JP5286324B2 - 加熱・冷却温度制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、工作機械などの温度制御対象を加熱あるいは冷却して目標温度に維持制御するための加熱・冷却温度制御装置に関する。詳しくは、加熱制御と冷却制御との相互間の移行時に不連続を生じることなく連続的で高精度かつ高効率の温度制御を行うことができる加熱・冷却温度制御装置に関する。
工作機械や半導体製造装置をはじめとする産業機械は、製品の高精度化や高生産性を目的として高度に精密な温度管理が必要となってきている。このためには水、油、空気などの熱媒体に対して高精度の温度制御を行う温度制御装置が必要である。また、このような温度制御装置には、温度制御の高精度化だけでなく、環境保護の観点から高いエネルギー効率(低エネルギー消費)も求められている。高効率の温度制御を実現するものとしては、冷凍サイクル(ヒートポンプ)を利用した温度制御装置がある。
ヒートポンプを利用して温度制御対象の加熱および冷却を行い、温度制御対象を目標温度に維持する温度制御装置としては、下記の特許文献1、特許文献2に記載されたようなものがある。特許文献1には、圧縮機からの高温熱媒体を三方弁によって加熱器側と冷却器側に分配し、温度制御対象の空気を加熱器で加熱するとともに冷却器で冷却して、空気の連続的な温度制御を行う温度調整装置が記載されている。また、特許文献2には、圧縮機からの高温熱媒体を2つの二方弁によって加熱器側と冷却器側に分配し、温度制御対象の冷却液を加熱器で加熱するとともに冷却器で冷却して、冷却液の連続的な温度制御を行う温度調整装置が記載されている。
特許文献1、特許文献2に記載されたような温度制御装置は、温度制御対象の加熱と冷却を同時に行っており、エネルギー効率の観点からは必ずしも好ましいものではない。エネルギー効率の観点からは、加熱と冷却のいずれか一方のみを温度制御対象に施すようにした方が消費エネルギーを低減させることができ好ましい。しかし、そのためには温度制御対象や熱媒体の流路を切り換えて、加熱動作と冷却動作を切り換える必要がある。
特開2008−309465号公報 特開2009−92271号公報
前述のように、特許文献1や特許文献2の温度制御装置は、温度制御対象の加熱と冷却を同時に行うものであるため、エネルギー効率が低下してしまうという問題点があった。また、温度制御対象の加熱と冷却を同時に行うため、熱交換器の数が増加して温度制御装置全体が大型化し重量も増加してしまうという問題点があった。そのため温度制御装置の製造コストも増加してしまう。
また、温度制御装置の温度制御対象や熱媒体の流路を切り換えて、加熱動作と冷却動作を切り換えるようにすることもできるが、そのような構成では加熱動作と冷却動作との移行に制御動作の不連続が生じてしまう。この制御動作の不連続により温度制御対象の温度が安定せず、温度制御の精度が低下してしまうという問題点があった。
そこで、本発明は、工作機械などの温度制御対象を加熱あるいは冷却して目標温度に維持制御するための加熱・冷却温度制御装置であって、加熱制御と冷却制御との相互間の移行時にも温度制御に不連続を生じることなく連続的で高精度かつ高効率の温度制御を行うことができる加熱・冷却温度制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の加熱・冷却温度制御装置は、冷媒ガスを圧縮するための圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された前記冷媒ガスの熱を放熱して液化するための凝縮器と、液化された前記冷媒ガスを絞り膨脹させるための膨脹弁と、加熱または冷却による温度制御対象との熱交換を行う熱交換器と、前記凝縮器と前記膨脹弁とを連結するとともに前記膨脹弁と前記熱交換器とを連結し、前記凝縮器に接続する第1端部と前記熱交換器に接続する第2端部のいずれか一方から他方に前記冷媒ガスを循環させる循環路と、前記圧縮機により圧縮加熱された前記冷媒ガスを前記循環路の前記第1端部または前記第2端部のいずれかに選択的に供給可能であるとともに、前記圧縮機から吐出された前記冷媒ガスの一部または全部をバイパスして前記圧縮機の吸入側に戻すことにより前記冷媒ガスの循環量を調整可能な循環調整部と、前記温度制御対象の温度が目標値となるように、前記循環調整部による前記冷媒ガスの循環方向および循環量を制御するとともに、前記圧縮機の回転速度および前記膨脹弁の開度を制御する温度制御部とを有するものである。
また、上記の加熱・冷却温度制御装置において、前記循環調整部は、前記圧縮機の吐出側と前記循環路の前記第1端部とを接続する第1流量制御弁と、前記圧縮機の吐出側と前記循環路の前記第2端部とを接続する第2流量制御弁と、前記圧縮機の吸入側と前記循環路の前記第1端部とを接続する第3流量制御弁と、前記圧縮機の吸入側と前記循環路の前記第2端部とを接続する第4流量制御弁とを含むものとすることができる。
また、上記の加熱・冷却温度制御装置において、前記循環調整部は、前記圧縮機の吐出側からの前記冷媒ガスを前記循環路の前記第1端部と前記第2端部に任意の比率で分配する第1三方弁と、前記冷媒ガスを前記循環路の前記第1端部と前記第2端部から前記圧縮機の吸入側へ任意の比率で吸入する第2三方弁とを含むものとすることができる。
また、上記の加熱・冷却温度制御装置において、前記循環調整部は、前記圧縮機の吐出側または吸入側の一方を前記循環路の前記第1端部と前記第2端部に接続する2つの流量制御弁と、前記圧縮機の吐出側または吸入側の他方を前記循環路の前記第1端部と前記第2端部に接続する2つの電磁開閉弁とを含むものとすることができる。
また、上記の加熱・冷却温度制御装置において、前記循環調整部は、前記圧縮機の吐出側および吸入側を前記循環路の前記第1端部と前記第2端部のいずれか一方に接続する2つの流量制御弁と、前記圧縮機の吐出側および吸入側を前記循環路の前記第1端部と前記第2端部の他方に接続する2つの電磁開閉弁とを含むものとすることができる。
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
本発明の温度制御装置により、最大加熱から最大冷却までの全域にわたり、連続的な高精度の温度制御が可能となる。加熱動作と冷却動作の切り換え点、加熱動作(強)と加熱動作(弱)の切り換え点、および冷却動作(弱)と冷却動作(強)の切り換え点のいずれの点においても温度制御に不連続が生じることはなく、制御領域の全域で高精度の温度制御が可能である。また、加熱および冷却は高効率のヒートポンプ方式によって行われ、加熱および冷却の一方のみを温度制御対象に施すため、温度制御におけるエネルギー効率が大幅に向上する。
本発明の工作機械の温度制御装置1の構成を示す図である。 温度制御装置1の制御方法を示す図である。 第2の形態の循環調整部の構成を示す図である。 第3の形態の循環調整部の構成を示す図である。 第4の形態の循環調整部の構成を示す図である。 第3の形態の循環調整部の場合の制御方法を示す図である。 温度制御装置1の制御特性の実測値を示すグラフである。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の温度制御装置1の構成を示す図である。温度制御装置1は、流体流通路4を流通する水、油、空気などの流体の温度を所定の目標値に制御するための装置である。温度制御対象である流体はポンプ41により加圧されて、流体流通路4内を流通させられている。温度制御対象の流体は、例えば、工作機械の機体等を一定の温度に維持するための冷却液であったり、半導体製造装置の環境温度を一定に維持するための空気であってもよい。
温度制御対象の流体は、熱交換器8により加熱または冷却されて所定の目標値となるように制御される。熱交換器8に流入する前の流体の温度は温度検出器42によって検出され、熱交換器8から流出した流体の温度は温度検出器43によって検出されている。さらに、温度検出器42,43以外にも工作機械や半導体製造装置の機体の温度を検出する温度検出器や、装置が置かれている空間の室温を検出する温度検出器を設けるようにしてもよい。また、温度検出器は必ず2つ必要なわけでもなく、温度検出器42,43のいずれか一方だけでもよい。
この温度制御装置1は、圧縮機5によって圧縮して高温となった冷媒ガスを、循環方向および循環量を変更制御して循環路2に循環させ、温度制御対象の流体の加熱または冷却を行うものである。弁調整部30および流量制御弁31〜34が循環調整部を構成し、この循環調整部により冷媒ガスの循環方向および循環量を変更制御するのである。弁調整部30は流量制御弁31〜34のそれぞれの開度を任意の値に設定可能である。また、弁調整部30の開度設定値は温度制御部10によって設定される。
まず、温度制御装置1が冷却動作(強)を行う場合について説明する。流量制御弁31,34は全開状態とし、流量制御弁32,33は全閉状態とする。圧縮機5によって圧縮して高温となった冷媒ガスは、流量制御弁31から循環路2の第1端部21に導入される。冷媒ガスは、循環路2を通り凝縮器6に送られる。凝縮器6では、圧縮されて温度上昇した冷媒ガスの熱が放熱されて液化される。凝縮器6は冷却ファン61によって空冷により冷却されている。
液化された冷媒ガスは、さらに膨張弁7を通る際に絞り膨張されて低温低圧の気液混合状態となる。この低温低圧の気液混合の冷媒ガスが熱交換器8に流入して、温度制御対象の流体を冷却するのである。冷媒ガスは熱交換器8中で流体の熱を奪って気化し、気化熱により効率よく流体を冷却する。熱交換器8から流出した冷媒ガスは、循環路2の第2端部22から流量制御弁34を通って圧縮機5に戻る。
冷却能力の変更制御は、圧縮機5の回転速度と膨張弁7の開度を制御して行っている。圧縮機5は、インバータ駆動を行う駆動部51によって駆動されている。駆動部51は、インバータ駆動周波数を変更することにより圧縮機5の回転速度を連続的に変更することができる。これにより温度制御装置1の冷却能力を変更制御できる。圧縮機5の駆動周波数は温度制御部10によって制御されている。温度制御部10の具体的な制御内容は後述する。
また、膨張弁7の開度は圧縮機5の回転速度に連動して制御される。膨張弁7の開度yは、圧縮機5を駆動するインバータ周波数xに対して一対一に対応する関係となるように制御される。例えば、開度yは1次の関係式y=ax+bに従って制御される。ここで、a,bは定数である。定数a,bは、圧縮機5の容量や特性などに応じて適宜の値に設定されるものである。なお、膨張弁7は、ステッピングモータ駆動により弁体を移動させ、弁の開度を調整可能なものである。このため、デジタル値の開度指令により膨張弁7の開度を調整することができる。
温度制御部10は、圧縮機5の駆動周波数、膨張弁7の開度、および流量制御弁31〜34の開度を制御して、温度制御装置1の加熱・冷却能力を変更し、温度検出器42,43の検出値に基づいて温度制御対象の流体の温度が所定の目標値に一致するようにフィードバック制御を行う。温度制御部10が比較的強い冷却動作を行う場合には、前述のように、流量制御弁31,34を全開状態、流量制御弁32,33を全閉状態として、圧縮機5の駆動周波数と膨張弁7の開度により冷却能力の変更を行う。
次に、温度制御装置1が加熱動作(強)を行う場合について説明する。この場合、流量制御弁31,34は全閉状態とし、流量制御弁32,33は全開状態とする。圧縮機5によって圧縮して高温となった冷媒ガスは、流量制御弁32から循環路2の第2端部22に導入される。冷媒ガスは、循環路2を通り熱交換器8に送られ、さらに、膨張弁7、凝縮器6、流量制御弁33を通って圧縮機5に戻る。すなわち、加熱動作(強)の場合は、冷媒ガスの循環路2における循環方向が冷却動作(強)とは逆になる。
この場合、熱交換器8が冷媒ガスを凝縮する作用を行い、凝縮器6は周囲の外気を冷却する作用を行う。熱交換器8では、圧縮されて温度上昇した冷媒ガスの熱が温度制御対象の流体に放熱されて冷媒ガスが液化される。すなわち、温度制御対象の流体は冷媒ガスによって加熱される。加熱能力の変更制御は、冷却能力の変更と同様に、圧縮機5の回転速度と膨張弁7の開度を連動して制御することにより行っている。
このように、温度制御装置1の加熱・冷却能力の変更制御は、圧縮機5の回転速度の変更制御を伴う。一般的に、インバータ駆動の冷凍サイクルにおける加熱・冷却能力の変更範囲は、圧縮機のインバータ駆動の最低周波数と最高周波数の比で1:4程度である。特に、低負荷領域でインバータ駆動の周波数を低下させすぎると、圧縮機の安定した機能が得られなくなる。したがって、インバータ駆動の周波数による制御だけでは、特に低負荷領域での加熱・冷却能力の可変範囲の限界により、低負荷領域での温度制御の精度が悪化してしまう。
そこで、本発明では、低負荷領域での加熱・冷却能力の変更制御は、圧縮機5の回転速度を最低値に固定するとともに、膨張弁7の開度もその回転速度に応じた値に固定し、流量制御弁31〜34のそれぞれの開度を制御して加熱・冷却能力の変更を行うようにしたものである。
温度制御部10は、高負荷領域の冷却動作(強)および加熱動作(強)においては、前述のように流量制御弁31〜34の2つを全開状態、残りを全閉状態とし、圧縮機5の回転速度と膨張弁7の開度を連動して制御することにより加熱・冷却能力の変更制御を行う。低負荷領域での冷却動作(弱)および加熱動作(弱)においては、圧縮機5の回転速度を最低値に固定するとともに膨張弁7の開度も固定し、流量制御弁31〜34のそれぞれの開度を制御して加熱・冷却能力の変更を行う。
図2に、以上の加熱・冷却能力の変更制御の制御内容を示す。図2(a)〜(c)において、横軸は温度制御部10の行う温度制御の操作量を示しており、最大の加熱を行う最大加熱点Hmax から最大の冷却を行う最大冷却点Cmax までを連続的な数値(例えば、0〜100)によって表したものである。中立点Nでは加熱も冷却も行わない。
前述のような、圧縮機5の最低回転速度に対応するのが加熱点Hv と冷却点Cv であり、これらの加熱点Hv と冷却点Cv の間では加熱動作(弱)および冷却動作(弱)の制御が行われ、それ以外では加熱動作(強)および冷却動作(強)の制御が行われる。すなわち、加熱点Hv と冷却点Cv の間では、流量制御弁31〜34のそれぞれの開度の変更によって加熱・冷却能力の変更制御が行われる。
図2(a)は、操作量と流量制御弁31〜34の開度の関係を示す図である。図の縦軸は流量制御弁31〜34の開度である。弁開度は数値0〜100で表されており、開度0が全閉状態、開度100が全開状態を表している。流量制御弁31,34の開度は太実線で示され、流量制御弁32,33の開度は太点線で示されている。図示のように、最大加熱点Hmax から圧縮機5の最低回転速度に対応する加熱点Hv までは、流量制御弁31,34は全閉状態とし、流量制御弁32,33は全開状態としている。
圧縮機5の最低回転速度に対応する加熱点Hv から冷却点Cv までは、流量制御弁31,34は全閉状態から全開状態に直線的に開度を増加させ、流量制御弁32,33は全開状態から全閉状態に直線的に開度を減少させる。圧縮機5から吐出された冷媒は、流量制御弁31,32の開度の大きい側から循環路2に流入し、循環路2の他端側から圧縮機5に戻る。
加熱点Hv から中立点Nまでは、冷媒が第2端部22から循環路2に流入し、第1端部21から圧縮機5に戻る。その冷媒の循環量は、加熱点Hv から中立点Nまで減少し、中立点Nでは冷媒の循環量が0になる。すなわち、中立点Nでは加熱も冷却も行わない。そして、中立点Nから冷却点Cv までは、冷媒が第1端部21から循環路2に流入し、第2端部22から圧縮機5に戻る。冷媒の循環量は、中立点Nでの0から冷却点Cv まで増加する。
圧縮機5から吐出されても、循環路2に流入しない冷媒は、流量制御弁31〜34を通って圧縮機5の吸引側に戻されることになる。すなわち、循環路2に流入していない冷媒は、流量制御弁31〜34によって循環路2をバイパスされ、圧縮機5の吸引側に戻されている。循環路2への冷媒の循環量は、流量制御弁31〜34の開度によって連続的に変更制御できる。
図示のように、流量制御弁31,34の開度が等しく、流量制御弁32,33の開度が等しくなるように制御されている。そして、流量制御弁31,34の開度と流量制御弁32,33の開度との差によって、循環路2への冷媒の循環量が決定される。中立点Nでは流量制御弁31,34の開度と流量制御弁32,33の開度とが等しくなるため、圧縮機5から吐出された冷媒は全てバイパスされて圧縮機5の吸引側に戻される。このとき循環路2には冷媒が流入しない。
図示のように、加熱点Hv から冷却点Cv まで、流量制御弁31,34は全閉状態から全開状態に直線的に開度を増加させ、流量制御弁32,33は全開状態から全閉状態に直線的に開度を減少させることにより、循環路2における冷媒の循環量を圧縮機5の最低回転速度に対応する吐出量(加熱動作)から0(中立点N)にまで連続的に減少させ、さらに0(中立点N)から圧縮機5の最低回転速度に対応する吐出量(冷却動作)にまで連続的に増加させることができる。
図2(b)は、操作量と圧縮機5の回転速度の関係を示す図である。図の縦軸は圧縮機5の回転速度を示す。回転速度は数値0〜100で表されており、速度0が停止状態、速度100が最高回転速度を表している。前述のように、最大加熱点Hmax から加熱点Hv までの加熱動作(強)、および、冷却点Cv から最大冷却点Cmax までの冷却動作(強)では、流量制御弁31〜34の2つを全開状態、残りを全閉状態とし、圧縮機5の回転速度と膨張弁7の開度を連動して制御することにより加熱・冷却能力の変更制御を行う。
加熱点Hv から中立点Nまでの加熱動作(弱)、および、中立点Nから冷却点Cv までの冷却動作(弱)においては、圧縮機5の回転速度を最低値に固定するとともに膨張弁7の開度も固定し、流量制御弁31〜34のそれぞれの開度を図2(a)に示すように制御して加熱・冷却能力の変更を行う。すなわち、加熱点Hv と冷却点Cv との間の領域では、圧縮機5の回転速度は最低値に固定されている。
図2(c)は、操作量と実際の熱移動量との関係を示す図である。図の縦軸は単位時間あたりの熱移動量を示している。最大冷却点Cmax における熱移動量をQmax で示し、最大加熱点Hmax における熱移動量を−Qmax で示している。図2(a),(b)に示すような制御を行うことにより、最大加熱点Hmax から最大冷却点Cmax にわたり熱移動量を連続的に制御することができる。
加熱点Hv では加熱動作(強)と加熱動作(弱)の切り換えが生じ、冷却点Cv では冷却動作(弱)と冷却動作(強)の切り換えが生じるが、これらの点でも熱移動量の不連続は現れない。最大加熱点Hmax から最大冷却点Cmax の全領域において熱移動量を連続的に制御することができる。
温度制御部10は、以上のような加熱・冷却能力の変更制御を行い、温度検出器42,43の検出値に基づいて温度制御対象の流体の温度が所定の目標値に一致するようにフィードバック制御を行う。フィードバック制御はPID制御により、高精度、高速応答かつ高安定な制御を行っている。制御領域の全域において、PID制御により流体の温度を目標値とするための操作量が求められ、求めた操作量から図2(a),(b)に示すような制御テーブルにより、その操作量に対応する圧縮機5の回転速度と流量制御弁31〜34の開度が求められる。また、圧縮機5の回転速度から膨張弁7の開度が決定される。
以上のような温度制御を行うことにより、最大加熱から最大冷却までの全域にわたり、連続的な高精度の温度制御が可能となる。加熱動作と冷却動作の切り換え点(中立点N)、加熱動作(強)と加熱動作(弱)の切り換え点(加熱点Hv )、および冷却動作(弱)と冷却動作(強)の切り換え点(冷却点Cv )のいずれの点においても温度制御に不連続が生じることはなく、制御領域の全域で高精度の温度制御が可能である。また、加熱および冷却は高効率のヒートポンプ方式によって行われるため、温度制御におけるエネルギー効率が大幅に向上する。
次に、循環路2における冷媒ガスの循環方向および循環量を変更制御するための循環調整部の変形例に説明する。図3は、第2の形態の循環調整部の構成を示す図である。この形態の循環調整部は、図1における流量制御弁31〜34に代えて2つの三方弁35,36を使用したものである。三方弁35は圧縮機5から吐出する冷媒の循環路2の2つの端部側への流出割合を任意の値に設定することができ、三方弁36は圧縮機5に流入する冷媒の循環路2の2つの端部側からの流入割合を任意の値に設定することができる。すなわち、2つの三方弁35,36によって、流量制御弁31〜34と等価な機能を実現できる。したがって、制御方法も図2に示したのと同様な方法である。
図4は、第3の形態の循環調整部の構成を示す図である。この形態の循環調整部は、図1における流量制御弁31〜34に代えて、2つの流量制御弁371,372と2つの電磁開閉弁381,382とを使用したものである。つまり、2つの流量制御弁を電磁開閉弁に置き換えたものである。2つの流量制御弁371,372は圧縮機5の吐出側に配置されており、2つの電磁開閉弁381,382は圧縮機5の流入側に配置されている。ただし、この配置は逆にして、流量制御弁371,372を流入側に、電磁開閉弁381,382を吐出側に配置してもよい。この形態の循環調整部では、流量制御弁を電磁開閉弁に置き換えることにより制御を簡単化できる。具体的な制御内容は後述する。
図5は、第4の形態の循環調整部の構成を示す図である。この形態の循環調整部は、図4に示すものと同様に2つの流量制御弁373,374と2つの電磁開閉弁383,384とを使用したものであるが、図4に示すものとは弁の配置が異なっている。2つの流量制御弁373,374は循環路2の第1端部21側に配置されており、2つの電磁開閉弁383,384は循環路2の第2端部22側に配置されている。ただし、この配置は逆にして、流量制御弁373,374を第2端部22側に、電磁開閉弁383,384を第1端部21側に配置してもよい。この第4の形態の循環調整部の制御方法は、第3の形態の循環調整部の制御方法と同様である。
次に、第3の形態の循環調整部について制御方法を説明する。図6は、第3の形態の循環調整部の制御方法を示す図である。図6(a)〜(d)において、横軸は温度制御部10の行う温度制御の操作量を示している。操作量は、最大の加熱を行う最大加熱点Hmax から最大の冷却を行う最大冷却点Cmax までを連続的な数値(例えば、0〜100)によって表したものである。中立点Nでは加熱も冷却も行わない。
前述のように、圧縮機5の最低回転速度に対応するのが加熱点Hv と冷却点Cv であり、これらの加熱点Hv と冷却点Cv の間では加熱動作(弱)および冷却動作(弱)の制御が行われ、それ以外では加熱動作(強)および冷却動作(強)の制御が行われる。すなわち、加熱点Hv と冷却点Cv の間では、流量制御弁371,372および電磁開閉弁381,382のそれぞれの開度と開閉状態の変更によって加熱・冷却能力の変更制御が行われる。
図6(a)は、操作量と流量制御弁371,372の開度との関係を示す図である。図の縦軸は流量制御弁371,372の開度である。弁開度は数値0〜100で表されており、開度0が全閉状態、開度100が全開状態を表している。流量制御弁371の開度は太実線で示され、流量制御弁372の開度は太点線で示されている。図示のように、最大加熱点Hmax から圧縮機5の最低回転速度に対応する加熱点Hv までは、流量制御弁371は全閉状態とし、流量制御弁372は全開状態としている。
加熱点Hv から中立点Nまでは、流量制御弁371は全閉状態から全開状態に直線的に開度を増加させ、流量制御弁372は全開状態のままである。中立点Nから冷却点Cv までは、流量制御弁371は全開状態とし、流量制御弁372は全開状態から全閉状態に直線的に開度を減少させる。そして、冷却点Cv から最大冷却点Cmax までは、流量制御弁371は全開状態とし、流量制御弁372は全閉状態としている。
図6(b)は、操作量と電磁開閉弁381,382の開閉状態との関係を示す図である。図の縦軸は電磁開閉弁381,382の開閉状態であり、数値0が閉状態、数値100が開状態を表している。電磁開閉弁381の開閉状態は太実線で示され、電磁開閉弁382の開閉状態は太点線で示されている。図示のように、最大加熱点Hmax から中立点Nまでは、電磁開閉弁381は閉状態とし、電磁開閉弁382は開状態としている。中立点Nから最大冷却点Cmax までは、電磁開閉弁381は開状態とし、電磁開閉弁382は閉状態としている。なお、中立点Nでは電磁開閉弁381,382の両者が開状態である。
図6(c)は、操作量と圧縮機5の回転速度の関係を示す図である。図の縦軸は圧縮機5の回転速度を示す。回転速度は数値0〜100で表されており、速度0が停止状態、速度100が最高回転速度を表している。前述のように、最大加熱点Hmax から加熱点Hv までの加熱動作(強)、および、冷却点Cv から最大冷却点Cmax までの冷却動作(強)では、流量制御弁371,372および電磁開閉弁381,382を図6(a),(b)に示すような状態とし、圧縮機5の回転速度と膨張弁7の開度を連動して制御することにより加熱・冷却能力の変更制御を行う。
加熱点Hv から中立点Nまでの加熱動作(弱)、および、中立点Nから冷却点Cv までの冷却動作(弱)では、圧縮機5の回転速度を最低値に固定するとともに膨張弁7の開度も固定し、流量制御弁371,372および電磁開閉弁381,382を図6(a),(b)に示すように制御して加熱・冷却能力の変更を行う。すなわち、加熱点Hv と冷却点Cv との間の領域では、圧縮機5の回転速度は最低値に固定されている。なお、中立点Nでは圧縮機5から吐出された冷媒が全てバイパスされて循環路2に流入しないため加熱も冷却も行われない。
図6(d)は、操作量と実際の熱移動量との関係を示す図である。図の縦軸は単位時間あたりの熱移動量を示している。最大冷却点Cmax における熱移動量をQmax で示し、最大加熱点Hmax における熱移動量を−Qmax で示している。図6(a)〜(c)に示すような制御を行うことにより、最大加熱点Hmax から最大冷却点Cmax にわたり熱移動量を連続的に制御することができる。
加熱点Hv では加熱動作(強)と加熱動作(弱)の切り換えが生じ、中立点Nでは加熱動作(弱)と冷却動作(弱)の切り換えが生じ、冷却点Cv では冷却動作(弱)と冷却動作(強)の切り換えが生じるが、これらの点でも熱移動量の不連続は現れない。最大加熱点Hmax から最大冷却点Cmax の全領域において熱移動量を連続的に制御することができる。
図4、図5に示す循環調整部は、流量制御弁を2つとして残りの2つを電磁開閉弁としたので、制御が簡略化されるとともに弁のコストも低減でき、温度制御装置全体のコストを低減することができる。ただし、流量制御弁を電磁開閉弁で置き換えたため、流量制御の直線性が多少悪化するという欠点もある。
次に、図1のような構成の温度制御装置1を使用して、図2に示すような制御を行い、その温度制御特性を実測した結果を示す。図7は、温度制御装置1の温度制御特性の実測値を示すグラフである。横軸は温度制御の操作量を示している。操作量は、最大加熱点から最大冷却点までを連続的な数値0〜100によって表したものである。縦軸は単位時間あたりの熱移動量を示しており単位は[W]である。0点より上方が冷却を示し、0点より下方が加熱を示している。「インバータ制御」と表示された領域は、加熱動作(強)と冷却動作(強)の領域であり、「流量制御弁制御」と表示された領域は、加熱動作(弱)と冷却動作(弱)の領域である。
黒点が実測した測定値であり、直線は全ての測定値から求めた温度制御特性の近似直線である。図示のように、測定値はかなりよく近似直線に一致している。このため操作量に対する熱移動量の温度制御特性を連続する直線状の特性として、高精度の熱移動を発生させることができ、高精度の温度制御が可能となる。
以上のような本発明の温度制御装置1により、最大加熱から最大冷却までの全域にわたり、連続的な高精度の温度制御が可能となる。加熱動作と冷却動作の切り換え点、加熱動作(強)と加熱動作(弱)の切り換え点、および冷却動作(弱)と冷却動作(強)の切り換え点のいずれの点においても温度制御に不連続が生じることはなく、制御領域の全域で高精度の温度制御が可能である。また、加熱および冷却は高効率のヒートポンプ方式によって行われ、加熱および冷却の一方のみを温度制御対象に施すため、温度制御におけるエネルギー効率が大幅に向上する。
本発明によれば、広範囲にわたる円滑で高精度の温度制御が可能となり、温度制御の応答性も向上させることができる。特に熱負荷の小さい領域での温度制御の精度を大幅に向上させることができる。また、温度制御におけるエネルギー効率を向上させることができる。
1 温度制御装置
2 循環路
4 流体流通路
5 圧縮機
6 凝縮器
7 膨張弁
8 熱交換器
10 温度制御部
21 第1端部
22 第2端部
30 弁調整部
31,32,33,34 流量制御弁
35,36 三方弁
41 ポンプ
42,43 温度検出器
51 駆動部
61 冷却ファン
371〜374 流量制御弁
381〜384 電磁開閉弁

Claims (5)

  1. 冷媒ガスを圧縮するための圧縮機(5)と、
    前記圧縮機(5)で圧縮された前記冷媒ガスの熱を放熱して液化するための凝縮器(6)と、
    液化された前記冷媒ガスを絞り膨脹させるための膨脹弁(7)と、
    加熱または冷却による温度制御対象との熱交換を行う熱交換器(8)と、
    前記凝縮器(6)と前記膨脹弁(7)とを連結するとともに前記膨脹弁(7)と前記熱交換器(8)とを連結し、前記凝縮器(6)に接続する第1端部(21)と前記熱交換器(8)に接続する第2端部(22)のいずれか一方から他方に前記冷媒ガスを循環させる循環路(2)と、
    前記圧縮機(5)により圧縮加熱された前記冷媒ガスを前記循環路(2)の前記第1端部(21)または前記第2端部(22)のいずれかに選択的に供給可能であるとともに、前記圧縮機(5)から吐出された前記冷媒ガスの一部または全部をバイパスして前記圧縮機(5)の吸入側に戻すことにより前記冷媒ガスの循環量を調整可能な循環調整部(30〜34)と、
    前記温度制御対象の温度が目標値となるように、前記循環調整部(30〜34)による前記冷媒ガスの循環方向および循環量を制御するとともに、前記圧縮機(5)の回転速度および前記膨脹弁(7)の開度を制御する温度制御部(10)とを有する加熱・冷却温度制御装置。
  2. 請求項1に記載した加熱・冷却温度制御装置であって、
    前記循環調整部は、前記圧縮機(5)の吐出側と前記循環路(2)の前記第1端部(21)とを接続する第1流量制御弁(31)と、前記圧縮機(5)の吐出側と前記循環路(2)の前記第2端部(22)とを接続する第2流量制御弁(32)と、前記圧縮機(5)の吸入側と前記循環路(2)の前記第1端部(21)とを接続する第3流量制御弁(33)と、前記圧縮機(5)の吸入側と前記循環路(2)の前記第2端部(22)とを接続する第4流量制御弁(34)とを含むものである加熱・冷却温度制御装置。
  3. 請求項1に記載した加熱・冷却温度制御装置であって、
    前記循環調整部は、前記圧縮機(5)の吐出側からの前記冷媒ガスを前記循環路(2)の前記第1端部(21)と前記第2端部(22)に任意の比率で分配する第1三方弁(35)と、前記冷媒ガスを前記循環路(2)の前記第1端部(21)と前記第2端部(22)から前記圧縮機(5)の吸入側へ任意の比率で吸入する第2三方弁(36)とを含むものである加熱・冷却温度制御装置。
  4. 請求項1に記載した加熱・冷却温度制御装置であって、
    前記循環調整部は、前記圧縮機(5)の吐出側または吸入側の一方を前記循環路(2)の前記第1端部(21)と前記第2端部(22)に接続する2つの流量制御弁(371,372)と、前記圧縮機(5)の吐出側または吸入側の他方を前記循環路(2)の前記第1端部(21)と前記第2端部(22)に接続する2つの電磁開閉弁(381,382)とを含むものである加熱・冷却温度制御装置。
  5. 請求項1に記載した加熱・冷却温度制御装置であって、
    前記循環調整部は、前記圧縮機(5)の吐出側および吸入側を前記循環路(2)の前記第1端部(21)と前記第2端部(22)のいずれか一方に接続する2つの流量制御弁(373,374)と、前記圧縮機(5)の吐出側および吸入側を前記循環路(2)の前記第1端部(21)と前記第2端部(22)の他方に接続する2つの電磁開閉弁(383,384)とを含むものである加熱・冷却温度制御装置。
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