JP5188317B2 - 水素吸蔵材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水素ガスを可逆的に吸蔵又は放出することが可能な水素吸蔵材及びその製造方法に関する。
燃料電池は、周知のように、アノードに水素等の燃料ガスが供給される一方でカソードに酸素等の酸化剤ガスが供給されて発電する。従って、例えば、燃料電池を搭載した燃料電池車では、水素を充填したガス貯蔵用容器が搭載される。燃料電池車は、酸化剤ガスとしての大気と、前記ガス貯蔵用容器から供給された水素とを反応ガスとして走行する。
このことから諒解されるように、ガス貯蔵用容器の水素収容量が大きいほど燃料電池車を長距離にわたって走行させることができる。しかしながら、過度に大きなガス貯蔵用容器を搭載することは、燃料電池車の重量を大きくすることになり、結局、燃料電池の負荷が大きくなるという不具合を招く。
この観点から、ガス貯蔵用容器の体積を小さく維持しながら水素収容量を向上させる様々な試みがなされている。例えば、特許文献1では、水素を可逆的に吸蔵・放出する水素吸蔵材の1種であるAlH3を使用し、水素収容量の向上を試みている。
ここで、図7に示すように、結晶性のAlH3(結晶質AlH3)1は、略正方形に近似されるマトリックス相2と、該マトリックス相2、2同士の間に介在する粒界相3とが存在する微細組織を有する。この場合、マトリックス相2の辺長t1は概ね100μm、粒界相3の幅w1は数μmであり、組織内において粒界相3が占める割合は数体積%である。この結晶質AlH3につきX線回折測定を行うと、α相、β相、γ相の少なくともいずれかに由来するシャープなピークが出現する回折パターンが得られる。
なお、マトリックス相は、AlとHが結晶格子を形成したAlH3からなり、一方、粒界相は、非晶質AlにHが固溶した状態である。
AlH3は、下記の式(1)に従って水素を放出する一方、式(2)に従って水素を吸蔵する。なお、式(1)、(2)は任意の吸蔵/放出サイトでの反応を示すものであり、AlH3のすべてが酸化・還元されることを意味するものではない。
AlH3→Al+3/2H2 …(1)
Al+3/2H2→AlH3 …(2)
上記式(1)の放出反応は比較的容易に進行するものの、式(2)の吸蔵反応を進行させることは困難である。すなわち、Alサイトを水素化する際の活性化エネルギが極めて大きいからである。例えば、非特許文献1には、AlをH2ガスに接触させる気相法で水素化を行うにあたっては、280〜300℃で2.5GPa(約25000気圧)よりも高圧とする必要がある、との記載がある。該非特許文献1によれば、反応温度を450〜550℃とした場合には、さらに高圧の4〜6GPaが必要である。
しかしながら、一般的なガス貯蔵用容器の充填圧力は35〜75MPa(約350〜750気圧)程度である。このため、前記非特許文献1の記載に従えば、このような通常の圧力下では上記式(2)の吸蔵反応が進行しない。結局、AlH3を水素吸蔵材として実用化することは困難である。
そこで、前記特許文献1に記載されるように、AlH3に対してTiとNaHを添加した後に圧力を100気圧(約10MPa)とした水素雰囲気下でボールミルを行うことで前記Ti及び前記NaHをAlH3にドープすることが想起される。特許文献1によれば、これによりAlH3が水素ガスを再度吸蔵するようになる、ということである。
特開2004−18980号公報(特に、段落[0054]〜[0062]) セルゲイ ケー コノバロフ、ボリス エム ブルシェフ 無機化学 1995年第34巻第172頁〜第175頁(Sergei K. Konovalov,Boris M. Bulychev Inorganic Chemistry 1995, 34, 172-175)(特に、第173頁右欄第26行〜第28行、図2)
特許文献1に記載された手法では、水素を再吸蔵させるために10MPaが必要であるが、上記のように燃料電池車に供給する水素ガスを吸蔵するためのガス貯蔵用容器に水素吸蔵材を収容して使用する場合、燃料電池車の走行に伴って水素量が低減する度に高圧を付加することは実用的でない。このため、今なお、上記式(2)の吸蔵反応を可及的に低圧下で進行させることが希求されている。
しかも、前記特許文献1によれば、AlH3は約130℃から水素を放出し始め、200℃までに吸蔵した水素の全量を放出する、とのことである。従って、結晶質AlH3を収容したガス貯蔵用容器を燃料電池車に搭載する場合、該ガス貯蔵用容器から燃料電池に多量の水素を供給するためには、ガス貯蔵用容器が130℃以上となるまで熱を供給しなければならない。このため、燃料電池車における他の箇所に供給する熱量が少なくなるので、燃料電池車のシステム全体の熱効率を向上させることが容易ではない。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、水素吸蔵反応を低圧で進行させることが可能であり、且つ水素放出反応を低温で進行させることが可能な水素吸蔵材及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、水素を可逆的に吸蔵・放出可能な水素吸蔵材であって、
複数個のマトリックス相と、前記マトリックス相同士の間に介在する粒界相とが存在する組織を有し、
前記マトリックス相がAlからなるとともにその1辺の長さが1〜200nmであり、
前記粒界相がAlHx(ただし、0<x≦3)のアモルファス相からなり、
且つ前記マトリックス相及び粒界相に金属ナノ粒子が分散して存在することを特徴とする。
上記したように、結晶質AlH3の微細組織には、略正方形に近似され辺長が概ねμmオーダーであるマトリックス相と、該マトリックス相同士の間に介在して水素を固溶した粒界相とが存在する。また、結晶質AlH3につきX線回折測定を行うと、シャープなピークが出現する回折パターンが得られる。しかしながら、このような構成の結晶質AlH3は、圧力が所定の大きさまで到達しないかぎり、水素をほとんど吸蔵しない。
これに対し、本発明に係る水素吸蔵材は、圧力が小さいときにも多量の水素を吸蔵することが可能となる。この理由は、本発明に係る水素吸蔵材においては、マトリックス相に比して水素の吸蔵・放出が容易な粒界相が占める割合が結晶質AlH3に比して大きいからであると推察される。すなわち、本発明に係る水素吸蔵材には、水素の吸蔵・放出が容易な粒界相が豊富に存在する。
しかも、本発明においては、金属ナノ粒子が水素ガス(水素分子)を水素原子に解離する触媒作用を営む。これにより水素が活性化されるため、粒界相が水素を吸蔵(固溶)することが一層容易となる。
以上のような理由から、本発明においては、低圧であっても水素を多量に吸蔵することが可能となる。
その一方で、本発明においては、粒界相に保持された水素を放出させるのに要するエネルギが比較的小さい。換言すれば、比較的低温であっても、この粒界相から水素を放出させることが容易である。実際、本発明に係る水素吸蔵材において、水素の放出が開始される温度は100℃以下である。
このように、本発明によれば、低圧で水素吸蔵反応を進行させることが可能である一方、低温で水素放出反応を進行させることが可能である。従って、例えば、この水素吸蔵材を収容したガス貯蔵用容器を燃料電池車に搭載した場合、該ガス貯蔵用容器内の圧力を高める設備を付設する必要がないので、燃料電池車の構成が簡素化される。また、該ガス貯蔵用容器に供給する熱量を低減することができるので、余剰の熱量を別の箇所に供給することが可能となる。このため、燃料電池車のシステム全体の熱効率を向上させることができる。
なお、上記の構成において、金属ナノ粒子の好適な例としては遷移金属、特に、Ni、Fe、Pdを挙げることができる。
また、本発明に係る水素吸蔵材の製造方法は、AlHに対して金属ナノ粒子を添加して混合物とした後、前記混合物中のAlHを脱水素化してAlに変化させる工程と、
前記金属ナノ粒子及び前記Alを含んだ前記混合物に対し、水素雰囲気中で10G〜30G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与する条件でボールミリングを行うことで、Alからなるとともにその1辺の長さが1〜200nmである複数個のマトリックス相と、前記マトリックス相同士の間に介在してAlHx(ただし、0<x≦3)のアモルファス相からなり且つ水素を固溶した粒界相とが存在する組織を有するとともに、前記マトリックス相及び粒界相に前記金属ナノ粒子が分散して存在する水素吸蔵材とする工程と、
を有し、
前記水素雰囲気の圧力を0.1〜2MPaに設定するとともに、前記ボールミリングを10分超〜60分未満の間で行うことを特徴とする。
なお、AlHを脱水素した後に金属ナノ粒子を添加して混合物を得るようにしてもよい。すなわち、本発明に係る別の水素吸蔵材の製造方法は、AlHを脱水素化してAlに変化させる工程と、
得られた前記Alに対して金属ナノ粒子を添加して混合物とする工程と、
前記混合物に対し、水素雰囲気中で10G〜30G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与する条件でボールミリングを行うことで、Alからなるとともにその1辺の長さが1〜200nmである複数個のマトリックス相と、前記マトリックス相同士の間に介在してAlHx(ただし、0<x≦3)のアモルファス相からなり且つ水素を固溶した粒界相とが存在する組織を有するとともに、前記マトリックス相及び粒界相に前記金属ナノ粒子が分散して存在する水素吸蔵材とする工程と、
を有し、
前記水素雰囲気の圧力を0.1〜2MPaに設定するとともに、前記ボールミリングを10分超〜60分未満の間で行うことを特徴とする。
本発明においては、ボールミリング時、AlH3に10G〜30Gという大きな力が作用する。この力により、結晶質AlH3の微細組織がナノ化するとともに、前記金属ナノ粒子の作用下に雰囲気中の水素ガスが水素原子に解離される。上記したように、この水素原子がアモルファス相からなる粒界相に固溶される。
すなわち、本発明によれば、ボールミリングを行ってAlH3に力を付与するという工程を付加するのみで、0.1〜2MPaという比較的低圧であっても水素を多量に吸蔵可能であり、且つ低温であっても水素を多量に放出可能な水素吸蔵材を得ることが可能となる。
ここで、AlH3ではなく市販のAl粉末を出発原料として上記と同様に真空熱処理及びボールミリングを行っても、水素の吸蔵・放出が殆ど認められない最終生成物が得られるのみである。すなわち、AlH3を原材料して用いることにより、水素を容易に吸蔵・放出可能な水素吸蔵材が得られる。
なお、上記したように、前記金属ナノ粒子としてはNi、Fe、Pdが好適に用いられる。
本発明によれば、水素吸蔵材を構成する微細組織に金属ナノ粒子を含ませ、この金属ナノ粒子によって周囲の水素ガス(水素分子)を水素原子に解離するようにしている。生成した水素原子は、前記微細組織中に多量に存在する粒界相に容易に吸蔵(固溶)される。このため、低圧であっても水素を多量に吸蔵することが可能である。しかも、このように構成された水素吸蔵材は、低温であっても水素を多量に放出することができる。
従って、該水素吸蔵材を収容したガス貯蔵用容器に対し、加熱装置を付設したり、耐圧を向上させるための特別な構造を設けたりする必要がない。このため、ガス貯蔵用容器の構成を簡素なものとすることができるとともに、設備投資が高騰することを回避することができる。
以下、本発明に係る水素吸蔵材及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る水素吸蔵材10の微細組織を模式的に表した組織構造説明図である。この図1中の参照符号12は、前記マトリックス相を表す。そして、マトリックス相12、12の間には粒界相14が介在する。
この水素吸蔵材10では、マトリックス相12は、隅部が湾曲した四辺形状に近似し得、その辺長t2は1〜200nmの範囲内である。一方、粒界相14の幅w2は、例えば、1〜数nmであるが、10nmを超える箇所や、マトリックス相12の辺長t2を超える箇所も認められる。また、図1から諒解されるように、粒界相14が占める割合が結晶質AlH3よりも大きく、約20〜90体積%にも及ぶ。
マトリックス相12は、AlH3が解離したAlからなり、この解離したHは粒界相14に固溶している。すなわち、粒界相14はAlHx(ただし、0<x≦3)からなる。
以上のマトリックス相12及び粒界相14には、金属ナノ粒子16がランダムに分散している。要するに、この場合、金属ナノ粒子16は、マトリックス相12又は粒界相14のいずれか一方のみに担持されているのではなく、マトリックス相12及び粒界相14の双方に担持されている。
なお、金属ナノ粒子16の粒径はnmオーダー、典型的には1〜200nmの範囲内であり、より好ましくは1〜100nmである。この場合、後述するように結晶質AlH3から水素吸蔵材10を得る際、雰囲気中のH2を水素原子に解離する触媒活性が一層大きいからである。
金属ナノ粒子16は、H2を水素原子に解離し得るものであれば特に限定されるものではないが、その好適な例としては、Ni、Fe、Pdをはじめとする各種の遷移金属を挙げることができる。
この水素吸蔵材10は、以下のようにして水素を吸蔵する。
本発明者の鋭意検討によれば、結晶質AlH3(図7参照)の水素吸蔵サイトに水素を吸蔵させる場合、先ず、粒界相3が水素吸蔵を開始する。この際、比較的低圧でも水素が吸蔵される。
ここで、結晶質AlH3の微細組織には、粒界相3が組織中に数体積%しか存在しない。このため、粒界相3の水素吸蔵量は早期に飽和し、次に、組織内で大部分を占めるマトリックス相2が水素吸蔵に寄与する。
しかしながら、このマトリックス相2では、水素吸蔵のために著しく大きな活性化エネルギを必要とする。従って、温度が一定である場合、水素圧力が低いときには水素を吸蔵しない。結局、水素圧力が数千気圧(数百MPa)に到達した時点で水素が活発に吸蔵され始める。
一方、本実施の形態に係る水素吸蔵材10においても同様に、マトリックス相12に先んじて粒界相14から水素吸蔵が始まる。
そして、上記したように、本実施の形態に係る水素吸蔵材10では、図7に示される結晶質AlH3に比して粒界相14の割合が著しく大きい。上記したように、粒界相14は水素圧力が比較的小さいときでも水素を容易に吸蔵するので、粒界相14を多く含む水素吸蔵材10では、0.1〜2MPaという比較的低圧な条件下であっても水素吸蔵量が多くなる。換言すれば、水素吸蔵材10は、水素吸蔵に要する活性化エネルギが小さいために水素を吸蔵させることが比較的容易な粒界相14が多く存在することに基づいて、水素圧力が1MPa近傍という比較的小さいときであっても、結晶質AlH3に比して多量の水素を吸蔵することができる。
しかも、水素吸蔵材10の粒界相14からは、後述するように、60〜70℃でHが放出される。すなわち、100℃以下の温度で水素を放出させることが可能である。このため、例えば、この水素吸蔵材10を収容したガス貯蔵用容器を燃料電池車に搭載した場合、該ガス貯蔵用容器が70℃より若干高温となる程度に熱を供給すればよい。その結果、燃料電池車の他の箇所に供給する熱量を多くすることができるので、燃料電池車のシステム全体の熱効率を向上させることが可能となる。
従って、水素の吸蔵を促進するべく加熱装置を付設したり、ガス貯蔵用容器への充填圧力を過度に大きくしたりする必要がない。結局、本実施の形態によれば、簡素な構成を維持することができるとともに、設備投資が高騰することを回避することができる。
本実施の形態に係る水素吸蔵材10は、次のようにして得ることができる。
はじめに、AlH3を合成する。
AlH3は、例えば、LiAlH4のジエチルエーテル溶液にAlCl3を溶解して常温で反応させることで得ることができる。すなわち、この反応によって生成したLiClを濾過によって分離し、濾液を真空ポンプ等によって室温で減圧することでジエチルエーテルを蒸発させる。さらに、40〜80℃で減圧して乾燥させれば、固体状のAlH3が得られる。この時点では、AlH3は結晶質AlH3(図7参照)である。
次に、このAlH3に対してFe、Ni、Pd等の金属ナノ粒子16を5wt%程度の割合で添加し、混合物とする。なお、金属ナノ粒子の添加手法は特に限定されるものではなく、例えば、乳鉢で撹拌することで金属ナノ粒子を添加するようにしてもよい。
その後、この混合物に対し、真空中での熱処理を施す。この真空熱処理に伴ってマトリックス相2及び粒界相3を形成するAlH3が酸化され、その結果、マトリックス相2及び粒界相3の双方がAlに変化する。すなわち、図7と同様の微細組織を有するAlが生成する。
次に、真空熱処理が施されて前記Alを含む混合物に対してボールミリングを行う。ここで、前記ボールミリングは、前記混合物に対し、水素ガス雰囲気中で10G〜30G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与する条件で行う。具体的には、AlH3を粉砕用ボールとともに水素雰囲気中でポットに封入する。この際、該ポットの内部水素圧を0.1〜2MPaに設定する。
次に、このポットを、遊星型ボールミル装置の円盤状台板に回転自在に設けられた回転台座と押止軸とで挟持し、さらに、前記円盤状台板及び前記回転台座の双方を回転させる。
遊星型ボールミル装置では、ポットは、前記円盤状台板が回転することで公転運動を行う一方、前記回転台座が回転することで自転運動を行う。すなわち、ポットは、円盤状台板に連結された回転軸を中心に公転運動し、前記押止軸を中心に自転運動する。これら公転運動及び自転運動により、ポットに収容されたAlH3に力が作用する。なお、ボールミリングの間、ポット内が水素雰囲気に保たれているので、粒界相14に固溶したHが放出されることが抑制される。
10G〜30Gの力は、円盤状台板及び回転台座の回転数や、処理時間を調整することで付与することができる。例えば、ポットの直径が80mm、高さが100mm、内容量が80mlであり、且つ円盤状台板の直径がおよそ300mmである場合、円盤状台板(公転運動)の回転数を50〜500rpm、回転台座(自転運動)の回転数を30〜1000rpmとし、公転運動及び自転運動の双方を10分超〜60分未満の間続行すればよい。この時間が10分以下では、上記した微細組織の形成が不十分である。一方、60分以上であると、粒界相14から水素が過度に放出されてしまい、吸蔵された水素量が少なくなる。
このように、本実施の形態においては、混合物中のAlに対して大きなエネルギが付与される。その結果、マトリックス相2が微細化されて1辺の長さが1〜200nmのAlからなるマトリックス相12が形成されるとともに、粒界相3が肥大化して粒界相14が形成される。
同時に、ボールミルでのエネルギ付加によって金属ナノ粒子16がマトリックス相12及び粒界相14に担持される。この金属ナノ粒子16は、該金属ナノ粒子16の周囲に存在する水素雰囲気中の水素ガス(水素分子)を原子に解離する触媒作用を営む。
生成した水素原子は、上記したように、マトリックス相12に先んじて粒界相14に固溶される。すなわち、水素原子は速やかに粒界相14に固溶され、該粒界相14がAlHx(0<x≦3)となる。
なお、この水素吸蔵材10につきX線回折測定を行った場合、Alに帰属するピークのみが出現する。このことから、粒界相14がアモルファス相であるといえる。
1mol/リットルのLiAlH4のジエチルエーテル溶液300ミリリットルに13gのAlCl3を添加して溶解し、常温においてガスの発生が認められなくなるまで反応させた。その後、溶液中に沈殿したLiClを濾過によって分離し、室温にて濾液を真空ポンプで1時間減圧することでジエチルエーテルを蒸発させ、さらに、40℃、60℃、80℃の各温度で1時間減圧して乾燥させ、2gの合成物粒子を得た。以上の作業を繰り返し、合計で6gの合成物粒子を調製した。
この合成物粒子から10mgを秤量し、ブルカー社製のX線回折測定装置を用いてX線回折測定を行った。図2は、得られたX線回折パターンである。該パターンにおいて、α−AlH3又はβ−AlH3に帰属する鋭利なピークのみが出現したことから、合成物粒子が結晶質AlH3であることが分かる。
次に、3.6gの合成物粒子(結晶質AlH3)に対してNiナノ粒子0.2gを添加し、メノウ乳鉢にて両粉末を混合した。このようにして得られた混合物に対し、真空下で150℃にて3時間の熱処理を施した。
熱処理後の混合物10mgのX線回折パターンを図3に示す。この図3から諒解されるように、該パターンには、Alに帰属するピークのみが出現した。すなわち、結晶質AlH3から水素が解離し、Alが生成した。
次に、熱処理後の混合物から3gを秤量し、外径80mm、高さ100mm、内容量80mlの水素ガス導入口付ステンレス製ポットに粉砕用ボールとともに封入した。その後、水素ガス導入口から水素ガスをポット内に導入し、該ポット内における水素の圧力を0.3MPaとしてポットを封止した。
その後、遊星型ボールミル装置(独国フリッチュ社製)の円盤状台板上の回転台座と押止軸とで前記ポットを挟持し、ボールミリングを施した。なお、前記円盤状台板の直径は300mmであり、回転数は350rpmに設定した。また、回転台座の回転数、換言すれば、ポットの自転運動回転数を800rpmに設定し、ボールミリング時間は45分とした。この条件下では、合成物粒子に付与された力は16Gであった。
このようにして得られたボールミリング後の最終生成物10mgにつきX線回折測定を行ったところ、図4に示すように、Alに帰属するピークのみが出現した。この結果から、ボールミリングによってAlH3が生成していないこと、すなわち、Alの微細組織を構成するマトリックス相が水素化していないことが分かる。
なお、図4(ボールミリング後)において最大強度を示したピークの強度は、図3(ボールミリング前)において最大強度を示したピークの強度の約1/5であった。この結果から、最終生成物の微細組織を構成するマトリックス相の体積分率が合成物粒子(結晶質AlH3)の微細組織を構成するマトリックス相の体積分率よりも減少し、逆に、最終生成物の微細組織を構成する粒界相の体積分率が合成物粒子の微細組織を構成する粒界相の体積分率よりも増加しているといえる。
そして、図4に示される測定結果から、下記の式(1)に示されるシェラーの式を用いて最終生成物のマトリックス相の辺長を算出したところ、23nmであった。
D=K×λ/(β×cosθ) …(1)
なお、式(1)中、Dは結晶子サイズ(=辺長。単位はÅ)、Kはシェラー定数、λは使用X線管球の波長、βは半価幅、θは回折角である。
以上の結果から、ボールミリングを行うことによってナノ構造体である水素吸蔵材が得られることが明らかである。
ボールミリング後の最終生成物から10mgを採取し、N2ガス流通下で熱重量分析を行った。なお、測定温度範囲は室温〜500℃とし、昇温速度は5℃/分とした。結果を図5に示す。図5中の重量減少が、最終生成物から水素が放出されたことを意味する。
この図5から、最終生成物は、約6wt%もの重量減少を起こしていることが諒解される。上記したように、最終生成物のマトリックス相にはAlに帰属するピークのみが認められ、水素が存在することは認められない。従って、上記したボールミリングの間に最終生成物の粒界相に水素が固溶され、この水素が放出されることに伴って前記の重量減少が起こっているものと考えられる。
その上、最終生成物においては、100℃以下で重量減少、換言すれば、水素の放出が開始されている。このことから、水素は、最終生成物において体積分率が著しく増加した粒界相に吸蔵(固溶)され、しかも、最終生成物から比較的低温で容易に放出されるといえる。
比較のため、市販品であるAl粉末(粒径は3μm以下)を6g秤量し、このAl粉末に対してNiナノ粒子を0.3g添加した後、上記と同様に真空下での熱処理及び水素雰囲気下でのボールミリングを行って最終生成物を得、この最終物についてもN2ガス流通下で熱重量分析を行った。その結果、図6に示すように、重量減少はほとんど認められなかった。
このことから、AlH3を脱水素化することによってはじめて、水素を吸蔵することが可能な水素吸蔵材を得ることができることが分かる。
以上の結果から、最終生成物(ナノ構造体)が低温において多量の水素を放出することが可能な水素吸蔵材であることが明らかである。この理由は、微細組織中で粒界相が占める割合が多いためであると推察される。
本実施の形態に係る水素吸蔵材の微細組織を模式的に表した組織構造説明図である。 合成物粒子(結晶質AlH3)のX線回折パターンである。 真空熱処理が施された後の合成物粒子(結晶質AlH3)のX線回折パターンである。 最終生成物(本実施の形態に係る水素吸蔵材)のX線回折パターンである。 最終生成物(本実施の形態に係る水素吸蔵材)の熱重量分析チャート図である。 比較例における最終生成物の熱重量分析チャート図である。 結晶質AlH3の微細組織を模式的に表した組織構造説明図である。
符号の説明
1…結晶質AlH3 2、12…マトリックス相
3、14…粒界相 10…水素吸蔵材
16…金属ナノ粒子

Claims (5)

  1. 水素を可逆的に吸蔵・放出可能な水素吸蔵材であって、
    複数個のマトリックス相と、前記マトリックス相同士の間に介在する粒界相とが存在する組織を有し、
    前記マトリックス相がAlからなるとともにその1辺の長さが1〜200nmであり、
    前記粒界相がAlHx(ただし、0<x≦3)のアモルファス相からなり、
    且つ前記マトリックス相及び粒界相に金属ナノ粒子が分散して存在することを特徴とする水素吸蔵材。
  2. 請求項1記載の水素吸蔵材において、前記金属ナノ粒子がNi、Fe、Pdであることを特徴とする水素吸蔵材。
  3. AlHに対して金属ナノ粒子を添加して混合物とした後、前記混合物中のAlHを脱水素化してAlに変化させる工程と、
    前記金属ナノ粒子及び前記Alを含んだ前記混合物に対し、水素雰囲気中で10G〜30G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与する条件でボールミリングを行うことで、Alからなるとともにその1辺の長さが1〜200nmである複数個のマトリックス相と、前記マトリックス相同士の間に介在してAlHx(ただし、0<x≦3)のアモルファス相からなり且つ水素を固溶した粒界相とが存在する組織を有するとともに、前記マトリックス相及び粒界相に前記金属ナノ粒子が分散して存在する水素吸蔵材とする工程と、
    を有し、
    前記水素雰囲気の圧力を0.1〜2MPaに設定するとともに、前記ボールミリングを10分超〜60分未満の間で行うことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。
  4. AlHを脱水素化してAlに変化させる工程と、
    得られた前記Alに対して金属ナノ粒子を添加して混合物とする工程と、
    前記混合物に対し、水素雰囲気中で10G〜30G(ただし、Gは重力加速度)の力を付与する条件でボールミリングを行うことで、Alからなるとともにその1辺の長さが1〜200nmである複数個のマトリックス相と、前記マトリックス相同士の間に介在してAlHx(ただし、0<x≦3)のアモルファス相からなり且つ水素を固溶した粒界相とが存在する組織を有するとともに、前記マトリックス相及び粒界相に前記金属ナノ粒子が分散して存在する水素吸蔵材とする工程と、
    を有し、
    前記水素雰囲気の圧力を0.1〜2MPaに設定するとともに、前記ボールミリングを10分超〜60分未満の間で行うことを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。
  5. 請求項3又は4記載の製造方法において、前記金属ナノ粒子としてNi、Fe、Pdを用いることを特徴とする水素吸蔵材の製造方法。
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