JP5281570B2 - カテーテルの移動と複数心拍の統合を含む非接触式心臓マッピング - Google Patents

カテーテルの移動と複数心拍の統合を含む非接触式心臓マッピング Download PDF

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Description

本発明は、非接触式カテーテルを用いての心臓表面に関する生理学的情報の決定および表現に関する。
心不整脈は、卒中発作、心疾患および突然死の主要原因となっている。不整脈の生理学的な機構には、心臓の電気伝導における異常が関与している。不整脈患者の治療としては、薬剤投与、移植可能装置および低侵襲的処置などをはじめとする多くのオプションを選択可能である。
カテーテルアブレーション(カテーテル焼灼術)のような低侵襲的処置は近年さらに進展し、種々様々な上室性および心室性不整脈を有する患者向けに確立された治療になってきている。不整脈の出現部位を同定し、その後該部位に目標とする焼灼を行うための代表的な低侵襲的処置には心臓組織のマッピングが関与する。その他の低侵襲的処置には、同定された不整脈出現部位への治療の一形態として、細胞または遺伝子など生物学的因子の送達が関与するものもある。該手順は、電気生理学実験室にて行われ、数時間かかり、この間大部分が心臓内における電気伝導のマッピングに費やされる)ものである。
米国特許第5,697,377号明細書 米国特許第5,983,126号明細書 米国特許第6,690,936号明細書 米国特許第5,713,946号明細書 米国特許第5,694,945号明細書 米国特許第5,568,809号明細書 米国特許第5,833,608号明細書 米国特許第5,752,513号明細書 米国特許第6,427,314号明細書
レイモン・ジェーン、「高解像度心臓信号の平均算出のための整列法(Alignment methods for averaging of high resolution cardiac signals)」、IEEE生物医学工学報告書、第38巻第6号、1991年6月版 デイナ・ブルックス、「多重スケール交差相関を使用してのノイズを含む高解像度ECGおよびホルターレコードのための改良整列法(Improved alignement method for noisy high−resolution ECG and Holter records using multiscale cross−correlation)」、IEEE生物医学工学報告書、第50巻第3号、2003年3月版 ガンター・ブレイハート、「高解像度の又は信号平均化心電図記録法を使用しての心室遅延電位の分析のための標準(Standards for analysis of ventricular late potentials using high−resolution or signal−average electrocardiography))」、サーキュレーション、第83巻第4号、1991年4月版 ロングリ・ライオ、「細胞療法は、心筋梗塞後の有害な心室リモデリングを減衰して心機能を向上させる(Cell Therapy Attenuates Deleterious Ventricular Remodeling and Improves Cardiac Performance After Myocardial Infraction)」サーキュレーション、2001年4月10日 ピーター C.スミツ、「虚血性心臓機能不全の一次治療としての自己骨格筋芽細胞のカテーテルによる心筋内注入(Catheter−Based Intramyocardial Injection of Autologous Skeletal Myoblasts as a Primary Treatment of Ischemic heart Failure)」、米国心臓病学会ジャーナル、第42巻第12号、2003 ゲップステイン、「ヒト胚性幹細胞を使用して心臓を再生する…細胞からベッドサイドに(Rgenerating the Heart Using Human Embryonic Stem Cells−from Cell to Bedside)」、IMAJ、第8巻、2006年3月 J.ケブン・ドナヒュー 「ウィルス遺伝子移入による心臓内電気伝導の焦点調節(Focal modification of electrical conducton in the heart by viral gene transfer)」、ネイチャー・メディスン、第6巻第12号、2000年12月 ケブン・ドナヒュー、「同質経壁心房遺伝子移入による心房電気生理の目標調節(Targeted Modification of Atrial Electrophysiology by Homogeneous Transmural Atrial Gene Transfer)」、サーキュレーション、2005年1月25日
従来の三次元マッピング法には接触式マッピングと非接触式マッピングが含まれる。接触式マッピング法では、一つ又は複数のカテーテルを心臓内部に向けて挿入させる。心臓の電気活動の結果生じる生理学的信号は、しっかり安定した状態で該先端が特定の心腔中の心内膜表面と接触していると決定した後にカテーテル遠位端に配置されている一つ又は複数の電極により得られる。通常、位置と電気活動は、心臓の電気的な解剖学的構造の表現を構築するべく、心臓の内周面上の約50〜200点で逐点的に順次測定される。その後、心臓の電気活動の伝播を変性したり、正常な心臓のリズムを回復したりするために治療クールの処置(例えば、細胞組織焼灼を行う、など)を定める基盤として、該作成されたマップを役立たせても良い。電極(複数可)が心内膜表面と接触することによって生理学的信号を比較的正確に且つ信号劣化が最小の状態で得ることが可能になるが、接触式のマッピング法の場合、心臓の電気的な解剖学的構造の表現を構築するのに十分なデータを得るためにはカテーテル(よってその電極)を心臓腔内で比較的多くの位置に動かさなければならないので、接触式のマッピング法は時間のかかる傾向がある。それに加えて、カテーテルの電極(複数可)が心内膜に接触するようにカテーテルを異なる位置に動かすのは、技術的能力が試される面倒な工程である。また、不安定な不整脈状態の発生により、接触式のマッピング法がさらに複雑になる。特に心室の頻脈性不整脈によって、心臓が血液を効率的に循環できる能力を低下しうる。結果として、患者を高速の頻脈性不整脈状態に数分以上維持できず、不整脈中にマッピングする能力が著しく錯雑される。それに加えて、ある程度の不整脈は本来瞬間的または非周期的に発生する。従って、順次的に行われる接触式の方法は、記録された信号が本来周期的であるとの前提に基づくので、接触式の順次的マッピングはこれらの不整脈状態にそれほど適していない。
一方、非接触式のマッピングシステムでは、複合電極カテーテルが、関心のある心室に経皮的に配置される。カテーテルは、一旦心室に入ると三次元形状をなすように展開される。非接触電極により検出された信号および、心室の解剖学的構造および相対する電極の位置についての情報を用いて、該システムは、心室中の心内膜に関する生理学的な情報を
提供する。非接触式マッピング法では、複合電極カテーテルを用いて同時に信号を得ることができ、よって、心内膜表面で電気活動をより速く再構築可能であるが、カテーテルの複合電極が心内膜表面に接していないので、複合電極により得られる信号の劣化により心内膜からの距離に比例して再構築されたマップの精度のある程度の損失が生じる。なおまた、心内膜表面で再構築済みの情報のうち対応するものを決定するべくカテーテルの電極により得られた信号を変換するために必要とされる複雑な変態の計算にも比較的時間がかかる。また、再構築された情報の精度は、カテーテルに取り付けることができる電極の数により束縛される。
一態様においては、次のことを含む非接触式心臓マッピング法が開示される。
(i)複数の、空間的に分布した電極を含むカテーテルを、心内膜表面を有する心臓腔に挿入すること、
(ii)心内膜表面から間を置いて配置されたカテーテルにより心臓腔内の電気活動に応答してカテーテル電極で信号を測定すること、
(iii)心内膜表面に関する電極の位置と測定された信号とに基づいて心内膜表面の複数箇所で生理学的な情報を決定すること。
実施形態には、次の特性のうち一つ又は複数をさらに含みうる。
当該の方法には、カテーテルが心内膜表面から間を置いて配置されている心臓腔内における複数の異なる位置のそれぞれにカテーテルを動かすことと、異なるカテーテル位置のそれぞれに対して、心内膜表面に関係するカテーテル電極の位置を決定すること、および、心臓腔における電気活動に応答してカテーテル電極での信号を測定することとがさらに含まれうる。さらに、心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定は、カテーテル電極の位置と異なるカテーテル位置で測定された信号に基づく。
心内膜表面の複数位置で信号が測定されそこにおける生理学的情報を決定するために用いられるカテーテル位置の数は4箇所以上でありうる。いくつかの実施形態では信号が測定されるところのカテーテル位置の数が6箇所以上になっており、その他実施形態のいくつかでは、信号が測定されるところのカテーテル位置の数が11箇所以上になっている。
一般に、心内膜表面の複数位置での生理学的情報を決定するために用いられる信号を測定するべく、心臓腔の径の約1/3よりも大きな範囲にわたってカテーテルが動かされる。
各カテーテル位置ごとに少なくとも一つの電気的心臓周期に対して信号を測定しうる。
心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、電気的な心拍周期に応じて異なるカテーテル位置で測定された信号を互いに同期化することが含まれうる。
測定された信号は、例えばECG且つ又は心臓内電位図を含む生理学的なデータに基づいて同期化されうる。
さらに、心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、心臓腔内のカテーテルの異なる位置に対してカテーテル電極によりサンプリングされた全ての位置から同期信号が一度に取得されたかのように同期信号を処理することも含まれうる。
さらに、心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、同期信号に変形関数を適用することも含まれうる。変形関数は、心臓腔内のカテーテルの異なる位置の少なくともいくつかから測定された信号を、心内膜表面の複数位置での生理学的情報に関係づける。
さらに、心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、心内膜表面の複数位置で
の生理学的情報を心臓腔内のカテーテルの異なる位置に対して測定された信号に関係づけるために順変態の計算を行ってから順変形を反転することにより変形関数を決定することも含まれうる。順変形の反転には、正則化により決定されていない行列反転を再公式化することが含まれうる。反転には最小二乗法最小化が含まれうる。
心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、異なるカテーテル位置の少なくともいくつかに対応する被測定信号に基づいて、心内膜上の位置の少なくともいくつかの各々に対して生理学的情報の推定値を複数決定することが含まれうる。該方法には、生理学的情報の精度を向上させるために複数の推定値を処理することが含まれうる。また、複数の推定値の処理には、推定値を平均することも含まれうる。なお、平均処理とは、加重平均を行うことでありうる。
心内膜表面に関するカテーテル電極の位置を決定することには、第1の座標系におけるカテーテルの位置を決定するべく例えば電界や磁界、蛍光透視且つ又は超音波を利用することが含まれうる。さらに、心内膜表面に関するカテーテルの位置を決定することには、心内膜表面の表現(心臓腔にカテーテルを挿入前に得られた表現)を第1の座標系で登録することも含まれうる。
複数の電気的心拍周期中に信号が測定されるようにしても良く、そして、異なる心拍周期の信号から派生した情報を組み合わせることにより生理学的情報が(少なくとも部分的に)決定されるようにしても良い。
該組合せ処理には、電気的心拍周期の共通位相に対して、信号から派生した情報を統合することが含まれうる。該統合情報には、複数の電気的心臓周期の共通位相に関して心内膜表面で統合された電位が含まれうる。
異なる心拍周期の信号から派生した情報には、例えば、心内膜表面位置の異なる位置での異なる心拍周期ごとの最大電圧振幅が含まれうる。該組合せ処理には、異なる心拍周期の最大電圧振幅をともに平均することが含まれうる。平均するとは、加重平均を行うことでありうる。
該方法にはさらに、心臓腔にカテーテルを挿入前に患者の心臓腔の心内膜表面の表現を作成することと、カテーテルが心臓腔に挿入された後に心内膜表面に相対するカテーテル電極の位置を決定するために用いられる第1の座標系で心内膜表面の表現を登録することとが含まれうる。
心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定は、カテーテル電極の位置と、異なるカテーテル位置で測定された信号、および登録されている心内膜表面の表現に基づきうる。
心内膜表面の表現の作成には、心臓腔の体積表現(ボリュメトリック画像表現)をセグメント化することが含まれうる。
体積表現は、例えばコヒーレンス断層撮影法(CT:Coherence Tomography)による画像、磁気共鳴映像法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)による画像、且つ又は超音波映像から得られうる。体積表現は、心内膜表面の実質的に閉曲した面の表現にセグメント化されうる。
心内膜表面の表現の作成には、例えば心内膜表面の特徴且つ又は心内膜表面における生理学的情報の計算を円滑に実施するために適用される数値計算技法に基づいて、その表現を複数の面素にパーティション分割することが含まれうる。複数の要素にパーティション分割された表現には、例えば三角形をなす表面メッシュ、四面体を構成する体積内容を含
むメッシュ、且つ又は一般的なデカルト格子などが挙げられる。
さらに、該方法には、第1の座標系内の心内膜表面における複数の点を確立するべく複数位置にてカテーテルを心内膜表面に接触させることが含まれうる。また、該方法には、第1の座標系におけるカテーテルの位置を決定するべく例えば電界、磁界、蛍光透視、且つ又は超音波を利用してカテーテルが複数位置で心内膜表面と接触する際にカテーテルの位置を決定することも含まれうる。登録[の処理]には、第1の座標系に心内膜表面の確立された点をあてはめるべく第1の座標系における表面の表現を翻訳することと配向することが含まれうる。
生理学的情報の決定には、心臓腔にカテーテルを挿入前に、心内膜表面の特徴に関係する情報を処理することが含まれうる。
心内膜表面の特徴に関係する情報を処理することには、カテーテル電極にて測定された信号を心内膜表面での生理学的情報の推定値に変換するための一つ又は複数の変形関数を部分的に計算することが含まれうる。
いくつかの実施形態では、変形関数がそれぞれ、心臓腔内の異なる位置と関連しうる。
いくつかの実施形態では、変形関数がそれぞれ、心臓腔内のカテーテルの異なる位置および配向と関連しうる。
いくつかの実施形態では、変形関数がそれぞれ、心臓腔内のカテーテル電極めいめいの位置と関連しうる。
さらに、生理学的情報の決定には、心臓腔にカテーテルを挿入前に、カテーテルの特徴に関係する情報を処理することも含まれうる。
心内膜表面の特徴は、心内膜表面の事前に取得された表現から派生しうる。
該処理は、心内膜表面の複数位置での生理学的情報を測定された信号から決定する工程を早めるために、心臓腔にカテーテルを挿入前に行いうる。
変形関数は逆変形関数でありえ、この場合一つ又は複数の逆変形関数の部分的な計算には、心内膜表面の複数位置での生理学的情報からカテーテル電極で測定された信号を決定するために一つ又は複数の順変形関数を少なくとも部分的に計算することが含まれうる。ここで、各順変形関数は、心臓腔内の一つ又は複数のカテーテル電極の位置と関連付けられている。さらに、順変形関数はそれぞれ、心臓腔内のカテーテルの配向とも関連しうる。カテーテルは空洞のものでありうる。
一つ又は複数の順変形を少なくとも部分的に計算することには、心内膜表面の形状に関係する情報を処理することが含まれうる。
一つ又は複数の順変形を少なくとも部分的に計算することには、カテーテル上の電極の分布に関係する情報を処理することが含まれうる。
一つ又は複数の順変形を少なくとも部分的に計算することには、少なくとも心内膜表面の形状に関係する情報に基づいて該一つ又は複数の順変形を完全に計算することが含まれうる。
測定された信号から生理学的情報を決定することには、信号を測定するために用いられるカテーテルの位置と関連する順変形関数を反転させることと、測定された信号に反転した順変形関数を適用することが含まれうる。順変形の反転には、正則化により未決定の行列反転を再公式化することが含まれうる。さらに、反転する処理には、最小二乗法最小化を行うことが含まれうる。さらにこの反転にはティーホノフ正則化が含まれうる。
一つ又は複数の変形関数は、一つ又は複数の行列として表現することができる。
さらに、該方法には、心内膜表面の位置の少なくともいくつかに対して決定された生理学的情報のある程度の空間解像度の度合いを示す値を計算することも含まれうる。
計算された値は、心内膜表面の複数位置で生理学的情報をカテーテル電極により測定された信号に関係付ける変形関数から(少なくとも部分的に)派生しうる。
さらに、該方法には、心内膜表面の少なくとも一部分を、計算された解像度値の少なくともいくつかを含むように表示することも含まれうる。
さらに、該方法には、複数の表面位置で決定された生理学的情報の少なくともいくつかを表示素子でオーバーレイする(重ねて表示させる)ことも含まれうる。
さらに、該方法には、複数の表面位置で決定された生理学的情報のうち選択された部分集合を含むように心内膜表面の少なくとも一部分を表示することも含まれうる。ここでいう部分集合は、該計算された解像度値の少なくともいくつかに基づいて選択されている。
決定された生理学的情報には、心拍周期の異なる位相における心内膜表面の複数位置での電位値が含まれうる。
さらに、該方法には、心拍周期中に心内膜表面の複数位置で電気活動の周波数描写に電位値を変換することの周波数依存特性を決定することも含まれうる。
さらに、該方法には、心内膜表面の少なくとも一部分を、心内膜表面の対応する位置における周波数表現についての情報を含むように表示することも含まれうる。
周波数表現についての情報には、周波数表現における優位周波数を示す情報が含まれうる。
さらに、該方法には、心臓腔の治療を導くために、決定された生理学的情報を用いることも含まれうる。
該治療には、心臓の選択された領域の一つ又は複数を焼灼することが含まれうる。
該治療は、細胞療法や遺伝子療法、またはその他の生物学的因子の適用を含みうる。
さらに、該方法には、治療後にカテーテル電極信号の計測と生理学的情報の決定を繰り返すことと、治療に応えて該決定された生理学的情報がどのように変化したかについての情報を含む効果(相違)マップを表示することも含まれうる。
決定された生理学的情報には、等しい電位値または選択された範囲内にある電位値を有する心内膜表面の複数位置の隣接する位置の各集合に対応する等電位線または等電位帯が含まれうる。さらに該方法には、等電位線の少なくともいくつかを含むように心内膜表面の少なくとも一部分を表示することも含まれうる。該表示には、心拍周期の異なる位相ごとに等電位線を提示することが含まれうる。
決定された生理学的情報には、心拍周期の異なる位相における心内膜表面の複数位置での電位値が含まれうるし、且つ、該方法には、電位値についての情報を含むように心内膜表面の少なくとも一部分を表示することがさらに含まれうる。電位値についての情報の表示には、例えば、心内膜表面の異なる位置に関する心拍周期中の最大電位、且つ又は心内膜表面の異なる位置に関する心拍周期中の電位の二乗平均が含まれうる。
決定された生理学的情報には、心内膜表面の異なる位置ごとの活性化時間が含まれうる。さらに該方法には、活性化時間を示す表現を含むように心内膜表面の少なくとも一部分を表示することも含まれうる。共通する活性化時間範囲内の活性化時間は、共通する色ま
たは可視化指標によって表示される。
生理学的情報が決定される心内膜表面上の位置の数は、カテーテル上の電極数の10陪を上回る数でありうる。
カテーテルは、信号を測定時に心内膜表面から約3ミリメートルを越える間隔で配置されうる。
さらに該方法には、複数の表面位置で決定された生理学的情報の少なくともいくつかを含むように心内膜表面の少なくとも一部分を表示することも含まれうる。
測定された信号は電気信号でありうる。測定された信号は電位信号でもありうる。
生理学的情報は電気情報でありうる。生理学的情報には、心臓周期の一つ又は複数の位相のそれぞれにおける心内膜表面の複数位置での電位および、それから派生するいかなる情報(等電位マップ、最大またはRMS電圧マップ、活性化時間マップ、そして周波数マップ、など)が含まれうる。カテーテル電極の位置の決定には、例えば心臓腔内のカテーテルの位置且つ又は配向についての情報を測定することが含まれうる。カテーテル電極の位置の決定は、さらにカテーテル上での電極の分布についての情報に基づきうる。例えば心臓腔内のカテーテルの位置且つ又は配向についての情報の測定には、心臓腔内の一つ又は複数のカテーテル電極の位置を測定することが含まれうる。
カテーテル電極の位置の決定には、心臓腔内の各カテーテル電極の位置を直接に測定することが含まれうる。別の態様においては、心内膜表面を有する心臓腔に挿入されるように構成されたカテーテルを含むシステムが開示される。該カテーテルは複数の空間的に分布した電極を含んでおり、該複数の電極は、心内膜表面から間を置いて配置されたカテーテルにより心臓腔における電気活動に応答して信号を測定するように構成されている。また、該システムは、心内膜表面に関する位置と測定された信号とに基づいて心内膜表面の複数位置で生理学的情報を決定するように構成された処理ユニットを含む。特定の実施形態における該システムは、心内膜表面に関するカテーテル電極の位置を決定するべく処理ユニットと交信するように構成されたセンサ素子をさらに含みうる。該システムの実施形態には、該方法関して上述される特性のいずれかに対応する特性のいかなるものを含みうる。例えば、処理ユニットは、上記の処理/決定タイプ法階段の一つ又は複数を遂行するように構成(例えば、プログラム)できる。さらなる態様では、コンピューター命令を格納するための機械可読媒体に備わるコンピュータ・プログラム製品が開示される。該コンピューター命令は実行されると、プロセッサを基盤とする機械に、心内膜表面から間を置いて配置されたカテーテルにより心臓腔における電気活動に応答して電極により測定された信号を、心内膜表面を有する心臓腔にカテーテルが挿入された後、カテーテルの空間的に分布した複数の電極から受け取らせるものである。また、該コンピューター命令は、プロセッサを基盤とする機械に、心内膜表面に関する位置と測定された信号とに基づいて心内膜表面の複数位置での生理学的情報を決定させるものでもある。該システムの態様と同様に、コンピュータ・プログラム製品の実施形態には、該方法関して上述される特性のいずれかに対応する特性のいかなるものを含みうる。添付の図面および以下の記載によって、本発明の一つ又は複数からなる実施形態の詳細について説明する。本発明のその他の特性および課題ならびに利点は、本明細書および図面ならびに特許請求の範囲から明らかに理解できるはずである。
概要
心室中の心内膜表面に関する生理学的情報の非接触式マッピングおよび提示のためのシステムと方法がここに開示されている。特定の実施形態における非接触式マッピングシステムは、心室内の複数位置に変位される可動型複数電極カテーテルを用い、それによって
、単一のカテーテルにより得られるデータの解像度および精度を向上させるものである。ユーザに提供される生理学的情報をアセンブリ言語に翻訳する再構築工程を早めるために、生データの信号計測と取得に着手する前に変換関数が計算される。
図1は、非接触式システム100の代表的な実施形態の概略図を示す。非接触式システム100は、空間的に分布した複数の電極を有する可動型カテーテル110を含んでいる。
非接触式マッピング手順の信号取得段階中、カテーテル110が中に挿入されているところの心室内の複数位置に該カテーテル110が変位される。
いくつかの実施形態において、カテーテル110の遠位端部には、カテーテルの上にいくぶん均一に分布されている複数の電極が備えられている。例えば、三次元のオリーブ様の形に沿ってカテーテル110に電極を取り付けうる。心臓の内部にある間に所望の形状に電極を配備できる装置に電極を取り付け、カテーテルを心臓から取り除く時に電極を引き込み式で格納するようにしても良い。心臓において三次元形状での配備を可能にするために、バルーン上にまたは、ニチノールなどの形状記憶材に電極を取り付けても良い。カテーテル110が動かされるそれぞれの位置にて、カテーテルの複数電極は、心臓腔における電気活動から生じる信号を非接触式に得る。よって、カテーテル110が動かされる位置のそれぞれにおいて、心内膜表面から間を置いてカテーテルが配置される。従って、心臓の電気活動に関する生理学的なデータを再構築してユーザ(医師且つ又は技師など)に提示する際には、複数位置で得られる情報に基づいて行うようにしても良く、またそれによって心内膜表面の生理学的挙動をより正確に且つより忠実に再構築して提供することが可能になる。心室における複数のカテーテル位置で信号を得ることによって、カテーテルが、「メガ・カテーテル」(電極の有効数と電極スパンが、信号の取得が行われる位置の数とカテーテルが有する電極の数の積に比例する)として効率的に機能できるようになる。
心内膜表面での再構築済み生理学的情報の質を高めるために、いくつかの実施形態ではカテーテル110が、心室内において4箇所以上の位置(例えば、6箇所以上、11箇所以上、もしくは51箇所以上の位置)に動かされる。さらに、カテーテルが動かされる空間的範囲は、心臓腔の径の1/3よりも大きい(例えば、心臓腔の径の35%、40%、50%、もしくは60%よりも大きい)ものでありうる。それに加えて、以下さらに詳しく説明されるように、いくつかの実施形態において、再構築される生理学的情報は、心臓が数回拍動する間に(心室内におけるカテーテル位置の一箇所または数箇所のいずれかで)測定された信号に基づいて計算される。再構築される生理学的情報が、数回拍動する間における複数の計測に基づく場合には、心臓周期のほぼ同じ位相で計測が行われるように該複数の計測が互いに同期化される。表面のECGまたは心臓内電位図などの生理学的データから検出された特性に基づいて、数回拍動する間における信号の計測を同期化しうる。
非接触式マッピングシステム100は、非接触式マッピング手順に関する動作のいくつか(心内膜表面での生理学的情報を決定する再構築手順を含む)を行う処理ユニット120をさらに含んでいる。より詳しく後述されるように、心内膜表面での生理学的情報(例えば、電位)の再構築には、カテーテルの複数電極により測定されて得られた信号と心内膜表面の生理学的挙動(例えば、電位挙動)との間の関係を定義する偏微分方程式の解に対応する変換関数の計算が含まれる。ここで「順」変換または「順」変形とは一般に、心内膜表面の異なる位置での電気活動に基づきカテーテル電極により測定された信号を提供する数学的操作のことである。通常、カテーテル電極よりも多くの心内膜表面位置が存在するので、この順変形は一般に「Well Defined」である(それの定義における公理の組が自己矛盾をはらまぬ状態にある)。ここで「逆」変換とは一般に、この順変
形の数学的反転の一種で、カテーテル電極で測定された信号に基づき心内膜表面の異なる位置における電気活動についての情報を提供するために行われるものを指す。また、再構築工程には、複数電極で得られた信号に基づき心内膜表面での生理学的情報を決定するための正則化法に基づいた逆変換関数の計算も含まれる。
よって、再構築工程に関与する計算量は相当なものである。
しかるべく、非接触式マッピングシステム100により行われる計算操作を早めるために、処理ユニット120は、一般に心室内にカテーテルを挿入前、且つ又は、カテーテルの電極による信号の取得が始まる前に、再構築工程を円滑に実施するために実時間で利用できる変形関数を計算できるようになっている。より具体的に、生データに適用される変形関数は、個々の変形成分によって表わすことができる。個々の変形成分の例としては、例えば、心室の解剖学的構造に対応する変形成分、且つ又はカテーテルの幾何学的形状などが挙げられる。よって、心内膜表面の生理学的情報を作成するための再構築手順を早めるために、処理ユニット120は、心室の幾何学的形状且つ又はカテーテルの幾何学的形状に関する変形関数を計算し、そして、当該の成分は、全体的な逆変換関数を形成するために、再構築工程中にその他の変形関数と組み合わせられる。
生データに適用される全体的な逆変換は、心室にけるカテーテル110の特定の位置(例えば、位置且つ又は配向)に依存するので、いくつかの実施形態では、複数のカテーテル且つ又は電極の位置に対して順変換を事前に計算することにより再構築工程をさらに早めることができる。対象となりうるカテーテル且つ又は電極の位置に対して順変態を個々に計算しなければならないので、事前に計算される順変態の数は、心室内でカテーテル110が配置される可能性のある位置の数に関係することになる。
カテーテル110が一旦挿入されて心室における特定の位置に変位されると、信号取得段階前に計算できなかった当該の変形成分を実時間で計算してから統括的な変換関数(複数可)を得るべく当該の成分を前処理された変形成分の適切なものと組み合わせることによりマッピング手順を迅速に行うことができる。当該の統括的な変形関数は、取得された生データに適用され、それによって逆の再構築操作が行われる。
また、前処理された部分的な変形関数の計算に加えて、処理ユニット120はカテーテル登録手順も行う。心室に挿入されたカテーテル110の位置は、感知・追跡システムにより確立されるカテーテルの座標系に関してカテーテル且つ又はそれの複数電極の三次元空間的座標を提供する従来の感知・追跡システム(図示せず)を使って決定することができる。但し、心内膜表面上でマッピング手順を行い生理学的情報を再構築するためには、カテーテル110の座標系を心内膜表面の座標系と整列させる必要がある。
以下さらに詳述されるように、処理ユニット120(またはシステム100の他の何らかの処理モジュール)は、カテーテルの位置の三次元空間的座標を、心内膜表面の座標系によって表現された座標に変換する(または、その逆に心内膜表面の座標系によって表現された座標を、カテーテルの位置の三次元空間的座標に変換する)座標系変形関数を決定する。後述からも明らかになるように、処理ユニット120は、該システム100のオペレータ且つ又はその他の個人(例えば、医師)に該情報の有用な特性を抽出且つ表示するべく、再構築された生理学的情報についての後処理操作も行う。
図1にも示されているように、非接触式マッピングシステム100は、画像取得・準備モジュール130を含んでいる。取得・準備モジュール130は、心内膜表面の表現を得るために、セグメント化という手順を用いて、胴体の体積画像(例えば、スキャナー機器により撮影されたCT、MRIまたは超音波映像)を受け取って処理する。カテーテル110の複数電極により得られたデータのマッピングは、心内膜表面の表現を参照して行わ
れる。一旦境界表現が体積データから構築されると、境界且つ又は心室の体積表現は、諸要素(数あるなかでも特に、マッピングを行うために用いられる数値計算技法のタイプ並びに、取得された体積画像からのセグメント化工程中に決定された心内膜表面の全体的な幾何学的形状と特徴に準じてその特徴が決定される諸要素)にパーティション分割される。さらに図1に示されているように、カテーテル110の複数電極により得られた信号は、信号処理モジュール140を介して処理ユニット120に受け渡される。
信号調整モジュール140は、カテーテル110から通信された信号を受け取り、その信号が処理ユニット120に転送される前にそれの信号拡張操作を行う。信号調整用ハードウェアは、各電極により測定された心臓内の電位を増幅し、フィルターし、かつ継続的にサンプリングするために必要とされる。一般に、心臓内の信号は、中間値が数ミリボルトである60mVの最大振幅を有する。
いくつかの実施形態における信号は、所定の周波数範囲(例えば、0.5−500Hz)で帯域通過フィルターされ、アナログ/デジタル変換器(例えば、1kHzにて15ビットの解像度)によりサンプルとして抽出される。同室内にある電気機器との干渉を回避するために、電源(例えば、60Hz)に対応する周波数を取り除くために信号をフィルターすることが可能である。例えばスペクトルの等化や自動利得制御など、その他のタイプの信号処理操作も実施されうる。結果として得られる被処理信号は、モジュール140により、さらに処理のための処理ユニット120に転送される。いくつかの実施形態における信号調整モジュール140は、専用のプリント回路板上の一体型部品の使用により実施される。その他の実施形態における信号調整作業のいくつかはサンプリング後にCPU、FPGAまたはDSP上で実施されうる。安全規定に適合するように、信号調整モジュールは高電圧電源から絶縁される。
図1に示される処理ユニット120、画像取得・準備モジュール130は、複数のアプリケーションに適したコンピューター且つ又はその他のタイプのプロセッサを基盤とする装置をはじめとするプロセッサ基盤の装置である。かかる装置には、揮発性メモリ要素および不揮発性メモリ要素、ならびに入・出力機能性を可能にする周辺機器を含み得る。かかる周辺機器は、例えば、関連する内容を接続されているシステムにダウンロードするためのCD−ROMドライブ且つ又はフロッピー(登録商標)・ドライブ、またはネットワーク接続が挙げられる。また、かかる周辺機器は、めいめいのユニット/モジュールの一般的な操作を可能にするコンピューター命令を含むソフトウェアをダウンロードするのにも使用しうるし、また、図1に示される各種システムおよび装置に関して以下より詳細に記載されている様態で操作を行うべくソフトウェアで実施されるプログラムをダウンロードするのにも使用しうる。あるいは、各種のユニット/モジュールを、これらのユニット/モジュールの機能を実行できる単一のプロセッサを基盤とするプラットフォーム(コンピュータシステム)で実施しても良い。それに加えて、又はその代わりとして、例えば、デジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、混合信号集積回路などの処理用ハードウェアを用いることにより、処理ユニット120且つ又は画像取得モジュール130の且つ又は信号調整モジュール140により行われる手順の一つ又は複数を実施しうる。一般に、信号調整モジュール140は、DSP,CPUおよびFPGA装置により提供される信号処理能力をもって増補されたアナログ・ハードウェアを用いて実施される。
図1にさらに示されているものとして、非接触式マッピングシステム100はまたプリンタ150且つ又は表示素子170など周辺機器を含んでいる。それらの両方は処理ユニット120に相互接続される。それに加えて、非接触式マッピングシステム100は、体積画像、電極により測定された生データおよびそれから計算された心内膜の合成表現、マッピング手順を早めるために部分的に計算された変形、心内膜表面に対応する再構築され
た生理学的情報などを含む各種の相互接続されるモジュールにより得られたデータを格納するために用いられる記憶装置160を含んでいる。
図2は、非接触式マッピング手順200を行う過程において該システム100により行われる各種手順の最上位描写を提供するフローチャートである。図示の如く、該システム100は、初期段階において202で患者の心臓を表す心臓体積表現を得る。かかる体積表現としては、患者の心臓の幾何学的形状および特徴に関するデータを提供する高解像度CT,MRI且つ又は超音波層別映像が挙げられる。体積データは、非接触式マッピング手順を構成するその他の手順が始まる前に取得しうる。例えば、カテーテル挿入手順を行う数日または数週間前に体積データを得るようにしても良い。体積データはまず図1に示される画像取得・準備モジュール130により受け取られるが、その後記憶装置160などの記憶モジュールに格納して、後の処理に使用できるようにしても良い。
一旦体積データが得られると、画像取得・準備モジュール130は、取得されたデータを用いて204にて体積をセグメント化し、カテーテルが挿入されることになる特定の心室に関する表面の表現を提供する。セグメント化された体積は、数値計算を可能にするために閉じられ、面素(幾何学的形状且つ又はその他の特徴が、表面表現の幾何学的形状や、順変換関数を作成する際に使用される数値計算手順のタイプなどに基づく面素)を含むようにパーティション分割される。いくつかの実施形態では、心臓の周期の異なる位相にそれぞれ対応する複数の心内膜表面の表現が作成されうる。例えば、収縮期と拡張終期などの心臓周期における複数の位相での心内膜表面に関する別の表現を作成しうる。その後、生理学的情報のそれ以降の再構築が、心臓周期のどの位相で生データが得られたかに応じて、適切な心内膜表面表現に関して行われうる。
カテーテルの幾何学的形状および心内膜表面の表現が決定された、若しくは概知となった上で、非接触式マッピング手順によって、206で、変形関数が事前に計算されるので、後に生理学的情報の再構築中に素早く読み出せるようになり、よって、実時間での再構築変形の計算を早められる。事前処理された変形関数は、参照テーブル(ルックアップテーブル)の形態や、行列の形態、機能表示、またはそれ同等の形態で表現および格納される。個々の変形関数は、電極且つ又は可動型カテーテル110が非接触式マッピング手順中に移動されうる心室内の複数位置の一つ又は複数に対応する。その他の事前に計算された変形は、生理学的情報が決定されるところの様々な心臓形状に対応しうる。事前に計算された変形関数は、処理ユニット120の一部を形成する局部記憶モジュールに格納するようにしても良いし、またはその代わりに記憶装置160に格納するようにしても良い。
カテーテル110は、208で調べられる心室に挿入される。一般に、カテーテル110は、心室につながる血管の適したものを介して心室に挿入される。いくつかの実施形態において、カテーテル110の電極は、極力妨害のない状態で円滑にカテーテル110を心室内に導入できるように緻密な構成に小さく束ねられる。一旦心室内部に挿入されると、カテーテルの電極は、カテーテル110に相対して指定された電極配置に配備される。マッピング手順200中に、可動型カテーテル110が心室内の複数位置に変位され、そこで、カテーテルの電極は、心臓の電気活動の結果生じる信号(例えば、電気的信号)を得て記録する。
上述の如く、心内膜表面の生理学的情報を再構築するために、該システム100は、カテーテル110の複数電極により得られた信号に再構築変形を適用する。取得された信号に適用された変形は、(その他数あるなかでも特に)心内膜表面に相対するカテーテルの位置に依存するので、マッピング手順ではまず心内膜表面の座標系に関係するカテーテル110の位置が確立される。
しかるべく、208で、非接触式マッピングシステム100は、カテーテル110の物理的な位置を突き止めるために用いられる感知・追跡システムに対応する三次元座標系におけるカテーテルの三次元位置を決定する。いくつかの実施形態ではカテーテル110に相対する電極の位置が固定され概知のものとなっているので、決定する必要のある唯一の情報は、感知・追跡システムにより確立された三次元空間におけるカテーテル110の位置と配向性だけである。特に、カテーテル110に取り付けられるセンサは、カテーテルの位置と配向を決定するために使用しうる。その他の実施形態ではカテーテルに相対する様々な電極の位置と配向が異なりうるので、このような実施形態においては、様々な電極に隣接して取り付けられたセンサを使用して、または電気インピーダンスを用いて電極位置を特定する方式を用いることによって、カテーテル且つ又はその電極の位置の決定を円滑に実施するようにしても良い。
カテーテルの位置を三次元で決定するために採用される感知・追跡システムは、例えば電磁放射線による追跡法に基づいたものを使用することも可能である。この方法では、電磁界が患者の体外に生成される。センサを形成する直交磁界を検出するために適応された小型コイルの集合が、生成された磁界を検出するためにカテーテル内部に配置される。処理ユニットは、複数のコイルにより検出された信号の振幅および位相情報に基づいてセンサの位置と配向を決定する。その代わりに、且つ又はそれに加えて、感知・追跡システムは、超音波、インピーダンスまたは蛍光透視による追跡法に基づくものでありうる。インピーダンスおよび蛍光透視による追跡の場合、専用センサを必要とせずに、電極位置を突き止めることが可能である。インピーダンスの場合には、電界生成機構により生成された電位が、既存の電極により検出される。蛍光透視の場合には、電極且つ又はカテーテル上の不透明マーカーを同定且つ追跡する画像処理方式により電極位置を検出しうる。
以下、より詳しく記載されているように、登録手順を行うために心内膜表面上の様々な位置でのカテーテル110の三次元座標が決定される。よって、210に示される如く、オペレータは、カテーテル110またはそれの電極の一つ又は複数が心内膜表面に接触したと決定されるまでカテーテル110を心室内部で動かす。心内膜表面上におけるその時点でのカテーテル(且つ又はのそれの電極)の三次元空間的座標が決定される。その後、オペレータは心内膜表面上におけるさらなる別の点にカテーテル110を動かし、採用された感知・追跡システムに相対するカテーテル110の三次元座標が、該心内膜表面上におけるさらなる別の点で決定される。当然のことながら、感知・追跡システムの座標系に相対する心内膜表面上の様々な点でのカテーテルの三次元空間的座標は分かっているが、心内膜表面上における該点の恒等(identity)は不明であることは理解されることであろう。言い換えると、カテーテルが心内膜表面に接触する点の(心内膜表面の座標系に関する)実際の座標と恒等の両方が不明である。
しかるべく、カテーテルの三次元空間的位置に対応する心内膜表面上の点の恒等を決定し、よって心内膜表面の座標系とカテーテルの三次元座標系との間の関係を決定するためには、2つの座標系が整列しなければならない。2つの座標系を整列させるために、210で決定された心内膜表面におけるカテーテル110の三次元位置が204で決定された心内膜表面上の点にもっとも一致するところの座標系変形が、212で計算される。言い換えると、心内膜表面の一般的な幾何学的形状が(204での計算から)分かっており、且つ、カテーテル110が心内膜表面に接触する数点での三次元座標も同様に分かっているので、カテーテルの三次元座標系にて表わされる心内膜点が体積データから決定された心内膜表面表現と合同になるようにするのに最適な変形が整列手順によって決定される。カテーテルの三次元座標系と心内膜表面の表現を整列させるには、最小二乗誤差計算手順且つ又はその他の数学的な回帰法や曲線適合法などの最適化技法が用いられる。いくつかの実施形態において、2つの座標系を整列させる変形関数の決定は、三次元空間的座標が決定された心内膜表面上のわずか3点に基づいて行うことができる。所望の精度および着
手可能な許容計算量によっては、より多くの点を使って変形関数を計算しても良い。
いくつかの実施形態において、カテーテル110の三次元位置を決定するために用いられる座標系と心内膜表面の座標系を整列させるためのカテーテル登録手順は、3つの変位パラメータ(x0,y0,z0)と3つの回転パラメータ(θ0,φ0,ψ0)を含む6つのパラ
メータ変形をもたらす。その後、これらの変形パラメータは、心内膜表面の座標系で表されたカテーテルの位置を得るべくカテーテルの空間的座標を決定するために用いられる感知・追跡システムにより得られた三次元空間的座標に適用される。
心内膜表面に相対するカテーテルの位置の決定とは別に事前に取得された体積データに基づいて心内膜表面の表現を生成することによって、逐次接触マッピングでは達成不可能な精度で心内膜表面の表現を提供できるので有利である。
一旦登録手順は行われると、214でカテーテル110が、カテーテルの複数電極による計測の第一弾が行われる心室内の第1の位置に動かされる。心室内におけるカテーテルの動きと位置の制御は、カテーテル110を操作するオペレータによりマニュアル操作で行われる。またその代わりとして、磁気によるナビゲーション(例としてミズーリ州セントルイス市内Stereotaxis Inc.を参照)またはロボットによるナビゲー
ション(例としてHansen Robotics Inc.を参照)など技法を使用す
ることにより、心室内のカテーテル110の動きを自動化しても良い。関心度が他の位置よりも高いと考えられる位置でデータを収集するようにあらかじめ定められた変位路に沿ってカテーテルを移動させるためにカテーテル操作を採用しても良い。例えば、いくつかの実施形態では、異常な心臓活動が存在すると分かっている心室の領域において指定された変位周期でカテーテル110を動かしても良い。
その後、カテーテル110の且つ又はそれの複数電極に前述の技法の一つを用いてカテーテル110の三次元位置が決定され、それによって、カテーテルの座標系におけるカテーテルの空間的位置を提供される。その後、心内膜表面に相対する(すなわち、心内膜の座標系における)カテーテル110且つ又はそれの複数電極の座標が、212で決定された座標系変形関数を用いて計算される。
それの現在の位置で、カテーテル110の複数電極は、216で心臓の電気活動の結果生じる信号を得る。いくつかの実施形態における該信号は電気的信号(例えば、電位、電流、磁気、など)である。
非接触式マッピングシステム100は、218で、心内膜表面での生理学的情報を再構築するべく該取得された信号に適用されることになる再構築変形関数と生成する。生成された再構築変形関数は、その他数あるなかでも特に206で決定されたものである事前に計算された再構築変形関数および心内膜表面に相対するカテーテルの位置に基づく。よって、いくつかの実施形態では、生のデータが得られるカテーテル110の各々すべての位置に対して、再構築された生理学的情報の対応する一集合が計算される。
さらに図2に示されるように、心内膜表面で再構築済みの生理学的情報を得るべく心臓の電気活動に対応する生データが得られ、記録され、再構築変形関数(複数可)を用いて処理された後に、220で、カテーテル110を移動すべき心室内にさらなる別の位置がまだ存在するかどうかについての決定がなされる。カテーテル110を移動すべき心室内にさらなる別の位置がまだ存在する場合、マニュアル操作または自動制御を用いてカテーテルが心室における次の位置へと動かされ、図2中のブロック214−218に関連して記載される操作が当該の次の位置を対象に行われる。
またその代わりとして、いくつかの実施形態において、生理学的情報の複合・合成された一集合を、再構築された情報のうち再構築された生理学的情報の部分の複数の集合から選択することにより生成することができる。後述からも明らかになるように、再構築された生理学的情報の特定の一部分または一集合に関する再構築された情報の質を示す解像度マップに基づいて再構築された情報のどの部分を使用するかを選択できる。生理学的情報の複合された一集合を再構築するためにデータの適切な部分を選択する際にその他の基準および技法を使用しうる。
またその代わりとして、いくつかの実施形態において、一つ(または複数の)複合再構築変形関数が計算され、得られたデータの実質的部分に基づいて再構築済み生理学的情報の複合合成された一集合を生成するべく、複数位置で得られた生データにまとめて適用される。
かかる変形関数は、上記参照される「メガ・カテーテル」(電極の有効数と電極スパンが、信号の取得が行われる位置の数とカテーテルが有する電極の数の積に比例する)に対応する「メガ変形関数」を表わす。当該の状況下において、複合再構築変形関数の生成は、データがカテーテルの複数位置から収集されるまで延期される。
またその代わりとして、いくつかの実施形態では、「メガ変形関数」および「メガ・カテーテル」が、所与の該当する計測窓を考慮するように継続的に更新されうる。この計測窓は、新規の計測が到着するとその時間窓の前に得られた計測がそれによって置き換えられるような一定数の計測でありうる。これは絶えず更新する移動平均をもたらす。
いくつかの実施形態において、心拍周期を通じて信号(例えば、単一拍動心臓周期の複数の異なる位相のそれぞれにおいて各カテーテル電極で計測をなすことができる)が測定される。
しかし、さらに別の実施形態では、一つ又は複数の心臓拍動で得られた計測に基づいて、生理学的情報の再構築された一集合が計算される。後者の状況では、カテーテルが特定の位置に動かされ、心臓が数回拍動する間に複数の集合の生データを得る。取得されたデータは平均されて、再構築工程がその平均された値に適応される。後述からも明らかなように、心拍数B(すなわち計測数B)でデータが得られると、√Bに比例するSN比の向上が達成される。
心臓周期のほぼ同じ位相で測定データが得られることを確実にするため、一般に、測定操作のタイミングが同期化される。
データを収集する必要があるさらなる別の位置が心室内に存在しないと220で決定されると、非接触式マッピングシステムは、臨床的に有用なデータを抽出するべく、再構築された生理学的情報についての後処理操作を222で行う。上で述べたように、いくつかの実施形態における非接触式マッピングシステム100は、生理学的情報の複合且つ再構築された一集合を作成する。後処理操作が、当該の状況下では、再構築された生理学的情報の複合された一集合に行われる。
カテーテル110を動かした心室中の各位置で収集された生データに対して生理学的情報の複数の再構築された集合を非接触式マッピングシステム100が作成するようないくつかの状況においては、再構築された生理学的情報の一つ又は複数集合に対して個々に後処理操作が行われる。いくつかの実施形態における後処理としては、再構築された電位をユーザに出力(例えば、表示)するための形式を選択することだけが関与しうる。その他の実施形態において、さらなる別のタイプの生理学的情報を提供するために、再構築された電位の実質的にさらなる数学的操作が後処理に関与しうる。
その後、再構築された生理学的情報且つ又は後処理済データの集合が224で表示される。再構築された生理学的情報であろうが、または222で行われた後処理の結果生じるいかなるデータであろうが、204で生成された心内膜表面を表す三次元グラフィック描写にその情報が表示される。
生理学的情報の再構築された集合(複数可)になされた後処理操作のなかには、解像度マップの生成を含むものもいくつかある。かかる解像度マップは、心内膜表面上の各点での生理学的情報の空間解像度を示し、それによって、心内膜表面上の様々な点における情報の信頼性および精度の指標を提供する。また、解像度マップに対応する再構築済みの生理学的情報の個々の集合且つ又は取得された生データの個々の集合と関連することにより、再構築された生理学的情報の複合された集合を形成するためにも解像度マップを使用しうる。その後、データが選択された集合に対応する解像度マップにより示されるように信頼性または精度は十分に高い取得生データ(または再構築情報)の部分を選択することにより合成された複合の集合が形成される。以下に一覧されるモードのあらゆるものを含む如何なる形の後処理操作と共に解像度マップを使用しうる。厳密に言えば、解像度マップについての情報は、再構築された電位データを得る前に決定することができる。但し、かかる情報は通常少なくともいくつかの電位が再構築された後にユーザに提示されるので、ここでは一般に解像度マップの生成および表示を「後処理」とする。
その他行いうる別のタイプの後処理操作としては、等電位マップの生成が挙げられる。
特に、再構築された生理学的情報が電位に関する場合には、再構築された電位を、三次元の心内膜表現上で色分けしたり、重畳したりしうる。等電位マップは、一拍または複数拍の心拍間にサンプリングされたデータ集合の各々すべてに対して計算された再構築された電位である。
なおも別のタイプの後処理操作としては、タイミング・マップ(活性化時間マップなど)の生成が挙げられる。タイミング・マップは、心臓の電気活動の時間依存挙動についての情報を提供する。特に、活性化マップは、心内膜表面上の特定の点がどの時点に電気活動の変化を経験するかを示す。例えば、活性化マップは、心内膜表面上の特定の細胞が脱分極を経験した時点を同定することもできる。別のタイプのタイミング・マップとしては、特定の細胞組織の活性状態になっている時間量が検出される等期間マップが挙げられる。一拍または複数拍の心拍間に、再構築された電位からタイミング・マップを計算しうる。心内膜表面の表現上の一点又は複数点に対してタイミング・マップを決定且つ表示しうる。
222でその他行いうる別のタイプの後処理操作としては、電圧マップの生成がある。電圧マップは、所与の部位における電圧振幅の特徴を表示するために用いることができる。電圧マップは、一拍または複数拍の心拍間に、再構築された電位から計算しうる。心内膜表面の表現上の一点又は複数点に対して決定および表示される有用な電圧マップ情報としては、最大振幅、または二乗平均電位値が挙げられる。
別のタイプの後処理操作としては相違マップの生成がある。相違マップは、不整脈の症状を向上させるために患者に施される臨床治療処置(例えば、焼灼)の有効性に関する情報を提供する。相違マップは、特定の臨床治療処置の実施前後に生成された二つ以上の電圧マップから反映される心臓の電気的な挙動を比較する。
その他のタイプの後処理操作としては周波数マップの生成がある。周波数マッピング、さらに概して言うと分光分析は、細動中に高周波活動を伴う局部を心内膜表面上において同定するために用いられる。周波数マップは、一拍または複数拍の心拍が行われる時間間隔など特定の時間間隔を通じて、複数集合の再構築された情報を得ることにより計算され
る。その後、取得された生データは、当該データの周波数を示す表現を得るために用いられる。続いて、該周波数表現からの特定の情報(例えば、優位周波数成分)が同定され、当該同定された情報が表示されうる。
その他のタイプの後処理情報も同様に222で行っても良い。ここで、上記される様々な手順についてさらに詳しく説明する。
境界構築手順
上記の如く、コヒーレンストモグラフィー(CT)映像法、磁気共鳴映像法(MRI)、且つ又は超音波に基づく映像技術などの技法を使用して得られる体積データを事前に取得して、その体積データから生成される心内膜表面の表現用に生理学的情報が再構築される。
体積データは、信号の取得且つ又は再構築手順を行う前にあらかじめ取得しておくことができるし、或いは、これらの手順のいずれを行うのと実質的に同時に得ることもできる。より詳細にわたり後述される如く、好ましい実施形態においては、例えば、カテーテル110がマップされることになっている心室に挿入される前に、画像スライス(層別画像)として表わされる体積データを得ることができる。
体積データの取得は、得られた体積画像を画像取得・準備モジュール130に提供するCTや超音波またはMRIスキャナーなど、従来の走査機器を用いて行われる。好ましい実施形態において、得られた画像は通常、工業規格(例えば、DICOMフォーマット)で格納および転送される。
境界構築手順を円滑に実施するために、カスタマイズされたプロトコルで体積画像を得るようにしても良い。得られた体積画像から心内膜表面(時には「血液〜心内膜の境界」と指呼される)の同定および構築を円滑に実施するため、画像取得中に造影剤を身体に注入するようにしても良い。撮像時間中に造影剤が心内膜に存在するように注入時間を設定する。
撮像中に心臓が収縮するので、付加的な生理学的情報は取得時間中に記録され画像データと合併される。EKGおよび呼吸位相などのパラメータによって、体積画像を心臓と呼吸サイクルの特定の位相に一致させることが可能になる。
心内膜表面の表現を高解像度の体積データから生成するためには、まず最初に、画像取得・準備モジュール130または記憶装置160のいずれかから体積データを読み出す。事前に取得された体積画像が高品質のものであるが、体積画像はそれの原形においては、心内膜境界についての明示的な情報を提供しない。しかるべく、心内膜表面の境界表現は、セグメント化として知られる手順を用いて、体積データに基づいて生成される。
セグメント化アルゴリズムは、注入された造影剤により拡張された対応コントラストの違いを利用して血液〜心内膜境界を検出する。多くのアルゴリズムの一つを利用してセグメント化を行いうる。かかるアルゴリズムの一つとして初期領域成長法(Seeding
Region Growing)がある。該アルゴリズムの基本的なアプローチは、セグメント化の対象となるものの内部にあると考えられる初期微小領域(一般に一つ又は複数の立体ピクセル、数学的オブジェクト構築済みのボクセル)から開始することにある。当領域付近のボクセルは、それらがセグメント化の対象となるものの一部としても考えられるべきであるかを決定するために評価される。セグメント化の対象となるものの一部としても考えられるべきである場合、当該の当領域付近のボクセルがその領域に加えられ、新しいピクセルがその領域に追加される限りその工程が継続される。
領域の一部としての追加を行うための評価基準は、例えば該領域の統計的な特性に基づいたアルゴリズムに基づきうる。アルゴリズムは、まず現時点において領域に包含されている全ボクセルに対して強度値の中間値と標準偏差を計算する。ユーザ提供の係数が、標準偏差を掛け算し中間値周辺の範囲を定義するために用いられる(例えば3x)。隣接するボクセルの強度値が該範囲内に入る場合、そのボクセルが当該領域に受け入れられて包含される。隣接するボクセルで評価基準を満たすものがそれ以上見つからない場合、アルゴリズムは、それの第1の繰返し処理を終了したと考慮される。その時点で、現時点において当該領域に包含されている全てのボクセルを用いて強度レベルの中間値と標準偏差が再計算される。この中間値と標準偏差によって、現在の領域隣接格子を訪れてそれらの強度が範囲内に当て嵌まるかどうかを評価するために用いられる新規の強度範囲が定義される。追加されるボクセルがなくなるまで、または繰返し処理が最大数に到達するまで、この反復工程が繰り返し行われる。
多くのセグメント方式を使用してセグメント化を行ないうる。
市販されるオープンソースのセグメント化ツールの多くのものを使って境界検出を行いうる。
例えば、GEヘルスケアシステムズ社による「カーディアック++」(Cardiac++)およびマーキュリーコンピュータシステムズ社による「アミーラ」(Amira)、そしてオープンソースの米国立医学図書館による「病識のセグメント化および登録ツールキット」(ITK:Insight Segmentation and Registration Toolkit)などがその例として挙げられる。図3は、得られた高解像度体積データからセグメント化実施後に作成された心内膜表面の合成境界表現の代表的な図解を提示する。図3に示される如く、心内膜表面の三次元境界表現を生成するために、心臓腔の画像スライス4枚を含む典型的な体積データがセグメント方式を用いて処理される。
一旦心内膜の表現が体積データから得られると、再構築工程中に取り掛かるべき数値計算の実施を円滑に行えるようにするために心内膜表現の解剖学的な幾何学形状が離散的な面素数にパーティション分割される。面素数ならびにそれの幾何学的形状が、再構築される生理学的情報の最終的なものが達しえる最大解像度を制御する。
セグメント化された心内膜表面表現のパーティション分割は、(その他数あるなかでも特に)心内膜表面での生理学的情報と測定された信号との間の関係を定義するところの該当する偏微分方程式(PDE)を解くために用いられる数値計算方法に依存する。例えば、有限差分(FD)および有限体積数値法ならびに有限差分数値法の埋め込み境界適合は、一般的なデカルト格子を用いる。有限要素法(FEM)の数値法は、多くの場合四面体から形成される体積メッシュを用いる。一方、積分方程式に基づく境界要素法(BEM)は、一般に三角形状の面素を構成する平面メッシュを用いる(但し、スプラインなどの高次要素も同様に使用しうる)。ちなみに、BEM方法の利点は、再構築工程の過程を通じてPDEを解くために必要な計算を行うためにBEM方法を実施することにより、カテーテル位置が異なるごとに変化しない不変メッシュが生成される結果になるという点である。
いくつかの実施形態において、得られた心内膜表面の表現は、ストラング=ペルソンの方式を用いることによりパーティション分割される。該方式は、簡単に言うと、錘とばねから成る安定平衡トラス構造の機械的類推に基づく。該方法は、符号付き距離関数として境界が供給されると仮定する。符号付き距離関数とは、与点から境界までの符号付き距離(内の場合<0、外の場合>0)を表わす関数φの値を含むデータの三次元格子を指す。符号付き距離関数は上記セグメント化工程に従って容易に得られる。
ストラング=ペルソンの方式では、領域(ドメイン)内に多くのノードを配置し、ドローネーの三角形分割により作成される縁部の各々に沿って圧縮されたストリングがあると想定する。その後、該方式では、各スプリング(ばね)をそれの平衡長さに(ノードが領域(ドメイン)外に出ない程度に各バネが他のストリングにより拘束されるまで)緩めさせる。ノードがかなりの距離を旅行する場合、ドローネーの三角形分割は繰り返しである。この手順はロバスト(頑強)であり、高品質のメッシュを作成すると考えられる。
当然のことながら、心内膜表面の表現をパーティション分割するためにその他のパーティション分割法を使用しうることは理解されることであろう。
上記セグメント化およびパーティション分割の手順が行われた後に残る問題の一つは、心内膜表面の生成済みメッシュ状表現において幾何学的に不連続部が存在するということである。ラプラスの方程式とポアソンの方程式を含む幅広い分類のPDEに対応する楕円方程式が、境界条件が境界上の各々すべての点に関して指定されるところの閉領域(閉ドメイン)に関して解決される。境界条件が境界の何らかの部分に沿って指定されない場合、PDEの解は一意的に定義されない。結果として、指定される条件を満たすように解決されるべき特定のPDEについて、正しい解だけでなく間違った解も得られてしまうことになる。楕円方程式のこのような特性(すなわち、定義されていない境界条件は間違った解をもたらしうるという特性)は、いかなる数値法に内在するものである。よって、いくつかの実施形態における心内膜表面の幾何学的形状は閉鎖型である。よって、例えば三角形状の面素を用いてBEM数値法を適用する場合、心内膜表面ならびにカテーテルの面は、間隔または重複の無いメッシュにより表現されなければならない。
しかるべく、パーティション分割された心内膜表面の表現を生成した上で、通常、表現の全開口(例えば、心内膜表面から伸びる動脈または静脈)が閉鎖される。心内膜の表現の幾何学的形状における開口は、心内膜表面の表現上の開口部周辺に沿ったいかなる与点間の最短距離を提供することによって表面切片で閉鎖することができる。またその代わりとして、心内膜表面の表現における開口に継ぎ当てをするために使用される切片部に関する異なる決定基準を満足するような幾何学的形状を使用しうる。それに加えて、従来開口部が存在していた表現に追加された切片部は、心内膜表面表現に使用されている面素と同じ幾何学的形状を有する面素にパーティション分割される。よって、三角形状の面素を伴うメッシュに心内膜表面をパーティション分割するためにストラング=ペルソン方式が用いられる実施形態では、開口部を覆う表面切片はこの時点で三角形状の面素も含んでいることになる。次に、心内膜表面での再構築された生理学的情報が得られるPDEの解には、開口部を覆う追加切片部に関する情報が含まれることになる。但し、生理学的情報をユーザに提示する際、または心内膜表面を表すグラフィック描写を表示する際に、表面における実際の開口部を覆う追加切片部は除外されるはずである。
しかるべく、境界構築手順を行うことで、心内膜表面の合成メッシュ状表現が作成される。心内膜表面の当該のメッシュ状表現は次の要求条件を満たす。
1. 閉曲面…上記のように全表面が閉鎖されていること。前のセグメント方式は、静脈および動脈を完全に表すメッシュを作成する。数値法を実施する目的で、静脈および動脈が高品質のメッシュで効率的に閉鎖されていること。再構築された生理学的情報を表示する前にまたはそれ以外の場合として再構築された生理学的な表現でのいかなる使用を行う前に、心内膜表面の派生表現において静脈と動脈を覆っている閉曲面を後で取り除きうる。
2. 要素数…面素の数は、幾何学的形状を分解するのに十分多い数(合成幾何学的形状を十分に分解できる程度)で、迅速な数値計算を円滑に実施するのに可能な限りおおざっぱな数であるものとする。幾何学的形状の重要でない局部特性を収容するために面素(
例えば、三角形)が多すぎる心内膜表面の表現は避けるものとする。
3. 要素の質…面素は高品質であるものとする。三角形状面素の質とは、例えば、それがどれだけ等辺に近いかを示す指標で表される。三角形の質を示す単純な指標としては、「半径比」がある。半径比は、外接円の半径と内接円の半径の比率として定義される。値が小さいほど、三角形の質が高くなる。等辺三角形がもたらす半径比は2であり、これは最低達成可能値である。メッシュ全体の質は、個々の面素の平均品質として測定することができる。但し、FEMなど、数値計算法のいくつかは最悪の三角形の質に敏感であることが知られている。当然のことながら、他の品質評価指標を、異なるタイプの面素幾何学形状に関して使用しうることは理解されることであろう。
図4は、ここに記載される手順を行うことにより生成された左心房の心内膜表面の合成メッシュ状境界表現の代表的な図解である。図示の如く、左心房の境界表現は三角形の面素を伴うメッシュを含んでいる。
ここに記載の如く、体積データの取得中に得られた生理学的データを使用して、心臓の機械的周期の特定の位相に体積画像を一致できるようにしても良い。それに加えて、いくつかの実施形態では、非接触式マッピング手順を行うことにより得られた再構築済み生理学的情報を、心臓の電気活動の結果生じる生データが取得される心臓の機械的位相と最も密接に一致する心内膜表面の表現上に提示することも可能である。よって、当該の実施形態では、境界構築手順を使用して、心臓の周期の異なる位相に対して、心内膜表面の別の表現を生成できる。その後、特定の位相の間に得られた生データは、その位相に対応する心内膜表面の表現に関して再構築されることになる。ここに記載される如く、再構築変形およびカテーテル登録手順が、心内膜表面の当該特定の表現に関して行われる。同様に、再構築された生理学的情報がその後、対応する心内膜表面の表現を用いて表示される。対応する心内膜表面の表現を持たない位相で生データが得られる状況では、最も密接に一致する心内膜表面の表現を使用して再構築作業が行われることになる。
事前に計算された変形関数
上記の如く、再構築変形の計算に関与する計算の中には、複雑で時間のかかるものがいくつかある。従って、好ましくは、医師の対話処理が要求されるような臨床設定においてはそれら全てを行なわない。
心内膜の境界およびカテーテルの幾何学的形状が前もって分かっているので、再構築手順が行われる前に、例えば順変態に関する計算など、再構築手順に対応する計算を行い、事前に計算された変換関数を後で使用できるようにメモリに格納することが可能である。再構築手順を行う場合、事前に計算された変形関数を、記憶部から読み出して全体的な順変換を計算するために使用できるので、実時間における全体的な順変態の計算を早められる。
生理学的情報の再構築された集合は、ラプラスの方程式から生じる楕円型偏微分方程式(PDE)の解である。楕円型PDEを解くために、領域(ドメイン)(本件においては例えば、血液)内部のバルク方程式と境界条件(本件においては例えば、心内膜およびカテーテル)の二つの特性を満たす閉領域(ドメイン)上で多変数関数が定義される。
PDEの解を計算するのに使用される従来の数値法は、PDE問題を一式の代数方程式に変換する。これら代数方程式の成分のいくつかは、幾何学的形状とバルク方程式の性質にのみ依存し、その他の成分は境界条件に依存する。境界条件が予計算位相の間に必ずしも分かられていない間、多くが幾何学的形状について概知である。例えば、心臓腔の形状およびカテーテルの形状は両方とも、信号の計測および再構築工程の前にあらかじめ分か
っている。従って、変形関数の成分(または状況によっては、完全な変換関数)が、生データの取得前、且つ又は当該の生データからの生理学的情報の再構築前に計算される。続いて、事前に計算された変形関数成分は完全な変形関数の計算を早めるために使用される。完全な再構成関数は、カテーテル且つ又は電極110の特定の位置に対して計算される状況において、実時間における順変形関数の計算が回避される。事前に計算された変形関数は、再構築された生理学的情報解を得るためのPDEを解くために使用されるいかなるタイプの数値計算法で使用することができる。次の実施例は、事前に計算された変形関数がどのように決定され且つ、対応するPDEを解くために境界要素法(BEM)と共に使用され得るのかを示す。当然のことながら、その他の数値計算法向けに類似した数学的枠組みを開発できること、そして該その他の数値計算法での使用に向けて事前に計算された変形関数の生成も同様に行うことができることは理解されることであろう。
BEM法は、以下提示されるようなグリーンの第2の恒等式に基づく。
この場合、VとUは、境界Sを伴う領域(ドメイン)Ωで定義される二つの関数である。作用素∂/∂nは外向き法線に関する法線微分係数で、∇はラプラス作用素(いわゆる「ラプラシアン」)である。上記の方程式は、心腔を有する領域(ドメイン)など、任意の領域(ドメイン)に適用する。バルーン付きカテーテルに関する問題には、血液に占められる領域(ドメイン)があり、(人工閉鎖された)心内膜の結合があり、そして、カテーテルの表面がある。
変数Vは、電気緊張性電位を表わし、該電気緊張性電位は、それのラプラシアンがゼロになるような性状を有する。変数Uは、所与の起点οから測定された距離をrとし、U=1/rとして定義することができる。よって、Uのラプラシアンは、次のように表わすことができる。
この場合、δο(x,y,z)は、起点οでの三次元δ関数である。グリーンの第2の恒等式におけるUの代わりに方程式(2)において表わされる関係を用いることによって、方程式(1)に示される如く、Ωの全内点で正当な次の恒等式がもたらされる。
この場合rは、Vが表面上の点のそれぞれに評価されている点からの距離である。同様に、次の関係が境界上の点に対して正当である。
変数Sは心臓の表面として定義され、変数Sはカテーテルの表面として定義される。
よって、この定義を使用して、方程式(4)が解かれることになっている全体的な表面Sが、心臓の表面とカテーテルの表面の結合、又は
として定義される。両表面は、十分に滑らかな閉曲面であることを前提とする。同様に、変数V(および対応して∂V/∂n)が、心臓の表面上の電位およびそれの法線微分係数として定義される。Vと∂V/∂nも同様にカテーテルの表面上の電位およびそれの法線微分係数として定義される。当然のことながら、表面電位に関してPDEを解くことは例示目的に過ぎず、グリーンの第2恒等式の関係は、その他のタイプの生理学的情報に関して解かれうることは理解されることであろう。
順問題におけるVは、カテーテルが相当量の血液を変位する場合、S上のディリクレの境界条件とS上のゼロノイマン境界条件に則る。
しかるべく、VとVは次の二つの方程式を対として使用することにより決定できる。
方程式(5)と方程式(6)は同じものであるように見えるが、それぞれにおいて、変数rは、V又はVが、S又はSのいずれかの各点に対して評価されている点から
の距離である。言い換えると、変数rは、めいめいの積分の評価中に(方程式のそれぞれに対して)異なる値を前提にしているので、結果としてVおよびVが異なる値になる。
∂V/∂n=0であるので、これらの方程式は次のように簡素化される。
両表面が不規則なメッシュにより表わされ、ここで
およびVが、真性電位(又はその他の生理学的特徴)への離散的なBEM近似値であり、打切誤差ならびに切捨誤差を含みうる可能性があると推定すると、積分演算は、離散作用素Se→e,Oe→e,Sc→e,Oc→e,Se→c,Oe→c,Sc→c,Oc→cによって置き換えることができる。覚え易くするために、「S」は「Solid angle(立体角)」を意味し、「O」は「One−over−r(r分の1)」を意味し、そして、下付き添字は心内膜表面(「e」)又はカテーテル表面(「c」)のいずれかを指す。よって、めいめいの表面で電位を決定するために行われる積分演算に近似するこれらの離散作用素は、行列として表わすことができる。電位が全要素(例えば、使用される表面の特定の表現の表面要素)の定数であることを前提とするコロケーションタイプのBEMについては、心内膜表面上のj番目の要素に基づいた心内膜表面のi番目の要素での電位に対する作用素Se→eからの寄与は、次のように計算することができる。
この場合、j番目の要素で積分が行われ、rijは、j番目の要素上の与点からi番目の
要素の中心までの距離である。同様に、その他の作用素を以下の通り表わすことができる。
(この場合、i番目およびj番目の要素が両方とも心内膜表面上にある)、
(この場合、i番目の要素は心内膜表面上にあり、j番目の要素はカテーテル表面上にある)、
(この場合、i番目の要素はカテーテル表面上にあり、j番目の要素は心内膜表面上にある)、そして
(この場合、i番目およびj番目の要素が両方ともカテーテル表面上にある)。
上記の積分方程式は有限線形システムに変換することができる。
同類項を組み合わせることによって次のものがもたらされる。
(この場合、Iは恒等作用素である。)
上記システムにおいて、順変形については、Vが分かっているが、∂V/∂nとVは分かっていない。該システムは、次のものとしてブロック形式に書き換えることができる。
ベクトル∂V/∂nは、Vに関する次式を残し、上記のシステムから完全に消去することができる。
に適用された作用素(又は行列)は、いわゆる順変形、数学的オブジェクト構築済みのAを形成し、これは、心臓の電気活動の結果生じる心内膜表面での電位を、カテーテル110の複数電極で測定された電位に関係づける。カテーテルから心内膜電位に変形を提供するために、我々は、Vを前提とする^Veの方程式としてAを解釈しなければならない。一般に行列Aは長方形であり、劣決定であり、さらにはIEEE二倍精度の範囲内でランク落ちになっているため、この方程式では限り無く多くの解(うち、一つを除く全てが不正解)が得られてしまうので、直接接触式の反転を通じて正しく^Veを再構築することが難しい。その代わりに何らかのタイプの正則化法が、より適切に正解を指定する該システムについての演繹的知識を組み込むために使用される。正則化法には、数学的補整(平滑化)を含んでいるかもしれない、統計的手法、且つ又は共役勾配法などの反復技法が含まれる。さらに後述で、ティーホノフの正則化法が^Veの解決に関して記載されている(但し、かかる技法は決して限定的なものではない)。
再び方程式(15)を参照するに、順変換Aを形成する行列のいくつかが再構築操作前に事前に計算される。例えば、行列Sc→cは、カテーテルの幾何学的形状のみに依存するので事前に計算することができる。カテーテルが異なる形状および構成を有することを前提とできる場合、かかる形状/構成のそれぞれに対応する別の行列Sc→cが計算され
る。行列Se→eと、Oe→eおよび
は、心臓の幾何学的形状に依存し、心臓の形状が手順前に得られる場合には事前に計算することができる。いくつかの実施形態では、カテーテルよりも著しく多くの要素を伴ってメッシュにより心臓が表わされるので、Oe→eは最も大きな行列である。例えば、カテーテルが一般に500個の三角形で表わされる一方、心臓は一般に3000個の三角形で表わされる。従ってOe→eは3000×3000の行列であり、よって、もし実時間で反転を行なわなければならない場合、それの反転には(特に時間的な面で)高額な費用がかかることになる。一方、
として計算された行列は、500×500個の要素とそれの反転のサイズを有するのでより迅速に行うことが可能である。
心内膜表面且つ又はカテーテルの独立した幾何学的形状に対応する行列は、非接触式マッピングの再構築段階且つ又は信号の取得の前にあらかじめ計算される。
事前に計算された行列は、後で読み出せるように記憶装置116などの記憶装置に格納される。
生データが得られた後、例えば、事前に計算されたSe→eとOe→eおよび
の行列を読み出してから完全な順変換行列の計算の過程においてそれを使用することによって順変換行列が生成される。
順変換と関連する事前に計算された成分の少なくともいくつかが利用可能であるこれらの実施形態では、順変換行列の部分的な計算が前もって効率的に行われる。
行列Se→e,Oe→e
およびSc→cとは異なり、その他の行列は、互いに相対する心内膜とカテーテル110の構成(例えば、カテーテルと心内膜表面上の特定の位置の間の相対距離)に依存する。カテーテルに相対する心内膜表面の相対位置および構成は一般に、カテーテルが心室に挿入されてデータ取得工程が開始した時にだけ分かるようになっているが、再構築手順をさらに早めるためにいくつかの実施形態では、多数の可能カテーテル位置に対して、次の行列を事前に計算しうる。
よって、心内膜表面に相対するカテーテル110の様々な離散的位置に対して、方程式(16)により表わされる全体的な行列を個々独立して計算し、それ以降にも読み出せるように記憶装置160に(又はどこか他のところに)格納できる。マッピング手順の実施中に、心内膜表面に相対するカテーテルの位置が決定され、方程式(16)の行列を一から計算するのではなく、むしろ該位置を用いてルックアップテーブルにアクセスし、それによって、事前に計算された行列の中から、決定された位置に対応する適切なものを読み出す。
完全な順変態を計算する方法の実用性は、使用されるカテーテルのタイプに(ある程度)依存する。例えばバルーン型カテーテルの場合、心室におけるバルーン型カテーテルの動きによって心室を占める十分な血液が変位され、よって電位分布にかなりの変化が生じるようにバルーン型カテーテルが構成されている。結果として、心室内部のバルーン型カテーテルの位置および配向の各変動ごとに、当該の位置/配向と関連する異なる順変換がある。ここで、バルーン型カテーテルの様々な位置/配向に対する事前計算順変態量は、可能空間位置の数と当該位置での回転構成の数の積に比例するようになる。
一方、例えば分岐型カテーテル(またそれ以外の場合は多孔性の空洞カテーテル)など、いくつかのタイプのカテーテルの場合、心室における血液変位の程度は、バルーン状カテーテルの場合ほど極めて重要ではない。しかるべく、心臓腔内部の静電位に影響がないとしてカテーテルの存在を近似させることができ、且つ、方程式(7)と(8)およびそれから派生する方程式におけるカテーテル表面一帯での積分は、本質的に無視することができる。結果として、順変換行列Aを計算するためにカテーテル配向はもはや必要でなくなり、カテーテルに関して必要な知識は、様々なカテーテル電極の位置だけである。
相当量の血液を変位しないカテーテルのタイプの場合、Ωの内点のいかなる点におけるラプラスの方程式の解Vが、次のものによって提供されるか、
(この場合、Vは、ディリクレの境界条件により指定され、∂V/∂nは、積分方程式から決定される)、又は、次の行列形式において提供される。
つまり、全て予め計算済みのしておくことができる行列Oe→eとSe→eだけを適用することによりVから∂V/∂nを計算することができるという意味である。
重要なことには、これは、理論的に言って、心臓内部にどの点においてもラプラスの方程式の解を見つけるために順作用素を事前に計算することができるという意味である。実際に、単純な補間によって内点のいかなるものにおける正確な解を計算できるように、十分な数の内点について順作用素を事前に計算する必要がある。
概して考えると、戦略的に選択されたカテーテル位置の多くに関して順作用素を事前に計算することによって、あらゆるタイプのカテーテルに対してかなりの利益がもたらされる。
事前に計算された位置の近くで物理的なカテーテルが見つかる場合は一般に、順作用素が事前に計算されたものにより近似され得るというのが(二つの構成が事実上極めて類似する限り)事実である。従って、両方とも、正則化の効率と効能にまでおよぶ利益を引き出すことができる。例えば、被観察電極電位に事前計算された反転を適用することにより、反復線形システムの解決子(solver)に関する優れた初期推測をもたらすことができるので、計算時間が著しく低減される。さらに、事前計算された作用素AのSVDに基づく低ランク近似値は、同じ反復解決子の良好な予調整子(conditoner)となる可能性が高く、計算時間をさらに低減する。最後に、事前に計算された作用素Aの右特異関数において心内膜の電位を表現することは、非常に効果的な正則化法の形式でありえ、約3000から通常100以下に自由度を劇的に低減することにより、必要な計算時間をさらに低減させる。
いくつかの実施形態では、事前に計算された行列でカテーテルの選択位置に対して生成されたものを、対応する順行列が事前に計算されなかったカテーテル110のその他の位置のための行列を推計するために使用しうる。これを行うために摂動解析は使用できる。例えば、心内膜とカテーテルの特定の相対配置に対して満足な逆作用素が構築されたと仮定する。続いて、電気生理学者が少しずつカテーテルを動かす。変位したカテーテル上の計測、変位既知量、および原位置に対して構築された逆作用素を利用することによって、心内膜上の電位を再構築するために境界摂動法を使用することができる。例えば、新規位置の行列を決定するための(例えば、基底関数又は行列の線形重畳などの)摂動解における基底として、近くの位置のための事前に計算された行列(又はその中の成分)を使用することにより新しい位置の行列を決定できる。
いくつかの実施形態では、心臓の周期の異なる位相について異なる表現が使用される状況において、事前に計算された変形行列が心内膜表面の別の表現に対して生成されうる。よって、当該心内膜表面の別の表現のそれぞれに対し、これらの心内膜表面表現の個々の幾何学的形状に基づく事前に計算された対応行列が生成される。同様に、いくつかのタイプのカテーテルが使用されうる場合(又はカテーテルが異なる可能カテーテル構成を有しうる場合)、(例えば、−Sc→cなどの)カテーテルの幾何学的形状に依存する行列が、当該カテーテルのそれぞれに対して個々に生成されうる。再構築手順の間に、選択されたカテーテルに、および特定の心内膜表面幾何学的形状にめいめい対応する行列記憶装置160から読み出され、生データが得られた特定の位置に対応する完全な順行列の計算を完了させるために使用される。
カテーテル登録
上記の如く、非接触式マッピング手順の重要な態様は、心内膜表面の表現に相対するカテーテルの位置の決定である。心内膜表面の表現に関してのカテーテルの相対位置が、その他の数ある理由の中でも特に、心内膜表面での生理学的情報を計算するための再構築変形関数を計算するために必要とされる。
図6は、カテーテルの座標系を心内膜表面表現の座標系と整列させることによって、心内膜表面の座標系によってカテーテルの場所を示す位置を表わすことを可能にする、変形関数を決定するためのカテーテル登録手順600の代表的な実施形態のフローチャートを示す図である。以下、カテーテル登録を行う二つの方法を説明する。第1の方法は、表面登録までの雲状点群データに関係する間、第2の方法は、基準解剖学的位置マーカの同定を採用する。
図6は、表面登録までの雲状点群データを記載する。図6に示される如く、カテーテルはまず心室に挿入され、そして(610で)カテーテル且つ又はそれの電極の少なくとも一つが心内膜表面に接触する位置に動かされる。いくつかの実施形態において、オペレータは、カテーテル(又はそれの電極の一つ又は複数)が心内膜表面に接触したと判断するまでカテーテル110を心室内部で動かす。オペレータは、カテーテル110又はそれの電極のいかなるものが心内膜表面の壁に接触していると判断する際に、心室内部のカテーテルの視像を提示する実時間超音波システムや、カテーテルに接続されている光ファイバー素線に連結されたカメラや、蛍光透視、インピーダンス測定、心臓内電位図のサイズおよび形状、カテーテル先端に取り付けられた圧力センサ、などの視覚補助による指標を参照して行っても良い。それに加えて、カテーテルが心内膜壁により働くより高い機械的抵抗に遭遇した時にカテーテルが心内膜表面に接触しているとオペレータが判定し、それによって、カテーテルが心内膜表面にあることをオペレータに警告するようにしても良い。さらに別の実施形態では、オペレータによる介入が最小限の状態で、カテーテルを自動的に心内膜壁に導入しうる。
心内膜表面に隣接する位置にカテーテルが一旦配置されると、カテーテル(且つ又はのそれの電極)の三次元空間的座標が620で決定される。空間的座標は、いくつか存在する従来の感知・追跡システムの一つを使用して確立されうる。かかる従来の感知・追跡システム(位置確認システムとも呼ばれる)には、磁界、電界、蛍光透視および超音波信号を使用して追跡対象物(この場合はカテーテル且つ又はそれの電極)の位置を決定するシステムが含まれる。これらのシステムは、位置確認システムの三次元空間においてカテーテルの位置を確認する。
例えば、「カテーテルマッピングシステムと方法(Catheter mapping
system and method)」と題される特許文献1と、「カテーテル位置システムと方法(Catheter location system and method)」と題される特許文献2と、「侵略的医療機器の位置と配向を決定するためのシステム(System for determining the location and orientation of an invasive medical instrument)」と題される特許文献3と、「体内マッピングのための機器および方法(Apparatus and method for intrabody mapping)」と題される特許文献4と、「体内マッピングのための機器および方法(Apparatus and method for intrabody mapping)」と題される特許文献5と、「体内マッピングのための機器および方法(Apparatus and method fo intrabody mapping)」と題された特許文献6と、「位置および配向の磁気による決定(Magnetic determination of position and orientation)」と題される特許文献7と、「物体の位置を決定する方法および機器(Method and
apparatus for determing position of object)」と題される特許文献8および、「位置および配向の磁気による決定(Magnetic determination of positon and orientaion)」と題される特許文献9、そして、「心臓におけるカテーテルのナビゲーションおよび位置およびマッピングのための方法および機器(Method and apparatus for catheter navigation and location and mapping in the heart)」と題される米国特許出願公報のいずれを参照されたい。
上記の如く、いくつかの実施形態ではカテーテル110に相対する電極の位置が固定されて既知のものとなっているので、決定する必要のある唯一の情報は、位置確認システムにより確立された三次元空間におけるカテーテル110の位置および配向だけである。その他の実施形態では、カテーテルに相対する様々な電極の位置が異なりうるので、このような実施形態における電極は、心内膜に相対して、又は心内膜に相対する概知の位置を用いてカテーテル上の位置に相対して、個々に追跡するようにしても良い。電極の追跡には、前述のいかなる追跡法を採用して、カテーテル上の既知の点だけを追跡する代わりに各電極が個々に追跡するようにしても良い。
630で、登録手順を行うためにさらなる別のカテーテル位置が必要とされるかどうかが決定される。カテーテルの座標系および心内膜の表面表現の座標系間で正確な幾何学的な変形を得るためには、別のカテーテル位置が最低3箇所必要である。但し、座標系変形の精度および信頼性を向上させるためさらに多くのカテーテル位置を使用することも可能である。
さらに別の位置が要求される場合、610−620に示される手順が繰り返される。特に、オペレータが心内膜表面上の次の点にカテーテル110を動かし、位置確認システムに相対するカテーテル110の三次元座標が決定される。
続いて、心内膜表面でカテーテル110の位置がN箇所得られ、且つ位置確認システムに相対するそれらの三次元空間的座標が決定された後に、登録変形(t0)が640にて計算される。上述のように、心内膜表面の表現の座標系に位置確認システムの座標系をマッピングするために、計算された幾何学的変形は、心内膜表面の表現に、610−630で決定された如く、カテーテル110の三次元位置をもっともよく一致させるものである。
いくつかの実施形態において、登録変形t.0.の計算は次式を最小化することにより行われる。
方程式(17)の最小化を行うために、心内膜表面および付近の血管のセグメント化された境界を表わす表面Sが定義される。また、位置確認システムを用いて移動するカテーテルに対して測定された三次元空間的座標に対応するベクトルpおよび、pの点で行われた変形作用素である作用素T[t](p)も定義される。合成ベクトルt.0.は、心内膜表面座標系によってカテーテルの位置を表わすべく、カテーテル位置に適用される6つのパラメータ変形[x0,y0,z0,θ0,φ0,ψ0]として表わされる。
=D(T[t](p),S)が、変換された点T[t](p)から表面Sまでの距離を表わすように距離関数Dが定義される。心内膜表面上のカテーテル位置で取得されたN箇所に関する項dが最小限にされるところのベクトルtを決定するために、最小自乗誤差計算手順且つ又はその他の数学的回帰および曲線適合法など、従来の反復最適化法を含む多くの技法を使用しうる。
その他の実施形態において、変形ベクトルtの決定は、基準解剖学的位置マーカ法を使用して達成しうる。この技法では、多くの基準マーカが、心内膜の境界および位置確認システムのめいめいの座標系の両方において同定される。いったん同定が行われると、二点の集合の間に最小平均二乗誤差をもたらす変形が選択される。
例えば、両モダリティ(撮画手段)において同定するのが簡単である解剖学的な境界標識(僧帽弁輪、冠状静脈洞、など)が基準マーカとして使用される。これらの境界標識は、事前に取得された心内膜の境界において容易に同定されうる。一旦所与の境界標識が同定されると、カテーテルは、例えば蛍光透視により導かれて境界標識へと進められる。いったん接触すると、位置確認システムの座標系で表されたカテーテルの位置を確立するためにカテーテル位置確認システムからの読取り値がとられる。
上記の技法の変形として、事前に取得され且つ実時間の位置確認モダリティ(撮画手段)において同定するのが簡単である患者の身体に表面マーカを配置するものもありうる。3つの変位パラメータ(x0,y0,z0)と3つの回転パラメータ(θ0,φ0,ψ0)を含む
変形ベクトルが登録手続によってもたらされる。その後、移動するカテーテルの位置を心内膜表面の表現の座標系として得るために位置確認システムにより得られた三次元空間的座標にこの変形を適用することができる。カテーテルの110のマッピングされた位置は、その後、再構築変形を計算するため且つ又は、心内膜表面の表現の座標系で表されたカテーテルの位置を必要とするその他全の計算を行うために使用される。
ちなみに、健康な患者の場合、洞調律においては心内膜の境界が活動化波面の伝播を通じて比較的一定である。
これは、位置確認システムと心内膜の表面表現のめいめいの座標系の間で幾何学マッピングを構築する際に、登録工程が単一の境界形状に基づいていると、許容誤差が少なくなることを示唆する。
場合によっては、画像取得時間と登録時間の間に生じる血液量の変化又は持続性不整脈の存在心室体積の変化、従って、事前に取得された現行の心内膜表面間の不一致につながりうる。心内膜の表面上の生理学的信号の再構築を行う際、このような不一致は誤差につながる。体積変化率は一般に20%未満である。多くの方法を用いて、この体積変化率を補正しうる。その一つとしては、得られた雲状点群データに相対する心内膜の表現を均一に拡大又は縮小するスケーリング(縮拡)パラメータを追加する方法がある。上述の方程式(17)の最小化を行う際に、スケーリング(縮拡)パラメータsが変形ベクトルに追加されうる。最小化アルゴリズムは、6つのパラメータに対して最適化を行うのではなく、むしろ±20%の範囲にあると推計される倍率を提供して7つのパラメータに対して最適化を行う。その他、より精巧な方法では心内膜の表面を不均一にスケーリング(縮拡)しうるので、体積変化により形状の変化を経験する可能性が高いと推測的に知られる解剖学的部位には、変化する可能性が高いものよりも少ないスケーリング(縮拡)が行われるようになる。
持続性不整脈の場合には、心臓が活性化波面伝播の間に機械的変化を経験しうる。前述のように、機械的周期における複数の位相に対して心内膜境界表現を得ることが可能であ
る。
よって、いくつかの実施形態では、複数の心臓形状に対応するいくつかの幾何学的変形ベクトル(tなど)が計算されうる。該システムは、インピーダンス・プレチスモグラフィを使用してECGや心臓内電位図および一回拍出量などの生理学的データを検出しうる、且つ心臓の位相や適切な心内膜の境界表現および対応する幾何学的変形tを選択するためにこのデータを使用しうる。当然のことながら、変形tがカテーテル110上の代表点(例えば、カテーテルがあちこち移動される際に心内膜表面に接触した電極の先端、カテーテル本体の中心点、など)に関する幾何学的なマッピングを確立しているが、カテーテル且つ又はそれの電極上のいかなる点の座標を、心内膜表面の表現の座標系で決定しうることは理解されることであろう。
心内膜表面での生理学的情報の再構築
カテーテル且つ又はそれの電極の心内膜境界に相対する位置をもって、電極により測定された信号から心内膜表面での生理学的情報(例えば、電位)への数値変換を計算することができる。
心内膜表面での生理学的情報の再構築を支配する物理法則について、以下簡潔にまとめる。
均一体積Ωにおける電位Vは、次のラプラスの方程式により支配され、
次の境界条件に従属する。
(この場合、Sは、カテーテルの表面であり、ゼロになる法線微分係数は、電流がSに浸透しないという事実を考慮したものである。Sは、心内膜面を表わす。)心室における血液変位の程度の重要度がバルーン状カテーテルの場合と比べかなり低い分岐状カテーテル(またそれ以外の場合は多孔性の空洞カテーテル)の場合、法線微分係数がゼロになることの制約が省略されうる。
上記において示唆されるように、ラプラスの方程式は、一握りの幾何学的形状を例外として、数的に解決する必要がある。ラプラスの方程式を解くために、例えば境界要素法(BEM)、有限要素法(FEM)、有限体積法などの数値法を使用しうる。いくつかの特殊な幾何学的形状(ほぼ球形の幾何学的形状など)については、球調和関数を使用しうる。それぞれの数値法は離散的な方法で幾何学的形状を表わすが、各方法はそれぞれそれ独自の表現を使用する。全ての数値法において、心内膜表面上のおよびカテーテル上の電位は有限次元ベクトルにより表わされる。ラプラスの方程式は線形であるので、これらのベクトルは、次の順行列として知られる行列Aにより関係づけられる。
(この場合、(ベクトル)Vは、カテーテル上の電極により測定された電位を含むベクトルであり、V は真の心内膜電位を含むベクトルである。)行列Aはm×nの寸法を
有し、この場合mはカテーテル上の電極の数であり、nは心内膜電位の自由度(通常は表面Sを表すために使用される面素数)である。一般に、m<nである。但し、上記の如く、カテーテルを心室周辺で動かしてから複数位置で得られた信号に対応する生データの複合に適用される再構築変形を計算することにより
電極の有効数mを増加させることができ、それによってmとnの間の相違を低減しできるので、計算の精度を向上できる。
方程式(20)は、心内膜の電位からカテーテルの電位への変形関係を提示する。
一般に順問題と呼ばれるこの関係は、良設定問題であり、高い精度で解くことができる。
カテーテルの電位から心内膜の電位への変形を行うために、^V(推計される心内膜の電位を表わすベクトル)が、Vを前提として決定されなければならない。一般に行列Aは長方形であり、劣決定であり、さらにはIEEE二倍精度の範囲内でランク落ちになっているため、この方程式を解くことは、不可能でなければ非常に困難である。
^Vの計算に向けての第一階段は、目標関数とも呼ばれる次式(21)が全ての可能な^Vで最小化される最小二乗問題として方程式(20)を再公式化することである。
行列Aが実時間決定されたものであるか、又は上記のようにカテーテル110の特定の幾何学的形状(カテーテルの位置と配向を含む)に対応する事前に計算された行列Aが記憶装置160から読み出されるかのいずれかである。また、上記のように、記憶装置が、例えばカテーテル110の特定の位置(複数可)且つ又は配向(複数可)に対応する完全な順変換行列Aを格納しない場合でも、部分的に事前計算された関数又は関数成分を記憶装置160から読み出して、方程式(16)を参照して記載されるように行列Aの計算の完了させることにより行列Aの計算を早めることができる。
Aが過剰に決定される(すなわち、それのランクが(ベクトル)Vの寸法を越える)場合(但し、通常このような状況は起こらない)、その後、理論的には、次の古典的な最小二乗式により^Vが決定される。
但し、Aは一般に決定されず、結果としてAAは特異値であり反転できず、通常、方程式(22)中の式は実際のところ適用できない。
最小自乗誤差の手順を行うことに関して困難なことの一つは、行列Aが生理学的信号を減衰させるので逆操作によって信号を増幅する必要があるということである。順操作における減衰のレベルと反転における増幅のレベルは、カテーテルのサイズと位置および心内膜上の電位の性質に依存する。
実際のところ、Vのかなりの成分が約1000以上減衰される。結果として、Vにおけるわずかな誤差によって、^Vにおける大きな誤差が生じる。よって、逆問題は不良設定である。
正則化法は、逆問題の不良設定性に対処するために使用することができる。正則化法は心内膜の信号の挙動についての付加的仮定をなすことを関与している。これらの前提は、心内膜表面での生理学的情報の空間的又は時間的な特徴に関係するものでありうる。
使用できる技法の一つとして、ゼロ次チホノフ正則化法がある。
該技法は、信号の本質的な部分が最も低い特異値に対応するAの右特異値の中に含まれるという前提に基づく。代替的な幾何学的解釈は、再構築された信号の空間的変化の振幅をチホノフ正則化が限定するということもある。ゼロ次チホノフ正則化は、大規模な心内膜電位に課する項が目標関数に追加されるときに結果として生じる。よって、方程式(21)において定義される最小自乗誤差問題は、次のように再公式化できる。
この場合、全ての可能な^Vで最小化が行われる。この最小化を解くことによって、次式がもたらされる。
正則化パラメータtは、再構築された電位^Vに適用された空間的平滑化の量を制御する。正則化パラメータtは、空間解像度とノイズ感度の間での交換を提供する。tが低下するにつれて再構築解像度は向上するが、解の不安定性およびノイズが増加する。いくつかの実施形態において、tが、電極により検出されたノイズの二乗平均平方根値の3倍となるという条件を満たすように選択される。最適な正則化パラメータを見つけるために、L−曲線などその他の方法を使用しうる。
逆問題の不良設定性への対処に加え、チホノフ正則化はAの未決定性の問題も解く。
図7は、カテーテル110の複数電極により得られた信号からの生理学的情報を再構築するための代表的な手順700のフローチャートを示す図である。
図示の如く、カテーテル110は、710で心室内の複数位置の一つに動かされる。いくつかの実施形態ではオペレータが、カテーテルの動きを制御しそれの次の位置を決定する間、その他の実施形態ではカテーテルの動きが完全に又は部分的に自動化されている。
カテーテルがいったん心室内の位置に到達すると、心内膜表面の表現に関連するカテーテル110の位置が720で決定される。特に、カテーテル110の位置を追跡する位置確認システムが、位置確認システムに相対するカテーテル110の三次元空間的座標を決定する。位置確認システムは、カテーテル110の位置と配向を位置確認システム座標系によって提供する。その後、前回決定された幾何学的座標変換ベクトルt.0.が、位置確認システムの座標系で表現され、カテーテル110の位置に適用されて、心内膜表面の座標系で表わされた合成カテーテル位置に当該の位置を変換する。その後、カテーテルの複数電極は、心臓の電気活動の結果生じた生データ信号を得て、その信号を730で処理ユニット120に送る。いくつかの実施形態において、得られた信号は、心臓の電気活動の結果生じる電気的信号且つ又は磁気信号である。後述からも明らかなように、信号の計測と関連する誤差を低減するために、いくつかの実施形態におけるカテーテルの複数電極は、数心拍の各心拍における複数集合の信号を得る。
それに加えて、いくつかの実施形態における信号取得は、心室における数位置で行われる。これら状況の下に、再構築手順が後で行われることになる合成された生データの集合を生成するべく、複数集合の信号が(例えば、平均操作又は加重平均操作を行うことにより)処理される。その後、複数のカテーテル位置からのデータを含む複合生データ集合に対して順変換Aが構築されてから、生理学的データの(該複合集合に対応する)再構築集合が決定される。カテーテルの様々な位置からの信号を複合集合に統合するべく、同期機構を使用して、該システム100が心臓の電気活動のほぼ同一の周期で信号を得ることを可能にしうる。同期化は、同期化機構により収集された生理学的データ(例えば、ECG計測、心臓内電位図計測、オペレータ・ペーシング)に基づいて行うことが可能である。しかるべく、上述の方法にて得られた複合集合からの生理学的情報の再構築は、同期化生データ信号の処理につながり、この処理によって、あたかも心室におけるカテーテルの異なる位置に対してカテーテルの電極によりサンプリングされた全位置から一度に該生データ信号が得られたかのようにできる。
生データを得たところで、順再構築変換Aが740で決定される。上記の如く、順変換Aは、心内膜表面の表現に相対するカテーテル110の位置且つ又は配向に依存する。いくつかの実施形態における行列Aの決定は、上記にてより具体的に述べられている如く、式
に準じて順行列の値を計算することを含んでいる。上の式の実際の計算が実時間又はほぼ実時間に実行される実施形態では、*Se→eとOe→eおよび
関係する成分など、事前に計算された再構築行列成分を記憶装置160(又は他の何らかのメモリ素子)から読み出すことにより計算が早められる。これらの状況下において、生データの特定の集合について順変換Aを計算する作業が、例えばカテーテル110の特定
の位置および配向などに基づいて不足成分を生成することにより既に存在する部分的に計算された順変換Aの計算を完了させることに還元される。
その他の実施形態において、(カテーテルの特定の位置に各々対応する)完全に計算された順行列を記憶装置160から読み出すことができる。当該の実施形態において、カテーテル110且つ又それの電極の位置は、様々な事前に計算された順変換を維持管理するルックアップテーブルにアクセスするために使用される。順変換を決定したところで、心内膜表面の表現における生理学的情報(例えば、電位)の再構築された集合が750で決定される。特に、上記のような正規化反転手順は、(複数電極により単一測定値から得られた一式のデータとしてであろうが、又は複数の計測から派生した何らかの合成データの集合としてであろうが)得られた一式の生データおよび(例えば方程式(21)に関して上記されるように)750で決定された順変換Aに基づいて再構築された生理学的情報の集合の値を推計するために使用される。
生理学的情報の再構築された集合がいったん計算されると、例えば従来のグラフィック表示技法(例えば、グラフィック描写)を使用して生理学的情報を心内膜表面の表現にオーバーレイ(重ねて表示)できるようになる。それに加えて後処理操作を一式の再構築された生理学的情報に適用しうる。例えば、各値域に異なる色を割り当てるようにした色分け手法を利用して生理学的情報を表示することができる。特定の面素に対応する特定の値が対応する色にマッピングされ、それからマッピングした各色を使って面素と関連する心内膜のグラフィック表示の各部位を塗り潰すようにする。その他の方法を使用して生理学的情報の値を表わすこともできる。
複数心拍を通じての信号取得
ここに記載される通り、心内膜表面での生理学的情報の再構築はノイズにより影響される。ノイズが心内膜表面の表現で再構築された情報にもたらす影響を制御するために、いくつかの実施形態ではノイズの二乗平均の三倍となるように正則化パラメータtが選択されるチホノフ正則化法は使用することができる。チホノフ正則化法はノイズによる計算誤差を低減するのに役立つが、この技法は、再構築された情報の空間解像度に悪影響を及ぼす。正則化パラメータが大きいほど、再構築が空間的に円滑(そしてその結果低解像度)なる。従って、再構築を行う時に全ての誤差要因を減らすことが望ましい。カテーテル電極により検出された信号は、干渉を低減するために遮蔽し、低ノイズ入力段階により調節するものとする。
また、これらの措置に加えて、複数の心拍が拍動する期間を通じて計測を行うことにより、信号−雑音比を向上させることも可能である。信号対雑音比は、√Bの係数(これにおける(行列)Bは、周期的信号および独立同分布の存在下における計測の数)により向上することができる。よって、周期的な不整脈を伴う状況において、複数の拍動が同一であるという前提の下に、複数の拍動を通じてサンプリングすることにより信号対雑音比を向上させることが可能である。
カテーテル110が固定位置を維持する状況において、順変換Aは拍動間で一定状態を維持する。ベクトルV(t)は、瞬間tにカテーテル上で行われた計測として定義される。信号がΔt(例えば1ミリ秒)の増分値でサンプリングされる場合、期間P(例えば、80拍/分につき750ミリ秒)を有する心拍について、測定された信号を、V(sΔt+P) or V(s,b)(ここで、sは周期中の位相数であり、Pは、拍動bと関連する基準マーカが検出された時点のタイムスタンプである)として表わすことができる。よって、パラメータsは、心臓周期における特定の位相と見なすことができる。sおよびbの適切な値で時間tでの計測を割り当てるため、特定の基準マーカを各心拍内に識別する必要がある。これは、体表面ECG又は心臓内の信号などレファレンス信号
(冠状静脈洞において収集されたものなど)に依存して行うことができる。この特定の実施形態については、次の欄にてさらに詳しく後述する。
(行列)Bに等しい数の心拍数を通じてデータが収集される場合、心臓周期の位相sに対して(行列)B個の信号計測が利用可能である。よって、同じ位相でのB個の計測は次式に従って平均することができる。
合成された信号の集合がB個の計測を通じて平均されたデータに対応するので、ノイズ源が独立同分布のされていることを前提とした場合、√Bに比例する信号対雑音比の改善が得られる。ここで、合成され平均された信号値の集合が、生理学的情報の再構築を行うために使用され、しかるべく、平均されたデータを使用して√Bの係数によりチホノフ正則化パラメータtの値を低減することにより再構築解像度を増加できる。
カテーテルを動かすことにより、再構築精度のさらなる向上を得ることができる。カテーテルの動きが心拍数と比較して遅いので、カテーテルを動かす時に、複数の拍動を通じて複数位置で生信号が得られる。カテーテルの動きと複数心拍の使用によっていくつかの利点がもたらされる。一つの利点は、複数心拍の使用によって信号対雑音比が向上するということである。別の利点は、カテーテルの動きによって、カテーテルがより近くに動かされた部位における解像度の向上が可能になり、そしてより多くの電極位置からの信号計測が効率的に提供される(よって、より多くの電極が効率的に提供される)ということである。
けれども、カテーテルが固定位置をとるという筋書きとは異なり、カテーテルが複数位置でそれの計測を得る場合には順変換行列Aが一定のままでなくなる。
一般に、生データが得られるカテーテル位置はそれぞれ対応する順変換Aと関連することになる。複数位置において複数の心拍を通じてデータを収集して、各計測ごとの位相sを検出した後、新規の計測ベクトルVを、同じ(又はほぼ同一の)位相sで行われた電極計測を全て含んだ状態でアセンブリ言語に翻訳することができる。よって、ベクトルV(s)を次のように表わすことができる。
それに加えて、複合順変換
は以下の条件を満たすように定義される。
(この場合、(行列)Aは上記されるように決定される。)
複合ベクトルV(s)と複合順変換
および生理学的情報(この場合は電位)の再構築された集合の間の関係は、次のように表わされる。
方程式(27)にて明瞭に表現される関係を利用して、V(s)の値(すなわち、特定の位相sに対応する生理学的情報の再構築された集合)を前述の逆手順を行うことにより決定できる。例えば、
の正規化反転が上述のように発生しうる。
周期的な不整脈に対するカテーテル移動の影響は、単一の心拍に複数のカテーテルを有することの影響に類似する。
これまで、信号の伝播が周期的であること、また故にいかなるbおよびbの場合はV(s,b)=V(s,b)であると推定された。しかしながら、心臓の伝播が周期的でない場合、この前提は必ずしも正当ではなく、従って、例えば信号対雑音比を向上させるために平均操作を行うことは適していないかもしれない。
それでも、信号が周期的でない状況においてさえも、複数の心拍を通じてほぼ同じままである特性がいくつかある。例えば、細胞組織の特性は、数分間という時間が経っても比較的不変のままである。細胞組織を特徴づける一つの方法として、(後述されるような)電圧マップの生成を通じての方法がある。特定の部位における最大電圧振幅が複数の拍動がなされる期間実質的に一定のままであるという前提の下に、電圧マップ解像度の複数心拍拡張を達成できる。特に、電圧マップ値は次のように定義できる。
データがB回の拍動を通じて収集されて再構築操作は各心拍ごと行われるとともに、B個の電圧マップVMVが作られる。
ここで、(後述の方法で得られた)各計測ごとの再構築解像度Resと各心拍ごとの電圧マップ値(VMV)の両方が分かっている心内膜上の特定の点についてVMVを見つけたいと考えていると仮定する。この時点で、この次式が成り立つVMVに対して新しい加重平均値を割り当てうる。
(この場合、β=1/Res
当然のことながら、平均VMVを決定するためのその他のタイプの平均方式を利用しうることは理解されることであろう。
信号位相整列
複数の心拍を通じて得られたデータを処理するためには、電気的周期における特定の位相に相対するデータを整列することが必要である。以下、図12に示されるK信号V1(t)−VK(t)を整列させる方法を説明する。
第一段階において、全信号が増幅され、フィルターされ、サンプリングされる。同期信号は、同一の方法において同時に得られる。同期信号は、表面ECG又は固定位置における心臓内の信号(冠状静脈洞カテーテルにより検出されたものなどの)から得ることができる。
基準点検出機構(FPD:Fiducial Point Detector)は、特定の事象が生じる刻時点を検出する。例えば、FPDは、心臓内電位図の活性化時間又は表面ECGにおけるR波を検出しうる。該検出は、高解像度ECGの平均算出について整列法(アライメント方法)に類似する方法にて行われる。
例えば、レイモン・ジェーン著の非特許文献1や、デイナ・ブルックス著の非特許文献2や、ガンター・ブレイハート著の非特許文献3を参照されたい。
簡単に言うと、定型信号は同期信号と交差相関している。定型と同期信号間の交差相関が最大に達した時点で基準点が検出される。定型信号自体は、同期信号から前回得られた比較的クリーンな信号、これらの信号の複数の平均でありうる。定型信号は、ユーザにより、又は信号の統計についての演繹的知識を使用するコンピュータ・アルゴリズムにより自動的に、視覚的に選択可能である。
なお、心臓調整(ペーシング)中にマッピングが行われる場合には、同期信号はペーシング機器から得られるかもしれない。この場合、交差相関は必要無く、FPMは単に同期信号と関連する刻時点を受け渡すことになる。
FDMは、基準点が検出された刻時点P1・・を出力する。その後、得られた信号
を整列させるためにこれらの刻時点が使用される。得られた信号は、整列後にV(s,b)として表わされ、この場合、sは特定の心拍b中の位相数である。
後処理と可視化
多くの後処理および可視化技法が、臨床的に有意義な方法において再構築された生理学的情報を表示するために使用されうる。後処理操作のいくつかには以下のものが含まれる。
A. 解像度表示
前述の如く、電位は、心内膜表面からカテーテル電極への途中で大幅に減衰される。
電位があまりにも減衰され、カテーテルに達する時までに、それの値がノイズ・フロアー(ノイズレベル)よりも低くなりうる。この減衰により、カテーテルにより近い部位における心内膜表面の表現上の電位(又はその他のタイプの生理学的情報)が、カテーテルからさらに遠い部位における電位よりも高い精度および空間解像度で再構築されうる。再構築された電位が提供する情報を臨床上の決断の補助として役立たせることができるように該再構築された電位のユーティリティ(使用効果)を増加させるために、再構築の忠実度についての情報を医師に提供することが有益である。
いくつかの実施形態において、カテーテルに達する時間までにどれだけの信号がノイズ・レベル以上を維持できるかを測定するために設計されている発見的アプローチが、解像度マップを計算するために使用される。信号は一般に、その他数あるなかでも特に信号の空間周波数に依存する減衰を経験する。即ち、空間周波数が高いほど、減衰のレベルが大きい。
順変換Aの特異値分解は、順変換の減衰レベルの決定に向けて方式を提案する。特に、Aの特異値分解において、右・左特異ベクトルRiおよびLiは、Aの下に相互にマッピングする独自の正規直交基底であり、他方に比して一方の基底の減衰を表わすベクトルRiとLiを通じて関係づけられる。よって、Aの右特異ベクトルに関してベクトルAの下に心内膜の信号Vを分解することにより次のものが提供される。
しかるべく、
である。
従って、特異ベクトルRiに比例した信号の部分は、ασがノイズのレベルを越えた場合に「再構築可能」であるということになる。いくつかの実施形態において、(行列)Aにより変換後もノイズ・ベル以上に留まる特異値成分の合計が合計信号エネルギーの少なくとも60%になる場合に心内膜の信号Vは再構築可能であると見なされる。当該
の点を中心として配置され且つResの「標準偏差」を有する鐘形の信号が再構築可能である場合に、心内膜上の特定の点iでの解像度はResであると言われている。
また、心内膜表面の表現の再構築された生理学的情報の解像度を決定する別のアプローチも、順変換Aの使用に依存する。上述の如く、行列Aは、サイズがm×n(行数mはカテーテル電極の数に対応し、列数nはメッシュ上の要素の数)の行列であり、心内膜表面の形状を示す。例えば、メッシュ上のi番目の要素上の電位が1Vであり、それ以外の場所の電位は0Vとして、A内のi列における値は、全電極上の電圧測定を表わすことができる。
従って、二乗された値を特定の列iに加算し、その合計を電極の数で割ることによって、心臓表面上の要素iからカテーテルの電極に伝播されたエネルギーの平均量に比例した値がもたらされる。
よって、心内膜表面上のi番目の要素の解像度Resは、次のように表わすことができる。
当然のことながら、列への平方エントリ(Squared entry)の各々は、カテーテル電極の一つにより受け取られたエネルギーに対応することは理解されることであろう。(上記方程式におけるjは、カテーテルのj番目の電極を表わす。)
心臓の表面上の特定の要素iからカテーテルの電極に来るエネルギーの平均量は、再構築解像度の良い指標である。カテーテルに達する時までには電圧が大幅に減衰される心臓表面上の部位は、解像度が乏しい状態で再構築されるのと比べ、電圧がさほど減衰されずに達する部位がより正確に再構築される。
一般に、心内膜境界上の特定の点の再構築解像度は、当該の点からカテーテルへの距離と、カテーテルが当該点から見える立体角に依存する。
図8は、解像度マップを生成する手順800の代表的な実施形態のフローチャートを示す図である。図示の如く、まず最初に、特定のカテーテル位置に対応する順変換Aが、例えば上記技法のいずれかを用いて810で得られる。
当然のことながら、心内膜表面での少なくともいくつか位置に対して決定された生理学的情報の空間解像度の度合いを示す値を有する解像度マップを決定するためのその他の技法を使用できることは理解されることであろう。
解像度マップがいったん生成されると、再構築された生理学的情報の精度および信頼性を決定する援助を提供すべく、830で医師に表示されうる。好ましい実施形態では、以下の技法の一つによって、解像度マップが心内膜の表現上の再構築された生理学的信号にオーバーレイ(すなわち、重畳)された状態で表示される。
1. グリッド線・・・心内膜の表現に現われるグリッド線密度を制御することによって心内膜の表現上に解像度値を表わすことができる。よって、心内膜の表現上のグリッド線は、高解像度の部位においては密集した状態に見える間、低解像度の部位においては目が粗く散在した状態に見えるであろう。同様に、解像度は、心内膜の表現の上に点を重畳
することにより表示することができる。この場合、高解像度部位における点の密度が低解像度の部位においてよりも高くなるように(グリッド線の密度の代わりに)点の密度を制御することによって解像度が表示される。
2. 透明度・・・表示された部位の透明度を制御することによっても解像度値を心内膜表面上に表わすことができる。よって、高解像度の部位が不透明に見える一方、低解像度の部位は漸増的に透明に見える。
3. 輝度・・・表示された部位の輝度を制御することによっても解像度値を心内膜表面の表現上に表わすことができる。よって、高解像度の部位が明るく見える一方、低解像度の部位は漸増的に暗く見えるかもしれない。
いくつかの実施形態では、解像度値のオーバーレイ(重畳)を指定する代わりに閾値化方式を使用しても良い。最小の解像度閾値(例えば1cm)を定義しうる。解像度が閾値よりも優れている部位は、対応する生理学的情報と共に(例えば、不透明に、明るい色で、などの様態で)表示される一方で、低解像度の部位はマスキングをされる(例えば、透明に、暗い色で、などの様態で表示される)ことになる。
なおも別の実施形態では、生理学的情報を示すさらに別の心内膜の表現の横に、独立した心内膜の表現を置きその上に解像度を表示しうる。医師はこの解像度を用いて、心内膜表面の表現上の再構築されたデータの信頼性を判断しうる。関心の対象となっている点で利用可能な解像度が不十分の場合、医師は、該関心の対象となっている点の方にカテーテルを動かして再構築解像度を向上させようにしても良い。
それに加えて、いくつかの実施形態では、生成された解像度マップを使用して、再構築された生理学的情報の複合された集合を構築できる。特に、生理学的情報の再構築された別の集合(複数の心拍且つ又は複数の位置で得られたものでありうる)がカテーテルの各位置に対して利用可能である状況においては、対応する解像度マップが、例えば上記技法の一つを用いて、利用可能な再構築された集合のそれぞれに対して生成される。続いて、対応する解像度マップ値が最良又は最適であるところの再構築生理学的情報の当該の集合から心内膜表面の表現における特定の面素に対して再構築値を選択することによって、又は上記されるような加重平均を行うことによって、再構築された生理学的情報の合成・複合の集合が生成される。
B. 等電位表現
再構築された電位は、所与の瞬間に心内膜表面上の電位分布のスナップ写真を提供する。かかる電位値は色分けされ、心内膜の表現の上に重畳された状態で表示されうる。明確にするために、補間された等しい電位の線を等高線輪郭で示した状態で等電位線を追加しても良い。
また、電位の伝播(すなわち、それらの時間的挙動)を複数の時間インスタンスを用いて計算してから同じような方法で表示するようにしても良い。その結果、色データ且つ又は等電位線が、電位分布の時間的な挙動を描く動画として表示されることになる。
C. タイミング・マップ
タイミング・マップは、その他の容易に検出可能な参照基準事象の発生に相対する特定の事象のタイミングに関する情報を表示する。この情報には、脱分極の開始(活性化)や再分極と活性化にかかる時間などの時間的な特性が含まれうる。参照基準事象には、特定の心臓内電位図(例えば、冠状静脈洞での電極)における活性化時間やECGのR波が含まれうる。一般に活性化波面伝播を示すためには、タイミング・マップの一種である活性
化時間マップ(等時線)が使用される。このタイプのマップにおいて、心内膜上の各点の活性化時間が決定され、それの値が色分けされて心内膜表面に表示される。言い換えると、等時線マップは、心内膜表面上の特定の位置で電位の脱分極が生じた時間インスタンスを同定する。よって、心拍周期中(又はそれ以上)の電気活動を、補間された等しい活性化時間の線を示す単一等時線等高線図に表示される。等時線マップの構築には、再構築された電位から活性化が生じた瞬間を検出ことが要求される。
図10は、活性化時間マップを生成する手順1000の代表的な実施形態のフローチャートを示す図である。図示されるように、1010で、心内膜表面に関係する電位値の再構築された集合が複数提供される。
次に、一連の再構築された集合と関連するそれぞれの面素に対して、当該の面素での活性化時間(すなわち、電位が脱分極化された時間)が、再構築された集合の値に基づいて1020で決定される。いくつかの実施形態においては、再構築された集合のうち電位の変化率が最も高いものを同定することにより活性化時間が決定される。その他の実施形態のいくつかでは、再構築された集合のうち、先に再構築された集合の電位に照らして見た場合にあらかじめ定められた閾値をいくらか越える電位の変化が一番最初に発生した集合を同定することにより活性化時間が決定される。なおも別の実施形態では、上記方法にて定型心拍で交差相関を使用することによって活性化時間が決定される。活性化時間インスタンスを確立するためのその他の方法も使用できる。同定された再構築集合は、活性化時間マップに記録される特定の時間インスタンスに関連する。当然のことながら、活性化時間マップのエントリは、関連する活性化時間が無いことを示す値(例えば、0の値又は負値)に初期段階において設定されたものでありうることは理解されることであろう。
一旦、(該当するものがある場合に)活性化時間が心内膜表面の表現の面素の全てに対して決定されると、それから派生する活性化時間マップが1030で表示される。
等時線マップは、単一の画像に活性化伝播を描く際に有用である一方、電位波形、振幅および一心拍につき複数の活性化が存在する部位と関係する情報を廃棄してしまうという点において限定される可能性がある。
活性化伝播の特性を強調表示するために付加的処理を行いうる。例えば、未活性の部位、又は所与の心拍中に二つ以上の活性を経験した部位を、さらなる調査に向けて強調表示しても良い。
当然のことながら、その他のタイプの生理学的情報についても活性化時間マップを生成しうることは理解されることであろう。
D. 電圧マップ
電圧マップは、心内膜表面の所与の部位における電圧振幅の特徴を表示するために使用することができる。電圧マップは、単一又は複数の心拍を通して再構築された電位から計算される。有用な情報としては、最大振幅、又は二乗平均電位値が考えられる。電圧マップは、低振幅(一般に<1mV)の傾向がある梗塞部位の検出に特に役立つ。
図11は、電圧マップを生成する手順1100の代表的な実施形態の実施形態のフローチャートを示す図である。図示の如く、電位の再構築集合の一つ又は複数が1110で提供される。該再構築された集合(複数可)は、カテーテル110の複数電極により行われた単一の計測から計算された再構築電位に対応しうる、又はその代わりとして、数心拍を通してとられたいくつかの計測に対応しうる、また、さらに概して言うと、数心拍を通じての心室における複数位置で且つ又は心臓周期の異なる位相でとられた複数の計測に対応しうる。
提供された再構築集合は、その後、(1120で)再構築された集合から対応値を代表する計量値を心内膜表面の表現の各面素に対して決定するために処理される。いくつかの実施形態において、該計量値は、面素と関連する(利用可能な再構築集合により提供された)めいめいの値から同定された最大振幅電位値である。いくつかの実施形態において、該計量値は、再構築された集合から様々なめいめいの値の二乗平均として計算される。心内膜表面の様々な位置での電位のその他の代表値が計算されうる。一旦心内膜表面の表現の特定の面素に関する計量値が計算されると、その値は、電圧マップの対応するエントリに記録される。
電圧マップは、広範なダイナミックレンジ(動作範囲)の値を有しうる。心臓の健全な部位は、心内膜表面で5−60mVの範囲内の電位値を有する傾向があるが、梗塞部位は、1mV未満の最大振幅を有する傾向がある。このようにダイナミックレンジが広いために、これらの電圧を効率的に可視化することが困難である。電圧に色を割り当てるカラーマップを調整することによって可視化を拡張しうる。一般に使用される調整の一つとしては、範囲外の値が最小又は最大範囲値のいずれかにクランプ(固定)されるような条件を満たすように関心の対象となっている範囲を定義する方法である。該範囲内の値は、カラーマップに直線的に適合(一致)される。
よって、いくつかの実施形態における電圧マップの計量値は、(1130で)対応するカラーマップ値に変換される。1130で計算された色値を含む電圧マップは、その後1140で心内膜表面の表現上に表示される。
図5は、線形カラーマップ一致方式を使用して生成された代表的な電圧マップの図解である。図示の如く、心内膜表面における異なる電気活動を伴う部位は容易に区別できる。電圧マップ手順1100のための別の有用な色変換方式としては、対数による色変換法がある。
E. 相違マップ
前述の如く、電圧マップに基づく別のタイプの後処理操作としては、相違マップの生成がある。相違マップは、不整脈の症状を向上させるために患者に施される焼灼治療などの臨床治療処置の有効性に関する情報を提供する。相違マップは、特定の臨床治療処置の実施前後に生成された二つ以上の電圧マップから反映される心臓の電気的な挙動を比較する。
よって、第1の電圧マップを生成後、臨床治療処置(例えば焼灼治療)が、治療が必要であると(第1の電圧マップにより提供される情報の助けをかりて)判明した心臓の部位に施される。焼灼治療が行われた後、第2の電圧マップが生成される。第1の焼灼マップの値は、第2の電圧マップの対応する値から引かれる。焼灼治療が行われた特定の心内膜表面上の位置に対応するめいめいの電圧マップのエントリのいかなるものの間に有意差が無い場合、これは、当該の位置で行われた焼灼治療の臨床効果がほとんど無かったことを示しうる。
ここで再び、その他のタイプの生理学的情報についても、上記電圧マップに相似するマップを生成しうることが理解されることであろう。例えば、心臓周期における特定の位相で測定された電位の違いを、相違マップによって示すことが可能である。
F. 周波数マップ
細動の機構に関する理解が深まるにつれて、治療の指標として分光分析を使用することがますます強調されてきている。分光分析および周波数マッピングは、細動中に高周波活動の局部を同定するために使用される。これらの部位での焼灼は、細動の変化(また、時
には停止)につながり、しかるに不整脈の維持療法におけるそれらの役割を述べる。
分光分析では、周波数データが色分けされて、心内膜表面の三次元解剖学的表現に表示される。いくつかの実施形態において、該表示されるデータは、活性化が所与の位置において発生する優位周波数である。
例えば、図9は、電位図の時間および周波数表現を示す線図である。図中、左側の画像は、細動する細胞組織における電位図電位を時間の関数として表すものである。左側の画像は、同じ信号の高速フーリエ変換(FFT)を表すものである。この例において、信号の優位周波数(DF)は9.6Hzである。時間依存性の信号にFFTを適用することにより、関心の対象となるそれぞれの位置に対してDFを計算でき、それによって最大振幅が存在する周波数を決定できる。その後、DFは色分けされて、対応する心室の解剖学的構造の上に表示される。
よって、心内膜表面の再構築された集合のその他に関しても、類似する分光分析を行いうる。図13は、周波数マップを生成するための手順1300の代表的な実施形態のフローチャートを示す図である。図示の如く、心内膜表面での生理学的情報の再構築された集合が複数1310で提供される。再構築された集合は、カテーテル110により行われた計測の時系列に対応する。その後1320で、高速フーリエ変換などの周波数変換手順が、再構築された集合に対して行われる。心内膜表面の表現の個々の面素に対応する再構築された集合の値に対して、周波数変換手順が個々に行われる。特定の面素に対して時間挙動の合成周波数の表現から得られた代表値(例えば、優位周波数など)が、当該特定の面素に対応する周波数マップエントリに記録される。いくつかの実施形態では、周波数変換が行われる時間的データが複数の面素に対応するということもあり得る。
いったん周波数変換手順が完了したならば、(1330で)周波数表現の値が、合成値が表示された時により容易に観察できるようにするために、対応するカラーマップの値に変換される。1330で計算された色値を含む色付き周波数マップは、その後に1340で心内膜表面の表現に表示される。
用途
心臓組織の電気的な解剖学的構造の特徴のマッピングは、不整脈および心不全を含む多くの疾患に対する治療の指標として有用になりえる。
不整脈の標的療法の場合、不整脈の発症源を正確に同定することが必要である。洞調律、自発性不整脈もしくは誘発性不整脈、又は心臓調整(ペーシング)中に、根底をなす細胞組織を電気解剖学的に特性評価することにより不整脈の発症源を同定しうる。電気的な解剖学的構造の特性評価には、伝導の時空間的特性が多く含まれる。これには、例えば、出口部位および好ましからざる自発性細胞焼成を示す早期活性化部位を同定するための活性化時間マッピング、梗塞領域を示す低電圧部位を同定するための最大電圧、並びに再分極時間とスペクトル挙動が含まれる。一旦不整脈の発症源が同定された時点で、治療クールの処置に着手できる。
RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、冷却、超音波、化学薬品、放射線又はレーザー光線の導入によって達成される細胞組織の焼灼などが治療に含まれうる。またその代わりとして、心筋修復を行うことができる細胞又は生理学的作用を変えることができる遺伝子などの生物学的因子の投入と標的導入などによっても治療を行いうる。
細胞療法については、例えば、ロングリ・ライオ博士著の非特許文献4と、ピーター C.スミツ著の非特許文献5と、ゲップステイン著の非特許文献6とを参照されたい。遺伝子療法については、例えば、J.ケブン・ドナヒュー著の非特許文献7および、ケブン
・ドナヒュー医学博士著の非特許文献8とを参照されたい。
心不全の患者の場合、電気的な解剖学的構造のマッピングに主に関与するのは、梗塞形成を示す低電位部位ならびに機械的な動きの減衰を示す部位の同定である。いったん罹患部が同定されると、心筋修復および再生を行うことができる細胞又は遺伝子の投入の標的導入が治療に伴う。幹細胞生物学の分野における最近の進歩によって、科学者は、心筋再生のための新たな方法を開発するツールとして活用できるかもしれないものを得ることが可能となった。
また、かかる生物学的治療は、電気的な解剖学的構造のマッピングを採用してマップできる細胞組織の電気的特性にも影響する。
不整脈と心不全の治療の両方に関し、治療の提供に引き続いて電気的な解剖学的構造のマッピングを使用し、治療の有効性を確認するようにしても良い。これは、例えば、焼灼エネルギーが導入された部位における伝導遮断を確認するため、又は生体埋込の後に再生された機械的な動きを確認するために同手順中に達成しうる。その代わりとして、又はそれに加えて、長期療法有効性を確認すべく、定期的な事後追認検討を該手順の数か月後に行うようにしても良い。
(その他の実施形態)
ここに記載される方法およびシステムは特定のハードウェア又はソフトウェア構成に限定されず、多くの計算環境又は処理環境に適用できる可能性があるものである。該方法とシステムは、ハードウェア又は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにおいて実施できる、且つ又は市販のモジュールアプリケーションおよび装置から実施できる。ここに記載されるシステムおよび方法の実施が少なくとも部分的にマイクロプロセッサの使用に基づく場合、該方法およびシステムは、一つ又は複数のコンピュータ・プログラムにおいて実施できる。またこの場合、コンピュータ・プログラムは一つ又は複数のプロセッサにより実行可能な指示を含むものと理解できる。コンピュータ・プログラム(複数可)は、一つ又は複数プログラム可能なプロセッサ上で実行でき、且つ、(揮発性および不揮発性メモリ且つ又は記憶素子を含む)プロセッサにより読取り可能な一つ又は複数の記憶媒体、一つ又は複数の入力装置且つ又は一つ又は複数の出力装置に格納できる。よって、プロセッサは、入力データを得るために一つ又は複数の入力装置にアクセスでき、出力データを通信するために一つ又は複数の出力装置にアクセスできる。ランダムアクセスメモリ(RAM)、レイド(RAID)、フロッピー(登録商標)・ドライブ、CD、DVD、磁気ディスク、内臓ハードドライブ、外部ハードドライブおよびメモリスティック、又はここに提示されるようなプロセッサによりアクセスできるその他の記憶装置の一つ又は複数を、該入力且つ又は出力装置は含み得る。但し、全ての実施例が前記にて網羅されている訳ではなく、かかる前記の実施例は例示の目的で記載されているに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。
コンピュータ・プログラム(複数可)は、コンピュータシステムと通信するために一つ又は複数のハイレベルな手続きプログラミング言語又はオブジェクト指向プログラミング言語を使用して実施することができるが、望ましい場合にはコンピュータ・プログラム(複数可)をアセンブリ言語又は機械言語において実施することもできる。言語はコンパイル又は読解することができる。プロセッサ(複数可)内臓の装置(複数可)又はコンピュータ・システム(複)には、例えば、パソコン(複数可)、ワークステーション(例えば、Sun、HP)、個人用デジタル情報処理端末(PDA)、携帯電話などの手持ちサイズ(ハンドヘルド)の装置、ラップトップ、ハンドヘルドコンピュータ、又はここに提示されるように作動できるプロセッサを内臓する能力を有する別のデバイスが含まれる。しかるべく、全ての装置がここに提示されている訳ではなく、ここに提示されているものは例示の目的で記載されているに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではない。
「(一つの)マイクロプロセッサ」および「(一つの)プロセッサ」、又は「(該)マイクロプロセッサ」および「(該)プロセッサ」という用語に関連する表現は、独立且つ又は分散環境(複数可)において通信でき、よってその他のプロセッサと有線又は無線通信を介して通信するように構成できる一つ又は複数のマイクロプロセッサを含むものであり、且つ、かかる一つ又は複数のプロセッサは、プロセッサに制御される一つ又は複数の装置(類似している又は異なる装置でありえる)を操作するように構成できるものを指していると理解できる。
さらに、メモリという用語に関連する表現は、別途指示なき限り、プロセッサに制御される装置に内臓される又はプロセッサに制御される装置の外部に取り付けられ、様々な通信プロトコルの使用により有線又は無線ネットワークを介してアクセスでき、且つ別途指示なき限り、かかるメモリをアプリケーションに基づきパーティション分割できる且つ又は隣接できる外部および内臓メモリ素子の組み合わせを含むように配置できる一つ又は複数のプロセッサ可読アクセス可能な記憶素子且つ又は構成部品を含み得る。しかるべく、データベースに関連する表現は、一つ又は複数のメモリ関連付けを含んでおり、
かかる表現は、市販のデータベース製品(例えば、SQL、インフォミックス、オラクル)、さらにプロプライエタリの(独自の仕様による)データベースを含むことができ、且つ、リンクおよび待ち行列、グラフ、階層ツリーなどもメモリを関連付けるためのその他の構造(かかる構造は例示として記載されているにすぎず本発明を限定するものではない)も含みうるものを指していると理解できる。本発明の実施形態を数々説明したが、当然のことながら、本発明の精神と範囲から逸脱することなく様々な変更を加えうることが理解されるであろう。しかるべく、以上の(特許請求の範囲)の適用範囲内に含まれるその他の実施形態を包含する。
代表的な非接触式マッピングシステムの概略図。 代表的な非接触式マッピング手順のフローチャートを示す図。 心内膜表面の表現の代表的な図解。 左心房の心内膜表面のメッシュ状境界表現の代表的な図解。 線形カラーマップマッチング方式を用いて生成した代表的な電圧マップの図解。 カテーテル登録手順の代表的な実施形態のフローチャートを示す図。 カテーテルの複数の電極により得られる信号から生理学的情報を再構築するための手順の代表的な実施形態のフローチャートを示す図。 解像度マップを作成する手順の代表的な実施形態のフローチャートを示す図。 代表的な電位図の時間および周波数の表現を示す線図。 活性化時間マップを作成する手順の代表的な実施形態のフローチャートを示す図。 電圧マップを作成する手順の代表的な実施形態の実施形態のフローチャートを示す図。 信号位相整列を示す概略図。 周波数マップを作成するための手順の代表的な実施形態のフローチャートを示す図。各種の図面において同様の参照記号が割り当てられているものは、同様の要素を示す。

Claims (15)

  1. 心内膜表面を有する心臓腔に挿入されるように構成され、且つ心臓腔における複数の異なる位置のそれぞれに動かせるように構成されるカテーテルであって、心臓腔における電気活動に応答して信号を測定するように構成され且つ空間的に分布された複数の電極を備える、前記カテーテルと、
    異なるカテーテル位置のそれぞれに対して、心内膜表面に対してのカテーテル電極の位置を決定するように構成されたセンサ素子と、
    カテーテル電極の決定位置と異なるカテーテル位置での測定信号に基づいて、心内膜表面の複数位置での生理学的情報を決定するように構成された処理ユニットであって、心内膜表面の前記複数位置のうちの少なくともいくつかに対して決定後の生理学的情報の空間解像度の度合いを示す値を計算するようにさらに構成される、前記処理ユニットと、
    を含む、システム。
  2. センサ素子は、各カテーテル位置の少なくとも一つの電気的心臓周期に対して信号を測定する、請求項1に記載のシステム。
  3. 心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、電気的心拍周期に応じて異なるカテーテル位置で決定された信号を互いに同期化することが含まれる、請求項2に記載のシステム。
  4. 心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、あたかも、心臓腔におけるカテーテルの異なる位置に対してカテーテル電極によりサンプリングされた位置の全てから一度に同期信号が得られたかのように同期信号を処理することがさらに含まれる、請求項3に記載のシステム。
  5. 心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、同期信号に変形関数を適用することがさらに含まれ、
    変形関数が、心臓腔におけるカテーテルの異なる位置の少なくともいくつかから測定された信号を、心内膜表面の複数位置での生理学的情報に関係づける、請求項3または請求項4に記載のシステム。
  6. 心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、心内膜表面の複数位置での生理学的情報を心臓腔におけるカテーテルの異なる位置に対して測定された信号に関係づけるための順変換の計算を行って、順変換を反転させることにより変形関数を決定することがさらに含まれる、請求項5に記載のシステム。
  7. 心内膜表面の複数位置での生理学的情報の決定には、異なるカテーテル位置の少なくともいくつかに対応する測定信号に基づいて、心内膜上の位置の少なくともいくつかのそれぞれに対して生理学的情報の複数の推計を決定することが含まれる、請求項1に記載のシステム。
  8. 生理学的情報の複数の推計を平均算出によって処理し、該平均算出が加重平均である、請求項7に記載のシステム。
  9. 決定された生理学的情報には、
    心拍周期の一つ又は複数の異なる位相のそれぞれにおける心内膜表面の複数位置での電位値と、
    心内膜表面位置の異なる位置における一つ又は複数の心拍周期の最高電圧振幅と、
    心拍周期中の心内膜表面の複数位置での電気活動の周波数表現とのうちの少なくとも一つが含まれており、
    心拍周期の異なる位相における心内膜表面の複数位置での電位値および心内膜表面の異なる位置のそれぞれにおける活性化時間に基づいて周波数表現が計算される、請求項1に記載のシステム。
  10. 複数の表面位置で決定された生理学的情報の少なくともいくつかを含むように心内膜表面の少なくとも一部分を表示する表示素子をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
  11. 心臓腔の治療の指標として用いるために、決定された生理学的情報に符号を付けることをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
  12. 心内膜表面を有する心臓腔に挿入されるように構成され、且つ心臓腔における電気活動に応答して信号を測定するように構成され且つ空間的に分布された複数の電極を備える、カテーテルと、
    心内膜面に対する電極の位置と測定信号とに基づいて、心内膜表面の複数位置での生理学的情報を決定するように構成された処理ユニットであって、心内膜表面の前記複数位置のうちの少なくともいくつかに対して決定後の生理学的情報の空間解像度の度合いを示す値を計算するようにさらに構成される、前記処理ユニットと、を含み、
    信号が、複数の電気的心拍周期の間に測定されることを特徴とし、且つ、
    生理学的情報が、異なる心拍周期の信号から導かれた情報を組み合わせることにより少なくとも部分的に決定される、システム。
  13. 心内膜表面に対するカテーテル電極の位置を決定するための処理ユニットと交信するように構成されたセンサ素子をさらに含み、
    カテーテルが、心臓腔における複数の異なる位置のそれぞれに動かせるように構成されており、
    センサ素子が、異なるカテーテル位置のそれぞれに対して、心内膜表面に対してのカテーテル電極の位置を決定するように構成され且つカテーテルの電極が、心臓腔における電気活動に応答して信号を測定するように構成されており、
    処理ユニットが、異なるカテーテル位置でのカテーテル電極位置および測定信号に基づいて、心内膜表面の複数位置での生理学的情報を決定するようにさらに構成されている、
    請求項12に記載のシステム。
  14. 組み合わせ処理には、電気的心拍周期の共通位相に対して信号から導かれた情報を統合することが含まれる、請求項12に記載のシステム。
  15. 決定された生理学的情報の少なくとも一部分を表示するように構成された表示素子をさらに含み、
    決定された生理学的情報には、
    心拍周期の一つ又は複数の異なる位相のそれぞれにおける心内膜表面の複数位置での電位値と、
    心内膜表面位置の異なる位置における一つ又は複数の心拍周期の最高電圧振幅と、
    心拍周期中の心内膜表面の複数位置での電気活動の周波数表現とのうちの少なくとも一つが含まれており、
    周波数表現が心拍周期の異なる位相における心内膜表面の複数位置での電位値および心内膜表面の異なる位置のそれぞれにおける活性化時間に基づいて計算される、請求項12に記載のシステム。
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