JP5214873B2 - 鼻マスク - Google Patents

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Description

本発明は、睡眠時無呼吸症候群の治療に適するCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法、換気不全に適するNIPPV(Nasal Intermittent Positive Pressure Ventilation)療法などに使用する鼻マスクに関するものである。
睡眠時無呼吸症候群の治療法として最も効果的なもののひとつに経鼻式持続陽圧呼吸法(CPAP)があり、この治療法では睡眠時に使用者の鼻孔部に39〜196Pa程度の陽圧ガスが供給される呼吸補助装置が採用される。また、換気不全の治療法として最も効果的なもののひとつに経鼻式間欠陽圧換気呼吸法(NIPPV)があり、使用者の鼻孔部に39〜235Pa程度の間欠的な陽圧ガスが供給される呼吸補助装置が採用される。
これらの装置を使用して治療を行う場合は、使用者の鼻孔部へ持続的な陽圧を供給するために、陽圧ガスを導くホース、呼吸用鼻マスク、呼吸用鼻マスクを所定の位置に保持するためのフレーム、および呼吸用鼻マスクを顔面へ密着させるヘッドギアにて構成される鼻マスクシステムを使用する。
患者の呼吸に供する陽圧ガスは、適切に制御されるブロア等を有する上記の呼吸補助装置で生成された後、ホースを経由して呼吸用鼻マスクの内部へ導入されて、患者が吸入可能となる。
ところでこのように患者が吸入を行う陽圧ガスは、睡眠中を含む長時間にわたり患者が吸入を行うものであるので、極度に乾燥あるいは低温のガスを吸入することにより患者が苦痛を感じることを防いだり、患者の咽頭部や鼻腔部の過度の乾燥を防ぐために、加温あるいは加湿、及びその併用がなされることが多い。加温は呼吸補助装置内部に設けられたヒータ等を含む加温部にて行われ、加湿は呼吸補助装置内部あるいは外部に設けられた精製水の蒸散を用いる加湿装置にて行われる構成が典型的である。
ところが上記のように加湿あるいは加温がなされた陽圧ガスが呼吸補助装置からホース及び呼吸用鼻マスクへ吐出されると、多くの場合に陽圧ガスよりも低い温度である室内空気(外気)に接して温度が低下しているホースの壁部あるいは呼吸用鼻マスク壁部にこの陽圧ガスが接し、接した陽圧ガスの部分に含まれる湿潤成分である水分がこれら壁部の内面に結露し、水滴が生じる。
ホースの内部で生じた水滴はホースの内部に溜まったり、そこから呼吸用鼻マスクへ流れ込む可能性がある。
また、このようにして呼吸用鼻マスクへ流れ込んだ水滴、あるいは呼吸用鼻マスク内部で同様に結露現象に基づき生じた水滴は、マスクが接する患者の顔面に流れて患者が不快感を感じたり、衛生面での問題が生じる恐れがあった。
さらに、上記した経鼻式持続陽圧呼吸法(CPAP)は睡眠中の患者に対して行われるものであるから、呼吸用鼻マスク内面で結露し成長した水滴が重力により内面から離れて横臥状態にある患者の顔面に落下して患者の覚醒を招く恐れがあった。
このため、睡眠中の気道閉塞を陽圧ガスにより防止することで気道閉塞に起因する血中酸素の低下に伴う睡眠中の覚醒と、それに伴う健康上の課題を解決しようとする、すなわち不要かつ有害な覚醒を抑制して十分な深さの睡眠を実現しようとするCPAPの治療効果を阻害する恐れがあった。
これらの課題を解決するため、従来より次のような構成が提案されてきた。
まず、特開昭60−92772号公報(特許文献1)には、呼吸用マスクへ吸入ガスを供給する導管である呼吸回路の内面に結露して生じた水滴が呼吸用マスクへ移動することを防止するために、この呼吸回路の途中に水滴トラップ用のカップを設けた構成が開示されている。
また、特開2005−261858号公報(特許文献2)には、同じく呼吸回路において内面における結露現象そのものを防止するために、温水を導通させる小径管、あるいは電熱線をこの呼吸回路の外周に巻きつけて加温を行う構成が開示されている。
さらに、特開2002−52082号公報(特許文献3)には、無呼吸症候群の治療に用いる医療用マスクの外側に結露防止具を設け、この結露防止具に形成されている発熱体が発熱することにより医療用マスクの外側の大気を加熱することによって、医療用マスクの内側の結露発生を防止する構成が開示されている。
しかしながら、呼吸回路(ホース)内面に発生する水滴の対処を行おうとする上記の特許文献1、及び特許文献2に開示の構成は、先に示した鼻マスクの内面に結露現象により発生した水滴が患者の顔面に落下して覚醒させてしまう、という課題の解決に対しては用をなさなかった。
さらに、上記特許文献3に記載の構成はたしかに鼻マスク内面に発生する水滴への対処を意図したものの、ヒータによりマスク本体を加熱することから、顔面をマスクに接する患者に不快感を与える恐れがある。また、樹脂材で形成されることが多いマスクの各部材に対する繰り返しの温度ショックを加えることによる材質の劣化や信頼性の低下の恐れもある。さらに、治療を行う度に患者の頭部への装着と取り外し動作を繰り返すマスクシステムにおいては、電熱線の疲労断線とそれに伴う漏電の可能性も否定できず、およそ真の解決には程遠いものであった。
特開昭60−92772号公報 特開2005−261858号公報 特開2002−52082号公報
以上に述べた従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、呼吸用気体を患者へ供給する鼻マスクの構成において、この呼吸用気体に含まれる湿潤成分によってマスク内面に結露して生じる水滴が患者の顔面へ落下することにより覚醒や不快感を生じせしめ、この結果治療の効果が阻害されることを防止する鼻マスクを簡潔且つ高信頼性の構成により提供することである。
本発明は、上記の課題を解決するために、下記する(1)〜(12)のいずれかに記載の構成を有する鼻マスクを提供する。
(1)使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、少なくとも使用者の鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
その全部または一部を、断熱性を有する材で構成したことを特徴とする鼻マスク。
(2)使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、少なくとも使用者の鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
鼻に面する内壁部と、外気に接する外壁部との間に、断熱層を設けたことを特徴とする鼻マスク。
(3)断熱層は空気層であることを特徴とする(2)に記載の鼻マスク。
(4)断熱層は真空層であることを特徴とする(2)に記載の鼻マスク。
(5)断熱層は断熱性を有する材にてなることを特徴とする(2)に記載の鼻マスク。
(6)使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、横臥状態にある使用者の少なくとも鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
当該鼻マスクの内面部にある水滴がこの内面部を離れて使用者の顔へ落下することなく当該内面部表面上を重力と水滴の内面表面への吸着力によって下方へ移動するよう、当該内面部表面に設けられた水滴案内溝を有することを特徴とする鼻マスク。
(7)使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、使用者の少なくとも鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
当該鼻マスクの内面部にある水滴がこの内面部表面上を移動して成長することを防止するための、内面部に設けられた水滴移動阻止手段を有することを特徴とする鼻マスク。
(8)内面部は、その表面を親水性に構成してなることを特徴とする、(6)または(7)に記載の鼻マスク。
(9)内面部は、その表面を撥水性に構成してなることを特徴とする、(6)または(7)に記載の鼻マスク。
(10)使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、使用者の少なくとも鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
鼻に面する内面部表面を、親水性に構成してなることを特徴とする鼻マスク。
(11)使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、使用者の少なくとも鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
鼻に面する内面部表面を、撥水性に構成してなることを特徴とする鼻マスク。
(12)鼻マスク内面部下方に水滴溜り部を有することを特徴とする(6)から(11)のいずれかに記載の鼻マスク。
本発明は上記の構成とすることにより、呼吸用気体を患者へ供給する鼻マスクの構成において、この呼吸用気体に含まれる湿潤成分がマスク内面に結露して生じる水滴が患者の顔面へ落下して覚醒や不快感を生じせしめ、この結果治療の効果が阻害されることを防止する鼻マスクを、簡潔且つ高信頼性の構成により提供する、という顕著な効果を奏する。
本発明は、使用者の顔に密着し、使用者の鼻へ呼吸用陽圧ガスを導く手段となる鼻マスクに関する。
なお、本発明の鼻マスクは、以下に詳細に説明するCPAP(経鼻式持続陽圧呼吸法)用鼻マスクとするのが好適な実施態様であるが、CPAP用には限定されない。すなわち、経鼻式間欠陽圧換気呼吸法(NIPPV)に用いられる鼻マスク、その他の疾患あるいは治療方法のための鼻マスク、患者の鼻のみならず口腔部を覆うマスクについても適用が可能であり、これらの構成もまた本発明に包含される。本発明における「鼻マスク」はそのような意味で用いている。なお、これら各実施態様は、以下の記載の他に、種々の公知技術を参照することにより容易に実施が可能である。
図1に、本発明の呼吸用鼻マスクシステム1を示す。
本発明の呼吸用鼻マスクシステム1は、使用者の顔に密着し、使用者の鼻へ呼吸用陽圧ガスを導く手段となる鼻マスク(以下「マスク本体」ともいう)11、該鼻マスク11を所定の位置に保持するためのフレーム12、および該鼻マスクを顔面へ密着させるために頭部に装着するヘッドギア13を備えている。鼻マスク11は、フレーム12と使用者の間に位置するように設置され、図1に示すようにフレーム12と接続して使用する。フレーム12はほぼ三角形であり、使用者の両頬側が三角形の基底部になり、三角形の頂点が使用者の額側になるように使用される。図1に示すように、フレーム12は額側に2箇所、基底部両側部分に2箇所の合計4箇所のヘッドギア13接続部分を有する。また、本発明の呼吸用鼻マスクシステム1においては、フレーム12は基底部両側部分にファスナキャッチ15を具備している。
さらに、本発明の呼吸用鼻マスクシステム1は、ヘッドギア13に長さを調節するためのヘッドギアストラップ13aを設け、ヘッドギアストラップ13aはその先端にフレーム12との接続/解除手段となるヘッドギアファスナ14を有する。
なお、上記のフレーム12、ヘッドギア13の構成は一例にすぎず、本発明の実施に際して上記と異なる構成としてもよい。
また、本システム1のマスク本体11にはフレーム12を貫通するホース接続部16が気体の流通可能なように接続しており、この結果、患者の少なくとも鼻を覆う鼻マスク11の内部空間と、ホース接続部16と、このホース接続部16の端部に接続する図示しないホース(「エアチューブ」、あるいは「呼吸回路」ともいう)とは相互に気体が流通可能なように流体導通状態となっている。
さらに、このホースが同じく図示しない呼吸補助装置と接続することにより、陽圧ガスがこの呼吸補助装置で生成された後、ホース、ホース接続部16、マスク本体11をそれぞれ経由して患者の鼻へ供給されることにより治療が実行される。なお、睡眠中の患者に対して治療を行う場合などには患者は横臥状態にあり、その際には通常、睡眠時の姿勢において上方を向く患者顔面の鉛直上方に鼻マスク11が接触している。
本発明のシステム1は先に説明した課題を解決するために、主に鼻マスク(マスク本体)11に下記に詳説するとおりの特徴的な構成を設けたものであるので、以後の説明はこの鼻マスク11の構成的特徴に集中して本システム1の他の構成には特に言及は行わないものとする。
本発明のシステム1が有する鼻マスク11には、以下に示す各実施の形態において、次のような構成上の特徴が含まれている。
まず鼻マスク11内面に結露した水滴をこの鼻マスク内面に設けた溝に沿って流すことにより、重力によってこの水滴が鼻マスク11内面を離れて患者の顔面に落ちないようになした構成を有する。
あるいは鼻マスク11内面上にある水滴が内面を移動するのを困難とするための構造をこの鼻マスク11に設けて、水滴が大きく成長しないようにし、この結果この水滴が移動するのを困難とする構造に接触した水滴が崩壊して広がって大きな水滴にはならないようになした構成を有する。
また、鼻マスク11の内面を親水性にしたので、水滴形成のための水分子表面張力よりも鼻マスク11内面と水分子との吸着力が勝り、水分子は鼻マスク11内面に広がって水滴の形成が阻害される。
あるいはまた、鼻マスク11内面を撥水性とすると、小径の水滴は結露により生成されるものの水滴表面と鼻マスク11内面との吸着力が小さく、小さな水滴が重力により鼻マスク内面の表面上を下方へ容易に移動して、内面に留まった小さな水滴を核としてより大きな水滴が形成されることがない。
上記した、あるいはその他の特徴的な構成を含んだ本発明にかかる実施形態を以下に説明する。本発明の実施にあたっては、これら実施形態の構成が適宜、単独であるいは組み合わせることにより鼻マスク11が構成される
〔第1の実施形態〕
図2は以下に説明する各実施形態に共通した、鼻マスク11及びその近傍にある構成を含む外観図である。図2においてマスククッション部11aは鼻マスク11が患者顔面に接する弾性構造である。
図3は、図2のAA’切断面における矢視断面図である。
本実施形態では鼻マスク11自身が断熱性を有する材にて構成されている。断熱性を有する材とは例えば、発ウレタン樹脂である。
これに対して従来の鼻マスクはポリカーボネート等の材質で構成されていた。
上記のように構成したので、鼻マスク11外部の気温が低い場合においても、鼻マスク11自身、特に鼻マスク内面11cの温度の低下が許容範囲内に抑えられるので、ホース接続部16から供給される陽圧ガスが加温加湿されていた場合においても、鼻マスク内面11cにおける結露現象が抑制される。
〔第2の実施形態〕
次に第2の実施形態を説明する。
本実施形態においては図示形状が類似していることから先に示した図3を参照して説明を行う。本実施形態では図3における鼻マスク内面11cに親水性をもたせて構成している。
この結果、水滴形成のための水分子表面張力よりも鼻マスク内面11cと水分子との吸着力が勝り、結露現象により鼻マスク内面11cに付着した水分子は鼻マスク内面11cに広がって水滴の形成が阻害される。
例えば、特開平5−200329号公報には、噴霧発生装置の吹き出し部材を合成樹脂材で形成し、かつ表面に極微小凹凸条を形成したり、合成樹脂材で形成される吹き出し部材の表面を、電離気体で処理(グロー放電や、コロナ放電や、イオンビーム照射)することによって、この噴出し部材に親水性をもたせる構成が記載されている。親水性を実現するために、この記載にある構成を利用してもよいし他の方法によってもよい。
〔第3の実施形態〕
次に第3の実施形態の説明を行う。
本実施形態の説明においても、同様に図示形状が類似していることから先に示した図3を参照して行う。この実施形態においては、図3における鼻マスク内面11cを、撥水性を持たせて構成している。
この結果、小径の水滴は結露により鼻マスク内面11cに生成されるものの、水滴表面と鼻マスク内面11cとの吸着力が小さいため、小さな水滴が重力により下方へ容易に移動し、内面に留まった小さな水滴を核としてより大きな水滴が形成されることが困難となる。
公知技術である、撥水性の高いテフロン(登録商標)を共析させたPTFEコンポジットめっきによる方法、ハスの葉表面のように微細な疎水性の凹凸構造を形成し表面に空気を保持させることで水が塗膜本体と接触しなくなる原理を利用する方法、あるいはその他の方法を利用して、鼻マスク内面11cに撥水性をもたせて構成することが可能である。
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態を説明する。
図4は、図2におけるAA’断面図を、本実施形態において図示したものである。
本実施形態における鼻マスク11−1は、患者の鼻に面する内壁部11−1f、外気に接する外壁部11−1d、及び内壁部11−1fと外壁部11−1dとの間に設けた断熱層11−1eを有している。
断熱層11−1eは外壁部11−1dから内壁部11−fへの熱の伝達を阻害する機能を有し、この結果、鼻マスク11−1外部の気温が低い場合においても、鼻マスク内壁部11−1fの温度の低下が許容範囲内に抑えられるので、ホース接続部16から供給される陽圧ガスが加温加湿されていても鼻マスク内面11−1cにおける結露現象が抑制される。
断熱層11−1eは種々の構成とすることが可能である。すなわち、中空かつ空気を充填した空気層として断熱性を付与する構成、中空かつ実質的に充填物を無しとした真空層として断熱性を付与する構成、あるいはグラスファイバーのような断熱性を有する素材で形成する方法などが可能である。この実施形態は鼻マスク11に限定されるものではなく、マスククッション部11aにも適用可能なものである。
〔第5の実施形態〕
次に、図5〜図8を参照して第5の実施形態を説明する。
本実施形態の鼻マスク11−2は図5に示すように、その内面に水滴案内溝11−2g、11−2hを設け、鼻マスククッション部11−2aと、顔面接触部11−2jとの間に水滴溜まり部11−2iを有することを特徴とする。
なお、図5において水滴案内溝11−2g、11−2hは鼻マスク11−2の内面に形成されているものの透視図法によりその外面上に図示されている。
本実施形態の鼻マスク11−2を上記の構成としたのは、次のような知見を本発明者が得たためである。
すなわち、鼻マスク11−2内面に発生した結露は、最初は小さな形状の水滴であるが、近傍の小水滴が合同して次第により大型の水滴が形成され、大型化することで重力により鼻マスク11−2内面を移動し、更に合同して大型化し、ついには水滴に加わる重力が水滴の内面表面への吸着力に勝って水滴が内面表面を離れ、患者の顔面へ落下するものと思われる。
そこで、水滴が内面表面上で移動するものの落下するに足る大きさへ成長する前に捉えて、安全に鼻マスクの内面表面上を下方に移動させれば、表面を離れて患者の顔面に落下することを防止できる。
そのため本実施形態では、まず鼻マスク11−2内面において結露現象により小水滴が形成された後、この水滴が合同して成長するものの重力により鼻マスク11−2内面を離れて落下する前に、鼻マスク11−2内面に設けられた水滴案内溝11−2g、11−2hまで移動して捉えられるように構成されている。この水滴案内溝11−2g、11−2h表面上は上記のようにして捉えられた水滴が頻繁に移動するので、水分子がこの水滴案内溝11−2g、11−2hの表面に十分に濡れ広がっており水分子が水滴として形成されることはなく、したがって捉えられた水滴が水滴案内溝11−2g、11−2h表面を重力に従って下方へ移動したとしても他の水滴と合同して水滴自身が成長することはない。また、水滴案内溝11−2g、11−2hの表面に水分子が十分に濡れ広がっていることから、ここに捉えられた水滴は崩壊する場合もありうる。
いずれにせよ上記のように捉えられた水滴、あるいは水滴が崩壊した流動性の水は、水滴案内溝11−2g、11−2hの表面を重力に従って下方へ移動し、最終的に水滴溜まり部11−2iへ到達して貯留され、この結果、結露により生じた水滴や流動性の水が患者の顔面に到達することは防止される。
図6は、水滴溜まり部11−2iの断面を、横臥患者に対する鼻マスク11−2の使用状態において鉛直方向に切断した断面図で種々の変形例と共に図示したものである。
もっとも基本的な図6(ア)図示構成においては、水滴溜まり部11−2iは鼻マスク11−2の外周上に沿って設けられたチューブ状の構造をなし、水滴案内溝11−2g、11−2hから移動してきた水滴などを導入する導入口6a、導入した水滴などを貯留する貯留室6bを備えている。
この変形例である、図6(イ)図示構成例では、更に貯留室内に吸水材6cを充填して水分の保持を確実なものとし、患者の頭部が多少の動きを示した場合でも保持する水分を外部に漏洩させることがない。上記の吸水材6cは樹脂などをハニカム構造やスポンジ構造に形成してなるものであって、その微細な空間内に水分を確実に貯留させる。
さらに、これとは異なる変形例である、図6(ウ)図示構成では、貯留室は複数の壁部6dで細分された結果、細分貯留室6eが複数形成され、これら壁部6dはそれぞれに水分の導入口が設けられているので、水滴案内溝11−2g、11−2hから導入された水分はこれらの細分貯留室6eにそれぞれ貯留されて確実に保持される。
なお、鼻マスクが用いられるCPAPは睡眠中に実施されるのであるから、一晩の結露で生じた水分がこれら水滴溜まり部11−2iあるいはその変形例構成に保持可能であれば十分であり、睡眠時の治療が終わるとこれらに貯留された水分は廃棄されるか乾燥除去されて次の治療の準備が行われる。
図7は水滴案内溝11−2g、11−2hの種々の構成例を、溝の長手方向に垂直な断面にて示したものである。
図7(ア)図示構成例では、鼻マスク内面7aから穿った溝の底部において、溝側面における底部7bを溝中央における底部7cよりも深く、すなわち溝をその側面において特に深く穿ったので、水分子の表面張力を利用して溝側面における底部7bに水分を確実に保持し、水滴が溝から落下することを効果的に防止できる。
変形例である図7(イ)図示構成例では、水滴案内溝の鼻マスク内面7aにおける開口部の両側に、溝に沿った凸状のトラップ構造7dを設けたので、同様に水滴の落下が防止される。
他の変形例である図7(ウ)図示構成例では、鼻マスク内面7aから所定深さまで溝の幅を平行として溝を穿ったので、溝内での水の流動性が良好となり、容易に水が水滴溜まり部11−2iへ移動可能である。
同様に、他の変形例である図7(エ)図示構成例では、溝の断面形状を鼻マスク内面7a側が底面にあたる三角形としたので、同様に水の流動性が良好となる。
さらに、他の変形例である図7(オ)図示構成例では、鼻マスク内面7aから平行な幅で溝を穿つものの、その幅gを相対的に狭くし、その深さdを相対的に大きく構成したので、水分子の表面張力及び水分子と溝表面との毛管力によりこの溝に深く、水分子が確実に保持されて落下が防止される。
図7(オ)図示構成例を変形したものが図7(カ)図示構成例であり、溝の底部には小貯留室7eを設けたので、溝内部に保持される水分の量が増加する特徴を有する。
また、水滴案内溝11−2iの全体の形状すなわちレイアウトも、図5図示構成のほかに種々の変形が可能である。
すなわち、図5においてB矢視図により鼻マスク11−2の内面における水滴案内溝の種々のレイアウトを示した模式図である図8において、ホース接続部への貫通口8aから放射状に溝8bを設ける構成(図8(ア)図示)の他に、溝を多条ねじ(ヘリコイド)状とし、鼻マスク11−2内面の任意の位置8cにあった水滴が成長して内面上を重力により移動し(移動方向は貫通口8aから遠ざかる方向)、その結果、多条ねじ形状の溝の点8dで捉えられ、その後溝に沿った方向8eへ移動させる形状(図8(イ)図示)とすることも考えられる。
その他の変形例として、図8(ウ)図示構成のように溝をヘリンボン(魚の骨)形状、すなわち貫通口8aから放射状に伸びる複数の主骨8fと、隣り合う主骨間を結ぶ複数の副骨8gとを有するように構成することでも、移動を開始した水滴の捕捉と、水滴溜まり部への誘導を容易に行うことができる。
さらに、図8(エ)に示すように、複数の多角形(ポリゴン)8hを鼻マスク内面に敷き詰めるような構成、あるいは図8(オ)に示すように、複数の放射状溝8iと複数の同心円状溝8jとを組み合わせた形状なども可能である。
〔第6の実施形態〕
次に図9及び図10を参照して、第6の実施形態を説明する。
本実施形態は、先に図2に示した鼻マスク11の内面、特にマスククッション部11aの内面に下記する如くの構成を設け、この結果、結露で生じた水滴を鼻マスク11の内面で保持して落下を防止するものである。
図9(ア)図示構成はその一例を示す鼻マスク11の断面図であって、鼻マスク表面9cから複数の腕部9aが患者鼻部へ向かって突出し、それら腕部9aの先端にはより径の大きい先端部9bが設けられている。
上記の構造を患者鼻部側から見た上面図である図9(イ)において、これら先端部9bの間の隙間に水分が保持される。
ここでマスククッション部11aは患者の呼吸によって拡張と収縮を繰り返す動作をするので、上記の先端部9b間の隙間寸法も呼吸に合わせて脈動することとなる。この結果、図9(ウ)に図示するようにマスククッション部11aが収縮している際に先端部9b同士は密着して隙間は小さく、水分の保持が確実となり、一方図9(エ)図示のようにマスククッション部11aが拡張している際には先端部9b間に微小な隙間が生じて毛細管現象により水分が先端部9bの間にトラップされる動作が実現する。
図10は本実施形態における他の構成例を示す模式図である。これら図示構成ではいずれも水分子の内面表面への吸着力、表面張力により微細な空間内に水分子を保持して水滴としての落下を防止する。先に説明したとおりCPAPに用いる鼻マスクは睡眠中の使用であるので、一晩の治療後に保持した水分は乾燥などで除去される。
図10(ア)図示構成は、鼻マスク11内面、特にマスククッション部11a内面に広く、微細なハニカム構造10aを多数形成し、これらハニカム構造10aの内部に水分をトラップする。ハニカム構造10aの壁部に更に穴10bを穿ち、水分の保持力を向上させた構成も考えられる。
図10(イ)図示構成は、鼻マスク11内面、特にマスククッション部11a内面から繊維部10c多数を突出させ、これら繊維部10cの間に水分を保持する。
図10(ウ)図示構成は、鼻マスク11内面、特にマスククッション部11a内面にスポンジ構造部10dを形成し、このスポンジに含まれる微細な多数の空間に水分を保持する。
図10(エ)図示構成は、鼻マスク11内面、特にマスククッション部11a内面に盲管10eを複数形成し、この盲管10eの内部に水分を保持する。また盲管10eの底部により大きな保持室10fを設けてもよい。
〔第7の実施形態〕
先に説明した第5の実施形態は、鼻マスク11の内面表面に水滴案内溝を形成し、この溝に沿って水滴を誘導するように構成したものであった。
ここで溝とは、鼻マスク内面における断面形状は様々であるが、凹状に穿って形成されたものをいう。
上記の構成とは異なる本発明第7の実施形態においては、鼻マスク11内面に凹状の溝ではなく凸状の土手(堤防)様の構成を設ける。その土手構造の断面形状は種々可能であり、また鼻マスク11内面における土手構造のレイアウトも様々な形状が可能であり、例えば先に図8に示した如くの水滴案内溝のレイアウトに類似した構成も考えられる。
いずれにせよ上記のように土手構造を設けたので、鼻マスク11内面に結露により形成された小さな水滴は次第に成長して重力により下方へ移動するものの、この土手構造によりそれ以上の水滴の移動が阻止されると共に、土手構造において水滴が崩壊する場合もあり、これらの現象の結果、水滴の落下が防止される。
本発明によれば、CPAP療法やNIPPV療法などに使用する鼻マスクが提供される。
本発明の鼻マスクを含む呼吸用鼻マスクシステムの構成例を説明する図である。 本発明に係る鼻マスクの基本的実施形態を説明する図である。 本発明に係る第1の実施形態の鼻マスクを説明する図である。 本発明に係る第4の実施形態の鼻マスクを説明する図である。 本発明に係る第5の実施形態の鼻マスクを説明する図である。 本発明に係る第5の実施形態の鼻マスクが有する水滴溜まり部を説明する図である。 本発明に係る第5の実施形態の鼻マスクが有する水滴案内溝を説明する図である。 本発明に係る第5の実施形態の鼻マスクが有する水滴案内溝を説明する図である。 本発明に係る第6の実施形態の鼻マスクが有する水滴移動阻止部を説明する図である。 本発明に係る第6の実施形態の鼻マスクが有する水滴移動阻止部を説明する図である。
符号の説明
6a 水滴溜まり部の水滴導入口
6b 水滴溜まり部の貯留室
6c 貯留室内の吸水材
6d 貯留室の壁部
6e 細分貯留室
7a 鼻マスク内面
7b 溝側面における底部
7c 溝中央における底部
7d 凸状トラップ構造
7e 溝底部の小貯留室
8a ホース接続部への貫通口
8b 鼻マスク内面の溝
8c 鼻マスク内面に発生した水滴
8d 鼻マスク内面の溝における水滴捕捉点
8e 水滴捕捉後の水滴移動経過点
8f 鼻マスク内面の溝(主骨)
8g 鼻マスク内面の溝(副骨)
8h 鼻マスク内面のポリゴン
8i 鼻マスク内面の放射状溝
8j 鼻マスク内面の同心円状溝
9a 鼻マスク内部表面における腕部
9b 鼻マスク内部表面における腕部先端部
9c 鼻マスク内部の表面
10a 鼻マスク内部表面の微細ハニカム構造
10b 微細ハニカム構造における穴
10c 鼻マスク内部表面の繊維部
10d 鼻マスク内部表面のスポンジ構造部
10e 鼻マスク内部表面の盲管
10f 盲管底部の保持室
11 鼻マスク(マスク本体)
11−1 鼻マスク
11−2 鼻マスク
11a マスククッション部
11c 鼻マスク内面
11−1c 鼻マスク内面
11−1d 鼻マスク外壁部(外壁部)
11−1e 断熱層
11−1f 鼻マスク内壁部(内壁部)
11−2a 鼻マスククッション部
11−2g 水滴案内溝
11−2h 水滴案内溝
11−2i 水滴溜まり部
11−2j 顔面接触部
12 フレーム
13 ヘッドギア
13a ヘッドギアストラップ
14 ヘッドギアファスナ
15 ファスナキャッチ
16 ホース接続部

Claims (1)

  1. 使用者の顔と接触し、使用者の鼻へ湿潤成分を含んだ呼吸用気体を供給するため、少なくとも使用者の鼻周辺を覆うよう構成された鼻マスクであって、
    外壁部(11−1d)、断熱層(11−1e)、内壁部(11−1f)、およびマスククッション部(11a)からなり、
    断熱層(11−1e)が発泡ウレタン樹脂層、空気層、真空層、またはグラスファイバー層である鼻マスク。
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