JP5266485B2 - 光学活性テトラアミノホスホニウム塩、不斉合成反応用触媒、不斉合成反応、及び四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成方法 - Google Patents

光学活性テトラアミノホスホニウム塩、不斉合成反応用触媒、不斉合成反応、及び四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学活性テトラアミノホスホニウム塩及び該塩を含む不斉合成反応用触媒に関する。また、本発明は、該塩を用いた不斉合成反応及び四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成方法に関する。
非特許文献1には、トルエン−炭酸カリウム水溶液の二相溶媒中、特定の四級アンモニウム塩を用いて、アズラクトンのカルボニル基のα炭素をアルキル化する方法が記載されている(下記式参照)。
Figure 0005266485
今日、単に目的とする化合物を得るだけでなく、特定の立体構造を有する化合物を得る方法、即ち、立体選択的な合成方法の開発が望まれている。例えば、生理活性物質には、不斉炭素原子を有する光学活性体が多い。望みの絶対配置を有する光学活性体を得ることは重要である。光学活性体を得る方法として、ラセミ混合物を合成し、その後、光学分割等によって光学活性体を分取する方法が挙げられる。しかし、この方法は、化学変換が必要である等、効率が悪い。そこで、種々の化合物において、選択的に光学活性体が得られる不斉合成方法及び該方法に用いる触媒の開発が進められている。
例えば、非特許文献2には、特定の光学活性テトラアミノホスホニウム塩を用いて、光学活性β−ニトロアルコールを製造する方法が記載されている(下記式参照。「*」は不斉炭素原子である。)。
Figure 0005266485
アミノ酸がペプチド結合により重合したペプチドは、種々の機能を有する。一般的なペプチドの合成方法として、ペプチド鎖のC末端のカルボキシル基を活性化し、次いで、この活性化されたペプチドとアミノ酸とを反応させることにより、ペプチド結合を形成する方法が挙げられる。
ペプチドを構成するアミノ酸は、通常、天然アミノ酸(三置換α−アミノ酸)である。しかし、今日、新たな機能を有するペプチドとして、非天然アミノ酸を含むペプチドの研究が進められている。非天然アミノ酸含有ペプチドとしては、例えば、四置換α−アミノ酸(例えば、α,α−ジアルキル−α−アミノ酸)含有ペプチドが挙げられる。非天然アミノ酸含有ペプチドの製造方法として、非特許文献3には、ペプチドのN末端をシッフ塩基化し、次いで、触媒として光学活性アンモニウムを用いてα炭素をアルキル化することにより、光学活性な四置換α−アミノ酸含有ペプチドを得る方法が記載されている。
Synthesis 763-765 (1984). J. AM. CHEM. SOC. 2007, 129, 12392-12393. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 4222.
上記のように、今日、望みの絶対配置を有する光学活性体を得ることは重要である。よって、できる限り広く応用することができる不斉合成反応及び不斉合成反応用触媒が求められている。一方、非特許文献1に開示されているのは、単にアズラクトンのカルボニル基のα炭素をアルキル化する方法に過ぎない。非特許文献1には、不斉合成反応に関する技術的知見は存在しない。
四置換α−アミノ酸含有ペプチドの合成方法として、上記の一般的なペプチドの合成反応において、アミノ酸として四置換α−アミノ酸を用いる方法が考えられる。しかし、この方法では、得られるペプチドのラセミ化が生じ、得られるペプチドの機能が大幅に変化する可能性がある。一方、非特許文献3記載の方法では、ペプチド鎖中の所望の位置に、光学活性な四置換α−アミノ酸を導入できるとは必ずしも言い難い。また、非特許文献3記載の方法では、シッフ塩基形成や脱保護等の他の工程が必要となる。従って、現状では、ペプチド鎖中の所望の位置に四置換α−アミノ酸が導入された四置換α−アミノ酸含有ペプチドを、立体選択的に且つ収率よく合成する手法が見当たらないのが実情である。
本発明の目的は、収率及び立体選択性に優れ、不斉合成反応用触媒として有用な新規な光学活性テトラアミノホスホニウム塩を提供することである。本発明の他の目的は、高い活性及び立体制御能を有する不斉合成反応用触媒を提供することである。本発明の他の目的は、優れた収率及び立体選択性で、カルボニル基含有化合物のα炭素上に不斉炭素−炭素結合を形成する不斉合成反応(アルキル化反応及びマンニッヒ反応等)を提供することである。更に、本発明の他の目的は、優れた収率及び立体選択性で、ペプチド鎖中の所望の位置に四置換α−アミノ酸が導入された四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成方法を提供することである。
本発明の光学活性テトラアミノホスホニウム塩(以下、「本発明の塩」という。)は、下記一般式(1)で表される。一般式(1)中、R〜R及びR9a〜R9dはそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基であり、この一価の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、R 〜R のうちの4つ以上が、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、R 〜R のうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、R 〜R のうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基である。但し、R9a〜R9dの少なくともつはアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基である。上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。は対アニオンである。
Figure 0005266485
本発明の不斉合成反応用触媒(以下、「本発明の触媒」という。)は、本発明の塩を含む。
本発明の不斉合成反応(以下、「本発明の反応」という。)は、本発明の塩の存在下、カルボニル基含有化合物と炭素−炭素結合形成剤とを反応させ、上記カルボニル基含有化合物のα炭素上に不斉炭素−炭素結合を形成する反応である。
本発明の四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成方法(以下、「本発明のペプチド合成方法」という。)は、水系及び非水系からなる二相溶媒中、本発明の塩の存在下、下記一般式(7)で表されるアズラクトン(以下、アズラクトン(7)という。)と下記一般式(8)で表される化合物(以下、化合物(8)という。)とを反応させて、下記一般式(9)で表される化合物(以下、化合物(9)という。)を得る工程(A)と、上記化合物(9)とアミノ基含有化合物とを反応させる工程(B)と、を有する下記一般式(10)で表される四置換α−アミノ酸含有ペプチド(以下、ペプチド(10)という。)の不斉合成方法である。尚、下記各式中、A 及びR 14 、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。R13は水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。Lは脱離基である。*は不斉炭素原子である。
Figure 0005266485
本発明の塩は、従来の不斉合成反応用触媒と異なる新規な化合物である。本発明の塩及び触媒は、様々な不斉合成反応(例えば、マンニッヒ反応及びアルキル化反応)において、高い活性及び立体制御能を有する。本発明の反応によれば、高い活性及び立体制御能を発揮することができる。本発明のペプチドの合成方法によれば、優れた収率及び立体選択性で、ペプチド鎖中の所望の位置に四置換α−アミノ酸が導入されたペプチドを得ることができる。
(1)光学活性テトラアミノホスホニウム塩
一般式(1)中、R〜R及びR9a〜R9dは、それぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基である。後述のように、本発明の塩は不斉合成反応用触媒に用いることができる。よって、上記一価の炭化水素基は、かかる不斉合成反応を阻害しない基が好ましい。上記一価の炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリールアルケニル基である。
上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基(以下、「アルキル基等」と総称する。)の構造には特に限定はない。上記アルキル基等は、直鎖状でもよく、分岐状でもよい。また、上記アルキル基等は、鎖状構造でもよく、環状構造(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びシクロアルキニル基)でもよい。
上記アルキル基等は、炭素原子及び水素原子で構成されていてもよく、その構造中に炭素原子及び水素原子以外の原子を1個又は2個以上含んでいてもよい。例えば、上記アルキル基等は、置換基として、炭素原子及び水素原子以外の原子を含む置換基を1種又は2種以上有していてもよい。また、上記アルキル基等は、鎖状構造中又は環状構造中に炭素原子及び水素原子以外の原子を1個又は2個以上含んでいてもよい。上記炭素原子及び水素原子以外の原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子の1種又は2種以上が挙げられる。
上記アルキル基の炭素数は、1〜10であり、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3である。また、上記アルケニル基の炭素数は、2〜10であり、好ましくは2〜8、更に好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4である。上記アルキル基等が環状構造の場合、上記アルキル基等の炭素数は、通常4〜12、好ましくは4〜10、更に好ましくは5〜8、より好ましくは6〜8である。
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。上記シクロアルキル基として具体的には、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及び2−メチルシクロヘキシル基が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、及びイソプロペニル基が挙げられる。上記シクロアルケニル基として具体的には、例えば、シクロヘキセニル基が挙げられる。
上記アリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基(以下、「アリール基等」と総称する。)の構造には特に限定はない。上記アリール基等は、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。例えば、上記アリール基等に含まれる芳香環は、無置換(C−)でもよく、他の置換基を1種又は2種以上有していてもよい。芳香環上の上記他の置換基の位置は、o−、m−、及びp−のいずれでもよい。上記他の置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、置換アミノ基、アルキルシリル基(トリアルキルシリル基等)、及びアルコキシ基の1種又は2種以上である。
上記アリール基等の炭素数には特に限定はない。上記アリール基等の炭素数(但し、芳香環上の置換基に含まれる炭素は除く。)は6〜15であり、好ましくは6〜12、更に好ましくは6〜10である。
上記アリール基として具体的には、例えば、無置換のアリール基(C−)、トリフルオロメチル基(o−、m−、及びp−)含有アリール基(CF−C−)、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、メトキシフェニル基(o−、m−、及びp−)、エトキシフェニル基(o−、m−、及びp−)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、並びにビフェニリル基等が挙げられる 。上記アリールアルキル基として具体的には、ベンジル基、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基)含有ベンジル基、メトキシベンジル基(o −、m−、及びp−)、エトキシベンジル基(o−、m−、及びp−)、並びにフェネチル基が挙げられる。上記アリールアルケニル基として具体的には、例えば、スチリル基及びシンナミル基が挙げられる。
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子又は上記一価の炭化水素基である。本発明の塩では、R〜Rのうちの少なくとも以上は上記一価の炭化水素基である。本発明の塩では、特に好ましくは4〜6個が上記一価の炭化水素基である。R〜Rの2以上が上記一価の炭化水素基である場合、上記一価の炭化水素基は全て同一の基でもよく、異なる基でもよい。
本発明の塩では、R〜Rのうち、例えば、少なくともR、R、R及びRを上記一価の炭化水素基とすることができる。この塩として例えば、下記一般式(1−1)で表される塩が挙げられる。一般式(1−1)中、少なくともR、R、R及びRが上記一価の炭化水素基である。
Figure 0005266485
後述のように、本発明の塩は通常、2分子の1,2−ジアミン化合物とハロゲン化リン化合物(PCl、PCl、POCl等 )との反応を経て得ることができる。よって、本発明の塩は、下記一般式(1−2)で表される塩でもよい。更に、本発明の塩として、下記一般式(1−3)又は(1−4)で表されるC2対称なP−スピロ型の塩でもよい。
Figure 0005266485
一般式(1)中、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士(例えば、R及びR)は、同一の基でもよく、異なる基でもよい。該基同士が異なる場合、即ち、上記炭素原子が不斉炭素原子の場合、当該箇所の立体構造には特に限定はない。該立体構造はR体でもよく、S体でもよい。
一般式(1)中、P−スピロ環中の窒素原子が無置換の窒素原子の場合(即ち、R9a〜R9dの一部が水素原子の場合)、R〜Rのうち、該窒素原子に隣接する炭素原子に結合している基は、いずれも上記一価の炭化水素基とすることができる。例えば、一般式(1)中、R9cが水素原子の場合、R及びRを上記一価の炭化水素基とすることができる。この塩として例えば、下記一般式(1−5)で表される塩が挙げられる。一般式(1−5)中、少なくともR〜Rは上記一価の炭化水素基である。
Figure 0005266485
本発明の塩では、R〜Rのうち少なくとも2個が上記アリール基等であることが好ましい。該アリール基等として好ましくはアリール基及びアリールアルキル基(例えば、フェニルメチル基)である。上記アリール基は、無置換のアリール基でもよく、置換基を有するアリール基でもよい。例えば、本発明の塩として、一般式(1)中、R〜Rのうち少なくとも1個が上記アリール基等であり、R〜Rのうち少なくとも1個が上記アリール基等である塩が挙げられる。より具体的には、本発明の塩として、一般式(1)中、R〜Rのうち少なくとも2個が上記アリール基等であり、R〜Rのうち少なくとも2個が上記アリール基等である塩が挙げられる。
この塩としてより具体的には、例えば、(A)一般式(1)において、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士が共に上記アリール基等であり、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士が共に上記アリール基等である塩(下記一般式(1−6)参照)及び(B)一般式(1)において、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士の一方が上記アリール基等である塩(下記一般式(1−7)参照)が挙げられる。尚、下記一般式(1−6)及び(1−7)中、「Ar」は上記アリール基等である。
Figure 0005266485
一般式(1)中、R9a〜R9dはそれぞれ独立に水素原子又は上記一価の炭化水素基である。但し、R9a〜R9dの少なくとも個は上記一価の炭化水素基である。R9a〜R9dは、全て上記一価の炭化水素基でもよい。また、R9a〜R9dは、その一部が上記一価の炭化水素基であり、残部が水素原子でもよい。本発明の塩では、R9a〜R9dのうち好ましくは1〜4個、更に好ましくは2〜4個が上記一価の炭化水素基である。
9a〜R9dの2以上が上記一価の炭化水素基である場合、上記一価の炭化水素基は全て同一の基でもよく、異なる基でもよい。例えば、一般式(1)中、R9a及びR9bを同じ基とし、且つR9c及びR9dを同じ基とすることができる。また、R9a及びR9dを同じ基とし、且つR9b及びR9cを同じ基とすることができる(一般式(1−2)及び(1−4)参照)。更に、R9a〜R9dの全てが上記一価の炭化水素基の場合、R9a〜R9dは全て同じ基とすることができる。
一方、R9a〜R9dの2が水素原子の場合、R9a及びR9bのうちの少なくとも一方を水素原子とし、且つR9c及びR9dのうちの少なくとも一方を水素原子とすることができる。例えば、R9a及びR9bのうちの一方を水素原子とし、且つR9c及びR9dのうちの一方を水素原子とすることができる(一般式(1−5)参照)。
9a〜R9dの一部が上記一価の炭化水素基であり、残部が水素原子である場合、該一価の炭化水素基の炭素数は通常1〜10、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。この場合、該一価の炭化水素基として好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、及びt−ブチル基が挙げられる。
一方、R9a〜R9dの全てが上記一価の炭化水素基の場合、該一価の炭化水素基として上記アリール基等が好ましく、アリールアルキル基がより好ましい。上記アリール基等がアリールアルキル基、アリールアルケニル基、及びアリールアルキニル基の場合、窒素原子と芳香環とを結ぶ炭化水素鎖の炭素数には特に限定はない。該炭素数はアリールアルキル基では通常1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2であり、アリールアルケニル基及びアリールアルキニル基では通常2〜5、好ましくは2〜3である。
上記アリール基等に含まれる芳香環は、無置換でもよく、置換基を有していてもよい。上記アリール基等として好ましくは、芳香環に置換基を有するアリール基等が挙げられる。特に、上記アリール基等として、m位に置換基を1又は2個有する上記アリール基等が好ましい。該置換基は、立体的に傘高い基であることが好ましい。該置換基として具体的には、例えば、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基)が挙げられる。上記アリール基等としてより具体的には、芳香環に置換基を有するアリールアルキル基が好ましく、特にm位に置換基を1又は2個有するアリールアルキル基が好ましい。
本発明の塩は、P−スピロキラリティーを有していてもよく、有していなくてもよい。本発明の塩がP−スピロキラリティーを有する場合、本発明の塩はM体でもよく、P体でもよい(下記一般式(1A)及び(1B)参照)。尚、本発明の塩は光学活性テトラアミノホスホニウム塩である。よって、本発明の塩には「メゾ体」は含まれない。
Figure 0005266485
一般式(1)中、X(対イオン)の種類及び価数には特に限定はない。Xとして、一般的な一価又は多価の陰イオンを用いることができる。後述のように、本発明の塩は、例えば、1,2−ジアミン化合物とハロゲン化リン化合物との反応を経て得ることができる。よって、Xは通常、ハロゲンイオン(F、Cl、Br、I等)である。 また、本発明では、必要に応じて適宜イオン交換をすることが可能である。例えば、イオン交換により、Xを各種塩基性アニオン(例えば、共役酸のpKaが1〜10、好ましくは1〜8である塩基)に交換することができる。よって、Xは、例えば、硫酸イオン、硫酸水素イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、フェノキシド、ホウ酸イオン、テトラアリールホウ酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、又はヘキサフルオロリン酸イオンでもよい。
本発明の塩として具体的には、例えば、下記一般式(1−8)及び(1−9)で表される塩又はその鏡像異性体が挙げられる。尚、下記一般式(1−8)及び(1−9)中、「Ar」は上記アリール基等である。
Figure 0005266485
本発明の塩の製造方法には特に限定はない。本発明の塩は、例えば、1,2−ジアミン化合物とハロゲン化リン化合物(PCl、PCl、POCl等 )との反応を経て得ることができる(下記式参照)。上記1,2−ジアミン化合物は光学活性体でもよく、ラセミ体でもよい 。上記1,2−ジアミン化合物としてラセミ体を用いた場合、合成後、光学分割等を行うことにより、本発明の塩を得ることができる。上記1,2−ジアミン化合物は、例えば、容易に入手できるアミノ酸から得ることができる。該アミノ酸はD体でもよく、L体でもよい。
Figure 0005266485
(2)不斉合成反応用触媒
本発明の触媒は、本発明の塩を含む。P−スピロ環中の窒素原子が無置換の窒素原子の場合(即ち、R9a〜R9dの一部が水素原子の場合)、「本発明の塩」には、本発明の塩の「共役塩基」を含む。該「共役塩基」とは、 本発明の塩を脱プロトン化したイミノホスホラン化合物である。本発明の触媒によれば、金属錯体でなくても、不斉合成反応を進めることができる。
本発明の触媒は、本発明の塩を含む限り、その組成には特に限定はない。本発明の触媒は、本発明の塩のみからなる構成でもよく、他の成分を含んでいてもよい。本発明の触媒は、一般式(1)で表される塩又はその共役塩基のいずれか一方のみでもよく、両方を含んでいてもよい。本発明の塩は、1種の立体異性体のみでもよく、2以上の異なる立体異性体を含んでいてもよい。
本発明の触媒は、溶媒中に存在していてもよく、該溶媒を留去した残渣として存在していてもよい。本発明の触媒は、必ずしも触媒として単離する必要はない。例えば、本発明の触媒は、調製した状態でそのまま不斉合成反応に用いてもよい。より具体的には、例えば、適宜の溶媒中で本発明の触媒を生成した後、本発明の触媒を含む溶液を不斉合成反応の反応溶媒に添加してもよい。また、適宜の溶媒中で本発明の触媒を生成し、次いで、当該溶媒に出発物質を添加して、そのまま引き続き不斉合成反応を行ってもよい。
本発明の触媒が溶媒中に分散又は溶解している場合、該溶媒の種類には特に限定はない。上記のように、本発明の触媒は、調製した状態でそのまま不斉合成反応に用いることができる。よって、上記溶媒は、不斉合成反応の溶媒と同じ又は同様の性質を有する溶媒が好ましい。上記溶媒としては、極性有機溶媒でもよく、非極性有機溶媒でもよい。また、上記溶媒は1種でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。
上記極性有機溶媒は、プロトン性極性有機溶媒でもよく、非プロトン性極性有機溶媒でもよい。上記極性有機溶媒として好ましくは、非プロトン性極性有機溶媒である。上記極性有機溶媒としては、例えば、THF、アニソール、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、 エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル)、アミド系溶媒(DMF及びNMP等)、ウレア系溶媒(DMPU等)、リン酸アミド系溶媒(HMPA等)、ニトリル系溶媒(プロピオニトリル等)、及びニトロアルカン系溶媒(ニトロメタン及びニトロエタン等)が挙げられる。
上記非極性溶媒は、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。該脂肪族有機溶媒としては、例えば、アルカン及びシクロアルカン(例えば、炭素数4以上、好ましくは5以上)並びにハロゲン化アルキルが挙げられる。上記脂肪族有機溶媒として具体的には、例えば、ジクロロメタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、及びオクタンが挙げられる。更に、上記芳香族有機溶媒としては、例えば、ベンゼン及びトルエンが挙げられる。
本発明の触媒は、一相系の溶媒で使用することができるが、二相系(例えば、水系溶媒及び非水系溶媒からなる二相系、固体塩基(例えば炭酸カリウム粉末等)及び非水系溶媒を用いる固液二相系)の溶媒で使用することもできる。即ち、本発明の触媒は、相間移動触媒として用いることができる。
上記不斉合成反応の種類には特に限定はない。上記不斉合成反応として具体的には、例えば、カルボニル基含有化合物(アズラクトン等)のα炭素上に不斉炭素−炭素結合を形成する反応が挙げられる。上記不斉合成反応としてより具体的には、例えば、マンニッヒ反応及びアルキル化反応が挙げられる。上記不斉合成反応についての詳細は後述する。
(3)不斉合成反応
上記カルボニル基含有化合物は、「−CO−」構造を持ち、且つカルボニル基のα炭素が水素原子を有する化合物である限り、その種類及び構造に限定はない。上記カルボニル基含有化合物としては、例えば、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミド基、エステル基、及びカルボン酸無水物基を有する化合物が挙げられる。上記カルボニル基含有化合物は、鎖状構造でもよく、環状構造でもよい。また、上記カルボニル基含有化合物は、飽和化合物でもよく、不飽和化合物でもよい。上記カルボニル基含有化合物として具体的には、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」という。)が挙げられる。
Figure 0005266485
一般式(2)中、Rx、Ry及びRzは水素原子又は一価の基である。上記一価の基は水酸基、アミノ基、アルコキシ基、又は、炭素原子及び水素原子以外の原子を含んでもよく且つ置換基を有していてもよい炭化水素基であり、例えば、本発明の塩の項で説明した上記一価の炭化水素基が挙げられる。更に、一般式(2)中、Rx及びRy又はRy及びRzは結合して環状構造を形成していてもよい。上記Rzとして具体的には、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等)及びアリールアルキル基(フェニルメチル基等)が挙げられる。
上記カルボニル基含有化合物としてより具体的には、エステル化合物(例えば、上記一般式(2)において、Rxがアルコキシ基である化合物)が挙げられる。上記エステル化合物としては、例えば、下記一般式(2−1)で表されるアズラクトンが挙げられる。上記アズラクトンは通常、下記一般式(2a)で表される化合物を加熱又は脱水剤(ジシクロヘキシルカルボジイミド〔DCC〕及び水溶性カルボジイミド〔WSCD〕等)で処理することにより得ることができる。
Figure 0005266485
一般式(2−1)中、Ra及びRbは、水素原子又は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基の種類及び構造は、本発明の塩の項における上記一価の炭化水素基の説明が妥当する。また、Ra及び/又はRbが上記一価の炭化水素基の場合、該基は、アミノ酸残基でもよく、ペプチド又はポリペプチド等のオリゴマー又はポリマーでもよい。上記Raとして好ましくは、上記アリール基等である。上記アリール基等として具体的には、例えば、アリール基及びアリールアルキル基(ベンジル基)が挙げられる。これらの基に含まれる芳香環は、無置換でもよいが、置換基(例えば、メトキシ基等のアルコキシ基)を有する方が好ましい。
上記炭素−炭素結合形成剤(以下、「C−C形成剤」という。)は、上記カルボニル基含有化合物のα炭素(カルボニル基に隣接する炭素原子)上に不斉炭素−炭素結合を形成することができる限り、その種類及び構造には特に限定はない。上記C−C形成剤としては、例えば、上記一価の炭化水素基を構成する炭素原子とヘテロ原子とが結合し、両者の電気陰性度の差から該炭素原子がカチオン性を帯びる物質が挙げられる。上記C−C形成剤として具体的には、例えば、下記一般式(3)及び(5)で表される化合物(以下、「化合物(3)」及び「化合物(5)」という。)が挙げられる。
Figure 0005266485
一般式(3)及び(5)中、R10炭素数が1〜10のアルキル基、アルケニル基、炭素数が6〜15のアリール基及びアリールアルキル基から選ばれ、上記炭素原子及び水素原子以外の原子は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1種であり、上記置換基はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種である。11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。
一般式(5)中、R12はヘテロ原子を有する一価の炭化水素基である。R12が上記構造であると、反応性及び立体選択性を高めることができる。
12は、−SO基及び−CO−OR基である。該Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種である。上記置換基の位置には限定はない。上記Rとして具体的には、例えば、トルイル基(4−トルイル基等)、メシチル基、及びキシリル基(2,4−キシリル基及び2,5−キシリル基等)が挙げられる。
一般式(3)中、Lは脱離基である。該脱離基は、R10を構成する炭素原子と結合する基又は原子であって、且つR10から脱離し、R10のカルボカチオンを生じさせる基であるか、又は上記炭素原子が正に帯電したR10と上記カルボキシル基含有化合物のα炭素との結合形成の際に脱離する基である。Lは、上記機能を有する限り、その種類及び構造には限定がない。Lとして例えば、ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)が挙げられる。
本発明の反応は、本発明の塩の存在下で行う限り、具体的な手順に限定はない。例えば、本発明の塩を合成した後、本発明の塩を単離せず、そのまま本発明の塩を含む溶液に出発物質を添加して、本発明の反応を行うことができる。また、別途用意した溶媒に、本発明の塩及び出発物質を添加して、本発明の反応を行うことができる。尚、「本発明の塩の存在下」とは、本発明の塩が反応系に存在する状態であればよい。よって、「本発明の塩の存在下」は、本発明の塩を用いる場合と、本発明の触媒を用いる場合の両方を含む。
本発明の反応において、溶媒の種類には特に限定はない。該溶媒は水系溶媒でもよく、非水系溶媒でもよい。また、上記溶媒は、極性有機溶媒を用いてもよく、非極性有機溶媒を用いてもよい。上記溶媒は1種でもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。上記溶媒は一相系の溶媒でもよく、水系溶媒(例えば、水、プロトン性極性有機溶媒及び非プロトン性極性有機溶媒)並びに非水系溶媒(例えば、非極性有機溶媒)からなる二相系の溶媒でもよい。
上記水系溶媒は、各種塩を1種又は2種以上含む塩水溶液でもよい。この場合、塩の濃度には特に限定はないが、好ましくは塩の飽和水溶液である。該塩は、無機塩でも有機塩でもよい。該塩としてより具体的には、例えば、リン酸カリウム及び炭酸カリウムが挙げられる。
上記極性有機溶媒は、プロトン性極性有機溶媒でもよく、非プロトン性極性有機溶媒でもよい。上記極性有機溶媒として好ましくは、非プロトン性極性有機溶媒である。上記極性有機溶媒としては、例えば、THF、アニソール、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、 エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル)、アミド系溶媒(DMF及びNMP等)、ウレア系溶媒(DMPU等)、リン酸アミド系溶媒(HMPA等)、ニトリル系溶媒(プロピオニトリル等)、及びニトロアルカン系溶媒(ニトロメタン及びニトロエタン等)を用いることができる。
上記非極性溶媒は、脂肪族有機溶媒でもよく、芳香族有機溶媒でもよい。該脂肪族有機溶媒としては、例えば、アルカン及びシクロアルカン(例えば、炭素数4以上、好ましくは5以上)並びにハロゲン化アルキルが挙げられる。上記脂肪族有機溶媒として具体的には、例えば、ジクロロメタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、及びオクタンが挙げられる。更に、上記芳香族有機溶媒としては、例えば、ベンゼン及びトルエンが挙げられる。
本発明の反応の反応条件には特に限定はない。反応条件 は、基質及び反応生成物の種類及び構造等に応じて、適宜調整することができる。例えば、反応温度は通常−100〜40℃、好ましくは−80〜30℃、更に好ましくは−80〜10℃である。
本発明の反応の反応雰囲気には特に限定はない。本発明の反応は、無酸素雰囲気で行ってもよく、酸素雰囲気下で行ってもよい。本発明の反応は、例えば、窒素ガス雰囲気又は希ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス)雰囲気下で行うことができる。
反応終了後、公知の方法、例えば、蒸留、吸着、抽出、及び再結晶等の方法又はこれらの方法を組み合わせて、目的の反応生成物の回収及び精製を行うことができる。また、必要に応じて光学分割等により、目的とする光学活性体を得ることができる。
本発明の反応により、上記カルボニル基含有化合物のα炭素上に不斉炭素−炭素結合を形成することができる。よって、得られる生成物のα炭素は不斉炭素原子となるが、この箇所の立体構造には特に限定はない。本発明の反応の具体的内容には特に限定はない。本発明の反応として、例えば、アルキル化反応及びマンニッヒ反応が挙げられる。
本発明の反応の一例を以下に示す(以下、「反応例1」という。)。反応例1では、R10が化合物(2)のα炭素に導入されて、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」という。)を生成する。下記一般式(2)〜(4)におけるRx、Ry、Rz、R10、及びLの内容は上記の通りである。尚、一般式(4)中、「*」は不斉炭素原子を表す。
Figure 0005266485
反応例1で用いる本発明の塩(以下、「塩1」という。)として、一般式(1)において、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士(例えば、R及びR)の一方が上記一価の炭化水素基である塩が好ましい(一般式(1−7)参照)。該一価の炭化水素基としては、上記アリール基等が好ましく、より好ましくはアリール基である。また、「塩1」として、C2対称なP−スピロ型の塩が好ましい(一般式(1−3)及び(1−4)参照)。
「塩1」として、P−スピロ環の炭素が不斉炭素原子であり、光学活性を有する塩が好ましい。即ち、上記塩として、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士(例えば、R及びR)は、異なる基である塩が好ましい。該塩を用いると、反応例1における収率及び立体選択性を向上させることができる。例えば、化合物(2)がアズラクトンの場合、反応中にエノラート化したアズラクトンが、他のアズラクトンと反応し(自己アシル化)、収率が低下することがある。一方、「塩1」として、光学活性を有する塩を用いると、かかる自己アシル化を抑制し、収率を向上させることができる。
「塩1」として、一般式(1)中、R9a〜R9dが上記一価の炭化水素基である塩が好ましい。該塩を用いると、反応例1における収率及び立体選択性を向上させることができる。該一価の炭化水素基として上記アリール基等が好ましく、アリールアルキル基がより好ましい。また、該アリール基等に含まれる芳香環は、無置換でもよいが、置換基を有する方が好ましい。上記一価の炭化水素基としてより具体的には、芳香環に置換基を有するアリールアルキル基(例えば、フェニルメチル基、フェネチル基)が好ましく、特にm位に置換基を1又は2個有するアリールアルキル基が好ましい。該置換基としては、例えば、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基)が挙げられる。
「塩1」として具体的には、例えば、下記一般式(1−10)で表される塩又はその鏡像異性体が好ましい。一般式(1−10)中、Rは上記アリール基等、特にアリール基が好ましい。また、R9aは下記一般式(1−10−1)で表される基が好ましい。一般式(1−10−1)において、nは整数であり、通常1〜5、好ましくは1〜3、更に好ましくは1〜2である。また、一般式(1−10−1)中、Rは水素原子又は任意の置換基である。Rの少なくとも一方は任意の置換基が好ましい。該置換基として具体的には、例えば、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基)が挙げられる。
Figure 0005266485
本発明の反応の他の例として、マンニッヒ反応が挙げられる。該マンニッヒ反応は、活性なα水素を持つ化合物のイミニウムイオンへの求核付加反応であれば、出発物質の種類には特に限定はない。活性なα水素を持つ化合物としては、例えば、上記カルボニル基含有化合物の他、末端アルキン、ニトロ化合物及びニトリル化合物が挙げられる。また、イミニウムイオンの具体的種類及び構造にも特に限定はない。上記マンニッヒ反応では、イミニウムイオンの変わりに、イミンを用いてもよい。
上記マンニッヒ反応における溶媒は、通常一相系の溶媒であり、好ましくは非プロトン性極性有機溶媒又は非極性有機溶媒である。これらの内容は、本発明の反応の項での説明が妥当する。
上記マンニッヒ反応の一例を以下に示す(以下、「反応例2」という。)。反応例2では、活性なα水素を持つ化合物(2)と、化合物(5)(イミン)が反応し、下記一般式(6)で表される化合物(以下、化合物(6)という。)を生成する。下記一般式(2)、(5)及び(6)におけるRx、Ry、Rz、及びR11〜R12の内容は上記の通りである。尚、一般式(6)中、「*」は不斉炭素原子を表す。
Figure 0005266485
反応例2で用いる本発明の塩(以下、「塩2」という。)として、P−スピロ環中の窒素原子が無置換の窒素原子の場合、R〜Rのうち、該窒素原子に隣接する炭素原子に結合している基は、いずれも上記一価の炭化水素基とすることができる(一般式(1−5)参照)。また、「塩2」として、一般式(1)中、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士(例えば、R及びR)が共に上記アリール基等であり、R〜Rのうち、P−スピロ環の炭素原子に結合している基同士(例えば、R及びR)が共に上記アリール基等である塩が好ましい(一般式(1−6)参照)。
「塩2」として好ましくは、一般式(1−6)で表される塩である。一般式(1−6)中、R、R、R及びRの種類及び構造には特に限定はない。但し、一般式(1−6)中、P−スピロ環の炭素原子の少なくとも1つは不斉炭素原子である。通常、R及びRは、R及びRと同じ基である。一般式(1−6)では通常、R及びRの一方は水素原子であり、他方は上記一価の炭化水素基である。また、R及びRの一方は水素原子であり、他方は上記一価の炭化水素基である。
上記一価の炭化水素基は、上記アルキル基等でもよく、上記アリール基等でもよい。上記アルキル基等の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜6、更に好ましくは2〜5である。上記アリール基等としては、例えば、アリール基及びアリールアルキル基が挙げられる。上記一価の炭化水素基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、及びt−ブチル基が挙げられる。上記一価の炭化水素基が上記構造、特にi−プロピル基であると、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性に優れていることから好ましい。
「塩2」として、一般式(1)中、R9a〜R9dの2以上が水素原子である塩が好ましい。該塩としては、例えば、R9a及びR9bのうちの少なくとも一方が水素原子であり、且つR9c及びR9dのうちの少なくとも一方が水素原子である塩が挙げられる。該塩としてより具体的には、R9a〜R9dのうち2個が水素原子であり、R9a及びR9bのうちの一方が水素原子であり、且つR9c及びR9dのうちの一方が水素原子である塩が好ましい(一般式(1−5)参照)。後述のように、「塩2」として、(P,S)体の塩が好ましい。そして、「塩2」が上記構造を有すると、(P,S)体と(M,S)体との相互変換を抑制することができるので好ましい。
「塩2」として、P−スピロキラリティーを有する塩が好ましい。特に、「塩2」として、P体が好ましい(一般式(1A)参照)。より具体的には、「塩2」として、一般式(1−11)に例示される(P,S)体の塩が、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性に優れていることから好ましい。
Figure 0005266485
「塩2」において、Xとして好ましくは、本発明の塩の項で説明した塩基性アニオンが挙げられる。Xとして具体的には、硫酸水素イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、フェノキシド、又はホウ酸イオンが好ましい。Xとして上記塩基性アニオンを用いると、塩基性アニオンとホスホニウムイオンとが協奏的に働くことにより、収率及び立体選択性を向上させることができるので好ましい。
化合物(2)としてアズラクトンを用いると、得られる化合物(6)の立体構造として、シン体とアンチ体が考えられる(以下の式参照)。該化合物(6)は、シン体及びアンチ体のいずれか一方のみでもよく、両者の混合物でもよい。反応例2は、シン選択性に優れると共に、エナンチオ選択性(特にシン体のエナンチオ選択性)に優れている。
Figure 0005266485
(4)ペプチド合成方法
工程(A)では、水系溶媒及び非水系溶媒からなる二相溶媒中、本発明の塩の存在下、アズラクトン(7)及び化合物(8)を反応させ、化合物(9)を得る。工程(A)は、本発明の反応(上記反応例1)を利用している。よって、工程(A)の内容の詳細は、本発明の反応の項(特に反応例1の項)の説明が妥当する。
アズラクトン(7)は、ペプチドのC末端をアズラクトン化して得ることができる。該アズラクトン化の方法には特に限定はない。アズラクトン(7)は通常、ペプチドを加熱又は脱水剤(DCC及びWSCD等)で処理することにより得ることができる。
一般式(7)中、A1は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基の内容は、本発明の塩の項の説明が妥当する。通常、A1はアミノ酸残基又はペプチドである。該アミノ酸残基の種類及び構造には特に限定はない。該アミノ酸残基は、L−アミノ酸、D−アミノ酸、αアミノ酸、β−アミノ酸、及びγ−アミノ酸由来の残基のいずれでもよい。また、上記アミノ酸残基は、天然アミノ酸由来の残基でもよく、非天然アミノ酸(例えば、四置換α−アミノ酸)由来の残基でもよい。更に、該アミノ酸残基のN末端は保護基(Boc等)で修飾されていてもよい。
A1がペプチドの場合、該ペプチドの種類及び構造には特に限定はない。該ペプチドに含まれるアミノ酸残基の数は通常100以下、好ましくは2〜50である。上記ペプチドに含まれるアミノ酸残基は、L−アミノ酸、D−アミノ酸、αアミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸由来の残基のいずれでもよい。また、上記アミノ酸残基は、天然アミノ酸由来の残基でもよく、非天然アミノ酸(例えば、四置換α−アミノ酸)由来の残基でもよい。更に、上記ペプチドは、アミノ酸以外の化合物に由来する残基を含んでいてもよい。また、上記ペプチドは、ペプチド結合以外の結合を含んでいてもよい。更に、上記ペプチドのN末端は保護基(Boc等)で修飾されていてもよい。
一般式(7)中、R13は水素原子又は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基の内容は、本発明の塩の項の説明が妥当する。上記のように、アズラクトン(7)は、ペプチドのC末端をアズラクトン化して得ることができる。よって、R13は通常、C末端α−アミノ酸のα炭素が有する置換基(又は原子)である。例えば、C末端がグリシンの場合、R13は水素原子であり、アラニンであればメチル基であり、フェニルアラニンであればベンジル基である。
一般式(8)中、R14はR13とは異なる一価の炭化水素基であり、Lは脱離基である。上記のように、工程(A)は、本発明の反応(反応例1)を利用している。よって、R14及びLの内容は、本発明の反応の項のR10及びLの説明が妥当する。
工程(A)は、水系及び非水系からなる二相系の溶媒中で行う。例えば、工程(A)は、水系溶媒及び非水系溶媒からなる二相系溶媒又は固体塩基(例えば炭酸カリウム粉末等)と非水系溶媒を用いる固液二相系溶媒で行うことができる。水系溶媒及び非水系溶媒の詳細は、本発明の反応の項の説明が妥当する。本発明のペプチド合成反応では、当初より二相系の溶媒を形成し、そこに本発明の塩及び出発物質を添加してもよい。また、本発明のペプチド合成反応では、本発明の塩を含む非水系溶媒に出発物質を添加した後、水系溶媒(又は固体塩基)を添加してもよく、本発明の塩を含む非水系溶媒に水系溶媒(又は固体塩基)を添加して二相系の溶媒とした後、出発物質を添加してもよい。
工程(B)では、工程(A)により得られた化合物(9)とアミノ基含有化合物とを反応させる。この反応により、化合物(9)が開環し、化合物(9)とアミノ基含有化合物との間にペプチド結合(アミド結合)が形成される(下記式参照。式中、Rは一価の炭化水素基である。)。かかる反応が進む限り、工程(B)の反応条件には特に限定はない。尚、アミノ基含有化合物に代えて、アンモニア(R=H)を用いると、C末端をアミド化することができる。
Figure 0005266485
上記アミノ基含有化合物の種類及び構造には特に限定はない。上記アミノ基含有化合物は、通常はアミノ酸又はペプチドである。該アミノ酸及びペプチドの種類及び内容は、上記A1での説明が妥当する。また、該アミノ酸及びペプチドのC末端は、カルボン酸誘導体(例えば、エステル、酸塩化物、酸無水物及びアミド)でもよい。
尚、本発明では、上記工程(B)の代わりに、化合物(9)を任意の方法により加水分解し、アズラクトン環を開環してもよい(下記式参照)。この方法により、C末端側に四置換アミノ酸残基を有するペプチドを得ることができる。
Figure 0005266485
ペプチド(10)は、四置換α−アミノ酸(α炭素が2個の置換基を有するα−アミノ酸、例えば、α,α−ジアルキル−α−アミノ酸)残基を鎖中に有し、一般式(10)で表されるペプチドである限り、具体的な構造に限定はない。ペプチド(10)は鎖状構造でもよいが、A1及びA2が結合した環状構造でもよい。ペプチド(10)中の上記四置換α−アミノ酸残基の数及び位置には特に限定はない。例えば、ペプチド(10)中、上記四置換α−アミノ酸残基は、N末端及び/又はC末端に位置していてもよく、ペプチド鎖中の任意の箇所に位置していてもよい。また、上記四置換α−アミノ酸残基が複数ある場合、各四置換α−アミノ酸残基は連続的に存在していてもよく、不連続的に存在していてもよい。
一般式(10)中、A2は一価の炭化水素基である。該一価の炭化水素基の内容は、本発明の塩の項の説明が妥当する。通常、A2はアミノ酸残基又はペプチドである。該アミノ酸及びペプチドの種類及び内容は、上記A1での説明が妥当する。
工程(B)からペプチド(10)を得る方法には特に限定はない。例えば、工程(B)において、上記アミノ基含有化合物としてA2−NHを用いれば、工程(A)及び工程(B)を1回行うことにより、ペプチド(10)が得られる。この方法によれば、ペプチド(10)のA2の構造は、上記アミノ基含有化合物由来の残基と同じである。一方、後述のように、本発明のペプチドの合成方法では、工程(A)及び(B)を複数回繰り返してもよく、また、上記工程(B)の後、通常のペプチド鎖延長反応等の任意の鎖伸長反応を行ってもよい。この方法によれば、ペプチド(10)のA2の構造は、上記アミノ基含有化合物由来の残基と異なる任意の構造とすることができる。
本発明のペプチドの合成方法において、工程(A)及び(B)のサイクル数には限定はない。工程(A)及び(B)のサイクル数は1回でもよく、複数回でもよい。該サイクル数が複数回の場合、工程(A)及び(B)のサイクルは連続して行ってもよく、不連続的に行ってもよい。工程(A)及び(B)を連続して複数回行えば、四置換α−アミノ酸残基が2以上連続して含まれているペプチド(10)を得ることができる。一方、工程(A)及び(B)を行って得られたペプチドとアミノ酸(α−アミノ酸等)とを反応させてペプチド鎖を適宜伸長させ、次いで、再度工程(A)及び(B)を行うことにより、ペプチド鎖中の任意の箇所に四置換α−アミノ酸残基が含まれているペプチド(10)を得ることができる。
本発明のペプチドの合成方法は、工程(A)及び(B)以外の他の工程を含んでいてもよい。該他の工程としては、例えば、工程(A)及び(B)を行い、得られたペプチドとアミノ酸(α−アミノ酸等)とを反応させるペプチド鎖の伸長反応が挙げられる。該伸長反応は、公知のペプチド鎖の伸長反応を利用することができる。また、ペプチド(10)の一部の置換基(例えば、N末端アミノ基)が保護基を有する場合、上記他の工程としては、保護基を外す工程が挙げられる。
本発明のペプチドの合成方法では、反応終了後、公知の方法(例えば、ゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー、HPLC、逆相HPLC及び電気泳動法)により、目的とするペプチド(10)を分離精製することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限られない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
本実施例において赤外線スペクトルは、「JASCO FT/IR−230スペクトロメーター」又は「JASCO FT/IR−300Eスペクトロメーター」により測定した。H−NMRスペクトルは、「Varian INOVA−500(500MHz)スペクトロメーター」により測定した。化学シフトは、テトラメチルシラン(0.0ppm)を内部標準(CDCl)として、又は溶媒の残存シグナル(CDOD;3.31ppm)を内部標準としてppmで記録した。13C−NMRスペクトルは、「Varian INOVA−500(126MHz)スペクトロメーター」により、完全プロトンデカップリングで測定した。化学シフトは、溶媒の残存シグナル(CDCl;77.2ppm、CDOD;49.0ppm)を内部標準としてppmで記録した。31P−NMRスペクトルは、「Varian Mercury−300BB(121MHz)スペクトロメーター」により、完全プロトンデカップリングで測定した。化学シフトは、HPO(0.0ppm)を外部標準としてppmで記録した。
旋光度は、「JASCO DIP−1000 polarimeter」により測定した。高分解能マススペクトル分析は、名古屋大学大学院理学研究科マテリアルサイエンスリサーチセンターで測定した。ジアステレオ比はキラル静止層HPLC(DAICEL CHIRALPAK AD−H(AD−H),CHIRALPAK AS−H(AS−H),CHIRALPAK IC(IC),CHIRALCEL OD−H(OD−H))により測定した。TLC分析は、「Merck precoated TLC plates」(シリカゲル60 GF254、0.25mm)により行った。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、「シリカゲル60」(球形、40〜50μm、関東化学工業社製)により行った。
データは、化学シフト、積分値、多重度(s=1重線、d=2重線、t=3重線、q=4重線、quin=5重線、sept=7重線、m=多重線、brs=広い1重線)、及びカップリング定数(Hz)の順で表記した。
トルエン及びジクロロメタン(DCM)は、関東化学工業社製「Dehydrated Solvent system」から供給された。シクロペンチルメチルエーテル(CPME)は、日本ゼオンからの好意で供給された。他の物質は市販品を用いた。
(1)光学活性テトラアミノホスホニウム塩の合成(I)
光学活性テトラアミノホスホニウム塩の合成経路を以下に示す。
Figure 0005266485
アルゴン雰囲気下、商業的に入手可能である(1R,2R)−(+)−1,2−ジフェニル−1,2−ジアミノエタン塩酸塩(1.51g、5.3mmol)及びPCl(0.55g、2.6mmol)を含むDCM(13.2mL)をピリジン(4.3mL、53mmol)に添加し、反応混合物を2時間攪拌した。次いで、反応混合物にEtN(3.7mL、26mmol)を添加し、更に2時間攪拌を続けた。減圧下で揮発物を除去した後、黄色粉末状の残渣を1NHCl及びジエチルエーテルで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてクロロホルム/メタノール=(50〜5)/1の混合液を用いた。)で残渣を精製することにより、白色固体のN無置換のテトラアミノホスホニウム塩を得た(収率;43%)。
アルゴン雰囲気下、−40℃で、N無置換のテトラアミノホスホニウム塩(0.049g、0.1mmol)及びベンジルブロミド(0.12ml、2.6mmol)を含むDCM(13.2mL)のジメチルホルムアミド溶液を、NaH(0.025g、1.0mmol)のアセトニトリル(1mL)懸濁液に滴下して加え、反応混合物を室温で一晩攪拌した。次いで、−40℃で、反応混合物にエタノールを添加し、0℃で1時間攪拌した。有機層をクロロホルムで希釈し、1NHClで洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてクロロホルム/メタノール=(100〜5)/1の混合液を用いた。)で濃縮物を精製することにより、白色固体のテトラアミノホスホニウム塩(1a)を得た(収率;60%)。また、同様の方法により、テトラアミノホスホニウム塩(1b)及び(1c)を得た。テトラアミノホスホニウム塩(1a)〜(1c)のスペクトルデータは以下の通りである。
テトラアミノホスホニウム塩(1a);
〔1〕H−NMR(500MHz,CDCl);δ7.34−7.25(16H,m),7.22(8H,t,J=7.5Hz),7.12−7.08(8H,m),6.94(8H,d,J=7.5 Hz),4.80(4H,s),4.30(4H,dd,JP−H=13.0 Hz,JH−H=15.0 Hz),3.97(1H,t,JP−H=15.0Hz,JH−H=15.0Hz)
〔2〕13C−NMR(126MHz,CDCl);δ135.3(d,JP−C=2.4
Hz),133.7(d,JP−C=8.4Hz),129.7,129.34,129.28,129.1,129.0,128.8,69.9(d,JP−C=11.5Hz),47.6(d,JP−C=5.0Hz)
〔3〕31P−NMR(121MHz,CDCl);δ45.0
〔4〕IR(liq. film);3032,2925,1456,1209,1106,1065,1029,924,760,731,699cm−1
〔5〕HRMS(FAB);Calcd for C5652([M−Cl])811.3930,Found 811.3893
〔6〕[α]27 ;+2.1°(c=1.67,MeOH)
テトラアミノホスホニウム塩(1b);
〔1〕H−NMR(500MHz,CDCl);δ7.49(4H,s),7.18(4H,t,J=7.5 Hz),7.16(8H,s),7.06(8H,t,J=7.5Hz),6.76(8H,d,J=7.5Hz),4.80(4H,s),4.73(4H,dd,JP−H=10.5Hz,JH−H=15.0Hz),4.57(4H,dd,JP−H=11.5Hz,JH−H=15.0Hz),0.12(72H,s)
〔2〕13C−NMR(126MHz,CDCl);δ140.4,138.1,134.0(d,JP−C=7.4Hz),133.8,132.1(d,JP−C=3.0Hz),129.4,129.0,128.4,68.7(d,JP−C=12.5Hz),48.4(d,JP−C=4.8Hz),−1.1
〔3〕31P−NMR(121MHz,CDCl);δ43.4
〔4〕IR(liq. film);3033,2953,1444,1378,1249,1125,1079,912,858,836,752,696cm−1
〔5〕HRMS(FAB);Calcd for C80116Si([M−Cl])1387.7092,Found 1387.7113
〔6〕[α]28 ;+14.9°(c=1.66,CHCl
テトラアミノホスホニウム塩(1c);
〔1〕H−NMR(500MHz,CDCl);δ7.48(4H,s),7.22−7.10(12H,m),7.06(8H,brs),6.79(8H,brs),4.80(4H,brs),4.67(4H, brs),4.50(4H,brs),0.77(72H,s),0.13(24H,s),0.06(24H,s)
〔2〕13C−NMR(126MHz,CDCl);δ141.0,137.5,134.7,133.6(d,JP−C=7.8Hz),132.0,129.5,129.0,127.9,69.5(d,JP−C=12.0Hz),48.6(d,JP−C=4.8Hz),26.4,16.8,−6.1,−6.3
〔3〕31P−NMR(121MHz,CDCl);δ44.7
〔4〕IR(liq. film);3033,2953,2927,2856,1470,1250,1109,1077,828,767,697cm−1
〔5〕HRMS(FAB);Calcd for C104164Si([M−Cl])1724.0848,Found 1724.0808
〔6〕[α]27 ;+8.0°(c=0.76,CHCl
(2)光学活性テトラアミノホスホニウム塩の合成(II)
光学活性テトラアミノホスホニウム塩の合成経路を以下に示す。
Figure 0005266485
ギ酸(1.2mL)及び無水酢酸(3mL)をナスフラスコに入れ、60℃で5時間加熱の後室温まで冷却した。得られた溶液にアミノアルコール(2.55g)を加えた。30分間攪拌の後、クロロホルムで希釈し、有機相を水、飽和重曹水、塩酸(1N)及び飽和食塩水で各2回洗い、NaSOで乾燥した。これを濃縮して得られる白色固体をTHF(7mL)に溶解し、0℃で水素化アルミニウムリチウム(0.76g)のTHF(10mL)懸濁液に加えた。60℃で12時間加熱還流の後、再び0℃に冷却した。反応液をジエチルエーテルで希釈し、ここに水(0.76mL)、15%NaOH水溶液(0.76mL)及び水(2.2mL)を加え、生じた白色沈殿を吸引ろ過により除去した。ろ液を濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し(H/EtOAc = 2/1)、生成物をさらに1N HCl/MeOHで処理することで、N−メチルアミノアルコール塩酸塩を得た(2.9g,95%(2段階))。
ナトリウムアジド(1.6g)のトリフルオロ酢酸(30mL)溶液にN−メチルアミノアルコール塩酸塩(1.5g)を0℃でゆっくり加え、その後室温まで徐々に昇温した。4時間攪拌の後、得られた懸濁液を氷に注ぎ、固体のNaOHを用いて中和した。生成物を酢酸エチルを用いて抽出し、有機相をNaSOで乾燥した。これを濃縮して得られる残留物をMeOH(5mL)に溶かし、ギ酸アンモニウム(0.63g)及び亜鉛粉末(0.65g)を加えて室温で1時間攪拌した。得られた懸濁液をろ過して固体を除き、ろ液を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、1NのNaOH水溶液で中和した2Nのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗い、有機層をNaSOで乾燥、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し(H/EtOH=1/2)、薄黄色オイル状のN−メチルジアミンを得た(1.1g,83%(2段階))。
その後、トリエチルアミン(1mL)及びN−メチルジアミン(0.81g)のトルエン(7.5mL)溶液に五塩化リン(0.31g)のトルエン(7.5g)溶液を加え、18時間加熱還流した。室温に冷やし、反応液を濃縮して得られる残渣をクロロホルムに溶解し、これを塩酸で洗った。有機相をNaSOで乾燥の後、再び濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(CHCl/MeOH=10/1)、白色固体のテトラアミノホスホニウム塩を得た((M,S):0.20g,22% (P,S):0.54g,60%)。得られたテトラアミノホスホニウム塩のスペクトルデータは以下の通りである。
(P,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPiv;
〔1〕H−NMR(500MHz,CDOD);δ7.62(4H,d,J=7.5Hz),7.45(4H,t,J=7.5Hz),7.39−7.26(12H,m),4.01(2H,dd,JP−H=20.0Hz,JH−H=6.0Hz),1.90(6H,d,JP−H=10.0Hz),1.91−1.84(2H,m),1.17(18H,s),0.95(6H,d,J=7.0Hz),0.49(6H,d,J=7.0Hz),N−H protons were not found due to deuterium exchange.
〔2〕13C−NMR(175MHz,CDOD);δ185.7,148.9,141.7(d,JP−C=12.8Hz),130.0,129.2,129.0,128.9,128.7,127.9,72.5 (d,JP−C=10.7Hz),71.7 (d,JP−C=10.0Hz),40.3,32.8(d,JP−C=6.1Hz),30.9,28.5,22.7,19.8
〔3〕31P−NMR(121MHz,CDOD);δ39.3
〔4〕IR(KBr):3060,2963,1479,1447,1402,1359,1193,1036,1008,751cm−1
〔5〕HRMS(FAB);Calcd for C3644([M−BuCO )563.3304,Found 563.3293
〔6〕[α]28 ;−195.1 (c=0.48,MeOH)
(M,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OCOH;
〔1〕H−NMR(700MHz,CDOD);δ8.48(2H,s),7.52−7.46(8H,m),7.41(2H,t,J=7.0 Hz),7.27−7.19(10H,m), 4.09(2H,dd,JP−H=21.0Hz,JH−H=7.0Hz),3.11(6H,d,JP−H=9.8Hz),1.89(2H,octet,J=7.0 Hz),1.07(6H,d,J=7.0 Hz),0.55 (6H,d,J=7.0Hz),N−H protons were not found due to deuterium exchange.
〔2〕13C−NMR(175MHz,CDOD);δ169.8,147.4,141.5(d,JP−C=11.4 Hz),129.9,129.0,128.8, 128.7,127.9,73.5(d,JP−C=12.1Hz),71.4(d,JP−C=10.0Hz),35.8 (d,JP−C=6.1Hz),31.8,22.4,19.7,one carbon was not found probably due to overlapping.
〔3〕31P−NMR(121 MHz,CDOD);δ36.6
(M,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OAc;
〔1〕H−NMR(700 MHz,CDOD);δ7.51(4H,t,J=7.0Hz),7.47(4H,t,J=7.0 Hz),7.41(2H,t,J=7.0Hz),7.24−7.22(10H,m),4.09(2H,dd,JP−H=21.0Hz,JH−H=6.3Hz),3.12(6H,d,JP−H=9.8Hz),1.94(6H,s),1.89(2H,octet,JP−H=7.0Hz),1.07(6H,d,JP−H=7.0Hz),0.55(6H,d,J=7.0Hz),N−H protons were not found due to deuterium exchange.
〔2〕13C−NMR(175MHz,CDOD);δ177.6,147.4,141.5(d,JP−C=11.2Hz),129.9,129.0,128.8,128.7,127.9,73.5(d,JP−C=11.4 Hz),71.4 (d,JP−C=10.0Hz),35.8(d,JP−C=6.0Hz),31.8,22.5,22.4,19.7,one carbon was not found probably due to overlapping.
〔3〕31P−NMR(121MHz,CDOD);δ33.6
(M,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPiv;
〔1〕H−NMR(700MHz,CDOD);δ7.50(4H,t,J=7.0Hz),7.47(4H,t,J=7.0Hz),7.41(2H,t,J=7.0Hz),7.27−7.22(10H,m),4.10(2H,dd,JP−H=21.0Hz,JH−H=6.3Hz), 3.11(6H,d,JP−H=9.8Hz),1.89(2H,octet,J=7.0Hz), 1.17(18H,s),1.07(6H,d,J=7.0Hz),0.55(6H,d,J=7.0Hz),N−H protons were not found due to deuterium exchange.
〔2〕13C−NMR(175MHz,CDOD);δ184.3,147.4,141.5(d,JP−C=11.9Hz),129.9,129.0,128.8,128.7,127.9,73.5(d,JP−C=12.1Hz),71.4(d,JP−C=10.0Hz),39.9,35.8(d,JP−C=6.0Hz),31.8,28.1,22.4,19.7, one carbon was not found probably due to overlapping.
〔3〕31P−NMR(121MHz,CDOD);δ33.6
〔4〕IR(KBr):3060,2960,1699,1481,1447,1389,1190,1036,1014,756cm−1
〔5〕HRMS(FAB);Calcd for C3644([M−BuCO )563.3304,Found 563.3306
〔6〕[α]28 ;−192.0°(c=0.50,MeOH)
(3)不斉合成反応−アズラクトンの不斉アルキル化(I)
反応経路を以下に示す。
Figure 0005266485
出発物質として、アミノ基がBocで保護されたジペプチド(2)(L−Ala−DL−Phe)を用いた。ジペプチド(2)(1.01g,3.0mmol)のDCM溶液(6ml)を、DCC(0.68g,3.3mmol)のDCM溶液に0℃で添加し、反応混合物を4時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、次いで不溶性の尿素をろ過して除去すると共に減圧下で全ての揮発物を除去した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=4/1の混合液を用いた。)により精製し、アズラクトン(3a)のジアステレオマー混合物を無色のペーストとして得た(収率;85%)。
アルゴン雰囲気下、アズラクトン(3a)(0.10mmol、1当量)及びテトラアミノホスホニウム塩(1a)(0.001mmol、0.01当量、1mol%)のトルエン溶液(0.6ml)を−15℃に冷却した。該溶液にアリルブロミド(0.12mmol、1.2当量)を加えた後、飽和リン酸カリウム水溶液(0.2ml)を滴下した。アズラクトン(3a)が消費されるまで(2時間)反応混合物を−15℃で激しく攪拌し、氷冷した水中に注いだ。水層を酢酸エチルで3回抽出し、有機抽出物を飽和NaCl水溶液で洗浄した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=5/1の混合液を用いた。)により精製し、無色のペーストであるアルキル化アズラクトン(4a)のジアステレオマー混合物を得た(エントリー1)。
触媒であるテトラアミノホスホニウム塩の種類、溶媒、反応温度及び反応時間を種々変更し、エントリー1と同様の方法で、無色のペーストであるアルキル化アズラクトン(4a)のジアステレオマー混合物を得た(エントリー2〜13)。
アルゴン雰囲気下、アルキル化アズラクトン(4a)及び(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン(6.4μl,0.05mmol)の混合物を120℃で4時間静置した。室温まで冷却後、粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=1/2の混合液を用いた。)により精製し、白色結晶の四置換α−アミノ酸含有ペプチド(5)を得た。
エントリー1〜13のアルキル化アズラクトン(4a)の収率(%)及びジアステレオ比(d.r.)を測定した。その結果を表1に示す。ジアステレオ比の測定方法は上記の通りである(不斉アルキル化により新たに生じた四級炭素の絶対配置は、四置換α−アミノ酸含有ペプチド(5)のX線分析により決定した。)。エントリー9以外のジアステレオ比は、(SR:SS)で表している。
Figure 0005266485
*1;アズラクトン(3a)に代えて、N末端がカルボベンゾイルオキシ基(Cbz)で保護されたL−Ala−Phe由来のアズラクトン(3b)を用いた。また、得られたアルキル化アズラクトン(4b)の絶対配置は、アルキル化アズラクトン(4a)の類似体に割り当てた。
*2;アズラクトン(3a)に代えて、アズラクトン(3a)のエナンチオマーを用いた。また、ジアステレオマー比は(RS:RR)で表している。
*3;テトラアミノホスホニウム塩(1c)に代えて、テトラアミノホスホニウム塩(1c)のエナンチオマーを用いた。
Figure 0005266485
尚、テトラアミノホスホニウム塩(1a)〜(1c)に代えて、テトラ(N−メチルシクロヘキシルアミノ)ホスホニウムテトラフルオロボラン(5mol%)を用い、上記と同様の方法により、アズラクトン(3a)をアルキル化した。しかし、アルキル化アズラクトン(4a)の収率は21%と低く、ジアステレオマー比(SR:SS)は52:48であり、ジアステレオ選択性も低かった。また、この反応では、不斉アルキル化よりも、アズラクトン(3a)のエノラートによる自己アシル化が進んだ(自己アシル化物の収率;70%)。
一方、表1より、テトラアミノホスホニウム塩(1a)〜(1c)を用いたエントリー1〜3は、いずれもジアステレオ選択性(SR)に優れていることが分かる。特に、テトラアミノホスホニウム塩(1a)を用いたエントリー1と比べ、(1b)及び(1c)を用いたエントリー2及び3は、収率に優れると共に、ジアステレオ選択性(SR)が高いことが分かる。
表1より、非水系溶媒の種類を種々変更したエントリー3〜6のいずれも、収率に優れると共に、ジアステレオ選択性(SR)が高いことが分かる。また、エントリー6及び7と比べて、反応温度が低いエントリー8は、更に収率に優れていることが分かる。更に、アズラクトン(3a)に代えて、N末端がカルボベンゾイルオキシ基(Cbz)で保護されたL−Ala−Phe由来のアズラクトン(3b)を用いたエントリー9は、エントリー8と同程度の優れた収率及びジアステレオ比を示した。
表1より、テトラアミノホスホニウム塩(1c)を用いたエントリー8では、SR選択性が高い。一方、テトラアミノホスホニウム塩(1c)のエナンチオマーを用いたエントリー13は、SS選択性が高いことが分かる。この結果より、テトラアミノホスホニウム塩の立体構造により、ジアステレオ選択性を適宜変更できることが分かる。
(4)不斉合成反応−アズラクトンの不斉アルキル化(II)
上記ジペプチド(2)を構成するα−アミノ酸の種類、ハロゲン化アルキルの種類、反応温度及び反応時間を種々変更し、上記(3)と同様の方法で、アルキル化アズラクトン(4)のジアステレオマー混合物を得た(エントリー1〜13)。その合成経路を以下に示す。また、エントリー1〜13の収率(%)及びジアステレオ比を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0005266485
Figure 0005266485
*;ハロゲン化アルキルを5当量使用した。
表2より、N末端アミノ酸(AA1)が異なるエントリー1〜5のいずれも、優れた収率及び立体選択性(SR:SS)を示した。また、C末端アミノ酸(AA2)が異なるエントリー6〜8も同様に、優れた収率及び立体選択性を示した。特に、AA2がトリプトファンであるエントリー6は、反応性のインドール環窒素を保護せずに、優れた収率及び立体選択性を示した。更に、ハロゲン化アルキルの種類を種々変更したエントリー10〜13も同様に、優れた収率及び立体選択性を示した。
(5)不斉合成反応−アズラクトンの不斉アルキル化(III)
反応経路を以下に示す。
Figure 0005266485
トリペプチド(Phe−Phe−Phe)由来のアズラクトン(6)(SS)を上記(3)と同様の方法によりアルキル化して、アルキル化アズラクトン(7)を得た。この反応の収率は94%であり、ジアステレオ比(SSR:SSS)は97:3であった。
次いで、得られたアルキル化アズラクトン(7)(0.143g、0.25mmol)を、L−フェニルアラニンメチルエステル(0.045g、0.25mmol)で120℃、10時間処理した。冷却後、粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=1/1の混合液を用いた。)により精製し、白色結晶のテトラペプチドエステル(8)を得た(収率;>99%)。この段階で、立体中心でのエピマー化は検出されなかった。
得られたテトラペプチドエステル(8)(0.178g、0.23mmol)を1,4−ジオキサン(1ml)/1NNaOH水溶液(0.23ml)中、室温で一晩ケン化した。反応混合物を2NKHSO水溶液でpH2まで酸性化し、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を濃縮し、残渣をDMC(0.5ml)に溶解した。このDMC溶液にDCC(0.057g,0.28mmol)を0℃で加えた。アルゴン雰囲気下、0℃で4時間攪拌し、酢酸エチルを助剤として不溶性の尿素を除去し、ろ液を濃縮した。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル/クロロホルム=1/1/1の混合液を用いた。)により精製し、白色結晶のアズラクトン(9)を得た(収率;95%)。
アルゴン雰囲気下、アズラクトン(9)(1当量、0.10mmol)、テトラアミノホスホニウム塩(1c)又はそのエナンチオマー(1mol%、1.0μmol)、及びプロパルギルブロミド(5当量、0.12mmol)のCPME溶液(0.6ml)を、0℃で飽和リン酸カリウム水溶液を加えた。反応混合物を5.5時間激しく攪拌し、出発物質が消費された後、氷冷した水中に注いだ。水層を酢酸エチルで3回抽出し、有機抽出物を飽和NaCl水溶液で洗浄した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=1/1の混合液を用いた。)により精製し、無色油状のアルキル化アズラクトン(10)を得た。この反応において、触媒としてテトラアミノホスホニウム塩(1c)を用いた時の収率は47%であり、ジアステレオ比(SSRS:SSRR)は63:37であった。一方、触媒として上記テトラアミノホスホニウム塩(1c)のエナンチオマーを用いた時の収率は99%であり、ジアステレオ比(SSRS:SSRR)は7:93であった。
アルキル化アズラクトン(10)(0.115g、0.15mmol)及びベンジルアミン(16μl、0.15mmol)をアルゴン雰囲気下で5時間放置した。その後、粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=3/2の混合液を用いた。)により精製し、無色結晶の四置換α−アミノ酸含有ペプチド(11)を得た(収率:81%)。
(6)不斉合成反応−アズラクトンの不斉アルキル化(IV)
反応経路を以下に示す。
Figure 0005266485
上記(3)のエントリー9と同じ方法で、アズラクトン(3b)からアルキル化アズラクトン(4b)を得た。次いで、アルゴン雰囲気下、アルキル化アズラクトン(4b)(0.471g、1.2mmol)及びL−フェニルアラニル−L−フェニルアラニンのt−ブチルエステル(0.442g、1.2mmol)を120℃、10時間放置した。その後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=3/1の混合液を用いた。)により精製し、白色結晶のテトラペプチドエステル(12)をた(収率;86%)。
テトラペプチドエステル(12)(0.091g、0.12mmol)のDMC溶液(0.6ml)を0℃でトリフルオロ酢酸(0.3ml)に加え、次いで室温で2時間攪拌を続けた。反応混合物を酢酸エチル及び水で希釈し、有機層を分離した。有機層を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてクロロホルム/メタノール=(100〜10)/1の混合液を用いた。)により精製し、対応するカルボン酸を得た。このカルボン酸のDMC溶液(0.5ml)を0℃でWSCD・HCl(0.024g、0.13mmol)に加えた。アルゴン雰囲気下、0℃で攪拌後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。反応混合物をNaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、アズラクトン(13)を得た(収率;>99%)。尚、アズラクトン(13)は十分に純粋であることから、このまま次の反応に用いた。
アルゴン雰囲気下、テトラアミノホスホニウム塩(1c)(1mol%、1.0μmol)、アリルブロミド(5当量、0.5mmol)、飽和リン酸カリウム溶液、及びCPME(0.2ml)を、アズラクトン(13)のCPME溶液(0.4ml)に0℃でゆっくり滴下した。出発物質が消費されたことをTLCで確認後、酢酸エチルを助剤として、反応混合物を氷冷した水中に注いだ。有機抽出物を飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル=2/1の混合液を用いた。)により精製し、無色油状のアルキル化アズラクトン(11)を得た。
(7)不斉合成反応−マンニッヒ反応(I)
反応経路を以下に示す。「PivO」は、ピバル酸イオンを表す。
Figure 0005266485
アルゴン雰囲気下、(P,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPiv(0.055当量、13.75μmol)を、アズラクトン(2)及びスルホニルイミン(3)(10.0当量、2.5mmol)を含むTHF(2.5ml)に室温で溶解させた。次いで、−40℃で反応液を30分間攪拌した。その後、反応液中にベンズアルデヒド(1.0当量、0.25mmol)を徐々に滴下し、8時間攪拌を継続した。反応液にTFAを含むトルエン(0.5M、100μl)を加え、氷冷した水中に注いだ。有機層と水層とを分け、水層を酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層を有機層に加えた。この有機層をNaSOで乾燥し、ろ過した。全ての揮発物を蒸発させて除去して粗残渣を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗残渣を精製し、マンニッヒ付加物を得た。
得られたマンニッヒ付加物のジアステレオ比(アンチ体:シン体)は、粗残渣のH−NMR分析により測定した。また、得られたマンニッヒ付加物(シン体)の鏡像過剰率は、キラルカラム(φ4.6mm×250mm、DAICEL社製「CHIRALCEL OD−H」又は「CHIRALPAK AD−H」)を用いたHPLC分析により求めた。その結果を表3に示す。
Figure 0005266485
*1;単離収率
*2;(P,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPivに代えて、(M,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OCOHを用いた。
*3;(P,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPivに代えて、(M,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OAcを用いた。
*4;(P,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPivに代えて、(M,S)−テトラアミノホスホニウム塩−1・OPivを用いた。
*5;反応は−50℃で行った。
表3より、エントリー1〜11は、いずれも収率に優れると共に、ジアステレオ選択性及びエナンチオ選択性を示した。また、対アニオンとして、ギ酸イオンを用いたエントリ−1より、酢酸イオン及びピバル酸イオンを用いたエントリー2及び3では、収率、ジアステレオ選択性及びエナンチオ選択性に実質的な影響を与えることなく、反応速度が早くなっていた。更に、(M,S)体を用いたエントリー1〜3と比べて、(P,S)体を用いたエントリー4は、ジアステレオ選択性及びエナンチオ選択性、特にエナンチオ選択性に優れていた。
表3より、アズラクトン(2)の「Ar」として、電子供与性のメトキシ基を有するエントリー5〜7は、エントリー4(フェニル基)と比べてエナンチオ選択性に優れていた。また、スルホニルイミン(3)の「Ar」として、芳香環上に2個の置換基(メチル基)を有するエントリー8〜11は、エントリー7よりもエナンチオ選択性に優れていた。特に、芳香環上の2位及び4位又は5位に置換基を有するエントリー9〜11は、エナンチオ選択性に優れると共に、ジアステレオ選択性に優れていた。
(8)不斉合成反応−マンニッヒ反応(II)
反応経路を以下に示す。
Figure 0005266485
アズラクトン(2)及びスルホニルイミン(3)の一価の炭化水素基(R及びR)を種々変化させ、上記(7)と同様の方法により、マンニッヒ反応を行った。得られたマンニッヒ付加体の収率、ジアステレオ比(アンチ体:シン体)及び鏡像過剰率(シン体)を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 0005266485
*1;単離収率
表4より、エントリー1〜8のいずれも、収率に優れると共に、ジアステレオ選択性及びエナンチオ選択性に優れていた。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される光学活性テトラアミノホスホニウム塩。
    Figure 0005266485
    (式中、R〜R及びR9a〜R9dはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、R 〜R のうちの4つ以上が、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、R 〜R のうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、R 〜R のうち少なくとも1つは置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基である。但し、R9a〜R9dの少なくともつはアルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基である。上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。は対アニオンである。)
  2. 下記一般式(1)で表される請求項1記載の光学活性テトラアミノホスホニウム塩。
    Figure 0005266485
    (式中、R 〜R 及びR 9a 〜R 9d はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、R 〜R のうち少なくとも2つは置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、R 〜R のうち少なくとも2つは置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。但し、R 9a 〜R 9d の少なくとも2つはアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。上記置換基はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基の炭素数は6〜15である。X は対アニオンである。)
  3. 下記一般式(1−6)又は下記一般式(1−7)で表される請求項1記載の光学活性テトラアミノホスホニウム塩。
    Figure 0005266485
    (式中、R 、R 、R 及びR はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Arはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又はアリールアルキル基であり、R 9a 及びR 9d はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記置換基を有していてもよいアリール基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基の炭素数は6〜15である。X は対アニオンである。)
    Figure 0005266485
    (式中、R 、R 、R 及びR はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、Arはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又はアリールアルキル基であり、R 9a 〜R 9d はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、R 9a 〜R 9d の少なくとも2つは炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記置換基を有していてもよいアリール基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基の炭素数は6〜15である。X は対アニオンである。)
  4. 請求項1乃至のいずれかに記載の光学活性テトラアミノホスホニウム塩を含む不斉合成反応用触媒であって、
    上記不斉合成反応は、カルボニル基含有化合物のα炭素上に不斉炭素−炭素結合を形成する反応である不斉合成反応用触媒
  5. 上記不斉合成反応は、不斉アルキル化反応である請求項記載の不斉合成反応用触媒。
  6. 上記不斉合成反応は、マンニッヒ反応である請求項記載の不斉合成反応用触媒。
  7. 上記不斉合成反応は、四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成反応である請求項記載の不斉合成反応用触媒。
  8. 請求項1乃至のいずれかに記載の光学活性テトラアミノホスホニウム塩の存在下、カルボニル基含有化合物と炭素−炭素結合形成剤とを反応させ、上記カルボニル基含有化合物のα炭素上に不斉炭素−炭素結合を形成する不斉合成反応。
  9. 上記カルボニル基含有化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、上記炭素−炭素結合形成剤は、下記一般式(3)で表される化合物であり、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物を生成する請求項記載の不斉合成反応。
    Figure 0005266485
    (式中、Rx、Ry及びRzは水素原子又は一価の基であり、上記一価の基は水酸基、アミノ基、アルコキシ基、又は、炭素原子及び水素原子以外の原子を含んでもよく且つ置換基を有していてもよい炭化水素基であり、該炭化水素基は炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜10のアルケニル基、炭素数が6〜15のアリール基及びアリールアルキル基から選ばれ、上記炭素原子及び水素原子以外の原子は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1種であり、上記置換基はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、Rx及びRy、又は、Ry及びRzは環状構造を形成してもよい。R10、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。Lは脱離基である。*は不斉炭素原子である。
  10. 上記不斉合成反応は、マンニッヒ反応である請求項記載の不斉合成反応。
  11. 上記カルボニル基含有化合物は、下記一般式(2)で表される化合物であり、上記炭素−炭素結合形成剤は、下記一般式(5)で表される化合物であり、下記一般式(6)で表される化合物を生成する請求項記載の不斉合成反応。
    Figure 0005266485
    (式中、Rx、Ry及びRzは水素原子又は一価の基であり、該一価の基は水酸基、アミノ基、アルコキシ基、又は、炭素原子及び水素原子以外の原子を含んでもよく且つ置換基を有していてもよい炭化水素基であり、該炭化水素基は炭素数が1〜10のアルキル基、炭化水素基は炭素数が2〜10のアルケニル基、炭素数が6〜15のアリール基及びアリールアルキル基から選ばれ、上記炭素原子及び水素原子以外の原子は、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1種であり、上記置換基はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、Rx及びRy、又は、Ry及びRzは環状構造を形成してもよい。11は水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。R12−SO 基及び−CO−OR基から選ばれる一価の基であり、該Rは、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。*は不斉炭素原子である。)
  12. 水系及び非水系からなる二相溶媒中、請求項1乃至のいずれかに記載の塩の存在下、下記一般式(7)で表されるアズラクトンと下記一般式(8)で表される化合物とを反応させて、下記一般式(9)で表される化合物を得る工程(A)と、
    上記一般式(9)で表される化合物とアミノ基含有化合物とを反応させる工程(B)と、
    を有する下記一般式(10)で表される四置換α−アミノ酸含有ペプチドの不斉合成方法。
    Figure 0005266485
    (上記各式中、A 及びR 14 、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。R13は水素原子、アルキル基、アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリールアルケニル基であり、上記置換基はハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ニトロ基、アルキルシリル基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であり、上記アルキル基の炭素数は1〜10であり、上記アルケニル基の炭素数は2〜10であり、上記置換基を有していてもよいアリール基、上記置換基を有していてもよいアリールアルキル基及び上記置換基を有していてもよいアリールアルケニル基の炭素数は6〜15である。Lは脱離基である。*は不斉炭素原子である。)
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