JP5213706B2 - 直交性リボソームmRNAペアに関する組成物および方法 - Google Patents

直交性リボソームmRNAペアに関する組成物および方法 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質翻訳生化学の技術分野に関する。より詳細には、本発明は、直交性リボソーム直交性mRNAペア、それらの選択方法およびその使用に関する。
細胞内で明確な機能を果たしうる分子ネットワークの合成は、合成生物学の主眼の1つである(Gibbs, W.W., Sci Am 290, 74-81 (2004), Brent, R, Nat Biotechnol 22, 1211-1214 (2004))。ネットワークは、少数の十分に特徴付けされた天然転写因子およびその結合部位からアセンブルまたは発展してきており(Basu, S., Gerchman, Y., Collins, C.H., Arnold, F.H. & Weiss, R., Nature 434, 1130-1134 (2005), Elowitz, M.B. & Leibler, S., Nature 403, 335-338 (2000), Gardner, T.S., Cantor, C.R. & Collins, J.J., Nature 403, 339-342 (2000), Guet, C.C., Elowitz, M.B., Hsing, W. & Leibler, S., Science 296, 1466-1470 (2002), Kaern, M., Blake, W.J. & Collins, J.J., Annu Rev Biomed Eng 5, 179-206 (2003), Kobayashi, H. ら, Proc Natl Acad Sci U S A 101, 8414-8419 (2004), Yokobayashi, Y., Weiss, R. & Arnold, F.H., Proc Natl Acad Sci U S A 99, 16587-16591 (2002), You, L., Cox, R.S., 3rd, Weiss, R. & Arnold, F.H., Nature 428, 868-871 (2004))、それにより細胞性オシレーター、トグルスイッチおよび論理関数が創造され、また細胞−細胞情報伝達および細胞パターン形成の新しい形態が創造された。
mRNA基質の変更されたまたは狭められた範囲を有する改変型リボソームが、遺伝暗号の拡張のための使用可能性について、および転写後遺伝子調節の目的のために、検討された。以前の研究において「特殊化されたリボソーム」が記載されており(Hui, A.S., Eaton, D.H. & de Boer, H.A., EMBO J 7, 4383-4388 (1988), Hui, A., Jhurani, P. & de Boer, H.A., Methods Enzymol 153, 432-452 (1987), Hui, A. & de Boer, H.A., Proc Natl Acad Sci U S A 84, 4762-4766 (1987))、これらはSD配列において3つの変異を有するものであり、ASDにおいて相補的変異を有するmRNAを翻訳する。
Lee らは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ mRNA上のrRNA結合配列(SD)および大腸菌(E. coli) 16S ASDの相補的メッセージ−結合配列に、同時にランダム変異を導入した実験を記載した(Lee ら, 1996, RNA 2: 1270-1285)。野生型リボソームにその翻訳を異なる度合いで依存する、代わりとなるSD配列が、ASDおよびSD変異体の集合から単離された(Lee, K., Holland-Staley, C.A. & Cunningham, P.R., RNA 2, 1270-1285 (1996)。
直交性リボソーム直交性mRNAペアおよび、新規ポジティブ−ネガティブ選択法を含む前記ペアの選択方法を提供する。また、直交性リボソームを含む細胞性論理回路を提供する。
前記ポジティブ−ネガティブ選択法は、陰性選択マーカーに融合した陽性選択マーカーポリペプチドを含む融合ポリペプチドを使用し、このとき前記融合ポリペプチドの各構成要素はその選択マーカー機能を保持し得るような様式で融合している。このポジティブ−ネガティブ選択マーカー融合ポリペプチドに機能的に連結している多様化したまたは変異したリボソーム結合部位を有するmRNAのライブラリーを、陰性選択マーカーを用いて選択し、野生型リボソームの基質となるmRNAを除去し、そのことにより野生型リボソームの基質とならない変異体mRNAを富化する。次に、陰性選択により富化された変異体mRNAを発現する細胞を、リボソーム結合部位においてmRNAと相互作用する配列を含む領域において変異している小さなサブユニットrRNA分子をコードする第2ライブラリーを用いて形質転換する。次いで、該細胞を、陽性選択マーカーの発現について選択し、これにより陰性選択において選択された変異体mRNAを効率的に翻訳することのできる変異体小さなサブユニットrRNAを含んでなるリボソームが富化される。得られるmRNA rRNA/リボソームペアは直交性である。このペアの直交性リボソームメンバーは、細胞内で発現したときに毒性ではなく、かつ、コグネイトな直交性mRNAのみを効率的に翻訳する。直交性のペアは、例えば、細胞機能を調節するための鋭敏に調節される新規オペレーターを提供し得る。
また、陽性選択マーカーポリペプチドおよび陰性選択マーカーポリペプチドを含んでなる融合ポリペプチドを提供する。この融合ポリペプチドの発現は、陽性選択マーカーの存在下で細胞を生存可能とし、かつ、細胞を陰性選択マーカーによる死滅に感受性にする。かかる融合ポリペプチドをコードするベクター(融合ポリペプチドのコード配列が多様化されたリボソーム結合部位に機能的に連結したベクターも含まれるがこれに限らない)もまた提供され、同様にかかるベクターを有するおよび/または発現する宿主細胞も提供される。上記ポジティブ−ネガティブ選択法は、追加の制御エレメント(例えば、変更された転写または翻訳制御エレメント、例えばリボスイッチ(riboswitch)、リボ調節因子(riboregulator)、転写調節因子、転写因子、RNAポリメラーゼおよびプロモーター配列が含まれる)の選択に応用することもできる。
また、本明細書に記載の直交性mRNA・直交性リボソームペアを用いた対象のポリペプチドの産生方法を提供する。このような方法は、かかるペアをコードする核酸を細胞に導入することを含み、ここで直交性mRNAは対象のポリペプチドをコードする。直交性リボソーム(直交性rRNAを含有する)による直交性mRNAの翻訳は、対象のポリペプチドの産生をもたらす。直交性mRNA・直交性リボソームペアをコードする細胞において産生されたポリペプチドは、非天然アミノ酸を含みうる。
また、本明細書に記載のような直交性リボソーム直交性mRNAペアを1以上用いて細胞内でプログラミングしたブール論理回路(Boolean logic circuit)を提供する。
定義
本明細書において用いる「直交性」とは、mRNAが、内因性リボソームにより翻訳されずペアのrRNAを含んでなるリボソームにより効率的に翻訳され、かつ、rRNAを含んでなるリボソームが、内因性mRNAを翻訳せずペアのmRNAを効率的に翻訳する、mRNA rRNAペア(またはmRNAとrRNA含有型リボソームのペア)を言う。この意味において、ペアのメンバーは他のmRNAおよびrRNA/リボソームから明確に隔てられており、すなわち他のmRNAは他の(例えば内因性)リボソームにより翻訳可能であり、かつ他のリボソームは数種の異なるmRNAを翻訳することができる。したがって、「直交性mRNA直交性rRNAペア」または「O-mRNA O-rRNAペア」(またはO-mRNA O-リボソームペア)とは、前記mRNAが内因性リボソームにより翻訳されないがペアのrRNAを含有するリボソームにより効率的に翻訳され、かつ、前記rRNAを含んでなるリボソームが内因性mRNAを翻訳しないがペアのmRNAを効率的に翻訳するペアである。この関係にあるときに、前記O-mRNA O-rRNAペアのメンバーは互いに「コグネイト」であると言う。簡潔性のために、直交性rRNAを含んでなるリボソームのことを本明細書では「直交性リボソーム」と言い、そして、直交性リボソームはコグネイトな直交性mRNAのみを効率的に翻訳する。
本明細書において用いる「mRNA」という用語は、O-mRNA O-リボソームペアに関連して使用されたときには、野生型リボソームによる翻訳開始を仲介しないが、前記O-リボソームによる翻訳開始を効率的に仲介するリボソーム結合部位(特に、AUG開始コドンから、AUGに対して−13上流までの配列)を含んでなるmRNAを言う。前記mRNAの残りの部分は可変性であり、そのリボソーム結合部位の下流に何らかのタンパク質のコード配列を配置すると、内因性リボソームにより翻訳されないが、前記直交性リボソームにより効率的に翻訳されるmRNAが得られる。
本明細書において用いる「rRNA」という用語は、O-mRNA O-リボソームペアに関連して使用したときには、翻訳の開始においてmRNAと相互作用する3'配列において変異している小さなリボソームサブユニットrRNAを言う。前記変異(単数または複数)は、前記rRNAが直交性rRNAであり、かつそれを含んでなるリボソームが直交性リボソームである、すなわち、それがコグネイトな直交性mRNAのみを効率的に翻訳するような変異である。野生型の小さなリボソームサブユニットrRNAの一次、二次および三次構造は、非常によく知られており、同様に種々の保存構造(ステム−ループ、ヘアピン、ヒンジなど)の機能もよく知られている。翻訳の開始中にmRNAと相互作用する3'配列の外部にある変異は、O-rRNAが直交性のままであり、かつ変異(単数または複数)が翻訳におけるリボソームの機能を維持する(リボソームが、翻訳の開始中にmRNAと相互作用する3'配列の外部の野生型配列を有する対応するリボソームの少なくとも80%、および好ましくは少なくとも90%、95%またはより好ましくは100%の活性を有するならば翻訳機能は維持される)限りにおいて本明細書に記載のO-rRNAにおいて許容可能である。すなわち、翻訳開始中にmRNAと相互作用する3'配列の外部の変異は、一般にリボソーム内のrRNAの二次および三次構造を維持し、かつrRNAのおよび該rRNAを含んでなるリボソームの機能を維持する保存的または補償的変異であるべきである。
細胞内の「O-rRNA」の発現は、本明細書においてこの用語を用いる場合、その細胞に毒性ではない。細胞毒性は、細胞死により、あるいはまた、前記「O-mRNA」を発現しない細胞と比較して80%以上の増殖速度低下により測定される。O-rRNAの発現は好ましくは増殖を、O-rRNAを欠いた同じ様な細胞の増殖と比較して、50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満しか低下させない、およびさらに好ましくは全く増殖を低下させない。
本明細書において用いる「効率的に翻訳する」および「効率的に翻訳を仲介する」という用語は、野生型リボソームにより野生型リボソーム結合配列を含んでなるmRNAが翻訳される効率と比較して、同じ細胞または細胞型において、ある所定のO-mRNAがコグネイトなO-リボソームにより、少なくとも80%の効率で、好ましくは少なくとも90%、95%またはさらには100%の効率で翻訳されることを意味する。測定基準として、例えば大腸菌(E. coli)において、野生型大腸菌(E. coli)β-ガラクトシダーゼリボソーム結合配列を有するmRNAの翻訳と比較して翻訳効率を評価することができる。真核細胞においては、例えば野生型β-アクチンリボソーム結合配列を有するmRNAを測定基準として使用することができる。
本明細書において用いる「対応する」という用語は、ヌクレオチド配列に関して使用されるときには、ある分子における(例えば16S rRNAにおける)所定の配列が、別の分子(例えば別の種からの16S rRNA)における同じ位置にあることを意味する。「同じ位置にある」とは、「対応する」配列同士が、Tatusova and Maddenにより記載(1999, 「Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences 」, FEMS Microbiol. Lett. 174:247-250)されU.S. National Center for Biotechnology Information (NCBI)より入手可能なBLAST配列アライメントアルゴリズム「BLAST 2 Sequences」を用いてアライメントさせたときに、互いに整列することを意味する。誤解を避けるために記載すると、BLASTバージョン2.2.11 (NCBIウェブサイト上で使用することができる、あるいはそのサイトからダウンロードして入手可能)を使用し、次の初期設定パラメーターを用いる。すなわち、プログラムはblastnであり、マッチの報償は1であり、ミスマッチのペナルティは-2であり、開きギャップと伸長ギャップのペナルティはそれぞれ5と2であり、ギャップxドロップオフは50であり、expectは10.0であり、ワードサイズは11であり、フィルターはonである。
本明細書において用いる「選択マーカー」という用語は、対応する選択物質を添加することにより、その遺伝子配列をコードし発現する細胞を集団内で選択することを可能にする遺伝子配列を言う。
本明細書において用いる「陽性選択マーカー」とは、そのマーカーの発現が選択物質の存在下での細胞の生存に必要である選択マーカーである。陽性選択マーカーの非限定的な例は抗生物質耐性であり、このとき細胞における耐性遺伝子の発現は、抗生物質を用いた特異的増殖遅延または死滅に対して該細胞を非感受性にする。「対応する」陽性選択物質とは、陽性選択マーカーを発現する細胞は殺さないが、陽性選択マーカーを欠いた細胞を殺すまたはその増殖を大幅に遅延させる物質である。「対応する」陽性選択物質の非限定的な例は抗生物質であり、例えば、陽性選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子、例えばβ-ラクタマーゼまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼであるときには、それぞれ対応してアンピシリンまたはクロラムフェニコールである。
本明細書において用いる「陰性選択マーカー」とは、そのマーカーの発現が、選択物質を用いた死滅または増殖遅延に細胞を感受性とする選択マーカーである。陰性選択マーカーの非限定的な例としては、チミジンキナーゼ(ガンシクロビルを用いて選択可能)、枯草菌(B. subtilis) sacB (スクロースを用いて選択可能)およびウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ (5-フルオロウラシルを用いて選択可能)が挙げられる。「対応する」陰性選択物質とは、それに対して前記陰性選択マーカーを発現する細胞が感受性となる物質である。したがって例えば、先の例でいうと、ガンシクロビルはチミジンキナーゼに「対応」し、スクロースは sacBに「対応」し、また、5-フルオロウラシルはウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼに「対応」する。
本明細書において用いる「クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ」という用語は、クロラムフェニコールのアセチル化を触媒する酵素をいい、該アセチル化によりクロラムフェニコールは翻訳遮断に対して不活性となり細胞の死滅についても不活性となる。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼによるクロラムフェニコールのアセチル化を測定するためのアッセイは当技術分野で周知である。
本明細書において用いる「増殖遅延」という用語は、かかる遅延に感受性である細胞において、遅延に感受性ではない細胞と比較して、細菌の倍加時間が、非感受性細菌の少なくとも2倍、好ましくは3、4、5倍またはそれ以上長いことを意味する。非感受性細胞の複数の倍加の時間的経過を経て、非感受性細胞の集団内比率は迅速に支配的なものとなり、例えば感受性細胞に対して、95%、99%またはそれ以上になる。
「ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ」という用語は、ウラシルのウリジン一リン酸へのリン酸化反応を触媒する酵素をいう。
本明細書において用いる「クロラムフェニコールの存在下での生存」とは、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを発現する細胞が、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを発現しない細胞の100%が殺されるか大幅に増殖遅延を受ける濃度のクロラムフェニコールを含有する培地中でも生存することを意味する。「大幅に」増殖遅延されるとは、非遅延増殖と比較して、倍加時間が5倍以上長くなることを意味する。
本明細書において用いる「5-フルオロウラシルを用いた死滅に感受性」であるとは、本明細書に記載するCAT/UPRT融合物を発現する集団の全ての細胞が0.1μg/mL以上の濃度の5-FUにより死滅されることを意味する。
本明細書において用いる「リボソーム結合部位においてmRNAと相互作用する配列を含む領域」という用語は、翻訳の開始中にmRNAと物理的に相互作用する(例えば塩基対形成または他の相互作用により) 16S rRNAの3'末端付近のヌクレオチドを含む配列の領域を言う。この「領域」は、リボソーム結合部位においてmRNA中のヌクレオチドと塩基対形成するまたは物理的に相互作用するヌクレオチド、およびかかるヌクレオチドの5'または3'の5ヌクレオチド以内にあるヌクレオチドを含む。大腸菌(E. coli) 16S rRNAのヌクレオチド722および723に対応する塩基(それらはリボソームとmRNAの間で形成されるシャイン−ダルガルノヘリックスのマイナーグルーブに近接するバルジを形成する)もまたこの「領域」に含まれる。
本明細書において用いる「多様化された」という用語は、あるライブラリーの個々のメンバーの配列が所定の部位において多様化されていることを意味する。多様性を導入する方法は当業者に周知であり、所定の部位に対してランダムまたは完全ランダム未満の多様性が導入可能である。「完全にランダム」とは、所定のヌクレオチドがG、A、T、またはCのいずれか(あるいはRNAにおいては、G、A、UおよびCのいずれか)であってもよいことを意味する。「完全ランダム未満」とは、所定の部位を、2種以上の異なるヌクレオチドのうちのいずれかが占めてもよいが、それはG、A、T (RNAではU)もしくはCの全種ではないこと、例えば所定の部位における多様性がGまたはAのいずれかを許容するがUまたはCを許容しない、あるいは、G、A、もしくはUを許容するがCを許容しないことを意味する。
本明細書において用いる「リボソーム結合部位」という用語は、翻訳の開始においてリボソームにより結合されるmRNAの領域を言う。本明細書において定義する原核生物のmRNAの「リボソーム結合部位」は、シャイン−ダルガルノコンセンサス配列、およびAUG開始コドンに対して−13〜+1のヌクレオチドを含む。
本明細書において用いる「非天然アミノ酸」という用語は、タンパク質中で天然に存在する20種のアミノ酸以外のアミノ酸を言う。非限定的な例として次のものが挙げられる:p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-ヨード-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、p-プロパルギル-フェニルアラニン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAc β-セリン、L-ドーパ、フッ素化されたフェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、チロシンアミノ酸の非天然アナログ、グルタミンアミノ酸の非天然アナログ、フェニルアラニンアミノ酸の非天然アナログ、セリンアミノ酸の非天然アナログ、トレオニンアミノ酸の非天然アナログ、アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式基、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、もしくはアミノで置換されたアミノ酸、またはその組み合わせ、光活性化可能な架橋基を有するアミノ酸、スピン標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、光ケージド(photocaged)および/もしくは光異性化可能アミノ酸、ビオチンもしくはビオチンアナログ含有型アミノ酸、ケト含有型アミノ酸、ポリエチレングリコールもしくはポリエーテルを含有するアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的切断可能または光切断可能アミノ酸、伸長された側鎖を有するアミノ酸、毒性基を含有するアミノ酸、糖置換されたアミノ酸、炭素連結された糖含有型アミノ酸、レドックス活性なアミノ酸、α-ヒドロキシ含有型酸、アミノチオ酸、α,α-二置換型アミノ酸、β-アミノ酸、プロリンもしくはヒスチジン以外の環状アミノ酸、ならびにフェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファン以外の芳香族アミノ酸。
本明細書において用いる「論理回路」という用語は、相互作用するパラメーターの状態を知らせる読み出しを有する、相互作用するパラメーターのセットを言う。例えば「ブールAND回路」とは、読み出しCを与えるために存在しなければならないまたは満たされなければならない、2つの構成要素または条件、AおよびB、のセットを言う。読み出しCは条件Aおよび(AND) Bが満たされたときにのみ得られる。「ブールOR回路」とは、2つの実体または条件AおよびBのセット、ならびに読み出しDを言う。OR回路では、例えばAまたは(OR) Bが満たされたときに読み出しDが得られる。したがって、OR回路においては、Aまたは(OR)Bが満たされたならば、読み出しDが得られる。本明細書において定義する「細胞性」論理回路とは、読み出しをもたらすために必要な論理回路の実体が生きている細胞中で発現される論理回路である。本明細書において用いる「カスケード」という用語は、1つの回路の結果が第2回路の要素として必要とされる、一連の論理回路を言う。
発明の詳細な説明
合成生物学は、新しい機能を有する細胞をプログラミングする能力を目標としている。異なる分子相互作用ネットワークを創り出すために、天然転写因子とその結合部位の小さなセットを種々の様式で結合させることにより、単純なオシレーター、スイッチ、論理関数、細胞−細胞情報伝達およびパターン形成回路が創り出された。しかしながら、より複雑な合成ネットワークおよび機能の制御された合成のためには、分子特異性が既知である機能性分子の拡張されたセットが必要である。
生物内での分子相互作用のネットワークが進化することにより、単細胞生物から後生動物への複雑性の増大が可能となった(Ohno, S., Springer-Verlag, Heidelberg, New York; 1970), Taylor, J.S. & Raes, J., Annu Rev Genet 38, 615-643 (2004), Teichmann, S.A. & Babu, M.M., Nat Genet 36, 492-496 (2004))が、これは前駆遺伝子が重複し、その後重複したコピーが新規機能を獲得すること(新機能化)を介したものである。直交性分子、すなわち前駆分子と重複分子の間のクロストーク無しに自身の前駆体と平行に情報処理することのできる分子、を生じる天然のプロセスを人工的に模倣する方法を本明細書において説明する。こうした方法を用いて、今や多種の天然の運命の中から重複した分子のペアの進化的運命を調整して、重複した分子と、それが由来する前駆分子との間の所定の関係を導くことが可能である(例えば図1を参照されたい)。本明細書においてこのことは、野生型分子と直交性分子の間のクロストークには携わらないが、野生型リボソームおよびmRNAと平行して情報処理することのできる、直交性リボソーム直交性mRNAペアを作製することにより実証した。
細菌リボソームは、mRNAのタンパク質への翻訳を担う、rRNAとタンパク質の2.5 MDa複合体である(The Ribosome, 第LXVI巻(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; 2001)。リボソームの30SサブユニットとmRNAの間の相互作用は、翻訳における初期のイベントであり(Laursen, B.S., Sorensen, H.P., Mortensen, K.K. & Sperling-Petersen, H.U., Microbiol Mol Biol Rev 69, 101-123 (2005))、mRNAのいくつかの特徴が遺伝子の発現を制御することが知られているが、該特徴には、第1コドン(Wikstrom, P.M., Lind, L.K., Berg, D.E. & Bjork, G.R., J Mol Biol 224, 949-966 (1992))、リボソーム結合配列(シャイン・ダルガルノ(SD)配列を含む(Shine, J. & Dalgarno, L., Biochem J 141, 609-615 (1974), Steitz, J.A. & Jakes, K., Proc Natl Acad Sci U S A 72, 4734-4738 (1975), Yusupova, G.Z., Yusupov, M.M., Cate, J.H. & Noller, H.F., Cell 106, 233-241 (2001))、ならびにこうした配列同士の間隔(Chen, H., Bjerknes, M., Kumar, R. & Jay, E., Nucleic Acids Res 22, 4953-4957 (1994))が含まれる。特定の事例においては、mRNA構造(Gottesman, S. ら、The Ribosome, 第LXVI巻 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; 2001)において, Looman, A.C., Bodlaender, J., de Gruyter, M., Vogelaar, A. & van Knippenb
erg, P.H., Nucleic Acids Res 14, 5481-5497 (1986)), Liebhaber, S.A., Cash, F. & Eshleman, S.S., J Mol Biol 226, 609-621 (1992)、または代謝産物結合(Winkler, W., Nahvi, A. & Breaker, R.R., Nature 419, 952-956 (2002))が翻訳開始に影響を及ぼし、また、希なケースではmRNAはSD配列無しで翻訳され得るが、ただしこうした配列の翻訳は効率的ではなく(Laursen, B.S., Sorensen, H.P., Mortensen, K.K. & Sperling-Petersen, H.U., Microbiol Mol Biol Rev 69, 101-123 (2005))、そして別の開始経路を介して作動する(Laursen, B.S., Sorensen, H.P., Mortensen, K.K. & Sperling-Petersen, H.U. Initiation of protein synthesis in bacteria. Microbiol Mol Biol Rev 69, 101-123 (2005))。細菌遺伝子の大部分については、mRNAのSD領域が翻訳効率の主要な決定要因である。古典的SD配列 GGAGG (配列番号1)は、RNA-RNA塩基対形成を介して、アンチシャイン・ダルガルノ (ASD)として知られている配列CCUCC (配列番号2)を含有する16S rRNAの3'末端における領域と相互作用する。大腸菌(E. coli)には、推定4,122個の翻訳開始部位が存在し(Shultzaberger, R.K., Bucheimer, R.E., Rudd, K.E. & Schneider, T.D., J Mol Biol 313, 215-228 (2001))、これはら、SD様配列とAUG開始コドンの間の間隔、SD様配列とリボソームの間の相補性の度合い、およびmRNAと相互作用する16S rRNAの3'末端の配列の厳密な領域が異なる。したがってリボソームは、単に古典的シャイン・ダルガルノ(SD)配列のみではなく、配列のより複雑なセットから翻訳を駆動する。明確性のために記載すると、16S rRNAの3'末端に結合すると考えられるmRNA配列のことをSD配列と言い、また、具体的配列GGAGG (配列番号1)のことを古典的SD配列と言う。
SD配列における変異は多くの場合、急速な細胞溶解および細胞死をもたらす(Lee, K., Holland-Staley, C.A. & Cunningham, P.R., RNA 2, 1270-1285 (1996), Wood, T.K. & Peretti, S.W., Biotechnol. Bioeng 38, 891-906 (1991))。かかる変異体リボソームは細胞性翻訳を誤調節し、それらは直交性ではない。ASD領域における変異に対する細胞生存性の感受性は、ASD中の単一の変化さえもがプロテオーム合成の壊滅的かつ全体的な誤調節を介した細胞死をもたらし得るという観察により強調される(Jacob, W.F., Santer, M. & Dahlberg, A.E., Proc Natl Acad Sci U S A 84, 4757-4761 (1987)。rRNAにおける他の変異は、機能性リボソームの加工またはアセンブリにおける不適切な点をもたらしうる。
本明細書において、例えば、重複した大腸菌(E. coli)リボソームmRNAペアの分子特異性を野生型リボソームおよびmRNAに対して調整することにより、複数の直交性リボソーム直交性mRNAペアを作製するための方法を記載する。こうしたペアにおいて前記リボソームは直交性mRNAのみを効率的に翻訳し、かつ直交性mRNAは細胞性リボソームの効率的な基質とはならない。内因性mRNAを翻訳しない本明細書に記載の直交性リボソームは、細胞性遺伝子発現を妨害することなく所望のコグネイトなmRNAの特異的翻訳を可能にする。こうした直交性のペアの間の相互作用のネットワークを予測し測定した。そして本明細書において、直交性リボソームmRNAペアが、ブール論理を用いて細胞を転写後の様式でプログラムするために使用可能であることを示す。
直交性リボソーム直交性mRNAペアを見出すためには、高効率で直交性mRNAの翻訳を特定するリボソーム変異体を発見することが必要である。こうしたリボソーム変異体は、リボソームアセンブリ、rRNAプロセシングまたは細胞生存能を妨害するものであってはならず、かつ、数千もの内因性転写産物のいずれをも有意にまたは有害に翻訳するものであってはならない。その上、内因性リボソームの基質とはならず、直交性リボソームによってのみ確実に翻訳される直交性mRNAを発見することが必要である。
直交性リボソームmRNAペアの発見のための選択方法は、小規模なスクリーニングまたは設計された変異体により以前に検討されたものよりも最大で109倍大きい配列空間の調査を可能にする。直交性翻訳機構の進化のための新しい調節可能な陽性および陰性選択を本明細書において記載する。この選択方法を、複数の直交性リボソームmRNAペア(O-リボソームO-mRNA)を進化させるために応用する。また、コグネイトおよび非コグネイトなO-リボソームおよびO-mRNAの間の相互作用のネットワークの予測に成功したことについても記載する。こうした分子相互作用の特異性の知見は、細胞内での転写後の様式でのブール論理のプログラミングを可能にする。
ポジティブ−ネガティブ選択法:
直交性リボソーム直交性mRNAペア、または直交性分子の他のペアの同定のための選択方法は、陽性および陰性選択を共同して使用することを必要とする。ある態様においては、例えば、mRNA配列のライブラリーから、野生型リボソームの基質となるメンバーを除くために陰性選択を使用し、かつ変異したリボソームのライブラリーから、野生型リボソームにより翻訳されず残ったmRNAを効率的に翻訳するメンバーを選択するために陽性選択を使用する。
数種の異なる陽性および陰性選択物質が使用可能である。例えば大腸菌(E. coli)における理想的な陽性および陰性選択は、2種の小さな分子(各選択について1種)について、広いダイナミックレンジにわたり調節可能なものである。複数の陽性選択が大腸菌(E. coli)に使用されており、その最も一般的なものは抗生物質下での条件的生存に関するものである。こうした陽性選択のうち、クロラムフェニコールアセチル−トランスフェラーゼ遺伝子と組み合わせた抗生物質クロラムフェニコールが最も有用な選択の1つであることが実証されている。当技術分野で既知の他の選択、例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリンまたはストレプトマイシン耐性なども使用可能である。
例えば、大腸菌(E. coli)における陰性選択には、リボヌクレアーゼであるバーナーゼが使用されてきた。しかしながらバーナーゼは極めて毒性でありかつ構成的に活性であり、このことはある範囲の活性の単離のための調節可能な選択におけるその利用を制限する。おそらく例えばグラム陰性細菌における最も広く使用されている選択は、枯草菌(Bacillus subtilis) sacB遺伝子を使用するものであり、該遺伝子がコードするスクラーゼはサッカロースをレバンに変換し、細胞にスクロース感受性を付与する。しかしながらこの選択には、莫大な細胞外濃度(5%以上)のスクロースの添加による、スクロースの強制的な取り込みが必要である。この手法のストレスは、選択のストリンジェンシーを迂回する変異をもたらすと考えられている。この選択は原理的には調節可能であるが、実際にはこのような高濃度のスクロースが必要となることから、該選択法のダイナミックレンジは低い(Galvao, T.C. & de Lorenzo, V., Appl Environ Microbiol 71, 883-892 (2005))。新規で、かつ調節可能である可能性が高い陰性選択は、ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRT)に関するものである (Galvao, T.C. & de Lorenzo, V., Appl Environ Microbiol 71, 883-892 (2005), Rasmussen, U.B., Mygind, B. & Nygaard, P., Biochim Biophys Acta 881, 268-275 (1986))。この酵素は、ヌクレオチドサルベージ経路において機能し、ウラシルをウリジン一リン酸(細胞内における全てのピリミジンヌクレオシド三リン酸の源)へと変換する。細胞に5-フルオロウラシルを添加すると、これはUPRTにより5フルオロ-dUMPに変換され、5フルオロ-dUMPがチミジル酸シンターゼを強力に阻害し(Neuhard, J. in Metabolism of Nucleotides, Nucleosides, and Nucleobases in Microorganisms. (編O. Munch-Petersen) 95-148 (Academic Press, New York, NY, New York; 1983))、細胞死をもたらす。
O-リボソームO-mRNAペアの選択は、培地に添加された小分子の正体とその用量に応じて陽性または陰性選択のいずれかに応答しうる単一の転写産物により促進される(図2a)。これを実現する一つの方法は、陽性および陰性選択マーカー活性の両方を含んでなる融合ポリペプチドをコードする単一の構築物を作製することである。融合構築物の作製は当技術分野でよく知られている。当技術分野で知られている陽性および陰性選択マーカーは、かかる構築物に使用可能である。マーカーそれ自体について上に説明したように、選択マーカーは、理想的には、それぞれ選択のストリンジェンシーを調節することを可能にするダイナミックレンジを有し、このことからより広範な選択された変異体活性が得られる。選択マーカーのダイナミックレンジは好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、10倍、50倍、100倍、500倍またはそれ以上である。当業者は、例えば本明細書中の実施例に記載した方法を用いて、所定の選択マーカーおよびその対応する選択物質のダイナミックレンジを決定することができる。構築物においてどの選択マーカーポリペプチドをN末端に配置しどれをC末端に配置するかという判断は実験に基づくものであり得る。なぜならば、所定の2つのマーカーの組み合わせに対しては2つの選択肢しかないからである。しかしながら、構造の特徴、および例えば変更または立体障害に対するマーカーの感受性が既知である場合には、そうしたことを考慮することにより、2つの配置のうちのいずれが最も機能する可能性が高いかを決定することができる。必要であれば、当技術分野で知られている短いペプチドリンカーを用いて、2つの融合した選択マーカー同士の間隔を十分に空け、それにより両方のマーカーの選択機能を保存することができる。さらに、下の実施例は融合タンパク質において両方の選択マーカーポリペプチドの機能を究明するのに有用な方法を記載する。
本明細書において説明し、下の実施例において例証する方法は、遺伝子重複およびそれに続く新規な陽性および陰性選択による、高度に活性でありかつ高度に特異的である直交性リボソームmRNAペアの進化を可能にする。こうしたペアは、コグネイトな直交性リボソームによってのみ翻訳され得る転写産物を宿主細胞中で産生するために使用可能であり、そのことにより該転写産物によりコードされるポリペプチドの発現の極めて高感度な制御を可能にする。したがってこのペアを用いて、例えばかかるペアをコードする核酸を細胞に導入することにより、対象のポリペプチドを産生することができる(このとき直交性mRNAは対象のポリペプチドをコードする)。直交性リボソームによる直交性mRNAの翻訳は、対象のポリペプチドの産生をもたらす。直交性mRNA・直交性リボソームペアをコードする細胞内で産生されたポリペプチドは、非天然アミノ酸を含みうることも考慮される。
天然細胞中の前駆リボソームとは異なり、直交性リボソームはプロテオームの合成に関与することがなく、したがって直交性リボソームの機能をさらに分岐させることが可能となる。例えば、より高い効率と特異性で拡張されたコドンをデコードする、または天然コドンのサブセットのみを特異的にデコードするリボソームを作製することが可能である(Magliery, T.J., Anderson, J.C. & Schultz, P.G., J Mol Biol 307, 755-769 (2001), Anderson, J.C., Magliery, T.J. & Schultz, P.G., Chem Biol 9, 237-244 (2002))。こうした各リボソームには、遺伝暗号をさらに拡張または変更するための用途があろう。
本明細書に記載の方法は、リボソームRNAとmRNA上のリボソーム結合配列の間の塩基対形成が翻訳の開始中に生じる種における直交性mRNA直交性rRNAペアの選択に適用可能である。したがって本方法は、こうした機構が保存されている細菌種に対して広く適用可能である。多数の細菌種についての16S rRNA配列が既知であり、該細菌種の間の進化的関係を明示する系統樹を作製するためにこの配列自体が使用されてきた(例えばLudwig & Schleiferにより1994, FEMS Microbiol. Rev. 15: 155-73において概説されている、またBergey's Manual of Systematic Bacteriology 第1および2巻, Springer, George M. Garrity,編も参照のこと)。リボソームデータベースプロジェクトII (Cole JR, Chai B, Farris RJ, Wang Q, Kulam SA, McGarrell DM, Garrity GM, Tiedje JM, Nucleic Acids Res, (2005) 33(Database Issue):D294-D296. doi: 10.1093/nar/gki038)は、リリース9.28 (6 /17 /05)において、155,708個のアライメントされ注釈の付けられた16S rRNA配列ならびにオンライン解析ツールを提供する。
図6に示すような系統樹は、例えば16S rRNA配列とClustalW配列アライメントアルゴリズムにおける近隣結合法を用いて構築する。系統樹を用いると、ある種においてセットを互いに対して直交性とする、所定の変異のセット(16S rRNA上およびmRNA上の対応する翻訳制御配列)が別の種において類似の効果を有するであろう尤度を概算することができる。このことから、例えば、腸内細菌科ファミリーのあるメンバー(例えば大腸菌(E. coli))において、mRNA/16S rRNAペアを互いに対して直交性とする変異は、系統樹上の別のファミリーのメンバーよりも、同じファミリーの別のメンバー(例えばサルモネラ属(Salmonella))において直交性mRNA/直交性リボソームペアをもたらす可能性が高い。
細菌種が非常に近い関係にある事例の一部においては、ある種において直交性分子をもたらす対応する16S rRNAおよびmRNA変異を、該近い関係にある種に導入することにより、その関連する種において直交性mRNA直交性rRNAペアを生成させることができる可能性がある。また、細菌種が非常に近い関係にある(例えば大腸菌(E. coli)とサルモネラ属種)ときには、ある種からの直交性16S rRNAと直交性mRNAを、該近い関係にある種に直接導入して、その関連する種において機能性の直交性mRNA 直交性リボソームペアを得ることができる可能性がある。
あるいはまた、直交性mRNA直交性リボソームペアを同定したいと考える種が、ペアのセットが既に選択されている種と近い関係にない(例えばそれらが同じ系統発生学的ファミリーにない)場合には、本明細書に記載のポジティブ−ネガティブ選択法を用いて、所望の種において直交性mRNA 直交性リボソームペアを生成することができる。簡潔には、本明細書に記載のポジティブ−ネガティブ選択融合ポリペプチドをコードする配列に連結された変異したリボソーム結合配列のライブラリーを用意することができる(細菌種は選択物質の活性に感受性でなければならない、感受性であるかは当業者により容易に判定される)。次に、このライブラリーを選定した種に導入し、野生型リボソームの基質となるmRNAに対する選択を行うことができる。16S rRNA配列のライブラリーは、選定した種の16S rRNAを変異させることにより作製することができる。次に、この変異体16S rRNAライブラリーを、野生型リボソームの基質とならないmRNAを有する細胞に導入し、その後陽性選択マーカーを発現する細胞のための陽性選択を行うことにより、第1選択において選択されたmRNAとペアを成す直交性リボソームを同定することができる。
リボソーム結合配列は、異なる種において異なり得るし実際に異なるが、ある領域が対応する16S rRNAの領域と相補的であることは維持される。ある種において既知のコンセンサスリボソーム結合配列が必ずしも存在しないときには、2つの方法が可能である。ある方法では、その種におけるモデル転写産物の翻訳開始コドンに隣接するまたはその周囲に存在する配列(例えばハウスキーピング遺伝子または他の遺伝子のためのもの)が、変異したmRNA配列の第1ライブラリーを作製するために使用可能である。つまり、単一の転写産物の翻訳調節配列が、本明細書に記載の陽性−陰性レポーターに連結された翻訳調節配列の変異したライブラリーを作製するために使用可能である。上に記載した陰性および陽性選択ならびに変異体16S rRNA配列のライブラリーは、当該変異体翻訳調節配列のメンバーに基づく直交性mRNA 直交性リボソームペアの単離を可能にする。他方の方法では、任意の数の異なるアルゴリズムを使用して、選定した種からのmRNA配列を互いにアライメントし、また、リボソーム結合部位と塩基対形成すると期待される(大腸菌16S rRNAまたはmRNA−相互作用配列が既知である他の16S rRNAに対する類似性に基づき)16S rRNAの領域とアライメントすることができる。このアライメントは、当該16S rRNAと相互作用する可能性が最も高い保存配列の同定を可能にし、そのことによりその種のコンセンサスの選択を可能にする。次にそのコンセンサス領域において多様化されているmRNAライブラリーを作製して、本明細書に記載する、その種において機能性である直交性mRNA 直交性リボソームペアの選択のための出発材料を用意することができる。
本明細書に記載の方法は、広範囲の細菌(産業的および農業的に重要な細菌ならびに病原性細菌を含む)において翻訳または他の工程を制御するのに有用な分子の同定に応用可能である。病原性細菌は当業者に周知であり、16S rRNA配列のみならず多数のmRNAコード配列を含む配列情報が、例えばGenBankのような公共のデータベースから入手可能である。一般的であるが、非限定的な例として挙げられる細菌は、例えばサルモネラ属種、クロストリジウム属種、例えばボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、ブドウ球菌種、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、カンピロバクター種、例えばカンピロバクター・ジェジュニー(Campylobacter jejuni)、エルシニア属種、例えばペスト菌(Yersinia pestis)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)および仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、リステリア属種、例えばリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ビブリオ属種、例えばコレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)およびビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、アエロモナス属種、例えばアエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、シゲラ菌属種、レンサ球菌種、例えば化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、大便レンサ球菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・フェーシウム(Streptococcus faecium)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・デュランス(Streptococcus durans)、およびストレプトコッカス・アビウム(Streptococcus avium)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、クレブジエラ属種、エンテロバクター属種、プロテウス属種、シトロバクター属種、アエロバクター属種、プロビデンシア属種、ナイセリア属種、例えば淋菌(Neisseria gonorrhea)および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ヘモフィルス属種、例えばインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター属種、例えばヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ボルデテラ属種、例えば百日咳菌(Bordetella pertussis)、セラシア属種、および大腸菌(E. coli)の病原性の種, 例えば腸管毒素原性大腸菌(E. coli) (ETEC)、腸内病原性大腸菌(E. coli) (EPEC)および腸管出血性大腸菌(E. coli) O157:H7 (EHEC)である。
細菌形質転換:
本明細書に記載の方法は、外来または外因性の核酸を細菌に導入することに依拠する。外因性核酸を用いた細菌形質転換方法、および、特に、細菌が外因性核酸を取り込むように細胞をコンピテントとする方法は当技術分野で周知である。例えば、大腸菌(E. coli)のようなグラム陰性細菌は、塩化カルシウムまたは塩化ルビジウムのような多価カチオン性物質による処理により形質転換コンピテントとすることができる。グラム陽性細菌は、分解性の酵素と共にインキュベートすることによりペプチドグリカン層を除去し、そのことによりプロトプラストを形成させることができる。プロトプラストをDNAおよびポリエチレングリコールと共にインキュベートすると、細胞融合およびそれに付随するDNA取り込みがもたらされる。こうした例の両方において、DNAが線状であれば、それはヌクレアーゼに感受性となる傾向があるため、形質転換は共有結合で閉環した環状DNAを使用した場合に最も効率的となる。あるいはまた、ヌクレアーゼ欠失細胞(RecBC-株)を使用して形質転換を改善することも可能である。
エレクトロポレーション法もまた、細菌細胞に核酸を導入することでよく知られている。例えば、大腸菌のようなグラム陰性細菌のエレクトロポレーションについての方法はよく知られており、またグラム陽性細菌、例えば特にエンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis)のような細菌についてのエレクトロポレーション法もよく知られているが、これは例えばDunny らにより記載されている(1991, Appl. Environ. Microbiol. 57: 1194-1201)。
直交性リボソーム直交性mRNAペアの選択のための、本明細書に記載のポジティブ−ネガティブ選択法は、直交性分子の追加のペアの選択に応用することができる。例えば、直交性プロモーター/ポリメラーゼペアは、本明細書に記載のポジティブ−ネガティブ選択法を応用することにより同手することができる。直交性リボソーム直交性mRNAペアの選択のための本明細書に記載の方法と同様に、プロモーターのライブラリーを作製し、陰性選択(例えば5-FU/UPRT選択)を用いて内因性ポリメラーゼにより転写されることのない、またはその点についてはその細胞において発現される所望の外因性ポリメラーゼにより転写されることのないプロモーターについてスクリーニングすることができる。次に、前記陰性選択された細胞を、変異体ポリメラーゼをコードするライブラリーで形質転換し、その後それらの細胞を陽性選択に供することにより、第1ステップで選択された変異体プロモーターから陽性選択マーカー (例えばCAT)を発現するものを選択する。得られるのは、野生型ポリメラーゼにより認識されない変異体プロモーターおよびその変異体プロモーターを特異的に認識するポリメラーゼである。一緒になってこれらは、遺伝子調節の非常に特異的な手段を構成する。
同様の手法が、例えばリボスイッチまたはリボ調節因子の選択に使用可能である。「リボスイッチ」とは、代謝産物または他の小分子もしくはイオンの存在下で折りたたみ可能なmRNA構造であり、該折りたたみによりmRNAコンホメーションが変更されて翻訳が調節される。したがってリボスイッチは、代謝産物の存在を検知する、一部のmRNA中の非コード部分における構造化ドメインである。代謝産物結合はmRNAにおけるアロステリック変化を生じ、その変化が翻訳開始または翻訳終結のような工程における変化をもたらす。リボスイッチはMandal & Breaker, 2004, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 5:451-63においてさらに記載されている。本明細書に記載のポジティブ−ネガティブ選択法を用いて、mRNAライブラリーから、小分子に結合し遺伝子発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることのできる配列を選択することができる。このことは、例えば、SD配列の5'にmRNA配列のライブラリーを配置し、SD配列の翻訳を不活性化する配列を同定する(5-FU/UPRT 選択)ことにより実現することができる。次に小分子を添加し、陽性選択により翻訳の再活性化を選択する。相互的な手法を用いて、遺伝子発現の小分子リプレッサーを得ることができる。
「リボ調節因子」とは、遺伝子発現を調節する小さなRNAである。「リボ調節因子」は例えば、Eddy, 1999, Curr. Opin. Genet. Dev. 1999 9:695-9およびLease ら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 95:12456-61に記載されている。上のリボスイッチの例における小分子を、小さな非コード型RNAの発現で置き換えることにより、mRNA翻訳を活性化または抑制するリボ調節因子RNAを同定することができる。
ポジティブ−ネガティブ選択はまた、改変された転写因子/転写因子結合部位ペアを同定するために使用可能である。この手法においては、既知の転写因子結合部位を変更してもよく、最も極端な例では完全にランダムな配列に変更してもよい。野生型因子では転写されない配列は、5-FU/UPRTを用いた陰性選択により選択される。その後、変異体転写因子のライブラリーを導入し、陽性選択マーカー(例えばCAT)の発現をもたらす、活性部位からの転写の活性化について陽性選択を行う。
実施例1:ポジティブ−ネガティブ選択マーカー融合構築物の作製と試験
p15A由来ベクター(細胞当たり10〜15コピーに維持される)上で、構成的プロモーターおよび野生型リボソーム結合部位の下流に、クロラムフェニコールアセチル−トランスフェラーゼ(cat)遺伝子とウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(upp)遺伝子との遺伝的融合物を作製した。CATもUPRTも三量体として機能するが、CAT三量体は結晶化されている(Leslie, A.G., J Mol Biol 213, 167-186 (1990))のに対して、UPRT三量体は構造と対称性が未知である(Rasmussen, U.B., Mygind, B. & Nygaard, P., Biochim Biophys Acta 881, 268-275 (1986))。そのため、単一のポリペプチド中に両方の活性を生じる正しい連結は不明であった。しかし、以前にCATがそのN末端への融合物に感受性であることが観察されており、このことに基づき、cat-upp融合物を作製することとした。
CAT-UPRT融合物を発現するベクターであるP21は、p15A複製起点、構成的な種類のTrpプロモーターの下流におけるcat-upp融合物、およびテトラサイクリン耐性マーカーを有する。すべてのBsa I制限部位を除くことにより、ベクターをテンプレートとして使用するライブラリー構築または酵素的逆PCR突然変異誘発 (Yusupova, G.Z., Yusupov, M.M., Cate, J.H. & Noller, H.F., Cell 106, 233-241 (2001))を可能にした。プラスミドは、標準的分子生物学法を用いて複数の工程から作製した(プラスミドマップは下に示す)。酵素的逆PCR(ライブラリー構築において詳細に説明)を用いて、プロモーター無しのcat-upp融合物であるP23、およびp21をテンプレートとして使用する開始コドン欠失cat-upp融合物であるP24を構築した。これらのベクターを構築するために使用したオリゴヌクレオチドの完全な配列を下に示す。
cat-upp融合物からCATもUPRTも機能的に発現されていることを証明するため、および各選択のダイナミックレンジを測定するために、2つの構築物を作製した。一方の構築物はcat-upp融合物を構成的に発現する最大翻訳対照であり、他方の構築物Δpcat-uppはcat-upp融合物のプロモーター全体を欠失させた最小翻訳対照である。ゲノムuppのORF欠失を有する大腸菌(E. coli)の株(GH371)に形質転換したとき、cat-upp融合物は150μg mL-1のクロラムフェニコール濃度での細胞生存を可能にしたが、これに対してΔpcat-uppは5μg mL-1 〜10μg mL-1のクロラムフェニコール耐性をもたらすのみであった(図2b)。これらの実験は、CATがcat-upp融合物から機能的な形態で産生され、この陽性選択のダイナミックレンジが15倍であることを実証している。
UPRTがcat-upp融合物中で活性であることを証明するため、および5-FU仲介陰性選択のダイナミックレンジを評価するために、5-FUの濃度増大に対する、cat-upp/GH371またはΔpcat-upp/GH371を含有する細胞の両方の生存性を測定した。Cat-upp/GH371は0.5μg mL-1濃度の5-FUにより死滅したが、これに対してΔpcat-upp/GH371は最大20μg mL-1の5-FUでも生存した。これらの実験はUPRTがcat-upp融合物から機能的な形態で産生されること、およびこの陰性選択のダイナミックレンジが50倍であることを実証している (図2b)。クロラムフェニコールまたは5FU上でのΔpcat-upp/GH371の生存スペクトルは、Δ/GH371 (Δはcat-upp ORF全体を欠失させたプラスミドである)の生存と区別不能であり、このことは、他のプラスミドコード遺伝子の漏れやすい転写から誘導されれるcat-upp ORFの測定可能な読み通しが無いことを実証する。
モデル富化試験を行うことにより、内因性リボソームの基質とはならない直交性SD配列を選択するため、および相補的リボソームを選択するためのこの系の潜在力を検討した。こうしたモデル選択の概略を以下の表1に示す。
Figure 0005213706
a) 混合する前に、25μg mL-1 テトラサイクリンを含有し、クロラムフェニコールまたは5-FU不含である培地上での、Δプロモーターおよび+プロモータークローンのコロニー形成単位(c.f.u.)から計算。
b) 約108 c.f.u.をプレートに播種した。
c) プロモーターを有するこうしたクローンのパーセンテージ(10をコロニーPCRおよび配列決定により特徴付け)。
d) 約106 c.f.u. をプレートに播種した。
e) プロモーターを有しないこうしたクローンのパーセンテージ(10をコロニーPCRおよび配列決定により特徴付け)。
第1の選択において、大過剰の活性リボソームmRNAペアからの不活性リボソームmRNAペアの富化をモデリングした。Δpcat-upp/GH371を10〜104倍過剰のcat-upp/GH371と混合し、この混合物を0.5μg mL-1 5-FU上で選択した。生存細胞と播種した合計細胞数との比は、選択なしでのΔpcat-uppとcat-uppとの比と良好に相関する。コロニーPCRから、選択クローンの100%がΔpcat-uppであることを確認した。こうした実験は、UPRTに基づく陰性選択が、内因性リボソームの基質である104倍を超える過剰のmRNA配列からの、内因性リボソームの基質とならないクローンの富化を可能にすることを実証している。
第2の選択において、大過剰の不活性リボソームmRNAペアからの活性リボソームmRNAペアの富化をモデリングした(表1)。cat-upp/GH371を、10〜106倍過剰のΔ pcat-upp/GH371含有細胞と混合した。100μg mL-1クロラムフェニコール上での生存細胞と播種した合計細胞数との比は、選択なしでのcat-upp/GH371とΔpcat-upp/GH371との比と良好に相関し、また、コロニーPCRから選択クローンがcat-uppであることを確認した。こうした実験は、CATに基づく陽性選択が、105倍を超える過剰の非機能性ペアから活性リボソームmRNAペアを富化することができることを実証している。
実施例2:SD・ASDライブラリーの設計と構築
A) mRNAライブラリー:
ゲノム全体にわたる、AUG開始コドンに対して5'の配列における変化の解析からは、リボソーム結合に関する情報量が最も多いのは−7〜−13であることが実証されており、このとき、リボソーム結合を特定するこの情報は、ゲノム中の異なる配列において、異なる様式でこの配列にわたり分配されている(Shultzaberger, R.K., Bucheimer, R.E., Rudd, K.E. & Schneider, T.D., J Mol Biol 313, 215-228 (2001))。−7〜−13の7ヌクレオチド全てを、全ての可能な配列組み合わせへと変異させるライブラリーを設計した(図3a)。このライブラリーは、すべての潜在的5塩基SD配列を含有し(これには野生型塩基を有する配列も含まれる)、理論上の多様性は47 = 16,384である。さらに、このライブラリーは、リボソームと塩基対形成する領域が、開始コドンに関して合わせて変化することを可能にする。
このmRNAlibは、プライマーの5'- GGGAAAGGTCTCCCGCTTTCANNNNNNNCCGCAAATGGAGAAAAAAATCACTGGATATACC-3' (配列番号3) および5'-GGAGTAGGTCTCAAGCGGCCGCTTCCACACATTAAACTAGTTC-3' (配列番号4)、ならびにテンプレートとしてのp21を使用して酵素的逆PCRにより作製した。反応は、20 pmol フォワードプライマー、20 pmolリバースプライマー、10 ng テンプレートプラスミド、40 pmol 各種dNTP、1×Expand buffer 2 (Roche)を合計容量49.5μl中に含有した。1.75 UのExpand High Fidelity DNAポリメラーゼ(Roche, 3.5 Uμl-1)を80℃にて反応に添加した。反応を、20サイクルにわたりタッチダウンPCR (94℃ , 20秒; 65℃, 20秒 (−1℃ サイクル-1); 68℃, 8分)にてサイクリングし、その後、20サイクルにわたり増幅させた(94℃, 20秒; 50℃, 20秒; 68℃, 8分)。得られたPCR産物 (5μg)を精製し(Qiagen PCR 精製)、消化し(Dpn I (40 U, 6時間); Bsa I (50 U, 6時間)、再度精製し(Qiagen PCR精製)、連結し(T4 DNAリガーゼ(16℃、12時間)、エタノール沈殿させ、その後、エレクトロポレーションによりDH10Bエレクトロコンピテント細胞中に形質転換体した。プラスミドDNAを単離し、選択のためにGH371細胞に再度、形質転換体した。この株(J. Christopher Anderson, UCSFからの親切な寄贈物)は、GeneHogs 大腸菌(E. coli)の誘導株であり、upp ORFが完全に欠失している。当技術分野で周知の遺伝子ノックアウト法を用いて非機能性upp ORFを有する類似の株を直接的に作製することができる。あるいはまた、必要に応じてupp変異体を選択することもでき、これは例えば、大腸菌株を低用量の5-FUに曝露し、その後、upp 遺伝子を自発的にupp 遺伝子をダウンレギュレートする生存細胞を選択することにより行う。
mRNAlibライブラリーは107 より多くの独立形質転換体を実現するものであり、これは、ライブラリーが完全であるとの99.99%より高い信頼性(ポアソン分布より決定)を提供する(Ladner, R.C. in Phage Display of Peptides and Proteins. (編B.K. Kay, J. Winter & J. McCafferty) 151-194 (Academic Press, San Diego; 1996))。内因性リボソームの基質となるmRNAlibクローンの部分を判別するために、mRNAlibで形質転換したGH371細胞を、クロラムフェニコールを含有しないアガープレート上に、および非形質転換細胞を殺菌するのにちょうど十分な濃度(10μg/mL-1)のクロラムフェニコールを含有するアガープレート上に播種した。50%の細胞が10μg mL-1でも生存し、このことはライブラリーの約半分が内因性リボソームによりいくらか翻訳されることを示唆する。ライブラリーの理論的多様性は16,384であり、そして配列決定はライブラリーのヌクレオチド組成が有意に片寄っていないことを明らかにしたことから、約8,000の異なる配列が内因性リボソームにより翻訳されず、潜在的に直交性である。
B) rRNA ライブラリー:
リボソームRNAライブラリー(rRNAlib)を作製するために、16S rRNA中の8ヌクレオチド(図3a、b)を変異させた。こうしたヌクレオチドのうちの6つは、16S rRNAの3'末端における1536〜1541領域にある。これらのうちの5つが、古典的SD ASD相互作用にてmRNAと塩基対形成し(Yusupova, G.Z., Yusupov, M.M., Cate, J.H. & Noller, H.F., Cell 106, 233-241 (2001))、内因性mRNAの翻訳効率の明らかに重要な決定因子であり、これに対して6つ目のヌクレオチドはSDとリボソームA部位との間の空間にさらなる柔軟性を付与する。最後の2つの変異塩基、722および723は、リボソームとmRNAの間に形成されるSDヘリックスのマイナーグルーブに近接するバルジを形成する(Yusupova, G.Z., ら, 前掲)。722は、ヌクレオチド767と、非カノニカルなG-G塩基対を形成する。723は対形成せず、SDヘリックスのマイナーグルーブに接近するが、リボソームを通るmRNAの経路を示す5Å構造(Yusupova, G.Z., ら, 前掲)においては、723バルジとSDヘリックスとの相互作用の分子的な細部は不明確である。これらの変異は、723バルジがSDヘリックスのマイナーグルーブの幾何配置をモニタリングする可能性を認めるものであり、これらの位置における変異が拡張されたセットの機能性SD ASD配列へのアクセスを実現する可能性を追求するものである。
rRNAライブラリー構築用のプラスミドはpSP72およびpSP73 (Promega)の誘導体であり、それらからBsa IおよびPst I部位が除かれ、かつ新たにPst IおよびNgoM IV部位がβ-ラクタマーゼ遺伝子中に遺伝子工学的に導入されている。大腸菌rrnB 23S含有断片を、pSTL102 (Harry Noller教授, University of California, Santa Cruzからの親切な寄贈物)からのXba I, BamH I断片として、前記pSP73誘導体にサブクローニングし、プラスミドpJC23Sを得た。大腸菌rrnB 16S断片は、Cla IおよびXba I隣接配列を用いてpSTL102から増幅し、Cla IおよびXba Iを用使用して前記pSP72誘導体にクローニングし、pJC16Sを得た。pJC23SとpJC16Sのプラスミドマップを下に示す。変異体rRNA配列の発現のために、pTrcHis2 A (Invitrogen)の誘導体を構築し、これをpTrcΔKanと命名した。pTrcΔKanのプラスミドマップも下に示す。
16S rRNA変異体のrRNAlibライブラリーは、mRNAlibの構築について説明したように、2ラウンドの酵素的逆PCR、各ラウンドに続く、Dpn I、Bsa I消化、連結および形質転換により作製した。これに続き、pJC23S由来の23S/5S断片とのオペロンアセンブリを行い、その後、この完全オペロンをプロモーターに移した。16S rRNAの3'末端におけるライブラリーを構築するために、pJC16Sをテンプレートとして、オリゴヌクレオチド5'- GGAAAGGTCTCAGGTTGGATCANNNNNNTACCTTAAAGAAGCGTACTTTGTAG-3' (配列番号5)および 5'-GAGTAGGTCTCAAACCGCAGGTTCCCCTACG-3' (配列番号6)と共に使用した。得られたライブラリーは、オリゴヌクレオチド5'- GGAAAGGTCTCAGAATACCGNNGGCGAAGGCGGCCCCCTGGACGAA-3' (配列番号7)および5'-GAGTAGGTCTCAATTCCTCCAGATCTCTACGCATTTCAC-3' (配列番号8)を使用する、位置722および723におけるヌクレオチドのランダム化のためのテンプレートとして用いた。pJC16Sバックボーン中の16S rRNA変異体ライブラリーを、ゲル精製DNA 断片のPst I, Xba Iサブクローニングにより、pJC23S中の23Sおよび5S rRNA 含有断片とアセンブリーした。得られたpJC16S23SプラスミドはrrnB rRNAオペロンのライブラリーを有する。これらを、pJC16S23S のBamH I, Nde IおよびXho I消化、ならびにpTrcΔKan のBamH I, Stu I,およびXho I消化によりpTrcΔ発現プラスミドに移した。得られたBamH I, Xho I 断片をゲル精製しサブクローニングして、rRNAlibを作製した。
このライブラリーは、8つの変異させたヌクレオチドのヌクレオチド組成について何も推測せず、8つの位置の各々において全4種の塩基を可能とし、48=65,536の論理的多様性をもたらす。rRNAlibの107 を超える独立形質転換体を実現し、ライブラリーが完全であるとの99.99%を超える信頼性を提供した(ポアソンサンプリングにより計算(Ladner, R.C., 前掲))。mRNAlibおよびrRNAlibライブラリーメンバーの固有のペアは109を超える組み合わせのマトリックスを形成する。
実施例3:直交性リボソームmRNAペアの選択および特徴付け
O-リボソームO-mRNA組み合わせのマトリックスを調べるために、2工程手法を用いた。第1工程においては内因性リボソームにより翻訳されないmRNA配列をスクリーニングした。内因性リボソームの基質となるmRNAlibメンバーを除くために、5-FUの存在下でリボソーム結合部位ライブラリーを増殖させることによる陰性選択を行った。活性なリボソーム結合部位は、cat-upp融合物の合成を指令しUPRTタンパク質は5FUを有毒な産物に変換し、細胞を毒する。対照的に、内因性リボソームの基質とならないリボソーム結合部位はUPRTの合成を指令せず選択において生存する。したがってライブラリーは、O-mRNAが選択的に富化される。この第1選択からの10クローンをランダムに配列決定した。この時点では10の異なる配列が観察され、このライブラリーが依然としてかなり多様であることを示唆したが、これは、mRNAlibライブラリーの半分が5FU選択前にも内因性リボソームの基質とならないとの以前の観察からの予測と一致する。
第2工程においては、選択された直交性mRNAを翻訳するリボソームについてスクリーニングを行った。選択されたリボソーム結合部位を含有する細胞を変異体リボソームのライブラリーで形質転換し1011の形質転換体を得、リボソームmRNA組み合わせの合計理論的多様性を二桁上回ってサンプリングした。このライブラリーをクロラムフェニコールの存在下で増殖させ、活性リボソームO-mRNAペアを選択した。この選択においては野生型ペアと同等の活性を有するペアのみを探索した。さほどストリンジェントではない条件化では、これほど高活性ではないが、なおも活性であるリボソームmRNAペアを単離できる可能性がある。
この選択に使用した方法を下に手短に説明する。GH371 大腸菌をmRNAlibで形質転換し、その後、SOC中で1時間回復させた。次にこのライブラリーを選択培地(0.4%グルコース, 0.2% カザミノ酸, 25μg mL-1 テトラサイクリン, 0.5μg mL-1 5-FUを含有するM9アガー)に播種した。24時間後に、生存細胞をプールしてエレクトロコンピテントGH371/mRNAlib(-)細胞を調製するために使用した。
GH371/mRNAlib(-)細胞をrRNAlib ライブラリーで形質転換し、その後、1時間にわたり2 %グルコースを含有するSOB中で回復させた。回復した細胞を用いて200 mLのLB-GAT (2% v/vグルコース, 100μg mL-1 アンピシリン, 25μg mL-1 テトラサイクリンを添加したLB培地)に接種し、飽和まで増殖させ、その後、3000gにて遠心分離によりペレット化させた。この細胞をLB-AT ((100μg mL-1 アンピシリン, 25μg mL-1 テトラサイクリンを添加したLB培地)に再懸濁し、その後インキュベートし(37℃, 300 rpm, 1時間)、その後、3000gにてペレット化させた。細胞を、等容量のLB-ATI(25μg mL-1 アンピシリン および7.5μg mL-1 テトラサイクリン, 1mM イソプロピル-D-チオガラクトピラノシド (IPTG)を含有するLB培地)に再懸濁し、その後インキュベートした(37℃, 300 rpm, 3.5時間)。1 mLアリコート (OD600 = 1)を、100μg mL-1のクロラムフェニコールを添加したLB ATIアガーに播種し、インキュベートした(16時間, 37 ℃)。
選択クローンから全プラスミドDNAを単離した。自身のコグネイトなmRNAlibメンバー
からrRNAlibメンバーを精製するため、およびその逆のために、各プラスミドサンプルの一部を、rRNAlibにおいてのみ存在する部位(Bsa I)またはmRNAlibにおいてのみ存在する部位(Not I)を認識する制限酵素を用いて消化し、その後、消化物をGH371に再度形質転換した。個々の形質転換体をアンピシリンおよびテトラサイクリン上で複製しつつ播種し、分離を確認した。プラスミドDNAは標準法により単離し配列決定した。
コンピテントGH371/mRNAlibクローンを、pTrc-WT(rrnBオペロン由来のrRNAをコード)または対応するrRNAlibメンバーのいずれかと並行して形質転換した。細胞を、2%グルコースを有するSOB中で回復させ、その後、LB GATに移し、200 rpmにて一晩増殖させた。細胞(100μl)を96ウェル培養ブロックの各ウェルに移し、3000gにて遠心分離することによりペレット化させた。細胞を1 mL LB AT中で再懸濁し、インキュベートし(37 ℃, 300 rpm, 1時間)、その後、3000gにてペレット化させた。これらを等容量のLB ATIに再懸濁し、その後インキュベートし(37℃, 300 rpm, 3.5時間)、次いで96ウェルピンツールを用いて、0〜100μg mL-1の濃度のクロラムフェニコールを含有するLB ATIアガー上に整列させた。3種の直交性リボソームおよびmRNAの間のリボソームmRNAネットワークを形成する相互作用を測定するために、アッセイをコグネイトなおよび非コグネイトなリボソームmRNAペアを用いて反復した。
この2工程選択から、51の個別のリボソームRNAおよび対応するO-mRNAを配列決定した (図4a)。4つの異なるO-mRNAが発見され(図4a)、このとき、その4つの単離された配列のうちの2つは変異誘発領域においてプログラムされていない欠失を含有した。陰性選択後の10クローンの配列決定が10の異なる配列をもたらしたこと、およびその段階における多様性が約8,000であると推定されたことから、この陽性選択がmRNA配列において有意の収束(約2,000倍)をもたらしたと結論付けた。こうした結果はO-リボソームO-mRNAペアを見出すためのこの選択方法の効果を浮き彫りにする。内因性リボソームでは機能しないmRNA SD配列を発見することは比較的簡単である可能性があるが(例えばmRNA配列を変更して16S rRNAとの塩基対形成を除くことにより)、こうしたmRNA配列の大部分を相補するための高活性で、非毒性のリボソームは存在せず、相補されうるmRNA配列を選ぶ確率は非常に低い。
O-mRNAへの相補性を有する10の異なるリボソームが発見された(図4a)。選択されたリボソームの16S rRNAにおける変異は、いくつかの部位において高度に収束している。位置1536ではU (59 %)が支配的である。位置1537では、Gが非常に強力に選択される(90 %)。位置1539はプリン: A(69%)またはG(31%)のみを有し、そして位置1540はGが支配的である(73%)。いくつかの位置では野生型残基が適当な頻度で選択される: 1535Cは13%の配列において回復しており、1538Cは51%の配列において回復している。選択クローンにおける位置722および723の配列保存性は低い。しかしながらプリンおよびピリミジンは、ある選択配列ではこれらの位置において互いに排他的であり、このことはこのループが占める体積を保存する選択制約を反映したものでありうる。
この最初のスクリーニングで10ペアのコグネイトなリボソームmRNA配列が同定された (図4b)。各mRNAは、そのコグネイトなリボソームの不在下では、クロラムフェニコール上で10μg mL-1 未満のIC50を有し、したがって内因性リボソームに対して直交性 (O-mRNA)である。共に選択されたリボソームの添加は、いずれの場合にもIC50 を150μg mL-1以上へと増加させる。したがって共に選択されたリボソームは高活性であり、内因性リボソームが古典的SD配列から同じメッセージを翻訳するのと同じまたはそれ以上にO-mRNAからのメッセージを翻訳する。この10ペアは、予測されるSD ASD塩基対形成に基づき3つのクラスに分類され、このとき各クラスはちょうど5塩基対にわたりSD ASD 相互作用を形成する。ペアの第1クラスは、mRNA中のAUGに対する塩基ACCAC−6(配列番号9; ナンバリングは3'塩基の位置を指す)を含有する。これは5塩基にわたりこのmRNAとWatson-Crick対形成することのできる4種の異なるリボソームにより相補される。SD配列に関しては、16S rRNAの2つの異なるレジスタが観察された。rRNA-1により示される第1のレジスタでは、16S rRNAの塩基1536〜1540がmRNA-AとWatson-Crick対形成する。ペアA2, A3, およびA4により示される第2のレジスタでは、16S rRNAの塩基1537〜1541がコグネイトなmRNAとWatson-Crick対形成する。選択配列中で、mRNAとWatson-Crick塩基対形成するrRNAの領域の直ちに5'の2つの位置ではピリミジンが好まれる。ペアの第2クラス (B5, B6, B7, B8)は、O-mRNA中のAUGに対する配列ACUGC −7 (配列番号10)を有する。16S rRNAの領域1537〜1541は、このO-mRNA配列とWatson-Crick 塩基対形成する。これらのクローンにおける位置1535および1536ではピリミジンが支配的である。第3のクラスのペア (C9, D10)は、O-mRNA中のAUGに対する配列AUCCC −6 (配列番号11)を含有する。16S rRNAの領域1536〜1540は、O-mRNAとWatson-Crick 塩基対形成する。
選択rRNA配列は野生型rRNA配列と比較して5〜8の変異を有し、そのためこれらが内因性転写産物の翻訳と差別化される可能性は高い。さらに、細胞が変異体リボソームの存在下で何世代にもわたり増殖したことから、選択変異体リボソームはプロテオーム合成を誤調節しない可能性が高い。実際に、選択リボソームmRNA 相互作用のWatson-Crick対形成領域の外側に存在し、それにもかかわらず古典的SD ASDヘリックスにおいて鍵となるG-C 塩基対を形成する残基1535および1536の強力な収束性の原因は、プロテオーム誤調節に対する陰性選択である可能性がある。変異体リボソームが細胞生存性に影響を及ぼす転写産物の翻訳を有害に誤調節しないことを実証するために、リボソーム合成を誘導し、細胞増殖を10時間にわたりモニタリングした(図4c)。3時間後に細胞を溶菌させるよう設計された「特殊化されたリボソーム」(Hui, A. & de Boer, H.A.,前掲), Lee, K. ら, 前掲, Wood, T.K. & Peretti, S.W., Biotechnol. Bioeng 38, 891-906 (1991))とは対照的に、ここで選択されたリボソームは、細胞を溶菌させず、かつこれらのリボソームで形質転換された細胞は、野生型リボソームを有する細胞と同じ速度で倍加する。その上、選択されたrRNA配列の一部を構成的で強力なP1P2プロモーター(該プロモーターから野生型rRNAが合成される)下に移したが、細胞増殖に有意に影響はなかった。
変異体リボソームの直交性の範囲をすべての細胞性転写産物に関して全体的に評価するために、スペクチノマイシンを用いて細胞性リボソームを不活性化し、その後、16S rRNAにおけるC1192U変異のおかげでスペクチノマイシン耐性である変異体リボソームからの翻訳を測定した(Sigmund, C.D., Ettayebi, M. & Morgan, E.A., Nucleic Acids Res 12, 4653-4663 (1984))、(図4d)。使用した方法を以下に簡潔に説明する。GH371/rRNAlib/mRNAlibクローンをLB GAT中で飽和まで増殖させた。この細胞を3000gにて遠心分離によりペレット化し、その後、2%グリセロール、メチオニンを除く全19種の天然アミノ酸、25μg mL-1 アンピシリン、7.5μg mL-1 テトラサイクリンを添加したM9最小培地中にOD600=0.1にて再懸濁した。細胞をインキュベートし(37℃, 300 rpm, 1時間)、次いでペレット化させて、その後、等容量の上と同じ培地に再懸濁し1 mM IPTGを添加した。インキュベート後(37℃, 300 rpm, 1時間)に、スペクチノマイシン (500μg mL-1)を培地に添加して内因性タンパク質合成を阻害した(Rasmussen, ら, 前掲)。さらに10分後に35Sメチオニン(>1000 Ci mmol-1, Amersham)を最終濃度30 nMにて添加した。細胞をさらに3時間増殖させ、遠心分離により回収した。細胞(OD600 = 0.1に希釈)を、SDSローディングバッファー中で沸騰させることにより溶菌させた。得られた溶解物を氷冷し、その後、4-12% SDS-PAGE (200V, 35分)により分離した。このゲルを乾燥させ、Storm 840 Phosphoimager (Amersham)を用いて撮影した。直交性のペアの細胞増殖に対する影響を測定するために、GH371をLB AT中で増殖させ、3000gにてペレット化し、LB ATI中でOD 600 = 0.1に希釈し、その後、飽和までインキュベートした(37 ℃, 300 rpm, 10時間)。OD600 測定を100分ごとに行った。
自身のコグネイトなリボソーム結合部位の不在下では、変異体リボソームは内因性タンパク質を合成しない。しかしながら、コグネイトなリボソーム結合部位の下流のcat-upp融合物の存在下では、スペクチノマイシン耐性翻訳の90%超がCAT-UPRT合成に関与する。野生型SD配列上のcat-uppを用いた対照実験は、このタンパク質が多くの内因性タンパク質より低いレベルで発現していることを示しており(未掲載)、この結果がcat-upp融合物の過剰発現に起因したものではないことを実証している。したがって本明細書に記載のペアは、直交性リボソームmRNAペア(O-リボソームO-mRNAペア)である。
実施例4:直交性リボソームを用いたブール論理
ブール論理のプログラム可能な合成のための直交性リボソームmRNAペアの潜在力を実証するために、出力が直交性リボソームにより制御される、単純な論理ゲートを設計した。回路の構成要素はO-リボソーム、対応する直交性のSD配列上にβ-ガラクトシダーゼのα-断片をコードする遺伝子(Ullmann, A., Jacob, F. & Monod, J., J Mol Biol 24, 339-343 (1967))、および野生型SD配列上にβ-ガラクトシダーゼのω断片をコードする遺伝子(Ullmann, ら, 前掲)である。用いた構築物および方法を以下に簡潔に説明する。β-ガラクトシダーゼα-断片を発現するプラスミドは、p21中のcat-upp 融合遺伝子をmRNA-CまたはmRNA-A SD配列の下流の大腸菌lacZ遺伝子のPCR断片と置き換えることにより構築した。rRNA-9またはrRNA-2を、コグネイトなRBSの下流にlacZのα相補性断片を有するp21誘導体と共にまたはなしで、DH10BまたはBW26444細胞(B. L. Wanner, Purdue University, West Lafayetteの親切な寄贈物)に形質転換した。DH10B細胞は、lacZ内のアミノ酸11 − 41に対応する染色体欠失ゆえに、β-ガラクトシダーゼのω断片を産生する。lacZは、BW26444 (Δ(araD-araB)567, Δ(lacA-lacZ)519(::FRT), lacIp-4000(lacIQ), λ, rpoS396(Am), rph-1, Δ (rhaD-rhaB)568, hsdR514)では完全に欠失している。細胞を2%グルコースを含むSOB中で回復させ、LB GATに移し、その後、200 rpmにて一晩増殖させた。細胞(100 μl)を96ウェル培養ブロックの各ウェルに移し、3000gにて遠心分離しペレット化した。細胞を1 mL LB AT中で再懸濁し、インキュベートし(37 ℃, 300 rpm, 1時間)、その後、3000gにてペレット化した。細胞ペレットを等容量のLB ATIに再懸濁し、次いでインキュベートし(37℃, 300 rpm, 3.5時間)、その後、96ウェルピンツールを用いて、30μg mL-1 3,4-シクロヘキセノエスクレチン-β-D-ガラクトピラノシド (S-gal)および50μg mL-1 クエン酸鉄(III)アンモニウムを含有するLB ATIアガー上に整列させた。
これらの分子の各々の測定された特異性に基づいて予測されたとおりに、これらの構成要素はAND関数を形成し、このとき機能性β-ガラクトシダーゼのアセンブリはこの3つの構成要素がそれぞれ存在することに依存する(図5a)。
選択された直交性のペアが、野生型リボソームに対して、および互いに対して予測可能なそして明確な特異性を有することを本明細書において実証した。こうした知られている関係は、遺伝子発現の転写後調節のためのブールオペレーターのプログラミングによる合成を可能にし、また、より複雑なブールネットワークの合成を促進する。例えば、本明細書に記載のリボソームおよび結合部位のみを用いて、3種の基本的オペレーターのうちの2種、and orを合成することが可能である。本明細書に報告するリボソームと、明確な分子特異性を有する他の細胞性構成要素との組み合わせは、複雑な細胞性関数の論理的合成のための、精巧な、かつプログラム可能な、転写後遺伝子調節性ネットワークをもたらすはずである。
特に記載しておくこととして、ブール論理は、単一細胞中に複数の(例えば2以上、3以上、5以上、10以上、20以上など)直交性リボソーム直交性-mRNAペアを同時に使用することでもたらされうる。この目的を達成するために、mRNA-CおよびmRNA-Aを、過剰にω断片を発現する大腸菌株中の、2つのあるいは操作しなければ同一であるα断片遺伝子の上流に配置した。細胞を、rRNA-9およびrRNA-2の両方、または、一方もしくは他方の変異体rRNAおよび野生型rRNAをコードするプラスミドDNAで形質転換した。細胞を上に記載したように処理した。予想どおり、各変異体rRNAはβ-ガラクトシダーゼ活性をもたらしたが、しかし両方の変異体rRNAで形質転換された細胞は増強されたβ-ガラクトシダーゼ活性を示した。このことは、低いβ-ガラクトシダーゼ活性閾値ではOR関数を、そして高い閾値ではAND関数を実証するものである。これらの実験はさらに、複数の変異体rRNAを用いて、細胞内で複数の変異体リボソーム集団を同時に生成させることが可能であることを始めて実証し、リボソームにより全体が構成される論理的オペレーターを合成できる可能性を実証する。
実施例5:直交性リボソームを用いたブール論理
mRNA上のコグネイトなおよび非コグネイトな直交性リボソーム結合部位の両方に関する、各O-リボソームの分子特異性のネットワークは、単独での各対ごとのO-リボソーム・O-mRNA相互作用を考慮することにより決定した。O-リボソーム・O-mRNAペアは、相互の直交性を決定する分子特異性を有する。例えば、O-リボソーム-Aは、自身のコグネイトなO-mRNA-Aを翻訳するが非コグネイトO-mRNA-Cを翻訳せず、また、O-リボソーム-Cは自身のコグネイトなO-mRNA-Cを翻訳するが、非コグネイトO-mRNA-Aを翻訳しない。同様に、O-リボソーム-B・O-mRNA-BおよびO-リボソーム-C・O-mRNA-Cは相互に直交性である(図7)(Rackham & Chin, 2005, J. Am. Chem Soc. 127(50):17584-5も参照されたい、参照によりその全内容を本明細書に組み入れる)。この実施例では、このネットワークグラフのサブネットワークを単一細胞内で物理的に実体化することが可能であり、完全に転写後のブール論理関数のコンビナトリアルな細胞性プログラミングを可能とすることを示す。
サブネットワークの実体化のための要件は、単一細胞中に複数の異なるリボソーム・mRNAペアを生成することができ、かつこれらのペアがこの状況において他のリボソーム・mRNAペアとは独立に機能することができることである。複数の異なる変異体リボソームの細胞内での同時発現はこれまでに実証されていない。これには2種の共存可能プラスミド由来の2種のリボソームRNAの発現およびプロセシングが必要である。これにはまた、ゲノムからリボソームタンパク質が産生され、それが、野生型リボソームRNAを有する機能性リボソームならびに各々が別の種類のO-rRNAを有する2種の機能性直交性リボソームが産生されるのに十分な量であることも必要である。
細胞内での3種のリボソーム(野生型リボソームおよび2種のO-リボソーム)の同時産生に向けた第1工程として、異なる適合性グループのプラスミドからO-rRNAを産生させ、得られたリボソームをそれらの機能についてアッセイした。
適合性rRNA 入力プラスミドの構築
RSF rRNA発現プラスミドは、以前に記載されたCol E1発現プラスミド(pTrc16S23S; Rackham & Chin, 2005, Nature Chem. Biol. 1: 159-166)から誘導した。カナマイシン耐性遺伝子を有するRSF1030レプリコンを、オリゴヌクレオチド5' AACTAGGGTACCGAATTCGGGCCTCTAAACGGGTCTTGAGG-3' (配列番号120)および5'-ATTGCAGCATGCCATATGGTAACGGAATAGCTGTTCGTTGAC-3' (配列番号121)を用いてPCRによりpRSFDuet-1 (Novagen)から増幅した。得られたPCR産物をKpn IおよびSph Iで消化し、これを、pTrc 16S23SリボソームプラスミドのKpn I、Sph Iレプリコン−含有部分を置き換えるために使用した。直交性リボソーム活性のためのCAT活性アッセイはRackham & Chin, 2005, 前掲)に記載のように行った。
論理ゲートプラスミドの構築
cat-upp融合物を有するp15Aプラスミドであるp21を用いて、論理ゲートプラスミドを作製した。lacZのω対立遺伝子(M15、アミノ酸11〜41の欠失)は、以下のオリゴヌクレオチド5' GCGAGGAAAGGTCTCATCGTCGCCCTTCCCAACAGTTGCGCAGCCTG-3' (配列番号122)および5'-AGGGAGTAGGTCTCAACGACGTTGTAAAACGACGGGATCTATC-3' (配列番号123)を用いて、pTrcHis2/lacZ (Invitrogen)に対して酵素的逆PCRを行うことにより作製した。変異体リボソーム結合部位を有するω断片は、テンプレートとしてとしてのこのpTrcHis2/lacZのω誘導体、およびこの遺伝子の両側に隣接するオリゴヌクレオチドを使用するPCRにより作製した。変更されたリボソーム結合部位を有するα断片遺伝子は、pTrcHis2/lacZをテンプレートとしてPCRにより作製した。AND論理ゲートプラスミドを作製するために、p21バックボーン、および2つの異なるリボソーム結合部位を有するα断片を消化し、三者間連結により一緒にした。OR論理ゲートを作製するためには、この連結において1種のα断片遺伝子をω断片遺伝子で置き換えた。各々の得られる論理ゲートプラスミドのプラスミドマップを下に記載する(「追加のプラスミドマップ」を参照されたい)。
論理関数出力の測定
AND関数は、lacZ内に欠失しているBW26444細胞中で作製した。その遺伝型は(Δ(araD-araB)567、Δ(lacA-lacZ)519(::FRT)、laclp-4000(laclQ)、λ、rpoS396(Am)、rph-1, Δ(rhaD-rhaB)568、hsdR514)である。論理ゲートプラスミドを有するヒートショックコンピテントBW26444細胞は標準的CaC12 処理により調製し、rRNA入力の組み合わせは二重形質転換により評価した。形質転換細胞を、2%グルコースを有するSOB中で回復させ、その後、2%グルコース, 50 μg m1-1 アンピシリン, 25 μg mL-1 カナマイシン, 12.5μg mL-1 テトラサイクリンを含むLBアガーに移し、次いでインキュベートした(16時間, 37℃)。個々のコロニーを、100μlの培地(2%グルコース, 50μg mL-1 アンピシリン, 25μg mL-1 カナマイシン, 12.5μg mL-1 テトラサイクリンを含むLB)を含む96ウェル培養ブロックの各ウェルに移し、一晩増殖させた。細胞を遠心分離(3000g, 5分)によりペレット化し、50μg mL-1 アンピシリン, 25μg mL-1 カナマイシン, 12.5μg mL-1 テトラサイクリンを含んでなる1 mLのLB中に再懸濁した。さらに1時間インキュベート(37 ℃, 250 rpm)した後に、細胞にイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(1mMとなる)を添加し、インキュベートし(37℃, 250rpm, 4時間)、OD600を測定した。細胞を3000gにてペレット化し、100μL BugBuster HT (Novagen)に再懸濁し、25分の振とうにより浸透性にした。フルオレセインジ-β-D-ガラクトピラノシド (Molecular Probes, 最終濃度0.5 mM)を含んでなる等容量の2×バッファーZ (120 mM Na2HPO4, 80 mM NaH2PO4, 20 mM KC1, 2mM MgSO4, 100 mM β-メルカプトエタノール)を添加しインキュベート(22℃)したところ、強力な蛍光シグナルが検出された(約5分)。細胞および残渣をペレット化し、清澄化させた上清を96ウェルプレートに移した。Spectra Max Gemini XS (Molecular Devices)を用いて蛍光を検出したが、このとき励起は370 nmであり発光検出は450 nmにおいて行った。
蛍光を細胞密度およびβ-ガラクトシダーゼ基質とのインキュベーション時間について正規化したが、これには次の等式を用いた:
蛍光 = 1000×(生蛍光450 nm)/(t.V.OD600)
[式中、(t)は秒で表したインキュベーション時間であり、(V)は使用した培養物の体積である]。
OR関数は、lacZ遺伝子内のアミノ酸11〜41に対応する染色体欠失ゆえにβ-ガラクトシダーゼのω断片を産生するDH10B 大腸菌中で作製した。この株は次の遺伝型を有する:(F-, mcrA, Δ(mrr-hsdRMS-mcrBC), Δ(lacZ)M15, ΔlacX74, recAl, araD139, Δ(ara-leu)7697, galU, galK, rpsL(StrR), endA1, nupG)。他の実験手法は上にAND関数について説明したように行った。
rRNA産生のためのあるベクターは、ColEl複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子を有するものであり、細胞当たり約50コピーとして存在する。rRNA産生のための第2のベクターはRSF複製起点とカナマイシン耐性遺伝子を有するものであり、細胞当たり約100コピーとして存在する。本発明者らは以前に、プラスミドによりコードされるrRNAを組み込んだ機能性リボソームの産生が、rRNA転写カセットの両側に隣接する配列により強力にモジュレートされうることを観察している。プラスミド隣接配列およびプラスミドコピー数の、プラスミドコードrRNAを組み込んだO-リボソームの活性に対する影響を評価するために、O-mRNA-Ccat(5'直交性リボソーム結合部位Cを有するcatのバージョン)由来のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cat)の翻訳を測定した。rRNA-CをコードするRSFまたはColE1プラスミドを含んでなる細胞はクロラムフェニコール耐性を付与され、このときIC50はそれぞれ250μg mL-1および150μg mL-1であり、これに対してO-mRNA-Ccatはコグネイトリボソームの不在下でIC50が10μg mL-1である。他のO-リボソーム・O-mRNAペアについても同じ様な結果が得られた。こうした結果は、2種の適合可能プラスミドから高活性直交性リボソームが作製可能であること、およびコピー数のみに基づき予測したとおりに、RSFプラスミドがColE1 プラスミドよりも若干高いリボソーム活性をもたらすことを実証している。
単一細胞内で複数のO-リボソームが生成可能であることを実証するため、およびブール論理の発現のためのO-リボソームの潜在力に取り組み始めるために、O-mRNA配列を有するANDゲートを設計した。このゲートは2種のO-mRNA配列から構成される:O-mRNA-Aωはβ-ガラクトシダーゼのω断片の合成を指令し、対するO-mRNA-Cαはβ-ガラクトシダーゼのα断片の合成を指令する。両方の断片を合成しβ-ガラクトシダーゼ((α + ω)4)へとアセンブリすることにより、細胞はフルオレセインジ-β-D-ガラクトピラノシド(FDG)をフルオレセイン(F)へと加水分解し、このフルオレセインは蛍光分析的に検出可能である(図8a, b)。
O-mRNA-CαおよびO-mRNA-Aωの両方をコードするプラスミドを有する細胞を、野生型rRNA、rRNA-A、rRNA-C、または一緒になったrRNA-CとrRNA-Aのいずれかを用いてプログラミングし、FDGのフルオレセインへの変換を測定した。野生型rRNAでプログラミングされた細胞は、バックグラウンドと同程度の低い蛍光を生じる。このことは、cat遺伝子を用いて開発した直交性リボソーム結合部位AおよびCが、移転可能であり、かつ種々の遺伝子に直交性を付与しうることを確認するものである。rRNA-Aでプログラミングした細胞もまた低い蛍光を生じ、rRNA-Cでプログラムした細胞も同様である。しかしながら、rRNA-AとrRNA-Cの両方でプログラミングした細胞は、他のrRNA組み合わせよりも20倍強い蛍光シグナルをもたらした。こうしたデータは、複数の相互に直交性のリボソームが単一細胞中で機能的に発現可能であることを実証している。さらにこれらの結果は、転写後AND関数においてrRNA-AおよびrRNA-Cが入力として使用可能であることを示している。他の互いに直交性のリボソームおよびそれらのコグネイトなO-mRNAαおよびO-mRNAωを有する細胞を用いて、類似のAND関数も得られた。
次にブールORゲートを作製した。ORゲートは、その各々がβ-ガラクトシダーゼのα断片の合成を指令する2種のO-mRNA(O-mRNA-AαおよびO-mRNA-Cα)から構成されている(図8 c, d)。この系においてω断片は野生型リボソーム結合部位から構成的に産生される。野生型リボソームでプログラミングされた細胞は、プラスミドコード型α断片の不在下で観察されるのと同程度の蛍光を生じる。rRNA-Aでプログラミングされた細胞はバックグラウンドよりも10倍高い蛍光シグナルを生じ、これに対して、rRNA-Cでプログラミングした細胞はバックグラウンドよりも15倍高いレベルの蛍光を生じた。rRNA-CとrRNA-Aの両方でプログラミングした細胞は、バックグラウンドの50倍を超える蛍光シグナルを生じた。蛍光シグナルの増大は、この系において各断片が同じコピー数にて存在する単一遺伝子から産生され、かつ同じプロモーターおよびターミネーターを使用するにもかかわらず、ω-断片がα-断片に対して過剰に存在することを示唆する。野生型リボソーム結合部位を用いてmRNA上の直交性リボソーム結合部位と置き換えると、同じ様な結果が観察される。このことは、ω-断片とα-断片の細胞濃度の不一致が、α-断片 mRNAの転写もしくは寿命のいずれかにおける欠陥、またはα-断片ペプチドの分解に起因することを示唆する。全体として、こうした結果は、rRNA-AおよびrRNA-CがブールOR関数において入力として使用可能であることを実証している。OR関数はまた、他の相互に直交性のrRNAおよびコグネイトなO-mRNAを用いて作製可能である。
結論として、O-リボソームおよびO-mRNAを用いて、生きた細胞中で完全に転写後のコンビナトリアルな論理を創造することができることが実証された。記載したブールゲートは複数の異なる直交性リボソームを入力として必要とし、野生型リボソームを用いてアセンブルすることはできない。なぜならば細胞からの野生型リボソームの除去は致死的であり、その入力についてゼロとなる値は除外されるからである。本明細書では、非天然の、直交性の、モジュール型構成要素および構成要素間の非共有的な相互作用の知識をどのように用いて、生物内で、非天然のネットワークアーキテクチャーおよび論理関数を合成することができるかを実証した。
実施例6:O-リボソームO-mRNAペアのネットワークの予測
記載した3種の直交性リボソームmRNAペア間には、9通りの潜在的リボソームmRNA相互作用が存在し、そのほとんどが未知であり、潜在的に強度が異なる。ターナーの規則(Freier, S.M. ら, Proc Natl Acad Sci U S A 83, 9373-9377 (1986), Freier, S.M., Kierzek, R., Caruthers, M.H., Neilson, T. & Turner, D.H., Biochemistry 25, 3209-3213 (1986))を用いたゲノム配列に対する計算からは、rRNA mRNA塩基対形成の自由エネルギーが、ゲノムの残りの部分と比較して翻訳開始部位において4〜5 kcal mol-1と特徴的に低下することが示されている(Schurr, T., Nadir, E. & Margalit, H., Nucleic Acids Res 21, 4019-4023 (1993), Osada, Y., Saito, R. & Tomita, M., Bioinformatics 15, 578-581 (1999))。ゲノム転写産物とは異なり、本明細書に記載のO-mRNAは、共通の隣接配列に挟まれた可変配列領域を有し、そのため、このことはO-リボソームによるO-mRNAの翻訳をさらに予測可能にすると推論した。ターナーの規則を用いて、変異体rRNAならびにコグネイトおよび非コグネイトO-mRNAの3'末端の、最も安定な塩基対形成アライメントについて、結合のΔGを計算した。ここから、O-リボソームO-mRNAペアについての計算上自由エネルギーとして0〜10 kcal mol-1 (表2)が得られた。
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次に細胞を、O-リボソームとO-mRNAのすべての組み合わせで形質転換し、O-cat-uppレポーターから生じるクロラムフェニコール耐性を測定した(図5b)。自由エネルギー値およびIC50値から予測によるおよび実験によるネットワークグラフを作製したが、このグラフではO-リボソームとO-mRNAの相互作用を表す線は0〜100のグレースケール値を有し、その値はそれぞれ、塩基対形成の予測された自由エネルギー、またはクロラムフェニコール耐性のIC50値と線形に対応する(図5c)。相互作用強度の予測されたネットワークと観察されたネットワークとの相関は特筆すべきものである。偶然に正しいネットワークグラフを予測する可能性の上限の簡単な指標を計算するために、9種のリボソームmRNA 相互作用を二値化した単純な事例を検討した。3種のリボソームが3種のmRNAと相互作用することができる異なるパターンは512(29)通りある。こうした解はそれぞれ具体的な相互作用のネットワークを表し、固有のネットワークグラフにより表すことができる。したがって、自由エネルギー計算が、グラフにおいて全9つの相互作用を正しく予測することができる可能性の上限は512中に1である。
自由エネルギー計算から示唆されたとおり、rRNA-9を有するリボソームはmRNA-Cと機能するがmRNA-AともmRNA-Bとも機能せず、rRNA-8を有するリボソームはmRNA-Bと機能するがmRNA-AともmRNA-Cとも機能せず、また、rRNA-2を有するリボソームはmRNA-Aと
、そしてmRNA-Bと機能することが見出された。自由エネルギー計算はrRNA-2 mRNA-B 相互作用がrRNA-2 mRNA-Aペア相互作用よりも弱いことを予測しており、それに対応する差異が実験のIC50値において観察されたことに着目するのは興味深い。C9リボソームmRNAペアはA2リボソームmRNAペアと相互に直交性であり、B8リボソームmRNAペアと相互に直交性である。rRNA-8を有するリボソームはmRNA-Aに直交性であるが、しかし、rRNA-2を有するリボソームはmRNA-Bと機能する。その上、rRNA-2 mRNA-BおよびrRNA-8 mRNA-Aペアの整列させた配列の比較は、それらの異なる振る舞いについての分子的基礎を提供する。rRNA-2 mRNA-Bペアは、2つのG-U 塩基対を有し、これらが相互作用を安定化させる。一方で、rRNA-8 mRNA-Aペア中の対応するA-Cミスマッチは相互作用を不安定化させるものである。G-U対の安定性は、Watson-Crick塩基対相互作用に基づいて予測された相互作用の対称性を崩し、合成ネットワーク中のリボソームとmRNAの間の機能的な連結が非対称となりうる機構を提供する。
他の実施形態
本明細書において引用した全ての特許、特許出願および刊行された参考文献は、参照によりその全内容を本明細書に組み入れるものとする。本発明をその好ましい実施形態に関連して具体的に示し説明したが、添付の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明について形態および詳細に関する種々の変更を施すことができると当業者に理解される。
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新規リボソームmRNA相互作用の創造を示す。重複した相互作用する分子のペアのたどりうる運命。前駆リボソーム(黒丸)はコグネイトな前駆mRNA (斜交平行線の丸)と相互作用する(黒線)。簡潔性のために、多様な細胞性リボソームmRNA相互作用をこの単一の相互作用により表す。重複は最初に、mRNAの第2コピー(灰色の丸)をもたらし、これは、前駆リボソームの、および前駆mRNAを翻訳する第2リボソーム(格子縞模様の丸)の基質である。重複したコピーは様々な進化的運命を辿りうる。(1)重複後の突然変異は、mRNAまたはリボソームのいずれの特異性をも変更しない。(2)重複したリボソームは進化して、重複しかつ変更されたmRNAを翻訳するようになるが、もはや内因性mRNAを翻訳しない。(3)重複したmRNAは変異してもはや前駆リボソームの基質ではなくなり、かつ重複したリボソームは変異して、前駆および重複したmRNAの両方を見境なく翻訳する。(4)重複したリボソームは自身を不活化する変異を有し、かつ重複したmRNAは尚も前駆リボソームの基質であり続ける。(5)重複したmRNAは、変異を有し、重複したリボソームは前駆mRNAを翻訳し続ける。(6)重複したリボソームとmRNAの両方が不活性である。(7)重複したmRNAは、それがもやは前駆リボソームの基質ではなくなるような変異を獲得する。重複したリボソームは、それがもはや前駆mRNAを翻訳しないが、重複したmRNAは翻訳するような変異を獲得する。このようなリボソームmRNAペアを直交性と言う。前駆分子も進化する進化的選択はここでは考慮されていない。 活性および不活性なリボソームmRNAペアに対する陽性および陰性選択を示す。(a)選択の概略図。(b)CATおよびUPRTはcat-uppから機能的に発現され、陽性および陰性選択はそれぞれ広いダイナミックレンジを有する。 直交性のペアの選択のためのリボソームおよびmRNAライブラリーの設計を示す。(a)古典的なSDとASDの相互作用(上)、ならびにmRNAlibとrRNAlibにおいてランダム化されたヌクレオチド(下)(配列番号114〜119を参照のこと)。(b) リボソーム内でのSDとASDの相互作用ヘリックス。分子の細部は5Å構造からモデリングした(PDB登録番号1JGOおよび1YL4。画像はPyMOL( www.pymol.org)を用いて作製)。 潜在的O-リボソームO-mRNAペアの特徴付けを示す。(a)選択の両方の工程を生存したmRNAlibおよびrRNAlibクローンの配列(配列番号48〜83を参照のこと)。51クローン中の各配列の発生頻度の数(No.)を、配列の右に示す。(b)単離されたリボソームmRNAペア(配列番号84〜113を参照のこと)。ペアは、予測された塩基対形成に基づき、灰色の線で群に分離した。(c)変異体リボソームを用いて形質転換した細胞は、成長に影響を受けない。各曲線は少なくとも3回の独立した試行の平均であり、エラーバーは、標準誤差を表す。(d)選択されたリボソームは内因性タンパク質を測定できる程度に翻訳することはない。示されたrRNAを含有する細胞を、cat-upp融合体を欠失させたプラスミド(Δ)、またはコグネイトなmRNAlibクローン(cat-uppをコードする)を用いて同時形質転換した。細胞にスペクチノマイシンを添加することにより、内因性リボソームによるタンパク質合成を阻害したが、しかしプラスミドによるコードされるrRNAを用いたリボソームによるタンパク質合成は阻害されない(Rasmussen, U.B., Mygind, B. & Nygaard, P., Biochim Biophys Acta 881, 268-275 (1986))。35Sメチオニンを添加してその後のタンパク質合成を視覚化した。等しいOD600の細胞を溶菌し、タンパク質をSDS-PAGEにより分離した。 図4−1の続きである。 (a)直交性リボソームを用いた転写後調節されるブールAND関数の合成を示す。ゲートの出力はβ-ガラクトシダーゼ活性であり、これはS-galの存在下で茶色を生じさせる。(b)コグネイトなおよび非コグネイトな直交性リボソームmRNAペアのクロラムフェニコール耐性を示す。(c)コグネイトおよび非コグネイトなリボソームおよびmRNAの間の相互作用の予測された(左)および観察された(右)ネットワークを示す。 16S rRNA配列に基づく細菌の系統樹の例を示す。 直交性リボソーム・直交性mRNAペアおよびその特異性のネットワークを示す。(a)mRNAと相互作用するrRNAの配列を示す(wtは野生型である)。O-mRNAおよびO-rRNAにおける変異を示す。(b)一対ごとのリボソーム・mRNA相互作用強度を、グレースケール強度で表す。 直交性リボソームを用いた組み合わせ論理を示す。(a)蛍光は、ANDゲートのリボソーム入力の関数として生じた。蛍光は、細胞密度およびインキュベーション時間に関して正規化されており、これは本明細書において上に詳述したとおりである。エラーバーは少なくとも3回の独立した試行の標準誤差を表す。(b)ANDゲートの各状態。黒線は機能的結合を示し、これに対して灰色線は互いに絶縁されている構成要素を示す。(c、d)については、(a)と(b)と同様であるが、ただしこれらはORゲートについて示したものである。 図8−1の続きである。 本明細書に説明したブールANDおよびOR論理ゲートのネットワークの概略図である。

Claims (13)

  1. 直交性mRNA直交性rRNAペアを選択する方法であって、
    a) mRNA分子をコードする第1ライブラリーを用意すること、ここで該第1ライブラリーはリボソーム結合部位の配列において多様化されており、該第1ライブラリーのメンバーによりコードされる個々のmRNAメンバーは融合ポリペプチドをコードする配列を含んでなり、前記融合ポリペプチドは陽性選択マーカーポリペプチドと陰性選択マーカーポリペプチドとを含んでなり、ここで前記第1ライブラリーの個々のメンバーについては、前記融合ポリペプチドをコードする配列が変異型リボソーム結合部位に機能的に連結されている、
    b) 変異体rRNA分子をコードする第2ライブラリーを用意すること、ここで該第2ライブラリーはリボソーム結合部位においてmRNAと相互作用する配列において多様化されており、該第2ライブラリーの個々のメンバーはリボソーム結合部位においてmRNAと相互作用する配列を含む領域において変異している、
    c) 前記第1ライブラリーを細胞に導入し、野生型リボソームの基質である前記第1ライブラリーによりコードされるmRNA分子に対する陰性選択を行うことにより、野生型リボソームの基質ではないmRNAをコードする前記第1ライブラリーのメンバーを選択すること、
    d) 前記変異体rRNA分子をコードする第2ライブラリーを、前記ステップ(c)において選択された第1ライブラリーのメンバーを含んでなる細胞に導入すること、および前記陽性選択マーカーを発現する細胞に対する陽性選択を行うこと、
    の各ステップを含み、第2ライブラリーによりコードされるrRNA変異体を含んでなるリボソームにより効率的に翻訳されるmRNAをコードする第1ライブラリーのメンバーを含む直交性mRNA直交性rRNAペアを同定する、前記方法。
  2. 前記陰性選択マーカーがウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼコード配列を含むものである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記陰性選択を行うことが、細胞を5-フルオロウラシルと接触させることを含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記陽性選択マーカーが抗生物質耐性コード配列を含むものである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記抗生物質耐性遺伝子がクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする、請求項4に記載の方法。
  6. 陽性選択を行うことが、前記細胞を抗生物質と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記抗生物質がクロラムフェニコールを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記融合ポリペプチドがウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼと融合したクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを含んでなる、請求項1に記載の方法。
  9. 前記ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼが、前記クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼのC末端に融合している、請求項8に記載の方法。
  10. mRNA分子をコードする前記第1ライブラリーのメンバーが、融合ポリペプチドをコードする前記配列の開始点におけるAUG開始コドンに対して−13〜+1の配列において多様化されている、請求項1に記載の方法。
  11. mRNA分子をコードする前記第1ライブラリーのメンバーが、融合ポリペプチドをコードする前記配列の開始点におけるAUG開始コドンに対して−7〜−13の配列において多様化されている、請求項1に記載の方法。
  12. 前記第2ライブラリーのメンバーが変異体16S rRNAをコードする、請求項1に記載の方法。
  13. 前記第2ライブラリーのメンバーが、大腸菌(E. coli) 16S rRNAのヌクレオチド1536〜1541に対応する領域の配列において多様化されており、かつ、大腸菌(E. coli) 16S rRNAのヌクレオチド722および723に対応する領域の配列において多様化されているrRNA変異体をコードする、請求項1に記載の方法。
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