JP5294751B2 - 金属炭化物表面層の形成方法、金属炭化物表面層 - Google Patents

金属炭化物表面層の形成方法、金属炭化物表面層 Download PDF

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本発明は、母材の表面に金属炭化物表面層を形成する方法、並びにその方法から得られる金属炭化物表面層に関するものである。
従来より、工具等の金属の表面に耐摩耗性のある金属炭化物含有層を形成することにより、工具表面の高硬度化や工具寿命の延長を図るための技術が種々提案されている。斯かる従来技術の例としては、C(炭素)粉末を分散した加工液を供給しつつ金属電極を用いて放電により金属母材表面に金属炭化物の被膜を形成する技術(例えば、特許文献1参照)、電極にW(タングステン)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)等の耐摩耗性が高く炭化物を形成しやすい金属を用い、Cを所定量含有する加工液を用いることにより、金属母材表面に金属炭化物の被膜を形成する技術(例えば、特許文献2参照)、C含有ガスを構成成分とする雰囲気中でCo(コバルト)−Cr(クロム)系合金物品を所定条件下でプラズマ処理を行うことで、その合金物品の表面領域にCを導入する技術(例えば、特許文献3参照)等を挙げることができる。
その他、例えば肉盛溶接や溶射等の表面改質技術を用い、耐摩耗性に優れるWやTi等の金属炭化物粉末をCo基合金やFe(鉄)基合金等の粉末をバインダとしてサーメット化したものを用いるという技術や、焼結による炭化物を含む表面層の作成技術も従来より知られている。これらの技術は、金属炭化物の粉末を未溶融状態のままバインダにより硬化させ、金属炭化物や金属窒化物の粒子を表面に分散させたことにより、耐摩耗性を実現する、というものである。このような技術を用いた工具として、例えば、分散させる炭化物粒子の種類及びバインダ材を目的に応じて選択することで、工具表面に耐摩耗性、低摩擦係数、耐焼き付き性を付与するというものや(例えば、特許文献4参照)、炭化物粒子の種類及びバインダ材により、高温下での工具表面の耐摩耗性が異なるというもの(例えば、被特許文献1参照)が知られている。
特開2000−234178号公報 特開平9−19829号公報 特表2005−524772号公報 特公平6−45858号公報 "Development of a wear-resistant surface layer for a tool to be usedfor high-temperature stainless steel rolling",K.Tubouchi, N.Akiyama, M.Tumura, S,Amano,Proc Inst Mech Engrs,Vol.213 Part J,p473-480,1999年発行
ところで、上述した特許文献1〜3に開示されている技術では、C粉末を分散した加工液やC含有ガスを用いなければならず、またこれらの方法では、数μm〜数十μm程度の厚さの金属炭化物被膜を得ることしかできない。また、特許文献4や非特許文献1に開示されている技術では、形成される表面層の炭化物粒子の大きさや形状は、注入する金属炭化物粒子に大きく依存するため、制御することが困難である。そして、形成される金属炭化物粒子の大きさや形状は、工具の耐摩耗性や靭性等に大きく影響する。すなわち、耐摩耗性を向上させるために金属炭化物粒子の割合を多くすると靭性が低下して、工具の使用中に割れが発生しやすくなるという問題が生じる。さらに、比重の差により金属炭化物粒子が溶接中に浮き沈みするため、均一な割合で表面に金属炭化物粒子を分散させることができず、また比重が大きく異なる金属炭化物粒子同士は混合することが困難であるという問題もある。
以上のような問題に鑑みて、本発明は、金属を含む母材表面にC(炭素)を直接注入して冶金学的に金属炭化物表面層を形成する方法、並びにその金属炭化物表面層を提供することを主たる目的とするものである。
すなわち本発明に係る方法は、1種類以上の金属を主とする母材表面に金属炭化物表面層を形成する方法であって、母材表面を溶融し、当該母材表面に溶融池を形成する工程と、溶融池において、溶融した母材表面に存在する金属に炭素を直接反応させる工程と、炭素が反応した溶融池を冷却により硬化させて金属炭化物表面層を形成する工程とを含むことを特徴とする金属炭化物表面層の形成方法である。
このような方法によれば、C(炭素)を直接的且つ強制的に溶融した母材表面に注入し、母材表面における金属とCとを反応させる結果、冶金学的に金属炭化物が生成するため、母材表面に存在させる金属元素の種類や割合を制御したり、溶融池に注入するCの注入条件を制御したりすることができ、目的に応じた耐摩耗性を有する母材の表面層を得ることが可能となる。また、金属炭化物表面層の耐摩耗性と靭性のバランスを適度に調整することができ、数mm〜数十mmの比較的厚い金属炭化物表面層を形成することもできるため、このような金属炭化物表面層を有する工具の耐久性や寿命を向上することが可能となる。ここで、母材表面に溶融池を形成する方法としては、例えばプラズマ粉体溶接(PTA)や、タングステンイナートガス(TIG)溶接、レーザーや電子ビーム等の溶接技術を用いることができる。また、本発明において、Cと共に金属炭化物表面層を形成する金属は、母材自体がその組成として含有していてもよいが、母材の表面に対して外部から添加してもよい。また、母材表面に存在させる金属は、一種類以上あれば複数種類が存在していてもよく、金属炭化物表面層が複数種類の金属炭化物から構成されることを妨げない。特に、母材表面に形成されて耐摩耗性を向上することができるような金属炭化物表面層が得られる金属としては、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)等を例示することができる。
特に本発明では母材表面に炭素を直接反応させる工程において、母材表面における溶融池に炭素棒を挿入することにより、母材表面と炭素とを直接反応させるようにしているため、母材表面に対するCの注入操作の容易性向上し、また注入条件の設定を容易なものとすることができる
また、本発明においては、母材表面に外部から金属炭化物表面層をCと共に形成する金属を添加する場合、母材表面に溶融池を形成する工程において、溶融池に、金属炭化物を形成すべき金属を添加して溶融させておくことができる。その他にも、母材表面に炭素を直接反応させる工程において、溶融池内で母材表面と炭素とを反応させつつ金属炭化物を形成すべき金属を添加するようにしてもよい。さらには母材表面に炭素を直接反応させる工程と金属炭化物表面層を形成する工程との間に、溶融池内で溶融している母材表面と炭素に、金属炭化物を形成すべき金属を添加する工程を加えるようにしてもよい。
本発明に係る金属炭化物表面層は、溶融させた1種類以上の金属を主とする母材表面に存在する当該金属に、母材表面に形成した溶融池に炭素棒を挿入することによって炭素を直接反応させ、反応後の溶融池を冷却・硬化させることにより、母材表面に形成されることを特徴とするものである。このような金属炭化物表面層を有する工具であれば、上述したとおり、耐摩耗性や靭性に優れ耐久性の良好な工具とすることができ、摩耗した工具表面の部分的な補修やリサイクルも容易に行うことができる。
本発明によれば、母材表面に形成した溶融池において、溶融池に炭素棒を挿入し、母材表面に存在する金属と炭素棒のCとを直接反応させ、それを冷却・硬化させることで金属炭化物表面層を形成することができるため、母材表面に存在させる金属元素の種類や割合の制御や、Cの溶融池への注入条件の制御が可能であり、目的や用途に応じた耐摩耗性を有する母材の表面層を得ることができる。さらに、このような調整により、金属炭化物表面層の耐摩耗性と靭性のバランスを適度なものとし、比較的分厚い金属炭化物表面層を形成することもできることから、耐久性や寿命の良好な表面層を有する工具を得ることが可能である。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
以下の説明においては、母材表面への金属炭化物表面層の形成方法並びにその方法に使用する装置について述べるものとする。本実施形態では、高温の熱源を有する溶接技術に用いられるプラズマ粉体溶接(PTA)を利用して、母材表面を溶融し溶融池を形成しつつ、金属炭化物を形成すべき金属とCを溶融池に供給することとしている。
図1は、本実施形態に適用されるPTAを利用した金属炭化物表面層形成装置1(以下、必要に応じて「装置1」と略する)の要部の概観を示す模式的な縦断面図である。この装置1は、主としてPTA装置(トーチ2のみを図示する)と炭素源3とから構成される。トーチ2は、駆動手段(図示省略)により溶接方向と直交する方向(例えば図中の左右方向)に移動可能とされている。具体的にトーチ2は、内側から順にタングステン電極21、内壁22、中壁23、外壁24により構成されている。内壁22は水冷式ノズルとして機能している。タングステン電極21と内壁22とによりプラズマガス供給用ノズルを構成しており、図中上方から供給されるプラズマガス2aをトーチ2の先端部に向けて送出するようにしている。また、内壁22と中壁23とによりプラズマアーク収束及び粉体供給用ノズルを構成しており、図中上方から供給されるキャリアガス2bと金属炭化物表面層を形成すべき金属の粉体5(以下、「金属粉体5」と称する)をトーチ2の先端部から放出するようにしている。さらに中壁23と外壁24とによりシールドガス供給用ノズルを構成しており、図中上方から供給されるシールドガス2cをトーチ2の先端部から噴射するようにしている。また、符号25及び26はそれぞれパイロットアーク電源、プラズマアーク電源を示している。プラズマアーク電源25は、タングステン電極21と母材4との間に電圧を発生させるためのものであり、プラズマアーク電源26は、発生した電圧を安定させるように制御するものである。ここで、金属粉体5としては、Mo、Nb、W、Ti等を一種類、又は複数種類混合したものを適用することができる。これらは炭化物の中でも硬質な炭化物を作る代表的な元素であり、これらの他にはCr(クロム)、V(バナジウム)、Ta(タンタル)等を例示することができる。また、金属粉体5には、窒化物や硼化物のような非金属が混合されていてもよい。プラズマガス2a、キャリアガス2b、シールドガス2cには、例えばAr(アルゴン)ガスを適用することが好ましい。
炭素源3は、具体的には炭素を棒状に固めた炭素棒31と、炭素棒31の先端部をプラズマアーク2d(後述)により溶融した母材表面の溶融池X1,X2(後述。X2については図2参照)に挿入する駆動手段(図示省略)とから構成される。また母材4には、本実施形態ではFe(鉄)を主成分とし、炭素含有量が0.3(質量%)以下である低炭素鋼を用いている。
そして、トーチ2の先端部をシールドガス2cによりシールドし、プラズマガス2aとキャリアガス2bと共に金属粉体5を供給しながらタングステン電極21と母材4との間に電圧を発生させることにより、トーチ2の先端部からプラズマアーク2dを発生させる。さらに、プラズマアーク2dの先端部には、炭素棒31を順次挿入する。そして、前述の駆動手段によりトーチ2と母材4とを相対的に移動させることで、母材4の表面に金属炭化物表面層6(母材4側から第一層目を金属炭化物表面層61とする)を形成していく。すなわち、図中、金属炭化物表面層61の先端部において灰色(色が濃い部分)で示している部分は、プラズマアーク2dにより溶融した母材4の構成金属(本実施形態ではFe)及び金属粉体5と金属棒31由来のCからなる溶融池X1であり、この溶融池X1内で溶融した母材4の構成金属(Fe)と金属粉体5とCとが反応し、この溶融池X1が冷却により硬化することで、母材4の表面に順次金属炭化物表面層61が形成される。形成された金属炭化物表面層61は、母材4の構成金属とCとからなる金属炭化物(本実施形態の場合、炭化鉄)と、添加した粉体5の金属元素とCとからなる金属炭化物(本実施形態の場合、炭化モリブデン、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化チタン等)とが混在したものとなる。なお、生成する金属炭化物は条件により異なる。例えば、Cとの親和力がFeよりも強いNbが大量に存在する場合には、Cの混入量にもよるが、CとNbが優先的に化合物を形成し、炭化鉄が全く又は殆ど形成されない場合があり、後述するような複合炭化物が生成される場合もあり得る。
図2に、上述した方法と同様にして、母材4の表面に第一層目として形成された金属炭化物表面層61の表面に、第2層目の金属炭化物表面層62を形成する様子を図1に倣って示す。この場合、母材表面とは、第一層目の金属炭化物表面層61の表面を意味する。この場合、プラズマアーク2dにより第一層目の金属炭化物表面層61の表面を溶融して溶融池X2を形成し、この溶融池X2内で溶融した金属炭化物表面層61と金属粉体5とCとが反応し、この溶融池X2が冷却により硬化することで、母材4の表面に順次金属炭化物表面層62が形成される。形成された金属炭化物表面層62は、金属炭化物表面層61に含まれる金属とCとからなる金属炭化物と、金属炭化物表面層62形成時に添加した粉体5の金属元素とCとからなる金属炭化物(複数の金属元素による複合炭化物も含まれる場合がある)とが混在したものとなる。ただし、二層目の金属炭化物表面層62では、一層目の金属炭化物表面層61における母材4の構成金属(Fe)の含有量は母材4よりは少ないため、金属炭化物表面層62に含まれる母材4由来の金属炭化物(炭化鉄)は金属炭化物表面層61よりは少なくなる。なお、生成する金属炭化物は条件により異なるのは、上述の通りである。第三層目以降の金属炭化物表面層を形成する場合も同様にして行うことができる。
このように、本実施形態の方法によれば、母材表面に形成した溶融池X1,X2に直接Cを反応させているため、母材表面に、母材4の組成金属とCとの金属炭化物、溶融池X1,X2形成時に外部から添加した金属(金属粉体5)とCとの金属炭化物、複数種類の金属とCとの複合炭化物からなる金属炭化物表面層6を得ることができる。そして、この金属炭化物表面層6の組成、あるいは金属炭化物表面層6を形成する金属炭化物の形状や大きさや性質は、母材4の種類や添加する金属の種類や量若しくは反応させるCの量等により適宜に調整することが可能である。特に、耐摩耗性に優れた金属炭化物表面層6を有する工具等を安価に得るためには、低機能で安価な低炭素鋼等を母材4としつつ、溶融した母材表面にMo、Nb、W、Ti等の金属を添加すればよく、さらに熱間で潤滑性能の高い(低摩擦性の)表面を有する工具等を得るためには、添加する金属をMoやNb等とすればよい。Moについては冷間でも潤滑性を発揮することができる。また、金属炭化物表面層6の厚さについては、金属炭化物表面層6を複数層とすることで調整することが可能であり、従来のものよりも分厚い金属炭化物表面層6を容易に形成することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば母材表面の溶融は、上述したPTA以外にもTIG溶接技術や他の溶融技術を利用することも可能である。また、上記実施形態のように、母材表面を溶融しながら別の金属を添加するのではなく、溶融した母材表面に金属を添加してもよく、さらに別の金属(CoやNi等)を添加剤として加えることもできる。あるいは、このように別の金属を添加するのではなく、溶融した母材表面にCを注入するだけでも、母材の組成金属とCとの金属炭化物表面層を得ることができる。その他、金属炭化物表面層を形成する方法や装置の具体的構成、あるいは形成される金属炭化物表面層の組成等についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
以下に、上述した本発明の実施形態により、母材を低炭素鋼(Feを主成分とし、炭素含有量0.3(質量%)以下)として、その母材表面に次のような各種の金属炭化物表面層を形成した。なお、母材自体を比較例としている。
実施例1;母材に対しCを注入したもの。
実施例2;母材に対し純Mo60重量%と純Nb40重量%の混合粉体をPTAにより一層肉盛したもの(これを母材表面とする)にCを注入したもの。
実施例3;母材に対し純Mo100重量%の粉体をPTAにより二層肉盛したもの(これを母材表面とする)にCを注入したもの。
実施例4;母材に対し純Mo100重量%の粉体をPTAにより三層肉盛したもの(これを母材表面とする)にCを注入したもの。
図3に、各実施例の金属炭化物表面層及び比較例(母材)について、EDX(エネルギー分散型X線分光分析法)による定量分析結果を示すこの分析から、各表面における主要な金属の重量割合が分かる。比較例及び実施例1ではFeが100重量%であるが、実施例2〜4の分析結果から、肉盛層が多くなるほどFeの割合が減少し、添加した金属(Mo及びNb、又はMo)の割合が高くなることが分かる。また、FeよりもMoやNbはCとの親和力が強く、それらからなる炭化物は凝固点も炭化鉄よりも高いので、MoやNbが添加されていれば、それらからなる炭化物が優先的に生成されることになる。
図4に、各実施例の及び比較例(母材)の各表面についての光学顕微鏡による組織観察写真を示す。実施例1の写真において、白い部分が炭化鉄である。実施例2の写真において、白いバンド状の部分が炭化鉄であり、粒状の部分が炭化ニオブである。実施例3及び実施例4の写真において、色が濃い部分がFe−Mo系複合炭化物である。各実施例の写真並びに比較例(母材)の写真を比べると分かるように、母材表面に金属炭化物表面層を形成することで表面の性状が変化し、また形成される金属炭化物の種類や形成過程が異なることで、さらに表面の性状が変化することが分かる。
図5に実施例1の、図6に実施例2の、図7に実施例3の、図8に実施例4の、それぞれ金属炭化物表面層の表面からの深さ0.5mmから0.5mm毎におけるマイクロビッカース硬度の測定結果をグラフで示す。なお、母材(Fe)自体のマイクロビッカース硬度は100〜200(Hv)程度である。各図において、マイクロビッカース硬度が急激に低下している部分から図中左側が金属炭化物表面層であり、右側が母材である。各図から分かるように、各実施例とも、母材表面に金属炭化物表面層を形成することにより、表面の硬度を向上することができる。また、母材にCを注入した実施例1よりも、MoとNbを添加してCを注入した実施例2、Moを二層盛又は三層盛してCを注入した実施例3及び実施例4の方が、表面の硬度を大幅に向上することができる。さらに、実施例3と実施例4とを比較すると、母材表面にMoを二層盛するよりも三層盛した方が、表面の硬度が向上した。なお、最も高い硬度が得られたのは実施例2である。これは炭化鉄の硬度は1200Hv程度と炭化物の中では低いが、その面積占有率が高いこと、更に硬度2000Hv以上を有する炭化ニオブが数多く分散していることに起因している。また、最も深くまで高い硬度を維持できたのは実施例4であった。
以上の結果から、溶融した母材表面、すなわち溶融した母材自体又はそれに添加した別の金属と共にCを直接反応させるという本発明により、非常に硬度が高い金属炭化物表面層を得ることができることが実証された。さらに、溶接技術を用いているため接合部の密着性に優れ、尚かつ金属炭化物の面積占有率が高く、有効強度の深い高硬度金属炭化物表面層を得ることができることが実証された。また、添加元素の添加量や種類を調整する事により様々な形態の炭化物が形成可能であり、それにより金属炭化物表面層の性質を調整可能なことは明らかである。
本発明の一実施形態に適用される金属炭化物表面層装置の概観と、第一層目の金属炭化物表面層形成の様子を示す模式的縦断面図。 同第二層目の金属炭化物表面層形成の様子を示す模式的縦断面図。 各実施例及び比較例のEDXによる定量分析結果を示す図。 各実施例及び比較例の光学顕微鏡による組織観察写真を比較して示す図。 第1実施例の金属炭化物表面層の表面からの各深さにおけるマイクロビッカース硬度の測定結果を示す図。 第2実施例の金属炭化物表面層の表面からの各深さにおけるマイクロビッカース硬度の測定結果を示す図。 第3実施例の金属炭化物表面層の表面からの各深さにおけるマイクロビッカース硬度の測定結果を示す図。 第4実施例の金属炭化物表面層の表面からの各深さにおけるマイクロビッカース硬度の測定結果を示す図。
符号の説明
1…金属炭化物表面層形成装置
2…トーチ
2d…プラズマアーク
3…炭素源
31…炭素棒
4…母材
5…金属粉末
6,61,62…金属炭化物表面層

Claims (5)

  1. 1種類以上の金属を主とする母材表面に金属炭化物表面層を形成する方法であって、
    前記母材表面を溶融し、当該母材表面に溶融池を形成する工程と、
    前記溶融池に炭素棒を挿入することにより、溶融した母材表面の前記金属に炭素を直接反応させる工程と、
    前記炭素が反応した溶融池を冷却により硬化させて金属炭化物表面層を形成する工程と、
    を含むことを特徴とする金属炭化物表面層の形成方法。
  2. 前記母材表面に溶融池を形成する工程において、当該溶融池に、金属炭化物を形成すべき金属を添加して溶融させておくようにしている請求項1に記載の金属炭化物表面層の形成方法。
  3. 前記母材表面に炭素を直接反応させる工程において、前記溶融池内で母材表面と炭素とを反応させつつ金属炭化物を形成すべき金属を添加するようにしている請求項1に記載の金属炭化物表面層の形成方法。
  4. 前記母材表面に炭素を直接反応させる工程と前記金属炭化物表面層を形成する工程との間に、前記溶融池内で溶融している母材表面と炭素に、金属炭化物を形成すべき金属を添加する工程を含む請求項1に記載の金属炭化物表面層の形成方法。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の方法により、1種類以上の金属を主とする前記母材表面に形成されることを特徴とする金属炭化物表面層。
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