JP5281439B2 - クローズドデッキ型シリンダブロック及びその製造方法 - Google Patents

クローズドデッキ型シリンダブロック及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オープンデッキ型シリンダブロックを閉塞部材により閉塞し、該閉塞部材を摩擦撹拌作用によって該シリンダブロック本体に接合して構成されるシリンダブロック及びその製造方法に関するものである。
自動車等の内燃機関を構成するシリンダブロックの1種として、ウォータジャケット部のガスケット面側が一体的に閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロックがある。クローズドデッキ型シリンダブロックには、ブロック本体の肉厚が同一であれば、ウォータジャケット部のガスケット面側が開放されているオープンデッキ型シリンダブロックに比して剛性が高いという利点がある。一方、体積をさほどに小さくすることができないという難点がある。
そこで、本出願人は特許文献1でこの問題点を克服すべく発明「クローズドデッキ型シリンダブロック及びその製造方法」を提案している。
特開2004−116481号公報
本発明は前記特許文献1の発明に関連してなされたものであって、シリンダブロックを構成するウォータジャケット部のガスケット面側を閉塞部材により閉塞して、摩擦撹拌接合する際に、前記閉塞部材の重量と摩擦撹拌接合装置の加圧力を十分に担持し、その結果、良好な接合品質を確保することが可能なクローズドデッキ型シリンダブロック及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、
孔部が設けられたブロック本体と、
前記ブロック本体に設けられたウォータジャケット部とを備え、
前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロックであって、
前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側は、閉塞部材によって閉塞されており、
前記閉塞部材の外周部は、前記ブロック本体と摩擦撹拌接合にて突き合わせ接合され、前記閉塞部材の内周部は、前記ブロック本体と連続する軌跡を辿る摩擦撹拌接合にて重ね合わせ接合され
前記重ね合わせ接合は、隣り合う前記孔部の軸間の壁部においては複数回行っていることを特徴とする。
これにより、ブロック本体と閉塞部材とを摩擦撹拌接合する場合に、良好な接合品質を確保できるため、剛性に優れた、しかも、小さな体積のクローズドデッキ型シリンダブロックを構成することができる。
記ブロック本体のガスケット面側に段差部が設けられ、前記閉塞部材は、前記段差部に突き合わせるように載置されることが好ましい
これにより、閉塞部材をブロック本体に接合する際に生じる接合加重を前記段差部で担持することが可能となるため、接合する際に、閉塞部材が重力や摩擦撹拌による加圧力で落ち込むことがなく、良好な接合品質を確保することができる。
また、前記シリンダブロックが鋳包まれたシリンダスリーブを有することが好ましい
これにより、シリンダブロックと閉塞部材とが摩擦撹拌接合されているので、シリンダブロック内のシリンダスリーブをより堅牢に保持することができる。
またさらに、前記孔部の外周壁の上端が、隣接する孔部の外周壁の上端と一体化されていることが好ましい
これにより、閉塞部材の内周部全周をブロック本体に摩擦撹拌接合する際、連続する軌跡で接合することができるために、ブロック本体に閉塞部材を一体化するためのサイクルタイムの短縮が可能となる。
さらに、本発明は、
孔部とウォータジャケット部とを有するブロック本体を鋳造形成する工程と、
前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側を閉塞部材にて閉塞する工程と、
前記閉塞部材の外周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに突き合わせ接合する工程と、
前記閉塞部材の内周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに重ね合わせ接合する工程と、
を有し、
前記重ね合わせ接合する工程では、前記内周部全周を連続する軌跡で接合し、隣り合う前記孔部の軸間の壁部においては複数回行うことを特徴とする。
これにより、ブロック本体と閉塞部材との接合において、良好な接合品質を確保できるため、剛性に優れたクローズドデッキ型シリンダブロックを構成することができる。
記ウォータジャケット部が設けられている前記ブロック本体のガスケット面側に、前記閉塞部材を載置するための段差部を形成する工程をさらに有することが好ましい
これにより、前記摩擦撹拌作用による突き合わせ接合を容易に且つ品質良く行うためである。
また、前記閉塞部材の外周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに突き合わせ接合する工程が、前記外周部の全周を連続する軌跡で接合し、前記閉塞部材の内周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに重ね合わせ接合する工程が、前記内周部の全周を連続する軌跡で接合することが好ましい
これにより、前記ブロック本体と閉塞部材との摩擦撹拌接合のサイクルタイムの短縮が達成される。
本発明によれば、シリンダブロックを構成するブロック本体に形成され、且つ開放されているウォータジャケット部をガスケット面側から閉塞部材で閉塞し、該閉塞部材の外周側とブロック本体とを摩擦撹拌作用によって突き合わせ接合し、しかも、該閉塞部材の内周側とブロック本体とを摩擦撹拌作用によって重ね合わせ接合することにより、剛性に優れ、しかも小型化が一層促進されるとともに、効率的に良好な接合品質のシリンダブロックを得ることができる。
本実施の形態に係るクローズドデッキ型シリンダブロックの分解斜視図である。 図1に示すクローズドデッキ型シリンダブロックの要部縦断面図である。 図2に示すクローズドデッキ型シリンダブロックにおけるガスケット面側からの平面図である。 図2に示すクローズドデッキ型シリンダブロックを構成するブロック本体の要部縦断面図である。 図4に示すブロック本体におけるガスケット面側からの平面図である。 シリンダスリーブの外周壁部を孔部の内周壁部に摩擦撹拌接合にて接合する状態を示す要部縦断面図である。 閉塞部材の外周部をブロック本体に摩擦撹拌接合にて突き合わせ接合する状態を示す要部縦断面図である。 図7に示す突き合わせ接合する状態における摩擦撹拌接合用工具の移動方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。 閉塞部材の内周部をブロック本体に摩擦撹拌接合にて重ね合わせ接合する状態を示す要部縦断面図である。 図9に示す重ね合わせ接合する状態における摩擦撹拌接合用工具の移動方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。 摩擦撹拌接合する際の接合回数に対する硬度変化を示す特性曲線図である。
以下、本発明に係るクローズドデッキ型シリンダブロックについて、その製造方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明に係るクローズドデッキ型シリンダブロック(以下、単にシリンダブロックともいう)10の斜視説明図であり、図2はシリンダブロック10の要部縦断面図であるとともに、図3はその上端面であるガスケット面12側からの平面図である。
シリンダブロック10は、シリンダスリーブを挿入するための孔部14a〜14cが設けられたアルミニウムからなるブロック本体16と、該孔部14a〜14cにそれぞれ挿入されたシリンダスリーブ18a〜18cと、該シリンダスリーブ18a〜18cを冷却する冷却水が導入されるウォータジャケット部20と、該ウォータジャケット部20のガスケット面12側を閉塞する閉塞部材22とを有する。なお、ブロック本体16の材質によっては、前記孔部14a〜14cにシリンダスリーブ18a〜18cを挿入しなくてもよい。
ブロック本体16は、例えば、高圧鋳造(以下、HPDCと記す)によって成形されるものであって、該ブロック本体16の前記孔部14a〜14c近傍には、成形時にシリンダスリーブ18a〜18cの一端部が着座する環状段部24a〜24cが設けられる。このため、前記孔部14a〜14cは、環状段部24a〜24cが存在する部位から内径が大きくなっている。図4及び図5に示すように、ブロック本体16のガスケット面12側には、閉塞部材22の外周部の形状に対応し、該閉塞部材22が載置可能な段差部26が設けられる。ここで、該段差部26はHPDCによって成形後、表面仕上加工され、加工精度が確保された後、前記段差部26上に閉塞部材22が載置される。閉塞部材22はアルミニウム製であって、その側面と下面は、その際に可及的に平滑になるように仕上げ加工しておく。
この場合、シリンダスリーブ用孔部14aと14b、孔部14bと14cの互いに隣接する壁部の厚さTを可及的に薄くすると良い。シリンダブロック全体としての体積を小さくし、且つ摩擦撹拌接合を効率的に行うためである。
ウォータジャケット部20は、孔部14a〜14cから所定間隔離間し、且つ該孔部14a〜14cを囲繞するように、ブロック本体16に設けられる。なお、隣接する孔部14aと孔部14bとの外周壁の上端同士は前記孔部14a、14bの軸間の壁部28aとして、一体化されており、前記ウォータジャケット部20は設けられていない。また、隣接する孔部14bと孔部14cとの外周壁の上端同士も、前記孔部14b、14cの軸間の壁部28bとして一体化され、前記ウォータジャケット部20は設けられていない。
前記孔部14a〜14cに収装されるシリンダスリーブ18a〜18cは、ハイシリコン系アルミニウムや鋳鉄からなる円筒体である。これらシリンダスリーブ18a〜18cは、孔部14a〜14cに設けられた環状段部24a〜24cにそれぞれ載置されることにより位置決め保持される。そして、内燃機関を構成する図示しないピストンの側周壁部は、このように構成されたシリンダスリーブ18a〜18cの内周壁部に摺接する。ここで、前記シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cは、前記環状段部24a〜24cにそれぞれ載置されたときに、前記孔部14a〜14cの上端面と面一となるように形成される。
図3から容易に諒解されるように、閉塞部材22は、前記孔部14a〜14cに対応した3個の環状部材が直線的に連結された形状で構成され、ブロック本体16に載置された時、その上面はガスケット面12と面一となる。そして、前記ガスケット面12には、図示しないシリンダヘッドとの間でガスケット(図示せず)が載置される。前記閉塞部材22の外周部は段差部26の側面に突き合わせ嵌合するように載置されるとともに、該閉塞部材22の内周部は前記孔部14a〜14cと前記孔部14a〜14cの軸間の壁部28a、28bとのそれぞれの上端面、及びシリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30c上に重畳して載置されることによって、ウォータジャケット部20のガスケット面12側が閉塞される。このため、閉塞部材22の外周端面は加工精度を確保すべく、機械加工により加工する必要があるが、該閉塞部材22の内周端面は、加工精度をさほどに要求されないので精密な機械加工は不要である。結局、閉塞部材の外周端面と内周端面との両者に、機械加工が必要である場合に比して、機械加工工数は半減する。なお、以上のように閉塞部材22が被蓋される結果、シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cが外部に露呈することはない。
以上のような構成において、該ブロック本体16のガスケット面12側に載置された閉塞部材22の外周部と内周部とがそれぞれブロック本体16と接合される。この接合は、後述するように、摩擦撹拌接合によって行われる。
なお、図2及び図3においては、理解を容易にするために、接合後のブロック本体16と閉塞部材22とを境界線にて明示しているが、実際には、該ブロック本体16と閉塞部材22とは摩擦撹拌接合によって継目なく接合されている。すなわち、該ブロック本体16と該閉塞部材22とは一体的に接合されており、明確な境界線は存在しない。
以下に、本実施の形態に係るシリンダブロック10の製造方法について説明する。
先ず、HPDCによって、図4に示すアルミニウムを原材料とするブロック本体16を鋳造成形する。
その際、予めブロック本体16のガスケット面12側に、閉塞部材22を載置することができる段差部26をHPDCによって成形すべく鋳型を形成しておく。ブロック本体16を成形した後、前記段差部26はその側面と表面が機械的に仕上加工される。一方、円筒体形状のシリンダスリーブ18a〜18cを押し出し成形や鋳造成形等によって作製しておき、このシリンダスリーブ18a〜18cを、ブロック本体16の孔部14a〜14cに挿入する。挿入されたシリンダスリーブ18a〜18cの各下端部が環状段部24a〜24cに載置されると、シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cと孔部14a〜14cを形成する壁部の上端面とが面一となり、該シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cと孔部14a〜14cを形成する壁部の上端面とは、ブロック本体16のガスケット面12から閉塞部材22の肉厚だけ、内側へ凹んだ形状となる。この場合、前記実施形態に代えて、予め図示しない金型内に前記シリンダスリーブ18a〜18cを配置し、次いで溶湯を金型内に流し込み、該シリンダスリーブ18a〜18cを鋳包むようにしてシリンダのブロック本体16を形成してもよい。
次いで、孔部14a〜14cを形成するブロック本体16の内周壁部と、シリンダスリーブ18a〜18cの外周壁部とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する。図6にシリンダスリーブ18aの外周壁部を孔部14aの内周壁部に摩擦撹拌接合にて接合する状態の要部縦断面図を示す。
図6に示すように、摩擦撹拌接合用工具40は、円柱状の第1回転体42と、この第1回転体42の側周壁部に設けられて該第1回転体42とは独立して回転可能な円柱状の第2回転体44と、該第2回転体44の先端部に設けられたプローブ46とを有する。本実施の形態においては、第1回転体42をシリンダスリーブ18aの長手方向に沿って挿入し、プローブ46をシリンダスリーブ18aの内周壁部に当接させる。
この状態で第2回転体44を回転付勢すると、プローブ46がシリンダスリーブ18aの内周壁部に摺接することに伴って摩擦熱が発生し、該内周壁部におけるプローブ46の当接箇所が軟化する。その結果、プローブ46の先端部がシリンダスリーブ18aと孔部14aを構成するブロック本体16の内周壁部との当接箇所に到達し、該当接箇所においても、シリンダスリーブ18aの外周壁部と孔部14aを形成するブロック本体16の内周壁部とが摩擦熱によって軟化する。
そして、第1回転体42をシリンダスリーブ18aの内周壁部に沿って回動動作させると、第2回転体44もシリンダスリーブ18aの内周壁部に沿って周回し、該内周壁部は軟化するに至る。このように軟化した肉は、塑性流動した後にプローブ46が離間することに伴って孔部14aとシリンダスリーブ18aが互いに固相接合される。すなわち、シリンダスリーブ18aの外周壁部と孔部14aを形成するブロック本体16の内周壁部とが一体的に固相接合される。残余のシリンダスリーブ18b、18cにおいても同様の作業が行われる。
次に、段差部26上に閉塞部材22を載置する。前記のように屈曲する形状の段差部26の側面と表面とが機械加工によって精密に仕上加工され、前記閉塞部材22もまたその外周側面と下面を平滑に仕上加工されているので、該段差部26に閉塞部材22の外周はぴったりと嵌合するに至る。次いで、該閉塞部材22とブロック本体16とを摩擦撹拌接合する。この際、前記段差部26が、前記閉塞部材22の重量と摩擦撹拌接合時の加圧力を担持する。
図7は閉塞部材22の外周部をブロック本体16に摩擦撹拌にて突き合わせ接合する状態を示す要部縦断面図を示し、図8は前記突き合わせ接合する状態における摩擦撹拌接合用工具50の移動方向(以下、矢印Aと記す)を示す。
図7に示すように、閉塞部材22の外周部をブロック本体16に摩擦撹拌にて突き合わせ接合する際、前記摩擦撹拌接合用工具40と同様な構成で、且つ小型の摩擦撹拌接合用工具50が使用される。この摩擦撹拌接合用工具50は、回転体52と、該回転体52に比して小径で且つ先端が円錐状のプローブ54とを備える。
この摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54を、閉塞部材22の外周部とブロック本体16のガスケット面12との任意の突き合わせ位置、例えば、図8に示す点Xに当接させ、回転体52を回転付勢する。この回転付勢に伴って上記と同様にブロック本体16の肉が塑性流動を起こし、その結果、プローブ54がブロック本体16に埋没される。この状態で、図8の矢印Aに沿って摩擦撹拌接合用工具50を移動させれば、閉塞部材22の外周部とブロック本体16との肉とが摩擦撹拌接合されることに伴い、閉塞部材22の外周部の全周とブロック本体16とが接合される。具体的には、点Xにて、プローブ54を埋没させ、矢印Aに沿って、点Xから摩擦撹拌接合を開始し、前記閉塞部材22の外周部を一周して、すなわち、連続する軌跡でプローブ54を移動させ、再び点Xに至る。前記摩擦撹拌接合終了後、点Xでプローブ54を引き抜く。この間、プローブ54は閉塞部材22から何度も埋没させたり、引き抜いたりさせる必要はない。なお、接合開始位置と接合終了位置とは、点Xの如く同じ位置でなければならないものではなく、異なる位置でもよい。
図9は、閉塞部材22の内周部をブロック本体16に摩擦撹拌にて重ね合わせ接合する状態を示す要部縦断面図を示し、図10は前記重ね合わせ接合する状態における摩擦撹拌接合用工具50の移動方向(以下、矢印Bと記す)を示す。
図9に示すように、閉塞部材22の内周部をブロック本体16に摩擦撹拌にて重ね合わせ接合する際、上記と同様に摩擦撹拌接合用工具50が使用される。
この摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54を、閉塞部材22の内周部とブロック本体16のガスケット面12との任意の重ね位置、例えば、図10に示す点Yに圧接させ、回転体52を回転付勢する。この回転付勢に伴って閉塞部材22の内周部の肉が塑性流動を起こし、その結果、プローブ54が閉塞部材22の内周部に埋没される。この状態で、図10の矢印Bに沿って、摩擦撹拌接合用工具50を移動させれば、閉塞部材22の内周部とブロック本体16との肉とが摩擦撹拌接合されることに伴い、閉塞部材22の内周部とブロック本体16とが接合される。ここで、隣接する孔部14aと孔部14bとの互いの外周壁の上端が一体化するように設けられているため、前記閉塞部材22の内周部の全周とブロック本体16とを連続する軌跡で接合することができる。具体的には、図10を参照して説明すれば、点Yにて、プローブ54を埋没させ、矢印Bに沿って、点Yから摩擦撹拌接合を開始し、孔部14aの上方を通り、孔部14a、14bの軸間の壁部28aを左上方から右下方へ通過し、隣接する孔部14bの下方を通り、孔部14b、14cの軸間の壁部28bを左下方から右上方へ通過し、隣接する孔部14cの上方を通る。そして、該孔部14cの上方から該孔部14cの下方を通り、該孔部14b、14cの軸間の壁部28bを右下方から左上方へ通過し、隣接する孔部14bの上方を通った後、該孔部14a、14bの軸間の壁部28aを右上方から左下方へ通過し、隣接する孔部14aの下方を通り、再び点Yに至る。すなわち、前記孔部14a〜14cの軸間の壁部28a、28bは図10に示す矢印Bが交差する箇所Cにおいて、2回接合されることになる。前記接合終了後、点Yでプローブ54を引き抜く。なお、接合開始位置と接合終了位置とは、点Yの如く同じ位置でもよく、また、異なる位置でもよい。
本実施の形態によれば、閉塞部材22とブロック本体16とが摩擦撹拌接合によって一体的に接合されている。具体的には、閉塞部材22の外周部とブロック本体16とは突き合わせ接合によって、閉塞部材22の内周部とブロック本体16とは重ね合わせ接合によって、それぞれ強固に接合されているので、剛性に優れたシリンダブロック10を構成することができる。
シリンダスリーブ18a〜18cが、特に耐摩耗性に優れるハイシリコン系アルミニウムからなる場合、シリンダブロック10の耐久性を確保することができる。しかも、ブロック本体16を安価なアルミニウムから構成すれば、シリンダブロック10の製造コストが上昇することもない。
また、本実施の形態に係るシリンダブロック10は、閉塞部材22の外周部と内周部とのそれぞれ全周に対し、連続する軌跡で摩擦撹拌接合をしている。このように一連の連続する軌跡で行うために、プローブ54をブロック本体16や閉塞部材22に何度も埋没させたり、引き抜いたりさせる作業が必要ないため、サイクルタイムの短縮が可能となるとともに、接合品質も一定のものとなる。
さらに、閉塞部材22の外周部をブロック本体16に摩擦撹拌接合にて突き合わせ接合する際、前記閉塞部材22は、段差部26上に載置されていることにより、該段差部26が突き合わせ接合時に生じる接合加重と閉塞部材22自体の重量を受けるため、閉塞部材22が該突き合わせ接合中に下方向へ落ち込むことなく、容易に良好な接合品質を得ることが可能となる。
しかも、閉塞部材22の内周部をブロック本体16に摩擦撹拌接合にて重ね合わせ接合する際、閉塞部材22により、シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cが覆われている。ここで、シリンダスリーブ18a〜18cが鋳鉄からなる場合、仮にシリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cが外部に露呈しているとすると、摩擦撹拌接合中に、摩擦撹拌接合用工具50の回転体52の下端面が、該シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cと干渉することも考えられる。このような場合、摩擦撹拌接合に不具合を生じ、良好な接合品質が得ることが困難となるだけでなく、回転体52及び摩擦撹拌接合用工具50に過大な負荷が生じ、回転体52及び摩擦撹拌接合用工具50の破損につながるおそれが生じる。
しかしながら、本実施の形態においては、該シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30cは外部に露呈することはないため、回転体52の下端面が該シリンダスリーブ18a〜18cの上端面30a〜30c近傍と干渉することはない。したがって、良好な接合品質を確保できるとともに、回転体52及び摩擦撹拌接合用工具50に過大な負荷が生じることなく、回転体52及び摩擦撹拌接合用工具50の破損を防止することができる。さらに、前記回転体52と前記上端面30a〜30cが干渉することがないため、前記上端面30a〜30cが干渉しないように回転体52の径を孔部14a〜14cの軸間の壁部28a、28bの幅以下に設定する必要がなく、回転体52の設計自由度を増加させることが可能となる。また、前記回転体52の下端面と前記上端面30a〜30cとの干渉を避けるために、煩雑な作業が要求されることはない。
さらに、摩擦撹拌接合は同じ箇所に対し、複数回行うことにより該接合箇所の接合硬度が向上する。金属組織の微細化により、該金属組織間の強度が向上したためと理解される。すなわち、摩擦撹拌接合は接合回数による改質効果を有している。本実施の形態に係るシリンダブロック10の製造方法において、前記孔部14a〜14cの軸間の壁部28a、28bは、矢印Bが交差する箇所Cにおいて、閉塞部材22と2回接合されるため、該交差する箇所Cにつき接合硬度が向上するに至る。
この改質効果について、アルミニウム合金ダイカスト(例えば、ADC12)からなるワークに対して、摩擦撹拌接合の接合回数に対する硬度変化を示す図11に基づき、説明する。図11に示されている点aはワーク素材自体の平均硬度であり、点bはワークに対し摩擦撹拌接合を1回実施した際の平均硬度であり、点cはワークに対し摩擦撹拌接合を2回実施した際の平均硬度である。この平均硬度は、10回測定して得られた測定値の平均値を示す。なお、この摩擦撹拌接合の接合条件は、摩擦撹拌接合用工具のプローブの回転速度が1200rpmであり、その移動速度は400mm/minであった。
図11から諒解されるように、平均硬度は点a<点b<点cとなる。よって、摩擦撹拌接合は、接合回数に比例して、硬度が大きくなるという改質効果を有することが諒解されよう。
なお、本実施の形態では、3気筒のシリンダブロック10を例示して説明したが、気筒数は特にこれに限定されるものではない。例えば、単気筒のシリンダブロックであってもよいし、4気筒のシリンダブロックであってもよい。
そして、シリンダスリーブ18a〜18cは、ハイシリコン系アルミニウムや鋳鉄からなるものに特に限定されるものではない。例えば、その他のアルミニウム合金からなるものであってもよい。別の好適な例としては、マグネシウムまたはマグネシウム合金からなるシリンダスリーブ、すなわち金属基複合材料からなるMMCスリーブやFCスリーブ等を挙げることができる。
一方、ブロック本体16は、アルミニウムからなるものに限定されるものではなく、マグネシウムまたはマグネシウム合金等、他の摩擦撹拌接合可能な素材からなるものであってもよい。
10…クローズドデッキ型シリンダブロック
12…ガスケット面 14a〜14c…孔部
16…ブロック本体 18a〜18c…シリンダスリーブ
20…ウォータジャケット部 22…閉塞部材
24a〜24c…環状段部 26…段差部
28a、28b…壁部 40、50…摩擦撹拌接合用工具
42…第1回転体 44…第2回転体
46、54…プローブ 52…回転体

Claims (7)

  1. 孔部が設けられたブロック本体と、
    前記ブロック本体に設けられたウォータジャケット部とを備え、
    前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロックであって、
    前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側は、閉塞部材によって閉塞されており、
    前記閉塞部材の外周部は、前記ブロック本体と摩擦撹拌接合にて突き合わせ接合され、前記閉塞部材の内周部は、前記ブロック本体と連続する軌跡を辿る摩擦撹拌接合にて重ね合わせ接合され
    前記重ね合わせ接合は、隣り合う前記孔部の軸間の壁部においては複数回行っていることを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。
  2. 請求項1記載のクローズドデッキ型シリンダブロックにおいて、
    前記ブロック本体のガスケット面側に段差部が設けられ、前記閉塞部材は、前記段差部に突き合わせるように載置されることを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。
  3. 請求項1又は2記載のクローズドデッキ型シリンダブロックにおいて、
    前記シリンダブロックが鋳包まれたシリンダスリーブを有することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のクローズドデッキ型シリンダブロックにおいて、
    前記孔部の外周壁の上端が、隣接する孔部の外周壁の上端と一体化されていることを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。
  5. 孔部とウォータジャケット部とを有するブロック本体を鋳造形成する工程と、
    前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット側を閉塞部材にて閉塞する工程と、
    前記閉塞部材の外周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに突き合わせ接合する工程と、
    前記閉塞部材の内周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに重ね合わせ接合する工程と、
    を有し、
    前記重ね合わせ接合する工程では、前記内周部全周を連続する軌跡で接合し、隣り合う前記孔部の軸間の壁部においては複数回行うことを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。
  6. 請求項5記載のクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法において、
    前記ウォータジャケット部が設けられている前記ブロック本体のガスケット面側に、前記閉塞部材を載置するための段差部を形成する工程をさらに有することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。
  7. 請求項5又は6記載のクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法において、
    前記閉塞部材の外周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに突き合わせ接合する工程が、前記外周部全周を連続する軌跡で接合し、
    前記閉塞部材の内周部と前記ブロック本体とを摩擦撹拌作用によって互いに重ね合わせ接合する工程は、前記内周部全周を連続する軌跡で接合することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。
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