JP5276623B2 - ケーブルグランド及びケーブルグランド用ワッシャ - Google Patents

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本発明は、ケーブルグランドと、そのキャップに装着するためのケーブルグランド用ワッシャに関する。
電気機器にケーブルを接続する際、電気機器の筐体等に取り付けたケーブルグランドを介してケーブルを保持する技術が公知である(例えば特許文献1等)。
従来の一般的なケーブルグランドは、筐体等の壁体を貫通して取り付けられる略筒状のグランド本体、そのグランド本体の内側に嵌め込まれるゴム製のスリーブ、グランド本体の外側に螺着される袋ナット状のキャップ等により構成されている。スリーブには、その軸方向にケーブルを挿通させる貫通孔が形成されている。この貫通孔にケーブルを挿通させた状態でスリーブをグランド本体に嵌め込み、キャップを締め付けてスリーブをグランド本体内に圧入すると、スリーブが縮径側に撓むようにして弾性変形する。これにより、スリーブの貫通孔とケーブルとが密着して、それらの界面から電気機器の筐体内に水、油、塵、埃等が侵入するのを防止することができるとともに、ケーブル自体をしっかりと保持・固定することができる。
特開2007−37364号公報
前記従来のようなケーブルグランドにおいては、スリーブの貫通孔にケーブルを装着し易くするため、スリーブの貫通孔と外周面との間を切開してスリットを形成したスリーブが、しばしば利用されている。
しかしながら、スリーブにそのようなスリットが形成されていると、キャップを締め付ける際に、キャップの裏面とスリーブの端縁との間に生じる捻り方向の摩擦力が、スリーブの周方向に沿って不均一になりやすい。すると、キャップの締め付けによってスリットの切開面がずれたり、スリーブの端縁が捲りあがったりして、スリーブが歪に変形し、その結果、貫通孔やスリット近傍に隙間が生じて、スリーブの気密・液密性が損なわれてしまうおそれがある。
本発明はかかる問題に着目してなされたもので、上述のようなケーブルグランドにおいて、スリットが形成されたスリーブが、キャップの締め付けによって歪に変形するのを防ぎ、スリーブの気密・液密性を確保することを解決課題とする。
上述の課題を解決するための手段として、本発明のケーブルグランドは、以下のように構成される。
すなわち、本発明のケーブルグランドは、ケーブルを挿通させる貫通孔と、該貫通孔から外周面にかけて切開されたスリットとを有してなるスリーブを、グランド本体内に嵌め込み、該グランド本体に螺着したキャップを締め付けて前記スリーブを縮径方向に変形させるケーブルグランドにおいて、前記キャップと前記スリーブとの間にケーブルグランド用ワッシャが回転自在に介装され、前記キャップを締め付けると、該ワッシャが前記キャップに対して滑りながら前記スリーブを押圧して、前記スリーブを前記グランド本体内に押し込むように構成されたケーブルグランドであって、前記キャップは、内周面に雌ネジが形成された周壁部と、該周壁部の手前側を包む前壁部とを具備し、該前壁部の中央には円形の開口が形成され、該前壁部の裏面から前記周壁部の内周面に連続する隅部には、手前側から奥側に向かって拡径する隅角テーパ面が形成されてなり、前記ワッシャは、前記キャップの前壁部に形成された開口内に挿入されて回転自在に保持される円筒状の首筒部と、該首筒部の奥側端縁から外方に張り出して前記前壁部の裏面に当接する円板状の張出部と、該張出部の外縁から奥側に向かって拡径し前記キャップの隅角テーパ面に当接するテーパ部とを具備し、前記キャップを締め付けると、前記ワッシャの前記テーパ部がスリーブの手前側端縁を押圧して、該スリーブを前記グランド本体内に押し込むように構成されるとともに、前記ワッシャの首筒部の手前側端縁には、外方に張り出す複数個の爪片が突設されて、それらの爪片がキャップの前壁部に形成された開口の手前側縁部に弾性的に係合することにより、前記ワッシャが前記キャップに対して着脱自在に保持されることを特徴とする。
このように構成されるケーブルグランドによれば、キャップとスリーブとの間に介装されるワッシャが、キャップとスリーブとの直接的接触を防ぎ、キャップとスリーブとの間に滑り回転を生じながらスリーブを押圧するので、スリーブが捻り方向の摩擦力から解放される。その結果、スリーブに作用する押圧力がスリーブの周方向にわたって均一化され、スリットの切開面がずれたりスリーブの端面が捲りあがったりせずに、スリーブが好適に縮径変形することとなる。
また、キャップと、ワッシャと、スリーブとの相互の納まりが良くなる。ワッシャは、そのテーパ部をスリーブの手前側端縁に当接させることとなり、ワッシャとスリーブとの接触面積が小さくなって、ワッシャとスリーブとの間にも滑り回転が生じやすくなる。
さらに、ワッシャの首筒部の手前側端縁に、外方に張り出す複数個の爪片が突設されて、それらの爪片がキャップの前壁部に形成された開口の手前側縁部に弾性的に係合することにより、前記ワッシャが前記キャップに対して着脱自在に保持されるとともに、ワッシャがキャップに係合して脱落しにくくなる。これにより、スリーブ本体にキャップを着脱する作業等において、ワッシャを落としたり紛失したりするのを防ぐことができる。キャップからワッシャを取り外したい場合は、両爪片を軸心側に押し込んで首筒部を撓み変形させることにより、両爪片を開口から抜き取って、ワッシャを容易に取り外すことができる。
また、本発明のケーブルグランド用ワッシャは、ケーブルを挿通させる貫通孔と、該貫通孔から外周面にかけて切開されたスリットとを有してなるスリーブを、グランド本体内に嵌め込み、該グランド本体に螺着したキャップを締め付けて前記スリーブを縮径方向に変形させるケーブルグランドにおいて、前記キャップと前記スリーブとの間に回転自在に介装されるケーブルグランド用ワッシャであって、前記キャップの手前側を包む前壁部に形成された円形の開口内に挿入されて回転自在に保持される円筒状の首筒部と、該首筒部の奥側端縁から外方に張り出して前記前壁部の裏面に当接する円板状の張出部と、該張出部の外縁から奥側に向かって拡径するテーパ部と、前記首筒部の手前側端縁から外方に張り出す複数個の爪片とを具備し、前記爪片がキャップの前壁部に形成された開口の手前側縁部に弾性的に係合することにより、前記キャップに対して着脱自在に保持されることを特徴とする。
これらの構成に係るケーブルグランド用ワッシャは、ケーブルグランドのキャップに納まりよく装着されて、上述のようにスリーブを好適に縮径変形させる。
上述のように構成される本発明のケーブルグランド用ワッシャ、又は該ワッシャが介装されたケーブルグランドを利用することにより、キャップがスリーブに直接、接触しなくなり、キャップとワッシャ、ワッシャとスリーブとがそれぞれ滑り回転を生じて、スリーブに作用する押圧力がスリーブの周方向にわたり均一化される。その結果、スリーブに形成されたスリットの切開面がずれたりスリーブの端面が捲りあがったりせずに、スリーブが適正に縮径変形して、スリーブの気密・液密性が好適に保持される。
本発明の実施形態に係るケーブルグランドの半断面・半側面図である。 同ケーブルグランドの正面図である。 同ケーブルグランドの分解斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しつつ説明する。図1〜図3は、本発明の実施の形態に係るケーブルグランドの構成例を示している。
ケーブルグランド1は、電気機器の筺体の壁体2を貫通して取付けられ、壁体2を貫通して配設されるケーブル3を壁体2上に保持するとともに、筺体内に水、油、粉塵等の異物が侵入するのを防止する。なお、本明細書においては、説明の便宜上、筺体の外側から筐体の内側に向かう先方(図1、3における左側)を「奥側」と呼び、その反対側(同、右側)を「手前側」と呼ぶ。
例示のケーブルグランド1は、グランド本体4、スリーブ5、キャップ6、ゴムパッキン7、ロックナット8、そして本発明の要部をなすケーブルグランド用ワッシャ9(以下、単に「ワッシャ9」という。)等によって構成される。
グランド本体4は、その手前側にスリーブ5が嵌まり込むように形成された略円筒状の部材である。グランド本体4の外周面における略中間位置には、略六角形状の鍔部41が、外側に張り出して形成されている。この鍔部41よりも奥側の部分(奥側半部42)の外周面には雄ネジが形成されている。この奥側半部42に環状のゴムパッキン7が介装された状態で、奥側半部42が壁体2の外側から壁体2に形成された取付孔21に挿入される。そして、壁体2よりも筐体の内側に突出した部分に略六角形状のロックナット8が螺着されることにより、グランド本体4が壁体2に固定される。
グランド本体4の鍔部41より手前側の部分(手前側半部43)にも、その外周面に雄ネジが形成されており、この雄ネジにはキャップ6が螺着される。また、グランド本体4の内周面における手前側略半部には、手前側から奥側に向かって縮径するテーパ孔44が形成されており、このテーパ孔44に手前側からスリーブ5が嵌め込まれる。
スリーブ5は、ゴム等からなる可撓性の筒体で、その外周面が手前側から奥側に向かって縮径している。スリーブ5の軸長は、スリーブ5がテーパ孔44に嵌まり込んだ状態で、グランド本体4の手前側端縁から所定量突出するものとなっている。例示のスリーブ5には、ケーブル3を装着するための貫通孔51が、スリーブ5の軸心と平行に複数本、形成されている。それらの貫通孔51には、内径の大きいものと小さいものとが適宜、設けられている。各貫通孔51と、スリーブ5の外周面との間には、スリーブ5の軸心と略平行なスリット52が、各一ヶ所ずつ形成されている。
キャップ6は、外周面が略六角形状の周壁部61と、その手前側を包む前壁部62とを有する袋ナット状の部材である。周壁部61の内周面には、グランド本体4の手前側半部43に形成された雄ネジに螺着される雌ネジが形成されている。前壁部62の中央には、ケーブル3を挿通させる円形の開口63が形成されている。この開口63の内径は、当然ながらスリーブ5の手前側端面の外径より小さいものとなっている。周壁部61の内周面と前壁部62の裏面とが連続する隅部には、手前側から奥側に向かって拡径する隅角テーパ面64が形成されている。
そして、壁体2に固定したグランド本体4のテーパ孔44に手前側からスリーブ5を嵌め込み、グランド本体4の手前側半部43にキャップ6を螺着して締め込むと、キャップ6の隅角テーパ面64がスリーブ5の手前側端縁を押圧してスリーブ5をテーパ孔44に押し込む。すると、スリーブ5が縮径方向に撓み変形して、スリーブ5の貫通孔51に挿通されたケーブル3が弾性的に保持されることとなる。
ケーブルグランド1の基本的構成は上述の通りで従来と大差ないが、発明が解決しようとする課題欄で説明したように、スリーブ5にスリット52が形成されていると、キャップ6を締め付ける際にスリーブ5との間に生じる捻り方向の摩擦力が、スリット52の切開面をずらせたり、スリーブ5の端縁を捲りあげたりして、スリーブ5を歪に変形させてしまう。そこで、本発明においては、キャップ6とスリーブ5との間に、スリーブ5を均一に縮径させるためのワッシャ9を介装させる構成を採用する。
ワッシャ9は、強靱で高い潤滑性を有する合成樹脂、例えばナイロン類やケプラーその他のポリアミド等からなる薄い部材である。ワッシャ9は、短円筒状の首筒部91と、首筒部91の奥側端縁から外方に張り出した円板状の張出部92と、張出部92の外周縁から奥側に向かって拡径するように延出されたテーパ部93とを具備しており、それら各部の表裏両面は平滑に仕上げられている。首筒部91の外径は、キャップ6の前壁部62に形成された開口63の内径に略合致し、首筒部91の軸長は、キャップ6の前壁部62の厚みに略合致するように形成されて、この首筒部91が、キャップ6の開口63内で大きな抵抗なく自由に回転し得るように保持される。張出部92及びテーパ部93は、キャップ6の前壁部62の裏面から隅角テーパ面64に沿って当接するように形成されている。
このように構成されたワッシャ9を、予めキャップ6の内側に装着しておき、その状態でキャップ6をグランド本体4に螺着し締め付ける。すると、キャップ6とスリーブ5とは直接、接触しなくなり、キャップ6とワッシャ9、ワッシャ9とスリーブ5とが、それぞれ滑り回転して、スリーブ5が捻り方向の摩擦力から解放される。それによって、スリーブ5に作用する押圧力がスリーブ5の周方向にわたって均一化され、スリット52の切開面がずれたりスリーブ5の端面が捲りあがったりせずに、スリーブ5が適正に縮径される。こうして、スリーブ5の貫通孔51とケーブル3との界面や、スリット52付近に隙間が生じることなく、スリーブ5の気密・液密性が好適に確保される。
このワッシャ9は、薄くて軽い部材であるため、グランド本体4にキャップ6を着脱する際、キャップ6からワッシャ9が脱落し、何処かに転がって紛失してしまうおそれがある。そこで、例示形態のワッシャ9にあっては、首筒部91の手前側端縁における対向位置2箇所に、外方に張り出す小さい爪片94を形成している。これらの爪片94は、キャップ6にワッシャ9を装着する際、弾性的に変形して、キャップ6の開口63の周縁に手前側から係合する。これにより、ワッシャ9がキャップ6から脱落することが防止される。キャップ6からワッシャ9を取り外したい場合は、両爪片94を軸心側に押し込むようにして首筒部91を変形させれば、両爪片94を開口63から抜き取ることができる。このような抜け止め用の爪片94は、キャップ6の開口63に好適に係合し得る限り、その形状は適宜、改変されてもよい。また、爪片94は、首筒部91の手前側端縁における3〜4箇所に設けてもよい。
なお、本発明において、ケーブルグランド1を構成する部材の断面構造等は、スリーブ5、ワッシャ9及びキャップ6の取り合いに影響しない範囲で適宜、改変可能である。スリーブ5に形成される貫通孔51の個数や太さも、例示形態に限定されるものではない。
また、本発明のテーブルグランドは、配電用や通信用のケーブルだけでなく、外皮(シース)のない電線や、電線を収容するための保護管、あるいは流体を送るための各種管材等の保持にも利用可能であるから、本発明における「ケーブル」は、それらの線材や管材も包含するものとする。
1 ケーブルグランド
3 ケーブル
4 グランド本体
5 スリーブ
51 貫通孔
52 スリット
6 キャップ
61 周壁部
62 前壁部
63 開口
64 隅角テーパ面
9 ワッシャ
91 首筒部
92 張出部
93 テーパ部
94 爪片

Claims (2)

  1. ケーブルを挿通させる貫通孔と、該貫通孔から外周面にかけて切開されたスリットとを有してなるスリーブを、グランド本体内に嵌め込み、該グランド本体に螺着したキャップを締め付けて前記スリーブを縮径方向に変形させるケーブルグランドにおいて、
    前記キャップと前記スリーブとの間にケーブルグランド用ワッシャが回転自在に介装され、前記キャップを締め付けると、該ワッシャが前記キャップに対して滑りながら前記スリーブを押圧して、前記スリーブを前記グランド本体内に押し込むように構成されたケーブルグランドであって、
    前記キャップは、内周面に雌ネジが形成された周壁部と、該周壁部の手前側を包む前壁部とを具備し、該前壁部の中央には円形の開口が形成され、該前壁部の裏面から前記周壁部の内周面に連続する隅部には、手前側から奥側に向かって拡径する隅角テーパ面が形成されてなり、
    前記ワッシャは、前記キャップの前壁部に形成された開口内に挿入されて回転自在に保持される円筒状の首筒部と、該首筒部の奥側端縁から外方に張り出して前記前壁部の裏面に当接する円板状の張出部と、該張出部の外縁から奥側に向かって拡径し前記キャップの隅角テーパ面に当接するテーパ部とを具備し、前記キャップを締め付けると、前記ワッシャの前記テーパ部がスリーブの手前側端縁を押圧して、該スリーブを前記グランド本体内に押し込むように構成されるとともに、
    前記ワッシャの首筒部の手前側端縁には、外方に張り出す複数個の爪片が突設されて、それらの爪片がキャップの前壁部に形成された開口の手前側縁部に弾性的に係合することにより、前記ワッシャが前記キャップに対して着脱自在に保持されることを特徴とするケーブルグランド。
  2. ケーブルを挿通させる貫通孔と、該貫通孔から外周面にかけて切開されたスリットとを有してなるスリーブを、グランド本体内に嵌め込み、該グランド本体に螺着したキャップを締め付けて前記スリーブを縮径方向に変形させるケーブルグランドにおいて、前記キャップと前記スリーブとの間に回転自在に介装されるケーブルグランド用ワッシャであって、
    前記キャップの手前側を包む前壁部に形成された円形の開口内に挿入されて回転自在に保持される円筒状の首筒部と、該首筒部の奥側端縁から外方に張り出して前記前壁部の裏面に当接する円板状の張出部と、該張出部の外縁から奥側に向かって拡径するテーパ部と、前記首筒部の手前側端縁から外方に張り出す複数個の爪片とを具備し、前記爪片がキャップの前壁部に形成された開口の手前側縁部に弾性的に係合することにより、前記キャップに対して着脱自在に保持されることを特徴とするケーブルグランド用ワッシャ。
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