JP5276230B1 - トレハロース含有細胞洗浄溶液を用いた接着細胞のインビトロ継代方法 - Google Patents

トレハロース含有細胞洗浄溶液を用いた接着細胞のインビトロ継代方法 Download PDF

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Abstract

【課題】接着細胞を培養容器から剥離するためのタンパク質分解酵素処理とその後の細胞処理による細胞死を効果的に抑制できる、接着細胞のインビトロ継代方法や、上記細胞洗浄液を含有する、接着細胞のインビトロ継代のためのキットを提供すること。
【解決手段】生理的水溶液に、トレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を添加し、トレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有する細胞洗浄液を作製する。かかる細胞洗浄液を用いて、タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前に、接着細胞を洗浄するとタンパク質分解酵素処理による細胞死(アポトーシスなど)を抑制(阻害)することができる。上記細胞洗浄液に適用されるトレハロース類濃度としては、タンパク質分解酵素処理による細胞死(アポトーシスなど)を抑制(阻害)できる濃度であればよく、通常は0.1〜20(w/v)%であり、好ましくは1〜15(w/v)%、より好ましくは1.0〜7.0(w/v)%、さらに好ましくは3〜5.0(w/v)%である。
【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前に、生理的水溶液に、トレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を添加してなる細胞洗浄液を用いた、接着細胞のインビトロ継代方法や、かかる細胞洗浄液を含有する、接着細胞のインビトロ継代のためのキットに関する。
近年、幹細胞研究の急速な発展によって再生医療への気運は高まっており、その知識や理解は、研究者のみならず、一般にも広く普及してきている。幹細胞を用いた再生医療は、幹細胞が有する自己複製能と多分化能や、幹細胞が分泌する因子を利用して、様々な疾患で損傷を受けた細胞や組織の機能を回復させることを目的とした医療である。白血病や再生不良性貧血などの血液難病の患者に骨髄移植すると、造血系幹細胞が患者体内に生着し、ほぼ一生にわたって造血能の維持が可能となる。また、最近では多くの研究者が造血幹細胞以外の幹細胞を用いた臨床応用を目指し、中枢神経、末梢神経、骨髄、小腸などにおける幹細胞を同定し、外傷性疾患や組織変性疾患に対する組織幹細胞の移植治療が実践され始めている(非特許文献1〜3)。
移植治療に用いる幹細胞は、生体内から採取できる量が極めて少ないため、採取した幹細胞をインビトロで継代培養し、増殖させることが一般的に行われている(特許文献1)。継代培養の過程において幹細胞を培養容器から剥離する際、トリプシン等のタンパク質分解酵素が一般的に用いられるが、タンパク質分解酵素処理により細胞がダメージを受け、細胞死に至るものが一定の割合で生じることが問題とされている。質の高い再生医療を実施するためには、十分な量(数)の幹細胞を提供することが必要であるが、同時に質の高い細胞、すなわち生細胞の割合が高い幹細胞(集団)を提供することが重要となるため、継代培養時のタンパク質分解酵素処理による細胞死を抑制できる方法の開発が急務とされていた。
他方、トレハロース(trehalose)はグルコースが1,1−グリコシド結合してできた二糖の一種である。トレハロースは甘味を呈し、高い保水力を持つため、種々の食品や化粧品に用いられている。また、トレハロースは細胞膜を安定化し、細胞傷害を抑制する性質を有するため、臓器を移植する際の臓器保護液の有効成分として用いられている。ET−Kyoto液やNew ET−Kyoto液等のトレハロースを含有する優れた臓器保存液が開発されている(特許文献2及び3、非特許文献4)。しかしながら、トリプシン等のタンパク質分解酵素により細胞を培養容器から剥離する前に、トレハロースを含有する生理的水溶液で接着細胞を洗浄した場合、タンパク質分解酵素処理による細胞死が抑制できるかどうかは不明であった。
米国特許第5486359号 特許第3253131号公報 国際公開第2007/043698号パンフレット
Gage, F.H. Science 287: 1433-1438 (2000) Morrison, S.J. et al., Cell 96: 737-749 (1999) Batle, E. et al., Cell 111: 251-263 (2002) Chem, F. et al., Yonsei Med. J. 45: 1107-1114 (2004)
本発明の課題は、接着細胞を培養容器から剥離するためのタンパク質分解酵素処理とその後の細胞処理による細胞死を効果的に抑制できる、接着細胞のインビトロ継代方法や、上記細胞洗浄液を含有する、接着細胞のインビトロ継代のためのキットを提供することにある。
本発明者らは、タンパク質分解酵素処理により細胞培養容器から剥離した間葉系幹細胞を、トレハロースを含有する生理的水溶液で洗浄すると、間葉系幹細胞の細胞死が抑制されることを見いだしている(特願2011−072068)。タンパク質分解酵素処理により細胞がダメージを受けると、細胞死(アポトーシスなど)の経路が誘導されることから、かかるトレハロースによる効果は、アポトーシス経路が抑制されたり、あるいは細胞ダメージの修復機能が促進されたことによるものと考えていたが、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、たまたまタンパク質分解酵素処理前に、トレハロースを含有する乳酸リンゲル液(以下、「LRT」と略称する)で細胞を洗浄したところ、コントロールの乳酸リンゲル液(以下、「LR」と略称する)やリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)を用いた場合や、タンパク質分解酵素処理後にLRTで細胞を洗浄した場合等と比べ、細胞死を効果的に抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)(a)接着細胞が接着した培養容器における培地を除去し、生理的水溶液にトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を添加してなる細胞洗浄液で接着細胞を洗浄する工程;(b)タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離させる工程;(c)タンパク質分解酵素の処理を停止するために、培養容器から剥離した接着細胞を、タンパク質を含有する生理的水溶液中に懸濁する工程;(d)細胞懸濁液の一部を、新しい培養容器を用いて継代培養する工程;の工程(a)〜(d)を順次備えたことを特徴とする接着細胞のインビトロ継代方法や、(2)接着細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする上記(1)に記載のインビトロ継代方法や、(3)工程(a)における細胞洗浄液中のトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩の濃度が1〜15(w/v)%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のインビトロ継代方法や、(4)工程(b)におけるタンパク質分解酵素がトリプシンであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のインビトロ継代方法や、(5)工程(c)におけるタンパク質を含有する生理的水溶液が、さらにトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のインビトロ継代方法や、(6)工程(c)におけるタンパク質を含有する生理的水溶液が、血清を含有する動物細胞培養用基礎培地であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のインビトロ継代方法や、(7)工程(c)と工程(d)の間に、細胞懸濁液における溶液を除去し、生理的水溶液又はタンパク質を含有する生理的水溶液で接着細胞を洗浄する工程(p)をさらに備えることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のインビトロ継代方法や、(8)工程(p)における生理的水溶液又はタンパク質を含有する生理的水溶液が、さらにトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を含むことを特徴とする上記(7)に記載のインビトロ継代方法に関する。
また本発明は、(9)タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前に接着細胞を洗浄するための細胞洗浄液であって、生理的水溶液にトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を添加してなる細胞洗浄液と、タンパク質分解酵素処理による細胞死抑制効果について記載された添付文書とを含むことを特徴とする接着細胞のインビトロ継代のためのキットに関する。
本発明の実施の他の形態として、タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前に、接着細胞を洗浄するための、生理的水溶液とトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩との組合せや、タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前に、接着細胞を洗浄するため、生理的水溶液に添加して用いるためのトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を挙げることができる。
本発明によると、間葉系幹細胞等の幹細胞を含む移植用細胞懸濁液における死細胞率を低下させることができ、再生医療における良質な移植用細胞懸濁液を提供することができる。
トリプシン処理前にLRTを用いて接着細胞を洗浄した場合(図中、「酵素処理前洗浄液;LRT、酵素処理後洗浄液;PBS」)の細胞死抑制効果を解析した結果を示す図である。コントロールとしてPBSを用い(図中、「酵素処理前洗浄液;PBS、酵素処理後洗浄液;PBS」)、また比較例1として、トリプシン処理後にLRTを用いた(図中、「酵素処理前洗浄液;PBS、酵素処理後洗浄液;LRT」)。縦軸には、死細胞率を示す(平均値±標準偏差、[n=8])。また、図中、「***」は、4群間のTukey検定で統計的に有意差(P<0.001)があることを示す。 トリプシン処理前にLRTを用いて接着細胞を0.5〜10分間洗浄した場合の細胞死抑制効果を解析した結果を示す図である。コントロールとして、LR及びPBSを用いた。縦軸には、死細胞率を示す(平均値±標準偏差、[n=8])。また、図中、「***」は、各洗浄時間においてPBS及びLRに対してTukey検定で統計的に有意差(P<0.001)があることを示す。 トリプシン処理前にトレハロースが各濃度(1、3、5、7、10、12、15[w/v]%)のLRTを用いて接着細胞を洗浄した場合の細胞死抑制効果を解析した結果を示す図である。コントロールとして、LRを用いた。縦軸には、死細胞率を示す(平均値±標準偏差、[n=12])。また、図中「**」及び「***」は、LRに対してDunnett検定で統計的に有意差(それぞれP<0.005及びP<0.001)があることを示す。 トリプシン処理、又はトリプシン反応停止処理時にトレハロースを添加した場合の細胞死抑制効果を解析した結果を示す図である。図中「トリプシン+T」は、トリプシン溶液にトレハロースを添加したものを、また、図中「培地+T」は、FBSを含むヒトMSC培地にトレハロースを含有したものを示す。縦軸には、死細胞率を示す(平均値±標準偏差、[n=6])。また、図中「***」は、PBS及びLRに対してTukey検定で統計的に有意差(P<0.001)があることを示し、また、図中「**」は、PBS及びLRに対してTukey検定で統計的に有意差(それぞれP<0.001及びP<0.005)があることを示す。
本発明のインビトロ継代方法としては、(a)接着細胞が接着した培養容器における培地を除去し、生理的水溶液にトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩(以下、「トレハロース類」という)を添加してなる本発明の細胞洗浄液、すなわち、トレハロース類を含む生理的水溶液を用いて、接着細胞を洗浄する工程;(b)タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離させる工程;(c)タンパク質分解酵素の処理を停止するために、培養容器から剥離した接着細胞を、タンパク質を含有する生理的水溶液中に懸濁する工程;(d)細胞懸濁液の一部(50[v/v]%、25[v/v]%、12[v/v]%等)を、新しい培養容器を用いて継代培養する工程;を順次含む方法であれば特に制限されないが、工程(c)と工程(d)の間に、細胞懸濁液における溶液を除去し、生理的水溶液やタンパク質を含有する生理的水溶液で接着細胞を洗浄する工程(p)をさらに備えたものが好ましい。本発明の細胞洗浄液は、タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前の、接着細胞洗浄用細胞洗浄液としての用途に限定されるものである。本発明において、接着細胞とは、足場に接着することで生存、増殖、物質生産を行なうことができる足場依存性の細胞を意味する。接着細胞としては、具体的に多能性幹細胞(胚性幹細胞[ES細胞]、EG細胞、iPS細胞等)、間葉系幹細胞、神経系幹細胞、骨髄幹細胞、生殖幹細胞などを挙げることができ、これらの中でも間葉系幹細胞が好ましい。上記哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を例示することが、中でも、マウス、ブタ、ヒトを好適に例示することができ、また上記哺乳動物細胞としては、再生医療等に血管経由で投与される哺乳動物幹細胞の他に、I型糖尿病患者に経静脈投与される哺乳動物の膵島細胞、がん患者に経静脈投与される哺乳動物の樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、アルファ・ベータ(αβ)T細胞、ガンマ・デルタ(γδ)T細胞、細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte;CTL)等を例示することができる。
本発明の細胞洗浄液に適用される生理的水溶液としては、体液や細胞液の浸透圧とほぼ同じになるようにナトリウムやカリウムなどによって塩や糖濃度等調整した等張水溶液であれば特に制限されず、具体的には生理食塩水や、緩衝効果のある生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水[Phosphate buffered saline;PBS]、トリス緩衝生理食塩水[Tris Buffered Saline;TBS]、HEPES緩衝生理食塩水等)、リンゲル液(乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液等)、5%グルコース水溶液、動物細胞培養用基礎培地(DMEM、EMEM、RPMI−1640、α−MEM、F−12、F−10、M−199等)、等張剤(ブドウ糖、D−ソルビトール、D−マンニトール、ラクトース、塩化ナトリウム等)などを挙げることができ、これらの中でも緩衝効果のある生理食塩水やリンゲル液が好ましく、PBSや乳酸リンゲル液がより好ましい。生理的水溶液は、市販のものであっても、自ら調製したものであってもよい。市販のものとしては、D−PBS(−)(Invitrogen社製)、生理食塩液(大塚製薬工場社製「大塚生食注」)、乳酸リンゲル溶液(大塚製薬工場社製「ラクテック注」)、ヒト間葉系幹細胞専用培地キット(Lonza社)を挙げることができる。本明細書において「等張」とは、浸透圧が250〜380mOsm/lの範囲内であることを意味する。生理的水溶液は、更に安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、キレート剤(例えば、EDTA、EGTA、クエン酸、サリチレート)、溶解補助剤、保存剤、酸化防止剤等を含むことができる。
本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース類におけるトレハロースとしては、2つのα-グルコースが1,1−グリコシド結合した二糖類であるα,α−トレハロースの他に、α-グルコースとβ−グルコースとが1,1−グリコシド結合した二糖類であるα,β−トレハロースや、2つのβ−グルコースが1,1−グリコシド結合した二糖類であるβ,β−トレハロースを挙げることができるが、これらの中でもα,α−トレハロースが好ましい。これらトレハロースは、化学合成、微生物による生産、酵素による生産等のいずれの公知の方法によっても製造することができるが、市販品を用いることもできる。例えば、α,α−トレハロース(株式会社林原社製)、α,α−トレハロース(和光純薬社製)などの市販品を挙げることができる。
本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース類におけるトレハロース誘導体としては、二糖類のトレハロースに1又は複数の糖単位が結合したグリコシルトレハロース類であれば特に制限されず、グリコシルトレハロース類には、グルコシルトレハロース、マルトシルトレハロース、マルトトリオシルトレハロースなどが含まれる。
本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース類におけるトレハロース又はその誘導体の塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩や、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩や、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などを挙げることができる。なお、これらの塩は使用時において溶液として用いられ、その作用は、トレハロースの場合と同効なものが好ましい。これらの塩類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース類濃度としては、タンパク質分解酵素処理による細胞死(アポトーシスやネクローシスなど)を抑制(阻害)できる濃度であればよく、細胞の種類や培養容器における細胞数、細胞濃度などに応じて最適な条件を適宜選択することができる。トレハロース類の濃度が高いほどタンパク質分解酵素処理による細胞死を抑制できる効果は高くなるが、トレハロース類濃度が高すぎると、細胞の生存に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース類の濃度は、通常、0.1(w/v)%以上、好ましくは1.0(w/v)%以上、より好ましくは3.0(w/v)%以上であり、また、細胞の生存率への悪影響を回避する観点から、通常20(w/v)%以下、好ましくは15(w/v)%以下、より好ましくは7.0(w/v)%以下、さらに好ましくは5.0(w/v)%以下である。従って、細胞洗浄液中のトレハロース類の濃度としては、0.1〜20(w/v)%、好ましくは1.0〜15(w/v)%、より好ましくは1.0〜7.0(w/v)%、さらに好ましくは3.0〜5.0(w/v)%である。本発明の細胞洗浄液により細胞死を抑制できることは、トリパンブルー(Trypan Blue)染色法、TUNEL法、Nexin法、FLICA法などの細胞死を検出できる公知の方法を用いて確認することができる。
本発明のタンパク質分解酵素処理に用いられるタンパク質分解酵素としては、トリプシン、リシルエンドペプチダーゼ、プロナーゼ、ペプシン、エラスターゼ、コラゲナーゼ等を挙げることができ、これらの中でもトリプシンを好適に例示することができる。
本発明のインビトロ継代方法における接着細胞洗浄時の温度や時間等の条件は、本発明のトレハロース類による効果が認められ、且つ細胞にダメージを与えない条件であればよく、温度は、通常20〜37℃の範囲内であり、処理時間は、通常1秒〜20分の範囲内であるが、処理時間が少なくとも30秒〜10分の範囲内で本発明のトレハロース類による効果が同程度認められるため、上記処理時間としては、30秒〜10分の範囲内が好ましい。また、洗浄操作の回数としては、少なくとも1回であればよく、複数回(2、3、4回等)であってもよいが、時間対効果及び費用対効果を考慮すると、1回が好ましい。
本発明の細胞洗浄液を用いて以下のようにして接着細胞をインビトロで継代することができる。
まず、細胞接着分子(フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、ナイドジェン等)や高分子(ポリ−L−オルニチン、ポリ−リジン等)などでコーティング処理した接着細胞用培養容器(マルチウエルプレート、培養皿[シャーレ、ディッシュ]、フラスコ等)や、表面加工処理した接着細胞用培養容器に、上述の接着細胞をインビトロで継代培養したものを得る。培地中には、プロテアーゼインヒビター等のタンパク質分解酵素の活性を阻害する因子が含まれている可能性や、培地中に存在する過剰量のタンパク質によりタンパク質分解酵素の機能が競合的に阻害される可能性があるため、次の工程でタンパク質分解酵素処理を行う前に、予め接着細胞が接着した培養容器における培地をアスピレーター等より除去し、タンパク質をほとんど又は全く含まない本発明の細胞洗浄液で細胞を洗浄し、残存する培地を除去する。洗浄処理時の温度や時間等の条件は、上述の本発明のインビトロ継代方法における接着細胞洗浄時の条件を挙げることができる。
次に、タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離させる。この際、通常細胞がダメージを受けることにより細胞集団における細胞生存率が低下するが、本発明のトレハロース類による効果により、細胞生存率低下を抑制(阻害)することができる。
タンパク質分解酵素処理は、上述のタンパク質分解酵素を含有する水溶液に、細胞を接触させることにより行う。タンパク質分解酵素を含有する水溶液としては、Gibco社製等の市販のタンパク質分解酵素の粉末を上述の生理的水溶液に溶解したものであっても、Lonza社製等の市販のタンパク質分解酵素の溶液を上述の生理的水溶液で希釈したものであってもよい。タンパク質分解酵素を含有する水溶液におけるタンパク質分解酵素の濃度は、タンパク質分解酵素の種類に応じて、細胞を剥離するのに十分な濃度であればよく、通常0.05〜0.25(w/v)%の範囲内である。
タンパク質分解酵素処理における温度や時間等の条件は、ほとんど(70〜100%等)の細胞を培養容器から剥離できる条件であればよく、温度は、通常20〜37℃の範囲内であり、処理時間は、通常15秒〜15分の範囲内である。通常長時間にわたって細胞をタンパク質分解酵素処理すると、細胞がダメージを受けて、生存率がより低下するおそれがあるが、本発明のトレハロース類による効果により、細胞生存率低下を抑制することができるため、培養容器から剥離するのに通常の処理時間では困難な細胞を長時間(10〜30分等)処理することもできる。
続いて、タンパク質分解酵素の処理を停止するために、培養容器から剥離した接着細胞を、タンパク質を含有する生理的水溶液中に懸濁する。懸濁は、ピペッティングやタッピング等の当該技術分野における周知の方法により実施することができる。タンパク質を含有する生理的水溶液としては、タンパク質分解酵素の活性を抑制するのに十分な量のタンパク質を含有する生理的水溶液であればよく、具体的には0.1〜30(v/v)%の血清(ウシ胎児血清[Fetal bovine serum;FBS]、子牛血清[Calf bovine serum;CS]等)を含有する上述の生理的水溶液を挙げることができ、FBSを含有する上述の動物細胞培養用基礎培地が好ましい。また、タンパク質を含有する生理的水溶液としては、本発明のトレハロース類による相加又は相乗効果が認められるため、さらに上述のトレハロース類を含むものが好ましい。
上記工程(p)により、細胞懸濁液中のタンパク質分解酵素を除き、接着細胞を洗浄するために、細胞懸濁液における溶液を除去し、タンパク質分解酵素処理後洗浄液として上述の生理的水溶液やタンパク質を含有する生理的水溶液を用いて接着細胞を洗浄する。細胞懸濁液における溶液の除去は、細胞懸濁液を、遠心分離機を用いて上清(溶液)と沈殿物(細胞)とに分離し、アスピレーター等を用いて上清を除去することにより実施することができる。また、洗浄効果を高めるために、沈殿物は、ピペッティングやタッピング等により懸濁することが好ましい。また、細胞懸濁液中の細胞を洗浄する回数としては、少なくとも1回であればよく、複数回(2、3、4回等)であってもよいが、時間対効果及び費用対効果を考慮すると、1回が好ましい。また、タンパク質分解酵素処理後洗浄液として用いる上述の生理的水溶液としては、本発明のトレハロース類による相加又は相乗効果が認められるため、さらに上述のトレハロース類を含むものが好ましい。
上記工程(d)において、継代培養に適用される培養温度は、通常約30〜40℃の範囲であり、好ましくは37℃である。培養時のCO濃度は、通常約1〜10%の範囲であり、好ましくは約5%である。培養時の湿度は、通常約70〜100%の範囲であり、好ましくは約95〜100%である。
上記工程(d)において、継代培養に適用される培地としては、0.1〜30(v/v)%の範囲内で血清(FBS、CS等)を含有する上述の動物細胞培養用基礎培地や、血清の代わりに、細胞増殖に必要な添加物を含有する上述の動物細胞培養用基礎培地を挙げることができる。かかる添加物としては、鉄源(トランスフェリン等)、成長因子(インスリン、EGF、Basic FGF、グリア細胞由来神経栄養因子[GDNF;Glial cell line-derived neurotrophicfactor]、幹細胞因子[SCF;Stem Cell Factor]等)、ポリアミン類(プトレシン等)、ステロイド(プロゲステロン、β-エストラジオール等)、ミネラル(亜セレン酸[Selenous acid]又はその塩)、接着因子(例えば、ヘパリン(Heparin)、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン等)、還元剤(N−アセチルシステイン[N-acetylcysteine]、2−メルカプトエタノール、カタラーゼ等)などを挙げることができる。また、これら培地には、幹細胞の未分化維持に必要な幹細胞の分化抑制剤(LIF、Wnt、TGF-β等)の他、グルコース等の糖類や、ストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等の抗生物質や、Hepes等の緩衝剤などを添加してもよい。
本発明の接着細胞のインビトロ継代方法における各工程は、埃や細菌等の混入(コンタミネーション)を避けるため、クリーンベンチなどを用いて無菌的に行うことが好ましい。
本発明の接着細胞のインビトロ継代のためのキットとしては、本発明の細胞洗浄液と、タンパク質分解酵素処理による細胞死抑制効果について記載された添付文書とを含有する、接着細胞のインビトロ継代用キットとして用途限定されるものであれば特に制限されず、さらに上述のタンパク質分解酵素やピペット、遠心管等を含むものであってもよく、特にさらに上述のタンパク質分解酵素を含むものを好適に例示することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
1.本発明の細胞洗浄液を、タンパク質分解酵素処理前の細胞洗浄液として用いると、細胞死が抑制されることの確認
1−1 材料
1−1−1 3(w/v)%トレハロース含有乳酸リンゲル液
3gトレハロース(株式会社林原社製)を90mL乳酸リンゲル液(大塚製薬工場社製「ラクテック注」)と混合し、スターラーを用いて溶解した。乳酸リンゲル液で100mLに容量調整した後に、安全キャビネット内で0.22μmフィルターにより滅菌を行い、10mLずつ分注した。
1−1−2 ヒト骨髄間葉系幹細胞(Human Mesenchymal Stem Cells from Bone Marrow
[hMSC-BM])
hMSC-BM(Lonza社製)を、以下の〔1〕〜〔9〕に示す手順にしたがって調製し、本実験に用いた。
〔1〕hMSC-BMを、75cmフラスコを用いてヒト間葉系幹細胞専用培地キット(Lonza社製)(以下、「MSC培地」という)存在下で37℃、5%COインキュベーターにて培養を行った。顕微鏡下で細胞の状態を観察し、90%程度コンフルエントになるまで培養した。
〔2〕MSC培地をアスピレーターで除き、フラスコ当たり8mLのダルベッコリン酸緩衝食塩水(D−PBS[−])(以下単に「PBS」という。)(Invitrogen社製)で細胞をリンスした。
〔3〕PBSをアスピレーターで除き、フラスコ当たり3.75mLのトリプシン−EDTA(Lonza社製)を加え、室温で5分間静置した。
〔4〕細胞が90%程度剥離するまで顕微鏡下で観察しながら、ゆっくりと揺らした。
〔5〕フラスコ当たり3.75mLのMSC培地を加え、トリプシン反応を停止させ、ピペッティングにより細胞を回収し、50mL遠心チューブに移した。
〔6〕600×g、5分間、22℃で遠心分離を行った。
〔7〕上清であるMSC培地をアスピレーターで除き、1フラスコ当たり5mLのMSC
培地を加え、細胞ペレット(沈殿物)を懸濁した。
〔8〕10μLの細胞懸濁液を採取し、10μLの0.4%トリパンブルー(Gibco社製
)と混合し、細胞計数盤で生細胞数を計測した。
〔9〕6ウェルディッシュに1×10細胞/2mL/ウェルとなるように細胞を播種した後、37℃、5%COインキュベーターにて培養を行った。3〜4日おきにMSC培地を全量新しい培地へ交換した。
1−2 方法
本発明の細胞洗浄液を、タンパク質分解酵素処理前の細胞洗浄液として用いると、細胞死が抑制されることを確認するために、以下の〔1〕〜〔5〕に示す手順にしたがって実験を行った。
〔1〕hMSC-BMが接着した6ウェルディッシュからMSC培地を吸引・除去し、25℃の3(w/v)%トレハロース含有乳酸リンゲル液(3%LRT)を1ウェル当たり2mLずつ添加し、25℃で1分間保温した(酵素処理前洗浄処理)。なお、コントロールとしてPBSを用いた。
〔2〕3%LRTを吸引・除去した後、25℃に保温したトリプシン−EDTA(Lonza社製)を1ウェル当たり1mLずつ添加し、25℃で15分間インキュベートした(酵素処理)。
〔3〕25℃のMSC培地を1mLずつ加えて細胞を懸濁した後(酵素反応停止処理)、細胞懸濁液を15mLコニカル遠心チューブ(conical centrifuge tube)に移した。
〔4〕600×g、5分間、25℃で遠心分離し、上清を吸引・除去した後、1ウェルにつき100μLの氷冷PBSに懸濁した(酵素処理後洗浄処理)。
〔5〕10μL細胞懸濁液を採取し、10μLトリパンブルーと混和後、顕微鏡下にてワンセルカウンターを用いて細胞数の測定を行い、死細胞率の評価を行った。
1−3 結果
トリプシン処理前にPBSを用いて細胞を洗浄した場合、トリプシン処理後の死細胞率は34.7%であるに対し(図1、左から1番目のバー)、トリプシン処理前に3%LRTを用いて細胞を洗浄した場合、トリプシン処理後の死細胞率は16.3%であり(図1、右から2番目のバー)、また、両者間で統計学的有意差が認められた(P<0.001)。この結果は、トリプシン処理前にLRT等のトレハロースを含有する生理的水溶液を用いて細胞を洗浄すると、トレハロースを含有しない生理的水溶液を用いた場合と比べ、トリプシン処理後の死細胞率が低下することを示している。また、比較例1として、トリプシン処理前にPBSを用いて細胞を洗浄し(上記実施例1の「1−2 方法」の〔1〕のステップ[酵素処理前洗浄処理])、且つ、トリプシン処理後に3%LRTを用いて細胞を洗浄した場合(上記実施例1の「1−2 方法」の〔4〕のステップ[酵素処理後洗浄処理])、死細胞率は32.8%であり(図1、左から2番目のバー)、コントロールのPBSを用いた場合と比べ(図1、左から1番目、死細胞率34.7%)、有意差はないものの死細胞率が低下することを確認できたが、その効果は、トリプシン処理前に3%LRTを用いて細胞を洗浄した場合の方が大いに優れていた(P<0.001、図1、左から2番目と3番目のバーの比較)。また、トリプシン処理前に3%LRTを用いて細胞を洗浄し、さらにトリプシン処理後に3%LRTを用いて細胞を洗浄した場合、トリプシン処理後の死細胞率は13.8%であり(図1、右から1番目のバー)、トリプシン処理前に3%LRTを用いた場合と比べ(図1、右から2番目のバー、死細胞率16.3%)、有意差はないものの死細胞率が低下することを確認できた。この結果は、タンパク質分解酵素処理後の細胞洗浄時にトレハロースを用いると、本発明の細胞洗浄液との相加又は相乗効果により死細胞率をさらに低下できることを示している。
2.本発明の細胞洗浄液による細胞死抑制効果が、トレハロースによるものであることの確認と、本発明の細胞洗浄液による処理時間の検討
2−1 方法
さらに、LRTによる細胞死抑制効果が、LRによるものでなく、トレハロースによるものであることを確認するために、トリプシン処理前洗浄液のコントロールとしてLRを用いた場合の実験を行った。また、トリプシン処理前における細胞洗浄処理時間についてもあわせて検討するために、以下の〔1〕〜〔5〕に示す手順に従って実験を行った。
〔1〕hMSC-BMが接着した6ウェルディッシュからMSC培地を吸引・除去し、25℃の3(w/v)%トレハロース含有乳酸リンゲル液(3%LRT)を1ウェル当たり2mLずつ添加し、25℃で0.5、1、3、5、7、10分間保温した(酵素処理前洗浄処理)。なお、コントロールとしてLR、及び、洗浄液として一般的に使用されているPBSを用いた。
〔2〕3%LRTを吸引・除去した後、25℃に保温したPBSと等量で混和したトリプシン−EDTA(Lonza社製)希釈液を1ウェル当たり1mLずつ添加し、25℃で20分間インキュベートした(酵素処理)。
〔3〕25℃のMSC培地を1mLずつ加えて細胞を懸濁した後(酵素反応停止処理)、細胞懸濁液を15mLコニカル遠心チューブ(conical centrifuge tube)に移した。
〔4〕600×g、5分間、25℃で遠心分離し、上清を吸引・除去した後、1ウェルにつき100μLの氷冷PBSに懸濁した(酵素処理後洗浄処理)。
〔5〕10μL細胞懸濁液を採取し、10μLトリパンブルーと混和後、顕微鏡下にてワンセルカウンターを用いて細胞数の測定を行い、死細胞率の評価を行った。
2−2 結果
結果を図2に示す。例えば、トリプシン処理前洗浄処理時間が10分の場合、トリプシン処理前にLRを用いて細胞を洗浄したとき、トリプシン処理後の死細胞率は、42.1%であったのに対して、トリプシン処理前に3%LRTを用いて細胞を洗浄したとき、トリプシン処理後の死細胞率は、14.8%まで低下しており(図2)、かかる低下は統計学的有意差が認められた(P<0.001)。また、PBSとLRの間に、統計学的有意差が認められなかった。この結果は、本発明の細胞洗浄液による細胞死抑制効果が、LRによるものではなく、トレハロースによるものであることを示している。さらに、トリプシン処理前の、LRTによる細胞洗浄処理時間が0.5〜7分の場合においても同様に、細胞死抑制効果が同程度認められた(図2)。この結果は、トリプシン処理前に本発明の細胞洗浄液を用いて、少なくとも0.5〜10分の範囲内で処理した場合、同程度の細胞死抑制効果が認められることを示している。
3.本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース濃度の検討
3−1 方法
次に、本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース濃度について検討するために、以下の〔1〕〜〔5〕に示す手順に従って実験を行った。
〔1〕hMSC-BMが接着した6ウェルディッシュからMSC培地を吸引・除去し、25℃の各種濃度(1、3、5、7、10、12、15[w/v]%)トレハロース含有乳酸リンゲル液を1ウェル当たり2mLずつ添加し、25℃で1分間保温した(酵素処理前洗浄処理)。なお、コントロールとしてLRを用いた。
〔2〕〔1〕の酵素処理前洗浄液を吸引・除去した後、25℃に保温したトリプシン−EDTA(Lonza社製)を1ウェル当たり1mLずつ添加し、25℃で15分間インキュベートした(酵素処理)。
〔3〕25℃のMSC培地を1mLずつ加えて細胞を懸濁した後(酵素反応停止処理)、細胞懸濁液を15mLコニカル遠心チューブ(conical centrifuge tube)に移した。
〔4〕600×g、5分間、25℃で遠心分離し、上清を吸引・除去した後、1ウェルにつき100μLの氷冷PBSに懸濁した(酵素処理後洗浄処理)。
〔5〕10μL細胞懸濁液を採取し、10μLトリパンブルーと混和後、顕微鏡下にてワンセルカウンターを用いて細胞数の測定を行い、死細胞率の評価を行った。
3−2 結果
結果を図3に示す。トレハロース濃度が1〜15(w/v)%のLRTを用いてトリプシン処理前の細胞を洗浄した場合、そのいずれの濃度においても、トレハロース不含のLRを用いた場合と比べ、死細胞率は低下しており(図3)、かかる低下は統計学的有意差が認められた。また、トレハロース濃度が3(w/v)%の細胞洗浄液を用いた場合、細胞死抑制効果が最も優れていたことが明らかとなった。これらの結果は、本発明の細胞洗浄液に適用されるトレハロース濃度が、少なくとも1〜15(w/v)%の範囲内である場合、細胞死抑制効果が認められることを示すとともに、かかるトレハロース濃度が、1〜7(w/v)%、特に3〜5(w/v)%である場合、特に優れた細胞死抑制効果が認められることを示している。
4.トリプシン処理、又はトリプシン反応停止処理時にトレハロースを添加した場合の細胞死抑制効果の解析
4−1 方法
次にトリプシン処理、又はトリプシン反応停止処理時にトレハロースを添加した場合の細胞死抑制効果について解析するために、以下の〔1〕〜〔5〕に示す手順に従って実験を行った。
〔1〕hMSC-BMが接着した6ウェルディッシュからMSC培地を吸引・除去し、25℃の3(w/v)%トレハロース含有乳酸リンゲル液を1ウェル当たり2mLずつ添加し、25℃で1分間保温した(酵素処理前洗浄処理)。なお、コントロールとしてLRを用いた。
〔2〕〔1〕の酵素処理前洗浄液を吸引・除去した後、トリプシン−EDTA(Lonza社製)にトレハロースを最終濃度が3(w/v)%になるように添加した25℃保温のトレハロース含有トリプシン溶液を1ウェル当たり1mLずつ添加し、25℃で15分間インキュベートした(酵素処理)。
〔3〕MSC培地にトレハロースを最終濃度が3(w/v)%になるように添加した25℃保温のトレハロース含有MSC培地を1mLずつ加えて細胞を懸濁した後(酵素反応停止処理)、細胞懸濁液を15mLコニカル遠心チューブ(conical centrifuge tube)に移した。
〔4〕600×g、5分間、25℃で遠心分離し、上清を吸引・除去した後、1ウェルにつき100μLの氷冷PBSに懸濁した(酵素処理後洗浄処理)。
〔5〕10μL細胞懸濁液を採取し、10μLトリパンブルーと混和後、顕微鏡下にてワンセルカウンターを用いて細胞数の測定を行い、死細胞率の評価を行った。
4−2 結果
結果を図4に示す。比較例2として、トリプシン処理前にPBSを用いて細胞を洗浄し、且つ、トレハロース含有トリプシン溶液を用いて酵素処理を行った場合(上記実施例1の「1−2 方法」の〔1〕のステップ[酵素処理前洗浄処理])、トレハロース不含トリプシン溶液を用いた場合と比べ、死細胞率に変化は認められなかった(図4の「トリプシン+T」と「トリプシン」との比較)。この結果は、タンパク質分解酵素処理時にトレハロースを添加しても死細胞率を抑制できないことを示している。また、比較例3として、トリプシン処理前にPBSを用いて細胞を洗浄し、且つ、トリプシン反応停止処理時にトレハロース含有MSC培地(図4の「培地+T」)を用いた場合(上記実施例1の「1−2 方法」の〔3〕のステップ(酵素反応停止処理))、トレハロース不含MSC培地を用いた場合(図4の「培地」)と比べ、死細胞率が低下していた(図4の左から1番目のバー[死細胞率37.9%]と、図4の左から2番目のバー[死細胞率33.9%]との比較)。この結果は、タンパク質分解酵素処理後の酵素反応停止処理時に、MSC培地等のタンパク質を含有する生理的水溶液にトレハロースを添加したものを用いて細胞を懸濁すると、本発明の細胞洗浄液と比べると効果は低いものの、死細胞率を低下できることを示している。また、トリプシン処理前に3%LRTを用いて細胞を洗浄し、さらにトリプシン反応停止処理時にトレハロース含有MSC培地を用いた場合、トリプシン処理後の死細胞率は13.0%であり(図4、右から3番目のバー)、トリプシン処理前に3%LRTを用いた場合と比べ(図4、右から3番目のバー、死細胞率16.8%)、有意差はないものの死細胞率が低下することを確認できた。この結果は、タンパク質分解酵素反応停止処理時にトレハロースを用いると、本発明の細胞洗浄液との相加又は相乗効果により死細胞率をさらに低下できることを示している。
本発明によると、MSCなどの幹細胞を含む細胞懸濁液中の死細胞の割合を低下し、良質な細胞懸濁液を提供することができるので、再生医療等における移植医療分野やがん治療分野で有用である。

Claims (9)

  1. 以下の工程(a)〜(d)を順次備えたことを特徴とする接着細胞のインビトロ継代方法。
    (a)接着細胞が接着した培養容器における培地を除去し、生理的水溶液にトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を添加してなる細胞洗浄液で接着細胞を洗浄する工程;
    (b)タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離させる工程;
    (c)タンパク質分解酵素の処理を停止するために、培養容器から剥離した接着細胞を、タンパク質を含有する生理的水溶液中に懸濁する工程;
    (d)細胞懸濁液の一部を、新しい培養容器を用いて継代培養する工程;
  2. 接着細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする請求項1に記載のインビトロ継代方法。
  3. 工程(a)における細胞洗浄液中のトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩の濃度が1〜15(w/v)%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインビトロ継代方法。
  4. 工程(b)におけるタンパク質分解酵素がトリプシンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインビトロ継代方法。
  5. 工程(c)におけるタンパク質を含有する生理的水溶液が、さらにトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインビトロ継代方法。
  6. 工程(c)におけるタンパク質を含有する生理的水溶液が、血清を含有する動物細胞培養用基礎培地であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインビトロ継代方法。
  7. 工程(c)と工程(d)の間に、細胞懸濁液における溶液を除去し、生理的水溶液又はタンパク質を含有する生理的水溶液で接着細胞を洗浄する工程(p)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインビトロ継代方法。
  8. 工程(p)における生理的水溶液又はタンパク質を含有する生理的水溶液が、さらにトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を含むことを特徴とする請求項7に記載のインビトロ継代方法。
  9. タンパク質分解酵素処理により接着細胞を培養容器から剥離する前に接着細胞を洗浄するための細胞洗浄液であって、生理的水溶液にトレハロース若しくはその誘導体又はそれらの塩を添加してなる細胞洗浄液と、タンパク質分解酵素処理による細胞死抑制効果について記載された添付文書とを含むことを特徴とする接着細胞のインビトロ継代のためのキット。
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