JP5246468B2 - バリまたは欠損認識方法と装置およびバリ取り方法と装置 - Google Patents
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Description
また、本発明の目的は、特許文献1、2とは異なる手段を用いることで、高精度にバリ取りを自動で行えるバリ取り方法と装置を提供することにある。
ワークに対する複数の計測位置からワークを計測することで計測データを取得し、この計測データをコンピュータに入力するデータ入力ステップと、
前記計測データに基づいて、ワークの存在する空間領域を、境界表面が互いに直交する直方体からなる複数のボクセルに分割し、各ボクセル位置を記憶する環境モデルを構築する環境モデル構築ステップと、
前記計測データはワーク表面における複数の被計測点の座標値を含むとして、これら各座標値に対応するボクセルの内部に代表点とその誤差分布を設定し記憶するマッチングステップと、
ワークの3D−CADモデルを読込んでワークの形状モデルを得るワークモデル取得ステップと、
前記ボクセル位置、代表点および誤差分布の少なくともいずれかにより表現される照合用3次元形状と、前記ワークの形状モデルとを照合して両者の形状差異を評価する照合ステップと、を有し、
前記照合ステップにおいて、前記3次元形状をワークの形状モデルと照合した結果、前記ワークの形状モデル上の部分と対応する環境モデル内の部分が、所定の面積よりも大きい広がりを持つ誤差分布を有していると判断した場合、該部分と対応するワーク部分を計測できるように、新たな計測位置を設定し該計測位置からワークを再び計測して、被計測点の座標値を再びコンピュータに入力する、ことを特徴とするバリまたは欠損認識方法が提供される。
また、ワークの存在する空間領域を、複数のボクセルに分割し、各ボクセル位置を記憶するので、ワークが大きい場合であっても、照合用3次元形状の情報量をボクセル数に比例する小さいデータサイズに抑えることができる。
また、3次元座標値に対応するボクセルの内部に代表点とその誤差分布を設定し記憶するので、統計的により精度良く照合用3次元形状を得ることができ、ボクセルの分解能以上の情報を表現できる。
このように、小さいデータサイズでかつ高い分解能で表現される照合用3次元形状を、ワークの3D−CADモデルを読み込んで得たワークの形状モデルと照合し、これにより、両者の形状差異を評価するので、小さいデータサイズで高精度にバリまたは欠損を自動的に認識することが可能になる。
しかも、照合は、ワークの目標形状であるワークの形状モデルと行うので、極めて高精度にバリまたは欠損を認識することが可能になる。
前記計測位置を原点として、該原点と被計測点の間にワークが存在しないものとして、その間に位置するボクセル内の代表点と誤差分布を再設定もしくは消去する。
該ボクセル内に代表点がない場合に、当該座標値とその誤差分布を代表点の座標値と誤差分布として設定する。
当該ボクセル内に既に設定した代表点がある場合に、新たに取得した誤差分布と既に設定したボクセル内の誤差分布とを比較し、
誤差分布が互いに重複する場合に、両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな代表点を再設定し、
誤差分布が互いに重複しない場合に、単一のボクセル内に単一の代表点のみが存在するように、該ボクセルを更に分割して階層的に複数のボクセルに分割する。
該他のボクセル内に代表点がない場合に、該新たな誤差分布と該新たな代表点を該他のボクセルの内部に設定し、
該他のボクセル内に既に設定した代表点がある場合に、該新たな誤差分布と既に設定した該他のボクセル内の誤差分布とを比較し、(A)誤差分布が互いに重複する場合に、両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな代表点を再設定し、(B)誤差分布が互いに重複しない場合に、単一のボクセル内に単一の代表点のみが存在するように、該ボクセルを更に分割して階層的に複数のボクセルに分割する。
該モデル更新ステップにおいて、新たに入力された被計測点の座標値およびその誤差分布と、既に設定したボクセル内の代表点およびその誤差分布とから、カルマンフィルタにより新たな代表点と誤差分布を取得して再設定する。
特に、カルマンフィルタを用いたモデル更新ステップを繰り返すことで、誤差を含むデータであってもカルマンフィルタの効果により真値に収束した高精度な形状が得られる。
該出力ステップで、前記ボクセルの内部の誤差分布の大きさが所定の基準値よりも大きい場合に、当該ボクセル内の代表点の信頼性または精度が所定の基準よりも低いとして、該ボクセル内の代表点と誤差分布を出力しない。
前記新たな計測位置を設定した場合に、ターンテーブルを回転することで、前記ワークに対する計測位置を新たにし、該計測位置からワークを再び計測する。
しかも、ワークの目標形状であるワークの形状モデルと照合を行って得た形状差異の位置の情報に基づいてバリ取りを行うので、極めて高精度なバリ取りが可能になる。
該計測データを反映した照合用3次元形状と前記ワークの形状モデルとを照合して、両者の形状差異を再び評価する。
ワークに対する複数の計測位置からワークを計測することで計測データを取得し、この計測データをコンピュータに入力するデータ入力装置と、
前記計測データに基づいて、ワークの存在する空間領域を、境界表面が互いに直交する直方体からなる複数のボクセルに分割し、各ボクセル位置を記憶する環境モデルを構築する環境モデル構築装置と、
前記計測データはワーク表面における複数の被計測点の座標値を含むとして、これら各座標値に対応するボクセルの内部に代表点とその誤差分布を設定し記憶するマッチング装置と、
ワークの3D−CADモデルを読込んでワークの形状モデルを得るワークモデル取得装置と、
前記ボクセル位置、代表点および誤差分布の少なくともいずれかにより表現される照合用3次元形状と、前記ワークの形状モデルとを照合して両者の形状差異を評価する照合装置と、を備えることを特徴とするバリまたは欠損認識装置が提供される。
また、ワークの存在する空間領域を、複数のボクセルに分割し、各ボクセル位置を記憶するので、ワークが大きい場合であっても、照合用3次元形状の情報量をボクセル数に比例する小さいデータサイズに抑えることができる。
また、3次元座標値に対応するボクセルの内部に代表点とその誤差分布を設定し記憶するので、統計的により精度良く照合用3次元形状を得ることができ、ボクセルの分解能以上の情報を表現できる。
このように、小さいデータサイズでかつ高い分解能で表現される照合用3次元形状を、ワークの3D−CADモデルを読み込んで得たワークの形状モデルと照合し、これにより、両者の形状差異を評価するので、小さいデータサイズで高精度にバリまたは欠損を自動的に認識することが可能になる。
しかも、照合は、ワークの目標形状であるワークの形状モデルと行うので、極めて高精度にバリまたは欠損を認識することが可能になる。
しかも、ワークの目標形状であるワークの形状モデルと照合を行って得た形状差異の位置の情報に基づいてバリ取りを行うので、極めて高精度なバリ取りが可能になる。
前記バリ除去装置の可動部には、前記計測器が設けられている、ことを特徴とする。
図1に示すように、3次元レーザレーダ10は、レーダヘッド12と制御器20から構成される。レーザダイオード13から発振されたパルスレーザ光1は、投光レンズ14で平行光2に整形され、ミラー18a,18bと回転・揺動するポリゴンミラー15で二次元方向に走査され、測定対象物(本願では、ワーク)に照射される。測定対象物から反射されたパルスレーザ光3は、ポリゴンミラー15を介して受光レンズ16で集光され、光検出器17で電気信号に変換される。
rは計測位置(レーダヘッド12の位置)を原点とする距離であり、r=c×t/2 の式で求められる。ここでcは光速である。
このような極座標データ(r,θ,φ)は、ワークの表面上における被計測点の座標である。ポリゴンミラー15の回転角度θ、揺動角度φを変化させることで、1つの計測位置から複数の被計測点の座標を得ることができる。即ち、距離計測センサの位置(具体的には、レーダヘッド12の位置)毎に、ワーク表面上における複数の被計測点の座標を得ることができる。
判定処理ユニット23は、信号処理ボード22からの極座標データを、レーダヘッド設置位置を原点とした3次元空間データ(x,y,z)へ変換して、検出処理を行うようになっている。なおこの図で24はドライブユニットである。
図2(A)に示すように、任意の計測位置を原点とする極座標値(r,θ,φ)を計測結果として計測する。距離計測センサによる計測結果には、図2に示すような誤差分布が通常存在する。
この誤差分布は、誤差分布のrs,θs,φsでの存在確率をP(rs,θs,φs)とした場合、誤差分布は計測の軸r,θ,φ方向に正規分布しているとし、例えば次式(1)で表すことができる。ここで、r,θ,φはセンサからの計測値、σr,σθ,σφは は標準偏差、Aは規格化定数である。
図2(B)に示すように、誤差分布は、通常r方向に長い切頭円錐形(左図)に内包される分布であるが、遠方においてaとbの差は小さい。従って、この誤差分布を直方体に包含される楕円体として安全サイドに近似することができる。
ワークモデル取得装置32は、ワークの3D−CADモデルを読込んで、上述の記憶装置に入力する。
外部記憶装置33は、ハードディスク、フロッピ(登録商標)ーディスク、磁気テープ、コンパクトディスク等である。外部記憶装置33は、後述の環境モデルのサイズが大きく後述する内部記憶装置34に入力されたワーク上の座標値、後述のボクセル位置、後述の代表点とその誤差分布の全体を保持できない場合には、環境モデルの一部範囲または全体範囲に対する、入力されたワーク上の座標値、ボクセル位置、及び代表点とその誤差分布の一部または全体を記憶し、かつ本発明の方法を実行するためのプログラムを記憶する。また、外部記憶装置33は、ワークの3D−CADモデルの一部または全体を記憶する。
内部記憶装置34は、例えばRAM,ROM等であり、後述の環境モデルの一部範囲または全体範囲に対する、入力されたワーク上の座標値、ボクセル位置、及び代表点とその誤差分布の一部または全体を保管し、かつ演算情報を保管する。また、内部記憶装置34は、ワークの3D−CADモデルの一部または全体を記憶する。
中央処理装置35(CPU)は、環境モデル構築装置、マッチング装置、照合装置、モデル更新装置、データ伝達装置、ワークモデル構築装置として機能し、演算や入出力等を集中的に処理し、内部記憶装置34と共に、プログラムを実行する。環境モデル構築装置は、後述の環境モデル構築ステップを行う装置であり、マッチング装置は、後述のマッチングステップを行う装置であり、モデル更新装置は、後述のモデル更新ステップを行う装置であり、データ伝達装置は、出力装置36へデータを出力する装置である。照合装置は、後述の照合ステップを行う装置である。照合装置は、ワークモデル構築装置と形状差異評価装置を含んでおり、ワークモデル構築装置は、後述のワークモデル構築ステップを行う装置であり、形状差異評価装置は、後述の形状差異評価ステップを行う装置である。
出力装置36は、例えば表示装置、プリンタ、外部装置等であり、内部記憶装置34および外部記憶装置33の少なくともいずれかに記憶したデータ及びプログラムの実行結果を出力するようになっている。外部装置とのインターフェイスは、LAN、USB、IEEE1394等であり、入力されたワーク上における被計測点の座標値に対して該当するボクセル内の代表点、誤差分布、ボクセル位置などを付加したデータや、環境モデル全体または環境モデル一部を要求に応じて出力する。
なお、ステップS1〜S6の処理のうち、S1、S2、S4〜S6は、計測データが得られる毎に実施し、S3は初めて計測データが得られたときにだけ実施することができる。なお、計測データは、ステップS7で、計測が十分であると判断されるまで、繰り返し取得される。中央演算装置35が、設定された個数または密度の被計測点が得られたかを基準に、計測が十分かを判断してよい。計測が十分でないと判断された場合には、ステップ8へ進み、中央演算装置35により自動的に計測位置が設定され、ステップS1にて、計測器制御装置(図示せず)が、設定された計測位置からワークを計測できるように、計測器を含むデータ入力装置31を制御して、計測データを取得する。
なお、このデータ入力ステップS1において、ワークをターンテーブルに設置して、このターンテーブルを回転させて、3次元レーザレーダ10を用いて、ワークに対して異なる方向から被計測点の座標値を順次取得してよい。または、3次元レーザレーダ10の位置(レーダヘッド12の位置)を移動することで計測位置(原点)を移動させながら、各計測位置から被計測点の座標値を順次取得してもよい。
計測データの補正処理では、孤立点の除去、統計的処理、等を行う。孤立点は、周囲の点から孤立して存在する点であり、計測データは複数の近接する点で構成されることから、孤立点は誤計測と仮定して除去することができる。統計的処理は、計測データが含む誤差分布を考慮して、複数回の計測を統計処理(例えば平均値等)することで、距離の補正を行う。
さらに、対象とするワークが、直線近似又は平面近似できる場合にはこれらを行うのがよい。
モデル構築ステップS3では、この図に示すように、3次元形状を有するワークが存在する空間領域を、境界表面が互いに直交する直方体からなる複数のボクセル6に分割し、各ボクセル位置を記憶する環境モデルを構築する。
ボクセル6の形状は、各辺の長さが等しい立方体でも、各辺の長さが異なる直方体でもよい。
また、ボクセル6の各辺の長さは、最大のボクセル6を必要最小限の分解能に相当する大きさに設定するのがよい。以下、最大のボクセル6をレベル1のボクセルと呼ぶ。
また、単一のボクセル内に複数の被計測点が存在する場合には、単一のボクセル内に単一の被計測点のみが存在するように、ボクセルを更に八分割して階層的に複数のボクセルに分割する。以下、最大のボクセル6の八分割を1回実施した空間領域をレベル2のボクセル、k回実施した空間領域をレベルk+1のボクセルと呼ぶ。
マッチングステップS4では、この図に示すように、被計測点に対応する点をボクセル内の代表点として、ワーク上における被計測点の座標値に対応するボクセル6の内部に代表点7とその誤差分布8を設定し記憶する。末端のボクセルは被計測値に対応する代表点を1つだけ持つことができる。各ボクセルが計測値の代表点とその誤差分布を持つことで、ワークの形状を表す。
この図において、図7(A)は、各ボクセルデータのメモリレイアウト例である。この図において、矢印はデータへのリンクを表し、値としてはデータへのポインタを保持する。
図7(B)は、レベル2(1,1,0)のボクセルが代表点を持つ場合の例を示している。なおこの図において、nullは空集合を表す。
(1)内容:空間を小直方体で分割して各ボクセルに被計測点に対応する代表点と誤差分布を保持する。
(2)精度:ボクセル毎に持つ被計測点の代表値相当である。
(3)存在:ワークの存在の有無を表現できる。
(4)データ量:ボクセルの個数に比例してメモリを必要とするが、サイズ固定である。
(5)点群からの変換:適しており、計算量は少ない。
(6)アクセス速度:シンプルな構造をしているため、要素へのアクセスが高速である。
効果A:誤差を考慮した表現が可能である。
効果B:必要なメモリ量と計算量が一定量以下である。
効果C:ワークの存在だけでなく、ワークが存在しないことを表せる。
また、このステップST3において、新しい計測位置(原点)と被計測点の間には、原理的にワークが存在しないはずである。従って新しい計測位置(原点)と被計測点の間に位置するボクセル内の代表点と誤差分布を再設定もしくは消去する。
図8のステップST2で該当するボクセル内に既に設定した代表点がある場合には、ステップST4で新たに取得した誤差分布と既に設定したボクセル内の誤差分布とを比較する(すなわち異なる点か同一点かを判断する)。
この比較で、誤差分布が互いに重複する場合(図9(A))には、ステップST5で両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな誤差分布の中心(即ち、代表点)を再設定する(すなわち誤差分布を合成する)。
またこの比較で、誤差分布が互いに重複しない場合(図9(B))には、ステップST6、ST7で単一のボクセル内に単一の代表点のみが存在するように、該ボクセルを更に八分割して階層的に複数のボクセルに分割し新規に登録する。
分割と合成の基準は、例えば誤差分布の一致度から判断する。誤差分布の一致度には例えば、マハラノビス距離のような距離尺度や、尤度のような確率値の尺度を利用できる。また、2つの誤差分布に基づき、両者が同一点を表しているかを統計的検定によって判定してもよい。
なお、図10は、ステップST5で両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな誤差分布の中心を再設定した結果、新たな代表点が他のボクセル内へ移動する場合を示している。
また、出力ステップS6では、ボクセル位置、及び代表点とその誤差分布をバリまたは欠損認識装置30の上述の記憶装置に出力する。なお、出力ステップS6で、ボクセル位置、及び代表点とその誤差分布を、別の装置(例えば制御装置、コンピュータ)に転送してもよく、プリンタで出力してもよい。即ち、出力先は、当該別の装置(例えば制御装置、コンピュータ)であってもよい。
また、出力ステップS6において、ボクセルの代表点の位置をワークの計測値として出力するとともに、該計測値の信頼性または精度を示す指標(例えば、数値)を、該ボクセルの内部の誤差分布の大きさに基づいて、出力してもよい。さらに、出力ステップS6において、ボクセルの代表点の位置をワークの計測値として出力するときに、該ボクセルの内部の誤差分布の大きさ(広がり)が所定の基準値(面積)よりも大きい場合に、該計測値の信頼性または精度が所定の基準よりも低いとして、該ボクセルの前記計測値(即ち、このボクセルの代表点の位置)を出力しないようにしてもよい。
処理を繰り返し行い、内部記憶装置34に結果を格納する。処理を高速化するためには、内部記憶装置34に容量が許す限り結果を格納することが好ましい。
また、座標値に対応するボクセル6の内部に代表点7とその誤差分布8を設定し記憶するので、ボクセルの分解能以上の情報を表現することができる。
図12は、複数の計測位置を原点とする計測データを統合することによって、代表点の誤差分布が縮小し、代表点の精度が向上する様子を示している。このように異なる計測位置(即ち、距離計測センサである3次元計測器の位置)を原点として得られた計測データは誤差分布の向きも異なるので、これらの計測データを環境モデルを介して逐次統合することによって、代表点の誤差分布が縮小し、代表点の位置精度が向上する。なお、図12において、3次元計測後の図はコップの2次元断面を表わした模式図であり、3次元計測後の図の破線はコップの実際表面を表わしている。
誤差分布が互いに重複する場合に、両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな代表点を再設定し、
誤差分布が互いに重複しない場合に、単一のボクセル内に単一の代表点のみが存在するように、該ボクセルを更に八分割して階層的に複数のボクセルに分割する、ことにより、誤差の蓄積を回避しながら高精度な形状に収束させることができる。
また、模式図を図14に示すように、2つ以上の誤差分布が交差するような場合は、例えば、それぞれの誤差分布に対する確率値を用いたベイズ推定等により確率値の合成を行う。
L(j)は、距離計測センサによる被計測点の位置である。例えば、L(j)は、距離計測センサのセンサ座標系において3次元LRF(レーザレンジファインダ)の被計測点j(j=1,...,N)の位置L(j)=(xL(j),yL(j),zL(j))tである。ここで、tは転置行列を示す(以下、同様)。
hm(Rr,tr,m(i))は、L(j)に対する観測系モデルである。
Rrは、距離計測センサを搭載した移動体(例えば、移動ロボット)のワールド座標系に対する姿勢を表す回転行列Rr=R(θx,θy,θz)である。なお、θx,θy,θzは、それぞれx軸、y軸、z軸周りの回転角を示す(以下、同様)。
trは、距離計測センサを搭載した移動体(例えば、移動ロボット)のワールド座標系に対する位置を表す並進ベクトルtr=(x,y,z)である。
vL(i)は、距離計測センサの計測値L(j)に加わる観測ノイズである。
Rsは、センサ座標系の移動体座標系に対する回転行列Rs=R(θx,θy,θz)である。
tsは、センサ座標系の移動体座標系に対する位置を表す併進ベクトルts=(x,y,z)である。
添え字kは、離散時刻kでの値であることを表す。
mk(i)について、m’k(i)はmk(i)の更新値(事後推定値)を示し、mk,k−1(i)はm’k−1(i)に基づいたmk(i)の予測値(事前推定値)を示す。なお、環境(測定対象物)は静止しているので、mk,k-1(i)=m’k-1(i)である。
Σmk(i)は、ボクセル内部の代表点mk(i)の誤差共分散行列(即ち、上述の誤差分布)である。また、Σmk(i)について、 Σ’mk(i)はΣmk(i)の更新値(事後推定値)を示し、Σmk,k−1(i)はΣ’mk−1(i)に基づいたΣmk(i)の予測値(事前推定値)を示す。センサ座標系において3次元LRFの被計測点j(j=1,…,N)の位置をL(j)で表し、その誤差共分散行列をΣL(j)で表す。ここでNは、3次元LRFで得られた被計測点の総数である。3次元LRFの誤差モデルとして計測距離に関係ない一定の正規分布を仮定する。センサ座標系のx軸方向にレーザを照射する場合の誤差共分散行列をΣSとする。レーザの照射方向に応じて誤差分布も姿勢を変える。ΣL(j)は、基準の方向に対するレーザ照射方向を回転行列RL(j)を用いてΣL(j)=RL(j)ΣSRL t(j)と表される。被計測点jのワールド座標系における位置z(j)、およびその誤差共分散行列Σz(j)は、それぞれz(j)=Rr(RsL(j)+ts)+tr、Σz(j)=RrRsΣL(j)Rs tRr tと表すことができる。
Kmk(i) は、 mk(i)に対するカルマンゲインである。
hmk(Rrk,trk,mk,k−1(i))は、Lk(j)、i=pk(j)に対する観測系モデルである。i=pk(j)は、被計測点jに対応付けられた環境地図(即ち、環境モデル)上の点である。
Hmkは、Lk(j)、i=pk(j)に対する観測系モデルのヤコビアン行列であり、次式(5)で表わされる。
(1)これら更新値m’k(i)、Σ’mk(i)を、新たな代表点、誤差分布として再設定する。
(2)上述(1)の結果、代表点の位置が別のボクセル内に移動した場合、移動先のボクセルが代表点を保持していないときは、移動後の代表点とその誤差共分散行列を移動先のボクセルに保持させ、移動元のボクセルからは代表点等を取り除く。移動先のボクセルが既に代表点を保持しているときには、2つの代表点において、これらの両誤差分布が重複するかを判断する(上述のST4における判断と同様)。その後の処理は、図8のST4以降の処理と同じであってよい。
(3)モデル点群上の代表点m(i)と対応付けが行われなかった距離計測センサによる被計測点について、当該被計測点が含まれるボクセルが代表点を持たない場合は、被計測点とその誤差分布をそのボクセルの代表点と誤差分布として追加し保持する。もし、ボクセル内に既に代表点が存在する場合には、ボクセル内にある対応付けが行われなかった他の複数の被計測点を含め、既存の代表点と各被計測点とが全て異なるボクセルに含まれるように、ボクセルを分割した上で分割後のボクセルに代表点等を継承させる。
図15は、カルマンフィルタを用いたモデル更新ステップにより得られた結果を示す。図16は図15の一部拡大図である。これら図において、初期のボクセルの1辺の長さを100cmとし、再分割数を6分割まで許している。対象が存在している領域では、ボクセルの再分割を繰り返した結果、計測対象を精度良く表現している。対象が存在しない領域ではボクセルの再分割は行われず、必要十分なデータ量で環境を表現できることがわかる。また、各ボクセル内の代表点の誤差分布も小さく、環境地図を高精度で表現できている。このように、誤差を含むデータであってもカルマンフィルタの効果により、真値に収束した結果が得られる。さらに、この方法では計測データ数を増加させることによって標準偏差が小さくなり、精度のさらなる向上が期待できる。
対象とする被計測点jの誤差共分散行列ΣL(j)の範囲(例えば標準偏差の3倍の範囲)と交わる最上位のボクセルとそのボクセルに隣接している最上位のボクセルを求め、下層のボクセルも含めこれらのボクセル内に存在する代表点を対応点の候補とする。ボクセルが階層構造となっているため、この候補点の探索には計算コストはほとんどかからない。このとき、候補となる代表点がない場合には、対応点がないものとみなす。隣接するボクセルも候補に加える理由は、ボクセル内の代表点の位置によっては、誤差共分散行列の範囲が隣接するボクセルまではみ出すことがあるからである。
図17、図18は、形状マッチングステップS101の一例を示す説明図である。図17のように、形状マッチングステップS101では、各代表点とその誤差分布をステップS9で得たワークの形状モデルによるワーク表面に一致させることで、照合用3次元形状とワークの形状モデルとを重ね合わせる。また、この重ね合わせは、図18に示すような方式で行ってよい。図18では、各代表点m(i)とワークの形状モデル上の点w(j)とを対応させる。図18において、m(i)およびw(i)はワーク表面上の点に対応し、Sm(i)は代表点m(i)の誤差分布である。w(j)は、例えば、m(i)からワークの形状モデル上へ垂直に下ろした点としてもよいし、三角形パッチによる各三角形の重心であってもよい。図18のように各m(i)と各w(j)を対応させて図18に示すマハラノビス距離などを用いて、ワークの表面形状モデルと照合用3次元形状との一致度を定義する。例えば、この一致度は、次式(6)により定義してよい。
Eの値が最小値になったときのパラメータt、Rの値を用いて、ワークの表面形状モデルと照合用3次元形状とを重ね合わせて両者を照合する。
しかも、照合は、ワークの目標形状であるワークの形状モデルと行うので、極めて高精度にバリまたは欠損を認識することが可能になる。
また、ワークを計測するためのワーク設置位置は、任意であってよい。従って、ワークを特定位置(例えば、ジグによる固定位置)に設置せずに任意の位置に設置して、バリまたは欠損認識を行うこともできる。
しかも、ワークの目標形状であるワークの形状モデルと照合を行って得た形状差異の位置の情報に基づいてバリ取りを行うので、極めて高精度なバリ取りが可能になる。
5 ストップパルス、6 ボクセル、7 代表点、
8 誤差分布、10 3次元レーザレーダ、12 レーダヘッド、
13 レーザダイオード、14 投光レンズ、15 ポリゴンミラー、
16 受光レンズ、17 光検出器、18a,18b ミラー、
20 制御器、21 時間間隔カウンタ、22 信号処理ボード、
30 バリまたは欠損認識装置、31 データ入力装置、32 ワークモデル取得装置、
33 外部記憶装置、34 内部記憶装置、35 中央処理装置、
36 出力装置、40 バリ取り装置、41 バリ除去装置、
43 制御装置
Claims (16)
- ワークの計測データから得たワークの照合用3次元形状と、ワークの3D−CADモデルとに基づいてワークのバリまたは欠損を認識するバリまたは欠損認識方法であって、
ワークに対する複数の計測位置からワークを計測することで計測データを取得し、この計測データをコンピュータに入力するデータ入力ステップと、
前記計測データに基づいて、ワークの存在する空間領域を、境界表面が互いに直交する直方体からなる複数のボクセルに分割し、各ボクセル位置を記憶する環境モデルを構築する環境モデル構築ステップと、
前記計測データはワーク表面における複数の被計測点の座標値を含むとして、これら各座標値に対応するボクセルの内部に代表点とその誤差分布を設定し記憶するマッチングステップと、
ワークの3D−CADモデルを読込んでワークの形状モデルを得るワークモデル取得ステップと、
前記ボクセル位置、代表点および誤差分布の少なくともいずれかにより表現される照合用3次元形状と、前記ワークの形状モデルとを照合して両者の形状差異を評価する照合ステップと、を有し、
前記照合ステップにおいて、前記3次元形状をワークの形状モデルと照合した結果、前記ワークの形状モデル上の部分と対応する環境モデル内の部分が、所定の面積よりも大きい広がりを持つ誤差分布を有していると判断した場合、該部分と対応するワーク部分を計測できるように、新たな計測位置を設定し該計測位置からワークを再び計測して、被計測点の座標値を再びコンピュータに入力する、ことを特徴とするバリまたは欠損認識方法。 - 前記環境モデル構築ステップにおいて、最大のボクセルを必要最小限の分解能に相当する大きさに設定し、かつ単一のボクセル内に複数の被計測点が存在する場合に、単一のボクセル内に単一の被計測点のみが存在するように、該ボクセルを更に分割して階層的に複数のボクセルに分割する、ことを特徴とする請求項1に記載のバリまたは欠損認識方法。
- 前記マッチングステップの後に、前記環境モデルを更新するモデル更新ステップを有し、該モデル更新ステップにおいて、新たに入力された被計測点の座標値に対応するボクセルを探索し、
前記計測位置を原点として、該原点と被計測点の間にワークが存在しないものとして、その間に位置するボクセル内の代表点と誤差分布を再設定もしくは消去する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のバリまたは欠損認識方法。 - 前記マッチングステップの後に、前記環境モデルを更新するモデル更新ステップを有し、該モデル更新ステップにおいて、新たに入力された被計測点の座標値に対応するボクセルを探索し、
該ボクセル内に代表点がない場合に、当該座標値とその誤差分布を代表点の座標値と誤差分布として設定する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法。 - 前記マッチングステップの後に、前記環境モデルを更新するモデル更新ステップを有し、該モデル更新ステップにおいて、新たに入力された被計測点の座標値に対応するボクセルを探索し、
当該ボクセル内に既に設定した代表点がある場合に、新たに取得した誤差分布と既に設定したボクセル内の誤差分布とを比較し、
誤差分布が互いに重複する場合に、両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな代表点を再設定し、
誤差分布が互いに重複しない場合に、単一のボクセル内に単一の代表点のみが存在するように、該ボクセルを更に分割して階層的に複数のボクセルに分割する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法。 - ボクセルの内部に代表点とその誤差分布に加えて、確率値を併せ持つ、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法。
- 前記モデル更新ステップにおいて、前記新たに取得した誤差分布と前記既に設定したボクセル内の誤差分布とを比較し、誤差分布が互いに重複する場合に、両誤差分布から新たな誤差分布と新たな代表点を再設定した結果、新たな代表点が他のボクセル内へ移動したとき、
該他のボクセル内に代表点がない場合に、該新たな誤差分布と該新たな代表点を該他のボクセルの内部に設定し、
該他のボクセル内に既に設定した代表点がある場合に、該新たな誤差分布と既に設定した該他のボクセル内の誤差分布とを比較し、(A)誤差分布が互いに重複する場合に、両誤差分布から、または、両誤差分布とボクセル内に既に設定した代表点と新たに入力された被計測点の座標値とから、新たな誤差分布と新たな代表点を再設定し、(B)誤差分布が互いに重複しない場合に、単一のボクセル内に単一の代表点のみが存在するように、該ボクセルを更に分割して階層的に複数のボクセルに分割する、ことを特徴とする請求項5に記載のバリまたは欠損認識方法。 - 前記マッチングステップの後に、前記環境モデルを更新するモデル更新ステップを有し、
該モデル更新ステップにおいて、新たに入力された被計測点の座標値およびその誤差分布と、既に設定したボクセル内の代表点およびその誤差分布とから、カルマンフィルタにより新たな代表点と誤差分布を取得して再設定する、ことを特徴とする請求項1に記載のバリまたは欠損認識方法。 - 前記照合ステップの前に、前記ボクセル位置、代表点および誤差分布の少なくともいずれかを前記照合のために出力する出力ステップを有し、
該出力ステップで、前記ボクセルの内部の誤差分布の大きさが所定の基準値よりも大きい場合に、当該ボクセル内の代表点の信頼性または精度が所定の基準よりも低いとして、該ボクセル内の代表点と誤差分布を出力しない、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法。 - 前記照合ステップにおいて、前記照合用3次元形状をワークの形状モデルと照合した結果、ワークの形状モデル上に該照合用3次元形状と対応しない部分があると判断した場合、該部分と対応するワーク部分を計測できるように、新たな計測位置を設定し該計測位置からワークを再び計測して、被計測点の座標値を再び前記コンピュータに入力する、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法。
- 前記ワークはターンテーブル上に設置され、
前記新たな計測位置を設定した場合に、ターンテーブルを回転することで、前記ワークに対する計測位置を新たにし、該計測位置からワークを再び計測する、ことを特徴とする請求項10に記載のバリまたは欠損認識方法。 - 請求項1〜11のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法により前記照合用3次元形状と、前記ワークの形状モデルとを照合して両者の形状差異を評価した結果、両者の形状差異があると判断した場合に、当該形状差異の位置の情報に基づいて、バリ取り装置が当該位置におけるバリを取る、ことを特徴とするバリ取り方法。
- バリ取りを行った部分を計測できるように、計測位置を設定し該計測位置からワークを再び計測して、計測データを得て、
該計測データを反映した照合用3次元形状と前記ワークの形状モデルとを照合して、両者の形状差異を再び評価する、ことを特徴とする請求項12に記載のバリ取り方法。 - 請求項1〜11のいずれかに記載のバリまたは欠損認識方法を実施し、ワークの計測データから得たワークの照合用3次元形状と、ワークの3D−CADモデルとに基づいてワークのバリまたは欠損を認識するバリまたは欠損認識装置であって、
ワークに対する複数の計測位置からワークを計測することで計測データを取得し、この計測データをコンピュータに入力するデータ入力装置と、
前記計測データに基づいて、ワークの存在する空間領域を、境界表面が互いに直交する直方体からなる複数のボクセルに分割し、各ボクセル位置を記憶する環境モデルを構築する環境モデル構築装置と、
前記計測データはワーク表面における複数の被計測点の座標値を含むとして、これら各座標値に対応するボクセルの内部に代表点とその誤差分布を設定し記憶するマッチング装置と、
ワークの3D−CADモデルを読込んでワークの形状モデルを得るワークモデル取得装置と、
前記ボクセル位置、代表点および誤差分布の少なくともいずれかにより表現される照合用3次元形状と、前記ワークの形状モデルとを照合して両者の形状差異を評価する照合装置と、を備えることを特徴とするバリまたは欠損認識装置。 - 請求項14に記載のバリまたは欠損認識装置と、
バリを取るバリ除去装置と、
前記照合用3次元形状と、前記ワークの形状モデルとを照合した結果、両者の間で形状差異があると判断した場合に、当該形状差異の位置の情報に基づいて、前記バリ除去装置が当該位置におけるバリを取るように、前記バリ除去装置を制御する制御装置と、を備えるバリ取り装置。 - 前記データ入力装置は、ワークを計測する計測器を有し、
前記バリ除去装置の可動部には、前記計測器が設けられている、ことを特徴とする請求項15に記載のバリ取り装置。
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