JP5216401B2 - ゴム製品の射出成形用ノズル - Google Patents

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本発明は、主としてゴム製品の加硫成形に用いられる射出成形装置におけるゴム製品の射出成形用ノズルに関するものである。
自動車用ゴム製品をはじめ一般工業用精密ゴム製品を射出成形により、十分な精度及び融合部強度を有する製品を得ようとすると、製品キャビティ内へ流動性の良好な状態で注入射出し、かつ、可及的に原料ゴムの流動中にスコーチ(早期加硫)が発生しないようにする必要がある。しかし、流動性の良好な状態で注入するために材料射出温度を相対的に高温とすると、製品キャビティゲートにゴム材料が到達する前にスコーチが発生しやすい。また、流動性が低いと、キャビティ内の流動速度が遅く、融合する前にスコーチが発生して製品表面に融合ライン(ウェルドマーク)が発生し易くなる。
そこで、融合強度を得るために、相対的に高圧(高速)で射出成形をする必要がある。しかし、高圧で射出成形しようとすると、高温にして相対的に粘度を低下させる必要がある。射出温度を高温にした状態で製品キャビティ内に射出すると、成形材料がキャビティ内でスコーチにより材料流動抵抗が増大して、融合部接合・強度不良、更には充填不良(ショートショット)等が発生しやすい。すなわち、不良成形品が多量に発生する。
この点を解決する技術として、特許文献1には、射出ポットは、射出ノズルと連続する先端部がプランジャの先端形状に対応する形状を備えたプランジャ嵌合部とし、射出ノズル及び射出ポットのプランジャ嵌合部の各内面に断熱被覆層を形成したものがみられる。この断熱被覆層は、通常、セラミック溶射被覆層で形成する。例えば、アルミナ/チタニアを50/50として80μmの総厚み(アンダーコートとトップコート)で表面研磨したものとする。これにより、射出ポット内の溶融化ゴムの射出ポット壁面からの放熱が遮断されるため、上記溶融化ゴムのポット内における温度又は粘度が安定化を容易に達成することができる、と記載されている。
また、金型からの温度伝搬を防止する手段として、射出ノズルではないけれども、スプルーブッシュに熱伝導性の悪いセラミックまたはステンレススチールを用いることが、古くから提案されている(例えば、特許文献2)。
更に、近時は特許文献3にみられるように、主としてゴム製品等の成形品を加硫成形するための射出成形金型にはコールドランナー装置が設けられており、このコールドランナー装置のノズル構造として、コールドランナー装置を備える射出成形金型が、成形用のキャビティを形成する開閉可能な上下両型よりなる金型と、その上型の上面に断熱材層を介して締結され、射出機ノズルから射出されるゴム材料をキャビティに給送するコールドランナーを形成するコールドランナーブロックとを有し、コールドランナーブロックの下面に、ゴム材料をコールドランナーからキャビティに注入するためのノズルを構成するノズルブロックが付設されている。金型の上下両型には、金型を加熱するための加熱媒体を通す流通路が設けられ、一方、コールドランナーブロックには、ブロックを構成する上下のランナープレートに冷却媒体を通す流通路が設けられるとともに、その下面に付設されたノズルブロックにも冷却媒体を通す流通路が設けられている。加えて、金型からの熱を遮断するために、ノズルブロックは、上型の凹所において周囲に所要の空間を保有して、ノズル先端部のみを上型におけるキャビティへの注入口の部分に対接させるようにしたものが提案されている。
特開2005−279949号公報([0020][0038]) 特公昭42−1194号公報(第2ページ、左欄) 特開2004−243745号公報([0004][0005])
これら上記の特許文献でみられるように、ノズルブロックの温度上昇を防ぎ、スコーチの発生による製品不良を低減するために、金型からの熱伝導を遮断する手段として、(a)射出ノズル及び射出ポットのプランジャ嵌合部の各内面に断熱被覆層のセラミック溶射被覆層を形成したり、(b)ノズルブロックに熱伝導性の悪いセラミックまたはステンレススチールを用いたり、あるいは、(c)ノズルブロックのノズル周辺に冷却媒体を通す流通路を設けたりする手段が講じられている。
しかしながら、断熱被覆材は無機物のセラミックスであり成形加工性や溶射被覆加工性に欠けるし、熱伝導性が悪いとはいってもステンレススチールでは金属である以上断熱効率は決して良好ではなく、また、冷却媒体の流通路をノズルブロック内に形成することは、製造コストの上昇につながるものであった。
本発明は、これら従来技術にみられるノズルブロックの温度上昇防止手段の更なる改良を目指して、これまで全く考えられていなかった耐熱有機材料に断熱材料を求め、プラスチック材料をはじめとする耐熱有機材料で解決が可能か否かにつき種々検討した結果、耐熱性プラスチック等であれば、加工が容易で、かつノズルブロックの温度上昇を防ぎ、スコーチの発生による製品不良を低減する目的の達成ができる技術として確立したものである。
すなわち、本発明の構成は、ゴム射出成形機の射出筒先端に取付ける金属製ノズルであって、この金属製ノズルのノズル本体内面を射出口を残して内径を射出口径より大にして懐部を形成し、形成された懐部に射出原料ゴムが通過するノズル内面が耐熱有機材料筒状断熱体で形成されてなるゴム製品の射出成形用ノズルである。
ここで、耐熱有機材料筒状断熱体は、射出筒へのノズル取付け基部からノズル射出口近傍までのノズル本体の内面懐部に、その内径よりやや大きい外径を有する耐熱有機材料の棒状成形体を圧入した後、ノズル内壁を切削加工により耐熱有機材料筒状断熱体を形成する。あるいは、耐熱有機材料筒状断熱体がプラスチック材料の場合は、そのプラスチック筒状断熱体そのものを予め射出成形などでノズル内壁まで仕上げた筒状成形体としてからノズル本体の懐部へ圧入して筒状断熱体とすることもできる。
また、このプラスチック筒状断熱体は、前記ノズル本体の内面懐部に、直接プラスチック射出成形により筒状成形体を形成してもよい。この場合は金型内にノズル本体を装着してプラスチック筒状断熱体の形状のキャビティとして、プラスチック筒状断熱体を構成するプラスチック溶融物を射出成形一体化することもできる。
筒状成形体に用いるプラスチック筒状断熱体のプラスチック材料は、ノズルを通過する射出原料ゴムがそのスコーチ温度より高温に達しない温度を保持する断熱効果のある耐熱性プラスチックである。通常連続使用温度が100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましいのは150℃以上である。更に好ましくは170℃以上で、これより高温に耐えるプラスチックであればよい。使用し得る具体的なプラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PEТ)100〜150℃、ポリアミド(PA、ナイロン)120〜150℃、ポリエーテルイミド(PEI)170℃、ポリフェニレンサルファイド(PPS)220℃、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)250℃、ポリ四フッ化エチレン(PТFE)260℃、ポリイミド(PI)304℃、ポリベンゾイミダゾール(PBI)310℃等が挙げられる。
これら熱可塑性樹脂(プラスチック)のほか、フエノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化型ポリイミドのような熱硬化性樹脂や木質材料も耐熱有機材料筒状断熱体として使用可能である。木質材料の場合は、硬質の樫の木や栗の木などが好ましく、更に耐熱性樹脂を含浸させたものが有用である。
本発明のゴム製品の射出成形用ノズルは、以上のような構成であるので、ノズル内ゴム流路の断熱性が良好となり通過する原料ゴムが金型からの熱影響を受け難くなりノズル先端部でのスコーチがなく加硫ゴムの不良対策に効果がある。また、原料ゴム生地と耐熱有機材料筒状断熱体、特にPEEKやPТFEなどのプラスチックとの離形性が良好であるためゴムが円滑に流れて停滞しなく、従来のノズルではできなかった加硫スピードの速い原料ゴムの射出成形が可能となった。
また、ノズル構造も気体や液体の冷媒通路を設けないので簡単であり、これら冷媒の供給装置の設置の必要もなくなり、製造設備の低減に役立つ。
以下、図面によって、本発明のゴム製品の射出成形用ノズルを具体的に説明する。図1は本発明のノズルを装着した縦型ゴム射出成形機の略構造を示す側面図である。図2は本発明のノズルの構造例を示す縦断面図である。
図1から明らかなように、通常の縦型ゴム射出成形機は、その射出筒1の下方にノズル2が取り付けられ、固定盤3と稼働盤4との間に上断熱盤5、上熱盤6及び下断熱盤7、下熱盤8を介して金型10が設けられた構造である。
金型10は上金型11と下金型12とからなり、上金型11は上熱盤6で加熱され、下金型12は下熱盤8で加熱される。金型10内上熱盤6の上部はノズル2先端と接するスプルーゲート13が設けられ耐熱性のスプルーブッシング14が嵌められており、ここから金型10内の上金型11のスプルー15、ランナー16、分岐したゲート17から上下金型の境界に設けられた各キャビティ18へ通じている。
本発明のゴム製品の射出成形用ノズル2はゴム射出成形機の射出筒1先端に取付けるノズルであって、図2の断面図に示すように、金属製のノズル本体21内面を射出口22を残して内径を射出口径より大にして懐部23を形成し、形成された懐部23に射出原料ゴムが通過するノズル内面をプラスチック筒状断熱体24で形成されてなるノズルである。
ここで、耐熱有機材料筒状断熱体はプラスチック筒状断熱体24であり、この筒状断熱体は、射出筒へのノズル取付け基部25からノズル射出口22近傍までのノズル本体21内面懐部23に、この懐部23内径よりやや大きい外径を有する棒状成形体を圧入した後、ノズル内壁26を切削加工により形成する。あるいは、予め射出成形などでノズル内壁26まで仕上げた筒状成形体を圧入してプラスチック筒状断熱体24とすることもできる。
また、このプラスチック筒状断熱体24は、射出筒1へのノズル取付け基部25からノズル射出口22近傍までのノズル本体21の内面懐部23に、直接プラスチック射出成形により筒状成形体を形成してもよい。この場合は金型内にノズル本体を装着してプラスチック筒状断熱体の形状のキャビティとして、プラスチック筒状断熱体24を構成するプラスチック溶融物を射出成形一体化するのである。
筒状成形体に用いるプラスチック筒状断熱体24のプラスチック材料は、ノズル1を通過する射出原料ゴムがそのスコーチ温度より高温に達しない温度を保持する断熱効果のある耐熱性プラスチックであり、ここでは連続耐熱温度が250℃以上のPEEKやPPSが良好であった。以下、実施例によって更に具体的に本発明のゴム製品の射出成形用ノズルの構成を説明する。
実施例1〜6
耐熱有機材料筒状断熱体として表1に記載の耐熱プラスチックのPE、ナイロン、PVDF、PPS、PEEK及びPIにつき実施した。ノズル構造は図2に示すとおりで大きさは85mm×45φ、ノズル穴径5φである。射出筒へのノズル取付け基部からノズル射出口近傍までのノズル本体の内面懐部として20φに刳り抜き、その内径よりやや大きい外径を有するプラスチックの棒状成形体を圧入した後、ノズル内壁を切削加工により図2に示す耐熱筒状断熱体を形成した。
これらプラスチック筒状断熱体を図1に示す縦型ゴム射出成形機を用いて、従来汎用の天然ゴム加硫組成物を金型温度170℃でマフラハンガー(長径80mm,短径55mm,厚み20mm)を成形した。成形時のゴム焼けの発生状況、ノズルの耐摩耗性、不良率、加工性のそれぞれと、これから得られる全体の付加価値度を4段階で評価した。結果を表1に示す。
Figure 0005216401
表1の結果から明らかなように、本発明の耐熱有機材料筒状断熱体を挿入したノズルは
これまでの常識、すなわち、射出成形用ノズルにプラスチックのような射出成形材料を用いるなどは考えも及ばないことを打破したものである。すなわち、実際に本発明の方法によってこれらプラスチックス等樹脂を用いてみると、断熱性や耐摩耗性に優れており、特にゴム射出成形では十分な耐久性と良好な加工性が得られ、その結果、製品の不良率が著しく低減されて、高い付加価値度を示した。
実施例7〜10
本実施例はプラスチック材料に代えて熱硬化性樹脂あるいは木質材料を用い、実施例1と同様の方法で図2の構造のノズルとした。これらは、耐熱性プラスチックより加工性にやや問題があるが、本発明の目的達成は十分可能であった。
実施例7のフェノール樹脂使用ノズルでの射出成形条件は、金型温度170〜190℃、シリンダ温度90〜100℃、射出圧力70Mpaで行った。結果をまとめて表2に示す。
Figure 0005216401
比較例1,2
比較例1,2として、従来の金属製ノズル及びこのノズル内部にアルミナ/チタニアのセラミックス粉体を約100μmの厚みに溶射被覆層を形成したものの実施データによる各ノズルの性能評価を表2の後段にまとめた。プラスチック等は金属と比べ熱伝導率が1/70と低く、それだけ外部温度影響が少ない特徴がでている。また、プラスチックは金属に比べ強度は劣るが金型先端部に金属を使用し樹脂の欠点を補っているから機械的性質には問題はない。比較例2は金属ノズルに比べてアルミナ/チタニア被覆層の存在で熱伝導率は0.5付近であってプラスチックより高い値であるうえ薄層であるから、耐摩耗性を除きそれほど大きな改良は期待できないのである。
表3は実施例5のPEEK耐熱プラスチック筒状体を挿入した金属ノズルと比較例1の金属ノズルを用いて各100ショットの射出成形実験の結果から不良発生項目に示した製品の加硫ゴム混入率とエアー混入によるピンホール発生率を調べたものである。この結果から明らかなように、不良発生率は従来に比べて86%も低減した。言い換えれば、本発明ノズルを使用することにより、材料及び作業工数は金属ノズルに比べて大幅に改善される結果となった。
Figure 0005216401
表4には、表3と同様の比較を焼け易いゴム材料として、天然ゴム加硫組成物を用い、成形サイクルの時間短縮効果と材料ロスから対比して得られたもので、数値単位は従来ノズルの成形サイクル時間を100とした場合のPEEKノズルの時間は90となることを意味するので、この時間短縮効果は10%低減となる。また、材料ロス低減も同じで、加硫(焼けやすい)しやすい5gを毎ショットごと捨てずにすみ、したがって、材料ロスがゼロとなり、生産性向上率が100%に達した。これにより、前者で10%,後者では100%の生産性向上率が期待できることが予測される。すなわち、ゴム生地での加硫速度の速い材料は、製品取り出し後に毎回ノズル内での焼けゴムを除去しなければ次の製品は不良となるが、本発明ノズルを使用することによりノズルでの焼けゴム除去工数がほとんど無くなり、成形サイクルが短縮され生産性向上となることを表4は示している。更に、上述のように、従来の金属ノズルではショット毎にノズル部の焼けゴムが発生するが、本発明ノズルを使用すれば、焼けゴム対策がほぼ完全にでき、大きな材料費低減にもつながることが判明したのである。
Figure 0005216401
本発明のノズルを装着した縦型ゴム射出成形機の略構造を示す側面図である。 本発明のノズルの構造例を示す縦断面図である。
符号の説明
1 射出筒
2 ノズル
3 固定盤
4 稼働盤
5 上断熱盤
6 上熱盤
7 下断熱盤
8 下熱盤
10 金型
11 上金型
12 下金型
21 ノズル本体
22 射出口
23 ノズル本体内面懐部
24 プラスチック筒状断熱体
25 ノズル取付け基部
26 ノズル内壁

Claims (6)

  1. ゴム射出成形機の射出筒先端に取付ける金属製ノズルであって、該金属製ノズルのノズル本体内面を射出口を残して内径を射出口径より大にして懐部を形成し、該懐部に射出原料ゴムが通過するノズル内面が耐熱有機材料筒状断熱体で形成されてなるゴム製品の射出成形用ノズル。
  2. 射出筒へのノズル取付け基部からノズル射出口近傍までのノズル本体の内面懐部に、その内径よりやや大きい外径を有する耐熱有機材料の棒状成形体を圧入した後、ノズル内壁を切削加工により耐熱有機材料筒状断熱体を形成してなる請求項1記載のゴム製品の射出成形用ノズル。
  3. 耐熱有機材料筒状断熱体はプラスチック材料からなり、射出筒へのノズル取付け基部からノズル射出口近傍までのノズル本体内面懐部に、予め成形した筒状成形体を圧入してなる請求項1記載のゴム製品の射出成形用ノズル。
  4. 耐熱有機材料筒状断熱体はプラスチック材料からなり、射出筒へのノズル取付け基部からノズル射出口近傍までのノズル本体内面に、プラスチック射出成形により筒状成形体を形成してなる請求項1記載のゴム製品の射出成形用ノズル。
  5. 耐熱有機材料筒状断熱体のプラスチック材料は、射出原料ゴムのスコーチ温度より高温に達しない温度を保持する耐熱性プラスチックで、連続使用温度が100℃以上である請求項1記載のゴム製品の射出成形用ノズル。
  6. 耐熱有機材料筒状断熱体は、プラスチック材料に代えて熱硬化性樹脂あるいは木質材料を用いる請求項3記載のゴム製品の射出成形用ノズル。
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