本発明を実施する第1の形態について説明する。
図1は、本発明の電力変換装置を用いた直流送電システムの回路図である。
まず、本発明の直流送電システムの構成について説明する。該直流送電システムは、三相交流電力系統100および170と、該三相交流電力系統100,170それぞれに連系している各2台の電力変換装置101と該三相交流電力系統100,170それぞれに連系している各2台の電力変換装置101の2つの直流出力端子の片方には直流送電ケーブル150が接続され、他方の直流出力端子はそれぞれ接地している。
本発明の直流送電システムは該三相交流電力系統101および170からの交流電力を各三相交流電力系統に連系している各2台の電力変換装置101により直流電力に変換し、直流送電ケーブル150によって一方向または双方向に電力を送電する。
次に、電力変換装置101の構成について説明する。該電力変換装置101は、変圧器105と正側変換器グループ112,負側変換器グループ116とから構成される。
本明細書では、三相交流電力系統100の各相をR相,S相,T相と呼ぶことにする。さらに、三相交流電力系統100の各相に流れる電流を系統電流と呼び、IR,IS,ITと表記することにする。
次に、図1と図2を用いて、変圧器105の構成について説明する。
該変圧器105は、R相端子102,S相端子103,T相端子104,u相正側端子106,v相正側端子107,w相正側端子108,u相負側端子109,v相負側端子110,w相負側端子111、の合計9端子を備えている。
図2は、変圧器105の各巻線が各鉄心に生じる起磁力の極性と、各巻線の結線を示す。変圧器105は、鉄心131〜133を有しており、これらの鉄心は三脚鉄心を構成する。一次巻線201はデルタ結線されており、R相−S相間,S相−T相間,T相−R相間の各巻線202〜204はそれぞれ鉄心131〜133に巻回されている。巻線202〜204の巻数は大略等しい。
u相正側巻線134とu相負側巻線137は電気的に直列接続されている。u相正側巻線134は鉄心131に巻回されており、u相負側巻線137は鉄心133に巻回されている。なお、u相正側巻線134が鉄心131に生じる起磁力と、u相負側巻線137が鉄心133に生じる起磁力とが、大略同じ大きさで逆極性となるように結線されている。
v相正側巻線135とv相負側巻線138は電気的に直列接続されている。v相正側巻線135は鉄心132に巻回されており、v相負側巻線138は鉄心131に巻回されている。なお、v相正側巻線135が鉄心132に生じる起磁力と、v相負側巻線138が鉄心131に生じる起磁力とが、大略同じ大きさで逆極性となるように結線されている。
w相正側巻線136とw相負側巻線139は電気的に直列接続されている。w相正側巻線136は鉄心133に巻回されており、w相負側巻線139は鉄心132に巻回されている。なお、w相正側巻線136が鉄心133に生じる起磁力と、w相負側巻線139が鉄心132に生じる起磁力とが、大略同じ大きさで逆極性となるように結線されている。
本明細書では、u相正側巻線134とu相負側巻線137を総称してu相巻線と呼ぶことにする。また、v相正側巻線135とv相負側巻線138を総称してv相巻線と呼ぶことにする。同様に、w相正側巻線136とw相負側巻線139を総称してw相巻線と呼ぶことにする。
本明細書では、u相正側巻線134の両端電圧をVuH、v相正側巻線135の両端電圧をVvH、w相正側巻線136の両端電圧をVwH、u相負側巻線137の両端電圧をVuL、v相負側巻線138の両端電圧をVvL、w相負側巻線139の両端電圧をVwLと表記することにする。
また、VuHとVuLの和をu相電圧Vu、VvHとVvLの和をv相電圧Vv、VwHとVwLの和をw相電圧Vwと呼ぶことにする。
また、電力変換装置101の正側直流出力端子121と負側直流出力端子122の間に印加される電圧をVD、正側直流出力端子121に流れる電流をIDと表記することにする。
次に、正側変換器グループ112と負側変換器グループ116の構成について説明する。
該正側変換器グループ112は、u相正側変換器アーム113,v相正側変換器アーム114,w相正側変換器アーム115とからなる。また、該負側変換器グループ116は、u相負側変換器アーム117,v相負側変換器アーム118,w相負側変換器アーム119からなる。
各変換器アーム113〜115,117〜119は、a端子とb端子とを備えている。本明細書では、b端子を基準としたa端子までの電圧をアーム電圧と呼ぶことにする。また、各変換器アーム113〜115,117〜119は、図3に示す単位チョッパセルを1台または複数台カスケード接続した回路である。
u相正側変換器アーム113のa端子を正側出力端子121に接続し、b端子を変圧器105のu相正側端子106に接続する。また、本明細書ではu相正側変換器アーム113のアーム電圧をVarmuHと表記することにする。
v相正側変換器アーム114のa端子を正側出力端子121に接続し、b端子を変圧器105のv相正側端子107に接続する。また、本明細書はv相正側変換器アーム114のアーム電圧をVarmvHと表記することにする。
w相正側変換器アーム115のa端子を正側出力端子121に接続し、b端子を変圧器105のw相正側端子108に接続する。また、本明細書ではw相正側変換器アーム115のアーム電圧をVarmwHと表記することにする。
u相負側変換器アーム117のa端子を変圧器105のu相負側端子109に接続し、b端子を負側出力端子122に接続する。また、本明細書ではu相負側変換器アーム117のアーム電圧をVarmuLと表記することにする。
v相負側変換器アーム118のa端子を変圧器105のv相負側端子110に接続し、b端子を負側出力端子122に接続する。また、本明細書ではv相負側変換器アーム118のアーム電圧をVarmvLと表記することにする。
v相負側変換器アーム119のa端子を変圧器105のw相負側端子111に接続し、b端子を負側出力端子122に接続する。また、本明細書ではw相負側変換器アーム119のアーム電圧をVarmwLと表記することにする。
実施例1では、VarmuHとVarmuLの和をu相アーム電圧Varmuと表記することにする。また、VarmvHとVarmvLの和をv相アーム電圧Varmuと表記することにする。同様に、VarmwHとVarmwLの和をw相アーム電圧Varmuと表記することにする。
また、実施例1では、u相正側変換器アーム113とu相負側変換器アーム117を流れる電流をu相アーム電流Iu、v相正側変換器アーム114とv相負側変換器アーム118を流れる電流をv相アーム電流Iv、w相正側変換器アーム115とw相負側変換器アーム119を流れる電流をw相アーム電流Iwと表記することにする。
次に、図3を用いて、単位チョッパセル120の構成について説明する。
図3に示す単位チョッパセルは、ハイサイド・スイッチング素子303,ローサイド・スイッチング素子304,エネルギー蓄積素子305で構成されている。スイッチング素子303,304は、IGBTに代表される半導体スイッチング素子である。また、エネルギー蓄積素子305は、コンデンサや蓄電池などである。本明細書では、y端子302を基準としたx端子301までの電圧を、単位チョッパセルのセル電圧Vcellと表記することにする。
次に、電力変換装置101の動作を、以下の2ケースについて説明する。
(1)三相交流電力系統100から有効電力を受電し、直流送電ケーブル150に直流電力を供給する場合
(2)直流送電ケーブル150から直流電力を受電し、三相交流電力系統100に有効電力を供給する場合
以下、電力変換装置101が三相交流電力系統100から有効電力を受電し、直流送電ケーブル150に直流電力を供給する場合の動作について説明する。
本明細書では、三相交流電力系統100の線間電圧VRS,VST,VTRを変圧器二次側に換算した電圧をaVRS,aVST,aVTRと表記することにする。ここで、aは変圧器一次巻線に対する二次巻線の巻数比である。
ここで、変圧器の二次巻線の電圧Vu,Vv,Vwと、アーム電圧Varmu,Varmv,Varmwと、正側直流出力端子121と負側直流出力端子122の間に印加される電圧VDの関係を説明する。
Vu,Varmu,VDの関係は、次式で表わされる。
〔数1〕
Vu=VD−Varmu
Vv,Varmv,VDの関係は、次式で表わされる。
〔数2〕
Vv=VD−Varmv
Vw,Varmw,VDの関係は、次式で表わされる。
〔数3〕
Vw=VD−Varmw
以上、数1〜3より、u相アーム電圧Varmu,v相アーム電圧Varmv,w相アーム電圧Varmwを制御することによって、変圧器の二次巻線の電圧Vu,Vv,Vwを制御できる。
Vu,Vv,Vwの周波数と振幅を、aVRS,aVST,aVTRの周波数と振幅に一致させつつ、Vu,Vv,Vwの位相のみをaVRS,aVST,aVTRの位相よりもわずかに遅らせると、三相交流電力系統100から電力変換装置101に有効電力を流入させることができる。
次に、アーム電圧は単位チョッパセル120を構成する半導体スイッチング素子のスイッチング状態によって制御できることについて述べる。
ハイサイド・スイッチング素子303がオン、ローサイド・スイッチング素子304がオフの場合、電流Icellに依存することなく、セル電圧Vcellは直流コンデンサ305の電圧VCに大略等しい。
ハイサイド・スイッチング素子303がオフ、ローサイド・スイッチング素子304がオンの場合、電流Icellに依存することなく、セル電圧Vcellはほぼ零である。
ハイサイド・スイッチング素子303、ローサイド・スイッチング素子304が共にオフの場合、セル電圧Vcellは電流Icellの極性に依存して決まる。Icellが正である場合、セル電圧Vcellはエネルギー蓄積素子305の電圧VCに大略等しい。Icellが負である場合、セル電圧Vcellは零に大略等しい。
次に、直流送電ケーブル150に電力を供給する方法について説明する。
直流送電ケーブル150を流れる電流IDは、アーム電流Iu,Iv,Iwの和(Iu+Iv+Iw)である。アーム電圧Varmu,Varmv,Varmwが零相成分を含まない場合、アーム電流Iu,Iv,Iwも零相成分を含まない。アーム電流Iu,Iv,Iwが零相成分を含まない場合には、Iu+Iv+Iw=ID=0となり、直流送電ケーブル150に電力を伝送できない。
この場合、三相交流電力系統100から電力変換装置101に流入した有効電力は、各単位変換器120の内部のエネルギー蓄積素子(電解コンデンサなど)に蓄積される。
直流送電ケーブルに電力を供給するためには、アーム電圧Varmu,Varmv,Varmvの零相成分を調節し、アーム電流Iu,Iv,Iwの零相成分を制御する。キルヒホッフの電流則から、ID=Iu+Iv+Iwとなるため、Iu,Iv,Iwの零相成分を調節することにより、電流IDを供給できる。
なお、三相交流電力系統100から電力変換装置101に流入する有効電力と、直流送電ケーブル150に送電する有効電力が等しい場合、各単位チョッパセル120に流入出するエネルギーは、三相交流電力系統の1周期平均でほぼ零となる。
また、電流IDとして、直流電流、交流電流または両者の重畳した電流を流すこともできる。
以下、電力変換装置101が直流送電ケーブル150から有効電力を受電し、三相交流電力系統100に有効電力を供給する場合の動作について説明する。
Vu,Vv,Vwの周波数と振幅を、aVRS,aVST,aVTRの周波数と振幅に一致させつつ、Vu,Vv,Vwの位相のみをaVRS,aVST,aVTRの位相よりもわずかに進ませると、電力変換装置101から三相交流電力系統100に有効電力を供給できる。
次に、直流送電ケーブル150から電力を受電する方法について説明する。
直流送電ケーブルから流れる電流IDは、アーム電流Iu,Iv,Iwの和(Iu+Iv+Iw)である。アーム電圧Varmu,Varmv,Varmwが零相成分を含まない場合、アーム電流Iu,Iv,Iwも零相成分を含まない。アーム電流Iu,Iv,Iwが零相成分を含まない場合には、Iu+Iv+Iw=ID=0となり、直流送電ケーブル150から電力が供給できない。
この場合、電力変換装置101から三相交流電力系統100に流出する有効電力は、各単位チョッパセル120の内部のエネルギー蓄積素子(電解コンデンサなど)から供給される。
直流送電ケーブル124から電力変換装置100に電力を流入させるために、アーム電圧Varmu,Varmv,Varmvの零相成分を調節し、アーム電流Iu,Iv,Iwの零相成分を制御する。キルヒホッフの電流則から、ID=Iu+Iv+Iwとなるため、Iu,Iv,Iwの零相成分を調節することにより、電流IDを供給できる。
なお、電力変換装置101から三相交流電力系統100に流出する有効電力と、直流送電ケーブル150から電力変換装置に流入する有効電力が等しい場合、各単位チョッパセル120に流入出するエネルギーは、三相交流電力系統の1周期平均でほぼ零となる。
本明細書では、直流送電ケーブル150を含む、三相交流電力系統100および170に連系している各2台の電力変換装置101の正側直流出力端子121,負側直流出力端子122との間を直流ラインと呼ぶこととする。
また、本明細書では、各相の交流出力端子102〜104を含む変圧器105と三相交流電力系統100,170との間を交流ラインと称す。
次に交流ラインが短絡した場合と直流ラインが短絡した場合では、電力変換装置101の動作が異なることを説明する。
交流ラインが短絡した時に、電力変換装置101が交流ラインに電圧を出力していると短絡電流が流れる。前記短絡電流を防止するため、一般の電力変換装置と同様に各単位チョッパセル120を構成するハイサイド・スイッチング素子303,ローサイド・スイッチング素子304をともにオフ状態にして、交流ラインに過電流が流れるのを防ぐ。
直流ラインが短絡すると、各単位チョッパセル120の内部のエネルギー蓄積素子305に蓄えられた電荷が、直流ラインに放電され、電流IDが過電流となる。前記過電流を防止するため、各単位チョッパセルのハイサイド・スイッチング素子303をオフ、ローサイド・スイッチング素子304をオン状態する。ハイサイド・スイッチング素子303には逆並列にダイオードが接続されており、ダイオードは電流の逆阻止特性をもつため、エネルギー蓄積素子305の直流電圧は直流ラインと電気的に絶縁されており、直流送電ケーブル150への過電流を抑制することができる。
前述のように、次に交流ラインが短絡した場合と直流ラインが短絡した場合では、電力変換装置101の保護動作はそれぞれ異なるため、直流ラインと交流ラインの短絡を区別する必要がある。
交流ラインが短絡した場合は変圧器105の一次巻線または二次巻線側に設置された電流センサによって検出した電流は増大する。したがって、変圧器105の一次巻線または二次巻線側に設置された電流センサによって検出した電流が設定した閾値を超過した場合、交流故障と判定する。
また電流センサを正側変換器グループ112および負側変換器グループ116の各相に設置し、前記正側変換器グループ112に設置した電流センサで検出した電流値と前記負側変換器グループ116に設置した電流センサで検出した電流値との差が、設定した閾値を超過した場合、交流故障と判定してもよい。
直流ラインの短絡した場合は、直流ラインに設置された電流センサ123によって検出された電流が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定する。
また電流センサを各相の変換器アームのa端子またはb端子に設置し、各変換器アームに流れる電流の三相和が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定してもよい。
交流ラインまたは直流ラインの故障と判定した場合、遮断器124によって、短時間(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒後)で、交流系統100または170と電力変換装置101を切り離す。
直流ラインが短絡した場合、交流系統100または170と電力変換装置101を遮断器124によって切り離すまでの短時間の間、交流系統100または170から変圧器105の漏れインピーダンスに応じて短絡電流Ishが流れる。三相交流電力系統100または170の電圧をVs、変圧器105の漏れインピーダンスをZtrとすると短絡電流Ishは次式で表される。
〔数4〕
Ish=Vs/Ztr
単位チョッパセル120を構成する半導体スイッチング素子の飽和電流をIsaとすると、Isa>Ishとなるように変圧器105の漏れインピーダンスZtrを調整することで、半導体スイッチング素子を保護することができる。
また、遮断器124によって、三相交流電力系統100または170と電力変換装置101を切り離すまでの間に(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒)、半導体スイッチング素子のジャンクション温度が設定値以上にならないように、半導体スイッチング素子の冷却系を構成することで半導体スイッチング素子を保護することができる。
次に、冷却系構成の例を図10を用いて説明する。
図10は、単位チョッパセル120を構成するローサイド・スイッチング素子304の冷却構成の一例を示した図である。
ローサイド・スイッチング素子304は、IGBT1000とDiode1001とで構成され、前記IGBT1000と前記Diode1001は一つの冷却フィン1002に固定する。
前記短絡電流Ishが流れたときの前記IGBT1000と前記Diode1001から発生した熱P_IGBTと熱P_Diodeは、冷却フィンから空気中へと放熱される。
図11は、図10の冷却構成における熱回路を等価的な電気回路に置き換えて示した図である。
前記IGBT1000の発生した熱P_IGBTは電流源1100、前記Diode1001の発生した熱P_Diodeは電流源1110で表すことができる。
また、前記IGBT1000のジャンクションと前記IGBT1000ケース間の熱抵抗Rth(j−c)qおよび熱容量Cth(j−c)qは、抵抗1101およびキャパシタ1102で表すことができる。
また、前記IGBT1000のケースと冷却フィン1002の間の熱抵抗Rth(c−f)qおよび熱容量Cth(c−f)qは、抵抗1103およびキャパシタ1104で表すことができる。
また、冷却フィン1002と空気の間の熱抵抗Rth(f−a)qおよび熱容量Cth(f−a)qは、抵抗1105およびキャパシタ1106で表すことができる。
また、前記Diode1001のジャンクションと前記Diode1001ケース間の熱抵抗Rth(j−c)dおよび熱容量Cth(j−c)dは、抵抗1111およびキャパシタ1112で表すことができる。
また、前記Diode1001のケースと冷却フィン1002の間の熱抵抗Rth(c−f)dおよび熱容量Cth(c−f)dは、抵抗1113およびキャパシタ1114で表すことができる。
また空気の温度を一定と仮定すれば、前記空気の温度Taを直流電圧源1107とおくことができる。
また前記キャパシタ1102および1112の高電位側の電位が前記IGBTおよびDiodeのジャンクション温度に相当する。
よって、前記空気の温度Taを下げることで、前記短絡電流が流れた時の前記IGBTおよび前記Diodeのジャンクション温度を設定値以下にすることができる。
また、前記IGBT1000のジャンクションと前記IGBT1000ケース間の熱抵抗Rth(j−c)q、または、前記IGBT1000のケースと冷却フィン1002の間の熱抵抗Rth(c−f)q、または、冷却フィン1002と空気の間の熱抵抗Rth(f−a)qを小さくすることによって、前記短絡電流が流れた時の前記IGBTのジャンクション温度を設定値以下にすることができる。
また、前記Diode1001のジャンクションと前記Diode1001ケース間の熱抵抗Rth(j−c)d,前記Diode1001のケースと冷却フィン1002の間の熱抵抗Rth(c−f)d、および、冷却フィン1002と空気の間の熱抵抗Rth(f−a)qを小さくすることによって、前記短絡電流が流れた時の前記Diodeのジャンクション温度を設定値以下にすることができる。
また、前記短絡電流は、遮断器124によって、三相交流電力系統100または170と電力変換装置101を切り離す時間(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒後)しか流れないため、前記IGBT1000のジャンクションと前記IGBT1000ケース間の熱容量Cth(j−c)q、または、前記IGBT1000のケースと冷却フィン1002の間の熱容量Cth(c−f)q、または、冷却フィン1002と空気の間の熱容量Cth(f−a)qを大きくすることによって、前記三相交流電力系統100または170と前記電力変換装置101を切り離すまでの間、前記IGBTのジャンクション温度を設定値以下にすることができる。
また、前記Diode1001のジャンクションと前記Diode1001のケース間の熱容量Cth(j−c)d、または、前記Diode1001のケースと冷却フィン1002の間の熱容量Cth(c−f)q、または、冷却フィン1002と空気の間の熱容量Cth(f−a)qを大きくすることによって、前記三相交流電力系統100または170と前記電力変換装置101を切り離すまでの間、前記Diodeのジャンクション温度を設定値以下にすることができる。
また、本実施例は、変圧器の一次巻線がデルタ結線としたが、スター結線など他の結線方式にも適用できる。
また、本実施例では、直流送電システムの両側に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その接続点を接地する中点接地2線直流送電方式としたが、直流送電システムの両側には1台の電力変換装置のみとした2線直流送電方式や、直流送電システムの両端に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その各接続点を接地しかつケーブルで結ぶ中点接地3線直流送電方式など他の直流送電方式にも適用できる。
また、本実施例では、直流送電システムを例に用いて説明したが、無効電力補償装置やモータドライブ用電力変換装置など一端を三相交流電力系統に接続し、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置に対して適用できる。
本発明を実施する第2の形態について説明する。
実施例1では変換器アームがチョッパセルで構成されていたが、実施例2では図5に示す単位フルブリッジで構成されているところが異なる。
以下では、実施例2の構成において、実施例1の構成と異なる部分についてのみ説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態を表した回路図である。電力変換装置401は、三相交流端子102〜104を介して三相交流電力系統100および170に連系し、三相交流電力系統100と有効・無効電力を授受する。該電力変換装置401は、変圧器105と正側変換器グループ112と負側変換器グループ116とからなる。
次に、正側変換器グループ112と負側変換器グループ116の構成について説明する。
該正側変換器グループ112は、u相正側変換器アーム113,v相正側変換器アーム114,w相正側変換器アーム115とからなる。また、該負側変換器グループ116は、u相負側変換器アーム117,v相負側変換器アーム118,w相負側変換器アーム119からなる。
また、各変換器アーム113〜115,117,118は、図5に示す単位フルブリッジセル400を1台または複数台カスケード接続した回路である。
単位フルブリッジセル400は、x端子500とy端子501を有する2端子回路であり、x相ハイサイド・スイッチング素子502,x相ローサイド・スイッチング素子503,y相ハイサイド・スイッチング素子504,y相ローサイド・スイッチング素子505,エネルギー蓄積素子506とからなる。スイッチング素子502〜505は、IGBTに代表される半導体スイッチング素子である。また、エネルギー蓄積素子506は、コンデンサや蓄電池などである。本実施例でも、y端子を基準としたx端子までの電圧を、単位フルブリッジセルのセル電圧Vcellと呼ぶことにする。
次に、アーム電圧は単位フルブリッジセル400を構成するスイッチング素子のスイッチング状態によって制御できることについて述べる。
x相ハイサイド・スイッチング素子502とx相ローサイド・スイッチング素子503を交互にオン・オフする。また、y相ハイサイド・スイッチング素子504とy相ローサイド・スイッチング素子505を交互にオン・オフする。
x相ハイサイド・スイッチング素子502がオン、x相ローサイド・スイッチング素子503がオフ、y相ハイサイド・スイッチング素子504がオフ、y相ローサイド・スイッチング素子505がオンの場合、電流Icellに依存することなく、セル電圧Vcellはエネルギー蓄積素子506の電圧VCと大略等しい。
x相ハイサイド・スイッチング素子502がオン、x相ローサイド・スイッチング素子503がオフ、y相ハイサイド・スイッチング素子504がオン、y相ローサイド・スイッチング素子505がオフの場合、電流Icellに依存することなく、セル電圧Vcellはほぼ零である。
x相ハイサイド・スイッチング素子502がオフ、x相ローサイド・スイッチング素子503がオン、y相ハイサイド・スイッチング素子504がオフ、y相ローサイド・スイッチング素子505がオンの場合、電流Icellに依存することなく、セル電圧Vcellはほぼ零である。
x相ハイサイド・スイッチング素子502がオフ、x相ローサイド・スイッチング素子503がオン、y相ハイサイド・スイッチング素子504がオン、y相ローサイド・スイッチング素子505がオフの場合、電流Icellに依存することなく、セル電圧Vcellはエネルギー蓄積素子506の電圧VCの極性を反転させた電圧に大略等しい。
x相ハイサイド・スイッチング素子502,x相ローサイド・スイッチング素子503,y相ハイサイド・スイッチング素子504,y相ローサイド・スイッチング素子505が全てオフの場合、セル電圧Vcellは電流Icellの極性に依存して決まる。Icellが正である場合、セル電圧Vcellはエネルギー蓄積素子506の電圧VCに大略等しい。Icellが負である場合、セル電圧Vcellはエネルギー蓄積素子506の電圧VCの極性を反転させた電圧に大略等しい。
次に、直流ラインが短絡した場合の電力変換装置401の動作について説明する。
また、実施例1と同様に、交流ラインと直流ラインが短絡した場合の電力変換装置401の保護動作はそれぞれ異なるため、直流ラインと交流ラインの短絡を区別する必要がある。
直流ラインが短絡すると、各単位チョッパセル400の内部のエネルギー蓄積素子506に蓄えられた電荷が、直流ラインに放電され、電流IDが増加する。前記電流IDを電流センサ123で検出し、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定し、各単位フルブリッジセル400のx相ハイサイド・スイッチング素子502およびy相ハイサイド・スイッチング素子504をオフ、x相ローサイド・スイッチング素子503およびy相ローサイド・スイッチング素子505をオン状態、またはx相ハイサイド・スイッチング素子502およびy相ハイサイド・スイッチング素子504をオン、x相ローサイド・スイッチング素子503およびy相ローサイド・スイッチング素子505をオフ状態にする。x相ハイサイド・スイッチング素子502,y相ハイサイド・スイッチング素子504,x相ローサイド・スイッチング素子503,y相ローサイド・スイッチング素子505にはそれぞれ逆並列にダイオードが接続されており、前記ダイオードは電流の逆阻止特性をもつ。したがって、エネルギー蓄積素子506は直流ラインと電気的に絶縁され、直流送電ケーブル150への過電流を抑制することができる。
また電流センサを各相の変換器アームのa端子またはb端子に設置し、各変換器アームに流れる電流の三相和が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定してもよい。
また、直流ラインの故障と判定した場合、遮断器124によって、短時間(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒後)で、三相交流電力系統100または170と電力変換装置401を切り離す。この三相交流電力系統100または170と電力変換装置401を切り離すまでの短時間の間、交流系統100または170から変圧器105の漏れインピーダンスに応じて短絡電流Ishが流れる。三相交流電力系統100または170の電圧をVs、変圧器105の漏れインピーダンスをZtrとすると短絡電流Ishは次式で表される。
〔数4〕
Ish=Vs/Ztr
単位フルブリッジセル400を構成する半導体スイッチング素子の飽和電流をIsaとすると、Isa>Ishとなるように変圧器105の漏れインピーダンスZtrを調整することで、半導体スイッチング素子を保護することができる。
また、実施例1と同様に、遮断器124によって、三相交流電力系統100または170と電力変換装置401を切り離す時間(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒後)半導体スイッチング素子のジャンクション温度が設定値以上にならないように、半導体スイッチング素子の冷却系を構成することで半導体スイッチング素子を保護することができる。
また、直流故障と判定した場合、電力変換装置401は、正側変換器グループ112と負側変換器グループ116の電圧和を、三相交流電力系統100または170の逆位相の電圧に大略等しくするで直流端子電圧をゼロにできる。したがって、直流出力端子に流れる電流IDを低減することができる。
また、本実施例は、変圧器の一次巻線がデルタ結線としたが、スター結線など他の結線方式にも適用できる。
また、本実施例では、直流送電システムの両側に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その接続点を接地する中点接地2線直流送電方式としたが、直流送電システムの両側には1台の電力変換装置のみとした2線直流送電方式や、直流送電システムの両端に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その各接続点を接地しかつケーブルで結ぶ中点接地3線直流送電方式など他の直流送電方式にも適用できる。
また、本実施例では、直流送電システムを例に用いて説明したが、無効電力補償装置やモータドライブ用電力変換装置など一端を三相交流電力系統に接続し、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置に対して適用できる。
本発明を実施する第3の形態について説明する。実施例1では変圧器の二次側の電圧は相内に印加されていたが、実施例3では変圧器の二次側の電圧は相間に印加されていることが異なる。
以下では、実施例3の構成において、実施例1の構成と異なる部分についてのみ説明する。
図6は、本発明の第3の実施形態を現した回路図である。
三相交流電力系統100および170からの交流電力を各三相交流電力系統に連系している各2台の電力変換装置601により直流電力に変換し、直流送電ケーブル150によって一方向または双方向に電力を送電する。
該電力変換装置601は、変圧器600と正側変換器グループ112と負側変換器グループ116と正側リアクトルグループ602と負側リアクトルグループ603からなる。
正側変換器グループ112はu相正側変換器アーム113,v相正側変換器アーム114,w相正側変換器アーム115をスター結線で接続した構成である。
負側変換器グループ112はu相負側変換器アーム113,v相負側変換器アーム114,w相負側変換器アーム115をスター結線で接続した構成である。
正側変換器グループ112のb端子に正側リアクトルグループ602の一方の端子を直列接続し、正側リアクトルグループ602の他方の端子に負側リアクトルグループ603の一方の端子を直列接続し、負側リアクトルグループ603の他方の端子に負側変換器グループ116のa端子を直列接続した回路である。
本明細書では、正側変換器アームのb端子に正側リアクトルの一方の端子を直列接続し、正側リアクトルの他方の端子に負側リアクトルの他方の端子に直列接続し、正側リアクトルの他方の端子に負側変換器アームのa端子を直列接続した回路をレグと呼ぶことにする。
正側変換器グループ112のa端子をP端子と呼び、前記2台のリアクトルグループの接続点をM端子と呼び、負側変換器グループのb端子をN端子と呼ぶことにする。
2台の電力変換装置601は、一方の電力変換装置601のP端子と他方の電力変換装置601のN端子に直流送電ケーブル150を接続し、一方の電力変換装置601のN端子と他方の電力変換装置601のP端子をそれぞれ接続し、接続点161をアースしている。
電力変換装置601の正側リアクトルグループ602,負側リアクトルグループ603について説明する。
正側変換器グループ112および負側変換器グループ116は単位チョッパセルの電圧Vcellは、エネルギー蓄積素子305の電圧VCの倍数の電圧しか出力できないため、レグ毎の電圧の瞬時値は異なる。
3台のレグのレグ電圧が不一致である期間において、レグ電圧の差は、各レグに含まれる2台のリアクトルのみが分担することになり、仮に前記リアクトルが存在しない場合、レグに過電流が流れることになる。
正側リアクトルグループ602,負側リアクトルグループ603は前記過電流を防ぐ役割をもつ。
次に交流ラインが短絡した場合と直流ラインが短絡した場合では、電力変換装置601の動作が異なることを説明する。
交流ラインが短絡した時に、電力変換装置601が交流ラインに電圧を出力していると短絡電流が流れる。そこで、交流ラインが短絡した時には、前記短絡電流を防止するため、一般の電力変換装置と同様に各単位チョッパセル120を構成するハイサイド・スイッチング素子303,ローサイド・スイッチング素子304をともにオフ状態にすることにより、交流ラインに過電流が流れるのを防ぐことができる。
直流ラインが短絡すると、各単位チョッパセル120の内部のエネルギー蓄積素子305に蓄えられた電荷が、直流ラインに放電され、電流IDが過電流となる。前記過電流を防止するため、各単位チョッパセル120のハイサイド・スイッチング素子303をオフ、ローサイド・スイッチング素子304をオン状態する。ハイサイド・スイッチング素子303には逆並列にダイオードが接続されており、ダイオードは電流の逆阻止特性をもつため、エネルギー蓄積素子305と直流ラインとは電気的に絶縁されており、直流送電ケーブル150への過電流を抑制することができる。
前述のように、交流ラインが短絡した場合と直流ラインが短絡した場合では、電力変換装置601の保護動作はそれぞれ異なるため、直流ラインと交流ラインの短絡を区別する必要がある。
交流ラインが短絡すると、変圧器600の一次巻線または二次巻線側に設置された電流センサで検出した電流検出値が増大する。したがって、変圧器600の一次巻線または二次巻線側に設置された電流センサによって検出した電流が、設定した閾値を超過した場合、交流故障と判定する。
また電流センサを正側変換器グループ112および負側変換器グループ116の各相に設置し、前記正側変換器グループ112に設置した電流センサで検出した電流値と、前記負側変換器グループ116に設置した電流センサで検出した電流値との差が、設定した閾値を超過した場合、交流故障と判定してもよい。
一方、直流ラインが短絡すると、直流ラインに設置された電流センサ123で検出された電流が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定する。
また電流センサを各相の変換器アームのa端子またはb端子に設置し、各変換器アームに流れる電流検出値の三相和が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定してもよい。
交流ラインまたは直流ラインの故障と判定した場合、遮断器124によって、短時間(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒後)で、交流系統100または170と電力変換装置601を切り離す。
なお、本実施例は、変換器アームの数を増減することにより、三相交流電力系統のみならず、単相や多相系統に連系する電力変換装置にも適用できる。
また、本実施例では、変圧器を一次巻線,二次巻線ともにデルタ結線の変圧器としたが、本発明は、変圧器の巻線構成をデルタ結線に限るものではない。
また、本実施例では、直流送電システムの両側に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その接続点を接地する中点接地2線直流送電方式としたが、直流送電システムの両側には1台の電力変換装置のみとした2線直流送電方式や、直流送電システムの両端に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その各接続点を接地しかつケーブルで結ぶ中点接地3線直流送電方式など他の直流送電方式にも適用できる。
また、本実施例では、直流送電システムを例に用いて説明したが、無効電力補償装置やモータドライブ用電力変換装置など一端を三相交流電力系統に接続し、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置に適用できる。
本発明を実施する第4の形態について説明する。実施例4は実施例3の変形である。実施例3では正側変換器グループおよび負側変換器グループに単位チョッパセルを用いていたが、実施例4では単位フルブリッジセルを用いている点が異なる。
以下では、実施例4の構成において、実施例3の構成と異なる部分についてのみ説明する。
図7は、本発明の第4の実施形態を表した回路図である。電力変換装置701は、三相交流端子102〜104を介して三相交流電力系統100または170に連系し、三相交流電力系統100または170と有効・無効電力を授受する。該電力変換装置701は、変圧器601と正側変換器グループ112と負側変換器グループ113とからなる。
次に、正側変換器グループ112と負側変換器グループ116の構成について説明する。
該正側変換器グループ112は、u相正側変換器アーム113,v相正側変換器アーム114,w相正側変換器アーム115とからなる。また、該負側変換器グループ116は、u相負側変換器アーム117,v相負側変換器アーム118,w相負側変換器アーム119からなる。
各変換器アーム113〜115,117,118は、a端子とb端子とを備えている。本明細書では、b端子を基準としたa端子までの電圧をアーム電圧と呼ぶことにする。また、各変換器アーム113〜115,117,118は、図5に示す単位フルブリッジセル130を1台または複数台カスケード接続した回路である。
次に交流ラインが短絡した場合と直流ラインが短絡した場合では、電力変換装置701の動作が異なることを説明する。
交流ラインが短絡した時に、電力変換装置701が交流ラインに電圧を出力していると短絡電流が流れる。そこで、交流ラインが短絡した時には、前記短絡電流を防止するため、一般の電力変換装置と同様に各単位チョッパセル400を構成する各単位フルブリッジセル400のx相ハイサイド・スイッチング素子502,y相ハイサイド・スイッチング素子504,x相ローサイド・スイッチング素子503,y相ローサイド・スイッチング素子505をすべてオフ状態にすることにより、交流ラインに過電流が流れるのを防ぐことができる。
直流ラインが短絡すると、各単位フルブリッジセル400の内部のエネルギー蓄積素子506に蓄えられた電荷が、直流ラインに放電され、電流IDが増加する。前記電流IDを直流ラインに設置した電流センサ123で検出し、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定し、各単位フルブリッジセル400のx相ハイサイド・スイッチング素子502およびy相ハイサイド・スイッチング素子504をオフ、x相ローサイド・スイッチング素子503およびy相ローサイド・スイッチング素子505をオン状態、またはx相ハイサイド・スイッチング素子502およびy相ハイサイド・スイッチング素子504をオン,x相ローサイド・スイッチング素子503およびy相ローサイド・スイッチング素子505をオフ状態にする。x相ハイサイド・スイッチング素子502,y相ハイサイド・スイッチング素子504,x相ローサイド・スイッチング素子503,y相ローサイド・スイッチング素子505にはそれぞれ逆並列にダイオードが接続されており、前記ダイオードは電流の逆阻止特性をもつ。したがって、エネルギー蓄積素子506の直流電圧は直流ラインと電気的に絶縁され、直流送電ケーブル150への過電流を抑制することができる。
前述のように、交流ラインと直流ラインが短絡した場合では、電力変換装置701の保護動作はそれぞれ異なるため、直流ラインと交流ラインの短絡を区別する必要がある。
交流ラインが短絡した場合は、変圧器600の一次巻線または二次巻線側に設置された電流センサによって検出した電流検出値が増大する。したがって、変圧器600の一次巻線または二次巻線側に設置された電流センサによって検出した電流が設定した閾値を超過した場合、交流故障と判定する。
また電流センサを正側変換器グループ112および負側変換器グループ116の各相に設置し、前記正側変換器グループ112に設置した電流センサで検出した電流値と、前記負側変換器グループ116に設置した電流センサで検出した電流値との差が、設定した閾値を超過した場合、交流故障と判定してもよい。
一方、直流ラインが短絡した場合は、直流ラインに設置された電流センサ123によって検出された電流が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定する。
また電流センサを各相の変換器アームのa端子またはb端子に設置し、各変換器アームに流れる電流検出値の三相和が、設定した閾値を超過した場合、直流故障と判定してもよい。
また、直流故障と判定した場合、電力変換装置701は、三相交流電力系統100または170の電圧と逆位相の電圧を出力することで直流端子電圧をゼロにできる。したがって、直流出力端子に流れる電流IDを低減することができる。
交流ラインまたは直流ラインの故障と判定した場合、遮断器124によって、短時間(通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒後)で、交流系統100または170と電力変換装置701を切り離す。
なお、本実施例は、変換器アームの数を増減することにより、三相交流電力系統のみならず、単相や多相系統に連系する電力変換装置にも適用できる。
また、本実施例では、変圧器を一次巻線,二次巻線ともにデルタ結線の変圧器としたが、本発明は、変圧器の巻線構成をデルタ結線に限るものではない。
また、本実施例では、直流送電システムの両側に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その接続点を接地する中点接地2線直流送電方式としたが、直流送電システムの両側には1台の電力変換装置のみとした2線直流送電方式や、直流送電システムの両端に各2台の電力変換装置を直列に接続し、その各接続点を接地しかつケーブルで結ぶ中点接地3線直流送電方式など他の直流送電方式にも適用できる。
また、本実施例では、直流送電システムを例に用いて説明したが、無効電力補償装置やモータドライブ用電力変換装置など一端を三相交流電力系統に接続し、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置に適用できる。