JP5256929B2 - スピーカ装置およびこれを用いた電子機器および車両 - Google Patents

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本発明は各種音響機器や情報通信機器等に使用されるスピーカ装置や電子機器および車両に関するものであり、より特定的には、小型のスピーカキャビネットで低音再生を実現するスピーカ装置に関するものである。
最近のオーディオの市場動向は、DVDに代表されるデジタルオーディオ機器の普及にともない高品位再生対応が必要不可欠となりつつある。
一方、住宅事情や自動車を取り巻く環境下では、省スペース化、省エネ化が厳しく要求されつつある。
上述の要求を満足させることができるスピーカおよびスピーカ装置として、小型であるにもかかわらず、重低音再生に優れたスピーカおよびスピーカ装置の開発が要求されている。
これらの背景をもとに、従来の技術を図5により説明する。
従来のスピーカ装置は、キャビネット10と、このキャビネット10に取付けられたスピーカユニット11と、キャビネット10の内部に配置された圧力調整体12とからスピーカ装置を構成している。
ここで、このスピーカ装置は、そのキャビネット10が小型であるため、キャビネット10の空室が呈する音響スティフネスの影響で、低音を良好に再生することが困難である。
この小型のスピーカ装置で、低音を良好に再生するために、キャビネット容積で決定される低音再生限界の課題を解決する1つの手段として、キャビネット10の内部に活性炭等に代表される圧力調整体12を配置することで対応している。
次に、スピーカ装置の動作について説明する。
スピーカユニット11に電気信号が印加されるとキャビネット内の圧力が変化し、活性炭等に代表される圧力調整体12が配置された空室の圧力が変化する。この圧力変化に伴う空気分子が圧力調整体12に吸着または放出されて、キャビネット10内部の圧力変動は抑制される。
このように、従来のスピーカ装置は、キャビネットが等価的に大きな容積のキャビネットとして動作して、小型のキャビネットでありながら、あたかも大きなキャビネットにスピーカユニットを搭載したような低音再生が可能となる。
尚、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
また、紙の抄紙時に紙と紙の間に粒状活性炭を抄きこんだ活性炭入り紙は特許文献2が知られている。
特表昭60−500645号公報 特開2002−327394号公報
しかしながら、従来のスピーカ装置はボックスに配置する活性炭の重量に比例して低音再生能力が優れる結果となるものであるが、最近では薄型TVの薄型化が加速的に進んだ結果、活性炭を配置するスペースも小さくなり、それに伴って限られたスペースに配置する活性炭の量も減少する。従って、圧力調整体の効果が減少し、低音再生能力も低下するという課題を有していた。
本発明は前記課題を解決し、省スペースでも有効な圧力調整体を有し、低音再生能力が向上したスピーカボックスを提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明による圧力調整体は活性炭と天然繊維または化学繊維を混合した材料を抄紙した活性炭シートで構成されており、抄紙した活性炭シートは活性炭が85重量%以上であり、天然繊維が10重量%以下かつ化学繊維が5重量%以下としている。すなわち、従来の粒状活性炭をそのままボックス内に袋に入れて配置するのではなく、シート状に薄膜化されている。
従来の圧力調整体は活性炭の位置を固定するために袋に活性炭を入れるため、必ず、活性炭が空気の吸脱着するためには袋と活性炭の間に層がなければならないため、ある程度の厚さを要することになるがシート状に構成することにより活性炭は天然繊維や化学繊維と接触すれば良く活性炭同士の接触が少なくなるため、活性炭が吸着できる空気量が増加する。また、活性炭と袋の間の空気層の必要がなくなるため薄くでき省スペースが可能となる。結果、シート状の圧力調整体では省スペースでも低音再生能力が向上する。また、シートを重ね合わせた場合もシート間が完全密着していないためスペースが生じ、そのスペースの空気を活性炭が吸着することで、さらに低音再生能力が向上する。
以上のように本発明は、シート化した圧力調整体を配置させてスピーカボックスを構成したものである。この構成により、圧力調整体は、従来よりも薄型化が可能となるため省スペースでも低音再生能力を発揮する。また、シート状の圧力調整体を重ね合わせることにより、シート間が完全密着していないためスペースが少し生じ、その生じたスペースの空気を活性炭シートが吸着することで空気吸着量が増し低音再生能力が向上する。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1から請求項11に記載の発明について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の圧力調整体を配置したスピーカボックスを示したもの、図2は、本発明の一実施形態の圧力調整体の模式図を示したものである。
図1および図2に示すように、圧力調整体13は化学繊維13Aをシート化し強度を上げるためにバインダ13Cを使用してさらに繊維の表面に粒状の活性炭13Bを吸着させて構成している。
この構成により活性炭13Bと活性炭13Bを入れる袋の間の空気層の必要がなくなるため圧力調整体13のかさ高さが従来より小さくなるため圧力調整体13をボックス内に配置させるのに必要なスペースも小さくなる。その結果、従来の圧力調整体より小さくなっても低音再生能力を発揮する。
ここで言う活性炭とは炭化後に賦活工程を有しており、微細な細孔を有している活性炭を指す。
また、活性炭シートには活性炭以外に天然繊維と化学繊維を有しており、活性炭が85重量%以上、天然繊維が10重量%以下、化学繊維が5重量%以下であることが望ましい。活性炭が85重量%より少ないと低音再生の能力が活性炭の量に比例するため低音再生能力を向上させる効果が低下する。また、天然繊維が多くなると前記と同じ理由で活性炭の割合が減少して低音再生能力が低下する。化学繊維は紙を硬くするために必要であり、紙が硬くないと活性炭の粉末が脱落し、シート化できない。また、化学繊維を含んで硬くした方がシート内に含有する活性炭の重量を多くすることが可能である。そのため、化学繊維を含んだ活性炭シートの方が低音再生能力が高くなる。
また、天然繊維の代わりに、バインダを使用しても良い。バインダは天然繊維よりも少量で活性炭の脱落を防ぐ効果があり、活性炭の含有率が増大する。その結果、さらに低音再生能力が向上する。このときのシートの組成は活性炭が90重量%以上、化学繊維が5重量%以下、バインダーが5重量%以下が望ましい。活性炭が90重量%より少なくなると同じ性能を実現するためにはシートの厚さを厚くしなければならず、スペース効果が低下する。また、バインダが5重量%より多くなると活性炭の細孔内にバインダーが吸着されるために空気吸着能力が低下し、低音再生能力も低下する。また、化学繊維も5重量%より多くなると活性炭の効果が低下するためにシート化するのに必要最小限である5重量%以下が望ましい。
圧力調整体13である活性炭シートの活性炭13Bの粒径は10μm以上かつ100μm以下が望ましい。活性炭の粒径が100μmより大きくなると活性炭がかさ高くなるために同じ表面積に占める活性炭重量が減少することとなり低音再生能力が低下する。また活性炭の粒径が10μmより小さくなると紙を抄く時のメッシュから活性炭が流出し、収率が悪くなる。また活性炭の流出を防ぐためにメッシュを小さくすると脱水に時間がかかり生産性が低下する。そのため抄紙の生産性が高くて低音再生能力を大きくするためには活性炭の粒径は10μm以上かつ100μm以下が望ましい。
また、同重量の活性炭シートを使用する場合でも複数枚重ねて使用することが望ましい。活性炭シート同士の接触部分の空気も有効に活用できるために活性炭が吸着する空気量が増大する。そのため、粒状の活性炭を配置するよりもシート化して重ねた方が低音再生能力は向上する。
また、活性炭シートに含まれる天然繊維は木材パルプを使用することで安価で抄紙の生産性が高くなる。また、環境負荷を低減するために、天然繊維には非木材パルプを使用しても良い。特に非木材パルプに竹パルプを使用すると竹パルプ自体が木材パルプより硬いために得られる活性炭シートも硬くなりボックス内に配置する際に形が崩れたりするのを低減することができる。
また、活性炭シートは天然繊維で被覆されたサンドイッチ構造としても良い。天然繊維で被覆することで活性炭が脱落してボックス内部で導電性である活性炭の粉体が浮遊し、電子機器がショートすることを回避することができる。その上、天然繊維は空気を透過させるので被覆してもある程度、空気吸着能力を保持できるために低音再生能力の著しい低下は見受けられない。
また、キャビネットは密閉した状態であることが望ましい。開放系の場合には使用環境化や季節により湿度の影響で水蒸気が活性炭の細孔に吸着されるために空気の吸着能力が低下し、低音再生能力も低下する。従って、密閉にすることにより湿気の浸入を防ぐ構造にする方が好ましい。
以下に本発明の実施例を記載するが、この実施例が本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(実施例1)
ヤシ殻を炭化、賦活させた粒状活性炭の含有量90重量%、化学繊維としてPET繊維の含有量5重量%、バインダーにアクリル樹脂の含有量5重量%の混合物を抄紙したシート(45mm×105mm、t=0.6mm)の圧力調整体を得た。
(実施例2)
ヤシ殻を炭化、賦活させた粒状活性炭の含有量90重量%、天然繊維として木材パルプの含有量8重量%、化学繊維としてPET繊維の含有量2重量%の混合物を抄紙したシート(45mm×105mm、t=0.6mm)の圧力調整体を得た。
(比較例1)
ヤシ殻を炭化、賦活させた粒状活性炭を45mm×105mmの天然繊維の袋に入れて圧力調整体(45mm×105mm、t=1.8mm)を得た。
<特性評価>
上記圧力調整体をスピーカボックスに配置し、周波数特性(F0)を測定した。これらの測定結果を下表に示す。
Figure 0005256929
当該表から、実施例の圧力調整体を搭載したスピーカボックスは比較例1の圧力調整体に比べて、省スペースでの低音再生が向上していることが明らかである。このことから、実施例の圧力調整体は製品の薄型化に対しても低音再生能力の優れたスピーカ用ボックスを提供でき、小型化が可能となる。
以上のように本発明は、抄紙した活性炭シートの圧力調整体を有するスピーカボックスを構成することにより、従来ではボックスが小型になるほど低音再生が困難(f0上昇)であることを改善でき、さらに圧力調整体を薄型にすることができたため、より省スペースでの低音再生を可能としたものである。
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項12に記載の発明について説明する。
図3は、本発明の一実施形態の電子機器の外観図である。
当実施の形態は、それぞれ、請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のスピーカを搭載して電子機器であるオーディオ用のミニコンポシステムを構成したものである。
図3に示すように、本発明のスピーカ40をエンクロジャー41に組込んで、スピーカシステムを構成し、このスピーカに入力する電気信号の増幅手段であるアンプ42と、このアンプに入力されるソースを出力するプレーヤ43とを備えて、電子機器であるオーディオ用のミニコンポシステム44を構成したものである。
この構成とすることにより、電子機器の耐久性、信頼性の向上を実現することができるとともに、小型、コンパクトなスピーカであっても、デジタル対応化、高耐入力化、重低音再生化を実現することができる。
尚、当実施の形態は、電子機器としてオーディオ用のミニコンポシステムに搭載した例について説明したが、これに限定されることなく、テレビ等の映像機器や、移動体通信機器であっても良い。すなわち、スピーカを搭載する電子機器であれば、全てに適用可能である。
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項13に記載の発明について説明する。
図4は、本発明の一実施形態の装置を示す自動車の断面図である。
当実施の形態は、それぞれ、請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のスピーカを搭載して装置である自動車を構成したものである。
すなわち、スピーカ40を自動車50のリアトレイに搭載して構成したものである。
本発明の圧力調整体を使用すると自動車を走らせた際にも粉の振動音が発生しないという特長を有する。
よって、装置である自動車の軽量化を図ることができるとともに、小型、コンパクトなスピーカであっても、デジタル対応化、高耐入力化、重低音再生化を実現することができる。
尚、当実施の形態は、装置として自動車に搭載した例について説明したが、これに限定されることなく、列車や船舶等の移動装置さらには住宅等の構造物であっても良い。すなわち、スピーカを搭載する装置であれば、全てに適用可能である。
本発明にかかるスピーカ、電子機器および装置は、小型、コンパクト化、デジタル対応化、高耐入力化、重低音再生化が必要な映像音響機器や情報通信機器、ゲーム機器等の電子機器、さらには自動車等の装置に適用できる。
本発明の一実施の形態における圧力調整体を配置したスピーカボックスを示す図 本発明の一実施の形態における圧力調整体の模式図 本発明の一実施の形態における電子機器の外観図 本発明の一実施の形態における車両の断面図 従来の圧力調整体を配置したスピーカボックスを示す図
符号の説明
10 キャビネット
11 スピーカ
12 圧力調整体(従来品)
13 圧力調整体(本発明品)
13A 化学繊維
13B 活性炭
13C バインダ
42 アンプ
44 ミニコンポシステム
50 自動車

Claims (7)

  1. キャビネットと、このキャビネットに取付けられたスピーカユニットと、前記キャビネットの内部に配置された圧力調整体とからなるスピーカ装置であって、前記圧力調整体は、活性炭と天然繊維または化学繊維を混合した材料を抄紙した活性炭シートからなり、前記抄紙した活性炭シートは活性炭が85重量%以上であり、天然繊維が10重量%以下かつ化学繊維が5重量%以下としたスピーカ装置。
  2. 活性炭の粒径は10μm以上かつ100μm以下とした請求項1記載のスピーカ装置。
  3. 活性炭シートを少なくとも2枚以上重ねて配置した請求項1記載のスピーカ装置。
  4. 活性炭シートに含まれる天然繊維は竹パルプとした請求項記載のスピーカ装置。
  5. 活性炭シートの表面と裏面を天然繊維で被覆した請求項1記載のスピーカ装置。
  6. 請求項1記載のスピーカ装置を機器のエンクロージャに組込んだ電子機器。
  7. 請求項1記載のスピーカ装置を搭載した車両。
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