JP5291160B2 - 作物栽培方法及びその方法を用いた装置 - Google Patents
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Description
また、近年では、農作物は大規模農園などで栽培されることが多く、施肥や病虫害の防除を効率よく行うことが望まれている。例えば、大規模な茶園などは、茶樹畝を跨ぎながら走行する門型の茶園防除機を用い、薬液を散布しながら走行することによる効率的な防除が行われている。
しかし、摘採時期は、他の茶園の摘採や整枝、追肥など、茶の生産において最繁忙期にあたるうえ、降雨など天候等によっては速やかな農薬散布が困難であることも多い。
そこで、本発明者らは、作物、特に茶樹の防除効果を向上させる方法を鋭意研究した結果、適切な方法を見出し、さらに、その方法は、防除だけでなく作物の育成などにも適用することができることを見出して、本発明を成し得たものである。
切断は、特に限定するものではないが、切断面を平滑にすることができる鋭利なもので行うのが好ましく、カッター、鋏、ナイフ、バリカン刃、斧、鎌などの刃物やレーザー、ウォーターカッターなどで行うことができ、なかでも、図1に示すように、刃先角αが10°〜70°、特に20°〜50°の刃物で行うのが好適である。
この高低差にするには、上記した刃先角が10°〜70°の刃物で作物を切断するのがよい。
切断面以外の箇所とは、例えば、図2に示すように、茎の切断面1から表皮に沿い5mm〜15mm奥の位置(一点鎖線部分)にすることができる。
aw=PA/PW
水分活性について詳しくは、『現代の食品科学(第2版)』(三共出版)第9頁〜第11頁の「2.3水分活性」に記載されている
例えば、茶樹の茶葉を切断した場合は、その茶葉を切断後すぐに密閉容器に入れて測定した蒸気圧(PA)と、同一条件下での純水の蒸気圧(PW)との比が、その茶葉の切断面以外の箇所における水分活性と推定する。
なお、水分活性は、水分活性恒温測定装置で測定することができ、例えば、「ノバシーナ社製LabMASTER-aw型」などを用いて測定することができる。
なお、含水率は、赤外線水分計で測定することができ、例えば、ケット科学研究所社製「FD-610」などを用いて測定することができる。
薬液としては、農薬や液肥(液体肥料)を用いることができ、農薬としては殺菌剤や殺虫剤を用いることができるが、特に殺菌剤としては、アゾキシストロビン水和剤、フルアジナム水和剤、TPN水和剤、イミノクタジンアルベシル塩酸水和剤、カスガマイシン・銅水和剤、クレソキシムメチル水和剤、チオファネートメチル水和剤、テブコナゾール水和剤、トリフロキシストロビン水和剤、ベノミル水和剤、銅水和剤などを用いることができ、具体的には、フロンサイド、ベルクート、ダコニール、アミスター、ベフドー、カスミンボルドー、ストロビー、トップジンM、オンリーワン、スパットサイド、コサイドボルドーなどを用いることができる。液肥としては、有機肥料、無機肥料、微量要素系肥料、植物活性剤等を用いることができ、具体的には、尿素、魚エキス、ベタイン、アミノ酸、キレートゲンなどを用いることができる。
薬液は、20℃で粘度0.8mPa・s〜12mPa・s、特に1mPa・s〜10mPa・sであるのが好ましい。これにより、薬液が切断面に載りやすくなる。
なお、粘度は、粘度計で測定することができ、例えば、東機産業社製「TVB-10M」などを用いることができる。
薬液は、種類や濃度によりことなるが、10アール当たり100リットル〜1000リットルを散布することができる。
また、本発明の作物栽培方法は、毎年摘採する茶園の茶樹などに好適に用いることができるため、茶園栽培方法や茶園育成方法或いは茶園防除方法ともいえるものである。
以下、作物栽培装置の一例として、茶園の茶樹に適した茶園栽培装置について説明する。
6月頃に、やぶきた種の茶樹を用いて以下の試験を行った。
茶樹の先端側の茎部分(大凡の直径が2.2mm前後の箇所)を、手摘み、鋏1、鋏2、ナイフで切断し、切断面を拡大鏡で観察した。鋏1、鋏2およびナイフの刃先角はそれぞれ90°、45°、25°であった。手摘みと鋏2で切断した際の切断面の写真を、それぞれ図3,4に示す。
次に、拡大鏡を用いて、切断面内の高低差、切断面からの高さ0.3mm以上の部分の面積率を測定した。これらの値を下記表1に示す。
上記各切断方法で切断した切断面にドライヤーで1分間送風して乾燥させ、水分調整を行った後、その切断面に、マイクロピペットを用いて着色した色水5μlを塗布し、1分後に切断面の色水を拭き取り、切断面から何mmまで色水が浸透したか浸透長を測定した。
なお、水分活性は、水分活性恒温測定装置(ノバシーナ社製LabMASTER-aw型)を用いて測定した。以下に示す水分活性の測定も、同様に測定した。
これら結果を下記表1に示す。
刃先角45°の鋏2と刃先角25°のナイフで切断すると、浸透長が長くなることが見出せた。その際の切断面の高低差は1.00mm又は0.01mmであった。
手摘みや刃先角90°の鋏1で切断すると、浸透長は短いものであった。その際の切断面の高低差は2.00mm又は1.70mmであった。
これら結果から、切断面の高低差は、1.50mm以下にするのが好ましいと思料される。
また、刃先角が10°〜70°の鋏又はナイフで切断すると高低差が1.50mm以下の切断面を形成でき、浸透長が長くなるものと思料される。
まず、茶樹の先端側の茎部分を、上記鋏2で切断し、切断面の高低差が1.50mm以下であることを確認した。次に、切断面を簡易的な屋根で覆い直射日光が当たらないようにして、以下の条件A〜Dの方法で水分を調整した後、その切断面の水分活性及び含水率を測定するとともに、切断面に着色した色水5μlを、マイクロピペットを用いて塗布し、切断面から何mmまで色水が浸透するか浸透長を測定した。これら測定は、水分調整を終了した直後に速やかに行った。
条件B…ドライヤーを用いて1分間の送風による乾燥
条件C…ドライヤーを用いて1時間の送風による乾燥
条件D…ドライヤーを用いて丸1日の送風による乾燥
条件B、条件Cで水分調整を行ったところ、浸透長が20mm、14mmと長くなることが見出された。これらは、水分活性の差異(aw)が0.00、−0.04であった。
また、条件A、条件Dで水分調整を行ったところ、浸透長が短いものであった。これらは、水分活性の差異(aw)が0.10、−0.16であった。
これら結果から、水分活性の差異(aw)が0.09〜−0.15awの範囲内であると、浸透が良好になるものと思料される。
まず、薬液の粘度(20℃)と浸透長との関係を測定した。
茶樹の先端側の茎部分を、上記鋏2で切断し、その切断面を上記条件Bで水分調整を行った後、その切断面に下記表3に記載の各粘度の色水5μlをマイクロピペットで塗布し、1分後に切断面の色水を拭き取り、切断面からの浸透長を測定した。
なお、供試サンプルについて別途水分活性を測定したところ、水分活性の差異は、すべて0.09〜−0.15awの範囲内であった。
粘度が1mPa・s、3.5mPa・s、7.5mPa・sの場合は、それぞれ浸透長が20mm、18mm、15mmになり、良好な浸透になることが見出せた。
粘度が0.6mPa・s、12.5mPa・sの場合は、ともに5mmの浸透長であり、浸透効果はやや不良なものであった。
この結果から、粘度は0.8mPa・s〜12mPa・sが好ましいものと思料する。
茶樹の先端側の茎部分を鋏2で切断し、複数箇所の切断面を形成した後、その内の半分の箇所をビニルで被覆して水分を調整した。切断から2日間を経てから、各切断面の水分活性及び含水率を測定した。ビニルを被覆した切断面(本発明)と、ビニルを被覆しない切断面(従来)との水分活性の差異の平均値を下記表4に示した。上記農薬は、水分活性の確認後、速やかに、10アール当たり160リットルで市販の背負式防除機を用いて散布し、20日後に病葉の枚数が発生してないかを目視で観察した。防除効果は、従来法の単位面積の発病葉数を100とした場合の、本発明の単位面積の発病葉数の割合で示した。なお、調査は1m×1mの枠を用いて、試験区ごとに2反復で行った。
茶樹の先端側の茎部分を鋏2で切断し、複数箇所の切断面を形成した後、上記と同様に切断面の水分を調整した。その切断面に上記液肥10アール当たり200リットルを散布し、葉色、芽数、芽伸び等の園相を達観調査で評価した。その結果を下記表5に示した。
達観調査は、3名の熟練者により従来管理の茶園と本発明の茶園を一望できる距離から、葉色、芽数・芽伸びを以下の評価で点数をつけ、平均点が2以上を「○」、2未満を「×」として評価した。
(評価)
<葉色>
3点:新芽の色が均一かつ濃緑色
2点:新芽の色が緑色
1点:新芽の色が黄色
<芽数>
3点:新芽の数が多い
2点:新芽の数が中程度
1点:新芽の数が少ない
<芽伸び>
3点:新芽の伸びが均一かつ長い
2点:新芽の伸びが中程度
1点:新芽の伸びが短い
Claims (8)
- 作物を切断する切断工程と、前記切断による切断面の水分の蒸発及び吸収を調整して、前記切断面の水分活性が、前記切断面を含む部位の前記切断面以外の箇所における水分活性に対してその差異が0.09〜−0.15a W になるように水分を調整する水分調整工程と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布工程と、を含む作物栽培方法。
- 前記切断面における最大高さと最低高さとの高低差が1.50mm以内である請求項1に記載の作物栽培方法。
- 前記薬液は、20℃で粘度が0.8mPa・s〜12mPa・sである請求項1又は2に記載の作物栽培方法。
- 前記薬液は、農薬である請求項1〜3のいずれかに記載の作物栽培方法。
- 前記薬液は、液肥である請求項1〜3のいずれかに記載の作物栽培方法。
- 水分調整工程において、前記切断面の被覆若しくは前記切断面に対する送風又は加湿により水分を調整する請求項1〜5のいずれかに記載の作物栽培方法。
- 作物を切断する切断手段と、前記切断による切断面の水分の蒸発及び吸収を調整して、前記切断面の水分活性が、前記切断面を含む部位の前記切断面以外の箇所における水分活性に対してその差異が0.09〜−0.15a W になるように水分を調整する水分調整手段と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布手段と、を含む作物栽培装置。
- 切断手段において、刃先角が10°〜70°である刃物で作物を切断する請求項7に記載の作物栽培装置。
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