JP5208403B2 - 基材表面修飾方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材表面修飾方法に関する。より詳しくは、自己組織化化合物を用いて基材を表面修飾する方法、該方法により得られる構造物及びその製造方法に関する。
従来、基材表面を修飾する方法として、スピンコート法、レイヤーバイレイヤー法、グラフト重合法、化学気相蒸着法などの方法が知られている。例えば、特許文献1には、シリコン基材の細胞接着性向上を目的とした、シランカップリング剤を用いたポリマー修飾の手法が、特許文献2には、不飽和脂肪酸とアミンとの反応生成物を用いたガラス表面の曇り止めに関する手法が開示されている。
特開平11−255926号公報 特開2001−48589号公報
従来の基材表面修飾方法では、表面修飾部が剥離するなどして表面処理の効果がなくなってしまった場合、再び表面処理を行い表面の機能を回復するには、しばしば大型の装置が必要であり、ユーザー自身が日常的に容易な操作を行って基材表面の表面修飾部を再形成することは難しいという問題がある。
また、自己組織化化合物、特に自己組織化ペプチドに関する研究は実施されているものの、自己組織化ペプチドそのものを基材表面修飾に応用した例はない。
本発明の課題は、自己組織化化合物を用いて基材を表面修飾する方法、該方法により得られる構造物、及びその製造方法を提供することにある。
本発明は
〔1〕 基材と自己組織化ペプチドAを含む溶液を接触させて修飾を行う基材表面修飾方法であって、前記基材が前記自己組織化ペプチドAと相互作用しうる自己組織化ペプチドBを有し、前記接触方法が該基材を自己組織化ペプチドAを含む溶液に浸漬、あるいは、該基材に自己組織化ペプチドAを含む溶液を塗布又は噴霧する方法であり、前記修飾方法が
工程(I):前記自己組織化ペプチドBを基材表面に結合させる工程、
ここで、工程(I)が
工程(a):自己組織化ペプチドBと共有結合可能な化合物(B)を基材表面に共有結合させる工程
工程(b):工程(a)で基材に結合させた化合物(B)に、自己組織化ペプチドBを共有結合させる工程
を含み、
及び、
工程(II):工程(I)で得られた基材を、自己組織化ペプチドAを含む溶液と接触させることにより、自己組織化ペプチドAを前記自己組織化ペプチドBを介して前記基材の表面で自己組織化させる工程
を含むものであって、前記工程(a)において、基材に結合される自己組織化ペプチドBの量を制御するために、化合物(B)と共に、さらに、自己組織化ペプチドBと共有結合不可な化合物(C)を基材表面に共有結合させる、
前記自己組織化ペプチドA少なくとも前記自己組織化ペプチドBを介して前記基材の表面で自己組織化させる、基材表面修飾方法、
〔2〕 前記〔1〕記載の基材表面修飾方法によって自己組織化ペプチドにより表面修飾された構造物であって、前記自己組織化ペプチドが構造物表面に前記自己組織化ペプチドと相互作用しうる自己組織化ペプチドを介して自己組織化して表面修飾部を形成しうるものであり、前記表面修飾部が再形成可能な構造物、及び
〔3〕 前記〔1〕記載の基材表面修飾方法を用いる、基材表面が修飾された構造物の製造方法
に関する。
本発明の方法によれば、自己組織化化合物を用いているため、基材表面の修飾及びその制御が容易であり、さらに、その表面修飾を繰返し再現することも可能である。また、該方法により表面修飾された構造物は、表面修飾の制御が容易であるという優れた効果を奏する。
本発明の基材表面修飾方法は、基材と自己組織化化合物を接触させて修飾を行う方法であり、前記基材が前記化合物と相互作用しうる部位を有し、前記化合物が少なくとも前記部位を介して前記基材の表面に吸着し、さらにそこを開始点として自己組織化することに大きな特徴を有する。自己組織化化合物と相互作用しうる部位を介することにより、自己組織化化合物の基材への吸着が強固になり、表面修飾の形成が確実になると考えられる。かかる観点から、前記部位が基材表面に存在することにより自己組織化化合物による表面修飾を容易に形成することができ、前記部位の基材表面での存在量を調整することにより表面修飾の制御が容易となる。また、たとえ自己組織化化合物による修飾が剥がれたとしても前記部位が基材に存在しているため、再修飾が容易となるのである。
また、自己組織化化合物と相互作用しうる部位の態様により、本発明の修飾方法としては、自己組織化化合物と相互作用しうる部位が既に存在している基材に自己組織化化合物で修飾する方法(態様1)と自己組織化化合物と相互作用しうる部位を新たに導入した基材に自己組織化化合物で修飾する方法(態様2)が挙げられる。本発明においては、自己組織化化合物による修飾部の調整が可能である観点から、態様2が好ましい。なお、前記部位が既に存在している基材に、さらに前記部位を導入し、自己組織化化合物で修飾する方法、即ち、態様1と態様2の方法を組み合わせた修飾方法もまた、本発明に含まれる。
態様1の基材表面修飾方法では、自己組織化化合物と相互作用しうる部位が既に存在している基材を用いるが、前記基材としては、コンタクトレンズ基材、シリコン含有基材、ガラス基材、コラーゲン基材、及び糖質基材が挙げられる。これらのなかでは、実用面での用途の多様性の観点から、シリコン含有基材が好ましい。また、前記基材を自己組織化化合物で修飾する反応の前に洗浄、親水化処理等の前処理に供してもよい。なお、態様1の基材表面修飾方法で用いる自己組織化化合物は、後述する態様2の基材表面修飾方法で用いる自己組織化化合物と同様のものが挙げられる。
態様2の基材表面修飾方法としては、
工程(I):自己組織化化合物と相互作用しうる部位を、基材表面に導入する工程、及び
工程(II):工程(I)で得られた基材を、自己組織化化合物と接触させることにより、自己組織化化合物を前記部位を介して前記基材の表面で自己組織化させる工程
を含む、基材表面修飾方法が挙げられる。
工程(I)では自己組織化化合物と相互作用しうる部位を、基材表面に導入する。
自己組織化化合物としては、例えば、自己組織化ペプチド、タンパク質、親水性ポリマーと疎水性ポリマーより構成されるブロックコポリマー、界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、アミノ酸配列の設計により様々な性質を付与できる観点から、自己組織化ペプチドを用いることが好ましい。
本発明において、前記「自己組織化ペプチド」とは、溶媒中において、水素結合、静電的相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等の相互作用を介して自発的に集合するペプチドをいう。具体的には、例えば、「水溶液中において、自己組織化してナノファイバーやゲルを形成するペプチド」を「自己組織化ペプチド」という。
また、本明細書において、前記「ナノファイバー」とは、ナノメートルスケールの幅を有する繊維状の分子集合体をいう。例えば、後述の実施例に記載のように、原子間力顕微鏡を用い、ピエゾ素子への印加電圧に基づく走査範囲から見積もったファイバーの幅や高さがナノスケールである場合、ナノファイバーの形成が確認されうる。
本発明に好適に使用される自己組織化ペプチドとしては、前記のような特性を有するペプチドが挙げられるが、例えば、米国特許第5,670,483号明細書や米国特許第5,955,343号明細書に例示されるものが挙げられる。
また、本発明に好適に使用される自己組織化ペプチドとして、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基とを含有するものを用いることができ、具体的には、自己組織化ペプチドは、少なくとも酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基を含有する。また、好適に使用される自己組織化ペプチドは、自己組織化のために適度な疎水性相互作用及び/又は静電的相互作用を得る観点から、さらに少なくとも1つの中性アミノ酸残基を含有することが望ましい。
なお、本明細書においては、中性アミノ酸残基は、水酸基、酸アミド基、チオール基等を有するため、極性を有するものとして、極性アミノ酸残基に分類するものとする。また、グリシンは、該グリシン中に含まれるアミノ基とカルボキシル基とが、アミノ酸同士のペプチド結合に用いられ、極性基を露出することがないため、非極性アミノ酸残基に分類するものとする。
前記アミノ酸残基は、天然型アミノ酸又は非天然型アミノ酸のいずれの残基でもよい。前記アミノ酸残基としては、特に限定されるものではないが、入手のしやすさや材料コストの観点から、以下の表1に示されるアミノ酸が好ましい。
Figure 0005208403
中性アミノ酸残基としては、自己組織化ペプチドの適度な疎水性相互作用を保つ観点から、親水性が高いアミノ酸残基が好ましく、かかるアミノ酸残基としては、セリン残基、アスパラギン残基、チロシン残基、トレオニン残基、グルタミン残基又はシステイン残基が好ましく、セリン残基、グルタミン残基又はアスパラギン残基がより好ましい。
酸性アミノ酸残基としては、低価格で合成が容易であるという観点から、好ましくは天然の酸性アミノ酸、より好ましくは、アスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基が望ましい。
塩基性アミノ酸残基としては、中性領域における高い水溶性及び合成の容易さの観点から、好ましくはアルギニン残基、リジン残基、オルニチン残基又はヒスチジン残基、より好ましくはアルギニン残基又はリジン残基が望ましい。
非極性アミノ酸残基としては、材料コストや合成の容易さの観点から、好ましくはアラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、トリプトファン残基、グリシン残基又はフェニルアラニン残基、より好ましくはアラニン残基又はフェニルアラニン残基が望ましい。
また、本発明に好適に使用される自己組織化ペプチドは、例えば、水溶液中において、β−シート構造を形成し、ペプチド分子間の静電的相互作用、水素結合及び疎水性相互作用などの相互作用などを介して自己組織化しうる。
自己組織化のために十分な相互作用をペプチド分子間に働かせる観点から、自己組織化ペプチドは、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上、さらに好ましくは12個以上のアミノ酸残基からなる。また、β−シート形成の容易化及び合成の簡易化の観点から、好ましくは200個以下、より好ましくは50個以下、さらに好ましくは32個以下のアミノ酸残基からなる。
かかる組成の自己組織化ペプチドは、水溶液中においてβ−シート構造を形成しうる。前記β−シート構造において、一方の面には、非極性アミノ酸残基のみが配置される。また、他方の面には、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基との双方が配置されていてもよく、極性アミノ酸残基のみが配置されていてもよい。自己組織化ペプチドにより形成されるβ−シート構造は、前記したように、一方の面は非極性アミノ酸残基のみが配置された疎水面となり、他方の面は極性アミノ酸残基が配置された親水面となる。したがって、かかる疎水面と親水面とを併せ持つβ−シートが、水溶液中において疎水面を隠すように集合して二層構造を形成する。また、その結果、例えば、両面に極性アミノ酸残基が配置されたシートとなり、さらに分子の自己組織化が進むにつれてこのシートが伸びていき、ナノファイバーを構成すると推測される。
本発明に好適に使用される自己組織化ペプチドは、当該分野で公知の方法により作製されうる。例えば、自己組織化ペプチドは、後述の実施例に記載されるようにFmoc法等の固相法又は液相法等の化学合成方法により合成されてもよく、遺伝子組換え発現等の分子生物学的方法により作製されてもよい。
かかる自己組織化ペプチドの例としては、例えば、下記の表2〜表7に記載のペプチドが挙げられる。なお、前記ペプチドは表1記載のアミノ酸の一文字表記と、それ以外の表記として、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、トリプトファン残基、グリシン残基、チロシン残基、セリン残基、トレオニン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基及びシステイン残基からなる群より選ばれるアミノ酸残基を示すXと、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、トリプトファン残基及びグリシン残基からなる群より選ばれるアミノ酸残基を示すZを用いて表されている。
Figure 0005208403
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Figure 0005208403
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自己組織化化合物と相互作用しうる部位とは、イオン間相互作用(イオン結合)、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用のうち少なくとも一つの力によって、自己組織化化合物と可逆的に吸着することが可能な部位のことをいう。具体的には、尿素やアミノ酸、ペプチド等、一分子内に水酸基やアミノ基、カルボン酸等、及び/又は、それらのイオン、といった水素結合サイトを一つ以上持つものが挙げられ、その他にも、分子内にベンゼン環や炭化水素基(化学式:―(CH―CH(nは任意の整数)で表される構造)を持つもの等が例示される。なお、本明細書でいう「相互作用」とは、上記のとおり、イオン間相互作用(イオン結合)、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用のうち少なくとも一つの力によって、自己組織化化合物と可逆的に吸着することをいう。
また、自己組織化化合物と相互作用しうる部位を、基材表面に導入する工程(I)の方法としては、直接、前記部位を基材に結合させる方法も挙げられるが、基材との結合力の観点から、工程(I)としては、
工程(a):自己組織化化合物と相互作用しうる部位を有する化合物(A)と共有結合可能な化合物(B)を基材表面に共有結合させる工程、及び
工程(b):工程(a)で得られた基材の化合物(B)に、化合物(A)を共有結合させる工程
を含むことが望ましい。
前記化合物(B)は、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基及びスクシンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するものであることが好ましい。かかる官能基を有する化合物は、前記官能基を単独で、又は2個以上有していてもよく、2個以上有する場合は、官能基の種類は同一でも異なっていてもよい。具体的に、かかる化合物としては、多くの基材に適用できるという観点から、シランカップリング剤が好ましく、さらに入手のしやすさから、エポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−glycidoxypropyltrimethoxysilane)(GPS)などが好適に挙げられる。
前記化合物(A)は、前述した自己組織化化合物と相互作用しうる部位を有するものであれば特に限定はなく、前記部位を単独で、又は2個以上有していてもよく、2個以上有する場合は、部位の種類は同一でも異なっていてもよい。具体的に、かかる化合物の好適例としては、自己組織化ペプチド、非自己組織化ペプチド、タンパク質、アミノ酸、コラーゲン、DNA、及び糖類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられ、これらのなかでは、水素結合サイトや疎水性相互作用が可能な官能基の配列が規則的である方が、自己組織化化合物との相互作用が強くなるという観点から、自己組織化ペプチドがより好ましい。また、本発明においては、水素結合サイトや疎水性相互作用が可能な官能基の配列が、相補的な配置を取ることができるという観点から、自己組織化化合物と、自己組織化化合物と相互作用しうる部位を有する化合物(A)とが同一の自己組織化ペプチドであることが好ましい。
また、工程(a)においては、基材への自己組織化化合物の吸着量を制御するための反応を行ってもよい。即ち、化合物(B)を介した化合物(A)の基材への結合量を制御する観点から、工程(a)において、さらに、前記化合物(A)と共有結合不可な化合物(C)を基材表面に共有結合させることが好ましく、具体的には、化合物(B)及び化合物(C)を混合して、共有結合させることもできる。そうすることにより、基材表面において、化合物(B)及び化合物(C)が同時に存在することにより、化合物(A)を介した自己組織化化合物の吸着量を調整することができる。例えば、基材表面における化合物(B)の割合が多いほど、化合物(A)の基材表面への結合量が多くなるので、化合物(A)へ吸着する自己組織化化合物の量が増え、従って、両者の存在比により、基材表面修飾を形成するナノファイバーの量を制御できる。
前記化合物(C)としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基又はスクシンイミド基を有さない化合物が好ましく、具体的には、炭素数1〜18のアルキル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、アルキルベンジル基、及びフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素基を有するものであることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、メチルベンジル基、及びフェニルメチル基からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素基を有するものであることがより好ましい。かかる化合物は、前記炭化水素基を単独で、又は2個以上有していてもよく、2個以上有する場合は、炭化水素基の種類は同一でも異なっていてもよい。かかる化合物としては、多くの基材に適用できる観点から、反応性が高いアルコキシ基を有するシランカップリング剤が挙げられ、例えば、化合物(B)に前記GPSを選択したような場合には、そのGPSと分子鎖長が近似した、プロピル基を有するトリメトキシプロピルシラン(trimethoxypropylsilane)(PS)が好適である。なお、化合物(C)は、かかる基を有するので化合物(A)と結合しないが、同様に自己組織化化合物とも結合しないものである。
化合物(B)及び化合物(C)は、双方溶解しうるトルエン、ベンゼン、クロロホルム、アルコール等に適宜溶解配合して用いることができる。
基材としては、例えば、シリコンウエハー等のシリコン含有基材、ガラス、金、銀、セラミック、プラスチック等が挙げられ、平板や凹凸板などの適宜な形態のものを用いることができるが、化合物(B)及び化合物(C)が容易に反応しうるという観点から、シリコン含有基材が好ましい。
基材は、反応の前に洗浄、親水化処理等の前処理に供してもよい。例えば、基材としてシリコンウエハーを使用した場合、アセトン等の溶媒で洗浄した後、オゾンクリーナーで洗浄する。その後、アンモニアと過酸化水素の混合液にシリコンウエハーを浸漬することにより親水化処理することができる。かかる処理を行うことにより、シリコンウエハーの表面上に水酸基を露出させ、化合物(B)及び化合物(C)を基材表面に共有結合させやすくする。
化合物(B)及び化合物(C)を基材に共有結合させる反応は、基材に化合物(B)又は化合物(C)を接触させて行うが、例えば、基材を化合物(B)又は化合物(C)を含有する溶液中に浸漬することにより行うことができる。また、化合物(B)及び化合物(C)の両方を共有結合させる場合には、化合物(B)及び化合物(C)を所望の割合で含有する溶液中に浸漬することにより行ってもよい。反応条件に特に制限はないが、浸漬後、溶媒等で洗浄して過剰な化合物を除去した後、数十分から数時間、加熱処理(アニーリング)を行い、反応を完結させる。
化合物(A)を、基材に結合された化合物(B)に共有結合させる反応は、後述する自己組織化化合物と基材を接触させる方法と同様にして行うことができ、例えば、組成物を調製する際に用いる溶媒や、組成物中の前記化合物の含有量も、後述に例示されるものが同様に挙げられる。
工程(II)では、工程(I)で得られた基材を、自己組織化化合物と接触させて表面修飾部を形成させる。
自己組織化化合物としては、前述した化合物が同様に挙げられ、アミノ酸配列の設計により様々な性質を付与できる観点から、自己組織化ペプチドを用いることが好ましい。かかる自己組織化ペプチドは自己組織化によって、ナノファイバーを形成し、それらのファイバーからなる被膜を形成することが期待される。例えば、自己組織化ペプチドRASDA(Ac−RASARASARASARADA−NH、R:アルギニン、A:アラニン、S:セリン、D:アスパラギン酸、Ac:N末端がアセチル基であることを示す、NH:C末端が酸アミド基であることを示す)を基材へ付加する場合、該ペプチドは同じ自己組織化ペプチドRASDAと互いに相互作用しうる。かかる化合物を含有する組成物に基材を、例えば、浸漬することで、自己組織化化合物を基材に吸着させ、より強固に薄膜を形成することができる。
自己組織化化合物は、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水系有機溶媒等に適宜配合して、自己組織化化合物を含有する組成物として用いることができる。
組成物中の自己組織化化合物の含有量は、化合物の種類、組成物の剤型等によっても異なるが、一般には、効率よく表面修飾させる観点から、好ましくは0.00001〜20重量%、より好ましくは0.001〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
組成物はpH調節可能な水溶液であればよく、特に限定はないが、組成物のpHは、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8であることが望ましい。かかる水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウムや塩酸でpHを調節した水溶液、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、Tris−HCl等の各種緩衝液などが挙げられる。
工程(I)で得られた基材と自己組織化化合物を接触させる方法としては、特に限定はなく、前記組成物中に浸漬する方法、及び前記組成物を塗布、噴霧する方法等が挙げられる。
浸漬する方法において、浸漬温度は特に限定されないが、作業性の観点から、5〜45℃で問題なく、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜35℃である。
浸漬する方法において、浸漬時間は特に限定されないが、好ましくは数秒〜数十時間、より好ましくは数十秒〜数時間、さらに好ましくは数分〜数時間である。
また、反応速度の向上の観点から、浸漬時に塩化リチウムなどの触媒を用いてもよい。
かくして基材表面には、自己組織化化合物からなる薄膜である表面修飾部が形成される。
また、本発明の方法は、表面修飾部が何らかの影響で消失してしまった場合においても、表面修飾部がイオン間相互作用(イオン結合)、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などの相互作用などを介して自己組織化する自己組織化化合物で形成されており、かつ自己組織化化合物と相互作用しうる部位が基材に結合していることから、表面修飾部を再形成するために、自己組織化化合物により修飾された基材に自己組織化化合物を繰返し接触させることができる。繰返す回数は、特に制限されない。
なお、本発明により得られた基材を浸漬した組成物から取り出し、イオン交換水で基材の表面を洗浄して、自然乾燥したとしても、自己組織化化合物の基材への吸着が破壊されることはなく、そのまま原子間力顕微鏡などの観察を行うことができる。
本発明の基材修飾方法により容易に表面修飾部を形成できることから、本発明は、さらに、本発明の基材表面修飾方法により得られた構造物を提供する。
本発明の構造物は、自己組織化化合物が構造物表面に前記化合物と結合しうる部位を介して吸着して自己組織化したものであり、その吸着が可逆的であるものである。具体的には、例えば、自己組織化化合物と相互作用しうる部位を有する化合物(A)が構造物表面に結合し、さらに、自己組織化化合物が前記化合物(A)と吸着して自己組織化している。なお、「吸着が可逆的である」とは、自己組織化化合物が構造物表面に薄膜を形成し、薄膜を剥離した後においても自己組織化化合物により構造物表面に薄膜を再形成することができることをいう。
本発明の構造物は、自己組織化化合物が吸着することにより親水性が高くなるために、基材表面に親水性を付与し、曇り止め、人工関節等の潤滑性付与、生体適合性付与、脂質付着防止、タンパク質付着防止等に使用され得る。また、本発明の構造物は、本発明の基材修飾方法により表面修飾を行う工程を含む限り、特に限定はなく、当業者に公知の方法により容易に製造することができる。
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
製造例1 エポキシ基修飾基材の調製
シリコンウエハーをアセトンで洗浄した後、日本レーザー電子(株)製「NL−UV253SH型オゾンクリーナー」を用いて洗浄した。このとき、表面に1〜2mm程度の酸化シリコン層が形成される。洗浄したシリコンウエハーは、水/28%アンモニア水/30%過酸化水素水混合液(6:4:1(容量比))に55℃で30分浸漬し、表層に水酸基を付与して親水化処理を行った。得られた基材を3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)のエタノール溶液(1容積%)に浸漬し一晩静置した。エタノールで軽く洗浄した後、110℃で20分アニールして、エポキシ基修飾基材を調製した。
製造例2 ペプチドの合成
RASDAの合成を、以下のように、Fmoc固相合成法により行なった。
1) 固相担体樹脂の調製
ペプチド合成用の固相担体樹脂であるCLEARTM−Amide Resin(コード番号:RCY−1250−PI、100−200メッシュ、4−(2,4−ジメトキシフェニル−フルオレニルメチルオキシカルボニル−アミノメチル)フェノキシアセチル−ノルロイシル−CLEAR Resin、ペプチド インスティチュート(PEPTIDES INSTITUTE製) 400mgを、固相合成装置(商品名:Solid Organic Synthesizer CCS−150M、アイラ(EYELA)社製)上の反応容器に入れた。
ついで、前記固相担体樹脂に、ジクロロメタン(和光純薬社製) 5mLを添加した。得られた混合物を、室温で10分間攪拌して、前記固相担体樹脂を膨潤させた。得られた産物を吸引ろ過に供して、それにより、ジクロロメタンを除去した。さらに、ジクロロメタンによる前記固相担体樹脂の膨潤及び該ジクロロメタンの除去の操作を行なった。
2) アミノ酸のカップリング
前記1)で得られた産物を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(和光純薬社製) 5mLの存在下に、室温で1分間攪拌した。ついで、得られた産物を吸引ろ過に供して、それにより、DMFを除去した。その後、前記DMF存在下での攪拌及びDMFの除去の操作(以下、「DMF処理」という)をさらに4回行なった。
得られた産物に、ピペリジン(和光純薬社製)/DMF混合溶媒(ピペリジン:DMF=1:4(容量比)) 5mLを添加し、得られた混合物を、室温で3分間攪拌することにより、前記固相担体樹脂中のフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基を除去した。得られた産物を、吸引ろ過に供して、混合溶媒を除去した。さらに、前記Fmoc基の除去及び混合溶媒の除去の操作を同様に行なった。ついで、攪拌時間を15分間としたことを除き、前記Fmoc基の除去及び混合溶媒の除去の操作を同様に行なった。
その後、得られた産物を前記と同様にDMF処理に供した。なお、前記DMF処理を5回行なった。
得られた固相担体樹脂と、該固相担体樹脂の活性末端の3倍等量(0.384mmol)のFmocアミノ酸誘導体(ペプチド インスティチュート製、商品名:Fmoc−Ala・H2O(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル−L−アラニン−1水和物))を含むDMF溶液 3mLと、128mM 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)を含むDMF溶液 1mLと、384mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)を含むDMF溶液 1mLとを混合し、2時間攪拌した。得られた産物を、吸引ろ過に供して、反応溶液を除去した。なお、RASDAのアミノ酸配列(Ac−RASARASARASARADA−NH2、R:アルギニン、A:アラニン、S:セリン、D:アスパラギン酸、Ac:N末端がアセチル基であることを示す、NH2:C末端がアミド基であることを示す)に従って、前記Fmocアミノ酸誘導体として、所望のアミノ酸残基に対応するFmoc誘導体を用いて同様の操作を繰り返した。
得られた産物を前記と同様にDMF処理に供した。なお、かかるDMF処理を5回繰り返した。
得られた産物に、768mM 無水酢酸(ナカライテスク社製)(該産物中の活性末端の10倍等量に相当)を含むDMF溶液を添加し、室温で2時間攪拌した。得られた産物を、吸引ろ過に供して、反応溶液を除去した。得られた産物を、前記と同様にDMF処理に供した。なお、前記DMF処理を5回繰り返した。
その後、得られた産物に、ジクロロメタン 5mLを添加し、室温で10分間攪拌することにより、ジクロロメタン処理を行なった。その後、得られた産物を、吸引ろ過に供した。なお、前記ジクロロメタン処理及び吸引ろ過を20回繰り返した。
得られた樹脂を乾燥させ、バイアルに移した。前記バイアルに、95容積% トリフルオロ酢酸(ナカライテスク社製) 9.5mLと、1,2−エタンジオール〔ティーシーアイ オーガニック ケミカルズ(TCI Organic Chemicals)社製〕 0.85mLと、チオアニソール(ティーシーアイ オーガニック ケミカルズ社製) 0.5mLと、水 0.5mLとを添加した。その後、得られた混合物を、3時間攪拌することにより、樹脂から、目的のペプチドを切断した。
得られたペプチド含有溶液に、ジエチルエーテル(ナカライテスク社製) 100mL(該ペプチド含有溶液の約10倍容量)を添加した。得られた産物を、3500r/minで5分間、室温で遠心分離して、上澄みを除去した。得られた沈殿物に、ジエチルエーテル 50mLを添加して、室温で、10分間攪拌した。得られた混合物を、3500r/minで5分間、室温で遠心分離して、上澄みを除去した。得られた沈殿物を、真空乾燥させ、ペプチド 200mgを得た。
実施例1
製造例1に記載の方法で調製されたエポキシ基修飾基材表面の接触角を測定した後、0.3重量%のRASDAの水溶液(50mM Tris−HCl、pH7.2)(以下、「0.3重量%RASDA水溶液」という)に塩化リチウム(終濃度:30mM)を加えた溶液に25℃で24時間浸漬させ、エポキシ修飾基材表面にRASDAを共有結合させ、さらに共有結合したRASDAを開始点として自己組織化を行った。浸漬していた水溶液から取り出した基材をイオン交換水で表面を軽く洗浄し、乾燥させた後に接触角を測定した(ペプチド修飾基材A)。その後、RASDAの良溶媒であるアセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸混合液(50:50:0.1(容量比))に浸漬して1時間超音波洗浄すること(以下、「超音波処理」という)で吸着したRASDAを取り除き、乾燥させた後に接触角を測定した(剥離基材A−1)。
さらに、前記剥離基材A−1を0.3重量%RASDA水溶液に25℃で24時間浸漬させ、前記基材表面に共有結合しているRASDAにRASDAを自己組織化によって吸着させ、ナノファイバーを形成させた。イオン交換水で表面を軽く洗浄した後に乾燥させ、接触角を測定した(ペプチド修飾基材A−R1)。その後、ペプチド修飾基材A−R1を超音波処理することで吸着したRASDAを取り除き、乾燥させた後に接触角を測定した(剥離基材A−2)。また、前記剥離基材A−2に、再度、RASDAを作用させることでRASDA吸着表面を再構築させることができるかを確かめるために、0.3重量%RASDA水溶液に25℃で24時間浸漬させた後、イオン交換水で表面を軽く洗浄した後に乾燥させ、接触角を測定した(ペプチド修飾基材A−R2)。各操作後の接触角の結果を図1に示す。
なお、本明細書において、接触角の測定は、接触角計(協和界面科学社製、DropMaster500)を用いて室温(25℃)で行った。接触角の算出には液滴法を用い、シリンジで2μLの液滴を作製し基材に接触させ、基材表面と液滴と気相の三相の接触点から引いた液滴の接線と液滴―基材界面とのなす角度を求めた。また各測定値はそれぞれの基材に対して5ヶ所接触角を測定し、その平均値を求めた。
図1の結果より、エポキシ基修飾基材の接触角が44°であったのに対して、RASDAにより初めて修飾したペプチド修飾基材Aの接触角は7°と高い親水性を示した。その後、超音波処理によって未反応のRASDAを取り除いた基材の接触角は、20°となり、やや親水性が失われた。これらの結果から、RASDAを基材に接触させた際に、共有結合と同時にRASDAの自己組織化が生じ、基材表面にRASDAのナノファイバーが形成されたため、接触角が7°という親水性の高い表面が構築されたものと考えられる。また、その後の超音波処理においては、ナノファイバー構造が壊れることで、エポキシ基修飾基材と同程度の接触角が得られることが期待されたが、強固に吸着したRASDAからなるナノファイバーがある程度残存したことで、エポキシ基修飾基材より親水性が増し、接触角が20°となったと考えられる。
前記の超音波処理による剥離基材A−1を、0.3重量%RASDA水溶液に浸漬して、RASDAの自己組織化によってナノファイバーを再形成させたペプチド修飾基材A−R1の接触角は9°となり、やはり高い親水性を示した。これは自己組織化によって吸着したRASDAがナノファイバーを再形成し、基材表面を覆うことで基材表面の親水性が向上したものと考えられる。次に前記基材を再度超音波処理した基材の接触角は13°となった。剥離基材A−1の接触角は20°であったことから、接触角が13°であった前記基材にはさらにRASDAのナノファイバーが多く残存したと考えられる。以上の結果から、自己組織化によって基材表面に再形成されたRASDAのナノファイバーは、超音波処理では完全に剥離しないほどの強い耐久性を持つと考えられる。さらに0.3重量%RASDA水溶液に前記基材を浸漬させ、イオン交換水で洗浄した後に乾燥させた基材の接触角は6°となり、再度RASDAからなるナノファイバーが表面を覆ったことで高い親水性を示した。これらのことから、RASDAによる繰返しの再修飾が可能であり、再修飾においても同程度の親水性を基材表面に付与することが可能であることが分かる。
実施例2、3及び比較例1
実施例1と同様にして、ペプチド修飾基材Aを調製後、超音波処理により剥離基材A−1を調製し、接触角を測定した。その後、より希薄な自己組織化ペプチド水溶液を用いても自己組織化ペプチドが自己組織化によってナノファイバーを形成し、基材表面を親水性にすることができるかを確かめるために0.01重量%のRASDAの水溶液(50mM Tris−HCl、pH7.2)(以下、「0.01重量%RASDA水溶液」という)に塩化リチウム(終濃度:30mM)を加えた溶液に25℃で24時間浸漬させた後、イオン交換水で表面を軽く洗浄した後に乾燥させて接触角を測定した(実施例2)。
また、実施例3として、GPSによる修飾を行わない基材を自己組織化ペプチドにより表面修飾を行った。即ち、製造例1と同様のシリコンウエハーをアセトンで洗浄した後、日本レーザー電子(株)製「NL−UV253SH型オゾンクリーナー」を用いて洗浄した。洗浄したシリコンウエハーは、水/28%アンモニア水/30%過酸化水素水混合液(6:4:1(容量比))に55℃で30分浸漬し、表層に水酸基を付与して親水化処理を行い、乾燥させた後に接触角を測定した。得られた基材を実施例2と同様に0.01重量%RASDA水溶液に25℃で24時間浸漬させた後、イオン交換水で表面を軽く洗浄した後に乾燥させ、接触角を測定した(実施例3)。
さらに、比較例1として、GPSによる修飾を行った基材を非自己組織化化合物により表面修飾を行った。前記と同様に製造例1に記載のシリコンウエハーを親水化処理したものを乾燥させた後に接触角を測り、その後、0.3重量%のポリエチレングリコール(分子量:5000−25000、ナカライテスク社製)水溶液に25℃で24時間浸漬させ、さらにイオン交換水で表面を軽く洗浄した後に乾燥させて測定した接触角を測定した(比較例1)。
実施例2における0.01重量%RASDA水溶液に塩化リチウム(終濃度:30mM)を加えた溶液に浸漬する前の基材表面の接触角、及び実施例3、比較例1の親水化処理後のシリコンウエハーの接触角はおよそ30−40°の範囲にあり、ほぼ同等の接触角を持つものとみなした。
それぞれの基材表面の接触角の変化を図2に示す。接触角の相対値は、実施例2では、0.01重量%RASDA水溶液に塩化リチウム(終濃度:30mM)を加えた溶液に浸漬前後の基材表面の各接触角を、実施例3では、0.01重量%RASDA水溶液に浸漬前後の基材表面の書く接触角を、さらに比較例1では、0.3重量%のポリエチレングリコール水溶液に浸漬前後の基材表面の各接触角を用いて、下記式:
接触角の相対値(%)=浸漬後の接触角/浸漬前の接触角×100
によりそれぞれ算出した。なお、浸漬後の接触角とは、各水溶液に浸漬後、イオン交換水で洗浄し乾燥させた後に測定した接触角のことである。
図2から、実施例2では0.01重量%RASDA水溶液に塩化リチウム(終濃度:30mM)を加えた溶液に25℃で24時間浸漬させた後の接触角は浸漬前の19%まで減少し、非常に親水性が向上したことが確認された。それに対して、実施例3では0.01重量%RASDA水溶液に25℃で24時間浸漬させた後の接触角は浸漬前の56%であり、比較例1よりも高い親水性効果は認められたものの、実施例2よりはその効果は低かった。これは、実施例3では実施例2と同様に基材をRASDA水溶液に浸漬させているが、RASDAが自己組織化によってナノファイバーを形成するための開始点が実施例2のように自己組織化ペプチド(RASDA)ではなく、シリコンウエハーを親水化処理した際に生成した水酸基であったために、RASDA―水酸基間に、実施例2に示したようなRASDA−RASDA間ほどの強い相互作用が働かず、その後のイオン交換水による洗浄によって大部分のRASDAが流されてしまい、実施例2ほどの親水化効果が発揮されなかったためであると考えられる。また比較例1では0.3重量%のポリエチレングリコール水溶液に25℃で24時間浸漬させた後の接触角は浸漬前よりも6%大きくなっていた。これはポリエチレングリコールのような自己集合性の無い分子を浸漬させただけでは、その後のイオン交換水による洗浄によってポリエチレングリコールが流されてしまい、もともとのシリコンウエハーとほぼ同じ接触角を示した結果であると考えられる。
実施例4
製造例1と同じ手法により親水化処理したシリコンウエハーを、GPSとトリメトキシプロピルシラン(PS)を各モル比(0:100、1:99、10:90(GPS:PS))に混合したエタノール溶液(1容積%)に浸漬し一晩静置した。その後、エタノールで軽く洗浄し、110℃で20分アニールして、エポキシ基とプロピル基を所定のモル比で表面修飾したエポキシ基/プロピル基修飾基材を調製した。
各エポキシ基/プロピル基修飾基材を0.3重量%RASDA水溶液に塩化リチウム(終濃度:30mM)を加えた溶液に25℃で24時間浸漬した。24時間後、基材を取り出し、超音波処理することにより、未反応のRASDAを取り除いた後、乾燥した。得られた基材表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、エポキシ基のモル比が大きくなるにつれ、基材表面の繊維状の構造が増加していることが確認され、また、プロピル基のみで修飾した基材では繊維状の構造は確認できなかった(図3)。これは、エポキシ基を含有する修飾基材では、実施例1に記載したとおり、前記超音波処理では完全に取り除くことができなかった、強固に結合したRASDAからなるナノファイバーが原子間力顕微鏡で観察されたことを示しており、さらにエポキシ基のモル比が大きくなるにつれて、より多くのナノファイバーが強固に結合した結果であると考えられる。
また、各エポキシ基/プロピル基修飾基材について、RASDA水溶液に浸漬後、超音波処理を行った基材表面の接触角を測定した。結果を図4に示す。プロピル基のみで修飾した基材では高い接触角を示し、自己組織化ペプチドが共有結合によって固定化されておらず、自己組織化によってファイバーを形成する自己組織化ペプチドが除去されていることが確認された。一方、エポキシ基を混合して調製した基材では、エポキシ基の混合割合が増えるほど低い接触角を示し、エポキシ基の割合が増えるほどに基材表面に共有結合によって固定された自己組織化ペプチドの量が増えていることが確認された。
以上の結果から、基材表面のエポキシ基の量とプロピル基の量を制御することにより固定化される自己組織化ペプチドの量の制御が可能であることが確認された。
本発明の基材表面修飾方法により得られた構造物は、自己組織化化合物が吸着することにより親水性が高くなるために、基材表面に親水性を付与し、曇り止め、人工関節等の潤滑性付与、生体適合性付与、脂質付着防止、タンパク質付着防止等に使用され得る。
図1は、実施例1に記載の基材の各操作後の接触角の推移を示す。a):エポキシ基修飾基材、b):a)の基材にRASDA水溶液を処理した基材、c):b)の基材を超音波処理した基材、d):c)の基材にRASDA水溶液を処理した基材、e):d)の基材を超音波処理した基材、f):e)の基材にRASDA水溶液を処理した基材。 図2は、実施例2、3及び比較例1に記載の基材表面の接触角の相対値を示す。実施例2においてはエポキシ修飾基材のRASDAで処理する前後の、実施例3においては親水化処理されたシリコンウエハーのRASDAで処理する前後の、比較例1においては親水化処理されたシリコンウエハーのポリエチレングリコールで処理する前後の接触角を、処理前の基材表面の接触角を100%としたときの処理後の基材表面の接触角をパーセンテージ(%)で示している。 図3は、原子間力顕微鏡を用いて観察した実施例4に記載の各基材表面上のナノファイバーの写真である。a):エポキシ基/プロピル基=0/100(モル比)の基材、b):はエポキシ基/プロピル基=1/99(モル比)の基材、c):エポキシ基/プロピル基=10/90(モル比)の基材。 図4は、実施例4に記載の基材についての接触角を示す。a):エポキシ基/プロピル基=0/100(モル比)の基材、b):はエポキシ基/プロピル基=1/99(モル比)の基材、c):エポキシ基/プロピル基=10/90(モル比)の基材。

Claims (8)

  1. 基材と自己組織化ペプチドAを含む溶液を接触させて修飾を行う基材表面修飾方法であって、前記基材が前記自己組織化ペプチドAと相互作用しうる自己組織化ペプチドBを有し、前記接触方法が該基材を自己組織化ペプチドAを含む溶液に浸漬、あるいは、該基材に自己組織化ペプチドAを含む溶液を塗布又は噴霧する方法であり、前記修飾方法が
    工程(I):前記自己組織化ペプチドBを基材表面に結合させる工程、
    ここで、工程(I)が
    工程(a):自己組織化ペプチドBと共有結合可能な化合物(B)を基材表面に共有結合させる工程
    工程(b):工程(a)で基材に結合させた化合物(B)に、自己組織化ペプチドBを共有結合させる工程
    を含み、
    及び、
    工程(II):工程(I)で得られた基材を、自己組織化ペプチドAを含む溶液と接触させることにより、自己組織化ペプチドAを前記自己組織化ペプチドBを介して前記基材の表面で自己組織化させる工程
    を含むものであって、前記工程(a)において、基材に結合される自己組織化ペプチドBの量を制御するために、化合物(B)と共に、さらに、自己組織化ペプチドBと共有結合不可な化合物(C)を基材表面に共有結合させる、
    前記自己組織化ペプチドA少なくとも前記自己組織化ペプチドBを介して前記基材の表面で自己組織化させる、基材表面修飾方法。
  2. 化合物(B)が、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、及びスクシンイミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するものである請求項記載の基材表面修飾方法。
  3. 化合物(C)が、炭素数1〜18のアルキル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、アルキルベンジル基、及びフェニル基からなる群より選択される少なくとも1種の炭化水素基を有するものである請求項1又は2記載の基材表面修飾方法。
  4. 自己組織化ペプチドA及び自己組織化ペプチドBが、同一の自己組織化ペプチドである、請求項1〜いずれか記載の基材表面修飾方法。
  5. 基材がシリコン含有基材である、請求項1〜いずれか記載の基材表面修飾方法。
  6. 基材から自己組織化ペプチドAが剥離した際に、再度、基材に、自己組織化ペプチドAを含む溶液を接触させて再修飾を行う、請求項1〜いずれか記載の基材表面修飾方法。
  7. 請求項1〜6いずれか記載の基材表面修飾方法によって自己組織化ペプチドにより表面修飾された構造物であって、前記自己組織化ペプチドが構造物表面に前記自己組織化ペプチドと相互作用しうる自己組織化ペプチドを介して自己組織化して表面修飾部を形成しうるものであり、前記表面修飾部が再形成可能な構造物。
  8. 請求項1〜いずれか記載の基材表面修飾方法を用いる、基材表面が修飾された構造物の製造方法。
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