JP5181149B2 - 心臓状態解析装置および除細動装置 - Google Patents

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本発明は、心臓状態解析装置および除細動装置に関するものである。
従来、心電信号を用いた信号解析により不整脈を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第3664731号明細書
しかしながら、不整脈を心電信号のみにより検出する場合には、安静時や運動時の心臓の挙動を判断することが困難であるという不都合がある。また、心臓の動きは精神的要因および呼吸要因等によっても変化するため、心電信号のみによって不整脈を検出するにはあらゆる心電波形について不整脈を識別する必要があり現実的ではない。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、精神的要因や呼吸要因等にかかわらず、心臓の状態をより確実に解析することができる心臓状態解析装置および除細動装置を提供することを目的としている。
本発明は、心臓の表面または心膜に固定され拍動の加速度を検出する1以上の加速度センサと、該加速度センサにより心臓が収縮した直後に検出された拍動の加速度の最大振幅値に基づいて、心臓の動きそのものの特有な動きに関する心臓の状態を判定する状態判定部とを備える心臓状態解析装置を提供する。
本発明によれば、心臓が拍動すると、心臓の表面または心膜に固定された1以上の加速度センサにより拍動の加速度が検出され、検出された拍動の加速度に基づいて状態判定部により心臓の状態が判定される。すなわち、心臓の動きそのものの特有な動きを検出することで、心臓の状態をより正確に解析することができる。
上記発明においては、前記状態判定部は、心臓が収縮した直後に加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値を第1の閾値と比較し、前記最大振幅値が前記第1の閾値より大きいときに心臓が頻拍状態であると判定することとしてもよい。
心臓が頻拍状態のとき、心臓が収縮した直後に加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値は、正常時と比較して非常に大きくなることがわかった。したがって、正常時より十分に大きな第1の閾値と比較して大きいときに頻拍状態をより確実に判定することができる。
また、上記発明においては、前記状態判定部は、心臓が収縮した直後に加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値を第2の閾値と比較し、前記最大振幅値が前記第2の閾値より小さいときに心臓が細動状態であると判定することとしてもよい。
心臓が細動状態のとき、心臓が収縮した直後に加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値は、正常時と比較して非常に小さくなることがわかった。したがって、正常時より十分に小さい第2の閾値と比較して小さいときに細動状態をより確実に判定することができる。
また、上記発明においては、前記状態判定部は、心臓が正常な状態で、異なる位置に配置した略同一方向の加速度を検出する2つの加速度センサにより、心臓が収縮した直後に検出される拍動の加速度の最大振幅値の差分を記憶する正常値記憶部を備え、心臓が収縮した直後に、前記2つの加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値の差分と、正常値記憶部に記憶されている正常時の拍動の加速度の最大振幅値の差分とを比較し、検出された加速度の差分が記憶されている加速度の差分より大きいときに心臓が頻拍状態であると判定し、小さいときに心臓が細動状態であると判定することとしてもよい。
心臓が正常な状態のとき、異なる位置に配置され略同一方向の加速度を検出する2つの加速度センサにより、心臓が収縮した直後に検出される拍動の加速度の最大振幅値は、患者の運動状態にかかわらず、ほぼ一定の差分を有している。したがって、その正常時の差分を正常値記憶部に記憶しておき、加速度の差分が検出される都度に、記憶されている正常値の差分と比較して、大きいときには心臓が頻拍状態、小さいときには心臓が細動状態であると簡易に判定することができる。差分を比較することにより、2つの加速度センサに同時に加わる外的な加速度(患者の移動による加速度等)の影響を排除して、より精度よく心臓の状態を判定することができる。
また、本発明は、上記いずれかの心臓状態解析装置と、心臓または心膜に固定された電極と、前記心臓状態解析装置により心臓が頻拍状態あるいは細動状態であると判定された場合に、前記電極を介して心臓に加える電気的な刺激パルスを発生する刺激パルス発生部とを備える除細動装置を提供する。
このようにすることで、加速度センサにより直接検出した心臓の加速度に基づいて、心臓の状態を正確に判定し、細動状態の場合には、適切なタイミングで刺激パルス発生部から電気的な刺激パルスを発生して、電極を介して心臓に加えることができる。その結果、細動状態をより適切に解消することができる。
本発明によれば、精神的要因や呼吸要因等にかかわらず、心臓の状態をより確実に解析することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態に係る心臓状態解析装置1および除細動装置2について、図1〜図9を参照して説明する。
本実施形態に係る心臓状態解析装置1は、除細動装置2に含まれている。
本実施形態に係る除細動装置2は、図1に示されるように、心臓Aまたは心膜に固定される複数の電極3と、該電極3を介して心臓Aに加える電気的な刺激パルスを発生する刺激パルス発生部4と、該刺激パルス発生部4による刺激パルスの大きさやタイミングを制御する治療制御部5と、心臓Aの状態を解析する心臓状態解析装置1とを備えている。
心臓状態解析装置1は、図2に示されるように各電極3に固定され、図1に示されるように、電極3とともに心臓Aまたは心膜に固定される複数の加速度センサ6と、該加速度センサ6により検出された加速度に基づいて心臓Aの状態を解析する状態判定部7と、心臓Aが正常な状態のときの加速度センサ6の出力の差分値を記憶する記憶部8とを備えている。
図1に示す例では、電極3および加速度センサ6は、相互に固定された状態で心臓Aまたは心膜に固定されている。各加速度センサ6は、略同一方向に発生する加速度を検出するようになっている。
状態判定部7は、各加速度センサ6により検出された加速度の差分値を算出し、算出された差分値を記憶部8に記憶されている差分値と比較し、算出された差分値が記憶されている差分値より大きい場合には心臓Aが頻拍状態であり、算出された差分値が記憶されている差分値より小さい場合には心臓Aが細動状態であると判定するようになっている。
治療制御部5は、状態判定部7による判定結果に基づいて、心臓Aが頻拍状態あるいは細動状態であると判定された場合には、それぞれ所定の大きさの刺激パルスを所定のタイミングで電極3を介して心臓Aに加えるようになっている。
このように構成された本実施形態に係る心臓状態解析装置1および除細動装置2の作用について以下に説明する。
図3に示されるように、心臓Aの各部に加速度センサ6を配置してX方向、Y方向およびZ方向の加速度をそれぞれ検出した結果、例えば、心尖部(Apex)における心電信号(ECG)、圧力変動(LVP)、容積変動(LVV)および加速度(ACC)は、図4〜図5に示されるような関係を有する。これらの図4〜図6に示される波形は、いずれも、平静時、すなわち、急激な運動や外部からの振動を伴わない場合の波形である。
この場合において、図4に示されるように心臓Aが正常な状態(SR)、図5に示されるように心臓Aが頻拍状態(VT)、図6に示されるように心臓Aが細動状態(VF)のそれぞれについて、心室が収縮したとき、すなわち、心電信号(ECG)のピーク波(R波)が発生した直後の加速度変動の最大振幅値(PEA)を抽出したものを図7〜図9に示す。
図7はX方向、図8はY方向、図9はZ方向の加速度の最大振幅値(PEA)をそれぞれ示している。これらの図においては、前壁(Aw)、左房(LA)、基部(Ao)、後壁(Pw)、自由壁(Fw)、心尖(Apex)にそれぞれ取り付けた加速度センサ6による検出値が示されている。
この図7〜図9によれば、心尖(Apex)のY方向を除き、X,Y,Zいずれの方向についても、心臓Aが正常な状態における加速度値に対して心臓Aが頻拍状態における加速度値は大幅に増大し、心臓Aが細動状態における加速度値は大幅に低下していることがわかる。したがって、各加速度センサ6単独で検出された加速度値だけみても、正常な状態における加速度値よりも十分に大きな第1の閾値と、十分に小さい第2の閾値とを設定すれば、検出された加速度値が第1の設定値よりも大きい場合に頻拍状態、第2の閾値の閾値よりも小さい場合に細動状態と容易に判定することができる。
また、心臓Aの各部の略同一方向の加速度について比較すると、それぞれ、その値が異なり所定の差分値を有している。心臓Aが正常な状態における差分値に対して、心臓Aが頻拍状態の差分値は非常に大きく、心臓Aが細動状態における差分値は非常に小さくなっている。したがって、この差分値どうしを比較することによっても、心臓Aの状態を正確に判定することができる。
本実施形態においては、心臓Aが正常な状態で、これらの各加速度センサ6によりR波が発生した直後に検出される加速度変動の最大振幅値PEAの差分値を記憶部8に記憶しておき、状態判定部7において、同加速度センサ6により逐次検出される加速度変動の最大振幅値PEAの差分値と記憶部8に記憶されている差分値とが対比される。
そして、対比の結果、検出された加速度の差分値が記憶されている加速度の差分値より所定の割合以上大きいときに、心臓Aが頻拍状態であると判定することができる。また、対比の結果、検出された加速度の差分値が記憶されている加速度の差分値より所定の割合以下の割合で小さいときに、心臓Aが細動状態であると判定することができる。
このように、本実施形態に係る心臓状態解析装置1によれば、心電信号ECGに基づいて心臓Aの状態を判定する従来の方法とは異なり、加速度センサ6によって心臓Aの振動を直接的に検出するので、リアルタイムに心臓Aの状態をより正確に判定することができる。
また、本実施形態に係る心臓状態解析装置1によれば、心臓Aが正常な状態において加速度センサ6によって検出された加速度の最大振幅値PEAの差分値を記憶しておき、逐次検出される加速度の最大振幅値PEAの差分値を記憶されている差分値と比較することで、心臓Aの状態を判定する。したがって、患者が運動状態である場合や、外部から何らかの加速度が加わる状態においても、正常な状態を誤って頻拍状態あるいは細動状態であると誤って判定してしまう不都合の発生を防止することができる。
すなわち、患者に外部から加速度が加わる場合には、各加速度センサ6にはその加速度が重畳された加速度が検出されるため、各加速度センサ6単独で検出された加速度のみを用いたのでは、正確に判定できない場合がある。これに対して、複数の加速度センサ6により検出された加速度の差分値を比較して判定することで、外部から加わる加速度については相殺された状態となり、心臓Aの状態に応じた加速度のみを比較することができる。
また、本実施形態に係る除細動装置2によれば、上記心臓状態解析装置1により、精度よく判定された心臓Aの状態に基づいて、治療制御部5が適正な大きさの電気的な刺激パルスを適正なタイミングで出力することができ、これにより、頻拍状態および細動状態を速やかに解消することができるという利点がある。
ここで、基部を基準として、各部位の加速度の最大振幅値PEAと基部の加速度の最大振幅値PEAとの差分を算出し、心臓Aの頻拍状態時および細動状態時にどの部分に差異が生じているかについて図10〜図21の箱ひげ図を用いて説明する。
箱ひげ図の作成は、まず、各データをソーティングした後、4分位範囲によってプロットする。
四分位範囲は,第1四分位値(小さいほうから25%の値)と第3四分位値(小さいほうから75%の値)間の区間であり、第2四分位値はメディアンを指す。次いで、下側のひげの部分は第1四分位値から下側に四分位範囲×1.5の長さで引く。この際、その範囲に最小値があれば,最小値まで線を引く。同様に上側のひげは,第3四分位値から上側に四分位範囲×1.5の長さで引く。最大値がこの範囲にあれば最大値までの線を引く。はずれ値(+で示す。)は,上下ともに,ひげの区間を越えるものを指す。
X軸方向の基部と他の部位の加速度の最大振幅値PEAの差分をとったときの箱ひげ図は図10〜図13に示される。図10および図11は、SR(普通の心拍数とアドレナリン投与により心拍数が高い時)、図12は心臓Aが頻拍状態、図13は心臓が細動状態の場合を示す。
頻拍状態では、平常時に比べると、各部位が極端に加速度の最大振幅値PEAの差分が大きくなったり、小さくなったりする。細動状態では、全ての部位が同じ値になっていることがわかる。また、正常時、頻拍状態時および細動状態時には、それぞれ各部位の加速度の最大振幅値PEAの値の関係性が異なることがわかる。
図14〜図17にY軸方向の基部と他の部位の加速度の最大振幅値PEAの差分をとったときの箱ひげ図、図18〜図21にZ軸方向の基部と他の部位の加速度の最大振幅値PEAの差分をとったときの箱ひげ図をそれぞれ示す。
これらによれば、X,Y,Z軸ともに、心臓Aが頻拍状態の場合に、後壁が他の部位に比べて最も顕著に高くなっていることが分かる。これにより、後壁の最大加速度PEAをみることにより正常時と頻拍状態時とを容易に区別することができる。
心臓Aが正常時、頻拍状態時および細動状態時には各部位の加速度の最大振幅値PEAの値が関係性が変わっていることがわかる。例えば、Y軸方向において、正常時では基部に比べて心尖部の加速度の最大振幅値PEAが1番大きかったが、頻拍状態時には基部よりも小さくなり、代わりに後壁の最大振幅値PEAが最も大きくなっていることがわかる。
なお、本実施形態においては、電極3および加速度センサ6を右心房(RA)、右心室(RV)および冠状静脈(CS)に配置することとしたが、固定箇所は、心尖(Apex)を除き、いずれの位置でも構わない。ただし、2以上の加速度センサ6は、略同一方向の加速度を検出するように配置されている必要がある。
本発明の一実施形態に係る除細動装置を示す全体構成図である。 図1の除細動装置に備えられる電極および加速度センサを示す斜視図である。 図1の除細動装置に備えられる本実施形態に係る心臓状態解析装置の作用を説明するための加速度センサの固定箇所を示す図である。 図3のApexにおける心臓が正常な状態での心電信号、圧力変動、容積変動および加速度変動を示すグラフである。 図3のApexにおける心臓が頻拍状態での心電信号、圧力変動、容積変動および加速度変動を示すグラフである。 図3のApexにおける心臓が細動状態での心電信号、圧力変動、容積変動および加速度変動を示すグラフである。 図3の各固定箇所におけるX方向のR波が発生した直後に検出される加速度変動の最大振幅値を示すグラフである。 図3の各固定箇所におけるY方向のR波が発生した直後に検出される加速度変動の最大振幅値を示すグラフである。 図3の各固定箇所におけるZ方向のR波が発生した直後に検出される加速度変動の最大振幅値を示すグラフである。 心臓が正常な状態において、図7に示される各部位のX方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓がアドレナリンを投与した正常な状態において、図7に示される各部位のX方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が頻拍状態において、図7に示される各部位のX方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が細動状態において、図7に示される各部位のX方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が正常な状態において、図8に示される各部位のY方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓がアドレナリンを投与した正常な状態において、図8に示される各部位のY方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が頻拍状態において、図8に示される各部位のY方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が細動状態において、図8に示される各部位のY方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が正常な状態において、図9に示される各部位のZ方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓がアドレナリンを投与した正常な状態において、図9に示される各部位のZ方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が頻拍状態において、図9に示される各部位のZ方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。 心臓が細動状態において、図9に示される各部位のZ方向の最大振幅値どうしの差分を示す箱ひげ図である。
符号の説明
A 心臓
1 心臓状態解析装置
2 除細動装置
3 電極
4 刺激パルス発生部
6 加速度センサ
7 状態判定部
8 記憶部(正常値記憶部)

Claims (5)

  1. 心臓の表面または心膜に固定され拍動の加速度を検出する1以上の加速度センサと、
    該加速度センサにより心臓が収縮した直後に検出された拍動の加速度の最大振幅値に基づいて、心臓の動きそのものの特有な動きに関する心臓の状態を判定する状態判定部とを備える心臓状態解析装置。
  2. 前記状態判定部は、心臓が収縮した直後に加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値を第1の閾値と比較し、前記最大振幅値が前記第1の閾値より大きいときに心臓が頻拍状態であると判定する請求項1に記載の心臓状態解析装置。
  3. 前記状態判定部は、心臓が収縮した直後に加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値を第2の閾値と比較し、前記最大振幅値が前記第2の閾値より小さいときに心臓が細動状態であると判定する請求項1または請求項2に記載の心臓状態解析装置。
  4. 前記状態判定部は、心臓が正常な状態で、異なる位置に配置した略同一方向の加速度を検出する2つの加速度センサにより、心臓が収縮した直後に検出される拍動の加速度の最大振幅値の差分を記憶する正常値記憶部を備え、
    心臓が収縮した直後に、前記2つの加速度センサにより検出された拍動の加速度の最大振幅値の差分と、正常値記憶部に記憶されている正常時の拍動の加速度の最大振幅値の差分とを比較し、検出された加速度の差分が記憶されている加速度の差分より大きいときに心臓が頻拍状態であると判定し、小さいときに心臓が細動状態であると判定する請求項1に記載の心臓状態解析装置。
  5. 請求項2から請求項4のいずれかに記載の心臓状態解析装置と、
    心臓または心膜に固定された電極と、
    前記心臓状態解析装置により心臓が頻拍状態あるいは細動状態であると判定された場合に、前記電極を介して心臓に加える電気的な刺激パルスを発生する刺激パルス発生部とを備える除細動装置。
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