JP5210814B2 - ターミナル構造およびはんだ接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ターミナル構造およびはんだ接合方法に関し、特に、車両に搭載される電子部品と、該電子部品を収容する筐体とを電気的に接続するターミナル構造およびはんだ接合方法に適用して好適なものである。
近年、電子機器の高速化、小型化、多機能化等に伴って、プリント配線基板も多層化や高密度化が要求されるようになってきており、電子部品等のリードをスルーホールに挿通させて、はんだ付けするスルーホール型部品やコネクタ等を混在して高密度に実装することが要求されている。
一方、例えば自動車等の車両に搭載されるパワー半導体等において、車内の限られた空間に搭載するために、大電流を取り扱うパワー半導体を収容する筐体と当該パワー半導体の動作を制御する制御基板(電子基板)とを一体化して、パワー半導体ユニットであるECU(Electronic Control Unit;電子制御装置)とすることが多く行われている。
これに伴い、主として金属材料等の導電性の材料からなる部材であるターミナルにより電子基板と筐体とを電気的に接続するターミナル構造が多く採用される傾向にある(例えば、特許文献1または2参照)。
特開2005−49240号公報 特開2003−208939号公報 特開2006−287101号公報
ところで、このようなターミナル構造としては、例えば図6および図7に示すように、ECU101の筐体120に一端(基部)が固定された複数のターミナル131、131・・・131の他端(先端部)を、基板上に種々の電子部品等を実装した電子基板である回路基板110に形成されたスルーホール110a、110a・・・110a等の孔に挿入し、スルーホール110a、110a・・・110aに溶融したはんだを供給して凝固させることにより、はんだ接合部111、111・・・111を形成し、回路基板110(より具体的には、回路基板110の板面等に形成されたプリント配線)とターミナル131、131・・・131とをはんだ接合したものが知られている。
しかしながら、このようなターミナル構造は、ターミナル131の長さ(より厳密には、筐体120に固定されている部分から回路基板110にはんだ接合されている部分までの距離であり、図7中の長さL3または長さL4に相当する)により、製造時の作業性(組付け性)と、エンジンルーム内のように高ストレス環境下に配設されることによる熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性(信頼性)とが相反するという問題がある。
すなわち、筐体120を構成する材料は、主として樹脂材料や金属材料であるのに対して、電子基板110を構成する材料は、主としてガラスエポキシ材(エポキシ樹脂にガラス不織布を織り込んで積層プレスしてつくられた材料;いわゆるガラエポ)やフェノール樹脂等であり、通常は両者の熱膨張係数が大きく異なる。
そのため、筐体120に収容されたパワー半導体の動作時の発熱等により、ECU101が昇温されて熱膨張すると、図7(a)に示すように、ターミナル131、131・・・131が短い場合(長さL3)には、はんだ接合部111、111・・・111に大きな歪みが生じ易く、はんだ接合部111、111・・・111の破損、ひいては電子基板110と筐体120との間の導通不良の原因となるおそれがある。
また、図7(b)に示すように、ターミナル131、131・・・131が長い場合(長さL4)には、ターミナル131、131・・・131が短い場合に比べてターミナル131、131・・・131の変形量が小さく、はんだ接合部111、111・・・111の歪みを相対的に軽減することが可能であるものの、筐体120に基部が固定されたターミナル131、131・・・131の先端部の位置のバラツキがターミナル131、131・・・131が短い場合に比べて大きくなる(位置精度が低下する)。
その結果、複数のターミナル131、131・・・131の先端部を電子基板110の対応するスルーホール110a、110a・・・110aに同時に挿入することが困難となり、製造時の作業性(組付け性)を低下させる問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性に優れ、はんだ接合の信頼性を格段と向上し得るターミナル構造およびはんだ接合方法を提供することを主たる目的とする。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、電子部品が実装された電子基板を筐体に収容し、基部を前記筐体に固定すると共に、先端部を前記電子基板に穿設された複数の孔に挿入してはんだ接合することにより、前記電子基板と前記筐体とを電気的に接続する複数のターミナルを有する半導体装置のターミナル構造であって、前記複数のターミナルにおける前記基部と前記先端部との間の中途部を所定状態に保持するガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記電子基板に向けた上方側に、前記複数のターミナルに対し隙間を有する逃げ部を備え、前記逃げ部における前記ガイド部材の長手方向に向けた幅の寸法が、前記複数のターミナルに用いる材料の弾性領域に基づいて算出される所定寸法からなることを特徴とする
従って、本発明の一態様によれば、複数のターミナルが、ガイド部材によって上記中途部を所定状態に保持される。このため、電子基板を筐体に対し組み付ける際に、従来のような各ターミナルの位置が定まらず、組み付けに手間が掛かる組み付け性の低下を未然に回避し、かかる組み付け時の作業性を格段と向上させることができる。このとき、ガイド部材における各ターミナルを保持する上方側には、それぞれターミナルに対し隙間を有する逃げ部が設けられていることにより、各ターミナルに対し遊びを持たせることができるため、はんだによって接合する際に熱歪みによって各ターミナルに曲がりが生じることを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができる。
また、本発明の一様体において、上記逃げ部における上記ガイド部材の長手方向に向けた幅の寸法が、上記複数のターミナルに用いる材料の弾性領域に基づいて算出される所定寸法からなることとしている。これにより、応力を緩和することが可能なターミナル長さを設定する場合、そのターミナルの変形量を弾性領域内に規制することができるため、低ストレスでのターミナル曲がりを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができる。
さらに、本発明の一態様において、上記逃げ部における上記ガイド部材の下方側端部から上記電子基板までの間における上記複数のターミナルの寸法が、上記はんだ接合に用いるはんだのクラック発生サイクルに基づいて算出される所定寸法からなることが好ましい。これにより、電子基板とターミナルとの組み付け性を確保しつつ、はんだ接合時の熱歪みに対する耐久性を一段と適切に向上させることができる。
しかも、本発明の一態様において、上記所定寸法は、上記複数のターミナルがC2600材を用いる場合、7〔mm〕以上とすることにより、ターミナルの材質に応じて最適なはんだ接合を行うことができる。
また、上記目的を達成するための本発明の一態様は、複数のターミナルの基部を筐体に固定すると共に、電子部品が実装された電子基板を前記筐体に収容し、前記複数のターミナルの先端部を前記電子基板に複数穿設されたうちの対応する孔に挿入した状態ではんだ接合することにより、前記電子基板と前記筐体とを各前記ターミナルを介して電気的に接続するはんだ接合方法であって、前記複数のターミナルを、前記電子基板における前記孔の位置に合わせた所定間隔でそれぞれ連結する複数の連結部と共に一体成形するターミナル成形工程と、前記複数のターミナルにおける前記基部と前記先端部との間の中途部を所定状態に保持するためのガイド部材を絶縁樹脂を用いてモールド成形し、当該ガイド部材の前記複数のターミナルを保持する部位における前記電子基板に向けた上方側に、前記複数のターミナルに対し隙間を有する逃げ部を形成するとともに前記逃げ部における前記ガイド部材の長手方向に向けた幅の寸法が、前記複数のターミナルに用いる材料の弾性領域に基づいて算出される所定寸法からなることとするガイド部材成形工程と、前記複数のターミナルを前記ガイド部材によって保持した後、各前記連結部を打ち抜いて個々のターミナルに分割するターミナル分割工程とを設けることを特徴とする。
従って、本発明の一態様によれば、複数のターミナルが一体成形されるため、ガイド部材への組み付け性を格段と向上させることができる。また、各ターミナルは、該ガイド部によって上記中途部を所定状態に保持されるため、電子基板を筐体に対し組み付ける際に位置決めする手間を省き、かかる組み付け時の作業性を格段と向上させることができる。
このとき、ガイド部材における各ターミナルを保持する部位の上方側には、それぞれターミナルに対し隙間を有する逃げ部が設けられていることにより、各ターミナルに対し遊びを持たせることができるため、はんだによって接合する際に熱歪みによって各ターミナルに曲がりが生じることを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができる。加えて、応力を緩和することが可能なターミナル長さを設定する場合、そのターミナルの変形量を弾性領域内に規制することができるため、低ストレスでのターミナル曲がりを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができる。
本発明によれば、複数のターミナルが、ガイド部材によって上記中途部を所定状態に保持されるため、電子基板を筐体に対し組み付ける際に、従来のような各ターミナルの位置が定まらず、組み付けに手間が掛かる組み付け性の低下を未然に回避し、かかる組み付け時の作業性を格段と向上させることができる。このとき、ガイド部材における各ターミナルを保持する上方側には、それぞれターミナルに対し隙間を有する逃げ部が設けられていることにより、各ターミナルに遊びを持たせることができるため、はんだによって接合する際に熱歪みによって各ターミナルに曲がりが生じることを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができる。かくして、製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性に優れ、はんだ接合の信頼性を格段と向上し得るターミナル構造およびはんだ接合方法を実現することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
図1は、本発明にかかるターミナル構造の一実施例における全体構造を概略的に示す斜視図である。
図1に示すように、本発明のターミナル構造を適用した半導体装置であるパワー半導体ユニットとしてのECU1は、ハイブリッド車(Hybrid Vehicle)等の車両に搭載され、主として電子基板としての回路基板10と、筐体としてのケース20と、ターミナル構造30と、パワー半導体等を備えている。
この場合、ECU1は、ハイブリッド車における回生ブレーキシステムに用いられる制御ブレーキ用ECUである。ここで、回生ブレーキシステムとは、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時に、モーターを発電機として作動させることにより、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに回収し、再利用するものである。
なお、パワー半導体を備えるECUの例としては、本実施例に限らず、この他、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;半導体スイッチング素子)等の種々の半導体を備えるECUを広く適用することができる。また、本実施例のターミナル構造30は、ECU1に具備される構成であるが、本発明はこれに限定されることなく、回路基板とケースとを電気的に接続する用途に広く適用可能であることは言うまでもない。
回路基板10は、エポキシ樹脂にガラス不織布を織り込んで積層プレスしてつくられた材料であるガラスエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の絶縁性を有する材料からなる板状の部材に、回路を形成(パターニング)して種々の電子部品(すなわち、半導体チップやコンデンサ等)を実装したものである。そして、これらの実装された電子部品は、回路基板10の表面または内部に形成されたプリント配線により、適宜電気的に接続されるようになっている。
また、回路基板10には、図2に示すように、回路基板10の一対の板面(本実施例の場合は上下面)を貫通する孔であるスルーホール10a、10a・・・10aが形成されている。なお、図1においては、便宜上、回路基板10に実装される電子部品およびプリント配線を省略している。
ケース20は、パワー半導体を収容するものであり、樹脂材料で構成されている。かかるケース20に収容されるパワー半導体の動作(回生ブレーキ動作)は、回路基板10により制御される。
なお、本実施例の場合、ケース20は、パワー半導体を収容するものであるが、本発明におけるケースはこれに限定されることなく、この他、例えば回路基板とは別体の種々の機器、または当該機器の容器等を広く適用することができると共に、当該ケースを構成する材料は樹脂材料に限定されることなく、この他、金属材料やセラミックス等も広く適用することができる。
ここで、ECU1におけるターミナル構造30は、図1および図2に示すように、主として複数のターミナル31、31・・・31と、ガイド部材32とを備えている。かかる複数のターミナル31、31・・・31は、回路基板10(より厳密には、回路基板10の表面等に形成されたプリント配線または回路基板10に実装された電子部品等)とケース20(より厳密には、ケース20に収容されるパワー半導体またはケース20に電気的に接続される外部の機器類)とを電気的に接続するようになっている。
ターミナル31、31・・・31は、導電性の金属材料(アルミニウム、銅、または、これらの合金等)で構成された部材からなり、その形状は針状、ピン状、短冊状等、いわゆる細長い形状をなしている。
本実施例の場合、ターミナル31、31・・・31は、回路基板10におけるスルーホール10a、10a・・・10aの位置に合わせた所定間隔で、それぞれ並列して連結する複数の連結部32c、32c・・・32cと共に一体成形されている。
そして、これら連結されたターミナル31、31・・・31におけるケース20の底面側に向けた一端(すなわち基部)は、それぞれケース20(より厳密には、ケース20の底面に配設される樹脂バスバーまたはECU1として他の機器と接続するためにケース20の底面に設けられたコネクタ等)に固定される。
より具体的には、樹脂材料からなるケース20を金型で成形する際に、これら連結したターミナル31、31・・・31の基部を当該金型に挿入した状態で保持し、次いで当該金型に溶融状態の樹脂材料を充填して凝固させることにより、ターミナル31、31・・・31の基部をケース20に固定する。
なお、本発明において、複数のターミナル31、31・・・31をケース20に固定する方法としては、上述した本実施例の方法に限定されることはなく、この他、種々の方法を広く適用することができる。例えば、複数のターミナル31、31・・・31をケース20に固定する他の方法としては、接着剤により接着する方法や、ねじ等を用いて固定する方法、ケース20に爪等の係合部を形成して当該係合部にターミナルの基部を係合する方法等が挙げられる。
一方、ターミナル31、31・・・31の他端(すなわち、基部とは反対の回路基板10側に向けた先端部)は、回路基板10に複数穿設された孔としてのスルーホール10a、10a・・・10aに挿入され、次いで、かかるスルーホール10a、10a・・・10aに溶融したはんだが供給されて凝固し、はんだ接合部11、11・・・11が形成される。
そして、これらはんだ接合部11、11・・・11によって、ターミナル31、31・・・31の先端部と回路基板10とがはんだによって接合(つまり、はんだ接合)されることにより、回路基板10の表面に形成されたプリント配線または回路基板10に実装された電子部品等と、ターミナル31、31・・・31とが電気的に接続され、導通可能な状態となるようになっている。
なお、本発明にかかるはんだ接合に用いられる、はんだの種類は特に限定されることはなく、既知の種々のはんだを広く適用することが可能である。
ところで、本実施例の場合、ターミナル31、31・・・31は、その基部と先端部との間の中間部分である中途部をガイド部材32によって、所定状態に保持されるようになっている。そして、上述したように、各ターミナル31、31・・・31は、その基部をケース20に固定され、当該ガイド部材32によって中途部を保持された後、それぞれを連結する連結部32c、32c・・・32cを打ち抜くことにより、個々のターミナル31、31・・・31に分割されるようになっている。
これにより、当該ターミナル構造30によれば、複数のターミナル31、31・・・31を回路基板10、またはガイド部材32に対し組み付ける際に、スルーホール10a、10a・・・10a、または後述する貫装孔32b、32b・・・32bに対し位置決めする手間を省き、容易に組み付けることができるため、組み付けの作業性(組み付け性)を格段と向上させることができる効果を奏するようになっている。
かかるガイド部材32は、回路基板10を構成する材料と同じ材料、例えばガラスエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の絶縁性を有する材料(絶縁樹脂)からなる部材である。
当該ガイド部材32は、絶縁樹脂を用いて略逆U字形状にモールド成形された部材であり、該ガイド部材32の長手方向に、回路基板10のスルーホール10a、10a・・・10aの位置に合わせた所定の間隔でターミナル31、31・・・31を保持するように、ガイド部材32を上下方向(ケース20に組み付けた状態における上下方向)に貫通する複数の貫装孔32b、32b・・・32bが穿設されている。貫装孔32b、32b・・・32bには、それぞれ対応するターミナル31、31・・・31を貫装することにより、複数のターミナル31、31・・・31の中途部を保持するようになっている。
本実施例の場合、ガイド部材32の各貫装孔32b、32b・・・32bには、ケース20に組み付けた状態における回路基板10側に向けた上方側に、貫装されるターミナル31、31・・・31との間に所定の隙間を有する逃げ部32a、32a・・・32aが設けられている。なお、本実施例においては、当該逃げ部32a、32a・・・32aは、貫装孔32b、32b・・・32bにて貫装され保持するターミナル31、31・・・31の外周に対し、全面的に形成されるようになっている。
従って、ガイド部材32は、貫装孔32b、32b・・・32bにおける各ターミナル31、31・・・31を保持する上方側に、それぞれターミナルに対し隙間を有する逃げ部32a、32a・・・32aが設けられていることにより、各ターミナル31、31・・・31に対し遊びを持たせることができる。
このため、ターミナル31、31・・・31の先端部をはんだによって回路基板10に接合する際に、熱歪みによって各ターミナル31、31・・・31に曲がりが生じることを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができる効果を奏するようになっている。
これは、逃げ部32a、32a・・・32aが設けられることにより、回路基板10に対する複数のターミナル31、31・・・31の組み付け性を確保すべく、当該各ターミナル31、31・・・31の長さを短くした場合に生じていた、はんだ接合に対する耐久性の低下を、各ターミナル31、31・・・31に対し遊びを持たせることで回避できるためである。従って、はんだによって接合する際に熱歪みに起因して、各ターミナル31、31・・・31に曲がりが生じることを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性を実用上十分に向上させることができるのである。
また、本実施例によれば、複数のターミナル31、31・・・31は、ガイド部材32によって、その中途部を所定状態に保持されることにより、必然と回路基板10の対応するスルーホール10a、10a・・・10aに対する位置決めがなされる。このため、はんだ接合に対する耐久性確保のために当該ターミナル31、31・・・31の長さを長くしていた場合に生じていた、回路基板10(より厳密には、スルーホール10a、10a・・・10a等)に対する組み付け性の低下を未然に回避することができるようになっている。
従って、本実施例のターミナル構造30によれば、ターミナル31、31・・・31の長さを長くすることによる利点と、短くすることによる利点との双方を高次元で実現することができる効果を奏することができるのである。
以上、説明したように、本実施例のターミナル構造30では、以下のような利点を有する。すなわち、ターミナル構造30は、ターミナル31、31・・・31のガイド部材32によって保持される下方側端部(具体的には、ガイド部材32の逃げ部32a、32a・・・32aにおける回路基板10とは反対に向けた下方端部)から先端部までの長さ(つまり、図2における長さL1)を任意の長さに設定することが可能である。
そして、この逃げ部32a、32a・・・32aは、各ターミナル31、31・・・31の太さよりも大きい寸法(図2における大きさL2)で設けられるため、当該ターミナル31、31・・・31に対し、所定の寸法で隙間を有し得るようになっている。
このとき、かかる逃げ部32a、32a・・・32aにおけるガイド部材32の長手方向に向けた幅の寸法、すなわち長さL2は、ターミナル31、31・・・31に用いる材料の弾性領域(図3(a)に楕円で示す領域)に基づいて算出される所定寸法からなることが好ましい。これにより、応力を緩和することが可能なターミナル31、31・・・31の長さを設定する場合、該ターミナル31、31・・・31の変形量を弾性領域内に規制することができるため、低ストレスでのターミナル曲がりを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性を実用上十分に向上させることができる利点を有している。
また、ターミナル31、31・・・31において任意に設定可能な長さL1は、図3(b)に示す、はんだ接合部11、11・・・11におけるクラック発生サイクルとに基づいて算出される。因みに、本実施例では、ターミナル31、31・・・31として、いわゆる黄銅としてのC2600−H材(JIS規格)を用いるようにしたため、上述したCAE解析(Computer Aided Engineering:数値解析、シミュレーション)による条件に基づいて、ターミナル31、31・・・31における長さL1は、7〔mm〕以上(とりわけ、本実施例では7〔mm〕とする)が最適であることが判明した。
なお、図3(a)は、C2600−H材におけるS−S曲線を示したものであり、図3(b)は、本発明にかかるターミナル構造30について、所定の上限温度および下限温度の熱サイクルを付与した場合のはんだ接合部11、11・・・11の耐久性とターミナル31、31・・・31の長さとの関係を示したものである。また、図3(b)の横軸である「基板と補強樹脂の隙間量」は、本実施例のターミナル構造30の場合、図2における長さL1を指す。
そのため、ターミナル31、31・・・31の長さL1を7〔mm〕に設定し、従来よりも実用上十分に長く確保することにより、ECU1の温度が上昇して回路基板10およびケース20がそれぞれ熱膨張した場合でも回路基板10およびケース20を構成する材料の熱膨張係数の差に起因してターミナル31、31・・・31、ひいてははんだ接合部11、11・・・11に生じる熱歪みを相対的に小さくすることが可能である。ゆえに結果として、はんだ接合部11、11・・・11の耐久性(信頼性)を向上することができる。
なお、本実施例では、ターミナル31、31・・・31として、C2600−H材を用いるようにした場合について述べるが、本発明はこれに限らず、ターミナルの材料としては、この他、例えばC2600−1/2H材など、C2600材全般を広く適用することができる。
また、ガイド部材32に回路基板10を構成する材料と同じ材料、すなわち熱膨張係数が回路基板10を構成する材料と同じ材料を用いるようにすれば、ガイド部材32および回路基板10の温度が上昇して熱膨張した場合でも、両者の温度が略同じであれば、回路基板10に形成されたスルーホール10a、10a・・・10aとガイド部材32に形成された貫装孔32b、32b・・・32bとの相対的な位置はほとんど変化せず、ターミナル31、31・・・31の先端部の局所的な曲がりが抑制され、ガイド部材32および回路基板10の熱膨張に起因してターミナル31、31・・・31、ひいてははんだ接合部11、11・・・11に大きな歪みが生じることを防止することができる。
さらに、ターミナル31、31・・・31が長い(すなわち、基部から先端までの長さが長い)場合であっても、回路基板10からガイド部材32上面までの長さを小さく設定することでターミナル31、31・・・31の先端部の見かけ上の剛性を向上することができる。
従って、ガイド部材32によりターミナル31、31・・・31の中途部を保持してターミナル31、31・・・31の中途部の相対的な位置精度を確保しつつ、ガイド部材32からターミナル31、31・・・31の先端部(回路基板10)までの長さを十分に小さくすることにより、ターミナル31、31・・・31の先端部の位置のバラツキを小さく抑えることが可能となる。
これにより、結果として、複数のターミナル31、31・・・31の先端部を回路基板10の対応するスルーホール10a、10a・・・10aに同時に挿入することを容易にすることができ、製造時の作業性を格段と向上させることができる。
このように、製造時の作業性を向上する(ターミナル31、31・・・31の先端部の位置のバラツキを小さく抑える)観点からはガイド部材32(具体的には、ガイド部材32の逃げ部32a、32a・・・32aにおける回路基板10とは反対に向けた下方端部)からターミナル31、31・・・31の先端部(回路基板10)までの長さL1(図2参照)を極力短く設定することが望ましく、はんだ接合部11、11・・・11の耐久性(信頼性)を向上する観点からは当該長さL1を極力長く設定することが望ましい。
従って、本実施例のターミナル構造30は、回路基板10とケース20とを電気的に接続する場合における製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性(信頼性)に優れている。言い換えれば、製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性の両者を高い次元で両立することが可能である。
なお、本実施例においては、ガイド部材32は、回路基板10を構成する材料と同じ(熱膨張係数が同じ)材料からなる構成としたが、本発明はこれに限定されることなく、ガイド部材を構成する材料が回路基板を構成する材料と異なる場合であっても、ガイド部材を構成する材料の熱膨張係数が回路基板を構成する材料の熱膨張係数に近似している絶縁性の材料であれば同様の効果を奏する(回路基板とケースとを電気的に接続する場合における製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部の耐久性に優れる)ことができる。
ただし、ガイド部材を構成する材料の熱膨張係数が回路基板を構成する材料の熱膨張係数に対し、どの程度近似している必要があるかは、(1)回路基板を構成する材料の熱膨張係数とケースを構成する材料の熱膨張係数の差、(2)回路基板からケースまでの長さ、等の条件により変動し得る。
従って、ガイド部材を構成する材料の熱膨張係数(の適正値)ρ1は実施の形態毎に実験等により適宜確認する必要があるが、目安としては(a)ガイド部材を構成する材料の熱膨張係数ρ1が回路基板を構成する材料の熱膨張係数ρ2と、ケースを構成する材料の熱膨張係数ρ3との間であること、且つ、(b)ガイド部材を構成する材料の熱膨張係数ρ1がケースを構成する材料の熱膨張係数ρ3よりも回路基板を構成する材料の熱膨張係数ρ2に近いこと。すなわち、ρ2<ρ1<{(ρ2+ρ3)/2}<ρ3またはρ3<{(ρ2+ρ3)/2}<ρ1<ρ2を満たすことが望ましい。
ここで、以下に、図5を用いて本発明にかかるはんだ接合方法の実施の一形態について説明する。
本発明にかかるはんだ接合方法の一実施例は、ターミナル構造30を用いて回路基板10とケース20とを電気的に接続する(ECU1を製造する)方法であり、主として固定・保持工程SP3と、接合工程SP5とを有している。
かかる工程に加えて、本実施例のはんだ接合方法の場合、複数のターミナル31、31・・・31を、回路基板10におけるスルーホール10a、10a・・・10aの位置に合わせた所定間隔で、それぞれ連結する複数の連結部32c、32c・・・32cと共に一体成形するターミナル成形工程SP1と、ガイド部材32を絶縁樹脂を用いてモールド成形し、当該ガイド部材32の複数のターミナル31、31・・・31を保持する部位、すなわち貫装孔32b、32b・・・32bにおける回路基板10に向けた上方側に、各ターミナル31、31・・・31に対し隙間を有する逃げ部32a、32a・・・32aを形成するガイド部材成形工程SP2と、複数のターミナル31、31・・・31をガイド部材32によって保持した後、各連結部32c、32c・・・32cを打ち抜いて個々のターミナル31、31・・・31に分割するターミナル分割工程SP4とを設けることを特徴としている。
すなわち、かかるはんだ接合方法は、開始ステップSP0において開始され、続くターミナル成形工程SP1において、複数のターミナル31、31・・・31を、回路基板10におけるスルーホール10a、10a・・・10aの位置に合わせた所定間隔で、それぞれ連結する複数の連結部32c、32c・・・32cと共に一体成形する。
次いで、ガイド部材成形工程SP2に移行して、ガイド部材32を絶縁樹脂を用いてモールド成形し、当該ガイド部材32の複数のターミナル31、31・・・31を保持する部位、すなわち貫装孔32b、32b・・・32bにおける回路基板10に向けた上方側に、各ターミナル31、31・・・31に対し隙間を有する逃げ部32a、32a・・・32aを形成する。
次に、固定・保持工程SP3に移行して、複数のターミナル31、31・・・31の基部をケース20に固定すると共に、回路基板10を構成する材料と同じ材料(または熱膨張係数が回路基板10を構成する材料とケース20を構成する材料との間であると共に、熱膨張係数がケース20を構成する材料よりも回路基板10を構成する材料に近い材料)からなるガイド部材32で複数のターミナル31、31・・・31の中途部を保持する。
なお、かかる固定・保持工程SP3において、(A)複数のターミナル31、31・・・31の基部をケース20に固定する作業および(B)回路基板10を構成する材料と同じ材料(または熱膨張係数が回路基板10を構成する材料とケース20を構成する材料との間であると共に、熱膨張係数がケース20を構成する材料よりも回路基板10を構成する材料に近い材料)からなるガイド部材32で複数のターミナル31、31・・・31の中途部を保持する作業のいずれを先に行うか((B)→(A)または(A)→(B))、あるいは両作業を同時並行的に行うかは、ECU1の製造方法により適宜選択することが可能である。
例えば、金型にターミナル31、31・・・31をセットして樹脂材料を充填することにより、ターミナル31、31・・・31の基部をケース20に固定し、その後ターミナル31、31・・・31にガイド部材32を貫装してターミナル31、31・・・31の中途部を保持する構成としても良く、予めターミナル31、31・・・31にガイド部材32を貫装してターミナル31、31・・・31の中途部を保持し、その後ターミナル31、31・・・31の基部を樹脂で固めてサブアッシイを形成し、当該サブアッシイの樹脂部分をケース20に固定する構成としても良い。
この後、ターミナル分割工程SP4に移行して、複数のターミナル31、31・・・31をガイド部材32によって保持した後、各連結部32c、32c・・・32cを打ち抜いて個々のターミナル31、31・・・31に分割すると、続く接合工程SP5に移行して、複数のターミナル31、31・・・31の先端部を回路基板10に形成されたスルーホール10a、10a・・・10aに挿入してはんだ接合することにより回路基板10とケース20とを電気的に接続する。
以上のように、本実施例のはんだ接合方法によれば、回路基板10とケース20とを電気的に接続する場合における製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性(信頼性)に優れる。言い換えれば、製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性の両者を高い次元で両立することが可能である。
〔本実施例の作用・効果〕
以上、説明したように、本発明にかかるターミナル構造30によれば、複数のターミナル31、31・・・31が、ガイド部材32によって中途部を所定状態に保持されるため、はんだ接合部11、11・・・11における耐久性を確保すべく、ターミナル31、31・・・31の長さL1を長くした場合であっても、回路基板10をケース20に対し組み付ける際に、従来のような各ターミナルの位置が定まらず、すなわち、組み付ける際にターミナル31、31・・・31と回路基板10の対応するスルーホール10a、10a・・・10aとを位置決めする手間が掛かり、組み付け性が低下するのを未然に回避し、かかる組み付け時の作業性を格段と向上させることができる。
しかも、本発明のはんだ接合方法によれば、複数のターミナル31、31・・・31は一体成形され、ガイド部材32によって所定状態に保持された後、各ターミナル31、31・・・31を連結する連結部32c、32c・・・32cを打ち抜いて分割されるため、ガイド部材32や回路基板10との組み付け性を、より一段と向上させることができる。
このとき、ガイド部材32における各ターミナル31、31・・・31を保持する上方側には、それぞれターミナル31、31・・・31対し隙間を有する逃げ部32a、32a・・・32aが設けられていることにより、組み付け性を確保すべく、ターミナル31、31・・・31の長さL1を短くした場合に生じていた、はんだ接合部11、11・・・11に対する耐久性の低下を、各ターミナル31、31・・・31に対し遊びを持たせることで回避できる。このため、はんだによって接合する際に熱歪みにより、ターミナル31、31・・・31に曲がりが生じることを抑制することができ、熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性を実用上十分に向上させることができる。
かくして、製造時の作業性および熱歪みに対するはんだ接合部11、11・・・11の耐久性に優れ、はんだ接合の信頼性を格段と向上し得るターミナル構造30およびはんだ接合方法を実現することができる。
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述した実施例においては、上記ガイド部材32における逃げ部32a、32a・・・32aとして、保持するターミナル31、31・・・31の外周全体に対して隙間を持たせるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、要はガイド部材32によって保持するターミナル31、31・・・31に対し遊びを持たせるものであれば、この他、例えば図2との対応部分に同一符号を付した図4に示すように、ガイド部材32が保持するターミナル31、31・・・31の外周における一部に対してのみ隙間を持たせるように逃げ部32a、32a・・・32aを設けるようにしても良い。
本発明は、とりわけ使用環境の厳しい車両の電子装置、電子機器等に適用するのが好ましく、自動車製造業や自動車部品製造業等に利用されるのが望ましいが、総じて半導体等の電子部品を取り扱う電気・電子産業等に広く利用可能である。
本発明に係るターミナル構造が適用される一実施例としてのECUを概略的に示す斜視図である。 図1のECUにおけるターミナル構造部分を拡大して断面で示す部分的拡大図である。 本発明に係るターミナル構造におけるターミナルの長さとはんだ接合部の耐久性の関係を示すグラフである。 本発明に係る接合方法の実施の一形態を示すフローチャートである。 本発明に係るターミナル構造が適用される他のECUを概略的に示す斜視図である。 従来のターミナル構造が適用されるECUを示す斜視図である。 従来のターミナル構造を断面で示す部分的拡大図である。
符号の説明
1…ECU(半導体装置、パワー半導体ユニット)
10…回路基板(電子基板)
10a…スルーホール(孔)
11…はんだ接合部
20…ケース(筐体)
30…ターミナル構造
31…ターミナル
32…ガイド部材
32a…逃げ部
32b…貫装孔
32c…連結部

Claims (4)

  1. 電子部品が実装された電子基板を筐体に収容し、基部を前記筐体に固定すると共に、先端部を前記電子基板に穿設された複数の孔に挿入してはんだ接合することにより、前記電子基板と前記筐体とを電気的に接続する複数のターミナルを有する半導体装置のターミナル構造であって、
    前記複数のターミナルにおける前記基部と前記先端部との間の中途部を所定状態に保持するガイド部材を有し、
    前記ガイド部材は、前記電子基板に向けた上方側に、前記複数のターミナルに対し隙間を有する逃げ部を備え
    前記逃げ部における前記ガイド部材の長手方向に向けた幅の寸法が、前記複数のターミナルに用いる材料の弾性領域に基づいて算出される所定寸法からなる
    ことを特徴とするターミナル構造。
  2. 前記逃げ部における前記ガイド部材の下方側端部から前記電子基板までの間における前記複数のターミナルの寸法が、前記はんだ接合に用いるはんだのクラック発生サイクルに基づいて算出される所定寸法からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載のターミナル構造。
  3. 前記所定寸法は、前記複数のターミナルがC2600材を用いる場合、7〔mm〕以上である
    ことを特徴とする請求項2に記載のターミナル構造。
  4. 複数のターミナルの基部を筐体に固定すると共に、電子部品が実装された電子基板を前記筐体に収容し、前記複数のターミナルの先端部を前記電子基板に複数穿設されたうちの対応する孔に挿入した状態ではんだ接合することにより、前記電子基板と前記筐体とを各前記ターミナルを介して電気的に接続するはんだ接合方法であって、
    前記複数のターミナルを、前記電子基板における前記孔の位置に合わせた所定間隔でそれぞれ連結する複数の連結部と共に一体成形するターミナル成形工程と、
    前記複数のターミナルにおける前記基部と前記先端部との間の中途部を所定状態に保持するためのガイド部材を絶縁樹脂を用いてモールド成形し、当該ガイド部材の前記複数のターミナルを保持する部位における前記電子基板に向けた上方側に、前記複数のターミナルに対し隙間を有する逃げ部を形成するとともに前記逃げ部における前記ガイド部材の長手方向に向けた幅の寸法が、前記複数のターミナルに用いる材料の弾性領域に基づいて算出される所定寸法からなることとするガイド部材成形工程と、
    前記複数のターミナルを前記ガイド部材によって保持した後、各前記連結部を打ち抜いて個々のターミナルに分割するターミナル分割工程とを設ける
    ことを特徴とするはんだ接合方法。
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