JP5219535B2 - 自律移動車椅子 - Google Patents
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Description
こうした事情から、少ない人材でも効率的に介護や支援が行えるように、ある程度の自律移動が可能な知的車椅子の開発が求められている。
この車椅子は、測域センサを用いて介護者の位置を常に把握し、介護者との距離がLより大きくなれば速度を落とし、逆に小さくなれば速度を上げる速度制御を実施して、介護者に同行している。
また、車椅子近辺の一定範囲が“不感領域”に設定されており、介護者が不感領域にいるときは、介護者への追従が停止される。そのため、介護者は、車椅子の後方から、車椅子の脇を通って、前方に進出したり、車椅子の脇に寄り添って車椅子利用者とおしゃべりしながら歩いたりすることができる。
岩瀬、 中村、 久野"介護者の意図に沿って動くロボット車椅子"画像センシングシンポジウム公演論文集、 pp.493-496, 2005
例えば、車椅子利用者が美術館で絵を鑑賞する場合には、介護者は、他の鑑賞者の妨げにならないように、鑑賞に適する位置まで車椅子を押し進め、絵の方に車椅子の向きを変える必要があり、この操作を会場の各絵について行わなければならない。そのため、介護者は、かなりの負担が強いられる。
この車椅子は、介護者の顔向きや注視対象物を識別し、その識別結果に基づいて自律的な動きを行う。介護者が展示物を注視しているとき、移動制御手段は、展示物の鑑賞に適した位置へ移動するように車椅子の移動を制御する。
この車椅子は、美術館等において、介護者が展示物の方を向けば、その展示物の鑑賞に適する位置に自動的に移動することができる。
こうした移動制御により、車椅子は鑑賞中の介護者の些細な動きに追従しなくなる。そのため、車椅子の不安定な動きが抑制できる。
この車椅子は、介護者が複数である場合に、介護者をグループとして認識し、車椅子に最も近い介護者の動きに追随する。
図1は、この自律移動車椅子の機能を表すブロック図、図2、図17、図20は、この自律移動車椅子の構成及び動作を模式的に示す図、図4は、自律移動車椅子の構成を示すブロック図、図16、図18、図19、図21は、この自律移動車椅子の動作を示すフロー図、また、図22は、他の実施形態に係る自律移動車椅子の機能を表すブロック図である。
図3は、実験に使用した自律移動車椅子の外観を示している。ビデオカメラ16は、車椅子利用者や車椅子本体によって視界が遮られないように、車椅子の後部に支柱を立てて配置している。また、レーザ測域センサ15は、この支柱に一台と、車椅子の前方に一台の合計二台を設置している。
なお、この車椅子では、介護者が車椅子の右側または後方に付くことを想定して、ビデオカメラ16及びレーザ測域センサ15を車椅子の右側に配置している。
なお、自律移動車椅子10は、この他に、運転操作用のジョイスティックや電源なども有しているが、本発明と直接関係しないこれらの構成は、ここでは省略している。
この動作を行うために、自律移動車椅子10は、図1に示すように、車椅子の周辺の状況を検出する周辺環境検出手段21と、介護者50の位置を検出する介護者位置検出手段22と、介護者50の顔の向きを検出する介護者顔向き検出手段23と、介護者50が注視している対象物を検出する介護者注視対象検出手段24と、車椅子の移動を制御する移動制御手段25とを備えている。
顔画像の検出には、幾つかの方法が知られている。例えば、図9のフロー図に示すように、ビデオカメラ16の映像から、矩形特徴を利用した識別器を用いて顔に相当する顔矩形を検出し(ステップ1)、また、ビデオカメラ16の映像から、肌色領域を検出し(ステップ2)、顔矩形と肌色領域とが少なくとも一部で重なる場合に(ステップ3)、それを顔画像として検出することができる(ステップ4)。
肌色領域の検出(ステップ2)は、図10に示すように、ビデオカメラ16の映像から、RGBカラースペース(R、G、B各8ビット)での値が、
R>95、G>40、B>20
Max{R.G.B}−Min{R.G.B}>15
|R−G|>15
R>G、R>B
の条件を満たす肌色の画素の範囲を抽出し(ステップ21)、この肌色部分のフレーム間差分を算出して、フレーム間差分の絶対値の総和が閾値を超えるか否かを識別し(ステップ22)、フレーム間差分が閾値以下の肌色部分は、肌色の壁や机等が抽出されたものとして排除し(ステップ24)、フレーム間差分の絶対値の総和が閾値を超える肌色部分を人物の顔の可能性がある肌色領域として検出する(ステップ23)。
図11(a)には、画像から検出された顔矩形711を示している。図11(b)(c)(d)に示すように、この顔矩形711の水平方向の中心線712は、鼻の位置に一致している。また、図11(b)(c)(d)には、肌色領域の水平方向の境界線を713として示している。
画像処理装置18は、こうした処理により、ビデオカメラ16の映像から顔画像の検出と顔向きの検出とを継続的に行う。
図13に示すように、介護者50の検出位置をベクトルr、顔向きの検出角度をθとすると、介護者50が注視する方向は、レーザ測域センサ15から見て、次の方向となる。
即ち、レーザ測域センサ15で検出した周辺環境(実線)をベクトル(−r)だけ平行移動して点線の位置を求め、レーザ測域センサ15からθ方向にある点線上の位置を求める。この点線上の位置をベクトルrだけ移動した周辺環境(実線)上の位置の方向が、レーザ測域センサ15から見た介護者50の注視方向となる。
周辺環境検出手段21は、図14に示すように、レーザ測域センサ15の検出領域211における環境を検出する。なお、212は、検出領域211内の不感領域を示している。検出領域211内に移動する介護者50を検出すると、介護者50の位置が不感領域212の外である場合に、自律移動車椅子10は、図2に示すように、介護者50の動きに追随して移動する。なお、この明細書では、車椅子が介護者50の後に付き従う場合だけでなく、図2のように、車椅子が介護者50の前を行く場合も“追随”と言うことにする。
自律移動車椅子10の移動制御手段25は、介護者50の動きに追随するとき、介護者50と一定距離を保つように車椅子の移動を制御する。つまり、介護者50が前進すれば、自律移動車椅子10も前進し、介護者50が右に曲がれば、自律移動車椅子10も右に曲がり、介護者50が後退すれば、自律移動車椅子10も後退する。
ただし、介護者50が自律移動車椅子10を追い越すために不感領域212を通り抜ける場合や、介護者50が車椅子利用者40とおしゃべりしながら自律移動車椅子10と並んで移動する場合(このとき介護者50は不感領域212内を移動する。)に、移動制御手段25は、介護者50との距離を一定に保つ制御を停止する。
(1)非常に近くに障害物が検出されたときは、移動を停止する。
(2)なるべく障害物の少ない方向へ回避移動する。
(3)図15に示すように、自律移動車椅子10の前方検出領域2111及び後方検出領域2112の両方で障害物(壁)213が検出されたときは、前方検出領域2111での障害物213までの距離d1が後方検出領域2112での障害物213までの距離d2と等しくなる方向に移動する。(壁沿い移動)
(4)介護者50の動きに追随して移動する。
移動制御手段25は、障害物を回避する際に、番号の小さい行動を優先して実行する。
移動制御手段25は、介護者50が停止した場合に(ステップ31でYES)、自律移動車椅子10の移動を止めて(ステップ33)、介護者50の顔向きの変化を識別する(ステップ34)。介護者50が一定時間以上同じ方向を向いているときは(ステップ34でYES)、介護者50の注視対象物を検出する(ステップ37)。
また、ステップ31で介護者50が移動し続けているときは、介護者50に追随する(ステップ32)。また、一旦停止しても直ぐに再移動を開始したときは(ステップ35でYES)、介護者50が所定距離移動した後(ステップ36でYES)、介護者50に追随する(ステップ32)。
なお、介護者50が所定距離移動してから、介護者50への追随を再開するのは、介護者50の些細な動作に追従した場合の自律移動車椅子10の不安定な動きを回避するためである。また、ステップ34において、介護者50の顔向きが一定時間以上同じ方向を向くことを要件としているのも同様の趣旨である。
図18の手順では、絵画鑑賞に適する位置を算出し(ステップ131)、その位置に自律移動車椅子10の移動可能なスペースが有るか否かを識別する(ステップ132)。スペースが有れば、その位置(例えば介護者50に隣接する位置)に移動する(ステップ133)。また、その位置に他の鑑賞者が居て移動スペースが無い場合は、その位置に最も近い移動可能な位置へ移動する(ステップ134)。
また、介護者位置検出手段22が、絵画60の方向にさらに近付く介護者50を検出すると(ステップ135でYES)、移動制御手段25は、介護者50と同じ距離まで絵画60に接近するように制御する(ステップ136)。
また、介護者50が、隣に展示された絵画の方に移動した場合は(ステップ137)、介護者50が所定距離移動した後(ステップ138)、介護者50に追随する(ステップ139)。次いで、ステップ31に移行する。
即ち、図20に示すように、移動制御手段25は、介護者50の方向を向くように自律移動車椅子10の回転を制御する(ステップ231)。介護者50の顔向きが変わり(ステップ232でYES)、介護者50が移動を再開すると(ステップ233でYES)、介護者50が所定距離移動した後(ステップ234)、介護者50に追随する(ステップ235)。次いで、ステップ31に移行する。
また、ステップ232において顔向きを変えた介護者50が、移動せずに別の方向を見続けた場合は(ステップ236でYES)、ステップ37に移行する。
即ち、移動制御手段25は、車椅子利用者40が介護者50及び他の人物の双方と会話し易いように、自律移動車椅子10の位置及び向きを制御する(ステップ331)。その後の手順(ステップ332〜336)は、図19のフロー図におけるステップ232〜236の手順と同じである。
また、ステップ37において、介護者注視対象検出手段24が検出した介護者50の注視対象物が、その他のものである場合には(ステップ41)、移動制御手段25は、その注視対象物に応じた自律移動車椅子10の移動制御を行う(ステップ42)。
例えば、介護者50が見つめている方向に進行可能な通路が検出されたときは、介護者50が、その通路への進入を考えていると認識できる。この場合、移動制御手段25は、その通路の方向に自律移動車椅子10の進路を取る。
介護者移動予測手段26は、
(1)車椅子を滑らかに動かすためのごく短期的な、少し後の時点(0.5秒後程度まで)の介護者の移動位置に対する予測、
(2)車椅子の振る舞いを安定させ、より自律的に見せるための介護者の行動に対する予測、
のいずれか、または、その両方を行う。
また、(2)の行動予測は、ビデオカメラ16で撮影された周囲の状況や、介護者注視対象検出手段24により検出された注視対象物に基づいて介護者の行動が予測される。例えば、介護者が絵画作品に近づいたときは、「もしかすると、この作品をじっくり見るかもしれない」と判断して追随速度を遅くし、介護者が立ち止まった際の車椅子の「鑑賞に適した位置」への移動に備える。介護者が立ち止まらず、絵画作品の傍を通過した場合には、追随速度を早くし、介護者との一定距離を保つ。これにより、車椅子がより自律的に行動しているように見える。
また、車椅子の右側を歩いている介護者が左折しようとするとき、介護者移動予測手段26が、左折通路の存在や、そちらを注視する介護者の顔向きなどから、介護者の左折を予測し、それに基づいて車椅子の速度や向きを制御することにより、介護者の左折が車椅子により妨げられる事態が回避される。
また、介護者が右折しようとする場合にも、介護者移動予測手段26がそれを左折の場合と同様に予測して、それに基づいて車椅子の移動を制御することで、車椅子の急激な方向転換が避けられる。
また、介護者が車椅子の左側を歩いていて、右折や左折する場合も同様である。
また、介護者と車椅子とが並んで進んでいる通路の幅が先の方で狭くなっている場合には、介護者移動予測手段26が、一列になって進行する介護者の動きを予測し、それに基づいて車椅子の速度を減速することで、介護者が先導する一列の形で狭い箇所を通過することが可能になる。
グループの介護者への追随は、車椅子に最も近い介護者に対して追随する。また、介護者のグループの支援を受けて車椅子利用者が絵画を鑑賞する場合は、介護者のグループが絵画作品の適切な鑑賞位置に先着して車椅子を迎え入れてくれることが期待できるから、絵画作品の鑑賞位置に移動スペースが発見できなくても、介護者位置検出手段22が検出した介護者の位置に自律移動車椅子10を移動するように制御する。
また、自律移動車椅子10の介護者顔向き検出手段23が、介護者のグループの中に、一定時間以上、自律移動車椅子10の方向に顔を向けている介護者を検出した場合には、移動制御手段25は、その介護者の方に自律移動車椅子10の向きを変える。
また、ここでは、介護者の顔向きから注視対象物を検出しているが、介護者の顔画像から視線の方向を求め、視線の方向から介護者の注視対象物を検出するようにしても良い。
また、介護者が車椅子利用者や他の人と会話しているか否かは、介護者の顔の向きだけでなく、介護者の顔画像から口の動きを観察して識別するようにしても良い。
また、自律移動車椅子10にマイクを取り付けて音声を認識し、会話状況を検出するようにしても良い。
また、ここでは、介護者が右側あるいは後方を歩くことを基本にしてビデオカメラ及びレーザ測域センサの車椅子への取付け位置を設定したが、車椅子に取り付けるビデオカメラやレーザ測域センサの数を増やしたり、あるいは、広視野(角度)をカバーするセンサやカメラを使用したりすることにより、介護者が車椅子の左右あるいは後方のどこにいても車椅子の適切な移動制御が可能になる。
11 メモリ
12 モータ制御ボード
13 車輪モータ
14 センサ入力/出力ボード
15 レーザ測域センサ
16 ビデオカメラ
17 CPU
18 画像処理装置
21 周辺環境検出手段
22 介護者位置検出手段
23 介護者顔向き検出手段
24 介護者注視対象検出手段
25 移動制御手段
26 介護者移動予測手段
40 車椅子利用者
50 介護者
51 顔向き
52 一定距離
60 絵画
211 レーザ測域センサ検出領域
213 壁
711 顔矩形
712 顔矩形中心線
713 肌色領域境界線
Claims (5)
- 介護者の動作に応じて自律的に移動する車椅子であって、
前記介護者の位置及び当該位置の変化を検出する介護者位置検出手段と、
前記介護者の顔向きを継続的に検出する介護者顔向き検出手段と、
前記介護者の注視対象物を検出する介護者注視対象検出手段と、
前記介護者の位置の変化を予測する介護者移動予測手段と、
少なくとも前記介護者顔向き検出手段または介護者注視対象検出手段の検出結果に基づいて前記車椅子の移動を制御するとともに、前記介護者移動予測手段の予測結果を加味して前記車椅子の移動を制御する移動制御手段と、
を備え、
前記介護者位置検出手段が前記介護者の停止を検出し、前記介護者顔向き検出手段が、前記停止した介護者の顔向きが一定方向を所定時間以上向いている状態を検出し、前記介護者注視対象検出手段が前記注視対象物として展示物を検出したとき、前記移動制御手段は、前記展示物を鑑賞する介護者と並ぶ位置、または、前記展示物と正対する位置へ移動するように前記車椅子の移動を制御することを特徴とする自律移動車椅子。 - 請求項1に記載の自律移動車椅子であって、前記移動制御手段は、前記介護者と並ぶ位置が塞がっているとき、前記介護者に最も近い移動可能な位置へ移動するように前記車椅子の移動を制御することを特徴とする自律移動車椅子。
- 請求項1または2に記載の自律移動車椅子であって、前記介護者位置検出手段が前記展示物にさらに接近する前記介護者を検出したとき、前記移動制御手段は、前記展示物までの距離が前記展示物から前記介護者までの距離と同じになるように前記車椅子を前記展示物に近付けることを特徴とする自律移動車椅子。
- 請求項1から3のいずれかに記載の自律移動車椅子であって、前記介護者位置検出手段が移動する前記介護者を検出したとき、前記移動制御手段は、前記介護者の移動距離が所定距離を超えた場合に、前記介護者に追随するように前記車椅子の移動を制御することを特徴とする自律移動車椅子。
- 請求項1から4のいずれかに記載の自律移動車椅子であって、前記介護者位置検出手段が複数の介護者の位置及び当該位置の変化を検出し、前記介護者顔向き検出手段が前記複数の介護者の顔向きを検出し、前記介護者注視対象検出手段が車椅子に最も近い介護者の注視対象物を検出し、前記移動制御手段が前記車椅子に最も近い介護者に追随するように前記車椅子の移動を制御することを特徴とする自律移動車椅子。
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