JP5230066B2 - 耐疲労性を有する金属エーロフォイル - Google Patents

Description

本発明は、一般に、金属部品に関し、特に、疲労及び損傷に対する耐性を有する金属部品を製造する方法に関する。

ガスタービンエンジンファン及び圧縮機ブレードなどの様々な金属部品は、疲労及び損傷（例えば、異物の衝突が原因である損傷）に起因する亀裂を生じやすい。この損傷は、部品の寿命を短くするため、修理又は交換が必要である。

金属部品に残留圧縮応力を導入することにより、金属部品を亀裂の広がりから保護することが知られている。そのような応力を加える方法は、ショットピーニング、レーザーショックピーニング（ＬＳＰ）、ピンチピーニング及び低可塑性バニシ仕上げ（ＬＰＢ）を含む。それらの方法は、通常、亀裂の広がりから保護されるべき領域、例えば、ガスタービンエンジン圧縮機ブレードの先端部を覆うように、残留圧縮応力の「パッチ」を適用することにより採用される。この方法は、亀裂の成長を抑止するが、「パッチ」と部品の残る部分との境界で亀裂が始まりやすいという欠点は、部品に残されたままである。これは、部品の耐用年数を縮め且つ／又は修理を更に困難にするという意味で、望ましくない障害モードである。

従って、金属部品の許容しうる障害モードを助長しつつ、亀裂の広がりから保護される金属エーロフォイルが必要とされる。

上記の要求は、本発明により満たされる。本発明の１つの面によれば、本発明は、ガスタービンエンジンの金属エーロフォイル（１１２）において、先端部から離間した位置にある根元部と、互いに離間した位置にある前縁部及び後縁部と、前記前縁部から前記後縁部まで延出する吸い込み側と、前記吸い込み側とは反対側にあり、前記前縁部から前記後縁部まで延出する圧力側であって、前記エーロフォイル（１１２）の厚さが、前記圧力側と前記吸い込み側との間で規定される圧力側と；少なくとも１つの処理パッチ（１３２）と；前記処理パッチが適用されていない残部と；を備える。

本発明の上記エーロフォイルは、さらに以下の特徴を備える。すなわち、前記処理パッチ（１３２）の内側における前記エーロフォイル（１１２）の厚さ全体は、低可塑性バニシ仕上げが適用されたことにより残留圧縮応力を受ける状態にあり、前記エーロフォイル（１１２）には、表面処理領域（１３６）が設けられ、前記表面処理領域（１３６）の内側における前記エーロフォイル（１１２）の表面は、ショットピーニングが適用されたことにより残留圧縮応力を受ける状態にあり、前記表面処理領域（１３６）は、少なくとも、前記処理パッチ（１３２）と前記残部との境界と重なり合う。

本発明の上記エーロフォイルは、さらに以下の特徴を備える。すなわち、前記処理パッチ（１３２）は、前記前縁部、前記後縁部及び前記先端部のうちの選択された１つの部分に隣接して配置され、それにより、前記処理パッチ（１３２）は、前記前縁部、前記後縁部及び前記先端部のうちの前記選択された１つの部分から広がる亀裂の成長を妨害し、前記表面処理領域（１３６）は、前記圧力側及び前記吸い込み側のほぼ全てを被覆する。

本発明は、添付の図面と関連させた以下の説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。

図面を参照して説明するが、図面の様々な図の全てにおいて、同一の図中符号は、同一の要素を示す。図１は、ガスタービンエンジンの圧縮機ブレード１０の一例を示す。この部品は、単に一例として使用されるにすぎず、本発明は、圧縮機静翼、ファンブレード、タービンブレード、軸及びモータ、固定フレーム、アクチュエータハードウェアなどの、疲労又は損傷に起因する亀裂を生じやすい他の種類の金属部品にも同等に適用可能である。圧縮機ブレード１０は、エーロフォイル１２、プラットフォーム１４及びシャンク１６を具備する。この特定の例においては、シャンク１６は、回転ディスク（図示せず）の溝穴に受け入れられるべきダブテール１８を含む。エーロフォイル１２は、前縁部２０、後縁部２２、先端部２４、根元部２６、凸形の吸い込み側２８及び凹形の圧力側３０を有する。

図２は、圧縮機ブレード１０の一部の拡大図である。圧縮機ブレード１０の先端部２４は、圧縮機ブレード１０のその他の部分と比較して、「亀裂を生じやすい」、すなわち、相対的に亀裂が始まりやすい部分である。その原因は、例えば、疲労又は異物の衝突による損傷である。前縁部２０及び後縁部２２を含む他の領域も、同様に亀裂を生じやすい。圧縮機ブレード１０を使用中に放置しておくと、亀裂は、圧縮機ブレード１０の内部まで深く広がり、最終的には、圧縮機ブレード１０は、それ以上の使用に適さない状態になり、更には、部品の故障を招く事態に至る。

亀裂の広がりを防止するため又は遅らせるために、それらの亀裂を生じやすい領域に残留圧縮応力の領域を適用することが知られている。従来の技術においては、先に述べた先端部２４などの損傷しやすい領域に、残留圧縮応力の「パッチ」が適用される。例えば、先端部２４を覆うパッチ３２が示される。しかし、部品の縁部に適用されるそのような表面領域パッチは、亀裂の発生を完全には回避できない。亀裂が起こる場合、図２に代表的な亀裂「Ｃ」により示されるように、亀裂は、パッチ３４とエーロフォイル１２の残る部分との境界から始まる。この亀裂は、先端部２４の障害を更に大きくするか、又は先端部２４を圧縮機ブレード１０から分離させようとし、その結果、亀裂が先端部２４で始まった場合より修理が困難な損傷パターンを形成してしまうため、境界部分で亀裂が発生することは望ましくない。

図３は、本発明に従って処理された圧縮機ブレード１１０の一部を示す。圧縮機ブレード１１０は、圧縮機ブレード１０とほぼ同様の構成を有し、前縁部１２０、後縁部１２２、先端部１２４、吸い込み側１２８及び圧力側１３０を有するエーロフォイル１１２を含む。圧縮機ブレード１１０は、先端部１２４に処理パッチ１３２を含む。処理パッチ１３２の内側において、圧縮機ブレード１１０の材料は、その厚さ全体を通して、残留圧縮応力の状態にある。処理パッチ１３２は、前縁部１２０から後縁部１２２に至るまで、先端部１２４とほぼ平行な方向に延出し、幅「Ｗ」を有する。この幅Ｗは、特定の用途に応じて異なるが、一般に、処理パッチ１３２の表面積を最小限にする一方で、亀裂の広がりを実質的に縮小又は防止するのに十分な広さであるように選択される。図示される実施形態においては、幅Ｗは、約１．６ｍｍ（０．０６３ｉｎ）〜約３．２ｍｍ（０．１２５ｉｎ）であってもよい。亀裂の広がりを更に縮小するために、処理パッチ１３２に類似する別の処理パッチ（図示せず）を圧縮機ブレード１０の他の領域に適用してもよい。

エーロフォイル１１２の表面の少なくとも一部は、表面処理領域１３６を更に含む。この表面処理領域は、表面の微細な亀裂を封鎖し、エーロフォイル１１２の外面を残留圧縮応力の状態に保つ。処理パッチ１３２とエーロフォイル１１２の残り部分との境界１３４における材料特性の急激な遷移を回避するために、表面処理領域１３６は、少なくとも、処理パッチ１３２とエーロフォイル１１２の残り部分との境界１３４と重なり合う。図示される実施形態においては、表面処理領域１３６は、エーロフォイル１１２の圧力側１３０及び吸い込み側１２８のほぼ全てを被覆する。しかし、図３に図中符号１３６’として示されるように、それより狭い表面処理領域が使用されることも可能であろう。

処理パッチ１３２は、いくつかの方法により適用されてもよい。周知の適切な方法の例は、レーザーショックピーニング（ＬＳＰ）、ピンチピーニング、ショットピーニング及び低可塑性バニシ仕上げ（ＬＰＢ）などである。好ましい方法の１つは、低可塑性バニシ仕上げである。この方法によれば、周知の種類の針（図示せず）を使用して、圧縮機ブレード１１０に垂直力が加えられる。針は、圧縮機ブレード１１０の表面に沿って並進移動され、所期の処理パッチ１３２を形成する。予測動作条件が与えられるのであれば、この工程中に圧縮機ブレード１１０に加えられる冷間加工の量は、相対的にさほど重要ではない。処理パッチ１３２が形成された後、周知の種類のピーニング機器を使用して、表面処理領域１３６を形成するために、ガラスビードピーニングなどのピーニング工程がエーロフォイル１１２の表面に対して適用される。

動作中、圧縮機ブレード１１０は、亀裂を発生させる原因となる疲労及び損傷にさらされる。亀裂は、先端部１２４などの「亀裂を生じやすい」領域で始まる。検査を怠っていると、そのような亀裂は大きくなり、圧縮機ブレード１１０の内部深くまで広がる。最終的には、圧縮機ブレードは、使用中に故障するか、又はコストの面から修理不可能な状態になる。しかし、先に説明したような処理パッチ１３２は、亀裂が始まるのを防止し、亀裂の広がりを遅らせようとする。更に、ピーニング処理が実施されるので、現れる亀裂は、いずれも、圧縮機ブレード１１０の先端部１２４から始まり、処理パッチ１３２と圧縮機ブレード１１０の残る部分との境界１３４で亀裂が始まることはない。従って、このような処理の組み合わせは、亀裂の発生を防止すると共に、亀裂による故障モードが許容できるレベルにとどまることを保証する。

以上、疲労及び損傷に対する耐性を有する金属エーロフォイルを説明した。本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明の趣旨の範囲から逸脱せずに、上述の実施形態に対して様々な変形を実施できることは当業者には明らかであろう。従って、本発明の好ましい実施形態及び本発明を実施するための最良の態様に関する先の説明は、単に例示を目的とし、本発明を限定する意味を持っておらず、本発明は、特許請求の範囲により定義される。

ガスタービンエンジン圧縮機ブレードの概略斜視図である。 図１の圧縮機ブレードの側面図である。 本発明の方法に従って処理された別の圧縮機ブレードの側面図である。

符号の説明

１１０…圧縮機ブレード、１１２…エーロフォイル、１２０…（圧縮機ブレードの）前縁部、１２２…後縁部、１２４…先端部、１２８…吸い込み側、１３０…圧力側、１３２…処理パッチ、１３４…処理パッチと圧縮機ブレードの残る部分との境界、１３６…表面処理領域

Claims (2)

1. ガスタービンエンジンの金属エーロフォイル（１１２）において、
   先端部から離間した位置にある根元部と、互いに離間した位置にある前縁部及び後縁部と、前記前縁部から前記後縁部まで延出する吸い込み側と、前記吸い込み側とは反対側にあり、前記前縁部から前記後縁部まで延出する圧力側であって、前記エーロフォイル（１１２）の厚さが、前記圧力側と前記吸い込み側との間で規定される圧力側と；
   少なくとも１つの処理パッチ（１３２）と；
   前記処理パッチが適用されていない残部と；
   を備え、
   前記処理パッチ（１３２）の内側における前記エーロフォイル（１１２）の厚さ全体は、低可塑性バニシ仕上げが適用されたことにより残留圧縮応力を受ける状態にあり、
   前記エーロフォイル（１１２）には、表面処理領域（１３６）が設けられ、
   前記表面処理領域（１３６）の内側における前記エーロフォイル（１１２）の表面は、ショットピーニングが適用されたことにより残留圧縮応力を受ける状態にあり、前記表面処理領域（１３６）は、少なくとも、前記処理パッチ（１３２）と前記残部との境界と重なり合い、
   前記処理パッチ（１３２）は、前記前縁部、前記後縁部及び前記先端部のうちの選択された１つの部分に隣接して配置され、それにより、前記処理パッチ（１３２）は、前記前縁部、前記後縁部及び前記先端部のうちの前記選択された１つの部分から広がる亀裂の成長を妨害し、
   前記表面処理領域（１３６）は、前記圧力側及び前記吸い込み側のほぼ全てを被覆する
   ことを特徴とする金属エーロフォイル（１１２）。
2. 前記処理パッチ（１３２）は、前記先端部に隣接して配置される請求項１載の金属エーロフォイル（１１２）。

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