JP5205669B2 - 光による分子の注入方法及び光による材料加工方法並びにそれらの装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光による分子の注入方法及び光による材料加工方法並びにそれらの装置に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、集光した光を用いて、基板表面の微小領域に分子を注入したり、微小領域を加工する方法と、それらの装置に関するものである。
有機合成技術や有機分子の機能設計技術の進歩により、電子特性、光学特性、磁気特性、生理活性機能などにおいて特有の機能を発現する様々な機能性有機分子の開発が進められている。このような高機能材料を有効利用するために、機能性有機分子を基材上に固定ないしは有効に配列する技術、すなわち機能性有機分子を用いて樹脂などの基材に高機能性を付与する技術の開発も盛んに行われており、実用性の高い機能性基板が開発されている。
有機分子のレーザ駆動分子注入法(LIMIT)はその有力な手段の一つであり(非特許文献1参照)、ポリマー薄膜の表面微細加工や分子素子の製造など、多数の重要な実践的応用に採用されている。この手法による光スイッチング装置の製造は、ポリマー固体中における2種類の化合物によるレーザ誘導性混合技術の実用化の一例である(非特許文献2及び3参照)。これにより空間選択的な方法で、基板内部又は基板表面に機能性有機分子を配列することのできる装置が報告されている(非特許文献4参照)。
有機分子のレーザ駆動分子注入法は、パターン形成のためのエッチングにも応用されている。エッチングで形成されるパターンの材料としては、蛍光やフォトクロミズムなどの機能性を有する分子などが報告されている(非特許文献2,5,7参照)。
有機分子のレーザ駆動分子注入法を用いて、樹脂などの基板上に有機分子を注入する技術は、機能性分子などによる基板表面の微細加工処理を可能にすることから、現在盛んに研究されている。特許文献1〜3等には、色素を有機高分子に含有させたソースフィルムとターゲットフィルムとを重ねて、パルスレーザを照射することによって、ソースフィルムからターゲットフィルムへ色素を注入する技術が開示されている。
本発明者等も、これまで様々な観点からの検討を進めてきているが、例えば、ガラスピペットの先端に設けた有機分子のナノ結晶にパルスレーザを照射して、当該ピペットに対向して配置された高分子フィルムに当該有機分子を注入する技術(非特許文献6参照)によれば、最も微小な注入領域を形成できることを確認している。
特開平08−106006号公報 特開2004−216546号公報 特開2005−148688号公報 Fukumura 他5名, J. Am. Chem. Soc., Vol.116, pp.10304-10305,1994 Fukumura 他8名, Appl. Surf. Sci., Vol.127-129, pp.761-766, 1998 Gery 他2名, Chem. Commun., Vol.7, pp.811-812, 1998 Goto 他7名, Appl. Phys. A, Vol.79, pp.157-160, 2004 Karnakis 他4名, Appl. Surf. Sci., Vol.127-129, pp.781-786, 1998 Gery 他2名, J. Phys. Chem. B, Vol.101(19), pp.3698-3705, 1997 M.Goto 他5名, J.Applied Physics,Vol.90, pp.4755−4760, 2001
従来のレーザ駆動分子注入法を用いて樹脂などの基板上の微細領域に有機分子を注入する技術には、従来からその注入領域の大きさの制御が難しいという問題、さらには生産性の問題があった。例えば、特許文献1の方法では、基板の分子注入領域の大きさを1μmのサブミクロン以下に制御するための技術が確立されていないという課題がある。
非特許文献6の技術の場合には、ガラスピペットに有機分子のナノ結晶を注入すること及び連続使用した場合にガラスピペット内の有機分子の量が変動することにより生産性が低いという課題がある。
同様に、レーザを用いたエッチング方法においても、そのエッチング領域の大きさの制御が難しく、被エッチング試料のエッチング領域の大きさを1μm以下に制御するための技術が確立されていないという課題がある。
本発明は、上記課題に鑑み、光によりサブミクロン、即ちnmオーダーの微小注入領域に分子を注入することができる、新規な、光による分子の注入方法及びその装置を提供することを第1の目的としている。本発明の第2の目的は、新規な、光による材料加工方法及びその装置を提供することにある。
上記第1の目的を達成するため、本発明の光による分子の注入方法は、分子を含む分子注入源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板に分子を注入するに際して、分子注入源に含まれる分子を、分子注入源と基板との間に挿入される液体を介して、基板に注入することを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、光で励起された分子により、液体の衝撃波を誘起することで基板に分子を注入する。
好ましくは、基板を移動可能なステージ上に載置し、ステージを移動して基板の位置を光に対して変化させることにより分子を注入する位置を制御し、分子を基板表面の任意の位置に注入する。
前記分子注入源は、好ましくは、注入される分子を樹脂中に含有させてなる。光はパルスレーザ光が使用できる。
本発明の光による分子の注入装置は、基板と分子を含む分子注入源と基板及び分子注入源の間に配置した液体と基板及び分子注入源を外側から挟持する挟持部とから構成した分子供給体と、分子供給体を載置するステージと、分子注入源に集光した光を照射する光源と、を含み、分子注入源に含まれる分子を、液体を介して基板に注入することを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、ステージは移動可能に構成され、移動可能なステージの位置を変化させることにより、基板表面の任意の位置に分子を注入する。また、好ましくは、分子注入源は複数種類の分子注入源からなる。
上記構成によれば、分子注入源に集光された光を照射し、分子注入源から弾き出された分子を液体を通過させることで、基板の微小領域に分子を注入したり、堆積することができる。この微小領域の寸法を、サブμm、即ちnmのオーダーとすることができる。
上記方法及び装置によれば、光学的、電子的、あるいは、磁気的な機能を有する機能性材料や機能性部品を作製することができる。

上記第2の目的を達成するため、本発明は、分子を含むエッチング源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板の表面を分子で加工する方法であって、エッチング源に含まれる分子を、エッチング源と基板との間に挿入される液体を介して上記基板を加工することを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、光で液体の衝撃波を誘起することにより基板を加工する。好ましくは、基板を移動可能なステージ上に載置し、ステージを移動して基板の位置を光に対して変化させることにより、分子を加工する位置を制御する。光はパルスレーザ光が使用できる。
本発明の光による材料加工装置は、基板とエッチング源と基板及びエッチング源の間に配置した液体と基板及びエッチング源を外側から挟持する挟持部とから構成したエッチング源保持体と、エッチング源保持体を載置するステージと、エッチング源に集光した光を照射する光源と、を含み、液体に集光した光を照射することで、液体を介して基板を加工することを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、ステージは移動可能に構成され、移動可能なステージの位置を変化させることにより、基板表面の任意の位置を加工する。
上記構成によれば、レーザ光を照射し、エッチング源の分子を、液体を介して基板に弾き出し、この弾き出された分子を基板の微小領域に照射して、この微小領域をエッチングすることができる。この微小領域の寸法は、サブμm、即ちnmのオーダーとすることができる。
上記方法及び装置によれば、光学的、電子的、あるいは、磁気的な機能を有する機能性材料や機能性部品を作製することができる。
本発明の光による分子の注入方法及びその装置によれば、これまで不可能であった500nm以下の領域へ、種々の基板への各種の分子の注入や固定を行なうことができる。
本発明の光による材料の加工方法及びその装置によれば、光励起により液体の衝撃波を誘起し、材料の加工を行なうことが可能となる。
以下、この発明の実施の形態を図面により詳細に説明する。なお、実質的に同一の部材又は同一の部分には同一の符号を付して説明する。
図1は、本発明の光による分子の注入装置であって、(a)は模式図を、(b)は基板部分の拡大断面図を示す。
図1(a)に示すように、本発明の光による分子の注入装置1は、ステージ2と、このステージ2上に載置される分子供給体8と、分子供給体8に集光した光を照射する光源5と、を含み構成されている。分子供給体8は、基板4と、分子を含む分子注入源3と、基板3及び分子注入源3の間に配置した液体6と、基板4及び分子注入源3を外側から挟持する挟持部7と、から構成されていて、集光した光は分子注入源3に照射される。
図1(b)の拡大断面図にさらに詳しく示すように、分子供給体8において、分子注入源3と基板4との間には、所定の間隔の隙間が設けられており、この隙間に液体6が挿入されている。挟持部は、2枚のガラス基板7A,7Aと、図示しない押圧機構を備えて構成されている。液体6が挿入された分子注入源3と基板4とが、分子注入源3の下部に配置されるガラス基板7A及び基板4の上部に配置されたガラス基板7Aとにより挟み込まれ、さらに、押圧(図1(a)の矢印P(↓)参照)されて、一体となり、分子供給体8が構成される。
分子注入源3と基板4との間隔、つまり、紙面上下方向の距離は、既知の厚さの高分子フィルムなどのスペーサーを挿入することにより制御することができる。この間隔は、1〜50μm、好ましくは、2〜33μmの範囲で制御することが好ましい。
上記光源5は、光源となるレーザ10と、このレーザ10からのレーザ光10Aを基板4に導光するための光学部品と、から構成されている。図示の場合には、光学部品は、レーザ10側から、レンズ12とミラー14と対物レンズ16とから構成されている。対物レンズ16はレーザ光10Aを分子供給体8に集光するために配置している。
レーザ10から分子供給体8に集光された光は、光波長回折限界の程度にまで絞り込まれた光線を使用するのが好ましい。光を光波長回折限界の程度にまで絞り込むのは、既知の技術で達成することが可能である。集光された光のビーム径は、0.1〜3μmの範囲内であることが好ましく、0.3〜1μmであることが更に好ましい。3μmを超えると目的の微小領域を超えて注入されてしまう。レーザは、パルスレーザであることが好ましい。パルスレーザを用いれば、分子による注入の形態を制御し易く、また、分子の熱による解離を抑制するため好ましい。光源となるレーザは、色素レーザ、He−Neレーザ、YAGレーザなど公知のものを使用することができる。
ステージ2は、ステージ駆動部2Aを有し、光源5から集光されたレーザ光が分子供給体8に照射されるように所定の開孔部2Bを設けている。したがって、光源5が固定されている場合には、ステージ2を移動することにより、集光されたレーザ光を基板4の任意の位置に照射することができる。図示の場合には、レーザ光10Aがステージ2の下部から照射されるように構成されているが、レーザ光10Aがステージ2の上部側から照射されるようにしてもよい。このステージ2としては、市販の3次元高分解能移動台を用いることができる。高分解能移動ステージにおける移動分解能は特に限定されるものではないが、本発明の光による分子の注入装置1においては、数μm以下、百nmのオーダーでの分子の注入が可能となることから、数十nmのオーダーとすることが好ましい。ステージの微細な位置制御は、例えばピエゾ素子などを用いる駆動制御で行なうことができる。
光源5のレーザ光10Aの照射及びステージ2の位置制御は、制御部9により制御されてもよい。図示の場合には、レーザ光10Aの照射及びステージ2の位置制御をパーソナルコンピュータで行なっている。
次に、注入する分子及び分子注入源について説明する。
注入する分子は、吸光特性と熱安定性を持ち、光励起できるものであれば何でもよく、各種の機能性分子であってもよい。好適には、光あるいは電子機能性を有する分子の1種以上のものを使用することができる。具体的には、クマリン6、クマリン545、ZnTPP、アントラセン、ジシアノアントラセン、NileRe d、フルオレッセイン、ビ
レン等が挙げられる。これ以外にも、ポリフェニレンビニレン(PPV)などの高分子、金属、セラミックスなどレーザ光でアブレーション可能な材料であれば、ほぼ全てを注入分子として用いることができる。したがって、例えば、金薄膜を分子注入源3とした場合には、基板へ金微粒子を注入することができる。
分子注入源3は、上記の有機分子等を樹脂中に含有させたものが好適なものとして挙げられる。この分子注入源3は、有機分子を樹脂やそのモノマーの溶液に混合してスピンコート法やキャスト法などの手法で成膜させることによって容易に作製することができる。有機分子が溶剤に溶解しないような場合には、樹脂と有機分子の混合物を既存の混練機で混練し、成形することも可能である。また、分子を蒸着した基板を用いることも可能である。
樹脂としては、レーザ光照射に対して安定であり、注入する分子との相溶性が高く、光透過性の高いものが好ましい。樹脂の光透過性は、その膜厚が170μmの場合、クマリンダイレーザ光の透過率が60〜100%の範囲内であるものが好ましい。なお、樹脂の光透過率は、カバーガラス上にスピンコ一夕ーで当該膜厚にコーティングし、参照試料としては、同じ材質、厚さのカバーガラスとして光透過率を測定することにより確認することができる。
樹脂の具体例は、例えばアクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が示される。なかでも、メタクリレート系等の透明性の樹脂が好ましい。
有機分子を樹脂に含有させ、分子注入源3を作製するに当たっては、有機分子の溶液は予め濾過処理などにより、有機分子の凝集体を除去しておくのが、有機分子注入源と基板との間の密着性を向上させ、微小注入領域を得ることができるという点で好ましい。また、分子注入源3を作製する一連の工程は、クリーンブース中で、ダストが極力混入しないような条件で作製するのが、分子注入源3と基板4との間の密着性を向上させ、微小注入領域を得ることができるという点で好ましい。
分子注入源3を有機分子とする場合には、樹脂中の有機分子の濃度は、0.01〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.1〜6重量%の範囲内であることが更に好ましく、3〜5重量%であることが更に好ましい。0.01重量%未満では、十分な注入濃度を得ることができない。10重量%を超えると、注入領域の最大径の制御が困難になる場合がある。
有機分子の濃度の制御は、成膜時の配合調整により容易に行なうことができる。有機分子は、樹脂表面上にコーティングして使用することも可能であるが、有機分子の濃度制御の点で、有機分子を樹脂中に含有させる方が好ましい。注入領域の大きさを小さくするために、有機分子注入源3は、基板4に対して凸の形状になるように圧力をかけるなどして変形させ、それを基板4に接触させるのが、有機分子注入源3と基板4との間の距離を狭めることができる点で好適である。
例えば、円筒状のドラムなどに有機分子注入源3を巻き付け、これを基板4に押し付けるなどの方式で行なうことができる。この場合のドラムの半径は、有機分子注入領域のおける最大径の10〜10倍の範囲内とすることが好ましい。この場合、基板4は柔軟のあるシリコンゴム等の有機分子注入源3の形状に合致するように変形できる基材上に配置するのが好適である。
次に、基板4について説明する。
基板4は、分子が注入される基板であり、材質は特に限定されることはない。基板4としては、高分子、金属、セラミックスなどの各種の材料が使用可能である。金属基板としては、銅やステンレス鋼からなる基板を用いることができる。基板4を、光源5側、つまり、光の進行方向に対して基板4、液体6、分子注入源3の順に配置した場合には、基板4として、60%以上の高い光透過率の基板を使用するのが望ましい。
次に、液体6について説明する。
液体6は、水や油などを用いることができる。その他、ヘキサデカン、界面活性剤などを用いても分子注入を行なうことができる。基本的には、どのような液体6でも注入現象は起こると考えられるが、むしろ、基板4との相性を重視した選択が必要である。たとえば、高分子からなる基板4を用いるのであれば、これは多くの有機溶媒にてダメージを受けるので、水などが適している。また、光を吸収する溶液を使用すれば、有機分子が溶液中に誘起する衝撃波に加えて、溶液がそのまま光を吸収することに伴う衝撃波の影響が加わり、注入される分子への影響が大きくなりすぎると思われる。しかしながら、後述する本発明の光を用いた材料加工という面では、液体として有機溶媒を使用することは、エネルギーが増大するために、使用用途によっては有効である。
上記構成の本発明の光による分子注入装置1によれば、分子を含む分子注入源3に対して集光された光を照射することで、分子注入源3に含まれる分子を、分子注入源3と基板4との間に挿入される液体6を介して、基板4に注入することができる。また、光で励起された分子により、液体6の衝撃波を誘起することで基板4に分子を注入することができる。
具体的には、光源5から分子注入源3に集光されたレーザ光10Aを照射し、分子注入源3の微小領域を切除し、その結果、分子は分子注入源3の表面から弾き出され、液体6中を通過して目標となる基板4に注入される。液体中に弾き出された分子の噴流は、液体6を用いない、つまり、分子注入源3と基板4との間の挿入媒体が空気の場合よりも形状が小さくできる。このため、基板4に注入又は堆積される分子により形成される埋め込み領域の形状を、より微小な形状とすることができる。
これにより、分子が注入又は堆積される埋め込み領域の空間的な大きさは、μm以下、nmオーダーとすることができる。分子の注入又は堆積される領域の形状については特に限定されることはなく、円形、略円形などであって良い。なお、「最大径」とは、注入領域が円形であれば直径、あるいは最大長さ寸法として定義される。
上記分子の注入又は堆積を基板4の任意の位置に行なう場合には、ステージ2の位置制御及びレーザ光10Aの照射を、制御部9で制御して行なうことができる。
本発明の光による分子の注入装置1においては、複数の種類の分子注入源3を同時に用いることができる。光源に波長や強度の詳細な調整機構を設けることで、複数枚重ねた分子注入源3から選択的に分子を放射させることが可能となる。これにより分子注入源3を交換することなく、1枚の基板4上に複数種類の分子を用いた任意パターンの注入領域を形成することができる。したがって、基板4上に、位置選択的に複数の分子を任意の位置に配列することが可能となる。
本発明の光による分子の注入装置1及び光による分子の注入方法により、様々な材料に分子の複数種類の機能を付加させることが可能となる。例えば、これまで不可能であったRGB(赤、緑、青)極微小発光特性をはじめとする光学的、電子的、あるいは、磁気的に優れた機能を有する有機分子材料を、各種の基板4へ注入することができる。本発明の分子の注入装置1によれば、各種の機能性材料だけではなく、非線型光学素子等の新規の機能性部品や、極微小ディスプレー装置などの装置の製造を行なうことができる。
非線型光学素子については、高分子の固体からなる透明な媒質中に微小な有機分子のクラスターを分散させたものは良い非線型光学特性を持つことが予想されている。例えば、フォトニック結晶の場合には、透明な媒質中に規則正しく異なる光学特性を持つ物質を周期的に配置すればよい。光制御デバイスの場合には、光の波長以下の領域に分子を配列し、その配列パターンを変えることで光の伝播の方向を制御することができる。
電子材料については、一例を挙げると、従来用いられてきたSi(シリコン)等の無機材料を用いた微小な電子回路中にジャンクションを設け、そこに有機分子を配置しデバイスを作製することができる。さらに、これまでの無機材料で作られてきたトランジスターやダイオードを有機分子として配置することで代替することもできる。
磁気材料については、分子の中にはそれ自身が特殊な磁気的性質を持つものがあり、それらを一つの要素として、位置選択的に配列させることで磁場を制御したり、また、磁気的な高密度の記憶素子として使用することが考えられる。
さらには、高分子中に複数の光導波路が作製された例があるが、それらの途中の微小領域に、本発明の方法でそれぞれ異なる有機分子を注入することができる。それぞれの分子毎に外場からの反応が異なり、その外場の変化を導波路中を伝播してくる光の波長変化として検出することができる。本発明の方法は、非常に微小な有機分子を位置選択的に注入できることから、極小の高分子などの基板4上に、様々な外場の影響を検出する高性能な微小センサーを作製することができる。
本発明の光による分子の注入方法及びその装置によれば、高分子中の任意の微小領域に有機分子を注入できるため、上記の各種機能性部品、電子デバイスや光制御デバイスなどの各種装置を製作することができる。
次に、本発明の第2の実施形態として、光による材料の加工方法及びその装置について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光による材料の加工装置の基板部分を示す拡大断面図である。図2から明らかなように、本発明の光による材料加工装置20が、図1に示した光による分子の注入装置1と異なるのは、分子供給体8をエッチング源保持体22とし、分子注入源3の代わりにエッチング源24を用いた点にある。他の構成は図1に示した光による分子の注入装置1と同じであるので説明は省略する。
エッチング源24は、分子注入源3と同様に、エッチング源となる材料を塗布したり、又は蒸着した基板を用いることができる。エッチング源24としては、基本的には光を吸収するものであれば何でもよい。例えば、有機分子を分散させた高分子フィルムやガラス基板上に金属を薄くコーティングした膜を使用することができる。
液体6は何でもよいが、水や有機溶媒を用いることができる。特に、光を吸収する液体6を使用すればよい。この場合には、エッチング源24としての分子が液体6中に誘起する衝撃波に加えて、液体6がそのまま光を吸収することに伴う衝撃波の影響が加わるので、よりエッチング源となる分子の基板4への衝突エネルギーを大きくすることができる。このため、基板4のエッチングを容易に行なうことができる。従来の液体にレーザを集光して衝撃波を発生させ加工する方法では、液体がレーザ光を吸収しなければならないために、通常はトルエンなどの有機溶媒が使用される。このため従来の方法では、高分子膜などの有機溶媒により溶解する材料は、エッチング源24として用いることができなかつた。しかしながら、本発明の光による材料の加工方法では、高分子をエッチング源24とし、液体6として水を用いることができる。したがって、高分子をエッチング源24として用いて、基板4のエッチング加工を行なうことができるという優れた特徴がある。
本発明の光による材料加工装置20によれば、エッチング源保持体22に対して、集光された光を照射することで、エッチング源24との基板4との間に所定の間隔で挿入された液体6に衝撃波を発生させると共に、エッチング源24から弾き出された粒子を基板4に照射することにより、基板4の表面をエッチングなどの加工を行なうことができる。したがって、エッチング源24として有機高分子からなるフィルムなどを用い、基板4として銅やステンレス鋼などを用い、レーザ光を集光した基板4の微小領域をエッチングすることができる。
以下、実施例1によって本発明をさらに詳細に説明する。
光による分子の注入装置1は、図1に示した装置を用いた。分子供給体8の挟持部7としては、2枚ガラス基板7A,7Aを用いた。分子注入源3は、ポリ(メタクリル酸ブチル)(以下、PBMAと呼ぶ)膜中にクマリン6(C6)を濃度4%で含ませた。具体的には、C6及びPBMAをモノクロロベンゼン(和光純薬(株)製)に溶解し、スピンコー夕ーを使用して片方の挟持部7のガラス基板7A上に約800〜1000nmの厚さのクマリン6(C6)を含有したPBMA膜を成膜した。
ターゲットとなる基板4としては、他方の挟持部となるガラス基板7A上に約1.5μm〜2.5μmの厚さのPBMA膜4を成膜した。挿入する液体6は水を用い、水6の厚さは、ほぼ2μmとした。
レーザパルス周波数、波長、レーザ強度などは以下の条件とした。
光源10:窒素レーザによりポンビングされるクマリンダイレーザ(LSI−VSL−337ND−S)
駆動条件:パルス幅4ns、波長440nm、レーザ強度300μJ/パルス以下、パルス周波数20Hz以下
実施例1に対する比較例を説明する。
(比較例1)
分子注入源3とターゲットとなる基板4との間を、水ではなく空気とし、分子注入源3とターゲット4との間隔を2μmとした以外は実施例1と同様の分子注入装置1を用い、パルスレーザ光強度を種々変えて注入を行なった。
図3は、実施例1及び比較例1の注入装置により、基板4に注入されたクマリン6の点状寸法及び分子注入源3となる膜に生じる切除損傷の点状寸法に対する、パルスレーザ光強度依存性を示す図である。図3の縦軸は点状寸法(μm)を示し、横軸は照射したレーザの強度(mJ/パルス)を示している。
分子が注入された領域(以下、埋め込み領域と呼ぶ)は高分解能デジタルカメラを備えた汎用蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX70)を用いて観察した。観察した蛍光強度から、埋め込み領域の各点の大きさは、その蛍光強度分布をガウス分布関数に当てはめて推定した。後述する分子注入源3と基板4表面からの蛍光スペクトルはスペクトル計(Ocean Optics社製、USB−2000−FLG)で記録した。
図3から明らかなように、実施例1の場合には、埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.0046mJ/パルスのときに0.8μmであった。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると、点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約15μmであった。興味深いことには、パルスレーザ光強度が0.014mJ/パルスに閾値がある。この閾値を境として、埋め込まれた点の形状が変化することが分かった。
一方、比較例1の場合には、埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.001mJ/パルスのときに2.2μmであった。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約35μmであった。
分子注入源3となる膜自体の切除損傷における点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.0046mJ/パルスのときには約0.8μmであり、さらに、パルスレーザ光強度を増加させると点状寸法は徐々に大きくなるが、実施例1及び比較例1の場合よりも小さい寸法であることが分かった。
上記結果から、実施例1の水を媒体とした場合に、基板4に注入されるクマリン6の点状寸法は、分子注入源3を形成する膜自体の切除損傷の点状寸法はよりも僅かに大きくなるが、その差は小さく、比較例1の空気を媒体とした場合よりもはるかに小さいことが判明した。
図4は、実施例1及び比較例1のクマリン6が注入された基板4と分子注入源3を形成する膜の表面写真を示す図であり、それぞれ、(a)が比較例1の場合で、パルスレーザ光強度が0.014mJ/パルス、(b)が比較例1の場合で、パルスレーザ光強度が0.001mJ/パルス、(c)が実施例1の場合で、パルスレーザ光強度が0.017mJ/パルス、(d)が実施例1の場合で、パルスレーザ光強度が0.0046mJ/パルスである。図において、左側の図が基板4からの蛍光像を示し、右側の図が分子注入源3を形成する膜の光学像を示している。
図4(d)から明らかなように、実施例1でパルスレーザ光強度が0.0046mJ/パルスの場合には、図3で示した閾値以下であるので、埋め込み領域の形状は点状であることが分かった。図4(c)から明らかなように、パルスレーザ光強度が図3で示した閾値以上の0.017mJ/パルスであるので、埋め込み領域の形状は、環状であることが分かった。
一方、図4(a)及び(b)に示すように、比較例1の埋め込み領域の形状は、上記パルスレーザ光強度の何れの場合にも、実施例1よりも大きいことが分かる。
図5は、実施例1及び比較例1のクマリン6が注入された基板4の埋め込み領域において、最小寸法の領域からの蛍光強度分布を示す図である。図5の縦軸は距離(μm)を示し、横軸は蛍光強度(任意目盛)を示している。図5において、実施例1(図4(d)参照)及び比較例1(図4(b)参照)の測定データを、それぞれ、三角印(△)、四角印(□)で示し、実線は測定データをガウシアン分布関数で表わしたものである。図5から明らかなように、実施例1の場合には、実線で示す関数の半値全幅に基づいて算出した点状寸法は、0.8μmであることが分かった。同様に算出した比較例1の点状寸法は2.9μmであることが分かった。
実施例2は、基板4を厚さが120〜170μmの硼珪酸ガラスからなるカバーガラス、つまり、ガラス基板とした以外は実施例1と同じ注入装置を用い、パルスレーザ光強度を種々変えて注入を行なった。
実施例3は、基板4をガラス基板上に積層したITO膜とした以外は実施例1と同じ注入装置を用い、パルスレーザ光強度を種々変えて注入を行なった。
実施例2及び3における、各基板へのクマリン6の注入特性について説明する。
図6は、実施例2及び実施例3の注入における、各基板4に注入されたクマリン6の点状寸法のパルスレーザ強度依存性を示す図である。図6の縦軸は点状寸法(μm)を示し、横軸は照射したパルスレーザ光強度(mJ/パルス)を示している。
図6から明らかなように、実施例2の場合には、基板4であるカバーガラスにクマリン6が注入された埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.017mJ/パルスのときに約2μmであった。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約19μmであった。実施例1の場合に観測されたように、パルスレーザ光強度の増大に伴い、埋め込み領域の形状が変化した。図中の点線が、埋め込み領域の形状が点状から環状に変化する閾値を示し、閾値は0.092mJ/パルスであった。
図6から明らかなように、実施例3の基板4であるITO膜にクマリン6が注入された埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.01mJ/パルスのときに0.9μmであった。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約22μmであった。実施例1の場合に観測されたように、パルスレーザ光強度の増大に伴い、埋め込み領域の形状が変化した。図中の点線が、埋め込み領域の形状が点状から環状に変化する閾値を示し、閾値は0.026mJ/パルスであった。
図7は、実施例2及び実施例3の注入における、各基板4に注入されたクマリン6の蛍光スペクトルを示す図である。図7の縦軸は蛍光強度(任意目盛)を示し、横軸は蛍光波長(nm)を示している。図7には、分子注入源3、つまりクマリン6からなる膜自体の蛍光スペクトルも併せて示している。図7から明らかなように、実施例2のカバーガラスからなる基板4及び実施例3のITO膜からなる基板4に注入されたクマリン6は、供給膜であるクマリン6膜自体の蛍光スペクトルと一致していることが分かった。これにより、実施例2及び3において、基板4であるカバーガラス及びITO膜には、クマリン6が注入されていることが判明した。
実施例4は、基板4を厚さが1mmの銅基板とした以外は実施例1と同じ注入装置を用い、パルスレーザ光強度を種々変えて注入を行なった。
実施例5は、基板4として、厚さが1mmのSUS304ステンレス鋼基板とした以外は実施例1と同じ注入装置を用い、パルスレーザ光強度を種々変えて注入を行なった。
実施例4及び5における各基板4へのクマリン6の注入特性について説明する。
図8は、実施例4及び実施例5の注入における、各基板4に注入されたクマリン6の点状寸法のレーザ強度依存性を示す図である。図9の縦軸は点状寸法(μm)を示し、横軸は照射したパルスレーザ光強度(mJ/パルス)を示している。
図8から明らかなように、実施例4において、銅基板4にクマリン6が注入された埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.0024mJ/パルスのときには約700nm(0.7μm)であり、サブμm、即ちnmオーダーの微小な埋め込み領域を実現することができた。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると、点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約6μmであった。実施例1の場合に観測されたように、パルスレーザ光強度の増大に伴い、埋め込み領域の形状が変化した。図中の点線が、埋め込み領域の形状が点状から環状に変化する閾値を示し、閾値は約0.011mJ/パルスであった。
実施例4において、クマリン6が埋め込まれた領域の表面形態(モルフォロジー)を原子間力顕微鏡(AFM)(日本電子株式会社(JEOL)製、JSPM5200型)で観察した。
図9は、実施例4において、パルスレーザ光強度を変えてクマリン6を注入したときの埋め込み領域形状の原子間力顕微鏡像を示す図であり、それぞれ、(a)が0.004mJ/パルスの場合、(b)が0.058mJ/パルスの場合を示している。図9(a)から明らかなように、パルスレーザ光強度が閾値以下の0.004mJ/パルスの場には、クマリン6が銅基板4の表面を破壊することなく、銅中に埋め込まれる。
図9(b)から明らかなように、パルスレーザ光強度が閾値以上よりも遥かに大きい約15倍の強度である0.058mJ/パルスの場には、高エネルギーでは弾き出される分子の流束密度は高く、図9(a)の場合とは異なり、中心にもう一つの点を有し、蛍光物質に被覆された環状の縁を持つ孔が形成される。
実施例5のステンレス鋼からなる基板4にクマリン6が注入された埋め込み領域の点状寸法は、図8から明らかなように、パルスレーザ光の最小強度が約0.0046mJ/パルスのときには約550〜600nm(0.55〜0.6μm)であり、nmオーダーの微小な埋め込み領域を実現することができた。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約33μmであった。実施例1の場合に観測されたように、パルスレーザ光強度の増大に伴い、埋め込み領域の形状が変化した。図中の点線が、埋め込み領域の形状が点状から環状に変化する閾値を示し、閾値は約0.007mJ/パルスであった。
図10は、実施例4及び実施例5の注入における、各基板に注入されたクマリン6の蛍光スペクトルを示す図である。図10の縦軸は蛍光強度(任意目盛)を示し、横軸は蛍光波長(nm)を示している。図10から明らかなように、実施例4の銅からなる基板4及び実施例5のステンレス鋼からなる基板4に注入されたクマリン6は、図7に示した分子注入源であるクマリン6自体の蛍光スペクトルと一致している。これにより、実施例4及び5において、銅及びステンレス鋼基板4には、クマリン6が注入されていることが判明した。なお、蛍光スペクトル中に生じた新たな700nmの蛍光ピークの起因は現時点では不明ではあるが、注入した分子と基板4との新たな結合又は相互作用によるものと推定される。
興味深いことに、低レーザ光強度から高レーザ光強度に変化させると、埋め込まれた点の形状が、点状から、所謂環状の形に遷移する閾値がある。この興味ある効果は、実施例1〜5で用いた全ての基板4で観察された。すなわち、0.14mJ/パルスでのPBMA、0.092mJ/パルスでのカバーグラス、0.26mJ/パルスでのITO、0.0067mJ/パルスでの銅、及び0.01mJ/パルスでのステンレスである。さらに詳細に調べた結果、パルスレーザ光強度が閾値以下では、基板4には分子が注入又は体積され、閾値以上では、基板4の一部にエッチングが生起することが分かった。したがって、分子の注入又は堆積を目的とする場合には、パルスレーザ光強度を閾値以下とすればよいことが判明した。
図11は、実施例1〜5及び比較例1におけるクマリン6の注入を模式的に説明する図であり、(a)が比較例1、(b)及び(c)が実施例1〜3、(d)及び(e)が実施例4及び5の場合を示している。各図において、パルスレーザ光強度は、右側が閾値以下の場合を示し、左側が閾値以上の場合を示している。
図11(b)〜(c)から明らかなように、分子注入源3に集光されたパルスレーザ光10Aが照射されると、水中には衝撃波(図11(b)及び(d)に示すSW)が発生する。この衝撃波によって、分子注入源3の表面温度が分子の過渡的局部加熱によって上昇する。これが、分子注入源3の膜から垂直方向への爆発と凝縮物質の更なる弾き出しとをもたらし、分子の噴流(図11(c)及び(e)のPI参照)が生じる。この効果によって、ナノ秒オーダーの非常に短いパルス光の照射で、短時間に大きなエネルギー供給が水の衝撃波を形成し、さらに、水の衝撃波によってクマリン6の分子が噴流の形となり、基板4に注入されると推定される(図11(b)T1(PBMA),T2(カバーガラス),T3(ITO膜)参照)。上記実施例1〜3で説明したように、レーザ光強度が大きい場合には、噴流の拡大が観測される。これが、クマリン6が埋め込まれる領域の形状を、点状から環状型に変換させるものと推定される。
実施例4及び5の基板4が銅及びステンレス鋼の場合には、2相の衝撃波が観測された。第1相は集光されたパルスレーザ光が金属からなる基板4に付与されて、パルスレーザ光のエネルギーが基板4の薄層に吸収され、基板4に微小な孔が形成される。次に、水の衝撃波が現れて、クマリン6分子が基板に埋め込まれると推定される。
一方、比較例1の場合には、図11(a)に示すように、分子注入源と基板との間の媒体が空気であるので、パルスレーザ光照射の間、分子注入源3において光が吸収される表面の温度はレーザ強度に関して直線的に上昇し、照射された部分の体積は、分子注入源の膜中で全方向に膨張する。分子注入源の膜厚は約800〜1000nmで、焦点を絞ったレーザ点の大きさ(約1μm以下)より小さい。つまり、照射される深さは、上記膜厚を超える。このように、分子注入源3の有限の厚さのために、照射による分子注入源における体積膨張は、分子注入源の膜表面に平行な方向に限られる。したがって、パルスレーザ光強度の増加と共に、基板4に注入される分子の面積が大きくなる。このため、レーザ光強度が大きいと、分子注入源3となる膜はレーザで切除され、レーザ光強度が小さいときよりも、多くの分子が基板4に弾き出されるので、埋め込み領域の寸法は大きくなると推定される。
ステージを駆動した以外は、実施例4と同じ構成で、銅からなる基板4にクマリン6のパターンを形成した。1点当りレーザ光強度としては、0.004mJ/パルスを用いて形成した点状パターンは、単語の「NIMS」である。
図12は、銅基板に埋め込まれたクマリン6の点状領域から形成された単語「NIMS」の蛍光画像を示す。図12から明らかなように、緑色の点はクマリン6の蛍光を示し、1点の大きさは約0.9〜1μmであり、「NIMS」というパターンが形成されていることが分かる。
実施例7として、SUS304ステンレス鋼基板4のエッチング加工を行なった。エッチング源保持体22は、実施例5の分子供給体8と同じ構成であり、エッチング源24としては、厚さが800〜1000nmのPBMA膜を用いた。パルスレーザ光強度を、5.8mJ/cmとし、ステージ2の駆動で基板の異なる位置へエッチングを行なった。
図13は、実施例7のパルスレーザでエッチングしたステンレス鋼基板4の表面形状の原子間力顕微鏡像を示す図である。図13から明らかなように、ステンレス鋼基板4には、直径約6μmで、深さが約350nm(0.35μm)の孔が多数形成されていることが分かった。
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。本発明に用いる基板、分子注入源やこれらの保持部は、その使用目的に応じて、適宜に選択あるいは設計すればよい。
本発明により、従来よりも微小な領域への有機分子などの注入や微小領域の材料加工が可能となり、電子デバイスの小型化や高集積化、高機能化、ディスプレイデバイスの小型化や高精細化、センサーの超高感度化、光スイッチングデバイスなどを製作することができる。
本発明の光による分子の注入装置の、それぞれ、(a)は模式図、(b)は基板部分の拡大断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る光による材料の加工装置の基板部分を示す拡大断面図である。 実施例1及び比較例1の注入装置により、基板に注入されたクマリン6の点状寸法及び分子注入源となる膜に生じる切除損傷の点状寸法に対する、パルスレーザ光強度依存性を示す図である。 実施例1及び比較例1のクマリン6が注入された基板と分子注入源を形成する膜の表面写真を示す図であり、それぞれ、(a)が比較例1の場合でありパルスレーザ光強度が0.014mJ/パルス、(b)が比較例1の場合でありパルスレーザ光強度が0.001mJ/パルス、(c)が実施例1の場合でありパルスレーザ光強度が0.017mJ/パルス、(d)が実施例1の場合でありパルスレーザ光強度が0.0046mJ/パルスである。 実施例1及び比較例1のクマリン6が注入された基板の埋め込み領域において、最小寸法の領域からの蛍光強度分布を示す図である。 実施例2及び実施例3の注入における、各基板に注入されたクマリン6の点状寸法のレーザ強度依存性を示す図である。 実施例2及び実施例3の注入における、各基板に注入されたクマリン6の蛍光スペクトルを示す図である。 実施例4及び実施例5の注入における、各基板に注入されたクマリン6の点状寸法のレーザ強度依存性を示す図である。 実施例5において、パルスレーザ光強度を変えてクマリン6を注入したときの埋め込み領域形状の原子間力顕微鏡像で、それぞれ、(a)が0.004mJ/パルスの場合を示し、(b)が0.058mJ/パルスの場合を示している。 実施例4及び実施例5の注入における、各基板に注入されたクマリン6の蛍光スペクトルを示す図である。 実施例1〜5及び比較例1におけるクマリン6の注入を模式的に説明する図であり、(a)が比較例1、(b)及び(c)が実施例1〜3、(d)及び(e)が実施例4及び5の場合を示している。 銅基板に埋め込まれたクマリン6の点状領域から形成された単語「NIMS」の蛍光画像を示す。 実施例7のパルスレーザでエッチングしたステンレス鋼基板の表面形状の原子間力顕微鏡像を示す図である。
符号の説明
1:光による分子の注入装置
2:ステージ
2A:ステージ駆動部
2B:開孔部
3:分子注入源
4:基板
5:光源部
6:液体
7:挟持部
7A:ガラス基板
8:分子供給体
9:制御部
10:レーザ(光源)
10A:レーザ光
12:レンズ
14:ミラー
16:対物レンズ
20:光による材料加工装置
22:エッチング源保持体
24:エッチング源

Claims (14)

  1. 分子を含む分子注入源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板に上記分子を注入する方法であって、
    上記分子注入源に含まれる分子を、上記分子注入源と上記基板との間に挿入される液体を介して、上記基板に注入することを特徴とする、光による分子の注入方法。
  2. 前記光で励起された分子により、前記液体の衝撃波を誘起することで前記基板に前記分子を注入することを特徴とする、請求項1に記載の光による分子の注入方法。
  3. 前記基板を移動可能なステージ上に載置し、該ステージを移動して前記基板の位置を前記光に対して変化させることにより前記分子を注入する位置を制御し、前記分子を前記基板表面の任意の位置に注入することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光による分子の注入方法。
  4. 前記分子注入源は、注入される分子を樹脂中に含有させてなることを特徴とする、請求項1に記載の光による分子の注入方法。
  5. 前記光がパルスレーザ光であることを特徴とする、請求項1に記載の光による分子の注入方法。
  6. 基板と、分子を含む分子注入源と、該基板及び分子注入源の間に配置した液体と、基板及び分子注入源を外側から挟持する挟持部と、から構成した分子供給体と、
    上記分子供給体を載置するステージと、
    上記分子注入源に集光した光を照射する光源と、を含み、
    上記分子注入源に含まれる分子を、上記液体を介して上記基板に注入することを特徴とする、光による分子の注入装置。
  7. 前記ステージは移動可能に構成され、該移動可能なステージの位置を変化させることにより、前記基板表面の任意の位置に前記分子を注入することを特徴とする、請求項に記載の光による分子の注入装置。
  8. 前記分子注入源が、複数種類の分子注入源からなることを特徴とする、請求項に記載の光による分子の注入装置。
  9. 分子を含むエッチング源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板の表面を上記分子で加工する方法であって、
    上記エッチング源に含まれる分子を、該エッチング源と上記基板との間に挿入される液体を介して上記基板を加工することを特徴とする、光による材料加工方法。
  10. 前記光で前記液体の衝撃波を誘起することにより前記基板を加工することを特徴とする、請求項に記載の光による材料加工方法。
  11. 前記基板を移動可能なステージ上に載置し、該ステージを移動して前記基板の位置を前記光に対して変化させることにより、前記分子を加工する位置を制御することを特徴とする、請求項又は10に記載の光による材料加工方法。
  12. 前記光がパルスレーザ光であることを特徴とする、請求項11の何れかに記載の光による材料加工方法。
  13. 基板と、エッチング源と、該基板及びエッチング源の間に配置した液体と、基板及びエッチング源を外側から挟持する挟持部と、から構成したエッチング源保持体と、
    上記エッチング源保持体を載置するステージと、
    上記エッチング源に集光した光を照射する光源と、を含み、
    上記液体に上記集光した光を照射することで、上記液体を介して上記基板を加工することを特徴とする、光による材料加工装置。
  14. 前記ステージは移動可能に構成され、該移動可能なステージの位置を変化させることにより、前記基板表面の任意の位置を加工することを特徴とする、請求項13に記載の光による材料加工装置。
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