しかしながら、特許文献2や特許文献3が提案されたスケルトンスロットアンテナは、第三者無線用の移動端末向けに開発されたものではなく、そのアンテナ構造において隣接する送受信周波数間の干渉や廻り込みについて、考慮が充分でないという課題があった。
本発明は、上述した課題を解決するもので、第1の目的は、受信上限周波数が受信下限周波数の大略2〜5倍程度の広帯域周波数領域であっても、定在波比を所定値以下に確保して、アンテナを交換することなく無線通信機での通信品質が確保できる広帯域無線アンテナを提供することである。第2の目的は、受信上限周波数が受信下限周波数の大略3倍程度の広帯域周波数領域であっても、定在波比を所定値以下に確保して、アンテナを交換することなく無線通信機での通信品質が確保できると共に、異なる周波数又は同じ周波数において、偏波方向が直角である電波を偏波方向により分離して二チャンネルを用いた送受信が可能な広帯域無線アンテナを提供することである。第3の目的は、単一のアンテナでありながら、同じ周波数において、偏波方向が直角である電波を偏波方向により分離して二チャンネルを用いた送受信が可能で、現場の状況に応じチャンネルを利用して無線通信機での通信品質が確保できる広帯域無線アンテナを提供することである。第4の目的は、充分なアンテナの利得を得ながら、受信上限周波数が受信下限周波数の大略2倍程度の広帯域周波数領域であっても、定在波比を所定値以下に確保して、アンテナを交換することなく無線通信機での通信品質が確保できる広帯域無線アンテナを提供することである。
上記第1の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナは、例えば図1(A)に示すように、方形金属枠10と、方形金属枠10の対向する辺の大略中央部にダイポールアンテナ20の両端が接続されると共に、このダイポールアンテナ20の大略中央に設けられた給電点22を有するダイポールアンテナ20と、ダイポールアンテナ20の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点に対して対称となる位置に設けられる容量性素子30とを備える広帯域無線アンテナであって、容量性素子30の容量値が、当該広帯域無線アンテナの受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比(STANDING WAVE RATIO)が所定値以下となるように定められている。
このように構成された装置においては、方形金属枠10では、少なくとも一辺の長さが受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを基準に定められる。ダイポールアンテナ20は給電点を対称点として有するが、ダイポールアンテナ20自体の長さは方形金属枠10の辺の長さを基準に定める。ダイポールアンテナ20は給電点22と繋げるアース板を有していないが、アース板を設けることにより単向指向性と利得向上が可能となる。容量性素子30は、ダイポールアンテナ20の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点に対して対称となる位置に設けられる。容量性素子30の容量値を適切に選定することで、受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比を通信に必要な所定値以下に確保しつつ、当該広帯域無線アンテナとして受信できる周波数帯域を受信下限周波数の3〜5倍程度確保できる。
上記第1の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図1(B)に示すように、容量性素子30は、ダイポールアンテナ20の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点に対して対称となる位置に代えて、方形金属枠10とダイポールアンテナ20の接合部に設けられる。容量性素子30の設置場所を方形金属枠10とダイポールアンテナ20の接合部としても、上述の容量性素子30の設置場所と同様の送受信特性が得られる。
上記第1の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図1(C)、(D)に示すように、容量性素子30は、ダイポールアンテナ20の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点に対して対称となる位置に代えて、方形金属枠10の辺の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点に対して対称となる位置、並びに鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられる。容量性素子30の設置場所を、方形金属枠10の辺の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点に対して対称となる位置、並びに鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置としても、上述の容量性素子30の設置場所と同様の送受信特性が得られる。この鏡像基準面は、ダイポールアンテナ20の給電点を通り、ダイポールアンテナ20の両端が接合される方形金属枠10の辺と平行な面とする。
上記第2の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナは、例えば図4(A)に示すように、対向する長辺42と短辺44の四辺を有する方形金属枠40と、方形金属枠40の対向する一組の長辺42の大略中央部に第1のダイポールアンテナ50の両端が接続されると共に、この第1のダイポールアンテナ50の大略中央に設けられた給電点51を有する第1のダイポールアンテナ50と、方形金属枠40の対向する一組の短辺44の大略中央部に第2のダイポールアンテナ52の両端が接続されると共に、この第2のダイポールアンテナ52の大略中央に設けられた給電点53を有する第2のダイポールアンテナ52と、第1のダイポールアンテナ50の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置に設けられる第1の容量性素子60と、第2のダイポールアンテナ52の中間点であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置に設けられる第2の容量性素子62とを備える。また、第1の容量性素子60の容量値が、第1のダイポールアンテナ50の受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められ、第2の容量性素子62の容量値が、第2のダイポールアンテナ52の受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められている。
このように構成された装置においては、方形金属枠40では、少なくとも一辺の長さが受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを基準に定められる。第1及び第2のダイポールアンテナ50、52は給電点51、53を対称点として有するが、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52自体の長さは方形金属枠40の辺の長さを基準に、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52が十字の位置関係を満たすように定める。第1及び第2のダイポールアンテナ50、52は給電点51、53と繋げるアース板を有していないが、アース板を設けても良い。第1及び第2の容量性素子60、62は、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52の中間点であって、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52の給電点51、53に対して対称となる位置に設けられる。第1及び第2の容量性素子60、62の容量値を適切に選定することで、受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比を通信に必要な所定値以下に確保しつつ、当該広帯域無線アンテナとして受信できる周波数帯域を受信下限周波数の3〜5倍程度確保できる。また、異なる周波数であって、偏波状態が垂直偏波と水平偏波で異なる2チャンネルの通信経路が確保でき、現場の通信状況に適合したチャンネルを選択できる。
上記第3の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナは、例えば図5(A)に示すように、四辺が大略等しい長さの方形金属枠46と、方形金属枠46の対向する一方の一組の辺48の大略中央部に第1のダイポールアンテナ50の両端が接続されると共に、この第1のダイポールアンテナ50の大略中央に設けられた給電点を有する第1のダイポールアンテナ50と、方形金属枠46の対向する他方の一組の辺49の大略中央部に第2のダイポールアンテナ52の両端が接続されると共に、この第2のダイポールアンテナ52の大略中央に設けられた給電点を有する第2のダイポールアンテナ52と、第1のダイポールアンテナ50の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置に設けられる第1の容量性素子64と、第2のダイポールアンテナ52の中間点であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置に設けられる第2の容量性素子66とを備える。また、容量性素子64、66の容量値が、当該広帯域無線アンテナの受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められている。
このように構成された装置においては、方形金属枠46では、一辺の長さが、例えば受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを基準に定められる。第1及び第2のダイポールアンテナ50、52は給電点51、53を対称点として有するが、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52自体の長さは方形金属枠40の辺の長さを基準に、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52が十字の位置関係を満たすように定める。第1及び第2のダイポールアンテナ50、52は給電点51、53と繋げるアース板を有していないが、アース板を設けることにより単向指向性と利得向上が可能となる。第1及び第2の容量性素子64、66は、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52の中間点であって、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52の給電点51、53に対して対称となる位置に設けられる。第1及び第2の容量性素子64、66の容量値を適切に選定することで、受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比を通信に必要な所定値以下に確保できる。また、同一周波数であって、偏波状態が垂直偏波と水平偏波で異なる2チャンネルの通信経路が確保でき、アンテナの方位を変更することなく、現場の通信状況に適合したチャンネルを選択できる。
上記第2又は第3の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図4(A)又は図5(A)に示すように、第1の容量性素子60、64は、第1のダイポールアンテナ50の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置に代えて、方形金属枠40、46と第1のダイポールアンテナ50の接合部に設けられ、第2の容量性素子62、66は、第2のダイポールアンテナ52の中間点53であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点に対して対称となる位置に代えて、方形金属枠40、46と第2のダイポールアンテナ52の接合部に設けられる。容量性素子60、62、64、66の設置場所を、方形金属枠40、46と第1及び第2のダイポールアンテナ50、52の接合部としても、上述の容量性素子60、62、64、66の設置場所と同様の送受信特性が得られる。
上記第2又は第3の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図4(B)又は図5(B)に示すように、第1の容量性素子60、64は、第1のダイポールアンテナ50の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置に代えて、方形金属枠40、46の辺の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置、並びに第1の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられる。また、第2の容量性素子62、66は、第2のダイポールアンテナ52の中間点であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置に代えて、方形金属枠40、46の辺の中間点であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置、並びに第2の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられる。ここで、第1の鏡像基準面とは、第1のダイポールアンテナ50の給電点51を通り、第1のダイポールアンテナ50の両端が接合される方形金属枠40、46の辺と平行な面とする。また、第2の鏡像基準面とは、第2のダイポールアンテナ52の給電点53を通り、第2のダイポールアンテナ52の両端が接合される方形金属枠40、46の辺と平行な面とする。容量性素子60、62、64、66の設置場所を、方形金属枠40、46の辺の中間点であって、第1及び第2のダイポールアンテナ50、52の給電点51、53に対して対称となる位置、並びに第1及び第2の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けたとしても、上述の容量性素子60、62、64、66の設置場所と同様の送受信特性が得られる。
上記第1乃至第3の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図6に示すように、方形金属枠10と所定間隔Dを隔てて設けられる反射板35を備え、前記所定間隔は広帯域無線アンテナの周波数帯域幅、利得、並びに定在波比から定められることを特徴とする。反射板35が設けられているので、広帯域無線アンテナの利得が増す。好ましくは、反射板35をすだれ状に配置された複数の金属棒からなる反射板35とすると、金属棒の間にある隙間から風が通り抜けるので耐風性が増す。
上記第4の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナは、例えば図10に示すように、受信下限周波数(fL)が受信上限周波数(fH)の大略1.6倍乃至2倍程度の広帯域無線アンテナであって、受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを有する一対の第1放射素子72と、受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)を基準として、当該受信上限周波数と当該受信中央周波数の中間周波数近傍に定められた上四半周波数(fs)に対応する第4受信波長(λ4)の大略1/2波長の長さを有する一対の第2放射素子74を用いて構成された、大略矩形の放射器部70と、一対の第1放射素子72の中間に位置すると共に、前記受信上限周波数(fH)に対応する第2受信波長(λ2)の大略1/2波長の長さを有するダイポールアンテナ部80と、ダイポールアンテナ部の給電点82とアース板90とを繋げると共に、受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)に対応する第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する金属製連結筒状部92、94と、一対の第1放射素子72の中間位置側のダイポールアンテナ部80に位置する先端部と、第1放射素子72の中間位置との間に設けられた誘電性を有する一対の固定誘電部84とを備えている。そして、固定誘電部84の長さと前記上四半周波数は、前記受信下限周波数と受信上限周波数との間で定在波比(STANDING WAVE RATIO)が所定値以下となるように定められたことを特徴とする。
このように構成された装置においては、広帯域無線アンテナは受信下限周波数(fL)と受信上限周波数(fH)に応じて、大略矩形の放射器部70の一対の第1放射素子72と一対の第2放射素子74の形状、ダイポールアンテナ部80、金属製連結筒状部92、94の形状が定められている。一対の第1放射素子72は、受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを有する。一対の第2放射素子74は、受信上限周波数と当該受信中央周波数の中間周波数近傍に定められた上四半周波数(fs)に対応する第4受信波長(λ4)の大略1/2波長の長さを有する。ダイポールアンテナ部80は、受信上限周波数(fH)に対応する第2受信波長(λ2)の大略1/2波長の長さを有する。金属製連結筒状部92、94は、受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)に対応する第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する。そして、固定誘電部84の長さと前記上四半周波数は、前記受信下限周波数と受信上限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定めることで、幅広い受信周波数帯域に渡って安定した受信特性を有するアンテナ機能が得られる。
上記第4の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナは、好ましくは、上四半周波数(fs)は、受信上限周波数(fH)と受信下限周波数(fL)を用いた以下の数式において、下記の範囲にあることを特徴とする。
0.65<(fs―fL)/(fH―fL)<0.83 (1)
このように構成された装置においては、上四半周波数が上記式(1)の範囲内で適宜に定めることで、受信下限周波数と受信上限周波数との間で、広帯域無線アンテナの定在波比が所定値以下となるように定めることができる。
本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図11(A)に示すように、ダイポールアンテナ部80は、第2受信波長(λ2)の大略1/4波長の長さを有する一対の金属製筒状部83a、83bを有し、金属製連結筒状部は、第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する一対の金属製連結筒状部92、94と、一方の金属製連結筒状部94の内側に収容された芯線部96とを有し、芯線部96は一端がコネクタ部98と接続され、他端がダイポールアンテナ部80の結合点82に接続されることを特徴とする。
このように構成された装置においては、ダイポールアンテナ部80は、第2受信波長(λ2)の大略1/4波長の長さを有する一対の金属製筒状部83a、83bを有し、第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する一対の金属製連結筒状部92、94と、一方の金属製連結筒状部94の内側に収容された芯線部96とを有し、芯線部96は一端がコネクタ部98と接続され、他端がダイポールアンテナ部80の結合点82に接続される構造とすると共に、ダイポールアンテナ部に給電点82を設けることで、前記受信上限周波数(fH)に対応する第2受信波長(λ2)の大略1/2波長の長さを有する形状となる。
本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図11(B)に示すように、前記ダイポールアンテナ部80は、前記第2受信波長(λ2)の大略1/4波長の長さを有する一対の固定長金属製筒状部85と、前記一対の固定誘電部84の周面を覆う状態で、当該固定誘電部84の軸方向に移動可能な可動式金属製筒状部86とを有し、可動式金属製筒状部86は、固定長金属製筒状部85と電気的接触状態を維持すると共に、前記受信下限周波数と受信上限周波数との間で定在波比(STANDING WAVE RATIO)が所定値以下となる位置で、固定長金属製筒状部85に固定されることを特徴とする。
このように構成された装置においては、ダイポールアンテナ部80は、固定長金属製筒状部85と可動式金属製筒状部86で構成されており、可動式金属製筒状部86の固定長金属製筒状部85に対する位置を調整することで、受信下限周波数と受信上限周波数との間で定在波比が所定値以下となる最適位置への調整が簡便に行える。
上記第4の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいて、好ましくは、例えば図6に示すように、放射器部70と所定間隔Dを隔てて設けられる反射板35を備え、前記所定間隔は広帯域無線アンテナの周波数帯域幅、利得、並びに定在波比から定められることを特徴とする。反射板35が設けられているので、広帯域無線アンテナの利得が増す。好ましくは、反射板35をすだれ状に配置された複数の金属棒からなる反射板35とすると、金属棒の間にある隙間から風が通り抜けるので耐風性が増す。
第1の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいては、容量性素子30の容量値を適切に選定することで、受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比を通信に必要な所定値以下に確保しつつ、当該広帯域無線アンテナとして受信できる周波数帯域を受信下限周波数の3〜5倍程度確保できる。また、ダイポールアンテナ20は給電点22と繋げるアース板を有していないので、双方性である。さらに、アース板を設けて、例えばパラボラアンテナのように指向性を持たせると、小さな電力の電波でも通信ができ、微弱な電波でも検出できる。
第2の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいては、第1及び第2の容量性素子の容量値を適切に選定することで、受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比を通信に必要な所定値以下に確保しつつ、当該広帯域無線アンテナとして受信できる周波数帯域を受信下限周波数の3〜5倍程度確保できる。また、異なる周波数であって、偏波状態が垂直偏波と水平偏波で異なる2チャンネルの通信経路が確保でき、現場の通信状況に適合したチャンネルを選択できる。第3の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナにおいては、同一周波数であって、偏波状態が垂直偏波と水平偏波で異なる2チャンネルの通信経路が確保でき、アンテナの方位を変更することなく、現場の通信状況に適合したチャンネルを選択できる。
第4の目的を達成する本発明の広帯域無線アンテナによれば、第1受信波長から第4受信波長の構成部材の特性のうち、固定誘電部84の長さと上四半周波数を、受信下限周波数と受信上限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定めることで、幅広い受信周波数帯域に渡って安定した受信特性を有するアンテナ機能が得られる。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。まず、用語の定義を行う。
スケルトンスロットアンテナ(skelton slot antenna)は、対向する長辺と短辺の四辺を有する方形金属枠と、この一組の長辺の大略中央部にダイポールアンテナの両端が接続されたもので、ダイポールアンテナの大略中央部に給電点が設けられている。
フレームアンテナ(frame antenna)は、正方形金属枠、又は対向する長辺と短辺の四辺を有する長方形金属枠と、この一組の一辺の大略中央部にダイポールアンテナの両端が接続されたもので、ダイポールアンテナの大略中央部に給電点が設けられていると共に、方形金属枠の対向する辺の中間点、又はダイポールアンテナの中間点であって、ダイポールアンテナの給電点に対して対称となる位置に容量性素子が設けられている。
図1は、本発明の広帯域無線アンテナの一実施の形態を説明する構成図で、(A)は容量性素子がダイポールアンテナ20の中間点に設けられた場合、(B)は容量性素子が方形金属枠10とダイポールアンテナ20の接合部24に設けられた場合、(C)は容量性素子が方形金属枠10の対向する短辺14の中間点に設けられた場合、(D)は容量性素子が方形金属枠10の対向する長辺12の中間点に設けられた場合、(E)は鏡像関係の説明図を示している。図2は、本発明の広帯域無線アンテナに用いられるフレームアンテナの部品構成図で、(A)は方形金属枠10、(B)はダイポールアンテナ20を示している。
図において、方形金属枠10は、正方形の金属枠又は長辺12と短辺14を有する長方形の金属枠である。長辺12の長さL1は、例えば受信下限周波数(fL)に対応する受信波長(λ1)の1/2波長に相当するもので、受信下限周波数(fL)が225MHzの場合、長辺12の長さL1が675mm程度となる。短辺14の長さL2は、例えば長辺12の長さL1の0.6倍乃至0.7倍とする。金属枠の材料としては剛性が高く軽量の金属材料、例えばアルミニューム、ジュラルミン、チタン合金が好ましいが、重量が重くても良い場合は黄銅や鋼でもよい。ダイポールアンテナ20は、大略中央に設けられた給電点22を有すると共に、方形金属枠10の対向する辺の大略中央部にダイポールアンテナ20の両端が接続される。
図1(A)に示すように、容量性素子30は、ダイポールアンテナ20の中間点であって、ダイポールアンテナ20の給電点22に対して対称となる位置に設けられる。ここで、ダイポールアンテナの中間点とは、ダイポールアンテナ上の部位であって両端と給電点以外の部位をいう。さらに、図1(B)に示すように、容量性素子30は、方形金属枠10とダイポールアンテナ20の接合部24に設けられてもよい。ここで、長辺12は接合部24で接続していることが必要である。容量性素子30の容量値は、当該広帯域無線アンテナの受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められるもので、例えば5〜20pF程度の容量であることが望ましい。容量性素子30は、図1(C)に示すように、方形金属枠10の対向する短辺14の中間点に設けられた場合であって、ダイポールアンテナ20の給電点22に対して対称となる位置に設けられる。ここでは、容量性素子30が短辺14の中央に設けられているので、ダイポールアンテナ20の給電点22に対して対称となる位置は一箇所である。そこで、容量性素子30は、各短辺14の中央に一箇所設けられている。ここで、短辺又は長辺の中間点とは、各辺上の部位であって接合部以外の部位をいう。
また、容量性素子30a、30b、30c、30dは、図1(D)に示すように、方形金属枠10の対向する長辺12の中間点に設けられた場合であって、ダイポールアンテナ20の給電点22に対して対称となる位置であって、ダイポールアンテナ20の給電点22を通り、長辺12と平行な鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられてもよい。鏡像関係は、図1(E)に示すように、鏡像基準面に対して対称な関係にあることをいう。ここでは、容量性素子30aが長辺12における短辺14との接合部16に近い位置の中間点に設けられているので、ダイポールアンテナ20の給電点22に対して対称となる位置は一箇所30cである。また、鏡像関係も、ダイポールアンテナ20の給電点22を通り、長辺12と平行な基準面に関して満たす必要がある。そこで、容量性素子30aと鏡像関係にあるものは、容量性素子30dである。鏡像関係は、給電点対称点の容量性素子30cにも必要なので、容量性素子30bも必要である。よって、容量性素子は方形金属枠10の辺上に合計4箇所設けられている。
このように構成された広帯域無線アンテナの特性について説明する。図3は、容量性素子30の容量値と周波数毎の定在波比SWRの関係を示している。この計算例では、方形金属枠10として、長辺12の長さL1が675mm程度であって、長辺12の長さL1は受信下限周波数(fL)が225MHzの場合に対応する受信波長(λ1)の1/2波長に相当している。短辺14の長さL2は440mm程度であって、短辺14の長さL2は350MHzの場合に対応する受信波長(λ4)の1/2波長となる。容量性素子30の容量値が2〜10pF、特に好ましくは5pF程度のとき、受信下限周波数(fL)の225MHzから受信上限周波数(fH)400MHzの二倍程度の900MHz程度までの範囲で、定在波比SWRが300MHzを基準として3程度と平準化されている。従って、アンテナの送受信周波数帯域が、例えば225MHz〜900MHzまで拡大し、利用者は通信状態の良い周波数を選択して利用できる。
なお、第1の実施の形態においては、同一周波数のうち垂直偏波と水平偏波の何れか一方を受信することを前提としている。固定局では、送信周波数について偏波に関しては垂直偏波又は水平偏波の一方の態様で送信しているので、アンテナ側では一方の偏波に対処していれば足りることが多いためである。アンテナ側で偏波を変更する必要があるときは、ダイポールアンテナの方向を90度回転させて対処する。
図4は、本発明の広帯域無線アンテナの第2の実施の形態を説明する構成図で、長方形の金属枠に2本のダイポールアンテナが十字形に取り付けられている場合を示し、(A)は容量性素子がダイポールアンテナの中間点に設けられた場合、(B)は容量性素子が方形金属枠40の対向する辺の中間点に設けられた場合を示している。図において、方形金属枠40は、対向する長辺42と短辺44の四辺を有する。長辺42と短辺44の寸法比は、典型的には長辺42の長さを短辺44の1.4倍乃至1.5倍程度に定める。2本のダイポールアンテナ50、52は、方形金属枠40に対して十字形に取り付けられる。第1のダイポールアンテナ50は、大略中央に設けられた給電点51を有すると共に、方形金属枠40の対向する一組の長辺42の大略中央部に第1のダイポールアンテナ50の両端が接続される。第2のダイポールアンテナ52は、大略中央に設けられた給電点53を有すると共に、方形金属枠40の対向する一組の短辺44の大略中央部に第2のダイポールアンテナ52の両端が接続される。
図4(A)に示すように、第1の容量性素子60は、第1のダイポールアンテナ50の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置に設けられる。第2の容量性素子62は、第2のダイポールアンテナ52の中間点であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置に設けられる。また、第1の容量性素子60の容量値は、第1のダイポールアンテナ50の受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められる。第2の容量性素子62の容量値は、第2のダイポールアンテナ52の受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められている。
なお、第1の容量性素子60は、容量性素子30と同様に、図1(B)に示す配置に類似した、長辺42と第1のダイポールアンテナ50の接合部に設けられてもよく、図1(C)に示す配置に類似した、方形金属枠40の対向する短辺44の中央点に設けられてもよい。第2の容量性素子62も、容量性素子30と同様に、図1(B)に示す配置に類似した、短辺44と第2のダイポールアンテナ52の接合部に設けられてもよく、図1(C)に示す配置に類似した、方形金属枠40の対向する長辺42の中央点に設けられてもよい。
さらに、図4(B)に示すように、第1の容量性素子60a、60b、60c、60dは、方形金属枠40の対向する長辺42の中間点に設けられた場合であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置、並びに第1の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられてもよい。ここで、第1の鏡像基準面とは、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51を通り、長辺42と平行な面をいう。ここでは、容量性素子60aが長辺42における短辺44との接合部46に近い位置の中間点に設けられているので、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置は一箇所60cである。また、鏡像関係も第1の鏡像基準面に関して満たす必要がある。そこで、容量性素子60aと鏡像関係にあるものは、容量性素子60dである。鏡像関係は、給電点対称点の容量性素子60cにも必要なので、容量性素子60bも必要である。よって第1の容量性素子60a、60b、60c、60dは方形金属枠40の長辺42上に合計4箇所設けられている。
また、図4(B)に示すように、第2の容量性素子62a、62b、62c、62dは、方形金属枠40の対向する短辺44の中間点に設けられた場合であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置、並びに第1の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられてもよい。ここで、第2の鏡像基準面とは、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53を通り、短辺44と平行な面をいう。ここでは、容量性素子62aが短辺44における長辺42との接合部46に近い位置の中間点に設けられているので、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置は一箇所62cである。また、鏡像関係も第2の鏡像基準面に関して満たす必要がある。そこで、容量性素子62aと鏡像関係にあるものは、容量性素子62dである。鏡像関係は、給電点対称点の容量性素子62cにも必要なので、容量性素子62bも必要である。よって、第2の容量性素子62a、62b、62c、62dは方形金属枠40の短辺44上に合計4箇所設けられている。
このように構成された広帯域無線アンテナの特性について説明する。方形金属枠40は対向する長辺42と短辺44の四辺を有し、2本のダイポールアンテナ50、52が方形金属枠40に対して十字形に取り付けられるため、この広帯域無線アンテナは異なる2周波数について垂直偏波と水平偏波の二チャンネルを利用できる。この広帯域無線アンテナと接続した通信機器側では、偏波が直交する異なる2周波数を用いて2チャンネルの通信経路が確保できる。そこで、前述したように、例えば地震災害等の被災地域に対する救護活動では、比較的狭い通信エリア内で、多数の応援部隊に多数の送受信周波数を用いて、同時並行的に通信を確保する必要が生ずる。この場合に、異なる2周波数であって偏波の状態も垂直偏波と水平偏波で異なるため、何れかの周波数で通信が確保できれば通信機器側の利便性が大きくなる。
図5は、本発明の広帯域無線アンテナの第3の実施の形態を説明する構成図で、正方形の金属枠に2本のダイポールアンテナが十字形に取り付けられている場合を示し、(A)は容量性素子がダイポールアンテナの中間点に設けられた場合、(B)は容量性素子が方形金属枠46の対向する辺の中間点に設けられた場合、(C)は(A)の構成斜視図を示している。図において、方形金属枠46は、四辺が大略等しい長さを有するもので、対向する一方の一組の辺48と他方の一組の辺49を有する。2本のダイポールアンテナ50、52は、方形金属枠46に対して十字形に取り付けられる。第1のダイポールアンテナ50は、大略中央に設けられた給電点51を有すると共に、方形金属枠46の対向する一方の一組の辺48の大略中央部に第1のダイポールアンテナ50の両端が接続される。第2のダイポールアンテナ52は、大略中央に設けられた給電点53を有すると共に、方形金属枠46の対向する他方の一組の辺49の大略中央部に第2のダイポールアンテナ52の両端が接続される。
図5(A)に示すように、第1の容量性素子64は、第1のダイポールアンテナ50の中間点であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置に設けられる。第2の容量性素子66は、第2のダイポールアンテナ52の中間点であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置に設けられる。また、第1及び第2の容量性素子64、66の容量値が、当該広帯域無線アンテナの受信する周波数帯域と、当該周波数帯域内で定められた受信上限周波数と受信下限周波数との間で定在波比が所定値以下となるように定められている。そして、第1及び第2の容量性素子64、66の容量値は、第1のダイポールアンテナ50と第2のダイポールアンテナ52毎に、互いに独立して設定できる。
なお、第1の容量性素子64は、容量性素子30と同様に、図1(B)に示す配置に類似した、辺48と第1のダイポールアンテナ50の接合部に設けられてもよく、図1(C)に示す配置に類似した、方形金属枠46の対向する辺49の中央点に設けられてもよい。第2の容量性素子66も、容量性素子30と同様に、図1(B)に示す配置に類似した、辺49と第2のダイポールアンテナ52の接合部に設けられてもよく、図1(C)に示す配置に類似した、方形金属枠46の対向する長辺42の中央点に設けられてもよい。また、図5(C)に示すように、給電点51、53は、第2のダイポールアンテナ52に沿う軸X−Xと第1のダイポールアンテナ50に沿う軸Y−Yに関して次の位置関係を満たす。即ち、給電点51、53は、軸X−Xを通り、軸Y−Yに垂直な面(鏡像面X)上に設置されていると共に、軸Y−Yを通り、軸Y−Yに垂直な面(鏡像面Y)上に互いに対称に設置されている。
さらに、図5(B)に示すように、第1の容量性素子64a、64b、64c、64dは、方形金属枠46の対向する辺48の中間点に設けられた場合であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置、並びに修正された第1の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられてもよい。ここで、修正された第1の鏡像基準面とは、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置であって、第1のダイポールアンテナ50の給電点51を通り、辺48と平行な面をいう。ここでは、容量性素子64aが辺48における辺49との接合部46に近い位置の中間点に設けられているので、第1のダイポールアンテナ50の給電点51に対して対称となる位置は一箇所64cである。また、鏡像関係も、修正された第1の鏡像基準面に関して満たす必要がある。そこで、容量性素子64aと鏡像関係にあるものは、容量性素子64dである。鏡像関係は、給電点対称点の容量性素子64cにも必要なので、容量性素子64bも必要である。よって第1の容量性素子64a、64b、64c、64dは方形金属枠46の辺48上に合計4箇所設けられている。
また、図5(B)に示すように、第2の容量性素子66a、66b、66c、66dは、方形金属枠46の対向する辺49の中間点に設けられた場合であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置、並びに修正された第2の鏡像基準面に対して鏡像関係を満たす位置に設けられてもよい。ここで、修正された第2の鏡像基準面とは、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置であって、第2のダイポールアンテナ52の給電点53を通り、辺49と平行な面をいう。ここでは、容量性素子66aが辺49における辺48との接合部46に近い位置の中間点に設けられているので、第2のダイポールアンテナ52の給電点53に対して対称となる位置は一箇所66cである。また、鏡像関係も、修正された第2の鏡像基準面に関して満たす必要がある。そこで、容量性素子66aと鏡像関係にあるものは、容量性素子66dである。鏡像関係は、給電点対称点の容量性素子66cにも必要なので、容量性素子66bも必要である。よって、第2の容量性素子66a、66b、66c、66dは方形金属枠46の辺49上に合計4箇所設けられている。
このように構成された広帯域無線アンテナの特性について説明する。方形金属枠46は四辺が大略等しい長さを有し、2本のダイポールアンテナ50、52が方形金属枠46に対して十字形に取り付けられるため、この広帯域無線アンテナは同一周波数について垂直偏波と水平偏波の二チャンネルを利用できる。前述したように、例えば地震災害等の被災地域に対する救護活動では、比較的狭い通信エリア内で、多数の応援部隊に多数の送受信周波数を用いて、同時並行的に通信を確保する必要が生ずる。この場合に、電波は通信現場の状況で通信状態が変動するものであって、同一周波数であっても垂直偏波と水平偏波では通信状態が異なるため、何れかの偏波で通信が確保できれば通信機器側では他の周波数に切り替える必要がないため、利便性が大きくなる。また、第1の実施の形態のような1本のダイポールアンテナでは、偏波を変更する場合にはダイポールアンテナを90度回転させていたが、本実施例ではアンテナを回転させることなく、両方の偏波に対処できる。そして、第1及び第2の容量性素子64a、64b、64c、64d、66a、66b、66c、66dの容量値は、共に全ての容量が第1のダイポールアンテナ50と第2のダイポールアンテナ52に影響するため、各ダイポール毎に互いに独立して設定することはできない点で、図5(B)に示す実施例は図5(A)に示す実施例と相違する。
図6は、本発明の広帯域無線アンテナに用いられるフレームアンテナの第4の実施の形態を説明する構成図である。図において、方形金属枠10が正方形の金属枠又は長辺12と短辺14を有する長方形の金属枠であり、ダイポールアンテナ20と容量性素子30を有する点は、図1の実施例と同様である。この実施例では、さらに反射板35が設けてある。反射板35は、アンテナの利得として9dB以上が望ましいため、アンテナの利得を増加させるために設けてある。この実施例では、耐風性能向上の為、すだれ状にしてある。反射板35は、四辺形形状すだれ全体の高さHと幅Wを、方形金属枠10の長辺12の長さL1と短辺14の長さL2に対して適宜に定める。例えば、次のように定める。
L1<W<2・L1 (2)
L2<H<3・L2 (3)
また、すだれ状の反射板35は複数の金属棒で構成され、ダイポールアンテナ20と同じ方向に揃えられている。この金属棒半径をr2とする。なお、方形金属枠10を構成する短辺14やダイポールアンテナ20の半径をr1とし、方形金属枠10とすだれ状の反射板35との距離をDとする。また、すだれ状の反射板35には、ダイポールアンテナ20と同じ方向の金属棒の姿勢を確保するため、金属棒の両端に垂直方向の金属棒を2本設けてもよく、またその中間に垂直方向の金属棒を1本以上設けてもよい。
図7は、図6に示すフレームアンテナの第4の実施の形態におけるアンテナ特性を示す図で、横軸にダイポールアンテナに設けられる容量性素子の容量、縦軸に定在波比SWRが3以下の場合の帯域幅を示している。この実施例では、すだれ状の反射板35について、W=700mm、H=700mm、金属棒の本数はダイポールアンテナ20と平行である横方向に15本、ダイポールアンテナ20と垂直である縦方向に2本設けられ、金属棒の半径r2が10mmの場合を示している。また、方形金属枠10については、長さL1が680mm、長さL2が280mm、短辺半径r1が30mmの場合を示している。また、方形金属枠10とすだれ状の反射板35との距離Dは200mmとなっている。
上記形状の実施例で、定在波比SWRが3以下となる範囲は、容量性素子の容量が10〜20pFの領域では、帯域幅が175MHz以上確保できることになる。そして、容量性素子の容量が15pF程度で、帯域幅の最大値が180MHz確保できる。
図8は、図6に示すフレームアンテナの第4の実施の形態におけるアンテナ特性のうち利得GAと定在波比SWRを示す図で、(A)は容量性素子の容量が1pF、(B)は10pF、(C)は50pF、(D)はスケルトンの場合を示している。各図8(A)〜(D)において、横軸に周波数200〜400MHz、縦軸に定在波比SWRを示している。図8(A)に示すように、容量性素子の容量が1pFの場合には、定在波比SWRが3以下となる範囲は、周波数が約250〜400MHzの範囲であり、帯域幅の下限がアンテナ仕様である225MHzを達成できないという課題がある。
図8(B)に示すように、容量性素子の容量が10pFの場合には、定在波比SWRが3以下となる範囲は、周波数が約230〜400MHzの範囲であり、広い帯域幅が確保できて好ましい。図8(C)に示すように、容量性素子の容量が50pFの場合には、定在波比SWRが3以下となる範囲は、周波数が約210〜370MHzの範囲であるが、周波数が約220MHz以下の領域では、ゲインが9dBを確保できない。そこで、アンテナ仕様であるゲインが9dBを確保できる範囲は、225MHz〜370MHzの範囲である。容量性素子の容量が最適値よりも増大して、帯域幅が最適値よりも狭くなる。図8(D)に示すように、スケルトン、即ち、容量性素子の容量が50pFよりも大幅に大きな場合には、容量性素子の容量が50pFの場合と同様の周波数の範囲となる。各図8(A)〜(D)に示された結果に、容量性素子の容量を連続的に変化させた場合を組み合わせたものが、図7に示す結果となっており、図7は最適な容量性素子の容量の範囲を示している。
図9は、図6に示すフレームアンテナの第4の実施の形態におけるアンテナ特性を示す図で、(A)は間隔Dと帯域幅、(B)は間隔Dと利得を説明してある。ここで、間隔Dとは、方形金属枠10とすだれ状の反射板35との間隔Dをいうものとする。図9(A)では、横軸として間隔D、縦軸として帯域幅を示している。ここでは、帯域幅としてアンテナ仕様である周波数帯域225MHz〜400MHzに対応する帯域幅175MHzを100%の基準として、周波数帯域225MHz〜400MHz外も含む帯域幅について白抜き丸『○』で表している。周波数帯域225MHz〜400MHz外を考慮する場合は、間隔Dが250mmの時が最適値となる。
図9(B)では、横軸として間隔D、縦軸として利得幅を示している。ここでは、利得幅としてアンテナ仕様であるゲイン9dBを100%の基準として、周波数帯域225MHz〜400MHz外も含む利得幅について白抜き丸『○』で表している。周波数帯域225MHz〜400MHz外を考慮する場合は、間隔Dが200mm〜260mmの範囲が最適値で、利得幅はゲイン9dBの2倍である15dBとなる。
図10は、本発明の第5の実施の形態としての広帯域無線アンテナを説明する構成斜視図である。図において、広帯域無線アンテナは、大略矩形の放射器部70、ダイポールアンテナ部80、アース板90を有している。広帯域無線アンテナは、受信周波数帯域が225MHzから400MHzのように、受信上限周波数が受信下限周波数の大略1.7倍ないし2倍程度の広帯域周波数領域であっても、定在波比を所定値以下に確保して、通信品質が確保できるものである。第1の実施の形態と比較すると、周波数帯域が狭くてもよいがゲインを大きくしたい用途に適している。
大略矩形の放射器部70は、一対の第1放射素子72a、72bと、一対の第2放射素子74a、74bを用いて構成される。ここで、一対の第1放射素子72a、72bは、受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを有する。無線機として第三者無線用の移動端末を対象とすると、受信下限周波数(fL)が225MHzの場合には、受信波長(λ1)の1/2波長が675mmとなる。一対の第2放射素子74a、74bは、受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)を基準として、当該受信上限周波数と当該受信中央周波数の中間周波数近傍に定められた上四半周波数(fs)に対応する第4受信波長(λ4)の大略1/2波長の長さを有する。無線機として第三者無線用の移動端末を対象とすると、上四半周波数(fs)が350MHzの場合には、受信波長(λ4)の1/2波長が434mmとなる。
ダイポールアンテナ部80は、一対の第1放射素子72a、72bの中間に位置すると共に、受信上限周波数(fH)に対応する第2受信波長(λ2)の大略1/2波長の長さを有する。無線機として第三者無線用の移動端末を対象とすると、受信上限周波数(fH)が400MHzの場合には、受信波長(λ2)の1/2波長が379mmとなる。
バランを構成する一対の金属製連結筒状部92、94は、ダイポールアンテナ部80とアース板90とを繋げると共に、受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)に対応する第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する。無線機として第三者無線用の移動端末を対象とすると、受信中央周波数が300MHzの場合には、第3受信波長(λ3)の1/4波長が253mmとなる。
なお、無線アンテナにおいては、受信波長(λ)の1/4波長と1/2波長が設計の基準値として用いられるため、本明細書では「1/4波長」や「1/2波長」と略称する。また、線形理論ではアンテナの長さが受信波長に対して実質的に無限長を前提とする為、1/4波長のように線形理論が直接適用できない領域では、線形理論で得られた結果を元に、現実に適合するように最適値を実験で求める必要がある。アンテナの現実の大きさが、受信波長(λ)の1/4波長程度である本発明の用途では、製品への実施段階では「1/4波長」が実験で定められた最適値に準拠して定められるため、数値上の受信波長(λ)の1/4波長に対しては、0.98〜1.02倍や0.95〜1.05倍のように、±2%乃至±5%程度の変動を含む概念であるため、大略1/4波長という趣旨である。1/2波長についても、同様である。
図11は、ダイポールアンテナ部近傍とアース板を説明する構成図で、(A)は金属製筒状部の一類型、(B)〜(E)は金属製筒状部の他の類型を説明してある。図11(A)において、ダイポールアンテナ部80は、給電点82、金属製筒状部83a、83b、固定誘電部84a、84bを有する。一対の金属製筒状部83a、83bは、ダイポールアンテナ部80を構成するもので、大略中央に給電点82が設けられる関係で、両者は隙間を介して隔てられている。金属製筒状部83a、83bは、長さとして受信波長(λ2)の1/4波長程度になる。無線機として第三者無線用の移動端末を対象とすると、受信上限周波数(fH)が400MHzの場合には、受信波長(λ2)の1/4波長が190mmとなる。一対の固定誘電部84a、84bは、ダイポールアンテナ部80の先端部と、第1放射素子72a、72bの中間位置との間に設けられた誘電性を有する部材である。このダイポールアンテナ部80の先端部は、一対の第1放射素子72a、72bの中間位置側に位置している。
平衡不平衡変換器であるバラン92を構成する部位は、第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する一対の金属製連結筒状部92、94を有している。金属製連結筒状部92は、中空であり、一端が金属製筒状部83aと接続され、他端がアース板90と接続されている。ダイポールアンテナ部の給電点82は、金属製連結筒状部92aと金属製筒状部83aとの接合点近傍に設けられる。金属製連結筒状部94は、芯線部96を有することで同軸部を構成する。芯線部96は、一端がダイポールアンテナ部の給電点82と接続され、他端がコネクタ部98と接続されている。無線機として第三者無線用の移動端末を対象とすると、受信中央周波数が300MHzの場合には、第3受信波長(λ3)の1/4波長が253mmとなる。このようにして、芯線部96と金属製連結筒状部92、94は、受信中央周波数についてのダイポールアンテナとして作用する。なお、金属製連結筒状部92a、94の材料としては、黄銅やアルミニュームのように導電性があって加工しやすい金属材料を用いる。絶縁被覆層95は、芯線部96を被覆する絶縁層で、例えばナイロン(登録商標)のような汎用プラスチック材料が用いられる。
また、図11(B)に示すように、ダイポールアンテナ部80は、第2受信波長(λ2)の大略1/4波長の長さを有する一対の固定長金属製筒状部85a、85bと、一対の固定誘電部84a、84bの周面を覆う状態で、固定誘電部84a、84bの軸方向に移動可能な可動式金属製筒状部86a、86bを有するとよい。可動式金属製筒状部86a、86bは、固定長金属製筒状部85と電気的接触状態を維持すると共に、前記受信下限周波数と受信上限周波数との間で定在波比(STANDING WAVE RATIO)が所定値以下となる位置で、固定長金属製筒状部85に固定される。可動式金属製筒状部86a、86bの移動方向は、図中の矢印Hで表してある。図11(C)は、固定誘電部84a、固定長金属製筒状部85a、可動式金属製筒状部86aの要部拡大図である。可動式金属製筒状部86aと固定長金属製筒状部85aは接触しているが、固定誘電部84aとは非接触とする為、固定誘電部84aの外径が、固定長金属製筒状部85aの外径よりも小さくなっている。
図11(D)は、固定誘電部84a、固定長金属製筒状部85a、可動式金属製筒状部86aの他の実施例の要部拡大図である。固定誘電部84aの外径は、固定長金属製筒状部85aの外径と等しくすることで、製作を容易にしている。この場合、可動式金属製筒状部86aと固定長金属製筒状部85aは非接触状態であり、固定誘電部84aとも非接触状態とする。図11(E)は、固定誘電部84aと固定長金属製筒状部85aの他の実施例の要部拡大図である。容量を可変にする為、可動式金属製筒状部86aに代えて、可変容量素子87を固定誘電部84aと固定長金属製筒状部85aの間に設けている。可変容量素子87を保護するために、保護カバー88が固定誘電部84aと固定長金属製筒状部85aの端部に設けられている。なお、固定長金属製筒状部85a、85bや可動式金属製筒状部86a、86bの材料としては、黄銅やアルミニュームのように導電性があって加工しやすい金属材料を用いる。固定誘電部84a、84bは、比誘電率が2〜7程度の所定誘電率(ε)の誘電体を充填したもので、例えばテフロン(登録商標)や塩化ビニル樹脂等の汎用プラスチック樹脂を用いる。
このように構成された装置のアンテナ特性について、説明する。図12は、図10の実施例の広帯域無線アンテナの特性を示す周波数特性図で、(A)は定在波比、(B)はスミスチャートを示している。受信下限周波数(fL)が225MHz、受信上限周波数(fH)が400MHzであるため、ここでは左隅の当初下限周波数を220MHz、右隅の当初上限周波数を405MHzとして、ネットワーク・アナライザで特性を測定している。ここで、スミスチャートとは、電子工学において伝送路のインピーダンス整合を設計する際に用いられる、複素インピーダンスを示す円形の図表である。また、ネットワーク・アナライザは、高周波回路網の通過・反射電力を測定する測定器で、スミスチャートを管面上に直接描画できるため、高周波回路やアンテナのインピーダンスマッチング作業を視覚的におこなえるものである。
図10の実施例の広帯域無線アンテナでは、受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さ、受信上限周波数(fH)に対応する第2受信波長(λ2)の大略1/2波長の長さ、受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)に対応する第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さ、受信上限周波数と当該受信中央周波数の中間周波数近傍に定められた上四半周波数(fs)に対応する第4受信波長(λ4)の大略1/2波長の長さを有する構成部材を有している。そこで、図12(B)のスミスチャートでは、受信下限周波数(fL)と上四半周波数(fs)付近で、インピーダンス曲線が交差円を形成しており、また受信上限周波数(fH)と受信中央周波数(fc)でインピーダンス曲線が大略最大値を示している。この結果、図12(A)に示すように、定在波比は、受信下限周波数(fL)から受信上限周波数(fH)の全範囲で低い値に維持されている。
図13は、比較例の広帯域無線アンテナの特性を示す周波数特性図で、(A)は定在波比、(B)はスミスチャートを示している。図13(B)のスミスチャートでは、受信下限周波数(fL)と上四半周波数(fs)付近で、インピーダンス曲線が最小値を形成しており、また受信上限周波数(fH)と受信中央周波数(fc)でインピーダンス曲線が虚数部を含まない抵抗成分だけのインピーダンス値を示している。この結果、図13(A)に示すように、定在波比は、受信下限周波数(fL)から受信上限周波数(fH)の全範囲で高い値となっており、受信特性がさほど良くない。
なお、比較例の広帯域無線アンテナでは、一対の第1放射素子72a、72bは、受信下限周波数(fL)に対応する第1受信波長(λ1)の大略1/2波長の長さを有し、金属製連結筒状部92、94が受信中央周波数(fc=(fLxfH)1/2)に対応する第3受信波長(λ3)の大略1/4波長の長さを有する点は、図10の実施例と同様である。しかし、一対の第2放射素子74a、74bは、受信上限周波数(fH)に対応する第2受信波長(λ2)の大略1/2波長の長さを有し、ダイポールアンテナ部80は、第2受信波長(λ2)の大略1/4波長の長さを有する一対の金属製筒状部83a、83bを有する。なお、固定誘電部84a、84bは設けておらず、これがスミスチャートが単純な円弧となり、定在波比が高くなる要因と考えられる。
なお、上記の実施の形態においては、本発明の技術思想をスケルトンスロットアンテナに適用した場合を示したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変形実施例が含まれる。例えば、上記の実施の形態においては、固定誘電部84a、84bを設けることで、ダイポールアンテナ部80の長さを調整することができる。