JP5217615B2 - 水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
当該技術には、難燃性、寸法安定性、強度強化等の物性の向上及び防腐・防虫性の付与を目的としたものがある一方で、寸法安定性、強度強化等の物性の向上と難燃性とを共に具備させるようにした技術も提案されている。
当該前者の難燃性等を単独主題目的とした特許文献として、例えば、特開平1−186302号公報、特開平5−116107号公報、特開平5−77207号公報、特開平5−220712号公報、特開平8−73212号公報、特開平8−116801号公報、特開2001−303060号公報、特開2002−18812号公報、特開2003−253123号公報、特開2004−122612号公報、特開2006−110965号公報、特開2006−181752号公報、特開2007−90839号公報、特開2008−181752号公報等がある。
又、当該後者の技術を開示した特許文献として、例えば、特開平4−82704号公報、特開2000−141318号公報がある。
当該前者の技術も後者の技術にも、油性系と水系とがあり、油性系は、火災、溶剤の揮発などの危険を伴い、危険回避の為の装置・設備費が掛かる等の欠点があるのに対して、水系は、こうした欠点が無い等の利点がある。
前者の技術で、前掲した特開2003−253123号公報には、有機ケイ素化合物とホウ素を含有する化合物及び/又はリンを含有する化合物と水とを含有してなる水系の難燃処理組成物が記載されている。又、特開2006−181752号公報には、不飽和カルボン酸水溶液に重合開始剤またはさらにエステル化触媒としてリン酸塩を添加した水溶液を木材に注入し、加熱処理をすることを特徴とした木材の改質処理方法及びアクリル酸とN,N−メチレンビスアクリルアミドをモル比で10:1とした水溶液に浸せき処理する木材の改質処理方法が記載されている。
当該後者の技術の前掲した特開平4−82704号公報には、(1)アクリルアミド類と、(2)グアニジン類および尿素のうちの少なくとも1種と、(3)リン酸、リン化合物、ホウ酸、ホウ酸塩、ハロゲン化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種と、(4)重合開始剤とを、水に溶解した状態で原料木材に含浸させた後、前記原料木材に対して適当な温度条件で加熱して、木材組織内に不溶性の硬化樹脂を生成・定着させる改質木材の製法が記載されている。当該改質木材の製法は、水系の難燃性と寸法安定、強度強化等の物性の向上とを具備させるようにした技術であり、水溶性のアクリルアミド類を、重合開始剤の下に、加熱重合させ、木材組織内に不溶性の硬化樹脂を生成・定着させることと、木材にグアニジン類等の難燃剤を含浸させることとを、同時に行っている技術で、即ち、水系で、難燃性と、強度強化等の物性の向上に寄与するところの木材と樹脂(プラスチックス)との複合体であるWPC(Wood Plastics Combination)とを兼備させたものである。
又、当該後者の技術の前掲した特開2000−141318号公報には、 難燃性物質及びアクリル系重合体が木質内に含浸され、硬化したアクリル系重合体により木質内で難燃性物質を包囲してなる難燃性重合体含浸木材が記載されている。当該技術は、上記の特開平4−82704号公報に記載の技術が、難燃剤とアクリルアミド類とを同時に水に溶解させて、木材内部に難燃剤とアクリルアミド類の重合体とを共に含浸させるという技術であるのに対して、難燃性物質と水とを混合した難燃性液体と、溶剤に可溶化したアクリル樹脂を含むアクリル系液体混合物と別々に作成し、別々に木材に含浸させる点で異なっており、又、製法的にも、難燃性物質と水とを混合して作った当該難燃性液体を木材中に含浸させた後に、木材中に、溶剤中に可溶化したアクリル樹脂を含む当該アクリル系液体混合物を含浸するという製法が採用されており、即ち、難燃性液体の含浸後に上記のアクリル系液体混合物を含浸するという2段階の含浸工程を経るようになっていて、その点、前記の特開平4−82704号公報に記載の技術とは異なっている。
前述のように、木材の改質技術では、油性系と水系とがあり、油性系は、火災、溶剤の揮発などの危険が伴う等の欠点があるのに対して、水系は、こうした欠点が無い等の利点がある一方で当該水系の木材の改質技術を達成するには困難を伴い、例えば、当該水系の場合には、その重合性モノマ−として、水に可溶の重合性モノマ−が必要であり、前記の特開平4−82704号公報では、水に可溶の重合性モノマ−としてアクリルアミド類を使用しているが、疎水性のモノマ−を使用する場合とは異なっていて、当該水に可溶の重合性モノマ−を木材の細胞壁内部まで含浸させることが可能ではあるが、その重合温度が低い場合には、水等により木材外部にしみ出してしまうなどの欠点がある。又、水に可溶の重合性モノマ−は、重合課程などで蒸発するという問題がある。
この場合、温度を上げ、木材成分の親水性水酸基と縮合反応を起こさせて当該水酸基を疎水化させて木材の寸法安定化を向上させることができるが、木材が膨潤し、損傷を受け、木材にひび割れなどを生じたりする。
当該蒸発や木材外部へのしみ出しを抑制する為に、前記の特開2000−141318号公報では、 アクリル樹脂を使用して、当該アクリル樹脂とアクリル酸等のモノマ−との混合物として、当該蒸発や木材外部へのしみ出しを抑制している。
又、前述したように、特開2006−181752号公報では、アクリル酸等の不飽和カルボン酸水溶液に、更に、N,N−メチレンビスアクリルアミドを添加して、当該木材の膨潤(ASE)などを抑制している。
本発明者は、先に、前掲した特開2002−18812号公報で、水系のWPC技術を提案した。当該水系のWPC技術によれば、水系であるので、発熱温度範囲を抑えることができ、木材の内部割れ、表面・小口割れがなく、乾燥時に反り・ねじれが生じず、含浸が均一化し、改質しても木材の自然の風合い、木材特有の匂いをそのまま残存させることができ、従来水系で困難であった針葉樹材についても改質できる等の利点を奏することができた。
しかるに、当該公報による技術は、水系のWPC技術のみを目的としたもので、難燃性を兼備してはいなかった。
そこで、当該公報による水系のWPC技術を基礎として、当該技術のより一層の改善を図ると共に、難燃性を兼備させることを検討したのだが、難燃剤の種類によっては分離、沈降が起こったりすること、広葉樹では、難燃剤が含浸していくが、針葉樹では含浸が難しいこと、木材に変色が起こる場合があること、水系WPCで重合触媒と共に難燃剤を使用すると水溶液にゲル化、分離・沈降が起こり、冷蔵保存安定性に難点を包蔵すること、難燃剤の種類によっては水に添加すると、木材からの溶脱が起こり雨の当たるような屋外での使用には難点を包蔵すること、水に添加すると分離・ゲル化が起こる等の各種の問題に遭遇した。
本発明の他の目的や新規な特徴については本件明細書及び図面の記載からも明らかになるであろう。
(請求項1) (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液100重量部に対して水溶性難燃剤5〜50重量部を添加すると共に、重合触媒を添加し、pHを4〜8に調整してなる木材又は木質材と当該重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−の重合による樹脂との木材・プラスチックス複合体の原系溶液を、木材又は木質材に含浸後に加熱して、当該原系中の前記(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−を当該原系中に含有された重合触媒により重合させることを特徴とする水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
(請求項2)(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液が、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−10〜40重量%と(C)水90〜60重量%とからなると共に、当該(B)水溶性のグリコ−ル類を、当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−及び(C)水との合計100重量部に対して0.5〜1重量部配合してなることを特徴とする、請求項1に記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
(請求項3) 水溶性難燃剤が、 有機系難燃剤の2種以上からなり、当該有機系難燃剤が、酸性を示す有機系難燃剤とアルカリ性を示す有機系難燃剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
(請求項4) 酸性を示す有機系難燃剤が、酸性を示すグアニル尿素系難燃剤で、アルカリ性を示す有機系難燃剤が、アルカリ性を示すグアニジン系難燃剤であることを特徴とする、請求項3に記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
(請求項5) (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液が、当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−及び/又は(B)水溶性のグリコ−ル類を水に可溶化させる可溶化剤を含有してなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
(請求項6) (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−が、親水基としてOH基を有すると共に、アクリル酸系原子団を有してなる重合性モノマ−であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
(請求項7)(B)水溶性のグリコ−ル類が、ポリエチレングリコ−ルメタクリレ−トであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
オリゴマ−又はプレポリマ−としては、例えば、平均分子量が200〜5000の上記例示した(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性オリゴマ−又はプレポリマ−が挙げられる。
当該(B)水溶性のグリコ−ル類は、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−や水溶性難燃剤の蒸発を防ぎ、当該水に可溶の重合性モノマ−や水溶性難燃剤の木材外部へのしみ出しを防ぐことができる。又、木材を柔らかくし、寸法安定性を向上させることができる。更には、木材の変色を抑えることができる。
当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液において、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−10〜40重量%と(C)水90〜60重量%とからなるようにする。
当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−が、10重量%未満では、強度強化等の物性の向上や寸法安定性に寄与し難く、一方、40重量%を超えても当該強度強化等の物性の向上等の効果が飽和し、又、コスト高になる。当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−10〜40重量%の範囲は、強度強化等の物性の向上等の効果を落とさないで、木材(木質材)中の樹脂分を抑えることができ、コスト的に有利となる。
当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−は、前記の本発明者が先になした特開2002−18812号公報に記載の技術では、2種以上としたが、難燃剤などとの関係から1種とした。
当該(B)水溶性のグリコ−ル類が、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−及び(C)水との合計100重量部に対して0.5重量部未満では、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−や水溶性難燃剤の蒸発を防ぎ、当該水に可溶の重合性モノマ−や水溶性難燃剤の木材外部へのしみ出しを防ぐことや寸法安定性を向上させることが難しくなり、一方、1重量部を超えても当該効果が飽和するし、又、木材を柔らかくし過ぎ、寸法安定性を阻害する。
水溶性のグリコ−ル類は、アクリル樹脂などの油性系のものとは異なり、溶剤を使用しなくても済む。又、アクリルアミド類のようにアンモニア臭を発生したりしない。
当該水溶性溶剤の例としては、メタノ−ル、エタノ−ル、ブタノ−ル、イソプロパノ−ル等のアルコ−ル類、エ−テル類、エステル類等の有機溶媒が挙げられる。
当該可溶化剤は、当該水溶液を均一化させることができればその使用量に制限はないが、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水との合計100重量部に対して0.5〜5重量部配合する。
本発明で使用される水溶性難燃剤としては、各種のものを使用できるが、各種水溶性無機系難燃剤や水溶性有機系難燃剤が使用できる。
この場合、水溶性無機系難燃剤と水溶性有機系難燃剤とを併用するとよい。又、水溶性無機系難燃剤や水溶性有機系難燃剤のみ使用する場合には、各々水溶性無機系難燃剤なら2種以上又水溶性有機系難燃剤なら2種以上とすることがよい。
特に、水溶性有機系難燃剤を使用する場合には、当該有機系難燃剤として、酸性を示す有機系難燃剤とアルカリ性を示す有機系難燃剤を併用することが好ましい。当該酸性を示す有機系難燃剤とアルカリ性を示す有機系難燃剤との併用により、上記した(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液に難燃剤や重合触媒を添加した時に、当該水溶液を適当pHに調整でき、又、水溶液のゲル化、分離・沈降を抑制し、当該水溶液の冷却貯蔵保存安定性を向上させることができる。
酸性を示す有機系難燃剤としてグアニル尿素系難燃剤が例示でき、又、アルカリ性を示す有機系難燃剤としてグアニジン系難燃剤が例示できる。
当該グアニル尿素系難燃剤としては、例えば、燐酸グアニル尿素が挙げられる。
当該グアニジン系難燃剤としては、例えば、グアニジンとスルファミン酸と燐酸から形成される塩が挙げられ、具体例としては、スルファミン酸グアニジン、燐酸グアニジンが挙げられる。
上記水溶性無機系難燃剤として、硼酸系難燃剤は、溶剤を使用しないで済み、水溶性で、火災時に有害分解ガスを発生することなく、難燃性の他に防腐・防虫性をも付与できる。
当該硼酸系難燃剤としては、例えば、硼砂(四硼酸ナトリウム、Na2B4O7・10H2O、その8水和物)、硼酸及びその塩、メタ硼酸及びその塩、ピロ硼酸及びその塩、四硼酸及びその塩、無水硼酸Na、硼酸ナトリウム、硼酸ナトリウム・5H2O、八硼酸及びその塩等が挙げられる。
燐酸系難燃剤を使用して水に添加すると分離・ゲル化が起こるので、当該燐酸系難燃剤の使用量を少なくして、当該燐酸系難燃剤と上記の硼酸系難燃剤とを併用して水に添加するとよく、例えば、燐酸系難燃剤:硼酸系難燃剤=1〜3:9〜7の比率で添加するとよい。
当該燐酸系難燃剤の例としては、第一リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)、第二リン酸アンモニウム((NH4)2HPO4 )やリン酸尿素(H3PO4 ・(NH2)2CO)等のリン酸塩が挙げられる。
更に、硼酸系難燃剤特に硼砂(例えば、四硼酸ナトリウム、Na2B4O7・10H2O、その8水和物)を使用するような場合には、当該水溶性無機系難燃剤と前記例示のグアニジン系難燃剤及びグアニル尿素系難燃剤のような水溶性有機系難燃剤とを併用するとよい。当該水溶性無機系難燃剤と水溶性有機系難燃剤との併用割合は、同様に、無機系難燃剤:有機系難燃剤=1〜3:9〜7の比率で添加するとよい。
当該水溶性難燃剤が、5重量部未満では、難燃効果を奏し難く、一方、50重量部を超えると、分離、沈降が起こったり、広葉樹では、難燃剤が含浸していくが、針葉樹ではその含浸が難しくなったり、木材に変色が起こる場合がある。
当該重合触媒としては、例えば、ベンゾイルパ−オキサイド、クメンハイドロパ−オキサイド、パラメタンハイドロパ−オキサイド、タ−シャリーブチルハイドロパ−オキサイド、メチルエチルケトンパ−オキサイド、タ−シャリ−ブチルパ−オキシベンゾエ−ト等の有機過酸化物よりなる重合開始剤を使用することができるが、これらに限定されるものではなく、広くは、重合触媒として、酸化剤単独又は酸化剤と還元剤の組み合わせからなるもの、又はアゾ系誘導体が使用できる。当該重合開始剤は、水溶性のものがよい。酸化剤としては、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの過硫酸塩が望ましく、還元剤としては、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジエチルアミノエタノ−ル、ジメチルアミノプロパノ−ル、ピペラジン、モルホリン等のアミン類、第一鉄塩、亜硫酸塩、チオ尿素、エリソルビン酸ナトリウム、ロンガリット等があり、これらは二種以上併用してもよい。また、アゾ系誘導体としては、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等がある。
重合開始剤に加えて、必要に応じて重合促進剤を使用できる。当該重合促進剤として、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルパラトルイジン、メチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、ジブチルチオ尿素、ジメチルアニリン、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、バナジルアセチルアセトン等を例示できる。
重合触媒の下に、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−を加熱重合させて木材組織内に不溶性の硬化樹脂を生成させる。
当該水溶液のpHを4〜8に調整するとよく、当該pHが4未満では、水溶液にゲル化、分離・沈降が起こり、冷却貯蔵保存安定性に難点を包蔵し、木材に変色が起こり易い。一方、pHが8を超えると、同様に、水溶液にゲル化、分離・沈降が起こり、冷却貯蔵保存安定性に難点を包蔵し、木材に変色が起こり易い。
当該pH調整剤としては、例えば、氷酢酸、NaOHが挙げられる。
真空にして当該原系溶液を木材又は木質材に注入後に、常圧に戻し含浸を行えばよい。
当該真空度(真空圧)は、1Torr〜25Torrが好ましい。真空度が、1Torr未満では、上記注入が円滑に行われないし、一方、25Torrを超えると、原系溶液中の(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類成分の注入量が過剰となり、木材又は木質材中の重合後のこれらによる樹脂分が過剰になり過ぎる。当該真空度(真空圧)の1Torr〜25Torr範囲とすることにより、樹脂分の量の調整が可能となる。本発明では、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−を、10〜40重量%としてあり、当該樹脂分を低く抑えており、当該真空度(真空圧)の調節により、当該樹脂分を低く抑えることが可能である。
放置後に、含浸材を乾燥させる。乾燥温度は、例えば、80℃プラスマイナス1℃で、乾燥時間120プラスマイナス1時間とすればよい。乾燥により重合反応が行われ、又、木材の含水率を下げれる。
木材中の重合樹脂から、当該乾燥により、その水分を充分除き、又、木材中の水分を十分に除くように、乾燥を行う。乾燥温度と共に、その乾燥時間を設定する。
当該乾燥時間は、上記の乾燥温度などとの関係から、120時間プラスマイナス1時間が好ましい。
尚、難燃性評価、曲げ試験、硬さ試験及び木材への重合体の固定率の測定及び重合時の発熱温度の測定は次の方法に準拠した。
試験方法
(1)難燃性評価方法:
JIS−A1321に準拠して、難燃3級の合否を判定をした。
(2)曲げ試験
JIS.Z2113木材の曲げ試験方法に準じて行った。
(3)硬さ試験
バ−コ−ル硬度計を使用し、針入度法により、10個数の平均値から求めた。
(4)木材への重合体の固定率
[木材中の重合後ポリマ−率]を[木材中の重合前ポリマ−率]で除算して求めた。
(5)重合時の発熱温度の測定
アロメルクロメル熱電対を使用して、木材の3地点の発熱温度を測定し、その平均値を採用した。
実施例1
ポリエチレングリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト 1重量部
水 69重量部
四硼酸ナトリウム(Na2B4O7・10H2O) 10重量部
2,5−ジメチル(ベンゾイルパ−オキサイド)ヘキサン 0.05重量部
からなり、pHを氷酢酸で4に調整してなる原系溶液を含浸槽に入れ、この原系溶液に、
杉材辺材(寸法:300LmmX90WmmX25Tmm、含水率:25〜30%、高周波含水率計で測定)を完全に浸漬しタンクに挿入密閉し真空減圧を行う。真空度は水銀マノメ−タ15Torrとして、真空時間60分で真空操作を行い、注入後、常圧に戻し、常圧含浸を60分行い、含浸材を含浸液より取り出し、120分放置した。
熱風乾燥を80℃で120時間行い、恒量に達した時点を重合完結とした。
得られた改質杉材について、難燃性評価、曲げ試験、硬さ試験及び木材への重合体の固定率の測定を行った。
又、アロメルクロメル熱電対を使用して、木材の3地点の発熱温度を測定し、その平均値を採用し、重合時の発熱温度の測定を行った。
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度は880kgf/cm2、硬さ試験による硬さは78、木材への重合体の固定率は78%であり、重合時の杉材中心部の平均温度は75℃で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例3
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例4
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例5
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例6
燐酸グアニル尿素 1重量部
スルファミン酸グアニジン 4重量部
とした以外は、実施例1と同様に、改質杉材を作成し、難燃性評価、曲げ試験、硬さ試験及び木材への重合体の固定率及び重合時の発熱温度の測定を行った。
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例7
スルファミン酸グアニジン 8重量部
とした以外は、実施例1と同様に、改質杉材を作成し、難燃性評価、曲げ試験、硬さ試験及び木材への重合体の固定率及び重合時の発熱温度の測定を行った。
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例8
スルファミン酸グアニジン 15重量部
とした以外は、実施例1と同様に、改質杉材を作成し、難燃性評価、曲げ試験、硬さ試験及び木材への重合体の固定率の測定を行い、又、アロメルクロメル熱電対を使用して、木及び木材への重合体の固定率及び重合時の発熱温度の測定を行った。
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
実施例9
四硼酸ナトリウム(Na2B4O7・10H2O) 7重量部
第一リン酸アンモニウム(NH4H2PO4) 3重量部
とした以外は、実施例1と同様に、改質杉材を作成し、難燃性評価、曲げ試験、硬さ試験及び木材への重合体の固定率及び重合時の発熱温度の測定を行った。
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」に合格した。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
比較例1
難燃性テストの結果、この改質木材は「難燃3級」を満足し得なかった。
曲げ試験による曲げ強度、硬さ試験による硬さ、木材への重合体の固定率は、実施例1とほぼ同様であった。重合時の杉材中心部の平均温度(℃)も同様で、重合後の材の形状外観を観察すると、反り割れが無く、変色も無かった。又、重合後の木材に、杉材の匂いがあり、アンモニア臭、ホルマリン臭はなかった。
Claims (7)
- (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液100重量部に対して水溶性難燃剤5〜50重量部を添加すると共に、重合触媒を添加し、pHを4〜8に調整してなる木材又は木質材と当該重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−の重合による樹脂との木材・プラスチックス複合体の原系溶液を、木材又は木質材に含浸後に加熱して、当該原系中の前記(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−を当該原系中に含有された重合触媒により重合させることを特徴とする水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
- (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液が、(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−10〜40重量%と(C)水90〜60重量%とからなると共に、当該(B)水溶性のグリコ−ル類を、当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−及び(C)水との合計100重量部に対して0.5〜1重量部配合してなることを特徴とする、請求項1に記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
- 水溶性難燃剤が、 有機系難燃剤の2種以上からなり、当該有機系難燃剤が、酸性を示す有機系難燃剤とアルカリ性を示す有機系難燃剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
- 酸性を示す有機系難燃剤が、酸性を示すグアニル尿素系難燃剤で、アルカリ性を示す有機系難燃剤が、アルカリ性を示すグアニジン系難燃剤であることを特徴とする、請求項3に記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
- (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−と(B)水溶性のグリコ−ル類と(C)水とからなる水溶液が、当該(A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−及び/又は(B)水溶性のグリコ−ル類を水に可溶化させる可溶化剤を含有してなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
- (A)ビニル基と親水基とを有する水溶性の重合性モノマ−、オリゴマ−又はプレポリマ−が、親水基としてOH基を有すると共に、アクリル酸系原子団を有してなる重合性モノマ−であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
- (B)水溶性のグリコ−ル類が、ポリエチレングリコ−ルメタクリレ−トであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載された水系の難燃性を具備した木材・プラスチックス複合体の製造方法。
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