JP5205669B2 - 光による分子の注入方法及び光による材料加工方法並びにそれらの装置 - Google Patents
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Description
上記構成において、好ましくは、光で励起された分子により、液体の衝撃波を誘起することで基板に分子を注入する。
好ましくは、基板を移動可能なステージ上に載置し、ステージを移動して基板の位置を光に対して変化させることにより分子を注入する位置を制御し、分子を基板表面の任意の位置に注入する。
前記分子注入源は、好ましくは、注入される分子を樹脂中に含有させてなる。光はパルスレーザ光が使用できる。
上記構成において、好ましくは、ステージは移動可能に構成され、移動可能なステージの位置を変化させることにより、基板表面の任意の位置に分子を注入する。また、好ましくは、分子注入源は複数種類の分子注入源からなる。
上記方法及び装置によれば、光学的、電子的、あるいは、磁気的な機能を有する機能性材料や機能性部品を作製することができる。
上記構成において、好ましくは、光で液体の衝撃波を誘起することにより基板を加工する。好ましくは、基板を移動可能なステージ上に載置し、ステージを移動して基板の位置を光に対して変化させることにより、分子を加工する位置を制御する。光はパルスレーザ光が使用できる。
上記構成において、好ましくは、ステージは移動可能に構成され、移動可能なステージの位置を変化させることにより、基板表面の任意の位置を加工する。
上記方法及び装置によれば、光学的、電子的、あるいは、磁気的な機能を有する機能性材料や機能性部品を作製することができる。
図1は、本発明の光による分子の注入装置であって、(a)は模式図を、(b)は基板部分の拡大断面図を示す。
図1(a)に示すように、本発明の光による分子の注入装置1は、ステージ2と、このステージ2上に載置される分子供給体8と、分子供給体8に集光した光を照射する光源5と、を含み構成されている。分子供給体8は、基板4と、分子を含む分子注入源3と、基板3及び分子注入源3の間に配置した液体6と、基板4及び分子注入源3を外側から挟持する挟持部7と、から構成されていて、集光した光は分子注入源3に照射される。
図1(b)の拡大断面図にさらに詳しく示すように、分子供給体8において、分子注入源3と基板4との間には、所定の間隔の隙間が設けられており、この隙間に液体6が挿入されている。挟持部は、2枚のガラス基板7A,7Aと、図示しない押圧機構を備えて構成されている。液体6が挿入された分子注入源3と基板4とが、分子注入源3の下部に配置されるガラス基板7A及び基板4の上部に配置されたガラス基板7Aとにより挟み込まれ、さらに、押圧(図1(a)の矢印P(↓)参照)されて、一体となり、分子供給体8が構成される。
注入する分子は、吸光特性と熱安定性を持ち、光励起できるものであれば何でもよく、各種の機能性分子であってもよい。好適には、光あるいは電子機能性を有する分子の1種以上のものを使用することができる。具体的には、クマリン6、クマリン545、ZnTPP、アントラセン、ジシアノアントラセン、NileRe d、フルオレッセイン、ビ
レン等が挙げられる。これ以外にも、ポリフェニレンビニレン(PPV)などの高分子、金属、セラミックスなどレーザ光でアブレーション可能な材料であれば、ほぼ全てを注入分子として用いることができる。したがって、例えば、金薄膜を分子注入源3とした場合には、基板へ金微粒子を注入することができる。
基板4は、分子が注入される基板であり、材質は特に限定されることはない。基板4としては、高分子、金属、セラミックスなどの各種の材料が使用可能である。金属基板としては、銅やステンレス鋼からなる基板を用いることができる。基板4を、光源5側、つまり、光の進行方向に対して基板4、液体6、分子注入源3の順に配置した場合には、基板4として、60%以上の高い光透過率の基板を使用するのが望ましい。
液体6は、水や油などを用いることができる。その他、ヘキサデカン、界面活性剤などを用いても分子注入を行なうことができる。基本的には、どのような液体6でも注入現象は起こると考えられるが、むしろ、基板4との相性を重視した選択が必要である。たとえば、高分子からなる基板4を用いるのであれば、これは多くの有機溶媒にてダメージを受けるので、水などが適している。また、光を吸収する溶液を使用すれば、有機分子が溶液中に誘起する衝撃波に加えて、溶液がそのまま光を吸収することに伴う衝撃波の影響が加わり、注入される分子への影響が大きくなりすぎると思われる。しかしながら、後述する本発明の光を用いた材料加工という面では、液体として有機溶媒を使用することは、エネルギーが増大するために、使用用途によっては有効である。
具体的には、光源5から分子注入源3に集光されたレーザ光10Aを照射し、分子注入源3の微小領域を切除し、その結果、分子は分子注入源3の表面から弾き出され、液体6中を通過して目標となる基板4に注入される。液体中に弾き出された分子の噴流は、液体6を用いない、つまり、分子注入源3と基板4との間の挿入媒体が空気の場合よりも形状が小さくできる。このため、基板4に注入又は堆積される分子により形成される埋め込み領域の形状を、より微小な形状とすることができる。
これにより、分子が注入又は堆積される埋め込み領域の空間的な大きさは、μm以下、nmオーダーとすることができる。分子の注入又は堆積される領域の形状については特に限定されることはなく、円形、略円形などであって良い。なお、「最大径」とは、注入領域が円形であれば直径、あるいは最大長さ寸法として定義される。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光による材料の加工装置の基板部分を示す拡大断面図である。図2から明らかなように、本発明の光による材料加工装置20が、図1に示した光による分子の注入装置1と異なるのは、分子供給体8をエッチング源保持体22とし、分子注入源3の代わりにエッチング源24を用いた点にある。他の構成は図1に示した光による分子の注入装置1と同じであるので説明は省略する。
エッチング源24は、分子注入源3と同様に、エッチング源となる材料を塗布したり、又は蒸着した基板を用いることができる。エッチング源24としては、基本的には光を吸収するものであれば何でもよい。例えば、有機分子を分散させた高分子フィルムやガラス基板上に金属を薄くコーティングした膜を使用することができる。
光による分子の注入装置1は、図1に示した装置を用いた。分子供給体8の挟持部7としては、2枚ガラス基板7A,7Aを用いた。分子注入源3は、ポリ(メタクリル酸ブチル)(以下、PBMAと呼ぶ)膜中にクマリン6(C6)を濃度4%で含ませた。具体的には、C6及びPBMAをモノクロロベンゼン(和光純薬(株)製)に溶解し、スピンコー夕ーを使用して片方の挟持部7のガラス基板7A上に約800〜1000nmの厚さのクマリン6(C6)を含有したPBMA膜を成膜した。
ターゲットとなる基板4としては、他方の挟持部となるガラス基板7A上に約1.5μm〜2.5μmの厚さのPBMA膜4を成膜した。挿入する液体6は水を用い、水6の厚さは、ほぼ2μmとした。
光源10:窒素レーザによりポンビングされるクマリンダイレーザ(LSI−VSL−337ND−S)
駆動条件:パルス幅4ns、波長440nm、レーザ強度300μJ/パルス以下、パルス周波数20Hz以下
(比較例1)
分子注入源3とターゲットとなる基板4との間を、水ではなく空気とし、分子注入源3とターゲット4との間隔を2μmとした以外は実施例1と同様の分子注入装置1を用い、パルスレーザ光強度を種々変えて注入を行なった。
分子が注入された領域(以下、埋め込み領域と呼ぶ)は高分解能デジタルカメラを備えた汎用蛍光顕微鏡(オリンパス社製、IX70)を用いて観察した。観察した蛍光強度から、埋め込み領域の各点の大きさは、その蛍光強度分布をガウス分布関数に当てはめて推定した。後述する分子注入源3と基板4表面からの蛍光スペクトルはスペクトル計(Ocean Optics社製、USB−2000−FLG)で記録した。
図3から明らかなように、実施例1の場合には、埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.0046mJ/パルスのときに0.8μmであった。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると、点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約15μmであった。興味深いことには、パルスレーザ光強度が0.014mJ/パルスに閾値がある。この閾値を境として、埋め込まれた点の形状が変化することが分かった。
図4(d)から明らかなように、実施例1でパルスレーザ光強度が0.0046mJ/パルスの場合には、図3で示した閾値以下であるので、埋め込み領域の形状は点状であることが分かった。図4(c)から明らかなように、パルスレーザ光強度が図3で示した閾値以上の0.017mJ/パルスであるので、埋め込み領域の形状は、環状であることが分かった。
一方、図4(a)及び(b)に示すように、比較例1の埋め込み領域の形状は、上記パルスレーザ光強度の何れの場合にも、実施例1よりも大きいことが分かる。
図6は、実施例2及び実施例3の注入における、各基板4に注入されたクマリン6の点状寸法のパルスレーザ強度依存性を示す図である。図6の縦軸は点状寸法(μm)を示し、横軸は照射したパルスレーザ光強度(mJ/パルス)を示している。
図6から明らかなように、実施例2の場合には、基板4であるカバーガラスにクマリン6が注入された埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.017mJ/パルスのときに約2μmであった。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約19μmであった。実施例1の場合に観測されたように、パルスレーザ光強度の増大に伴い、埋め込み領域の形状が変化した。図中の点線が、埋め込み領域の形状が点状から環状に変化する閾値を示し、閾値は0.092mJ/パルスであった。
図8は、実施例4及び実施例5の注入における、各基板4に注入されたクマリン6の点状寸法のレーザ強度依存性を示す図である。図9の縦軸は点状寸法(μm)を示し、横軸は照射したパルスレーザ光強度(mJ/パルス)を示している。
図8から明らかなように、実施例4において、銅基板4にクマリン6が注入された埋め込み領域の点状寸法は、パルスレーザ光の最小強度が0.0024mJ/パルスのときには約700nm(0.7μm)であり、サブμm、即ちnmオーダーの微小な埋め込み領域を実現することができた。さらに、パルスレーザ光強度を増加させると、点状寸法は徐々に大きくなり、約0.24mJ/パルスの場合には約6μmであった。実施例1の場合に観測されたように、パルスレーザ光強度の増大に伴い、埋め込み領域の形状が変化した。図中の点線が、埋め込み領域の形状が点状から環状に変化する閾値を示し、閾値は約0.011mJ/パルスであった。
図9は、実施例4において、パルスレーザ光強度を変えてクマリン6を注入したときの埋め込み領域形状の原子間力顕微鏡像を示す図であり、それぞれ、(a)が0.004mJ/パルスの場合、(b)が0.058mJ/パルスの場合を示している。図9(a)から明らかなように、パルスレーザ光強度が閾値以下の0.004mJ/パルスの場には、クマリン6が銅基板4の表面を破壊することなく、銅中に埋め込まれる。
図9(b)から明らかなように、パルスレーザ光強度が閾値以上よりも遥かに大きい約15倍の強度である0.058mJ/パルスの場には、高エネルギーでは弾き出される分子の流束密度は高く、図9(a)の場合とは異なり、中心にもう一つの点を有し、蛍光物質に被覆された環状の縁を持つ孔が形成される。
図11(b)〜(c)から明らかなように、分子注入源3に集光されたパルスレーザ光10Aが照射されると、水中には衝撃波(図11(b)及び(d)に示すSW)が発生する。この衝撃波によって、分子注入源3の表面温度が分子の過渡的局部加熱によって上昇する。これが、分子注入源3の膜から垂直方向への爆発と凝縮物質の更なる弾き出しとをもたらし、分子の噴流(図11(c)及び(e)のPI参照)が生じる。この効果によって、ナノ秒オーダーの非常に短いパルス光の照射で、短時間に大きなエネルギー供給が水の衝撃波を形成し、さらに、水の衝撃波によってクマリン6の分子が噴流の形となり、基板4に注入されると推定される(図11(b)T1(PBMA),T2(カバーガラス),T3(ITO膜)参照)。上記実施例1〜3で説明したように、レーザ光強度が大きい場合には、噴流の拡大が観測される。これが、クマリン6が埋め込まれる領域の形状を、点状から環状型に変換させるものと推定される。
図12は、銅基板に埋め込まれたクマリン6の点状領域から形成された単語「NIMS」の蛍光画像を示す。図12から明らかなように、緑色の点はクマリン6の蛍光を示し、1点の大きさは約0.9〜1μmであり、「NIMS」というパターンが形成されていることが分かる。
図13は、実施例7のパルスレーザでエッチングしたステンレス鋼基板4の表面形状の原子間力顕微鏡像を示す図である。図13から明らかなように、ステンレス鋼基板4には、直径約6μmで、深さが約350nm(0.35μm)の孔が多数形成されていることが分かった。
2:ステージ
2A:ステージ駆動部
2B:開孔部
3:分子注入源
4:基板
5:光源部
6:液体
7:挟持部
7A:ガラス基板
8:分子供給体
9:制御部
10:レーザ(光源)
10A:レーザ光
12:レンズ
14:ミラー
16:対物レンズ
20:光による材料加工装置
22:エッチング源保持体
24:エッチング源
Claims (14)
- 分子を含む分子注入源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板に上記分子を注入する方法であって、
上記分子注入源に含まれる分子を、上記分子注入源と上記基板との間に挿入される液体を介して、上記基板に注入することを特徴とする、光による分子の注入方法。 - 前記光で励起された分子により、前記液体の衝撃波を誘起することで前記基板に前記分子を注入することを特徴とする、請求項1に記載の光による分子の注入方法。
- 前記基板を移動可能なステージ上に載置し、該ステージを移動して前記基板の位置を前記光に対して変化させることにより前記分子を注入する位置を制御し、前記分子を前記基板表面の任意の位置に注入することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光による分子の注入方法。
- 前記分子注入源は、注入される分子を樹脂中に含有させてなることを特徴とする、請求項1に記載の光による分子の注入方法。
- 前記光がパルスレーザ光であることを特徴とする、請求項1に記載の光による分子の注入方法。
- 基板と、分子を含む分子注入源と、該基板及び分子注入源の間に配置した液体と、基板及び分子注入源を外側から挟持する挟持部と、から構成した分子供給体と、
上記分子供給体を載置するステージと、
上記分子注入源に集光した光を照射する光源と、を含み、
上記分子注入源に含まれる分子を、上記液体を介して上記基板に注入することを特徴とする、光による分子の注入装置。 - 前記ステージは移動可能に構成され、該移動可能なステージの位置を変化させることにより、前記基板表面の任意の位置に前記分子を注入することを特徴とする、請求項6に記載の光による分子の注入装置。
- 前記分子注入源が、複数種類の分子注入源からなることを特徴とする、請求項6に記載の光による分子の注入装置。
- 分子を含むエッチング源に対して集光された光を照射することで、少なくとも光の進行方向に設置された基板の表面を上記分子で加工する方法であって、
上記エッチング源に含まれる分子を、該エッチング源と上記基板との間に挿入される液体を介して上記基板を加工することを特徴とする、光による材料加工方法。 - 前記光で前記液体の衝撃波を誘起することにより前記基板を加工することを特徴とする、請求項9に記載の光による材料加工方法。
- 前記基板を移動可能なステージ上に載置し、該ステージを移動して前記基板の位置を前記光に対して変化させることにより、前記分子を加工する位置を制御することを特徴とする、請求項9又は10に記載の光による材料加工方法。
- 前記光がパルスレーザ光であることを特徴とする、請求項9〜11の何れかに記載の光による材料加工方法。
- 基板と、エッチング源と、該基板及びエッチング源の間に配置した液体と、基板及びエッチング源を外側から挟持する挟持部と、から構成したエッチング源保持体と、
上記エッチング源保持体を載置するステージと、
上記エッチング源に集光した光を照射する光源と、を含み、
上記液体に上記集光した光を照射することで、上記液体を介して上記基板を加工することを特徴とする、光による材料加工装置。 - 前記ステージは移動可能に構成され、該移動可能なステージの位置を変化させることにより、前記基板表面の任意の位置を加工することを特徴とする、請求項13に記載の光による材料加工装置。
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