JP5292936B2 - 半導体素子特性シミュレーション装置、シミュレーション方法およびプログラム - Google Patents

半導体素子特性シミュレーション装置、シミュレーション方法およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、半導体素子特性をシミュレーションするデバイスシミュレーション技術に関し、特に、ショットキー・ソース/ドレインMOSFET等の特性の評価に好適なデバイスシミュレーション装置と方法並びにプログラムに関する。
近年、半導体素子の微細化に伴い、電界効果型トランジスタ(MOSFET)のソース/ドレイン領域における抵抗が、MOSFETの電気的特性に大きな影響を及ぼすようになってきている。このようなソース/ドレイン領域における抵抗を低減するため、従来は半導体により構成していたソース/ドレイン領域を、より低抵抗な金属によって構成し、半導体チャネル領域とショットキー接合させた、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETが期待されている。
ソース/ドレイン領域とチャネル領域とは、理想的にはオーミックな接合により結び付けられることが望ましいが、実際には、ソース/ドレイン領域とチャネル領域との間にはショットキー障壁が残る場合が多い。
ショットキー・ソース/MOSFET中を流れるキャリアは、このようなショットキー障壁を越えてソース領域からチャネル領域に流れ込む。
その際、キャリアが実効的に感じるショットキー障壁は、ソース/ドレイン-チャネル境界での鏡像電荷の効果や、量子力学的なトンネル効果などによって変化するため、キャリアの状態やバイアス条件によって変化し得る。
そのため、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性を正しく予測するためには、ショットキー障壁付近のキャリアの状態やバイアス条件によって、ショットキー障壁に変調を加える必要がある。
ソース/ドレイン-チャネル境界での鏡像電荷の効果については広く知られており、ソース/ドレイン電極中に仮想的な鏡像電荷を置き、鏡像電荷による電界によってショットキー障壁を変調する方法がある。
しかし、キャリアがショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果については、簡単にモデル化することが難しい。
キャリアの輸送を量子力学的に取り扱えば、ショットキー障壁をトンネルする効果は自然な形で正確に取り入れることが可能である。
しかし、一般的に、量子輸送方程式を高速に解くことはできない。そのため、キャリアがショットキー障壁をトンネルする効果を、古典的・半古典的な輸送方程式に取り入れることが望まれる。
従来、キャリアがショットキー障壁をトンネルする効果を、古典的・半古典的な輸送方程式に取り入れる手法として、非特許文献1に記載の手法が知られている。非特許文献1には、キャリアを粒子として考えるモンテカルロ・デバイスシミュレーションにおいて、ショットキー障壁の透過確率を計算しておき、ソース/ドレイン領域中を運動する粒子がソース/ドレイン‐チャネル境界に達した場合に、その粒子がチャネル領域に出るか、またはショットキー障壁で反射されるかを、計算しておいた透過確率に基づいて決定する手法が開示されている。
また、非特許文献2には、ショットキー障壁のトンネル電流を、熱電子放出の式にトンネル確率を取り入れて計算し、生成・再結合項としてボルツマン輸送方程式に取り入れることにより、ショットキー障壁を量子力学的にトンネルする成分をシミュレーションに取り入れる手法が開示されている。
Brian Winstead and Umberto Ravaioli, "Simulation of Schottky Barrier MOSFET’s with a Coupled Quantum Injection/Monte Carlo Technique", IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES 47, 1241 (2000). MeiKei Ieong, Paul M. Solomon, S. E. Laux, Hon-Sum Philip Wong, and Dureseti Chidambarrao, "Comparison of Raised and Schottky Source/Drain MOSFETs Using a Nobel Tunneling Contact Model", IEDM Technical Digest, 733 (1998).
以下に本発明による関連技術の分析を与える。
上記従来の手法は下記のような問題を有している。
第1の問題点は、長い計算時間が必要である点にある。キャリアがショットキー障壁をトンネルする効果は量子輸送方程式を解けば正確に取り入れられるが、量子輸送方程式を高速に解くことが難しい。
第2の問題点は、特定のデバイスシミュレーション方法に対してしか適用できない点にある。非特許文献1に記載の手法では、ショットキー障壁ポテンシャルは変化させず、ソース/ドレイン電極領域中を運動するキャリアが、チャネルとの境界領域に達した時に、ショットキー障壁の透過率に応じて、チャネルへ流出、またはソース/ドレイン領域に反射するようになっている。この方法は、キャリアを粒子として実際に動かすモンテカルロ・シミュレーションでは有効であるが、キャリアを粒子として扱わない他の方法、例えば流体型のデバイスシミュレータなどには適用できない。
また、非特許文献2に記載の手法は、ショットキー障壁でのトンネル電流を、熱電子放出の式にトンネル確率を取り入れて計算し、生成・再結合項として輸送方程式に直接取り入れるものであるため、例えばモンテカルロ・シミュレーションなどには適用が難しい。
更に、非特許文献2に記載の手法は、バルク状態の電子に対して、有効質量近似に基づいて定式化されているため、フルバンド構造を考えた場合や、閉じ込めの量子力学的効果により低次元化した電子に対しては適用することができない。
本発明の目的は、ショットキー・ソース/ドレインMOSFET中のキャリアが、ショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を、古典的・半古典的な輸送方程式に基づく一般的なデバイスシミュレータに取り入れることが可能な、補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置、方法およびプログラムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、算出した補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いて、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性を高速かつ正確に解析可能なデバイスシミュレーション装置、方法およびプログラムを提供することにある。
本願で開示される発明は、前記した課題を解決するため概略以下の構成とされる。
本発明の1つの側面に係る補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置は、
ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力するショットキー障壁ポテンシャル入力部と、
前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を算出するトンネル状態密度算出部と、
前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算する古典的状態密度計算部と、
前記古典的状態密度と前記トンネル状態密度から全状態密度を計算する全状態密度計算部と、
ショットキー障壁領域におけるキャリア分布を入力するキャリア分布入力部と、
前記全状態密度と前記キャリア分布からショットキー障壁領域における全キャリア密度を、また、前記古典的状態密度と前記キャリア分布からショットキー障壁領域における古典的キャリア密度を、それぞれ計算するキャリア密度計算部と、
前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較するキャリア密度比較部と、前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくなるまでショットキー障壁ポテンシャルを変更するショットキー障壁ポテンシャル変更部と、
前記ショットキー障壁ポテンシャル変更部から得られたショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する補正ショットキー障壁ポテンシャル出力部と、を備える。
本発明の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置は、上記のトンネル状態密度計算部が、ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布を計算するショットキー障壁透過確率計算部と、古典的状態密度の基準状態密度を設定する基準状態密度設定部と、前記ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布に前記基準状態密度を乗じた分布をトンネル状態密度として出力するトンネル状態密度出力部と、を備えている。
本発明の他の側面に係るデバイスシミュレーション装置は、上記本発明に係る補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置により算出された補正ショットキー障壁ポテンシャルを入力する補正ショットキー障壁ポテンシャル入力部と、前記入力された補正ショットキー障壁ポテンシャルのもとで、キャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値的に解き、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする古典的輸送シミュレーション部と、を備える。
本発明の他の側面に係る補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法は、
a)ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力するショットキー障壁ポテンシャル入力工程と、
b)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度算出工程と、
c)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算し、前記トンネル状態密度と前記古典的状態密度から全状態密度を計算する全状態密度計算工程と、
d)ショットキー障壁領域におけるキャリア分布を入力し前記キャリア分布と前記全状態密度からショットキー障壁領域における全キャリア密度を計算する全キャリア密度計算工程と、
e)現在のショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度と前記キャリア分布から古典的キャリア密度を計算する古典的キャリア密度計算工程と、
f)前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較するキャリア密度比較工程と、
g)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくない場合にショットキー障壁ポテンシャルを変更するショットキー障壁ポテンシャル変更工程と、
h)前記ショットキー障壁ポテンシャル変更工程で変更されたショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算する古典的状態密度計算工程と、
i)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しい場合のショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する補正ショットキー障壁ポテンシャル出力工程と、を含む。
本発明の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法において、
上記のトンネル状態密度算出工程は、
b1)ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布を計算するショットキー障壁透過確率計算工程と、古典的状態密度の基準状態密度を計算する基準状態密度計算工程と、
b2)前記透過確率分布に前記基準状態密度を乗じてトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度計算工程と、
b3)前記トンネル状態密度を出力するトンネル状態密度出力工程と、を含む。
本発明の他の側面に係るデバイスシミュレーション方法は、
j)上記の本発明に係る補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法により算出された補正ショットキー障壁ポテンシャルを入力する補正ショットキー障壁ポテンシャル入力工程と、
k)前記入力された補正ショットキー障壁ポテンシャルのもとで、キャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値的に解き、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする古典的輸送シミュレーション工程と、を含む。
本発明の他の側面に係る補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラムは、
a)ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力する処理と、
b)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を算出するトンネル状態密度算出処理と、
c)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算し、前記トンネル状態密度と前記古典的状態密度から全状態密度を計算する処理と、
d)ショットキー障壁領域におけるキャリア分布を入力し前記キャリア分布と前記全状態密度からショットキー障壁領域における全キャリア密度を計算する処理と、
e)現在のショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度と前記キャリア分布から古典的キャリア密度を計算する古典的キャリア密度計算処理と、
f)前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較するキャリア密度比較処理と、
g)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくない場合にショットキー障壁ポテンシャルを変更するショットキー障壁ポテンシャル変更処理と、
h)前記ショットキー障壁ポテンシャル変更処理で変更されたショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算する古典的密度計算処理と、
i)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しい場合のショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する補正ショットキー障壁ポテンシャル出力処理と、
をコンピュータに実行させる。
本発明の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラムにおいては、上記のトンネル状態密度算出処理が、
b1)ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布を計算するショットキー障壁透過確率計算処理と、
b2)古典的状態密度の基準状態密度を計算する基準状態密度計算処理と、前記透過確率分布に前記基準状態密度を乗じてトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度計算処理と、
b3)前記トンネル状態密度を出力するトンネル状態密度出力処理と、をコンピュータに実行させる。
本発明の他の側面に係るデバイスシミュレーションプログラムは、上記の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラムをコンピュータに実行させて得られた補正ショットキー障壁ポテンシャルを入力する補正ショットキー障壁ポテンシャル入力処理と、
前記入力された補正ショットキー障壁ポテンシャルのもとで、キャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値的に解き、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする古典的輸送シミュレーション処理と、
をコンピュータに実行させる。
本発明によれば、ショットキー・ソース/ドレインMOSFET中のキャリアが、ショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を、特定のデバイスシミュレーション方法に限定されず、古典的・半古典的な輸送方程式に基づく一般的なデバイスシミュレータに取り入れることが可能である。
その理由は、本発明においては、キャリアがショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を、ショットキー障壁ポテンシャルを補正する形で取り入れているためである。
また、本発明によれば、ショットキー・ソース/ドレインMOSFET中のキャリアが、ショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を取り入れて、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性を高速に解析することができる。
その理由は、本発明においては、量子輸送方程式を直接解かず、補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いることにより、高速に解くことが可能な古典的・半古典的な輸送方程式に、キャリアがショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を取り入ることを可能としたためである。
本発明の実施形態に係る補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施例のシミュレーション装置の構成を示す図である。図1を参照すると、本発明の一実施例の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置は、ショットキー障壁ポテンシャル入力部1、トンネル状態密度算出部2、古典的状態密度計算部3、全状態密度計算部4、キャリア分布入力部5、キャリア密度計算部6、キャリア密度比較部7、ショットキー障壁ポテンシャル変更部8、補正ショットキー障壁ポテンシャル出力部9と、を備えている。各部の機能は概略以下の通りである。
ショットキー障壁ポテンシャル入力部1は、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力する。
トンネル状態密度算出部2は、ショットキー障壁ポテンシャル入力部1で入力したショットキー障壁ポテンシャルの障壁部分の、量子力学的なトンネル効果による状態密度を計算する。
古典的状態密度計算部3は、ショットキー障壁ポテンシャル入力部1で入力したショットキー障壁ポテンシャル下における障壁部分の古典的状態密度を計算する。
全状態密度計算部4は、古典的状態密度計算部3で計算した古典的状態密度およびトンネル状態密度算出部2で計算したトンネル状態密度から全状態密度を計算する。
キャリア分布入力部5は、ショットキー障壁部分におけるキャリア分布関数を入力する。
キャリア密度計算部6は、キャリア分布入力部5で入力したキャリア分布関数と、古典的状態密度計算部3で計算した古典的状態密度とから、古典的キャリア密度を、また、キャリア分布関数と全状態密度計算部4で計算した全状態密度とから、全キャリア密度を、それぞれ計算する。
キャリア密度比較部7は、キャリア密度計算部6で計算した古典的キャリア密度と全キャリア密度とを比較する。
ショットキー障壁ポテンシャル変更部8は、ショットキー障壁ポテンシャルを変更する。
補正ショットキー障壁ポテンシャル出力部9は、ショットキー障壁ポテンシャル変更部8で変更したショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する。
本実施の形態の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置は、入力装置、出力装置、記憶装置、演算装置を備えた任意のデータ処理装置によって実現される。例えばハードウェア構成としては、各種処理を行うためのCPUと、キーボード、マウス等の入力装置と、メモリ装置やディスク装置等の外部記憶装置と、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置等とを備えたコンピュータシステムを用いてもよい。CPUは、後述する各ステップにおける処理等を行う演算部と、前記処理の命令を記憶する主記憶部と、を備え、処理過程で使用するデータ等を前記外部記憶装置等に保存しつつ後述の各ステップの処理を進めていく。
本発明に係る補正ショットキー障壁ポテンシャルを算出するためのプログラムは、図1の各部の機能・処理を実行し、例えば記録媒体等から当該プログラムをコンピュータシステムに読み込ませるか、ネットワークからダウンロードし、実行することにより、半導体素子特性シミュレーションを実現することができる。記録媒体には、メモリ装置、磁気ディスク装置、光ディスク装置等、プログラムを記録することができるような装置を含む。
図2は、本発明の一実施例の動作手順を示す流れ図である。まず、ステップS1において、ショットキー障壁ポテンシャル入力部1において、シミュレーション対象となるショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁部分のポテンシャルVSchを入力する。
次に、ステップS2において、ステップS1で入力したショットキー障壁ポテンシャルVSchのショットキー障壁部分における、輸送方向の量子力学的なトンネル効果によって生じるトンネル状態密度Dtun(E)を計算する。
ここで、Eはキャリアのエネルギーを示し、Dtun(E)はエネルギーに対して分布を持つ。Dtun(E)は量子力学的に直接計算しても良いし、簡易的にトンネル確率と古典的状態密度から近似的に計算しても良い。また、ここで、ショットキー障壁部分とは、シミュレーション対象のショットキー・ソース/ドレインMOSFETのソース/基板境界領域および基板/ドレイン境界領域に生じるショットキー障壁を指す。
次に、ステップS3では、VSchのショットキー障壁部分における古典的な状態密度DSch(E)を計算し、DSch(E)とステップS2で計算したトンネル状態密度Dtun(E)から、式(1)により、全状態密度Dtot(E)を計算する。
tot(E)=DSch(E)+Dtun(E) ・・・(1)
ここで、古典的な状態密度DSch(E)は、有効質量近似で簡易的に計算しても良いし、フルバンド構造から厳密に計算しても良い。
また、トンネル状態密度Dtun(E)を量子力学的に直接計算した場合には、Dtun(E)に、古典的状態密度DSch(E)が既に含まれているため、
tot(E)=Dtun(E) ・・・(2)
とすることができる。
次に、ステップS4では、ショットキー障壁部分におけるキャリアの分布関数fsd(E)を入力し、ステップS3で計算した全状態密度Dtot(E)を用いて、全キャリア密度Ntotを次式(3)により計算する。全キャリア密度Ntotは、キャリアの分布関数fsd(E)と、全状態密度Dtot(E)の積を、エネルギーEで積分して得られる。
tot=∫fsd(E)Dtot(E)dE ・・・(3)
ステップS5では、キャリアの分布関数fsd(E)と、古典的な状態密度DSch(E)とを用いて、古典的キャリア密度NSchを次式(4)により計算する。古典的キャリア密度NSchは、キャリア分布関数fsd(E)と古典的な状態密度DSch(E)の積をEで積分して得られる。
Sch=∫fsd(E)DSch(E)dE ・・・(4)
次に、ステップS6では、ステップS4で得られた全キャリア密度Ntotと、ステップS5で得られた古典的キャリア密度NSchとを比較する。
ステップS6で古典的キャリア密度NSchが全キャリア密度Ntotと等しくない場合(NSch≠Ntotの場合)には、ステップS7に進み、ショットキー障壁ポテンシャルVSchを変更する。最も簡単には、VSchのショットキー障壁部分のポテンシャル値が最大となるメッシュ点でのポテンシャル値を変更すれば良い。
通常は、トンネル状態密度Dtun(E)の分、NSch<Ntotとなるため、ショットキー障壁部分のポテンシャル値は下げる。
ステップS7でVSchを変更した後、ステップS8に進み、変更したVSchでの古典的状態密度DSch(E)を計算し直す。
ここで、Dtun(E)およびDtot(E)は再計算せず、ステップS2、ステップS3で計算した値のまま保持しておく。
ステップS8で古典的状態密度DSch(E)を再計算した後、ステップS5に戻り、再計算したDSch(E)を用いて古典的キャリア密度NSchを再計算する。
その後、ステップS6で、NSch=Ntotとなるまで、上記のステップS5〜ステップS8までの手順を繰り返す。
ここで、ステップS5の直後、ステップS7およびステップS8の手順を経ずに、直接、ステップS6でNSch=Ntotであった場合には、ステップS7およびステップS8の手順は省略できる。
Sch=Ntotと判定する数値的誤差は、十分小さい値であれば任意に設定しても良く、計算機誤差(計算機ε)に設定しても構わない。
ステップS6でNSch=Ntotとなった場合には、ステップS9へと進み、その時点でのVSchを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力し、終了する。
以下、ショットキー・ソース/ドレインGe‐pMOSFETを例として、実際の計算結果を参照しながら、各手順について説明する。
図3(A)、図3(B)に、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETおよびそのショットキー障壁ポテンシャルVSchの模式図をそれぞれ示す。図3(A)、図3(B)において、xはソース・ドレイン方向の座標を示している。
図2のステップS1では、このようなショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルVSchを入力する。本実施例で入力した、VSchを図4の破線(ドット)で示す。
図4のx=0が、ソース/チャネル境界でのショットキー障壁部分を示している。本実施例では、x方向を輸送方向とし、VSchは、ゲート界面と垂直な方向の閉じ込め量子効果を考慮して得られる、最低サブバンドエネルギーのx方向分布を入力している。ここで、VSchとして、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの任意の空間次元を持つ電気的ポテンシャル分布の、キャリア輸送方向の分布を用いることができる。
次に、図2のステップS2では、入力したVSchのソース/チャネル境界(x=0)でのトンネル状態密度Dtun(E)を計算する。図5は、状態密度の計算結果を示し、ハッチングを施した部分が、計算したDtun(E)を示している。図5の横軸は、エネルギー(eV)であり、破線との交点のエネルギーがショットキー障壁ポテンシャルVSchの値を示している。
本実施例では、トンネル状態密度Dtun(E)は、図5のVSch以下のエネルギー領域に現れる状態密度にあたり、VSch以上のエネルギー領域ではDtun(E)=0となっている。ただし、Dtun(E)を量子力学的に直接計算した場合には、VSch以上のエネルギー領域でもDtun(E)≠0となり得る。
本実施例での、Dtun(E)の詳細な計算手順について説明する。
図11に、本実施例におけるトンネル状態密度算出部2の更に詳細な構成を示す。本実施例のトンネル状態密度算出部2は、
ショットキー障壁の透過確率を計算するショットキー障壁透過確率計算部11と、
トンネル状態密度の基準となる基準状態密度を計算する基準状態密度計算部12と、
前述のショットキー障壁の透過確率と基準状態密度からトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度計算部13と、
計算したトンネル状態密度を出力するトンネル状態密度出力部14と、
を備えている。
図12を用いて、トンネル状態密度を算出する手順について説明する。
まず、ステップS11において、既に入力されている、ショットキー障壁ポテンシャルVSchの透過確率Ttun(E)を計算する。その計算結果の一例を、図13に実線で示す。
ここで、Ttun(E)は、x=0でのVSchの値より高いエネルギーに対しては、Ttun(E)=1となるが、トンネル状態密度に対しては不要であるため、x=0でのVSchの値より高いエネルギーに対して、Ttun(E)=0とする。
ここで、本実施例では、VSchのx方向分布に対して、WKB近似(Wentzel-Kramers-Brillouin Approximation)を用いてTtun(E)を計算したが、ショットキー障壁の量子力学的なトンネル確率を計算する方法であれば、他のどのような計算方法を用いても構わない。
次に、ステップS12において、トンネル状態密度の基準となる基準状態密度Dstdを計算する。
本実施例においては、基準状態密度Dstdとして、x=0における古典的状態密度の、エネルギーがVSchのx=0での値に一致する点での状態密度値とし、その値は図13に示すように、Dstd=0.2×10^19m^−2eV^−1である。
ここで、キャリアとしてバルク状態の自由電子を扱う場合には、kbをボルツマン定数、Tを系の温度(絶対温度)として、
std=DSch(VSch+kbT) ・・・(5)
とすることも可能である。
次に、ステップS13において、前述の基準状態密度Dstdに、ショットキー障壁ポテンシャルVSchの透過確率Ttun(E)を乗じてトンネル状態密度Dtun(E)を
tun(E)=Dstd×Ttun(E) ・・・(6)
として計算する。
最後に、ステップS14において、計算したトンネル状態密度Dtun(E)を出力する(図14参照)。
以上の方法により、量子力学的に直接計算するのに比べて、高速に、トンネル状態密度を計算することが可能である。ただし、トンネル状態密度は量子力学的に直接計算しても構わない。
続いて、図2のステップS3では、ショットキー障壁ポテンシャルVSchのx=0における古典的状態密度DSch(E)を計算する。図6の実線が、計算した古典的状態密度DSch(E)を示している。古典的状態密度DSch(E)は、ショットキー障壁ポテンシャルVSch以下のエネルギー領域ではDSch(E)=0となっている。
更に、図2のステップS3では、前述の古典的状態密度DSch(E)にトンネル状態密度Dtun(E)を加えて、全状態密度Dtot(E)=DSch(E)+Dtun(E)を計算する。その結果(全状態密度Dtot(E))が、図5の実線である。
ここで、図5、図6の状態密度は、ショットキー・ソース/ドレインGe‐pMOSFETの正孔の状態密度であり、価電子帯のフルバンド構造およびゲート閉じ込め量子化を考慮しているが、有効質量近似による二次元正孔ガスの状態密度を用いても良い。
また、本実施例では、ショットキー・ソース/ドレインGe‐pMOSFETを例としているが、MOSFETの材質はGeに限らない一般的な半導体材料に対して適用しても良いし、nMOSFETに対しても適用しても良い。
図2のステップS4では、ソース/チャネルおよびチャネル/ドレイン境界でのキャリア分布関数fsd(E)を入力する。図7に、入力したソース/チャネル境界でのfsd(E)を示す。
ステップS4では、このfsd(E)と、図5の全状態密度Dtot(E)を用いて、全キャリア密度Ntotを計算する。
tot=∫fsd(E)Dtot(E)dE
本実施例ではNtotは約2×10^16m^−2である。ここで、温度は300Kで計算したが、別の温度でも計算可能である。
本実施例では、フルバンド構造から精密に状態密度を計算しているため、数値的に、
tot=∫fsd(E)Dtot(E)dE
の積分を行っているが、有効質量近似などを用いて状態密度が解析的に表される場合には、解析的に積分をすることにより、高速にNtotを計算することができる。
図2のステップS5では、ソース/チャネルおよびチャネル/ドレイン境界でのキャリア分布関数fsd(E)と図6の古典的状態密度DSch(E)を用いて、全キャリア密度Ntotと同様に、古典的キャリア密度NSchを計算する。
Sch=∫fsd(E)DSch(E)dE
本実施例では、古典的キャリア密度NSchは約0.9×10^16m^−2であり、
Sch<Ntot
となっている。
図2のステップS6では、NSch=Ntotであるか否かを判定する。この段階では、
Sch<Ntot
であるため、
Sch≠Ntotと判定され、ステップS7へと進む。
ステップS7では、ショットキー障壁ポテンシャルVSchを変更する。変更後のVSchが、図4の実線で示されるVnewである。
図4において、ΔVはVSchの変化量であり、
ΔV=Vnew−VSch
である。
本実施例では、図4のように、ショットキー障壁ポテンシャルVSchのx方向の第1メッシュ点の値のみを変化させているが、第1メッシュ点以外の値を変化させても良い。
図2のステップS7では、このVnewを新たなショットキー障壁ポテンシャルVSchとしステップS8で用いる。
図2のステップS8では、ステップS3中で計算したのと同様に、ショットキー障壁ポテンシャルVSchのx=0における古典的状態密度DSch(E)を計算し直す。
図8の実線が、Dnew(E)=DSch(E+ΔV)、つまり、計算し直したDSch(E)であり、図8の破線が計算前の古典状態密度DSch(E)である。このように、VSchが変化した分だけ、DSch(E)は、エネルギーがシフトする。
その後、図2のステップS5に戻り、再計算したDSch(E)を用いて、古典的キャリア密度NSchを計算し、ステップS6で、NSch=Ntotとなるまで、ステップS5〜ステップS8の手順を繰り返す。
この際、ステップS7での新たなショットキー障壁ポテンシャルVSchの変化量ΔVは、
Sch=∫fsd(E)DSch(E)dE
がVSchに対して単調な関数となるため、二分法等を用いて決定すれば、効率よく、
Sch=Ntot
となるVSchを決定することができる。
最後に、図2のステップS9で、ステップS6でNSch=Ntotとなった時点でのVSchを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する。
本実施例では、ΔV=22meVであり、図4の実線で示されるVnewが、補正ショットキー障壁ポテンシャルとなる。
図9は、本発実施例で得られた補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いて計算した、ショットキー・ソース/ドレインGe‐pMOSFETの電流電圧特性を示す図である。横軸はゲート電圧(V)、縦軸はソース電流(uA/um)である。図9において、実線が計算値、破線が実験値である。キャリア輸送シミュレーションについては、フルバンド・モンテカルロシミュレーションを採用した。
このように、本発明のキャリアがショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を、ショットキー障壁ポテンシャルに取り入れることにより、広く用いられているモンテカルロ・シミュレーションを用いて、正しくショットキー・ソース/ドレインGe‐pMOSFETの電流電圧特性を計算することができる。
なお、図9において、ゲート電圧が低い領域での実験値との差は、Geデバイスで顕著に現れるリーク電流の影響であり、本発明の補正ショットキー障壁ポテンシャルに問題がある訳ではない。
図10は、補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いずに計算した、ショットキー・ソース/ドレインGe‐pMOSFETの電流電圧特性である。このように、キャリアがショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を取り入れない場合には、実験値とはかけ離れた計算結果が得られてしまう。
本実施例では、モンテカルロ・シミュレーションを用いているが、本発明の補正ショットキー障壁ポテンシャルは、その他の古典的・半古典的な輸送シミュレーションにも用いることができる。
また、本実施例では、フルバンド構造を考慮しているが、フルバンド構造を考慮して量子輸送方程式を解くことは計算時間が掛かりすぎるため、実用的ではない。
本発明の補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いて、古典的・半古典的な輸送方程式を解くことにより、実用的な計算時間で、フルバンド構造を考慮したシミュレーションが可能となる。フルバンド構造は、特に複雑な価電子帯構造を持つpMOSFETの詳細な計算には必要となる。
以上のように、本実施例によれば、ショットキー・ソース/ドレインMOSFET中のキャリアがショットキー障壁を量子力学的にトンネルする効果を、古典的・半古典的な輸送方程式に基づく一般的なデバイスシミュレータに取り入れて、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性を高速かつ正確に解析することができる。
なお、上記の非特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
本発明の一実施例の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置の構成を示す図である。 本発明の一実施例の動作手順を示す流れ図である。 ショットキー・ソース/ドレインMOSFETを模式的に示す図である。 ソース/チャネル境界におけるショットキー障壁ポテンシャルの例を示す図である。 トンネル状態密度と全状態密度の例を示す図である。 古典的状態密度の例を示す図である。 ソース/チャネル境界でのキャリア分布の例を示す図である。 ショットキー障壁ポテンシャルを変更した場合の古典的状態密度の例を示す図である。 本実施例による計算結果の例を示す図である。 比較例による計算結果の例を示す図である。 本発明の一実施例におけるトンネル状態密度算出部の構成を示す図である。 本発明の一実施例におけるトンネル状態密度算出部の動作手順を示す流れ図である。 ショットキー障壁ポテンシャルの量子力学的な透過確率の例を示す図である。 トンネル状態密度の例を示す図である。
符号の説明
1 ショットキー障壁ポテンシャル入力部
2 トンネル状態密度算出部
3 古典的状態密度計算部
4 全状態密度計算部
5 キャリア分布入力部
6 キャリア密度計算部
7 キャリア密度比較部
8 ショットキー障壁ポテンシャル変更部
9 補正ショットキー障壁ポテンシャル出力部
11 ショットキー障壁透過確率計算部
12 基準状態密度計算部
13 トンネル状態密度計算部
14 トンネル状態密度出力部

Claims (15)

  1. ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力するショットキー障壁ポテンシャル入力部と、
    前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を算出するトンネル状態密度算出部と、
    前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算する古典的状態密度計算部と、
    前記古典的状態密度と前記トンネル状態密度とから、全状態密度を計算する全状態密度計算部と、
    ショットキー障壁領域におけるキャリア分布を入力するキャリア分布入力部と、
    前記全状態密度と前記キャリア分布とから、ショットキー障壁領域における全キャリア密度を、前記古典的状態密度と前記キャリア分布からショットキー障壁領域における古典的キャリア密度をそれぞれ計算するキャリア密度計算部と、
    前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較するキャリア密度比較部と、
    前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくなるまでショットキー障壁ポテンシャルを変更するショットキー障壁ポテンシャル変更部と、
    前記ショットキー障壁ポテンシャル変更部で得られたショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する補正ショットキー障壁ポテンシャル出力部と、
    を備える、ことを特徴とする補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置。
  2. 前記トンネル状態密度算出部が、
    ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布を計算するショットキー障壁透過確率計算部と、
    古典的状態密度の基準状態密度を計算する基準状態密度計算部と、
    前記透過確率分布に前記基準状態密度を乗じてトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度計算部と、
    前記トンネル状態密度を出力するトンネル状態密度出力部と、
    を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出装置で算出された補正ショットキー障壁ポテンシャルを入力する補正ショットキー障壁ポテンシャル入力部と、
    前記入力された補正ショットキー障壁ポテンシャルのもとで、キャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値的に解き、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする古典的輸送シミュレーション部と、
    を備える、ことを特徴とするデバイスシミュレーション装置。
  4. a)ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力するショットキー障壁ポテンシャル入力工程と、
    b)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度算出工程と、
    c)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算し、前記トンネル状態密度と前記古典的状態密度とから、全状態密度を計算する全状態密度計算工程と、
    d)ショットキー障壁領域におけるキャリア分布を入力し、前記キャリア分布と前記全状態密度とから、ショットキー障壁領域における全キャリア密度を計算する全キャリア密度計算工程と、
    e)現在のショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度と、前記キャリア分布とから古典的キャリア密度を計算する古典的キャリア密度計算工程と、
    f)前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較するキャリア密度比較工程と、
    g)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくない場合にショットキー障壁ポテンシャルを変更するショットキー障壁ポテンシャル変更工程と、
    h)前記ショットキー障壁ポテンシャル変更工程で変更されたショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算する古典的状態密度計算工程と、
    i)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しい場合のショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する補正ショットキー障壁ポテンシャル出力工程と、
    を含む、ことを特徴とする補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法。
  5. 前記トンネル状態密度算出工程が、
    b1)ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布を計算するショットキー障壁透過確率計算工程と、
    b2)古典的状態密度の基準状態密度を計算する基準状態密度計算工程と、
    b3)前記透過確率分布に前記基準状態密度を乗じてトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度計算工程と、
    b4)前記トンネル状態密度を出力するトンネル状態密度出力工程と、
    を含むことを特徴とする請求項4に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法。
  6. h)の前記古典的状態密度計算工程で古典的状態密度を再計算した後、e)の前記古典的キャリア密度計算工程に戻り、再計算した古典的状態密度と前記キャリア分布とから古典的キャリア密度を再計算し、
    f)の前記キャリア密度比較工程で、前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較し、不一致の場合、前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とが一致するまで、g)の前記ショットキー障壁ポテンシャル変更工程、h)の前記古典的状態密度計算工程、e)の古典的キャリア密度計算工程、f)の前記キャリア密度比較工程を繰り返し、
    f)の前記キャリア密度比較工程で、前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とが一致した場合、i)の前記補正ショットキー障壁ポテンシャル出力工程を実行する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法。
  7. 請求項4乃至6のいずれか1項に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出方法により算出された補正ショットキー障壁ポテンシャルを入力する補正ショットキー障壁ポテンシャル入力工程と、
    前記入力された補正ショットキー障壁ポテンシャルのもとで、キャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値的に解き、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする古典的輸送シミュレーション工程と、
    を含むことを特徴とするデバイスシミュレーション方法。
  8. a)ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルを入力する処理と、
    b)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を算出するトンネル状態密度算出処理と、
    c)前記ショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算し、前記トンネル状態密度と前記古典的状態密度とから、全状態密度を計算する処理と、
    d)ショットキー障壁領域におけるキャリア分布を入力し前記キャリア分布と前記全状態密度からショットキー障壁領域における全キャリア密度を計算する処理と、
    e)現在のショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度と前記キャリア分布から古典的キャリア密度を計算する古典的キャリア密度計算処理と、
    f)前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較するキャリア密度比較処理と、
    g)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくない場合にショットキー障壁ポテンシャルを変更するショットキー障壁ポテンシャル変更処理と、
    h)前記ショットキー障壁ポテンシャル変更処理で変更されたショットキー障壁ポテンシャル下でのショットキー障壁領域における古典的状態密度を計算する古典的状態密度計算処理と、
    i)前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しい場合のショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとして出力する補正ショットキー障壁ポテンシャル出力処理と、
    をコンピュータに実行させる、補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラム。
  9. 前記トンネル状態密度算出処理として、
    b1)ショットキー障壁の量子力学的な透過確率分布を計算するショットキー障壁透過確率計算処理と、
    b2)古典的状態密度の基準状態密度を計算する基準状態密度計算処理と、
    b3)前記透過確率分布に前記基準状態密度を乗じてトンネル状態密度を計算するトンネル状態密度計算処理と、
    b4)前記トンネル状態密度を出力するトンネル状態密度出力処理と、
    を前記コンピュータに実行させる請求項8記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラム。
  10. h)の前記古典的状態密度計算処理で古典的状態密度を再計算した後、e)の前記古典的キャリア密度計算処理に戻り、再計算した古典的状態密度と前記キャリア分布とから古典的キャリア密度を再計算し、
    f)の前記キャリア密度比較処理で、前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とを比較し、不一致の場合、前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とが一致するまで、g)の前記ショットキー障壁ポテンシャル変更処理、h)の前記古典的状態密度計算処理、e)の古典的キャリア密度計算処理、f)の前記キャリア密度比較処理を繰り返し、
    f)の前記キャリア密度比較処理で、前記全キャリア密度と前記古典的キャリア密度とが一致した場合、i)の前記補正ショットキー障壁ポテンシャル出力処理を実行する、
    上記各処理を、前記コンピュータに実行させる請求項8又は9記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラム。
  11. 請求項8乃至10のいずれか1項に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラムを前記コンピュータに実行させて得られた補正ショットキー障壁ポテンシャルを入力する補正ショットキー障壁ポテンシャル入力処理と、
    前記入力された補正ショットキー障壁ポテンシャルのもとで、キャリアの古典的又は半古典的な輸送方程式を数値的に解き、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする古典的輸送シミュレーション処理と、
    をコンピュータに実行させるデバイスシミュレーションプログラム。
  12. 請求項8乃至10のいずれか1項に記載の補正ショットキー障壁ポテンシャル算出プログラムを記録した、コンピュータで読み出し可能な記録媒体。
  13. 請求項11記載のデバイスシミュレーションプログラムを記録した、コンピュータで読み出し可能な記録媒体。
  14. 入力されたショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルから、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を求め、
    前記ショットキー障壁領域における古典的状態密度を求め、前記古典的状態密度と前記トンネル状態密度とに基づき全状態密度を求め、
    前記ショットキー障壁領域におけるキャリアの分布関数と前記全状態密度との積の積分演算により求めた全キャリア密度と、前記ショットキー障壁領域における前記キャリアの分布関数と前記古典的状態密度との積の積分演算により求めた古典的キャリア密度とを比較し、
    前記比較の結果、前記古典的キャリア密度と前記全キャリア密度が等しくない場合、前記ショットキー障壁ポテンシャルを変更した上で前記古典的状態密度を再計算し、再計算した前記古典的状態密度に基づき古典的キャリア密度を再計算し、再計算した前記古典的キャリア密度と前記全キャリア密度を比較する処理を、前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくなるまで繰り返し、
    前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しい場合のショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとし、
    前記補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いて、古典的又は半古典的な輸送方程式を解き、前記ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする、
    上記一連の処理をコンピュータに実行させるプログラム。
  15. 入力装置と演算装置とを備え、
    前記演算装置は、
    前記入力装置から入力されたショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁ポテンシャルから、ショットキー・ソース/ドレインMOSFETのショットキー障壁領域における量子力学的なトンネル効果によるトンネル状態密度を求め、
    前記ショットキー障壁領域における古典的状態密度を求め、前記古典的状態密度と前記トンネル状態密度とに基づき全状態密度を求め、
    前記ショットキー障壁領域におけるキャリアの分布関数と前記全状態密度との積の積分演算により求めた全キャリア密度と、前記ショットキー障壁領域における前記キャリアの分布関数と前記古典的状態密度との積の積分演算により求めた古典的キャリア密度とを比較し、
    前記比較の結果、前記古典的キャリア密度と前記全キャリア密度が等しくない場合、前記ショットキー障壁ポテンシャルを変更した上で前記古典的状態密度を再計算し、再計算した前記古典的状態密度に基づき古典的キャリア密度を再計算し、再計算した前記古典的キャリア密度と前記全キャリア密度を比較する処理を、前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しくなるまで繰り返し、
    前記古典的キャリア密度が前記全キャリア密度と等しい場合のショットキー障壁ポテンシャルを補正ショットキー障壁ポテンシャルとし、
    前記補正ショットキー障壁ポテンシャルを用いて、古典的又は半古典的な輸送方程式を解き、前記ショットキー・ソース/ドレインMOSFETの電気的特性をシミュレーションする、シミュレーションシステム。
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