以下、本発明に係る負荷感応型推力伝達装置に関し、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
第1の実施の形態に係る負荷感応型推力伝達装置10の構成を図1〜図5に示す。
負荷感応型推力伝達装置10は、駆動モータ12と、前記駆動モータ12を固定させるためにステイ15によって立設されているベース14と、前記駆動モータ12の回転運動を直線運動に変換するローラねじ機構部16と、前記ローラねじ機構部16の回り止めを兼ねるガイド軸100a、100bと、雄ねじ部18と、ステイ20に固着された保持部21とを有する。
ベース14に固定された駆動モータ12には、先端部が半円柱状に形成された駆動軸22が設けられ、該駆動軸22は、止ねじ32aにより駆動プーリ24と連結され、該駆動プーリ24は歯付ベルト26を介して、従動プーリ28と連結される(図3参照)。前記従動プーリ28は、止ねじ32bにより回転伝達軸30の一端部と連結され、該回転伝達軸30は軸受34によってベース14に回転自在に固定される。そして、前記回転伝達軸30の途上には、雄ねじ部18が形成されるとともに該回転伝達軸30の他端部は軸受を備えた保持部材37によって回転自在に支承されている。
図3〜図5に示すように、ローラねじ機構部16は、負荷ロッド(負荷ロッド部材)36と、ナットケース38と、第1雌ねじ(雌ねじ)40と、第2雌ねじ(雌ねじ)42と、第1ブレーキ板(回転阻止部材)44と、摩擦板(摩擦部材)46と、第2ブレーキ板(回転阻止部材)48とを有する。
負荷ロッド36は円筒状であって、その一端側には、図示しないワークをクランプするクランパ等が装着可能な先端ナット50が装着され、一方、負荷ロッド36の他端側には、中心部に開口部が設けられた負荷検出板(負荷検出部材)54が装着される。実際、負荷検出板54には、ピン55a、55bが挿入されて負荷ロッド36に固定される。該負荷検出板54から該先端ナット50側へ所定の距離離間した位置に、固定板52が設けられる。この場合、負荷ロッド36の内部には、保持部材37に係合する雄ねじ部18が挿通される。従って、該雄ねじ部18と負荷ロッド36は同軸上に延在している。
ここで、前記固定板52には、図4に示すように、中心部に設けられた開口部の外周側に挿通孔58a、58bと、嵌合孔52a、52bとが交差するように形成され、前記負荷検出板54にも、同様に中心部に設けられた開口部の外周側に挿通孔58c、58bと、摺動孔62a、62bとが交差するように形成される。
前記負荷検出板54の近傍にナットケース38が設けられる。前記ナットケース38には、軸線方向に延在して円形状で段差のある開口部64が形成される。前記開口部64の内壁には、軸心を偏位させて第1軸受70と第2軸受72とが嵌合される。ここで、ナットケース38の前記開口部64の外側には、該ナットケース38の軸方向に沿う一端側から他端側まで連通した摺動孔62e、62fが形成され、且つ、該ナットケース38の一端側には、前記開口部64の外側に螺孔63a、63bが前記摺動孔62e、62fと交差するように形成される。前記ナットケース38の他端側にも、前記開口部64の外側に螺孔63c、63dが前記摺動孔62e、62fと交差するように形成される。
この場合、前記第1軸受70に第1雌ねじ40が嵌合し、前記第2軸受72に第2雌ねじ42が嵌合する。第1軸受70と第2軸受72とが互いに半径方向に偏心していることから前記第1雌ねじ40と第2雌ねじ42も相互にその軸心が偏心している。
第1雌ねじ40は、雄ねじ部18より有効径が大きく、雄ねじ部18に対して偏心して螺合されるとともに、第1軸受70によってナットケース38に回転自在に固定される。第1雌ねじ40の一端側は拡径し、オルダム継手74のキー74aに対応した形状のキー溝40aが設けられる。第1雌ねじ40の他端側近傍の外周面には溝40bが設けられ、第1雌ねじ止金76が装着され、これによって、前記第1軸受70は該第1雌ねじ40から抜けることはない。
第2雌ねじ42は、雄ねじ部18より有効径が大きく、雄ねじ部18に対して偏心して螺合されるとともに、第2軸受72によってナットケース38に回転自在に固定される。図3から容易に了解されるように、雄ねじ部18に対して第1雌ねじ40と第2雌ねじ42とは互いに反対方向に偏心している。第2雌ねじ42の一端側は拡径し、前記キー74aと90°ずれて形成されたオルダム継手74のキー74bに対応した形状のキー溝42aが設けられる。第2雌ねじ42の中央近傍の外周面には溝42bが設けられ、第2雌ねじ止金78が装着され、これによって、前記第2軸受72は該第2雌ねじ42から抜けることはない。また、第2雌ねじ42の他端側には、第2雌ねじ42の外周面と摺接可能な環状の摩擦板46が配設される。前記摩擦板46には、棒状の係合部88が挿通され、該係合部88は前記第2雌ねじ42の他端側に軸線方向に延在して略U字型に開口した切欠部42cに係合するため、該摩擦板46は第2雌ねじ42と共に一体的に回転することができる。
前記第1雌ねじ40と第2雌ねじ42とは、オルダム継手74によって連結される。すなわち、第2雌ねじ42が回転すると、前記オルダム継手74を介し、第1雌ねじ40も回転する。
ナットケース38は、その一方の端部に第1ナットケース蓋66が嵌合し、他方の端部に第2ナットケース蓋68が嵌合する。
第1ナットケース蓋66は中央部に開口部を有し、該開口部の外周側に挿通孔58e、58fと、摺動孔62c、62dとが交差するように設けられる。第2ナットケース蓋68は中央部に開口部を有し、該開口部の外周側に挿通孔58g、58hと、摺動孔62g、62hとが交差するように設けられる。
第1ブレーキ板44と、第2ブレーキ板48と摩擦板46とがブレーキ機構80を構成する。該第1ブレーキ板44と第2ブレーキ板48には中央部に雄ねじ部18が挿通される開口部が形成され、前記摩擦板46を挟持するように配置され、第1ブレーキ板44と第2ブレーキ板48とは後述する圧縮ばね84e〜84hの作用により、摩擦板46を両側から押圧し、第2雌ねじ42の回転を制動することができる。さらに、第1ブレーキ板44の前記開口部の外周側には、挿通孔58i、58jと、摺動孔62i、62jとが交差するように設けられ、同様に第2ブレーキ板48の開口部の外周側には、挿通孔58k、58lと、摺動孔62k、62lとが交差するように設けられる。
ガイド軸56a、56bの一端側は、ナット82a、82bに螺合し、固定板52に設けられた挿通孔58a、58bと、圧縮ばね84a、84bと、負荷検出板54に設けられた挿通孔58c、58dと、圧縮ばね84c、84dとに挿通し、一方、ガイド軸56a、56bの他端側は、第1ナットケース蓋66に設けられた挿通孔58e、58fに挿通され、ナットケース38に設けられた螺孔63a、63bと螺合する。ここで、前記負荷検出板54は、前記圧縮ばね84a〜84dの作用下に、固定板52とナットケース38との間で矢印A1、A2の双方向に変位可能な状態で保持される。
ガイド軸56c、56dの一端側は、ナットケース38に設けられた螺孔63c、63dと螺合し、第2ナットケース蓋68に設けられた挿通孔58g、58hに挿通され、一方、ガイド軸56c、56dの他端側は、圧縮ばね84e、84fと、ブレーキ機構80に設けられた挿通孔58i〜58lとに挿通され、圧縮ばね84g、84hとワッシャ86a、86bとを介して、ナット82c、82dと螺合する。ここで、前記ブレーキ機構80を構成する第1ブレーキ板44は圧縮ばね84e、84fにより、また、第2ブレーキ板48は圧縮ばね84g、84hにより、摩擦板46を挟持する。
摺動軸60a、60bには、拡径部61a、61bが形成され、一方の端部は固定板52に設けられた嵌合孔52a、52bに嵌合し、負荷検出板54に設けられた摺動孔62a、62bにピン55c、55dを介して固定されるとともに、他方の端部は、第1ナットケース蓋66と、ナットケース38と、第2ナットケース蓋68と、ブレーキ機構80とに設けられた摺動孔62c〜62lに対し、矢印A方向に沿って、摺動自在に挿通される。なお、該拡径部61a、61bはブレーキ機構80を構成する第1ブレーキ板44と第2ブレーキ板48とに挟持される位置に配置される。
ステイ20は、負荷ロッド36の先端側にあって、負荷感応型推力伝達装置10を作業台等に固定することができる。
なお、図において参照符号100a、100bは保持部21とベース14に橋架されてナットケース38の側面の凹部に嵌合してその変位動作を好適に案内するガイド軸を示す。
第1の実施の形態に係る負荷感応型推力伝達装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
クランパ等が装着された先端ナット50をワークから離間させた状態から、前記ワークに対し加圧する場合、駆動モータ12が付勢されることにより、駆動軸22と、駆動プーリ24と、歯付ベルト26と、従動プーリ28とを介して雄ねじ部18が回転するに至る。その際、ローラねじ機構部16はワークに接近する方向、すなわち、矢印A1方向へ変位して、これと共に、前記先端ナット50が矢印A1方向へ変位する。その後、前記先端ナット50がワークに当接するまでは、負荷検出板54に負荷を生じることはなく、ブレーキ機構80を構成する第1ブレーキ板44と第2ブレーキ板48とは、摩擦板46を両側から挟持していることから、摩擦板46の回転は阻止されている。これにより、該摩擦板46と係合している第2雌ねじ42も回転することが阻止されているため、前記先端ナット50は高速モードで、矢印A1方向に速やかに変位する。
前記先端ナット50が矢印A1方向に所定距離変位すると、前記ワークに当接する。これによって負荷検出板54に所定の負荷を生じると、該負荷検出板54を保持している圧縮ばね84a、84bが延伸し、圧縮ばね84c、84dが圧縮される。これと共に、摺動軸60a、60bに設けられた拡径部61a、61bが矢印A2方向へ摺動する。その際、拡径部61a、61bは摩擦板46を挟持している第2ブレーキ板48を矢印A2方向へ変位させることにより、圧縮ばね84e、84fを延伸させ、一方、圧縮ばね84g、84hを圧縮させるため、該第2ブレーキ板48が摩擦板46から離間し、該摩擦板46が回転可能となる。この時、第1ブレーキ板44も矢印A2方向に変位するが、圧縮ばね84e、84fの自由長を越える変位量に設定してあるため摩擦板46に対する制動力は機能しない。これにより、雄ねじ部18の回転に従い、第1雌ねじ40と第2雌ねじ42とが回転可能となり、前記先端ナット50は減速モードで矢印A1方向へ減速して変位する。
この結果、前記先端ナット50は、ワークに衝撃を与えることなく、緩やかに、且つ確実にワークを加圧することができる。
一方、ワークを加圧した状態から先端ナット50が離間する場合、負荷検出板54は、所定の負荷を生じている状態である。すなわち、該第2ブレーキ板48が摩擦板46から離間し、該摩擦板46が回転可能であるため、雄ねじ部18の前記とは逆方向の回転に従い、第1雌ねじ40と第2雌ねじ42とが逆方向に回転し、該先端ナット50は矢印A2方向へ減速して変位する。そして、前記先端ナット50が前記ワークから離間すると、該負荷検出板54を保持している圧縮ばね84a〜84dが元の形状に復帰すると共に、第2ブレーキ板48を押圧する圧縮ばね84e〜84hも元の形状に復帰し、前記第1ブレーキ板44と第2ブレーキ板48とが摩擦板46を挟持するため、該摩擦板46の回転運動は阻止される。これにより、摩擦板46と係合する第2雌ねじの回転運動も阻止される。そのため、前記先端ナット50は高速モード矢印A2方向に速やかに変位する。
次に、第2の実施の形態に係る負荷感応型推力伝達装置200の構成を図6〜図9に示す。
負荷感応型推力伝達装置200は、駆動モータ212と、駆動モータ212を固定するためにステイ215によって立設されるベース214と、駆動モータ212の回転運動を直線運動に変換するローラねじ機構部216と、雄ねじ部218と、ステイ220に固着された保持部221とを有する。
駆動モータ212の回転運動は、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、ローラねじ機構部216の直線運動に変換される。
図7〜図9に示すように、ローラねじ機構部216は、負荷ロッド236と、ナットケース238と、第1雌ねじ240と、第2雌ねじ242と、ブレーキ板244とを有する。
負荷ロッド236は円筒状に形成され、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、固定板252と、負荷検出板254とが設けられ、雄ねじ部218が挿通される。ここで、固定板252には、中心部に設けられた開口部の外周側に挿通孔258a〜258dが形成される。負荷検出板254には、固定板252と同様に、挿通孔258e〜258hが形成される。
ナットケース238には、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、第1軸受270と第2軸受272とが嵌合される。ナットケース238の側面には後述する第1摺動板294aと第2摺動板294bの形状にそれぞれ対応した摺動溝238a、238bが該ナットケース238の一端側から他端側まで矢印A方向と平行に並んで形成される。ここで、ナットケース238の一端側には、中心部に設けられた第1開口部264の外周側に螺孔263a〜263dが形成され、ナットケース238の他端側には、該第1開口部264の外周側に螺孔263e〜263hが形成される。
第1雌ねじ240と第2雌ねじ242とは、前記第1の実施の形態の負荷感応型推力伝達装置10と同様に、それぞれ第1軸受270と第2軸受272を介して、ナットケース238に回転自在に固定される。また、第1雌ねじ240と第2雌ねじ242とは、オルダム継手274によって連結される。
第1ナットケース蓋266は中央部に開口部を有し、該開口部の外周側に挿通孔258i〜258lが形成され、ナットケース238の一端側に装着される。第2ナットケース蓋268は中央部に開口部を有し、該開口部の外周側に挿通孔258m〜258pが形成され、ボルト267a〜267dにより、前記ナットケース238の他端側に設けられた螺孔263e〜263hと螺合される。
ブレーキ板244は前記第2ナットケース蓋268に設けられた基台部に、止め輪281a、281bによって軸方向を規制された支点軸282を中心軸として回転自在に設けられる。ブレーキ板244には、雄ねじ部218が挿通される第2開口部284が設けられ、ブレーキ板244の側面には、ばねポスト286が固定される。ブレーキ板244は、第2雌ねじ242の端面242cに当接し、第2雌ねじ242の回転を阻止することができる。ばねポスト286には、引張ばね288の一端部が取付けられ、該引張ばね288の他端部はナットケース238の側面に設けられる摺動機構290にばねポスト292を介して、取付けられる。
摺動機構290は、長さの相違する一対の棒形状の板の内、長い第1摺動板294aと、短い第2摺動板294bと、前記第1摺動板294aと第2摺動板294bとを連結するリンク板296とから構成される。第1摺動板294aは、矢印A方向に平行な摺動溝238aに沿って摺動自在であり、第2摺動板294bも摺動溝238bに沿って摺動自在である。リンク板296は、ナットケース238に圧入されたばねポスト292に挿入され、止め輪291によって回転自在に装着される。このために、リンク板296はその中央部に前記ばねポスト292が挿入される嵌合孔を備える。また、リンク板296の両端部にはピン298a、298bにより、第1摺動板294aの中央部と第2摺動板294bの一端部とに連結される。前記第1摺動板294aの一端部は、ボルト300により負荷検出板254に固定される。第1摺動板294aの他端部295aと第2摺動板294bの他端部295bは、ブレーキ板244に当接する。
摺動機構290が作動すると、第1摺動板294aと第2摺動板294bとが摺動し、該第2摺動板294bの他端部295bがブレーキ板244を押圧することにより、ブレーキ板244が支点軸282を中心として回転し、第2雌ねじ242の端面242cから離間するため、第2雌ねじ242が回転可能となる。
摺動機構290の外側から中央部が開口した薄板形状の抑え板302がナットケース238に装着される。抑え板302は取付ボルト304a〜304dにより、ナットケース238に固定されるが、摺動機構290の作動の障害になることはない。
ガイド軸256a〜256dの一端側は、ナット282a〜282dに螺合し、固定板252に設けられた挿通孔258a〜258dと、圧縮ばね284a〜284dと、負荷検出板254に設けられた挿通孔258e〜258hと、圧縮ばね284e〜284hとに挿通され、一方、ガイド軸256a〜256dの他端側は、第1ナットケース蓋266に設けられた挿通孔258i〜258lに挿通され、ナットケース238に設けられた螺孔263a〜263dに螺合される。なお、前記負荷検出板254は、圧縮ばね284a〜284hにより、固定板252とナットケース238との間で矢印A1、A2の双方向に摺動可能な状態で保持される。
ステイ220は、負荷ロッド236の先端側に設けられ、負荷感応型推力伝達装置200を作業台等に固定できる。
第2の実施の形態に係る負荷感応型推力伝達装置200は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
クランパ等が装着された先端ナット250をワークから離間した状態から、前記ワークに対し加圧する場合、駆動モータ212が付勢されることにより、ローラねじ機構部216がワークに接近する方向、すなわち、矢印A1方向へ変位すると共に、前記先端ナット250が矢印A1方向へ変位する。その際、ブレーキ板244は引張ばね288により第2雌ねじ242の端面242cと当接しているため、該第2雌ねじ242の回転は阻止され、前記先端ナット250は高速モードで、矢印A1方向に速やかに変位する。その後、前記ワークに前記先端ナットが当接すると負荷検出板254が所定距離変位し、第1摺動板294aの他端部295aにより押圧されたブレーキ板244が支点軸282を中心として回転し、ブレーキ板244は第2雌ねじ242の端面242cから離間する。これにより、第2雌ねじ242が回転可能となるため、前記先端ナット250は減速モードで矢印A1方向へ減速して変位する。
この結果、前記先端ナット250は、ワークに衝撃を与えることなく、緩やかに、且つ確実にワークを加圧することができる。
一方、ワークを加圧した状態から離間する場合、先ず、負荷検出板254は矢印A2方向に所定距離変位しているため、摺動機構290を構成するリンク板296は図6において時計回り方向へ傾いており、第1摺動板294aの他端部295aがブレーキ板244を押圧し、ブレーキ板244は支点軸282を中心として時計回りに回転している。すなわち、ブレーキ板244は第2雌ねじ242の端面242cから離間していることにより、第2雌ねじ242が回転可能となるため、前記先端ナット250は矢印A2方向へ減速して変位する。そして、前記ワークから離間するにつれて、第1摺動板294aは矢印A1方向へ変位し、リンク板296の傾きは小さくなり、ブレーキ板244は支点軸282を中心に反時計回りに回転し、第2雌ねじ242の端面242cに当接する。これにより、第2雌ねじ242の回転は阻止されるため、前記先端ナット250は高速モードで矢印A2方向へ速やかに変位する。
さらに、第3の実施の形態に係る負荷感応型推力伝達装置400の構成を図10〜図13に示す。
負荷感応型推力伝達装置400は、駆動モータ412と、駆動モータ412を固定するためにステイ415によって立設されるベース414と、駆動モータ412の回転運動を直線運動に変換するローラねじ機構部416と、雄ねじ部418と、ステイ420に固着された保持部421とを有する。
駆動モータ412の回転運動は、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、ローラねじ機構部416の直線運動に変換される。
図11〜図13に示すように、ローラねじ機構部416は、負荷ロッド436と、ナットケース438と、第1雌ねじ440と、第2雌ねじ442と、ブレーキ板444とを有する。
負荷ロッド436は円筒状に形成され、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、固定板452と、負荷検出板454が設けられ、雄ねじ部418が挿通される。ここで、固定板452には、中心部に設けられた開口部の外周側に挿通孔458a〜458dが形成されるとともに、負荷検出板454には、前記固定板452と同様に、挿通孔458e〜458hが形成される。
ナットケース438には、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、第1軸受470と第2軸受472とが嵌合される。ここで、ナットケース438の一端側には、中心部に設けられた第1開口部464の外周側に螺孔463a〜463dが形成され、ナットケース438の他端側には、中心部に設けられた第1開口部464の外周側に螺孔463e〜463hが形成される。
第1雌ねじ440と第2雌ねじ442とは、前記負荷感応型推力伝達装置10と同様に、それぞれ第1軸受470と第2軸受472を介して、ナットケース438に回転自在に固定される。また、第1雌ねじ440と第2雌ねじ442とは、オルダム継手474によって連結される。
第1ナットケース蓋466は中央部に開口部を有し、該開口部の外周側に挿通孔458i〜458lが形成され、ナットケース438の一端側に装着される。第2ナットケース蓋468は中央部に開口部を有し、該開口部の外周側に挿通孔458m〜458pが形成され、ボルト467a〜467dにより、前記ナットケース438の他端側に設けられた螺孔463e〜463hと螺合される。
ブレーキ板444は前記第2ナットケース蓋468に設けられた基台部に止め輪481a、481bによって軸方向に規制された支点軸482を中心軸として回転自在に設けられる。ブレーキ板444は、雄ねじ部418が挿通される第2開口部484が設けられ、ブレーキ板444の側面には、2本のばねポスト486a、486bが固定される。ブレーキ板444は、第2雌ねじ442の端面442cに当接し、第2雌ねじ442の回転を阻止することができる。ばねポスト486a、486bには、それぞれ引張ばね488a、488bの一端部が取付けられ、該引張ばね488a、488bの他端部はナットケース438の側面に、ばねポスト486c、486dを介して、固定される。
位置検出機構490は、第1位置検出スイッチ494aと、第2位置検出スイッチ494bと、プランジャ496とから構成される。
第1位置検出スイッチ494aは、固定板452の側面に突出した突出部452aに配置され、第2位置検出スイッチ494bは、ナットケース438の一端側近傍の側面にボルト500a、500bにより固定される固定ブロック502に配置される。前記第1位置検出スイッチ494aと第2位置検出スイッチ494bとは、同軸線上に配置される。
プランジャ496は、支持台504にボルト500c、500dにより固定され、該支持台504はナットケース438の側面にボルト500e、500fにより固定される。プランジャ496の他端側の中央部から延伸し、矢印A方向に変位自在なプランジャ軸496aは、連結軸506を介してブレーキ板444と当接される。前記ブレーキ板444は、プランジャ496の作用下に、支点軸482を中心として回転することができる。
ガイド軸456a〜456dの一端側は、ナット482a〜482dと螺合し、固定板452に設けられた挿通孔458a〜458dと、圧縮ばね484a〜484dと、負荷検出板454に設けられた挿通孔458e〜458hと、圧縮ばね484e〜484hとに挿通され、一方、ガイド軸456a〜456dの他端側は、第1ナットケース蓋466に設けられた挿通孔458i〜458lに挿通され、ナットケース438に設けられた螺孔463a〜463dと螺合する。なお、前記負荷検出板454は、圧縮ばね484a〜484hにより、固定板452とナットケース438との間で矢印A1、A2の双方向に変位可能な状態で保持される。
ステイ420は、負荷ロッド436の先端側に設けられ、負荷感応型推力伝達装置400を作業台等に固定できる。
第3の実施の形態に係る負荷感応型推力伝達装置400は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
クランパ等が装着された先端ナット450をワークから離間された状態から、前記ワークに対し加圧する場合、駆動モータ412が駆動されることにより、ローラねじ機構部416がワークに接近する方向、すなわち、矢印A1方向へ変位すると共に、前記先端ナット450が矢印A1方向へ変位する。ブレーキ板444が第2雌ねじ442の端面442cと当接し、第2雌ねじ442の回転運動は阻止されているため、前記先端ナット450は高速モードで矢印A1方向に速やかに変位する。その後、位置検出機構490を構成する第2位置検出スイッチ494bに負荷検出板454が当接すると、プランジャ496に電気信号(検出信号)として伝達し、プランジャ496が駆動され、プランジャ軸496aを矢印A2方向に変位させる。該プランジャ軸496aの作用下に、ブレーキ板444が支点軸482を中心として図13において時計回りに回転し、ブレーキ板444は第2雌ねじ442の端面442cから離間する。これにより、第2雌ねじ442が回転可能となるため、前記先端ナット450は減速モードで矢印A1方向へ減速して変位する。
一方、ワークを加圧した状態から離間する場合、先ず、位置検出機構490を構成する第1位置検出スイッチ494aと第2位置検出スイッチ494bとの間の距離が所定の値を超えており、プランジャ軸496aが矢印A2方向に延伸しているため、ブレーキ板444は支点軸482を中心として図13において時計回りに回転しており、ブレーキ板444は第2雌ねじ442の端面442cから離間している。そのため、第2雌ねじ442が回転可能であり、前記先端ナット450は減速モードで変位可能となるため、該先端ナット450は矢印A2方向へ減速して変位する。その後、第2位置検出スイッチ494bと負荷検出板454が離間すると、プランジャ496が駆動され、プランジャ軸496aは矢印A1方向に収縮するため、ブレーキ板444は支点軸482を中心に図13において反時計回りに回転する。その際、前記ブレーキ板444が第2雌ねじ442の端面442cに当接することにより、第2雌ねじ442の回転は阻止される。これにより、前記先端ナット450は高速モードで矢印A2方向へ速やかに変位する。
前記先端ナット450の変位方向に拘らず、第1位置検出スイッチ494a又は第2位置検出スイッチ494bによる負荷検出板454の変位検出により発生された電気信号に基づき、高速モードと減速モードとを切り替えることが可能となる。
高速モードと減速モードを切り替える手段としては、前記第1位置検出スイッチ494aと第2位置検出スイッチ494bによる負荷検出板454の変位検査で発生された電気信号に基づく手段の他に、駆動モータ412の電流値の変化に基づき、高速モードと減速モードとを切り替えることも可能である。すなわち、駆動モータ412の電流値を監視し、該電流値の規定値を超えたか否かにより、高速モードと減速モードとを切り替える手段であり、その処理手順を図14に示すフローチャートに基づき説明する。
ステップS1〜S4は、電動アクチュエータにおいて一般的に行われている初期位置検出手順であり、詳細の説明は省略する。
ステップS5において、駆動モータ412の起動信号が発信されているか否かを判別する。前記起動信号が発信されている場合は、ステップS6に進む。
ステップS6において、駆動モータ412を反時計回り(CCW)に駆動させるか否かを判別する。反時計回りとしない場合はステップS7に進み、反時計回りとする場合はステップS8に進む。
ステップS7において、駆動モータ412を時計回り(CW)に駆動させるものとして設定し、ステップS9に進む。
ステップS8において、駆動モータ412を反時計回りに駆動させるものとして設定する。
ステップS9において、駆動モータ412をステップS7又はステップS8において設定した方向、すなわち、時計回り、又は反時計回りに駆動させる。
ステップS10において、駆動モータ412の駆動時間が所定時間を超えたか否かを判別する。前記所定時間を超えた場合は、ステップS11に進み、エラー処理を行う。
ステップS12において、前記所定時間内で、駆動モータ412の電流値を監視し、規定値を超えたか否かを判別する。すなわち、ワークに対し、加圧する場合は、前記先端ナット450がワークに当接し、該先端ナット450に係る負荷が大きくなるに従い、駆動モータ412の電流値は大きくなる。一方、ワークに対し、離間する場合、前記先端ナット450がワークから離間すると、該先端ナット450に係る負荷がなくなり、駆動モータ412の電流値は小さくなる。前記規定値を超えていない場合は、ステップS14に進む。
ステップS13において、ワークに対し、加圧によって電流が規定値を超えた場合、プランジャ496をA2方向に起動し、ブレーキ板444が第2雌ねじ442の端面442cから離間することにより、第1雌ねじ440と第2雌ねじ442とが回転可能となり、前記先端ナット450は減速モードにより変位する。
ステップS14において、前記先端ナット450がワークに対し、目標位置に達したか否かを判別する。前記目標位置に達した場合は、ステップS15に進み、前記目標位置に達していない場合は、ステップS10に戻る。
ステップS15において、駆動モータ412を停止する。
ステップS16において、プランジャ496をA1方向に起動し、再びステップS5に戻る。
以上のように、本発明によれば、進退両方向にわたって、雌ねじの回転を許容し又は阻止することが可能となり、減速モード時に生じる出力損失を可及的に排除することができる。そして、この高速モードと減速モードとの切替は、負荷検出板にかかる負荷や、負荷検出板の位置変位、及び駆動モータの電流値に基づき行うことが可能である。
本発明に係る負荷感応型推力伝達装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。