JP5243424B2 - 航空機翼の縦通材およびこれを形成する方法 - Google Patents

Description

本発明は航空機の翼のストリンガ（縦通材）及びストリンガを形成するための方法に関する。

航空機の翼の中核は、翼ボックスと呼ばれる部分である。翼ボックスは、航空機胴体の中へ入り、翼根元から翼先端まで伸びる。翼ボックスは、エンジン取り付け点及び補助翼、トリムフラップ及びエアブレーキなど制御面の他に上部及び下部翼面の中心部分となる。翼ボックスの翼面は翼カバーと呼ばれるパネルによって与えられる。翼カバーはストリンガと呼ばれる多数の構造体要素を含む。ストリンガは翼ボックス構造体内部で翼根元から先端まで伸びる。ストリンガは、翼カバーが翼に加わる運航荷重に対抗できるようにするために必要な構造的安定及び無欠陥性を備えるように配列される。

航空機構造体を建設する際、考慮すべき多くの事項の１つは重量と強度との間のバランスである。言い換えると、構造体は、運航荷重の下で適切に機能するために必要な強度及び構造的無欠陥性を備えながら、できる限り軽量である必要がある。翼に加わる荷重は翼幅に沿って変化し、一般に翼先端に向かって減少する。従って、ストリンガの長さに沿って変化する強度を持つようにストリンガを建設することができ、そのようにしてその全重量を減少させることができる。ストリンガは、一般に、ストリンガ区分を接合または継ぎ合わせすることによって形成される。ストリンガ区分は各々その予想負荷に合わせた重量特性を有する。または、１本のストリンガを用意し、不要な重量を減らすように翼幅に沿って機械加工の度合いを変えることができる。

ストリンガ区分の継ぎ合せまたは接合に伴う問題は、余分な重量及び複雑さが翼ボックスに加わる点である。１本のストリンガの機械加工に伴う問題はストリンガを修正できる量が制限される点である。

本発明の実施形態は、航空機の翼ストリンガを形成するための方法を与える。この方法は、
ａ）翼カバーパネルに取り付けるための、間隔をおいた１対のフランジであって、上面及び下面を有し、該下面が前記翼カバーパネルに取り付けられるように配列された、フランジと、
該フランジと一体化され該フランジから伸びる１枚またはそれ以上のサイドパネルと、
該サイドパネルと一体化されたクラウンと、
を有するストリンガ半加工品を形成するステップと、
ｂ）前記ストリンガの長さに沿って前記ストリンガの高さを修正するために前記フランジの前記下面を機械加工するステップと、
を含む。

ストリンガの長さに沿ってフランジに一定の厚みを与えるために上面を機械加工することができる。ストリンガの長さに沿ってクラウンの厚みが変化するようにクラウンを機械加工することができる。ストリンガの長さに沿ってストリンガの高さを維持するようにクラウンの寸法を変化させることができる。

ストリンガ半加工品は翼カバーパネルに取り付けるための間隔をおいた２つのフランジ（フランジは対向する内側端を有する）、フランジの内側端と一体化された２枚のサイドパネル、及びフランジに対してほぼ平行の平面に配列されクラウン内面及びクラウン外面を有するクラウン（クラウン内面は取付けられた翼カバーパネルに面するように配列される）を備えることができる。

ストリンガの長さに沿ってクラウンの厚みを変化させるようにクラウン内面を機械加工することができる。ストリンガ半加工品は単一の連続長さを持つことができる。押出し成型されたストリンガ半加工品を機械加工することによって上記の各ステップを実施することができる。金属または合金からストリンガ半加工品を形成することができる。

別の実施形態は航空機の翼ストリンガを用意するためのストリンガ半加工品を提供する。ストリンガ半加工品は、
翼カバーパネルに取り付けるための、間隔をおいた１対のフランジであって、上面及び下面を有し、該下面が前記翼カバーパネルに取り付けられるように配列された、フランジと、
前記フランジと一体化され前記フランジから伸びる１枚またはそれ以上のサイドパネルと、
前記サイドパネルと一体化されたクラウンと、
を備え、
前記フランジがフランジ囲繞体を備えるように形成され、前記フランジ囲繞体が前記ストリンガの長さに沿って前記ストリンガの高さを修正するために前記フランジの前記下面を機械加工できるように形成されている。

次に添付図面を参照しながら単なる例として本発明の実施形態について説明する。

航空機の平面図である。 図１の航空機の翼ボックスの断面図である。 図２の翼ボックス用のストリンガを製造する際に使用するストリンガ半加工品の断面図である。 図２の翼ボックス内のストリンガの側面図を示す。 図４のストリンガの断面図を示す。 図４のストリンガの断面図を示す。 他の実施形態のストリンガの断面図を示す。 他の実施形態のストリンガの断面図を示す。 他の実施形態のストリンガの断面図を示す。

図１を参照すると、航空機１０１は胴体１０３に取り付けられた翼１０２を備える。翼１０２は翼ボックスの形式の中央構造体要素１０４を備える。翼ボックス１０４は両翼１０２の翼根元から先端まで及び翼の前縁と後縁の間に伸びる。翼ボックス１０４はストリンガの形式の多数の構造体要素１０５を備える。ストリンガは各翼ボックスの根元から先端まで伸びる。

図２を参照すると、翼ボックス１０４は桁の形式の２つの側面部材から構成される。桁は翼１０２の前縁及び後縁構造体（図示せず）ための取り付け点を与える。翼ボックス１０４の上面及び下面２０２、２０３は各々翼カバーパネルから形成され、翼カバーパネルはそれぞれ翼１０２の上部及び下部翼面となる。ストリンガ１０５は翼カバーパネル２０２、２０３の内面に取り付けられる。

図３を参照すると、ストリンガ１０５はアルミニウム合金から一定断面のストリンガ半加工品３０１を押出し成型することによって形成される。ストリンガ半加工品３０１は、翼カバーへの取り付け点を与えるためのフランジの形式をとる、間隔をおいた２つの取り付け部材３０２を有する。フランジ３０２は、取付けられた翼カバーに面する下面３０３及び反対側の上面３０４を有する。サイドパネル３０６はフランジ３０２の内側端から伸びて漸近平面（互いに徐々に近づく２つの平面）になる。サイドパネル３０６はトップパネル３０７と結合する。トップパネル３０７はストリンガ半加工品３０１のクラウンを形成する。クラウン３０７は取付けられた翼カバーに面する下面３０８及び反対側の上面３０９を有する。上面はストリンガ半加工品３０１の上面となる。ストリンガ半加工品３０１は押出し成型されるので、フランジ３０２、サイドパネル３０６及びクラウン３０７は一体化されて形成される。

ストリンガ半加工品３０１は囲繞体を持つように配列される。囲繞体は特定のストリンガ仕上り品の所望の断面全てを取り囲む。各断面は運航負荷の下で取付けられた翼カバーの構造的安定性を維持する特性を与えるように設計される。ストリンガ半加工品３０１は、その長さに沿って材料の量を取り除くためにストリンガ半加工品３０１の上面及び下面３０３、３０４、３０８、３０９を異なる程度で機械加工することによって連続的ストリンガを形成するために使用される。このようにして、その長さに沿って異なる性能を与えかつその重量を最小限に抑えるためにストリンガの性能を最適化することができる。

図４は図２に示されるストリンガ１０５をさらに詳細に示している。ストリンガ１０５は半加工品ストリンガ３０１から機械加工されて、翼カバーパネル２０３に取り付けられている。図４は翼１０２の根元のストリンガ１０５の端を示しており、翼先端の方向が矢印Ｔで示されている。ストリンガ１０５は、翼カバーパネル２０３が翼根元付近の端で比較的高い荷重に対処できかつ翼先端近くの端に向かってＴ方向に徐々に小さい荷重に対処できるように設計される。ストリンガ半加工品３０１からストリンガ１０５を加工する際、クラウン３０７の上面３０９はその長さに沿ってＴ方向に徐々に大きくなる量の材料を取り除くように機械加工されるので、クラウン３０７の厚みを減少させることによってストリンガ１０５の全重量は減少する。言い換えると、ストリンガ１０５のクラウン３０７の厚みはＴ方向に小さくなる。同様に、各フランジ３０３の上面及び下面３０４、３０３は、上面から取り除かれる材料の量がＴ方向に徐々に小さくなりかつ下面から取り除かれる量がＴ方向に徐々に大きくなるように機械加工されるので、さらにＴ方向にストリンガ１０５の高さが減少する。

図５ａは図４のストリンガ１０５のＡ点における断面図である。クラウン３０７はほぼ押出し成型されたときの厚みのままであるが、フランジ３０２の厚みは上面３０４から材料５０１が取り除かれることによって減少している。このように、ストリンガ１０５の断面はその翼根元端で比較的高くなっている。図５ｂは翼先端に向かうＢ点における図４のストリンガ１０５の断面図である。クラウン３０７の厚みはその上面３０９から材料５０２が取り除かれることによって減少している。また、フランジ３０２の上面３０４はストリンガ半加工品３０１と同じままであるが、フランジ３０２の厚みはその下面３０３から材料５０３が取り除かれることによって減少する。ストリンガの断面の全体高さはＡ点における断面の高さより減少している。フランジ３０２の厚みは一定のままであるが、図５ａおよび５ｂに示されるＡ点とＢ点の間の点において、上面３０４から取り除かれた材料５０１はＴ方向に向かって減少し、かつ下面３０３から取り除かれた材料５０３はＴ方向に向かって増大する。このようにして、ストリンガ１０５の断面の全体高さはＴ方向に減少するが、フランジ３０２の厚みは一定のままである。従って、ストリンガは、これが取り付けられる翼カバーに必要な構造的安定性を与えることができるように仕上げられる。本実施形態において、負荷は翼根元において最も大きく、翼先端に向かって徐々に減少する。上記のように仕上げることによって製造効率を最適に向上させかつ材料の使用量を減少させるのに役立つ。

図６ａは別の実施形態のストリンガ６０１の断面図を示している。ストリンガ６０１はフランジ６０３の下面６０２から材料を取り除くことによってストリンガ半加工品３０１から機械加工されている。このように、クラウン６０４の厚みは維持したまま、ストリンガ６０１の断面の全体高さが減少している。図６ｂはフランジ６０９及びクラウン６１０の両方の上面６０７、６０８から材料を取り除くことによってストリンガ半加工品３０１から機械加工されたストリンガ６０６の断面を示している。ストリンガ６０６のこの断面においては高さ及びクラウンの厚みの両方が減少している。この断面のストリンガ６０６を形成するために必要な機械加工の全てをストリンガ半加工品３０１の片面から行うことができるので、製造コストが減少する。図６ｃはフランジ６１４及びクラウン６１５の下面６１２、６１３から材料を取り除くことによって半加工品ストリンガ３０１から機械加工されたストリンガ６１１の断面を示している。ストリンガ６１１のこの断面の高さは僅かに減少しているが、クラウンの厚みはその最小値近くまで減少している。この断面のストリンガ６１１を形成するために必要な機械加工の全てをストリンガ半加工品３０１の片面から行うことができるので、製造コストが減少する。

別の実施形態において、ストリンガ押出し型材はＩ字形またはＪ字形断面を有する。この断面も、ストリンガを翼カバーに取り付けるための１対のフランジを備える。ストリンガは一体的に形成され、フランジは１枚のパネルまたはウェブと合体する。パネルはフランジをストリンガのクラウンに接続する。クラウンはフリーフランジ（フランジ無し）とも呼ばれる。ストリンガのこの断面のフランジまたはクラウンを押出し成型して、囲繞体材料が提供され、この囲繞体材料を機械加工して、要求される仕上げ寸法のフランジまたはクラウンにすることができる。

別の実施形態において、ストリンガのクラウンはその仕上げ厚みまたはこれに近い厚みに押出し成型され、完成ストリンガの長さ全体に一定の厚みを維持する。フランジの厚みを機械加工することによってストリンガの高さまたは重量を最適化することができる。フランジはストリンガを翼カバーパネルに取り付ける。

当業者には分かるように、それぞれのストリンガの特定の用途に合わせてフランジ、各サイドパネル及びクラウンの相対的形態を変えることができる。例えば、ストリンガ断面において２枚のサイドパネルが配置される場合、その特定の用途に応じてサイドパネルを漸近平面、漸離平面（互いに徐々に離れる２つの平面）または平行平面に配列することができる。

当業者には分かるように、フライス削り、エッチング、研磨、パンチ、ルーチングまたはドリル加工など任意の適切な工程によってストリンガ半加工品の機械加工を実施することができる。さらに、金属、合金またはその他の適切な非金属材料など任意の適切な材料からストリンガを形成することができる。

本発明はその実施形態の記述によって説明されており、実施形態はかなり詳細に説明されているが、特許請求の範囲をこのような詳細説明に限定することを出願人は意図していない。付加的な利点及び修正が当業者には容易に明らかになるだろう。従って、本発明は広義において代表的装置及び方法及び図示され説明される特定の詳細例に限定されるものではない。従って、出願人の本質的発明思想の精神または範囲から逸脱することなく前記の詳細例から逸脱することができる。

Claims (18)

1. 航空機の翼ストリンガを形成するための方法であって、該方法が、
   ａ）翼カバーパネルに取り付けるための、間隔をおいた１対のフランジであって、上面及び下面を有し、該下面が前記翼カバーパネルに取り付けられるように配列された、フランジと、
   該フランジと一体化され該フランジから伸びる１枚またはそれ以上のサイドパネルと、
   該サイドパネルと一体化されたクラウンと、
   を有するストリンガ半加工品を形成するステップと、
   ｂ）前記ストリンガの長さに沿って前記ストリンガの高さを修正するために前記フランジの前記下面を機械加工するステップと、
   を含む、方法。
2. 前記上面が前記ストリンガの長さに沿って前記フランジに一定の厚みを与えるように機械加工されることを特徴とする、請求項１に記載の方法。
3. 前記クラウンが前記ストリンガの長さに沿って前記クラウンの厚みが変化するように機械加工されることを特徴とする、請求項１または２に記載の方法。
4. 前記クラウンの厚みが前記ストリンガの長さに沿って前記ストリンガの高さを維持するように変化することを特徴とする、請求項３に記載の方法。
5. 前記ストリンガ半加工品が、
   翼カバーパネルに取り付けるための、対向する内側端を有する間隔をおいた２つの前記フランジと、
   前記フランジの前記内側端と一体化された２枚の前記サイドパネルと、
   前記フランジに対してほぼ平行の平面に配列されクラウン内面及びクラウン外面を有する前記クラウンであって、前記クラウン内面が取付けられた翼カバーパネルに面するように配列される、クラウンと、
   を備える、請求項１から４のいずれか一項に記載の方法。
6. 前記クラウン内面が前記ストリンガの長さに沿って前記クラウンの厚みを変化させるように機械加工されることを特徴とする、請求項５に記載の方法。
7. 前記ストリンガ半加工品が単一の連続長さを持つことを特徴とする、請求項１から６のいずれか一項に記載の方法。
8. 前記ステップｂ）が、前記ストリンガ半加工品が押出し成型によって形成された後に、前記ストリンガ半加工品を機械加工することによって実行されることを特徴とする、請求項１から７のいずれか一項に記載の方法。
9. 前記ストリンガ半加工品が金属または合金から形成されることを特徴とする、請求項１から８のいずれか一項に記載の方法。
10. 航空機の翼ストリンガを提供するためのストリンガ半加工品であって、該ストリンガ半加工品が、
    翼カバーパネルに取り付けるための、間隔をおいた１対のフランジであって、上面及び下面を有し、該下面が前記翼カバーパネルに取り付けられるように配列された、フランジと、
    前記フランジと一体化され前記フランジから伸びる１枚またはそれ以上のサイドパネルと、
    前記サイドパネルと一体化されたクラウンと、
    を備え、
    前記フランジがフランジ囲繞体を備えるように形成され、前記フランジ囲繞体が前記ストリンガの長さに沿って前記ストリンガの高さが変化するように前記フランジの前記下面が機械加工された、
    ストリンガ半加工品。
11. 前記フランジ囲繞体が、前記フランジに前記ストリンガの長さに沿って一定の厚みを与えるように前記フランジの前記上面の機械加工を可能にするように配列されることを特徴とする、請求項１０に記載のストリンガ半加工品。
12. 前記クラウンの厚みが前記ストリンガの長さに沿って変化するように、前記クラウンがクラウン囲繞体から機械加工されたことを特徴とする、請求項１０または１１に記載のストリンガ半加工品。
13. 前記クラウン囲繞体が前記ストリンガの長さに沿って前記ストリンガの高さを維持するように前記クラウンの厚みを変化させることができるように配列されることを特徴とする、請求項１２に記載のストリンガ半加工品。
14. 前記ストリンガ半加工品が
    翼カバーパネルに取り付けるための、対向する内側端を有する２つの間隔をおいたフランジと、
    前記フランジの前記内側端と一体化された２枚の前記サイドパネルと、
    前記フランジに対してほぼ平行の平面に配列される前記クラウンであって、前記クラウンがクラウン内面及びクラウン外面を有し、前記クラウン内面が取付けられた翼カバーパネルに面するように配列される、クラウンと、
    を備えることを特徴とする、請求項１０から１３のいずれか一項に記載のストリンガ半加工品。
15. 前記クラウン囲繞体が前記ストリンガの長さに沿って前記クラウンの厚みを変化させるために前記クラウン内面の機械加工を可能にするように配列されることを特徴とする、請求項１４に記載のストリンガ半加工品。
16. 前記ストリンガ半加工品が単一の連続長さを持つことを特徴とする、請求項１０から１５のいずれか一項に記載のストリンガ半加工品。
17. 前記ストリンガ半加工品が押出し成型によって形成されることを特徴とする、請求項１０から１６のいずれか一項に記載のストリンガ半加工品。
18. 前記ストリンガ半加工品が金属または合金から形成されることを特徴とする、請求項１０から１７のいずれか一項に記載のストリンガ半加工品。

Images