JP5224707B2 - 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 - Google Patents
抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5224707B2 JP5224707B2 JP2007078649A JP2007078649A JP5224707B2 JP 5224707 B2 JP5224707 B2 JP 5224707B2 JP 2007078649 A JP2007078649 A JP 2007078649A JP 2007078649 A JP2007078649 A JP 2007078649A JP 5224707 B2 JP5224707 B2 JP 5224707B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gpvi
- antibody
- human
- mouse
- rat
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Description
しかし、現在までの何れの報告においても、血小板を活性化させず、及び/または、生体内における血小板減少を惹起せずに、血小板膜上のGPVIを消失させる作用を有する抗体は開示されていない。
(1)以下の性質を有する抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体;a)GPVI、特に、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)と特異的に結合し、
b)血小板を活性化させる作用、及び/または、生体内における血小板減少を惹起する作用が弱く、及び、
c)血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、
(2)血小板GPVIのshedding、特に、血小板の活性化に伴うメタロプロテアーゼを介した切断による血小板からのGPVIのsheddingを介さずに、血小板と接触させることにより、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、特に、上記(1)の性質を有する抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(3)血小板GPVIのinternalizationを介して、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(4)血小板GPVIのinternalizationを介して、血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、(1)ないし(3)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(5)生体内において血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる、(1)ないし(4)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(6)生体内に投与して血小板と接触させることにより血小板がコラーゲンに応答して凝集する能力を低下もしくは欠如させる、(1)ないし(5)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(7)出血時間の延長作用が弱い、(1)ないし(6)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(8)GPVIとの解離定数が4×10-8M以下である、(1)ないし(7)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。
(9)GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9の少なくとも一部分を含むアミノ酸配列またはGPVI上の構造を特異的に認識する抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(10)GPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11の少なくとも一部分が、ヒトGPVIのループ2のE21、K22およびP23、ループ3のG33とループ5のA57、K59およびL62、もしくはループ4のS43、S44、S45、R46およびE48とループ5のA57、K59およびL62、または、ループ9のT116、R117、G119およびQ122、もしくはループ9のT116、R117、G119およびQ122とループ11のR139である、(9)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(11)GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9と特異的に結合する、(9)または(10)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。さらに、好ましくは、
(12)GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9の少なくとも一部を含むアミノ酸配列またはGPVI上の構造を認識する、(1)ないし(8)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(13)ヒトGPVIドメイン1のループ2のE21、K22およびP23、ループ3のG33とループ5のA57、K59およびL62、もしくはループ4のS43、S44、S45、R46およびE48とループ5のA57、K59およびL62、または、ドメイン2のループ9のT116、R117、G119およびQ122、もしくはループ9のT116、R117、G119およびQ122とループ11のR139を含むアミノ酸配列またはGPVI上の構造を特異的に認識する、(1)ないし(8)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(14) GPVI、特に、ヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11、好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11またはドメイン1のループ2、より好ましくはドメイン2のループ9もしくはループ9とループ11、さらに好ましくはドメイン2のループ9と特異的に結合する、(1)ないし(8)の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。
(15)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の一方の3組のCDR、好ましくは抗体のH鎖およびL鎖両方の6組のCDRが、表8、9、12及び13に記載のクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識するする抗体のCDRのアミノ酸配列を、それぞれ対応するCDRのアミノ酸配列として含有する抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(16)配列番号15、16及び17のアミノ酸配列、配列番号18、19及び20のアミノ酸配列、配列番号21、22及び23、配列番号24、25及び26、配列番号27、28及び29、配列番号30、31及び32、配列番号33、34及び35、配列番号36、37及び38、配列番号39、40及び41、配列番号42、43及び44、配列番号45、46及び47、または、配列番号48、49及び50のアミノ酸配列を、または表12に記載の何れかのクローンのVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3をそれぞれVH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3に有する抗GPVI抗体の重鎖もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(17)配列番号51、52及び53のアミノ酸配列、配列番号54、55及び56のアミノ酸配列、配列番号57、58及び59、配列番号60、61及び62、配列番号63、64及び65、配列番号66、67及び68、配列番号69、70及び71、配列番号72、73及び74、配列番号75、76及び77、配列番号78、79及び80、配列番号81、82及び83、または、配列番号84、85及び86のアミノ酸配列を、または表13に記載の何れかのクローンのVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3をそれぞれVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3に有する抗GPVI抗体の軽鎖もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(18)配列番号15、16、17、51、52及び53のアミノ酸配列、配列番号18、19、20、54、55及び56のアミノ酸配列、配列番号21、22、23、57、58及び59のアミノ酸配列、配列番号24、25、26、60、61及び62のアミノ酸配列、配列番号27、28、29、63、64及び65のアミノ酸配列、配列番号30、31、32、66、67及び68のアミノ酸配列、配列番号33、34、35、69、70及び71のアミノ酸配列、配列番号36、37、38、72、73及び74のアミノ酸配列、配列番号39、40、41、75、76及び77のアミノ酸配列、配列番号42、43、44、78、79及び80のアミノ酸配列、配列番号45、46、47、81、82及び83のアミノ酸配列、または、配列番号48、49、50、84、85及び86のアミノ酸配列を、または表12及び13に記載の何れかのクローンのVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3をそれぞれVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3、VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3に有する抗GPVI抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体、
(19)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の可変領域、好ましくは抗体のH鎖およびL鎖両方の可変領域が、表7または表14に記載のクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識する抗体が有する可変領域のアミノ酸配列を、それぞれ対応する可変領域のアミノ酸配列として含有する抗ヒトGPVI抗体、特にヒトIgG、好ましくはヒトIgG4と組み替えたキメラ抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体である。第3の態様の抗体は、好ましくは、第1の態様及び/または第2の態様の抗体等の特性及び/または認識領域特異性を有するものである。
(20)第1ないし第3の態様の抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体のH鎖及び/またはL鎖をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(21)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の一方の3組のCDR、好ましくは抗体のH鎖またはL鎖の両方の6組のCDRをコードする塩基配列として、表8及び9または表12及び13に記載のクローン、好ましくはGPVIのループ9を認識する抗体の遺伝子におけるそれぞれ対応するCDRをコードする塩基配列を含有する(20)のポリヌクレオチド、
(22)少なくとも抗体のH鎖またはL鎖の可変領域、好ましくは抗体のH鎖およびL鎖両方の可変領域として、表7または表14に記載のクローンGPVIのループ9を認識する抗体の遺伝子におけるそれぞれ対応する可変領域をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
(23)H鎖の可変領域をコードする配列番号280の塩基配列と、L鎖の可変領域をコードする配列番号284の塩基配列とを含有するポリヌクレオチド、またはH鎖の可変領域をコードする配列番号282の塩基配列と、L鎖の可変領域をコードする配列番号284の塩基配列とを含有するポリヌクレオチドである。また、本発明は、特定のマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントの組合せを含有する抗体遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖もしくは軽鎖可変領域遺伝子を提供する。すなわち、
(24)表16に記載されたマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントVH、DH及びJHの何れかの組合せを含有する抗体重鎖遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖可変領域遺伝子、
(25)前記抗体重鎖可変領域遺伝子のCDRアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有する抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖可変領域遺伝子、
(26)表16に記載されたマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントVL及びJLの何れかの組合せを含有する抗体軽鎖遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその軽鎖可変領域遺伝子、
(27)前記抗体軽鎖可変領域遺伝子のCDRアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含有する抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその軽鎖可変領域遺伝子である。ここで、表16に記載されたマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントの内、各抗体クローンの最上段に示されたスコアの高いセグメントの組合せ、例えば、クローンF1246-1-1の重鎖遺伝子ではVH(3:3.9)、DH(DSP2.7又はDSP2.5)及びJH(JH4)の組合せが好ましい。また、前記抗体遺伝子に由来する遺伝子には、それがコードする抗体が同様な抗原特異性を示す限り、その抗体遺伝子自体又は1塩基以上の変異を伴った遺伝子を包含し、その変異は天然に生じたもの及び人為的に導入したものの何れであっても良い。同時に、本発明は、特定のマウスgerm-line抗体遺伝子セグメントの組合せを含有する抗体遺伝子に由来する、抗ヒトGPVI抗体遺伝子又はその重鎖もしくは軽鎖可変領域遺伝子にコードされる抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を提供する。すなわち、
(28)前記(24)〜(25)の抗体遺伝子又はその重鎖可変領域遺伝子にコードされる抗ヒトGPVI抗体又はその重鎖可変領域ポリペプチド、
(29)前記(26)〜(27)の抗体遺伝子又はその軽鎖可変領域遺伝子にコードされる抗ヒトGPVI抗体又はその軽鎖可変領域ポリペプチドである。
さらに、本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)化された抗GPVI抗体、特に抗ヒトGPVI抗体、具体的には、前記本発明の抗体、好ましくは、GPVIのループ9を認識する抗体、もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を提供する。抗体等にPEGを結合させる方法は公知の方法(例えば、Roberts M.J. et al. Advanced Drug delivery Reviews 54(2002)459-476参照)に従うことができ、具体的には実施例31に記載されている。
(30)前記(1)ないし(19)に記載のいずれかの抗体もしくはその活性断片またはそれらの誘導体を産生する細胞、特に、形質転換細胞、またはハイブリドーマ、
(31)前記(20)ないし(23)に記載のいずれかのポリヌクレオチドを含有する細胞、特に、形質転換細胞、またはハイブリドーマである。
(32)前記(30)または(31)の細胞を培養する工程および、該細胞が産生するモノクローナル抗体を採取する工程を含む、第1ないし第3の態様の抗体を製造する方法、
(33)前記(19)ないし(23)のポリヌクレオチド、それを含有する発現ベクター、(30)または(31)の細胞の何れかを用いる工程を含む、第1ないし第3の態様の抗体の製造方法である。
(34)GPVI、特にヒトGPVIドメイン1のループ2、ループ3とループ5、もしくはループ4とループ5、または、ドメイン2のループ9、もしくはループ9とループ11を含有するペプチド、特に、それらの何れかのアミノ酸配列からなるペプチドである。ここで、該ペプチドは異種のGPVI由来のアミノ酸配列またはGPVI以外のポリペプチド、例えば、Fcのアミノ酸配列を含有しても良い。
(35)配列番号137ないし151のアミノ酸配列を含有するポリペプチドである。
a)血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)、特にヒトGPVIとの結合性を測定する工程、
b)血小板を活性化させる作用、及びまたは、生体内における血小板減少を惹起する作用を測定する工程、及び、
c)血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる活性を測定する工程。
(36)本発明第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチド等を免疫用の投与抗原として、または、体外免疫用の抗原として用いること特徴とするGPVIに特異的な抗体、好ましくは、本発明の第1ないし第3の態様の抗体の製造方法、
(37)本発明第8の態様のペプチドまたは第9の態様のポリペプチド等を抗体の検出または同定用の抗原として用いること特徴とするGPVIに特異的な抗体、好ましくは、本発明の第1ないし第3の態様の抗体の製造方法である。すなわち、本発明の抗体が認識しうるGPVI、特にヒトGPVI上のアミノ酸配列、例えば、ループ構造に対応するアミノ酸配列がマウスGPVI上に組み込まれたGPVI組換体は、それ自身を免疫原及び/または検出用抗原として同じ認識領域を認識しうる新たな抗体を得ることができる。ヒト治療用抗体のより好ましい作製方法として、ヒト抗体遺伝子トランスジェニック非ヒト動物を用いた方法が開示されている(WO2002/070648(特表2005-504507)、WO2002/043478(特表2004-515230))。異種のGPVI、例えばマウスGPVIにヒトGPVIの部分アミノ酸配列を組み込んだ蛋白質は、上記のトランスジェニック動物、例えばマウスに免疫した場合、GPVIのマウスのアミノ酸配列には反応せずに組み込まれたヒトアミノ酸配列、好ましくはエピトープ、により反応するヒト抗体が効率的に得られると考えられる。よって、この方法で得られたヒト抗体は、本発明の第1または第2態様の抗体の特徴を有するヒト抗体として有用であり、該方法は特に有用である。
本件発明の抗体は、血小板、例えば、哺乳類のGPVI、具体的には、ヒト、サル、ラット、マウス血小板、特に、ヒト血小板上に存在する膜糖蛋白質であるGPVIを特異的に認識するものである。なお、本発明の抗体が認識するGPVIは必ずしも血小板上のものに限られず、例えば、巨核球のGPVIをも認識し得るものである。ここで、本発明が対象とするGPVIは哺乳類のGPVIであり、例えば、ヒト、サル、ラット、マウスGPVIが挙げられ、特に、ヒトGPVIである。以下に、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本明細書中では、アミノ酸配列を1文字表記または3文字表記で記載することがある。
本発明第5の態様として、本発明の抗体を産生する細胞が提供される。このような細胞の例としては、ハイブリドーマ、形質転換体、または本発明の抗体の遺伝子を導入した遺伝子組換え細胞等がある。抗体を産生するハイブリドーマとしては、具体的には表6及び11に示されたクローンが挙げられる。また、本発明により上記発明の細胞が産生する抗体が提供される。
本発明の第6の態様として、抗体の生産方法が提供される。本発明の抗体を作製する方法には必ずしも限定はないが、以下に記載の方法でも作製しうる。すなわち、ヒトGPVIもしくはその断片またはそれらの誘導体、例えば、ヒトGPVI−Fcを抗原として動物、例えば、マウスに投与し、その末梢血からリンパ球を採取し、マウスミエローマ細胞とのハイブリドーマを作製する。作製したハイブリドーマが産生する抗体を得て、GPVIとの結合能を有し、第1ないし第3の抗体の特性を有する抗体を選択し、この抗体を産生する細胞を得る。この細胞を培養することにより、本発明の抗体を得ることができる。
発現ベクターを導入する宿主細胞としては、必ずしも限定されないが、蛋白質遺伝子等の発現に汎用され、特に抗体遺伝子の発現に適合する細胞が好ましい。例えば、細菌(大腸菌等)、放線菌、酵母、昆虫細胞(SF9等)、哺乳類細胞(COS-1、CHO、ミエローマ細胞等)が挙げられる。
本発明のF(ab')2 は、本発明の抗GPVI抗体をタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
本発明のFab'は、GPVIに特異的に反応するF(ab')2 を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。
年(株)地人書館)]により結合させることにより製造することができる。
樹立したハイブリドーマを公知の方法で培養し、その培養上清よりモノクローナル抗体を得ることができる。
本発明の抗体は、ヒトGPVIに特異的に結合するものであり、本発明の抗体、抗体の活性断片、化学物質と結合させた抗体の修飾物、またはこれらの混液を含む組成物等は、ヒトの疾患の予防、診断および治療の用途、また被験試料、細胞および組織等のヒトGPVIの検出の用途等を含めて、種々の用途がある。
本発明の抗体はヒトGPVIへの結合の特異性が高く、かつ、単独ではヒト血小板の活性化及び/または血小板減少を促進または惹起する作用が低いことから、特に、ヒトの疾患、例えば、血小板の活性化もしくは凝集、または血管内皮障害もしくは動脈硬化性の反応によって引き起こされる疾病の予防及び/または治療に有効であり、また、血栓もしくは塞栓に起因する疾患、例えば、血栓症及び塞栓症等の予防及び/または治療に利用することができる。これらの疾患には、動脈性血栓症のみならず、静脈性血栓症も含まれ、また、心房細動に起因する脳梗塞も含まれる。
本発明の抗体または抗体の活性断片を用いて、被検試料中のGPVIを検出する方法は、被験試料と本発明の抗体または抗体の活性断片を接触させる工程、本発明の抗体または抗体の活性断片に結合した被検試料中のGPVIを検出する工程を含み得る。被検試料中のGPVIを定量する工程を更に含んでも良い。被験試料中のGPVIを検出する方法により、疾患の診断を行うことができる。特に、ヒトの疾患、例えば、血栓性、塞栓性または動脈硬化性の疾患の診断に利用することができる。
GPVI細胞外領域‐Fc融合蛋白質の作製
A.ヒトGPVI細胞外領域‐マウスFc融合蛋白質(hGPVI-mFc)の作製
(1)hGPVI-mFc融合蛋白発現プラスミドの構築
マウスゲノムDNAを鋳型とし、マウスイムノグロブリン(mIgG2a)重鎖定常領域の各ドメインをコードする遺伝子領域を増幅した。すなわち、以下のプライマー対でPCR反応を行った。その結果、mIgG2a-a(配列番号152)およびmIgG2a-c(配列番号154)ではCH1ドメイン、mIgG2a-b(配列番号153)およびmIgG2a-e(配列番号156)ではヒンジ部分、mIgG2a-d(配列番号155)およびmIgG2a-g(配列番号158)ではCH2ドメイン、mIgG2a-f(配列番号157)およびmIgG2a-h(配列番号159)ではCH3ドメイン増幅した。次にこれら4種の増幅産物を混合し、プライマーmIgG2a-aおよびmIgG2a-hを用いたPCR反応を行うことで、各ドメインが連結された増幅産物(重鎖定常領域(Cγ2a)をコードするDNA断片)を得た。この増幅産物をpT7-BlueTベクターにクローニングした後、マウスFc領域をコードするDNA断片を制限酵素Bam HIおよびKpn Iで切り出して断片Aを調製した。一方、pCAGGS-GPVI-FcプラスミドからヒトGPVIの細胞外ドメインをコードするDNA断片を制限酵素Xba IおよびBgl IIで切り出し、断片Bを調製した。これらの断片を、Xba I およびKpn Iで切断して調製した発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に、断片A+断片Bとなるように連結し、hGPVI-mFc(配列番号222)を発現するプラスミド(pTK-2249)を構築した。
COS-1細胞は10%牛胎児血清入りのダルベッコMEM培地で継代し、pTK-2249をトランスフェクション試薬(FuGENE6、ロシュダイアグノスティックス)と適当量混和した後に、無血清のダルベッコMEM培地に滴下し、これを培養液と交換することでトランスフェクションを行った。5% CO2存在下、37℃で3日間培養し、その培養上清をプロテインAカラム(Prosep-A、MILLIPORE)にて精製したものを抗ヒトGPVI抗体作製用の抗原とした。
ヒトhGPVI-hFcをコードする遺伝子をもつプラスミド(pCAGGS-GPVI-Fc)を制限酵素Xba IおよびEco T22Iで切断して得られた断片J、制限酵素Eco T22IおよびBgl IIで切断して得られた断片Kとそれぞれ調製し、発現プラスミドpEF2cewのEF-1αプロモーター下流に断片J+Kとなるように連結してhGPVI-hFc発現プラスミド(pTK-2233)を構築した。なお、hGPVI-hFcの発現および精製はhGPVI-mFcの場合と同様に行った。
マウスゲノムDNAを鋳型とし、表記のプライマー対でPCR反応を行った。その結果、mGPVI-h(配列番号162)およびmGPVI-i(配列番号163)でPCR増幅産物hi、mGPVI-j(配列番号164)およびmGPVI-k(配列番号165)でPCR増幅産物jk、mGPVI-l(配列番号166)およびmGPVI-m(配列番号167)でPCR増幅産物lm、mGPVI-n(配列番号168)およびmGPVI-o(配列番号169)でPCR増幅産物no、mGPVI-p(配列番号170)およびmGPVI-c(配列番号160)でPCR増幅産物pcが得られた。これらの増幅産物を混合して鋳型とし、さらにプライマーmGPVI-e(配列番号161)、mGPVI-q(配列番号171)、mGPVI-r(配列番号172)、mGPVI-s(配列番号173)およびmGPVI-cを混合してPCR反応を行うことで、各断片が連結された増幅産物を得た。この増幅産物をpT7-BlueTベクターにクローニングし、pTK-2437とした。pTK-2437のマウスGPVIの細胞外ドメインを含む遺伝子領域には5'側に制限酵素Nhe Iの認識部位、3'側にはBam HIの認識部位を有しており、これらの酵素で切断し、DNA断片を調製した。そしてこの断片を制限酵素Xba IおよびBam HIで切断して調製したpTK-2233に挿入してマウスmGPVI−Fc発現プラスミド(pTK-2440)を構築した。
(1)カニクイザルD1D2-ヒトD3キメラGPVI‐ヒトFc融合蛋白質発現プラスミドの構築
既知配列であるヒトGPVIの遺伝子情報に基づき、適当なプライマー対を設計および調製し、これらのヒトGPVIプライマーを用いて、カニクイザルのゲノムDNAを鋳型としたPCR反応を行うことで、カニクイザルGPVI遺伝子配列の一部を決定した。次に、その配列を基に新たにカニクイザル用のプライマー対を設計および調製し、各プライマー対でカニクイザルのゲノムDNAを鋳型としたPCR反応を再度行い、macGPVI-a(配列番号174)およびmacGPVI-b(配列番号175)で増幅産物abを、hGPVI-d(配列番号180)およびmacGPVI-c(配列番号176)で増幅産物dcを、macGPVI-d(配列番号177)およびhGPVI-h(配列番号182)で増幅産物dhを、hGPVI-g(配列番号181)およびmacGPVI-g(配列番号178)で増幅産物ggを得た。一方、pTK-2233を鋳型とし、macGPVI-h(配列番号179)およびIgG1-i(配列番号183)を用いたPCR反応で増幅産物hiを得た。以上の5種類の増幅産物を混合して鋳型とし、macGPVI-aおよびIgG1-iによるPCRを再度行った。この操作で得られた増幅産物は、カニクイザルGPVIのD1およびD2と、ヒトのD3を融合したキメラGPVI遺伝子を含んでおり、制限酵素Nhe IおよびBam HIによる切断後、制限酵素Xba IおよびBam HIで切断して調製したpTK-2233に挿入して、カニクイザルD1D2-ヒトD3キメラGPVI‐ヒトFc融合蛋白質(GPVI-FFH-hFc、配列番号223)発現プラスミド(pTK-2462)を構築した。
抗ヒトGPVI抗体の作製
A.ウサギポリクローナル抗体の作製
ヒトGPVIに対するポリクローナル抗体を作製するため、ウサギに免疫を行った。すなわち、実施例1Aで調製したhGPVI-mFc20μgを500μlの生理食塩水に希釈し、500μlのフロインド完全アジュバント(DIFCO)と等量混合した後、雌性ニュージーランド白色ウサギ(北山ラベス)2.1―2.2kgの背部皮下に投与した。2週間後、再度、hGPVI-mFc20μgを500μlの生理食塩水に希釈し、500μlのフロインド不完全アジュバント(DIFCO)と等量混合後、背部皮下に投与した。投与終了1週間後耳静脈より採血し、定法にしたがい抗血清を分離し、抗体を精製した。すなわち、抗血清に最終飽和濃度33%となるように硫酸アンモニウムを添加し、4℃で1時間攪拌後、析出した沈殿を遠心分離した。次に沈殿をダルベッコリン酸緩衝液(以下、D−PBSと記載)で溶解し、D−PBSにて一夜透析した。透析液を濾過後、プロテインAカラム(プロセップA、ミリポア)に供し、結合したIgG画分を0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)で溶出することにより、精製抗体を得た。得られた溶出画分は1Mのトリス塩酸バッファー(pH7.0)にて速やかに中和し、D−PBSで透析後、280nmの吸光度より蛋白濃度を算出した(吸光係数:0.714mg/mL)。以降、得られた抗体を抗GPVIポリクローナル抗体と記載する。
GPVI-mFc20μgとフロインド完全アジュバント(DIFCO)を等量混合し、投与抗原とした。雌性ddYマウス(8週令、SLC)に投与抗原を2回投与し、3日後に、リンパ節よりリンパ球を分離した。得られたリンパ球をP3×63−Ag.8.U1(ATTC)と混合した後、ポリエチレングリコール(PEG1500、Sigma)を用いて安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社、p83)にしたがって細胞融合を行った。HAT培地によりハイブリドーマを選択し、1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマのスクリーニングを2種類の方法で行った。すなわち、プレートに固相化したhGPVI-hFcに対する結合活性を指標とする方法及びコラーゲンとGPVIの結合阻害活性を指標とする方法を使用した。
実施例1Bにより調製したhGPVI-hFcをD−PBSで2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuard(Surmodics)を含むD−PBS(pH7.4)を各ウエルに100μL添加してブロッキングした。次に培養上清を各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO、P260)を10%ウサギ血清含有D−PBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。その結果、hGPVI-hFcと反応した細胞を選択し、限界希釈法(安東民衛・千葉丈/著「単クローン抗体実験操作入門」(講談社、p97)によりクローニングを行った。8日後、同様にスクリーニングを行い、hGPVI-hFcと反応する抗体を選択した。
D−PBSでコラーゲン(Horn)を10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。4℃で一夜反応後、イオン交換水で5回洗浄し、5%BSAを含むD−PBSでブロッキングした。次に培養上清を25μL/ウェル添加し、さらにD−PBSで2μg/mLに調製したhGPVI−hFcを25μL/ウェル添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識した抗−ヒトIgG抗体(BioMeda)を10%ヤギ血清を含むD−PBSで1000倍に希釈し各ウェルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウェルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定し、抗体無添加のウェルの吸光度に対して50%以上吸光度が低下したウェルを、抗GPVI抗体を産生するハイブリドーマとして選択した。
その結果、複数回の細胞融合(F番号が1回分を示す)により、コラーゲンとGPVIの結合阻害活性を有するハイブリドーマを選択した。
抗GPVI抗体を産生するハイブリドーマを10%FCS/RPMI−1640培地(Sigma)で培養後、Hybridoma−SFM培地(Invitrogen)に交換して培養することにより抗体を産生させ、培養上清からプロテインAカラム(Prosep−rA、ミリポア)を用いて抗体を精製した。すなわち、得られた培養上清を予めD−PBSにて平衡化したプロテインAカラム(Prosep−A、Millipore)に吸着させ、非吸着蛋白質をD−PBSにて洗浄した後、25 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.0)にて吸着画分を溶出した。その後、生理食塩水にて透析を行った。得られた抗体の濃度は280nmの吸光度より吸光係数(E1%:1.4)を用いて算出した。以降、得られた抗体を抗GPVIモノクローナル抗体と記載する。
抗GPVIモノクローナル抗体のグループ分類
実施例2で得られた抗体をGPVIへの結合特性、すなわち結合領域の違いにより分類するため、F1199、F1201、F1202、F1210及びF1211の各抗体を用いて競合アッセイを行なった。まず、中根らの方法(J.Histochem.Cytochem.,22,1084,1974)に従い、各抗GPVIモノクローナル抗体のペルオキシダーゼ標識抗体を調製した。
次にこれらのペルオキシダーゼ標識抗体を用いて各精製抗体との競合アッセイを行い、抗体を分類した。すなわち、D−PBSでhGPVI-hFcを2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuardを含むD−PBSを各ウェルに添加しブロッキングした。次に、上記の標識抗体25μLと各精製抗体25μLをウェルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し、TMB溶液(BioFix)で発色させた。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。
サルex vivo試験に供した抗体のグループ分類
作製した抗ヒトGPVIモノクローナル抗体のうち、サルGPVIと結合しex vivo試験に使用可能な抗体を実施例3で行ったグループ分類の方法に従って分類した。すなわち、実施例3で作製した各標識抗体を用いて実施例3と同様の方法で競合アッセイを行い、各抗体を分類した。表1に示すように実施例3同様に少なくとも7種類の領域を認識する抗体群に分類された。
抗GPVIモノクローナル抗体の解離定数の算出
実施例2において作製した抗GPVIモノクローナル抗体の解離定数を、蛋白相互作用解析装置BIACORE3000(BIACORE)を用いて測定した。すなわち、センサーチップに実施例1で作製したGPVI置換体(hGPVIHHH-hFc及びFFH-hFc)をマニュアルに従ってCM5チップ(BIACORE)に結合した。つぎに、各抗体をHBS-EP緩衝液(BIACORE)で希釈し、1.25から40nMまでの希釈系列を調製し、BIACORE3000にて解析した。各抗体の結合ごとにpH1.5のグリシン緩衝液(BIACORE)でチップを再生した。得られた結果をevaluationソフト(BIACORE)のBivalent analyteを用いて解析し、解離定数を算出した。結果を表2に示す。今回作製した各抗GPVIモノクローナル抗体はGPVI−HHH-hFcに対して、十分な親和性を有していることが示された。
抗GPVIポリクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA系の作製
サンドイッチELISA系を作製するため、実施例2で得られた抗GPVIポリクローナル抗体を実施例3と同様にペルオキシダーゼで標識した。次に抗GPVIポリクローナル抗体固相化プレートを調製した。すなわち、抗体をD−PBSで10μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)の各ウエルに50μL添加し、45℃にて30分間反応させた。次にイオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuard(Surmodics)を含むD−PBSを各ウエルに100μL添加しブロッキングした。標準品は精製GPVI−hFcを0.1%BSA/D−PBSで0.75、1.5、3.1.6.25、12.5、25、50ng/mlに希釈し調製した。ブランクは0.1%BSAを含むD−PBSを使用した。測定は、まずプレートのブロッキング剤を廃棄し、調製した標準品及びブランクを50μl分注し25℃で一晩反応した。プレートを0.05%Tween20含有生理食塩水で3回洗浄し、続けて10%ウサギ血清、0.1%Tween20を含むD−PBSにより2μg/mlに希釈したペルオキシダーゼ標識抗GPVIポリクローナル抗体を50μl添加し、37℃で反応した。同様に5回洗浄後、TMB溶液(BioFiX)を各ウエルに添加し室温で20分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。
抗GPVI抗体の認識領域の解析
ヒトGPVIのアミノ酸配列の一部をマウスのアミノ酸配列に置換し、抗体の反応性の変化を調べることにより抗GPVI抗体の認識領域を絞り込んだ。すなわち、血小板膜蛋白質であるGPVIの細胞外領域が免疫グロブリン様領域1、2(ドメイン1またはD1、ドメイン2またはD2と記載することがある2)およびムチン様領域(ドメイン3またはD3と記載することがある)の三つのドメインで構成されている(図1)ことから、各ドメイン単位での置換体を作製し、各置換体に対する抗GPVI抗体の結合実験を行った。
実施例1にて作製したhGPVI-hFc(以下GPVI-HHH-hFcと記載、配列番号135)発現プラスミド(pTK2233)およびmGPVI-hFc(以下GPVI-MMM-hFcと記載、配列番号136)発現プラスミド(pTK2440)を鋳型とし、ヒトGPVIとマウスGPVIのドメインを置換したGPVI置換体発現プラスミドを構築した。
抗GPVIモノクローナル抗体の認識領域となり得る単一ループ領域をそれに対応するマウスGPVIのアミノ酸配列に置換したGPVI置換体発現プラスミドを以下のように構築した。まず、ヒトGPVIのループ領域L2においてヒトのアミノ酸配列をマウスのアミノ酸配列へ置き換わるよう塩基配列を置換し、さらに置換した塩基から上流に11 mer、下流に13 merヒトGPVIの塩基配列を連結したセンスプライマー10(表4)およびアンチセンスプライマー9(表4)を作製した。次に、pTK2233を鋳型として、センスプライマー1とアンチセンスプライマー9を用いてPCRを行うことにより、ループ領域L2がマウスの配列に置換されたヒトGPVIのN末側DNA断片(215bp)を増幅した。同様に、pTK2233を鋳型として、センスプライマー10とアンチセンスプライマー2を用いてPCRを行うことにより、ループ領域L2がマウスの配列に置換されたヒトGPVIのC末側領域にhFcのN末側配列が連結したDNA断片(773bp)を増幅した。そして、増幅した2つのDNA断片、センスプライマー1、アンチセンスプライマー2を用いてPCRを行い、ループ領域L2がマウスの配列に置換されたヒトGPVIにhFcのN末側配列が連結したDNA断片(958bp)を増幅した。この増幅されたDNA断片を制限酵素XbaI,BamHIで切断した後、pTK2233のXbaI,BamHIサイトに挿入し、ヒトGPVIの領域L2をマウスGPVIのアミノ酸配列に置換したGPVI置換体(以下hGPVI-mL2-hFcと記載、配列番号46)発現プラスミドを構築した。
実施例7(1),(2)で構築したGPVI置換体発現プラスミドおよびpTK2233、pTK2440を実施例1に示されている方法と同様にCOS-1細胞に導入し、発現させた。
得られた培養上清から、目的のGPVI置換体をプロテインAカラム(Prosep-A、ミリポア)で精製した。得られたGPVI置換体の精製度は、還元・非還元の両条件でSDS-PAGEを行い、銀染色にて確認した。
ヒトGPVIのドメインをマウスGPVIのドメインに置換することにより、抗体の認識領域を絞込んだ。すなわち、GPVI-HHH-hFc,GPVI-MHH-hFc,GPVI-HMH-hFc,GPVI-MMH-hFc,及びGPVI-MMM-hFcと各抗GPVIモノクローナル抗体との結合活性測定を行った。
まず、プレート(Maxisorp、Nunc)に5μg/mLでウサギ抗ヒトIgG抗体(DAKO)を固相化し、2% StabiliGuard(SurModics)でブロッキングした。次に、ブロッキング液を除去し、0.1%BSA/PBSで希釈したGPVI置換体を添加して37℃で1時間反応した。0.05%Tween-20を含む0.9%生理食塩水にて洗浄後、0.1%BSA/PBSで希釈した1%ヒト血清(コスモバイオ)で37℃、1時間ブロッキングし、再び0.05%Tween-20を含む0.9%生理食塩水にて洗浄後、実施例3で作製したペルオキシダーゼ標識した抗体を0.1%BSA/PBSで0.5μg/mLに希釈して添加し、37℃、1時間反応した。最後に0.05%Tween-20を含む0.9%生理食塩水にて洗浄後、H2O2/TMB溶液を用いて発色させ、0.5M硫酸で反応を停止した後、吸光度を450nmの波長にて測定した。
各抗GPVI抗体の抗原認識領域を表5に示した。
GPVI-HHH-hFc,hGPVI-mL2-hFc,hGPVI-mL3-hFc,hGPVI-mL4-hFc,hGPVI-mL5-hFc,hGPVI-mL6-hFc,hGPVI-mL7-hFc,hGPVI-mL8-hFc,hGPVI-mL9-hFc,hGPVI-mL10-hFc,hGPVI-mL11-hFc,hGPVI-mL13-hFc及びhGPVI-mL14-hFcと各抗GPVIモノクローナル抗体との結合活性測定を行った。
ヒトGPVIのループ領域をマウスのループ領域に置換したGPVI置換体とヒトGPVIに対する結合活性を比較することで、抗体の認識領域を置換したループ領域まで絞り込んだ。
カニクイザルex vivo実験による抗GPVIモノクローナル抗体の評価
実施例2にて作製した各抗GPVIモノクローナル抗体を雄性カニクイザル(約6kg)に24時間間隔で0.3mg/kg及び1mg/kg静脈内投与した。投与前、初回投与24時間後及び48時間後に採血し、血小板数、CD62P蛋白質(血小板の活性化マーカー)の発現量、血小板膜蛋白質(GPIIb/IIIa;CD41aおよびGPVI;CD42a)の発現量、血小板GPVIの発現量、及び血小板凝集能(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定した。
採血したクエン酸加血の血小板数をSysmex F-820を用いて測定した。クローンNo.F1232−18−3、F1232−10−2、F1232−14−2、F1232−43−3、F1201−20、F1232−37−2を投与したサルでは血小板数の減少は認められなかった(減少率が20%未満;表6中に−で表示)。また、F1201−18、F1232−17−1を投与したサルでは血小板数の減少傾向が認められた(減少率が20%〜40%;表6中に±で表示)。一方、F1232−7−1、F1232−24−1、F1232−21−1を投与したサルでは明らかな血小板数の減少が見られ(減少率が40%〜60%;表6中に+で表示)、特にF1232−19−1においては顕著であった(減少率が60%以上;表6中に++で表示)。
採血したクエン酸加血を、×100g、25℃で20分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を調製した。PRPの血小板数が1×108 cells/mLとなるように0.5% 非働化FBSと2.5 mM EDTAを含むPBS(以下、FACSバッファー)で希釈した後、抗ヒトCD62P-PE(BD Biosciences Pharmingen)を用いてサル血小板上のCD62P蛋白質の発現をFACSにて調べた。すなわち、PRPに抗ヒトCD62P-PEを添加して室温で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、いずれの抗GPVIモノクローナル抗体を投与したサルから採血、調製したPRPにおいても、投与前と比較してCD62Pの発現の上昇は認められなかった(発現誘導が2倍未満;表6中に−で表示)。
サル血小板上におけるCD41aおよびCD42a蛋白質発現量の測定は、CD62Pの場合と同様にPRPを調製し、それぞれ抗ヒトCD41a-FITC(BD Biosciences Pharmingen)、抗ヒトCD42a-PE(BD Biosciences Pharmingen)を用いたFACS解析にて行った。その結果、F1232−21−1およびF1232−19−1を投与したサルから採血、調製したPRPにおいてCD41aおよびCD42a蛋白質の軽度の減少が認められた(1mg/kg投与後の消失率が30%〜70%;表6中に±で表示)ものの、その他の抗GPVIモノクローナル抗体を投与したサルから採血、調製したPRPではCD41aおよびCD42a蛋白質の発現に影響は認められなかった(1mg/kg投与後の消失率が30%未満;表6中に−で表示)。
サル血小板上におけるGPVI蛋白質の確認は、CD62Pの場合と同様にPRPを調製し、蛍光色素Af488で標識した抗GPVIポリクローナル抗体を用いたFACS解析にて行った。その結果、F1201−18、F1201−20、F1232−37−2を投与したサルから採血、調製したPRPにおいてGPVI蛋白質の消失が認められ(1mg/kg投与後の消失率が70%以上;表6中に+で表示)、特にF1232−7−1、F1232−18−3、F1232−10−2、F1232−21−1、F1232−43−3、F1232−17−1、F1232−19−1においては顕著であった(0.3mg/kg投与後の消失率が70%以上;表6中に++で表示)。一方、F1232−24−1、F1232−14−2を投与したサルから採血、調製したPRPにおいては部分的な消失が認められた(1mg/kg投与後の消失率が30%〜70%;表6中に±で表示)。
コラーゲンおよびADPに対する血小板凝集能を血小板凝集測定装置(PA-200 Aggregation Analyzer、Kowa)を用いて測定した。まず、PRPの血小板数が3×108 cells/mLとなるように生理食塩液で希釈した後、終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で3分間インキュベートした。さらに終濃度2μg/mlのコラーゲン溶液あるいは終濃度で10μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートした。血小板凝集率は光の透過率をPA-200 Aggregation Analyzer(Kowa)で測定することにより求めた。その結果、F1232−7−1、F1201−20を投与したサルから採血、調製したPRPにおいてコラーゲン応答性の血小板凝集能の低下が認められ(1mg/kg投与後の消失率が70%以上;表6中に+で表示)、特にF1232−18−3、F1232−10−2、F1232−21−1、F1201−18、F1232−43−3、F1232−37−2、F1232−17−1、F1232−19−1においては顕著であった(0.3mg/kg投与後の低下率が70%以上;表6中に++で表示)。また、F1232−24−1を投与したサルから採血、調製したPRPにおいては部分的な低下が認められた(1mg/kg投与後の低下率が30%〜70%;表6中に±で表示)。一方、F1232−14−2においては血小板凝集能にほとんど影響を示さなかった(1mg/kg投与後の消失率が30%未満;表6中に−で表示)。
抗GPVI抗体の可変領域アミノ酸配列の決定
以下に抗GPVI抗体(クローンNo. F1232-7-1)の可変領域のアミノ酸配列決定の例を示すが、他の抗GPVI抗体についても同様の実験操作で可変領域のアミノ酸配列を決定した。
すなわち、目的とする抗GPVIモノクローナル抗体を産生するハイブリドーからRNeasy Micro Kit (キアゲン)を用いてトータルRNAを抽出し、SuperScript III First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット(Invitrogen)にて一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖cDNAを鋳型としたMouse Ig-Primer Set(Novagen)によるPCRで可変領域を増幅し、塩基配列を決定した。開始コドン付近の情報はデータベース上の配列情報を検索し、再度5'側プライマーを設計した(F1232-7-1重鎖5'側プライマー:1232H-b(配列番号216)、軽鎖5'側プライマー:1232K-a(配列番号218))。一方、可変領域の3'側配列は、アミノ酸配列を変えることなく、ヒト定常領域との連結可能な制限酵素認識部位(重鎖はNhe I認識配列、軽鎖はBsi WI認識配列)を付したプライマーを設計した(F1232-7-1重鎖3'側プライマー:1031H-b(配列番号217)、軽鎖3'側プライマー:mIgK-BsiWI(配列番号219))。これらの新規プライマーを用いて再度PCRを行うことにより重鎖可変領域および軽鎖可変領域を増幅し、pT7BlueTベクター(Novagen)を用いてクローニングした(重鎖可変領域をコードする遺伝子断片をもつプラスミドをpTK-2464、軽鎖可変領域をコードする遺伝子断片をもつプラスミドをpTK-2466とした)。次に、常法に従い重鎖可変領域および軽鎖可変領域の塩基配列を決定し、その塩基配列(重鎖可変領域;配列番号87、軽鎖可変領域;配列番号88)およびそれらにコードされるアミノ酸配列(重鎖可変領域;配列番号111、軽鎖可変領域;配列番号112)を示すとともにF1232-7-1以外のクローンについても同様に塩基配列およびアミノ酸配列を決定した(表7)。また、可変領域のアミノ酸配列におけるCDR部分の配列を表8および表9に示した。
遺伝子組換えによるマウス-ヒトキメラ抗体の産生
抗原結合活性を有するV領域がハイブリドーマ抗体由来、すなわちマウス抗体由来であり、C領域がヒト由来の抗体(キメラ抗体)を作製した。
抗GPVI抗体(クローンNo.F1232-7-1)マウス-ヒトキメラ抗体発現プラスミドの構築は以下のように行った。
まずpTK-2464を制限酵素EcoR IおよびNhe Iで切断し、重鎖可変領域をコードする遺伝子断片Cを調製した。一方、pTK-2232(WO2005/7800実施例10参照)を制限酵素Eco 47IIIおよびBam HIで切断し、重鎖定常領域(Cγ4)をコードする遺伝子断片Dを調製した。これらの断片を、EcoR I およびBam HIで切断して調製した発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に、断片C+断片Dとなるように連結し、重鎖発現プラスミド(pTK-2468)を構築した。
次にpTK-2466を制限酵素EcoR IおよびBsiW Iで切断し、軽鎖可変領域をコードするDNA断片Eを調製した。一方、HeLaゲノムDNAを鋳型としてプライマーBsiWI-hIgK(配列番号220)およびIgK-e(配列番号221)によるPCRを行い、ヒト軽鎖定常領域(Cκ)をpT-7BlueTにクローニングした(pT7-hIgK)。pT7-hIgKからヒト軽鎖定常領域を切り出すために制限酵素Bsi WIとBam HIにてpT7-hIgKを切断し、DNA断片Fを調製した。これらの断片をEcoR I およびBam HIで切断して調製した発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に断片E+断片Fとなるように連結し、各軽鎖発現プラスミド(pTK-2474)を構築した。
構築したマウス-ヒトキメラ抗体発現プラスミドの発現および精製は実施例1に示した方法と同様に行った。すなわち、目的とするクローンのマウス-ヒトキメラ抗体の重鎖発現プラスミドおよび軽鎖発現プラスミドをCOS−1細胞に対してコトランスフェクションし、37℃にて3日間培養後、その培養上清をプロテインAカラムにて精製した。得られたマウス-ヒトキメラ抗体はSDS−PAGEにてその精製度を確認した後、ヒトGPVIおよびサルGPVIに対する結合能を確認した。まず、実施例1にて作製したGPVI置換体、hGPVI−hFcもしくはGPVI−FFH-hFcをD−PBSで2μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorp、NUNC)に50μL/ウェル添加した。次に、37℃で1時間反応後、イオン交換水で5回洗浄し、2%StabilGuard(Surmodics)を含むD−PBSを各ウエルに100μL添加することによりブロッキングした。次に精製したマウス-ヒトキメラ抗体を各ウエルに添加し37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で3回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識抗ヒト軽鎖Κ抗体(DAKO)を10%ウサギ血清含有D−PBSで1000倍に希釈し、各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、同様に5回洗浄しTMB溶液(BioFix)を各ウエルに添加した。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。その結果、作製したマウス-ヒトキメラ抗体はヒトおよびサルのGPVIに特異的に結合することが確認された。
ヒト化抗体の作製
A.ヒト化抗体の作製(方法1)
(1)ヒト化F抗体可変領域のコンピューターモデリング
ヒト化抗体で高い親和性を保持するために、クイーンらの一般的な方法(Proc. Natl. Acad.Sci. USA 86:10029, 1989)に準じてフレームワーク残基の選択を行う。ヒト配列はKabatら(Sequences of proteins of immunological interest, 5th ed., U.S. Department of Health and Human Services, 1991)のκ軽鎖及び重鎖配列データベースに基づきマウス抗GPVIモノクローナル抗体(クローンNo.F1232-7-1)に高いフレームワーク相同性を有する配列を選択する。さらに、コンピューター解析により最も適したフレームワーク中のアミノ酸の改変を行う。具体的にはコンピュータープログラムENCAD(レビット、J.Mol.Boil.168*595(1983))や、Hommology(アクセルリス社)、FAMS(SGI社)などのタンパク質モデリングツールを用いてF1232-7-1抗体可変領域の分子モデルの構築を行う。抗体データベースより得られたヒトEu抗体分子モデル(Stephensら、Immunology 85 (4), 668-674 (1995)にF1232-7-1抗体のCDR配列をFR中に移植する。分子最適化計算や分子動力学計算などの最適化やシミュレーション解析を通じて、コンピューターモデル上でCDRとFRが本来のヒト抗体モデルとは異なり、有意な接触を示すFR領域で、アミノ酸置換を行うことによりCDRとFRとの接触が改善されると予想される位置についてマウス抗体由来のアミノ酸への置換を行う。また、ヒト抗体のデータベース中でその位置においてまれにしか現れないFR中のアミノ酸残基はそれらの位置におけるヒトコンセンサンスアミノ酸に置換する。アミノ酸置換の良否は実際の活性により確認することになるため、アミノ酸置換の異なるタイプの抗体を数種類作製する。
実施例11A(1)で選択された配列を基に、シグナルペプチド、スプライス供与シグナル及び制限サイト(例えばEco RI)を含むアミノ酸配列をコードする遺伝子を構築する。構築した遺伝子は合成ヌクレオチド(80塩基長程度)を数種類オーバーラップするように調製する。すなわち、オリゴを対にしてアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、2本鎖断片を得る。この断片を変性し1本鎖にした後、同様にアニールし、DNAポリメラーゼのKlenow断片で伸長し、全長の遺伝子をコードする2本鎖断片を得る。得られる断片をPCRで増幅し、精製後に制限酵素(例えばEco RIとNhe I)で切断し精製する。精製した断片をヒトIgG4定常領域遺伝子(Cγ4)のCH1エクソンからCH3エクソンまでを含む遺伝子断片(例えばpTK-2232をNhe IおよびBamHIで切断)と連結し、発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流(Eco RIとBamHIで切断)に組み込むことでヒト化重鎖発現プラスミドを構築する。また、置換するアミノ酸の数が少ない場合は部位特異的突然変異法によりアミノ酸変異を発現プラスミドに導入することも可能である。軽鎖可変領域配列は上記と同様に構築可能である。この場合ヒトCκ領域はpT7-hIgKから切り出し、発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に、軽鎖可変領域配列と連結し、組み込むこととなる。
ヒト化抗体と元のマウス抗体のGPVI抗原との結合能を、BIACOREシステム(BIACORE社)を用いて測定し、比較する。すなわち、BiACORE3000をのマニュアルにしたがってCM5チップ(BIACORE社)に精製hGPVI-mFcを固定化する。次にHBS-EPバッファー(BIACORE社)で希釈した抗体希釈列を作製し、各サンプルをインジェクトする。得られたデータをBIACOREの解析プログラム(BIA Evaluation、BIACORE)を用いて解析し、アフィニティー(Kd)を算出する。
(1)ヒト化抗体遺伝子の作製
ヒト化抗体において移植するCDR配列が活性を有する適切なドメイン構造として維持させるためには元のFR領域の配列も合わせて移植する方法もまた有効である。CDRドメイン構造の維持にどのアミノ酸が関与しいているかは、FR中のアミノ酸の性質(疎水性、親水性、酸性、塩基性、分子サイズ等)から推定でき、またコンピューターを用いたモデリングにより推定可能である。すなわち、シリコングラフィック上で起動するソフトウエアーQUANTA/CHARMmあるいはModeler(モレキュラー・シュミレーションズ)を用いてモデリングを行う。Brookhaven Protein Data Bank(PDB)に登録されているヒト抗体配列よりF1232-7-1抗体のVH及びVL領域と相同性の高い抗体の三次元構造を検索し、それに基づきF1232-7抗体の三次元構造を推定する。推定三次元構造上で重鎖及び軽鎖のCDRに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第1群)を選出し、更にそれらに水素結合しているFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選出する。同様に、CDRに静電的相互作用やファンデルワールス力等のエネルギー結合により結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第1群)と更にそれらに結合していると推定されるFR領域中のアミノ酸群(第2群)を選択する。このようにして選択したFR領域中のアミノ酸群をCDRアミノ酸と併せてヒト抗体配列上に移植するが、Kabatらの分類(Sequences of proteins of immunological interest, 5th ed., U.S. Department of Health and Human Services, 1991)やNCBI(National Center for Biotechnology Information)等より得られるヒト抗体配列の可変領域アミノ酸には存在しないような配列が生じる場合は、そのアミノ酸は移植しない。このようにして得られた情報に基づきヒト抗体配列VH及びVLに移植する配列を決定し、ヒト化抗体作製に用いる遺伝子を構築する。
GPVI欠損患者のGPVI抗体の抗原結合特性とマウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の抗原結合特性
12−1 ヒトGPVIループ置換体を用いたGPVI欠損患者の抗GPVI抗体の抗原結合特性解析
GPVI欠損患者(タテオ・スギヤマ(Tateo Sugiyama)、外5名,ブラッド(Blood),(米国),1987年,第69巻,第6号,p.1712−1720)血中に含まれる抗GPVI抗体の認識ドメイン解析を各種組換えタンパクを用いて行った。患者特異精製抗体と実施例7に記載される組換えヒトGPVIループ置換体を混合し、37℃で2時間ポリプロピレンプレート上で反応させた後、混合サンプルを実施例2に記載の方法と同様にして作製した組換えhGPVI−hFc固相プレートに50μL/ウェルで添加し、37℃で1時間反応させた。次いで、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトκ及びλ鎖抗体(DAKO、P130,P129)を10%ウサギ血清を含むD−PBS(pH7.4)で1000倍に希釈し各ウェルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、実施例2に記載の方法と同様に吸光度を測定した。測定値を、組換えヒトGPVIループ置換体を添加しないときの吸光度と比較し、吸光度低下がないか、あるいは吸光度低下の程度が小さくなるループ置換体の結果からGPVI欠損患者の自己抗体に含まれる抗GPVI抗体の抗原認識部位を推定した。
実施例2で作製したマウス抗GPVIハイブリドーマ抗体とGPVI欠損患者血中に含まれる抗GPVI抗体との競合実験を行った。すなわち、GPVI欠損患者由来の抗GPVI抗体を12−1に記載のhGPVI−hFc固相化プレートに50μL/ウェルにて添加し、4℃で一晩反応させた。そこにペルオキシダーゼ標識マウス抗GPVIハイブリドーマ抗体を吸光度0.5〜1.0になるよう添加し、37℃で45分反応させ、実施例2に記載の方法と同様にして吸光度を測定した。その結果、実施例2に記載の方法と同様の方法で作製されたマウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体F1199−6およびF1232−37−2は、GPVI欠損患者血中に含まれる抗GPVI抗体と競合した。結果を図2に示す。
ドメイン2(L9ループ)特異的抗ヒトGPVI抗体の作製
13−1 マウス抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の作製
実施例1により調製した精製hGPVI-mFc融合タンパク20μgとAlum(PIERCE)、オリゴCpGを混合し、投与抗原とした。ddYマウス(メス、8週令、SLC)に投与し、さらに投与抗原20μgを投与した。3日後、リンパ節又は脾臓よりリンパ球を分離し、実施例2に記載の方法と同様の方法で細胞融合を行い、ハイブリドーマを選択した。
1週間後目的の抗体を産生しているハイブリドーマを実施例7で作製したhGPVI-hFc及びhGPVI−mL9−hFcに対する結合活性を指標としてスクリーニングした。すなわち、実施例1により調製した精製hGPVI−hFcまたはhGPVI−mL9-hFcをD−PBS(pH7.4)で1μg/mLに希釈し、イムノプレート(Maxisorb、NUNC)に50μL/ウェル添加し、実施例2の記載の方法と同様にして固相化した。次に培養上清を各ウェルに添加し室温で1時間反応させた後、実施例2に記載の方法と同様にしてペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO、P260)を用いて反応を行い、吸光度を測定した。その結果、精製hGPVI-hFcと結合し(吸光度1以上)、hGPVI−mL9-hFcとは結合しない(吸光度0.5以下)抗体を産生している細胞を選択し、実施例2に記載の方法によりクローニングした。8〜10日後、同様にスクリーニングを行い、L9特異的マウス抗ヒトGPVI抗体を産生するハイブリドーマを得た。実施例2B(3)と同様に、得られたハイブリドーマを培養し、モノクローナル抗体を精製した。各抗体のサブタイプはIsoStrip Mouse Monoclonal antibody Isotyping Kit(Roche)を用いて決定した。
精製hGPVI-mFc融合タンパク、又はL9及びL11ループをヒト由来配列に置換したラットGPVI-mFc融合蛋白質(ratGPVI-hL9/h11-mFc)(配列番号288)を投与抗原とした。なお、ラットGPVIは、ラット骨髄RNAを鋳型とし、オリゴdTプライマーを用いた逆転写反応でcDNAを合成した後、これをさらに鋳型としたPCRで全長遺伝子をクローニングした。PCRに使用したプライマー対は(mGPVI-a:CCACATAGCTCAGGACTGGG(配列番号289)、mGPVI-d:CCAAGTTATTTCTAGGCCAGTGG(配列番号290))である。投与抗原20μgとフロイントコンプリートアジュバント(DIFCO)を等量混合し、Wistarラット(メス、8週令、SLC)に投与し、2週間後リンパ節よりリンパ球を分離した。SP2/O−Ag14(ATTC)と混合後、実施例2に記載の方法と同様の方法で細胞融合を行い、ハイブリドーマを選択した。
抗GPVIモノクローナル抗体の特性解析
14−1 抗原結合特性
実施例13で得られた各抗体の特性を解析するため、ヒトGPVI-hFcとの結合、実施例4に記載のF1232−37−2抗体との競合、L9ループに対する特異性を調べた。すなわち、ヒトGPVIに対する結合は実施例2の方法に従い固定化した抗原に対する結合活性を測定した。結合活性は吸光度が0.5〜1.0までを+、1.0〜2.0を++、2.0以上を+++と表示した。F1232−37−2との競合は以下のように行った。すなわち、F1232−37−2を中根らの方法(J.Histochem.Cytochem.,22,1084,1974)に従いペルオキシダーゼ(東洋紡)標識抗体を調製し、使用した抗体量より抗体濃度を算出した。
次にこのペルオキシダーゼ標識抗体を用いて各精製抗体との競合アッセイを行った。すなわち、上記の標識抗体25μLと各精製抗体25μLをhGP-hFc固相化プレートのウェルに添加し、37℃で1時間反応させた後、0.05%Tween20を含む生理食塩水で5回洗浄し、TMB溶液(BioFix)で発色させた。室温で10分間反応後、0.5M硫酸溶液で反応を停止し、プレート分光光度計(マルチスキャンJX、大日本製薬)で450nmの吸光度を測定した。その結果を表11に示す。阻止活性は阻止抗体無添加の吸光度から50%以上阻止する場合を+++、30%〜50%阻止する場合を++、10%〜30%阻止する場合を+と表示した。
L9ループ特異性は実施例13の13−1記載の方法に従い測定し、反応性が50%以上低下する場合を+すなわちL9ループを認識していると判断した。
実施例13で得られた各抗体のコラーゲン-GPVI結合阻害活性を実施例2と同様の方法で調べた。抗体無添加のウェルの吸光度に対して50%以上吸光度が低下した場合を+++、30%〜50%低下した場合を++、10%〜30%低下した場合を+と表示した(表11)。
実施例14で得られた各抗体の解離定数は実施例5に記載の方法と同様の方法により調べた。結果をF1232−37−2の解離定数に対する相対値として表11に示した。
抗GPVI抗体の可変領域アミノ酸の決定(2)
実施例13で作製した抗ヒトGPVI抗体の可変領域のアミノ酸配列は、実施例9に記載の方法と同様の方法により決定した。抗体可変領域の塩基配列を決定したクローンについて、CDR及び可変領域の塩基配列および推定されるアミノ酸配列を表12及び13ならびに配列表(表14参照)に示した。抗体可変領域遺伝子の配列解析の結果から、これらの抗体の配列は数種類の一定の抗体遺伝子に由来すると考えられ、ヒトGPVIのループ9を認識する抗体のレパートア選択に特徴のあることが認められた。
マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体の生産(2)
16−1 マウス/ヒトキメラ抗体の生産
実施例10の方法と同様の方法で作製した発現プラスミドを下記の方法でCOS−1細胞に導入し、キメラ抗体の一過性発現を行った。なお、cF1232−18−3(マウスモノクローナル抗体F1232-18-3のマウス/ヒトキメラ化抗体をcF1232-18-3と表記する。以下、他のマウスモノクローナル抗体も同様に表記する。)発現には重鎖発現プラスミドpTK−2471と、軽鎖発現プラスミドpTK−2475とのco−transfectionを行い、cF1232−43−3、cF1232−10−1あるいはcF1232−37−2についてはそれぞれpTK−2504とpTK−2514、pTK−2509とpTK−2517あるいはpTK−2510とpTK−2511をそれぞれco−transfectionした。
精製操作は、記載が無い限り4℃にて実施した。
16−1で調製されたcF1232−37−2 COS培養液を、プレフィルターとして1μmの孔径を有するカプセルカートリッジフィルター(東洋濾紙株式会社)、本フィルターとして0.22μmの孔径を有するフルオロダインフィルター(PALL)をそれぞれ用い、室温にて清澄化し培養上清を得た。この培養上清を予めPBS−(Sigma)にて平衡化したrmp Protein A Sepharose Fast Flow(Amersham Biosciences)に吸着させ、非吸着蛋白質をPBS−にて洗浄後、非特異的に吸着している蛋白質を1.5 M NaClを含む100 mMリン酸バッファーにて溶出した。その後、特異的に結合している抗体を、100 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.0)にて溶出した。溶出液はその容量を測定し、直ぐに1/10容量の1 M Tris−HCl(pH 7.0)を添加し、pHを中性に戻した。得られた標品を0.9% NaCl水溶液に対して透析し、精製標品とした。同様の操作でcF1232−43−3、cF1232−10−1あるいはcF1232−18−3を精製した。
マウス/ヒトキメラ抗体の抗原結合特性
17−1 マウス/ヒトキメラ抗体の抗原結合活性
16−2で作製した各キメラ抗体の解離定数を、蛋白相互作用解析装置BIACORE3000(BIACORE)を用いて実施例5と同様の方法で測定した。作製したキメラ抗体はhGPVI−hFcに対して十分な親和性を有していることが示された。
マウス/ヒトキメラ抗体と対応マウスモノクローナル抗体との抗原結合活性を比較するために、実施例14に記載の方法と同様にペルオキシダーゼ標識F1232-37-2、F1232-18-3、F1232-43-3、およびF1232-10-1を作製し、これらの標識抗体と固相化hGPVI-hFcとの結合反応系に対応する非標識マウス/ヒトキメラ抗体を添加する競合法(実施例14の14−1記載の方法)により、マウスモノクローナル抗体と対応するマウス/ヒトキメラ抗体のヒトGPVIに対する結合活性を比較した。その結果、図4に示すように両者には差がなかった。また、GPVIとコラーゲンの結合に対する各抗体の阻害活性測定を実施例2あるいは実施例14に記載の方法のより行った。本実験の結果、図5に示すように検討を行った各抗体によるGPVIとコラーゲンとの結合阻害活性が確認された。キメラ化した抗体とマウスハイブリドーマ抗体のGPVIとコラーゲンとの結合阻害活性は同等であった。
hGPVI-hFcを4μg/mLで固相化したプレートに、実施例14に記載の方法でペルオキシダーゼ標識したF1232-37-2またはcF1232-37-2と実施例7にて作製したhGPVI-hFc、mGPVI-hFc、hGPVI-mL3-hFc、または、実施例1に記載の方法と同様の方法で作製したhGPVI-K59E-hFc(ヒトGPVIの59番目のリジンをグルタミン酸に置換した1アミノ酸変異ヒトGPVI細胞外領域とヒトFcからなる融合蛋白質)を0.1%BSA/PBSで希釈し混合した後にプレートに添加し、37℃で一時間反応させた。反応後、TMB溶液を用いて発色させ吸光度を450nmの波長にて測定した。
cF1232-37-2抗体の抗原認識部位を確認するために、GPVI-HHH-hFc、GPVI-MMM-hFc、hGPVI-mL2-hFc、hGPVI-mL3-hFc、hGPVI-mL4-hFc、hGPVI-mL5-hFc、hGPVI-mL6-hFc、hGPVI-mL7-hFc、hGPVI-mL8-hFc、hGPVI-mL9-hFc、hGPVI-mL10-hFc、hGPVI-mL11-hFc、hGPVI-mL13-hFc、hGPVI-mL14-hFc(以上実施例7で作製)とcF1232-37-2抗体との結合活性測定を行った。
得られた結果を解析したところ、図7に示すように、cF1232-37-2はhGPVI-mL9-hFcにおいて顕著に活性が低下していた。この結果よりcF1232-37-2はループ9領域を認識するものと考えられる。
マウス抗GPVIモノクローナル抗体およびマウス/ヒトキメラ抗GPVIモノクローナル抗体の血小板に対する作用
18−1 ヒト血小板およびカニクイザル血小板活性化作用
正常人あるいはカニクイザルから採血したクエン酸加血をSysmex F-820に供し、血小板数等を求めた後、ヒトでは170×g、25℃、15分間、サルでは115×g、25℃、20分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を、引き続き、1300×g、25℃、15分間遠心分離することにより乏血小板血漿(Platelet Poor Plasma; PPP)を得た。
次に得られたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPRPをPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で30分間インキュベートした。インキュベート後パラホルムアルデヒド(終濃度1%)を加えて、4℃で1時間固定化を実施した。0.5% 非働化FBSを含むPBS(以下、FBSバッファー)で洗浄後、抗ヒトCD62P-PE(BECKMAN COULTER)を添加して室温、遮光下で30分静置した。30分後、FBSバッファーで血小板を洗浄後、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定することによりCD62Pの発現について解析した。
図8に示すように、F1199-6抗体は濃度依存的にヒト血小板あるいはカニクイザル血小板を活性化したが,F1232-37-2抗体に血小板活性化作用はほとんど認められなかった。また、cF1232-37-2のヒト血小板あるいはカニクイザル血小板への作用も同様であった。また、実施例16で作製したキメラ抗体、cF1249−18−2、cF1245−7−1、cF1246−1−1、cF1249−24−1、cF1245−4−1、cF1249−22−1及びcF1251−1−1について同様の方法でサル血小板活性化作用を検討したところ、活性化作用は認められなかった。一部のクローンでは、キメラ化していないマウス抗体でサル血小板活性化作用を示すものもあったが、キメラ化することによりその作用は消失した。なお、実施例2で作製したマウスモノクローナル抗体についても同様に検討したところ、何れの抗体もヒト血小板活性化作用は認められなかった。
19−1に記載の方法で調製されたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することにより血小板凝集を求めた。
図9に示すように、F1199-6は濃度依存的にヒト血小板の凝集を惹起したが、F1232-37-2およびcF1232-37-2の血小板凝集惹起作用はほとんど認められなかった。
18−1に記載の方法により調製されたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度1μg/mlのコラーゲン溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりコラーゲン応答性の血小板凝集を求めた。
図10に示すように、F1232-37-2およびcF1232-37-2は濃度依存的にコラーゲン惹起ヒト血小板の凝集を抑制した。
18−1に記載の方法により調製されたPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜10μg/mLの抗体を添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度5μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりADP応答性の血小板凝集を求めた。その結果を図11に示す。
F1232-37-2およびcF1232-37-2にADP惹起ヒト血小板凝集の凝集抑制作用は認められなかった。
抗GPVI抗体の測定系(EIA)
サンドイッチEIA法により抗GPVI抗体濃度を測定した。すなわち、固相化蛋白質として実施例1と同様の方法で調製したヒトGPVIの配列を持つhGPVI−hFc、および、標識抗体としてAnti Human Kappa Light Chains HRP (DAKO)を用いたサンドイッチEIA系を作製した。
標準品として実施例16で調製した抗GPVI抗体を用いた。hGPVI−hFcをPBS(pH7.4)で4μg/mLに希釈し、NUNC−Immuno plate Maxisorp(NUNC)の各ウェルに50μL添加した。4℃で一晩反応後、氷冷水で5回洗浄し、2%StabilGuard(SurModics,Inc.)を含むPBS(pH7.4)を各ウェルに100μL添加し、ブロッキングした。次に0.1%BSAを含むPBS(pH7.4)を希釈液として測定試料および標準品の希釈検体を調製した。プレートのブロッキング剤を廃棄し、各ウェルに希釈検体50μLを添加し、37℃で1時間反応させた。反応終了後、0.05%Tween20/0.9%塩化ナトリウム溶液で3回洗浄した。次に10%ウサギ血清を含むPBS(pH7.4)で希釈した標識抗体を調製し、各ウェルに50μL添加し、37℃で1時間反応させた。反応終了後、0.05%Tween20/0.9%塩化ナトリウム溶液で3回洗浄し、テトラメチルベンジジン溶液(BioFX)を各ウェルに50μLずつ添加した。室温で約10分反応後、1mol/L塩酸溶液50μLで反応停止し、プレート分光光度計で450nmの吸光度を測定した。
また、サル血漿中のGPVI抗体濃度を測定する際には、標識抗体希釈液として10%サル血漿および10%ウサギ血漿を含むPBS(pH7.4)を用い、同様に測定した。
カニクイザルex vivo実験による抗GPVIモノクローナル抗体の評価(2)
試験開始にあたり、まず被験カニクイザルの体重測定および薬物投与前採血を行った。抗GPVI抗体投与後0.5時間〜2週間後に採血し、1)血小板数、2)血小板膜蛋白質(GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a))の発現、3)血小板GPVIの発現、4)血小板凝集(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定し、各抗体の評価を行った。
マウスモノクローナル抗体F1232-37-2およびマウスモノクローナル抗体F1199-6の0.3mg/kgで静脈内投与した場合、投与1日後には血小板GPVI量の低下が認められとともに血小板のコラーゲンに対する応答性の低下が認められ、その作用はマウスモノクローナル抗体F1232-37-2では2日以上持続した。
また、F1199-6投与カニクイザルにおいては、投与後に血小板数減少が見られたが、F1237-2投与カニクイザルでは血小板数に大きな変動は見られなかった。
結果を図12に示す。
カニクイザル(雄)にcF1232-37-2を0.1, 0.3, 1mg/kgにて静脈内投与した。
図13に示すように、0.1, 0.3, 1mg/kg cF1232-37-2投与動物では投与後速やかに血小板のコラーゲンに対する応答性が低下し、その作用は0.3および1mg/kg 投与動物では2日間以上持続した.また、0.1mg/kg cF1232-37-2投与動物は投与後2時間ほどかけてコラーゲンに対する応答性が低下し、その作用は1日間持続した。
カニクイザル(雄)にcF1232-37-2を1日おきに4回投与し,各投与前、各投与翌日,最終投与翌日〜17日後の採血というスケジュールにて行った。また、採血により得られた血液については、1)血小板数、2)血小板膜蛋白質GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61)の発現、3)血小板GPVIの発現、4)コラーゲン惹起血小板凝集およびADP惹起血小板惹起に対する反応性を測定した。
初回投与の翌日から血小板GPVI量の低下および血小板のコラーゲンに対する応答性の低下が認められ,コラーゲンに対する応答性の低下は0.1mg/kg投与動物は最終投与後2日間,0.3mg/kg投与動物は最終投与後10日間以上持続した。図14に0.3mg/kg反復投与試験におけるカニクイザル血小板のコラーゲン惹起凝集能および血小板GPVI、GPIIIaおよびGPIXの推移を示した。なお、この試験において、血小板膜蛋白質GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61)の発現量は大きく変化しなかった。
カニクイザル(雄)にcF1232-37-2を0.1, 0.3, 1mg/kgにて皮下投与し、投与前および投与後継時的な採血により得られた血液を試料として、1)血小板数、2)血小板膜蛋白質(GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61))の発現、3)血小板GPVIの発現、4)血小板凝集(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定した。結果を図15に示す。
1mg/kgおよび0.3mg/kg皮下投与動物においては投与3時間後から血小板のコラーゲンに対する応答性の低下がみられ、投与翌日には血小板GPVI量の低下が認められた。コラーゲンに対する応答性の低下は0.3mg/kg投与動物は投与後1週間以上、1mg/kg投与動物は2週間以上持続した。また、0.1mg/kg投与動物においても投与当日にコラーゲンに対する応答性の低下が認められた。また、血小板膜蛋白質(GPIIb/GPIIIa(CD41a)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61))の発現量は大きく変化しなかった。
抗GPVIモノクローナル抗体のFabおよびF(ab')2の調製
21−1 マウスモノクローナル抗体F1232−37−2のF(ab')2作製
マウスモノクローナル抗体F1232−37−2のF(ab')2を作製するために、実施例2で得られたマウスモノクローナル抗体F1232−37−2をLysylEndopeptidaseを用いて処理した。すなわち、精製マウスモノクローナル抗体F1232−37−2に1/10量の1Mトリス緩衝液(pH8.5)を添加し、LysylEndopeptidase(Wako)を抗体:酵素=30:1(モル比)になるように添加し、37℃3時間反応した。反応終了時には終濃度30mMとなるようにTLCK(SIGMA)を添加した。
次にF(ab')2の精製を行った。まず未切断の抗体とFc部位を取り除く目的で、LysylEndopeptidase処理した抗体をProsep rA(Millipore)に供した。さらにこの非吸着画分をSuperdex75(Amersham)にかける事でLysylEndopeptidaseを取り除きF1232−37−2のF(ab')2を得た。続いて得られたF(ab')2を生理食塩水(大塚)で透析し、抗体の純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、抗体濃度をBovine IgGスタンダードによるBradford法にて定量した。
F1232−37−2のFabを作製するために、実施例2で得られた精製マウスモノクローナル抗体F1232−37−2をPapain(Wako)を用いて処理した。すなわち、精製マウスモノクローナル抗体F1232−37−2を1mMCysteine,20mMEDTA/D−PBS-(pH7.4)バッファー中に置換し、Papain(Wako)を抗体:酵素=30:1(重量比)になるように添加し、25℃16時間反応した。反応終了時には終濃度30mMとなるようにIodoacetamide(Wako)を添加した。
次にFabの精製を行った。まず未切断の抗体とFc部位を取り除く目的で、Papain処理した抗体をProsep rA(Millipore)に供した。さらにこの非吸着画分をSuperdex75(Anersham)にかける事でPapainを取り除きF1232−37−2のFabを得た。続いて得られたFabを生理食塩水(大塚)で透析し、抗体の純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、抗体濃度をBovine IgGスタンダードによるBradford法にて定量した。
実施例2において作製したF1232−37−2(Whole抗体)、および22−1および21−2で作製したF(ab')2およびFabそれぞれの解離定数を蛋白相互作用解析装置BIACORE3000(BIACORE)を用いて測定した。すなわち、センサーチップに実施例1で作製したhGPVI-hFcをマニュアルに従ってCM5チップ(BIACORE)に結合した。つぎに、各抗体をHBS-EP緩衝液(BIACORE)で0から800nMまでの希釈系列を調製し、BIACORE3000にて解析した。各抗体の結合ごとにpH1.5のグリシン緩衝液(BIACORE)でチップを再生した。得られた結果をWhole抗体及びF(ab')2に関してはevaluationソフト(BIACORE)のBivalent analyteを用いて解析し、Fabに関しては1:1Bindingを用いて解析し、解離定数を算出した。その結果、F1232−37−2抗体のF(ab’)2及びFabの解離定数は、Whole抗体のそれを1として約0.7及び0.6であり、Whole抗体と比較して同等な親和性を有している事が示された。
抗GPVI抗体Fabのカニクイザルin vitro試験
カニクイザルから実施例20に記載の方法でカニクイザルより採血し、調製したPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜100μg/mLのF1232-37-2Fabを添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度2μg/mlのコラーゲン溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートしながらPRPの光の透過率をMCMヘマトレーサー313M(エム・シー・メディカル)で測定することによりコラーゲン応答性の血小板凝集を求めた。結果を図16に示す。
F1232-37-2 Fabのコラーゲン惹起血小板凝集抑制作用はcF1232-37-2より弱かった。
抗GPVI抗体F(ab’)2のカニクイザルex vivo試験
実施例21にて調製したF1232-37-2のF(ab’)2を1mg/kgの投与量でカニクイザルに皮下投与し、投与前および投与後継時的な採血により得られた血液を試料として、血小板GPVIの発現および血小板凝集能(コラーゲンおよびADPに対する反応性)を測定した。
図17に示すように、F1232-37-2F(ab')2投与動物では投与12時間後からコラーゲンに対する応答性の低下がみられ、投与翌日にはGPVIの発現低下が認められた。コラーゲンに対する応答性の低下は2日間以上持続した。また、血小板膜蛋白質(FcγRII(CD32)、GPIX(CD42a)、GPIIIa(CD61))の発現量は大きく変化しなかった。
サル出血時間測定
出血時間の測定にあたっては先ずカニクイザルの体重を測定した後、血液学的パラメータ、凝固系パラメータ,血小板機能に異常がないことを確認し、1mg/kgのcF1232-37-2を皮下に投与してその3時間および48時間後に測定というスケジュールにて行う。
カニクイザル(雄、2.5〜5kg)の両側尾静脈に注射針を刺入した後、出血時間を測定する。
cF1232-37-2投与動物において投与前と比較して著明な出血時間の延長は認められない。
マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体発現CHO細胞の作製
25−1 マウス/ヒトキメラF1232−37−2発現プラスミドの作製
まず、発現効率を高める目的で、cF1232−37−2重鎖発現プラスミド(pTK−2510)をEco RIとNco Iで切断し、プロモーターと開始コドンの間に、Kozak配列(Kozak, M.et al., J.Mol.Biol., 196, 947-950, 1987)を有する断片(センス鎖5’AATTCGCCGCCACC3’(配列番号291)、アンチセンス鎖5’CATGGTGGCGGCG3’(配列番号292))を挿入し、pTK−2571を構築した。同様にcF1232−37−2軽鎖発現プラスミド(pTK―2511)にもKozak配列を挿入し、pTK−2572を構築した。
次に、pTK−2572を制限酵素Ssp IおよびSse 8387Iで切断し、得られた断片の末端を平滑化することで、軽鎖発現ユニット(EFプロモーター、抗体軽鎖遺伝子およびポリAシグナル配列)を調製した。一方、TK−2571は、重鎖発現ユニットを切断しない制限酵素Sse 8387Iで切断後、平滑化処理を行い、この部位に軽鎖発現ユニットおよびマーカーユニットを一緒に挿入することで、3ユニットを1つのベクター上にもつ両鎖安定共発現プラスミドを構築した。なお、マーカーユニットは遺伝子増幅の為のマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(mDHFR)遺伝子に、適当なプロモーター/エンハンサーおよびポリAシグナル配列を付した遺伝子断片であり、4種類(アデノウイルスプロモータ、チミジンキナーゼプロモーター、SV40プロモーター/エンハンサーおよびSV40プロモーター)のプロモーター/エンハンサーを合成して用意した結果、4種類の両鎖安定共発現プラスミド(それぞれ、pTK−2550、pTK−2575、pTK−2576およびpTK−2577)を構築した(図18参照)。
DHFR遺伝子欠損CHO細胞に実施例25−1で構築した発現プラスミドpTK−2577をtransfectionし、キメラ抗体産生形質転換CHOを樹立した。即ち、HT media Supplement (50×) Hybri−Max(Sigma;終濃度1×で使用)及び200mM L−Glutamine(Sigma;終濃度4mMで使用)を含むEX−CELL 325 PF CHO(JRH Bioscience)にて馴化培養したCHO DXB11をtransfection当日に遠心後、8×106cells/150cm2 Rouxの濃度でフラスコに植え込んだ。FuGENE6(ロッシュダイアグノティクス)125μlを用いて、発現プラスミドpTK−2577 12.5μgをFuGENE6添付プロトコールに準じ調製し、先のCHO DXB11へ導入した。5%CO2で37℃、2日間培養した後に、細胞を回収し、HT不含4mM L−Glutamine含有EX−CELL 325 PF CHO培地(以下EX−CELL(HT−)と記載)で二度洗浄し、EX−CELL(HT−)に再度懸濁した。次に12,500〜50,000cells/wellで96well−plateに細胞を蒔き直し、5%CO2、37℃で培養を続け、3日あるいは4日毎に培地の半量を新しいEX−CELL(HT−)に交換した。約1ヶ月間培養を続けた後、コロニーが発生したウェル内の細胞を新しいプレートに移し、培養上清中のCHO細胞を宿主として発現するcF1232-37-2を実施例19に記載のEIA法で測定した。上清中にcF1232−37−2/CHOの発現が確認された細胞をcF1232−37−2/CHO産生形質転換株として得た。
同様にして、cF1232-37-2発現プラスミドのpTK−2550、pTK−2575、およびpTK−2576でCHO DXB11株を形質転換し、得られる組換え細胞が産生するcF1232-37-2/CHOを実施例19に記載のEIA法で測定した。その結果、表15に示すように、選択マーカーとして利用しているmDHFRのプロモーターの種類によってcF1232-37-2/CHOの生産性が異なっていおり、相対的に活性の弱いプロモーターを選択マーカーの発現プロモーターとして利用することで高発現クローンが得られることを確認した。
26−2で得られたキメラ抗体発現形質転換CHO株を、Methotrexate(以下MTXと表記)を含むEX−CELL(HT−)培地で選択培養することにより、遺伝子増幅作業を行い目的のキメラ抗体の生産量が上昇しているクローンの選択を行った。
即ち、実施例25−2で得られた形質転換株を30あるいは100nM MTX含有EX−CELL(HT−)培地に懸濁し、96well−plateに巻き込んだ。3日あるいは4日毎に培地の半量を新しい30あるいは100nM MTX含有EX−CELL(HT−)に交換し、コロニーが生じるまで5%CO2、37℃で培養を続けた。得られたコロニーの培養上清中への発現量をEIA法で確認し、生産量の増加しているクローンを選択した。その結果、生産量が約2ないし10倍上昇した形質転換株を得ることができた。尚、この遺伝子増幅した形質転換株を、MTX濃度を3ないし10倍上げた培地で選択培養を繰り返すことにより、さらに生産量が増加するクローンを得ることができる。
25−3で得られたCHO−G32DS25H8細胞クローンを100nM MTX含有EX−CELL(HT−)培地に1.5×105cells/mlで植え込み、37℃で7日間培養した。得られた培養上清を以下の精製に用いた。
以後の操作は特に記載が無い限り4℃にて実施した。
25−4で調製されたCHO細胞株培養上清を、プレフィルターとして1μmの孔径を有するカプセルカートリッジフィルター(東洋濾紙株式会社)、本フィルターとして0.22μmの孔径を有するフルオロダインフィルター(PALL)をそれぞれ用い、室温にて清澄化した。清澄化後の培養上清を予めPBS-(Sigma)にて平衡化したプロテインA(rmp Protein A Sepharose Fast Flow、GE Healthcare/アマシャムバイオサイエンス)に吸着させ、非吸着蛋白質をPBS-にて洗浄後、非特異的に吸着している蛋白質を10×PBS-(Sigma)にて溶出した。その後、プロテインAに結合している抗体を、100 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.0)にて溶出した。溶出液はその容量を測定し、直ぐに1/10容量の2 M Tris−HCl(pH 8.5)を添加し、pHを中性に戻し精製抗体溶出液とした。この精製抗体溶出液を、アミコンPM10限外ろ過ディスク(MILLIPORE)を用いた限外濾過により濃縮したのち、生理食塩液(大塚生食注、大塚製薬工場)に対して透析し、最終的な精製抗体溶液とした。
実施例5と同様の方法にて、cF1232−37−2/CHOのhGPVI−hFcに対する解離定数を測定した。その結果、cF1232−37−2/CHOはhGPVI−hFcに対して十分な親和性を有し、COS細胞で一過性に発現調製したcF1232−37−2(cF1232-37-2/COSと略記する場合がある。)と同程度であることが示された。
cF1232−37−2/CHOの反応性を確認するため、hGPVI−hFcに対する結合能を指標に細胞による一過的遺伝子発現系で調製したcF1232−37−2との競合実験を行った。測定方法は実施例17の17−3記載の方法に従った。固相化タンパク質としてhGPVI−hFcを用い、標識したcF1232−37−2/COSの結合に対して、未標識のcF1232−37−2/CHOあるいはcF1232−37−2/COSの濃度を変えて添加し、その競合活性を確認した。その結果を図19に示す。cF1232−37−2/CHOはcF1232−37−2/COSと同様の反応性を示すことが確認された。
ヒト化抗ヒトGPVIモノクローナル抗体の作製
4種類のマウス抗GPVI抗体の中から、再構成ヒト抗体の設計および作製の為の第一候補として、F1232−37−2を選択した。この抗体の各可変領域の3つのCDRを、ヒトミエローマ由来の既知抗体のCDRと置換することで、ヒト化抗体の設計を行った。重鎖として選択したのは、NEW(Saul, F.ら、J. Biol. Chem. 253, 585-597)およびEu(Cunningham B. ら、Biochemistry 9, 3161)で、軽鎖(κ鎖)としてはREI(Epp, O.ら、Eur. J. Biochem. 45, 513-524)およびEuのフレームワーク(以下FR)を受容体とした。それぞれ、NEW-HA、Eu-HA、REI-KAおよびEu-KAとして、最初の各アミノ酸配列(バージョンA;図20および21)を設計した。但しEu-HAは、そのFR3およびFR4において極めて希な配列が存在することから、より一般的な配列に変更して、バージョンC(Eu-HC)を再設計した。次に、これらのアミノ酸配列から、それらを発現可能な遺伝子配列を考案し、全長配列を数個に分割してDNA断片を合成し、リガーゼによって各断片をつなぎあわせることで、可変領域をコードする遺伝子断片を得た。これを、適当な制限酵素切断部位を有するプライマー(実施例10参照)で増幅することで、ヒト抗体定常領域(重鎖はIgG4、軽鎖はκ鎖)との結合が可能となり、ヒト化抗体全長遺伝子を得た。さらに、この遺伝子を発現ベクターpEF2cewのEFプロモーター下流に組み込むことで、各ヒト化抗体を発現可能なプラスミドが構築され、それぞれ、pTK−2560(NEW-HA)、pTK-2632(Eu−HC)、pTK-2561(REI-KA)およびpTK-2631(Eu-KA)とした。
さらに、ループ置換GPVI-Fcを用いた競合アッセイによっても、各ヒト化抗体は、もとのキメラ抗体と同じ結合特異性を示すことが認められた(図22)。
カニクイザルex vivo実験による抗GPVIモノクローナル抗体の評価(2)
27−1 マウス/ヒトキメラ抗GPVI抗体のカニクイザルex vivo試験(2)
(単回静脈内投与試験その2)
カニクイザル(雄)に実施例16で作製したキメラ抗体cF1249−24−1又はcF1249−22−1を1mg/kgにて静脈内投与した。実施例20に示した方法にて各種解析を実施した。その結果、両抗体とも投与後血小板GPVI量の低下を引き起こすとともに血小板のコラーゲンに対する応答性を低下させ、その効果は図23に示すようにcF1249−24−1で2日間以上、cF1249−22−1で6時間持続した。また、両抗体ともに血小板膜蛋白質(GPIIIa(CD61))の発現量には大きく影響しなかった。
カニクイザル出血時間測定(2)
先ずカニクイザル(雄、2.5〜5kg)の体重を測定した後、血液学的パラメータ、凝固系パラメータ,血小板機能に異常がないことを確認し、1mg/kgのcF1232−37−2を皮下に投与した。投与前ならびに投与3時間および48時間後に下記の方法により出血時間を測定した。また、比較のためにeptifibatideを0.03、0.1、および0.3mg/kgにて静脈内投与し、投与5分後に同様の方法で出血時間を測定した。なお、出血時間測定時における血小板のコラーゲン惹起凝集能を実施例20に記載の方法により測定した。
カニクイザルの両側尾静脈に注射針を刺入した後、ストップウォッチを作動し直ちに針を抜き取った。血管から湧出してくる血液を5秒間隔で濾紙(Advantec、定性濾紙No.2、150mm)に吸い取らせ、濾紙に血液が付着しなくなるまでこの操作を繰り返し、血痕のついた濾紙の数を5倍して出血時間(秒)とした。
その結果、eptifibatide投与群では血小板のコラーゲン惹起凝集能が抑制されている状況下に出血時間の有意な延長が認められたが、cF1232−37−2 1mg/kg皮下投与群では、血小板のコラーゲン惹起凝集能が抑制されている状況下においても投与前と比較して有意な出血時間の延長は認められなかった(図24)。
多価抗GPVI抗体の調製と抗原結合活性
29−1 IgM型抗GPVI抗体発現プラスミドの作製
1)ヒトμ鎖定常領域遺伝子のクローニング
HeLaゲノムDNAを鋳型とし、プライマー対(IgM-bおよびIgM-c)でCμ1領域を、プライマー対(IgM-dおよびIgM-e)でCμ2領域を、プライマー対(IgM-fおよびIgM-g)でCμ3領域を、プライマー対(IgM-hおよびIgM-j)でCμ4領域をそれぞれ増幅した。各増幅産物を混合して鋳型とし、プライマー対(Nae-IgMおよびIgM-j)で再度PCRを行うことで、各領域が連結された遺伝子断片を増幅し、pT7-Blue(T)ベクターへTAクローニングを行った。配列を解析し、ヒトμ鎖定常領域をコードする遺伝子配列であることを確認し、pT7-IgM(Nae I)とした。
IgM-c GCAGCTCGGCAATCACTGGAAGAGGCACGT(配列番号294)
IgM-d ACGTGCCTCTTCCAGTGATTGCCGAGCTGC(配列番号295)
IgM-e TGGCTGTGTCTTGATCGGGGCCACACATGG(配列番号296)
IgM-f CCATGTGTGGCCCCGATCAAGACACAGCCA(配列番号297)
IgM-g TGTGCAGGGCCACCCCCTTGGGCCGGGAGA(配列番号298)
IgM-h TCTCCCGGCCCAAGGGGGTGGCCCTGCACA(配列番号299)
IgM-j GTTGACACGGTTAGTTTGCATGCA(配列番号300)
Nae-IgM GCCGGCAGTGCATCCGCCCCAACC(配列番号301)
先ず、pTK-2510(実施例16に記載のcF1232-37-2のIgG4型重鎖発現プラスミド)をBam HIおよびAor 51HIで切断することで、γ4鎖の定常領域をコードする遺伝子断片を除去し、残りのベクター断片(発現用のEF-1αプロモーターおよびcF1232-37-2の可変領域を含む)を得た。このベクター断片に、pT7-IgM(Nae I)をBam HIおよびNae Iで切断することで得られたμ鎖定常領域をコードする遺伝子断片を挿入し、cF1232-37-2の定常領域をγ4鎖からμ鎖に置換したキメラIgM型F1232-37-2発現プラスミド(pTK-2820)を構築した。また、同様の方法にて、cF1232-43-3のIgG4型重鎖発現プラスミド(pTK-2504)より、キメラIgM型F1232-43-3発現プラスミド(pTK-2822)を構築した。
HeLaゲノムDNAを鋳型とし、プライマー対(IgJ-aおよびIgJ-d)で第1エクソン断片を、プライマー対(IgJ-cおよびIgJ-f)で第2エクソン断片を、プライマー対(IgJ-eおよびIgJ-h)で第3エクソン断片を、プライマー対(IgJ-gおよびIgJ-j)で第4エクソンをそれぞれ増幅した。各遺伝子断片を混合して鋳型とし、プライマー対(IgJ-bおよびIgJ-i)で再度PCRを行うことで、各領域が連結された遺伝子断片を得て、pT7-Blue(T)ベクターへTAクローニングを行った。配列を解析し、ヒトJ鎖をコードする遺伝子配列であることを確認し、pT7-IgJとした。
pT7-IgJをXba IとBam HIで切断してJ鎖をコードする遺伝子断片を得た後、発現ベクター(pEF2cew)のEF-1αプロモーターの下流にあるXba IとBam HI部位に挿入することで、ヒトJ鎖発現プラスミド(pTK-2393)を構築した。
IgJ-b AAGTGAAGTCAAGATGAAGAACC(配列番号303)
IgJ-c CTGTTCATGTGAAAGCCCAAGAAGATGAAA(配列番号304)
IgJ-d TTTCATCTTCTTGGGCTTTCACATGAACAG(配列番号305)
IgJ-e AAACATCCGAATTATTGTTCCTCTGAACAA(配列番号306)
IgJ-f TTGTTCAGAGGAACAATAATTCGGATGTTT(配列番号307)
IgJ-g CCATTTGTCTGACCTCTGTAAAAAATGTGA(配列番号308)
IgJ-h TCACATTTTTTACAGAGGTCAGACAAATGG(配列番号309)
IgJ-i TTAGTCAGGATAGCAGGCATCTG(配列番号310)
IgJ-j AGAGCTATGCAGTCAGC(配列番号311)
上記29−1で作製した発現プラスミドをトランスフェクション試薬(FuGENE6、ロシュダイアグノスティックス)と適当量混和し、この混合液をCOS細胞培養系に滴下し、トランスフェクションを行い、キメラ抗体の一過性発現を行った。マウス/ヒトキメラF1232-37-2のIgM型(以下、cF1232−37−2(IgM)と略記)発現には重鎖発現プラスミドpTK−2820、軽鎖発現プラスミドpTK−2474、およびJ鎖プラスミドpTK2393とのco−transfectionにより行い、マウス/ヒトキメラF1232-43-3のIgM型(以下、cF1232−43−3(IgM)と略記)の発現は、重鎖発現プラスミドpTK−2822、軽鎖発現プラスミドpTK−2514、およびJ鎖プラスミドpTK2393とのco−transfectionにより行った。
トランスフェクション後に5%CO2-95%空気下に37℃で3日間培養し、その培養上清を60%硫酸アンモニウムで塩析・濃縮後、プロテインLカラム(ImmunoPure Immobilized ProteinL、PIERCE)によるアフニティクロマトグラフィーにて精製した。
hGPVI-hFcを固相化したイムノプレート(実施例2他に記載の方法で調製した)にcF1232−37−2(IgM)およびcF1232−43−3(IgM)を各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた。0.05%Tween20を含む生理食塩水で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトμ鎖抗体(DAKO、P0322)を10%ウサギ血清含有D−PBSで2000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、TMB基質により発色反応を行い、プレート分光光度計(Molecular Devices、Wako)で450nmの吸光度を測定した。その結果、cF1232−37−2(IgM)およびcF1232−43−3(IgM)の両抗体ともにhGPVI-hFcに結合することが確認された。
実施例18の18−1に記載の方法により調製されたカニクイザルおよびヒトPRPを血小板の濃度が3.75×108cells/mLとなるようにFACSバッファーで希釈した。希釈したPRPに上記29−2で作製したcF1232−37−2(IgM)もしくはcF1232−43−3(IgM)を終濃度3ないし4μg/mLとなるように添加し25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄した。続いて、抗ヒトIgM-FITC(BD Biosciences Pharmingen)を添加して室温で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、cF1232−37−2(IgM)およびcF1232−43−3(IgM)の両抗体ともサルならびにヒト血小板に結合することが確認された。
抗GPVI抗体による血小板GPVI抗原消失誘導作用の確認(in vitro)
実施例18の18-1に準じた方法によりサル全血より多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を調製した。調製したPRPにACD-A(acid-citrate-dextrose)を添加しpH6.5に調整した。調製後、2000rpmで遠心し血小板を沈殿させた後に、血小板をHEPES Buffer(ACD-AによりpH6.5に調整)により洗浄した。その後、HEPES Buffer (pH7.4)を適当量添加し血小板を懸濁した。Sysmexにより調製した洗浄血小板数を測定した。
洗浄血小板を1.5×107 PLT/tubeとなるようにマイクロチューブにとりわけ、そこに10mM CaCl2及び10mM MgCl2をそれぞれ2μL添加し、PBSにより18μLにメスアップした。5.0 μg/mL Convulxin、cF1232-37-2、cF1249-22-1、cF1249-24-1、cF1249-18-2(各濃度1 mg/mL)を2μL添加、混合し、室温において1時間反応させた。反応後、10mM EDTAを10μL添加し反応を停止させた後に15000rpm、室温で1分間遠心し、上清と沈殿に分離、各画分にSample Bufferを添加し、99℃において5分間熱処理を行った。このサンプルは-30℃において保存し、使用直前に解凍し使用した。
実施例20の方法に準じSDS-PAGE、Western Blottingを行い各サンプル中のGPVIの検出を行った。その結果、図25に示すようにConvulxin添加では、反応後の上清にGPVI抗原が検出されたが、cF1232-37-2、cF1249-22-1、cF1249-24-1、およびcF1249-18-2添加では、上清にGPVI抗原が検出されず、評価した抗GPVI抗体ではGPVI抗原のSheddingが起こらなかった。
PEG化抗GPVI抗体の調製と抗原結合活性
31−1 F1232-37-2抗体のPEG化
F1232−37−2のPEG化抗体を作製するために、精製F1232−37−2にスクシイミド基を持った20KDの直鎖状のPEG(NEKTAR)を反応させた。すなわち、精製F1232−37−2をPBS(pH7.4)のバッファー中へ交換し、抗体:PEG=1:10(モル比)になるように添加し、37℃1時間反応した。
次にPEG化抗体の精製を行った。未修飾の抗体とPEG化抗体を分離する目的で、PEG化処理を行った抗体を陰イオン交換カラムQ Sepharose HP(Amersham)に供した。純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し(図26)、抗体濃度はBovine IgGをスタンダードに用いたBradford法(Bio−Rad)により算出した。
F1232−37−2 Fab抗体のPEG化抗体を作製するために、実施例21の21−2で作製したF1232−37−2 Fab抗体を上記方法と同様にPEG化を行った。
次にPEG化されたFab抗体の精製をSuperdex75(Amersham)を用いて行った。純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し(図26)、抗体濃度はBovine IgGをスタンダードに用いたBradford法(Bio−Rad)により算出した。
抗原に対する結合活性をELISAにて確認した。hGPVI-hFcを固相化したイムノプレート(実施例2他に記載の方法で調製した)にF1232−37−2とF1232−37−2のPEG化抗体を同じ濃度に調整して各ウエルに添加し、37℃で1時間反応させた。0.05%Tween20を含む生理食塩水で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO、P260)を10%ウサギ血清含有D−PBSで1000倍に希釈し各ウエルに50μL添加した。37℃で1時間反応後、TMB基質により発色反応を行い、プレート分光光度計(Molecular Devices、Wako)で450nmの吸光度を測定した。その結果、F1232−37−2とF1232−37−2のPEG化抗体はほぼ同等の結合活性を有していることが確認された(図27)。
抗GPVI抗体のレパトア遺伝子解析
実施例9および実施例15に記載の抗GPVモノクローナル抗体の配列は数種類の一定の抗体遺伝子に由来すると考えられ、ヒトGPVIのループ9を認識する抗体のレパートア選択に特徴のあることが認められた。抗体遺伝子はgerm-line抗体遺伝子セグメント(重鎖のH、D及びJ、ならびに、軽鎖のV及びJ)の組合せによって構成され、さらに多くの場合、体細胞変異を伴って形成される(Immunoglobulin Genes 2nd eds. T. Honjo and F.W. Alt, Academic Press, 1995等参照)。そこで、これらの抗体の重鎖可変領域の核酸塩基配列および軽鎖可変領域の核酸塩基配列をクエリー配列として、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のIg germ-line V遺伝子のデータベースを対象としてIg-BLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を行った。その結果、表16に示したように、各抗体の可変領域核酸塩基配列は、それぞれ特定のマウスgerm-line抗体重鎖遺伝子Hセグメント、Dセグメント及びJセグメント(VH、DH及びJHセグメント)、ならびに抗体軽鎖遺伝子VセグメントおよびJセグメント(VL及びJL)と高い一致率(Identity%)を示した。。なお、表16には、各クローンに対してスコアの高い順に各セグメントを3つまで記載した。それらのいずれかが各抗体遺伝子の由来するgerm-line抗体遺伝子を構成するセグメントであると推定されるが、これらの内、各クローンについては最上段に示した各セグメントの組合せで構成された遺伝子に由来している可能性が最も高いと考えられる。
ラットGPVI遺伝子のクローニング
ラットGPVI遺伝子は、先ず、公知であるマウスGPVI遺伝子の情報を基に、全エクソンをそれぞれ増幅可能なプライマー(6対)を設計した。これらを用いて、ラットゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、特異的に増幅された遺伝子断片をシークエンスし、つなぎあわせることで、ラットGPVI遺伝子配列を推定した。次に、この配列情報に基づいてラットGPVI用プライマー(ratGPVI-#a, mGPVI-m) を再設計し、ラット骨髄由来cDNA(ラット骨髄由来RNAを、オリゴdTプライマーを用いて逆転写して合成)を鋳型としたPCRで、全長遺伝子を増幅した。増幅産物をゲルから抽出し、pT7-Blue(T)ベクター(タカラバイオ)にTAクローニングした後、塩基配列を決定した。また、この配列を有するプラスミドをpTK-2478とした。図28にラットGPVI遺伝子の塩基配列(配列番号312)及びコードされるアミノ酸配列(配列番号313)を示す。
ラットGPVI(D1D2)マウスGPVI(D3)‐マウスFc融合蛋白質(rGPVI−mFc)等の作製
rGPVI-hFc融合蛋白発現プラスミドの構築
pTK-2478を鋳型とし、プライマー対(rat GPVI-#aおよびrat GPVI-#t)でPCRを行うことで、ラットGPVIのD1およびD2(GPVIの細胞外領域のドメイン1およびドメイン2)をコードする遺伝子断片Aを増幅した。同様に、pTK-2440(MD0754JP P05-0268 特願2005-348534に記載)を鋳型とし、プライマー対(rat GPVI-#sおよびIgG1-i)でPCRを行うことで、マウスGPVIのD3(GPVIの細胞外ドメインで、D1およびD2以外の領域)をコードする遺伝子断片Bを増幅した。次にAおよびBを混合して鋳型とし、プライマー対(rat GPVI-#aおよびIgG1-i)で再度PCRを行うことで、ラットGPVI(D1およびD2)とマウスGPVI(D3)が連結された遺伝子断片Cを得た。この断片Cの5'側をEco RI、3'側をBam HIで切断後、マウスFc領域(mFc)をEFプロモーターの下流に有するプラスミド(pTK-2299: MD0754JP P05-0268 特願2005-348534に記載)のEco RIおよびBam HI部位に挿入することで、rGPVI-mFc融合蛋白を発現可能なpTK-2483を構築した。
rGPVI-mFc融合蛋白質の発現および精製 rGPVI-mFc融合蛋白質発現プラスミドpTK-2483を用いて実施例1記載と同様の方法によりCOS−1細胞をトランスフェクションした。3日後、培養上清を回収し、プロテインAカラム(Prosep-vA、MILLIPORE)クロマトグラフィーによりrGPVI-mFc融合蛋白質を精製した。得られたrGPVI−mFcを定法にてSDS-PAGEで解析した(図29)。
なお、rGPVI−hFc、mGPVI−hFc、hGPVI−hFc、rGPVI−hL2,5−hFc、rGPVI−hL9,11−hFc及びhGPVI−mL9−hFcも同様に発現及び精製した。
抗ラットGPVIモノクローナル抗体の作製
Alum(PIERCE)12.5μLとCpGアジュバント1mgと精製ラットGPVI-mFc融合タンパク20μgを混合し100μLとした投与抗原をddYマウス(メス、8週令、SLC)の両足のフットパッド内に各25μLずつ投与した。3日後、腸骨リンパ節よりリンパ球を分離し、実施例2に記載の方法と同様の方法で細胞融合、およびハイブリドーマのスクリーニングを行った。さらに、精製ラットGPVI−hFcタンパクと反応した細胞を選択し、限界希釈法によりクローニングを行った。11日後、同様にスクリーニングを行い、精製ラットGPVI−hFcタンパクと反応する抗体を産生するクローン17クローンを得た(表19)。
これらハイブリドーマクローン産生される抗ラットGPVI抗体を実施例2に記載の方法と同様の方法により精製した。
抗ラットGPVI抗体における認識領域の解析
実施例36で得られた抗ラットGPVIモノクローナル抗体の認識ドメインの解析を実施例7に記載の方法と同様の方法により行った。すなわち、に実施例36で精製したモノクローナル抗体とrGPVI−hFc、hGPVI−hFc、rGPVI−hL2,5−hFc(rGPVI−hFcのループ2、5をhGPVIの配列に置換したタンパク)、あるいはGPVI−hL9,11−hFc(rGPVI−hFcのループ9、11をhGPVIの配列に置換したタンパク)をそれぞれ混合し、rGPVI−hFcを固相したイムノプレートに添加し、反応性を調べた。その結果、rGPVI−hL2,5−hFcを添加した時に吸光度が低下しない抗体、つまりはループ2及び/又はループ5を認識している抗体が1種類(F1239-11-1)、またrGPVI−hL9,11−hFcを添加した時に吸光度が低下しない抗体、つまりはループ9及び/又はループ11を認識している抗体が3種類(F1239-4-2、F1239-6-1、F1239-22-2)存在する事が示された(図30)。
抗ラットGPVI抗体のラット血小板に対する結合能
ラットの腹部大動脈から採血したクエン酸加血を110×g、25℃、10分間遠心分離することにより多血小板血漿(Platelet Rich Plasma; PRP)を得た。次に得られたPRPを0.5%非働化FBSと2.5 mM EDTAを含むPBS(以下、FACSバッファー)で希釈し、実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体(F1239-6-1)を添加後、25℃で30分間静置した。30分後、FACSバッファーで血小板を洗浄した後、抗マウスイムノグロブリンズ抗体-FITC(DAKO)を添加して、25℃、遮光下で30分間静置した。30分後、FACSバッファーで血小板を洗浄した後、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定することにより抗ラットGPVIモノクローナル抗体の結合について解析した。その結果、F1239-6-1はラット血小板に結合することが示された(図31)。
抗ラットGPVI抗体の血小板に対する作用
正常WistarラットPRPを調製し、抗ラットGPVI抗体F1239-6-1のラット血小板活性化作用をCD62Pの発現量を指標として終濃度1〜100μg/mLのF1239-6-1添加条件で実施例18に記載の方法と同様の方法でFACSにより評価した。なお、ラットCD62Pの検出には抗ラットCD62P-PE(Biocytex)を用いた。 F1239-6-1はいずれの濃度においてもラット血小板を活性化しなかった。
抗ラットGPVI抗体の血小板凝集抑制作用とGPVI消失誘導作用
実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体を雄性SDラットに0.01〜1 mg/kgの用量で皮下投与した。投与6日後に血液を採取し、730 rpmで遠心することにより血小板多血漿(PRP)を調製した。血小板凝集能(コラーゲンおよびADPに対する反応性)は血小板凝集測定装置(MCM HEMA TRACER 313M、エム・シー・メディカル)を用いて測定した。すなわち、PRPの血小板数が3×105 cells/uLとなるように同一ラットより取得した血漿を用いて希釈した後、終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、37℃で3分間インキュベートした。さらに終濃度10μg/mlのコラーゲン溶液あるいは終濃度で20μMのADP溶液を添加し、37℃で12分間インキュベートした。血小板凝集率は光の透過率を測定することにより求めた。その結果、F1239-6-1(0.3mg/kg)を投与したラットから採血、調製したPRPにおいてコラーゲン惹起血小板凝集能は著明に低下したが、ADP惹起血小板凝集は影響を受けなかった(図32)。
また、血小板GPVIをWesternBlott法により解析した結果、抗ラットGPVIモノクローナル抗体投与3、6及び9日後に顕著なGPVI蛋白質の発現量減少が認められ、当該抗体の血小板上からGPVIを消失させる作用が確認された(図33)。
抗ラットGPVI抗体のコラーゲン致死モデルにおける作用
実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体F1239-6-1を、雄性SDラットに0.1,0.3,あるいは 1 mg/kgの用量で皮下投与した。対照として同量の生理食塩水を皮下投与した。投与6日後にコラーゲン溶液(コラーゲンリエージェント“ホルム” (NYCOMED))を0.8 mg/kgの用量で静脈内に急速投与し,その後最大15分間観察した。呼吸運動の停止を以って死亡と判定した。投与後死亡に至るまでの時間(分)を生存時間とし,15分後まで生存した例については生存時間を15分とした。投与群ごとに死亡数/例数を求め,カイ二乗検定(Yukum's stat light)により生理食塩水投与群との差を検定した。また,生存時間の平均およびSEMを群ごとに計算し,生理食塩水投与群との平均値の差を Dunnettの方法(non-parametric, Yukum's stat light)により検定した。その結果、F1239-6-1はコラーゲン致死モデルにおいて0.3 mg/kg以上の用量で有効であることが示された(図34)。
抗ラットGPVI抗体の麻酔下ラット動脈血栓モデル血小板凝集抑制作用
実施例36にて作製した抗ラットGPVIモノクローナル抗体F1239-6-1を、雄性SDラットに0.1,あるいは0.3 mg/kgの用量で皮下投与した。対照として同量の生理食塩水を皮下投与した。投与6日後にウレタン麻酔後,体温維持装置(BWT-100, バイオリサーチセンター)上に仰臥位に固定した。頸部を正中切開し右頸動脈を約1 cm露出し,パルスドップラー血流計(モジュール;PD-20, システム;VF-1, CRYSTAL BIOTEC,プライムテック)のプローブ(DBF-10S ,同上)を頸動脈に装着し,血流速度をポリグラフ装置(365,NEC三栄)によりチャート上に記録した.プローブの末梢側で釣針状の双極電極を頸動脈に掛け,電気刺激装置(SEN-7103,日本光電)より0.3 mAの直流電流を3分間通電した。通電開始から血流が停止するまでの時間をストップウオッチで計測した(最大40分間)。また,刺激電極の下流側の頸動脈の表面温度をデジタル温度計で5分おきに計測し,記録した。血流が停止するまでの時間の平均およびSEを群ごとに計算し,生理食塩水投与群との平均値の差をDunnettの方法(non-parametric, Yukum's stat light)により検定した。また,頸動脈表面温度と直腸温との差を投与群ごとに集計し,平均およびSEを算出し,各時点での差を Dunnettの方法(parametric, 同上)により検定した。その結果、抗体投与群で用量依存的に動脈閉塞時間の延長が見られ,0.3 mg/kg群では対照群に比べ有意差が認められた(図35)。また,頸動脈表面温度の計測では,通電開始15分後の時点において抗体投与両群で対照群と有意な差が見られ,また,20,25および35分後において0.3 mg/kg投与群では対照群と有意な差が見られた。以上の結果より,本モデルにおいてF1239-6-1は0.3 mg/kgの用量で有効であることが示された。
CypHer5E標識抗GPVI抗体による解析
cF1232-37-2/CHOおよびの対照としてhuman IgG4(Calbiochem)をpH感受性蛍光試薬CypHer5E Mono NHS Ester(GEヘルスケア バイオサイエンス)を用いて、添付書類に従ってCypHer5E標識を実施した。同様にF1239-6-1およびその対照として正常マウス血漿からProsep rA(Millipore)を用いて精製したmouse IgGをCypHer5E標識した。各標識抗体濃度は吸光度測定の結果から算出した。
実施例31-3に記載の方法と同様にhGPVI-hFcに対する未標識およびCypHer5E標識cF1232-37-2/CHOのヒトGPVIに対する結合活性を評価した。なお、結合検出においては0.1% BSA含有D-PBSで2000倍希釈したヒトイムノグロブリンκ鎖抗体(Dako)を使用した。その結果、CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOは未標識cF1232-37-2/CHOとほぼ同等の結合活性を有していた(図36)。
実施例18-1に記載の方法により調製されたサルPRPを血小板の濃度が3.7×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した。希釈したPRPにCypHer5E標識cF1232-37-2/CHOあるいはCypHer5E標識human IgG4を終濃度50ないし70μg/mLとなるように添加し、室温、遮光状態で1時間反応させた。反応後の試料を、直ちにフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で測定し、血小板にinternalizeしたCypHer5E標識抗体由来の蛍光強度を評価した。CypHer5E標識cF1232-37-2/CHO添加血小板では添加抗体由来の明確な蛍光が観察されたが、CypHer5E標識human IgG4添加血小板ではbufferのみ添加した血小板と同程度の蛍光しか観察されなかった。この結果から、CypHer5E標識cF1232-37-2/CHOは血小板にinternalizeされたと考えられた(図37)。
実施例3に記載の方法と同様の方法によりペルオキシダーゼ標識F1239-6-1を作製し、これらの標識抗体と固相化rGPVI-hFcとの結合反応系に対応するマウス抗体を添加する競合法(実施例3の方法)により、ペルオキシダーゼ標識F1239-6-1と対応する未標識およびCypHer5E標識F1239-6-1のラットGPVIに対する結合活性を比較した。
その結果、CypHer5E標識F1239-6-1は未標識F1239-6-1とほぼ同等の結合活性を有していた(図38)。
3.7×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈調整したラットPRPにCypHer5E標識F1239-6-1あるいはCypHer5E標識mouse IgGを終濃度65もしくは75μg/mLとなるように添加し、室温、遮光状態で1時間反応させた。反応後の試料を、直ちにフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で測定し、血小板にinternalizeしたCypHer5E標識抗体由来の蛍光強度を評価した。CypHer5E標識F1239-6-1を添加した血小板では添加抗体由来の明確な蛍光が観察されたが、CypHer5E標識mouse IgGを添加した血小板ではbufferのみ添加した血小板と同程度の蛍光しか観察されなかった。この結果から、CypHer5E標識F1239-6-1は血小板にinternalizeされたと考えられた(図39)。
CypHer5E標識F1239-6-1あるいはCypHer5E標識mouse IgG を0.2mg/kgでWistarラットに静脈内投与し、投与前と投与3時間後にクエン酸加血100μLを実施した。採血液は2.5mM EDTA/PBSで希釈してフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で測定し、血小板にinternalizeしたCypHer5E標識抗体由来の蛍光強度を評価した。また、PE標識F1239-11-1を1μLの採血液に対して0.8μg相当添加して室温、遮光下で30分静置した。PE標識F1239-11-1のアイソタイプ対照としてPE標識マウスIgG2aκ抗体を同量添加した試料も併せて調製した。30分後、2.5mM EDTA/PBSで希釈した試料をフローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で蛍光強度を測定することにより血小板細胞膜表面上のGPVI発現量について解析した。なお、血小板の判定は前方散乱光/側方散乱光のプロット図から判断した。解析においては、PE標識マウスIgG2aκ抗体での検出結果値を非特異的結合とみなして、PE標識F1239-11-1検出結果値からPE標識マウスIgG2aκ抗体検出結果値を差し引いて、GPVI発現量変化を算出した。CypHer5E標識F1239-6-1投与ではinternalizeした抗体由来の明確な蛍光強度増加が観察されたが、CypHer5E標識mouse IgG投与では蛍光強度増加は観察されなかった。また、血小板細胞膜表面上のGPVI発現量は投与前と比較してCypHer5E標識F1239-6-1投与では大幅に減少しており、CypHer5E標識mouse IgG投与では僅かに減少していた。この結果から、CypHer5E標識F1239-6-1は血小板膜表面上GPVIと共に血小板にinternalizeされたと考えられた(図40)。
cF1232−37−2S発現プラスミドの構築
通常の2価抗体であるcF1232−37−2をH鎖およびL鎖が各々1本からなる1価抗体(「cF1232−37−2S」のように記載することがある。)として発現する為に、重鎖のヒンジ部分にある2つのシステイン残基をグリシン残基に置換した。具体的には、まず、cF1232−37−2重鎖発現プラスミドであるpTK−2571(実施例25に記載)を鋳型とし、プライマー対(IgG4-s, IgG4-m)および(IgG4-r, pEF2ce-27)でPCR反応を行った。各反応産物を少量用いてアガロースゲル電気泳動を行い、各増幅産物が目的とする断片であることを確認後、両反応産物を混合して鋳型とし、プライマー対(IgG4-m, pEF2ce-27)によるPCR反応を再度行った。この反応産物が目的とする断片であることを確認後、ゲルろ過カラムで脱塩処理を行い、制限酵素Nhe IとBam HIによる二重消化を行った。消化された産物をアガロースゲル電気泳動に供し、目的とする断片をゲルから抽出後、断片Aとした。同様に、制限酵素Nhe IとBam HIによる二重消化処理を施したpTK−2571のベクター部分を調製し断片Bとした。断片Aと断片Bを混合後、リガーゼによる連結反応を行い、目的とするcF1232−37−2S重鎖発現プラスミドを構築し、pTK−2828とした。尚、軽鎖発現プラスミドであるpTK−2572に変更は無く、そのまま発現実験に用いた。
IgG4-m 5' AGCGCTAGCACCAAGGGCCCATCCGTCTTC 3' (配列番号332)
IgG4-r 5' TGGTCCCCCAGGCCCATCAGGCCCAGCACC 3' (配列番号333)
pEF2ce-27 5' CATCAATGTATCTTATCATGTCT 3' (配列番号334)
cF1232−37−2S/COSの調製
実施例44にて作製したCF1232-37-2S発現プラスミドpTK-2828を用いて実施例1と同様の方法によりCOS細胞をトランスフェクションした。得られる遺伝子組換えF1232−37−2S抗体を含むCOS細胞培養液を、プレフィルターとして0.8μmの孔径を有するカプセルカートリッジフィルター(東洋濾紙株式会社)、本フィルターとして0.22μmの孔径を有するフルオロダインフィルター(PALL)をそれぞれ用い、室温にて清澄化し培養上清を得た。この培養上清を予めPBS−(Sigma)にて平衡化したrmp Protein A Sepharose Fast Flow(GE ヘルスケアバイオサイエンス株式会社)に吸着させ、非吸着蛋白質をPBS−にて洗浄後、非特異的に吸着している蛋白質を1.5 M NaClを含む100 mMリン酸バッファーにて溶出した。その後、特異的に結合している抗体を、100 mM グリシン−塩酸バッファー(pH 3.7)にて溶出した。溶出液はその容量を測定し、直ぐに1/10容量の1 M Tris−HCl(pH 8.5)を添加し、pHを中性に戻した。得られた標品を0.9% NaCl水溶液に対して透析し、cF1232−37−2S/COS精製標品とした。
cF1232-37-2S/COSの血小板への結合反応性
実施例18-1に記載の方法により調製されたカニクイザルおよびヒトPRPを血小板の濃度が3.75×108 cells/mLとなるようにFACSバッファーで希釈した。希釈したPRPに実施例45で作製したcF1232-37-2S/COSを終濃度10μg/mLとなるように添加し25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄した。続いて、抗ヒトIgG-FITC(Dako)を添加して遮光下25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、cF1232-37-2S/COSがサルならびにヒト血小板に結合することが確認された。
cF1232-37-2S/COSの血小板に対する作用
47−1 cF1232-37-2S/COSのヒト血小板およびカニクイザル血小板活性化作用
実施例18-1に記載の方法により、反応液に終濃度1mMのCaCl2が存在する条件でcF1232-37-2S/COSのカニクイザルおよびヒト血小板活性化作用をCD62Pの発現量を指標として終濃度1〜100μg/mLのcF1232-37-2S/COS添加条件で評価した
cF1232-37-2S/COSはいずれの濃度においてもヒト血小板あるいはカニクイザル血小板を活性化しなかった(図41)。
カニクイザルPRPを血小板の濃度が3.33×108 cells/mLとなるようにPPPで希釈した後、終濃度1〜100μg/mLのcF1232-37-2Sを添加し,37℃で5分間インキュベートした。ここに終濃度1mMのCaCl2溶液を添加し、さらに37℃で3分間インキュベートした後,終濃度1μg/mlのコラーゲン溶液を添加し、37℃で12分間イことによりコラーゲン応答性の血小板凝集を求めた。
cF1232-37-2Sは100μg/mLで濃コラーゲン惹起によるヒト血小板の凝集を阻害した(図42)。
カニクイザル(雄、約4kg)に cF1232-37-2S/COS3mg/kgにて静脈内投与し、投与後に血小板を採取し、その血小板凝集能を調べた。その結果。cF1232-37-2S 3mg/kg静脈内投与動物では投与後6時間以内にコラーゲンに対する応答性が低下し、その作用は2日間以上持続した(図43)。
F1239-6-1のFabおよびPEG化F1239-6-1Fab
48−1 F1239−6−1のFab作製
F1239−6−1のFabを作製するために、精製F1239−6−1をMetalloendopeptidaseにて処理した。すなわち、精製F1239−6−1をPBS(pH7.4)バッファー中へ交換し、Metalloendopeptidaseを抗体:酵素=3000:1(重量比)になるように添加し、25℃4時間反応した。反応終了時には終濃度30mMとなるようにEDTAを添加した。
次にこれを実施例21−2と同様な方法でFabの精製および分析を行った。
F1239−6−1Fab抗体のPEG化抗体を作製するために、上記で得られたF1239−6−1Fab抗体を実施例31−1と同様な方法で行った。
次にPEG化抗体の精製を行った。未修飾の抗体とPEG化抗体を分離する目的で、PEG化処理を行った抗体を疎水クロマト Macro−Prep Methyl HIC(Bio−Rad)に供した。純度をアクリルアミドゲル上で分析することにより評価し、抗体濃度はBovine IgGをスタンダードに用いたBradford法(Bio−Rad)により算出した。
F1239−6−1 FabのPEG化抗体のラットGPVIに対する結合活性を実施例2に記載の方法と同様の方法によりELISA法にて確認を行った。その結果、F1239−6−1Fab抗体とF1239−6−1FabのPEG化抗体はほぼ同等の結合活性を有していた(図44)。
2.0×108 cells/mLとなるようにFACSバッファーで希釈したラットPRPに実施例48−1、48−2で作製したPEG化F1239-6-1Fabを終濃度38μg/mLとなるように添加し25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄した。続いて、抗マウスIgs-FITC(Dako)を添加して遮光下25℃で30分静置した後、FACSバッファーで血小板を洗浄し、フローサイトメーターCYTOMICS FC500(BECKMAN COULTER)で血小板の蛍光強度を測定した。その結果、PEG化F1239-6-1Fabがラット血小板に結合することが確認された。
カニクイザル出血時間測定(3)高用量投与
出血時間の測定にあたっては先ずカニクイザルの体重を測定した後、血液学的パラメータ、凝固系パラメータ,血小板機能に異常がないことを確認し、3.0mg/kg又は10mg/kgのcF1232-37-2/CHOを皮下に投与してその48時間後に実施例28に記載の方法と同様の方法により出血時間を測定した。
cF1232-37-2/CHO投与動物においては投与前と比較して2倍以上の出血時間の延長は認められなかった(図45)。
ラット出血時間測定試験
体重が均一になるように群分けをした非絶食SDラット(雄、Crj:CD (SD) IGS, 8w)に0.3〜3mg/kgのF1239-6-1もしくは生理食塩水を1mL/kgの容量で皮下投与した。投与6日後に切創作製の15分前にペントバルビタールの腹腔内投与(50mg/kg, 1mL/kg)により麻酔した。尾の先端から5〜6cmの背側に動脈および静脈を避け、剃刀を用いて切創を作製した。尾の先端12cmを垂直に垂らし、作製した切創に30秒間隔でろ紙(ADVANTEC, 1×3cm)をあて、血液が付着しなくなるまでの時間を測定し出血時間とした。
抗体投与動物についてはいずれの用量においても生理食塩水投与群と比べて出血時間が2倍以上に延長することはなかった(図46)。陽性対象として用いたクロピドグレルでは経口投与後2時間の時点で10mg/kg以上を投与した動物において出血時間が5倍以上に延長していた。なお、クロピドグレル投与では投与2時間後の時点において、10mg/kg以上を投与した動物の血小板はコラーゲンに対する応答性が低下し、30mg/kgを投与した動物の血小板はコラーゲンおよびADPに対する応答性が低下しており、上記で用いた用量は、ほぼ通常用いられる有効用量の範囲にあると考えられる。
[ 125 I]標識cF1232−37−2/CHOの調製
実施例25において作製したcF1232−37−2/CHOを用いて、[125I]標識cF1232−37−2/CHOを調製した。すなわち、cF1232−37−2/CHOをN−succinimidyl−3−(4−hydroxy−3−[125I]iodophenyl propionate([125I]−Bolton−Hunter Reagent−monoiodinated)と反応後、ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製し、標識抗体を得た。得られた標識抗体は実施例2に記載のEIA法により濃度算出した。
cF1232−37−2/CHOのヒト血小板およびサル血小板に対する解離定数の測定
解離定数はHomologous competitive binding法により算出した。すなわち、洗浄血小板を一定量の標識抗体および可変量のcF1232−37−2/CHO(未標識抗体)と反応後、血小板に結合した標識抗体量を測定し、添加した標識抗体量と未標識抗体量を元にcF1232−37−2/CHOの血小板に対する解離定数および血小板当たりの抗体最大結合数を算出した。各パラメータの算出には以下の式を適用した。
= Bmax×[Hot]÷([Hot]+[Cold]+KD)+NS
・Total Binding: 血小板当たりの標識抗体結合数
・Bmax: 血小板当たりの抗体最大結合数
・[Hot]: 標識抗体濃度(M)
・[Cold]: 未標識抗体濃度(M)
・KD: 解離定数(M)
・NS: 血小板当たりの非特異結合抗体数
解析の結果、ヒト血小板に対しては、KD=1.7±0.4×10-8 (M)、血小板あたりの抗体の最大結合数=925±254(n=3、値はいずれもmean ± S.E.)であった。サル血小板に対しては、KD=2.0±0.1×10-8 (M)、血小板あたりの抗体の最大結合数=1007±64.4(n=3、mean ± S.E.)であった。
Claims (5)
- 以下の(1)ないし(8)、
(1) ヒト、サル、マウスまたはラットの血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)のループ
の1又は2以上が他種の動物の対応するループのアミノ酸配列によって置換されて
いる血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体であって、該他種の動物がヒト、サ
ル、マウスまたはラットである、GPVI変異体;
(2) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)
である上記(1)に記載のGPVI変異体;
(3) 他種の動物が、サル、マウスまたはラットである上記(1)に記載のGPVI変
異体;
(4) GPVI変異体が、配列番号137ないし151の何れかのアミノ酸配列を含有
するポリペプチドである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のGPVI変
異体;
(5) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、非ヒト動物の血小板膜糖蛋白質VI(G
PVI)である上記(1)又は(3)のいずれかに記載のGPVI変異体;
(6) 非ヒト動物が、サル、マウスまたはラットである上記(5)に記載のGPVI変
異体;
(7) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体が、さらにGPVI以外のポリペプチ
ドを含有している上記(1)から(6)のいずれかに記載のGPVI変異体;
(8) GPVI以外のポリペプチドが、Fcのアミノ酸配列を有するポリペプチドであ
る上記(7)に記載のGPVI変異体;
のいずれかに記載のGPVI変異体の少なくとも何れか一つとの反応性を測定する工程を含む、抗GPVI抗体又はその抗原結合性断片のスクリーニング方法。 - 以下の(1)ないし(8)、
(1) ヒト、サル、マウスまたはラットの血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)のループ
の1又は2以上が他種の動物の対応するループのアミノ酸配列によって置換されて
いる血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体であって、該他種の動物がヒト、サ
ル、マウスまたはラットである、GPVI変異体;
(2) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)
である上記(1)に記載のGPVI変異体;
(3) 他種の動物が、サル、マウスまたはラットである上記(1)に記載のGPVI変
異体;
(4) GPVI変異体が、配列番号137ないし151の何れかのアミノ酸配列を含有
するポリペプチドである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のGPVI変
異体;
(5) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、非ヒト動物の血小板膜糖蛋白質VI(G
PVI)である上記(1)又は(3)のいずれかに記載のGPVI変異体;
(6) 非ヒト動物が、サル、マウスまたはラットである上記(5)に記載のGPVI変
異体;
(7) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体が、さらにGPVI以外のポリペプチ
ドを含有している上記(1)から(6)のいずれかに記載のGPVI変異体;
(8) GPVI以外のポリペプチドが、Fcのアミノ酸配列を有するポリペプチドであ
る上記(7)に記載のGPVI変異体;
のいずれかに記載のGPVI変異体の少なくとも何れか一つとの反応性を測定する工程を含む、抗GPVI抗体又はその抗原結合性断片の認識領域の同定方法。 - 以下の(1)ないし(8)、
(1) ヒト、サル、マウスまたはラットの血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)のループ
の1又は2以上が他種の動物の対応するループのアミノ酸配列によって置換されて
いる血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体であって、該他種の動物がヒト、サ
ル、マウスまたはラットである、GPVI変異体;
(2) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、ヒト血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)
である上記(1)に記載のGPVI変異体;
(3) 他種の動物が、サル、マウスまたはラットである上記(1)に記載のGPVI変
異体;
(4) GPVI変異体が、配列番号137ないし151の何れかのアミノ酸配列を含有
するポリペプチドである、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のGPVI変
異体;
(5) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)が、非ヒト動物の血小板膜糖蛋白質VI(G
PVI)である上記(1)又は(3)のいずれかに記載のGPVI変異体;
(6) 非ヒト動物が、サル、マウスまたはラットである上記(5)に記載のGPVI変
異体;
(7) 血小板膜糖蛋白質VI(GPVI)変異体が、さらにGPVI以外のポリペプチ
ドを含有している上記(1)から(6)のいずれかに記載のGPVI変異体;
(8) GPVI以外のポリペプチドが、Fcのアミノ酸配列を有するポリペプチドであ
る上記(7)に記載のGPVI変異体;
のいずれかに記載のGPVI変異体の少なくとも何れか一つを抗体の検出用または同定用の抗原として用いることを特徴とする、抗GPVI抗体又はその抗原結合性断片の製造方法。 - 以下の少なくとも何れか一つの工程を含む、請求項3に記載の製造方法:
a)血小板を活性化させる作用を測定する工程、
b)生体内における血小板減少を惹起する作用を測定する工程、または、
c)血小板と接触させることにより血小板膜上のGPVIを少なくとも部分的に消失させる活性を測定する工程。 - 以下の少なくとも何れか一つの工程を含む、請求項3又は4の何れかに記載の製造方法:
a)抗体産生細胞を回収する工程、
b)抗体産生細胞をクローン化する工程、
c)抗体産生細胞の核酸を回収する工程、または、
d)抗GPVI抗体もしくはその抗原結合性断片またはそれらの誘導体を回収する工程。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007078649A JP5224707B2 (ja) | 2005-04-28 | 2007-03-26 | 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 |
Applications Claiming Priority (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005132665 | 2005-04-28 | ||
JP2005132665 | 2005-04-28 | ||
JP2005348534 | 2005-12-01 | ||
JP2005348534 | 2005-12-01 | ||
PCT/JP2006/301818 WO2006117910A1 (ja) | 2005-04-28 | 2006-01-27 | 抗血小板膜糖蛋白質ⅵモノクローナル抗体 |
JPPCT/JP2006/301818 | 2006-01-27 | ||
JP2007078649A JP5224707B2 (ja) | 2005-04-28 | 2007-03-26 | 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007514878A Division JP4185555B2 (ja) | 2005-04-28 | 2006-04-28 | 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007295926A JP2007295926A (ja) | 2007-11-15 |
JP2007295926A5 JP2007295926A5 (ja) | 2011-05-19 |
JP5224707B2 true JP5224707B2 (ja) | 2013-07-03 |
Family
ID=38765971
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007078649A Expired - Fee Related JP5224707B2 (ja) | 2005-04-28 | 2007-03-26 | 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5224707B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009284771A (ja) * | 2008-05-27 | 2009-12-10 | Takara Bio Inc | 抗体産生細胞の作製方法 |
KR20120102125A (ko) * | 2009-12-18 | 2012-09-17 | 사노피 | Gpvi에 대한 신규한 길항제 항체 및 그의 fab 단편 및 그의 용도 |
Family Cites Families (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2112166B1 (en) * | 1998-12-23 | 2018-11-21 | Pfizer Inc. | Human monoclonal antibodies to ctla-4 |
KR100453877B1 (ko) * | 2001-07-26 | 2004-10-20 | 메덱스젠 주식회사 | 연쇄체화에 의한 면역 글로블린 융합 단백질의 제조 방법 및 이 방법에 의해 제조된 TNFR/Fc 융합 단백질, 상기 단백질을 코딩하는 DNA, 상기 DNA를 포함하는벡터, 및 상기 벡터에 의한 형질전환체 |
KR20100120246A (ko) * | 2001-11-14 | 2010-11-12 | 센토코 오르토 바이오테크 인코포레이티드 | 항 il-6 항체, 조성물, 방법 및 용도 |
EP1369128A1 (en) * | 2002-06-07 | 2003-12-10 | Procorde GmbH | Inhibitors of glycoprotein VI and their therapeutic use |
ES2744275T3 (es) * | 2002-10-17 | 2020-02-24 | Genmab As | Anticuerpos monoclonales humanos contra CD20 para su uso en el tratamiento de esclerosis múltiple |
KR100999316B1 (ko) * | 2003-06-09 | 2010-12-10 | 와이어쓰 엘엘씨 | cDNA로부터의 비분절 네가티브 쇄 RNA 바이러스의회수를 위한 개선된 방법 |
US7348001B2 (en) * | 2003-08-12 | 2008-03-25 | Dyax Corp. | Tie1-binding ligands |
-
2007
- 2007-03-26 JP JP2007078649A patent/JP5224707B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2007295926A (ja) | 2007-11-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4185555B2 (ja) | 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 | |
EP1876240B1 (en) | Anti-human platelet membrane glycoprotein vi monoclonal antibody | |
JP5843783B2 (ja) | GPVIに対する新規アンタゴニスト抗体および該抗体のFabフラグメントならびにこれらの使用 | |
US8541565B2 (en) | Polynucleotide encoding anti-CD14 antibody fusion protein | |
JP5184367B2 (ja) | 抗アルファ2インテグリン抗体およびその使用 | |
US8236315B2 (en) | Humanized antibodies specific for von Willebrand factor | |
US20070025992A1 (en) | Monoclonal antibody against platelet membrane glycoprotein VI | |
JP5728225B2 (ja) | 完全ヒト抗vap−1抗体、vap−1結合断片、核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、及び、薬学的組成物 | |
AU2021202612B2 (en) | Inhibition of platelet aggregation using anti-human GPVI antibodies | |
KR101604877B1 (ko) | 항adam-15항체 및 그의 이용 | |
JP5224707B2 (ja) | 抗血小板膜糖蛋白質viモノクローナル抗体 | |
JP2022516072A (ja) | 抗pd-l1結合タンパク質およびその使用方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090423 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090423 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20100305 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20100305 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110329 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110906 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20111107 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20120313 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120511 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20121120 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130121 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130219 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130312 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160322 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |