JP5207519B2 - 自己変形型空中線装置 - Google Patents
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Description
機械制御式空中線装置は、例えば、1つ以上の電動モータを動力源として歯車機構により空中線本体の仰角の角度および向きを電動的に調整する装置である。
電気制御式空中線装置は、例えば、特許文献2に開示されているように、複数のアンテナエレメント(アンテナ素子)からの受信信号をそれぞれの移相器で移相して、その移相器で制御された複数の受信信号を合成器で合成することにより空中線の指向性を電気回路的に調整する装置である。
図6に示す人工筋肉100は、ゲル状の導電性高分子膜(IPMC(Ionic Polymer Metal Composite)アクチュエータ)を使用したものであり、イオン導電性高分子の膜200の両面に金等の貴金属をメッキして電極300を形成し、その電極300に2V程度の電圧を印加すると人工筋肉100が屈曲するようになっている。メッキによって形成された電極300は、レーザトリミング等によって複数のスリット320を並設して分断し、複数の多関節電極310を形成している。各多関節電極310には、筋肉制御用低周波信号を送る電源400がそれぞれ接続されている。
しかしながら、このような機械制御式空中線装置では、空中線を機械的に動かすモータ歯車機構等からなる電動駆動機構と、その機構を制御する制御装置とが必要なため、機械制御式空中線装置の装置全体が大型化・重量化するという問題点がある。さらに、モータ歯車機構を使用することによって、振動の発生や、構造の複雑化や、応答速度が遅い等の問題点もある。
しかしながら、このような電気制御式空中線装置では、複数の空中線にそれぞれ移相器を設けてその移相を合成制御することによって電波の指向性を調整しているため、移相器や信号処理に精度が要求され、装置全体が高価な空中線系(アンテナシステム)となるという問題点がある。
ここで、「両面」とは、導電性高分子膜の表面と裏面とをいう。
なお、人工筋肉は、導電性高分子膜(IPMCアクチュエータ)から形成されていることによって、構造が簡単で入手し易い材料で容易に形成することができると共に、低電圧で応答速度が速く、変化量が大きいので、空中線の指向性方向を変える動力源として適している。
また、自己変形型空中線装置は、アンテナエレメントが、導電性高分子膜の表面に複数の金属パターンを設けてなることにより、指向性利得が高く、指向性が鋭くなってデータの秘匿性を向上できる。その結果、電波の放射が最大となる放射角におけるエネルギーが強くなり、空中線の通信距離を遠くに延長することができる。さらに、関節電極は、複数の金属パターンからなることにより、多関節電極を形成するようになるため、人工筋肉を複雑に曲げることも、各関節電極を一様に動かして大きく曲げることも可能になる。
例えば、低周波信号供給線にコイルを用いてインピーダンスを変換する電気回路とした場合、高周波信号のときには、低周波信号供給線の抵抗が非常に高くなり、人工筋肉駆動信号源等の電源が何も繋がっていない状態と同じになる。そして、低周波信号のときには、低周波信号供給線の抵抗が非常に小さくなり、人工筋肉駆動信号源が繋がった状態になる。
したがって、人工筋肉駆動信号源が1つの場合、各アンテナエレメントは、高周波信号において、それぞれが独立した状態になるので高周波用空中線として機能するようになる。そして、各アンテナエレメントは、低周波信号において、全てのアンテナエレメントが接続された1つの状態なるので、人工筋肉が変動して曲がり、空中線のビーム方向(指向性方向)を変化させることができる。
さらに、自己変形型空中線装置は、小規模の電気回路でできるため、低価格なビームフォーミングアンテナが実現できる。
また、自己変形型空中線装置は、空中線を人工筋肉自体で形成したので、従来の電磁モータによって指向方向を変化させる空中線装置と比較した場合、柔軟な動き、動作の安定化、軽量化、無音化、低電圧作動化、高速応答化等が可能となる。
また、複数のアンテナエレメントを備えた人工筋肉が導電性高分子膜から成形されているため、水中や、空気中の湿度の高い水辺でも使用可能な小型の空中線(ビームフォーミングアンテナ)を提供できる。
さらに、自己変形型空中線装置は、アンテナエレメントが、導電性高分子膜の表面に複数設けられたことにより、指向性利得が高くなるに伴って指向性が鋭くなるため、空中線の通信距離を遠くに延長することができる。
さらに、自己変形型空中線装置は、空中線用の高周波信号と導電性高分子膜制御用の低周波信号とを同期させることによって、前記電波の到来方向に空中線のビームを向けたときに、前記高周波信号にデータを載せて発信することで、特定の相手にデータを送信することができる。その結果、自己変形型空中線装置は、同時に複数の相手に1周波数で通信ができる。
図1に示すように、自己変形型空中線装置Aは、例えば、目的物である人工衛星2等の存在する方向を電波到来方向(空中線ANの指向性方向)として、その方向に人工筋肉1によって自動的に空中線ANのビーム方向の向きを変化させる装置である。この自己変形型空中線装置Aは、空中線ANとしての機能を果たすアンテナエレメント11A、およびこのアンテナエレメント11Aの姿勢角を制御するための機能を果たす姿勢角制御部12(関節電極11B)を有する人工筋肉1と、この人工筋肉1の外部に設置された制御手段3、姿勢角センサ4、および位置センサ5と、を備えている。この自己変形型空中線装置Aは、例えば、潜水艦や海底探査機や水中作業機械や海洋機器等の移動体の外面部に設置される。
以下、人工衛星2と送受信する場合を例に挙げて本発明の実施形態に係る自己変形型空中線装置を説明する。
ここで、図1に示す自己変形型空中線装置Aの各部の構成を説明する前に、図2および図3を参照して人工筋肉1について説明する。
人工筋肉1とは、いわゆるソフトアクチュエータやIPMCアクチュエータやICPF(Ionic Conductive Polymer Film)アクチュエータと言われているものであって、例えば、イオン伝導性アクチュエータ、導電性高分子アクチュエータ、形状記憶合金等があり、いずれのものであっても構わない。
本発明の実施形態に係る自己変形型空中線装置Aは、人工筋肉1にアンテナエレメント11Aと姿勢角制御部12とを設けたものであれば、全ての種類の人工筋肉1に適用が可能であり、以下、イオン伝導性アクチュエータからなる人工筋肉1を例に挙げて説明する。
導電性高分子膜13は、人工筋肉1の主成分を構成するゲル状のものであり、Na+等からなる陽イオン13aと、水分子13bとを含んでいる。導電性高分子膜13は、両面の電極11に電圧を印加すると、陽イオン13aが−電極11側に移動し、これに伴って水分子13bも同方向に移動することによって、一方の−電極11側が膨張し、他方の+電極11側が収縮するため、例えば、図2(a)に示す直線状態から図2(b)に示すように曲がるようになっている。導電性高分子膜13は、人工筋肉1を曲げる動力源となるものであり、この導電性高分子膜13に設けたアンテナエレメント11Aを曲げることによって、空中線ANのビーム方向(指向性方向)を調整できるようになっている。
この導電性高分子膜13は、例えば、フッ素系陽イオン交換樹脂膜や、陰イオン交換樹脂等からなる。
図3に示すように、電極11は、導電性高分子膜13に電圧源14から供給される電圧を印加するための導電体の役目と、アンテナ素子としての役目とを果たすものであり、例えば、金、白金等の貴金属から形成されている。この電極11は、例えば、導電性高分子膜13の両面に無電解メッキ法等でそれぞれ1枚の導電性金属箔を形成し、その両面の導電性金属箔を接合し、さらに、レーザー加工等によって図3に示すような適宜な形状の複数の金属パターン11a,11b,11c,11d,11e,11fに分断されている。
複数に分断された電極11は、設定した所望の周波数で動作する空中線ANとして機能する複数のアンテナエレメント11Aと、このアンテナエレメント11Aが並設された導電性高分子膜13を曲げて指向性方向を変える人工筋肉1として機能させるための関節電極11Bと、からなる。
図3に示すアンテナエレメント11Aは、電波を送受信するための通信用電極であり、導電性高分子膜13の表面に複数(例えば、アンテナエレメント11Aの素数の数が5つ)設けられた電極11中の金属パターン11b〜11fの導電性アンテナパターンからなる。アンテナエレメント11A(金属パターン11b〜11f)は、人工衛星2(図1参照)に対して略直交する方向に延在する金属箔、または、平板状部材からなる。各アンテナエレメント11Aの長さおよび設置間隔は、送受信する波長に適合した適宜な長さに形成し、適切な間隔をあけて設置することが望ましい。その金属パターン11b〜11fは、抵抗またはコンデンサを設置してなる高インピーダンス線路17を介してそれぞれの電圧源14に電気的に接続されている。少なくともアンテナエレメント11Aに含まれる電極11には、高周波信号が供給される給電点11Cが設けられ、所望の高周波信号が供給されれば、空中線ANとして機能するようになっている。
図3に示す関節電極11Bは、この関節電極11Bに低周波信号を加えることにより導電性高分子膜13を動かして、人工筋肉1を自由に曲げ、空中線ANのビーム方向(指向性方向)を変えるための動作用電極である。この関節電極11Bは、例えば、導電性高分子膜13の片側の表面に複数設けられた電極11中の金属パターン11a〜11fからなり、多関節電極を構成する。
このように人工筋肉1として作動させるために使用される関節電極11Bは、アンテナエレメント11Aによる空中線用の高周波信号と、人工筋肉1の制御用の低周波信号とを同期させることで曲がり、さらに、複数の電極11から構成されることによって、複雑に動くように構成されている。そして、電極11中の金属パターン11b〜11fは、アンテナエレメント11Aと関節電極11Bとを兼用している。金属パターン11aは、電圧源14に電気的に接続されている。
給電点11Cは、電極11において、高周波信号を供給するための部分である。なお、給電点11Cは、導電性高分子膜13の表面に形成したものでも、リード線であってもよい。
次に図1を参照しながら空中線AN(人工筋肉1)を説明する。
空中線ANは、高周波電流を電波として空間に放射(送信)、あるいは逆に空間の電波を高周波電流へ相互に変換(受信)する機器であり、人工筋肉1によって形成されている。空中線ANは、高周波信号を通信部31に送受信するアンテナエレメント11Aと、演算部32から制御信号を受けて人工筋肉1を作動させ姿勢角を調整するための姿勢角制御部12と、を備えている。
なお、空中線ANは、例えば、各金属パターン11a〜11f間にスリットを形成して分断された平面八木アンテナ等からなり、各金属パターン11b〜11f(関節電極11B)が一様に動いて曲がることによって指向性を変化させるようになっている(図3参照)。
図1に示す制御手段3は、人工筋肉1を空中線ANが向くべき所望方向に曲がるように制御すると共に、人工筋肉1に設置された電極11から電波を送受信できるように制御するための装置である。この制御手段3は、アンテナエレメント11Aのビーム方向が電波の到来方向に人工筋肉1を曲げるように制御する演算部32と、アンテナエレメント11Aからデータを送受信させるための通信部31と、を有し、人工筋肉1の外部に設置されている。
通信部31は、データ等の情報信号を高周波信号に変換してアンテナエレメント11Aから送信させるため機能と、アンテナエレメント11Aで受信した人工衛星2からの信号(高周波信号)を情報信号に変換して機器(図示せず)に送信する機能とを備えた装置である。
演算部32は、人工衛星2の絶対座標と、空中線ANの絶対位置および姿勢角とによって空中線ANの向くべき方向を算出して、その方向に人工筋肉1を曲げるための制御をする装置である。すなわち、この演算部32は、姿勢角センサ4からの人工筋肉1の現在位置の姿勢角信号と、GPSアンテナ6に基づく位置センサ5からの座標信号とから人工筋肉1を動かす移動量を算出して、この算出された移動量に応じた周波数と電圧信号(低周波信号)を生成し、各電極11にその低周波信号を出力して人工筋肉1を人工衛星2の方向に指向するように駆動制御するための装置である。演算部32は、例えば、前記ドライバ回路と共にCPUからなる。
次に、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る自己変形型空中線装置Aの作用を説明する。
Z1GHz=2π×1GHz×1uH=6.3kΩ
Z1Hz=2π×1Hz×1uH=0Ω
となる。アンテナ特性から見ると1kΩを超えるインピーダンスは、何もいない開放端の状態になる。
一方、人工筋肉1を駆動させる駆動信号の周波数は、全く抵抗にならない。
なお、電圧の向きを逆にすれば人工筋肉1が逆方向に曲がるようになる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
しかしながら、本発明に係る自己変形型空中線装置Aは、このような水中や湿度の高い大気中等で使用するのに適した人工筋肉1に限定されるものではなく、乾燥状態の空気中であっても使用可能な人工筋肉7(図5参照)であってもよい。
人工筋肉7は、導電性高分子膜13の外周面全体がシール材72と電極71とによって完全にコーティングされていることにより、常に、空中線AN1を曲げるための動力源として使用できるようになるため、空気中であっても自由に使用することができる。
また、前記実施形態および変形例で説明した空中線AN,AN1は、例えば、人工衛星2の追尾を可能にするため、偏波面がなく、軸上で回転させる回転台が不要な円偏波アンテナ等であってもよい。
この場合、空中線AN,AN1は、大地に平行な面(X軸−Y軸)上で人工筋肉1,7を曲げることによって、空中線AN,AN1全体を傾けてビーム方向を調整するようになっている。
この場合、制御手段3の演算部32によって、人工衛星2からの電波の到来方向と、アンテナエレメント11Aの指向性の高くなるビーム方向とが一致するように人工筋肉1を人工衛星2の方向に曲がるように関節電極71Bに制御信号(低周波信号)を送って駆動制御するようにすればよい。
なお、平面八木アンテナでは、空中線AN,AN1の性能が大きく変化せずに屈曲できる範囲が±60〜80度程度であり、平面上の全方位をカバーするためには3基〜4基の平面八木アンテナを用いる必要がある。
また、自己変形型空中線装置は、6000mを超える深海や海上を往来する気圧が大きく異なる環境に用いる探索船等に使用することができる。
2 人工衛星(目的物)
3 制御手段
11,71 電極
11A,71A アンテナエレメント
11a〜11f 金属パターン
11B,71B 関節電極
11C 給電点
13 導電性高分子膜
13a 陽イオン
13b 水分子
16 低周波信号供給線
17 高インピーダンス線路
31 通信部
32 演算部
72 シール材
A 自己変形型空中線装置
AN,AN1 空中線
Claims (7)
- シート状の人工筋肉のシート面に電極を設けた空中線と、
前記電極に接続して給電するための制御手段と、を備えた自己変形型空中線装置であって、
前記電極は、前記人工筋肉のシート面の両面に複数設けられると共に、複数のアンテナエレメントと、当該複数のアンテナエレメントが設けられた前記人工筋肉を曲げて指向性方向を変える複数の動作用電極とを構成し、
前記制御手段は、前記電極に信号を送信して目的物の位置する方向、または、目的物からの電波の到来方向に前記空中線のビーム方向を指向させるように前記人工筋肉を向けることを特徴とする自己変形型空中線装置。 - 前記人工筋肉は、導電性の高分子化合物からなる導電性高分子膜と、この導電性高分子膜の両面に設置された前記電極と、を備え、前記両面の電極間に電圧を印加することによって曲がることを特徴とする請求項1に記載の自己変形型空中線装置。
- 前記導電性高分子膜は、陽イオンと水分子とを含んだイオン導電性高分子膜からなり、
前記電極は、前記導電性高分子膜の両面に設けた複数の金属パターンから形成され、
前記複数のアンテナエレメントは、前記導電性高分子膜の両面に形成された複数の金属パターンのうちの少なくとも片面に形成された複数の金属パターンを間隔をあけて並設してなることを特徴とする請求項2に記載の自己変形型空中線装置。 - 前記複数のアンテナエレメントに前記人工筋肉の制御信号を送信する低周波信号供給線は、高インピーダンス線路に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自己変形型空中線装置。
- 前記電極は、高周波信号が供給される給電点を備えると共に、
前記空中線の高周波信号と、前記人工筋肉を制御する低周波信号とが同期されることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の自己変形型空中線装置。 - 前記制御手段は、前記複数のアンテナエレメントの現在の位置から電波の到来方向に前記人工筋肉を曲げる移動量を算出し、その移動量に基づいて前記人工筋肉を曲げて前記複数のアンテナエレメントのビーム方向を制御する演算部と、
前記複数のアンテナエレメントからデータを送受信させるための通信部と、
を有することを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載の自己変形型空中線装置。 - 前記導電性高分子膜は、両側表面のそれぞれの一部に前記電極を付設すると共に、前記電極が付設されてない部位に絶縁性のシール材をコーティングし、水分を含んだゲル状の前記導電性高分子膜の外周面全体が前記シール材と前記電極とによってコーティングされていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のずれか1項に記載の自己変形型空中線装置。
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