請求項1に記載の発明は、伝送路を介して、他の通信端末とデータの伝送を行う通信端末であって、第1の時間に所定のデータを前記伝送路を伝送させて得られた第1の通信速度と、および第2の時間に所定のデータを前記伝送路を伝送させて得られた第2の通信速度とを取得する通信速度取得部と、前記第2の通信速度が前記第1の通信速度よりも低い場合、前記第2の通信速度を用いて前記データの実効通信速度を推定する実効通信速度推定部と、を備える通信端末である。
請求項1記載の発明によれば、第1の時間に所定のデータを伝送路を伝送させて得られた第1の通信速度と、第2の時間に所定のデータを伝送路を伝送させて得られた第2の通信速度を取得し、第2の通信速度が第1の通信速度よりも低い場合、第2の通信速度を用いてデータの実効通信速度を推定するので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の通信端末であって、さらに、前記第1および第2の通信速度を用いて、前記データの平均通信速度を算出する平均通信速度算出部を備え、前記実効通信速度推定部は、前記平均通信速度および前記平均通信速度よりも小さな第2の通信速度を用いて、前記データの実効通信速度を推定する通信端末である。
請求項2記載の発明によれば、平均通信速度および当該平均通信速度よりも小さな第2の通信速度を用いて、データの実効通信速度を推定するので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の通信端末であって、前記実効通信速度推定部は、前記第2の通信速度に対して重み付けを行って、前記データの実効通信速度を推定する通信端末である。
請求項3記載の発明によれば、第2の通信速度に対して重み付けを行って、データの実効通信速度を推定しているので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の通信端末であって、前記実効通信速度推定部は、前記第2の通信速度に対して実数を乗じて、前記データの実行通信速度を推定する通信端末である。
請求項4記載の発明によれば、第2の通信速度に対して実数を乗じて、データの実効通信速度を推定しているので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか一項記載の通信端末であって、さらに、前記伝送路の状態を推定する第1および第2の伝送路推定要求を、前記他の通信端末に対して行う伝送路推定部と、前記第1および第2の伝送路推定要求に対する第1および第2の伝送路推定結果を、前記他の通信端末から受信する受信部と、を備え、前前記通信速度取得部は、前記第1および第2の伝送路推定結果から前記第1および第2の通信速度を取得する通信端末である。
請求項5記載の発明によれば、第1および第2の伝送路推定要求に対する第1および第2の伝送路推定結果から、第1および第2の通信速度を取得するので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか一項記載の通信端末であって、前記伝送路を伝送する前記データの通信速度は、前記実効通信速度と相関を有し、前記実効通信速度推定部は、前記相関に基づいて、前記実効通信速度を推定する通信端末である。
請求項6記載の発明によれば、データの通信速度から実効通信速度を一意的に求めることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の通信端末であって、前記実効通信速度推定部は、前記データの通信速度を、前記平均通信速度および前記第2の通信速度に基づいて決定する通信端末である。
請求項7記載の発明によれば、平均通信速度および当該平均通信速度よりも小さな第2の通信速度を用いて、実効推定速度の推定に用いるデータの伝送速度を決定するので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の通信端末であって、前記データの伝送速度、前記平均通信速度および前記第1の通信速度は、第2の通信速度+(平均通信速度―第2の通信速度)/4という関係を有する通信装置である。
請求項8記載の発明によれば、平均通信速度および当該平均通信速度よりも小さな第2の通信速度を用いて、実効推定速度の推定に用いるデータの伝送速度を決定するので、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8いずれか一項記載の通信端末であって、前記伝送路は、所定の周期を有した交流電圧が供給される通信端末である。
請求項9記載の発明によれば、請求項1〜8に記載した発明を電力線通信に対しても適用可能である。
請求項10に記載の発明は、請求項5〜8いずれか一項記載の通信端末であって、前記伝送路は、所定の周期を有した交流電圧が供給されるもので、さらに、前記交流電圧の値がゼロとなるタイミングまたは前記タイミングの近傍を検出する検出部を有し、前記伝送路推定部は、前記タイミングまたは前記タイミングの近傍に同期して、第1または第2の伝送路推定要求を行う通信端末である。
請求項10記載の発明によれば、交流電圧の値がゼロとなるタイミングまたは当該タイミングの近傍に同期して伝送路推定要求を行うことで、それらのタイミングに同期して発生する周期ノイズの影響を反映した伝送路推定を行うことができる。したがって、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項11に記載の発明は、請求項5〜10いずれか一項記載の通信端末であって、前記伝送路推定部は、前記第1および第2の伝送路推定要求は複数回連続して行う通信装置である。
請求項11記載の発明によれば、周期性を持たないノイズの影響を反映した伝送路推定を行うことができる。したがって、伝送路上に存在するノイズの存在を反映した実効通信速度の推定が行える。
請求項12に記載の発明は、請求項11記載の通信端末であって、前記伝送路推定部は、前記交流電圧の周期に応じて伝送路推定要求の回数を決定する通信装置である。
請求項12記載の発明によれば、交流電圧の仕様に応じた伝送路推定が可能になる。
請求項13に記載の発明は、請求項5記載の通信端末であって、前記通信速度取得部は、複数の伝送路推定要求のそれぞれに対する伝送路推定結果を取得し、前記実効通信速度推定部は、前記複数の伝送路推定結果に基づき、これらの平均を用いて算出する第1の推定方法による第1の推定結果と、伝送路推定結果の応答が無い場合を含めた平均を用いるとともに、伝送路推定結果の最大値と最小値との差に応じて再送率を積算して算出する第2の推定方法による第2の推定結果と、伝送路推定結果の応答が無い場合を含めた平均を用いるとともに、応答が無い場合を含めた伝送路推定結果の最大値と最小値との差に応じて再送率を積算して算出する第3の推定方法による第3の推定結果とのうち、少なくとも2つの推定結果を算出する通信装置である。
請求項13に記載の発明によれば、複数の推定方法を用いることによって、伝送路推定結果の応答の有無、伝送路推定結果のバラツキなどの状況に応じて、伝送路状態やノイズ変動の影響などを表した適切な推定結果を得ることができる。
請求項14に記載の発明は、請求項13記載の通信端末であって、前記実効通信速度推定部により算出した複数の実効通信速度の推定結果を通知する推定結果通知部を備える通信装置である。
請求項14に記載の発明によれば、複数の実効通信速度の推定結果を通知することで、例えば表示などによってユーザが伝送路状態やノイズ変動の影響などを適切に表した推定結果を認識できる。
請求項15に記載の発明は、請求項14記載の通信端末であって、前記推定結果通知部は、前記複数の実効通信速度の推定結果を時系列に通知する通信装置である。
請求項15に記載の発明によれば、例えばLED表示部などを用いて、簡単な構成で複数の推定結果を通知でき、ユーザが容易に伝送路状態やノイズ変動の影響などを適切に表した推定結果を認識できる。
請求項16に記載の発明は、請求項5記載の通信端末であって、前記伝送路推定部は、前記他の通信端末に対して伝送路推定実行要求を行って前記他の通信端末から自端末へ伝送路推定要求を発行させ、前記通信速度取得部は、自端末から前記他の通信端末への通信方向の伝送路推定結果と、前記他の通信端末から自端末への通信方向の伝送路推定結果との双方向の伝送路推定結果を取得する通信装置である。
請求項16に記載の発明によれば、通信方向によって伝送路推定結果が異なる場合に、両方向の伝送路推定結果をそれぞれ取得でき、ユーザにおいては通信方向で異なる伝送路推定結果の把握や、この伝送路状態を反映した通信速度の認識が可能となる。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、各図に基づいて説明する。
図1は、通信装置が、伝送路を介して、他の通信装置へ通信データを伝送する処理を説明した図である。通信装置100は、伝送路103を介して電力線通信端末105と接続している。通信装置101は、伝送路104を介して電力線通信端末106と接続している。通信装置100、101としては、例えば、パーソナルコンピュータやIP電話等が考えられる。なお、電力線通信端末105、106および通信装置100、101は、別体で構成しても良いし、一体に構成しても良い。伝送路103、104は、有線でも無線でも構わない。有線の場合は、イーサネット(登録商標)(登録商標)ケーブルや同軸ケーブル等が考えられる。また、伝送路103、104は無線通信として構成することも好適である。本実施の形態では、伝送路103、104としてイーサネット(登録商標)ケーブルを使用した場合について述べる。
電力線通信端末105、106は、伝送路102を介して接続されている。伝送路102として、ここでは電力線を用いた例を説明する。
通信装置100から通信装置101へ通信データを送信する際、電力線通信端末105は、伝送路推定要求を電力線通信端末106に対して送信する。伝送路推定要求を受けた電力線通信端末106は、トーンマップを計算して、その結果を電力線通信端末105に返信すると同時に自身の中に保持する。電力線通信端末106から最適トーンマップの返信を受けた電力線通信端末105は、最適トーンマップを使って通信装置100から送られた通信データを変調して、伝送路102を介して、電力線通信端末106へ送信する。通信データを受信した電力線通信端末106は最適トーンマップを使って通信データを復調し、復調した通信データを通信装置101へ送信する。
図2は、本発明の実施の形態における電力線通信端末106の受信部を示すブロック図である。なお、電力線通信装置105が信号の送信を行う。
図2において、510はアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、520は受信信号をウェーブレット変換して同相信号をおよび直交信号を生成する複素ウェーブレット変換器、530は送信装置から送られてくる送信信号を検出するためのキャリア検出器、540は受信信号に同期するための同期回路、550は伝送路の影響により歪んだ信号を補正するための等化器、560は複素ウェーブレット変換後の信号を使用して各サブキャリア帯域での狭帯域雑音の有無を検出するノイズ検出器、570は等化器550から出力される信号とノイズ検出器から出力される狭帯域雑音の有無情報を用いて送信装置におけるシンボルマッパの各サブキャリアで使用する一次変調を決定する伝送路推定器、580は等化器550から出力される信号を使用して判定を行う判定器である。
このように構成された電力線通信端末106の受信部について、その動作を図1〜図3を用いて説明する。
伝送路推定要求の送信の際に、電力線通信端末105が電力線通信端末106に対して伝送路推定要求の信号と全キャリアを用いた信号とを1つのフレーム構成で送信する。
図2において受信信号をA/D変換器510ではアナログ信号からデジタル信号に変換し、複素ウェーブレット変換器520では受信したデジタル信号をウェーブレット変換する。キャリア検出器530では電力線通信端末105から送られてくる信号を検出し、同期回路540ではプリアンブル信号を用いて受信信号に同期するように複素ウェーブレット変換器520のウェーブレット変換タイミングを調整する。等化器550では伝送路の影響を除去し、ノイズ検出器560では使用帯域内に存在する狭帯域雑音を検出する。伝送路推定器570では伝送路の状況を推定して送信装置で使用するシンボルマッパの一次変調方式を決定し、判定器580では等化器550から出力される信号を使って判定を行う。
図3は、受信部における等化器出力信号のスキャッターを示す図である。この図3は、送信装置のシンボルマッパで全サブキャリア2PAMを選択した場合における、受信装置の等化器出力のスキャッター(全サブキャリア分)を示している。通常伝送路推定を行う場合、伝送路推定用のフレーム構成で電力線通信端末105から全サブキャリアを用いた信号を送信してもらい、電力線通信端末106の伝送路推定器570においては、信号点配置(2PAMの場合±1)からの分散をノイズ量としてCINR(キャリア電力対(雑音+干渉波)電力比)を測定する。伝送路推定器570は、各サブキャリアにおいて測定されたCINRを用いて各サブキャリアで使用する一次変調(例えば16PAMや8PAMなど)を選択し、電力線通信端末105へ知らせる。これが送受信装置で通常行われている伝送路推定である。
この際に、各サブキャリアの一次変調の種類によって決まる通信速度を各サブキャリアと対応付けたものがトーンマップである。
なお、電力線通信端末105は、伝送路推定要求を出した後、タイムアウトするまで電力線通信端末106からの応答を待ち、応答があれば通知された新しいトーンマップを後述する伝送路推定結果格納部340bに記憶する。電力線通信端末106からの応答がなかった場合は、以前のトーンマップを利用する。また、応答がなかった場合は、通信性能測定結果を測定失敗、すなわちPHY速度=0、として記録する。この結果は、後述するPHY速度の統計処理データの一つとして扱う。ここでPHY速度とは、伝送路上に実データを伝送可能な最大通信速度のことである。なお、電力線以外にも、伝送路102としては同軸ケーブル、その他ペア線が考えられる。
図4は、電力線通信端末105(106)の外観を示す図であり、図4(a)は電力線通信端末の外観斜視図、図4(b)は同前面図、図4(c)は同背面図である。図4に示す電力線通信端末105(106)は、筐体201を有しており、筐体201の前面には、図4(a)(b)に示すようにLED(Light Emitting Diode)205A、205B、205Cからなる表示部205が設けられている。また、筐体201の背面には、図4(c)に示すように電源コネクタ202、及びRJ45等のLAN(Local Area Network)用モジュラージャック203、及び動作モード等の切換えのための切換えスイッチ204が設けられている。電源コネクタ202には、電源ケーブル(図4では図示せず)が接続され、モジュラージャック203には、LANケーブル(図4では図示せず)が接続される。なお、電力線通信端末105(106)には、さらにDsub(D−subminiature)コネクタを設け、Dsubケーブルを接続するようにしてもよい。また、その他慨知のコネクタ等を設けてもいいのは言うまでも無い。なお、表示部としては、複数のLEDの他、1つのLEDで色を変えても良いし、液晶やELディスプレイ等に通信速度等を表示させても良い。
図5は、電力線通信端末105(106)のハードウェアの一例を示すブロック図である。電力線通信端末105(106)は、図5に示すように、回路モジュール300及びスイッチング電源301を有している。スイッチング電源301は、各種(例えば、+1.2V、+3.3V、+12V)の電圧を回路モジュール300に供給するものであり、例えば、スイッチングトランス、DC−DCコンバータ(いずれも図示せず)を含んで構成される。
回路モジュール300には、メインIC(Integrated Circuit)310、AFE・IC(Analog Front END・Integrated Circuit)320、イーサネット(登録商標)PHY・IC(Physic layer・Integrated Circuit)330、メモリ340、ローパスフィルタ(LPF)351、ドライバIC352、バンドパスフィルタ(BPF)360、及びカプラ370が設けられている。スイッチング電源301及びカプラ370は、電源コネクタ202に接続され、さらに電源ケーブル302、電源プラグ303、コンセント304を介して伝送路102に接続される。なお、メインIC310は電力線通信を行う制御回路として機能する。
メインIC310は、CPU(Central Processing Unit)311、PLC・MAC(Power Line Communication・Media Access Control layer)ブロック312、及びPLC・PHY(Power Line Communication・Physical layer)ブロック313で構成されている。CPU311は、32ビットのRISC(Reduced Instruction Set Computer)プロセッサを実装している。PLC・MACブロック312は、送受信信号のMAC層(Media Access Control layer)を管理し、PLC・PHYブロック313は、送受信信号のPHY層(Physical layer)を管理する。AFE・IC320は、DA変換器(DAC;D/A Converter)321、AD変換器(ADC;A/D Converter)322、及び可変増幅器(VGA;Variable Gain Amplifier)323で構成されている。カプラ370は、コイルトランス371、及びカップリング用コンデンサ372a、372bで構成されている。なお、CPU311は、メモリ311に記憶されたデータを利用して、PLC・MACブロック312、及びPLC・PHYブロック313の動作を制御するとともに、電力線通信端末105(106)全体の制御も行う。
電力線通信端末105(106)による通信は、概略次のように行われる。モジュラージャック203から入力された通信装置100、101からの通信データは、イーサネット(登録商標)PHY・IC330を介してメインIC310に送られ、デジタル信号処理を施すことによってデジタル送信信号が生成される。生成されたデジタル送信信号は、AFE・IC320のDA変換器(DAC)321によってアナログ信号に変換され、ローパスフィルタ351、ドライバIC352、カプラ370、電源コネクタ202、電源ケーブル302、電源プラグ303、コンセント304を介して伝送路102に出力される。
伝送路102から受信された信号は、カプラ370を経由してバンドパスフィルタ360に送られ、AFE・IC320の可変増幅器(VGA)323でゲイン調整がされた後、AD変換器(ADC)322でデジタル信号に変換される。そして、変換されたデジタル信号は、メインIC310に送られ、デジタル信号処理を施すことによって、デジタルデータに変換される。変換されたデジタルデータは、イーサネット(登録商標)PHY・IC330を介してモジュラージャック203から出力される。
電力線通信端末105(106)は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式等の複数のサブキャリアを用いたマルチキャリア通信を行うものであり、送信データをOFDM送信信号に変換するとともに、OFDM受信信号を受信データに変換するデジタル処理は、主としてPLC・PHYブロック313で行われる。
交流電圧処理部380は、電源コネクタ202とカプラ370の間に存在する伝送路に接続され、後述するメインIC310内に設けられるゼロクロス検出回路401に接続される。交流電圧処理部は、ゼロクロス検出回路401の動作のために必要な交流電圧のアナログ信号処理を行う。
図6は、メインIC周辺の詳細ブロック図である。図6の構成は、電力線通信端末105および106で共通である。ここでは、電力線通信端末105を例に説明する。
メインIC310は、上述したCPU311、PLC・MACブロック312、PLC・PHYブロック313に加えて、ゼロクロス点検出回路401、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)310aを有する。CPU311は、ゼロクロス点検出回路401、UART310aの管理も行う。ゼロクロス点検出回路401は、伝送路102に供給される商用電源の交流電力波形、すなわち50Hz又は60Hzの正弦波からなる交流波形について電圧のゼロクロス点(もしくはその近傍の点)を検出する。ゼロクロス点検出回路は、交流電圧処理部380に接続されている。伝送路推定は、このゼロクロス点(もしくはその近傍の点)に同期して行われる。UART310aは、シリアルインターフェースの一種であって、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)が接続される。UART310aは、CPU311から送られてくるパラレル信号をシリアル信号に変換し、外部機器から送られてきたシリアル信号をパラレル信号に変換する機能を有する。
イーサネット(登録商標)PHY・IC330は、イーサネット(登録商標)送受信部330aを有する。イーサネット(登録商標)送受信部は、電力線通信端末105と通信装置100間の通信を制御する。電力線通信端末106と通信端末101の関係は、電力線通信端末105と通信端末100のそれと同様である。
メモリ340は、端末管理テーブル340aおよび伝送路推定結果格納部340bを有する。具体的には、メモリ340としてフラッシュメモリ等が用いられる。端末管理テーブル340aは、電力線通信ネットワークに接続している他の電力線通信端末に関する情報(MACアドレス、通信相手の電力線通信端末に関するID等)を格納している。伝送路推定結果格納部340bは、送信トーンマップおよび送信PHY速度、受信トーンマップおよび受信PHY速度を記憶する。
ここで、送信トーンマップとは、通信相手の電力線通信端末106からの伝送路推定要求に応じて、当該伝送路推定要求を受けた電力線通信端末105が計算したトーンマップのことであり、送信PHY速度とは、通信相手の電力線通信端末106から送信されるデータのPHY速度である。送信PHY速度は、伝送路推定要求を受けた電力線通信端末105によって、送信トーンマップと同時に計算される。送信トーンマップ及び送信PHY速度は、通信相手の電力線通信端末106に送信されるとともに、伝送路推定要求を受けた電力線通信端末105においても記憶される。通信相手の電力線通信端末106に送信された送信トーンマップ及び送信PHY速度は、通信相手の電力線通信端末106においては、受信トーンマップおよび受信PHY速度として記憶される。送信トーンマップ及び送信PHY速度は、CPU31によって計算される。計算された送信トーンマップ及び送信PHY速度は、CPU311によって、伝送路推定結果格納部340bに格納される。
スイッチ400は、電力線通信端末105、106間で伝送路推定処理の開始を指示するために設けられる。スイッチ400が押下されると、伝送路推定を開始させるための信号がCPU311へ送られる。CPU311は、当該信号を認識すると、伝送路推定要求の処理を実行し、伝送路推定要求フレームを電力線通信端末106に対して送信する。
なお、伝送路推定処理を開始させるための手段としては、上述したスイッチに限定されない。例えば、コンセント304に電源プラグ303を挿入したと同時に、伝送路推定処理を開始しても良い。
PLC・MACブロック312は、イーサネット(登録商標)受信キュー312a、イーサネット(登録商標)送信キュー312b、イーサネット(登録商標)制御部312c、PLC受信キュー312d、PLC送信キュー312eおよびPLC制御部312fを有する。
PLC・PHYブロック313は、PLC送受信部313aおよび誤り訂正回路313bを有する。
イーサネット(登録商標)受信キュー312aは、通信装置100(101)から受信した通信データを順次記憶する。記憶された通信データは、イーサネット(登録商標)制御部312fによって、古い順にPLC送信キュー312eへ送られ、PLC送信キュー312eによって記憶される。PLC送信キュー312eに記憶された通信データは、PLC制御部312fによって、古い順にPLC・PHYブロック313へ送られる。
PLC送信キュー312eから、PLC・PHYブロック313に送られた通信データは、誤り訂正回路313bによって、冗長なデータ(誤り訂正符号)が付加される。誤り訂正符号を付加する理由は、伝送路102に存在するノイズが原因となる伝送ミスが発生した場合、予め通信データに付加した誤り訂正符号から通信データの誤りの有無を発見して通信データの誤りを訂正するためである。
誤り訂正回路313bによって、誤り訂正符号が付加された通信データは、PLC送受信部313aに送られる。PLC送受信部313aでは、通信データの変調を行う。変調は、上述した送信(受信)トーンマップに基づいて行われる。変調された通信データは、AFE IC320へ送られる。
PLC送受信部313aは、AFE IC320から送られてきた通信データの復調を行う。復調は、上述した送信(受信)トーンマップに基づいて行われる。復調された通信データは、誤り訂正回路313bへ送られる。誤り訂正回路313bでは、通信データの誤り訂正を行う。誤り訂正が施された通信データは、PLC・MACブロック312へ送られる。PLC受信キュー312dは、PLC・PHYブロック313によって処理された通信データを順次記憶する。PLC制御部312fは、PLC受信キュー312に記憶された通信データを、古い順にイーサネット(登録商標)送信キュー312bへ送る。イーサネット(登録商標)制御部312cは、イーサネット(登録商標)送信キュー312bに記憶された通信データを、古い順に、イーサネット(登録商標)PHY・IC330へ送る。
次に、伝送路推定の結果から、通信性能を推定する方法について述べる。ここでは、電力線通信端末105が電力線通信端末106から伝送路推定要求フレームを受信した場合について説明する。なお、電力線通信端末105と電力線通信端末106の構成は同様である。
電力線通信端末105は、伝送路推定要求フレームを受信するとPHY速度を計算する。伝送路推定要求フレームは、伝送路102を伝送すると伝送路102上に存在するノイズやインピーダンス等の影響を受けた形で電力線通信端末105によって受信される。PHY速度は、伝送路102の影響を受けた伝送路推定要求フレームを用いて理論的に求められる。
図7は、伝送路推定の結果から通信性能を推定する際に使用する特性図である。横軸は、電力線通信端末105の信号減衰量(dB)、縦軸は、通信速度(Mbps)となっている。特性図では、対減衰特性に対するPHY速度、UDP速度、TCP速度の関係を記載している。TCP速度は、実効通信速度として取り扱われる。
ここで、TCP速度とは、複数の通信装置を電力線通信端末を介して接続し、当該通信装置間でTCP(Transmission Control Protocol)にて通信を行った場合のデータ損失なしで通信可能な最高通信速度のことである。
また、UDP速度とは、複数の通信装置を電力線通信端末を介して接続し、当該通信装置間でUDP(User Datagram Protocol)にて通信を行った場合のデータ損失なしで通信可能な最高通信速度のことである。
本実施の形態では、通信プロトコルとしてTCPを用いているので、実効通信速度としてTCP速度を採用する。なお、通信プロトコルとしてUDPを用いる場合は、実効通信速度としてUDP速度を採用する。
電力線通信端末105は、メモリ340内にこの特性図を記憶している。なお、PHY速度とUDP速度およびTCP速度の関係は静特性であるため、CPU311は、伝送路推定によりPHY速度が理論的に求められると、この特性図を参照してUDP速度およびTCP速度を推定することができる。
例えば、[2]の場合は、PHY速度≒50MbpsなのでTCP速度≒30Mbps、[1]の場合は、PHY速度≒10MbpsなのでTCP速度≒8Mbpsと推定される。なお、上述した特性図に限らず、PHY速度、TCP速度およびUDP速度との間に関数を定義し、その関数をメモリ340に記憶して実効通信速度の推定を行っても構わない。また、PHY速度、TCP速度およびUDP速度との関係をテーブルに表して、そのテーブルをメモリ340に記憶して実効通信速度の推定を行っても構わない。
この方法によると、通信装置100、101が実際に通信を行わない場合でも、電力線通信端末105、106間の実効通信速度を推定することが可能である。
図8は、伝送路ノイズの通信への影響を示した図である。日本国内における電源周期は、50Hzと60Hzの2種類が存在する。50Hzの場合は半周期が約10msecとなり、60Hzの場合は半周期が約8.3msecとなる。伝送路102上には、電源周期またはその半周期に同期したノイズを発生させる家電機器が存在する場合がある。図8では、半周期に同期したノイズを発生させる家電機器が存在した場合のノイズと電源周波数との関係を表している。
スイッチ400が押下され、電力線通信端末106が電力線通信端末105に対して伝送路推定要求を行う場合は、図に示す伝送路推定要求フレームを通信相手の電力線通信端末106(105)に送信する。伝送路推定要求フレームは、CPU311によって形成され、PLC送信キュー312e、PLC・PHYブロック、AFE・IC等および伝送路102を介して電力線通信端末105へ送られる。
伝送路推定要求フレームは、プリアンブル、フレームコントロール(FC)およびペイロードから構成される。プリアンブルは、送受信されたシンボルの同期をとるためのフレームである。図8の例では、約0.1msecのフレーム長を有している。FCは、送信元および送信先の電力線通信端末に関するアドレス情報(MACアドレス、IPアドレス等)や後述するペイロードで必要な情報(ペイロード部のフレーム長など)を格納するフレームである。図8の例では、約0.1msecのフレーム長を有している。ペイロードは、実データを格納するためのフレームであって、図8の例では、約1msecのフレーム長を有している。伝送路推定要求フレームのフレーム長は、これら3つのフレームのフレーム長の総和であって、約1.2msecのフレーム長を有している。
図8に示す[1]の区間は、伝送路推定要求フレームの伝送期間内に周期ノイズが発生した区間を示しており、[2]の区間は、伝送路推定要求フレームの伝送期間内に周期ノイズが発生しなかった区間を示している。
周期ノイズは、商用電源の交流波形について電圧のゼロクロス点(もしくはその近傍の点)に同期して発生する。周期ノイズの形状は矩形波であり、ノイズの存在しない箇所の電圧レベルは0である。なお、交流波形の周波数は、国ごとの仕様に応じて異なり、周期ノイズの形状も矩形波に限らない。
[1]の区間では、周期ノイズによって、信号が破壊される(信号対ノイズ比が低下する)ため周期ノイズが存在するため通信性能が低下する。
また、[2]の区間に関連する伝送路推定の結果のみを用いてトーンマップを作成すると、このトーンマップは、[1]の区間に対しては適切なトーンマップではないため再送が発生し、通信速度が低下する。周期ノイズと重なるか否かは、伝送路推定要求フレームの送信タイミングに依存するので、[2]の区間に関連するPHY速度のみを用いて実効通信速度を推定すると、[1]の領域の状態を反映しないものとなってしまう。
図9は、伝送路推定結果から実効通信速度を推定する方法を示す図である。
伝送路推定結果から実効通信速度を推定する方法は、上述したPHY速度の平均値から推定する以外にも以下のような方法が考えられる。図9に示すように、CPU311は、複数回(12回)伝送路推定によって求められ、伝送路推定結果格納部340bにおいて記憶されている複数(12個)のPHY速度それぞれについて、実効通信速度を図7の特性図から求め、得られた複数(12個)の実効通信速度から実効通信速度の平均値を求め、当該平均値を推定実効通信速度とする。図9の例では、推定実効通信速度の平均値は、TCP速度で約11.2Mbpsとなる。
上述した方法によって、求められた実効通信速度は、CPU311によって表示部205を用いて表示される。LEDを用いて表示する場合には、実効通信速度の値に応じて点灯するLEDの数を変更させても良いし、LEDの発光色を変更させても良い。
なお、実効通信速度の表示は、通信装置100やUART310aを介して接続されている外部機器に表示させても良い。外部機器として、液晶やELディスプレイ等を用いて実効通信速度を表示する場合は、実効通信速度の値をそのまま表示させても良い。また、上述した伝送路推定の回数は、12回に限られない。
図10(a)は、実効通信速度をより正確に推定する方法の概略を示したフローチャートである。図10(b)は、伝送路推定の送信機側の処理を詳細に表したフローチャートである。図10(c)は、伝送路推定の受信機側の処理を詳細に表したフローチャートである。
図10(a)に示す推定方法では、CPU311が伝送路推定のタイムアウト処理を行いながら、規定された複数回(12回)の伝送路推定を実施し、複数個の伝送路推定結果(PHY速度)を取得する(ステップS801)。次に、CPU311がステップS801によって求められた複数(12個)のPHY速度から平均値と最小値を求める(ステップS802)。
次に、ステップS802によって求められたPHY速度の平均値および最小値を用いて、CPU311が実効通信速度の推定に使用するPHYレートを計算する(ステップS803)。
図10の例では、実効通信速度の推定に使用するPHY速度として、複数(12個)のPHY速度の平均値よりも小さな値を用い、具体的には、<最小値+(平均値−最小値)÷4>として規定している。これは、伝送路102上に存在する周期ノイズが原因となる通信データの損失が発生した際に、TCPが通信速度を低く抑えるフロー制御動作を考慮したものであり、実際に通信した値と推定値の差を小さくできる。このように実効通信速度を推定するためのPHY速度として、PHY速度の平均値よりも小さな値を用いることで、伝送路上に周期ノイズが存在している場合でも、より正確な実効通信速度を推定することが可能になる。
なお、実効通信速度の推定に用いるPHY速度の算出方法は上述の例に限らない。最小値の代わりに平均値よりも小さな値を用いることも可能である。また、最小値に重み付けのための実数を乗じても良い。
最後に、ステップS803で求められた実効通信速度の推定に使用するPHY速度から、CPU311が、図7の特性図を参照して、実行通信速度を推定する(ステップS804)。
PHY速度の最小値を反映して実効通信速度を求めることによって、実効通信速度をより正確に推定することが可能となる。
次に、図10(b)、(c)を用いて伝送路推定処理の詳細を述べる。図1を例にとると、図10(b)は、電力線通信端末105の処理フローを示しており、図10(c)は、電力線通信端末106の処理フローを示している。
まず、図10(b)を用いて送信機側となる電力線通信端末105の処理フローを述べる。CPU311は、伝送路推定要求フレームの送信回数nをn=0と規定する(ステップS811)。次に、ゼロクロス点検出回路401が伝送路102に供給される商用電源の交流電力波形、すなわち50Hz又は60Hzの正弦波からなる交流波形について電圧のゼロクロス点(もしくはその近傍の点)を検出する(ステップS812)。なお、交流波形の周波数は、国ごとの仕様に応じて異なる。
次に、タイマー1によって伝送路推定の実行周期を規定する(ステップS813)。タイマー1は、メインIC310に設けられる(図示は省略する)。タイマー1によって、伝送路推定の実行周期が規定されると、CPU311によって伝送路推定の処理が開始される(ステップS813)。CPU311は、セロクロス点検出回路401によって検出されたゼロクロス点(もしくはその近傍点)に同期して伝送路推定要求フレームを通信相手の電力線通信端末106に送信する(ステップS814)。CPU311が伝送路推定要求フレームを送信すると、タイマー2がリセットされる。タイマー2は、メインIC310の内部に設置され(図示は省略する)、電力線通信端末106からの伝送路推定結果の受付期間を規定する(ステップS815)。ステップS816では、CPU311が電力線通信端末106から送信された(ステップS854を参照)伝送路推定結果の受信の有無を判定する。CPU311が伝送路推定結果を受信した場合は、その結果を伝送路推定結果格納部340bに格納する(ステップS817)。次に、CPU311は伝送路推定の実効周期が満了したか否かを判断し(ステップS820)、受付期間が満了した場合は、送信回数nの値をn=n+1に更新する(ステップS821)。次に、CPU311は送信回数nの値が所定の送信回数N(実施の形態では、N=12)より小さいか否かを判断する(ステップS822)。送信回数nが所定の送信回数Nよりも小さい場合は、ステップS813に戻り、CPU311は、ステップS822の条件を満足するまで上述と同様の処理を繰り返す。
伝送路推定結果を受信していない場合は、タイマー2で規定した受付期間が終了するまで通信相手の電力線通信端末106(105)からの伝送路推定結果を待つ(ステップS818)。伝送路推定結果を受信することなく受付期間を経過した場合は、伝送路推定結果格納部340bに、伝送路推定結果をPHY速度=0Mbps(もしくは、非常に小さい値や負の値)として記憶する(ステップS819)。
次に、図10(c)を用いて、受信機側となる電力線通信端末106の処理フローを述べる。電力線通信端末105から伝送路推定要求フレームが送信されると(ステップS814参照)、CPU311は、当該伝送路推定要求フレームを受信する。次に、CPU311は、伝送路推定要求フレームの受信回数nをn=0と規定する(ステップS852)。次に、CPU311は、受信した伝送路推定要求フレームに基づいて端末間の変復調に使用するトーンマップ、およびPHY速度を計算する(ステップS853)。次に、CPU311は、ステップS853において計算されたトーンマップおよびPHY速度の結果を送信機側の電力線通信端末105に送信する(ステップS854)。また、CPU311は計算されたトーンマップおよびPHY速度の結果を、伝送路推定結果格納部340bに格納する(ステップS855)。次に、伝送路推定要求フレームの受信回数をn=n+1に更新する。最後に、CPU311は受信回数nの値がn>N(Nは、所定の送信回数と同値)の条件を満足しているかを判断する。CPU311は、この条件を満足するまで上述と同様の処理を繰り返す(ステップS857)。
図11は、伝送路推定開始タイミングの違いによる周期ノイズ検出有無のシミュレーションの結果を示した図である。周期ノイズを検出できるか否かは、伝送路推定の実施タイミングが周期ノイズ発生タイミングに一致するか否かで決定される。本シミュレーションは、伝送路推定の実施タイミングが周期ノイズ発生タイミングと一致するか否かを決めるパラメータとその結果を試算するものである。
電源周期および周期ノイズ発生周期は、電力線通信装置が使用される地域により決まる。上述したように、日本国内においては、電源周期50Hzおよび60Hzの地域が存在し、それぞれの半周期は、10msecおよび8.33msecとなる。
伝送路推定の実施タイミングと実行回数はプログラムにより変更可能であり、ここでは500msec毎に伝送路推定を行い、伝送路推定の回数を12回としている。
1回目の伝送路推定の実施タイミングを周期ノイズの発生周期のどのタイミングにするかによっても周期ノイズ検出の機会が決まる。伝送路推定の実施タイミングは計測開始オフセット時間であり、0からノイズ発生周期まで変化する。このオフセット時間は、1回目の伝送路推定を電源周期のゼロクロス点に同期させることにより0とすることが可能である。ゼロクロス点検出ができない機器の場合は、0からノイズ発生周期の範囲で、オフセット時間が異なることになる。
本シミュレーションでは、12回の伝送路推定タイミングの直近での周期ノイズの発生時刻を比較している。ゼロクロス点から2msec以内に、周期ノイズと伝送路推定要求フレームの両者が存在した場合は一致と判定し、“BINGO”と表示している。2msecの時間幅は、周期ノイズが通信に影響を及ぼす期間を考慮して決定した。
図12は、周期ノイズ検出と伝送路推定実施タイミングのオフセット時間との関係を示した図である。
図12は、上述したシミュレーションにおいて、伝送路推定実施タイミングのオフセット時間を1msec間隔で最大8msecまで変化させて試算を行い、各々のオフセット時間について、周期ノイズの検出回数を示したものである。
図12(a)は、電源周期を60Hzとした場合のシミュレーション結果である。図12(b)は、電源周期を50Hzとした場合のシミュレーション結果である。
図12から理解できるように、電源周期に同期してゼロクロス点から伝送路推定を開始すれば、必ず周期ノイズの影響を受けた伝送路推定の結果を得ることが可能である。したがって、より正確な伝送路推定を実施するためにはゼロクロス点に同期した測定を行うことが好適である。
なお、実際の電力線通信端末105(106)は時間測定精度の影響があるため、伝送路推定実施タイミングは図11で示した値とは異なってくる。したがって、図12のように周期ノイズが100%検出される場合や全く検出されない場合は、実際の電力線通信端末105(106)では起こり得えないが、周期ノイズ検出回数の大小の傾向が理解できる。
また、ゼロクロス点を検出できない装置にあっても、装置の時間測定の精度を利用することやプログラムで意図的に計測開始時刻を数msec後ろへシフトすることにより周期ノイズの影響を受けた伝送路推定の結果を確実に取得することが可能になる。
図13は、伝送路推定用フレームを連続的に送信して周期ノイズの検出を行う方法を示す図である。図13の例では、伝送路推定要求フレームを連続して10個送信している。図13の例では、10個の連続した伝送路推定要求フレームのフレーム長の総和は約12msecとなるため、半周期8.33msec(電源周期60Hz)をカバーしている。
このように、複数の伝送路推定要求フレームを連続して送信すると、周期ノイズの影響を反映した伝送路推定を確実に行うことが可能になる。
図14は、伝送路推定要求フレームを連続的に送信する場合の伝送路推定処理の詳細を示した図である。
次に、図14を用いて伝送路推定処理の詳細を述べる。図14は、送信機側の動作を示しており、図1の例で考えると、電力線通信端末105の処理フローとなる。なお、受信機側の処理フローは、図10(c)と同様になるので詳細は割愛する。
まず、CPU311は伝送路推定要求フレームの送信回数nをn=0と規定する(ステップS1211)。次に、ゼロクロス点検出回路401が伝送路102に供給される商用電源の交流電力波形、すなわち50Hz又は60Hzの正弦波からなる交流波形について電圧のゼロクロス点(もしくはその近傍の点)を検出する(ステップS1212)。なお、交流波形の周波数は、国ごとの仕様に応じて異なる。次に、タイマー1によって伝送路推定の実行周期を規定する(ステップS1213)。タイマー1は、メインIC310に設けられる(図示は省略する)。タイマー1によって、伝送路推定の実行周期が規定されると、CPU311によって伝送路推定の処理が開始される(ステップS1213)。次に、CPU311は、伝送路推定の処理フローに対して1msecのオフセット時間を付与する。(ステップS1214)。CPU311によってオフセット時間が付与された後に、通信相手の電力線通信端末106へ伝送路推定要求フレームを送信する(ステップS1215)。
CPU311が伝送路推定要求フレームを送信すると、タイマー2がリセットされ、通信相手の電力線通信端末106(105)からの伝送路推定結果の受付期間を規定する(ステップS1216)。なお、タイマー2は、メインIC310の内部に設置され(図示は省略する)。ステップS1217では、CPU311が伝送路推定結果の受信の有無を判定する。CPU311が電力線通信端末106からの伝送路推定結果(トーンマップ、PHY速度)を受信した場合は、その結果を伝送路推定結果格納部340bに格納する(ステップS1218)。次に、CPU311は伝送路推定の実行周期が満了したか否かを判断し(ステップS1221)、実効周期が満了した場合は、CPU311は送信回数nの値をn=n+1に更新する(ステップS1222)。次に、CPU311は送信回数nの値が所定の送信回数N(実施の形態では、N=12)より小さいか否かを判断する(ステップS1223)。送信回数nが所定の送信回数Nよりも小さい場合は、処理フローをステップS1213に戻す。
CPU311が伝送路推定結果を受信していない場合は、タイマー2で規定した受付期間が終了するまで電力線通信端末106からの伝送路推定結果を待つ(ステップS1219)。CPU311が伝送路推定結果を受信することなく受付期間を経過した場合は、伝送路推定結果格納部340bに、伝送路推定結果をPHY速度=0Mbps(もしくは非常に小さい値や負の値)として記憶する(ステップS1220)。
このように、伝送路推定を連続的に行うことによって、周期ノイズの影響を反映した伝送路推定結果を得ることができる。また、上述の例では、伝送路推定を周期ノイズに同期させて行っているが、特に周期ノイズに同期させずとも周期ノイズの影響を反映した伝送路推定結果を得ることができる。また、伝送路推定の回数を変更することによって、周期性を持たないノイズの影響を反映した伝送路推定を行うことも可能となる。
なお、伝送路推定要求フレームの送信回数Nは、交流電圧の周期に応じて決定しても良い。これにより、各国で用いられている仕様に柔軟に対応することが可能になる。送信回数Nは、CPU311が交流電圧の周期を計算することによって行う。
図15は、実効通信速度をより正確に推定する方法の概略を示したフローチャートである。
図15に示す推定方法では、図10(a)で述べた推定方法と同様に、伝送路推定のタイムアウト処理を行いながら、規定された複数回(例えば、12回)の伝送路推定を実施し、複数個の伝送路推定結果(PHY速度)を取得する(ステップS1301)。次に、ステップS1301によって求められた複数(12個)のPHY速度から平均値と最小値を求める(ステップS1302)。次に、ステップS1302で求めたPHY速度の最小値が負の値か否かを判断する(ステップS1303)。最小値が負の値の場合は、その値を0と置き換える(ステップS1304)。
次に、ステップS1302およびステップS1304によって求められたPHY速度の平均値および最小値を用いて、実効通信速度の推定に使用するPHYレートを計算する(ステップS1305)。図15の例でも、図10の場合と同様に、実効通信速度の推定に使用するPHY速度、PHY速度の平均値および最小値の関係を<最小値+(平均値−最小値)÷4>として規定している。これは、伝送路102上に存在する周期ノイズが原因となる通信データの損失が発生した際に、TCPが通信速度を低く抑えるフロー制御動作を考慮したものであり、実際に通信した値と推定値の違いを小さくする効果がある。なお、実効通信速度の推定に用いるPHY速度は、<最小値+(平均値−最小値)÷4>の替わりにPHY速度の平均値よりも小さなPHY速度を用いても構わない。例えば、実測値の最小値である。また、実効通信速度の推定に用いるPHY速度は任意の実数を乗じて重み付けを行っても構わない。
最後に、ステップS1305で求められた実効通信速度の推定に使用するPHY速度から、図7の特性図を参照して、実行通信速度を推定する(ステップS1306)。
PHY速度の最小値を反映して実効通信速度を求めることによって、実効通信速度をより正確に推定することが可能となる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、伝送路推定によって通信可能なPHY速度等の通信速度を求める際に、複数の伝送路推定方法を用いる例を説明する。
図16は、実施の形態2における第1の推定方法(推定方法1)の処理手順を示すフローチャートである。
図16に示す推定方法1では、CPU311は、通信相手の電力線通信端末に伝送路推定要求を送出する。この際、伝送路推定要求は、例えば0.5秒周期で12回発行する(ステップS1601)。そして、通信相手の電力線通信端末から、伝送路推定結果をN1回受信する(ステップS1602)。ここで、受信回数N1はN1≦12であり、伝送路推定結果を正常に受信できた回数を示す。
次に、CPU311は、応答が得られたN1回の伝送路推定結果(PHY速度)の平均値Ave1を算出する(ステップS1603)。また、N1回の伝送路推定結果(PHY速度)のうち、最低値Min1を求める(ステップS1604)。そして、伝送路状態を示すPHY速度の代表値Eval1を算出する(ステップS1605)。この際、Eval1=(Ave1+Min1)÷2によってPHY速度の代表値Eval1を求める。上記算出した代表値Eval1を推定方法1による推定結果とする。
図17は、実施の形態2における第2の推定方法(推定方法2)の処理手順を示すフローチャートである。
図17に示す推定方法2では、CPU311は、推定方法1と同様に、通信相手の電力線通信端末に対して、伝送路推定要求を例えば0.5秒周期で12回発行して送出する(ステップS1701)。そして、通信相手の電力線通信端末から、伝送路推定結果をN2回受信する(ステップS1702)。ここで、受信回数N2はN2≦12であり、伝送路推定結果を正常に受信できた回数を示す。この場合、応答が無かった(12−N2)回の結果を0Mbpsとする(ステップS1703)。
次に、CPU311は、応答が無かったか測定が不能であった場合を含めて、全12回の伝送路推定結果(PHY速度)の平均値Ave2を算出する(ステップS1704)。そして、伝送路状態を示すPHY速度の代表値Eval2を算出する(ステップS1705)。この際、Eval2=Ave2によってPHY速度の代表値Eval2を求める。
続いて、応答のあったN2回の伝送路推定結果(PHY速度)の最大値と最小値の差Δ2を求める(ステップS1706)。そして、最大値と最小値の差Δ2が10Mbpsより大きいかどうかを判定し(ステップS1707)、Δ2が10Mbpsより大きい場合は再送率を考慮して積算した代表値Eval2を算出する(ステップS1708)。この際、再送率を35%とし、Eval2=Eval2×(1−0.35)によって代表値Eval2を求める。そして、上記算出した代表値Eval2を推定方法2による推定結果とする。一方、ステップS1708でΔ2が10Mbps以下の場合は、再送率を考慮せずにそのまま代表値Eval2を推定方法2による推定結果とする。
図18は、実施の形態2における第3の推定方法(推定方法3)の処理手順を示すフローチャートである。
図18に示す推定方法3では、CPU311は、推定方法2と同様に、通信相手の電力線通信端末に対して、伝送路推定要求を例えば0.5秒周期で12回発行して送出する(ステップS1801)。そして、通信相手の電力線通信端末から、伝送路推定結果をN3回受信する(ステップS1802)。ここで、受信回数N3はN3≦12であり、伝送路推定結果を正常に受信できた回数を示す。この場合、応答が無かった(12−N3)回の結果を0Mbpsとする(ステップS1803)。
次に、CPU311は、応答が無かったか測定が不能であった場合を含めて、全12回の伝送路推定結果(PHY速度)の平均値Ave3を算出する(ステップS1804)。そして、伝送路状態を示すPHY速度の代表値Eval3を算出する(ステップS1805)。この際、Eval3=Ave3によってPHY速度の代表値Eval3を求める。
続いて、応答が無かったか測定が不能であった場合を含めて、全12回の伝送路推定結果(PHY速度)の最大値と最小値の差Δ3を求める(ステップS1806)。そして、最大値と最小値の差Δ3が10Mbpsより大きいかどうかを判定し(ステップS1807)、Δ3が10Mbpsより大きい場合は再送率を考慮して積算した代表値Eval3を算出する(ステップS1808)。この際、再送率を35%とし、Eval3=Eval3×(1−0.35)によって代表値Eval3を求める。そして、上記算出した代表値Eval3を推定方法3による推定結果とする。一方、ステップS1808でΔ3が10Mbps以下の場合は、再送率を考慮せずにそのまま代表値Eval3を推定方法3による推定結果とする。
図19〜図23は想定されるいくつかの伝送路状態において、上述した複数の推定方法1〜3を用いた各推定結果を例示したものである。
図19はケース1として、伝送路状態が悪く、ノイズ変動の影響がある場合の伝送路推定結果の算出例その1を示す図である。なお、図19〜図23において、番号1〜12は各回のPHY速度の測定値、番号13は推定方法1による伝送路推定結果Eval1、番号14は推定方法2による伝送路推定結果Eval2、番号15は推定方法3による伝送路推定結果Eval3をそれぞれ示している。
このケース1は、12回目が応答なしまたは測定不能であった例を示す。推定方法1では、応答があった11回の測定値の平均値Ave1を求め、平均値Ave1≒20.6であるので、伝送路推定結果Eval1は(Ave1+Min1)÷2=(20.6+19.0)÷2≒19.8Mbpsとなる。この算出結果Eval1=19.8Mbpsをそのまま推定方法1による伝送路推定結果Eval1として採用する。推定方法1の場合は、単純に応答があった測定結果だけから推定した結果となる。
また、推定方法2では、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave2を求める。平均値Ave2≒18.9であるので、伝送路推定結果Eval2はEval2=Ave2≒18.9Mbpsとなる。次に、応答のあった11回の最大値と最小値の差Δ2を求めると、Δ2=3となる。この場合はΔ2が10Mbps以下のため、再送率を考慮せずにそのまま算出結果Eval2=18.9Mbpsを推定方法2による伝送路推定結果Eval2として採用する。推定方法2の場合は、応答が無かった場合を含めて、精度良く推定した結果となる。
また、推定方法3では、推定方法2と同様、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave3を求め、平均値Ave3≒18.9であるので、伝送路推定結果Eval3はEval3=Ave3≒18.9Mbpsとなる。次に、応答なしの場合を含めた全12回の最大値と最小値の差Δ3を求めると、Δ3=22となる。この場合はΔ3が10Mbpsより大きいため、再送率を考慮してEval3=Eval3×(1−0.35)=18.9×(1−0.35)≒12.3Mbpsとなる。この算出結果Eval3=12.3Mbpsを推定方法3による伝送路推定結果Eval3として採用する。推定方法3の場合は、応答が無かった場合の測定値を大きく評価し、更に精度良く推定した結果となる。
上記ケース1において、推定方法1のみならず、推定方法2でもノイズによる変動の影響を十分に表せない場合があるが、推定方法3を用いることによって、ノイズによる変動の影響を考慮した伝送路推定結果を得ることができる。なお、Δ2およびΔ3の大きさが一定以上の場合に再送率を乗じることで正確な推定結果を得ることができるが、高速伝送が可能な場所では測定値の振れによりΔ2およびΔ3は10Mbpsを超えることがありえる。そこで、Eval2およびEval3の値の範囲により、Δ2およびΔ3を比較する値を変えてもよい。例えば、Eval2およびEval3が60Mbps以下の場合はΔ2およびΔ3を10Mbpsと比較し、60Mbpsより大きい場合はΔ2およびΔ3を20Mbpsと比較してもよい。ただし、後述の速度推定結果を表示する機能において、一定速度以上の場合は全て同じ表示とするような処理を行う際は、このような範囲分けを行わなくとも結果として同じとなる場合もある。
図20はケース2として、伝送路状態が悪く、ノイズ変動の影響がある場合の伝送路推定結果の算出例その2を示す図である。
このケース2は、10〜12回目の計3回が応答なしまたは測定不能であった例を示す。推定方法1では、応答があった9回の測定値の平均値Ave1を求め、平均値Ave1≒20.3であるので、伝送路推定結果Eval1は(Ave1+Min1)÷2=(20.3+19.0)÷2≒19.7Mbpsとなる。この算出結果Eval1=19.7Mbpsをそのまま推定方法1による伝送路推定結果Eval1として採用する。
また、推定方法2では、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave2を求める。平均値Ave2≒15.3であるので、伝送路推定結果Eval2はEval2=Ave2≒15.3Mbpsとなる。次に、応答のあった9回の最大値と最小値の差Δ2を求めると、Δ2=3となる。この場合はΔ2が10Mbps以下のため、再送率を考慮せずにそのまま算出結果Eval2=15.3Mbpsを推定方法2による伝送路推定結果Eval2として採用する。
また、推定方法3では、推定方法2と同様、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave3を求め、平均値Ave3≒15.3であるので、伝送路推定結果Eval3はEval3=Ave3≒15.3Mbpsとなる。次に、応答なしの場合を含めた全12回の最大値と最小値の差Δ3を求めると、Δ3=22となる。この場合はΔ3が10Mbpsより大きいため、再送率を考慮してEval3=Eval3×(1−0.35)=15.3×(1−0.35)≒9.9Mbpsとなる。この算出結果Eval3=9.9Mbpsを推定方法3による伝送路推定結果Eval3として採用する。
上記ケース2において、推定方法1ではノイズによる変動の影響を十分に表せない場合があるが、推定方法2を用いることによって、ノイズによる変動の影響を考慮した伝送路推定結果を得ることができる。また、推定方法3を用いることによって、更にノイズによる変動の影響を明確に反映した伝送路推定結果を得ることができる。
図21はケース3として、伝送路状態は良くないが、ノイズによる変動の影響がない場合の伝送路推定結果の算出例を示す図である。
このケース3は、12回の全てにおいて測定結果が得られた例を示す。推定方法1では、応答があった12回の測定値の平均値Ave1を求め、平均値Ave1≒30.9であるので、伝送路推定結果Eval1は(Ave1+Min1)÷2=(30.9+29.0)÷2≒30.0Mbpsとなる。この算出結果Eval1=30.0Mbpsをそのまま推定方法1による伝送路推定結果Eval1として採用する。
また、推定方法2では、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave2を求めるが、12回全てで応答が得られているため、推定方法1と同様に平均値Ave2≒30.9となり、伝送路推定結果Eval2はEval2=Ave2≒30.9Mbpsとなる。次に、応答のあった12回の最大値と最小値の差Δ2を求めると、Δ2=3となる。この場合はΔ2が10Mbps以下のため、再送率を考慮せずにそのまま算出結果Eval2=30.9Mbpsを推定方法2による伝送路推定結果Eval2として採用する。
また、推定方法3では、推定方法2と同様、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave3を求め、平均値Ave3≒30.9であるので、伝送路推定結果Eval3はEval3≒30.9Mbpsとなる。次に、応答なしの場合を含めた全12回の最大値と最小値の差Δ3を求めるが、12回全てで応答が得られているため、推定方法2と同様にΔ3=3となる。よって、Δ3が10Mbps以下のため、再送率を考慮せずにそのまま算出結果Eval3=30.9Mbpsを推定方法3による伝送路推定結果Eval3として採用する。
上記ケース3においては、ノイズによる変動の影響がないため、伝送路状態の測定結果が安定しており、推定方法1、2、3のいずれにおいても的確な伝送路推定結果を得ることができる。
図22はケース4として、伝送路状態が良く、ノイズによる変動の影響がない場合の伝送路推定結果の算出例を示す図である。
このケース4は、12回の全てにおいて良好な測定結果が得られた例を示す。推定方法1では、応答があった12回の測定値の平均値Ave1を求め、平均値Ave1≒110.2であるので、伝送路推定結果Eval1は(Ave1+Min1)÷2=(110.2+101.0)÷2≒105.6Mbpsとなる。この算出結果Eval1=105.6Mbpsをそのまま推定方法1による伝送路推定結果Eval1として採用する。
また、推定方法2では、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave2から伝送路推定結果Eval2を求めるが、12回全てで応答が得られているため、推定方法1と同様に平均値Ave2≒110.2となり、伝送路推定結果Eval2はEval2=Ave2≒110.2Mbpsとなる。次に、応答のあった12回の最大値と最小値の差Δ2を求めると、Δ2=13となる。この場合はΔ2が10Mbpsより大きいため、再送率を考慮してEval2=Eval2×(1−0.35)=110.2×(1−0.35)≒71.6Mbpsとなる。この算出結果Eval2=71.6Mbpsを推定方法2による伝送路推定結果Eval2として採用する。
また、推定方法3では、推定方法2と同様、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave3を求め、平均値Ave3≒110.2であるので、伝送路推定結果Eval3はEval3≒110.2Mbpsとなる。次に、応答なしの場合を含めた全12回の最大値と最小値の差Δ3を求めるが、12回全てで応答が得られているため、推定方法2と同様にΔ3=13となる。よって、推定方法2と同様、再送率を考慮してEval3=Eval3×(1−0.35)≒71.6Mbpsとなり、この算出結果Eval3=71.6Mbpsを推定方法3による伝送路推定結果Eval3として採用する。
上記ケース4においては、伝送路状態が良好であるため、推定方法1、2、3のいずれにおいても的確な伝送路推定結果を得ることができる。この場合、測定値の最大値と最小値の差が10Mbps以上あるため、推定方法2、3では再送率を考慮して低めの伝送路推定結果となる。ただし、元の伝送路推定結果の数値が大きいため、伝送路推定結果の表示においては差が出ず、結果への影響はない。
図23はケース5として、伝送路状態が悪く、ノイズ変動の影響がある場合の伝送路推定結果の算出例その3を示す図である。
このケース5は、12回の全てにおいて測定結果が得られたものの、測定結果のバラツキが大きい例を示す。推定方法1では、応答があった12回の測定値の平均値Ave1を求め、平均値Ave1≒24.7であるので、伝送路推定結果Eval1は(Ave1+Min1)÷2=(24.7+15.0)÷2≒19.8Mbpsとなる。この算出結果Eval1=19.8Mbpsをそのまま推定方法1による伝送路推定結果Eval1として採用する。
また、推定方法2では、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave2を求めるが、12回全てで応答が得られているため、推定方法1と同様に平均値Ave2≒24.7となり、伝送路推定結果Eval2はEval2=Ave2≒24.7Mbpsとなる。次に、応答のあった12回の最大値と最小値の差Δ2を求めると、Δ2=15となる。この場合はΔ2が10Mbpsより大きいため、再送率を考慮してEval2=Eval2×(1−0.35)=24.7×(1−0.35)≒16.0Mbpsとなる。この算出結果Eval2=16.0Mbpsを推定方法2による伝送路推定結果Eval2として採用する。
また、推定方法3では、推定方法2と同様、応答なしの場合(0Mbps)を含めた12回の測定値の平均値Ave3を求め、平均値Ave3≒24.7であるので、伝送路推定結果Eval3はEval3≒24.7Mbpsとなる。次に、応答なしの場合を含めた全12回の最大値と最小値の差Δ3を求めるが、12回全てで応答が得られているため、推定方法2と同様にΔ3=15となる。よって、推定方法2と同様、再送率を考慮してEval3=Eval3×(1−0.35)≒16.0Mbpsとなり、この算出結果Eval3=16.0Mbpsを推定方法3による伝送路推定結果Eval3として採用する。
上記ケース5においては、測定値の最大値と最小値の差が10Mbps以上あるため、推定方法2、3では再送率を考慮した伝送路推定結果となる。この推定方法2、3によって、ノイズによる変動の影響を十分に表した伝送路推定結果を得ることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、複数の伝送路推定方法によって得られた伝送路推定結果の表示について説明する。
図24は、実施の形態3における伝送路推定結果の表示方法の処理手順を示すフローチャートである。実施の形態3は、前述した実施の形態2における推定方法1及び推定方法2の2つの推定方法を用いた場合を例示する。ここでは、伝送路推定結果の表示手段の一例として、図4(a)、(b)に示したLED205A、205B、205Cのように、3つの発光素子を持つ表示部を用い、伝送路推定結果として得られた伝送路状態を示す通信可能な速度を、通信速度として表示部に表示する。
まず、推定方法1によって伝送路状態を示す通信速度の代表値Val(max)を求める(ステップS2401)。次いで、推定方法2によって伝送路状態を示す通信速度の代表値Val(min)を求める(ステップS2402)。そして、代表値Val(max)とVal(min)のそれぞれの値に基づき、通信可能な通信速度に対応する表示部のLEDの点灯数(Ln1、Ln2)を求める(ステップS2403)。そして、表示部において、LEDの点灯数Ln1、Ln2によって交互に通信速度の最大値と最小値を表示する(ステップS2404)。
図25は、表示部におけるLEDの通信速度の表示例を示す図である。図25において、黒色が点灯状態、白色が消灯状態を示している。本例では、3つのLEDを用いて、通信不能の場合はLEDの点灯数を0とし、通信速度が10Mbps未満の場合はLEDの点灯数を1とする。また、通信速度が10Mbps〜30Mbpsの場合はLEDの点灯数を2とし、通信速度が30Mbps以上の場合はLEDの点灯数を3とする。このように、LEDの点灯数によって通信速度を表示することによって、ユーザが現状の伝送路状態及びこの環境における通信可能な伝送レートを、容易に認識することができる。この場合、通信速度は、PHY速度ではなく、UDP速度やTCP速度で表示する方が好ましい。
図26は、伝送路推定結果と表示部のLED点灯数との関係を示す特性図である。ここでは、伝送路推定結果として求めたPHY速度から、UDP速度での通信速度を表示する場合のLED点灯数を求める例を示す。推定方法1と推定方法2のそれぞれでPHY速度Val1(PHY)、Val2(PHY)を求め、これらのPHY速度からLED点灯数を算出する。例えば、推定方法1によるPHY速度Val1(PHY)が80Mbpsであった場合、図26の特性図の関係からUDP速度は58Mbpsとなり、これをVal(max)とする(図中の白星印☆参照)。よって、通信速度の最大値としてLED点灯数Ln1=3個で表示する。また、推定方法2によるPHY速度Val2(PHY)が40Mbpsであった場合、UDP速度は28Mbpsとなり、これをVal(min)とする(図中の黒星印★参照)。よって、通信速度の最小値としてLED点灯数Ln2=2個で表示する。
図27は、推定方法1と推定方法2のそれぞれの伝送路推定結果を時系列に表示する場合の表示例を示す図である。ここでは、複数の伝送路推定結果を時系列に表示する例として、推定方法1による伝送路推定結果の通信速度を示すLED点灯数Ln1と、推定方法2による伝送路推定結果の通信速度を示すLED点灯数Ln2とを1秒おきに交互に表示する場合を例示する。ここで1秒おきに交互に3回ずつ表示しているが、この表示時間および回数は任意の値に変えてもよい。図27(a)はLn1=3、Ln2=3の場合であり、両方の推定結果が30Mbps以上で伝送路状態が良好な場合を示すものである。図27(b)はLn1=3、Ln2=2の場合、図27(c)はLn1=3、Ln2=1の場合であり、推定方法1による推定結果が30Mbps以上で、推定方法2による推定結果が10Mbps〜30Mbpsまたは30Mbps以下であり、ノイズ変動による影響がある場合を示すものである。図27(d)はLn1=2、Ln2=2の場合であり、両方の推定結果が10Mbps〜30Mbpsであり、伝送路状態があまり良くない場合を示すものである。図27(e)はLn1=2、Ln2=1の場合であり、推定方法1による推定結果が10Mbps〜30Mbpsで、推定方法2による推定結果が30Mbps以下であり、伝送路状態が良くなく、ノイズ変動による影響がある場合を示すものである。
このように、推定方法1による伝送路推定結果と推定方法2による伝送路推定結果を交互に表示することによって、ノイズ変動が無くなった場合の通信速度と、現在のノイズが存在する状態での通信速度との両方を表示することができる。これにより、ユーザが最良な場合での通信可能な伝送レートと、ノイズ変動の影響を含めた実質的な伝送レートとを認識することが可能である。なお、伝送路推定結果の通信速度を通知する推定結果通知部としては、上述したLEDによる表示部に限らず、液晶表示器による通信速度の数値表示を行う表示部などでもよく、あるいは、音によってユーザに通知するものを用いてもよい。音による通信速度の通知方法としては、音の高さで速度を表し、2つの推定方法による通信速度を音の高さを変えることで表現したり、音の大きさで速度を表し、2つの推定方法による通信速度を音の大きさを変えることで表現するなどが挙げられる。
(実施の形態4)
実施の形態4では、通信端末間において双方向の伝送路推定を行う例を説明する。
図28は、一方向の伝送路推定による伝送路推定結果を説明する図であり、(a)は伝送路推定手順を、(b)は伝送路推定結果を示している。
上述した実施の形態1〜3では、図28(a)に示すように、第1の電力線通信端末PLC1(105)から第2の電力線通信端末PLC2(106)へ伝送路推定要求を送信し、第2の電力線通信端末PLC2において伝送路推定要求の受信によって伝送路推定を実行し、この伝送路推定結果を応答として第1の電力線通信端末PLC1に返信するようにしている。この伝送路推定処理は例えば12回実行する。この場合、第1の電力線通信端末PLC1から第2の電力線通信端末PLC2への一方向(PLC1→PLC2方向のみ)の通信速度だけしか測定することができない。
実際の伝送路では、ノイズ源に近い側から送信する方がSNが良いため、通信速度が高くなる。つまり、2つの通信端末間で通信方向によって通信速度が非対称な場合がある。図28(b)に示すように、例えば第1の電力線通信端末PLC1の近傍にノイズ源がある場合に、第1の電力線通信端末PLC1から第2の電力線通信端末PLC2への通信方向のPHY速度が38Mbpsであり、第2の電力線通信端末PLC2から第1の電力線通信端末PLC1への通信方向のPHY速度が23Mbpsであったとする。このような状態で、実際のデータ通信において測定する方向が、伝送路推定による簡易速度測定と逆の方向である場合、推定結果と実測値とが異なってしまう。そこで、実施の形態4では、反対方向の伝送路推定を実行し、双方の推定結果の最大値、最小値を表示することによって、推定結果と実際の通信速度との差を小さくする。
図29は、実施の形態4において双方向の伝送路推定を行う手順を示す図である。まず、第1の電力線通信端末PLC1から第2の電力線通信端末PLC2へ伝送路推定実行要求を送信する。第2の電力線通信端末PLC2は、この伝送路推定実行要求を受信すると、正常に受信できたことを示す応答としてACKを返信する。次に、第2の電力線通信端末PLC2は、第1の電力線通信端末PLC1に対して伝送路推定要求を送信し、第1の電力線通信端末PLC1において伝送路推定要求の受信によって伝送路推定を実行し、この伝送路推定結果を応答として第2の電力線通信端末PLC2に返信する。この伝送路推定処理は例えば12回実行する。そして、第1の電力線通信端末PLC1は、PLC2→PLC1方向の伝送路推定処理が完了する一定時間待機した後、第2の電力線通信端末PLC2に対して伝送路推定最終結果要求を送信し、伝送路推定の最終結果を問い合わせる。これに応じて、第2の電力線通信端末PLC2は最終的に求めたPLC2→PLC1方向の伝送路推定結果の代表値を応答として第1の電力線通信端末PLC1に返信する。
なおこの場合、上記手順を変更した変形例も可能である。例えば、第1の電力線通信端末PLC1は、第2の電力線通信端末PLC2から送られてくる伝送路推定要求パケットを受信して計算した伝送路推定結果を集めて自端末に保持しておき、PLC2→PLC1方向の伝送路推定結果の代表値を算出してもよい。また、PLC2→PLC1方向の最終の伝送路推定結果は、第2の電力線通信端末PLC2が算出完了後に伝送路推定最終結果要求を待たずに第1の電力線通信端末PLC1へ通知するようにしてもよい。
次に、本実施形態における双方向の伝送路推定結果の表示について説明する。
図30は、双方向の伝送路推定結果を示す図である。また、図31は、実施の形態4における伝送路推定結果の表示方法の処理手順を示すフローチャートである。
ここでは、図30(a)、(b)に示すように、第1の電力線通信端末PLC1から第2の電力線通信端末PLC2へのPLC1→PLC2方向の伝送路推定結果をEval12とし、その最大値をEval12(max)、最小値をEval12(min)とする。また、第2の電力線通信端末PLC2から第1の電力線通信端末PLC1へのPLC2→PLC1方向の伝送路推定結果をEval21とし、その最大値をEval21(max)、最小値をEval21(min)とする。
まず、伝送路推定結果として伝送路状態を示す通信速度の最大値の代表値Val(max)をVal(max)=Eval12(max)とする(ステップS3101)。また、伝送路状態を示す通信速度の最小値の代表値Val(min)をVal(min)=Eval12(min)とする(ステップS3102)。そして、2つの方向の伝送路推定結果の最大値であるEval12(max)とEval21(max)とを比較する(ステップS3103)。ここで、Eval12(max)がEval21(max)より大きい場合はそのままVal(max)=Eval12(max)を採用し、Eval12(max)がEval21(max)より小さい場合は、Val(max)=Eval21(max)とする(ステップS3104)。
また、2つの方向の伝送路推定結果の最小値であるEval12(min)とEval21(min)とを比較する(ステップS3105)。ここで、Eval12(min)がEval21(min)より小さい場合はそのままVal(min)=Eval12(min)を採用し、Eval12(min)がEval21(min)より大きい場合は、Val(min)=Eval21(min)とする(ステップS3106)。
その後、代表値Val(max)とVal(min)のそれぞれの値に基づき、通信可能な通信速度に対応する表示部のLEDの点灯数(Ln1、Ln2)を求める(ステップS3107)。そして、表示部において、LEDの点灯数Ln1、Ln2によって交互に通信速度の最大値と最小値を表示する(ステップS3108)。これにより、双方向の伝送路推定結果を反映した通信速度の最大値と最小値とを表示することができる。なお、変形例として、双方向の伝送路推定結果の最大値と最小値を表示するのに代えて、2つの方向の伝送路推定結果の平均をとって最終的な推定結果を算出し、この推定結果の表示等を行うようにしてもよい。
上記のように、2つの通信端末間で双方向の伝送路推定を行い、通信速度の表示等を行うことによって、通信方向によって伝送路推定結果が異なる場合に、両方向の伝送路推定結果をそれぞれ取得でき、ユーザにおいては通信方向で異なる伝送路推定結果の把握や、この伝送路状態を反映した通信速度の認識が可能となる。