以下、本発明に係る各実施形態を図面を参照して以下に説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態である圧縮機およびその製造方法を図1〜図6に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態の圧縮機を示す側断面図である。図2は本発明に係る第1実施形態の圧縮機を示す正断面図である。図3は本発明に係る第1実施形態の圧縮機を示す分解斜視図である。図4は本発明に係る第1実施形態の圧縮機の要部構成を示す断面図である。図5は本発明に係る第1実施形態の圧縮機のピストン機構およびクランク部材を示す分解斜視図である。図6は本発明に係る第1実施形態の圧縮機を示すスペーサ変更時の正断面図である。
第1実施形態の圧縮機11は、圧縮室に予め昇圧された気体(流体)が導入され、この導入された気体を再圧縮してさらに昇圧するブースタ圧縮機である。圧縮機11は、図1および図2に示すように、クランク軸12と、このクランク軸12を回転可能に支持するクランクケース13と、クランク軸12に対し垂直方向に沿う姿勢でクランクケース13に連結されるシリンダ14と、シリンダ14のクランクケース13とは反対側に搭載されるシリンダヘッド15とを有している。また、圧縮機11は、図1に示すように、クランクケース13の水平一側に取り付けられてクランク軸12を駆動する駆動源である電動式のモータ部18と、モータ部18のクランクケース13とは反対側に取り付けられる端部カバー19と、クランクケース13の水平逆側に取り付けられるケースカバー20と、クランク軸12の偏心回転によってシリンダ14内を揺動しつつ往復動しシリンダヘッド15との間に圧縮室22を画成するピストン機構21とを備えている。
クランクケース13は、クランク軸12と平行をなす略円筒状のケース胴部25とケース胴部25の軸線方向一側に形成されたケース底部26とを有する略有底円筒状に一体成形されている。
クランクケース13は、水平方向にケース胴部25の軸線を配置して設置されるもので、ケース胴部25の下部に設置用の脚部27が形成されており、クランク軸12の垂直方向となるケース胴部25の上部には、シリンダ14を取り付けるための取付台部28が形成されている。取付台部28の中央には、クランク軸12に対して垂直方向に貫通して、シリンダ14が取り付けられる円形状のシリンダ取付穴29が形成されており、このシリンダ取付穴29には、外端側に、取付台部28の上端面からシリンダ取付穴29よりも大径をなして軸線方向に凹む円環状の嵌合段差部30が同軸をなして形成されている。この嵌合段差部30にはシリンダ取付穴29と同軸をなして円環状のシール溝31が軸線方向に凹むように形成されており、このシール溝31には円環状のゴム等の弾性材料からなるシールリング32が配置されている。つまり、シールリング32は、シリンダ取付穴29を全周で囲むようにしてクランクケース13に配置されている。
クランクケース13におけるクランク軸12の軸線方向一方側のケース底部26には、モータ部18に嵌合する円形状のモータ嵌合部(駆動源取付部)35が外周側に形成されている。また、クランクケース13のケース底部26の中央には、外側に大径のベアリング保持穴36が内側に小径の軸挿入穴37が形成された段差形状のベアリング保持部38が形成されており、このベアリング保持部38の周囲には、ケース底部26を軸線方向に貫通する貫通穴39が円周方向に断続的に形成されている。モータ嵌合部35の外周面には、円環状のシール溝40が半径方向内方に凹むように形成されており、このシール溝40には円環状のゴム等の弾性材料からなるシールリング41が配置されている。つまり、シールリング41は、モータ嵌合部35の全周に巻回されている。
また、クランクケース13には、クランク軸12の軸線方向の他方側にケース胴部25の円形状の開口穴(部品取付用穴)45が形成されている。ケース胴部25の開口穴45側の端面の径方向中間位置には、開口穴45と同軸をなして円環状のシール溝46が軸線方向に凹むように形成されており、このシール溝46には円環状のゴム等の弾性材料からなるシールリング47が配置されている。つまり、シールリング47は、開口穴45を全周で囲むようにしてクランクケース13に配置されている。
なお、図3に示すように、取付台部28には、シリンダ取付穴29の周囲に複数カ所(具体的には四カ所)のネジ穴51がシリンダ取付穴29と平行に形成されている。また、ケース胴部25の開口穴45の周囲には、複数カ所(具体的には四カ所)のネジ穴52が開口穴45と平行に形成されており、モータ嵌合部35側の周囲にも、複数カ所(具体的には四カ所)のネジ穴53がモータ嵌合部35と平行に形成されている。また、ケース胴部25の側部には、ケース胴部25の内外を連通させる導入口54が形成されている。
以上のクランクケース13では、上記した開口穴45、モータ嵌合部35およびシリンダ取付穴29がそれぞれ独立して形成されている。言い換えれば、開口穴45、モータ嵌合部35およびシリンダ取付穴29が互いに離間して形成されている。さらに、言い換えれば、開口穴45およびモータ嵌合部35はクランクケース13において反対向きに形成されており、シリンダ取付穴29はこれら開口穴45およびモータ嵌合部35の間でこれらを結ぶ方向と直交する方向に形成されている。
図4に示すように、シリンダ14は、クランクケース13の取付台部28の外側にケース胴部25の軸線に垂直(具体的には鉛直)をなして取り付けられる略円筒状をなしている。このシリンダ14には、軸線方向一側のボア58側に、同軸をなして軸線方向に突出する円環状の嵌合凸部59が形成されており、この嵌合凸部59においてクランクケース13の嵌合段差部30に嵌合する。このとき、嵌合凸部59の先端面は嵌合段差部30のシール溝31内のシールリング32に当接することになり、これによりクランクケース13とシリンダ14との隙間がシールされる。また、シリンダ14の軸線方向他側には、半径方向外方に突出する取付フランジ部60が形成されており、この軸線方向他側の端面のボア58側には、軸方向に凹む収容段差部61が形成されている。
シリンダヘッド15は、シリンダ14の取付フランジ部60の上に取り付けられている。このシリンダヘッド15は、シリンダ14の取付フランジ部60の収容段差部61よりも外側に全周にわたって配置される枠状のガスケット65と、このガスケット65の上面全体を覆うように配置される仕切板66と、仕切板66の外周部上に全周にわたって配置される枠状のガスケット67と、ガスケット67の上面全体を覆うように配置されるシリンダヘッド本体68とを有している。ガスケット65はシリンダ14と仕切板66との隙間をシールし、ガスケット67は仕切板66とシリンダヘッド本体68との隙間をシールする。
仕切板66には、ガスケット65およびガスケット67から離間した内側範囲内に、板厚方向に貫通する複数の吸入穴72および吐出穴73が形成されている。仕切板66には、シリンダ14側に、吸入穴72を開閉可能な板状の吸入弁74が取り付けられており、シリンダヘッド本体68側に、吐出穴73を開閉可能な板状の吐出弁75が取り付けられている。これら吸入弁74および吐出弁75もシリンダヘッド15を構成する。なお、吸入弁74は、一部がシリンダ14の収容段差部61内に配置されている。
シリンダヘッド本体68は、図1に示すように、筒部78と蓋部79とを有する有蓋筒状をなすもので、筒部78内を二室に仕切るように仕切壁80が形成されている。これにより、シリンダヘッド本体68には、仕切板66側に、仕切壁80で仕切られて二カ所の吸入室81および吐出室82が形成されている。また、シリンダヘッド本体68には、仕切板66と平行をなして、吸入室81を外部に連通させる吸入口83と吐出室82を外部に連通させる吐出口84とが形成されている。このシリンダヘッド本体68は、吸入室81が仕切板66の吸入穴72に常時連通し、吐出室82が吐出弁75を収容しこの吐出弁75を介して仕切板66の吐出穴73に連通可能となるように仕切板66上に配置されている。ここで、ガスケット67は、図4に示すように、シリンダヘッド本体68の筒部78に密着する環状部85と、仕切壁80に密着する横断部86とからなっている。
なお、図3に示すように、シリンダ14には、ボア58の周囲の取付フランジ部60に複数カ所(具体的には四カ所)のボルト挿通穴90がボア58と平行に形成されている。また、ガスケット65にも同様の複数カ所のボルト挿通穴91が形成されており、仕切板66にも同様の複数カ所のボルト挿通穴92が形成されている。さらに、ガスケット67の環状部85にも同様の複数カ所のボルト挿通穴93が形成されており、シリンダヘッド本体68の筒部78にも同様の複数カ所のボルト挿通穴94が形成されている。そして、図4に示すように、クランクケース13のシール溝31にシールリング32を配設した状態で、クランクケース13の嵌合段差部30にシリンダ14の嵌合凸部59を嵌合させるとともに、このシリンダ14上に、ガスケット65と、吸入弁74および吐出弁75が組み込まれた仕切板66と、ガスケット67と、シリンダヘッド本体68とを、この順に搭載する。そして、図3に示すように、複数本(具体的には四本)のボルト95をそれぞれ、シリンダヘッド本体68のボルト挿通穴94、ガスケット67のボルト挿通穴93、仕切板66のボルト挿通穴92、ガスケット65のボルト挿通穴91、シリンダ14のボルト挿通穴90に挿通し、クランクケース13のネジ穴51に螺合させることで、シリンダヘッド15およびシリンダ14がクランクケース13に取り付けられる。
図1に示すように、モータ部18は、クランクケース13のモータ嵌合部35を一端側に嵌合させることでクランクケース13に連結される円筒状のモータ胴部100と、このモータ胴部100の内周面に固定されるステータ101と、モータ胴部100の他端側を閉塞するように取り付けられる支持板102とを有している。なお、クランクケース13のモータ嵌合部35に形成されたシール溝40内のシールリング41は、モータ嵌合部35のモータ胴部100への嵌合時にモータ胴部100の内周面に接触することになり、モータ胴部100とクランクケース13のモータ嵌合部35との隙間をシールする。
支持板102には、下部に設置用の脚部105が形成されており、その中間部には、モータ胴部100側に突出するボス部106が、このボス部106の半径方向外側には、ボス部106と同軸をなして同じくモータ胴部100側に突出する円形状の嵌合部107が形成されている。ボス部106の内側には、モータ胴部100側に大径のベアリング保持穴108が、モータ胴部100とは反対側に小径の貫通穴109が形成された段差形状のベアリング保持部110が形成されている。なお、嵌合部107は円筒状をなしており、その結果、支持板102におけるボス部106と嵌合部107との間には、薄肉部111が形成されている。この薄肉部111には、図3に示すように、左右両側のみに支持板102を板厚方向に貫通する貫通穴112が形成されている。また、この支持板102の脚部105とクランクケース13の脚部27とで圧縮機11が床面等の設置面に設置される。
図1に示すように、嵌合部107は、モータ胴部100に嵌合するもので、その外周面には、円環状のシール溝115が半径方向内方に凹むように形成されている。このシール溝115には円環状のゴム等の弾性材料からなるシールリング116が配置されており、このシールリング116は支持板102の嵌合部107とモータ胴部100との隙間をシールする。また、支持板102のモータ胴部100とは反対側には、ボス部106の内側の貫通穴109およびボス部106の外側の図3に示す両貫通穴112を囲むように、横長の長円状をなして軸線方向に凹む環状の図1に示すシール溝117が形成されている。このシール溝117には長円状のシールリング118が配置されている。
モータ部18は、クランクケース13のベアリング保持部38に保持される大径のベアリング123と、支持板102のベアリング保持部110に保持される小径のベアリング124と、これらベアリング123,124で両端側が回転可能に保持される駆動軸125と、駆動軸125に固定されてステータ101の内側に配置されるロータ126とを有している。ロータ126がステータ101が発生する磁力により回転させられることで、駆動軸125がロータ126と一体に回転する。
なお、図3に示すように、モータ部18の支持板102には、嵌合部107よりも外側に複数カ所(具体的には四カ所)のボルト挿通穴127が嵌合部107と平行に形成されており、複数(具体的には四本)の長ボルト128が、それぞれ、ボルト挿通孔127に挿通されてクランクケース13のネジ穴53に螺合されることで、モータ部18がクランクケース13に取り付けられる。
図1に示すように、駆動軸125には、ベアリング123よりも外側に突出する突出部130に軸線方向に沿ってキー溝131が形成されており、モータ部18は、駆動軸125の突出部130を取付穴134に嵌合させることで駆動軸125に取り付けられるバランスウエイト135と、駆動軸125のキー溝131およびバランスウエイト135の取付穴134のキー溝136とに嵌合されてバランスウエイト135を駆動軸125に対して回転方向に一体化するキー137とを有している。ここで、バランスウエイト135には半径方向に沿ってネジ穴138が形成されており、ボルト139がこのネジ穴138に螺合されてキー137に当接することでバランスウエイト135が駆動軸125に固定される。
端部カバー19は、支持板102のモータ胴部100とは反対側に取り付けられるカバー本体142を有している。このカバー本体142には、支持板102への取付時に支持板102のシール溝117よりも内側となる中間部の支持板102側に、シール溝117よりも一回り小さい横長の長円形状の凹部143が形成されており、凹部143の底部には内外を貫通する端子配置穴144が形成されている。ここで、支持板102のシール溝117に配置される長円状のシールリング118がカバー本体142の凹部143よりも外側に接触することになり、支持板102とカバー本体142との隙間をシールする。端子配置穴144の凹部143側には、端子配置穴144よりも大径で軸方向に凹むシール段差部145が形成されており、このシール段差部145に、円環状のゴム等の弾性材料からなるシールリング146が配置されている。
端部カバー19は、カバー本体142の端子配置穴144に嵌合されることで外部に電気接続可能に突出する、モータ部18へ給電するための気密端子150と、この気密端子150をカバー本体142に取り付ける四角枠状の取付板151とを有している。
気密端子150は、ステータ101との間の給電用の図示略の配線が結線される端子本体155と、端子本体155を気密に保持する略円板状のベース156とベース156を気密に保持する保持体157とを有しており、保持体157の外周部の支持板102側には、テーパ状のフランジ部157Aが形成されている。保持体157は、フランジ部157Aとは反対側が上記したシールリング146の内側に嵌合されることになり、その際にフランジ部157Aにてシールリング146をシール段差部145との間に挟持することになる。ここで、カバー本体142内にも圧縮気体が導入されることになり、この圧力が気密端子150を外方に押すことになり、これにより、フランジ部157Aがシールリング146をシール段差部145に押し付けるようになっている。これにより、シールリング146が気密端子150とカバー本体142との隙間をシールする。図3に示すように、カバー本体142の凹部143の底部における端子配置穴144の周囲には端子配置穴144と平行に複数(具体的には四カ所)のネジ穴158が形成されており、取付板151にも複数(具体的には四カ所)のネジ挿通穴159が形成されている。そして、複数(具体的には四本)のネジ160をそれぞれ、ネジ挿通穴159に挿通してネジ穴158に螺合させることで取付板151がカバー本体142に取り付けられることになり、これにより、図1に示すように取付板151が気密端子150のフランジ部157Aを押さえ、端子配置穴144からの抜けを規制する。
図3に示すように、カバー本体142の凹部143の周囲には、複数(具体的には四カ所)のボルト挿通穴161が形成されており、支持板102には複数(具体的には四カ所)のネジ穴(図示略)が形成されている。そして、複数(具体的には四本)のボルト163をそれぞれ、ボルト挿通穴161に挿通してネジ穴に螺合させることで、端部カバー19が支持板102に固定される。
図1に示すように、ケースカバー20は、開口穴45を閉塞させるもので、外周部にクランクケース13の開口穴45側の端面に当接する円環状の当接部166が形成され、その内側に軸線方向に湾曲状に凹む凹部167が形成された形状をなしており、ケースカバー20には、凹部167内に一部が収容されて逃がし弁169が設けられている。ケースカバー20の凹部167の中央には、板厚方向に貫通する貫通ネジ穴170が形成されている。逃がし弁169は、この貫通ネジ穴170に外側から螺合されることでケースカバー20に取り付けられるもので、クランクケース13の内側のクランク室171内の圧力が所定値以上になると開弁してクランク室171内の圧力を外気に逃がす。クランクケース13の開口穴45の周囲に形成されたシール溝46のシールリング47は、ケースカバー20の当接部166に接触してクランクケース13とケースカバー20との隙間をシールする。ここで、図3に示すように、ケースカバー20の外周部には、複数(具体的には四カ所)のボルト挿通穴172が形成されている。そして、複数(具体的には四本)のボルト173がそれぞれ、ボルト挿通穴172に挿通されてクランクケース13のネジ穴52に螺合されることで、ケースカバー20がクランクケース13に固定される。
図1に示すように、クランク軸12は、モータ部18の駆動軸125と、外径に対する中心である外径中心に対して偏心して形成された偏心穴175に駆動軸125の突出部130を嵌合させることで駆動軸125に偏心状態で取り付けられる略円板状のクランク部材176と、駆動軸125の上記したキー溝131とクランク部材176の偏心穴175のキー溝177とに嵌合されてクランク部材176を駆動軸125に対して回転方向に一体化する上記したキー137とで構成されている。これにより、モータ部18は、ベルト等を介することなくクランク軸12を直接駆動するダイレクト駆動式となっている。
ここで、図3に示すように、クランク部材176には複数(具体的には二カ所)のボルト挿通穴178が形成されており、バランスウエイト135にも複数(具体的には二カ所)のネジ穴179が形成されている。そして、複数(具体的には二本)のボルト180がそれぞれ、クランク部材176のボルト挿通穴178に挿通されてバランスウエイト135のネジ穴179に螺合されることで、クランク部材176がバランスウエイト135に固定される。上記したようにバランスウエイト135が駆動軸125にボルト139で固定されることから、バランスウエイト135への固定で、クランク部材176が駆動軸125に固定される。
図5に示すように、ピストン機構21は、クランク軸12のクランク部材176を内側に嵌合させるベアリング185と、一端側がこのベアリング185を介してクランク部材176に回転可能に連結される連接棒186と、この連接棒186の他端部に着脱可能に設けられるスペーサ(調整手段)187と、このスペーサ187を介して連接棒186の他端側に着脱可能に設けられるピストンヘッド188と、図4に示すようにピストンヘッド188の外周側に配置されてピストンヘッド188とシリンダ14のボア58との隙間をシールするリップシール(シール手段)189とを有している。
図5に示すように、連接棒186は、一端側に形成された円環状の大端部195と、比較的細長い形状でこの大端部195からその半径方向外方に延出する延出部196と、延出部196の先端(つまり連接棒186の他端側)にこの延出部196に中心軸線を一致させて形成された円板状の小端部197とを有する形状に一体成形されている。言い換えれば、小端部197は、その径方向を連接棒186の長さ方向に直交させるように形成されており、その中心位置で延出部196に繋がっている。
大端部195は、その内側に上記したベアリング185を嵌合させるもので、図1に示すように、シリンダ14の内径よりも大きく、シリンダ14の内径と略同径のクランクケース13のシリンダ取付穴29の内径よりも大きく形成されている。よって、大端部195は、シリンダ14のボア58を通過不可であり、クランクケース13のシリンダ取付穴29も通過不可な大きさとなっている。他方、大端部195の大きさは、クランクケース13の開口穴45と比べると小さく形成されており、この開口穴45は通過可能となっている。ただし、連接棒186は、その全長が部品取付用の開口穴45の内径よりも長くなっているため、長さ方向を開口穴45の軸線に直交させた姿勢、言い換えれば駆動軸125への取付時の姿勢のままでは、クランクケース13内に挿入不可となっている。
小端部197は、大端部195よりも小さく、ピストンヘッド188の外径よりも小さくされており、シリンダ14の内径よりも小さくされている。よって、小端部197は、シリンダ14のボア58およびクランクケース13のシリンダ取付穴29を通過可能な大きさとなっている。図5に示すように、小端部197の上面197aには、ネジ穴198が複数(具体的には二カ所)形成されており、また、これらネジ穴198の間位置に軸線方向に沿って複数(具体的には二カ所)の穴部199が形成されている。
図4に示すように、スペーサ187は、外周面の軸線方向一側が軸線方向に沿う円筒面187aとされ、外周面の軸線方向他端側が円筒面187aと連続して円筒面187aから離れるほど大径となるテーパ面187bとされている。これにより、スペーサ187は、軸線方向一側が軸線方向他側よりも小径となっている。また、スペーサ187は、軸線方向一側(円筒面187a側)の径方向の中央所定範囲に円形状をなして凹む下嵌合凹部204が形成されており、その結果、この下嵌合凹部204の天井面204aよりも下側に突出する周囲部分が円筒状の円筒部205とされている。
スペーサ187は、下嵌合凹部204に連接棒186の上記した小端部197を、天井面204aに小端部197の上面197aが当接する位置まで嵌合させる。また、スペーサ187は、軸線方向他側の径方向の中央所定範囲に、円形状をなして凹む上嵌合凹部206が形成されており、その結果、上嵌合凹部206の底面206aよりも外側部分が環状をなして軸線方向外側に突出する環状台部209となっている。さらに、上嵌合凹部206の径方向の中央所定範囲には、円形状をなしてさらに凹む中央凹部207が形成されている。図5に示すように、スペーサ187には中央凹部207の底面207aに軸線方向に貫通するネジ挿通穴208が複数(具体的には二カ所)形成されている。
ピストンヘッド188は、スペーサ187の外径と略同径の円板状をなしており、図4に示すように、その軸線方向一側の径方向の中央所定範囲に同軸の円環状をなして軸線方向に突出する嵌合凸部212が形成されている。その結果、ピストンヘッド188は、軸線方向他側が嵌合凸部212よりも大径のフランジ部213となっている。ピストンヘッド188は、嵌合凸部212においてスペーサ187の上嵌合凹部206に、嵌合凸部212の下面212aが上嵌合凹部206の底面206aに当接するまで嵌合する。ピストンヘッド188の上面(面)188aは仕切板66と対向する。
また、図5に示すように、ピストンヘッド188は、その上面188aに、径方向に貫通する溝部214が形成されており、この溝部214の両側それぞれにテーパ状の座ぐり穴215が形成されている。
図4に示すように、リップシール189は、ピストンヘッド188の嵌合凸部212の下面212aがスペーサ187の上嵌合凹部206の底面206aに当接する状態で、ピストンヘッド188のフランジ部213とスペーサ187の環状台部209とで挟持される。リップシール189は、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)等の弾性材料からなる円環状のシールリングであり、内周側が、ピストンヘッド188の嵌合凸部212を内側に嵌合させるとともにスペーサ187の環状台部209とピストンヘッド188のフランジ部213との間に挟持される平板円環状の挟持部218とされ、外周側が、この挟持部218から外向きに突出し厚さ方向におけるピストンヘッド188側に屈曲して、ピストンヘッド188のフランジ部213の外周側を覆う円環状のリップ部219とされている。リップシール189は、このリップ部219においてシリンダ14のボア58に摺接する。
ここで、図5に示すように、連接棒186の小端部197にスペーサ187を嵌合させ、このスペーサ187の上にリップシール189を配置して、このリップシール189を挟むように、ピストンヘッド188をスペーサ187に取り付ける。この状態で、複数(具体的には二本)のネジ(ネジ部材)220をピストンヘッド188の座ぐり穴215およびスペーサ187のネジ挿通穴208に挿通して連接棒186のネジ穴198に螺合させることで、ピストンヘッド188、リップシール189、スペーサ187および連接棒186が一体に連結されて揺動部材221を構成する。ここで、この揺動部材221とベアリング185とが、上記したピストン機構21を構成する。
図4に示すように、揺動部材221において、ピストンヘッド188、スペーサ187およびこれらに挟持されたリップシール189がシリンダ14の内側に配置されるピストン部222になり、その際に、リップシール189は、環状リップ部219がシリンダ14のボア58に締代をもって摺接することにより、シリンダ14とピストン部222との間を基本的に気密にシールする。ピストンヘッド188およびリップシール189を含むピストン部222と、シリンダ14と、ガスケット65と、シリンダヘッド15の仕切板66とで囲まれた部分が圧縮室22となる。言い換えれば、ピストンヘッド188およびリップシール189を含むピストン部222は、シリンダヘッド15との間に圧縮室22を画成する。
図3に示すように、シリンダヘッド本体68の吸入口83には、予め大気圧よりも昇圧された空気あるいは窒素等の気体が導入される導入口230と、導入口230から導入された気体を二方向に分配する二カ所の分配口231および分配口232とを有する導入管233が一方の分配口231において接続される。この導入管133の他方の分配口232には配管235の一端が連結され、この配管235の他端は連結管236を介してクランクケース13の導入口54に接続されている。これにより、圧縮機11には、予め昇圧された圧縮用の気体が、図1に示すクランク室171内にも導入される。よって、この気体の圧力がピストン部222の圧縮室22とは反対側に加わり、ピストン部222の圧縮室22側への移動を助勢する等して、連接棒186およびベアリング185等に加わる荷重を軽減し、さらに、モータ部18にかかる負荷を軽減する。
以上の圧縮機11は、モータ部18の駆動による駆動軸125の回転でクランク軸12のクランク部材176が偏心回転運動することになり、このクランク部材176の偏心回転運動で、揺動部材221のピストンヘッド188、スペーサ187およびリップシール189からなるピストン部222がシリンダ14のボア58に案内されてシリンダ14の軸線方向に往復動することになる。
ピストン部222が仕切板66から離れる下死点までの吸入行程では、このピストン部222の移動で圧縮室22が拡大し、吐出弁75により吐出穴73を閉状態とし、吸入弁74により吸入穴72を開状態として、気体を吸入口83から吸入室81を介して圧縮室22に導入する。続いて、ピストン部222が仕切板66に近づく上死点までの圧縮行程では、このピストン部222の仕切板66の方向への移動で圧縮室22が縮小し、吸入弁74により吸入穴72を閉状態とし、吐出弁75により吐出穴73を開状態として、圧縮室22内の気体を圧縮しつつ吐出室82を介して吐出口84に吐出する。
以上の作動中、ピストン部222は、シリンダ14内で揺動しながら往復動する。
つまり、図2に示すように駆動軸125の軸線方向(クランク軸線方向)に沿って見た場合に、クランク軸12のクランク部材176が最もシリンダ14とは反対側に位置し、ピストン部222が最も圧縮室22を拡大した下死点では、連接棒186が左右方向の中央に位置するとともにピストン部222はシリンダ14の軸線に直交する。この状態から圧縮行程を行うべく駆動軸125およびクランク部材176からなるクランク軸12が回転し、揺動部材221を上昇させ圧縮室22を縮小させる方向にピストン部222を移動させると、上死点と下死点との中間まで連接棒186の下部は左右方向一側に移動しながら上昇し、上死点と下死点との間の中央でクランク部材176が最も左右方向一側に位置し、最も連接棒186の下部が一方の外側に位置する。このとき、ピストン部222は最も傾斜することになる。
続いて、上死点に向かうにしたがって連接棒186の下部は左右方向の中央に戻ることになり、最も圧縮室22を縮小した図2に示す上死点では、クランク部材176が最もシリンダ14側に位置し、連接棒186が左右方向の中央に位置するとともにピストン部222が水平となって圧縮行程が終了する。
ピストン部222が上死点にある状態からクランク部材176が吸入行程を行うべく回転すると揺動部材221は圧縮室22を拡大させる方向にピストン部222を移動させることになり、上死点と下死点との中間まで、連接棒186の下部が左右方向逆側に移動しながら下降し、上死点と下死点との間の中央でクランク部材176が最も左右方向逆側に位置し、最も連接棒186の下部が他方の外側に位置する。このとき、ピストン部222はシリンダ軸線に対して圧縮行程とは逆向きに最も傾斜することになる。
続いて、下死点に向かうにしたがって連接棒186の下部は左右方向の中央に戻ることになり、最も圧縮室22を拡大した下死点では連接棒186が左右方向の中央に位置するとともにピストン部222がシリンダ14の軸線に直交する状態となって吸入行程が終了する。
次に、以上の圧縮機11の組み立て手順の要部について図1および図3を参照しつつ説明する。
モータ部18が取り付けられた状態でクランクケース13内には、駆動軸125の突出部130および突出部130に予め嵌合されたキー137が突出しており、クランクケース13のモータ部18とは反対側の開状態の開口穴45からクランクケース13内にバランスウエイト135を挿入して、バランスウエイト135の取付穴134およびキー溝136を突出部130およびキー137に嵌め合わせる。
次に、例えば予め内側にベアリング185およびクランク部材176が組み込まれた状態(ただしスペーサ187、リップシール189およびピストンヘッド188は未装着の状態)の連接棒186を、開口穴45からクランクケース13内に挿入し、クランク部材176の偏心穴175およびキー溝177を駆動軸125の突出部130およびキー137に嵌め合わせる。このとき、連接棒186は、その全長が開口穴45の内径よりも長く、また、大端部195がシリンダ取付穴29よりも大きいため、小端部197を先にして開口穴45からクランクケース13内に挿入され、続いて小端部197がこれよりも大きいシリンダ取付穴29からクランクケース13外に突出されるようにして、全体がクランク軸12に略垂直をなす姿勢となって、大端部195側がクランクケース13内に挿入される。このようにしてクランクケース13内に挿入された大端部195側のクランク部材176の偏心穴175およびキー溝177を駆動軸125の突出部130およびキー137に嵌め合わせる。
なお、予めピストンヘッド188、リップシール189、スペーサ187および連接棒186を一体に組んだ揺動部材221として、クランクケース13に開口穴45から挿入しようとした場合、長さが長くなり、加えて、ピストンヘッド188、リップシール189およびスペーサ187で構成されるピストン部222が大径となるため、上記のようなクランクケース13への挿入は不可となっている。
そして、バランスウエイト135とクランク部材176とをボルト180で固定するとともに、バランスウエイト135をボルト139で駆動軸125に固定する。これにより、連接棒186、ベアリング185およびクランク部材176が駆動軸125に連結される。その後、ケースカバー20がクランクケース13にボルト173で取り付けられて開口穴45がケースカバー20で閉塞される。
また、上記のようにしてクランクケース13のシリンダ取付穴29から突出する連接棒186の小端部197に、クランクケース13におけるシリンダ取付穴29側で、スペーサ187をその下嵌合凹部204で嵌め合わせ、このスペーサ187に、同じくシリンダ取付穴29側で、リップシール189を位置を合わせて搭載し、ピストンヘッド188を、同じくシリンダ取付穴29側で、リップシール189を挟持するようにスペーサ187に嵌め合わせる。そして、同じくシリンダ取付穴29側で、ネジ220により、これらピストンヘッド188、リップシール189、スペーサ187を連接棒186の小端部197に固定することで、揺動部材221の組み付けが終了する。
その後、シリンダ取付穴29から突出する揺動部材221のピストン部222を嵌合させながら、クランクケース13のシリンダ取付穴29にシリンダ14を嵌合させ、さらに、シリンダ14上に、ガスケット65と、吸入弁74および吐出弁75が取り付けられた仕切板66と、ガスケット67と、シリンダヘッド本体68とを積み重ね、ボルト95によってこれらをクランクケース13に固定する。
ここで、上記した圧縮機11において、複数の仕様があり、仕様によってクランク部材176の外径中心に対する偏心穴175の偏心量(以下、クランク軸偏心量)が異なる場合がある。このような場合であっても、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストン部222と仕切板66との距離を一定にすることで、シリンダ14等を共用化することができる。
このため、第1実施形態においては、ピストンヘッド188と連接棒186の小端部197との間に別体で設けられる上記したスペーサ187を、それぞれ厚さが異なるものを複数準備し、図2および図6に示すように、これらのスペーサ187の中から厚さが合うものを選択して使用することで、クランク軸偏心量の変更があっても、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストン部222と仕切板66との距離を一定にするようになっている。言い換えれば、スペーサ187の中から厚さが合うものを選択して使用することで、ピストンヘッド188の圧縮室22側の上面188aと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離を調整して、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストン部222と仕切板66との距離を一定にするようになっている。
具体的に、複数種類のスペーサ187は、軸線方向寸法を見てみると、上嵌合凹部206の底面206aから下嵌合凹部204の天井面204aまでの厚さが異なることになり、環状台部209の上面209aから上嵌合凹部206の底面206aまでの距離は、同じとされている。また、複数種類のスペーサ187は、径方向寸法については、共通となっている。
図2に示すように、クランク部材176の外径中心、ベアリング185の中心および連接棒186の大端部195の中心(以下、大端部中心)は、すべて一致することになり、揺動部材221が上死点位置にあるとき、図2に示す一の種類の圧縮機11では、この大端部中心から連接棒186の小端部197の上面197aまでの距離(以下、連接棒長さ)がL1、大端部中心からスペーサ187の上嵌合凹部206の底面206aつまりピストンヘッド188の嵌合凸部212の下面212aまでの距離(以下、ピストンヘッド下端高さ)がL2、ピストンヘッド188の上面188aから嵌合凸部212の下面212aまでの距離(以下、ピストンヘッド厚さ)がL3、ピストンヘッド188の上面188aから仕切板66までの距離(以下、トップクリアランス)がS、クランク部材176の偏心量つまり大端部中心とクランク軸中心との距離であるクランク軸偏心量がR1、スペーサ187の上嵌合凹部206の底面206aから下嵌合凹部204の天井面204aまでの距離(以下、スペーサ厚さ)がL4aであったとする。また、クランク軸中心からシリンダ14の上面14aまでの距離(以下、シリンダ上端高さ)がA1、クランク軸中心から取付台部28の上面28aまでの距離(以下、シリンダ下端高さ)がH、取付台部28の上面28aからシリンダ14の上面14aまでの距離(以下、シリンダ高さ)がT1、クランク軸中心から圧縮機11の下端までの距離(以下、軸下高さ)A0、圧縮機11の全体の高さ(以下、全高さ)がB1であったとする。このとき、A1=H+T1=R1+L2+L3+Sであって、L2=L1+L4aである。
これに対して、例えば、図6に示すように、他の種類の圧縮機11において、クランク軸偏心量がR2(R2>R1)に変更されたとしても、スペーサ厚さがL4b(ただしR2−R1=L4a−L4b)である別のスペーサ187を用いることで、連接棒長さがL1、ピストンヘッド厚さがL3、トップクリアランスがS、シリンダ上端高さがA1、シリンダ下端高さがH、シリンダ高さがT1と、上記種類の圧縮機11と同じ値にしても、A1=H+T1=R2+L5+L3+Sであって、L5=L1+L4bとなる。よって、上記した図2に示す圧縮機11と、スペーサ187以外の、シリンダ14、連接棒186およびピストンヘッド188等を共通化することができる。このとき、軸下高さの値がA0と変更はなく、上記のように全高さの値B1に影響するシリンダ上端高さの値A1が同じであるため、全高さの値B1も変更はない。
ここで、ピストンを連接棒に一体に設けた揺動部材を用いる上述した特許文献1,2等を含む従来の技術において、モータの出力が違う機種違いや、低圧多風量あるいは高圧少風量等の仕様違いにおいて、往復動運動のクランク軸の偏心量を変更する必要を生じることがある。その際に、クランク軸の変更に合わせてシリンダの長さを変更して対応すると製品として大きさが異なってしまうとともに複数種類のシリンダが必要となってしまう。また、クランク軸の変更に合わせて連接棒長さを変更すると、ピストンのシリンダに対する傾斜する角度が大きくなった場合に、圧縮室からクランク室への気体の漏れが多くなるとともに、複数種類の連接棒が必要となってしまう。このため、連接棒という比較的大型の部品を複数種類保管する保管場所が必要となり、また、連接棒を鋳造するための大型の鋳造型が複数必要でその投資が高額になってしまう。
これに対して、第1実施形態では、シリンダ14内を揺動しつつ往復動してシリンダヘッド15との間に圧縮室22を画成するピストン機構21が、一端側がクランク軸12に回転可能に連結される連接棒186と、外周側にシリンダ14との隙間をシールするリップシール189を有して連接棒186の他端側に着脱可能に設けられるピストンヘッド188と、ピストンヘッド188の圧縮室22側の上面188aと連接棒186の他端の小端部197との距離を調整可能なスペーサ187とで構成されるため、クランク軸偏心量の異なる複数種類の圧縮機11に対して、各クランク軸偏心量に合わせた厚さの複数種類のスペーサ187を準備しておき、それぞれ対応した厚さのスペーサ187を用いることで、シリンダ14の長さおよび連接棒186の長さを変更する必要をなくすことができる。したがって、部品共用化を図ることができる。さらに、スペーサ187を、それぞれ厚さが異なるものを複数準備し、これらのスペーサ187の中から厚さが合うものを選択して使用することで、例えば、シリンダ14の長さおよび連接棒186の長さや他の構成部品の加工公差を吸収し、トップクリアランスSの寸法を常に一定に保つことで、圧縮機の性能の調整および安定化を可能とする。
また、ピストンを連接棒に一体に設けた揺動部材を用いる上述した特許文献1,2等を含む従来の技術では、揺動部材がシリンダに対して傾斜して、リップシールの変形では追従できずに、ピストンとシリンダとの間のシール性能が低下する可能性がある。このため、圧縮室からクランク室に気体が微小に漏れ、圧縮効率が低下してしまう場合がある。特に、大気圧よりも高圧に昇圧された一次側の気体をさらに圧縮して昇圧するブースタ圧縮機として用いる場合、クランク室への漏れが一層大きくなる場合がある。また、空気以外の例えば窒素ガス等用のブースタ圧縮機では、クランク室側への漏れが製品ガスの濃度低下につながることになることから、漏れる分だけ一次側の気体の供給量が多く必要となってしまう。加えて、ピストンと連接棒が一体となった揺動式ピストンを用いた従来技術では、揺動部材が比較的大型になるため、これをクランクケース内に挿入するために、特許文献2のように、クランクケースの部品取付用の穴とシリンダの一部を大きく開口させて連続させる構造をとる必要があり、クランクケースのシール性が下がってしまう。その結果、クランク室から外気にも漏れを生じることになり、空気以外の例えば窒素ガス等用のブースタ圧縮機では、クランク室から外気への漏れも濃度低下につながることになることから、一次側の気体の供給量がさらに多く必要となってしまう。
これに対して、第1実施形態では、クランクケース13に、クランク軸12の垂直方向にあってシリンダ14が取り付けられるシリンダ取付穴29と、クランク軸12の軸方向一方側にあってモータ部18が取り付けられるモータ嵌合部35と、クランク軸12の軸方向他方側にある部品取付用の開口穴45とがそれぞれ独立して設けられているため、クランクケース13とシリンダ14との連結部分のシールと、クランクケース13とモータ部18との連結部分のシールと、部品取付用の開口穴45とケースカバー20の連結部分のシールとを確実に行うことができ、クランク室171内を漏れの少ない密閉構造にできるとともに、クランクケース13の強度を向上できる。
また、シール性を高めるためシリンダ取付穴29と部品取付用の開口穴45とを独立させたことにより、長い連接棒を採用した場合や、ピストン部が連接棒と一体となった従来構造を採用した場合には、組付時にこれをクランクケース13内に挿入できない可能性があるが、第1実施形態では、スペーサ187を分割したことで連接棒186の長さを短くでき、取付時にクランクケース13内に部品取付用の開口穴45から連接棒186を多少斜めにして挿入し、このように、クランクケース13内に挿入された連接棒186に、シリンダ取付穴29側からピストンヘッド188およびスペーサ187を取り付けることができる。したがって、製造時の作業性を向上できる。
以上、第1実施形態の詳細について説明したが、第1実施形態の作用効果を以下に示す。
第1実施形態では、シリンダ14内を揺動しつつ往復動してシリンダヘッド15との間に圧縮室22を画成するピストン機構21が、一端側がクランク軸12に回転可能に連結される連接棒186と、外周側にシリンダ14との隙間をシールするリップシール189を有して連接棒186の他端側に着脱可能に設けられるピストンヘッド188と、ピストンヘッド188の圧縮室22側の上面188aと連接棒186の他端の小端部197の上面197aとの距離を調整可能なスペーサ187とで構成されるため、クランク軸偏心量の異なる複数種類の圧縮機11に対して、各クランク軸偏心量に合わせた厚さの複数種類のスペーサ187を準備しておき、それぞれ対応した厚さのスペーサ187を用いることで、シリンダ14の長さ、連接棒186の長さおよびピストンヘッド188の厚さを変更する必要がなくなる。したがって、スペーサ187以外の部品の共用化を図ることができる。また、圧縮機11全体の大きさが異なってしまうこともない。
また、ピストン部222のシリンダ14に対する傾斜する角度が比較的変わらないため、圧縮室22からクランク室171への気体の漏れが多くなることを防止できる。
また、連接棒186が一種類で対応可能となるため、連接棒186という比較的大型の部品を複数種類分離して管理保管する保管場所が必要ではなく、スペーサ187という比較的小型の部品の保管場所を準備すれば良い。さらに、スペーサ187は、それぞれ厚さが異なるものを複数準備し、シリンダ14の長さおよび連接棒186の長さや他の構成部品の加工公差を吸収し、トップクリアランスSの寸法を常に一定に保つことで、圧縮機の性能の調整および安定化を可能とする。
また、連接棒186を鋳造するための比較的大型の鋳造型が一種類で済むため、その投資も低額に押さえることができる。
また、ピストンヘッド188と連接棒186の他端との間に設けられたスペーサ187で、ピストンヘッド188の圧縮室22側の上面188aと連接棒186の他端の小端部197の上面197aとの距離を調整するため、比較的簡素な構造にできる。
また、挟持式のリップシール189を用いることから、これを挟持するためにピストンヘッド188を分割式にする必要があるが、リップシール189に対してピストンヘッド188とは反対側のスペーサ187を連接棒186から分割することで、ピストンヘッド188を共用化することができる。
また、スペーサ187は、一端がピストンヘッド188と略同径であり、他端が一端よりも小径であるため、揺動しつつ往復動する際に、シリンダ14との干渉を回避することができる。
また、ピストンヘッド188とスペーサ187とが共通のネジ220で連接棒186に連結されていることから、リップシール189の挟持のために分割されたピストンヘッド188を連接棒186に連結するために本来必要なネジ220を用いて、スペーサ187をピストンヘッド188に連結することができる。
また、圧縮室に昇圧された気体が導入され、この導入された気体を再圧縮してさらに昇圧するブースタ圧縮機であるため、連接棒186の共用化で上記したようにピストン部222の角度を比較的変わらなくできる。したがって、圧縮室22からクランク室171へ通常よりも漏れ易い気体の漏れを防止でき、より効果的に圧縮効率を高めることができる。
また、第1実施形態では、クランクケース13に、クランク軸12の垂直方向にあってシリンダ14が取り付けられるシリンダ取付穴29と、クランク軸12の軸方向一方側にあってモータ部18が取り付けられるモータ嵌合部35と、クランク軸12の軸方向他方側にある部品取付用の開口穴45とがそれぞれ独立して設けられているため、クランクケース13とシリンダ14との連結部分のシールと、クランクケース13とモータ部18との連結部分のシールと、部品取付用の開口穴45のケースカバー20との連結部分のシールとを確実に行うことができ、クランク室171内を漏れの少ない密閉構造にできる。つまり、クランクケース13のシリンダ取付穴29の周囲に設けられたシールリング32によってクランクケース13とシリンダ14との連結部分をシールすることができ、クランクケース13のモータ嵌合部35の周囲に設けられたシールリング41によってクランクケース13とモータ部18との連結部分をシールすることができ、クランクケース13の開口穴45の周囲に設けられたシールリング47によってクランクケース13とケースカバー20との連結部分をシールすることができる。よって、クランクケース13の他部品との連結部分のシール性を高めることができる。しかも、モータ部18も支持板102とモータ胴部100との連結部分がシールリング116でシールされ、支持板102と端部カバー19との連結部分がシールリング118でシールされ、端部カバー19と気密端子150との連結部分がシールリング146でシールされるため、クランク室171から外部に基本的に気体が漏れることがなくなる。したがって、クランク室171内の気体の圧力を維持できるため、クランク室171への一次側の気体の供給量を減らすことができる。
また、第1実施形態では、シール性を高めるためシリンダ取付穴29と部品取付用の開口穴45とを独立させたことにより、長い連接棒を採用した場合や、ピストン部が連接棒と一体となった従来構造を採用した場合には、組付時にこれをクランクケース13内に挿入できない可能性があるが、スペーサ187を分割したことで連接棒186の長さを短くできる。したがって、上記のように、連接棒186が、小端部197を先にして開口穴45からクランクケース13内に挿入され、続いて小端部197がシリンダ取付穴29からクランクケース13外に突出されるようにして、全体がクランク軸12に略垂直をなす姿勢となって、駆動軸125に取り付けられる。したがって、製造時の作業性を向上できる。そして、シリンダ取付穴29から突出する連接棒186の小端部197に、クランクケース13におけるシリンダ取付穴29側で、以後、スペーサ187を嵌め合わせ、スペーサ187にリップシール189を搭載し、ピストンヘッド188の嵌合凸部212を、リップシール189内に通過させてスペーサ187の上嵌合凹部206に嵌め合わせ、ネジ220により、これらピストンヘッド188、リップシール189、スペーサ187を連接棒186の小端部197に固定することができる。
また、クランクケース13は、シリンダ取付穴29、モータ嵌合部35および部品取付用の開口穴45が、いずれも円形状であるため、シールリング32,41,47の取り付けが容易になるとともにシール性が向上する。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図7に基づいて説明する。図7は、第2実施形態の圧縮機を示す正断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態では、図7に示すように、ピストンヘッド188と連接棒186の小端部197との間にシム(調整手段)240が介装されている。具体的には、連接棒186の小端部197の上面197aとスペーサ187の下嵌合凹部204の天井面204aとの間に円板状のシム240が介装されている。
これにより、図2に示すように、連接棒長さがL1、ピストンヘッド下端高さがL2、ピストンヘッド厚さがL3、トップクリアランスがS、クランク軸偏心量がR1、スペーサ厚さがL4a、シリンダ上端高さがA1、シリンダ下端高さがH、シリンダ高さがT1、軸下高さがA0、全高さがB1である圧縮機11に対して、図7に示すように、他の種類の圧縮機11において、クランク軸偏心量がR2に変更されたとしても、スペーサ厚さがL4cであるスペーサ187とシム厚さがL6であるシム240とを、R2−R1=L4a−L4c−L6の関係を満足させるように用いることで、連接棒長さがL1、ピストンヘッド厚さがL3、トップクリアランスがS、シリンダ上端高さがA1、シリンダ下端高さがH、シリンダ高さがT1と、上記種類の圧縮機11と同じ値にしても、A1=H+T1=R2+L5+L3+Sであって、L5=L1+L4c+L6となる。よって、上記種類の圧縮機11と、スペーサ187以外の、シリンダ14、連接棒186およびピストンヘッド188等を共通化することができる。このときも、軸下高さの値A0に変更はなく、上記のように全高さの値B1に影響するシリンダ上端高さの値A1も同じであるため、全高さの値B1も変更はない。
以上に述べた第2実施形態によれば、ピストンヘッド188と連接棒186の小端部197との間にシム240が介装されているため、ピストンヘッド188の上面188aと連接棒186の小端部197との距離をスペーサ187とシム240とで調整することができる。よって、クランク軸偏心量の微少変更等に対して、シム240を追加することでピストンヘッド188の上面188aと連接棒186の小端部197との距離を調整することができる。
以上、第2実施形態の詳細について説明したが、第2実施形態の作用効果を以下に示す。
スペーサ187の下嵌合凹部204の天井面204aと連接棒186の小端部197の上面197aとの間にシム240が介装されているため、ピストンヘッド188の上面188aと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離をスペーサ187とシム240とで調整することができる。よって、クランク軸偏心量の微少変更等に対して、シム240を追加することでピストンヘッド188の上面188aと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離を調整して、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストン部222と仕切板66との距離を一定にすることができる。その結果、クランク軸偏心量の異なる複数種類の圧縮機11に対して、各クランク軸偏心量に合わせた厚さの複数種類のスペーサ187およびシム240を準備しておき、それぞれ対応した厚さのスペーサ187およびシム240を用いることで、シリンダ14の長さおよび連接棒186の長さを変更する必要がなくなる。したがって、部品共用化を図ることができる。さらに、スペーサ187より厚さ寸法管理がしやすいシム240で、それぞれ厚さが微小厚さで異なるものを複数準備し、これらのシム240の中から最適な厚さを選択して使用することで、例えば、トップクリアランスSの寸法を調整可能として、圧縮機の性能の調整および安定化を可能とする。
また、スペーサ187およびシム240という比較的小型の部品の管理保管場所を準備すれば良く、また、スペーサ187を鋳造するための鋳造型が少なく済むため、その投資も低額に押さえることができる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図8に基づいて説明する。図8は、第3実施形態の圧縮機を示す正断面図である。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態では、図8に示すように、揺動部材221が上記した連接棒186にピストンヘッド(調整手段)245を固定して構成されている。つまり、スペーサ187を用いることなく、ピストンヘッド245が連接棒186に直接取り付けられている。
第3実施形態のピストンヘッド245は、外周面の軸線方向一側が軸線方向に沿う円筒面245aとされ、外周面の軸線方向他端側が円筒部245aと連続して円筒部245aから離れるほど大径となるテーパ面245bとされている。これにより、ピストンヘッド245は、軸線方向一側が軸線方向他側よりも小径となっている。また、ピストンヘッド245は、軸線方向一側(テーパ面245b側)の径方向の中央所定範囲に円形状をなして凹む嵌合凹部246が形成されており、その結果、この嵌合凹部246の天井面246aよりも下側に突出する周囲部分がテーパ状のテーパ筒部247とされている。
ピストンヘッド245は、この嵌合凹部246に連接棒186の上記した小端部197を、必要により第2実施形態のシム240を介装させて軸線方向に隙間なく嵌合させる。また、ピストンヘッド245には、円筒面245aの軸線方向中間部に半径方向内方に凹む円形状の外周溝248が形成されており、この外周溝248にシールリング(環状シール部材)249が嵌合されている。このシールリング249は図示は略すが円周方向途中位置に分割構造の合口部が形成されており、取付時にはこの合口部が離れることで拡径可能となっている。また、ピストンヘッド245は、仕切板66と対向する上面(面)245cに、テーパ状の座ぐり付きのネジ挿通穴250が形成されている。
そして、ピストンヘッド245は、ネジ挿通穴250に挿通されたネジ(ネジ部材)251が連接棒186の小端部197のネジ穴198に螺合されることで、小端部197に固定される。
第3実施形態では、圧縮機11の種類によってクランク軸偏心量が異なる場合に、ピストンヘッド245を、それぞれ上面245cから嵌合凹部246の天井面246aまでの厚さが異なるものを複数準備し、これらのピストンヘッド245の中から厚さが合うものを選択し、必要によりシム240を組み合わせて使用することで、ピストンヘッド245の圧縮室22側の上面245cと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離を調整して、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストンヘッド245の上面245cと仕切板66との距離を一定にするようになっている。
以上に述べた第3実施形態によれば、厚みの異なる複数のピストンヘッド245を準備してピストンヘッド245の圧縮室22側の上面245cと連接棒186の小端部197との距離を調整するため、ピストンヘッド245の上面245cと連接棒186の小端部197との距離をピストンヘッド245自体で調整することができる。よって、スペーサ187が不要となるため、部品点数を少なくすることができる。
以上、第3実施形態の詳細について説明したが、第3実施形態の作用効果を以下に示す。
ピストンヘッド245の上面245cと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離をピストンヘッド245自体で調整することができる。よって、クランク軸偏心量の変更に対して、ピストンヘッド245を変更することでピストンヘッド245の上面245cと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離を調整して、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストンヘッド245の上面245cと仕切板66との距離を一定にすることができる。このように、クランク軸偏心量の異なる複数種類の圧縮機11に対して、各クランク軸偏心量に合わせた厚さの複数種類のピストンヘッド245を準備しておき、それぞれ対応した厚さのピストンヘッド245を用いるため、スペーサが不要となる。したがって、部品点数を低減することができる。
また、ピストンヘッド245という比較的小型の部品を複数種類準備するため、保管場所も狭くて済み、また、鋳造型の投資も低額に押さえることができる。
また、ピストンヘッド245の嵌合凹部246の天井面246aと連接棒186の小端部197の上面197aとの間に必要によりシム240が介装されるため、クランク軸偏心量の異なる複数種類の圧縮機11に対して、ピストンヘッド245の上面245cと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離をピストンヘッド245とシム240とで調整して、揺動部材221が上死点にあるときの、ピストンヘッド245の上面245cと仕切板66との距離を一定にすることができる。よって、クランク軸偏心量の微少変更等に対しては、シム240を追加することでピストンヘッド245の上面245cと連接棒186の小端部197の上面197aとの距離を調整することができる。その結果、クランク軸偏心量の異なる複数種類の圧縮機11に対して、各クランク軸偏心量に合わせた厚さの複数種類のピストンヘッド245およびシム240を準備しておき、それぞれ対応した厚さのピストンヘッド245およびシム240を用いることで、シリンダ14の長さおよび連接棒186の長さを変更する必要がなくなる。したがって、部品共用化を図ることができる。
また、ピストンヘッド245およびシム240という比較的小型の部品の保管場所を準備すれば良く、また、ピストンヘッド245を鋳造するための鋳造型が少なく済むため、その投資も低額に押さえることができる。
また、シールリング249が、ピストンヘッド245の外周溝248に嵌合されるため、ピストンヘッド188をシールリング249の挟持のために分割する必要はなく、上記のようにスペーサ187を不要とし、厚さの異なる複数種類のピストンヘッド245を準備することによっての対応が可能となる。
なお、本実施例では、ブースタ圧縮機により説明したが、大気圧を圧縮する通常の圧縮機に用いても良い。
ダイレクト駆動のモータにより説明したが、プーリーを用いた構造も可能であり、その場合は、モータ取付穴は必要なく、クランク軸の軸受けおよび蓋が構成されてもよい。
ピストンの偏心機構として、回転軸とその外周側にベアリングを用いた(エキセントリック)構造としたが、回転軸が直線ではなく偏心した、いわゆるクランク軸機構としてもよい。その場合、連接棒の大・小端部は同径でもよく、逆でもよい。
シリンダヘッドには吸入弁を設けた構成としたが、クランク室側からピストンの一部に設けた吸込み機構を用いて吸気する構造としても良いし、下死点付近、シリンダ側面に設けた圧縮室とクランク室の連通機構を用いて吸い込む構成としてもよい。
回転軸に設けた外部ファン(図示なし)によりクランクケースを冷却する構成としてもよい。
一気筒タイプで説明したが、複数気筒を持つ圧縮機でも使用可能であり、多段圧縮式の圧縮機に用いてもよい。