しかしながら電子部品の発熱量が増大すると、ヒートシンクを単に空冷するだけでは電子部品を必要十分な程度まで冷却することができない問題が発生する。
本発明の目的は、発熱量の大きな電子部品を、いわゆる水冷によって必要十分な程度まで冷却できる電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、小形の水冷タイプの電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、小形でしかも冷却性の高い電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、電動ファンをラジエータに取り付けることが容易な電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、ファンガードの取り付けが容易な電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、ファンガードを簡単且つ確実に取り付けることができる電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、ヒートシンクの寸法を大きくすることなく冷却性能を高めることができる電子部品冷却装置及びヒートシンクを提供することにある。
本発明の他の目的は、電動ポンプの温度上昇を抑制することができる電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、リザーブタンクを別に必要としない電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、循環する冷媒中にエアーが混入し難いラジエータを備えた電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、大気温の変化があっても破損することがないラジエータを備えた電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、配管用のチューブの接続が単純かつ強固で、しかもチューブの曲げ作業が容易な電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、メンテナンスが容易な電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、確実にガスケットを装着することができる電子部品冷却装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、電子部品冷却装置に用いるのに適した電動ポンプを提供することにある。
本発明の他の目的は、動作状況を判別することができる電動ポンプを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、ゴミや気泡の影響を受けることなく、ポンプ動作を支障なく行うことができる電動ポンプを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、ゴミや気泡の影響を受けることなく、しかも消費電力が少なくて済む電動ポンプを提供することにある。
本発明は、冷媒によって冷却されてCPU等の電子部品を冷却するヒートシンクと、冷媒を冷却するラジエータと、ラジエータを冷却する電動ファンと、冷媒を循環させる電動ポンプとを主たる構成要件として備えたいわゆる水冷式の電子部品冷却装置を対象とする。ヒートシンクは、冷却されるべき電子部品が装着される電子部品装着面と、冷媒入口及び冷媒出口と、電子部品装着面を強制的に冷却するための冷媒としての液体が流れる冷媒流路とを備えている。ラジエータは、冷媒入口及び冷媒出口と冷媒が流れる液体流路を備え、空冷によって液体流路が冷却されて冷媒を冷却する。電動ファンは、ラジエータの放熱部に対して装着され、複数枚のブレードを備えたインペラの回転により空冷用空気を発生してラジエータの放熱部を冷却する。典型的には、電動ファンはラジエータの放熱部側から空気を吸い込んで放熱部を冷却する。
そして電動ポンプはラジエータの冷媒出口から流出した冷媒をヒートシンクの冷媒入口に供給し、ヒートシンクの冷媒出口から流出した冷媒をラジエータの冷媒入口に供給する移動エネルギーを冷媒に与える。
本発明においては、ラジエータの放熱部のインペラと対向するインペラ対向領域とは異なる放熱部のインペラ非対向領域と対向する位置に、電動ポンプを配置する。冷媒を冷却するためのラジエータの機能を最大限発揮させるためには、電動ファンの回転により発生する冷却用空気の流れを阻害する物をラジエータの放熱部の前に置くことは、当業者の常識から判断すれば、避けなければならないことである。しかしながら本発明においては、この常識をあえて破って、ラジエータの放熱部の前方領域のうち、インペラと対向しないインペラ非対向領域に電動ポンプを配置することとした。その結果、電動ポンプを放熱部の前に配置しない場合と比べて若干冷却性能は落ちることが予想される。しかしながらラジエータの平面形状の中に電動ポンプを配置することができるようになるので、冷却性能を大きく低下させることなく、電子部品冷却装置の平面形状における全体寸法を小さいものとすることができる。必要な冷却性能を確保するためには、放熱部のインペラ非対向領域の大きさを適宜の大きさとすればよい。
電動ファンは、インペラを回転する電動機と、ハウジングとを有している。ハウジングは風洞部とダクト形成壁部とを備えている。風洞部は、ラジエータの放熱部のインペラ対向領域と対向する吸い込み口を一端に有し且つ他端に吐き出し口を有する。ダクト形成壁部は、風洞部と連続して設けられて放熱部のインペラ非対向領域から出た空気を吸い込み口に導くように構成されている。このようなダクト形成壁部を設ければ、インペラと直接対向しないインペラ非対向領域からも冷却用空気を引き出すことができるので、ラジエータの放熱部をほぼ全体的に冷却することができる。またこの場合には、ハウジングのダクト形成壁部に、電動ポンプの発熱部を露出させる開口部を形成する。そして、この開口部から電動ポンプの発熱部を露出させた状態で電動ポンプを配置すればよい。このようにすると、電動ポンプから発生する熱がハウジングの外に放熱されて、ラジエータの放熱性能が影響を受けるのを阻止することができる。
インペラ非対向領域であれば、どこにでも電動ポンプを配置してもよい。しかし特に、ラジエータの放熱部の1つの角部に隣接して電動ポンプを配置するのが好ましい。なぜならば、電動ポンプの存在が冷却用空気の流れの障害物になる可能性が最も低くなるため、ラジエータの冷却性能に与える影響、あるいはファンの騒音(風切音)に与える影響を最小のものとすることができるからである。
また電動ファンのラジエータに対する取り付けを容易なものとするためには、次のようにするのが好ましい。例えば、ハウジングに複数の係合片を一体に設ける。そしてラジエータには複数の係合片と係合してハウジングをラジエータに対して取り付ける複数の被係合部を設ける。このようにすると螺子等を用いることなく、簡単に電動ファンをラジエータに装着することができる。
なお電動ファンのハウジングに設けた開口部から露出する電動ポンプの外装ケースには、電動ポンプが動作していることを表示する動作状態表示手段を設けてもよい。動作状態表示手段としては、発光ダイオード等の発光表示手段を設けるのが好ましい。電動ファンはインペラの回転状態を見ることにより電動ファンが正常であるか異常であるかを直ちに判断することができる。これに対して電動ポンプは動作部を外部から見ることができない。そのため動作状態表示手段を設けると、電動ポンプの動作を電動ファンの外側から確認することができるので、点検時及び修理時の確認作業が容易になる。
また開口部から露出する電動ポンプの外装ケースには、内部に配置された駆動用電動機の発熱部から発生する熱を外部に放出するための複数の放熱用貫通孔を形成するのが好ましい。このような複数の放熱用貫通孔を設けると、電動ポンプから発生する熱の大部分を電動ファンのハウジングの外に放熱することが可能になる。その結果、電動ポンプからラジエータに加えられる熱の影響を小さくすることができる。また電動ポンプの温度を下げることができるので、電動ポンプを通る冷媒に電動ポンプから加えられる熱の影響も小さくすることができる。
電動ファンの風洞部の吐き出し口には、ファンガードを取り外し自在の取り付け構造を介して装着することができるようにするのが好ましい。ファンガードは必ずしも必要なものではない。しかしながら、ファンガードが取り外し自在であれば、顧客の要求に応じてファンガードを装着できるので、汎用性が高くなる。
ファンガードの構造は任意である。風洞部への取り付けを容易にするためには、吐き出し口と対向するガード部と、ガード部の外周部に周方向に間隔を開けて設けられたスナップインタイプの複数のフックとを備えた構造にするのが好ましい。この場合には、電動ファンの風洞部の外周部には複数のフックがスナップイン結合される複数の被係合部を一体に設ける。複数のフックと複数の被係合部とにより取り付け構造が構成される。ここでスナップイン結合とは、フックを撓ませて被係合部を乗り越えさせた後に、フックの撓みが無くなるかまたは小さくなってフックが被係合部と係合状態になる結合関係が得られる結合構造を意味する。
スナップイン結合を確実なものとするために、ファンガードのガード部に電動機のケーシングと当接する当接部を設けるのが好ましい。当接部の形状寸法は、複数のフックを複数の被係合部に係合した状態において、当接部がケーシングと当接しており、ガード部が吐き出し口側に近づくように撓んだ状態になるように定める。このようにすると、ガード部の撓みによって、フックを被係合部に強く押し付けることができて、スナップイン結合を確実なものとすることができる。
また風洞部の外周部には、複数の被係合部よりもハウジング側に設けられて複数のフックの先端部と当接する複数のストッパ部を一体に設けるのが好ましい。このようなストッパ部を設けると、フックを押し込み過ぎてガードが必要以上に撓み、ガードが破損するのを防止できる。
使用するヒートシンクの構造は、任意である。好ましいヒートシンクは、ベースプレートと、トッププレートと、ベースプレートとトッププレートとを連結する周壁部とを備えている。ベースプレートは、電子部品装着面及び電子部品装着面と厚み方向に対向して冷媒と直接接触する放熱面を備えている。トッププレートは、ベースプレートの放熱面との間に所定の間隙を介して対向する対向面を備えている。そして周壁部は、ベースプレートとトッププレートとの間にチャンバを形成するようにベースプレートとトッププレートとを連結する。好ましいヒートシンクでは、チャンバを仕切る仕切り壁部を備えている。仕切り壁部は、周壁部の対向する一対の周壁構成部分の一方と結合または密着して他方に向かって延び且つベースプレートとトッププレートの両方にそれぞれ結合または密着している。仕切り壁部の存在によって、チャンバ内には、仕切り壁部の両側に第1及び第2の分割チャンバが形成され、仕切り壁部と一対の周壁構成部分の他方との間に第1及び第2の分割チャンバを連通する連通路が形成される。そしてヒートシンクの冷媒入口は、第1の分割チャンバの連通路とは反対側に位置する第1のチャンバ部分領域と連通するように設ける。またヒートシンクの冷媒出口は、第2の分割チャンバの連通路とは反対側に位置する第2のチャンバ部分領域と連通するように設ける。こうすることでヒートシンクの冷媒入口と冷媒出口とが近づいた位置に配置されることになり、ヒートシンクへの配管の接続が容易になる上、配管の存在がヒートシンクを固定する際の障害になることが少なくなる。第1及び第2の分割チャンバ内には、冷媒の流通を阻止しないように、少なくともベースプレートに対して熱伝達可能に設けられた複数の放熱フィンをそれぞれ配置する。冷媒入口から第1の分割チャンバ内に入った冷媒は、第1の分割チャンバ内の複数の放熱フィンと接触した後に、連通路を通って第2の分割チャンバ内に入り、第2の分割チャンバ内の複数の放熱フィンと接触した後に冷媒出口から排出される。このような構造にすれば、ヒートシンクの形状寸法を大きくすることなく、冷却性能が向上する。その理由は、冷媒入口及び冷媒出口の直径寸法に対する第1の分割チャンバ及び第2の分割チャンバの幅寸法の比が、あまり大きくならないので、各チャンバ内にある複数の放熱フィン間の隙間内を流れる冷媒の流速及び流量に大きな差が生じることがなくなって、各放熱フィンから冷媒への熱伝達が滞りなく行われるからである。
複数の放熱フィンは、仕切り壁部と並んで延びる複数枚のプレート状放熱フィンから構成することができる。この場合には、隣接する2枚のプレート状放熱フィンの間に、冷媒が流れる間隙が形成されている。プレート状放熱フィンの厚みと、間隙の幅寸法は、必要な冷却性能を得ることができるように定めればよい。なおベースプレート、仕切り壁部及び複数枚のプレート状放熱フィンは一体に成形することができる。またトッププレートと周壁部とを一体に形成する。その上で、仕切り壁部及び複数枚のプレート状放熱フィンの先端をトッププレートに結合または密着させる。このような構成を採用すると、少ない部品点数で、放熱面積をできるだけ大きなものとすることができるヒートシンクを得ることができる。またプレート状放熱フィンの先端をトッププレートに結合・密着させると、冷媒が放熱フィンの先端面とトッププレートとの間に流れ込むことがなくなり、冷媒の流通は放熱フィン間の隙間のみに限定される。その結果、放熱フィンから冷媒への熱伝達量が減少するのを有効に防止して、冷却性能を高めることができる。
なおヒートシンクの冷媒入口及び冷媒出口を、トッププレートに形成すると、ヒートシンクへの配管の接続が容易になる上、配管の存在がヒートシンクを固定する際の障害になることが少ない。ここでトッププレートに形成された冷媒入口及び冷媒出口には、チューブ接続用筒体が半田付けまたは蝋付けにより接続される場合がある。このような場合には、チューブ接続用筒体の基部側の外周部に、冷媒入口または冷媒出口からトッププレートの表面側に漏れ出た溶融金属を受け入れる環状の空間を備えた鍔部を一体に設けるのが好ましい。このような鍔部をチューブ接続用筒体に設けると、トッププレートの裏面とチューブ接続用筒体の基部の外周面との間に付けた半田付けまたは蝋付け用の溶融金属が、トッププレートの表面側に外側から見える形で漏れ出るのを防止できる。したがってチューブ接続用筒体をトッププレートに対して半田付けまたは蝋付けにより取り付けても、ヒートシンクの外観が損なわれることがない。
複数枚のプレート状放熱フィンは、第1のチャンバ部分領域及び第2のチャンバ部分領域と、連通路を間に挟む第3のチャンバ部分領域及び第4のチャンバ部分領域を除いた位置に配置する。チャンバ内における放熱フィンの占有体積を必要以上に増加させると、冷媒の流速が少なくなって、かえって冷却性能が低下することになる。第1乃至第4のチャンバ部分領域を設けると、チャンバ内に放熱フィンを設けた場合でも、極端に冷媒の流速が低下するのを抑制することができる。またチャンバの四隅を囲む周壁部の内壁面の部分は、角部を形成しない湾曲面によって構成するのが好ましい。このようにすると、チャンバ内の角部における流路抵抗を小さくすることができて、流速の低下を抑制できる。
使用する電動ポンプの構造は任意である。一般的な回転式電動ポンプは、放射状に延びる複数枚のブレードを備えて軸線を中心にして回転するインペラと、内部にインペラ収納チャンバを備えたハウジングとを備えている。ハウジングは、液体入口及び液体出口を備えている。またインペラ収納チャンバは、インペラが冷媒中に浸漬された状態になり且つインペラが回転すると冷媒を液体入口から吸い込んで液体出口から吐出するように構成されている。液体入口は、インペラ収納チャンバを囲む複数の壁部のうち、複数枚のブレードと対向する壁部に、前述の軸線の延長線上に位置するように形成されている。また液体出口が複数の壁部のうち軸線と直交する方向に位置する壁部に形成されている。このような構造を有する電動ポンプでは、液体入口が形成された壁部に、液体入口の周囲を完全に囲むようにインペラ側に向かって開口する環状の溝部と、この環状の溝部の外側に環状の溝部とは連続しないように形成されて、軸線を中心にして放射状に延び且つインペラ側に向かって開口する複数本の細長い溝部とを形成するのが好ましい。環状の溝部及び複数本の細長い溝部の形状寸法は、液体入口からインペラ収納チャンバ内に入ったゴミや気泡が、複数枚のブレードと環状の溝部の角部及び細長い溝部の角部との間で砕かれ、細長い溝部内に沿って遠心力で径方向外側に移動し、液体出口から排出されるように定められている。このようにすれば、インペラ収納チャンバ内にゴミや気泡が残留してポンプの性能が低下するのを有効に防止することができる。なお環状の溝部を省略してもよい。また細長い溝部を囲む壁面のうち径方向外側に位置する壁面部分に、複数枚のブレードと対向する壁部に向かって徐々に近づくように傾斜するテーパを付してもよい。このようにすると遠心力で径方向外側に移動した泡・ゴミ等が、細長い溝部の縁に引っ掛からずに、スムーズに細長い溝部から排出される。またテーパを設けない場合と比べ、インペラを回転したときの損失が少なくなり、消費電力を減らすことができる。
複数本の細長い溝部は、周方向に等しい間隔を開けて形成するのが好ましい。このようにするとこれらの細長い溝部の存在が、インペラの回転むらを生じさせる原因となることがない。
インペラの回転駆動方法は、任意である。例えば、インペラに軸線を中心にして並ぶように複数の永久磁石磁極を配置する。そして、隔壁を介して複数の永久磁石磁極と対向する位置に、電動ポンプの駆動用電動機によって回転させられる複数の駆動用永久磁石磁極を配置する。永久磁石磁極と駆動用永久磁石磁極とは、インペラの軸線の軸線方向で対向してもよく、軸線方向と直交する径方向で対向してもよい。このようにすると複数の駆動用永久磁石磁極と複数の永久磁石磁極との間に発生する磁気吸引力を利用してインペラを回転させることができる。この構造では、電動ポンプの駆動用電動機の防水を簡単に実現できる。
使用するラジエータは、上側タンクと下側タンクとの間に放熱部が配置された構造を有しているものが一般的である。この場合、電動ファンからラジエータに向かう方向をラジエータの厚み方向としたときに、放熱部の厚み方向の寸法よりも上側タンク及び下側タンクの厚み方向の寸法を大きくするのが好ましい。このような構成を採用すると、上側タンク及び下側タンクを、蒸発した分の冷媒を補充するために予備用の冷媒を貯留しておくためのリザーバタンクとして機能させることができる。この場合において、上側タンクの容量を、下側タンクの容量よりも大きくするのが好ましい。どの程度容量を大きくするかと言えば、冷媒の膨張時に圧縮されるエアースペースが上側タンク内に形成される程度に上側タンクの容量を下側タンクの容量よりも大きくする。このようなエアースペースが確保できれば、外気温が上がって冷媒が膨張したときにも、ラジエータの内部圧力が上昇し過ぎて、ラジエータが破損するといった事故の発生を防ぐことができる。
なおラジエータの冷媒入口から上側タンクまたは下側タンク内に延びる入口側延長管部と、ラジエータの冷媒出口から上側タンクまたは下側タンク内に延びる出口側延長管部をさらに設けるのが好ましい。この場合には、入口側延長管部及び出口側延長管部は、ラジエータの姿勢の如何に拘わらず、常にその終端開口部が冷媒の内部に位置するように配置する。このようにすれば、上側タンクまたは下側タンクのいずれにエアーがある場合でも、入口側延長管部及び出口側延長管部内にエアーが入り込むのを有効に防止できる。その結果、電動ポンプ内にエアーが供給されて、電動ポンプの性能の低下、及び冷却性能が低下する事態が発生する割合を大幅に減らすことができる。
また上側タンク及び下側タンクの外壁部には、それぞれ被取付部(例えばコンピュータの筐体のフレーム等)に取り付けられる際に使用される取付用金具を一体に設けてもよい。このような取付金具を設ければ、もっとも重量が重くなるラジエータを被取付部に取り付ける作業が非常に簡単になる。取付用金具の構造は任意である。例えば、取付用金具を、被取付部に取り付けた状態でヒンジ機構を構成する第1の取付金具と、被取付部に螺子またはボルト等の固定手段を用いて固定される第2の取付金具とから構成することができる。この場合、上側タンクに設けられる第1の取付金具及び下側タンクに設けられる第1の取付金具は、上下方向に整列するように配置する。第2の取付金具も、第1の取付金具と同様に、上下方向に整列するように配置してもよいが、その配置位置は任意である。このような第1及び第2の取付金具を用いると、本発明の電子部品冷却装置を採用した機器のメンテナンスの際に、ラジエータを被取付部から完全に取り外さなくても、第1の取付金具により構成するヒンジ機構を中心にしてラジエータを回動させれば、ラジエータの前方に位置する各種の部品の点検や交換を行うことが可能になる。したがって大きなラジエータの存在が、メンテナンスの邪魔になることがなくなる。
そこで例えば、第1の取付金具は、厚み方向に間隔を空けて配置された2本のピン状取付金具から構成することができる。この場合、被取付部は、2本のピン状取付金具は一方のピン状取付金具を中心にして他方のピン状取付金具が所定の角度範囲内を回動するように2本のピン状取付金具を保持する構造にすればよい。また第2の取付金具は螺子またはボルトが通る孔が形成された構造を有しているものにしてもよい。このようにするとラジエータの装着及び回動作業を簡単に行うことができるようになる。
ラジエータを含むシステム(冷媒が循環する経路)の内部には、大気圧より低い圧力状態で冷媒を封入するのが好ましい。このようにすると外気温が上がって冷媒の圧力が上昇しても、冷媒の圧力がシステムを破損しない程度の圧力までしか上昇しないようにすることができる。
また一般的には、ラジエータの冷媒入口及び冷媒出口、ヒートシンクの冷媒入口及び冷媒出口、ポンプの液体入口及び液体出口にはそれぞれ外部に向かって延びるチューブ接続用筒体を設ける。この場合、対応する2つのチューブ接続用筒体の外周部に可撓性を有するチューブの両端部がそれぞれ嵌合されることになる。そこでこれらのチューブ接続用筒体の外周部には、先端部から基部側に向かうに従って直径寸法が大きくなるテーパ面と、このテーパ面との間にチューブの内壁に食い込むエッジを形成するようにテーパ面の頂部からチューブ接続用筒体に向かって延びるエッジ形成面とを備えた1以上のエッジ形成用突出部を設けるのが好ましい。このようなエッジ形成用突出部を1以上設けると、チューブをチューブ接続用筒体に嵌合させる過程で、エッジ形成用突出部のエッジをチューブの内壁部に食い込ませることができてチューブの抜け止めを強固に図ることができる。したがって従来必要とされていた抜け止め用のホースバンドは不要になる。またチューブ接続用筒体に設けられたエッジ形成用突出部のエッジが、チューブの内壁部に食い込んでいるので、両者に隙間はなく、接続部における液漏れ、あるいは液の蒸発を、大幅に減らすことができる。なおチューブは、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れ、柔軟性及び伸縮性があまりない材料で形成されたものが好ましい。現時点で好ましいチューブとしては、プラスチック製のチューブが好ましく、特にフッ素樹脂により形成されたチューブが好ましい。なおフッ素樹脂で形成されたものであっても、より透水性の低いフッ素樹脂で形成されたチューブを用いれば、冷媒がチューブの外壁部を透過して冷媒が減少してしまうのを抑制できる。なおチューブの主要部分の外周部には、チューブの長手方向に延びる螺旋状の溝または蛇腹状の溝を形成しておく。このような溝を形成しておけば、柔軟性や伸縮性がないチューブであっても、ヒートシンク取付時の曲げ作業が容易になる。
ラジエータの電動ファンと対向しない側に位置する面の外周縁部分と被取付部との間にスポンジやゴムなどの弾性材料からなるガスケットを介してラジエータを被取付部に対して固定して、密閉性を高める場合がある。しかしながらガスケットを適当な位置に貼り付けると、変形したガスケットが放熱部の放熱面と接触して、放熱部への空気流入面積が減少し、冷却性能が落ちることがある。またガスケットの変形の態様によっては、被取付部との密着性が悪くなり、密閉性が悪くなる場合がある。そこでこのような問題を解決するために、ラジエータには、ガスケットを放熱部から離した状態で支持し且つ弾性材料を被取付部に向かって押し付けた際にガスケットが被取付部に安定した状態で密着するように弾性材料の変形を規制するガスケット支持部材を取り付けるのが好ましい。このようなガスケット支持部材を用いてガスケットを支持すれば、ガスケットを冷却性能に影響を与える位置に取り付けることがなくなる。またガスケットを常に予定した形で変形させることができるので、密閉性の低下を防止できる。なおガスケット支持部材は、ラジエータに対して着脱可能に取り付けるのが好ましい。これは使用態様によっては、ガスケットを用いる必要がない場合があるためである。
以下図面を参照して、本発明の電子部品冷却装置の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の電子部品冷却装置1の実施の形態の一例の斜視図を示しており、図2はこの実施の形態の流路構成を示すブロックである。図3乃至図8は、この実施の形態の正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図である。また図9(A)は電動ファン5の正面図であり、図9(B)は電動ファン5の背面図である。図11及び図12は、ラジエータの正面図及び右側面図等である。
図1乃至図8に示すように、この電子部品冷却装置1は、いわゆる内部に冷媒流路を備えた水冷のヒートシンク3と、電動ファン5によって冷却されるラジエータ7と、ヒートシンク3とラジエータ7との間で冷媒を循環させるために冷媒に移動エネルギーを与える電動ポンプ13とを備えている。後に詳しく説明するように、ヒートシンク3は、CPU等の冷却されるべき電子部品4が装着される電子部品装着面31aと、冷媒入口35a(チューブ接続用筒体35が接続される部分)及び冷媒出口36a(チューブ接続用筒体36が接続される部分)と、電子部品装着面を強制的に冷却するための冷媒としての液体が流れる冷媒流路とを備えている。またラジエータ7は、冷媒入口80及び冷媒出口81を有して冷媒が流れる液体流路を備え、空冷によって液体流路が冷却されて冷媒を冷却する構造を有している。電動ファン5は、ラジエータ7の放熱部に対して装着されて、複数枚のブレード50を備えたインペラ51を有する。インペラ51が回転することにより、ラジエータ7側から冷却用空気を誘引してラジエータ7を冷却する。また配管用のチューブ等から構成される第1の冷媒通路9はヒートシンク3の冷媒出口36aとラジエータ7の冷媒入口80とをつなぐ。そして途中に電動ポンプ13を有する第2の冷媒通路11は、ラジエータ7の冷媒出口81とヒートシンク3の冷媒入口35aとをつなぐように構成されている。
電動ポンプ13は、ラジエータ7の冷媒出口81から流出した冷媒をヒートシンク3の冷媒入口35aに供給し、ヒートシンク3の冷媒出口36aから流出した冷媒をラジエータ7の冷媒入口80に供給する移動エネルギーを冷媒に与える。
図9(A)及び(B)に示すように、この電動ファン5は、インペラ51を回転駆動する電動機52と、ハウジング53とを有している。ハウジング53は、風洞部54とダクト形成壁部55とを備えている。本実施の形態においては、図11に示すように、インペラ51と対向するラジエータ7の放熱部71のインペラ対向領域72とは異なる放熱部71のインペラ非対向領域73と対向する位置に、電動ポンプ13が配置されている。具体的には、図3に示す平面図で見て、ラジエータ7における放熱部71の1つの角部である右上角部に隣接して電動ポンプ13が配置されている。
図3乃至図8及び図10乃至図12に示されるように、ラジエータ7の上側タンク74及び下側タンク75の外壁部には、それぞれ被取付部(例えばコンピュータの筐体のフレーム等)に取り付けられる際に使用される取付用金具を構成する一対のピン状取付金具78a及び78bならびに79a及び79bからなる第1の取付金具と、螺子またはボルトが通る孔78d,79dを備えた第2の取付金具78cと79cとが一体に設けられている。第1の取付金具を構成する一対のピン状取付金具78a及び78bと一対のピン状取付金具79a及び79bとは上下方向に整列している。また第2の取付金具78c及び79cも上下方向に整列している。
図10に示すように、一対のピン状取付金具78a及び78bならびに79a及び79bからなる第1の取付金具は、被取付部側のプラスチック製の一対の支持部101(下側に位置する支持部は図示されていない)と組み合わされてヒンジ機構を構成する。支持部101には、2本の溝102及び103が形成されている。溝102には、ピン状取付金具78bが嵌合され、溝103にはピン状取付金具78aが嵌合されている。ピン状取付金具78b及び79bを中心にして、ピン状取付金具78a及び79aを溝103内でスライドさせることにより、ラジエータ7はスイングする。その結果、ラジエータ7を取り付けた後でも、電動ファン5及び電動ポンプ13の点検、及び被取付筐体内のメンテナンスを容易に行うことができる。第2の取付金具78c及び79cは、被取付部側の支持部104に螺子105を用いて固定される。
図11に示すようにラジエータ7の上側タンク74の側壁部には、電動ポンプ13を螺子を用いて取り付けるための螺子孔77が形成されている。また上側タンク74の側壁部には、冷媒注入口106が設けられている。冷媒は、この冷媒注入口106から上側タンク74内に注入され、注入後は溶着により冷媒注入口106は閉じられる。冷媒循環システム中における冷媒の圧力は、大気圧よりも低くなるように設定されている。冷媒の圧力は、温度上昇によって冷媒が膨張してその圧力が上昇した場合でも、その圧力が大気圧より極端に大きくならない程度に定められている。そのため外気温が上がって冷媒の圧力が上昇しても、冷媒の圧力が冷媒循環システムを破損することはない。
図5及び図6並びに図12(A)に示すように、電動ファン5からラジエータ7に向かう方向をラジエータ7の厚み方向としたときに、放熱部71の厚み方向の寸法よりも上側タンク74及び下側タンク75の厚み方向の寸法を大きくしている。このような構成を採用すると、上側タンク74及び下側タンク75を、蒸発した分の冷媒を補充するために予備用の冷媒を貯留しておくためのリザーバタンクとして機能させることができる。本実施の形態では、上側タンク74の容量を、下側タンク75の容量よりも大きくしている。具体的には、冷媒の膨張時に圧縮されるエアースペースが上側タンク74内に形成される程度に上側タンク74の容量を下側タンク75の容量よりも大きくしている。このようなエアースペースが確保できれば、外気温が上がって冷媒が膨張したときにも、ラジエータの内部圧力が上昇し過ぎて、ラジエータが破損するといった事故の発生を防ぐことができる。
図12(B)に示すように、ラジエータ7の冷媒入口80にはチューブ接続用筒体107が取り付けられており、また冷媒出口81にはチューブ接続用筒体108が取り付けられている。チューブ接続用筒体107は、下側タンク75内に延びる入口側延長管部107aと、ラジエータ7の冷媒出口から下側タンク75内に延びる出口側延長管部108aをさらに備えている。入口側延長管部107a及び出口側延長管部108aは、ラジエータ7の姿勢の如何に拘わらず、常にその終端開口部が冷媒の内部に位置するように配置する。このようにすれば、下側タンク75内にエアーが存在して、下側タンク75内に液面LSが形成された場合であっても、入口側延長管部107a及び出口側延長管部108a内にエアーが入り込むのを有効に防止できる。その結果、電動ポンプ13内にエアーが供給されて、電動ポンプ13の性能が低下するのを抑制できる。本実施例においては、入口側延長管部107a及び出口側延長管部108aの終端開口部をそれぞれ下側タンク75のほぼ中央部の位置で終端させている。なおチューブ接続用筒体107及び108は、上側タンク74及び下側タンク75のいずれに設けてもよいのは勿論である。
電動ポンプ13は、ラジエータ7の放熱部71とは接触しないように配置される。このような位置関係で電動ポンプ13を配置すると、電動ポンプ13の存在が冷却用空気の流れの障害物になる可能性が最も低くなる。
冷媒を冷却するためのラジエータ7の機能を最大限発揮させるためには、電動ファン5によってラジエータ7側から引かれる冷却用空気の流れを阻害する物をラジエータ7の放熱部71の前に置くことは、当業者の常識から判断すれば、避けなければならないことである。しかしながらこの例では、ラジエータ7の放熱部71の前方領域のうち、インペラと対向しないインペラ非対向領域73に電動ポンプ13を配置することとした。電動ポンプを放熱部71の前に配置しない場合と比べて若干冷却性能は落ちることが予想されるが、ラジエータ7の平面形状の中に電動ポンプ13を配置することができるようになるので、電子部品冷却装置の平面形状における全体寸法を小さなものとすることができる。なお必要な冷却性能を確保するためには、放熱部71のインペラ非対向領域73(図11)の大きさを適宜の大きさとすればよいことは当業者に明らかであろう。
図1及び図9に示すように、電動ファン5のハウジング53は、風洞部54とダクト形成壁部55とを備えている。風洞部54は、ラジエータ7の放熱部71のインペラ対向領域72と対向する吸い込み口54Aを一端(背面側)に有し且つ他端(正面側)に吐き出し口54Bを有する。ダクト形成壁部55は、風洞部54と連続して設けられて放熱部71のインペラ非対向領域73から引き出された冷却用空気を吸い込み口54Aに導くように構成されている。
ハウジング53は、ダクト形成壁部55の上下方向位置に、ラジエータ7の上側タンク74と下側タンク75の正面部分をカバーするカバー部57及び58を備えている。またダクト形成壁部55の左右の側壁部59及び60には、電動ファン5のラジエータ7に対する取り付けを容易なものとするために用いる、4つの係合片61が一体に設けられている。そしてラジエータ7には4つの係合片61と係合してハウジング53をラジエータ7に対して取り付ける4箇所の被係合部76(図11参照)が設けられている。このようにすると螺子等を用いることなく、簡単に電動ファン5をラジエータ7に装着することができる。ハウジング53に、ダクト形成壁部55を設ければ、インペラ51と直接対向しない放熱部71のインペラ非対向領域73からも冷却用空気を引き出すことができるので、ラジエータ7の放熱部71をほぼ全体的に冷却することができる。
またこの実施の形態では、図3及び図9に示すように、ハウジング53のダクト形成壁部55に、電動ポンプ13のモータを含む発熱部を露出させる開口部62が形成されている。この開口部62から電動ポンプ13のモータを含む発熱部を露出させた状態で電動ポンプ13を配置すれば、電動ポンプ13から発生する熱が電動ファン5のハウジング53の外側に放熱されて、ラジエータ7の放熱性能が影響を受けるのを阻止できる。
図3に詳細に示すように、電動ファン5の風洞部54の吐き出し口54Bには、ファンガード15が装着されている。ファンガード15は、取り外し自在の取り付け構造を介して風洞部54に装着されている。このファンガード15のガード部は、4本の円形リング15A乃至15Dと、中央円形リング15Eと、6本の連結骨部15F乃至15Kと、3本の脚部15L乃至15Nとを備えている。4本の円形リング15A乃至15Dは、中央円形リング15Eと同心的に配置されており、6本の連結骨部15F乃至15Kは、中央円形リング15Eから円形リング15A乃至15D側に斜め放射状に延びている。6本の連結骨部15F乃至15Kのうち、3本の連結骨部15K,15G及び15Iは、電動ファン5の電動機52のケーシング52Aと風洞部54とを連結する3本のウエブ64A乃至64Cに沿うように配置されている。3本のウエブのうち1本のウエブ64Aには、給電線65が収納されている。
3本の脚部15L乃至15Nは、最も外側に位置する円形リング15Aに、周方向に等しい間隔をあけて一体に設けられている。風洞部54にファンガード15を容易に取り付けるために、吐き出し口54Bと対向するガード部の外周部(円形リング15A)に対して周方向に等しい間隔を開けて設けられた3本の脚部15L乃至15Nの先端にそれぞれスナップインタイプのフック15P乃至15R(図1、図6乃至図8、図13及び図14参照)を設けている。また電動ファン5の風洞部54の外周部には、3つのフック15P乃至15Rがスナップイン結合される3箇所の被係合部65A乃至65C(図1、図6及び図7参照)を一体に設ける。被係合部65A乃至65Cは、フック15P乃至15Rの両端部とスナップイン結合して、フックの抜け止めと固定とを可能にしている。また図6及び図14に示すように、風洞部54の外周部には、被係合部65A乃至65Cよりもハウジング側に設けられてフック15P乃至15Rの先端部と当接するストッパ部66が一体に設けられている。このようなストッパ部66を設けると、フックを押し込み過ぎてガードが必要以上に撓み、ガードが破損するのを防止できる。
図14(B)に示すように、スナップイン結合を確実なものとするために、ファンガード15のガード部に電動機52のケーシング52Aと当接する当接部15Sを設けている。当接部15Sの形状寸法は、フック15P乃至15Rを被係合部65A乃至65Cに係合した状態において、当接部15Sがケーシング52Aと当接しており、ガード部が吐き出し口54B側に近づくように撓んだ状態になるように定める。このようにすると、ガード部の撓みによって、フックを被係合部に強く押し付けることができて、スナップイン結合を確実なものとすることができる。
なお図1,図3及び図15に示すように、電動ファン5のハウジング53に設けた開口部62から露出する電動ポンプ13の外装ケース(ハウジング131)には、電動ポンプ13が動作していることを表示する動作状態表示手段(132)を設けてもよい。動作状態表示手段としては、発光ダイオード等の発光表示手段132を設けるのが好ましい。動作状態表示手段として発光表示手段132を設けると、電動ファン5のように動作状態を外部から見ることができない電動ポンプ13の動作を電動ファン5の外側から確認することができるので、点検時及び修理時の確認作業が容易になる。なお正常に動作しているときに発光表示手段132を発光させてもよいし、異常が発生しているときに発光表示手段132を発光させてもよい。また開口部62から露出する電動ポンプ13のハウジング131には、内部に配置された駆動用電動機の発熱部から発生する熱を外部に放出するための複数の放熱用貫通孔133(図1,図5,図15,図16参照)を形成してある。このような複数の放熱用貫通孔133を設けると、電動ポンプ13から発生する熱の大部分を電動ファン5のハウジング53の外に放熱することが可能になる。その結果、電動ポンプ13からラジエータ7に加えられる熱の影響を小さくすることができる。
図15及び図16は、電動ポンプ13を背面側から見た斜視図及び正面側から見た斜視図である。また図17及び図18は、電動ポンプ13の側面図及び背面図を示している。図19図は図18のB−B線概略断面図を示している。なお図19では、後述するインペラ収納チャンバ137を囲む壁部の内壁形状を簡略して描いてある。図20は図17のA−A線の位置で断面にした状態を示している。図21は、図20のC−C線概略断面図を示している。図19に概略的に示すように、電動ポンプ13のハウジング131の内部には、駆動用電動機134が配置されている。この駆動用電動機134は、励磁巻線134Aを備えたステータ134Bの中心部にロータ134Cが配置された小形の電動機である。駆動用電動機134の出力軸134Dには、外周部に複数の駆動用永久磁石磁極を備えた永久磁石円板135が取り付られている。永久磁石円板135は、駆動用電動機134によって駆動されて回転する。ハウジング131の内部は、隔壁131Aによって、電動機収納空間136とインペラ収納チャンバ137とに仕切られている。電動機収納空間136を囲むハウジング131の周壁部には、前述の放熱用貫通孔133が複数個形成されている。これら放熱用貫通孔133を通して、駆動用電動機134の励磁巻線134Aが発生する熱が放熱される。
インペラ収納チャンバ137内には、ポンプ用のインペラ138が回転可能に収納されている。隔壁131Aには、インペラ収納チャンバ137側に突出すように、インペラ138を回転可能に支持する軸139が設けられている。インペラ138は、隔壁131A側に向かって開口するカップ状部材140を備えている。カップ状部材140の周壁部の内周面には駆動用電動機134によって回転させられる永久磁石円板135と隔壁131Aを介して対向する複数の永久磁石磁極141が固定されている。またカップ状部材140の円板状壁部の外面側には、軸139の軸線を中心にして放射状に並ぶ複数枚のブレード143が一体に設けられている。このような構成にすると、永久磁石円板135の複数の駆動用永久磁石磁極とインペラ138側の複数の永久磁石磁極141との間に発生する磁気吸引力を利用してインペラ138は回転する。この構造では、電動ポンプの駆動用電動機134の防水を簡単に実現できる。
ハウジング131は、液体入口142及び液体出口144(図19及び図21)を備えている。液体入口142及び液体出口144(図21)に対して、冷媒を循環させるためのチューブが接続されるチューブ接続用筒体145及び146がそれぞれ一体に設けられている。これらのチューブ接続用筒体145及び146の外周部には、チューブの抜け止めを図る環状の複数の突起が一体に形成されている。インペラ収納チャンバ137は、インペラ138が冷媒中に浸漬された状態になり且つインペラ138が回転すると冷媒を液体入口142から吸い込んで液体出口144から吐出するように構成されている。液体入口142は、インペラ収納チャンバ137を囲む壁部131B及び131Cのうち、複数枚のブレード143と対向する壁部131Bに形成されている。液体入口142は、軸139の軸線の延長線上に位置するように壁部131Bに形成されている。また図21に示すように、液体出口144は、軸139の軸線と直交する方向に位置する壁部(周壁部)131Cに形成されている。
この実施の形態の電動ポンプ13では、図20及び図21に示すように、液体入口142が形成された壁部131Bに、環状の溝部147と3本の細長い溝部148とが形成されている。環状の溝部147は、液体入口142の周囲を完全に囲むようにインペラ138側に向かって開口する構造を有している。また3本の細長い溝部148は、環状の溝部147の外側に環状の溝部147とは連続しないように形成されて、軸139の軸線を中心にして放射状に延び且つインペラ138側に向かって開口している。環状の溝部147及び3本の細長い溝部148の形状寸法は、液体入口142からインペラ収納チャンバ137内に入ったゴミや気泡が、ブレード143と環状の溝部147の角部及び細長い溝部148の角部との間で砕かれて、細長い溝部内に沿って遠心力で径方向外側に移動し、液体出口144から排出されるように定められている。このような溝部147及び148を設けると、インペラ収納チャンバ137内にゴミや気泡が残留してポンプの性能が低下するのを有効に防止することができる。なお細長い溝部148は、この例のように、周方向に等しい間隔を開けて形成するのが好ましい。このようにするとこれらの細長い溝部148の存在が、インペラ138の回転むらを生じさせる原因となることがない。
図22は、電動ポンプ13´の他の例の縦断面図を示している。図19乃至図21に示した電動ポンプの構造と同様の部分には、図19乃至図21に付した符号にダッシュを付して説明を省略する。図22に示した電動ポンプ13´は、駆動用電動機134´のロータ134C´がステータ134B´の外側を回転するアウターロータタイプの永久磁石電動機である点、永久磁石円板135´がロータ134C´のカップの上に装着されている点、カップ状部材140´の内側に永久磁石板135´と駆動用電動機134´の回転軸134D´の軸線方向に対向する永久磁石磁極141´が配置されている点、液体入口142´が形成された壁部131B´に環状の溝部147が形成されていない点等で、前述の電動ポンプ13と相違する。図23及び図24に示すように、壁部131B´には、液体入口142´を中心にして3本の細長い溝部148´が液体入口142´と連続しないように形成されている。そして細長い溝部148を囲む壁面のうち径方向外側に位置する壁面部分149´に、壁部131B´に向かって徐々に近づくように傾斜するテーパが付されている。このようにテーパを形成すると、遠心力で径方向外側に移動した泡・ゴミ等が、細長い溝部の縁に引っ掛からずに、スムーズに細長い溝部から排出される。また壁面部分149´にテーパを設けない場合と比べ、インペラ138´を回転したときの損失が少なくなり、消費電力を減らすことができる。なお図19乃至図21に示した電動ポンプ13の細長い溝部148にも同様のテーパを形成してもよいのは勿論である。
図25には、ヒートシンク3の斜視図を示しており、図26及び図27は、ヒートシンク3の平面図及び正面図を示している。更に図28は、図27のA−A線断面図を示しており、図29は図27のB−B線断面図を示しており、図30は図29のC−C線断面図を示している。ヒートシンク3は、内部に冷媒流路を備えており、ベースプレート31と、トッププレート32及び周壁部33を備えたトッププレートケース34とから構成されている。ベースプレート31は、電子部品装着面31a及び電子部品装着面31aと厚み方向に対向して冷媒と直接接触する放熱面31bを備えており、銅やアルミニウム等の熱伝導性に優れた金属により一体に形成されている。トッププレートケース34は、ベースプレート31と同様に銅やアルミニウム等の熱伝導性に優れた金属によって形成されていてもよいが、合成樹脂材料により成形されていてもよい。トッププレートケース34には、冷媒入口35aに取り付けられたチューブ接続用筒体35と冷媒出口36aに取り付けられたチューブ接続用筒体36とが設けられている。
トッププレート32は、ベースプレート31の放熱面31bとの間に所定の間隙を介して対向する対向面32aを備えている。そして周壁部33は、ベースプレート31とトッププレート32との間にチャンバ43(図30)を形成するようにベースプレート31とトッププレート32とを連結する。このヒートシンク3では、チャンバ43を仕切る仕切り壁部37(図28乃至図30)を備えている。仕切り壁部37は、周壁部33の対向する一対の周壁構成部分33a及び33bの一方(33a)と結合または密着して他方(33b)に向かって延びている。結合を得るためには、例えば接着または溶着技術を用いればよい。また密着のためには、押し付け技術またはきつく嵌め合わせる技術を用いればよい。仕切り壁部37の存在によって、チャンバ43内には、仕切り壁部37の両側に第1及び第2の分割チャンバ38及び39が形成され、仕切り壁部37と一対の周壁構成部分の他方(33b)との間に第1及び第2の分割チャンバ38及び39を連通する連通路40が形成されている。そしてヒートシンク3の冷媒入口35aは、第1の分割チャンバ38の連通路40とは反対側に位置する第1のチャンバ部分領域38aと連通するように設けられている。またヒートシンク3の冷媒出口36aは、第2の分割チャンバ39の連通路40とは反対側に位置する第2のチャンバ部分領域39aと連通するように設ける。こうすることでヒートシンク3の冷媒入口35aと冷媒出口36aとが近づいた位置に配置されることになり、ヒートシンク3への配管の接続が容易になる上、配管の存在がヒートシンク3を固定する際の障害になることが少ない。第1及び第2の分割チャンバ38及び39内には、冷媒の流通を阻止しないように、少なくともベースプレート31に対して熱伝達可能に設けられた複数のプレート状放熱フィン41がそれぞれ配置されている。冷媒入口35aから第1の分割チャンバ38内に入った冷媒は、第1の分割チャンバ38内の複数のプレート状放熱フィン41と接触した後に、第1の分割チャンバ38の第2のチャンバ部分領域38b、連通路40を通って第2の分割チャンバ39の第3のチャンバ部分領域39b内に入り、第2の分割チャンバ39内の複数のプレート状放熱フィン41と接触した後に第4のチャンバ部分領域39aに入って冷媒出口36aから排出される。このような構造にすれば、ヒートシンクの形状寸法を大きくすることなく、冷却性能が向上する。その理由は、冷媒入口35a及び冷媒出口36aの直径寸法に対する第1の分割チャンバ38及び第2の分割チャンバ39の幅寸法の比が、あまり大きくならないので、各分割チャンバ38及び39内にある複数のプレート状放熱フィン41間の間隙内を流れる冷媒の流速及び流量に大きな差が生じることがなくなって、各プレート状放熱フィン41から冷媒への熱伝達が滞りなく行われるからである。その結果、ヒートシンク3の形状寸法を大きくすることなく、冷却性能を高めることができる。
この例では、本発明で用いる複数の放熱フィンを、仕切り壁部37と並んで延びる複数枚のプレート状放熱フィン41から構成している。この場合には、隣接する2枚のプレート状放熱フィン41の間に、冷媒が流れる間隙が形成されている。プレート状放熱フィン41の厚みと、間隙の幅寸法は、必要な冷却性能を得ることができるように定めればよい。なおベースプレート31、仕切り壁部37及び複数枚のプレート状放熱フィン41は一体に成形することができる。その上で、仕切り壁部37及び複数枚のプレート状放熱フィン41の先端をトッププレート32に結合または密着させる。結合を得るためには、例えば接着または溶着技術を用いればよい。また密着のためには、押し付け技術またはきつく嵌め合わせる技術を用いればよい。このような構成を採用すると、プレート状放熱フィン41の上端とトッププレート32との間に冷媒が流れなくなり、冷媒の流通は放熱フィン間の隙間のみに限定される。その結果、放熱フィンから冷媒への熱伝達量が減少するのを有効に防止して、冷却性能を高めることができる。
なおヒートシンク3の冷媒入口35a及び冷媒出口36aを、本例ではトッププレート32に形成している。このようにすると、ヒートシンク3への配管の接続が容易になる上、配管の存在がヒートシンク3を固定する際の障害になることが少ない。
この例では、複数枚のプレート状放熱フィン41は、第1のチャンバ部分領域38a及び第2のチャンバ部分領域38bと、連通路40を間に挟む第3のチャンバ部分領域39b及び第4のチャンバ部分領域39aを除いた位置に配置する。チャンバ43内における放熱フィンの占有体積を必要以上に増加させると、冷媒の流速が少なくなって、かえって冷却性能が低下することになる。
またチャンバ43の四隅を囲む周壁部33の内壁面の部分42は、角部を形成しない湾曲面によって構成されている。このようにすると、チャンバ43内の角部における流路抵抗を小さくすることができて、不必要な流速の低下を抑制できる。
チューブ接続用筒体35および36は、トッププレート32に形成された冷媒入口35a及び冷媒出口36aに、半田付けまたは蝋付けにより接続されている。以下図28に示された、チューブ接続用筒体36を例にして説明する。チューブ接続用筒体36のトッププレート32より出た基部側の外周部には、冷媒出口36aからトッププレート32の表面側に漏れ出た半田または蝋付けの溶融金属を受け入れる環状の空間36Aを備えた鍔部36Bが一体に設けられている。この鍔部36Bは筒状本体36Cの外周部に一体に固定されて径方向に延びる環状の板状部36Dと、板状部36Dの端部から筒状本体36Cに沿って延びる円筒部36Eとから構成される。
このような鍔部36Bをチューブ接続用筒体36に設けると、トッププレート32の裏面とチューブ接続用筒体36の筒状本体36Cの基部の外周面との間に付けた半田付けまたは蝋付け用の溶融金属が、トッププレート32の表面側に外側から見える形で漏れ出るのを防止できる。トッププレート32とベースプレート31とは、ベースプレート31の外周部に形成した段部31Aに充填された半田または蝋付け材料により相互に結合される。なおヒートシンクの外面に、メッキや、塗装やショットブラスト等の処理を施せばヒートシンクの外観をより美しいものとすることができる。
図31は、ヒートシンク3、ラジエータ7および電動ポンプ13で用いられているチューブ接続用筒体(代表例としてヒートシンク3の1本のチューブ接続用筒体36を示す)の端部にチューブ90を嵌合した状態の拡大断面図を示している。チューブ接続用筒体36の端部の外周部には、先端部から基部側に向かうに従って直径寸法が大きくなるテーパ面36Fと、このテーパ面36Fとの間にチューブの内壁に食い込むエッジを形成するようにテーパ面36Fの頂部からチューブ接続用筒体36の筒状本体36Cに向かって延びるエッジ形成面36Gとを備えた3つのエッジ形成用突出部36Hが一体に設けられている。このようなエッジ形成用突出部36Hを1以上設けると、チューブ90をチューブ接続用筒体36に嵌合させる過程で、エッジ形成用突出部36Hのエッジをチューブ90の内壁部に食い込ませることができてチューブ90の抜け止めを強固に図ることができる。またチューブ接続用筒体に設けられたエッジ形成用突出部のエッジが、チューブの内壁部に食い込んでいるので、両者に隙間はなく、接続部における液漏れ、あるいは液の蒸発を、大幅に減らすことができる。
なおチューブは、耐熱性、耐薬品性、耐候性に優れ、柔軟性及び伸縮性があまりない材料で形成されたものが好ましい。現時点で好ましいチューブ90としては、プラスチック製のチューブが好ましく、本実施の形態ではフッ素樹脂により形成されたチューブを用いている。このフッ素樹脂としては、透水性が低いフッ素樹脂を用いるのが好ましい。このようにすると冷媒がチューブ90の外壁部を透過して冷媒が減少してしまうのを抑制できる。なおチューブ90の主要部分の外周部には、チューブ90の長手方向に延びる螺旋状の溝91または蛇腹状の溝91が形成されている。このような溝91を形成しておけば、柔軟性や伸縮性がないチューブ90であっても、ヒートシンク取付時の曲げ作業が容易になる。
図32(A)乃至(F)は、ラジエータ7の電動ファン5と対向しない側に位置する面の外周縁部分にスポンジやゴムなどの弾性材料からなるガスケット14を取り付けた電子部品冷却装置の左側面図、正面図、底面図、平面図、右側面図及び背面図を示している。ガスケット14は、4本の直線状のガスケット部材14a乃至14dによって構成されている。ラジエータ7の両側面には、ガスケット部材14a及び14bをそれぞれ支持するガスケットホルダ16がそれぞれ取り付けられている。図33(A)及び(B)はガスケットホルダ16の正面図及び右側面図を示しており、図33(C)はガスケットホルダを用いない場合とガスケットホルダ16を用いる場合のガスケット部材14aの変形態様を示す断面図である。ガスケットホルダ16はガスケット14の一部を構成するガスケット部材14a及び14bを放熱部71から離した状態で支持し且つガスケット部材14a及び14bを被取付部に向かって押し付けた際にガスケット部材が被取付部に安定した状態で密着するようにガスケット部材の変形を規制する。ガスケットホルダ16は、ガスケット部材14aまたは14bを支持する支持面161を備えた本体162と、本体162に設けられた2つの取付用フック163とを一体に備えている。取付用フック163は、ラジエータ7の放熱部71の側方に係止される。また本体162にはその両端に延長部分164を備えている。延長部分164は、上側タンク74及び下側タンク75の外面に装着されたガスケット部材14c及び14dの端部に沿って延びて、ガスケット部材14c及び14dの変形を規制する。
本実施の形態では、2つのガスケットホルダ16によりガスケット支持部材が構成されている。図33(C)に示すように、ガスケット支持部材を用いると、ガスケット14を冷却性能に影響を与える位置に取り付けることがなく、ガスケット14を常に安定した形で変形させることができるので、密閉性の低下を防止できる。なおガスケットホルダ16は、ラジエータ7に対して着脱可能に取り付けられているので、ガスケットを用いる必要がない場合にはガスケットホルダ16を装着する必要性はない。