JP5224707B2 - 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 - Google Patents

抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 Download PDF

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Description

本発明は、血小板膜糖蛋白質VI(以下、GPVIと略称することがある)に対する抗体および該抗体の認識領域に関するものである。
血小板は血栓形成・生体防御において極めて重要な役割を担っており、生理的な役割から種々の病態における関わりが解明されつつある。特に、血小板は止血血栓を形成するという機能において注目されており、例えば、血管内皮細胞が損傷を受けると、血管内皮下の主要なマトリックス蛋白質であるコラーゲンが露出し、ここへ血小板が粘着する。次に、コラーゲンからのシグナルにより血小板が活性化され、最終的にはフィブリノーゲンを介して血小板が凝集する。そして場合によってはこれが血栓塞栓性疾患のような病的状態の原因となることから治療の標的として注目されている。
従来、血小板凝集に基づく血栓症の治療・予防の目的で、アスピリン、チクロピジン、GPIIb/IIIaアンタゴニスト等の抗血小板薬が用いられてきたが、有効性および出血等の副作用の面から多くの問題が指摘されており、これらの問題の無い、十分な安全性、および確実かつ適切な作用を有する優れた抗血小板薬の登場が望まれている。
血小板膜上に存在するGPVIは、血小板のコラーゲン受容体であり、コラーゲン刺激による血小板の活性化に中心的役割を担っていることが明らかにされている(非特許文献1:高山博史,日本血栓止血学会誌,2003年,第14巻,第2号,p.75−81参照)。すなわち、スギヤマらは自己免疫性血小板減少患者の血小板では62kDaの膜蛋白質が特異的に欠損しており、コラーゲンによる血小板凝集が認められないこと(非特許文献2:タテオ・スギヤマ(Tateo Sugiyama)、外5名,ブラッド(Blood),(米国),1987年,第69巻,第6号,p.1712−1720参照)、さらに、この患者の血小板で欠損していた蛋白がGPVIであり、患者の血清より精製した抗体のFab断片がコラーゲン惹起血小板凝集を抑制することを報告している(非特許文献2:タテオ・スギヤマ(Tateo Sugiyama)、外5名,ブラッド(Blood),(米国),1987年,第69巻,第6号,p.1712−1720;および非特許文献3:マサアキ・モロイ(Masaaki Moroi)、外3名,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation),(米国),1989年,第84巻,第5号,p.1440−1445参照)。
これまでに自己免疫疾患患者由来の抗ヒトGPVI自己抗体は、スギヤマら(非特許文献2:タテオ・スギヤマ(Tateo Sugiyama)、外5名,ブラッド(Blood),(米国),1987年,第69巻,第6号,p.1712−1720参照)やタカハシら(非特許文献4:ホウユウ・タカハシ(Hoyu Takahashi)、外1名,アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(American Journal of Hematology),(米国),2001年,第67巻,第4号,p.262−267参照)が報告している。しかしながら、スギヤマらの報告では患者血漿から精製した抗ヒトGPVI自己抗体には血小板凝集を惹起する作用があるため、直ちに医薬応用することはできない。タカハシらの文献(非特許文献4:ホウユウ・タカハシ(Hoyu Takahashi)、外1名,アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(American Journal of Hematology),(米国),2001年,第67巻,第4号,p.262−267)には、GPVIと推測される約62kDaの蛋白に対する自己抗体の存在、及び、この抗体が血小板凝集を惹起することが記載されている。また、これらの患者由来の抗GPVI抗体を医薬として臨床応用するためには安全性の高い抗体を安定した品質で大量に生産する必要があるが、工業的に生産する方法は未だ確立されていない。
現在までに作製されている抗GPVI抗体として、マウスGPVIに対するモノクローナルラット抗体(特許文献1:欧州特許出願公開公報第1228768号参照)、およびヒトGPVIに対するモノクローナルマウス抗体がある(特許文献2:国際特許出願公開公報第01/00810号および特許文献3:国際特許出願公開公報第02/080968号参照;非特許文献7:Thromb Haemost. 2003 Jun;89(6):996-1003)。
また、ヒトGPVIを認識するヒト一本鎖抗体(scFv:single chain Fv)がファージディスプレー法等を用いて作製されている(特許文献2:国際特許出願公開公報第01/00810号、特許文献3:国際特許出願公開公報第02/080968号、および非特許文献5:ピーター・A・スメサースト(Peter A Smethurst)、外15名、ブラッド(Blood),(米国),2002年,第100巻,第11号, p.474a参照)。これらの一本鎖抗体はヒト抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)をペプチドリンカーで結合させたものであり、ヒト由来の可変領域を有する抗体であるが、細胞が産生する通常のイムノグロブリンに比べると、一般的に抗原への親和性が低く、生体内での半減期も短い。また、スメサーストらは、一本鎖抗体の内、血小板凝集を抑制するクローン(10B12)についてGPVI上のエピトープを解析し、59番目のリジン(Lys59)が関与する可能性を示唆した(非特許文献4:ホウユウ・タカハシ(Hoyu Takahashi)、外1名,アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(American Journal of Hematology),(米国),2001年,第67巻,第4号,p.262−267;および非特許文献5:ピーター・A・スメサースト(Peter A Smethurst)、外15名、ブラッド(Blood),(米国),2002年,第100巻,第11号, p.474a)。
このように、現在まで報告されているヒトGPVIに対する抗体のほとんどは、前記ヒト自己抗体を含めて、in vitroにおいて抗体単独で血小板を活性化させる作用、及び/または、血小板凝集を惹起もしくは促進する作用を有することから、生体に投与した場合、血小板減少を引き起こす可能性が考えられる。事実、Nieswandtらは、in vivoで血小板上のGPVIを消失させるモノクローナル抗体(JAQ1、JAQ2及びJAQ3)を複数報告しているが、何れの抗体も投与後に血小板減少を惹起した。
近年、GPVIのアゴニストであるコラーゲン、convulxin及びCRPならびにGPVIとコラーゲンの結合を阻害する抗体(9O12.2)が血小板を活性化し、それに伴ってメタロプロテアーゼを介した切断により血小板からのGPVIのsheddingが生じることが報告された(非特許文献6:Stephens G外4名、Blood. 2005 Jan 1;105(1):186−91;非特許文献8:Gardiner EE外4名, Blood. 2004;104:3611-3617;非特許文献9:Bergmeier W外6名, Thromb Haemost. 2004;91:951-958.)。さらに、9O12.2抗体等を用いてGPVI上のコラーゲンとの相互作用に関与するアミノ酸残基(Val34, Leu36)が推定された(非特許文献10:Lecut C外7名, J Biol Chem. 2004;279:52293-52299.)。
また、高山らは、自己免疫疾患患者のリンパ球を用いて抗ヒトGPVI抗体をクローン化し、その性質をin vitroにおいて検討した(特許文献4:国際特許出願公開公報第05/007800号)。
しかし、現在までの何れの報告においても、血小板を活性化させず、及び/または、生体内における血小板減少を惹起せずに、血小板膜上のGPVIを消失させる作用を有する抗体は開示されていない。
欧州特許出願公開公報第1228768号 国際特許出願公開公報第01/00810号 国際特許出願公開公報第02/080968号参照 国際特許出願公開公報第05/007800号 高山博史,日本血栓止血学会誌,2003年,第14巻,第2号,p.75−81 タテオ・スギヤマ(Tateo Sugiyama)、外5名,ブラッド(Blood),(米国),1987年,第69巻,第6号,p.1712−1720 マサアキ・モロイ(Masaaki Moroi)、外3名,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation),(米国),1989年,第84巻,第5号,p.1440−1445 ホウユウ・タカハシ(Hoyu Takahashi)、外1名,アメリカン・ジャーナル・オブ・ヘマトロジー(American Journal of Hematology),(米国),2001年,第67巻,第4号,p.262−267 ピーター・A・スメサースト(Peter A Smethurst)、外15名、ブラッド(Blood),(米国),2002年,第100巻,第11号, p.474a Stephens G外4名、Blood. 2005 Jan 1;105(1):186−91 Thromb Haemost. 2003 Jun;89(6):996-1003 Gardiner EE外4名, Blood. 2004;104:3611-3617 Bergmeier W外6名, Thromb Haemost. 2004;91:951-958 Lecut C外7名, J Biol Chem. 2004;279:52293-52299
このように抗血小板薬として、安全性が高く、有効性が優れ、かつ使いやすい薬剤が求められている状況において、生体に投与可能な、抗GPVI抗体が切望されている。
本発明の目的は、血小板、例えば、哺乳類の血小板、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウス血小板、特にヒト血小板膜上に存在する糖蛋白質であるGPVIに特異的に結合する新規な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を提供するものである。特に生体に投与可能で、有効でかつ血小板減少等の副作用の点で問題のない、抗GPVI抗体を提供するものである。また、GPVI、特に、ヒトGPVIに特異的に結合し新規なCDR配列を含有する抗体を提供するものである。さらに、これらの抗体を産生する細胞を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、GPVIに対する抗体を産生するマウスハイブリドーマを多数樹立し、それらの産生する抗体の性状を解析することを着想した。この着想に基づき、鋭意研究を重ねた結果、GPVIとの結合能を有し、コラーゲンによる血小板凝集能を低下させる活性を有する抗体を産生するハイブリドーマを得ることに成功した。そして、各抗体のGPVI上の認識領域を解析し、GPVIのエピトープに関する有益な情報を得た。また、当該クローンを単離し、さらに検討を重ねた結果、該抗体をコードする遺伝子を得ることに成功し、この抗体のCDRのアミノ酸配列が新規の配列であることを明らかにした。さらに、遺伝子組換技術により組換抗体を作製し、本発明を完成した。
なお、本明細書においては、ハイブリドーマ(例えば、クローンF1232−18)が産生する抗体をF1232−18抗体のように記載することがある。
本発明の第1の態様は、特定の機能または特性を示す、GPVI、例えば、哺乳類GPVI、具体的には、ヒト、サル、ラット又はマウスGPVI、特に、ヒトGPVIと特異的に結合する抗体、好ましくはモノクローナル抗体(以下抗ヒトGPVI抗体及び抗ヒトGPVIモノクローナル抗体のように各々記載することがある)もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。具体的には、
(1)以下の性質を有する抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体;a)GPVI、特に、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)と特異的に結合し、
b)血小板を活性化させる作用、及び/または、生体内における血小板減少を惹起する作用が弱く、及び、
c)血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、
(2)血小板GPVIのshedding、特に、血小板の活性化に伴うメタロプロテアーゼを介した切断による血小板からのGPVIのsheddingを介さずに、血小板と接触させることにより、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、特に、上記(1)の性質を有する抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(3)血小板GPVIのinternalizationを介して、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(4)血小板GPVIのinternalizationを介して、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、(1)ないし(3)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(5)生体内において血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、(1)ないし(4)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(6)生体内に投与して血小板と接触させることにより血小板がコラーゲンに応答して凝集する能力を低下もしくは欠如させる、(1)ないし(5)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(7)出血時間の延長作用が弱い、(1)ないし(6)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(8)GPVIとの解離定数が4×10-8M以下である、(1)ないし(7)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。
前記(1)ないし(8)の抗体は、単独ではヒト血小板凝集を惹起しない抗体が好ましい。好適な例として、表6及び表11に挙げられたクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識する抗体またはそれをヒトIgG、より好ましくはヒトIgG4と組み替えたキメラ抗体もしくはヒト化抗体が挙げられる。また、本発明の抗体は、GPVI、特に、ヒトGPVIと抗体との解離定数(Kd値)が好ましくは10-8M以下、より好ましくは4×10-9M以下の抗体である。本発明の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体には、GPVIとの結合能を有する限りにおいて、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体、Fab(Fragment of antigen binding)、Fab'、F(ab')2、一本鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化抗体(dsFv)、diabody、nanobody及びCDRを含むペプチド等、ならびに、標識抗体、コンジュゲート抗体及び抗体融合蛋白質等を包含する。
また、本発明第1の態様の抗体等は、GPVI、例えば、哺乳類のGPVI、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウスGPVI、特に、ヒトGPVIに特異的に結合し、コラーゲンによる血小板の凝集能を特異的に低下させるが他のアゴニスト、例えば、ADPまたはトロンビンに対する凝集能には影響しないものが好ましい。また、単独ではヒト血小板凝集を惹起しないものが好ましい。該抗体は、コラーゲンによるヒト血小板の凝集を抑制する濃度または用量と同等、好ましくは10倍、より好ましくは100倍、さらに好ましくは1000倍において、単独ではヒト血小板凝集を有意に惹起しない。
ここで前記(1)ないし(8)の抗体は、その特性を有する限り、GPVI、特に、ヒトGPVIとコラーゲンとの結合を阻害する抗体であっても良く、好ましくは10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、さらに好ましくは10-10M以下の解離定数(Kd値)でGPVI、特に、ヒトGPVIとコラーゲンとの結合を阻害する抗体である。
本発明の抗体は必ずしも特定のクローンに限定されるものではなく、本発明の好ましい例と同様の作用を有する抗体は本発明の範囲に包含される。本発明の抗体の作用の有無は実施例に示される方法または公知の方法によって確認し得る。
また、本発明の好ましい抗体とGPVI上の認識領域、結合部位もしくはエピトープが同一か少なくとも部分的に共通である抗体、例えば、GPVIとの結合において互いに競合する関係にある抗体は本発明の範囲に包含される。本発明の抗体との認識領域または結合部位の共通性の有無は実施例に記載の方法に準じて、または公知の方法によって確認し得る。すなわち、本発明により、本発明の特定の抗体とGPVI結合において競合する抗体が提供される。本発明の実施例の競合実験における分類では、表1に挙げられる8種類のグループ、好ましくはグループd、eまたはh、より好ましくはグループdまたはeに分類される抗体が本発明の抗体として挙げられる。前記(1)ないし(8)の抗体の好適な例としては、GPVI、特にヒトGPVIのループ9の少なくとも一部を認識する抗体が挙げられる。
本発明の第2の態様は、新規なGPVI、例えば、哺乳類のGPVI、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウスGPVI、特にヒトGPVI上の認識領域、結合部位もしくはエピトープによって規定される抗GPVI抗体であり、好ましくはモノクローナル抗体である。具体的には、
(9)GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9の少なくとも一部分を含むアミノ酸配列またはGPVI上の構造を特異的に認識する抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(10)GPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11の少なくとも一部分が、ヒトGPVIのループ2のE21、K22およびP23、ループ3のG33とループ5のA57、K59およびL62、もしくはループ4のS43、S44、S45、R46およびE48とループ5のA57、K59およびL62、または、ループ9のT116、R117、G119およびQ122、もしくはループ9のT116、R117、G119およびQ122とループ11のR139である、(9)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(11)GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9と特異的に結合する、(9)または(10)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。さらに、好ましくは、
(12)GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9の少なくとも一部を含むアミノ酸配列またはGPVI上の構造を認識する、(1)ないし(8)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(13)ヒトGPVIドメイン1のループ2のE21、K22およびP23、ループ3のG33とループ5のA57、K59およびL62、もしくはループ4のS43、S44、S45、R46およびE48とループ5のA57、K59およびL62、または、ドメイン2のループ9のT116、R117、G119およびQ122、もしくはループ9のT116、R117、G119およびQ122とループ11のR139を含むアミノ酸配列またはGPVI上の構造を特異的に認識する、(1)ないし(8)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(14) GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9と特異的に結合する、(1)ないし(8)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。
ここで、上記の各ループの少なくとも一部分は、例えば、ヒトGPVIにおいて異種GPVI、例えばサル、マウスまたはラットGPVIと対応するアミノ酸残基が異なる残基である。GPVI、例えば、ヒトGPVIのモデリング構造は実施例に記載する方法により推定可能であり、各ループ構造の位置を図1、3及び47に示した。上記のループの内、ドメイン2のループ9、ループ9とループ11及びドメイン1のループ2、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9は本発明の抗体の認識領域として重要であり、これらを認識する抗体は好ましいものである。好適な例として、表6及び11に挙げられた抗体またはそれをヒトIgG、より好ましくはヒトIgG4と組み替えたキメラ抗体もしくはヒト化抗体が挙げられる。
本発明の第2の態様の抗体は、本発明第8の態様のペプチド及び/または第9の態様のポリペプチドとの結合性によって、分類すること、または、結合領域を確認することができる。すなわち、本発明は、本発明第8の態様のペプチド及び/または第9の態様のポリペプチドの内、特定のものとの結合性が異なる、好ましくは低下した抗GPVI抗体を提供する。具体的には、特定のGPVI変異体との結合性が、ヒトGPVI及び/または他のGPVI変異体との結合性と有意に異なる、好ましくは低下した抗GPVI抗体である。具体的な確認方法、用いるポリペプチド等、好適な分類及び好適な抗体の例は実施例示されている。本発明の抗体は、その抗原結合価は必ずしも限定されず、FabもしくはscFvのような一価抗体でも良いが、生体内、特に血中での安定性、GPVIへの結合性または作用の強度の観点から、好ましくは、二価以上の多価抗体、例えば、二価、三価、四価もしくは十価の抗体、より好ましくは、二価抗体である。従って、本発明の第二の態様において、GPVI上の特定の領域、特に、ループ9、を認識する一価の抗体及び二価以上の多価抗体、例えば、二価、三価、四価もしくは十価の抗体、好ましくは、二価抗体が提供される。ここで、四価抗体の例としてはIgA、十価抗体の例としてはIgMが挙げられるが、これらに限定されない。また、三価抗体は生理的には存在しないが、固有の三量体化特性を有する天然または合成ペプチド、例えば、テナシン(tenascin)分子のドメイン(AA 110-139、Swissprot #P10039(ニワトリ)、またはSwissprot #P24821(ヒト))を利用し、化学的または遺伝子工学的に一価抗体(scFvもしくはFab等)に結合させることで三価抗体を調製可能である(特表2004-508828号公報参照)。なお、本発明第二の態様の抗体は、好ましくは、第一の態様の抗体の特定の機能または特性を示すものである。
本発明の第3の態様は、新規なCDRアミノ酸配列または可変領域アミノ酸配列を含有する抗GPVI抗体であり、好ましくは、ヒトIgG、特にヒトIgG4と組み替えたキメラ抗体、より好ましくはCDR移植抗体、特にヒト化抗体である。具体的には、
(15)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の一方の3組のCDR、好ましくは抗体のH鎖およびL鎖両方の6組のCDRが、表8、9、12及び13に記載のクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識するする抗体のCDRのアミノ酸配列を、それぞれ対応するCDRのアミノ酸配列として含有する抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(16)配列番号15、16及び17のアミノ酸配列、配列番号18、19及び20のアミノ酸配列、配列番号21、22及び23、配列番号24、25及び26、配列番号27、28及び29、配列番号30、31及び32、配列番号33、34及び35、配列番号36、37及び38、配列番号39、40及び41、配列番号42、43及び44、配列番号45、46及び47、または、配列番号48、49及び50のアミノ酸配列を、または表12に記載の何れかのクローンのVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3をそれぞれVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3に有する抗GPVI抗体の重鎖もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(17)配列番号51、52及び53のアミノ酸配列、配列番号54、55及び56のアミノ酸配列、配列番号57、58及び59、配列番号60、61及び62、配列番号63、64及び65、配列番号66、67及び68、配列番号69、70及び71、配列番号72、73及び74、配列番号75、76及び77、配列番号78、79及び80、配列番号81、82及び83、または、配列番号84、85及び86のアミノ酸配列を、または表13に記載の何れかのクローンのVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3をそれぞれVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3に有する抗GPVI抗体の軽鎖もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(18)配列番号15、16、17、51、52及び53のアミノ酸配列、配列番号18、19、20、54、55及び56のアミノ酸配列、配列番号21、22、23、57、58及び59のアミノ酸配列、配列番号24、25、26、60、61及び62のアミノ酸配列、配列番号27、28、29、63、64及び65のアミノ酸配列、配列番号30、31、32、66、67及び68のアミノ酸配列、配列番号33、34、35、69、70及び71のアミノ酸配列、配列番号36、37、38、72、73及び74のアミノ酸配列、配列番号39、40、41、75、76及び77のアミノ酸配列、配列番号42、43、44、78、79及び80のアミノ酸配列、配列番号45、46、47、81、82及び83のアミノ酸配列、または、配列番号48、49、50、84、85及び86のアミノ酸配列を、または表12及び13に記載の何れかのクローンのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3をそれぞれVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3に有する抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(19)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の可変領域、好ましくは抗体のH鎖およびL鎖両方の可変領域が、表7または表14に記載のクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識する抗体が有する可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ対応する可変領域のアミノ酸配列として含有する抗ヒトGPVI抗体、特にヒトIgG、好ましくはヒトIgG4と組み替えたキメラ抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。第3の態様の抗体は、好ましくは、第1の態様及び/または第2の態様の抗体等の特性及び/または認識領域特異性を有するものである。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体の少なくともH鎖もしくはL鎖の一方の3組のCDR、好ましくはH鎖及びL鎖の6組のCDR、または、可変領域をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドまたは核酸である。具体的には、
(20)第1ないし第3の態様の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体のH鎖及び/またはL鎖をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(21)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の一方の3組のCDR、好ましくは抗体のH鎖またはL鎖の両方の6組のCDRをコードする塩基配列として、表8及び9または表12及び13に記載のクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識する抗体の遺伝子におけるそれぞれ対応するCDRをコードする塩基配列を含有する(20)のポリヌクレオチド、
(22)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の可変領域、好ましくは抗体のH鎖およびL鎖両方の可変領域として、表7または表14に記載のクローンGPVIのループ9を認識する抗体の遺伝子におけるそれぞれ対応する可変領域をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(23)H鎖の可変領域をコードする配列番号280の塩基配列と、L鎖の可変領域をコードする配列番号284の塩基配列とを含有するポリヌクレオチド、またはH鎖の可変領域をコードする配列番号282の塩基配列と、L鎖の可変領域をコードする配列番号284の塩基配列とを含有するポリヌクレオチドである。また、本発明は、特定のマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントの組合せを含有する抗体遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖もしくは軽鎖可変領域遺伝子を提供する。すなわち、
(24)表16に記載されたマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントVH、DH及びJHの何れかの組合せを含有する抗体重鎖遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖可変領域遺伝子、
(25)前記抗体重鎖可変領域遺伝子のCDRアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有する抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖可変領域遺伝子、
(26)表16に記載されたマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントVL及びJLの何れかの組合せを含有する抗体軽鎖遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその軽鎖可変領域遺伝子、
(27)前記抗体軽鎖可変領域遺伝子のCDRアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有する抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその軽鎖可変領域遺伝子である。ここで、表16に記載されたマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントの内、各抗体クローンの最上段に示されたスコアの高いセグメントの組合せ、例えば、クローンF1246-1-1の重鎖遺伝子ではVH(3:3.9)、DH(DSP2.7又はDSP2.5)及びJH(JH4)の組合せが好ましい。また、前記抗体遺伝子に由来する遺伝子には、それがコードする抗体が同様な抗原特異性を示す限り、その抗体遺伝子自体又は1塩基以上の変異を伴った遺伝子を包含し、その変異は天然に生じたもの及び人為的に導入したものの何れであっても良い。同時に、本発明は、特定のマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントの組合せを含有する抗体遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖もしくは軽鎖可変領域遺伝子にコードされる抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を提供する。すなわち、
(28)前記(24)〜(25)の抗体遺伝子又はその重鎖可変領域遺伝子にコードされる抗ヒトGPVI抗体又はその重鎖可変領域ポリペプチド、
(29)前記(26)〜(27)の抗体遺伝子又はその軽鎖可変領域遺伝子にコードされる抗ヒトGPVI抗体又はその軽鎖可変領域ポリペプチドである。
さらに、本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)化された抗GPVI抗体、特に抗ヒトGPVI抗体、具体的には、前記本発明の抗体、好ましくは、GPVIのループ9を認識する抗体、もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を提供する。抗体等にPEGを結合させる方法は公知の方法(例えば、Roberts M.J. et al. Advanced Drug delivery Reviews 54(2002)459-476参照)に従うことができ、具体的には実施例31に記載されている。
本発明の第5の態様は、第1ないし第3の態様の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を産生する細胞、または、第4の態様のポリヌクレオチドを含有する細胞である。具体的には、
(30)前記(1)ないし(19)に記載のいずれかの抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を産生する細胞、特に、形質転換細胞、またはハイブリドーマ、
(31)前記(20)ないし(23)に記載のいずれかのポリヌクレオチドを含有する細胞、特に、形質転換細胞、またはハイブリドーマである。
本発明の第6の態様は、第4の態様のポリヌクレオチドもしくはそれを含有する発現ベクター、または第5の態様の細胞を用いることを特徴とする、第1ないし第3の態様の抗体を製造する方法である。具体的には、
(32)前記(30)または(31)の細胞を培養する工程および、該細胞が産生するモノクローナル抗体を採取する工程を含む、第1ないし第3の態様の抗体を製造する方法、
(33)前記(19)ないし(23)のポリヌクレオチド、それを含有する発現ベクター、(30)または(31)の細胞の何れかを用いる工程を含む、第1ないし第3の態様の抗体の製造方法である。
本発明の第7の態様は、本件第1ないし第3の態様の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を有効成分として含有する医薬組成物に関するもので、好ましくは血栓性、塞栓性または動脈硬化性の疾患の予防および/または治療のための医薬組成物である。本発明の抗体は、血小板の活性化作用、血小板凝集作用、血小板減少作用及び出血時間の延長作用等の副作用がほとんどなく、上記疾患等の予防および/または治療に有用である。
本発明の第8の態様は、GPVI上の特定の構造、特に、ループ構造を構成するペプチド、具体的には、
(34)GPVI、特にヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11を含有するペプチド、特に、それらの何れかのアミノ酸配列からなるペプチドである。ここで、該ペプチドは異種のGPVI由来のアミノ酸配列またはGPVI以外のポリペプチド、例えば、Fcのアミノ酸配列を含有しても良い。
本発明の第9の態様は、特定のGPVI変異体、例えば、アミノ酸置換体、種間でのドメイン置換体または種間での部分配列置換体、例えばループ置換体等である。好ましくは図1及び3に示されるGPVIの1もしくは2以上のループ構造を構成するアミノ酸を他のアミノ酸または他種(例えば、ヒト、サル、マウス及びラット)の対応するループのアミノ酸で置換した変異体であり、具体例は表4または実施例に記載されている。具体的には、
(35)配列番号137ないし151のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである。
本発明の第10の態様は、以下の工程を含む、抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体のスクリーニング方法である。
a)血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)、特にヒトGPVIとの結合性を測定する工程、
b)血小板を活性化させる作用、及びまたは、生体内における血小板減少を惹起する作用を測定する工程、及び、
c)血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる活性を測定する工程。
本発明の第11の態様は、第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチドと抗体との反応性、例えば、結合性を測定する工程を含む、抗体のエピトープの推定方法、または、抗体の認識領域の同定方法である。
本発明の第12の態様は、本発明第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチド等を用いることを特徴とするGPVIに特異的な抗体の製造方法、具体的には、
(36)本発明第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチド等を免疫用の投与抗原として、または、体外免疫用の抗原として用いること特徴とするGPVIに特異的な抗体、好ましくは、本発明の第1ないし第3の態様の抗体の製造方法、
(37)本発明第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチド等を抗体の検出または同定用の抗原として用いること特徴とするGPVIに特異的な抗体、好ましくは、本発明の第1ないし第3の態様の抗体の製造方法である。すなわち、本発明の抗体が認識しうるGPVI、特にヒトGPVI上のアミノ酸配列、例えば、ループ構造に対応するアミノ酸配列がマウスGPVI上に組み込まれたGPVI組換体は、それ自身を免疫原及び/または検出用抗原として同じ認識領域を認識しうる新たな抗体を得ることができる。ヒト治療用抗体のより好ましい作製方法として、ヒト抗体遺伝子トランスジェニック非ヒト動物を用いた方法が開示されている(WO2002/070648(特表2005-504507)、WO2002/043478(特表2004-515230))。異種のGPVI、例えばマウスGPVIにヒトGPVIの部分アミノ酸配列を組み込んだ蛋白質は、上記のトランスジェニック動物、例えばマウスに免疫した場合、GPVIのマウスのアミノ酸配列には反応せずに組み込まれたヒトアミノ酸配列、好ましくはエピトープ、により反応するヒト抗体が効率的に得られると考えられる。よって、この方法で得られたヒト抗体は、本発明の第1または第2態様の抗体の特徴を有するヒト抗体として有用であり、該方法は特に有用である。
本発明の第13の態様は、第1ないし第3の態様の抗体を用いて試料中のGPVIを検出または定量する方法である。該方法は、血小板上のGPVIまたは体液、特に血液中のGPVIを測定でき、疾患の診断をする方法、好ましくは血栓形成を伴う疾患の診断をする方法に応用可能である。また、該方法は、GPVIと関連した治療のモニタリング、特に、血小板上のGPVIを指標として、抗GPVI抗体の効果予測もしくは判定、または予後の判定等に応用しうる。
(構成)
本件発明の抗体は、血小板、例えば、哺乳類のGPVI、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウス血小板、特に、ヒト血小板上に存在する膜糖蛋白質であるGPVIを特異的に認識するものである。なお、本発明の抗体が認識するGPVIは必ずしも血小板上のものに限られず、例えば、巨核球のGPVIをも認識し得るものである。ここで、本発明が対象とするGPVIは哺乳類のGPVIであり、例えば、ヒト、サル、ラット、マウスGPVIが挙げられ、特に、ヒトGPVIである。以下に、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本明細書中では、アミノ酸配列を1文字表記または3文字表記で記載することがある。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもよいが、好ましくは、モノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体の作製方法には特定の方法に限らず、例えばハイブリドーマが産生したモノクローナル抗体、抗体の遺伝子を組み込んだ組換え細胞が産生したモノクローナル抗体、またはEBV(エプスタイン・バーウイルス)により形質転換した細胞が産生するモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、本発明のモノクローナル抗体を少なくとも一つ含有する抗体の混合物もしくはポリクローナル抗体、または複数の本発明のモノクローナル抗体の混合物であってもよい。さらに、本発明の抗体は、二重特異性(bispecific)抗体または多重特異性(polyspecific)抗体も包含する。
本発明の抗体は、GPVI、例えば、哺乳類のGPVI、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウスGPVI、特にヒトGPVIと特異的に結合する抗体である。本発明の抗体とGPVI、特にヒトGPVIとの結合は公知の方法で測定可能であり、具体的には、実施例に示された方法が挙げられる。本発明の抗体はGPVI、特にヒトGPVIと抗体との解離定数(Kd値)が、4×10-8M、好ましくは10-8M以下、より好ましくは4×10-9M以下、さらに好ましくは10-9M以下である。ヒトGPVIと抗体との解離定数を測定する方法は特定の方法に限定されず、常法により行うことができる。例えば、チップ上に固定化したGPVI-Fcを用いてBIACORE3000のような蛋白質相互作用解析装置により測定することができる。また、血小板、特にヒト又はサル血小板を用いて、公知の方法、例えば、RI標識抗体を用いた方法によっても測定できる。具体的には、実施例5及び52に示されている。
本発明の第1の態様の抗体は、血小板と接触させることにより、特に、生体内において接触させることにより、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる作用を有するものである。その作用は、本発明の抗体と血小板とを一定時間接触させた後、血小板を分離し、その表面上のGPVI発現量を測定することにより確認しうる。GPVI発現量はFACS等を用いた常法により測定でき、具体的な方法は実施例に示されている。本発明の抗体は、例えば、3mg/kg、好ましくは1mg/kg、より好ましくは0.3mg/kg、さらに好ましくは0.1mg/kgの投与量で、投与前値または対照群の値と比較して、20%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、血小板上のGPVIを消失させる作用を有する。
本発明の抗体は、血小板GPVIのshedding、特に、血小板の活性化に伴うメタロプロテアーゼを介した切断による血小板からのGPVIのsheddingを介さないGPVI消失作用を有するもの、または、該sheddingを惹起する作用が弱い、好ましくは有意な惹起作用がない、より好ましくは実質的に惹起作用がなく、血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる抗体である。ここで、sheddingの有無は公知の方法(Stephens G外4名、Blood. 2005 Jan 1;105(1):186−91;Gardiner EE et al., Blood. 2004;104:3611-3617、Bergmeier W et al., Thromb Haemost. 2004;91:951-958.)で検出しうるが、具体的には、実施例30に記載された方法を適用できる。
本発明の抗体は、血小板GPVIのinternalizationを介して、血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。これらの抗体は、血小板の活性化に伴うメタロプロテアーゼを介した切断による血小板からのGPVIのsheddingを惹起する抗体と異なり、以下に述べるように、それ自体では血小板を活性化させる作用、及び/または、生体内における血小板減少を惹起する作用が弱い、好ましくはほとんど作用がなく、有用なものである。そのような抗体の好適な例としては、GPVIのループ9を認識する抗体が挙げられる。
本発明の抗体による、血小板GPVIのinternalizationは、公知の方法で確認しても良く、好ましくは、実施例に示されるような、標識物質、例えば、蛍光物質、好ましくは、pH感受性蛍光物質を用いた方法、具体的には、これらの標識物質で本発明の抗体を直接又は間接的に標識する方法により、抗体が結合したGPVIが血小板内への取込みを検出し、又は、その取込み量を測定しうる。好適な方法は実施例に示されている。
本発明の抗体は、それ自体では血小板を活性化させる作用、及び/または、生体内における血小板減少を惹起する作用が弱い、好ましくはほとんど作用がないものである。血小板の活性化は公知の方法で測定しうるが、血小板表面抗原、好ましくはCD62Pの発現量を指標とすることができる。例えば、本発明の抗体を投与した生体から一定時間経過後に血小板を分離し、そのCD62Pの発現量を常法により測定する方法、及び、生体から分離した血小板と本発明の抗体を接触させ、一定時間経過後にそのCD62Pの発現量を常法により測定する方法等が挙げられる。その具体的な方法は実施例に示されている。本発明の抗体による血小板の活性化は、CD62Pの発現量を指標とした場合、血小板上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる投与量または濃度において、対照となる血小板の5倍以下、好ましくは2倍以下、より好ましくは1.5倍以下、さらに好ましくはほぼ同程度である。
また、生体内における血小板減少の有無は、本発明の抗体を生体に投与後経時的に採血して血小板数を常法により測定し、投与前値または対照となる個体の血小板数と比較することにより確認する。具体的な方法は実施例に示されている。本発明の抗体による血小板数の変化は、血小板上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる投与量または濃度において、投与前値または対照群の値を100%として、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくはほぼ同程度である。
本発明の抗体は、コラーゲンによるヒト血小板の凝集能を低下させる作用、すなわち、生体内に投与して血小板と接触させることにより血小板がコラーゲンに応答して凝集する能力を低下もしくは欠如させる作用を有するものである。その作用は、本発明の抗体を生体内に投与して血小板と接触させた後、経時的に血小板を分離し、コラーゲン惹起血小板凝集を測定することにより確認できる。ここで、血小板凝集は公知の方法で測定し得るが、例えば、血小板凝集能測定装置等で光透過率を指標として凝集率を計算することにより測定でき、一般的には、光透過率が最大となる点の凝集率(以下、最大凝集率と称することがある)で表される。後述の実施例8等に記載された方法において、本発明の抗体は、3mg/kg、好ましくは1mg/kg、より好ましくは0.3mg/kg、さらに好ましくは0.1mg/kgの投与量で、投与前値または対照群の値と比較して、20%、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、血小板のコラーゲン凝集能を低下させる作用を有する。
本発明の抗体は、好ましくは、コラーゲン以外の血小板凝集を惹起する物質、例えばADPまたはトロンビンによる凝集に対してはほとんど影響せず、コラーゲン凝集能に影響する投与量または濃度で、最大凝集率が好ましくは対照の80%以上、より好ましくは対照の90%以上、さらに好ましくは対照の95%以上である。コラーゲン以外の血小板凝集を惹起する物質によるヒト血小板の凝集の抑制を測定する方法は常法によって行うことができる。
また、本発明の抗体は、出血時間の延長作用が弱い、好ましくは有意な延長作用がない、より好ましくは実質的に延長作用がない抗体である。出血時間は公知の方法で測定でき、具体的には実施例28又は50に記載された方法を適用できる。本発明の抗体は、治療用量又はそれ以上、例えば、0.3mg/kg、好ましくは1mg/kg、より好ましくは3mg/kg、さらに好ましくは10mg/kgの投与量においても、出血時間を実質的に延長せず、具体的には、出血時間が投与前値、正常値又は対照群の5倍以下、好ましくは3倍以下、さらに好ましくは2倍以下、特に好ましくは1.5倍以下である。そのような好適な例としては、GPVI、特にヒトGPVIのループ9を認識する抗体が挙げられる。
現在まで報告されているヒトGPVIに対する抗体のほとんどは、前記ヒト自己抗体を含めて、in vitroにおいて抗体単独で血小板を活性化させる作用、及び/または、血小板凝集を惹起もしくは促進する作用を有することから、生体に投与した場合、血小板減少を引き起こす可能性が考えられる。Fab断片等の形態では、血小板凝集を惹起しないものも報告されているが、生体内においては、何らかの原因によりFabが架橋または凝集して、IgG等と同様な挙動を示す可能性も完全には否定できない。よって、抗体の活性断片ではなく完全な抗体分子、例えば、IgGの形態でも、そのような作用を示さない、または、そのような作用が低い抗GPVI抗体が好ましい。
また、生体内における動態及び安定性は、自然の形態である抗体分子、例えば、IgG等が優れている。一般に、血中半減期はFab等の断片に比べてIgGの方が遥かに長く、血栓症、特に、心房細動に伴う血栓症等の慢性的疾患や長期間の抗体投与が必要な病態においては、血中半減期の長い分子形態、特にIgGが望ましい。
本発明の抗体は血小板上のGPVIとコラーゲンとの結合を特異的に阻害するものであってもよい。例えば、後述の実施例に記載された方法において、本発明の抗体はGPVIとコラーゲンの結合を好ましくは100μg/mL以下で、より好ましくは10μg/mL以下、さらに好ましくは1μg/mL以下、特に好ましくは0.1μg/mLの濃度で50%阻害する抗体である。コラーゲンとGPVIとの結合を測定する方法は特定の方法に限定されず、他の常法により行うことができる。
本発明の第2の態様は、新規なGPVI上の認識領域、結合部位もしくはエピトープによって規定される抗GPVI抗体であり、好ましくはモノクローナル抗体である。本発明の抗体のGPVI上の認識領域等は公知の方法によって確認または推定しうる。例えば、本発明の第11の態様の方法を応用し、第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチドとの反応性を測定することにより実施できる。具体的な方法は実施例に示されている。例えば、実施例7または実施例18に記載された方法において、反応性もしくは阻害率が対照(例えば、hGPVI-Fc)と比較して有意に変化する、例えば、50%、好ましくは30%、より好ましくは10%以下となる場合、または、IC50等の値が有意に変化する、例えば、3倍、10倍、より好ましくは30倍、さらに好ましくは100倍となる場合を基準として確認又は推定しうる。GPVI上の認識領域、結合部位もしくはエピトープが確認された抗体は、単独でまたは他の抗体との組合せにより、特定のGPVI分子種を検出するために、または、GPVIの構造及び機能の関係を解析する目的においても有用である。
本発明の第3の態様として、新規なCDRアミノ酸配列または可変領域アミノ酸配列を含有する抗ヒトGPVI抗体がある。
抗体の重鎖および軽鎖のN末端側には可変領域が存在し、それぞれ重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)と呼ばれる。可変領域内には相補性決定領域(complementarity determining region; CDR)が存在し、この部分が抗原認識の特異性を担っている。可変領域のCDR以外の部分は、CDRの構造を保持する役割を有し、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。重鎖および軽鎖のC末端側には定常領域が存在し、それぞれ重鎖定常領域(CH)、軽鎖定常領域(CL)と呼ばれる。
重鎖可変領域中には、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。重鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて重鎖相補性決定領域と呼ぶ。軽鎖可変領域中にも同様に、第1の相補性決定領域(CDR1)、第2の相補性決定領域(CDR2)および第3の相補性決定領域(CDR3)の3つの相補性決定領域が存在する。軽鎖可変領域中の3つの相補性決定領域をまとめて軽鎖相補性決定領域と呼ぶ。
本発明の抗体のCDR配列は必ずしも限定されないが、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3としてのアミノ酸配列の好適な組合せ、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3としてのアミノ酸配列の好適な組合せは、さらに、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3としてのアミノ酸配列の好適な組合せは表8及び9ならびに表12及び13に示されている。好ましくはGPVIのループ9を認識する抗体のCDRアミノ酸配列のうち、いずれか1つ以上、好ましくはH鎖の3つ、より好ましくは全てのアミノ酸配列を含有する抗体である。CDR以外のアミノ酸配列は特に限定されず、CDR以外のアミノ酸配列が他の抗体、特に、他種の抗体由来である、いわゆるCDR移植抗体が本発明の抗体に包含される。この内、CDR以外のアミノ酸配列がヒト由来であるヒト化抗体が好ましく、必要に応じてフレームワーク領域(FR)に1ないし数個のアミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/または挿入を伴っていてもよい。ヒト化抗体の作製方法は公知の方法を用いることができ、具体的な方法は実施例に示されている。
本発明の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列は必ずしも限定されないが、好ましい抗体として、VHとして配列番号281のアミノ酸配列もしくはVLとして配列番号285のアミノ酸配列のいずれか1つ以上を含有する抗体、またはVHとして配列番号283のアミノ酸配列もしくはVLとして配列番号285のアミノ酸配列のいずれか1つ以上を含有する抗体がある。
なお、本発明の抗体は必ずしも特定のアミノ酸配列のものに限定されず、その活性及び/または抗原性に実質的に影響のない範囲で、本発明の抗体のアミノ酸配列において、例えば可変領域、特にFR部分において1ないし数個のアミノ酸残基の付加、欠失、置換及び/または挿入が許容される。
本発明の抗体は、抗体の定常領域が好ましくはヒト抗体、より好ましくはヒトIgG、さらに好ましくはヒトIgG4由来のアミノ酸配列からなる抗体である。
本件発明の抗体は特定の分子種に必ずしも限定されるものではない。抗体、すなわち免疫グロブリンの構造は重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)とからなり、重鎖のクラス(γ、α、μ、δ、ε)により5つのイソタイプ(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)に分けられる。このうちIgGとIgAは重鎖の違い(例えばヒトの場合、γ1、γ2、γ3、γ4、α1、α2)からサブクラス(例えばヒトの場合IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)に分けられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかのタイプに分類される。本発明の抗体はクラス、サブタイプまたはイソタイプは限定されず、いずれに分類されるものでもあってもよい。好ましくはイソタイプがIgGの抗体であり、さらに好ましくは補体結合性のないという点においてサブクラスがIgG4の抗体である。
本発明の抗体としては、その活性、例えば、GPVIとの結合能を有する限りにおいて、抗体の断片、特に活性断片または一部でもよい。ここで、抗体の活性断片とは、抗体の少なくとも一つの活性、特に、抗原結合活性を有する断片である。例えば、Fab(fragment of antigen binding)、Fab'、(Fab')2、一本鎖抗体(scFv)、ジスルフィド安定化抗体(dsFv)、diabody、sc(Fv)2(例えば、Orita T, Blood. 2005; 105:562-566参照)、nanobody(例えば、Cortez-Retamozo V., Cancer Research 64, 2853-2857, 2004参照)及びCDRを含有するペプチド等が挙げられる。また、抗体の誘導体とは、抗体の少なくとも一つの活性、特に、抗原結合活性を有する抗体由来の物質で、他の物質を結合した抗体もしくは抗体の活性断片、他の物質で修飾された修飾抗体もしくはその活性断片、又は、抗体の構造、特に、アミノ酸配列に変異を導入した分子が挙げられる。本発明の抗体は、その抗原結合価は必ずしも限定されず、FabもしくはscFvのような一価抗体でも良いが、生体内、特に血中での安定性、GPVIへの結合性または作用の強度の観点から、好ましくは、二価以上の多価抗体、例えば、二価、三価、四価もしくは十価の抗体、より好ましくは、二価抗体である。
本発明の第4の態様として、本発明第1ないし第3の態様の抗体をコードするポリヌクレオチドまたは核酸が提供される。該ポリヌクレオチドは、本発明の抗体のアミノ酸配列をコードするものであれば必ずしも限定されず、ポリヌクレオチドとしては、DNA及びRNAが含まれる。
本発明の抗体のCDR配列をコードするポリヌクレオチドは必ずしも限定はないが、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3としてのアミノ酸配列をコードする塩基配列の好適な組合せ、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3としてのアミノ酸配列をコードする塩基配列の好適な組合せは、さらに、VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3としてのアミノ酸配列をコードする塩基配列の好適な組み合わせは、表8および9ならびに表12及び13に示されている。
本発明の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドは必ずしも限定はないが、好ましくはVHとしてのアミノ酸配列をコードする配列番号87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107及び109の塩基配列、またはVLとしてのアミノ酸配列をコードする配列番号88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108及び110の塩基配列のいずれか1つ、より好ましくは両方の塩基配列を含有するポリヌクレオチドであり、また、好ましくはVHとしてのアミノ酸配列をコードする配列番号の塩基配列、またはVLとしてのアミノ酸配列をコードする配列番号の塩基配列のいずれか1つ、より好ましくは両方の塩基配列を含有するポリヌクレオチドである。
本発明の抗体の定常領域をコードするポリヌクレオチドは、好ましくはヒト抗体、より好ましくはヒトIgG、さらに好ましくはヒトIgG4由来の塩基配列を含有する。
本発明の抗体のヌクレオチド配列を含有するベクターまたは遺伝子を細胞に移入することにより、本発明の抗体を産生する細胞を製造することができる。移入方法は公知の方法に従うことができ、具体的な方法は実施例に示されている。
本発明第5の態様として、本発明の抗体を産生する細胞が提供される。このような細胞の例としては、ハイブリドーマ、形質転換体、または本発明の抗体の遺伝子を導入した遺伝子組換え細胞等がある。抗体を産生するハイブリドーマとしては、具体的には表6及び11に示されたクローンが挙げられる。また、本発明により上記発明の細胞が産生する抗体が提供される。
本発明の第8の態様及び第9の態様により、GPVIに関連した新規なペプチドまたはポリペプチドが提供される。これらのペプチド等は公知の方法で作製でき、具体的な方法は実施例に示されている。第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチドは、抗GPVI抗体を作製するための免疫用の投与抗原として、または、抗GPVI抗体を検出するための抗原として使用し得る。
(製法)
本発明の第6の態様として、抗体の生産方法が提供される。本発明の抗体を作製する方法には必ずしも限定はないが、以下に記載の方法でも作製しうる。すなわち、ヒトGPVIもしくはその断片またはそれらの誘導体、例えば、ヒトGPVI−Fcを抗原として動物、例えば、マウスに投与し、その末梢血からリンパ球を採取し、マウスミエローマ細胞とのハイブリドーマを作製する。作製したハイブリドーマが産生する抗体を得て、GPVIとの結合能を有し、第1ないし第3の抗体の特性を有する抗体を選択し、この抗体を産生する細胞を得る。この細胞を培養することにより、本発明の抗体を得ることができる。
本発明の抗体は、公知の方法(それぞれNature,312:643,1984 、Nature,321:522,1986 以来、多くの方法が開発されている)を用いた組換えヒト抗体としても作製できる。まず、本発明の抗体を産生する細胞、例えば、リンパ球、好ましくは、抗GPVIモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHまたはVLをコードする核酸、例えばcDNAを取得し、塩基配列およびアミノ酸配列を決定する。次に、取得したVHおよびVLをコードするcDNAを同一細胞又は別のヒト細胞より作製したヒト抗体CHおよび/またはヒト抗体CLをコードする遺伝子を含有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入し発現させることにより製造することができる。動物細胞に導入する遺伝子の作製方法には限定はなく、ハイブリドーマ由来のゲノムDNAまたはcDNAから得てもよく、ハイブリドーマのmRNAからPCRによって得てもよく、また化学合成によっても得てもよい。
本発明の抗体のVHまたはVLをコードする核酸を組み込むベクターとしては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合するベクターまたは高発現用ベクターが好ましい。好適な例としては、EFプロモーター及び/またはCMVエンハンサーを含有するベクターが挙げられ、例えば、pEF-BOSまたは実施例で用いたベクターがある。また、通常VHまたはVLをコードする核酸を組み込んだ発現ベクターをそれぞれ作製し、宿主細胞にcotransfectするが、単一の発現ベクターに組み込んでも良い。
発現ベクターを導入する宿主細胞としては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合する細胞が好ましい。例えば、細菌(大腸菌等)、放線菌、酵母、昆虫細胞(SF9等)、哺乳類細胞(COS-1、CHO、ミエローマ細胞等)が挙げられる。
組換抗体を工業的に生産するためには、一般的には当該抗体を安定して高生産する組換動物細胞株、例えば、CHO細胞株が利用される。そのような組換細胞株の作製、クローン化、高発現のための遺伝子増幅及びスクリーニングは公知の方法を用いることができる(例えば、Omasa T.: J. Biosci. Bioeng., 94, 600-605, 2002等参照)。また、安定高生産動物細胞株の樹立において、2種類のプロモータを使用するが、プロモータ活性の異なる組合せ、例えば、活性の高いもの及び低いもの、を利用することによって、好ましくは相対的に活性の弱いプロモーターを選択マーカーの発現プロモーターとして利用することで発現能の高いクローンを効率的(選択的)に取得し得る。好適なプロモータの組合せの例及び具体的な方法は実施例に示されている。
組換えヒト抗体の作製に用いるヒト抗体の定常領域としては、例えば、ヒト抗体重鎖定常領域としてはCγ1やCγ4、ヒト抗体軽鎖定常領域としてはCκ等の任意のヒト抗体の定常領域を用いることができる。
本発明の抗体の内、ヒトのアミノ酸配列を含有する抗体は、ヒト体内に天然に存在する抗体の他に、可変重鎖および可変軽鎖からなるコンビナトリアルライブラリー、例えば、ヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB 細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab 、一本鎖抗体等の抗体の活性断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。これらのライブラリーをスクリーニングすることによっても本発明の抗体は入手され得る。これらの方法および他の方法は、当業者に周知である(Huseら,Science 246:1275−1281(1989)、WinterおよびHarris,Immunol.Today 14:243−246(1993);Wardら,Nature 341:544−546(1989);HarlowおよびLane,前出,1988);Hilyardら,Protein Engineering:A practical approach(IRL Press 1992);Borrabeck,Antibody Engineering,第2版(Oxford University Press 1995))。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体の活性断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体の活性断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
本発明は重鎖2本と軽鎖2本からなる抗体のほかに、本発明の抗体の活性断片等も含まれる。抗体の活性断片としては、例えばFab (fragment of antigen binding )、Fab'、F(ab')2があり、抗体の活性断片をリンカー等で結合したものとして例えば一本鎖抗体(single chain Fv : scFv )やジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv :dsFv)があり、抗体の活性断片を含むペプチドとして例えばCDR を含有するペプチドが挙げられる。これらは、本発明の抗体を適当な蛋白分解酵素で処理する方法または遺伝子組換技術等、公知の方法で製造することができる。
本発明のFab は、本発明の抗GPVI抗体をIgMの場合はタンパク質分解酵素ペプシンで処理して、IgGの場合はタンパク分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFab をコードするDNA を原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab を製造することができる。
本発明のF(ab')2 は、本発明の抗GPVI抗体をタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
本発明のFab'は、GPVIに特異的に反応するF(ab')2 を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。
本発明のscFvに含まれるVHおよびVLは、本発明のハイブリドーマが産生する抗体またはヒト抗体のいずれをも用いることができる。本発明のscFvは、本発明の抗GPVI抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNA を構築し、該DNA を原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法[Protein Engineering, 7, 697 (1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のdsFvに含まれるVHおよびVLは本発明の第1または第2の態様の抗体のいずれに由来するものをも用いることができる。
本発明のdsFvは、本発明の抗GPVI抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNA を構築し、該DNA を原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
CDR を含むペプチドは、H 鎖またはL 鎖CDR の少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDR は、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明のCDR を含むペプチドは、本発明の抗GPVI抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得した後、CDR をコードするDNA を構築し、該DNA を原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDR を含むペプチドを製造することができる。また、CDR を含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。
本発明の抗体もしくは活性断片またはそれらの誘導体には、例えばハイブリドーマが産生する抗体、EBVを用いて形質転換した細胞が産生する抗体、cDNAより発現した組換え抗体、またはそれらの抗体の活性断片に放射性同位元素、タンパク質、ペプチドまたは低分子の化合物などを化学的に結合させた抗体、または遺伝子工学的に融合させた抗体も含まれる。例えば、ポリエチレングリコール等を結合した抗体は、安定性等の点で有用性が高く、好ましい例の一つである。本発明の抗GPVI抗体または抗体の活性断片のH鎖或いはL鎖のN末端側或いはC末端側、抗体または抗体の活性断片中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体または抗体の活性断片中の糖鎖に放射性同位元素、タンパク質、ペプチドあるいは低分子の化合物などを化学的手法[抗体工学入門(金光修著1994
年(株)地人書館)]により結合させることにより製造することができる。
ハイブリドーマとは、リンパ球と、ヒト、マウス、ラット等に由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞を意味し、公知の方法により作製しうる。
モノクローナル抗体を作製する場合は、細胞融合に使用するミエローマ細胞との適合性を考慮して選択することが好ましい。ミエローマ細胞は、公知の種々の細胞が使用可能である。これにはヒト由来のSKO―007、ヒトマウスヘテロミエローマであるSHM−D33、マウス由来のP3、P3U1、SP2/O、NS−1、ラット由来のYB2/0及びY3−Ag1, 2, 3等の骨髄腫細胞が含まれる。
ヒト抗体の場合、体外免疫によるリンパ球の活性化を利用してハイブリドーマを作製する方法、及び、ヒト抗体遺伝子を組み換えた動物、特にトランスジェニックマウス、例えば、KMマウスを用いてハイブリドーマを作製する方法が挙げられる。(WO2002/070648(特表2005-504507)、WO2002/043478(特表2004-515230))異種のGPVI、例えばマウスGPVIにヒトGPVIの部分アミノ酸配列を組み込んだ蛋白質は、上記のトランスジェニック動物、例えばマウスに免疫した場合、GPVIのマウスのアミノ酸配列には反応せずに組み込まれたヒトアミノ酸配列、好ましくはエピトープ、により反応するヒト抗体が効率的に得られると考えられる。よって、この方法で得られたヒト抗体は、本発明の第1または第2態様の抗体の特徴を有するヒト抗体として有用であり、該方法は特に有用である。ハイブリドーマ作製に用いる細胞としては、必ずしも限定はされないが、ヒト抗体を作製する場合はハイブリドーマ作製に用いる複数の細胞のうち少なくとも1種はヒト由来の細胞であることが好ましい。ヒト由来の細胞としては、末梢血、リンパ節または脾臓等のヒトのリンパ球が用いられ、特に自己抗体の産生が確認されているヒトのリンパ球が好ましい。
リンパ球の活性化は公知の方法により行なうことができる。例えば、ヒトの末梢血又は脾臓からB細胞を採取し、in vitro immunization法により抗原刺激し、ヒトのB細胞由来のミエローマ細胞あるいはマウス由来のミエローマ細胞とのハイブリドーマを作製する方法、EBVでトランスフォームし、マウスミエローマ細胞と融合させる方法、PWM等のマイトジェンで刺激しB細胞をポリクローナルに活性化し融合させる方法(免疫実験操作法I・II、右田俊介他編集、南江堂)等が好ましい。
動物を免疫するための投与抗原、または、細胞を刺激するために用いる抗原は、必ずしも限定はない。抗原とするタンパク質の由来動物は、抗体の使用目的に応じて適宜選択し得るが、天然物由来のもの、遺伝子工学的に作成したもの、化学的に合成したもの、他のタンパク質やペプチドとの融合タンパク質等、いずれでもよい。例えば血小板、血小板の膜、精製GPVI、組換えGPVI、GPVI-Fcを用いることができ、好ましくはGPVI-Fcである。また、本発明第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチドは、抗GPVI抗体を作製するための免疫用の投与抗原として好適に使用し得る。
活性化リンパ球とミエローマ細胞との融合は、Milstein等の方法(Methods in Enzymol., 73 巻 3頁) 等の公知の方法を用いて行なうことができる。例えば、融合剤としてポリエチレングリコール(PEG)を使用する方法(単クローン抗体実験操作法入門、安東民衛・千葉丈/著、講談社)または電気融合法等が挙げられる。免疫細胞とミエローマ細胞との混合比は、それらが融合できる比率であれば限定されないが、活性化リンパ球に対し、ミエローマ細胞を1/10量ないし等量を使用することが好ましい。PEG(平均分子量1, 000〜4,000)を使用して細胞融合を行なう方法ではPEG濃度は必ずしも限定されないが50%で行なうことが好ましい。また、融合効率促進剤としてジメチルスルフォキシド(DMSO)等の補助剤を添加してもよい。融合は37℃に加温したPEG溶液を混合した細胞に添加することにより開始し、1〜5分間反応後、培地を添加することにより終了する。
この融合により形成されたハイブリドーマをヒポキサンチン、チミジン及びアミノプテリンを含む培地(HAT培地)等の選択培地で1日〜10日間培養し、未融合細胞と分離する。得られたハイブリドーマをその産生する抗体により更に選択する。選択したハイブリドーマを公知の限界希釈法に従って単一クローン化し、単一クローン性抗体産生ハイブリドーマとして樹立する。
ハイブリドーマの産生する抗体の活性を検出する方法は公知の方法を使用することができる。ここで抗体の活性は、第一段階として、GPVI抗原への結合能を、第二段階として、GPVIとコラーゲンの結合を阻害する活性を検出する。第一段階の活性の検出方法としては、例えばELISA法、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ法が挙げられる。第二段階の活性の検出法としては、例えばELISA法(結合阻害型)、タンパク相互作用解析法(BIACORE等)、血小板凝集抑制測定法が挙げられる。また、第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチドは、抗GPVI抗体を検出するための抗原として使用し得る。具体的方法は実施例に示されている。
樹立したハイブリドーマを公知の方法で培養し、その培養上清よりモノクローナル抗体を得ることができる。
抗体の精製は、塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマト法またはアフィニティークロマト法等の公知の精製手段を用いて行うことができる。
抗体の濃度は公知のタンパク質の定量方法、例えば280nmにおける吸光度の測定により測定することができる。
本発明の抗GPVI抗体の抗原結合性を確認する方法、または本発明の抗GPVI抗体を用いて生物試料中のGPVIを検出する方法としては、蛍光抗体法、免疫酵素抗体法(ELISA) 、放射性物質標識免疫抗体法(RIA) 、免疫組織染色法、免疫細胞染色法などの免疫組織化学染色法(ABC 法、CSA 法等)、ウェスタンブロッティング法、免疫沈降法、上記に記した酵素免疫測定法、サンドイッチELISA 法[単クローン抗体実験マニュアル(講談社サイエンティフィック、1987年)、続生化学実験講座5免疫生化学研究法(東京化学同人、1986年)]などを用いることができる。
(用途)
本発明の抗体は、ヒトGPVIに特異的に結合するものであり、本発明の抗体、抗体の活性断片、化学物質と結合させた抗体の修飾物、またはこれらの混液を含む組成物等は、ヒトの疾患の予防、診断および治療の用途、また被験試料、細胞および組織等のヒトGPVIの検出の用途等を含めて、種々の用途がある。
用途:医薬
本発明の抗体はヒトGPVIへの結合の特異性が高く、かつ、単独ではヒト血小板の活性化及び/または血小板減少を促進または惹起する作用が低いことから、特に、ヒトの疾患、例えば、血小板の活性化もしくは凝集、または血管内皮障害もしくは動脈硬化性の反応によって引き起こされる疾病の予防及び/または治療に有効であり、また、血栓もしくは塞栓に起因する疾患、例えば、血栓症及び塞栓症等の予防及び/または治療に利用することができる。これらの疾患には、動脈性血栓症のみならず、静脈性血栓症も含まれ、また、心房細動に起因する脳梗塞も含まれる。
本発明の抗体により予防及び/または治療が可能なヒトの疾患または病態としては、具体的には、心筋梗塞、血栓溶解療法時、経皮的冠静脈内腔拡張術施行時、ステント施行時、バイパス手術施行時もしくは人工血管施行時の、またはこれらの後の血管内皮肥厚、血管再狭窄、狭心症もしくは心筋梗塞、心房細動もしくは心房粗動及びこれらに起因する血栓症、塞栓症もしくは脳梗塞、閉塞性血栓性血管炎、急性動脈閉塞症、閉塞性動脈硬化症または深部静脈血栓症等があり、脳梗塞(アテローム性血栓性梗塞、ラクナ梗塞、心原性梗塞)、一過性脳虚血発作、くも膜下出血後の脳血管攣縮、肺血栓、肺塞栓症、血管性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、播種性血管内凝固症候群、体外循環時での血液凝固防止、全身性エリテマトーデス、多発性動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、紫斑病性腎炎、糖尿病に伴う内皮細胞傷害、糖尿病性腎炎、糖尿病性網膜症、腎塞栓、移植治療に伴う合併症(肝静脈閉塞症、移植片対宿主病)等が挙げられる。
本発明の抗体は、また、先述の予防及び/または治療対象の疾患に対して、単独で投与されるか、あるいは他の薬理活性成分と併用されることもできる。かかる薬理活性成分とは、例えば公知の血栓溶解剤(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)ならびにそれらの誘導体(改変体あるいはいわゆる第二世代といわれるものも含む)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ)、あるいは公知の抗血小板薬(例えばアスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、トロンボキサンアンタゴニスト、トロンボキサン合成阻害剤、GPIIb/IIIaアンタゴニスト)、公知の抗凝固薬(例えばワーファリン、ヘパリン、低分子ヘパリン、ペンタサッカライド、トロンビン阻害剤、FXa阻害剤、FVIIa阻害剤)などが挙げられる。ここで併用とは、本発明の抗体と、当該薬理活性成分とをともに含む合剤を投与する他、本発明の抗体と当該薬理活性成分とがそれぞれ別個の製剤として一時期にもしくは時間をずらして投与される場合をも含み、患者の血中において同時に存在する限りにおいて投与の形態は問われない。
本発明の抗体ならびに製剤学的に許容される組成物を有効成分として含有する医薬品は、通常用いられる製剤用の担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて例えば錠剤、注射剤、散剤、坐剤等に調製され、人間その他の動物に対して投与される。
ヒトに適用する場合、その投与経路は、経口投与、静脈内投与(ボーラス投与、連続点滴、間欠的点滴)、皮下投与、筋肉内投与、関節内投与、経皮投与、経鼻投与等があるが、通常、経口投与または静脈内投与である。本発明の抗体のヒトに対する臨床投与量は適用される患者の症状、体重、年齢や性別等を考慮して適宜決定されるが、通常成人一日あたり、静脈内投与で1〜10000mg、好ましくは10〜1000mgであり、これを1回あるいは数回にわけて投与する。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。
ここで、本発明の抗体はGPVIを認識する点で共通するものの、本発明は異なる機序を有する多様な抗体を包含するものである。例えば、GPVIとコラーゲンの結合を直接阻害する、またはGPVIを切断することにより血小板の活性化及び/または凝集を抑制する抗体は比較的即時的な効果を期待できるので、少なくとも疾患の急性期(例えば、心筋梗塞時もしくはPTCA実施時またはそれらの直前もしくは直後)において有用である可能性がある。このような場合には、好ましくは血中の血小板表面のGPVIの大部分に本発明の抗体を結合させるために比較的大量の抗体を投与、例えば、単回もしくは分割静注または点滴静注することができる。また、GPVIを内部に取り込ませる抗体は即時的効果を期待することはできないかもしれないが、ヒト血小板の血中での寿命(9〜10日前後)及びヒト抗体の血中半減期(IgGの場合、数週間)を考慮すると持続的な効果が期待できるので、例えば、疾患の慢性期(例えば、心筋梗塞発症後またはPTCA実施後数日〜数ヶ月)において有用である可能性がある。このような場合には、血中の血小板のコラーゲンに対する反応性を部分的に、好ましくは完全に、阻止する程度に血小板表面のGPVIを消失させるために必要な量の抗体を比較的間隔を置いて、例えば、1クールを数日から数週間として、投与、例えば、単回もしくは分割静注または点滴静注することができる。従って、好ましい態様において、本発明の抗体はこれらの効果を併せ持っても良い。また、それぞれの効果が期待できる抗GPVI抗体を複数組み合わせた治療を実施しても良い。
非経口投与のための組成物は、通常、許容される担体、好ましくは水性担体中に溶解された免疫グロブリンの溶液又はそれの混液を含む。種々の水性担体、例えば、水、緩衝水、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒトアルブミン溶液等が用いられ得る。これらの溶液は、無菌であり、そして一般的には微粒子物質が存在しない。これらの組成物は、慣用の、良く知られた滅菌方法により滅菌されうる。組成物は、生理学的条件に近づけるために、要求に応じて、薬学的に許容できる補助物質、例えばpH調節及び緩衝化剤、毒性調節剤等、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び乳酸ナトリウムを含みうる。これらの製剤中の抗体の濃度は、広範囲に、即ち、約0.005重量%未満(通常は、少なくとも約1重量%)から15又は20重量%と大きい量まで変化することができ、主として、選択された投与の特定の様式に従って、液容量、粘性等に基づいて選択される。
非経口投与組成物を調製するための現実の方法は、本技術分野の熟練者にとって公知又は明白であり、例えば、レミントンズ ファーマシューティカル サイエンス(第15版、マック パブリッシング カンパニー、イーストン、ペンシルバニア、1980)(本引例をもって本明細書の一部と成す)に更に詳細に記載されている。洗浄(lavage)又はその他のルートのために適した組成物は、意図される特定の使用に従って選択される。いくつかの薬学的組成物は、抗GPVI抗体及びその疾患に於いて常用される他の治療剤を含みうる。いずれの場合も、ボーラス投与および持続投与が適用されうる。また、予防的または治療的有効量は、対象疾患、病態および患者の状態等によって適宜決定される。
本発明の抗体は、貯蔵のため凍結又は凍結乾燥され、使用に先だって適当な担体中で再構成されうる。この技術は、慣例の免疫グロブリンにおいて有効であると知られており、公知の、凍結乾燥及び再構成技術が用いられ得る。凍結乾燥及び再構成が、様々な程度の抗体の活性損失をもたらしうる(例えば、慣例の免疫グロブリン、IgM抗体は、IgG抗体よりも大きい活性損失を生じる傾向にある)ということ、及び使用レベルが、それを補うために調節されなければならないかもしれないということは、当業者にとって認識されることである。
用途:GPVI検出
本発明の抗体または抗体の活性断片を用いて、被検試料中のGPVIを検出する方法は、被験試料と本発明の抗体または抗体の活性断片を接触させる工程、本発明の抗体または抗体の活性断片に結合した被検試料中のGPVIを検出する工程を含み得る。被検試料中のGPVIを定量する工程を更に含んでも良い。被験試料中のGPVIを検出する方法により、疾患の診断を行うことができる。特に、ヒトの疾患、例えば、血栓性、塞栓性または動脈硬化性の疾患の診断に利用することができる。
本発明の抗体を用いて、被検試料中のGPVIを検出する方法としては、サンドイッチELISA系、インヒビションELISA 系、蛍光抗体法、免疫組織化学染色法、放射性物質標識免疫抗体法、ウエスタンブロッティング法、免疫沈降法などがあげられるが、これらに限定されるものではない。対象となる被検試料は限定されないが生物試料が用いられ、動物、特にヒトの体液あるいは、組織、細胞および菌体ならびにそれらの抽出液、培養上清、塗末標本および切片が挙げられるが、血小板または血漿あるいは血清であることが好ましい。
また、血小板上のGPVIを測定することにより、GPVIと関連した治療のモニタリング、特に、血小板上のGPVIの消失を指標として、抗GPVI抗体の効果予測もしくは判定、または予後の判定等に応用しうる。
以下の実施例により本発明を更に詳述するが、本発明はこれら実施例に限定して理解されるべきものではない。
(実施例1)
GPVI細胞外領域‐Fc融合蛋白質の作製
A.ヒトGPVI細胞外領域‐マウスFc融合蛋白質(hGPVI-mFc)の作製
(1)hGPVI-mFc融合蛋白発現プラスミドの構築
マウスゲノムDNAを鋳型とし、マウスイムノグロブリン(mIgG2a)重鎖定常領域の各ドメインをコードする遺伝子領域を増幅した。すなわち、以下のプライマー対でPCR反応を行った。その結果、mIgG2a-a(配列番号152)およびmIgG2a-c(配列番号154)ではCH1ドメイン、mIgG2a-b(配列番号153)およびmIgG2a-e(配列番号156)ではヒンジ部分、mIgG2a-d(配列番号155)およびmIgG2a-g(配列番号158)ではCH2ドメイン、mIgG2a-f(配列番号157)およびmIgG2a-h(配列番号159)ではCH3ドメイン増幅した。次にこれら4種の増幅産物を混合し、プライマーmIgG2a-aおよびmIgG2a-hを用いたPCR反応を行うことで、各ドメインが連結された増幅産物(重鎖定常領域(Cγ2a)をコードするDNA断片)を得た。この増幅産物をpT7-BlueTベクターにクローニングした後、マウスFc領域をコードするDNA断片を制限酵素Bam HIおよびKpn Iで切り出して断片Aを調製した。一方、pCAGGS-GPVI-FcプラスミドからヒトGPVIの細胞外ドメインをコードするDNA断片を制限酵素Xba IおよびBgl IIで切り出し、断片Bを調製した。これらの断片を、Xba I およびKpn Iで切断して調製した発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に、断片A+断片Bとなるように連結し、hGPVI-mFc(配列番号222)を発現するプラスミド(pTK-2249)を構築した。
(2)hGPVI-mFc融合蛋白質の発現および精製
COS-1細胞は10%牛胎児血清入りのダルベッコMEM培地で継代し、pTK-2249をトランスフェクション試薬(FuGENE6、ロシュダイアグノスティックス)と適当量混和した後に、無血清のダルベッコMEM培地に滴下し、これを培養液と交換することでトランスフェクションを行った。5% CO2存在下、37℃で3日間培養し、その培養上清をプロテインAカラム(Prosep-A、MILLIPORE)にて精製したものを抗ヒトGPVI抗体作製用の抗原とした。
B.ヒトGPVI細胞外領域‐ヒトFc融合蛋白質(hGPVI-hFc)発現プラスミド(pTK-2233)の構築および発現
ヒトhGPVI-hFcをコードする遺伝子をもつプラスミド(pCAGGS-GPVI-Fc)を制限酵素Xba IおよびEco T22Iで切断して得られた断片J、制限酵素Eco T22IおよびBgl IIで切断して得られた断片Kとそれぞれ調製し、発現プラスミドpEF2cewのEF-1αプロモーター下流に断片J+Kとなるように連結してhGPVI-hFc発現プラスミド(pTK-2233)を構築した。なお、hGPVI-hFcの発現および精製はhGPVI-mFcの場合と同様に行った。
C.マウスGPVI細胞外領域‐ヒトFc融合蛋白質(mGPVI-hFc)発現プラスミド(pTK-2440)の構築
マウスゲノムDNAを鋳型とし、表記のプライマー対でPCR反応を行った。その結果、mGPVI-h(配列番号162)およびmGPVI-i(配列番号163)でPCR増幅産物hi、mGPVI-j(配列番号164)およびmGPVI-k(配列番号165)でPCR増幅産物jk、mGPVI-l(配列番号166)およびmGPVI-m(配列番号167)でPCR増幅産物lm、mGPVI-n(配列番号168)およびmGPVI-o(配列番号169)でPCR増幅産物no、mGPVI-p(配列番号170)およびmGPVI-c(配列番号160)でPCR増幅産物pcが得られた。これらの増幅産物を混合して鋳型とし、さらにプライマーmGPVI-e(配列番号161)、mGPVI-q(配列番号171)、mGPVI-r(配列番号172)、mGPVI-s(配列番号173)およびmGPVI-cを混合してPCR反応を行うことで、各断片が連結された増幅産物を得た。この増幅産物をpT7-BlueTベクターにクローニングし、pTK-2437とした。pTK-2437のマウスGPVIの細胞外ドメインを含む遺伝子領域には5'側に制限酵素Nhe Iの認識部位、3'側にはBam HIの認識部位を有しており、これらの酵素で切断し、DNA断片を調製した。そしてこの断片を制限酵素Xba IおよびBam HIで切断して調製したpTK-2233に挿入してマウスmGPVI−Fc発現プラスミド(pTK-2440)を構築した。
D.カニクイザルGPVI細胞外領域‐ヒトFc融合蛋白質発現プラスミドの構築
(1)カニクイザルD1D2-ヒトD3キメラGPVI‐ヒトFc融合蛋白質発現プラスミドの構築
既知配列であるヒトGPVIの遺伝子情報に基づき、適当なプライマー対を設計および調製し、これらのヒトGPVIプライマーを用いて、カニクイザルのゲノムDNAを鋳型としたPCR反応を行うことで、カニクイザルGPVI遺伝子配列の一部を決定した。次に、その配列を基に新たにカニクイザル用のプライマー対を設計および調製し、各プライマー対でカニクイザルのゲノムDNAを鋳型としたPCR反応を再度行い、macGPVI-a(配列番号174)およびmacGPVI-b(配列番号175)で増幅産物abを、hGPVI-d(配列番号180)およびmacGPVI-c(配列番号176)で増幅産物dcを、macGPVI-d(配列番号177)およびhGPVI-h(配列番号182)で増幅産物dhを、hGPVI-g(配列番号181)およびmacGPVI-g(配列番号178)で増幅産物ggを得た。一方、pTK-2233を鋳型とし、macGPVI-h(配列番号179)およびIgG1-i(配列番号183)を用いたPCR反応で増幅産物hiを得た。以上の5種類の増幅産物を混合して鋳型とし、macGPVI-aおよびIgG1-iによるPCRを再度行った。この操作で得られた増幅産物は、カニクイザルGPVIのD1およびD2と、ヒトのD3を融合したキメラGPVI遺伝子を含んでおり、制限酵素Nhe IおよびBam HIによる切断後、制限酵素Xba IおよびBam HIで切断して調製したpTK-2233に挿入して、カニクイザルD1D2-ヒトD3キメラGPVI‐ヒトFc融合蛋白質(GPVI-FFH-hFc、配列番号223)発現プラスミド(pTK-2462)を構築した。
(実施例2)
抗ヒトGPVI抗体の作製
A.ウサギポリクローナル抗体の作製
ヒトGPVIに対するポリクローナル抗体を作製するため、ウサギに免疫を行った。すなわち、実施例1Aで調製したhGPVI-mFc20μgを500μlの生理食塩水に希釈し、500μlのフロインド完全アジュバント(DIFCO)と等量混合した後、雌性ニュージーランド白色ウサギ(北山ラベス)2.1―2.2kgの背部皮下に投与した。2週間後、再度、hGPVI-mFc20μgを500μlの生理食塩水に希釈し、500μlのフロインド不完全アジュバント(DIFCO)と等量混合後、背部皮下に投与した。投与終了1週間後耳静脈より採血し、定法にしたがい抗血清を分離し、抗体を精製した。すなわち、抗血清に最終飽和濃度33%となるように硫酸アンモニウムを添加し、4℃で1時間攪拌後、析出した沈殿を遠心分離した。次に沈殿をダルベッコリン酸緩衝液(以下、D−PBSと記載)で溶解し、D−PBSにて一夜透析した。透析液を濾過後、プロテインAカラム(プロセップA、ミリポア)に供し、結合したIgG画分を0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で溶出することにより、精製抗体を得た。得られた溶出画分は1Mのトリス塩酸バッファー(pH7.0)にて速やかに中和し、D−PBSで透析後、280nmの吸光度より蛋白濃度を算出した(吸光係数:0.714mg/mL)。以降、得られた抗体を抗GPVIポリクローナル抗体と記載する。
B.抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の作製
GPVI-mFc20μgとフロインド完全アジュバント(DIFCO)を等量混合し、投与抗原とした。雌性ddYマウス(8週令、SLC)に投与抗原を2回投与し、3日後に、リンパ節よりリンパ球を分離した。得られたリンパ球をP3×63−Ag.8.U1(ATTC)と混合した後、ポリエチレングリコール(PEG1500、Sigma)を用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社、p83)にしたがって細胞融合を行った。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを2種類の方法で行った。すなわち、プレートに固相化したhGPVI-hFcに対する結合活性を指標とする方法及びコラーゲンとGPVIの結合阻害活性を指標とする方法を使用した。
(1)結合活性を指標としたハイブリドーマのスクリーニング
実施例1Bにより調製したhGPVI-hFcをD−PBSで2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuard(Surmodics)を含むD−PBS(pH7.4)を各ウエルに100μL添加してブロッキングした。次に培養上清を各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO、P260)を10%ウサギ血清含有D−PBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。その結果、hGPVI-hFcと反応した細胞を選択し、限界希釈法(安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社、p97)によりクローニングを行った。8日後、同様にスクリーニングを行い、hGPVI-hFcと反応する抗体を選択した。
(2)コラーゲン-GPVI結合阻害活性を指標としたハイブリドーマのスクリーニング
D−PBSでコラーゲン(Horn)を10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。4℃で一夜反応後、イオン交換水で5回洗浄し、5%BSAを含むD−PBSでブロッキングした。次に培養上清を25μL/ウェル添加し、さらにD−PBSで2μg/mLに調製したhGPVI−hFcを25μL/ウェル添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識した抗−ヒトIgG抗体(BioMeda)を10%ヤギ血清を含むD−PBSで1000倍に希釈し各ウェルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウェルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定し、抗体無添加のウェルの吸光度に対して50%以上吸光度が低下したウェルを、抗GPVI抗体を産生するハイブリドーマとして選択した。
その結果、複数回の細胞融合(F番号が1回分を示す)により、コラーゲンとGPVIの結合阻害活性を有するハイブリドーマを選択した。
(3)ハイブリドーマが産生する抗体の作製
抗GPVI抗体を産生するハイブリドーマを10%FCS/RPMI−1640培地(Sigma)で培養後、Hybridoma−SFM培地(Invitrogen)に交換して培養することにより抗体を産生させ、培養上清からプロテインAカラム(Prosep−rA、ミリポア)を用いて抗体を精製した。すなわち、得られた培養上清を予めD−PBSにて平衡化したプロテインAカラム(Prosep−A、Millipore)に吸着させ、非吸着蛋白質をD−PBSにて洗浄した後、25 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.0)にて吸着画分を溶出した。その後、生理食塩水にて透析を行った。得られた抗体の濃度は280nmの吸光度より吸光係数(E1%:1.4)を用いて算出した。以降、得られた抗体を抗GPVIモノクローナル抗体と記載する。
(実施例3)
抗GPVIモノクローナル抗体のグループ分類
実施例2で得られた抗体をGPVIへの結合特性、すなわち結合領域の違いにより分類するため、F1199、F1201、F1202、F1210及びF1211の各抗体を用いて競合アッセイを行なった。まず、中根らの方法(J.Histochem.Cytochem.,22,1084,1974)に従い、各抗GPVIモノクローナル抗体のペルオキシダーゼ標識抗体を調製した。
次にこれらのペルオキシダーゼ標識抗体を用いて各精製抗体との競合アッセイを行い、抗体を分類した。すなわち、D−PBSでhGPVI-hFcを2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuardを含むD−PBSを各ウェルに添加しブロッキングした。次に、上記の標識抗体25μLと各精製抗体25μLをウェルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し、TMB溶液(BioFix)で発色させた。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。
精製抗体を添加していないときの吸光度を100%として、各標識抗体に対する阻害活性を算出し、各精製抗体の分類を行った。その結果、標識抗体(i),(ii),(v),(viii)と競合したものをグループaとした。標識抗体(i),(v),(vii)と競合反したものをグループbとした。標識抗体(i),(ii),(vii),(viii)と競合したものをグループcとした。また、標識抗体(iii),(iv)と競合したものをグループdとした。標識抗体(iii),(iv),(vi)と競合したものをグループeとした。標識抗体(iii),(vi)としたものをグループfとした。また、規則性が見られなかったものをグループg及びグループhとした。グループgとグループhはお互いには競合しないので別グループとした。従って、作製した抗GPVIモノクローナル抗体はGPVIの表面上の少なくとも8種類の領域を認識していることが確認された。
(実施例4)
サルex vivo試験に供した抗体のグループ分類
作製した抗ヒトGPVIモノクローナル抗体のうち、サルGPVIと結合しex vivo試験に使用可能な抗体を実施例3で行ったグループ分類の方法に従って分類した。すなわち、実施例3で作製した各標識抗体を用いて実施例3と同様の方法で競合アッセイを行い、各抗体を分類した。表1に示すように実施例3同様に少なくとも7種類の領域を認識する抗体群に分類された。
Figure 0005224707
(実施例5)
抗GPVIモノクローナル抗体の解離定数の算出
実施例2において作製した抗GPVIモノクローナル抗体の解離定数を、蛋白相互作用解析装置BIACORE3000(BIACORE)を用いて測定した。すなわち、センサーチップに実施例1で作製したGPVI置換体(hGPVIHHH-hFc及びFFH-hFc)をマニュアルに従ってCM5チップ(BIACORE)に結合した。つぎに、各抗体をHBS-EP緩衝液(BIACORE)で希釈し、1.25から40nMまでの希釈系列を調製し、BIACORE3000にて解析した。各抗体の結合ごとにpH1.5のグリシン緩衝液(BIACORE)でチップを再生した。得られた結果をevaluationソフト(BIACORE)のBivalent analyteを用いて解析し、解離定数を算出した。結果を表2に示す。今回作製した各抗GPVIモノクローナル抗体はGPVI−HHH-hFcに対して、十分な親和性を有していることが示された。
Figure 0005224707
(実施例6)
抗GPVIポリクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA系の作製
サンドイッチELISA系を作製するため、実施例2で得られた抗GPVIポリクローナル抗体を実施例3と同様にペルオキシダーゼで標識した。次に抗GPVIポリクローナル抗体固相化プレートを調製した。すなわち、抗体をD−PBSで10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)の各ウエルに50μL添加し、45℃にて30分間反応させた。次にイオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuard(Surmodics)を含むD−PBSを各ウエルに100μL添加しブロッキングした。標準品は精製GPVI−hFcを0.1%BSA/D−PBSで0.75、1.5、3.1.6.25、12.5、25、50ng/mlに希釈し調製した。ブランクは0.1%BSAを含むD−PBSを使用した。測定は、まずプレートのブロッキング剤を廃棄し、調製した標準品及びブランクを50μl分注し25℃で一晩反応した。プレートを0.05%Tween20含有生理食塩水で3回洗浄し、続けて10%ウサギ血清、0.1%Tween20を含むD−PBSにより2μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識抗GPVIポリクローナル抗体を50μl添加し、37℃で反応した。同様に5回洗浄後、TMB溶液(BioFiX)を各ウエルに添加し室温で20分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。
(実施例7)
抗GPVI抗体の認識領域の解析
ヒトGPVIのアミノ酸配列の一部をマウスのアミノ酸配列に置換し、抗体の反応性の変化を調べることにより抗GPVI抗体の認識領域を絞り込んだ。すなわち、血小板膜蛋白質であるGPVIの細胞外領域が免疫グロブリン様領域1、2(ドメイン1またはD1、ドメイン2またはD2と記載することがある2)およびムチン様領域(ドメイン3またはD3と記載することがある)の三つのドメインで構成されている(図1)ことから、各ドメイン単位での置換体を作製し、各置換体に対する抗GPVI抗体の結合実験を行った。
また、抗GPVI抗体認識領域の更なる絞込みを行う目的でGPVI免疫グロブリン様領域とPDB(プロテインデータバンク)登録タンパク質の中から、アミノ酸配列の相同性が比較的高いヒトNK細胞活性化受容体Nkp46、Ig-like transcript 2(ILT2)の情報を基にヒトGPVIのモデリングを行い、アミノ酸変異を導入可能な領域構造を予測した(図1)。そしてそれらのループ領域におけるヒトGPVIとマウスGPVIのアミノ酸置換体発現プラスミドを構築し、各置換体に対する抗GPVI抗体の結合実験を行った。その結果、各抗GPVIモノクローナル抗体が認識するGPVIの各ドメインおよびループ領域を確認できた。なお、本明細書中では、GPVIのドメインまたはアミノ酸置換変異体を単にGPVI置換体と標記することがある。
Figure 0005224707
(1)ヒトGPVIとマウスGPVIのドメイン置換体発現プラスミドの構築
実施例1にて作製したhGPVI-hFc(以下GPVI-HHH-hFcと記載、配列番号135)発現プラスミド(pTK2233)およびmGPVI-hFc(以下GPVI-MMM-hFcと記載、配列番号136)発現プラスミド(pTK2440)を鋳型とし、ヒトGPVIとマウスGPVIのドメインを置換したGPVI置換体発現プラスミドを構築した。
すなわち、GPVIのドメイン1がマウス、ドメイン2およびドメイン3がヒトの配列からなるGPVI置換体(以下GPVI-MHH-hFcと記載、配列番号137)発現プラスミドを構築するために、pTK2440を鋳型とし、マウスGPVI配列の上流に設計したセンスプライマー1(表4、配列番号184)およびマウスGPVIのドメイン1のC末側15merにヒトGPVIのドメイン2のN末側15merを連結したアンチセンスプライマー3(表4、配列番号186)を用いてPCRを行い、マウスGPVIのドメイン1のDNA断片(417bp)を増幅した。次にpTK2233を鋳型としhFc配列上に設計したアンチセンスプライマー2(表4、配列番号185)、およびマウスGPVIのドメイン1のC末側15merにヒトGPVIのドメイン2のN末側15merを連結したセンスプライマー4(表4、配列番号187)を用いてPCRを行い、ヒトGPVIのドメイン2,ドメイン3,hFcのN末側までのDNA断片(571bp)を増幅した。そして、増幅した2つのDNA断片、センスプライマー1、アンチセンスプライマー2を用いてPCRを行うことにより、マウスGPVIのドメイン1、ヒトGPVIのドメイン2,ドメイン3、hFcのN末側配列を連結したDNA断片(973bp)を増幅した。この増幅されたDNA断片を制限酵素XbaI,BamHIで切断した後、pTK2233のXbaI,BamHIサイトに挿入し、GPVI-MHH-hFc発現プラスミドを構築した。
GPVIのドメイン1がヒト、ドメイン2がマウス、ドメイン3がヒトの配列からなるGPVI置換体(以下GPVI-HMH-hFcと記載、配列番号138)発現プラスミド、およびGPVIのドメイン1およびドメイン2がマウス、ドメイン3がヒトの配列からなるGPVI置換体(以下GPVI-MMH-hFcと記載、配列番号139)発現プラスミドも同様の方法にて置換したいGPVIのドメインのつなぎ目の位置でヒトとマウスのGPVI配列を15merずつ連結して作製したセンス(表4、配列番号191)およびアンチセンスプライマー(表4、配列番号190)、センスプライマー1、アンチセンスプライマー2を用いて必要なDNA断片を増幅し、制限酵素XbaI,BamHIで切断した後pTK2233のXbaI,BamHIサイトに挿入することによって構築した。また、今回実験に使用した5種類のGPVI置換体のアミノ酸配列を配列番号141〜151に示した。
(2)ヒトGPVIのループ領域をマウスのアミノ酸配列に置換したGPVI置換体発現プラスミドの構築
抗GPVIモノクローナル抗体の認識領域となり得る単一ループ領域をそれに対応するマウスGPVIのアミノ酸配列に置換したGPVI置換体発現プラスミドを以下のように構築した。まず、ヒトGPVIのループ領域L2においてヒトのアミノ酸配列をマウスのアミノ酸配列へ置き換わるよう塩基配列を置換し、さらに置換した塩基から上流に11 mer、下流に13 merヒトGPVIの塩基配列を連結したセンスプライマー10(表4)およびアンチセンスプライマー9(表4)を作製した。次に、pTK2233を鋳型として、センスプライマー1とアンチセンスプライマー9を用いてPCRを行うことにより、ループ領域L2がマウスの配列に置換されたヒトGPVIのN末側DNA断片(215bp)を増幅した。同様に、pTK2233を鋳型として、センスプライマー10とアンチセンスプライマー2を用いてPCRを行うことにより、ループ領域L2がマウスの配列に置換されたヒトGPVIのC末側領域にhFcのN末側配列が連結したDNA断片(773bp)を増幅した。そして、増幅した2つのDNA断片、センスプライマー1、アンチセンスプライマー2を用いてPCRを行い、ループ領域L2がマウスの配列に置換されたヒトGPVIにhFcのN末側配列が連結したDNA断片(958bp)を増幅した。この増幅されたDNA断片を制限酵素XbaI,BamHIで切断した後、pTK2233のXbaI,BamHIサイトに挿入し、ヒトGPVIの領域L2をマウスGPVIのアミノ酸配列に置換したGPVI置換体(以下hGPVI-mL2-hFcと記載、配列番号46)発現プラスミドを構築した。
その他のループ領域を置換したGPVI置換体、hGPVI-mL3-hFc,hGPVI-mL4-hFc,hGPVI-mL5-hFc,hGPVI-mL6-hFc,hGPVI-mL7-hFc,hGPVI-mL8-hFc,hGPVI-mL9-hFc,hGPVI-mL10-hFc,hGPVI-mL11-hFc,hGPVI-mL13-hFc,hGPVI-mL14-hFcの発現プラスミドも同様の方法にて構築した。それぞれのGPVI置換体発現プラスミドの構築に使用したプライマー配列を表4に示した。また、作製したGPVI置換体のアミノ酸配列を配列番号47−57に示した。
Figure 0005224707
(3)GPVI置換体の調製
実施例7(1),(2)で構築したGPVI置換体発現プラスミドおよびpTK2233、pTK2440を実施例1に示されている方法と同様にCOS-1細胞に導入し、発現させた。
得られた培養上清から、目的のGPVI置換体をプロテインAカラム(Prosep-A、ミリポア)で精製した。得られたGPVI置換体の精製度は、還元・非還元の両条件でSDS-PAGEを行い、銀染色にて確認した。
(4)ヒトGPVIとマウスGPVIのドメイン置換体との結合活性
ヒトGPVIのドメインをマウスGPVIのドメインに置換することにより、抗体の認識領域を絞込んだ。すなわち、GPVI-HHH-hFc,GPVI-MHH-hFc,GPVI-HMH-hFc,GPVI-MMH-hFc,及びGPVI-MMM-hFcと各抗GPVIモノクローナル抗体との結合活性測定を行った。
まず、プレート(Maxisorp、Nunc)に5μg/mLでウサギ抗ヒトIgG抗体(DAKO)を固相化し、2% StabiliGuard(SurModics)でブロッキングした。次に、ブロッキング液を除去し、0.1%BSA/PBSで希釈したGPVI置換体を添加して37℃で1時間反応した。0.05%Tween-20を含む0.9%生理食塩水にて洗浄後、0.1%BSA/PBSで希釈した1%ヒト血清(コスモバイオ)で37℃、1時間ブロッキングし、再び0.05%Tween-20を含む0.9%生理食塩水にて洗浄後、実施例3で作製したペルオキシダーゼ標識した抗体を0.1%BSA/PBSで0.5μg/mLに希釈して添加し、37℃、1時間反応した。最後に0.05%Tween-20を含む0.9%生理食塩水にて洗浄後、H2O2/TMB溶液を用いて発色させ、0.5M硫酸で反応を停止した後、吸光度を450nmの波長にて測定した。
その結果、F1232-10-2, F1232-21-1,F1201-20,F1232-43-3及びF1232-14-2抗体ではドメイン1をマウスGPVIに置換したGPVI-MHH-hFc, GPVI-MMH-hFc及びGPVI-MMM-hFcに対する結合活性が顕著に低下した。このことから、これらの抗体の認識領域はGPVIのドメイン1に存在することが明らかとなった。一方、F1232-7-1,F1232-19-1,F1232-37-2, F1232-17-1,F1232-18-3,F1232-24-1抗体では、ドメイン2をマウスGPVIに置換したGPVI-HMH-hFc, GPVI-MMH-hFc,GPVI-MMM-hFcに対する結合活性が顕著に低下し、これらの抗体の認識領域はGPVIのドメイン2に存在することが推測された。
各抗GPVI抗体の抗原認識領域を表5に示した。
(5)ヒトGPVIのループ領域をマウスのアミノ酸配列に置換したGPVI置換体との結合活性
GPVI-HHH-hFc,hGPVI-mL2-hFc,hGPVI-mL3-hFc,hGPVI-mL4-hFc,hGPVI-mL5-hFc,hGPVI-mL6-hFc,hGPVI-mL7-hFc,hGPVI-mL8-hFc,hGPVI-mL9-hFc,hGPVI-mL10-hFc,hGPVI-mL11-hFc,hGPVI-mL13-hFc及びhGPVI-mL14-hFcと各抗GPVIモノクローナル抗体との結合活性測定を行った。
ヒトGPVIのループ領域をマウスのループ領域に置換したGPVI置換体とヒトGPVIに対する結合活性を比較することで、抗体の認識領域を置換したループ領域まで絞り込んだ。
測定方法は実施例7(4)に記載の方法と同様に、実施例3で作製したペルオキシダーゼ標識した抗体を、各抗体のGPVI-HHH-hFc に対する親和性に合わせて測定可能な濃度に0.1%BSA/PBSで希釈し用いた。その結果、F1232-10-2, F1232-21-1,F1232-43-3抗体では、hGPVI-mL2-hFc、F1232-14-2抗体はhGPVI-mL3-hFcおよびhGPVI-mL5-hFc、F1201-20抗体はhGPVI-mL4-hFcおよびhGPVI-mL5-hFcに対する結合活性が低下した。また、F1232-7-1,F1232-37-2,F1232-17-1,F1232-18-3及びF1232-24-1抗体ではhGPVI-mL9-hFc、F1232-19-1抗体ではhGPVI-mL9-hFcおよびhGPVI-mL11-hFcに対する結合活性が低下した。各抗GPVI抗体の抗原認識領域を表5に示した。
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(実施例8)
カニクイザルex vivo実験による抗GPVIモノクローナル抗体の評価
実施例2にて作製した各抗GPVIモノクローナル抗体を雄性カニクイザル(約6kg)に24時間間隔で0.3mg/kg及び1mg/kg静脈内投与した。投与前、初回投与24時間後及び48時間後に採血し、血小板数、CD62P蛋白質(血小板の活性化マーカー)の発現量、血小板膜蛋白質(GPIIb/IIIa;CD41aおよびGPVI;CD42a)の発現量、血小板GPVIの発現量、及び血小板凝集能(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定した。
A.血小板数の測定
採血したクエン酸加血の血小板数をSysmex F-820を用いて測定した。クローンNo.F1232−18−3、F1232−10−2、F1232−14−2、F1232−43−3、F1201−20、F1232−37−2を投与したサルでは血小板数の減少は認められなかった(減少率が20%未満;表6中に−で表示)。また、F1201−18、F1232−17−1を投与したサルでは血小板数の減少傾向が認められた(減少率が20%〜40%;表6中に±で表示)。一方、F1232−7−1、F1232−24−1、F1232−21−1を投与したサルでは明らかな血小板数の減少が見られ(減少率が40%〜60%;表6中に+で表示)、特にF1232−19−1においては顕著であった(減少率が60%以上;表6中に++で表示)。
B.CD62P蛋白質の確認
採血したクエン酸加血を、×100g、25℃で20分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を調製した。PRPの血小板数が1×108 cells/mLとなるように0.5% 非働化FBSと2.5 mM EDTAを含むPBS(以下、FACSバッファー)で希釈した後、抗ヒトCD62P-PE(BD Biosciences Pharmingen)を用いてサル血小板上のCD62P蛋白質の発現をFACSにて調べた。すなわち、PRPに抗ヒトCD62P-PEを添加して室温で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、いずれの抗GPVIモノクローナル抗体を投与したサルから採血、調製したPRPにおいても、投与前と比較してCD62Pの発現の上昇は認められなかった(発現誘導が2倍未満;表6中に−で表示)。
C.CD41aおよびCD42a蛋白質の確認
サル血小板上におけるCD41aおよびCD42a蛋白質発現量の測定は、CD62Pの場合と同様にPRPを調製し、それぞれ抗ヒトCD41a-FITC(BD Biosciences Pharmingen)、抗ヒトCD42a-PE(BD Biosciences Pharmingen)を用いたFACS解析にて行った。その結果、F1232−21−1およびF1232−19−1を投与したサルから採血、調製したPRPにおいてCD41aおよびCD42a蛋白質の軽度の減少が認められた(1mg/kg投与後の消失率が30%〜70%;表6中に±で表示)ものの、その他の抗GPVIモノクローナル抗体を投与したサルから採血、調製したPRPではCD41aおよびCD42a蛋白質の発現に影響は認められなかった(1mg/kg投与後の消失率が30%未満;表6中に−で表示)。
D.GPVI蛋白質の確認
サル血小板上におけるGPVI蛋白質の確認は、CD62Pの場合と同様にPRPを調製し、蛍光色素Af488で標識した抗GPVIポリクローナル抗体を用いたFACS解析にて行った。その結果、F1201−18、F1201−20、F1232−37−2を投与したサルから採血、調製したPRPにおいてGPVI蛋白質の消失が認められ(1mg/kg投与後の消失率が70%以上;表6中に+で表示)、特にF1232−7−1、F1232−18−3、F1232−10−2、F1232−21−1、F1232−43−3、F1232−17−1、F1232−19−1においては顕著であった(0.3mg/kg投与後の消失率が70%以上;表6中に++で表示)。一方、F1232−24−1、F1232−14−2を投与したサルから採血、調製したPRPにおいては部分的な消失が認められた(1mg/kg投与後の消失率が30%〜70%;表6中に±で表示)。
E.血小板凝集能の測定
コラーゲンおよびADPに対する血小板凝集能を血小板凝集測定装置(PA-200 Aggregation Analyzer、Kowa)を用いて測定した。まず、PRPの血小板数が3×108 cells/mLとなるように生理食塩液で希釈した後、終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で3分間インキュベートした。さらに終濃度2μg/mlのコラーゲン溶液あるいは終濃度で10μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートした。血小板凝集率は光の透過率をPA-200 Aggregation Analyzer(Kowa)で測定することにより求めた。その結果、F1232−7−1、F1201−20を投与したサルから採血、調製したPRPにおいてコラーゲン応答性の血小板凝集能の低下が認められ(1mg/kg投与後の消失率が70%以上;表6中に+で表示)、特にF1232−18−3、F1232−10−2、F1232−21−1、F1201−18、F1232−43−3、F1232−37−2、F1232−17−1、F1232−19−1においては顕著であった(0.3mg/kg投与後の低下率が70%以上;表6中に++で表示)。また、F1232−24−1を投与したサルから採血、調製したPRPにおいては部分的な低下が認められた(1mg/kg投与後の低下率が30%〜70%;表6中に±で表示)。一方、F1232−14−2においては血小板凝集能にほとんど影響を示さなかった(1mg/kg投与後の消失率が30%未満;表6中に−で表示)。
また、ADP応答性の血小板凝集能については、F1232−10−2、F1232−21−1を投与したサルから採血、調製したPRPにおいて部分的に低下したが(1mg/kg投与後の消失率が30%〜70%;表6中に±で表示)、その他の抗GPVIモノクローナル抗体を投与したサルから採血、調製したPRPにおいて血小板凝集に影響は認められなかった(1mg/kg投与後の消失率が30%未満;表6中に−で表示)。
(実施例9)
抗GPVI抗体の可変領域アミノ酸配列の決定
以下に抗GPVI抗体(クローンNo. F1232-7-1)の可変領域のアミノ酸配列決定の例を示すが、他の抗GPVI抗体についても同様の実験操作で可変領域のアミノ酸配列を決定した。
すなわち、目的とする抗GPVIモノクローナル抗体を産生するハイブリドーからRNeasy Micro Kit (キアゲン)を用いてトータルRNAを抽出し、SuperScript III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット(Invitrogen)にて一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖cDNAを鋳型としたMouse Ig-Primer Set(Novagen)によるPCRで可変領域を増幅し、塩基配列を決定した。開始コドン付近の情報はデータベース上の配列情報を検索し、再度5'側プライマーを設計した(F1232-7-1重鎖5'側プライマー:1232H-b(配列番号216)、軽鎖5'側プライマー:1232K-a(配列番号218))。一方、可変領域の3'側配列は、アミノ酸配列を変えることなく、ヒト定常領域との連結可能な制限酵素認識部位(重鎖はNhe I認識配列、軽鎖はBsi WI認識配列)を付したプライマーを設計した(F1232-7-1重鎖3'側プライマー:1031H-b(配列番号217)、軽鎖3'側プライマー:mIgK-BsiWI(配列番号219))。これらの新規プライマーを用いて再度PCRを行うことにより重鎖可変領域および軽鎖可変領域を増幅し、pT7BlueTベクター(Novagen)を用いてクローニングした(重鎖可変領域をコードする遺伝子断片をもつプラスミドをpTK-2464、軽鎖可変領域をコードする遺伝子断片をもつプラスミドをpTK-2466とした)。次に、常法に従い重鎖可変領域および軽鎖可変領域の塩基配列を決定し、その塩基配列(重鎖可変領域;配列番号87、軽鎖可変領域;配列番号88)およびそれらにコードされるアミノ酸配列(重鎖可変領域;配列番号111、軽鎖可変領域;配列番号112)を示すとともにF1232-7-1以外のクローンについても同様に塩基配列およびアミノ酸配列を決定した(表7)。また、可変領域のアミノ酸配列におけるCDR部分の配列を表8および表9に示した。
Figure 0005224707
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(実施例10)
遺伝子組換えによるマウス-ヒトキメラ抗体の産生
抗原結合活性を有するV領域がハイブリドーマ抗体由来、すなわちマウス抗体由来であり、C領域がヒト由来の抗体(キメラ抗体)を作製した。
(1)マウス-ヒトキメラ抗体発現プラスミドの構築
抗GPVI抗体(クローンNo.F1232-7-1)マウス-ヒトキメラ抗体発現プラスミドの構築は以下のように行った。
まずpTK-2464を制限酵素EcoR IおよびNhe Iで切断し、重鎖可変領域をコードする遺伝子断片Cを調製した。一方、pTK-2232(WO2005/7800実施例10参照)を制限酵素Eco 47IIIおよびBam HIで切断し、重鎖定常領域(Cγ4)をコードする遺伝子断片Dを調製した。これらの断片を、EcoR I およびBam HIで切断して調製した発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に、断片C+断片Dとなるように連結し、重鎖発現プラスミド(pTK-2468)を構築した。
次にpTK-2466を制限酵素EcoR IおよびBsiW Iで切断し、軽鎖可変領域をコードするDNA断片Eを調製した。一方、HeLaゲノムDNAを鋳型としてプライマーBsiWI-hIgK(配列番号220)およびIgK-e(配列番号221)によるPCRを行い、ヒト軽鎖定常領域(Cκ)をpT-7BlueTにクローニングした(pT7-hIgK)。pT7-hIgKからヒト軽鎖定常領域を切り出すために制限酵素Bsi WIとBam HIにてpT7-hIgKを切断し、DNA断片Fを調製した。これらの断片をEcoR I およびBam HIで切断して調製した発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に断片E+断片Fとなるように連結し、各軽鎖発現プラスミド(pTK-2474)を構築した。
(2)組換えマウス-ヒトキメラ抗体の発現およびGPVIに対する結合活性の確認
構築したマウス-ヒトキメラ抗体発現プラスミドの発現および精製は実施例1に示した方法と同様に行った。すなわち、目的とするクローンのマウス-ヒトキメラ抗体の重鎖発現プラスミドおよび軽鎖発現プラスミドをCOS−1細胞に対してコトランスフェクションし、37℃にて3日間培養後、その培養上清をプロテインAカラムにて精製した。得られたマウス-ヒトキメラ抗体はSDS−PAGEにてその精製度を確認した後、ヒトGPVIおよびサルGPVIに対する結合能を確認した。まず、実施例1にて作製したGPVI置換体、hGPVI−hFcもしくはGPVI−FFH-hFcをD−PBSで2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。次に、37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuard(Surmodics)を含むD−PBSを各ウエルに100μL添加することによりブロッキングした。次に精製したマウス-ヒトキメラ抗体を各ウエルに添加し37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗ヒト軽鎖Κ抗体(DAKO)を10%ウサギ血清含有D−PBSで1000倍に希釈し、各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。その結果、作製したマウス-ヒトキメラ抗体はヒトおよびサルのGPVIに特異的に結合することが確認された。
(実施例11)
ヒト化抗体の作製
A.ヒト化抗体の作製(方法1)
(1)ヒト化F抗体可変領域のコンピューターモデリング
ヒト化抗体で高い親和性を保持するために、クイーンらの一般的な方法(Proc. Natl. Acad.Sci. USA 86:10029, 1989)に準じてフレームワーク残基の選択を行う。ヒト配列はKabatら(Sequences of proteins of immunological interest, 5th ed., U.S. Department of Health and Human Services, 1991)のκ軽鎖及び重鎖配列データベースに基づきマウス抗GPVIモノクローナル抗体(クローンNo.F1232-7-1)に高いフレームワーク相同性を有する配列を選択する。さらに、コンピューター解析により最も適したフレームワーク中のアミノ酸の改変を行う。具体的にはコンピュータープログラムENCAD(レビット、J.Mol.Boil.168*595(1983))や、Hommology(アクセルリス社)、FAMS(SGI社)などのタンパク質モデリングツールを用いてF1232-7-1抗体可変領域の分子モデルの構築を行う。抗体データベースより得られたヒトEu抗体分子モデル(Stephensら、Immunology 85 (4), 668-674 (1995)にF1232-7-1抗体のCDR配列をFR中に移植する。分子最適化計算や分子動力学計算などの最適化やシミュレーション解析を通じて、コンピューターモデル上でCDRとFRが本来のヒト抗体モデルとは異なり、有意な接触を示すFR領域で、アミノ酸置換を行うことによりCDRとFRとの接触が改善されると予想される位置についてマウス抗体由来のアミノ酸への置換を行う。また、ヒト抗体のデータベース中でその位置においてまれにしか現れないFR中のアミノ酸残基はそれらの位置におけるヒトコンセンサンスアミノ酸に置換する。アミノ酸置換の良否は実際の活性により確認することになるため、アミノ酸置換の異なるタイプの抗体を数種類作製する。
(2)ヒト化抗体の構築
実施例11A(1)で選択された配列を基に、シグナルペプチド、スプライス供与シグナル及び制限サイト(例えばEco RI)を含むアミノ酸配列をコードする遺伝子を構築する。構築した遺伝子は合成ヌクレオチド(80塩基長程度)を数種類オーバーラップするように調製する。すなわち、オリゴを対にしてアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、2本鎖断片を得る。この断片を変性し1本鎖にした後、同様にアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、全長の遺伝子をコードする2本鎖断片を得る。得られる断片をPCRで増幅し、精製後に制限酵素(例えばEco RIとNhe I)で切断し精製する。精製した断片をヒトIgG4定常領域遺伝子(Cγ4)のCH1エクソンからCH3エクソンまでを含む遺伝子断片(例えばpTK-2232をNhe IおよびBamHIで切断)と連結し、発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流(Eco RIとBamHIで切断)に組み込むことでヒト化重鎖発現プラスミドを構築する。また、置換するアミノ酸の数が少ない場合は部位特異的突然変異法によりアミノ酸変異を発現プラスミドに導入することも可能である。軽鎖可変領域配列は上記と同様に構築可能である。この場合ヒトCκ領域はpT7-hIgKから切り出し、発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に、軽鎖可変領域配列と連結し、組み込むこととなる。
抗体を産生する形質転換体を作製するため、重鎖及び軽鎖プラスミドを制限酵素で切断し直線化後、マウスミエローマ細胞Sp2-O-ag14(ATCC CRL1581)中へジーンパルサー(BIORAD)を用いて導入する。例えば直線化したDNA断片約20μgを1×107細胞に360V、25μFDのキャパシタンスでエレクトポレーションを行う。次に細胞を96穴プレートに植え込み、2日間培養後、プラスミド断片が組み込まれた細胞を選択するため、10%FCS、1×HT(Invitrogen)、0.25mg/mlXanthine、1μg/mlMycophenolic acidを含むD-MEM(Sigma)を添加し、更に2週間培養する。培養後上清中の抗体を解析することにより、目的とするヒト化F1232-7-1抗体産生細胞株を選択する。すなわち、培養上清中の抗体が固相化したGPVI抗原と結合し、結合する抗体をペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG4抗体で検出する。結合が認められた抗体産生細胞株はコンフルエントになるまで10%FCSを含む培地で培養し、無血清培地(Hybridoma SFM、Invitrogen)に交換する。培養上清を回収し、培養上清中に含まれる抗体をプロテインA(Prosep-A、ミリポア)に結合させ、0.1M グリシン塩酸(pH3.0)で溶出する。精製抗体をPBS-(Sigma)で透析し、280nmの吸光度より抗体濃度を算出する(ヒト抗体1mg/mLは約1.3の吸光度を示す)。
(3)ヒト化抗体の評価
ヒト化抗体と元のマウス抗体のGPVI抗原との結合能を、BIACOREシステム(BIACORE社)を用いて測定し、比較する。すなわち、BiACORE3000をのマニュアルにしたがってCM5チップ(BIACORE社)に精製hGPVI-mFcを固定化する。次にHBS-EPバッファー(BIACORE社)で希釈した抗体希釈列を作製し、各サンプルをインジェクトする。得られたデータをBIACOREの解析プログラム(BIA Evaluation、BIACORE)を用いて解析し、アフィニティー(Kd)を算出する。
B.ヒト化抗体の作製(方法2)
(1)ヒト化抗体遺伝子の作製
ヒト化抗体において移植するCDR配列が活性を有する適切なドメイン構造として維持させるためには元のFR領域の配列も合わせて移植する方法もまた有効である。CDRドメイン構造の維持にどのアミノ酸が関与しいているかは、FR中のアミノ酸の性質(疎水性、親水性、酸性、塩基性、分子サイズ等)から推定でき、またコンピューターを用いたモデリングにより推定可能である。すなわち、シリコングラフィック上で起動するソフトウエアーQUANTA/CHARMmあるいはModeler(モレキュラー・シュミレーションズ)を用いてモデリングを行う。Brookhaven Protein Data Bank(PDB)に登録されているヒト抗体配列よりF1232-7-1抗体のVH及びVL領域と相同性の高い抗体の三次元構造を検索し、それに基づきF1232-7抗体の三次元構造を推定する。推定三次元構造上で重鎖及び軽鎖のCDRに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第1群)を選出し、更にそれらに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選出する。同様に、CDRに静電的相互作用やファンデルワールス力等のエネルギー結合により結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第1群)と更にそれらに結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選択する。このようにして選択したFR領域中のアミノ酸群をCDRアミノ酸と併せてヒト抗体配列上に移植するが、Kabatらの分類(Sequences of proteins of immunological interest, 5th ed., U.S. Department of Health and Human Services, 1991)やNCBI(National Center for Biotechnology Information)等より得られるヒト抗体配列の可変領域アミノ酸には存在しないような配列が生じる場合は、そのアミノ酸は移植しない。このようにして得られた情報に基づきヒト抗体配列VH及びVLに移植する配列を決定し、ヒト化抗体作製に用いる遺伝子を構築する。
構築した遺伝子はアマシャムのキット(Oligonucleotide-directed in vitro mutagenesis system version 2)とPCR法を組み合わせる方法、また数種類の長鎖合成ヌクレオチドを組み合わせて増幅する方法、キメラ抗体のVHあるいはVL遺伝子を鋳型に数種類のプライマーを用いて増幅後、さらにそれら増幅遺伝子断片を鋳型として全長遺伝子断片を得る方法により作製する。得られた増幅遺伝子断片を、実施例11A(2)記載のプラスミド(pTK-2232あるいはpT7-IgK)の定常領域断片と連結し、発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に組み込むことで、ヒト化抗体発現プラスミドを構築する。作製したプラスミドは実施例11A(2)記載の方法により細胞に導入し、形質転換体を得、同様に精製抗体を作製する。また、実施例11A(3)と同様に抗体の評価を行う。
(実施例12)
GPVI欠損患者のGPVI抗体の抗原結合特性とマウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の抗原結合特性
12−1 ヒトGPVIループ置換体を用いたGPVI欠損患者の抗GPVI抗体の抗原結合特性解析
GPVI欠損患者(タテオ・スギヤマ(Tateo Sugiyama)、外5名,ブラッド(Blood),(米国),1987年,第69巻,第6号,p.1712−1720)血中に含まれる抗GPVI抗体の認識ドメイン解析を各種組換えタンパクを用いて行った。患者特異精製抗体と実施例7に記載される組換えヒトGPVIループ置換体を混合し、37℃で2時間ポリプロピレンプレート上で反応させた後、混合サンプルを実施例2に記載の方法と同様にして作製した組換えhGPVI−hFc固相プレートに50μL/ウェルで添加し、37℃で1時間反応させた。次いで、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトκ及びλ鎖抗体(DAKO、P130,P129)を10%ウサギ血清を含むD−PBS(pH7.4)で1000倍に希釈し各ウェルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、実施例2に記載の方法と同様に吸光度を測定した。測定値を、組換えヒトGPVIループ置換体を添加しないときの吸光度と比較し、吸光度低下がないか、あるいは吸光度低下の程度が小さくなるループ置換体の結果からGPVI欠損患者の自己抗体に含まれる抗GPVI抗体の抗原認識部位を推定した。
その結果を表10に示した。ITP発症後早期の患者抗体(#930819)を対象とした場合、hGPVI−hFc−mL4(組換えヒトGPVI−hFcのループ4をマウスの配列に変換しタンパクを示す。以下同様に記載する)、hGPVI−hFc−mL5、hGPVI−hFc−mL9、hGPVI−hFc−mL13を用いた時、その吸光度は減少しなかった。つまりは実験対象としたGPVI欠損患者の抗GPVI抗体にはループ4、5、9、13を認識している抗体を含んでいる事が解った。一方、ITP発症から長期経過した患者抗体(#021004)を対象とした場合においては、hGPVI−hFc−mL9、およびhGPVI−hFc−mL13を用いた時、その吸光度は減少しなかった。つまりは実験対象としたGPVI欠損患者の抗GPVI抗体にはループ9、13を認識している抗体を含んでいる事が解った。
Figure 0005224707
12−2 GPVI欠損患者の抗体とマウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体との競合試験
実施例2で作製したマウス抗GPVIハイブリドーマ抗体とGPVI欠損患者血中に含まれる抗GPVI抗体との競合実験を行った。すなわち、GPVI欠損患者由来の抗GPVI抗体を12−1に記載のhGPVI−hFc固相化プレートに50μL/ウェルにて添加し、4℃で一晩反応させた。そこにペルオキシダーゼ標識マウス抗GPVIハイブリドーマ抗体を吸光度0.5〜1.0になるよう添加し、37℃で45分反応させ、実施例2に記載の方法と同様にして吸光度を測定した。その結果、実施例2に記載の方法と同様の方法で作製されたマウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体F1199−6およびF1232−37−2は、GPVI欠損患者血中に含まれる抗GPVI抗体と競合した。結果を図2に示す。
(実施例13)
ドメイン2(L9ループ)特異的抗ヒトGPVI抗体の作製
13−1 マウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の作製
実施例1により調製した精製hGPVI-mFc融合タンパク20μgとAlum(PIERCE)、オリゴCpGを混合し、投与抗原とした。ddYマウス(メス、8週令、SLC)に投与し、さらに投与抗原20μgを投与した。3日後、リンパ節又は脾臓よりリンパ球を分離し、実施例2に記載の方法と同様の方法で細胞融合を行い、ハイブリドーマを選択した。
1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマを実施例7で作製したhGPVI-hFc及びhGPVI−mL9−hFcに対する結合活性を指標としてスクリーニングした。すなわち、実施例1により調製した精製hGPVI−hFcまたはhGPVI−mL9-hFcをD−PBS(pH7.4)で1μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)に50μL/ウェル添加し、実施例2の記載の方法と同様にして固相化した。次に培養上清を各ウェルに添加し室温で1時間反応させた後、実施例2に記載の方法と同様にしてペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO、P260)を用いて反応を行い、吸光度を測定した。その結果、精製hGPVI-hFcと結合し(吸光度1以上)、hGPVI−mL9-hFcとは結合しない(吸光度0.5以下)抗体を産生している細胞を選択し、実施例2に記載の方法によりクローニングした。8〜10日後、同様にスクリーニングを行い、L9特異的マウス抗ヒトGPVI抗体を産生するハイブリドーマを得た。実施例2B(3)と同様に、得られたハイブリドーマを培養し、モノクローナル抗体を精製した。各抗体のサブタイプはIsoStrip Mouse Monoclonal antibody Isotyping Kit(Roche)を用いて決定した。
13−2 ラット抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の作製
精製hGPVI-mFc融合タンパク、又はL9及びL11ループをヒト由来配列に置換したラットGPVI-mFc融合蛋白質(ratGPVI-hL9/h11-mFc)(配列番号288)を投与抗原とした。なお、ラットGPVIは、ラット骨髄RNAを鋳型とし、オリゴdTプライマーを用いた逆転写反応でcDNAを合成した後、これをさらに鋳型としたPCRで全長遺伝子をクローニングした。PCRに使用したプライマー対は(mGPVI-a:CCACATAGCTCAGGACTGGG(配列番号289)、mGPVI-d:CCAAGTTATTTCTAGGCCAGTGG(配列番号290))である。投与抗原20μgとフロイントコンプリートアジュバント(DIFCO)を等量混合し、Wistarラット(メス、8週令、SLC)に投与し、2週間後リンパ節よりリンパ球を分離した。SP2/O−Ag14(ATTC)と混合後、実施例2に記載の方法と同様の方法で細胞融合を行い、ハイブリドーマを選択した。
1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマにより上記14−1に記載の方法によりスクリーニングした。その結果、精製ヒトGPVI-hFcと結合し(吸光度1以上)、L9をマウスL9に置換した精製ヒトGPVI-hFcとは結合しない(吸光度0.5以下)抗体を産生している細胞を選択し、実施例2に記載される方法によりクローニングし、ラット抗ヒトGPVI抗体を産生するハイブリドーマを得た。実施例2B(3)と同様に、得られたハイブリドーマを培養し、モノクローナル抗体を精製した。各抗体のサブタイプはRat MonoAB ID/SP Kit(ZYMED)を用いて決定した。
(実施例14)
抗GPVIモノクローナル抗体の特性解析
14−1 抗原結合特性
実施例13で得られた各抗体の特性を解析するため、ヒトGPVI-hFcとの結合、実施例4に記載のF1232−37−2抗体との競合、L9ループに対する特異性を調べた。すなわち、ヒトGPVIに対する結合は実施例2の方法に従い固定化した抗原に対する結合活性を測定した。結合活性は吸光度が0.5〜1.0までを+、1.0〜2.0を++、2.0以上を+++と表示した。F1232−37−2との競合は以下のように行った。すなわち、F1232−37−2を中根らの方法(J.Histochem.Cytochem.,22,1084,1974)に従いペルオキシダーゼ(東洋紡)標識抗体を調製し、使用した抗体量より抗体濃度を算出した。
次にこのペルオキシダーゼ標識抗体を用いて各精製抗体との競合アッセイを行った。すなわち、上記の標識抗体25μLと各精製抗体25μLをhGP-hFc固相化プレートのウェルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し、TMB溶液(BioFix)で発色させた。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。その結果を表11に示す。阻止活性は阻止抗体無添加の吸光度から50%以上阻止する場合を+++、30%〜50%阻止する場合を++、10%〜30%阻止する場合を+と表示した。
L9ループ特異性は実施例13の13−1記載の方法に従い測定し、反応性が50%以上低下する場合を+すなわちL9ループを認識していると判断した。
Figure 0005224707
14−2 GPVI−コラーゲン結合阻害活性
実施例13で得られた各抗体のコラーゲン-GPVI結合阻害活性を実施例2と同様の方法で調べた。抗体無添加のウェルの吸光度に対して50%以上吸光度が低下した場合を+++、30%〜50%低下した場合を++、10%〜30%低下した場合を+と表示した(表11)。
14−3 解離定数の測定
実施例14で得られた各抗体の解離定数は実施例5に記載の方法と同様の方法により調べた。結果をF1232−37−2の解離定数に対する相対値として表11に示した。
(実施例15)
抗GPVI抗体の可変領域アミノ酸の決定(2)
実施例13で作製した抗ヒトGPVI抗体の可変領域のアミノ酸配列は、実施例9に記載の方法と同様の方法により決定した。抗体可変領域の塩基配列を決定したクローンについて、CDR及び可変領域の塩基配列および推定されるアミノ酸配列を表12及び13ならびに配列表(表14参照)に示した。抗体可変領域遺伝子の配列解析の結果から、これらの抗体の配列は数種類の一定の抗体遺伝子に由来すると考えられ、ヒトGPVIのループ9を認識する抗体のレパートア選択に特徴のあることが認められた。
Figure 0005224707
Figure 0005224707
Figure 0005224707
(実施例16)
マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体の生産(2)
16−1 マウス/ヒトキメラ抗体の生産
実施例10の方法と同様の方法で作製した発現プラスミドを下記の方法でCOS−1細胞に導入し、キメラ抗体の一過性発現を行った。なお、cF1232−18−3(マウスモノクローナル抗体F1232-18-3のマウス/ヒトキメラ化抗体をcF1232-18-3と表記する。以下、他のマウスモノクローナル抗体も同様に表記する。)発現には重鎖発現プラスミドpTK−2471と、軽鎖発現プラスミドpTK−2475とのco−transfectionを行い、cF1232−43−3、cF1232−10−1あるいはcF1232−37−2についてはそれぞれpTK−2504とpTK−2514、pTK−2509とpTK−2517あるいはpTK−2510とpTK−2511をそれぞれco−transfectionした。
COS−1細胞を2.1×106cells/段でセルスタック10チャンバー(CORNING社)に植え込み、37℃で4日間培養を行った。培養液を廃棄後に、細胞をD−MEMで二度洗浄した後に、以下のFuGENE/DNA/生産培地混合液をチャンバー1台あたり約1.3L添加した。FuGENE6(ロシュ・ダイアグノスティックス社)2.12mlと重鎖発現プラスミド・軽鎖発現プラスミド各530μgとを添付プロトコールに従い混合した後に、Hybridoma−SFM(Invitrogen社)1.3Lへ加えた。FuGENE/DNA/生産培地混合液添加後、37℃の条件下で3〜4日間培養行い、上清を回収した。Hybridoma−SFM培地1.3lをセルスタック・10チャンバーに新たに加え、さらに3〜4日間培養行い、再度上清を回収した。これらの上清中にマウス/ヒトキメラ抗体が発現しており、以下の精製に用いた。
16−2 マウス/ヒトキメラ抗体の精製
精製操作は、記載が無い限り4℃にて実施した。
16−1で調製されたcF1232−37−2 COS培養液を、プレフィルターとして1μmの孔径を有するカプセルカートリッジフィルター(東洋濾紙株式会社)、本フィルターとして0.22μmの孔径を有するフルオロダインフィルター(PALL)をそれぞれ用い、室温にて清澄化し培養上清を得た。この培養上清を予めPBS−(Sigma)にて平衡化したrmp Protein A Sepharose Fast Flow(Amersham Biosciences)に吸着させ、非吸着蛋白質をPBS−にて洗浄後、非特異的に吸着している蛋白質を1.5 M NaClを含む100 mMリン酸バッファーにて溶出した。その後、特異的に結合している抗体を、100 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.0)にて溶出した。溶出液はその容量を測定し、直ぐに1/10容量の1 M Tris−HCl(pH 7.0)を添加し、pHを中性に戻した。得られた標品を0.9% NaCl水溶液に対して透析し、精製標品とした。同様の操作でcF1232−43−3、cF1232−10−1あるいはcF1232−18−3を精製した。
なお、実施例13でクローン化したモノクローナル抗体の内、F1249−18−2、F1245−7−1、F1246−1−1、F1249−24−1、F1245−4−1、F1249−22−1及びF1251−1−1についても同様の方法でキメラ抗体発現プラスミドの作製、COS−1細胞での発現及び精製を行なった。
(実施例17)
マウス/ヒトキメラ抗体の抗原結合特性
17−1 マウス/ヒトキメラ抗体の抗原結合活性
16−2で作製した各キメラ抗体の解離定数を、蛋白相互作用解析装置BIACORE3000(BIACORE)を用いて実施例5と同様の方法で測定した。作製したキメラ抗体はhGPVI−hFcに対して十分な親和性を有していることが示された。
17−2 マウス/ヒトキメラ抗体と対応するマウスモノクローナル抗体との抗原結合性比較
マウス/ヒトキメラ抗体と対応マウスモノクローナル抗体との抗原結合活性を比較するために、実施例14に記載の方法と同様にペルオキシダーゼ標識F1232-37-2、F1232-18-3、F1232-43-3、およびF1232-10-1を作製し、これらの標識抗体と固相化hGPVI-hFcとの結合反応系に対応する非標識マウス/ヒトキメラ抗体を添加する競合法(実施例14の14−1記載の方法)により、マウスモノクローナル抗体と対応するマウス/ヒトキメラ抗体のヒトGPVIに対する結合活性を比較した。その結果、図4に示すように両者には差がなかった。また、GPVIとコラーゲンの結合に対する各抗体の阻害活性測定を実施例2あるいは実施例14に記載の方法のより行った。本実験の結果、図5に示すように検討を行った各抗体によるGPVIとコラーゲンとの結合阻害活性が確認された。キメラ化した抗体とマウスハイブリドーマ抗体のGPVIとコラーゲンとの結合阻害活性は同等であった。
17−3 抗ヒトGPVI抗体のGPVI変異体との結合特性
hGPVI-hFcを4μg/mLで固相化したプレートに、実施例14に記載の方法でペルオキシダーゼ標識したF1232-37-2またはcF1232-37-2と実施例7にて作製したhGPVI-hFc、mGPVI-hFc、hGPVI-mL3-hFc、または、実施例1に記載の方法と同様の方法で作製したhGPVI-K59E-hFc(ヒトGPVIの59番目のリジンをグルタミン酸に置換した1アミノ酸変異ヒトGPVI細胞外領域とヒトFcからなる融合蛋白質)を0.1%BSA/PBSで希釈し混合した後にプレートに添加し、37℃で一時間反応させた。反応後、TMB溶液を用いて発色させ吸光度を450nmの波長にて測定した。
本実験の結果、ペルオキシダーゼ標識されたF1232-37-2あるいはcF1232-37-2とhGPVI-hFcとの結合はhGPVI-hFc、hGPVI-mL3-hFc、およびhGPVI-K59E-hFcにより阻害されたが、mGPVI-hFcでは阻害されなかった。この結果はF1232-37-2あるいはcF1232-37-2で同等であった。一方、実施例2に記載された方法と同様の方法で作製されたマウスモノクローナル抗体F1199-6ではこれとは異なる現象が認められた。すなわち、ペルオキシダーゼ標識したF1199-6抗体とhGPVI-hFcとの結合は、hGPVI-hFcおよびhGPVI-mL3-hFcにより阻害されたが、hGPVI-mFc およびGPVI-K59E-hFcには阻害されなかった。結果を図6に示す。
17−4 マウス/ヒトキメラF1232-37-2抗体のエピトープ解析
cF1232-37-2抗体の抗原認識部位を確認するために、GPVI-HHH-hFc、GPVI-MMM-hFc、hGPVI-mL2-hFc、hGPVI-mL3-hFc、hGPVI-mL4-hFc、hGPVI-mL5-hFc、hGPVI-mL6-hFc、hGPVI-mL7-hFc、hGPVI-mL8-hFc、hGPVI-mL9-hFc、hGPVI-mL10-hFc、hGPVI-mL11-hFc、hGPVI-mL13-hFc、hGPVI-mL14-hFc(以上実施例7で作製)とcF1232-37-2抗体との結合活性測定を行った。
即ち、ヒトGPVIのループ領域をマウスのループ領域に置換することにより、抗体の結合活性が置換前のヒトGPVIに対する結合活性と比較して低下した場合、置換したループ領域に抗体の認識領域が存在すると推測される。またマウスGPVIのループ領域をヒトのループ領域に置換した置換体において、抗体の結合活性が回復した場合、置換したループ領域が抗体の認識領域であると推測することができ、これら両実験より抗体の反応領域の絞込みが可能であると考えられる。
測定方法は17−3の方法に準じ行った。
得られた結果を解析したところ、図7に示すように、cF1232-37-2はhGPVI-mL9-hFcにおいて顕著に活性が低下していた。この結果よりcF1232-37-2はループ9領域を認識するものと考えられる。
(実施例18)
マウス抗GPVIモノクローナル抗体およびマウス/ヒトキメラ抗GPVIモノクローナル抗体の血小板に対する作用
18−1 ヒト血小板およびカニクイザル血小板活性化作用
正常人あるいはカニクイザルから採血したクエン酸加血をSysmex F-820に供し、血小板数等を求めた後、ヒトでは170×g、25℃、15分間、サルでは115×g、25℃、20分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を、引き続き、1300×g、25℃、15分間遠心分離することにより乏血小板血漿(Platelet Poor Plasma; PPP)を得た。
次に得られたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPRPをPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後パラホルムアルデヒド(終濃度1%)を加えて、4℃で1時間固定化を実施した。0.5% 非働化FBSを含むPBS(以下、FBSバッファー)で洗浄後、抗ヒトCD62P-PE(BECKMAN COULTER)を添加して室温、遮光下で30分静置した。30分後、FBSバッファーで血小板を洗浄後、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定することによりCD62Pの発現について解析した。
図8に示すように、F1199-6抗体は濃度依存的にヒト血小板あるいはカニクイザル血小板を活性化したが,F1232-37-2抗体に血小板活性化作用はほとんど認められなかった。また、cF1232-37-2のヒト血小板あるいはカニクイザル血小板への作用も同様であった。また、実施例16で作製したキメラ抗体、cF1249−18−2、cF1245−7−1、cF1246−1−1、cF1249−24−1、cF1245−4−1、cF1249−22−1及びcF1251−1−1について同様の方法でサル血小板活性化作用を検討したところ、活性化作用は認められなかった。一部のクローンでは、キメラ化していないマウス抗体でサル血小板活性化作用を示すものもあったが、キメラ化することによりその作用は消失した。なお、実施例2で作製したマウスモノクローナル抗体についても同様に検討したところ、何れの抗体もヒト血小板活性化作用は認められなかった。
18−2 ヒト血小板凝集惹起作用
19−1に記載の方法で調製されたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することにより血小板凝集を求めた。
図9に示すように、F1199-6は濃度依存的にヒト血小板の凝集を惹起したが、F1232-37-2およびcF1232-37-2の血小板凝集惹起作用はほとんど認められなかった。
18−3 コラーゲン惹起ヒト血小板凝集抑制作用
18−1に記載の方法により調製されたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度1μg/mlのコラーゲン溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりコラーゲン応答性の血小板凝集を求めた。
図10に示すように、F1232-37-2およびcF1232-37-2は濃度依存的にコラーゲン惹起ヒト血小板の凝集を抑制した。
18−4 ADP惹起ヒト血小板凝集抑制作用
18−1に記載の方法により調製されたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度5μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりADP応答性の血小板凝集を求めた。その結果を図11に示す。
F1232-37-2およびcF1232-37-2にADP惹起ヒト血小板凝集の凝集抑制作用は認められなかった。
(実施例19)
抗GPVI抗体の測定系(EIA)
サンドイッチEIA法により抗GPVI抗体濃度を測定した。すなわち、固相化蛋白質として実施例1と同様の方法で調製したヒトGPVIの配列を持つhGPVI−hFc、および、標識抗体としてAnti Human Kappa Light Chains HRP (DAKO)を用いたサンドイッチEIA系を作製した。
標準品として実施例16で調製した抗GPVI抗体を用いた。hGPVI−hFcをPBS(pH7.4)で4μg/mLに希釈し、NUNC−Immuno plate Maxisorp(NUNC)の各ウェルに50μL添加した。4℃で一晩反応後、氷冷水で5回洗浄し、2%StabilGuard(SurModics,Inc.)を含むPBS(pH7.4)を各ウェルに100μL添加し、ブロッキングした。次に0.1%BSAを含むPBS(pH7.4)を希釈液として測定試料および標準品の希釈検体を調製した。プレートのブロッキング剤を廃棄し、各ウェルに希釈検体50μLを添加し、37℃で1時間反応させた。反応終了後、0.05%Tween20/0.9%塩化ナトリウム溶液で3回洗浄した。次に10%ウサギ血清を含むPBS(pH7.4)で希釈した標識抗体を調製し、各ウェルに50μL添加し、37℃で1時間反応させた。反応終了後、0.05%Tween20/0.9%塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し、テトラメチルベンジジン溶液(BioFX)を各ウェルに50μLずつ添加した。室温で約10分反応後、1mol/L塩酸溶液50μLで反応停止し、プレート分光光度計で450nmの吸光度を測定した。
また、サル血漿中のGPVI抗体濃度を測定する際には、標識抗体希釈液として10%サル血漿および10%ウサギ血漿を含むPBS(pH7.4)を用い、同様に測定した。
(実施例20)
カニクイザルex vivo実験による抗GPVIモノクローナル抗体の評価(2)
試験開始にあたり、まず被験カニクイザルの体重測定および薬物投与前採血を行った。抗GPVI抗体投与後0.5時間〜2週間後に採血し、1)血小板数、2)血小板膜蛋白質(GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a))の発現、3)血小板GPVIの発現、4)血小板凝集(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定し、各抗体の評価を行った。
すなわち、カニクイザル(雄、約5kg)の脚静脈から採血したクエン酸加血をSysmex F-820に供し、血小板数等を求めた後、115×g、25℃、15分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を、引き続き、830×g、25℃、20分間遠心分離することにより乏血小板血漿(Platelet Poor Plasma; PPP)を得た。次に得られたPRPを0.5% 非働化FBSと2.5 mM EDTAを含むPBS(以下、FACSバッファー)で希釈し、CD41aの発現については抗ヒトCD41a-FITC(BD Biosciences Pharmingen)を、CD42aの発現については抗ヒトCD42a-FITC(BD Biosciences Pharmingen)を、GPVIの発現については蛍光色素Af488で標識したウサギ抗GPVI-mFcポリクローナル抗体およびマウス抗GPVI-mFcモノクローナル抗体を添加して室温、遮光下で30分静置した。30分後、FACSバッファーで血小板を洗浄後、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定することにより各膜蛋白質の発現について解析した。また得られたPRPを使用しWestern Blotting により各膜タンパク質の発現について解析も行った。方法は以下の通りである。サル ex vivo 試験において得られた各種PRPを2.5 mM EDTA/PBSにより2回洗浄し、0.5 × 106 血小板/μLになるように1×Sample Buffer(+β- mercaptoethanol , Protease inhibitor cocktail (Roche) , Phosphatase inhibitor cocktail (PIERCE))を添加し、99℃で5分間熱処理を行った。処理したサンプルは液体窒素により凍結し、使用直前まで-30℃で保存した。
Western BlottingによりサルPRP中の各タンパク質を解析するために、まずSDS-PAGEによりタンパク質の分離を行った。5-20%の濃度勾配ポリアクリルアミドゲル(ATTO)を使用し、1レーンあたり2.5×106 血小板になるようにサンプルをチャージし、ゲル一枚につき30 mAで泳動を行った。ブロッティングは常法に従い、セミドライ法により低蛍光のメンブレン(Immobilon-FL PVDF,MILLIPORE)に転写した。ブロッティング後、0.1 % Tween 20 /PBS(TPBS)で軽くすすぎ、BlockAce(大日本製薬株式会社)により4℃で一晩ブロッキングを行った。ブロッキング反応後、10 % BlockAce/TPBSで希釈した一次抗体を添加、室温で一時間、回転混合しながら反応させた。使用した一次抗体は抗GPIIIa抗体(Anti-Integrin β3 , Santa Cruz)、抗GPVI抗体(ヒトGPVI合成ペプチドを抗原としたポリクローナル抗体)、抗GPIX抗体(Anti-CD42a , Santa Cruz)である。一次抗体反応後、TPBSによりよくすすいだ後に、TPBSで洗浄した。洗浄後、10 % BlockAce/TPBSにより希釈した二次抗体を添加し室温で30分間回転混合しながら反応させた。二次抗体はGPIIIa及びGPVIはAnti-Rabbit Igs HRP、GPIXはAnti-Goat Igs HRP(共にDakoCytomation)を使用した。二次抗体反応後、TPBSによりよく洗浄し、ECL Plus(Amersham Biosciences)により検出を行なった。反応後、Typhoon9410(Amersham Biosciences)により発光検出を行った。検出条件はFluorescenceモードを使用した。このモードによりECL Plus発光中間体を検出した。検出されたバンドを解析ソフト ImageQuant5.2を使用し、発現タンパク質の定量を行った。
一方、コラーゲンおよびADPに対する反応性については以下のように行った。先ず、血小板の濃度が3×108 cells/mLとなるようにPRPをPPPで希釈した後、終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で3分間インキュベートした。さらに終濃度2μg/mlのコラーゲン溶液あるいは終濃度で20μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりコラーゲンあるいはADP応答性の血小板凝集を求めた。
20−1 マウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体のカニクイザルex vivo試験
マウスモノクローナル抗体F1232-37-2およびマウスモノクローナル抗体F1199-6の0.3mg/kgで静脈内投与した場合、投与1日後には血小板GPVI量の低下が認められとともに血小板のコラーゲンに対する応答性の低下が認められ、その作用はマウスモノクローナル抗体F1232-37-2では2日以上持続した。
また、F1199-6投与カニクイザルにおいては、投与後に血小板数減少が見られたが、F1237-2投与カニクイザルでは血小板数に大きな変動は見られなかった。
結果を図12に示す。
20−2 マウス/ヒトキメラ抗ヒトGPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(1) 単回静脈内試験
カニクイザル(雄)にcF1232-37-2を0.1, 0.3, 1mg/kgにて静脈内投与した。
図13に示すように、0.1, 0.3, 1mg/kg cF1232-37-2投与動物では投与後速やかに血小板のコラーゲンに対する応答性が低下し、その作用は0.3および1mg/kg 投与動物では2日間以上持続した.また、0.1mg/kg cF1232-37-2投与動物は投与後2時間ほどかけてコラーゲンに対する応答性が低下し、その作用は1日間持続した。
20−3 マウス/ヒトキメラ抗ヒトGPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(2) 反復静脈内投与試験
カニクイザル(雄)にcF1232-37-2を1日おきに4回投与し,各投与前、各投与翌日,最終投与翌日〜17日後の採血というスケジュールにて行った。また、採血により得られた血液については、1)血小板数、2)血小板膜蛋白質GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61)の発現、3)血小板GPVIの発現、4)コラーゲン惹起血小板凝集およびADP惹起血小板惹起に対する反応性を測定した。
初回投与の翌日から血小板GPVI量の低下および血小板のコラーゲンに対する応答性の低下が認められ,コラーゲンに対する応答性の低下は0.1mg/kg投与動物は最終投与後2日間,0.3mg/kg投与動物は最終投与後10日間以上持続した。図14に0.3mg/kg反復投与試験におけるカニクイザル血小板のコラーゲン惹起凝集能および血小板GPVI、GPIIIaおよびGPIXの推移を示した。なお、この試験において、血小板膜蛋白質GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61)の発現量は大きく変化しなかった。
20−4 マウス/ヒトキメラ抗ヒトGPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(3) 単回皮下投与試験
カニクイザル(雄)にcF1232-37-2を0.1, 0.3, 1mg/kgにて皮下投与し、投与前および投与後継時的な採血により得られた血液を試料として、1)血小板数、2)血小板膜蛋白質(GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61))の発現、3)血小板GPVIの発現、4)血小板凝集(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定した。結果を図15に示す。
1mg/kgおよび0.3mg/kg皮下投与動物においては投与3時間後から血小板のコラーゲンに対する応答性の低下がみられ、投与翌日には血小板GPVI量の低下が認められた。コラーゲンに対する応答性の低下は0.3mg/kg投与動物は投与後1週間以上、1mg/kg投与動物は2週間以上持続した。また、0.1mg/kg投与動物においても投与当日にコラーゲンに対する応答性の低下が認められた。また、血小板膜蛋白質(GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61))の発現量は大きく変化しなかった。
(実施例21)
抗GPVIモノクローナル抗体のFabおよびF(ab')2の調製
21−1 マウスモノクローナル抗体F1232−37−2のF(ab')2作製
マウスモノクローナル抗体F1232−37−2のF(ab')2を作製するために、実施例2で得られたマウスモノクローナル抗体F1232−37−2をLysylEndopeptidaseを用いて処理した。すなわち、精製マウスモノクローナル抗体F1232−37−2に1/10量の1Mトリス緩衝液(pH8.5)を添加し、LysylEndopeptidase(Wako)を抗体:酵素=30:1(モル比)になるように添加し、37℃3時間反応した。反応終了時には終濃度30mMとなるようにTLCK(SIGMA)を添加した。
次にF(ab')2の精製を行った。まず未切断の抗体とFc部位を取り除く目的で、LysylEndopeptidase処理した抗体をProsep rA(Millipore)に供した。さらにこの非吸着画分をSuperdex75(Amersham)にかける事でLysylEndopeptidaseを取り除きF1232−37−2のF(ab')2を得た。続いて得られたF(ab')2を生理食塩水(大塚)で透析し、抗体の純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、抗体濃度をBovine IgGスタンダードによるBradford法にて定量した。
21−2 F1232−37−2のFab作製
F1232−37−2のFabを作製するために、実施例2で得られた精製マウスモノクローナル抗体F1232−37−2をPapain(Wako)を用いて処理した。すなわち、精製マウスモノクローナル抗体F1232−37−2を1mMCysteine,20mMEDTA/D−PBS-(pH7.4)バッファー中に置換し、Papain(Wako)を抗体:酵素=30:1(重量比)になるように添加し、25℃16時間反応した。反応終了時には終濃度30mMとなるようにIodoacetamide(Wako)を添加した。
次にFabの精製を行った。まず未切断の抗体とFc部位を取り除く目的で、Papain処理した抗体をProsep rA(Millipore)に供した。さらにこの非吸着画分をSuperdex75(Anersham)にかける事でPapainを取り除きF1232−37−2のFabを得た。続いて得られたFabを生理食塩水(大塚)で透析し、抗体の純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、抗体濃度をBovine IgGスタンダードによるBradford法にて定量した。
21−3 F1232-37-2抗体のF(ab')2およびFabの抗原結合反応性
実施例2において作製したF1232−37−2(Whole抗体)、および22−1および21−2で作製したF(ab')2およびFabそれぞれの解離定数を蛋白相互作用解析装置BIACORE3000(BIACORE)を用いて測定した。すなわち、センサーチップに実施例1で作製したhGPVI-hFcをマニュアルに従ってCM5チップ(BIACORE)に結合した。つぎに、各抗体をHBS-EP緩衝液(BIACORE)で0から800nMまでの希釈系列を調製し、BIACORE3000にて解析した。各抗体の結合ごとにpH1.5のグリシン緩衝液(BIACORE)でチップを再生した。得られた結果をWhole抗体及びF(ab')2に関してはevaluationソフト(BIACORE)のBivalent analyteを用いて解析し、Fabに関しては1:1Bindingを用いて解析し、解離定数を算出した。その結果、F1232−37−2抗体のF(ab’)2及びFabの解離定数は、Whole抗体のそれを1として約0.7及び0.6であり、Whole抗体と比較して同等な親和性を有している事が示された。
(実施例22)
抗GPVI抗体Fabのカニクイザルin vitro試験
カニクイザルから実施例20に記載の方法でカニクイザルより採血し、調製したPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜100μg/mLのF1232-37-2Fabを添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度2μg/mlのコラーゲン溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりコラーゲン応答性の血小板凝集を求めた。結果を図16に示す。
F1232-37-2 Fabのコラーゲン惹起血小板凝集抑制作用はcF1232-37-2より弱かった。
(実施例23)
抗GPVI抗体F(ab’)2のカニクイザルex vivo試験
実施例21にて調製したF1232-37-2のF(ab’)2を1mg/kgの投与量でカニクイザルに皮下投与し、投与前および投与後継時的な採血により得られた血液を試料として、血小板GPVIの発現および血小板凝集能(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定した。
図17に示すように、F1232-37-2F(ab')2投与動物では投与12時間後からコラーゲンに対する応答性の低下がみられ、投与翌日にはGPVIの発現低下が認められた。コラーゲンに対する応答性の低下は2日間以上持続した。また、血小板膜蛋白質(FcγRII(CD32)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61))の発現量は大きく変化しなかった。
(実施例24)
サル出血時間測定
出血時間の測定にあたっては先ずカニクイザルの体重を測定した後、血液学的パラメータ、凝固系パラメータ,血小板機能に異常がないことを確認し、1mg/kgのcF1232-37-2を皮下に投与してその3時間および48時間後に測定というスケジュールにて行う。
カニクイザル(雄、2.5〜5kg)の両側尾静脈に注射針を刺入した後、出血時間を測定する。
cF1232-37-2投与動物において投与前と比較して著明な出血時間の延長は認められない。
(実施例25)
マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体発現CHO細胞の作製
25−1 マウス/ヒトキメラF1232−37−2発現プラスミドの作製
まず、発現効率を高める目的で、cF1232−37−2重鎖発現プラスミド(pTK−2510)をEco RIとNco Iで切断し、プロモーターと開始コドンの間に、Kozak配列(Kozak, M.et al., J.Mol.Biol., 196, 947-950, 1987)を有する断片(センス鎖5’AATTCGCCGCCACC3’(配列番号291)、アンチセンス鎖5’CATGGTGGCGGCG3’(配列番号292))を挿入し、pTK−2571を構築した。同様にcF1232−37−2軽鎖発現プラスミド(pTK―2511)にもKozak配列を挿入し、pTK−2572を構築した。
次に、pTK−2572を制限酵素Ssp IおよびSse 8387Iで切断し、得られた断片の末端を平滑化することで、軽鎖発現ユニット(EFプロモーター、抗体軽鎖遺伝子およびポリAシグナル配列)を調製した。一方、TK−2571は、重鎖発現ユニットを切断しない制限酵素Sse 8387Iで切断後、平滑化処理を行い、この部位に軽鎖発現ユニットおよびマーカーユニットを一緒に挿入することで、3ユニットを1つのベクター上にもつ両鎖安定共発現プラスミドを構築した。なお、マーカーユニットは遺伝子増幅の為のマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(mDHFR)遺伝子に、適当なプロモーター/エンハンサーおよびポリAシグナル配列を付した遺伝子断片であり、4種類(アデノウイルスプロモータ、チミジンキナーゼプロモーター、SV40プロモーター/エンハンサーおよびSV40プロモーター)のプロモーター/エンハンサーを合成して用意した結果、4種類の両鎖安定共発現プラスミド(それぞれ、pTK−2550、pTK−2575、pTK−2576およびpTK−2577)を構築した(図18参照)。
25−2 マウス/ヒトキメラF1232−37−2を発現するCHO細胞形質転換株の作製
DHFR遺伝子欠損CHO細胞に実施例25−1で構築した発現プラスミドpTK−2577をtransfectionし、キメラ抗体産生形質転換CHOを樹立した。即ち、HT media Supplement (50×) Hybri−Max(Sigma;終濃度1×で使用)及び200mM L−Glutamine(Sigma;終濃度4mMで使用)を含むEX−CELL 325 PF CHO(JRH Bioscience)にて馴化培養したCHO DXB11をtransfection当日に遠心後、8×106cells/150cm2 Rouxの濃度でフラスコに植え込んだ。FuGENE6(ロッシュダイアグノティクス)125μlを用いて、発現プラスミドpTK−2577 12.5μgをFuGENE6添付プロトコールに準じ調製し、先のCHO DXB11へ導入した。5%CO2で37℃、2日間培養した後に、細胞を回収し、HT不含4mM L−Glutamine含有EX−CELL 325 PF CHO培地(以下EX−CELL(HT−)と記載)で二度洗浄し、EX−CELL(HT−)に再度懸濁した。次に12,500〜50,000cells/wellで96well−plateに細胞を蒔き直し、5%CO2、37℃で培養を続け、3日あるいは4日毎に培地の半量を新しいEX−CELL(HT−)に交換した。約1ヶ月間培養を続けた後、コロニーが発生したウェル内の細胞を新しいプレートに移し、培養上清中のCHO細胞を宿主として発現するcF1232-37-2を実施例19に記載のEIA法で測定した。上清中にcF1232−37−2/CHOの発現が確認された細胞をcF1232−37−2/CHO産生形質転換株として得た。
同様にして、cF1232-37-2発現プラスミドのpTK−2550、pTK−2575、およびpTK−2576でCHO DXB11株を形質転換し、得られる組換え細胞が産生するcF1232-37-2/CHOを実施例19に記載のEIA法で測定した。その結果、表15に示すように、選択マーカーとして利用しているmDHFRのプロモーターの種類によってcF1232-37-2/CHOの生産性が異なっていおり、相対的に活性の弱いプロモーターを選択マーカーの発現プロモーターとして利用することで高発現クローンが得られることを確認した。
Figure 0005224707
25−3 Methotrexateを用いた遺伝子増幅
26−2で得られたキメラ抗体発現形質転換CHO株を、Methotrexate(以下MTXと表記)を含むEX−CELL(HT−)培地で選択培養することにより、遺伝子増幅作業を行い目的のキメラ抗体の生産量が上昇しているクローンの選択を行った。
即ち、実施例25−2で得られた形質転換株を30あるいは100nM MTX含有EX−CELL(HT−)培地に懸濁し、96well−plateに巻き込んだ。3日あるいは4日毎に培地の半量を新しい30あるいは100nM MTX含有EX−CELL(HT−)に交換し、コロニーが生じるまで5%CO2、37℃で培養を続けた。得られたコロニーの培養上清中への発現量をEIA法で確認し、生産量の増加しているクローンを選択した。その結果、生産量が約2ないし10倍上昇した形質転換株を得ることができた。尚、この遺伝子増幅した形質転換株を、MTX濃度を3ないし10倍上げた培地で選択培養を繰り返すことにより、さらに生産量が増加するクローンを得ることができる。
25−4 cF1232-37-2発現CHO細胞によるcF1232-37-2の生産
25−3で得られたCHO−G32DS25H8細胞クローンを100nM MTX含有EX−CELL(HT−)培地に1.5×105cells/mlで植え込み、37℃で7日間培養した。得られた培養上清を以下の精製に用いた。
25−5 cF1232−37−2/CHOの精製
以後の操作は特に記載が無い限り4℃にて実施した。
25−4で調製されたCHO細胞株培養上清を、プレフィルターとして1μmの孔径を有するカプセルカートリッジフィルター(東洋濾紙株式会社)、本フィルターとして0.22μmの孔径を有するフルオロダインフィルター(PALL)をそれぞれ用い、室温にて清澄化した。清澄化後の培養上清を予めPBS-(Sigma)にて平衡化したプロテインA(rmp Protein A Sepharose Fast Flow、GE Healthcare/アマシャムバイオサイエンス)に吸着させ、非吸着蛋白質をPBS-にて洗浄後、非特異的に吸着している蛋白質を10×PBS-(Sigma)にて溶出した。その後、プロテインAに結合している抗体を、100 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.0)にて溶出した。溶出液はその容量を測定し、直ぐに1/10容量の2 M Tris−HCl(pH 8.5)を添加し、pHを中性に戻し精製抗体溶出液とした。この精製抗体溶出液を、アミコンPM10限外ろ過ディスク(MILLIPORE)を用いた限外濾過により濃縮したのち、生理食塩液(大塚生食注、大塚製薬工場)に対して透析し、最終的な精製抗体溶液とした。
25−6 cF1232−37−2/CHOの抗原結合反応性
実施例5と同様の方法にて、cF1232−37−2/CHOのhGPVI−hFcに対する解離定数を測定した。その結果、cF1232−37−2/CHOはhGPVI−hFcに対して十分な親和性を有し、COS細胞で一過性に発現調製したcF1232−37−2(cF1232-37-2/COSと略記する場合がある。)と同程度であることが示された。
25−7 cF1232−37−2/CHOの反応性確認
cF1232−37−2/CHOの反応性を確認するため、hGPVI−hFcに対する結合能を指標に細胞による一過的遺伝子発現系で調製したcF1232−37−2との競合実験を行った。測定方法は実施例17の17−3記載の方法に従った。固相化タンパク質としてhGPVI−hFcを用い、標識したcF1232−37−2/COSの結合に対して、未標識のcF1232−37−2/CHOあるいはcF1232−37−2/COSの濃度を変えて添加し、その競合活性を確認した。その結果を図19に示す。cF1232−37−2/CHOはcF1232−37−2/COSと同様の反応性を示すことが確認された。
(実施例26)
ヒト化抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の作製
4種類のマウス抗GPVI抗体の中から、再構成ヒト抗体の設計および作製の為の第一候補として、F1232−37−2を選択した。この抗体の各可変領域の3つのCDRを、ヒトミエローマ由来の既知抗体のCDRと置換することで、ヒト化抗体の設計を行った。重鎖として選択したのは、NEW(Saul, F.ら、J. Biol. Chem. 253, 585-597)およびEu(Cunningham B. ら、Biochemistry 9, 3161)で、軽鎖(κ鎖)としてはREI(Epp, O.ら、Eur. J. Biochem. 45, 513-524)およびEuのフレームワーク(以下FR)を受容体とした。それぞれ、NEW-HA、Eu-HA、REI-KAおよびEu-KAとして、最初の各アミノ酸配列(バージョンA;図20および21)を設計した。但しEu-HAは、そのFR3およびFR4において極めて希な配列が存在することから、より一般的な配列に変更して、バージョンC(Eu-HC)を再設計した。次に、これらのアミノ酸配列から、それらを発現可能な遺伝子配列を考案し、全長配列を数個に分割してDNA断片を合成し、リガーゼによって各断片をつなぎあわせることで、可変領域をコードする遺伝子断片を得た。これを、適当な制限酵素切断部位を有するプライマー(実施例10参照)で増幅することで、ヒト抗体定常領域(重鎖はIgG4、軽鎖はκ鎖)との結合が可能となり、ヒト化抗体全長遺伝子を得た。さらに、この遺伝子を発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に組み込むことで、各ヒト化抗体を発現可能なプラスミドが構築され、それぞれ、pTK−2560(NEW-HA)、pTK-2632(Eu−HC)、pTK-2561(REI-KA)およびpTK-2631(Eu-KA)とした。
これら各ヒト化抗体発現プラスミドをキメラ抗体発現プラスミド(重鎖:pTK−2571、軽鎖:pTK−2572)と組み合わせて発現させ、産生された抗体が、抗原に対する結合活性が保持されているかの検討を行った。その結果、Eu−HC、REI-KAおよびEu-KAにおいては、キメラ抗体あるいはヒト化抗体のどの組み合わせにおいても、発現および結合活性が認められた。一方、NEW-HAは、どの組み合わせにおいても、発現および結合活性が認められなかった。そこで、NEW-HA の各FRのアミノ酸配列中に変異(ヒト配列からマウス配列への置換)を導入して様々な変異体を作製および抗原結合活性を比較検討した結果、最終的にFR1に4箇所の変異を導入したバージョンであるNEW-HANにおいて、ヒト化抗体分子の発現と、抗原への結合活性が回復することが確認された。
さらに、ループ置換GPVI-Fcを用いた競合アッセイによっても、各ヒト化抗体は、もとのキメラ抗体と同じ結合特異性を示すことが認められた(図22)。
(実施例27)
カニクイザルex vivo実験による抗GPVIモノクローナル抗体の評価(2)
27−1 マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(2)
(単回静脈内投与試験その2)
カニクイザル(雄)に実施例16で作製したキメラ抗体cF1249−24−1又はcF1249−22−1を1mg/kgにて静脈内投与した。実施例20に示した方法にて各種解析を実施した。その結果、両抗体とも投与後血小板GPVI量の低下を引き起こすとともに血小板のコラーゲンに対する応答性を低下させ、その効果は図23に示すようにcF1249−24−1で2日間以上、cF1249−22−1で6時間持続した。また、両抗体ともに血小板膜蛋白質(GPIIIa(CD61))の発現量には大きく影響しなかった。
(実施例28)
カニクイザル出血時間測定(2)
先ずカニクイザル(雄、2.5〜5kg)の体重を測定した後、血液学的パラメータ、凝固系パラメータ,血小板機能に異常がないことを確認し、1mg/kgのcF1232−37−2を皮下に投与した。投与前ならびに投与3時間および48時間後に下記の方法により出血時間を測定した。また、比較のためにeptifibatideを0.03、0.1、および0.3mg/kgにて静脈内投与し、投与5分後に同様の方法で出血時間を測定した。なお、出血時間測定時における血小板のコラーゲン惹起凝集能を実施例20に記載の方法により測定した。
カニクイザルの両側尾静脈に注射針を刺入した後、ストップウォッチを作動し直ちに針を抜き取った。血管から湧出してくる血液を5秒間隔で濾紙(Advantec、定性濾紙No.2、150mm)に吸い取らせ、濾紙に血液が付着しなくなるまでこの操作を繰り返し、血痕のついた濾紙の数を5倍して出血時間(秒)とした。
その結果、eptifibatide投与群では血小板のコラーゲン惹起凝集能が抑制されている状況下に出血時間の有意な延長が認められたが、cF1232−37−2 1mg/kg皮下投与群では、血小板のコラーゲン惹起凝集能が抑制されている状況下においても投与前と比較して有意な出血時間の延長は認められなかった(図24)。
(実施例29)
多価抗GPVI抗体の調製と抗原結合活性
29−1 IgM型抗GPVI抗体発現プラスミドの作製
1)ヒトμ鎖定常領域遺伝子のクローニング
HeLaゲノムDNAを鋳型とし、プライマー対(IgM-bおよびIgM-c)でCμ1領域を、プライマー対(IgM-dおよびIgM-e)でCμ2領域を、プライマー対(IgM-fおよびIgM-g)でCμ3領域を、プライマー対(IgM-hおよびIgM-j)でCμ4領域をそれぞれ増幅した。各増幅産物を混合して鋳型とし、プライマー対(Nae-IgMおよびIgM-j)で再度PCRを行うことで、各領域が連結された遺伝子断片を増幅し、pT7-Blue(T)ベクターへTAクローニングを行った。配列を解析し、ヒトμ鎖定常領域をコードする遺伝子配列であることを確認し、pT7-IgM(Nae I)とした。
IgM-b GGAGTGCATCCGCCCCAACCCTT(配列番号293)
IgM-c GCAGCTCGGCAATCACTGGAAGAGGCACGT(配列番号294)
IgM-d ACGTGCCTCTTCCAGTGATTGCCGAGCTGC(配列番号295)
IgM-e TGGCTGTGTCTTGATCGGGGCCACACATGG(配列番号296)
IgM-f CCATGTGTGGCCCCGATCAAGACACAGCCA(配列番号297)
IgM-g TGTGCAGGGCCACCCCCTTGGGCCGGGAGA(配列番号298)
IgM-h TCTCCCGGCCCAAGGGGGTGGCCCTGCACA(配列番号299)
IgM-j GTTGACACGGTTAGTTTGCATGCA(配列番号300)
Nae-IgM GCCGGCAGTGCATCCGCCCCAACC(配列番号301)
2)キメラIgM型F1232-37-2発現プラスミドの構築
先ず、pTK-2510(実施例16に記載のcF1232-37-2のIgG4型重鎖発現プラスミド)をBam HIおよびAor 51HIで切断することで、γ4鎖の定常領域をコードする遺伝子断片を除去し、残りのベクター断片(発現用のEF-1αプロモーターおよびcF1232-37-2の可変領域を含む)を得た。このベクター断片に、pT7-IgM(Nae I)をBam HIおよびNae Iで切断することで得られたμ鎖定常領域をコードする遺伝子断片を挿入し、cF1232-37-2の定常領域をγ4鎖からμ鎖に置換したキメラIgM型F1232-37-2発現プラスミド(pTK-2820)を構築した。また、同様の方法にて、cF1232-43-3のIgG4型重鎖発現プラスミド(pTK-2504)より、キメラIgM型F1232-43-3発現プラスミド(pTK-2822)を構築した。
3)ヒトJ鎖のクローニングと発現プラスミドの構築
HeLaゲノムDNAを鋳型とし、プライマー対(IgJ-aおよびIgJ-d)で第1エクソン断片を、プライマー対(IgJ-cおよびIgJ-f)で第2エクソン断片を、プライマー対(IgJ-eおよびIgJ-h)で第3エクソン断片を、プライマー対(IgJ-gおよびIgJ-j)で第4エクソンをそれぞれ増幅した。各遺伝子断片を混合して鋳型とし、プライマー対(IgJ-bおよびIgJ-i)で再度PCRを行うことで、各領域が連結された遺伝子断片を得て、pT7-Blue(T)ベクターへTAクローニングを行った。配列を解析し、ヒトJ鎖をコードする遺伝子配列であることを確認し、pT7-IgJとした。
pT7-IgJをXba IとBam HIで切断してJ鎖をコードする遺伝子断片を得た後、発現ベクター(pEF2cew)のEF-1αプロモーターの下流にあるXba IとBam HI部位に挿入することで、ヒトJ鎖発現プラスミド(pTK-2393)を構築した。
IgJ-a CACTCCTTATAGATCACACACCT(配列番号302)
IgJ-b AAGTGAAGTCAAGATGAAGAACC(配列番号303)
IgJ-c CTGTTCATGTGAAAGCCCAAGAAGATGAAA(配列番号304)
IgJ-d TTTCATCTTCTTGGGCTTTCACATGAACAG(配列番号305)
IgJ-e AAACATCCGAATTATTGTTCCTCTGAACAA(配列番号306)
IgJ-f TTGTTCAGAGGAACAATAATTCGGATGTTT(配列番号307)
IgJ-g CCATTTGTCTGACCTCTGTAAAAAATGTGA(配列番号308)
IgJ-h TCACATTTTTTACAGAGGTCAGACAAATGG(配列番号309)
IgJ-i TTAGTCAGGATAGCAGGCATCTG(配列番号310)
IgJ-j AGAGCTATGCAGTCAGC(配列番号311)
29−2 IgM型マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体の調製
上記29−1で作製した発現プラスミドをトランスフェクション試薬(FuGENE6、ロシュダイアグノスティックス)と適当量混和し、この混合液をCOS細胞培養系に滴下し、トランスフェクションを行い、キメラ抗体の一過性発現を行った。マウス/ヒトキメラF1232-37-2のIgM型(以下、cF1232−37−2(IgM)と略記)発現には重鎖発現プラスミドpTK−2820、軽鎖発現プラスミドpTK−2474、およびJ鎖プラスミドpTK2393とのco−transfectionにより行い、マウス/ヒトキメラF1232-43-3のIgM型(以下、cF1232−43−3(IgM)と略記)の発現は、重鎖発現プラスミドpTK−2822、軽鎖発現プラスミドpTK−2514、およびJ鎖プラスミドpTK2393とのco−transfectionにより行った。
トランスフェクション後に5%CO2-95%空気下に37℃で3日間培養し、その培養上清を60%硫酸アンモニウムで塩析・濃縮後、プロテインLカラム(ImmunoPure Immobilized ProteinL、PIERCE)によるアフニティクロマトグラフィーにて精製した。
29−3 IgM型マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体の抗原結合活性確認
hGPVI-hFcを固相化したイムノプレート(実施例2他に記載の方法で調製した)にcF1232−37−2(IgM)およびcF1232−43−3(IgM)を各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた。0.05%Tween20を含む生理食塩水で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトμ鎖抗体(DAKO、P0322)を10%ウサギ血清含有D−PBSで2000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、TMB基質により発色反応を行い、プレート分光光度計(Molecular Devices、Wako)で450nmの吸光度を測定した。その結果、cF1232−37−2(IgM)およびcF1232−43−3(IgM)の両抗体ともにhGPVI-hFcに結合することが確認された。
実施例18の18−1に記載の方法により調製されたカニクイザルおよびヒトPRPを血小板の濃度が3.75×108cells/mLとなるようにFACSバッファーで希釈した。希釈したPRPに上記29−2で作製したcF1232−37−2(IgM)もしくはcF1232−43−3(IgM)を終濃度3ないし4μg/mLとなるように添加し25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄した。続いて、抗ヒトIgM-FITC(BD Biosciences Pharmingen)を添加して室温で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、cF1232−37−2(IgM)およびcF1232−43−3(IgM)の両抗体ともサルならびにヒト血小板に結合することが確認された。
(実施例30)
抗GPVI抗体による血小板GPVI抗原消失誘導作用の確認(in vitro)
実施例18の18-1に準じた方法によりサル全血より多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を調製した。調製したPRPにACD-A(acid-citrate-dextrose)を添加しpH6.5に調整した。調製後、2000rpmで遠心し血小板を沈殿させた後に、血小板をHEPES Buffer(ACD-AによりpH6.5に調整)により洗浄した。その後、HEPES Buffer (pH7.4)を適当量添加し血小板を懸濁した。Sysmexにより調製した洗浄血小板数を測定した。
洗浄血小板を1.5×107 PLT/tubeとなるようにマイクロチューブにとりわけ、そこに10mM CaCl2及び10mM MgCl2をそれぞれ2μL添加し、PBSにより18μLにメスアップした。5.0 μg/mL Convulxin、cF1232-37-2、cF1249-22-1、cF1249-24-1、cF1249-18-2(各濃度1 mg/mL)を2μL添加、混合し、室温において1時間反応させた。反応後、10mM EDTAを10μL添加し反応を停止させた後に15000rpm、室温で1分間遠心し、上清と沈殿に分離、各画分にSample Bufferを添加し、99℃において5分間熱処理を行った。このサンプルは-30℃において保存し、使用直前に解凍し使用した。
実施例20の方法に準じSDS-PAGE、Western Blottingを行い各サンプル中のGPVIの検出を行った。その結果、図25に示すようにConvulxin添加では、反応後の上清にGPVI抗原が検出されたが、cF1232-37-2、cF1249-22-1、cF1249-24-1、およびcF1249-18-2添加では、上清にGPVI抗原が検出されず、評価した抗GPVI抗体ではGPVI抗原のSheddingが起こらなかった。
(実施例31)
PEG化抗GPVI抗体の調製と抗原結合活性
31−1 F1232-37-2抗体のPEG化
F1232−37−2のPEG化抗体を作製するために、精製F1232−37−2にスクシイミド基を持った20KDの直鎖状のPEG(NEKTAR)を反応させた。すなわち、精製F1232−37−2をPBS(pH7.4)のバッファー中へ交換し、抗体:PEG=1:10(モル比)になるように添加し、37℃1時間反応した。
次にPEG化抗体の精製を行った。未修飾の抗体とPEG化抗体を分離する目的で、PEG化処理を行った抗体を陰イオン交換カラムQ Sepharose HP(Amersham)に供した。純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し(図26)、抗体濃度はBovine IgGをスタンダードに用いたBradford法(Bio−Rad)により算出した。
31−2 F1232-37-2Fab抗体のPEG化
F1232−37−2 Fab抗体のPEG化抗体を作製するために、実施例21の21−2で作製したF1232−37−2 Fab抗体を上記方法と同様にPEG化を行った。
次にPEG化されたFab抗体の精製をSuperdex75(Amersham)を用いて行った。純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し(図26)、抗体濃度はBovine IgGをスタンダードに用いたBradford法(Bio−Rad)により算出した。
31−3 F1232-37-2抗体の抗原結合活性
抗原に対する結合活性をELISAにて確認した。hGPVI-hFcを固相化したイムノプレート(実施例2他に記載の方法で調製した)にF1232−37−2とF1232−37−2のPEG化抗体を同じ濃度に調整して各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた。0.05%Tween20を含む生理食塩水で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO、P260)を10%ウサギ血清含有D−PBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、TMB基質により発色反応を行い、プレート分光光度計(Molecular Devices、Wako)で450nmの吸光度を測定した。その結果、F1232−37−2とF1232−37−2のPEG化抗体はほぼ同等の結合活性を有していることが確認された(図27)。
(実施例32)
抗GPVI抗体のレパトア遺伝子解析
実施例9および実施例15に記載の抗GPVモノクローナル抗体の配列は数種類の一定の抗体遺伝子に由来すると考えられ、ヒトGPVIのループ9を認識する抗体のレパートア選択に特徴のあることが認められた。抗体遺伝子はgerm-line抗体遺伝子セグメント(重鎖のH、D及びJ、ならびに、軽鎖のV及びJ)の組合せによって構成され、さらに多くの場合、体細胞変異を伴って形成される(Immunoglobulin Genes 2nd eds. T. Honjo and F.W. Alt, Academic Press, 1995等参照)。そこで、これらの抗体の重鎖可変領域の核酸塩基配列および軽鎖可変領域の核酸塩基配列をクエリー配列として、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のIg germ-line V遺伝子のデータベースを対象としてIg-BLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を行った。その結果、表16に示したように、各抗体の可変領域核酸塩基配列は、それぞれ特定のマウスgerm-line抗体重鎖遺伝子Hセグメント、Dセグメント及びJセグメント(VH、DH及びJHセグメント)、ならびに抗体軽鎖遺伝子VセグメントおよびJセグメント(VL及びJL)と高い一致率(Identity%)を示した。。なお、表16には、各クローンに対してスコアの高い順に各セグメントを3つまで記載した。それらのいずれかが各抗体遺伝子の由来するgerm-line抗体遺伝子を構成するセグメントであると推定されるが、これらの内、各クローンについては最上段に示した各セグメントの組合せで構成された遺伝子に由来している可能性が最も高いと考えられる。
Figure 0005224707
Figure 0005224707
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(実施例33)
ラットGPVI遺伝子のクローニング
ラットGPVI遺伝子は、先ず、公知であるマウスGPVI遺伝子の情報を基に、全エクソンをそれぞれ増幅可能なプライマー(6対)を設計した。これらを用いて、ラットゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、特異的に増幅された遺伝子断片をシークエンスし、つなぎあわせることで、ラットGPVI遺伝子配列を推定した。次に、この配列情報に基づいてラットGPVI用プライマー(ratGPVI-#a, mGPVI-m) を再設計し、ラット骨髄由来cDNA(ラット骨髄由来RNAを、オリゴdTプライマーを用いて逆転写して合成)を鋳型としたPCRで、全長遺伝子を増幅した。増幅産物をゲルから抽出し、pT7-Blue(T)ベクター(タカラバイオ)にTAクローニングした後、塩基配列を決定した。また、この配列を有するプラスミドをpTK-2478とした。図28にラットGPVI遺伝子の塩基配列(配列番号312)及びコードされるアミノ酸配列(配列番号313)を示す。
Figure 0005224707
(実施例34)
ラットGPVI(D1D2)マウスGPVI(D3)‐マウスFc融合蛋白質(rGPVI−mFc)等の作製
rGPVI-hFc融合蛋白発現プラスミドの構築
pTK-2478を鋳型とし、プライマー対(rat GPVI-#aおよびrat GPVI-#t)でPCRを行うことで、ラットGPVIのD1およびD2(GPVIの細胞外領域のドメイン1およびドメイン2)をコードする遺伝子断片Aを増幅した。同様に、pTK-2440(MD0754JP P05-0268 特願2005-348534に記載)を鋳型とし、プライマー対(rat GPVI-#sおよびIgG1-i)でPCRを行うことで、マウスGPVIのD3(GPVIの細胞外ドメインで、D1およびD2以外の領域)をコードする遺伝子断片Bを増幅した。次にAおよびBを混合して鋳型とし、プライマー対(rat GPVI-#aおよびIgG1-i)で再度PCRを行うことで、ラットGPVI(D1およびD2)とマウスGPVI(D3)が連結された遺伝子断片Cを得た。この断片Cの5'側をEco RI、3'側をBam HIで切断後、マウスFc領域(mFc)をEFプロモーターの下流に有するプラスミド(pTK-2299: MD0754JP P05-0268 特願2005-348534に記載)のEco RIおよびBam HI部位に挿入することで、rGPVI-mFc融合蛋白を発現可能なpTK-2483を構築した。
Figure 0005224707
なお、mFcをhFcに置き換えたラットGPVI-ヒトFc(rGPVI−hFc)、マウスGPVI−ヒトFc(mGPVI−hFc)、ヒトGPVI−ヒトFc(hGPVI−hFc)、rGPVI−hL2,5−hFc(rGPVI−hFcのループ2、5をhGPVIの対応する配列で置換したGPVI変異体蛋白質)、rGPVI−hL9,11−hFc(rGPVI−hFcのループ9、11をhGPVIの対応する配列で置換したGPVI変異体蛋白質)及びhGPVI−mL9−hFc(hGPVI−hFcのループ9をマウスGPVIの対応する配列に置換したGPVI変異体蛋白質)の各発現プラスミドを、公知のヒトGPVI及びマウスGPVIの配列、図1のラットGPVIの配列ならびにヒト及びラットGPVIのアミノ酸配列のアラインメント(図3)又はヒト及びマウスGPVIのアミノ酸配列のアラインメント(図1)に示された各ループのアミノ酸配列に基づいて、公知の方法(WO01/810、WO03/54020、WO2005/7800等参照)を参考に、実施例1又は実施例33と同様の手法で作製した。
(実施例35)
rGPVI-mFc融合蛋白質の発現および精製 rGPVI-mFc融合蛋白質発現プラスミドpTK-2483を用いて実施例1記載と同様の方法によりCOS−1細胞をトランスフェクションした。3日後、培養上清を回収し、プロテインAカラム(Prosep-vA、MILLIPORE)クロマトグラフィーによりrGPVI-mFc融合蛋白質を精製した。得られたrGPVI−mFcを定法にてSDS-PAGEで解析した(図29)。
なお、rGPVI−hFc、mGPVI−hFc、hGPVI−hFc、rGPVI−hL2,5−hFc、rGPVI−hL9,11−hFc及びhGPVI−mL9−hFcも同様に発現及び精製した。
(実施例36)
抗ラットGPVIモノクローナル抗体の作製
Alum(PIERCE)12.5μLとCpGアジュバント1mgと精製ラットGPVI-mFc融合タンパク20μgを混合し100μLとした投与抗原をddYマウス(メス、8週令、SLC)の両足のフットパッド内に各25μLずつ投与した。3日後、腸骨リンパ節よりリンパ球を分離し、実施例2に記載の方法と同様の方法で細胞融合、およびハイブリドーマのスクリーニングを行った。さらに、精製ラットGPVI−hFcタンパクと反応した細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行った。11日後、同様にスクリーニングを行い、精製ラットGPVI−hFcタンパクと反応する抗体を産生するクローン17クローンを得た(表19)。
これらハイブリドーマクローン産生される抗ラットGPVI抗体を実施例2に記載の方法と同様の方法により精製した。
Figure 0005224707
(実施例37)
抗ラットGPVI抗体における認識領域の解析
実施例36で得られた抗ラットGPVIモノクローナル抗体の認識ドメインの解析を実施例7に記載の方法と同様の方法により行った。すなわち、に実施例36で精製したモノクローナル抗体とrGPVI−hFc、hGPVI−hFc、rGPVI−hL2,5−hFc(rGPVI−hFcのループ2、5をhGPVIの配列に置換したタンパク)、あるいはGPVI−hL9,11−hFc(rGPVI−hFcのループ9、11をhGPVIの配列に置換したタンパク)をそれぞれ混合し、rGPVI−hFcを固相したイムノプレートに添加し、反応性を調べた。その結果、rGPVI−hL2,5−hFcを添加した時に吸光度が低下しない抗体、つまりはループ2及び/又はループ5を認識している抗体が1種類(F1239-11-1)、またrGPVI−hL9,11−hFcを添加した時に吸光度が低下しない抗体、つまりはループ9及び/又はループ11を認識している抗体が3種類(F1239-4-2、F1239-6-1、F1239-22-2)存在する事が示された(図30)。
なお、上記の3種類の抗体(F1239-4-2、F1239-6-1、F1239-22-2)は同様の方法においてマウスGPVI-Fcとは結合しなかった。ラットGPVIとマウスGPVIのループ11のアミノ酸配列は同一であることを併せて考察すると、ループ11が重要な認識領域とは考えにくく、上記の抗体は少なくともラットGPVIのループ9の一部を含有する構造を認識しているものと推定された。
(実施例38)
抗ラットGPVI抗体のラット血小板に対する結合能
ラットの腹部大動脈から採血したクエン酸加血を110×g、25℃、10分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を得た。次に得られたPRPを0.5%非働化FBSと2.5 mM EDTAを含むPBS(以下、FACSバッファー)で希釈し、実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体(F1239-6-1)を添加後、25℃で30分間静置した。30分後、FACSバッファーで血小板を洗浄した後、抗マウスイムノグロブリンズ抗体-FITC(DAKO)を添加して、25℃、遮光下で30分間静置した。30分後、FACSバッファーで血小板を洗浄した後、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定することにより抗ラットGPVIモノクローナル抗体の結合について解析した。その結果、F1239-6-1はラット血小板に結合することが示された(図31)。
(実施例39)
抗ラットGPVI抗体の血小板に対する作用
正常WistarラットPRPを調製し、抗ラットGPVI抗体F1239-6-1のラット血小板活性化作用をCD62Pの発現量を指標として終濃度1〜100μg/mLのF1239-6-1添加条件で実施例18に記載の方法と同様の方法でFACSにより評価した。なお、ラットCD62Pの検出には抗ラットCD62P-PE(Biocytex)を用いた。 F1239-6-1はいずれの濃度においてもラット血小板を活性化しなかった。
(実施例40)
抗ラットGPVI抗体の血小板凝集抑制作用とGPVI消失誘導作用
実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体を雄性SDラットに0.01〜1 mg/kgの用量で皮下投与した。投与6日後に血液を採取し、730 rpmで遠心することにより血小板多血漿(PRP)を調製した。血小板凝集能(コラーゲンおよびADPに対する反応性)は血小板凝集測定装置(MCM HEMA TRACER 313M、エム・シー・メディカル)を用いて測定した。すなわち、PRPの血小板数が3×105 cells/uLとなるように同一ラットより取得した血漿を用いて希釈した後、終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で3分間インキュベートした。さらに終濃度10μg/mlのコラーゲン溶液あるいは終濃度で20μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートした。血小板凝集率は光の透過率を測定することにより求めた。その結果、F1239-6-1(0.3mg/kg)を投与したラットから採血、調製したPRPにおいてコラーゲン惹起血小板凝集能は著明に低下したが、ADP惹起血小板凝集は影響を受けなかった(図32)。
また、血小板GPVIをWesternBlott法により解析した結果、抗ラットGPVIモノクローナル抗体投与3、6及び9日後に顕著なGPVI蛋白質の発現量減少が認められ、当該抗体の血小板上からGPVIを消失させる作用が確認された(図33)。
(実施例41)
抗ラットGPVI抗体のコラーゲン致死モデルにおける作用
実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体F1239-6-1を、雄性SDラットに0.1,0.3,あるいは 1 mg/kgの用量で皮下投与した。対照として同量の生理食塩水を皮下投与した。投与6日後にコラーゲン溶液(コラーゲンリエージェント“ホルム” (NYCOMED))を0.8 mg/kgの用量で静脈内に急速投与し,その後最大15分間観察した。呼吸運動の停止を以って死亡と判定した。投与後死亡に至るまでの時間(分)を生存時間とし,15分後まで生存した例については生存時間を15分とした。投与群ごとに死亡数/例数を求め,カイ二乗検定(Yukum's stat light)により生理食塩水投与群との差を検定した。また,生存時間の平均およびSEMを群ごとに計算し,生理食塩水投与群との平均値の差を Dunnettの方法(non-parametric, Yukum's stat light)により検定した。その結果、F1239-6-1はコラーゲン致死モデルにおいて0.3 mg/kg以上の用量で有効であることが示された(図34)。
(実施例42)
抗ラットGPVI抗体の麻酔下ラット動脈血栓モデル血小板凝集抑制作用
実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体F1239-6-1を、雄性SDラットに0.1,あるいは0.3 mg/kgの用量で皮下投与した。対照として同量の生理食塩水を皮下投与した。投与6日後にウレタン麻酔後,体温維持装置(BWT-100, バイオリサーチセンター)上に仰臥位に固定した。頸部を正中切開し右頸動脈を約1 cm露出し,パルスドップラー血流計(モジュール;PD-20, システム;VF-1, CRYSTAL BIOTEC,プライムテック)のプローブ(DBF-10S ,同上)を頸動脈に装着し,血流速度をポリグラフ装置(365,NEC三栄)によりチャート上に記録した.プローブの末梢側で釣針状の双極電極を頸動脈に掛け,電気刺激装置(SEN-7103,日本光電)より0.3 mAの直流電流を3分間通電した。通電開始から血流が停止するまでの時間をストップウオッチで計測した(最大40分間)。また,刺激電極の下流側の頸動脈の表面温度をデジタル温度計で5分おきに計測し,記録した。血流が停止するまでの時間の平均およびSEを群ごとに計算し,生理食塩水投与群との平均値の差をDunnettの方法(non-parametric, Yukum's stat light)により検定した。また,頸動脈表面温度と直腸温との差を投与群ごとに集計し,平均およびSEを算出し,各時点での差を Dunnettの方法(parametric, 同上)により検定した。その結果、抗体投与群で用量依存的に動脈閉塞時間の延長が見られ,0.3 mg/kg群では対照群に比べ有意差が認められた(図35)。また,頸動脈表面温度の計測では,通電開始15分後の時点において抗体投与両群で対照群と有意な差が見られ,また,20,25および35分後において0.3 mg/kg投与群では対照群と有意な差が見られた。以上の結果より,本モデルにおいてF1239-6-1は0.3 mg/kgの用量で有効であることが示された。
(実施例43)
CypHer5E標識抗GPVI抗体による解析
cF1232-37-2/CHOおよびの対照としてhuman IgG4(Calbiochem)をpH感受性蛍光試薬CypHer5E Mono NHS Ester(GEヘルスケア バイオサイエンス)を用いて、添付書類に従ってCypHer5E標識を実施した。同様にF1239-6-1およびその対照として正常マウス血漿からProsep rA(Millipore)を用いて精製したmouse IgGをCypHer5E標識した。各標識抗体濃度は吸光度測定の結果から算出した。
43−1 CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOの抗原結合活性
実施例31-3に記載の方法と同様にhGPVI-hFcに対する未標識およびCypHer5E標識cF1232-37-2/CHOのヒトGPVIに対する結合活性を評価した。なお、結合検出においては0.1% BSA含有D-PBSで2000倍希釈したヒトイムノグロブリンκ鎖抗体(Dako)を使用した。その結果、CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOは未標識cF1232-37-2/CHOとほぼ同等の結合活性を有していた(図36)。
43−2 CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOを用いたin vitro internalization評価
実施例18-1に記載の方法により調製されたサルPRPを血小板の濃度が3.7×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した。希釈したPRPにCypHer5E標識cF1232-37-2/CHOあるいはCypHer5E標識human IgG4を終濃度50ないし70μg/mLとなるように添加し、室温、遮光状態で1時間反応させた。反応後の試料を、直ちにフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で測定し、血小板にinternalizeしたCypHer5E標識抗体由来の蛍光強度を評価した。CypHer5E標識cF1232-37-2/CHO添加血小板では添加抗体由来の明確な蛍光が観察されたが、CypHer5E標識human IgG4添加血小板ではbufferのみ添加した血小板と同程度の蛍光しか観察されなかった。この結果から、CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOは血小板にinternalizeされたと考えられた(図37)。
43−3 CypHer5E標識F1239-6-1の抗原結合活性評価
実施例3に記載の方法と同様の方法によりペルオキシダーゼ標識F1239-6-1を作製し、これらの標識抗体と固相化rGPVI-hFcとの結合反応系に対応するマウス抗体を添加する競合法(実施例3の方法)により、ペルオキシダーゼ標識F1239-6-1と対応する未標識およびCypHer5E標識F1239-6-1のラットGPVIに対する結合活性を比較した。
その結果、CypHer5E標識F1239-6-1は未標識F1239-6-1とほぼ同等の結合活性を有していた(図38)。
43−4 CypHer5E標識F1239-6-1を用いたin vitro internalization評価
3.7×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈調整したラットPRPにCypHer5E標識F1239-6-1あるいはCypHer5E標識mouse IgGを終濃度65もしくは75μg/mLとなるように添加し、室温、遮光状態で1時間反応させた。反応後の試料を、直ちにフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で測定し、血小板にinternalizeしたCypHer5E標識抗体由来の蛍光強度を評価した。CypHer5E標識F1239-6-1を添加した血小板では添加抗体由来の明確な蛍光が観察されたが、CypHer5E標識mouse IgGを添加した血小板ではbufferのみ添加した血小板と同程度の蛍光しか観察されなかった。この結果から、CypHer5E標識F1239-6-1は血小板にinternalizeされたと考えられた(図39)。
43−5 CypHer5E標識F1239-6-1を用いたin vivo internalization評価
CypHer5E標識F1239-6-1あるいはCypHer5E標識mouse IgG を0.2mg/kgでWistarラットに静脈内投与し、投与前と投与3時間後にクエン酸加血100μLを実施した。採血液は2.5mM EDTA/PBSで希釈してフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で測定し、血小板にinternalizeしたCypHer5E標識抗体由来の蛍光強度を評価した。また、PE標識F1239-11-1を1μLの採血液に対して0.8μg相当添加して室温、遮光下で30分静置した。PE標識F1239-11-1のアイソタイプ対照としてPE標識マウスIgG2aκ抗体を同量添加した試料も併せて調製した。30分後、2.5mM EDTA/PBSで希釈した試料をフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で蛍光強度を測定することにより血小板細胞膜表面上のGPVI発現量について解析した。なお、血小板の判定は前方散乱光/側方散乱光のプロット図から判断した。解析においては、PE標識マウスIgG2aκ抗体での検出結果値を非特異的結合とみなして、PE標識F1239-11-1検出結果値からPE標識マウスIgG2aκ抗体検出結果値を差し引いて、GPVI発現量変化を算出した。CypHer5E標識F1239-6-1投与ではinternalizeした抗体由来の明確な蛍光強度増加が観察されたが、CypHer5E標識mouse IgG投与では蛍光強度増加は観察されなかった。また、血小板細胞膜表面上のGPVI発現量は投与前と比較してCypHer5E標識F1239-6-1投与では大幅に減少しており、CypHer5E標識mouse IgG投与では僅かに減少していた。この結果から、CypHer5E標識F1239-6-1は血小板膜表面上GPVIと共に血小板にinternalizeされたと考えられた(図40)。
(実施例44)
cF1232−37−2S発現プラスミドの構築
通常の2価抗体であるcF1232−37−2をH鎖およびL鎖が各々1本からなる1価抗体(「cF1232−37−2S」のように記載することがある。)として発現する為に、重鎖のヒンジ部分にある2つのシステイン残基をグリシン残基に置換した。具体的には、まず、cF1232−37−2重鎖発現プラスミドであるpTK−2571(実施例25に記載)を鋳型とし、プライマー対(IgG4-s, IgG4-m)および(IgG4-r, pEF2ce-27)でPCR反応を行った。各反応産物を少量用いてアガロースゲル電気泳動を行い、各増幅産物が目的とする断片であることを確認後、両反応産物を混合して鋳型とし、プライマー対(IgG4-m, pEF2ce-27)によるPCR反応を再度行った。この反応産物が目的とする断片であることを確認後、ゲルろ過カラムで脱塩処理を行い、制限酵素Nhe IとBam HIによる二重消化を行った。消化された産物をアガロースゲル電気泳動に供し、目的とする断片をゲルから抽出後、断片Aとした。同様に、制限酵素Nhe IとBam HIによる二重消化処理を施したpTK−2571のベクター部分を調製し断片Bとした。断片Aと断片Bを混合後、リガーゼによる連結反応を行い、目的とするcF1232−37−2S重鎖発現プラスミドを構築し、pTK−2828とした。尚、軽鎖発現プラスミドであるpTK−2572に変更は無く、そのまま発現実験に用いた。
IgG4-s 5' GGTGCTGGGCCTGATGGGCCTGGGGGACCA 3' (配列番号331)
IgG4-m 5' AGCGCTAGCACCAAGGGCCCATCCGTCTTC 3' (配列番号332)
IgG4-r 5' TGGTCCCCCAGGCCCATCAGGCCCAGCACC 3' (配列番号333)
pEF2ce-27 5' CATCAATGTATCTTATCATGTCT 3' (配列番号334)
(実施例45)
cF1232−37−2S/COSの調製
実施例44にて作製したCF1232-37-2S発現プラスミドpTK-2828を用いて実施例1と同様の方法によりCOS細胞をトランスフェクションした。得られる遺伝子組換えF1232−37−2S抗体を含むCOS細胞培養液を、プレフィルターとして0.8μmの孔径を有するカプセルカートリッジフィルター(東洋濾紙株式会社)、本フィルターとして0.22μmの孔径を有するフルオロダインフィルター(PALL)をそれぞれ用い、室温にて清澄化し培養上清を得た。この培養上清を予めPBS−(Sigma)にて平衡化したrmp Protein A Sepharose Fast Flow(GE ヘルスケアバイオサイエンス株式会社)に吸着させ、非吸着蛋白質をPBS−にて洗浄後、非特異的に吸着している蛋白質を1.5 M NaClを含む100 mMリン酸バッファーにて溶出した。その後、特異的に結合している抗体を、100 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.7)にて溶出した。溶出液はその容量を測定し、直ぐに1/10容量の1 M Tris−HCl(pH 8.5)を添加し、pHを中性に戻した。得られた標品を0.9% NaCl水溶液に対して透析し、cF1232−37−2S/COS精製標品とした。
(実施例46)
cF1232-37-2S/COSの血小板への結合反応性
実施例18-1に記載の方法により調製されたカニクイザルおよびヒトPRPを血小板の濃度が3.75×108 cells/mLとなるようにFACSバッファーで希釈した。希釈したPRPに実施例45で作製したcF1232-37-2S/COSを終濃度10μg/mLとなるように添加し25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄した。続いて、抗ヒトIgG-FITC(Dako)を添加して遮光下25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、cF1232-37-2S/COSがサルならびにヒト血小板に結合することが確認された。
(実施例47)
cF1232-37-2S/COSの血小板に対する作用
47−1 cF1232-37-2S/COSのヒト血小板およびカニクイザル血小板活性化作用
実施例18-1に記載の方法により、反応液に終濃度1mMのCaCl2が存在する条件でcF1232-37-2S/COSのカニクイザルおよびヒト血小板活性化作用をCD62Pの発現量を指標として終濃度1〜100μg/mLのcF1232-37-2S/COS添加条件で評価した
cF1232-37-2S/COSはいずれの濃度においてもヒト血小板あるいはカニクイザル血小板を活性化しなかった(図41)。
47−2 cF1232-37-2Sのコラーゲン惹起血小板凝集抑制作用(in vitro)
カニクイザルPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜100μg/mLのcF1232-37-2Sを添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度1μg/mlのコラーゲン溶液を添加し、37℃で12分間イことによりコラーゲン応答性の血小板凝集を求めた。
cF1232-37-2Sは100μg/mLで濃コラーゲン惹起によるヒト血小板の凝集を阻害した(図42)。
47−3 cF1232-37-2Sのカニクイザルex vivo試験 −コラーゲン惹起血小板凝集能−
カニクイザル(雄、約4kg)に cF1232-37-2S/COS3mg/kgにて静脈内投与し、投与後に血小板を採取し、その血小板凝集能を調べた。その結果。cF1232-37-2S 3mg/kg静脈内投与動物では投与後6時間以内にコラーゲンに対する応答性が低下し、その作用は2日間以上持続した(図43)。
(実施例48)
F1239-6-1のFabおよびPEG化F1239-6-1Fab
48−1 F1239−6−1のFab作製
F1239−6−1のFabを作製するために、精製F1239−6−1をMetalloendopeptidaseにて処理した。すなわち、精製F1239−6−1をPBS(pH7.4)バッファー中へ交換し、Metalloendopeptidaseを抗体:酵素=3000:1(重量比)になるように添加し、25℃4時間反応した。反応終了時には終濃度30mMとなるようにEDTAを添加した。
次にこれを実施例21−2と同様な方法でFabの精製および分析を行った。
48−2 F1239−6−1 Fab抗体のPEG修飾
F1239−6−1Fab抗体のPEG化抗体を作製するために、上記で得られたF1239−6−1Fab抗体を実施例31−1と同様な方法で行った。
次にPEG化抗体の精製を行った。未修飾の抗体とPEG化抗体を分離する目的で、PEG化処理を行った抗体を疎水クロマト Macro−Prep Methyl HIC(Bio−Rad)に供した。純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、抗体濃度はBovine IgGをスタンダードに用いたBradford法(Bio−Rad)により算出した。
48−3 PEG化F1239-6-1Fabの結合活性確認
F1239−6−1 FabのPEG化抗体のラットGPVIに対する結合活性を実施例2に記載の方法と同様の方法によりELISA法にて確認を行った。その結果、F1239−6−1Fab抗体とF1239−6−1FabのPEG化抗体はほぼ同等の結合活性を有していた(図44)。
48−4 PEG化F1239-6-1Fabのサルおよびヒト血小板への結合確認
2.0×108 cells/mLとなるようにFACSバッファーで希釈したラットPRPに実施例48−1、48−2で作製したPEG化F1239-6-1Fabを終濃度38μg/mLとなるように添加し25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄した。続いて、抗マウスIgs-FITC(Dako)を添加して遮光下25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、PEG化F1239-6-1Fabがラット血小板に結合することが確認された。
(実施例49)
カニクイザル出血時間測定(3)高用量投与
出血時間の測定にあたっては先ずカニクイザルの体重を測定した後、血液学的パラメータ、凝固系パラメータ,血小板機能に異常がないことを確認し、3.0mg/kg又は10mg/kgのcF1232-37-2/CHOを皮下に投与してその48時間後に実施例28に記載の方法と同様の方法により出血時間を測定した。
cF1232-37-2/CHO投与動物においては投与前と比較して2倍以上の出血時間の延長は認められなかった(図45)。
(実施例50)
ラット出血時間測定試験
体重が均一になるように群分けをした非絶食SDラット(雄、Crj:CD (SD) IGS, 8w)に0.3〜3mg/kgのF1239-6-1もしくは生理食塩水を1mL/kgの容量で皮下投与した。投与6日後に切創作製の15分前にペントバルビタールの腹腔内投与(50mg/kg, 1mL/kg)により麻酔した。尾の先端から5〜6cmの背側に動脈および静脈を避け、剃刀を用いて切創を作製した。尾の先端12cmを垂直に垂らし、作製した切創に30秒間隔でろ紙(ADVANTEC, 1×3cm)をあて、血液が付着しなくなるまでの時間を測定し出血時間とした。
抗体投与動物についてはいずれの用量においても生理食塩水投与群と比べて出血時間が2倍以上に延長することはなかった(図46)。陽性対象として用いたクロピドグレルでは経口投与後2時間の時点で10mg/kg以上を投与した動物において出血時間が5倍以上に延長していた。なお、クロピドグレル投与では投与2時間後の時点において、10mg/kg以上を投与した動物の血小板はコラーゲンに対する応答性が低下し、30mg/kgを投与した動物の血小板はコラーゲンおよびADPに対する応答性が低下しており、上記で用いた用量は、ほぼ通常用いられる有効用量の範囲にあると考えられる。
(実施例追51)
125 I]標識cF1232−37−2/CHOの調製
実施例25において作製したcF1232−37−2/CHOを用いて、[125I]標識cF1232−37−2/CHOを調製した。すなわち、cF1232−37−2/CHOをN−succinimidyl−3−(4−hydroxy−3−[125I]iodophenyl propionate([125I]−Bolton−Hunter Reagent−monoiodinated)と反応後、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製し、標識抗体を得た。得られた標識抗体は実施例2に記載のEIA法により濃度算出した。
(実施例52)
cF1232−37−2/CHOのヒト血小板およびサル血小板に対する解離定数の測定
解離定数はHomologous competitive binding法により算出した。すなわち、洗浄血小板を一定量の標識抗体および可変量のcF1232−37−2/CHO(未標識抗体)と反応後、血小板に結合した標識抗体量を測定し、添加した標識抗体量と未標識抗体量を元にcF1232−37−2/CHOの血小板に対する解離定数および血小板当たりの抗体最大結合数を算出した。各パラメータの算出には以下の式を適用した。
Total Binding
= Bmax×[Hot]÷([Hot]+[Cold]+KD)+NS
・Total Binding: 血小板当たりの標識抗体結合数
・Bmax: 血小板当たりの抗体最大結合数
・[Hot]: 標識抗体濃度(M)
・[Cold]: 未標識抗体濃度(M)
・KD: 解離定数(M)
・NS: 血小板当たりの非特異結合抗体数
正常人またはカニクイザルから採血したクエン酸加血より調製したPRPにACD−A(acid−citrate−dextrose)を添加しpH6.5に調整した。この血小板を2000rpmで遠心して沈殿させた後に、HEPES Buffer(ACD−AによりpH6.5に調整)にて洗浄した。その後、HEPES Buffer(pH7.4)を適当量添加して血小板を懸濁し、洗浄血小板を調製した。血小板数をSysmex F−820(シスメックス株式会社)により測定後、血小板数が6×105cells/μLとなるようHEPES Buffer(pH7.4)で希釈した。
希釈した洗浄血小板を、終濃度3nMの標識抗体および終濃度0〜1250nMの未標識抗体と混合し、血小板数を3×105cells/μLとした。氷上で1時間インキュベート後、反応液を30%ショ糖/HEPES Buffer(pH7.4)に重層し、12000gで5分間遠心して血小板と未結合の抗体とを分離した。分離した各画分の放射活性をオートマチックガンマカウンター1470 WIZARD(株式会社パーキンエルマージャパン)で測定した。データはGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)で解析した。
解析の結果、ヒト血小板に対しては、KD=1.7±0.4×10-8 (M)、血小板あたりの抗体の最大結合数=925±254(n=3、値はいずれもmean ± S.E.)であった。サル血小板に対しては、KD=2.0±0.1×10-8 (M)、血小板あたりの抗体の最大結合数=1007±64.4(n=3、mean ± S.E.)であった。
本発明の抗体は、特に、ヒトの疾患、例えば、血小板の活性化もしくは凝集、または血管内皮障害もしくは動脈硬化性の反応によって引き起こされる疾病の予防及び/または治療に有効であり、血栓もしくは塞栓に起因する疾患、例えば、血栓症、塞栓症または動脈硬化性の疾患等の予防及び/または治療に利用することができる。また、本発明の抗体を用いた被験試料中のGPVIを検出する方法により、疾患の診断を行うことができる。特に、ヒトの疾患、例えば、血栓性、塞栓性または動脈硬化性の疾患の診断に利用することができる。
ヒト可溶型GPVIおよびマウス可溶型GPVIのアミノ酸列のアライメントである。四角は、GPVIの各ドメイン領域およびモデリングによって予測されたループ領域の位置(L1−L14)を示す。 GPVI欠損患者の抗体とマウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体との競合試験の結果を表す。YA-Abs-88およびYA-Abs-03はGPVI欠損患者の抗GPVI抗体を示す。 ヒト可溶型GPVIおよびラット可溶型GPVIのアミノ酸列のアライメントである。四角は、各ドメイン領域およびモデリングによって予測されたループ領域の位置(L1−L14)を示す。 マウスハイブリドーマ抗体とキメラ抗体の反応性を調べた結果を示す。 キメラ化した抗体とマウスハイブリドーマ抗体のGPVIとコラーゲンとの結合阻害を示す。 抗ヒトGPVI抗体のGPVI変異体との結合特性を調べた結果を表す。 cF1232-37-2の各種hGPVIマウスループ置換体との反応性を調べた結果を表す。 ヒト血小板およびカニクイザル血小板活性化作用を示す。ヒト血小板(A)およびカニクイザル血小板(B)のCD62P(Pセレクチン発現量)をFACSにより測定し、平均蛍光強度(MFI)で示した。 ヒト血小板に対する凝集惹起作用を示す。 コラーゲン惹起ヒト血小板凝集に対するF1232-37-2の作用を表す。 ADP惹起ヒト血小板凝集に対するF1232-37-2の作用を表す。 マウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体F1232-37-2およびF1199-6のカニクイザルへの静脈内投与試験の結果を示す。 マウス/ヒトキメラ抗ヒトGPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(単回静脈内試験cF1232-37-2単回静脈内投与試験)の結果を示す。 cマウス/ヒトキメラ抗ヒトGPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(反復静脈内投与試験)の結果を示す。カニクイザルにcF1232-37-2を0.3 mg/kgを1日おきに4回投与したときのコラーゲン惹起血小板凝集能(A)および血小板GPVI量(B)を測定した。 cマウス/ヒトキメラ抗ヒトGPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(皮下投与試験)の結果を示す。カニクイザルにcF1232-37-2を皮下投与した後、経時的に採血し、2 μg/mL コラーゲンで惹起される血小板凝集能(A)および血小板GPVI量(B)を測定した。 F1232-37-2 Fabのコラーゲン惹起血小板凝集抑制作用を示す。 F1232-37-2 F(ab')2のカニクイザルex vivo試験の結果を示す。 cF1232-37-2両鎖安定共発現プラスミドの構築を示す。 COS細胞で発現させたcF1232-37-2とCHO細胞で発現させたcF1232-37-2の抗原結合反応性を示す。 重鎖可変領域のアミノ酸配列とそのヒト化について示す。 軽鎖可変領域のアミノ酸配列とそのヒト化について示す。 ヒト化抗体のGPVI結合特異性を示す。 キメラ抗GPVI抗体を投与されたカニクイザル血小板のコラーゲン惹起凝集能試験の結果を表す。 カニクイザル出血時間試験の結果を表す。A:eptifibatide投与静脈内投与後5分後および抗GPVI抗体cF1232-37-2投与48時間後の血小板のコラーゲン惹起凝集能を示す。B:eptifibatide投与静脈内投与後5分後および抗GPVI抗体cF1232-37-2投与48時間後の出血時間を各群薬物投与前値と比較した結果を示す。 抗GPVI抗体による血小板GPVI抗原shedding確認試験の結果を示す。 抗GPVI抗体全抗体およびFab抗体のPEG化の結果を表す。各レーンは、1:F1232-37-2全抗体;2:F1232-37-2のPEG化反応物;3:PEG化F1232-37-2精製物;4:F1232-37-2 Fab抗体;5:F1232-37-2 FabのPEG化反応物;6:PEG化F1232-37-2 Fab精製物を表す。 PEG化抗GPVI抗体のGPVI抗原結合活性試験の結果を表す。 ラットGPVI遺伝子のヌクレオチド配列及びそれによってコードされるアミノ酸配列を示す。 実施例35で得られたrGPVI-Fc融合蛋白質のSDS-PAGEの結果を表す図である。レーン1は分子量マーカー、レーン2はrGPVI-hFc融合蛋白質、レーン3はrGPVI-mFc融合蛋白質を示す。 GPVIループ置換体に対する結合能を調べた結果を示す。 抗ラットGPVI抗体のラット血小板に対する結合能を調べた結果を示す。 抗ラットGPVI抗体投与ラット血小板の凝集能を調べた結果を示す。 実施例40におけるGPVI消失の結果を示す。 コラーゲン致死モデルに対する抗GPVI抗体の効果を調べた結果を示す。 電気刺激惹起動脈血栓モデルに対する抗GPVI抗体の効果を調べた結果を示す。 CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOの抗原結合評価を表す図である。 CypHer5E標識cF1232-37-2/CHO in vitro internalizationの結果を示す。 CypHer5E標識F1239-6-1の抗原結合評価を示す。 CypHer5E標識F1239-6-1 in vitro internalizationの結果を示す。 CypHer5E標識F1239-6-1 in vivo internalizationの結果を示す。 cF1232-37-2S/COSの血小板活性化評価(CD62P)の結果を示す。 cF1232-37-2S/COSのコラーゲン惹起血小板凝集に対する抑制作用を示す。 cF1232-37-2S/COSのカニクイザルex vivo試験の結果を表す図である。コラーゲン惹起血小板凝集能により結果を示す。 PEG化F1239-6-1Fabの抗原結合活性を調べた結果を表す図である。 cF1232-37-2高用量投与下のカニクイザルの出血時間を示す。 実施例50におけるラットの出血時間測定結果を示す。 ヒト可溶型GPVIおよびカニクイザル可溶型GPVIのアミノ酸配列のアライメントを示す。四角は、GPVIの各ドメイン領域およびモデリングによって予測されたループ領域の位置(L1-L14)を示す。

Claims (5)

  1. 以下の(1)ないし(8)、
    (1) ヒト、サル、マウスまたはラットの血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)のループ
    の1又は2以上が他種の動物の対応するループのアミノ酸配列によって置換されて
    いる血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体であって、該他種の動物がヒト、サ
    ル、マウスまたはラットである、GPVI変異体
    (2) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)
    である上記(1)に記載のGPVI変異体;
    (3) 他種の動物が、サル、マウスまたはラットである上記(1)に記載のGPVI変
    異体;
    (4) GPVI変異体が、配列番号137ないし151の何れかのアミノ酸配列を含有
    するポリペプチドである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のGPVI変
    異体;
    (5) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、非ヒト動物の血小板膜糖蛋白質VI(G
    PVI)である上記(1)又は(3)のいずれかに記載のGPVI変異体;
    (6) 非ヒト動物が、サル、マウスまたはラットである上記()に記載のGPVI変
    異体;
    (7) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体が、さらにGPVI以外のポリペプチ
    ドを含有している上記(1)から(6)のいずれかに記載のGPVI変異体;
    (8) GPVI以外のポリペプチドが、Fcのアミノ酸配列を有するポリペプチドであ
    る上記()に記載のGPVI変異体;
    のいずれかに記載のGPVI変異体の少なくとも何れか一つとの反応性を測定する工程を含む、抗GPVI抗体又はその抗原結合性断片のスクリーニング方法。
  2. 以下の(1)ないし(8)、
    (1) ヒト、サル、マウスまたはラットの血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)のループ
    の1又は2以上が他種の動物の対応するループのアミノ酸配列によって置換されて
    いる血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体であって、該他種の動物がヒト、サ
    ル、マウスまたはラットである、GPVI変異体
    (2) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)
    である上記(1)に記載のGPVI変異体;
    (3) 他種の動物が、サル、マウスまたはラットである上記(1)に記載のGPVI変
    異体;
    (4) GPVI変異体が、配列番号137ないし151の何れかのアミノ酸配列を含有
    するポリペプチドである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のGPVI変
    異体;
    (5) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、非ヒト動物の血小板膜糖蛋白質VI(G
    PVI)である上記(1)又は(3)のいずれかに記載のGPVI変異体;
    (6) 非ヒト動物が、サル、マウスまたはラットである上記()に記載のGPVI変
    異体;
    (7) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体が、さらにGPVI以外のポリペプチ
    ドを含有している上記(1)から(6)のいずれかに記載のGPVI変異体;
    (8) GPVI以外のポリペプチドが、Fcのアミノ酸配列を有するポリペプチドであ
    る上記()に記載のGPVI変異体;
    のいずれかに記載のGPVI変異体の少なくとも何れか一つとの反応性を測定する工程を含む、抗GPVI抗体又はその抗原結合性断片の認識領域の同定方法。
  3. 以下の(1)ないし(8)、
    (1) ヒト、サル、マウスまたはラットの血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)のループ
    の1又は2以上が他種の動物の対応するループのアミノ酸配列によって置換されて
    いる血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体であって、該他種の動物がヒト、サ
    ル、マウスまたはラットである、GPVI変異体
    (2) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)
    である上記(1)に記載のGPVI変異体;
    (3) 他種の動物が、サル、マウスまたはラットである上記(1)に記載のGPVI変
    異体;
    (4) GPVI変異体が、配列番号137ないし151の何れかのアミノ酸配列を含有
    するポリペプチドである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のGPVI変
    異体;
    (5) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、非ヒト動物の血小板膜糖蛋白質VI(G
    PVI)である上記(1)又は(3)のいずれかに記載のGPVI変異体;
    (6) 非ヒト動物が、サル、マウスまたはラットである上記()に記載のGPVI変
    異体;
    (7) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体が、さらにGPVI以外のポリペプチ
    ドを含有している上記(1)から(6)のいずれかに記載のGPVI変異体;
    (8) GPVI以外のポリペプチドが、Fcのアミノ酸配列を有するポリペプチドであ
    る上記()に記載のGPVI変異体;
    のいずれかに記載のGPVI変異体の少なくとも何れか一つを抗体の検出用または同定用の抗原として用いることを特徴とする、抗GPVI抗体又はその抗原結合性断片の製造方法。
  4. 以下の少なくとも何れか一つの工程を含む、請求項3に記載の製造方法:
    a)血小板を活性化させる作用を測定する工程、
    b)生体内における血小板減少を惹起する作用を測定する工程、または、
    c)血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる活性を測定する工程。
  5. 以下の少なくとも何れか一つの工程を含む、請求項3又は4の何れかに記載の製造方法:
    a)抗体産生細胞を回収する工程、
    b)抗体産生細胞をクローン化する工程、
    c)抗体産生細胞の核酸を回収する工程、または、
    d)抗GPVI抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれらの誘導体を回収する工程。
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