以下、図面を参照して、本発明にかかるカプセル型医療装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、被検体内部の患部等の所望の体内部位に薬液を注入するカプセル型医療装置を例示するが、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図1に示すように、この実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1は、筒状筐体2aとドーム形状筐体2bとによって形成されるカプセル型筐体2と、被検体の体内部位に穿刺する注射針3と、この注射針3を加熱処理によって縮小変形させる加熱部4と、注射針3を支持する支持部5と、カプセル型筐体2から注射針3を突没させる駆動部6とを備える。また、カプセル型医療装置1は、注射針3を介して体内部位に薬液7を注入する吐出バルーン8と、この吐出バルーン8と注射針3との連通状態と遮断状態とを切り替える駆動弁9と、連通管10aと、チューブ10bとを備える。さらに、カプセル型医療装置1は、被検体の体内画像を撮像する撮像部11と、被検体外部の通信装置(図示せず)と無線通信を行う通信部12と、かかるカプセル型医療装置1の各構成部を制御する制御部13と、電池等によって実現される電源部14とを備える。
カプセル型筐体2は、患者等の被検体の内部に導入可能な大きさに形成されたカプセル型の筐体であり、一端がドーム形状をなす筒状筐体2aの他端(開口端)をドーム形状筐体2bによって塞いで形成される。ドーム形状筐体2bは、所定の波長帯域の光(例えば可視光)に対して透明なドーム形状の光学部材である。一方、筒状筐体2aは可視光に対して略不透明な筐体である。この筒状筐体2aには、注射針3の突没口である開口部2cが形成される。かかる筒状筐体2aとドーム形状筐体2bとによって形成されるカプセル型筐体2の内部には、カプセル型医療装置1の各構成部(注射針3、加熱部4、駆動部6、吐出バルーン8、駆動弁9、連通管10a、チューブ10b、撮像部11、通信部12、制御部13および電源部14等)が収容される。この場合、カプセル型筐体2は、所定の液密構造(図示せず)によって、駆動部6、駆動弁9、撮像部11、通信部12、制御部13および電源部14等の電子部品の液密状態を確保する。
注射針3は、一端(先端)が尖形に形成された中空針であり、熱可塑性樹脂によって形成される。この注射針3の他端(後端)にはチューブ10bが取り付けられ、この注射針3の後端部近傍には、支持部5が固定される。支持部5は、カプセル型筐体2の開口部2cを通して注射針3が突没可能な態様で注射針3を支持する。かかる支持部5は、駆動部6と接続される。一方、この注射針3の外壁部には加熱部4が取り付けられる。かかる注射針3は、所定の温度未満(例えば体温以下の温度)の状態である場合、かかる中空針としての外形を維持し、加熱部4によって所定の温度以上に加熱された場合、軟化して流動性をもつようになり、体内部位の収縮力によって容易に変形可能になる。
加熱部4は、熱可塑性樹脂からなる注射針3を加熱処理によって縮小変形させて注射針3による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする閉塞手段として機能する。具体的には、加熱部4は、薄膜状の電熱ヒータであり、注射針3の外壁部に巻き付けられる態様で固定される。かかる加熱部4は、制御部13によって供給された電力をもとに注射針3を加熱処理し、これによって注射針3を軟化させて縮小変形可能な状態にする。かかる加熱部4によって加熱された注射針3は、穿刺した体内部位の収縮力によって容易に縮小変形して穿刺穴を閉塞状態にする。
ここで、かかる閉塞状態は、注射針3の穿刺によって体内部位に形成された穿刺穴(穿刺跡)の開口径が縮小(最小化)して、この体内部位の注入液体(具体的には注射針3を介して体内部位の内部に注入された薬液等の液体)が穿刺穴から漏れ出ない状態であり、この穿刺穴が完全に塞がっていなくてもよい。また、上述した注射針3の縮小変形は、かかる穿刺穴の開口径を最小化する方向に進行する変形であり、例えば、注射針3の開口径を縮小する縮径変形、注射針3の開口を潰してフラットな形状にする圧潰変形等を含む。
駆動部6は、カプセル型筐体2から注射針3を突没させて、被検体の体内部位に注射針3を穿刺し、この穿刺した注射針3を体内部位から抜き取ってカプセル型筐体2の内部に収納する針駆動手段として機能する。具体的には、駆動部6は、リニアアクチュエータ等を用いて実現され、注射針3の支持部5と接続される。駆動部6は、支持部5を介して注射針3を所定の方向(図1に示す太線矢印方向)に往復動作させる。かかる駆動部6は、開口部2cからカプセル型筐体2の外部に注射針3を突き出して被検体の体内部位に注射針3を穿刺し、その後、制御部13の制御に基づく動作タイミングに体内部位から注射針3を抜き取り、カプセル型筐体2内部に注射針3を収納する。
吐出バルーン8は、被検体の体内部位に穿刺した注射針3を介して、この体内部位の内部に液体を注入する液体注入手段として機能する。具体的には、吐出バルーン8は、伸縮自在な弾性膜によって実現され、連通管10aに取り付けられる。吐出バルーン8は、膨脹した状態で薬液7を内包し、この薬液7を貯蔵する。かかる吐出バルーン8の内部は、連通管10aと連通し、後述する駆動弁9が開状態である場合に連通管10aおよびチューブ10b等を介して注射針3と連通する。吐出バルーン8は、注射針3と連通状態である場合、自身の収縮力によって薬液7を注射針3側に吐出し、この結果、注射針3を介して体内部位の内部に薬液7を注入する。一方、吐出バルーン8は、この注射針3との連通状態が駆動弁9によって解除された場合または自身の収縮力を消費し尽くした場合、薬液7の吐出(注入)を停止する。
駆動弁9は、電磁弁等を用いて実現され、制御部13の制御に基づいて開閉駆動する。駆動弁9は、連通管10aおよびチューブ10bと連通接続され、連通管10aを介して吐出バルーン8と連通し、且つチューブ10bを介して注射針3と連通する。かかる駆動弁9は、開駆動を行って開状態に切り替わった場合、連通管10aおよびチューブ10bを介して吐出バルーン8と注射針3とを連通状態にし、閉駆動を行って閉状態に切り替わった場合、かかる吐出バルーン8と注射針3との連通状態を遮断する。
なお、かかる駆動弁9と注射針3とを連通可能に接続するチューブ10bは、可撓性のチューブ部材であってもよいし、伸縮自在な弾性部材からなるチューブ部材であってもよい。また、かかるチューブ10bの長さは、上述した注射針3の突没動作を阻害しない程度の長さであればよい。
撮像部11は、被検体の体内画像を撮像するためのものである。具体的には、撮像部11は、LED等の照明部11aと、集光レンズ等の光学系11bと、CCDまたはCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子11cとを備える。撮像部11は、カプセル型筐体2に対する所定の相対方向の軸(例えばカプセル型筐体2の長手方向の中心軸CL)と光学系11bの光軸とを一致させる態様でカプセル型筐体2の内部に固定配置され、カプセル型筐体2の長手方向等の所定の方向に撮像視野を向ける。かかる撮像部11において、1以上(望ましくは複数)の照明部11aは、撮像部11の被写体である被検体の臓器内部を照明する。光学系11bは、照明部11aによって照明された被写体からの反射光を集光し、固体撮像素子11cの受光面に、この被写体の光学像を結像する。固体撮像素子11cは、光学系11bによって結像された被写体の光学像、すなわち被検体の体内画像を撮像する。かかる撮像部11は、この固体撮像素子11cの光電変換処理によって生成された信号を制御部13に送信する。
通信部12は、被検体外部に配置された画像表示装置等の外部装置(図示せず)と無線通信を行う。具体的には、通信部12は、無線アンテナ(図示せず)を備え、この無線アンテナを介して無線信号を送受信する。より具体的には、通信部12は、制御部13の制御に基づいて、上述した撮像部11が撮像した被検体の体内画像を被検体外部の外部装置に無線送信する。この場合、通信部12は、制御部13から取得した画像信号(体内画像のデータを含む信号)に対して変調処理等を行って、この画像信号を含む無線信号を生成する。通信部12は、この生成した無線信号を無線アンテナを介して被検体外部の外部装置に送信する。一方、通信部12は、制御部13の制御に基づいて、被検体外部の外部装置から送信された無線信号を受信し、この受信した無線信号に対して復調処理等を行って、この無線信号から制御信号を抽出する。通信部12は、かかる外部装置からの制御信号を制御部13に送信する。
制御部13は、予め設定されたプログラムを実行するCPUと、各種データ等を記憶するROMと、演算パラメータ等を記憶するRAMとを用いて実現される。制御部13は、カプセル型医療装置1の各構成部(具体的には、加熱部4、駆動部6、駆動弁9、撮像部11および通信部12等)を制御し、且つ、かかる各構成部間における信号の入出力を制御する。また、制御部13は、駆動弁9の制御を通して、上述した吐出バルーン8の吐出動作(注入動作)を制御する。かかる制御部13は、通信部12を介して取得した外部装置からの制御信号に基づいて加熱部4と駆動部6と駆動弁9とを適宜制御し、これによって、被検体の体内部位に注射針3を穿刺してから、この体内部位の内部への薬液7の注射を経て、この注射完了した体内部位から注射針3を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に収納するまでの一連の動作を制御する。なお、かかる一連の動作には、加熱部4による注射針3の加熱処理(すなわち体内部位の穿刺穴の閉塞処理)、駆動部6による注射針3の突没動作および吐出バルーン8による薬液7の吐出(注入)動作が含まれる。
また、制御部13は、画像処理部13aを備える。制御部13は、照明部11aが照明した被写体の画像(被検体の体内画像)を固体撮像素子11cが撮像するように撮像部11の動作タイミングを制御する。画像処理部13aは、かかる撮像部11の固体撮像素子11cによって光電変換された信号を取得し、この取得した信号に対して所定の信号処理を行って、被検体の体内画像のデータを含む画像信号を生成する。制御部13は、かかる画像処理部13aによって生成された画像信号、すなわち撮像部11が撮像した被検体の体内画像のデータを含む画像信号を被検体外部の外部装置に無線送信するように通信部12を制御する。制御部13は、画像処理部13aが画像信号を生成する都度(すなわち撮像部11が被検体の体内画像を撮像する都度)、かかる通信部12の制御を繰り返す。一方、制御部13は、通信部12を制御して被検体外部の外部装置からの制御信号を取得する。
電源部14は、スイッチ部およびボタン型の電池等を用いて実現され、スイッチ部によってオン状態に切り替わった場合、上述した加熱部4、駆動部6、駆動弁9、撮像部11、通信部12および制御部13に対して電力を適宜供給する。また、電源部14は、スイッチ部によってオフ状態に切り替わった場合、かかる制御部13等の各構成部に対する電力供給を停止する。なお、かかる電源部14のスイッチ部は、外部から印加された磁界の作用によってオンオフ状態を切り替える磁気スイッチであってもよいし、外部から入射された赤外光等の所定の光信号に基づいてオンオフ状態を切り替える光スイッチであってもよい。
以上のような構成を有するカプセル型医療装置1は、経口摂取等によって被検体の臓器内部に導入され、その後、蠕動運動等によって被検体の臓器内部(消化管内部)を移動する。かかる被検体内部のカプセル型医療装置1は、撮像部11によって被検体の体内画像を所定の時間間隔(例えば0.5秒間隔)で順次撮像し、通信部12によって体内画像の画像信号を被検体外部の外部装置に順次無線送信する。
また、被検体内部のカプセル型医療装置1は、このように被検体の体内画像を順次撮像および無線送信しつつ被検体の臓器内部を順次移動し、薬液7を注射すべき所望の体内部位に到達する。この体内部位に到達したカプセル型医療装置1は、この体内部位に注射針3を穿刺して薬液7を注射し、この薬液7を注入してから注射針3を抜き取るまでの期間に、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする。その後、このカプセル型医療装置1は、この体内部位から注射針3を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に注射針3を収納し、この体内部位に薬液7を注射するための一連の動作を終了する。かかるカプセル型医療装置1は、この注射針3をカプセル型筐体2の内部に収納後、被検体の臓器内部を移動し、最終的に、被検体の外部に排出される。
つぎに、被検体内部における所望部位の一例である患部に薬液を注射する場合を例示して、本発明の実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の動作を具体的に説明する。図2は、被検体内部のカプセル型医療装置が患部に到達する状態を示す模式図である。図3は、被検体内部のカプセル型医療装置が患部に薬液を注射する状態を示す模式図である。図4は、注射針の縮小変形によって体内部位の穿刺穴が閉塞する状態を示す模式図である。図5は、縮小変形した注射針がカプセル型筐体の内部に収納される状態を示す模式図である。
カプセル型医療装置1は、上述したように、経口摂取等によって患者等の被検体の臓器内部に導入される。かかる被検体内部のカプセル型医療装置1は、図2に示すように、この被検体の体内画像の撮像および無線送信を順次繰り返しつつ、蠕動運動等によって消化管内部を移動して患部15の近傍に到達する(状態A1)。この場合、カプセル型医療装置1は、撮像部11によって撮像した体内画像を被検体外部の外部装置に無線送信する。この外部装置は、かかるカプセル型医療装置1から受信した体内画像をディスプレイに表示する。医師または看護師等のユーザは、この外部装置の表示情報を視認することによって、被検体内部のカプセル型医療装置1が患部15の近傍に到達したことを確認する。
かかる患部15近傍のカプセル型医療装置1は、蠕動運動等によって患部15の位置に到達し、図2に示すように注射針3の位置と患部15の位置とを合わせる(状態A2)。なお、ユーザは、外部装置の表示情報を視認することによって、このように被検体内部のカプセル型医療装置1が患部15の位置に到達した旨を確認する。
ここで、外部装置は、ユーザによる操作に対応して、カプセル型医療装置1に対する制御信号を生成し、この生成した制御信号を被検体内部の被検体1に無線送信する。被検体内部のカプセル型医療装置1は、上述した通信部12によって外部装置からの制御信号を受信し、この受信した制御信号に基づいて、患部15に注射針3を穿刺してから患部15の内部に薬液7を注射してカプセル型筐体2の内部に注射針3を収納するまでの一連の動作を実行する。
かかるカプセル型医療装置1において、制御部13は、上述した外部装置からの制御信号に基づいて、まず、カプセル型筐体2から注射針3を突き出すように駆動部6を制御する。この場合、駆動部6は、開口部2c側に向かう方向に支持部5を移動する。かかる支持部5に支持された注射針3は、図3に示すように、開口部2cを通ってカプセル型筐体2から突出し、患部15に突き刺さる(状態A3)。この場合、チューブ10bは、かかる注射針3の突出動作を阻害しない。また、加熱部4は、患部15への注射針3の穿刺を阻害することなく、この注射針3の外壁面に固定された状態を維持する。
つぎに、制御部13は、患部15に注射針3を穿刺し終えたタイミングに駆動弁9を制御し、この駆動弁9の制御を通して吐出バルーン8による薬液7の吐出動作を開始する。この場合、駆動弁9は、開駆動を行うことによって、連通管10aおよびチューブ10bを介して吐出バルーン8と注射針3とを連通状態に切り替る。吐出バルーン8は、かかる連通管10a、駆動弁9およびチューブ10bの内部に薬液7を流通させ、患部15に穿刺した状態の注射針3を介して患部15の内部に薬液7を注入する。かかる注射針3を介して吐出された薬液7は、図3に示すように、患部15の内部を伸展しつつ患部15の内部に注入される(状態A4)。
かかる制御部13は、このように患部15に注射針3を穿刺した状態を維持しつつ、この注射針3を介して患部15に薬液7を注入し始めてから所定の時間が経過したタイミングに、注射針3と吐出バルーン8との連通状態を遮断するように駆動弁9を制御する。この場合、駆動弁9は、閉駆動を行うことによって注射針3と吐出バルーン8との連通状態を遮断する。これによって、吐出バルーン8による患部15への薬液7の注入動作が終了する。なお、制御部13は、かかる駆動弁9の切替タイミングを制御することによって、吐出バルーン8による薬液7の吐出量(注入量)を患部15に必要な液量に制御できる。
このように吐出バルーン8が薬液7の注入動作を終了した状態において、制御部13は、加熱部4に電力を印加して注射針3の加熱処理を制御する。この場合、加熱部4は、かかる制御部13から供給された電力をもとに発熱し始め、患部15に穿刺した状態の注射針3を加熱処理する。かかる加熱部4によって加熱処理された注射針3は、患部15に穿刺した状態を維持しつつ、所定の温度以上(少なくとも体温を超過する温度)に加熱されて軟化する。このように軟化した注射針3は、図4に示すように、中空針としての外形を維持した状態(状態A5)から患部15の収縮力によって縮小変形した状態になる(状態A6)。この結果、注射針3による患部15の穿刺穴16は、その開口径を最小化した状態になり、内部の薬液7を外部に漏出させない状態、すなわち閉塞状態になる。
かかる制御部13は、加熱部4に注射針3を加熱処理させてから所定の時間が経過したタイミング(すなわち、穿刺状態の注射針3が患部15の収縮力によって十分に縮小変形したタイミング)に、この注射針3の加熱処理を停止するように加熱部4を制御する。加熱部4は、制御部13による電力供給を停止され、これによって注射針3の加熱処理を終了する。
その後、制御部13は、このように注射針3が十分に縮小変形したタイミング(すなわち患部15の穿刺穴16が閉塞状態になったタイミング)に、カプセル型筐体2の内部に注射針3を収納するように駆動部6を制御する。この場合、駆動部6は、開口部2cから離間する方向に支持部5を移動して、患部15から注射針3を抜き取り、カプセル型筐体2の内部に注射針3を収納する(状態A7)。
ここで、注射針3を抜き取られた患部15の穿刺穴(穿刺跡)16は、上述したように閉塞状態である。このため、患部15は、このように注射針3が抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
以上、説明したように、本発明の実施の形態1では、体内部位に穿刺する注射針が熱可塑性樹脂によって形成され、吐出バルーンが、体内部位に穿刺した状態の注射針を介してこの体内部位の内部に薬液を注入し、加熱部が、この穿刺状態の注射針を加熱処理によって軟化し、この軟化した注射針が、体内部位の収縮力によって容易に縮小変形し、これによって、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にするように構成した。このため、体内部位に注射針を穿刺した状態を維持しつつ、この穿刺状態の注射針の縮小変形に伴って体内部位の穿刺穴の開口径を縮小し、これによって、この体内部位の穿刺穴から薬液等の注入液体を漏出させることなく、この穿刺穴を閉塞状態に変化することができ、この結果、薬液注射後の体内部位から注射針を抜き取った後に、この体内部位から薬液が漏れ出ることを防止できるカプセル型医療装置を実現することができる。
本発明にかかるカプセル型医療装置を用いることによって、被検体内部における患部等の所望部位に注射した薬液がこの所望部位の穿刺穴から漏れ出ることを防止できるため、この所望部位以外の体内部位(すなわち目的外の体内部位)に薬液が広がって、この目的外の体内部位に対して意図せずに薬液が作用することを防止できる。特に、薬液が有色の液体である場合、本発明によれば、かかる効果に加えて、この所望部位から漏れ出た有色の薬液がカプセル型医療装置の外壁面に付着してカプセル型医療装置の視界(撮像視野)を妨げることをさらに防止できる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、体内部位に穿刺した状態の注射針3を加熱処理によって縮小変形させて、この注射針3による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしていたが、この実施の形態2では、注射針の外壁部に摺動可能に軟質管を外嵌し、この軟質管とともに注射針を体内部位に穿刺して薬液を注射した後、この体内部位の穿刺穴に軟質管を残して注射針を抜き取り、この軟質管を体内部位の収縮力によって縮小変形させることによって、この穿刺穴を閉塞状態にしている。
図6は、本発明の実施の形態2にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図6に示すように、この実施の形態2にかかるカプセル型医療装置21は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の注射針3に代えて注射針23を備え、制御部13に代えて制御部29を備える。また、カプセル型医療装置21は、この注射針23に摺動可能に外嵌する薄膜チューブ24と、この薄膜チューブ24を支持する支持部25と、この支持部25を介して薄膜チューブ24を直線的に往復動作する駆動部26とを備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針23は、金属等によって形成される硬質の中空針であり、穿刺した体内部位の収縮力によって縮小変形するものではない。また、注射針23の後端部にはチューブ10bが取り付けられ、注射針23は、このチューブ10bを介して駆動弁9と連通する。この注射針23の後端部近傍には支持部5が取り付けられ、注射針23は、上述した実施の形態1における注射針3と同様に駆動部6の作用によってカプセル型筐体2から突没する。なお、注射針23は、上述した実施の形態1における注射針3と同様の中空針構造を有する。
薄膜チューブ24は、軟質の樹脂性薄膜によって形成される軟質管であり、上述した注射針23の外径寸法と略同じ内径寸法を有する。この薄膜チューブ24の後端部近傍には支持部25が固定される。支持部25は、カプセル型筐体2の開口部2cを通して薄膜チューブ24が突没可能な態様で薄膜チューブ24を支持する。かかる薄膜チューブ24は、注射針23の外壁部に摺動可能に外嵌し、体内部位に穿刺する注射針23とともに、この体内部位の穿刺穴に入り込む。このように穿刺穴の内部に入り込んだ状態の薄膜チューブ24は、注射針23に外嵌した状態において管形状を維持し、注射針23が抜き取られた状態において体内部位の収縮力によって容易に押し潰されて縮小変形する。
駆動部26は、注射針23を突没させる駆動部6とは独立して動作可能なものであり、カプセル型筐体2の開口部2cを介して薄膜チューブ24を突没させる管駆動手段として機能する。具体的には、駆動部26は、リニアアクチュエータ等を用いて実現され、薄膜チューブ24の支持部25と接続される。駆動部26は、支持部25を介して薄膜チューブ24を注射針23の突没方向(図6に示す太線矢印方向)と同じ方向に往復動作させる。かかる駆動部26は、制御部29の制御に基づいて、注射針23とともに薄膜チューブ24を体内部位に向けて突出させ、上述した駆動部6が体内部位から注射針23を抜き取るまでの期間、この体内部位の穿刺穴に薄膜チューブ24を留める。また、かかる駆動部26は、制御部29の制御に基づいて、この注射針23の抜き取り後に体内部位から薄膜チューブ24を抜き取って、カプセル型筐体2の内部に薄膜チューブ24を収納する。
ここで、注射針23とともに体内部位の穿刺穴に入り込んだ薄膜チューブ24は、穿刺状態の注射針23に外嵌した状態であれば、この穿刺穴の内部において生体組織に押し潰されることなく、その管形状を維持する。一方、かかる穿刺穴内部の薄膜チューブ24は、上述した駆動部6によって体内部位から注射針23が徐々に抜き取られるとともに中空部分を徐々に狭め、最終的に、この体内部位の収縮力によって縮小変形(例えば圧潰変形)して、この穿刺穴を閉塞状態にする。すなわち、かかる薄膜チューブ24および駆動部26は、注射針23による体内部位の穿刺穴の開口径を最小化してこの穿刺穴を閉塞状態にする閉塞手段として機能する。
制御部29は、カプセル型筐体2から注射針23とともに薄膜チューブ24を突出させるように駆動部26を制御する。この場合、制御部29は、注射針23の突出動作と薄膜チューブ24の突出動作とを同期して行うように駆動部6および駆動部26を制御する。また、制御部29は、駆動部6が体内部位から注射針23を抜き取るまでの期間、この体内部位の穿刺穴に薄膜チューブ24を留めるように駆動部26を制御し、この注射針23の抜き取り後に体内部位から薄膜チューブ24を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に薄膜チューブ24を収納するように駆動部26を制御する。なお、制御部29は、かかる駆動部26の動作制御以外、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の制御部13と同様の機能を有する。
つぎに、被検体内部における所望部位の一例である患部に薬液を注射する場合を例示して、本発明の実施の形態2にかかるカプセル型医療装置21の動作を具体的に説明する。図7は、被検体内部のカプセル型医療装置が薄膜チューブとともに注射針を患部に穿刺する状態を示す模式図である。図8は、薄膜チューブの縮小変形によって体内部位の穿刺穴が閉塞する状態を示す模式図である。図9は、薄膜チューブがカプセル型筐体の内部に収納される状態を示す模式図である。なお、この実施の形態2にかかるカプセル型医療装置21は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の場合と同様に患部15に到達して注射針23と患部15との位置を合わせる。
このように被検体内部の患部15に到達したカプセル型医療装置21において、制御部29は、上述した外部装置からの制御信号に基づいて、まず、カプセル型筐体2から薄膜チューブ24とともに注射針23を突き出すように駆動部6および駆動部26を制御する。この場合、駆動部6は、上述した実施の形態1の場合と同様に、カプセル型筐体2の開口部2cから注射針23を突き出して、患部15に注射針23を穿刺する。これと同時に、駆動部26は、この注射針23の突出に合わせて薄膜チューブ24を開口部2cから突出させる。かかる薄膜チューブ24は、この注射針23に外嵌した状態を維持しつつ、この注射針23とともに患部15の穿刺穴に入り込む(状態B3)。
つぎに、制御部29は、薄膜チューブ24とともに注射針23を患部15に穿刺し終えたタイミングに駆動弁9を制御し、この駆動弁9の制御を通して吐出バルーン8による薬液7の吐出動作を開始する。この場合、吐出バルーン8は、上述した実施の形態1の場合と同様に、この穿刺状態の注射針23を介して患部15の内部に薬液7を注入する。かかる薬液7は、図7に示すように、患部15の内部を伸展しつつ患部15の内部に注入される(状態B4)。
かかる制御部29は、この患部15の穿刺穴に注射針23と薄膜チューブ24とを入れた状態を維持しつつ、この注射針23を介して患部15に薬液7を注入し始めてから所定の時間が経過したタイミングに、注射針23と吐出バルーン8との連通状態を遮断するように駆動弁9を制御する。この場合、駆動弁9は、上述した実施の形態1の場合と同様に、閉駆動を行って注射針23と吐出バルーン8との連通状態を遮断する。吐出バルーン8は、患部15の内部に必要量の薬液7を注入した後に注入動作を終了する。
このように吐出バルーン8が薬液7の注入動作を終了した状態において、制御部29は、患部15から注射針23を抜き取るように駆動部6を制御するとともに、この患部15の穿刺穴16に薄膜チューブ24を留めるように駆動部26を制御する。この場合、注射針23は、駆動部6の作用によって、薄膜チューブ24の内部を摺動しつつ、この穿刺穴16から徐々に抜け出る。一方、薄膜チューブ24は、駆動部26の作用によって、かかる注射針24の抜き取りを阻害せずに穿刺穴16に留まる(図8参照)。
ここで、かかる患部15の穿刺穴16に留まった状態の薄膜チューブ24は、注射針23が穿刺穴16から完全に抜け出るまでの期間、この注射針23の抜け出しに伴って内部の中空部分を徐々に狭め、ついには患部15の生体組織に囲まれた薄膜チューブ24の一部分(すなわち薄膜チューブ24の一部分であって穿刺穴16の内部に入り込んだ部分)が中空状態になる。かかる中空状態である薄膜チューブ24の一部分は、この患部15の収縮力によって容易に圧潰変形する(状態B5)。この結果、注射針23による患部15の穿刺穴16は、その開口径を最小化した状態になり、内部の薬液7を外部に漏出させない状態、すなわち閉塞状態になる。
その後、制御部29は、上述したように患部15から注射針23を抜き取るように駆動部6を制御し始めてから所定の時間が経過後に、この患部15の穿刺穴16から薄膜チューブ24を抜き取るように駆動部26を制御する。すなわち、制御部29は、かかる薄膜チューブ24の一部分が患部15の収縮力によって十分に圧潰変形したタイミング(患部15の穿刺穴16が閉塞状態になったタイミング)に、カプセル型筐体2の内部に薄膜チューブ24を収納するように駆動部26を制御する。この場合、駆動部26は、患部15の穿刺穴16から薄膜チューブ24を抜き取り、カプセル型筐体2の内部に薄膜チューブ24を収納する(状態B6)。
ここで、薄膜チューブ24を抜き取られた患部15の穿刺穴(穿刺跡)16は、上述したように閉塞状態である。このため、患部15は、上述したように注射針23および薄膜チューブ24が抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
以上、説明したように、本発明の実施の形態2では、硬質の注射針に摺動可能に薄膜チューブを外嵌し、この薄膜チューブとともに注射針を体内部位に穿刺し、この体内部位の内部に薬液を注入した後、この体内部位の穿刺穴に薄膜チューブを留めた状態を維持しつつ体内部位から注射針を抜き取り、この穿刺穴に留めた薄膜チューブを体内部位の収縮力によって容易に縮小変形させて、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にするようにし、その他を実施の形態1と同様に構成した。このため、上述した実施の形態1と同様の作用効果を享受するとともに、注射針を加熱処理によって縮小変形する必要がなく、これによって、省電力化を促進できるカプセル型医療装置を実現することができる。
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、体内部位に穿刺した状態の注射針3を加熱処理によって縮小変形させて、この注射針3による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしていたが、この実施の形態3では、体内部位から注射針を抜き取る際の注射針の移動速度を体内部位の収縮速度に比して低速に制御し、これによって、この注射針による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしている。
図10は、本発明の実施の形態3にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図10に示すように、この実施の形態3にかかるカプセル型医療装置31は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の注射針3に代えて注射針33を備え、支持部5に代えて支持部35を備え、駆動部6に代えて駆動部36を備え、制御部13に代えて制御部39を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針33は、金属等によって形成される硬質の中空針であり、穿刺した体内部位の収縮力によって縮小変形するものではない。また、注射針33の後端部にはチューブ10bが取り付けられ、注射針33は、このチューブ10bを介して駆動弁9と連通する。この注射針33の後端部近傍には支持部35が取り付けられる。なお、注射針33は、上述した実施の形態1における注射針3と同様の中空針構造を有する。
支持部35は、カプセル型筐体2の開口部2cを通して注射針33が突没可能な態様で注射針33を支持する。具体的には、支持部35は、カプセル型筐体2の径方向に対して注射針33の長手方向が斜めになる態様であり且つ注射針33の先端開口部が穿刺時に体内部位側を向く態様で注射針33を支持する。なお、カプセル型筐体2の径方向は、カプセル型筐体2の長手方向の中心軸CLに対して垂直な方向である。また、かかるカプセル型筐体2の径方向に対して注射針33の長手方向が斜めになる態様は、注射針33の長手方向がカプセル型筐体2の長手方向および径方向に対して鋭角(すなわち90度よりも小さい角度)をなす態様である。
駆動部36は、カプセル型筐体2から注射針33を突没させて、被検体の体内部位に注射針33を穿刺し、この穿刺した注射針33を体内部位から抜き取ってカプセル型筐体2の内部に収納する針駆動手段として機能する。具体的には、駆動部36は、リニアアクチュエータ等を用いて実現され、注射針33の支持部35と接続される。駆動部36は、支持部35を介して注射針33を所定の斜め方向(図10に示す太線矢印方向)に往復動作させる。かかる駆動部36は、開口部2cからカプセル型筐体2の外部に注射針33を突き出し、所定の移動速度で被検体の体内部位に注射針33を穿刺する。その後、駆動部36は、制御部39の制御に基づく動作タイミングに、この体内部位の収縮速度に比して低速の移動速度で体内部位から注射針33を抜き取り、カプセル型筐体2内部に注射針33を収納する。
制御部39は、駆動部36の動作速度を制御して、体内部位に注射針33を穿刺する際の注射針33の移動速度(穿刺速度)と体内部位から注射針33を抜き取る際の注射針33の移動速度(抜取速度)とを制御する。具体的には、制御部39は、カプセル型筐体2から突き出した注射針33を所定の穿刺速度で体内部位に穿刺するように駆動部36を制御する。また、制御部39は、この体内部位の収縮速度に比して低速の抜取速度で体内部位から注射針33を抜き取るように駆動部36を制御する。ここで、かかる制御部39によって制御される注射針33の抜取速度は、注射針33を介して薬液7を注入された体内部位の収縮力に比して低速であれば、注射針33の穿刺速度に比して高速であってもよいし、低速であってもよいし、注射針33の穿刺速度と同じであってもよい。なお、制御部39は、かかる駆動部36の動作速度の制御(すなわち注射針33の穿刺速度および抜取速度の制御)以外、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の制御部13と同様の機能を有する。
つぎに、体内部位に向けて注射針33を突き出してから、注射完了後の体内部位から注射針33を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に注射針33を収納するまでのカプセル型医療装置31の一連の動作を説明する。図11は、本発明の実施の形態3にかかるカプセル型医療装置が体内部位に注射する際の一連の処理手順を例示するフローチャートである。なお、この実施の形態3にかかるカプセル型医療装置31は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の場合と同様に、被検体内部における患部等の所望の体内部位に到達して注射針33と所望の体内部位との位置を合わせる。
被検体内部における患部等の所望の体内部位に到達したカプセル型医療装置31において、制御部39は、図11に示すように、上述した外部装置からの制御信号に基づいて、まず、所定の穿刺速度でカプセル型筐体2から注射針33を突き出すように駆動部36を制御する(ステップS101)。この場合、駆動部36は、制御部39の制御に基づいてカプセル型筐体2から注射針33を突出させ、制御部39によって制御される穿刺速度で体内部位に注射針33を穿刺する。かかる注射針33は、体内部位側に先端開口部を向けた態様で体内部位に突き刺さる。
つぎに、制御部39は、この体内部位に注射針33を穿刺した状態を維持しつつ、駆動弁9に開駆動を行わせる(ステップS102)。この場合、駆動弁9は、連通管10aおよびチューブ10bを介して吐出バルーン8と注射針33とを連通状態にする。吐出バルーン8は、この注射針33を介して体内部位に薬液7を注入する。かかる薬液7は、上述した実施の形態1の場合と同様に、この体内部位の内部を伸展しつつ、この体内部位の内部に注入される。
その後、制御部39は、この体内部位に注射針33を穿刺した状態を維持しつつ、この注射針33を介して体内部位に薬液7を注入し始めてから(すなわち駆動弁9に開駆動を行わせてから)所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS103)。制御部39は、薬液7を注入し始めてから所定の時間が未だ経過していないと判断した場合(ステップS103,No)、このステップS103を繰り返す。この場合、吐出バルーン8は、注射針33を介して体内部位の内部に薬液7を注入し続ける。
一方、制御部39は、薬液7を注入し始めてから所定の時間が経過したと判断した場合(ステップS103,Yes)、駆動弁9に閉駆動を行わせる(ステップS104)。この場合、駆動弁9は、上述した吐出バルーン8と注射針33との連通状態を遮断する。吐出バルーン8は、このように駆動弁9によって注射針33との連通状態を遮断されるまでに、この体内部位の内部に必要量の薬液7を注入し終える。
このように吐出バルーン8が薬液7の注入動作を終了した状態において、制御部39は、この注射済みの体内部位から注射針33を低速抜去するように駆動部36を制御する(ステップS105)。この場合、制御部39は、この注射済みの体内部位の収縮速度に比して低速の抜取速度で注射針33を抜き取るように駆動部36を制御する。駆動部36は、かかる低速の抜取速度で注射針33を移動させることによって、この注射済みの体内部位から注射針33を完全に抜き取るまでの期間、この注射針33による体内部位の穿刺穴を体内部位自身(すなわち生体組織)の収縮力によって閉塞状態にするために必要な時間を確保する。かかる駆動部36は、この注射済みの体内部位の穿刺穴を生体組織の収縮力によって徐々に閉塞状態にしつつ、この穿刺穴から注射針33を抜き取る。なお、このように駆動部36を制御する制御部39は、注射針33による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする閉塞手段として機能する。
その後、制御部39は、この注射済みの体内部位から抜き取った注射針33をカプセル型筐体2の内部に収納するように駆動部36を制御し(ステップS106)、この一連の動作(一連の処理手順)を終了する。この場合、駆動部36は、制御部39によって制御された移動速度でカプセル型筐体2の内部に注射針33を収納する。なお、かかる注射針33の収納時の移動速度は、上述した穿刺速度または抜取速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
つぎに、被検体内部における所望の体内部位として被検体内部の患部を例示して、カプセル型医療装置31が上述したステップS104の動作を行って患部の穿刺穴に及ぼす作用について具体的に説明する。図12は、低速の抜取速度で患部から注射針を抜き取りつつ穿刺穴を閉塞する状態を示す模式図である。
図12に示すように、患部15の内部に薬液7を注入後の注射針33は、上述した駆動部36の作用によって、この患部15の収縮時間に比して低速の抜取速度で患部15の外部に向けて徐々に移動する。この場合、注射針33は、患部15の穿刺穴16を患部15自身(すなわち生体組織)の収縮力によって閉塞状態にするために必要な時間を費やして、この穿刺穴16から完全に抜け出る。患部15は、かかる注射針33の移動に伴って穿刺穴16の開口径を徐々に縮小し、穿刺穴16から注射針33が完全に抜け出た際に穿刺穴16を閉塞状態にする。
ここで、このように低速の抜取速度で注射針33を抜き取られた患部15は、上述したように穿刺穴16を閉塞状態にしているため、穿刺穴16から注射針33を完全に抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
以上、説明したように、本発明の実施の形態3では、制御部が、体内部位の収縮速度に比して低速の抜取速度で穿刺穴から注射針を抜き取るように駆動部を制御して、この穿刺穴を閉塞状態にするようにし、その他を実施の形態1と略同様に構成した。このため、注射済みの体内部位から注射針を完全に抜き取るまでの期間に、この注射針による体内部位の穿刺穴を生体組織の収縮力によって閉塞状態にするために必要な時間を確保でき、これによって、上述した実施の形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、部品点数を低減して、組立し易さの向上および組立コストの低減を促進できるカプセル型医療装置を実現することができる。
また、カプセル型筐体の径方向に対して注射針の長手方向が斜めになる態様でカプセル型筐体から注射針を突出させているので、被検体の体内部位の表面(臓器内壁面)に対して鋭角をなした態様で体内部位に注射針を穿刺することができる。これによって、注射針による体内部位の穿刺穴の長さを、体内部位に対して垂直に注射針を穿刺した場合に比して長くすることができ、この結果、穿刺穴からの薬液漏出の防止効果を一層高めることができる。
さらに、穿刺対象である体内部位側に注射針の先端開口部を向けた態様で体内部位に注射針を穿刺するので、体内部位に穿刺した注射針の先端開口部(針穴)を目的の生体組織層側に容易に向けることができ、これによって、この目的の生体組織層に薬液を容易に注入することができる。
(実施の形態3の変形例1)
つぎに、本発明の実施の形態3の変形例1について説明する。上述した実施の形態3では、穿刺対象の体内部位側に注射針33の先端開口部を向けた態様でカプセル型筐体2から注射針33を突没させていたが、この実施の形態3の変形例1では、体内部位に注射針33を穿刺する場合、この注射針33の先端開口部を体内部位側に向け、体内部位から注射針33を抜き取る場合、この注射針33の先端開口部の方向を反転させている。
図13は、本発明の実施の形態3の変形例1にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図13に示すように、この実施の形態3の変形例1にかかるカプセル型医療装置41は、上述した実施の形態3にかかるカプセル型医療装置31の制御部39に代えて制御部49を備え、注射針33をその長手軸を中心に回転する回転駆動部46をさらに備える。その他の構成は実施の形態3と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
回転駆動部46は、回転アクチュエータ等を用いて実現され、例えば注射針33の後端部近傍と接続される。回転駆動部46は、制御部49の制御に基づいて、注射針33の長手軸回りに注射針33を回転する。かかる回転駆動部46は、体内部位に注射針33を穿刺する際の注射針33の先端開口部の向きと、穿刺状態の注射針33を体内部位から抜き取る際の注射針33の先端開口部の向きとを決定する。
制御部49は、回転駆動部46の駆動を制御して、体内部位に注射針33を穿刺する際の注射針33の先端開口部の向きと、穿刺状態の注射針33を体内部位から抜き取る際の注射針33の先端開口部の向きとを制御する。具体的には、制御部49は、体内部位に注射針33を穿刺する際、この注射針33の先端開口部が体内部位側を向くように回転駆動部46を制御し、体内部位に穿刺した状態の注射針33をこの体内部位から抜き取る際、この注射針33の先端開口部の方向が反転する態様に注射針33を回転するように回転駆動部46を制御する。ここで、この注射針33の先端開口部の方向が反転する態様とは、体内部位に注射針33を穿刺する際の注射針33の先端開口部の方向と反対の方向を向く態様であり、具体的には、注射針33の先端開口部が体内部位の内部側(注入薬液側)からカプセル型筐体2側(穿刺部位の外部側)の方向を向く態様である。なお、制御部49は、かかる回転駆動部46の制御以外、上述した実施の形態3にかかるカプセル型医療装置31の制御部39と同様の機能を有する。
つぎに、体内部位に向けて注射針33を突き出してから、注射完了後の体内部位から注射針33を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に注射針33を収納するまでのカプセル型医療装置41の一連の動作を説明する。図14は、本発明の実施の形態3の変形例1にかかるカプセル型医療装置が体内部位に注射する際の一連の処理手順を例示するフローチャートである。なお、この実施の形態3の変形例1にかかるカプセル型医療装置41は、上述した実施の形態3にかかるカプセル型医療装置31の場合と同様に、被検体内部における患部等の所望の体内部位に到達して注射針33と所望の体内部位との位置を合わせる。
被検体内部における患部等の所望の体内部位に到達したカプセル型医療装置41において、制御部49は、図14に示すように、上述した外部装置からの制御信号に基づいて、まず、注射針33の先端開口部が体内部位側を向くように回転駆動部46を制御しつつ、所定の穿刺速度でカプセル型筐体2から注射針33を突き出すように駆動部36を制御する(ステップS201)。このステップS201において、回転駆動部46は、注射針33の先端開口部を穿刺対象の体内部位側に向ける。ここで、制御部49は、回転駆動部46の回転状態をもとに注射針33の先端開口部の方向を把握し、注射針33の先端開口部が穿刺対象の体内部位側を向いていない場合、この体内部位側に注射針33の先端開口部を向ける態様に注射針33を回転するように回転駆動部46を制御する。一方、制御部49は、注射針33の先端開口部が穿刺対象の体内部位側を向いている場合、この注射針33の状態を維持するように回転駆動部46を制御する。
なお、このステップS201において、駆動部36は、上述した実施の形態3の場合と同様に、制御部49の制御に基づいてカプセル型筐体2から注射針33を突出させ、制御部49によって制御される穿刺速度で体内部位に注射針33を穿刺する。かかる注射針33は、体内部位側に先端開口部を向けた態様で体内部位に突き刺さる。
つぎに、制御部49は、図11に示したステップS102と同様に、この体内部位に注射針33を穿刺した状態を維持しつつ、駆動弁9に開駆動を行わせ(ステップS202)、その後、図11に示したステップS103と同様に、この注射針33の穿刺状態を維持しつつ、駆動弁9に開駆動を行わせてから所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS203)。制御部49は、ステップS203において所定の時間が経過していない場合(ステップS203,No)、このステップS203を繰り返す。一方、制御部49は、ステップS203において所定の時間が経過した場合(ステップS203,Yes)、図11に示したステップS104と同様に、駆動弁9に閉駆動を行わせる(ステップS204)。
このように駆動部9に閉駆動を行わせた状態(すなわち吐出バルーン8が薬液7の注入動作を終了した状態)において、制御部49は、注射針33の開口方向を反転するように回転駆動部46を制御する(ステップS205)。このステップS205において、制御部49は、体内部位に注射針33を穿刺する際の状態から注射針33の先端開口部の方向が反転するように回転駆動部46を制御する。回転駆動部46は、体内部位に穿刺状態の注射針33をその長手軸回りに回転して、この穿刺状態の注射針33の先端開口部を、この体内部位の内部側(注入薬液側)からカプセル型筐体2側(穿刺部位の外部側)の方向に向ける。
つぎに、制御部49は、かかる注射針33の先端開口部の方向を回転駆動部46に維持させつつ、図11に示したステップS105と同様に、この注射済みの体内部位から注射針33を低速抜去するように駆動部36を制御し(ステップS206)、これによって、この注射針33による体内部位の穿刺穴を体内部位自身(すなわち生体組織)の収縮力によって閉塞状態にするために必要な時間を確保する。
その後、制御部49は、図11に示したステップS106と同様に、この注射針33をカプセル型筐体2の内部に収納するように駆動部36を制御し(ステップS207)、この一連の動作(一連の処理手順)を終了する。
なお、上述したステップS205,S206において、制御部49は、穿刺状態の注射針33の先端開口部の方向を反転させつつ、上述した低速の抜取速度で体内部位から注射針33を抜き取るように、回転駆動部46および駆動部36を制御してもよい。すなわち、回転駆動部46は、体内部位の穿刺穴から注射針33の先端開口部を露出する際に注射針33の先端開口部をカプセル型筐体2側に向けていれば、この穿刺穴内部において注射針33の先端開口部を如何なる方向に向けていてもよい。
つぎに、被検体内部における所望の体内部位として被検体内部の患部を例示して、カプセル型医療装置41が上述したステップS205,S206の動作を行って患部の穿刺穴に及ぼす作用について具体的に説明する。図15は、カプセル型筐体側に先端開口部を向けた状態の注射針を低速の抜取速度で患部から抜き取りつつ穿刺穴を閉塞する状態を示す模式図である。なお、図15に示す注射針33の穿刺時の状態は、上述した実施の形態3の場合と同様である。
図15に示すように、患部15の内部に薬液7を注入後の注射針33は、上述した回転駆動部46の作用によって、先端開口部の方向を穿刺時の状態から反転させて患部15の外部側(上述したカプセル型筐体2側)に先端開口部を向ける。かかる状態の注射針33は、上述した駆動部36の作用によって、この患部15の収縮時間に比して低速の抜取速度で患部15の外部に向けて徐々に移動する。
ここで、注射針33は、上述した実施の形態3の場合と同様に、被検体の体内部位の表面(臓器内壁面)に対して鋭角をなした態様(すなわち斜めの態様)で体内部位に穿刺する。かかる注射針33は、患部15の穿刺穴16から抜け出る際、図15に示す抜去時の状態のように患部15の外部側に先端開口部を向けることによって、この穿刺穴16から先端開口部をより早期に露出する。すなわち、上述した駆動部36は、このように患部15の外部側に先端開口部を向けた状態の注射針33を穿刺穴16から抜き取ることによって、この穿刺穴16の内部に残る注射針33の残留部分の外径寸法をより早期に縮小することができる。この結果、患部15は、注射針33の先端開口部が患部15の内部側を向く場合に比して早期且つ容易に、患部15自身の収縮力によって穿刺穴16の開口径を縮小して穿刺穴16を閉塞状態にする。
このように穿刺穴16を閉塞状態にした患部15は、穿刺穴16から注射針33を完全に抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
以上、説明したように、本発明の実施の形態3の変形例1では、回転駆動部によって注射針をその長手軸回りに回転することによって、体内部位から注射針を抜き取る際の注射針の先端開口部を穿刺部位の外部側(カプセル型筐体側)に向けるようにし、その他を実施の形態3と同様に構成した。このため、上述した実施の形態3の場合と同様の作用効果を享受するとともに、体内部位から注射針を抜き取る際、この体内部位の穿刺穴の内部に残る注射針の残留部分の外径寸法をより早期に縮小でき、これによって、この体内部位の穿刺穴をより早期且つ容易に閉塞状態にすることが可能なカプセル型医療装置を実現できる。
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。上述した実施の形態1では、体内部位に穿刺した状態の注射針3を加熱処理によって縮小変形させて、この注射針3による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしていたが、この実施の形態4では、注射針を穿刺した体内部位の生体組織を焼灼することによって、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしている。
図16は、本発明の実施の形態4にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図16に示すように、この実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の注射針3に代えて注射針53を備え、加熱部4に代えて焼灼部54を備え、制御部13に代えて制御部59を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針53は、金属等によって形成される硬質の中空針であり、穿刺した体内部位の収縮力によって縮小変形するものではない。また、注射針53の後端部にはチューブ10bが取り付けられ、注射針53は、このチューブ10bを介して駆動弁9と連通する。この注射針53の後端部近傍には支持部5が取り付けられ、注射針53は、上述した実施の形態1における注射針3と同様に駆動部6の作用によってカプセル型筐体2から突没する。なお、注射針53は、上述した実施の形態1における注射針3と同様の中空針構造を有する。
焼灼部54は、注射針53による体内部位の穿刺穴を焼灼処理によって閉塞状態にする閉塞手段として機能する。具体的には、焼灼部54は、注射針53の突没口である開口部2cの近傍に、この開口部2cを囲む態様でカプセル型筐体2に配置される。焼灼部54は、生体組織を焼灼する焼灼機能部として抵抗発熱素子等を備え、カプセル型筐体2の外表面に露出する。かかる焼灼部54は、注射針53を穿刺した体内部位と接触し、制御部59によって供給された電力をもとに、この体内部位における注射針53の周囲の生体組織を焼灼処理する。これによって、焼灼部54は、この注射針53による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする。なお、この実施の形態4において、体内部位の穿刺穴の閉塞状態とは、この穿刺穴周囲の生体組織が焼灼部54の焼灼処理によって凝固しつつ穿刺穴を閉塞した状態である。
制御部59は、体内部位に穿刺した状態の注射針53周囲の生体組織を焼灼処理して穿刺穴を閉塞状態にするように焼灼部54を制御する。この場合、制御部59は、焼灼部54に電力を供給するタイミングを制御することによって焼灼部54の焼灼処理タイミングを制御する。また、制御部59は、焼灼部54に対する通電量および通電時間を制御することによって、焼灼部54の焼灼温度および焼灼時間を各々制御する。なお、制御部59は、かかる焼灼部54の制御以外、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の制御部13と同様の機能を有する。
つぎに、被検体内部における所望部位の一例である患部に薬液を注射する場合を例示して、本発明の実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51の動作を具体的に説明する。図17は、注射針周囲の生体組織の焼灼処理によって体内部位の穿刺穴が閉塞する状態を示す模式図である。以下では、図17を参照しつつ、注射針53による患部15の穿刺穴16を閉塞状態にする際のカプセル型医療装置51の動作を説明する。なお、この実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51の動作は、体内部位の穿刺穴を閉塞する際の動作以外、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1と同様である。
患部15に穿刺した注射針53を介して患部15の内部に薬液7を注入し終えたカプセル型医療装置51において、制御部59は、図17に示すように、患部15に注射針53を穿刺した状態を維持するように駆動部6を制御しつつ、この注射針53の周囲の生体組織17を所定の時間焼灼処理するように焼灼部54を制御する。具体的には、制御部59は、上述した駆動弁9を閉駆動させたタイミングに、焼灼部54に電力を供給し、その後、所定の時間、焼灼部54に電力を供給し続ける。
焼灼部54は、注射針53を穿刺した患部15と接触した状態であり、かかる制御部59の制御に基づいて、この穿刺状態である注射針53の周囲の生体組織17を所定の時間焼灼処理する。かかる焼灼部54によって所定の時間焼灼処理された生体組織17は、凝固しつつ、この注射針53による患部15の穿刺穴16を閉塞状態にする。かかる凝固状態の生体組織17は、この患部15の内部(薬液7側)と穿刺穴16の外部(カプセル型医療装置51側)とを完全に遮断する。
その後、制御部59は、焼灼部54の焼灼処理を開始してから所定の時間が経過したタイミングに、焼灼部54への電力供給を停止して焼灼部54の焼灼処理を終了させる。続いて、制御部59は、上述した実施の形態1の場合と同様に、この患部15から注射針53を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に注射針53を収納するように駆動部6を制御する。
ここで、注射針53を抜き取られた患部15の穿刺穴(穿刺跡)16は、上述した凝固状態の生体組織17によって閉塞状態である。このため、患部15は、このように注射針53が抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
以上、説明したように、本発明の実施の形態4では、カプセル型筐体の外表面に露出する態様で焼灼部を配置し、この焼灼部が、体内部位に穿刺した状態である注射針の周囲の生体組織を焼灼処理することによって、この注射針による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にするようにし、その他を実施の形態1と同様に構成した。このため、焼灼部の焼灼処理によって凝固した生体組織によって体内部位の穿刺穴を完全に閉塞することができ、上述した実施の形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、より確実に体内部位の穿刺穴からの注入液体の漏出を防止可能なカプセル型医療装置を実現することができる。
(実施の形態4の変形例1)
つぎに、本発明の実施の形態4の変形例1について説明する。上述した実施の形態4では、カプセル型筐体2の外壁部(具体的には注射針53の突没口である開口部2cの近傍)に配置した焼灼部54によって、穿刺状態である注射針53の周囲の生体組織を焼灼処理して穿刺穴16を閉塞状態にしていたが、この実施の形態4の変形例1では、焼灼部として機能を兼ね備えた注射針を備え、この注射針を穿刺した体内部位の穿刺穴を、この穿刺状態の注射針の焼灼処理によって閉塞状態にしている。
図18は、本発明の実施の形態4の変形例1にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図18に示すように、この実施の形態4の変形例1にかかるカプセル型医療装置61は、上述した実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51の注射針53に代えて、生体組織の焼灼処理機能を兼ね備えた注射針63を備え、上述した焼灼部54を備えていない。なお、かかるカプセル型医療装置61において、制御部59は、上述した焼灼部54の代わりに注射針63に電力を供給して、この注射針63による生体組織の焼灼処理を制御する。その他の構成は実施の形態4と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針63は、体内部位に薬液等の液体を注射するための中空針としての機能と、体内部位の穿刺穴を焼灼処理によって閉塞状態にする閉塞手段としての機能とを兼ね備える。具体的には、注射針63は、電力供給によって発熱する抵抗発熱部材によって形成される硬質の中空針であり、穿刺した体内部位の収縮力によって縮小変形するものではない。また、注射針63の後端部にはチューブ10bが取り付けられ、注射針63は、このチューブ10bを介して駆動弁9と連通する。この注射針63の後端部近傍には支持部5が取り付けられ、注射針63は、上述した実施の形態4における注射針53と同様に駆動部6の作用によってカプセル型筐体2から突没する。なお、注射針63は、上述した実施の形態4における注射針53と同様の中空針構造を有する。また、チューブ10bは、耐熱素材からなり、注射針63の発熱の影響を受けない。
なお、この実施の形態4の変形例1にかかるカプセル型医療装置61において、制御部59は、体内部位に穿刺した状態の注射針63周囲の生体組織を焼灼処理して穿刺穴を閉塞状態にするように注射針63を制御する。この場合、制御部59は、上述した実施の形態4における焼灼部54の制御と同様に、注射針63に対する電力の供給タイミングを制御することによって注射針63の焼灼処理タイミングを制御する。また、制御部59は、注射針63に対する通電量および通電時間を制御することによって、注射針63による生体組織の焼灼温度および焼灼時間を各々制御する。
ここで、かかる焼灼処理機能を兼ね備えた注射針63は、上述した患部15等の所望の体内部位に穿刺した状態において、制御部59から所定時間供給される電力をもとに、この体内部位の穿刺穴周囲の生体組織(すなわち穿刺状態の注射針63周囲の生体組織)を所定時間焼灼処理する。かかる注射針63によって焼灼処理された穿刺穴周囲の生体組織は、上述した実施の形態4の場合と同様に、凝固しつつ、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする。この場合、かかる凝固状態の生体組織は、この体内部位の内部(注入薬液側)と穿刺穴の外部(カプセル型医療装置61側)とを完全に遮断する。このように穿刺穴を閉塞状態にした体内部位は、穿刺穴から注射針63が抜き取られた後であっても、この穿刺穴から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。
以上、説明したように、本発明の実施の形態4の変形例1では、体内部位に薬液等の液体を注射する中空針としての機能と、穿刺穴周囲の生体組織を焼灼処理する焼灼部としての機能とを兼ね備えた注射針を備え、この注射針を穿刺した状態の体内部位の穿刺穴周囲の生体組織をこの注射針の焼灼処理によって凝固させて、この穿刺穴を閉塞状態にするようにし、その他を実施の形態4と同様に構成した。このため、上述した実施の形態4の場合と同様の作用効果を享受するとともに、部品点数を低減して、組立し易さの向上および組立コストの低減を促進できるカプセル型医療装置を実現することができる。
(実施の形態4の変形例2)
つぎに、本発明の実施の形態4の変形例2について説明する。上述した実施の形態4では、カプセル型筐体2の外壁部(具体的には注射針53の突没口である開口部2cの近傍)に配置した焼灼部54によって、穿刺状態である注射針53の周囲の生体組織を焼灼処理して穿刺穴を閉塞状態にしていたが、この実施の形態4の変形例2では、カプセル型筐体2から突没可能な焼灼部を備え、カプセル型筐体2から突出させた焼灼部を体内部位に接触させ、この焼灼部によって注射針周辺の生体組織を焼灼処理して、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしている。
図19は、本発明の実施の形態4の変形例2にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図19に示すように、この実施の形態4の変形例2にかかるカプセル型医療装置71は、上述した実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51の焼灼部54に代えて突没可能な焼灼部74を備え、制御部59に代えて制御部79を備え、さらに、この焼灼部74を支持する支持部75と、カプセル型筐体2から焼灼部74を突没させる駆動部76とを備える。その他の構成は実施の形態4と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
焼灼部74は、注射針53による体内部位の穿刺穴を焼灼処理によって閉塞状態にする閉塞手段として機能する。具体的には、焼灼部74は、電力供給によって発熱する抵抗発熱部材を用いて実現され、内部に注射針53を挿通可能な筒形状に形成される。焼灼部74は、支持部75によって支持され、この支持部75と接続された駆動部76の作用によって、カプセル型筐体2の開口部2cから突没する。かかる焼灼部74は、カプセル型筐体2から突出して穿刺対象の体内部位と接触し、この体内部位の生体組織、詳細には、この体内部位に穿刺した状態の注射針53の周囲の生体組織(すなわち穿刺穴周囲の生体組織)を、制御部79からの供給電力をもとに焼灼処理する。これによって、焼灼部74は、上述した実施の形態4の場合と同様に、この注射針53による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする。
かかる焼灼部74の後端部近傍には支持部75が固定される。支持部75は、筒形状の焼灼部74の内部に注射針53を挿通した態様であり且つカプセル型筐体2の開口部2cを通して焼灼部74が突没可能な態様で焼灼部74を支持する。かかる支持部75は、駆動部76と接続される。
駆動部76は、注射針53を突没させる駆動部6とは独立して動作可能なものであり、カプセル型筐体2の開口部2cを介して焼灼部74を突没させる焼灼部駆動手段として機能する。具体的には、駆動部76は、リニアアクチュエータ等を用いて実現される。駆動部76は、上述した支持部75を介して焼灼部74を注射針53の突没方向(図19に示す太線矢印方向)と同じ方向に往復動作させる。かかる駆動部76は、制御部79の制御に基づいて、注射針53とともに焼灼部74をカプセル型筐体2から突出させて焼灼部74を穿刺対象の体内部位に接触させ、この体内部位に穿刺した状態の注射針53の周囲の生体組織を焼灼部74が焼灼処理する期間、この体内部位に焼灼部74を接触させた状態を維持する。この場合、駆動部76は、注射針53を穿刺前に穿刺対象の体内部位に焼灼部74を接触させてもよいし、注射針53を穿刺した状態の体内部位に焼灼部74を接触させてもよい。また、かかる駆動部76は、制御部79の制御に基づいて、この体内部位の穿刺穴周囲の生体組織を焼灼部74が焼灼処理し終えた後に、カプセル型筐体2の内部に焼灼部74を収納する。
制御部79は、体内部位に穿刺した状態の注射針53周囲の生体組織を焼灼処理して穿刺穴を閉塞状態にするように焼灼部74を制御する。この場合、制御部79は、上述した実施の形態4における焼灼部54の制御と同様に、焼灼部74に対する電力の供給タイミングを制御することによって焼灼部74の焼灼処理タイミングを制御し、焼灼部74に対する通電量および通電時間を制御することによって焼灼部74の焼灼温度および焼灼時間を各々制御する。また、制御部79は、注射針53の突出動作と焼灼部74の突出動作とを行うように駆動部6および駆動部76を制御し、体内部位の穿刺穴周囲の生体組織を焼灼部74によって焼灼処理完了後に焼灼部74をカプセル型筐体2の内部に収納するように駆動部76を制御する。なお、制御部79は、かかる焼灼部74および駆動部76の制御以外、上述した実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51の制御部59と同様の機能を有する。
つぎに、被検体内部における所望部位の一例である患部に薬液を注射する場合を例示して、本発明の実施の形態4の変形例2にかかるカプセル型医療装置71の動作を具体的に説明する。図20は、注射針周囲の生体組織の焼灼処理によって体内部位の穿刺穴が閉塞する状態を示す模式図である。以下では、図20を参照しつつ、注射針53による患部15の穿刺穴16を閉塞状態にする際のカプセル型医療装置71の動作と、カプセル型筐体2の内部に焼灼部74を収納する際のカプセル型医療装置71の動作とを説明する。なお、かかるカプセル型医療装置71の動作は、焼灼部74に関する動作(穿刺穴の閉塞動作、焼灼部74の収納動作等)以外、上述した実施の形態4にかかるカプセル型医療装置51と同様である。
なお、被検体内部の患部15に到達したカプセル型医療装置71において、制御部79は、上述した外部装置からの制御信号に基づいて、まず、カプセル型筐体2から焼灼部74とともに注射針53を突き出すように駆動部6および駆動部76を制御する。この場合、駆動部76は、注射針53の突出動作を阻害しないように焼灼部74をカプセル型筐体2から突出させて、穿刺対象の患部15に焼灼部74を接触させる。駆動部6は、実施の形態4の場合と同様にカプセル型筐体2から注射針53を突き出して、患部15に注射針53を穿刺する。注射針53は、この焼灼部74の内部を通ってカプセル型筐体2から突出し、患部15に突き刺さる。制御部79は、実施の形態4の場合と同様に、この穿刺状態の注射針53を介して必要量の薬液7を患部15の内部に注入するように駆動弁9を制御する。この結果、カプセル型医療装置71は、この患部15の内部に必要量の薬液7を注入し終える。
このように患部15の内部に必要量の薬液7を注入し終えたカプセル型医療装置71において、制御部79は、図20に示すように、患部15に注射針53を穿刺した状態を維持するように駆動部6を制御しつつ、この注射針53の周囲の生体組織17を所定の時間焼灼処理するように焼灼部74を制御する。具体的には、制御部79は、上述した駆動弁9を閉駆動させたタイミングに、焼灼部74に電力を供給し、その後、所定の時間、焼灼部74に電力を供給し続ける。
焼灼部74は、注射針53を穿刺した患部15と接触した状態であり、かかる制御部79の制御に基づいて、この穿刺状態である注射針53の周囲の生体組織17を所定の時間焼灼処理する。かかる焼灼部74によって所定の時間焼灼処理された生体組織17は、実施の形態4の場合と同様に凝固しつつ、この注射針53による患部15の穿刺穴16を閉塞状態にする。かかる凝固状態の生体組織17は、この患部15の内部(薬液7側)と穿刺穴16の外部(カプセル型医療装置71側)とを完全に遮断する。
その後、制御部79は、焼灼部74の焼灼処理を開始してから所定の時間が経過したタイミングに、焼灼部74への電力供給を停止して焼灼部74の焼灼処理を終了させる。続いて、制御部79は、この患部15から注射針53を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に注射針53を収納するように駆動部6を制御する。この場合、注射針53は、焼灼部74の内部を通ってカプセル型筐体2の内部に移動する。また、制御部79は、患部15の焼灼処理(すなわち穿刺穴16の閉塞処理)を完了した焼灼部74をカプセル型筐体2の内部に収納するように駆動部76を制御する。この場合、駆動部76は、注射針53がカプセル型筐体2の内部に収納された後に焼灼部74をカプセル型筐体2の内部に収納してもよいし、注射針53とともに焼灼部74をカプセル型筐体2の内部に収納してもよい。
ここで、注射針53を抜き取られた患部15の穿刺穴(穿刺跡)16は、上述した凝固状態の生体組織17によって閉塞状態である。このため、患部15は、このように注射針53が抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
以上、説明したように、本発明の実施の形態4の変形例2では、駆動部の作用によって突没可能な焼灼部を備え、カプセル型筐体から突出させた焼灼部を穿刺対象の体内部位に接触させ、この焼灼部が、この体内部位に穿刺した状態である注射針の周囲の生体組織(すなわち穿刺穴周囲の生体組織)を焼灼処理することによって、この注射針による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にするようにし、その他を実施の形態4と同様に構成した。このため、上述した実施の形態4の場合と同様の作用効果を享受するとともに、穿刺対象の体内部位に焼灼部を確実に接触させることができ、この結果、より確実に穿刺穴周囲の生体組織を焼灼処理によって凝固することが可能なカプセル型医療装置を実現することができる。
(実施の形態5)
つぎに、本発明の実施の形態5について説明する。上述した実施の形態1では、体内部位に穿刺した状態の注射針3を加熱処理によって縮小変形させて、この注射針3による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしていたが、この実施の形態5では、注射針を穿刺した状態の体内部位の表面を伸展させ、この体内部位の伸展状態を維持しつつ注射針を抜き取ることによって、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にしている。
図21は、本発明の実施の形態5にかかるカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。図21に示すように、この実施の形態5にかかるカプセル型医療装置81は、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の注射針3に代えて注射針83を備え、加熱部4に代えて組織変形機構84を備え、制御部13に代えて制御部89を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
注射針83は、金属等によって形成される硬質の中空針であり、穿刺した体内部位の収縮力によって縮小変形するものではない。また、注射針83の後端部にはチューブ10bが取り付けられ、注射針83は、このチューブ10bを介して駆動弁9と連通する。この注射針83の後端部近傍には支持部5が取り付けられ、注射針83は、上述した実施の形態1における注射針3と同様に駆動部6の作用によってカプセル型筐体2から突没する。なお、注射針83は、上述した実施の形態1における注射針3と同様の中空針構造を有する。
組織変形機構84は、注射針83を穿刺した状態の体内部位の表面組織(生体組織)を変形して注射針83による体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする閉塞手段として機能する。具体的には、組織変形機構84は、注射針83を穿刺した状態の体内部位の表面組織(生体組織)を伸展するための一対の高摩擦回転部84a,84bと、一方の高摩擦回転部84aの回転を他方の高摩擦回転部84bに伝達する回転伝達部84cと、一対の高摩擦回転部84a,84bを回転駆動するための駆動部84dと、駆動部84dの駆動力の回転方向を高摩擦回転部84aの回転方向に変換する回転方向変換部84eとを備える。
高摩擦回転部84a,84bは、体内部位の表面組織(臓器内壁等の生体組織)を擦り動かすに充分な摩擦性を有する高摩擦部材を用いて実現される。高摩擦回転部84a,84bは、ローラー状に形成され、互いに回転軸を平行にし且つ注射針83の突没口である開口部2cを間に挟む態様でカプセル型筐体2に回転自在に配置される。かかる一対の高摩擦回転部84a,84bは、カプセル型筐体2の外壁面から露出し、被検体内部のカプセル型医療装置81が穿刺対象の体内部位(注射針83を穿刺する所望の体内部位)に到達した際、この体内部位の表面組織と接触する。
回転伝達部84cは、無端状の高摩擦部材であり、図21に示すように八の字の態様で高摩擦回転部84a,84bに取り付けられる。かかる回転伝達部84cは、駆動部84dの駆動力による高摩擦回転部84aの回転を他方の高摩擦回転部84bに伝達し、これによって、一対の高摩擦回転部84a,84bを互いに逆回り(図21に示す細線矢印方向)に回転させる。なお、回転伝達部84cは、注射針83の突没動作を阻害しないように、注射針83の移動経路から外れる態様で配置される。
駆動部84dは、上述した高摩擦回転部84a,84bを回転させるためのものであり、回転アクチュエータ等を用いて実現される。駆動部84dは、制御部89の制御に基づいて駆動し、一対の高摩擦回転部84a,84bの回転に必要な駆動力を生成する。かかる駆動部84dの駆動軸には、回転方向変換部84eと接続される。
回転方向変換部84eは、1以上のギアを内蔵するギアボックス等によって実現される。回転方向変換部84eは、駆動部84dの駆動力を高摩擦回転部84aに伝達するための回転部を備え、この回転部と高摩擦回転部84aとを接触させた態様でカプセル型筐体2の内部に配置される。かかる回転方向変換部84eは、駆動部84dの駆動力の回転方向を高摩擦回転部84aの回転方向(図21においては反時計回りの方向)に変換し、この方向変換した駆動力を高摩擦回転部84aに伝達する。すなわち、上述した高摩擦回転部84aは、かかる回転方向変換部84eから伝達された駆動部84dの駆動力によって回転する。
このような構成を有する組織変形機構84は、制御部89の制御に基づいて駆動する駆動部84dの駆動力によって、図21に示すように互いに異なる方向に一対の高摩擦回転部84a,84bを回転させ、かかる高摩擦回転部84a,84bと接触した状態の体内部位(すなわち注射針83を穿刺した状態の体内部位)の表面組織を変形(具体的には伸展)する。これによって、組織変形機構84は、注射針83を抜き取り後の体内部位の穿刺穴の開口径を最小化して、この穿刺穴を閉塞状態にする。
制御部89は、注射針83を穿刺した状態の体内部位の表面組織を伸展させるように組織変形機構84を制御する。この場合、制御部89は、駆動部84dを駆動制御することによって、組織変形機構84による体内部位の表面組織の伸展変形タイミングおよび伸展変形期間等を制御する。なお、制御部89は、かかる組織変形機構84の制御以外、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1の制御部13と同様の機能を有する。
つぎに、被検体内部における所望部位の一例である患部に薬液を注射する場合を例示して、本発明の実施の形態5にかかるカプセル型医療装置81の動作を具体的に説明する。図22は、注射針を穿刺した患部の表面組織を組織変形機構によって伸展させる状態を示す模式図である。図23は、表面組織の伸展によって患部の穿刺穴が閉塞する状態を示す模式図である。以下では、図22,23を参照しつつ、注射針83による患部15の穿刺穴16を閉塞状態にする際のカプセル型医療装置81の動作を説明する。なお、この実施の形態5にかかるカプセル型医療装置81の動作は、体内部位の穿刺穴を閉塞する際の動作以外、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1と同様である。
患部15に穿刺した注射針83を介して患部15の内部に薬液7を注入し終えたカプセル型医療装置81において、制御部89は、図22に示すように、患部15に注射針83を穿刺した状態を維持するように駆動部6を制御しつつ、この注射針83を穿刺した状態の患部15の表面組織を伸展するように組織変形部84を制御する。具体的には、制御部89は、上述した駆動弁9を閉駆動させたタイミングに、駆動部84dの駆動を開始させる。駆動部84dは、かかる制御部89の制御に基づいて高摩擦回転部84a,84bの回転力を生成する。高摩擦回転部84a,84bは、回転方向変換部84eを介して伝達される駆動部84dの駆動力によって、図22に示すように互いに異なる方向に回転しつつ、注射針83による患部15の穿刺穴16を中心に患部15の表面組織(具体的には穿刺穴16の近傍の表面組織)を伸展させる。
つぎに、制御部89は、かかる高摩擦回転部84a,84bによる患部15の表面組織の伸展状態を維持するように駆動部84dを制御しつつ、この患部15から注射針83を抜き取ってカプセル型筐体2の内部に注射針83を収納するように駆動部6を制御する。この場合、駆動部6は、かかる伸展状態の患部15の穿刺穴16から注射針83を抜き取り、この注射針83をカプセル型筐体2の内部に収納する。
ここで、この注射針83を抜き取られた患部15は、上述したように組織変形機構84の高摩擦回転部84a,84bによって穿刺穴16近傍の表面組織を伸展した状態である。このため、かかる伸展状態の患部15は、図23に示すように、注射針83の穿刺による穿刺穴16の開口径を穿刺時に比して小径に縮小変形し、最終的に、この穿刺穴16の開口径を最小化して穿刺穴16を閉塞した状態(図23に示す抜去後の状態)にする。
制御部89は、駆動部6の制御によって患部16から注射針83を抜き取った後も、高摩擦回転部84a,84bによる患部15の表面組織の伸展状態を所定の時間維持するように駆動部84dを制御し、カプセル型筐体2の内部に注射針83を収納してから所定の時間が経過したタイミングに、この患部15の表面組織の伸展動作を終了するように駆動部84dを制御する。
ここで、かかる患部15の穿刺穴(穿刺跡)16は、上述したように組織変形機構84が患部15の表面組織の伸展状態を所定の時間維持していたので、この組織変形機構84による伸展作用が解除された場合であっても閉塞状態を維持する。このため、患部15は、注射針83が抜き取られた後であっても、この穿刺穴16から薬液7を漏出させることなく、内部に薬液7を留める。この結果、患部15内部の薬液7は、この被検体内部における患部15以外の体内部位に漏れ広がることがない。
なお、かかるカプセル型医療装置81において、制御部89は、注射針83を介して患部15の内部に薬液7を注入し終えたタイミングに、高摩擦回転部84a,84bの回転によって患部15の表面組織を伸展させるように駆動部84dを制御していたが、組織変形機構84による患部15の表面組織の伸展変形タイミングは、これに限定されない。例えば、制御部89は、患部15に注射針83を穿刺したタイミング(患部15の内部に薬液7を注入する前)に、高摩擦回転部84a,84bの回転によって患部15の表面組織を伸展させるように駆動部84dを制御してもよい。または、制御部89は、注射針83を介して患部15の内部に薬液7を注入している期間に、高摩擦回転部84a,84bの回転によって患部15の表面組織を伸展させるように駆動部84dを制御してもよい。
以上、説明したように、本発明の実施の形態5では、穿刺対象の体内部位の表面組織を伸展させる組織変形機構を備え、組織変形機構が、注射針を穿刺した状態の体内部位の表面組織(詳細には穿刺穴近傍の生体組織)を伸展させ、少なくとも体内部位から注射針を抜き取るまでの期間、この体内部位の表面組織の伸展状態を維持して、この体内部位の穿刺穴を閉塞状態にするようにし、その他を実施の形態1と同様に構成した。このため、上述した実施の形態1の場合と同様の作用効果を享受するとともに、注射針を縮小変形せずに体内部位の穿刺穴を閉塞状態にすることができ、これによって、被検体内部における複数の所望部位に薬液を注入することが可能なカプセル型医療装置を簡易な構成で実現することができる。
なお、上述した実施の形態4の変形例2では、筒形状の焼灼部74の内部に注射針53を挿通し、この注射針53の突出動作に同期して焼灼部74をカプセル型筐体2から突出させていたが、これに限らず、カプセル型筐体2からの注射針53の突出動作と焼灼部74の突出動作とを同期して行わなくてもよい。この場合、実施の形態4の変形例2にかかるカプセル型医療装置71において、焼灼部74は、例えば図24に示すように、注射針53とは別体の状態でカプセル型筐体2の内部に配置され、この注射針53とは独立した状態でカプセル型筐体2から突没可能なものであってもよい。図24に示す焼灼部74は、制御部79の制御に基づく駆動部76の作用によって、注射針53の突没動作と異なるタイミングに開口部2cを通ってカプセル型筐体2から突没可能である。かかる焼灼部74は、上述した筒形状の場合と同様に、注射針53を穿刺した状態の体内部位における穿刺穴周囲の生体組織を焼灼処理して、この穿刺穴を閉塞状態にする。なお、この図24に示す焼灼部74は、開口部2cを通ってカプセル型筐体2から突没可能であれば、筒形状または棒形状(円柱状、角柱状)等の所望の形状のものであってもよい。
また、上述した実施の形態1では、熱可塑性の注射針3を加熱処理する加熱部4を薄膜状にして注射針3の外表面に巻き付ける態様で配置していたが、これに限らず、かかる注射針3を加熱処理する加熱部は、この注射針3の壁面に埋め込まれてもよいし、この注射針3の内壁面に配置されてもよい。また、かかる熱可塑性の注射針3は、加熱部4の加熱処理(すなわち電熱ヒータによる加熱処理)に限らず、加熱した薬液との接触によって軟化するように構成してもよい。あるいは、カプセル型筐体2の内部において注射針3をペルチェ素子等によって冷却し、体内部位に注射針3を穿刺した後、被検体の体温によって穿刺状態の注射針3を軟化させてもよい。
さらに、上述した実施の形態2では、体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする際、この体内部位の収縮力によって薄膜チューブ24をフラット状に圧潰変形していたが、これに限らず、薄膜チューブ24は、弾性部材によって形成され、弾性をもって縮径変形するものであってもよい。かかる弾性体である薄膜チューブ24は、体内部位の穿刺穴を閉塞状態にする際、この体内部位の収縮力によって縮径変形し、この体内部位の穿刺穴から抜き取られた後に元の筒形状に復帰する。
また、上述した実施の形態1,2,4,5および実施の形態4の変形例1,2では、カプセル型筐体2の径方向に注射針を突没動作させ、体内部位の表面に対して略垂直な態様で体内部位に注射針を穿刺していたが、これに限らず、上述した実施の形態3およびその変形例1に例示されるように、カプセル型筐体2の径方向に対して注射針の長手方向が斜めになる態様でカプセル型筐体2から注射針を突没動作させ、体内部位の表面に対して鋭角をなした態様で体内部位に注射針を穿刺してもよい。この場合も、上述した実施の形態3およびその変形例1と同様に、注射針による体内部位の穿刺穴の長さを、体内部位に対して垂直に注射針を穿刺した場合に比して長くすることができ、この結果、穿刺穴からの薬液漏出の防止効果を一層高めることができる。
さらに、上述した実施の形態3では、カプセル型筐体2の径方向に対して注射針の長手方向が斜めになる態様でカプセル型筐体2から注射針を突没動作させ、体内部位の表面に対して鋭角をなした態様で体内部位に注射針を穿刺していたが、これに限らず、上述した実施の形態1,2,4,5および実施の形態4の変形例1,2に例示されるように、カプセル型筐体2の径方向に注射針を突没動作させ、体内部位の表面に対して略垂直な態様で体内部位に注射針を穿刺してもよい。
また、上述した実施の形態4およびその変形例2では、焼灼部による穿刺穴周囲の生体組織の焼灼処理が完了した後に注射針を体内部位から抜き取っていたが、これに限らず、体内部位に穿刺した状態の注射針は、焼灼部によってこの体内部位の穿刺穴周囲の生体組織が焼灼処理されている期間に徐々に抜き取られてもよい。すなわち、上述した実施の形態4およびその変形例2では、焼灼部による体内部位の焼灼処理と体内部位からの注射針の抜取動作とを同時に実行し、焼灼部によって穿刺穴周囲の生体組織を焼灼処理しつつ、この穿刺穴から注射針を徐々に抜き取ってもよい。
さらに、上述した実施の形態4の変形例1では、焼灼処理機能を有する注射針63を、穿刺穴周囲の生体組織の焼灼処理が完了した後に体内部位から抜き取っていたが、これに限らず、かかる注射針63は、体内部位の穿刺穴周囲の生体組織を焼灼処理しつつ、この体内部位から徐々に抜き取られてもよい。この場合、かかる注射針63は、この体内部位から完全に抜き取られるまでに穿刺穴周囲の生体組織の焼灼処理を完了すればよい。
また、上述した実施の形態5では、注射針83を穿刺した状態の体内部位の表面組織を組織変形機構84によって伸展状態にしていたが、これに限らず、組織変形機構84は、注射針83を穿刺する前の体内部位を伸展状態にしてもよい。この場合、上述したカプセル型医療装置81は、組織変形機構84によって表面組織を伸展した状態の体内部位に注射針83を穿刺し、その後、この体内部位から注射針83を抜き取った後に組織変形機構84の伸展動作を終了する。この場合も、伸展状態であった体内部位の収縮力によって注射針83による穿刺穴を閉塞状態にすることができる。
さらに、上述した実施の形態5では、注射針83を穿刺した状態の体内部位の表面組織を組織変形機構84によって伸展状態にしていたが、これに限らず、組織変形機構84は、注射針83を穿刺した体内部位の表面組織を穿刺穴側に寄せて、この表面組織を縮めた状態にしてもよい。この場合、上述した組織変形機構84の駆動部84dを逆回転させて、高摩擦回転部84a,84bを各々逆回転させればよい。この場合も、かかる組織変形機構84の組織変形作用によって注射針83による穿刺穴を閉塞状態にすることができる。なお、かかる組織変形機構84が体内部位の表面組織を縮めるタイミングは、体内部位から注射針83が完全に抜き取られるまでの期間であってもよいし、体内部位から注射針83が完全に抜き取られた後であってもよい。
また、上述した実施の形態1〜5および各変形例では、被検体の体内部位に作用させる薬液を注射するカプセル型医療装置を例示していたが、これに限らず、被検体の体内部位に所望の液体を注射するカプセル型医療装置であってもよい。この場合、かかるカプセル型医療装置によって体内部位に注射される液体は、無色透明の液体であってもよいし、着色された有色の液体(例えばマーキング用の液体)であってもよい。
さらに、上述した実施の形態1〜5および各変形例では、電力によって駆動する単一の駆動部が、カプセル型筐体から注射針を突没して、被検体の体内部位に注射針を穿刺し、この穿刺した注射針を体内部位から抜き取っていたが、これに限らず、カプセル型筐体から注射針を突没する駆動部と、体内部位に対する注射針の穿刺および抜取を行う駆動部とを別のものとしてもよい。この場合、カプセル型筐体から注射針を突没する駆動部は、上述した駆動部6に例示されるように電力によって駆動する電動アクチュエータ等であってもよいし、外部から印加される外部磁界の作用によって駆動する磁気アクチュエータであってもよい。また、注射針の穿刺および抜取を行う駆動部は、電力によって駆動する電動アクチュエータ等であってもよいし、外部磁界に追従して駆動する磁石であってもよい。
具体的には、上述した実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1は、注射針3の突没動作を行う駆動部6と、注射針3の穿刺動作および抜取動作を行う駆動部(駆動部6と異なる別の駆動部)とを内蔵してもよい。図25は、注射針の突没動作の駆動部と注射針の穿刺動作および抜取動作の駆動部とを備えたカプセル型医療装置の一構成例を示す模式図である。
図25に示すカプセル型医療装置1において、注射針3は、駆動部6の駆動方向(図25の太線矢印によって示される注射針3の突没方向)に対して傾斜するように支持部5によって支持される。駆動部6は、制御部13の制御に基づいて駆動して、カプセル型筐体2から注射針3を突没する。磁石90は、カプセル型筐体2の径方向と磁化方向とを一致させる態様でカプセル型筐体2の内部に配置される。かかる磁石90は、被検体外部の外部装置によって印加された外部磁界に追従してカプセル型筐体2を回転駆動し、これによって、突出状態の注射針3を体内部位に穿刺し、その後、この穿刺した注射針3を体内部位から抜き取る。
具体的には、図26に示すように、磁石90は、外部磁界に追従してカプセル型筐体2を周方向に回転駆動するとともに、このカプセル型筐体2から突出した状態の注射針3を体内部位(例えば患部15)に向けて回転駆動し、これによって、加熱部4とともに注射針3を患部15に穿刺する。その後、磁石90は、上述した実施の形態1における注射針3の抜取タイミングと同様のタイミングにおいて、外部から印加された外部磁界に追従してカプセル型筐体2を周方向(穿刺の場合と逆方向)に回転駆動するとともに、この患部15から離間する方向に縮小変形後の注射針3を回転駆動し、これによって、この患部15から加熱部4とともに縮小変形後の注射針3を抜き取る。その後、上述した駆動部6は、この縮小変形後の注射針3と加熱部4とをカプセル型筐体2の内部に収納する。また、前記外部磁界によって注射針3が患部15に穿刺された後、カプセル型医療装置1の回転方向の位置が穿刺された状態で静止するように静磁界を印加してもよい。この状態で患部15の内部への薬液7の注入と、その後の加熱部4による注射針3の縮小変形とをすることで、患部15付近の反力による注射針3の抜けを防止し、より確実に薬液7を注射することができる。
このように、図25に示すカプセル型医療装置1は、上述した実施の形態1の場合と同様に、カプセル型筐体2から注射針3を突没させて、体内部位に注射針3を穿刺し、この穿刺した注射針3を体内部位から抜き取ることができ、上述した実施の形態1の場合と同様の作用効果を享受する。なお、図25に示したような注射針の突没動作を行う駆動部と注射針の穿刺動作および抜取動作を行う駆動部とを内蔵する構成は、実施の形態1にかかるカプセル型医療装置1に限らず、上述した実施の形態2〜5および各変形例のいずれかにかかるカプセル型医療装置に適用してもよい。この場合も、上述した実施の形態2〜5および各変形例のいずれかと同様の作用効果を享受するカプセル型医療装置を構成することができる。