前記混合留分を精留する工程によって、混合留分中の脱硫軽質ナフサ留分及び石化C5ラフィネートの精留を一つのプロセスで行える結果、高いイソペンタン含有量を有するイソペンタン留分を、簡素な設備で効率的に製造できる。加えて、前記精留工程において副生される石化ナフサ留分は、石化原料として利用することが可能となる。
さらにまた、前記イソペンタン留分の原料となるC5ラフィネート及び脱硫軽質ナフサ留分に含まれる硫黄分は、副生される石化ナフサ留分とともにイソペンタンの精留装置(図1ではイソペンタン分離装置100)から留出するため、前記イソペンタン留分の硫黄分が低い(具体的には、0.5質量ppm以下である)点においても効果がある。
ここで、図1は、本発明によるイソペンタン留分の製造装置の一実施形態について模式的に示したものである。図1から、石化C5ラフィネート10と脱硫軽質ナフサ留分20とを混合し、イソペンタン分離装置100によって、混合留分の精留を行うことで、イソペンタン留分40及び石化ナフサ留分50が得られ、製造工程は比較的簡素な設備(図1では、イソペンタン分離装置100及び脱硫ナフサスプリッタ200のみ)により行われることがわかる。C5ラフィネート用と軽質ナフサ留分用の2つのイソペンタン分離装置を備える必要が無い。
本発明によるイソペンタン留分の原料である石化C5ラフィネートは、石化プラントにおいて、エチレン、プロピレン等を生産する際に副生するC5留分から、イソプレンを抽出した残りの留分のことである。また、C5ラフィネートは、主に炭素数が5の炭化水素からなり、一般的に、C5のパラフィン分を約55〜85容量%程度含有し、C5オレフィン分を約10〜35容量%程度含有する。
なお、前記C5ラフィネートは、オクタン価の高いイソペンタン(RON:92.3)を含有する一方で、オクタン価の低いノルマルペンタン(RON:61.7)を含有するため、C5ラフィネート全体としてのオクタン価は低く(RON:70〜85程度)、そのままガソリン基材として用いることはできない。そのため、従来C5ラフィネートの利用法としては、単に燃料として利用したり、石化プラントにおいて、水添処理した後にナフサと混合しエチレン、プロピレンの原料として再度利用される程度に過ぎず、イソペンタン留分の原料として用いられることはなかった。
また、前記石化C5ラフィネートと混合する脱硫軽質ナフサ留分は、原油を常圧蒸留して得られるホールナフサ留分又は天然ガスコンデンセートを分留して得られるホールナフサ留分を、水素化脱硫処理して脱硫ナフサ留分とした後、該脱硫ナフサ留分を分留して得られる軽質留分のことである。主にC5〜C6パラフィンからなり、沸点が30〜140℃程度、密度が0.64〜0.70g/cm3程度、イソペンタン含有量が20〜35容量%程度である。
前記水素化脱硫の条件(装置、運転条件、触媒等)については、特に限定はされない。また、前記脱硫ナフサ留分の分留についても特に限定はされないが、例えば図1に示すように、脱硫ナフサスプリッタ200を用いて、脱硫ナフサ留分30中の軽質留分(脱硫軽質ナフサ留分20)と重質留分(脱硫重質ナフサ留分60)とを分離することができる。
さらに、前記脱硫軽質ナフサ留分は、天然ガスコンデンセート由来であることが好ましい。天然ガスコンデンセートは、ホールナフサ留分の得率が一般的な原油に比べて2〜3倍程度高いからである。
また、前記石化C5ラフィネートと前記脱硫軽質ナフサ留分との混合の条件については、確実に混合留分が得られる方法であれば特に限定はしない。例えば、前記石化C5ラフィネートの配管と前記脱硫軽質ナフサ留分を留出する配管とを結合することで、配管中で混合を行うことができる。
さらに、前記石化C5ラフィネートと前記脱硫軽質ナフサ留分との混合割合については、脱硫ナフサ留分の分留装置の能力、イソペンタン留分の分離装置の能力、装置の稼動状況等によって、種々の条件とすることができるが、効率的に所望のイソペンタン留分を得ることができる点から、前記混合留分中のイソペンタン含有量が20〜40容量%の範囲となるように混合することが好ましい。
また、前記混合留分の精留については、イソペンタン含有量が高いイソペンタン留分を得ることができる方法であれば、詳細な条件(装置や運転条件など)については特に限定はしない。例えば、図1に示すイソペンタン分離装置100として、段数の多い精密蒸留装置等を用いて行うことができる。
さらに、前記精留によって得られるイソペンタン留分は、大気圧よりも蒸気圧が高い(130〜145kPa程度)ため、精留効率の点から、100〜200kPa程度加圧した状態で前記精留を行うことが好ましい。
また、本発明によって得られたイソペンタン留分は、高オクタン価のイソペンタンを高濃度で含有するため、ガソリン基材として好適に用いることができる。
前記イソペンタン留分中のイソペンタン含有量は、80容量%以上であることが好ましい。高いオクタン価を有するため、ガソリン基材として用いられた場合に優れた耐ノック性を発揮することができるからである。一方、イソペンタン含有量が80容量%未満の場合、高オクタン価ガソリン基材として十分なオクタン価を有することができないおそれがある。
さらに、前記イソペンタン留分は、上述したように大気圧よりも蒸気圧が高いため、LPガス用高圧タンクに貯蔵することが好ましい。なお、前記イソペンタン留分と、分解ガソリン留分又は改質ガソリン留分とを留出配管内で混合して、混合したガソリン基材の蒸気圧を大気圧以下に制御した場合には、通常のタンクでも貯蔵が可能となる。
また、前記混合留分の精留によって、前記イソペンタン留分とともに得られる石化ナフサ留分は、ノルマルペンタン成分が濃縮されており、エチレンの原料として好適に有効利用できる。エチレン分解装置を使用する場合にエチレン収率が低く、コーキング反応等を引き起こすおそれがあるイソペンタンが分離されているからである。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲の記載に応じて種々の変更を加えることができる。
以下の工程に従って、イソペンタン留分を製造した。
(1)表1に示す性状の石化C5ラフィネートを準備した。
(2)また、図1に示すように、天然ガスコンデンセートを蒸留して得られるホールナフサ留分を水素化脱硫処理した脱硫ナフサ留分30を、脱硫ナフサスプリッタ200を用いて分留することで、脱硫軽質ナフサ留分20を得た。その性状については表2に示す。
(3)その後、前記石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分とを、それぞれの留出配管を結合することによって混合して、混合留分を得た。なお、前記石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分との混合比(容量比)は、25:75である。
(4)その後、図1に示すように、多段式の精密分留装置(イソペンタン分離装置100)を用い、塔頂圧を約200kPaに加圧した状態で、前記混合留分を精留し、サンプルとなるイソペンタン留分40を得た。なお、得られたイソペンタン留分の性状は表3に示す。
Figure 0005300778
Figure 0005300778
Figure 0005300778
表1〜3の結果から、本発明の実施例では、石化C5ラフィネートを原料として有効利用でき、さらに、簡素化された設備によって効率的に、イソペンタン含有量の高い(90.6容量%)ガソリン基材用のイソペンタン留分を製造できたことがわかる。
本発明によれば、石化C5ラフィネートを原料として用い、簡素化された設備によって効率的にガソリン基材用イソペンタン留分を製造できる方法の提供が可能となる。
10 石化C5ラフィネート
20 脱硫軽質ナフサ留分
30 脱硫ナフサ留分
40 イソペンタン留分
50 石化ナフサ留分
60 脱硫重質ナフサ留分
100 イソペンタン分離装置
200 脱硫ナフサスプリッタ

Claims (4)

  1. 石化C5ラフィネートと脱硫軽質ナフサ留分とを混合して混合留分を得る工程と、前記混合留分を精留する工程とを備えることを特徴とするガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
  2. 前記混合留分中のイソペンタン含有量が20〜40容量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
  3. 前記脱硫軽質ナフサ留分は、天然ガスコンデンセート由来であることを特徴とする請求項1に記載のガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
  4. 前記イソペンタン留分中のイソペンタン含有量が80容量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のガソリン基材用イソペンタン留分の製造方法。
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