JP5210586B2 - プラスチック判別装置およびプラスチック判別方法 - Google Patents
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Description
本発明は、判別対象物を構成するプラスチックの種類を判別するプラスチック判別技術に関する。
近年、プラスチック製品のリサイクルが進められている。例えば自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)、資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)や容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)に基づき、各分野でのプラスチック製品のリサイクルが推進されている。
このプラスチック製品のリサイクルを効率的に行うためには、プラスチック製品をその材料の種類ごとに判別して分別する必要があり、プラスチック製品の判別をいかに行うかが重要である。
プラスチック製品の判別を光を利用して行う技術としては、例えば特許文献1に開示されるプラスチック判別技術がある。このプラスチック判別技術では、波長の異なる複数の光、例えば1500〜1600nmの範囲内の波長を有する参照光と、1640〜1700nmまたは1700〜1760nmの範囲内の波長を有する検出光とをプラスチック製品に照射し、その反射率や透過率を測定することにより、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの各種のプラスチックの判別を簡易に行えるようになっている。
しかしながら、上記特許文献1のプラスチック判別技術では、検出光に用いられる波長範囲(1640〜1760nm)全体にわたって同じような反射率の変化傾向を有した異種のプラスチック、具体的にはポリスチレン(PS)とアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)との判別を精度良く行うのは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、PSとABSとの判別を精度良く簡易に行えるプラスチック判別技術を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、判別対象物を構成するプラスチックの種類を判別するプラスチック判別装置であって、(a)1141nm近傍の第1波長を有する第1の光と、1205nm近傍の第2波長を有する第2の光とを前記判別対象物に照射可能な照射手段と、(b)前記照射手段を用いた前記第1の光の照射と前記第2の光の照射とによる前記判別対象物からの反射光または透過光を受光し、前記第1波長に係る第1の光に対しての受光レベルと前記第2波長に係る第2の光に対しての受光レベルとの各受光レベルを測定する測定手段と、(c)前記各受光レベルを用いた所定の演算により、前記各受光レベルに関する相違度を求める演算手段と、(d)所定の閾値に対する前記相違度の大小に応じて、前記判別対象物を構成するプラスチックの種類がポリスチレンであるかアクリロニトリルブタジエンスチレンであるかを判別する判別手段とを備える。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係るプラスチック判別装置において、前記照射手段は、(a-1)前記第1の光を前記判別対象物に照射する第1の半導体発光素子と、(a-2)前記第2の光を前記判別対象物に照射する第2の半導体発光素子とを有する。
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るプラスチック判別装置において、前記所定の演算は、前記各受光レベルに関する差分または比率を求める演算を含む。
また、請求項4の発明は、請求項1または請求項2の発明に係るプラスチック判別装置において、前記各受光レベルは、前記反射光または透過光に関する判別対象物の反射率または透過率を表しており、前記演算手段は、前記各受光レベルを合算した合計値に対する各受光レベルの比率についての差分を演算することにより、前記相違度を求める。
また、請求項5の発明は、判別対象物を構成するプラスチックの種類を判別するプラスチック判別方法であって、(a)1141nm近傍の第1波長を有する第1の光を前記判別対象物に照射する第1照射工程と、(b)1205nm近傍の第2波長を有する第2の光を前記判別対象物に照射する第2照射工程と、(c)前記第1照射工程における第1の光の照射と前記第2照射工程における第2の光の照射とによる前記判別対象物からの反射光または透過光を受光し、前記第1波長に関する第1の光に対しての受光レベルと前記第2波長に関する第2の光に対しての受光レベルとの各受光レベルを測定する測定工程と、(d)前記各受光レベルを用いた所定の演算により、前記各受光レベルに関する相違度を求める演算工程と、(e)所定の閾値に対する前記相違度の大小に応じて、前記判別対象物を構成するプラスチックの種類がポリスチレンであるかアクリロニトリルブタジエンスチレンであるかを判別する判別工程とを備える。
請求項1から請求項5の発明によれば、1141nm近傍の第1波長を有する第1の光の照射と1205nm近傍の第2波長を有する第2の光の照射とによる判別対象物からの反射光または透過光を受光して、第1波長に係る第1の光に対しての受光レベルと第2波長に係る第2の光に対しての受光レベルとの各受光レベルを測定するとともに、各受光レベルを用いた所定の演算により求められた各受光レベルに関する相違度の所定の閾値に対する大小に応じて、判別対象物を構成するプラスチックの種類がポリスチレンであるかアクリロニトリルブタジエンスチレンであるかを判別する。その結果、PSとABSとの判別を精度良く簡易に行える。
特に、請求項2の発明においては、照射手段が、第1の光を判別対象物に照射する第1の半導体発光素子と第2の光を判別対象物に照射する第2の半導体発光素子とを有するため、照射手段の構成を簡素化できるとともに、その消費電力を低減できる。
また、請求項3の発明においては、所定の演算が、各受光レベルに関する差分または比率を求める演算を含むため、各受光レベルに関する適切な相違度を簡易に求められる。
また、請求項4の発明においては、各受光レベルを合算した合計値に対する各受光レベルの比率についての差分を演算することにより相違度を求めるため、PSとABSとに関する判別精度を向上できる。
<第1実施形態>
<プラスチック判別装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラスチック判別装置1Aの要部構成を示すブロック図である。
<プラスチック判別装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラスチック判別装置1Aの要部構成を示すブロック図である。
プラスチック判別装置1Aは、プラスチック製の判別対象物4がポリスチレン(PS)で形成されているかアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)で形成されているかを判定する装置として構成されている。
プラスチック判別装置1Aは、判別対象物4を判別するための検出光(以下では「第1検出光」ともいう)L1と検出光(以下では「第2検出光」ともいう)L2とを照射可能な照射手段として機能する半導体発光素子2、3と、判別対象物4からの反射光を受光する受光素子5と、制御部6Aとを備えている。
半導体発光素子2は、波長(第1波長)が1141nmの第1検出光L1を判別対象物4に向けて照射する光源である。この半導体発光素子2から発せられた第1検出光L1は、ダイクロイックミラー7、ハーフミラー8およびレンズ9を介して判別対象物4に照射される。ダイクロイックミラー7には、1141nm近傍の波長の光を選択して透過させるものが用いられる。なお、プラスチック判別装置1Aでは、効率よく第1検出光L1の光軸と第2検出光L2の光軸とを重ね合わせるための手段として、ダイクロイックミラー7を用いているが、プリズムあるいはグレーディング等の他の手段を用いてもよい。あるいは、第1検出光L1の光軸と第2検出光L2の光軸とを重ね合わせるためだけの目的に使用する場合には、ダイクロイックミラー7の代わりにハーフミラーを用いてもよい。
半導体発光素子3は、波長(第2波長)が1205nmの第2検出光L1を判別対象物4に向けて照射する光源である。この半導体発光素子3から発せられた第2検出光L2は、ダイクロイックミラー7によって反射されて第1検出光L1と光軸が一致され、ハーフミラー8およびレンズ9を介して判別対象物4に照射される。
これらの半導体発光素子2、3は、制御部6Aにより駆動回路11、12を介して駆動制御される。なお、半導体発光素子2、3は、狭い波長幅で発光が可能な半導体レーザ素子として構成されるのが好ましい。
受光素子5は、第1検出光L1および第2検出光L2に関する判別対象物4からの各反射光をレンズ9および、レンズ9とダイクロイックミラー7との間の光路上に設置されているハーフミラー8を介して順次に受光し、その受光量に応じた出力値を示す電気信号を出力する。この受光素子5から出力された電気信号は、増幅回路13およびA/D変換器14を介して制御部6Aに入力され、第1検出光L1および第2検出光L2に関する判別対象物4の反射率が測定される。なお、プラスチック判別装置1Aでは、半導体発光素子2と半導体発光素子3とを時間をずらせて順次に点灯させることで第1検出光L1および第2検出光L2に関する判別対象物4からの各反射光を受光素子5で順次に受光し、各反射光に関する判別対象物4の反射率を測定するようになっている。
すなわち、プラスチック判別装置1Aでは、半導体発光素子2を用いた第1検出光L1の照射と半導体発光素子3を用いた第2検出光L2の照射とによる判別対象物4からの反射光を受光素子5で受光し、波長1141nmに関する第1検出光L1に対しての反射率として表される受光レベルと波長1205nmに関する第2検出光L2に対しての反射率として表される受光レベルとが制御部6Aで測定されることとなる。
制御部6Aは、例えばCPUおよびメモリを有しており、プラスチック判別装置1Aの各部を統括的に制御する部位である。
この制御部6Aは、入出力回路15を介して入力される判別指令に応答して、駆動回路11を介して半導体発光素子2をパルス状に所定の微小時間だけ点灯させた後、駆動回路12を介して半導体発光素子3をパルス状に所定の微小時間だけ点灯させる一方、これに同期して受光素子5から順次に出力される計測信号を増幅回路13およびA/D変換器14を介して読み込んで判別対象物4の反射率を求める。
そして、制御部6Aは、第1検出光L1および第2検出光L2に関する各反射率に基づき判別対象物4がPSおよびABSのうちのいずれのプラスチックによって構成されているかを判別する(後で詳述)。この判別結果は、入出力回路15を介して外部に出力される。
以上の構成を有するプラスチック判別装置1Aは、リサイクル処理施設等のプラスチック製品の分別を行う分別処理ライン等に設置され、プラスチック製品の分別等に利用される。この場合、プラスチック判別装置1Aは、そのラインを司る中央制御装置と接続され、その中央制御装置から与えられる判別指令に応答して、判別処理を順次行い、その判別結果を中央制御装置に順次出力するようになっている。
次に、プラスチック判別装置1Aにおいて判別対象物4を構成するプラスチックの種類がPSであるかABSであるかを判別する手法について詳しく説明する。
<プラスチックの判別手法>
図2は、プラスチック判別装置1Aにおけるプラスチックの判別手法を説明するための図である。ここで、図2(a)および図2(b)において、横軸はプラスチックに入射させる光の波長(nm)を示し、縦軸は入射光についての反射率(%)を示している。また、図2(a)には、各色に着色されたPSの光反射特性Gp1〜Gp6(具体的には白色(粗面)の特性Gp1、白色(光沢面)の特性Gp2、茶色(粗面)の特性Gp3、茶色(光沢面)の特性Gp4、乳白色(粗面)の特性Gp5および乳白色(光沢面)の特性Gp6)が表されており、図2(b)には、各色に着色されたABSの光反射特性Ga1〜Ga4(具体的には白色(粗面)の特性Ga1、白色(光沢面)の特性Ga2、ねずみ色(粗面)の特性Ga3およびねずみ色(光沢面)の特性Ga4)が表されている。
図2は、プラスチック判別装置1Aにおけるプラスチックの判別手法を説明するための図である。ここで、図2(a)および図2(b)において、横軸はプラスチックに入射させる光の波長(nm)を示し、縦軸は入射光についての反射率(%)を示している。また、図2(a)には、各色に着色されたPSの光反射特性Gp1〜Gp6(具体的には白色(粗面)の特性Gp1、白色(光沢面)の特性Gp2、茶色(粗面)の特性Gp3、茶色(光沢面)の特性Gp4、乳白色(粗面)の特性Gp5および乳白色(光沢面)の特性Gp6)が表されており、図2(b)には、各色に着色されたABSの光反射特性Ga1〜Ga4(具体的には白色(粗面)の特性Ga1、白色(光沢面)の特性Ga2、ねずみ色(粗面)の特性Ga3およびねずみ色(光沢面)の特性Ga4)が表されている。
1000nmから1300nmまでの波長範囲において反射率が落ち込む2つの波長、具体的には波長1141nmおよび波長1205nmの各反射率に関してPSとABSとを比較すると、ABSでは図2(b)に示す各色の光反射特性Ga1〜Ga4のように1141nmと1205nmとの反射率がほぼ等しくなる傾向であるのに対して、PSでは図2(a)に示す各色の光反射特性Gp1〜Gp6のように1205nmの反射率が1141nmの反射率より大きくなる傾向である。
このようなPSおよびABSの特徴を利用すれば、PSとABSとの判別が可能である。この判別手法について具体的に説明する。
図2(a)に示すPSの光反射特性Gp1〜Gp6のうち、1141nmと1205nmとの反射率の差が最小となる光反射特性は、白色(粗面)に関する光反射特性Gp1である。この光反射特性Gp1では、1141nmに対する反射率が49.4%、1205nmに対する反射率が56.8%となっており、これらの差を求めると7.4%(=56.8−49.4)が算出される。
一方、図2(b)に示すABSの光反射特性Ga1〜Ga4のうち、1141nmと1205nmとの反射率の差が最大となる光反射特性は、白色(粗面)に関する光反射特性Ga1である。この光反射特性Ga1では、1141nmに対する反射率が74.5%、1205nmに対する反射率が75.7%となっており、これらの差を求めると1.2%(=75.7−74.5)が算出される。
以上のことから、波長1141nmと波長1205nmとの反射率の差に関する上記PSの最小値7.4%と上記ABSの最大値1.2%との間に、判定に用いる閾値α(例えば4%)を設定すれば、PSとABSとの判別が可能となる。すなわち、波長1141nmと波長1205nmとに関する各反射率の差分を求める演算を行い、その差分値が閾値α以上の場合にはPS、閾値α未満の場合にはABSと判定できる。
なお、PSとABSとの判別に用いる閾値αについては、上述の計算結果によれば1.2〜7.4%の範囲内における任意の値に設定できるが、計器誤差などを考慮すると1.3〜7.3%の範囲内の値に設定するのが好ましい。
以上のような判別手法を用いてPSとABSとを精度良く判別するプラスチック判別装置1Aの具体的な動作を以下で説明する。
<プラスチック判別装置1Aの動作>
図3は、プラスチック判別装置1Aの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作は、制御部6Aによって実行される。
図3は、プラスチック判別装置1Aの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作は、制御部6Aによって実行される。
ステップS1では、半導体発光素子2から波長1141nmの第1検出光L1を判別対象物4に照射する。
ステップS2では、ステップS1で照射された第1検出光L1に関する判別対象物4の反射率を測定する。具体的には、第1検出光L1が照射された判別対象物4からの反射光の光量を受光素子5で計測し、この光量と予め計測されている半導体発光素子2から発せられる第1検出光L1の光量との比率を算出することにより、反射率が得られる。
ステップS3では、半導体発光素子3から波長1205nmの第2検出光L2を判別対象物4に照射する。
ステップS4では、ステップS3で照射された第2検出光L2に関する判別対象物4の反射率を測定する。具体的には、第2検出光L2から照射された判別対象物4からの反射光の光量を受光素子5で計測し、この光量と予め計測されている半導体発光素子3から発せられる第2検出光L2の光量との比率を算出することにより、反射率が得られる。
ステップS5では、第1検出光L1と第2検出光L2とに関する反射率の差を演算する。具体的には、ステップS4で測定された第2検出光L2の反射率からステップS2で測定された第1検出光L1の反射率を減算して、各反射率に関する相違度を表す差分値を算出する。
ステップS6では、ステップS5で得られる反射率の差が閾値α(例えば4%)以上であるか否かを判定する。すなわち、閾値αに対する反射率の差についての大小を判断する。ここで、反射率の差が閾値α以上である場合には、ステップS7に進み、反射率の差が閾値α未満である場合には、ステップS8に進む。
ステップS7では、判別対象物4がPSで構成されていると判定する。
ステップS8では、判別対象物4がABSで構成されていると判定する。
以上のプラスチック判別装置1Aの動作により、波長1141nmの第1検出光L1と波長1205nmの第2検出光L2とに関する判別対象物4の各反射率についての差分を求め、この差分値の閾値αに対する大小に応じて判別対象物4を構成するプラスチックの種類がPSであるかABSであるかを判別するため、PSとABSとの判別を精度良く簡易に行えることとなる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るプラスチック判別装置1Bは、図1に示す第1実施形態のプラスチック判別装置1Aと類似の構成を有しているが、制御部の構成が異なっている。
本発明の第2実施形態に係るプラスチック判別装置1Bは、図1に示す第1実施形態のプラスチック判別装置1Aと類似の構成を有しているが、制御部の構成が異なっている。
すなわち、第2実施形態の制御部6Bは、第1実施形態と異なるプラスチックの判別手法を用いたプラスチック判別装置1Bの動作を実行させるプログラムが格納されている。このプラスチック判別手法について、以下で詳しく説明する。
<プラスチックの判別手法>
一般にプラスチック製品においては、各種の着色料による着色が施されているものが多い。しかし、様々な色が付されたプラスチック製品を反射率で判別しようとする場合には、各色ごとに異なる反射率への影響を考慮しなければ、高精度な判別が難しくなる。
一般にプラスチック製品においては、各種の着色料による着色が施されているものが多い。しかし、様々な色が付されたプラスチック製品を反射率で判別しようとする場合には、各色ごとに異なる反射率への影響を考慮しなければ、高精度な判別が難しくなる。
そこで、プラスチック判別装置1Bにおいては、第1検出光L1および第2検出光L2の各反射率に関する比率を算出することにより各反射率への着色の影響を相殺して判別精度の向上を図ることとする。この具体的な手法について以下で説明する。
まず、波長1141nmの第1検出光L1の反射率をRa、波長1205nmの第2検出光L2の反射率をRbとし、それらの比率に係る値として次の式(1)および式(2)を用いて第1検出光L1および第2検出光L2に関する各反射率を按分計算により規格化(無次元化)した値(以下では「規格化反射率」ともいう)Ta、Tbを算出する。
Ta=Ra/(Ra+Rb)・・・・・・・(1):
Tb=Rb/(Ra+Rb)・・・・・・・(2):
上記の式(1)および式(2)に基づき、図2(a)に示すPSの各光反射特性Gp1〜6と図2(b)に示すABSの各光反射特性Ga1〜4とに関する第1検出光L1および第2検出光L2の規格化反射率および波長1205nmでの規格化反射率を算出してグラフ化したものを、図4に示す。
Tb=Rb/(Ra+Rb)・・・・・・・(2):
上記の式(1)および式(2)に基づき、図2(a)に示すPSの各光反射特性Gp1〜6と図2(b)に示すABSの各光反射特性Ga1〜4とに関する第1検出光L1および第2検出光L2の規格化反射率および波長1205nmでの規格化反射率を算出してグラフ化したものを、図4に示す。
図4において、図4(a)および図4(b)は、波長1141nmの第1検出光L1および波長1205nmの第2検出光L2についての規格化反射率(黒丸のプロットで図示)を示している。そして、図4(a)には、各色に着色されたPSの規格化反射率のグラフFp1〜Fp6(具体的には白色(粗面)のグラフFp1、白色(光沢面)のグラフFp2、茶色(粗面)のグラフFp3、茶色(光沢面)のグラフFp4、乳白色(粗面)のグラフFp5および乳白色(光沢面)のグラフFp6)が表されており、図4(b)には、各色に着色されたABSの規格化反射率のグラフFa1〜Fa4(具体的には白色(粗面)のグラフFa1、白色(光沢面)のグラフFa2、ねずみ色(粗面)のグラフFa3およびねずみ色(光沢面)のグラフFa4)が表されている。
図4(a)のグラフFp1〜Fp6に表される各色のPSのうち、1141nmと1205nmとの規格化反射率の差が最小となるものは、グラフFp1に表される白色(粗面)のPSである。この白色(粗面)のPSにおいては、上記の式(1)に基づき算出される1141nmの規格化反射率が0.465(≒49.4/(49.4+56.8))、上記の式(2)に基づき算出される1205nmの規格化反射率が0.535(≒56.8/(49.4+56.8))となっており、これらの差を求めると0.070(=0.535−0.465)が算出される。
一方、図4(b)のグラフFa1〜Fa4に表される各色のABSのうち、1141nmと1205nmとの規格化反射率の差が最大となるものは、グラフFa1に表される白色(粗面)のABSである。この白色(粗面)のABSにおいては、上記の式(1)に基づき算出される1141nmの規格化反射率が0.496(≒74.5/(74.5+75.7))、上記の式(2)に基づき算出される1205nmの規格化反射率が0.504(≒75.7/(74.5+75.7))となっており、これらの差を求めると0.008(=0.504−0.496)が算出される。
以上のことから、波長1141nmと波長1205nmとの規格化反射率の差に関する上記PSの最小値0.070と上記ABSの最大値0.008との間に、判定に用いる閾値β(例えば0.04)を設定すれば、PSとABSとの判別が可能となる。すなわち、波長1141nmと波長1205nmとに関する各反射率を合算した合計値に対する各反射率の比率(規格化反射率)についての差分を演算することで各規格化反射率に関する差分値(相違度)を求め、その差分値が閾値β以上の場合にはPS、閾値β未満の場合にはABSと判定できる。
なお、PSとABSとの判別に用いる閾値βについては、上述の計算結果によれば0.008〜0.070の範囲内における任意の値に設定できるが、計器誤差などを考慮すると0.009〜0.069の範囲内の値に設定するのが好ましい。
以上のような判別手法を用いてPSとABSとを高精度に判別するプラスチック判別装置1Bの具体的な動作を以下で説明する。
<プラスチック判別装置1Bの動作>
図5は、プラスチック判別装置1Bの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作は、制御部6Bによって実行される。
図5は、プラスチック判別装置1Bの基本的な動作を示すフローチャートである。この動作は、制御部6Bによって実行される。
ステップS11〜S14では、図3のフローチャートに示すステップS1〜S4と同様の動作を行う。
ステップS15では、ステップS12およびステップS14で測定された各反射率に基づき上記の式(1)および式(2)を用いて、第1検出光L1と第2検出光L2とに関する2つの規格化反射率を算出する。
ステップS16では、ステップS15で算出された2つの規格化反射率の差を演算する。具体的には、第2検出光L2の規格化反射率から第1検出光L1の規格化反射率を減算して、各規格化反射率に関する相違度を表す差分値を算出する。
ステップS17では、ステップS16で得られる規格化反射率の差が閾値β(例えば0.04)以上であるか否かを判定する。すなわち、閾値βに対する規格化反射率の差についての大小を判断する。ここで、規格化反射率の差が閾値β以上である場合には、ステップS18に進み、規格化反射率の差が閾値β未満である場合には、ステップS19に進む。
ステップS18〜S19では、図3のフローチャートに示すステップS7〜S8と同様の動作を行う。
以上のプラスチック判別装置1Bの動作により、波長1141nmの第1検出光L1と波長1205nmの第2検出光L2とに関する判別対象物4の各反射率を規格化した規格化反射率についての差分を求め、この差分値の閾値βに対する大小に応じて判別対象物4を構成するプラスチックの種類がPSであるかABSであるかを判別するため、PSとABSとの高精度な判別を簡易に行えることとなる。
なお、プラスチック判別装置1Bにおいては、第1検出光L1の反射率と第2検出光L2の反射率とを規格化するのは必須でなく、第1検出光L1の反射率と第2検出光L2の反射率との比率を求める演算のみを行い、この比率と予め定められた閾値との大小を比較することでPSとABSとの判別を行うようにしても良い。
<変形例>
・上記の各実施形態におけるプラスチック判別装置については、判別対象物4からの反射光を受光素子5で受光してプラスチックの判別を行うのは必須でなく、判別対象物4の透過光を受光素子5で受光してプラスチックの判別を行うようにしても良い。
・上記の各実施形態におけるプラスチック判別装置については、判別対象物4からの反射光を受光素子5で受光してプラスチックの判別を行うのは必須でなく、判別対象物4の透過光を受光素子5で受光してプラスチックの判別を行うようにしても良い。
すなわち、判別対象物4に光が照射されると、その光の一部は、判別対象物4の表面で反射されるが、その残りは判別対象物4の内部に侵入し、その侵入した光の一部が判別対象物4に吸収され、その残りの部分が、判別対象物4を透過し、あるいは判別対象物4の内部で散乱により反射されるようになっている。よって、判別対象物4の透過光の全体の光量は、反射光の光量と同様に照射光の判別対象物4による吸収の割合により変動するようになっており、これによって、プラスチックの判別が可能である。このような判別対象物4の透過光を検出する透過型のプラスチック判別装置の例を図6に示す。
図6に示すプラスチック判別装置10は、図1に示す反射型のプラスチック装置1A(1B)と類似の構成を有しているが、図1に示されるハーフミラー8が削除され代わりにレンズ16が付加されている点が異なっている。また、プラスチック判別装置10の受光素子5は半導体発光素子2からの第1検出光L1の照射方向に配置されている。
このような構成を有するプラスチック判別装置10では、半導体発光素子2、3から照射された第1・第2検出光L1、L2に関する判別対象物4の各透過光を受光素子5で受光できることとなる。そして、この受光素子5で受光した各透過光から算出される透過率に基づき上述した第1・第2実施形態の演算(差分や規格化)に相当する演算を制御部6Cで行うことにより、上記の各実施形態と同様にPSとABSとの判別が可能となる。
・上記の各実施形態におけるプラスチック判別装置については、図1や図6に示すように判別対象物4への照射光の光軸と判別対象物4から受光する反射光の光軸とを同軸に設定した同軸光学系を採用するのは必須でなく、照射光の光軸と受光する反射光の光軸とを異軸に設定する異軸光学系を採用してもよい。
・上記の各実施形態においては、1141nmおよび1205nmの各波長の光を発する2つの半導体発光素子2、3の点灯を切替えることにより第1検出光L1および第2検出光L2を判別対象物4に照射するのは必須でなく、1141nmの波長の光を選択的に透過させる光学フィルタと1205nmの波長の光を選択的に透過させる光学フィルタとを切替えることにより第1検出光L1および第2検出光L2を交互に生成して判別対象物4に照射するようにしても良い。この場合には、各光学フィルタへの入射光として1141nmおよび(/または)1205nmを含む光を採用すれば良く、広範囲の波長範囲を有した光源を使用できるとともに、第1検出光L1および第2検出光L2を生成するための光源の共通化も可能となる。
一方、判別対象物4からの反射光を、1141nmの波長の光を選択的に透過させる光学フィルタと1205nmの波長の光を選択的に透過させる光学フィルタとに入射させ各光学フィルタを透過した光を受光素子5で受光することにより、各波長の反射率を測定するようにしても良い。この場合には、判別対象物4への照射光として1141nmおよび(/または)1205nmを含む光を採用すれば良く、広範囲の波長範囲を有した光源を使用できるとともに、第1検出光L1および第2検出光L2を判別対象物4に照射するための光源の共通化も可能となる。
・上記の各実施形態における第1検出光L1については、波長1141nmの光に限らず、1141nm近傍の波長の光を採用すれば良い。この1141nm近傍の波長とは、例えば1141±10nmの範囲内、つまり1131nm〜1151nmの範囲内の波長である。
また、上記の各実施形態における第2検出光L2についても、波長1205nmの光に限らず、1205nm近傍の波長の光を採用すれば良い。この1205nm近傍の波長とは、例えば1205±10nmの範囲内、つまり1195nm〜1215nmの範囲内の波長である。
以上のような1141nm近傍の第1検出光L1および1205nm近傍の第2検出光L2を用いても、上述した各実施形態と同様に、PSとABSとの判別を精度良く簡易に行えることとなる。
1A、1B、10 プラスチック判別装置
2、3 半導体発光素子
4 判別対象物
5 受光素子
6A〜6C 制御部
L1 第1検出光
L2 第2検出光
2、3 半導体発光素子
4 判別対象物
5 受光素子
6A〜6C 制御部
L1 第1検出光
L2 第2検出光
Claims (5)
- 判別対象物を構成するプラスチックの種類を判別するプラスチック判別装置であって、
(a)1141nm近傍の第1波長を有する第1の光と、1205nm近傍の第2波長を有する第2の光とを前記判別対象物に照射可能な照射手段と、
(b)前記照射手段を用いた前記第1の光の照射と前記第2の光の照射とによる前記判別対象物からの反射光または透過光を受光し、前記第1波長に係る第1の光に対しての受光レベルと前記第2波長に係る第2の光に対しての受光レベルとの各受光レベルを測定する測定手段と、
(c)前記各受光レベルを用いた所定の演算により、前記各受光レベルに関する相違度を求める演算手段と、
(d)所定の閾値に対する前記相違度の大小に応じて、前記判別対象物を構成するプラスチックの種類がポリスチレンであるかアクリロニトリルブタジエンスチレンであるかを判別する判別手段と、
を備えることを特徴とするプラスチック判別装置。 - 請求項1に記載のプラスチック判別装置において、
前記照射手段は、
(a-1)前記第1の光を前記判別対象物に照射する第1の半導体発光素子と、
(a-2)前記第2の光を前記判別対象物に照射する第2の半導体発光素子と、
を有することを特徴とするプラスチック判別装置。 - 請求項1または請求項2に記載のプラスチック判別装置において、
前記所定の演算は、前記各受光レベルに関する差分または比率を求める演算を含むことを特徴とするプラスチック判別装置。 - 請求項1または請求項2に記載のプラスチック判別装置において、
前記各受光レベルは、前記反射光または透過光に関する判別対象物の反射率または透過率を表しており、
前記演算手段は、前記各受光レベルを合算した合計値に対する各受光レベルの比率についての差分を演算することにより、前記相違度を求めることを特徴とするプラスチック判別装置。 - 判別対象物を構成するプラスチックの種類を判別するプラスチック判別方法であって、
(a)1141nm近傍の第1波長を有する第1の光を前記判別対象物に照射する第1照射工程と、
(b)1205nm近傍の第2波長を有する第2の光を前記判別対象物に照射する第2照射工程と、
(c)前記第1照射工程における第1の光の照射と前記第2照射工程における第2の光の照射とによる前記判別対象物からの反射光または透過光を受光し、前記第1波長に関する第1の光に対しての受光レベルと前記第2波長に関する第2の光に対しての受光レベルとの各受光レベルを測定する測定工程と、
(d)前記各受光レベルを用いた所定の演算により、前記各受光レベルに関する相違度を求める演算工程と、
(e)所定の閾値に対する前記相違度の大小に応じて、前記判別対象物を構成するプラスチックの種類がポリスチレンであるかアクリロニトリルブタジエンスチレンであるかを判別する判別工程と、
を備えることを特徴とするプラスチック判別方法。
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