JP5291160B2 - 作物栽培方法及びその方法を用いた装置 - Google Patents

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Description

本発明は、作物に肥料や農薬などを効率よく吸収させ、作物の良好な育成や病虫害の防除をすることができる作物栽培方法に関する。
作物を、良好に育成するためには施肥や病虫害の防除など管理を行う必要がある。
また、近年では、農作物は大規模農園などで栽培されることが多く、施肥や病虫害の防除を効率よく行うことが望まれている。例えば、大規模な茶園などは、茶樹畝を跨ぎながら走行する門型の茶園防除機を用い、薬液を散布しながら走行することによる効率的な防除が行われている。
このような防除方法としては、例えば、下記特許文献1には、走行機体に対し薬剤を散布するための防除機を搭載し、茶樹の病虫害駆除を行う方法において、前記防除機には前記薬剤の散布流量を計測する流量計を設けるとともに、前記走行機体には走行速度を計測する速度計を設け、これら流量計と速度計により計測された計測値より現在の単位面積当たりの薬剤の散布量を算出し、この算出値に基づき、防除機における薬剤の散布流量または走行機体の走行速度のいずれか一方または双方を、所望の単位面積当たりの薬剤の散布量となるように変更することを特徴とする茶園防除方法により、経験をあまり有しない初心者や噴出量の異なる新しい噴口を用いた場合であっても、所定量の薬剤を所定面積に散布できることが開示されている。
下記特許文献2には、送風ファンに接続した吹出ノズルと防除用薬液供給装置を設け、送風経路上へ防除用薬液を注入し、霧状として送風ファンの気流によって茶樹に吹き付けて散布することを特徴とした茶園防除機を用いることにより、単に薬液を霧状にして茶樹に散布するだけでなく、送風ファンで発生する気流により、霧状になった薬液を強制的に茶樹の内部、茶葉の裏面まで散布して、防除効果を向上させることが開示されている。
また、下記特許文献3には、防除機としても使えるようにした簡易乗用型茶葉摘採機により、摘採作業以外の作業のための機械や設備を改めて準備する必要をなくすことができることが開示されている。
特開2003−265088号公報 特開2003−310132号公報 特開2000−60268号公報
農作物は、茎葉や枝或いは幹等を切断した場合、その切断面から病原菌に侵されやすいものである。特に、茶樹は、茶葉を毎年複数回摘採するため、摘採した際の切断面から病原菌に侵されやすく、輪斑病や新梢枯死症状などを引き起こすことがあり、切断後できるだけ速やかに農薬を散布し、防除効果を向上させなければならない。
しかし、摘採時期は、他の茶園の摘採や整枝、追肥など、茶の生産において最繁忙期にあたるうえ、降雨など天候等によっては速やかな農薬散布が困難であることも多い。
そこで、本発明者らは、作物、特に茶樹の防除効果を向上させる方法を鋭意研究した結果、適切な方法を見出し、さらに、その方法は、防除だけでなく作物の育成などにも適用することができることを見出して、本発明を成し得たものである。
よって、本発明の目的は、作物、特に茶樹の育成や防除に効果のある作物栽培方法を提供するものであり、さらには、その方法を用いた装置を提供するものである。
本発明の作物栽培方法は、作物を切断する切断工程と、前記切断による切断面の水分の蒸発又は吸収を調整して、前記切断面の水分活性が、前記切断面を含む部位の前記切断面以外の箇所における水分活性に対してその差異が0.09〜−0.15a になるように水分を調整する水分調整工程と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の作物栽培方法は、作物を切断した後、切断面の被覆などをして水分を調整し、その切断面に薬液を塗布することにより、液肥や殺菌剤などの薬液の吸収効率がよくなり、作物の育成や防除に大きな効果を発揮し、作物を好適に栽培することができるものである。
なお、本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。
刃物の刃先を模式的に示した断面図である。 茎の切断面と、該茎の前記切断面以外の箇所とを示した斜視図である。 実施例において茶樹の茎を手摘みで切断した場合の切断面を示した拡大写真である。 実施例において茶樹の茎を刃先角25°のナイフで切断した場合の切断面を示した拡大写真である。
以下、本発明の一実施形態の作物栽培方法を説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
本発明の一実施形態の作物栽培方法は、作物を切断する切断工程と、前記切断による切断面の水分の蒸発又は吸収を調整する水分調整工程と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布工程と、を含むことを特徴とする。
本発明を適用できる作物としては、特に限定するものではないが、茶樹などの樹木、モロヘイヤなどの葉菜類、芝生などの多年草等を挙げることができる。なかでも、大規模な茶園で栽培される茶樹に対して好適である。
切断工程は、作物を切断し、作物の一部を切り取る工程である。作物の切断部位は、例えば、茎、葉、枝、幹などどの部位でもよい。
切断は、特に限定するものではないが、切断面を平滑にすることができる鋭利なもので行うのが好ましく、カッター、鋏、ナイフ、バリカン刃、斧、鎌などの刃物やレーザー、ウォーターカッターなどで行うことができ、なかでも、図1に示すように、刃先角αが10°〜70°、特に20°〜50°の刃物で行うのが好適である。
作物を切断した際にできる切断面は、その面内における最大高さと最低高さとの高低差が1.50mm以下、特に1.30mm以下であることが好ましい。これにより、水分の調整が安定しやすく、さらに薬液が切断面に付着しやすくなる。この高低差は、拡大鏡などで切断面を観察し、目測で測定することができる。また、特に限定するものではないが、高低差は、0.005mm以上、特に0.01mm以上が好ましい。
この高低差にするには、上記した刃先角が10°〜70°の刃物で作物を切断するのがよい。
切断面における、高さ0.3mm以上の部分の面積率は、9.5%以下、特に6.0%以下であるのが好ましい。この場合、高さは切断した刃物等の切込みが入った部分を基準面として測定した。また、切断面全面と基準面に対し高さ0.3mm以上の面積とを拡大鏡で測定し面積率を算出した。
水分調整工程は、切断面における水分の蒸発又は吸収を調整する工程である。例えば、切断面を被覆などして保護したり、切断面に対して除湿又は加湿したりするなどして水分調整を行うことができる。例えば、切断面の被覆は、寒冷紗、ラップフィルムなどの樹脂フィルム、布、綿、木製板、金属板、樹脂板、紙、不織布で切断面を直接もしくは屋根やフードなどのように間接的に覆うことにより行うことができる。また、加湿は加湿機等で切断面に対して加湿蒸気や霧状の水を送ることにより行うことができ、除湿は送風機で切断面に対して風を送る送風や、もしくは布やブラシで切断面の水分を拭き取る表面水分の除去などで行うことができる。なお、間接的な被覆下で加湿もしくは除湿(例えば、棚掛けした寒冷紗の下で送風もしくは散水)を行うなど、それらを組み合わせて水分調整を行うことも可能である。
水分調整は、切断面の水分活性(aw)が、前記切断面を含む部位の前記切断面以外の箇所における水分活性に対してその差異が0.09〜−0.15awの範囲内にすることが好ましく、特に0.06〜−0.12aw以内にすることがさらに好ましく、その中でも特に0.03〜−0.08aw以内になるようにすることがさらに好ましい。これにより、切断面の状態が保持され、薬液が浸透しやすくなる。水分活性の差異とは、例えば、茶樹の茎を切断した場合は、その切断面の水分活性の値から、その茎の切断面以外の箇所の水分活性の値を引いた差の値である。
切断面以外の箇所とは、例えば、図2に示すように、茎の切断面1から表皮に沿い5mm〜15mm奥の位置(一点鎖線部分)にすることができる。
なお、水分活性(aw)とは、例えば、切断面を有する茎を、密閉容器内に入れ、水の出入りがなくなり平衡状態に達した器内の蒸気圧(P)と、同一条件下での純水の蒸気圧(P)との比と定義されものである。式で表せば、下記の通りである。
w=P/P
水分活性について詳しくは、『現代の食品科学(第2版)』(三共出版)第9頁〜第11頁の「2.3水分活性」に記載されている
切断面以外の箇所における水分活性の値は、作物を切断後、できるだけ早く切断面を含む部位を密閉容器に入れて測定した蒸気圧(P)を用いて測定した値を、その値と推定する。
例えば、茶樹の茶葉を切断した場合は、その茶葉を切断後すぐに密閉容器に入れて測定した蒸気圧(P)と、同一条件下での純水の蒸気圧(P)との比が、その茶葉の切断面以外の箇所における水分活性と推定する。
なお、水分活性は、水分活性恒温測定装置で測定することができ、例えば、「ノバシーナ社製LabMASTER-aw型」などを用いて測定することができる。
また、切断面の含水率は、45%〜90%の範囲内、特に60%〜80%の範囲内であるのが好ましい。
切断面以外の箇所の含水率は、特に限定するものではないが、45%〜90%の範囲内であるのが好ましい。切断面以外の箇所の含水率は、切断面の含水率の測定と同時に、茎の切断面から表皮に沿い5mm〜15mm奥の間から長さ5mmのサンプルを取り、測定することができる。
なお、含水率は、赤外線水分計で測定することができ、例えば、ケット科学研究所社製「FD-610」などを用いて測定することができる。
塗布工程は、切断面の水分調整後に薬液を前記切断面に塗布する工程である。
薬液としては、農薬や液肥(液体肥料)を用いることができ、農薬としては殺菌剤や殺虫剤を用いることができるが、特に殺菌剤としては、アゾキシストロビン水和剤、フルアジナム水和剤、TPN水和剤、イミノクタジンアルベシル塩酸水和剤、カスガマイシン・銅水和剤、クレソキシムメチル水和剤、チオファネートメチル水和剤、テブコナゾール水和剤、トリフロキシストロビン水和剤、ベノミル水和剤、銅水和剤などを用いることができ、具体的には、フロンサイド、ベルクート、ダコニール、アミスター、ベフドー、カスミンボルドー、ストロビー、トップジンM、オンリーワン、スパットサイド、コサイドボルドーなどを用いることができる。液肥としては、有機肥料、無機肥料、微量要素系肥料、植物活性剤等を用いることができ、具体的には、尿素、魚エキス、ベタイン、アミノ酸、キレートゲンなどを用いることができる。
薬液は、茎などを切断し水分調整後に半日以内、特に1時間以内、その中でも特に3分以内に塗布するのが好ましい。
薬液は、20℃で粘度0.8mPa・s〜12mPa・s、特に1mPa・s〜10mPa・sであるのが好ましい。これにより、薬液が切断面に載りやすくなる。
なお、粘度は、粘度計で測定することができ、例えば、東機産業社製「TVB-10M」などを用いることができる。
薬液は、種類や濃度によりことなるが、10アール当たり100リットル〜1000リットルを散布することができる。
散布方法は一般的な方法でも良いが、特に薬液の塗布は、塗布具を用いて塗布することができ、また、静電散布法により薬液を塗布することもできる。塗布具としては、刷毛、筆、ローラ、スポンジ、布、綿球などを用いることができる。静電散布法は、薬液に静電気を与えることにより薬液を作物に付着させやすくした方法であり、薬液が静電気により作物に付着するため、作物の表側だけでなく裏側など隠れた場所にも薬液を付着させることができるなどの利点がある。静電散布法は、静電散布器などにより行うことができ、具体的には有光工業社製「AES-03」などの静電散布器がある。
本発明の作物栽培方法は、切断面から薬液が効率よく吸収されるため、作物の育成や防除に効果を発揮するものである。薬液として、液肥などを用いれば作物の成長が良好になり、薬液として、農薬などを用いれば、病虫害の防除をすることができる。そのため、本発明は、作物育成方法又は作物防除方法ともいえるものである。
また、本発明の作物栽培方法は、毎年摘採する茶園の茶樹などに好適に用いることができるため、茶園栽培方法や茶園育成方法或いは茶園防除方法ともいえるものである。
この方法を用いた装置として、例えば、作物を切断する切断手段と、前記切断による切断面の水分の蒸発又は吸収を調整する水分調整手段と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布手段と、を含む作物栽培装置を挙げることができる。この装置は、薬液として液肥を用いれば作物を育成することができるため作物育成装置ともいえるものでもあり、また、薬液として、農薬などを用いれば病虫害から防除することができるので作物防除装置ともいえるものでもある。
この作物栽培装置は、茶園の茶樹に対して好適に用いることができるため、茶園栽培装置や茶園育成装置或いは茶園防除装置ともいえるものである。
以下、作物栽培装置の一例として、茶園の茶樹に適した茶園栽培装置について説明する。
茶園栽培装置は、茶樹畝を跨いで走行できる門型の茶葉摘採機などを改良して作製することができる。
切断手段は、茶樹の葉、茎、枝などを切断するものであり、例えば、上記した刃物やレーザー、ウォーターカッターなどを用いることができ、走行しながら切断できるものが好ましい。刃物は、上記したように、刃先角が10°〜70°、特に20°〜50°であるのが好ましい。
水分調整手段は、切断手段により切断された葉、茎、枝或いは幹などの切断面の水分の蒸発又は吸収を調整するものであり、例えば、従来からある送風機又は加湿機或いはこれらをともに用いるなどして切断面の水分を調整できるようにするものである。
塗布手段は、切断面に薬液を塗布するものであり、例えば、静電散布法の原理を用いた静電散布器により薬液を散布することにより、薬液を切断面に効率的に塗布することができる。
上記装置は、茶樹に対するものであるが、これ以外にもモロヘイヤ、芝生などにも適用できるものである。
以下、本発明の一実施例の作物栽培方法を説明する、但し、本発明はこれに限定されるものではない。
(試験)
6月頃に、やぶきた種の茶樹を用いて以下の試験を行った。
(浸透試験)
茶樹の先端側の茎部分(大凡の直径が2.2mm前後の箇所)を、手摘み、鋏1、鋏2、ナイフで切断し、切断面を拡大鏡で観察した。鋏1、鋏2およびナイフの刃先角はそれぞれ90°、45°、25°であった。手摘みと鋏2で切断した際の切断面の写真を、それぞれ図3,4に示す。
次に、拡大鏡を用いて、切断面内の高低差、切断面からの高さ0.3mm以上の部分の面積率を測定した。これらの値を下記表1に示す。
上記各切断方法で切断した切断面にドライヤーで1分間送風して乾燥させ、水分調整を行った後、その切断面に、マイクロピペットを用いて着色した色水5μlを塗布し、1分後に切断面の色水を拭き取り、切断面から何mmまで色水が浸透したか浸透長を測定した。
また、水分調整を行った後、切断面の水分活性を測定した。この値と、切断直後に測定しておいた水分活性との値から水分活性の差異(aw)を算出した。
なお、水分活性は、水分活性恒温測定装置(ノバシーナ社製LabMASTER-aw型)を用いて測定した。以下に示す水分活性の測定も、同様に測定した。
これら結果を下記表1に示す。
浸透長が8mm以上を浸透効果「○」とし、浸透長が8mm未満を浸透効果「△」と判定した。
刃先角45°の鋏2と刃先角25°のナイフで切断すると、浸透長が長くなることが見出せた。その際の切断面の高低差は1.00mm又は0.01mmであった。
手摘みや刃先角90°の鋏1で切断すると、浸透長は短いものであった。その際の切断面の高低差は2.00mm又は1.70mmであった。
これら結果から、切断面の高低差は、1.50mm以下にするのが好ましいと思料される。
また、刃先角が10°〜70°の鋏又はナイフで切断すると高低差が1.50mm以下の切断面を形成でき、浸透長が長くなるものと思料される。
(水分調整試験)
まず、茶樹の先端側の茎部分を、上記鋏2で切断し、切断面の高低差が1.50mm以下であることを確認した。次に、切断面を簡易的な屋根で覆い直射日光が当たらないようにして、以下の条件A〜Dの方法で水分を調整した後、その切断面の水分活性及び含水率を測定するとともに、切断面に着色した色水5μlを、マイクロピペットを用いて塗布し、切断面から何mmまで色水が浸透するか浸透長を測定した。これら測定は、水分調整を終了した直後に速やかに行った。
条件A…加湿器による半日間の加湿
条件B…ドライヤーを用いて1分間の送風による乾燥
条件C…ドライヤーを用いて1時間の送風による乾燥
条件D…ドライヤーを用いて丸1日の送風による乾燥
なお、含水率は、赤外線水分計(ケット科学研究所社製FD-610)で測定した。未切断部分の含水率とは、切断面から10mm奥の箇所の表面を長さ5mmの傷を入れて測定した値である。以下に示す含水率及び未切断部分の含水率も同様に測定した。
浸透長が8mm以上を浸透効果「○」とし、浸透長が8mm未満を浸透効果「△」と判定した。
条件B、条件Cで水分調整を行ったところ、浸透長が20mm、14mmと長くなることが見出された。これらは、水分活性の差異(aw)が0.00、−0.04であった。
また、条件A、条件Dで水分調整を行ったところ、浸透長が短いものであった。これらは、水分活性の差異(aw)が0.10、−0.16であった。
これら結果から、水分活性の差異(aw)が0.09〜−0.15awの範囲内であると、浸透が良好になるものと思料される。
(塗布試験)
まず、薬液の粘度(20℃)と浸透長との関係を測定した。
茶樹の先端側の茎部分を、上記鋏2で切断し、その切断面を上記条件Bで水分調整を行った後、その切断面に下記表3に記載の各粘度の色水5μlをマイクロピペットで塗布し、1分後に切断面の色水を拭き取り、切断面からの浸透長を測定した。
なお、供試サンプルについて別途水分活性を測定したところ、水分活性の差異は、すべて0.09〜−0.15awの範囲内であった。
浸透長が8mm以上を浸透効果「○」とし、浸透長が8mm未満を浸透効果「△」と判定した。
粘度が1mPa・s、3.5mPa・s、7.5mPa・sの場合は、それぞれ浸透長が20mm、18mm、15mmになり、良好な浸透になることが見出せた。
粘度が0.6mPa・s、12.5mPa・sの場合は、ともに5mmの浸透長であり、浸透効果はやや不良なものであった。
この結果から、粘度は0.8mPa・s〜12mPa・sが好ましいものと思料する。
次に、薬液として、殺菌剤である1000倍希釈の農薬(住友化学株式会社社製 ダコニール1000)を用いて、水分活性と病葉の枚数との関係を調べた。
茶樹の先端側の茎部分を鋏2で切断し、複数箇所の切断面を形成した後、その内の半分の箇所をビニルで被覆して水分を調整した。切断から2日間を経てから、各切断面の水分活性及び含水率を測定した。ビニルを被覆した切断面(本発明)と、ビニルを被覆しない切断面(従来)との水分活性の差異の平均値を下記表4に示した。上記農薬は、水分活性の確認後、速やかに、10アール当たり160リットルで市販の背負式防除機を用いて散布し、20日後に病葉の枚数が発生してないかを目視で観察した。防除効果は、従来法の単位面積の発病葉数を100とした場合の、本発明の単位面積の発病葉数の割合で示した。なお、調査は1m×1mの枠を用いて、試験区ごとに2反復で行った。
また、薬液として、濃度1%の市販尿素を用いて、水分活性と園相との関係を調べた。
茶樹の先端側の茎部分を鋏2で切断し、複数箇所の切断面を形成した後、上記と同様に切断面の水分を調整した。その切断面に上記液肥10アール当たり200リットルを散布し、葉色、芽数、芽伸び等の園相を達観調査で評価した。その結果を下記表5に示した。
達観調査は、3名の熟練者により従来管理の茶園と本発明の茶園を一望できる距離から、葉色、芽数・芽伸びを以下の評価で点数をつけ、平均点が2以上を「○」、2未満を「×」として評価した。
(評価)
<葉色>
3点:新芽の色が均一かつ濃緑色
2点:新芽の色が緑色
1点:新芽の色が黄色
<芽数>
3点:新芽の数が多い
2点:新芽の数が中程度
1点:新芽の数が少ない
<芽伸び>
3点:新芽の伸びが均一かつ長い
2点:新芽の伸びが中程度
1点:新芽の伸びが短い
農薬は、水分活性の差異が−0.08awのときに散布すると発病葉数が従来法より70%少なくなり、また、液肥は、水分活性の差異が−0.08awのときに散布すると園相が良好になることが見出せた。

Claims (8)

  1. 作物を切断する切断工程と、前記切断による切断面の水分の蒸発及び吸収を調整して、前記切断面の水分活性が、前記切断面を含む部位の前記切断面以外の箇所における水分活性に対してその差異が0.09〜−0.15a になるように水分を調整する水分調整工程と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布工程と、を含む作物栽培方法。
  2. 前記切断面における最大高さと最低高さとの高低差が1.50mm以内である請求項1に記載の作物栽培方法。
  3. 前記薬液は、20℃で粘度が0.8mPa・s〜12mPa・sである請求項1又は2に記載の作物栽培方法。
  4. 前記薬液は、農薬である請求項1〜3のいずれかに記載の作物栽培方法。
  5. 前記薬液は、液肥である請求項1〜3のいずれかに記載の作物栽培方法。
  6. 水分調整工程において、前記切断面の被覆若しくは前記切断面に対する送風又は加湿により水分を調整する請求項1〜5のいずれかに記載の作物栽培方法。
  7. 作物を切断する切断手段と、前記切断による切断面の水分の蒸発及び吸収を調整して、前記切断面の水分活性が、前記切断面を含む部位の前記切断面以外の箇所における水分活性に対してその差異が0.09〜−0.15a になるように水分を調整する水分調整手段と、前記水分調整の後、前記切断面に薬液を塗布する塗布手段と、を含む作物栽培装置。
  8. 切断手段において、刃先角が10°〜70°である刃物で作物を切断する請求項7に記載の作物栽培装置。
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